2017-05-13 02:18:35 更新

前書き

什造の昔話です
前投稿したやつをコピーでもって来ました






これは、ある悲劇の少年の物語である




什造「…ママ…今日の僕…、良い子でした?」




年齢に比べ華奢な体つきをした少年がか細い声で尋ねた




ビッグマダム「んん〜、今日の什造ちゃんのいい子ポイント〜〜〜〜………60点!」




什造「……60…点……ですか」




そう答えた彼の声からは落胆の色が伺えた




ビッグマダム「そうよぉ〜!だからね什造ちゃん………そんな悪い子にはぁ〜〜………お仕置きタ〜イム!」




そう言いながらマダムはその華奢な体のいたるところにフックを引っ掛け始めた




ーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーー






ビッグマダム「それい〜ち!に〜い!さ〜ん!…………」




玲「………フッ……ン………ゥ………」




ミチッ ブチブチ クチュ




『お仕置き』の腕立て伏せに合わせて体に吊るしてあるフックから肉の裂ける音がする




聞いているだけで気分の悪くなる音だ




しかし、日頃から『お仕置き』されている什造にとっては日常茶飯事であった




当初の頃



ーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーー






玲「ああぁああぁああアアァあぁあア!!!!!痛い痛いいたいイタイイタイいたい痛いいいいいぃぃいぃいい!!!!」




この脳が焼かれるような痛みにこの年頃の少年が耐えられるはずがなかった




が、慣れとは恐ろしいもので




玲「うぅううぅ………あァ………ッ……いぎィ!!」




叫び声は日ごとに小さくなっていった








叫び声が小さくなったからといって痛みがなくなったわけではない




その悪夢のような時間は徐々にかつ確実に玲の心を蝕んでいった




人という生き物は不思議なもので、体または精神への負荷が限界を超えるともう一つの人格を作ってしまうという




ビッグマダム「どお〜?いい子になってきたでしょ〜?」




そしてついに




???「はい、ママ」




玲にも新しい人格が生まれた






はじめのうちは玲が主人で、もう一人の人格は苦しい現実から目をそらす時のみ出てくる、というのが普通だった




ある日、マダムが玲をスクラッパーにするためのトレーニングが始まり、拷問(いい子タイム)の数も跳ね上がった




もう一人の人格の名前は、スクラッパーとしての名前【什造】に決まり、一人の時は玲と什造はずっと喋り続けていた(独り言)




この時すでに、玲(什造)は痛みというものをほとんど感じない体になっていた




ビッグマダム「さあ什造ちゃ〜ん!明日はいよいよ本番よ!………ママに恥を欠かせないでね」




最後の一文だけガラリと声色を変えマダムは什造を部屋に戻しながら言った




什造「…どうします?僕がいきましょうか?」




毎日恒例の対話(独り言)の時間だ




玲「大丈夫、訓練と一緒なら僕でもできるよ〜、的が人にかわるだけでしょ?」




什造「そうですね〜、ならお任せします〜」




と、軽い気持ちで話を終え、寝床に入る




自分の考えがいかに甘かったかも知らずに……………








次の日の朝、ママに言われたより少し早く起きてしまったが何故か目覚めの悪かった玲は自分の体が濡れていることに気がついた




汗だ




玲「………寒い」




もう一度寝ようと思っても寒くてねれないので、隅で震えていると




バンッ




扉が勢いよく開き




ビッグマダム「什造ちゃ〜ん!起きてるわね?行くわよ!我が子の晴れ舞台!」




分厚い化粧を施したマダムがご機嫌で入ってきた




玲はすっと立ち上がりビッグマダムと部屋を出た




ーーーーーーーーーー


ーーーーーーーー


ーーーーー


ーー



レストランには既に沢山の喰種が集まっていた




喰種1「おや、今日は新しい飼い人ですかな」




中年ぐらいのでっぷりとした腹の喰種がビッグマダムに話しかけた




ビッグマダム「そうなのよ〜!今日のショーは楽しみにしててね〜?」




マダムはご機嫌に返すと什造と支度部屋へと向かった









支度部屋




ビッグマダム「いい?什造ちゃん、何度も教えた通り皆を楽しませること、簡単に殺しちゃダメよ?楽しみにしてるわよ?」




脅迫するような口調だが奥底では、今までの訓練をみていたからか什造はやってくれると信じているようだった




ビッグマダム「じゃあママは上で見てるわね」




バタン




乱暴に扉を閉めてビッグマダムは自分の特等席に戻っていった




玲「………」




ビッグマダムの思いとは裏腹に玲は一つ心配事があった




朝の汗のことだ




いや、もちろん汗だけならばなんの問題もないが、その時から平常心を保てなくなっているのだ








玲「……什造くん、」




少し声が裏返りそうになりながら什造を呼んだ




什造「なんですか?」




玲「なんで手がブルブルしてるのかな?」




震える手じっと見つめていた




什造「……わかりません……」







《さあ!それでは、スクラッパーの登場です!》




什造「……行くですよ……ママが待ってます」




玲「……うん」




そういうと玲は地獄の門をくぐっていった















ワああぁああアあァぁあぁ!!!!!!!




会場は熱気に包まれていた




会場の真ん中には、20〜30ほどのスーツを着たたくましい体をした男性と、ドレスに身を包んだ美しい女性がイスに腰掛けていた




男性「………なんだこれは?何かのサプライズか?」




女性(ああ、きっとこの人のサプライズね。プロポーズぐらい普通にしろっての)




恐らく結婚間際のカップルだろうか




『食材』とされる彼らはまだ何が起きてるのかわからない様子だった




ビッグマダム「じゅーーーーぞーーーちゃーん!!!!」




ビッグマダムも熱い歓声を送っていた




《さあ!今回のスクラッパー君は毎度お馴染みビッグマダム様の提供でございます!》




どこから流れてるかわからないアナウンスからよく通る声が解説をしていた




うおおおおぉぉおおぉ!!!!




今回も見せてくれよーー!!!!




期待してるぞスクラッパーーーー!!!




《なお、本日のスクラッパーは本番は初めてということなのでどのようなショーを見せてくれるのか楽しみですねーー!!》




うあああぁあぁあぁ!!!



早くしろーー!!



腹減ったぞーー!!!!




ビッグマダム「行きなさい!!私の什造ちゃん!!」




玲「………行くよ」ダッ




纏わりつく不安を払いのけるように『食材』たちの方に走って行った









男性「なんかわけのわからないことを言ってるがどういうことだ?」




女性「知らないわよ、貴方じゃないの?」




男性「俺のわけないだろ、こんな悪趣味なの」




女性「じゃあ私だって言いたいの?」




男性「そうはいってないだろ」




タッタッタッタッ




喧嘩している二人に向かって玲が走っていく




玲「ハァハァハァハァ」




少し走っただけで玲の息は荒くなっていく




玲(なんで?なんでこんなにしんどいの?)




玲本人にもその理由はわからない




ゼェゼェゼェゼェ




息は無情にもどんどん荒くなっていく




玲(あとちょっと………まずは男の方から………体が重たい……でもやらなきゃ……)




玲「ママ」




玲はボソッとつぶやいた




何かにすがるかのように













女性「あら?誰か走ってくるわよ…………子供?」




二人が座っている机は対面式なので女性が先に気づく




男性からすれば背中側から玲は走ってきていた




男性「ん?子供?」クルッ




男性が振り向くと同時に玲は男性に思いきり飛びかかった




男性「な!?…うぶっ!!」




その勢いで男性は椅子ごと床に倒れこみ




玲はすかさずマウントポジションを取った




女性の方は手を口に抑えただ震えてみていることしかできなかった




玲がナイフを持っていることに気づいたからだ




男性「なんだ!?………この……ッ………あああぁあぁぁあ!!」




男性は力づくで玲をはがそうとする




男性も玲の持っているナイフに気づいたのか焦りが見え始めた




ズッ ズズッ




少しづつ抑えている腕が解けていく




訓練で驚異的な身体能力を手に入れた玲とはいえ、腕力……単純なパワーではまだまだ成人男性には叶わなかった




玲「………ッ」




鮮やかな手つきで手足の腱を切断していく




男性「イ…イギャァアアアァアァぁぁあぁあ!!!!」




喉が潰れるほどの悲鳴が上がる




それに呼応するかのように




いいぞーーー!!




もっとやれーーーー!!




喰種から声援が上がる




ビッグマダム「ど〜お?私の什造ちゃんは〜!!」




マダムもご機嫌のようだ




玲「…………」




玲は震える手を重ね、両手でナイフを逆さまに持ちながら、その刃先を人体の中心、心臓に向けていた




玲「ハーッハーッハーッハーッ」




そこには歯をむき出しにし、汗を滴らせながら苦悶の表情を浮かべる什造の姿があった




玲(なんだ?なんでこんなに気分が悪いんだ?……世界が回る…回る……気持ち悪い)




ビッグマダム「什造ちゃーん!やっちゃってーーー!!!」




そうだーーー!!、やれーー!!!




腹へったゾーーー!!!




様々な声援が玲送られるが玲の耳には何一つ入ってこなかった
















男性「ああぁぁあぁああ!!!!はぁあぁぁなあぁあぁぁあああせえぇええぇぇ!!!!!」




男はジタバタともがくが、怪我をした状態では玲を振りほどくことはできなかった




玲「………よし……」




ボソリと誰にも聞こえない声で呟いた




玲はできうる限り息を整え、男性を仕留めにかかった














玲「……ッ………!?」





玲(……なんで?)




玲(……もう一回……)




玲「………!?」




さっきから何度もナイフを振り下ろそうとしているのに




まるで誰かに抑えられているかのように動かない




玲(……なんで……なんで……なんでぇ………)




グッグッと力を入れてみても変わらない




しばらくの間それが続いた




すると




どうしたんだ?あのスクラッパーは




さっさとやっちまえよ




もー、何やってんのよ




さっきはあんなに盛り上がっていた観客も段々苛立ちを見せはじめた




ビッグマダム「…………」




こちらもイライラを隠せていないようだった












玲(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようなんでなんでなんでなんでなんでなんで)




ゾクッ












何を感じ取ったのか、パッとビッグマダムの方を見た












そこには












赤黒い赫子を剥き出しにし、怒りを露わにしたビッグマダムの姿があった




ビッグマダム「じゅーぞーちゃ〜〜〜ん………何してるの?……早くやっちまいなぁ!!!」




先ほどまでのご機嫌な顔はもう微塵も残ってはいなかった




!!




その時玲は気づいた




人間なんて生きようが死のうがどうでもいいと思っていた




実際今でもどうでもいいと思う




でも自分で殺すのはまた違う




ましてやなんの罪もない人たちだ




そんなの人間がすることじゃない




玲「……ママ……僕……」




弱音を吐こうとしたその時




男性「ああぁぁあぁぁあぁ!!!」




男性がタイミングを伺っていたのか急に暴れだした




玲「あっ」




玲は体制を保つため両手を今の状態のまま自分の前に付いた












そう












ナイフを立てたまま












男性の心臓部に

























一瞬、頭が真っ白になった












男性「ウグッ……ガポ」




男性の呻き声で少しづつ頭が覚めてくる




どこからか女性の悲鳴が聞こえる




男性は口から血を流し動かなくなってしまった




手に嫌な感覚が登ってくる




何だ?

この手の赤いのは何だ??

目の前の動かなくなった『物』はなに?




玲「う………」





うああああぁぁぁあぁあぁぁぁあああぁぁあ!!!!!











的とは違う




人間の生の暖かさを感じ、玲は取り乱した




玲「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい僕じゃないないないない僕じゃ僕じゃ僕じゃぁぁ」




赤い両手で頭を抱え必死で何か呟いている




そんな中、観客は












お、やっと仕留めたみたいだぞ!




焦らすなー今回のスクラッパーは




なんだやっと仕留めたのか、もうペコペコだよ




どうやら玲がわざと焦らしたと思っているようだ




ビッグマダム「じゅーぞーちゃ〜ん?もう一匹残ってるわよ?」




まだ怒りが収まっていないのか、ドスの利いた声で玲に声をかけた




意外にも返事が返ってきた
















りょーかいです〜〜〜
















ママ













???「さあ。行くですよ〜」




玲(?)は男の上から素早く女性の背後に回り込み




今度は
















両腕の関節部をズタズタに切り裂いた




女性「ギギイイィイィアアァァアァ!!!」




ズシャ うつ伏せに膝から崩れ落ちた




白目をむき、悲鳴をあげる女性




赤い血があちこちに飛び散る




ビッグマダム「いいわよ〜!行きなさい!什造ちゃん!そのままアァ!!」




どうやら機嫌も直ってきたようだ




什造はくるりとマダムの方へ向いた




什造「はーい、ママ」




のんきな返事を返し、また女性の方へ向き直った




女性「ああぁぁあぁあぁ!!!!暑い暑い暑い暑い暑いヨォォォ!!!」




地面に這いつくばって相変わらず騒いでいる




什造「うるさいですねぇ」




ため息まじりに呟くと




女性の片腕を持ち




足で体を抑え
















ブチブチブチ ギィアアァァアァあぁぁ!!




力一杯引っこ抜いた




女性「……あ……へぇ……ぎ」




ビクビクと体が麻痺している




ショックが大きすぎたようだ




什造は持っている片腕を観客席に放り投げた






おおおお!!やっと食事がきたぞ!!




美味しい!!!空腹だからかいつもよりおいしいわ!




おかわりを!!早くしろぉ!!




一気にボルテージが跳ね上がった




什造「あ……あはははぁぁぁぁはははははははは!!!!」




今日 新しく生まれたスクラッパーの笑い声が会場内に響き渡る




遡ること数分前




まだ




玲の目が覚める前





ーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーー





本番当日の朝




まだ誰も起きていない




什造以外は




什造(……玲ちゃん……大丈夫ですかね)




什造(玲ちゃんは優しい子ですから……今日の本番で失敗しなきゃいいですけど……)




什造は、優しい玲が人を殺すことを心配しているらしい




什造は、練習と本番、的と実物の違いをなんとなくわかっていた




什造(玲ちゃんはあんまりわかってなさそうでしたけど……)




什造は拷問(いい子タイム)をいつも受けていた分、人を傷つけることには何のためらいもない




什造(いざとなったら、僕が変わりましょうかね)




まるで玲の保護者のように見守ることを決めた時




玲「…んぅ………ん」




玲の目が覚めた




玲「…………寒い」




什造の心配が体に出たのか玲は汗だくだった








支度部屋




玲「…………什造君、」




玲「なんで手がブルブルしてるのかな?」




体が怯えているのか什造の心配の影響か、明らかにいつもと様子が違う




什造「………わかりません」




なんとなく思ったことは言えなかった




《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!》




アナウンスが聞こえてきた




もう後戻りはできない




什造「………行きますよ、…………ママが待ってます」




玲「……うん」




玲はゆっくりと門をくぐっていった




















ここからは知っての通り





什造(お、マウントとった)




上に乗り




男性「イギャアアァァアァアア!!」




腱を切った




玲「ハーッハーッハーッハーッ」




息が荒い




什造「おっとっと、段々こっちも不安定になってきましたね」




什造の足場が縦に横に揺れ始めた




玲の心に連動しているようだ




ビッグマダム「ーーー!〜〜〜〜!!!」




ママが何か言ってる




玲「ママ……僕」




玲がなにか言いかけた時




男性が急に暴れ




玲「あっ」




ナイフは深々と男性の胸に刺さった




ドロォ………何か垂れてきた 何もない




ドロドロドロ




自分の場所が溶けてき始めていた




什造(玲ちゃん!!目を覚まして!

落ち着いて!!)




玲「僕じゃなあぁぁあぁああいイィイイィィイイィ!!!」




荒れ狂っていた


















玲「なんで?どぉしてぇ??わざとじゃない僕じゃない僕は悪くないごめんなさいごめんなさい」




什造(玲ちゃん!僕と変わってください!僕がやりますから)




玲「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」




玲の中にいる什造の声さえも聞こえていないようだった




什造(どうしましょう……)




什造(………?)




その時什造は違和感に気づいた




これはイメージの話だ




僕らは主人格の部屋と待機の部屋を持っている




主人格の部屋に一人が入っている時は




もう一人は待機の部屋というわけだ





その二つの部屋が一つのドアで繋がっているものとしよう




ドアを開ければ隣の部屋へ行ける




いつもなら入れ替わる時は、玲ちゃんの方から開けてくれるのだが




今回はすでに開け放たれている感覚




隣の部屋へ出入り可能な




そんな気がしていた




什造「………もしかして……」












入れるんですかね?












什造は不思議に思いながら




ゆっくりと隣の部屋へと足を踏み入れた




什造「……入れる……」




!!!




そこには




玲が
























玲「うぅ……アアァアァイァああぁあ!!!ごめんなさいごべんなざいごめ……ああぁあぁぁ!!!」




拷問を受けていた




今の玲は現実での気持ちがそのまま反映されている




おそらく自分を責めた結果こうなってしまったのだろう




什造(玲ちゃん!!)




什造は素早く拷問器具を取り外した




この拷問器具は什造が生まれる前




玲に使われていたものだ




玲「じゅ……ぞ……くん……」




身体中血だらけで、すっかり弱り切っていた




什造「玲ちゃん!僕と変わってください!僕が出ます!」




玲「ごめん……なさ……い、僕が……や……るって、言ったのに………」




什造「大丈夫ですよ〜、ゆっくり休んでてください」




ニコリと笑いながら什造は、玲を担ぎ隣の部屋へと運んだ




じゅーぞーちゃ〜ん?もう一匹残ってるわよ?




ビッグマダムの声だ




什造「………行くですかね」




















りょーかいです〜〜〜
















ママ


















什造(………さて、どうしましょうかねぇ)




しばし考え




什造「まずは教えてもらった通りやりましょうか」




そう言うと什造は素早く女性の背後に回り




什造(まずは痛めつけて、動けなくする)




両肩をズタズタに切り裂いた




目の前で女性が金切り声を上げている
















ゾクゾクッ
















???なんでしょう




什造(次は切れかけた腕を観客席に………)




ブチブチブチ




繊維が切れる音がする




女性は動かなくなってしまった




什造「よい、しょ!」




力一杯観客席に腕を投げた




わらわらと喰種が集まってくる




もう一度、痙攣している女性を見た
















ゾクゾクゾクッ
















身体中が喜んでいるような感覚


















「こんなの知っちゃったら」
















これまでにない高揚感を感じた
















「戻れなくなっちゃいますよ?」

















いいぞー!




もっとちょうだいー!




みんなが期待してる











什造「あ……」

















あはははははあはははははははは!!!!!!
















気づけば笑っていた













それからのことはよく覚えていない




覚えているのは




手に残る感触と




なんとも言えない高揚感だけである




それは
















玲も同じであった




もちろん




その日から三日三晩嘔吐し、苦しんだ








日が経つにつれ、罪悪感は薄まり




残ったのは




什造と同じく、手に残る不思議な感覚




妙にソワソワする




もう一度
















「やりたいなぁ」




















家に帰った後




玲の失態の分のいい子タイムはいつも通り什造が受けた




その日のいい子タイムはいつもより凄まじく




什造はしばらく出てくることはなかった




痛みに鈍かった什造でも精神的にこたえるほど




ひどいものだったようだ




玲「什造君」




什造に呼びかける




什造「………」




返事はない




玲「あのね」




構わず話し続ける




玲「今度また『アレ』だってさ」




『アレ』とはスクラッパーの仕事である




玲「今度は、僕だけで行きます」




什造「………!」




玲「だから什造君は休んでてね」




玲は心配してるというより




その日を楽しみにしているようにニコリと笑った








ーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーー





本番当日




什造のいない




ひとりぼっちの




玲の初舞台だ




玲「………」




昨晩は眠れなかったようだ




しかし、緊張ではなかった




そう、昨夜の玲はまるで
















遠足前の子供のようだった















《さあ、スクラッパーの登場です!》




玲「よし、行くよ〜」




武者震いをしながらゲートをくぐっていった




《さあ、今回が二度目となるスクラッパーの登場です!》




玲「…………」




ドクンドクンドクンドクン




心音が体の中で響く




あんまり待たせすぎんなよー!




今回も楽しみにしてるぞー!




観客からは、前回焦らしすぎたことを除けば高評価だったようだ




《では初めてもらいましょう!》




玲「…………あはっ」




微かに笑いを漏らし歩みを進めた




今日の『食材』は中年男性と小さい女の子だ




玲「女の子からいくよ〜」




そう言って女の子の方へ走り出した












女の子「パパ?あの人だれ?」




親子だろうか




あどけない口調で男性に話しかける




中年男性「なんだろうな?

まあ、料理が運ばれてくるまで待ってようか」




女の子「うん、パパ!」




今回の客もあまりよく状況を理解できていないようだ




玲「早く………早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く…………」












玲「早く!!」




女の子「……え」





















玲は女の子の喉を一思いに突き刺した




手にあの時の感覚が蘇る




身体に電撃が走る感覚




ナイフが動脈をつきやぶり大量に鮮血が噴き出した




女の子「ぱ…………」




女の子が虚ろな目で父を見つめた




玲「まだだよぉ〜!!」




女の子が倒れこむ前に




素早く




丁寧に




身体中を切り裂いた








女の子だったものは




血だまりに綺麗な水音を響かせながら落ちていった




中年男性「な………は?」




玲「ん〜?壊れるの早いなぁ………もっと皆を楽しませなきゃ……」




爛々と目を光らせながら男性の方を向き




玲「貴方は………
















どれだけ楽しませれる?」




中年男性「き………貴様あぁあぁあああぁぁ!

!!!!」




中年男性「よくも……よくも私の娘をぉ!!!!!」




わかりやすく怒りながら玲のもとへ走っていく




玲「いいよぉ〜!!」




男性の足元をスライドし




すれ違いざまに男性の足の腱を切った




野太い唸り声が上がり、地面に倒れこんだ




玲はスタスタと近づき、もう一つの足の腱も切った




唸り声はでかくなり、それに比例して会場の歓声も上がる




玲「怒っちゃったの?」




馬乗りになりながら男性に尋ねる




玲「…………簡単には………壊れないでね?」




耳元で囁きながら背中にナイフを突き刺した




ジタバタと呻きながら抵抗するが叶わず




玲「もう一回」




今度は違うところを突き刺した




その流れで次々とさしていくと




抵抗も段々と弱々しくなっていった




玲「まだ………まだ壊れんじゃねぇよ………もっと………もっと楽しませなきゃ………」




一心不乱に突き刺していく




しばらくして




玲の願いもむなしく




男性は動かなくなってしまった




《さあ!とうとう終わってしまったようです!素晴らしいショーでしたね〜!》




タイミングを見計らったかのようにアナウンスが流れる




《処理された食材はこちらで洗浄、調理いたしますのでもうしばらくお待ちください!》




玲「………あ、終わりかぁ……」




玲「今回は一人でできたよ………什造君、喜ぶかな」




確かな達成感を得ながら




玲は会場を後にした






















自宅





帰ってくると什造はほとんど回復し、玲を迎えた




什造「お疲れ様でした〜」




相変わらず力が抜ける声だ




玲「うん!どうだった?」




什造「最初に比べたらバッチシですよ〜」




什造は右手でオッケーサインを作りながらそういった




什造「それで、これからは僕が行きましょうか??」




玲「ええ〜!僕が行っちゃダメ?」




やはり残念がっているようだ




什造「一応『什造』は僕なんですけど………」




玲「今日は僕に全部やらせたくせに〜」




什造「僕が篭ってたのは、玲ちゃんがこの前戸惑っちゃったせいじゃないですか!!」




玲「そんなことあったっけ?」




とぼける作戦でやり通すつもりのようだ




什造「………それに………」




急に真面目なムードになった




什造「玲ちゃんには
















人間でいて欲しいですから」




玲「???………よくわかんないけどしょうがない………二人でやろっか」




玲「什造君にはお世話になってるからね」




什造「ありがとうございます」




什造「僕はもう休みますね〜」




ニコッと笑い、什造は寝てしまった




玲「僕も寝よーっと」




玲は静かに瞼を閉じた












そこからは




什造「よいしょ」




什造と




玲「がんばれ、がんばれがんばれがんばれ!!」




玲の二人で




スクラッパーとしての務めを果たしていた
















あの日が来るまでは
















キャー!ハトよ!




早く通れよくそジジィ!!




ぎゃあぁああ!!!




おい押すな!前からも来てる!




この場所の情報を入手した喰種捜査官が攻め込んできたのだ




捜査官A「おい!子供のグールがいるぞ!」




ある一人の捜査官が什造を見ながら言った




捜査官B「いや待て、この子は人間だぞ」




年配の捜査官がAの声を聞いて駆けつけてきた




捜査官A「そんな馬鹿な……こんな喰種の巣窟で人間がいる訳……」




信じられないといった顔をしていた




捜査官B「一部の金持ち喰種は人間を飼っているらしい」




捜査官B「まだ小さい子供をさらってきて、拷問したり、性的欲求を満たしたり、見世物にしたりな」




捜査官B「それが飼い人ってヤツだ」




捜査官A「じゃあこの子がその……」




今度は同情の眼差しで什造を見ていた




捜査官B「だろうな……」




それから少し二人で話し合っていた




捜査官B「さあ、もう大丈夫だよ、私たちと行こうか」




そう言いながら笑顔で手を差し出した




















こうして保護された什造は




一時期CCGに引き取られ




何回も議論を重ねられた結果




アカデミー生として生きていくことになった











………続く?


後書き

一応続きあるんですがこれの感想欲しいですm(_ _)m


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください