2017-05-17 23:49:50 更新

概要

モンハンとラブライブのクロスオーバーです。設定は2ndGをベースにしています。ダブルクロス? 知らんな。


ドンドルマより東。テロス密林に、三人の人影があった。

各々武器を持ち、ある一方を睨んでいた。

「ギャァ!」

その先には、全身を青い鱗で覆われた、大きなトサカを持ったトカゲのようなモンスター。

「来る……!」

「ギャアッ!」

飛びかかってきた大トカゲを、一人が背丈ほどもある大きな剣の腹で受け止める。ほんの少しだけ後退したが、そこで踏みとどまる。

「……やっ!」

そこへ、側面からナイフのような小さな片手剣で斬りつける別の人影。

「ギィウ……!」

それを鬱陶しそうに、大トカゲは横を向く。

「そこだ!」

そのガラ空きの横っ腹に、大剣の強烈な一撃が叩き込まれる。

「ギャギャッ⁉︎」

大トカゲが怯んだ所で、

「できました! こっちです!」

二人の背後から、声が飛んだ。それを聞いた二人は、顔を見合わせて頷き、走り出す。

当然、背後から大トカゲは追ってくる。

「さあ、早く!」

二人が走る先では、大きな弓に矢をつがえるもう一人の姿が。

「よろしく!」

「っは!」

勢いよく放たれた矢は、大トカゲに吸い込まれていく。そして、その猛攻に速度を緩めた大トカゲの足元で、スパークが巻き起こった。

「ギィッ……⁉︎」

不自然な体勢で身体が止まり、小刻みに悶える大トカゲ。

「さあ、今です!」

弓を持った人物が、横を駆け抜けた二人に声をかける。

「やっ!」「えいっ!」

二人はその声とほぼ同時に、何かを投げつけた。

「ギャウ……」

それは大トカゲへ命中すると、薄い煙を撒き散らし深い眠りへと誘った。



「やったぁ! ドスランポス捕獲成功だよ!」

「やったね穂乃果ちゃん!」

「ことりちゃんのナイスサポートのおかげだよ〜」

大剣を持つ穂乃果と呼ばれた人物と、片手剣を持つことりと呼ばれた人物はハイタッチ。

「ちっともよくありません!」

そこへ、鋭い声が飛んだ。

「海未ちゃん……?」

海未と呼ばれた人物はポーチの整理をしながら、厳しい視線を向ける。

「ドスランポスにシビレ罠と捕獲用麻酔玉を使って……。コストが高すぎます」

「え〜でも、『その方が確実だ』って言ったの海未ちゃんじゃん!」

「そのはずだったんです。あなたが支給された物資以外を使い込まなければ、でしたが。穂乃果!」

ビシッと指さされた穂乃果は、一瞬気圧されるもすぐに反撃する。

「だって私は剣士だもん! 遠くから狙う海未ちゃんとは違うの!」

「それならことりを見習いなさい!」

「ことりちゃんは、片手剣だもん……。穂乃果より武器が軽いじゃん!」

「あなたが無鉄砲に突っ込むから、余計なダメージを負うんです! もっとモンスターの動きを見極めて、慎重に立ち回って下さい!」

「海未ちゃんも大剣やれば穂乃果の大変さが分かるよ!」

「やらずとも、穂乃果の動きに無駄が多い事は分かります!」

「あ、あの〜、二人共そのくらいで……」

モンスターの鳴き声がなくなった密林で、人間の言い合いが青空に吸い込まれていった。





穂乃果、ことり、海未の三人はギルドの馬車に揺られながら、ドンドルマへ到着した。

「今日もくたびれましたね」

「だね〜。美味しいご飯食べて、ゆっくりしたいなぁ」

「さっきのクエストでお金貯まったから、武器作ってくるね!」

「穂乃果……話聞いてましたか?」

早速導火線に火が付いた海未を、

「ま、まあまあ海未ちゃん。ことり達も、新しい装備作れそうだよ?」

ことりが即座に鎮火する。

「はぁ……そうですね。そうしますか」

穂乃果が動き出した時点で、そもそも止める事は不可能だと海未も知っている。

加工屋に向かった三人は、それぞれ武器の強化に必要な素材と、通貨のGを差し出す。

「えーっと、“鉄鉱石”六個と、“マカライト鉱石”一個、あとは“大地の結晶”五個……それと千四百G!」

穂乃果は持っていた《バスターソード改》を加工屋に預ける。

「私は、“鉄鉱石”三個に“マカライト鉱石”一個と、“大地の結晶”三個、あとは八四十Gだね」

ことりは、《ハンターカリンガ改》を手渡す。

「私は……まだ素材が足りませんね」

「何が足りないの?」

新しく《バスターブレイド》を受け取った穂乃果と、

「まだ会った事ないモンスター?」

《アサシンカリンガ》を受け取ったことりが顔を向ける。

「はい。“ドスギアノスの爪”という素材が必要なようです」

「ドスギアノス? 確か、寒い地方に住むドスランポスの仲間だよね?」

「ええ。仕方ありませんね……。明日、ドスギアノスを狩りに行きましょうか」

「うん! 早く海未ちゃんの武器も強くしたいもんね!」

「お願いします」

その日はそれで宿に戻り、各々床についた。



翌日、ドンドルマの中央集会所へ三人は集合。ドスギアノスを狩って欲しいという依頼書を手に取ると、クエストを受諾する。

準備を終えて出発しようとした所へ、

「ちょっといいかな?」

背後から声をかけられた。

「あ……ギルドの……」

そこにいたのは、何度か見かけた事のあるギルドの所属の男だった。

「何か私達に?」

「うむ、君達は、ドスギアノスを狩りに行くようだね?」

「ええ、そのつもりです」

「という事は、フラヒヤ山脈へ向かう」

「そう……ですね。あの、それが何か?」

男の意図が分からない海未は、受け答えしながら首を傾げる。

「君達は、ポッケ村という村を知っているかな?」

「確か……フラヒヤ山脈近辺にある、山岳地帯中腹にある村だったかと」

「うむ。実は、そこに赴いて、専属のハンターとなってもらいたいのだ」

「「「はい?」」」

三人揃って、首を傾げる。

「現在ポッケ村には、専属ハンターが二人いる。しかし、どちらも駆け出しで、村の安全を全て守るには不安だし負担も大きい。そこで、お三方にはポッケ村へと赴いて村を守って欲しいのだ」

「なるほど……。そういう事でしたら、分かりました」

少し思案顔の海未だったが、事情を把握し大きく頷いた。

「おお、本当か。お二人も、それでよろしいか?」

男は穂乃果とことりにも目を向けたが、

「もちろんです!」

「頑張りますっ」

肯定が返ってきた。

「では、私から手配しておこう。ポッケ村には、年老いてはいるが聡明な龍人の村長がいる。村に着いたら、その方を訪ねるといいだろう」

「はい、ありがとうございます」

「いやなに、礼を言うのはこちらだ。よろしく頼むよ」

そう頭を下げると、男は去って行った。

「ポッケ村だって」

「どんな所なんだろうね〜」

「それより先に、ドスギアノスの狩猟ですよ。今の内に、事前の情報を確認しておいて下さい」

海未は、二人に生態についての書類を渡す。

「「はーい」」





テロス密林よりさらに北。フラヒヤ山脈へ到着した三人は、BC(ベースキャンプ)の支給品が入ったボックスから、それぞれ必要な物資をポーチに詰める。

「いいですか、ドスギアノスの動きはドスランポスと殆ど同じ。ですが、ここは年中雪が降り積もる雪山です。充分に用心して下さい」

海未の指示に、穂乃果とことりは頷く。

「さあ、行きましょうか」

BCから出た三人は、段々になった岩を登って山の内部へと入る。

「ううっ……やっぱり寒いね……」

絶えず冷風が吹き付ける内部の洞窟は、壁は凍りつき頭上には巨大な氷柱が垂れ下がっていた。足元に積もった雪のおかげでスリップは免れているが、凍えるような冷気はどうしようもない。身体の体温を保つ為に、スタミナが減っていくのを感じた。

「その為のホットドリンクです」

三人は、赤い液体の詰まった瓶を取り出し飲み干す。

にが虫と調合する事で薬膳効果を持ったトウガラシの成分が、身体を内側から温める。

「ふう……あったまる〜」

「だね〜」

白い息を長々と吐き出す穂乃果とことり。

「のんびりしてる場合ですか。早く行きますよ」

言うが早いか、海未はすでに歩き始める。

「もう、海未ちゃんったらせっかちなんだから……」

「まあまあ、クエストにはギルドが定めた時間があるんだし、急ご?」



三人は山の内部を抜け、山頂付近へ出る。

チラチラと雪が降る中、三人は討伐対象を探す。

「……いました」

先行する海未が、二人を手で制す。

前方を見やると、人間より一回り大きい、白い鱗に覆われたトカゲのようなモンスターが闊歩していた。

「あれがドスギアノスかぁ……」

「その周りにいるのが、ギアノスだね」

ドスギアノスの周りには、やや小さいサイズの同じようなモンスターが跳び回っていた。

「基本的な立ち回りは、ドスランポスの時と同じです。寒い地方に適応した攻撃方法もあると思うので、それには注意して下さい」

「了解!」「うん!」

「さあ、行きますよ!」

海未の言葉を合図に、三人は飛び出す。

「ギュイ? ギュイ! ギュイ!」

すぐにドスギアノスに気付かれ、臨戦態勢を取られる。

「よーし……!」

穂乃果は正面から駆け寄ると、背中の強化された大剣を掴み真っ直ぐ振り下ろした。

間一髪のバックジャンプで躱されたが、

「まだまだ!」

そこから身体を捻ると、横薙ぎに斬り払う。今度は、命中し鱗を削る。

「ギュイィ!」

すかさず反撃に出るドスギアノス。鋭く伸びた爪を、振り下ろしてくる。

「穂乃果ちゃん!」

そこへ、ことりが飛び込んでバックラーで防ぐ。

「ことりちゃんナイス!」

反動で仰け反ることりの背中を、穂乃果は支える。

なおも追撃を試みるドスギアノスへ、

「はぁっ!」

海未の弓が射抜く。

堪らず怯んだドスギアノスは、

「ギュイイッ! ギュイイッ! ギュイイッ!」

空に向かって吠える。

「ギアノスを呼んでいるようですね……。不利な状況になる前に、叩きましょう!」

海未は矢をつがえると、引き絞って放つ。ことりも細かい連撃を繰り出し、ドスギアノスを撹乱。その隙を突いて、穂乃果が重い一撃を叩き込んだ。

「いいペースです。これなら……」

海未が呟いた直後、

「ギュイ!」

ドスギアノスが高く跳び上がると、海未目掛けて発達した後ろ脚をぶつけて来た。

「くっ……!」

ギリギリで回避した海未は、受け身を取って転がる。

「すぐに距離を……っつ⁉︎」

立ち上がって駆け出そうとした海未を、背後から小さな衝撃が襲った。ダメージこそ少なかったが、不意を突かれて膝をついてしまう。

慌てて顔を上げると、

「…………」

黄色い爬虫類の眼光と目が合った。

ドスギアノスは口を開くと、何か白い塊を吐き出した。

「海未ちゃん!」

それは、割り込んできた穂乃果へと直撃した。

「穂乃果⁉︎」

「え……う、動けないよ⁉︎」

白い塊が直撃した穂乃果を、一瞬にして白い氷が覆った。

歩けばするものの、膝下が辛うじて動く程度で、走る事すらできない。

「落ち着いて下さい! すぐに除去しますから!」

慌てふためく穂乃果に海未は矢を一本握ると、思い切り横に薙いだ。

「うひゃっ!」

その一撃で、氷は砕けて穂乃果は自由を取り戻した。

「ありがと海未ちゃん」

「対処しておくようにと言ったじゃないですか!」

海未の叱咤が飛んだ時、

「二人共危ないっ!」

「ギュイィッ!」

ドスギアノスの強烈な蹴りが襲った。

「うわっ!」「ぐっ……!」

直撃を受けた二人は、吹き飛ばされて雪原を転がった。なおも追撃を仕掛けようとするドスギアノスへ、

「させないもん……!」

ことりが駆け寄り、《アサシンカリンガ》を振りかぶった。

飛び上がっての斬り降ろし、そこから逆袈裟に斬り上げ、もう一度斬り降ろし左から右へ薙ぐ。大きく踏み込んで刃を振り下ろすと、最後は自身を回転させて斬り払った。

「ギュイッ……!」

怒涛の連撃に怯んだのか、ドスギアノスは背を向けると岩肌の影に姿を消した。

「エリアを移動したみたい……」

ことりは安堵すると、

「穂乃果ちゃん! 海未ちゃん!」

すぐに二人に駆け寄った。

「大丈夫?」

「うん、穂乃果は何とか。それよりも海未ちゃんが……」

「私も問題ありません。少し攻撃を受けただけです」

「でも海未ちゃん、ガンナー装備は……」

穂乃果やことりのような剣士装備とは違い、弓を扱う海未のガンナー装備は軽量化を重視しその分装甲が薄くなっている。同じ素材を使っても、防御力は半分ほどにしかならない。

「まだ、ダウンするほどのダメージではありませんよ。安心して下さい」

海未は真っ直ぐ二人を見つめると、気丈に立ち上がった。

「海未ちゃん……無理はしないでね?」

「それはむしろ、私から穂乃果に言いたいですよ」

「酷いよ海未ちゃ〜ん!」

海未はギルドから支給される応急薬を嚥下すると、自身の回復効果を高める。

「ふう……さあ、行きましょう。ホットドリンクの効き目もそろそろ切れるでしょうから、飲み直しておきましょうか」



隣のエリアでドスギアノスを発見した三人は、総攻撃を仕掛ける。

ことりが撹乱し、ドスギアノスが動くタイミングに合わせて海未の矢が飛来し、生まれた隙に穂乃果が一撃を叩き込む。

そんな応酬が五分ほど続いた時、

「っせぇい!」

ことりと海未の攻撃に横を向いたドスギアノス目掛けて、振りかぶって限界まで力を溜め込んだ穂乃果の一振りが襲った。

「ギュイッ⁉︎ ……ギュァ…………」

その一撃に耐えられなかったのか、ドスギアノスは力なく弾き飛ばされると痙攣して動かなくなった。

「やった……。倒したよ!」

「うんっ、やったね!」

「お疲れ様です」

三人は駆け寄ると、右手を掲げてハイタッチ。笑顔を見合わせた。

それから討伐したドスギアノスから素材を剥ぎ取り、成果を確認する。

「ふむ、どうやら無事素材は集まったようですね。これで武器を強化できます」

「ホント? やったね!」

「じゃあ、帰ろっか。ドンドルマ……じゃなくて、ポッケ村に!」

「はい!」「うん!」









三人がいた狩場から、少し離れた場所にて。

「待ってよ〜……」

「早く早く〜!」

「そんな急がなくても、ポポは逃げないよぉ」

「でも麓にいなかったから、早くしないといなくなっちゃうかもよ?」

「それは……どうしてだろう? こんな山頂近くまで見つからないなんて……」

「まあまあ、そんな事考えても分からないし、探そ探そ?」

「うん……」

「あ、噂をすれば、あそこにポポが!」

「あ、ホントだ。良かったぁ……って、これ……やられてる?」

「まさか、他のハンターさんに討伐されちゃったの⁉︎」

「うーん……狩場は被らないようにギルドが調整してるはずだし、わざわざ草食モンスターを倒して放置するのも変だし……剥ぎ取りもされてないもん」

「じゃあ、誰が?」

「それは分からないけど……」

「ギアノスとかかなぁ?」

「ギアノスも全然見なかったから、多分違うと思……」

「どうしたの?」

「……なんで、ギアノスが一匹もいないの? 普段なら、群がってもおかしくないのに……」

「…………っ⁉︎ う、後ろ……」

「後ろ? 何かいたの?」



「ゴオオオォォォォォォォォォォォッ!」

「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」


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