2017-09-25 18:58:01 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い


前書き

43回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

ーそれでは、本編をはじめましょうー


↑前 「提督と海防艦」

↑後 「提督と改2(文





提督と白露



ー執務室ー


ある日の昼下がり


ソファの上では睦月と提督、そして如月が寛いでいた

昼食後、お腹もいっぱいになり何処か眠くなる そんな時間帯


睡魔に唆され、うつらうつらと微速前進を始める睦月

程なくして、如月の膝を枕に寝息を立て始めていた


何を言うでもなく睦月の髪を撫で続けている如月

起こさないように、緩く波打つ髪の波間で指を遊ばせる


至福の時だった。手元には睦月が、傍らには提督が

寝ぼけたふりをして提督の肩に体を預ける

それだけ、ただそれだけ、寄りかかれる場所がある、一緒にいたい人がいる

睦月ちゃんも、提督も、妹たちに鎮守府の娘達…それだけの事が何より大切で


如月「ねぇ、提督…」


口を開いていた

伝えたいこと、言いたかったこと、そんな事考えもせずに ただ名前を呼んでいた

好きだとか、愛だとか、例えるなら色々あるけれど

そのどれもが正解で、そのどれもが物足りない


だからきっと、名前を呼んでいた


提督「どうしたの、如月?」


それはきっと、名前を呼んでほしかったから


だってほら、こんなにも…


ーたのもぉぉぉっ!!!ー


如月「…っ」


人に、見せられない顔をしただろう、多分そんな気がする


勢い良く開いた扉

金剛さんがやりそうな所だったが、その実珍しい客人だった


睦月「にゃ…」

如月「寝てていいわよ」

睦月「うん…」


物音に危うく起きそうになった睦月を寝かしつける

その間にも ずかずかと中へ踏み込んできた不埒者は、提督の目の前に立ちはだかると


それは、勢い良く頭を下げた


白露「提督さんっ、いっっしょぅぅぅうのお願いっ!」

提督「なんだ、行き成り…」


白露型の一番艦、いわゆるネームシップ

一番艦どうし思う所があるのか、演習の度ちょくちょく顔を見せては

睦月と張り合ってたような良くも悪くもそんな印象

知らない仲でも無いけれど、いきなり頭を下げられる覚えは無かった


白露「一晩でも良いから泊めてっ、お願いっ」


低い腰のまま、今度は両手を合わせて拝まれる


提督「お願いたって…なんでまた?」

白露「それは…その…なんというか、今は戻りづらいといいますか…あはは…」


言葉を濁す。明後日の方を見つめている

どうみたって面倒くさそうな事情に巻き込まれそうだった


如月「はぁ…喧嘩でもしたの?」


もどらない至福の時を嘆きつつ、続きを促した

どうにも、話を聞かないことには先に進みそうになかった


白露「ゆ、夕立ちゃんと…少し…」

提督「少し、ねぇ…」


「大方、なんかの拍子に演習(ケンカ)を吹っかけたら、返り討ちにあった挙句に

悔しまみれに、言う必要のないことまで言いまくって逃げ出した上

冷静になってみると、後悔と罪悪感で戻るに戻れないっと」


提督「少し、ねぇ…」


そして2度、同じ言葉を持って締めくくる


白露「う、ぐ…」


正解のようだ


提督「少し、と言うには随分と圧縮したじゃないか」

白露「で、でもでもっ。アレは夕立ちゃんだってっ!」

提督「だろうけど…」


売り言葉に買い言葉だったんだろう

夕立は夕立で口悪い所あるし、想像できない光景ではなかった


如月「だから私は悪くないって?」


意地の悪い言い方だ。分かる、自覚はある、半分くらいわざと言っている

突然に邪魔をされたのだ、腹いせに小さな仕返しをしたって良いだろう


白露「そうは言わないけど…」

如月「けど、白露の味方はして欲しい?」

白露「むぅぅぅ…」


言うこと言うこと いちいち図星をついてくる

でも確かにその通りで、何も言い返せないだけに

やり場のない感情だけが どんどんと溜まり続けていく


白露「なんか、今日の如月ちゃんは ちょっと意地悪っぽい…」

如月「そう?如月はいつもこうよ?」


苦し紛れの視線を澄まし顔で受け流す如月


提督「ほっとけ、拗ねてるだけだ」

如月「拗ねてないもん…」

白露「もんって…いや、いいけどさ…」


それっきり、へそを曲げるようにそっぽを向く如月だった


白露「ねぇ、提督さん。お願いだよぅ、なんでもするからぁ…」


割りと、切羽が詰まっていた

夕立ちゃんとの演習直後にエスケープしちゃったせいで、燃料も弾薬もあったもんじゃない

精神的にも今は戻りたくないし、物理的にもUターンする余裕が無いのが現状だった


提督「なんでも、ねぇ…」

白露「うっ…」


ねめつけるような視線を向けてみると、体を抱いて一歩後ずさる白露

何を想像したのやら、洗いざらい喋らせるのも楽しそうだけど


睦月「良いんじゃないかにゃ?」


如月の膝の上で眠い目をこすっている睦月


睦月「んんぅぅっ…ふはぁ…」


背筋を伸ばして深呼吸

それから、ぱっと笑顔を咲かせると


睦月「睦月が面倒見るからさっ!」


「まかしてっ」自信満々に胸を張ってみせた


白露「睦月…」


じぃんと胸の奥に感動の火が灯る

持つべきものは友達か、たとえそれがケンカ友達、好敵手、ライバル?と、表現を変えようとも

いざってときは助け合える、そんな関係がありがたい


提督「睦月…拾ってきたネコじゃないのよ?」


家出娘を連れ帰って保護した瞬間 犯罪になる。今はそういう時代なのだ


睦月「…違うの?」


不思議そうに首を傾げる睦月


白露「違うよっ!?」


そんなあっさりネコ扱い。友達、そう思ってたのは自分だけ?

とりあえず、その不思議そうな顔を止めて欲しい、白露はネコではない、決して


睦月「にゃしぃ…」


途端、珍しく小難しい顔をしたかとおもえば


睦月「じゃっ、いいやっ」


すぐに笑顔を取り戻すと、朗らかにそう言い切った


白露「まってっ!?」


興味をなくし、如月の膝に戻ろうとした睦月を引き止める

そう、反射的に動いたまでは良かったが…次が問題だった


まって?なにを?どう言えば正解なのか…


でもだってそうでしょう?何でもするって言ったし、ネコ扱いされるくらい我慢するべきじゃないの?

いやだって違うでしょう?何でもするとは言ったけど、ネコ扱いされる必要性はあるの?


でも、お家に帰るにしたって補給が

いや、お家に帰っても夕立が


ああでもないこうでもない

理屈と建前、本音と虚勢(プライド)


そして、天秤は傾いた


白露「にゃ、にゃーん」


顔を真っ赤にした白露が、手を丸めて泣いている

顔を真っ赤にした如月が、向けた背中を震わせている


白露「もう良いでしょうっ!これで満足っ!?」

睦月「睦月は良いけど提督がにゃぁ?」


ちらり、提督に視線を送る睦月


白露「あんた鬼かっ!」

睦月「否っ、吾輩は睦月であるぞっ」

白露「知ってるよっ」

提督「しかも可愛い」

白露「でしょうけどっ!」


そんなもん見れば分かるし、今はどうだって良い

割りと切実なのだ、あんまりからかわれてる余裕もない


白露「じゃなくてっ、もういい加減にっ」


切れそうになる堪忍袋の緒

それを引き止めた「いいよ」その声に、白露の目が見開かれた


白露「へ?いい、の?」

提督「やめとく?」


ぶんぶんと勢い良く首を横に振る白露


提督「睦月、後お願いね」

睦月「はーいっ」


元気よく声と手を挙げると、ぴょんっと白露の前に立つ睦月


睦月「ほら、いくよシロちゃん」

白露「ちょっ、ちょっとまっ、シロって何っ?」

睦月「何って?お名前だよ?」

白露「なんかネコっぽいんですけど?」

睦月「ネコであるからな」

白露「うぐっ…」


そりゃそうだった

睦月に逆らえない、弱みを握らている


睦月「ほら、いこいこ」


睦月に引きずられ、部屋の後にする白露…でもその前に


白露「ありがとっ、提督さんっ」


最後に、扉の端から元気の良い笑顔を覗かせていた




提督「まだ拗ねてるの?」


扉も閉まり、静かになった執務室

残ったのは そっぽ向いたままの如月と、背もたれにされている提督


如月「べつに…。それより良かったの?」

提督「ダメだったの?」

如月「そうは言わないけども…」

提督「じゃ、良いんじゃない…」

如月「ふーん…。お優しいことで…」


珍しい。そりゃ、悪いとは言わないけど

こんな面倒くさそうなことを、それも よその娘なのにと…ちょっとモヤモヤしていた


正直、面白くないんだろう…


提督「やっぱ拗ねてんじゃん…」

如月「悪い?」


隠す気もなくなっていた。ええ、拗ねてますとも

それで提督(あなた)が少しくらい困った顔をしてくれれば如月は満足しますとも


提督「いや、良いんじゃない?」


するわけが無かった。むしろ楽しそうだ

いつもそうだ、欲しいときにはくれないくせに、いらない時にはもってくる

それで、人の困った顔見て楽しんで…。たまにはこっちの期待に答えてくれても良いものを


ほんとうに…


「ばーか…」



ー大浴場ー



白露「あ、あの…睦月?」

睦月「はーい。流すよー」


こっちの返事なんて待ちもせず、頭からお湯がかけられた

なんて雑。流れだした石鹸が、ちょいちょい目に入って泣きそうだった


白露「ぷはっ。頭くらい自分で洗えるからっ」

睦月「そう言って、シロちゃんはすぐ逃げようとするんだもん」

白露「逃げないよっ。ネコじゃないんだからっ」


むしろ好きなくらいだし、お風呂が嫌いな女の子なんて そうそういないだろう

まして艦娘だ、入渠もセットで生命線でもある

ケンカして飛び出した直後なら、頭下げたって入りたいほど


睦月「え?」

白露「あ」


何でもするなんて言わなきゃよかった

いやさいっそ、スカートの一枚でも捲って手打ちにしてくれた方が、幾分か気は楽だったように思う


キョトンとしている睦月。なにか不思議そうな顔をしている

何もは言わないが「ネコじゃないなら何なの?」と、訴えかけてくる視線

白露はネコではない、ネコではないが…


白露「にゃーん」


逆らえなかった。否やと答えようものなら、首根っこ掴まれてお外にポイだろう


睦月「よいぞっ♪」


ならば良し、満面と微笑む睦月


良い、まあ良いさ。こうして大人しくしていれば悪いようには…

いや、この状況より悪化するなんて事あって欲しくもないけれど




白露「睦月さぁ…あたしをネコにしてどうしたいわけ?」


肩までお湯に浸かりながら、ぼんやりと思い浮かんだ疑問

問いかけてみれど「にゃしぃぃぃ」と間延びした声が返ってくるばかり


白露「良いけどさぁ…」

睦月「良いんだ?」

白露「良くないっ」

睦月「にゃはははは」


笑って誤魔化された。多分に、理由なんて無いんだろう

強いていっても面白そうだったから、きっとそれくらいなもんだろうさ


長月「明日には忘れてるだろう、どうせ」

菊月「飽きたら面白いように止めるからな、司令官は」


困ったものだと息を吐きつつも慣れた様子の2人


白露「ホントかなぁ…」


ホントだったらいいなぁ

今日一日と言っても陽も落ちた、ご飯を食べて寝るだけならば我慢もできる


菊月「まぁ、でも…無理だろうな」


一瞬だけ取り戻した希望は、あっけなく菊月に取り上げられた


白露「なんでさ…。さっきは飽きたら止めるって…」

菊月「飽きたらな…」


そう、飽きたらだ

少なくとも、打てば響く太鼓のうちは面白がっていることだろうさ


白露「ぐぬぬぬ…」


それは、その通リかもしれないが

しかし、スルーしろと言われても弱みを握られている以上は どうにもならんのではと


長月「それで、ネコになってまで家出した理由はなんだ?」

白露「それは…」


愚痴みたいなものだった

黙っていても良かったけれど、誰かに言わずにはいられない

如月の言うとおり、それで白露は悪くないって言って欲しいんだろう

そこまでハッキリ言わなくても、誰かしらに何かしらの期待をしているのはそうだった


長月「姉妹喧嘩か…」


いや、喧嘩というほどのことなのかどうかも

意地の張り合いがそうだというなら そうなんだろうが


白露「あなた達は いつも仲良さそうだよね…」


そりゃ、あたし達だって

一緒にお風呂入ったり、そのまま同じお布団で寝ちゃったり

普通どころか、それ以上に仲がいいんだと自慢もしたいけど

ケンカして、飛び出した手前ちょっと自信が無くなっていた


長月「それでも、ケンカくらいはするさ…」


自分はともかく、卯月と瑞鳳を数えるのなら、ケンカしてない日は無いってくらい


白露「仲直り…どうしてる?」

長月「どうも?」

白露「どうもって…」


どうでも良さそう、とまでは言わないでも

あんまりとあっさりとした答えに、不満を乗せて聞き返してしまっていた


長月「だいたいがいつもの事だからな…」


呆れられるならまだ良いが、気を回されるのもくすぐったいし

何より からかわれる、これが問題だ。弱みを見せたら最後、延々と突かれるからな本当に


長月「疲れた頃には終わってるさ」

白露「そりゃ…まぁ、そうなる、か…」


言われてみればそうだった

今までだって、小さい喧嘩ならいくらでもしてきたし

だからって、改まって ごめんなさいしたことなんて…

明日になれば水に流れてるし、自分のおやつを差し出す程度で済むのが大体だ


長月「とりあえず、今日くらい休んでいけ。明日の事は明日考えよう」

白露「うん…ありがとう…」


しょうが無さそうに。それでも、その笑顔に救われた気がした

頭に乗せられた手に許された気さえもする。今日始めて、ここに逃げてきて良かったと思えた瞬間だった


睦月「惚れたか?」


白露の肩に顎を乗せ、こそりと呟く睦月


白露「惚れてないっ」

菊月「やらんぞ?」


わざとらしく長月との間に入り壁を作る菊月


白露「足りてるからっ」

長月「これだ…」


ケンカしてる暇なんかないんだよなぁ…



ー食堂ー



瑞鳳「ほい、卵焼き」

白露「いっただきまーすっ」


黄金色の卵焼き

香ばしい香りと、お箸を通して伝わってくる柔らかさ

口に運ぶまでに膨れる期待と、それを横から掠め取られる絶望


白露「何すんのさっ!」


取り返す暇もなく、卵焼きは桜色のぷっぷくぷーの口の中へと放り込まれていた


卯月「この うーちゃんの最も好きなことの1つはっ」


ごっくんして きらりと瞳を輝かせた瞬間には、「いったぁぁぁぁぃっ」の悲鳴に変わっていた


卯月「もうっ、何するのっ!」

瑞鳳「アンタのはこっち」


卯月に落とした拳を広げて、乱暴に撫でくり回しながら卵焼きを追加する瑞鳳


瑞鳳「だいたい何?好きなことって?」


聞かなきゃ良いのに、それでも聞いてしまっていた

だいたいロクでもない答えだと予想は付くけど、それならそれでやる事があるんですよ、お姉ちゃんには


卯月「人の期待を横から掠め取ることだ、ぴょん」


意地の悪い事この上なかった


瑞鳳「ぼっしゅー」


躊躇なくお皿を下げると、厨房に下がっていく瑞鳳


卯月「あぁっ、まってまってぇ。ごめんなさいって、うーちゃんが悪かったからぁ」


その腰にぶら下がる卯月もまた、一緒になって引きづられていった


白露「仲、良いなぁ…」


ケンカしたばかりの自分にとっては少々眩しい


睦月「睦月がいるよっ」


差し出されたのは卵焼き

小さなお箸に ちょこんと挟まれ、ゆったりと上がる湯気はとても美味しそうに見える


睦月「あーん」


ゆっくりと、しかしまっすぐにやってくる

餌付けてもされてるのかとおもったけれど、好意の塊のような笑顔にそんな考えも溶かされていく


白露「ぁ…」


小さく口を開ける

恥ずかしい…残った羞恥心に呼び戻される理性


何やってんだろう?


ネコ扱いされるのは諦めたとして、何もここまで付き合うこともないんじゃなかろうか?


考えている間にも口の隙間に差し込まれる卵焼き

お腹が鳴った。美味しい、間違いなくそう思う

鼻から抜ける香ばしさも、唇に掛かる食感も、耐えきれずに伸びた舌先からも

早く食べろと、噛み締めろと訴えてくる


ま、いっか…


何もここまで付き合うことも無いにしろ、ここまで来たら もうどっちでも良くはある


ていうかお腹すいた


白露「あむ」


食欲、それは全てに優先された


弥生「仲いいんだ?」


ごっくんして気づいたその視線は、いまいち何を考えているかわからない

けれど、改めて指摘されれば、それはそれとして気恥ずかしい


白露「別に、そう言うんじゃ…」


ただただ睦月に付き合ってるだけだし、お腹も空いてたんだからしょうがないっぽい


睦月「弥生ちゃんも、あーん」


次のお箸は向きを変え、弥生の口元へと卵焼きを運んでいく


弥生「あーん」


ごく自然に口を開け、当たり前のように口を閉じた

それを嬉しそうに眺めている睦月、妹を見守る姉の顔


白露「仲いいんだ?」

弥生「?」


口をついて出た言葉。軽い意趣返しのつもりだったけど

通じてないのか、変わらない顔のまま首を傾げる弥生


弥生「普通だと思うけど?」


当たり前のことを当たり前のように答える弥生

「ね?」と同意を求めるまでもなく睦月もまた大げさに頷いていた


弥生「…寂しいの?」


しばし、考え込むように明後日の方を向く弥生。その口から出た言葉は割りと図星だった


白露「ちがっ…」


胸が跳ねる。否定しようとした口も中途半端に止まってしまう

違う、何て事もない、そう言えば一人になるなんて着任したての少しの間だったっけ

姉妹が増えて、仲間が増えた頃には、随分と賑やかになっていた


白露「わなくもないかも…」

弥生「あら素直」


お腹がいっぱいなったのもあるんだろう

落ち着いてみれば、なんであんなこといったんだろうと、罪悪感が鎌首もたげてきていた


「まったく…。アンタはなんでいっつもそう…」

「だって、ずいほーがー」

「いちいち私のせいにしないの」

「ずいほーだってすぐうーちゃんのせいにするでしょっ」

「だいたいそうでしょうがっ」


気が済んだのか奥から戻ってくる2人

手には卵焼きの盛られた お皿に、腰には卯月をぶら下げて


弥生「卯月…ぱーす」

白露「あっ、ちょっとっ!?」


それは、無表情なままに、何でもない風を装って、さも自然な動作で持って

白露のお皿に残っていた卵焼き、その最後の一切れを卯月の口に放り込んでいた


卯月「ぴょんっ」

弥生「さすが…」

瑞鳳「ぁぁ…」


ちいさく拍手を送る弥生、額を抑える瑞鳳

放物線を描いた卵焼きは見事、 卯月が咥え込んでいた


白露「かえしてよっ」

卯月「残念、もう食べちゃったぴょん」

白露「だったらアンタのからっ」

卯月「何するのっ!これは うーちゃんのっ」

白露「さんざん人の掠め取っておいてっ」

卯月「そんな記憶はございませんっ」

白露「嘘をつくなぁぁ!!」


取っ組み合いから追いかけっこへ、とても食事中のそれじゃなくなっている


弥生「…」


走り回る2人を横目に、何食わぬ顔で食事を再開する弥生


睦月「弥生ちゃん、悪い顔…」


お姉ちゃんは知っている。弥生ちゃんは、好きなものは目で追う方なのだと

そしてそして、騒ぎを起こして、それを眺めるのが好きなのも


弥生「そんなの。弥生はいつもこんな顔」


そうは言いつつも、その微笑みに気付けるのは身内ぐらいなものだった


瑞鳳「ぁぁぁぁ…」


頭が痛い。小悪魔めいてほくそ笑んでいる弥生もそうだし

バカがバカみたいに馬鹿騒ぎしている状況もそうだった

止めろ長女、とか思うけど。その長女も面白がって観戦しているはで

結局、自分でやるしか無かった


瑞鳳「もうっ、食事中に騒がないっ」


2人の首根っこを捕まえ持ち上げる


卯月「だって白露がっ」

白露「卯月が悪いんじゃんっ」


地面につかない足をばたつかせながら、今なおケンカを止めずにいる


瑞鳳「や・か・ま・し・いっ」


「いったぁぁぁぁいっ!?」


ぶら下がった2人が、振り子のオモチャのごとくぶつかっていた



ー球磨ちゃん達のお部屋ー



木曾「白露ならいないぞ?」

睦月「ふむ、おらぬか…」


戸口で小首を傾げる睦月

おかしいことは おかしいが、おらぬのならばしょうが無いと そのまま部屋を後にした


木曾「…」


その背中を見送る木曾

廊下の角を曲がり、足音でさえ聞こえなくなると軽く息を吐いて首を引っ込めた


木曾「いったぞ…」


自分でも何をしてるのか、とは思うけど

それ以前に、何をされたらこうなるのかという疑問のほうが強い


白露「ほ…」


やっと、やっと人心地つけた

緊張から開放され、畳の上に転がる白露


木曾「かくれんぼか?鬼ごっこか?」

白露「どっちも、かな?」




食事の後


睦月「それじゃ、お部屋行こっか」

白露「え、ちょっと」


引かれた手が伸び切った所で、慌ててブレーキを掛ける


睦月「どったの?」


不思議そうに首を傾げる睦月


別に部屋に行くのがイヤという訳じゃなかった。怖いのはその後


白露「部屋で何するのさ…」

睦月「いやなの?」

白露「イヤとかじゃなくて…」


答えないか…。この言及を避けるような迂遠な言い回しが更に怖い


「じゃあいいよね」って部屋に引きずられていったら

「ここまで来ておいてって」何をされたものか

いやさ、睦月ちゃんに限ってそこまで考えてるとは思わないけど…

気をつけろ、あの卯月の姉だぞ、何より あの提督の艦娘だぞ

本人にその気はなくても、そんな気にはなるってものだ


睦月「じゃあ良いよね?」


ほら来たっ、やっぱりこうなる

そうやって有耶無耶のままに なしを崩す気なんだわ、恐ろしい娘っ


白露「じゃなくてっ、お部屋で何すんのさっ」

睦月「何って…」


どこか遠くに思いを馳せて、1つ2つの間を置いた後


睦月「ぱじゃまぱーてぃ?」


あるいは女子会か?と、道端に転がっていた単語を そのまま机の上に拾い上げてきた


白露「それ、言いたかっただけだよね…」

睦月「おしゃべりしたいのはホントだよ?」

白露「まぁ、それくらいなら…」


それならここでも良いじゃないとは思うけど

女の子同士のお話だ、雰囲気が大事というのも分からなくもない


睦月「それから、一緒に寝ようねっ」


緩みかかったブレーキを再び踏み直した

その言葉にはそれだけの重みがあった


白露「いや、1人で寝れるから」


床、とは言わないけど

せめて畳の隅でも貸してくれれば白露的には満足なのだ


睦月「いやなの?」

白露「それはもういい」

睦月「さよか」


自覚ありか。バレた悪戯を誤魔化すように笑ってらっしゃる


白露「部屋の隅でも貸してくれれば良いからさ」

睦月「じゃあ、睦月がそっちいく」

白露「だーかーらーっ」


まるで話を聞いてくれない


睦月「でも一人じゃ寂しいよ?」

白露「寂しくないしっ」

睦月「如月ちゃんと一緒が良い?」


妹をちょんっと引っ張り出すと

「ご指名、かしら?」と照れくさそうに微笑んだ


白露「それだったら睦月ちゃんのがまだっ」

睦月「良いぞっ」

白露「良くないっ」


ほんと会話が成立しない。いっそ英会話のほうが楽なくらいだ


睦月「あーもうっ、わがままかっ!」

白露「どっちがよっ」




木曾「それでかくれんぼ、か?」

白露「そ。捕まったら睦月ちゃんと一緒に寝ないといけないの」

木曾「そんな嫌がることもねーだろ」

白露「だってさ…」


イヤっていうか、恥ずかしい…

姉妹となら そんな事もあろうかと

けど、いくら友達だからって、同じ布団で寝るってのは


白露「ネコっ可愛がりされそうで…なんか怖い」


何よりこれだ。これが怖い

執務室を出てからこの方、お風呂から食事まで べったりだったのだ

布団に引きずり込まれたら、何をされたものか…子守唄か、抱きまくらで済めばまだ良いけど


木曾「ネコなぁ…」


視線を部屋の隅へ、我関せずと丸くなっている姉に向ける

別に意味があったわけでもなく、ただ何となくネコって言葉に反応しただけ


白露「多摩さーん。助けてよ~」


そこへ、フェードインしてくる白露


多摩「戯れるな。うっとうしい」


擦り寄ってくる白露を適当にあしらって

さらに部屋の隅へと逃げていく多摩


白露「あははは。あたし、多摩さんとだったら一緒に寝れる気がする」


睦月に絡まれすぎたせいか、ぞんざいに扱われるのが楽に思える

それに何より、絶対何もないって確信が安心出来た


「しーらーつーゆーちゃーんっ」


階下から聞こえてくる声

同時に、多摩さんに口を抑えられた


多摩「静かに…」

白露「ん…ん…」


強い視線に竦められ、反射的に頷いていた

やがて、声の余韻もなくなった頃。ようやく口が開放されたのだった


白露「なんだった…の?」


騒ぎすぎたのだろうか?

そんな風にも思ったけれど、今のどちらかと言うと睦月ちゃんの声に反応してた気がする


多摩「曰く。探信儀のちょっとした応用らしい、にゃ?」


動物的に言えば匂いで、SFチックに言えば固有振動数

僅かに残った艦船的な部分で言うなら、それこそ探信儀(アクティブソナー)の応用

あの声になんか引っかかるものがあるらしい


多摩「覚えられたにゃ…」


まだ完璧じゃないようだけど。時間の問題のようにも思える


白露「なにそれ、怖いんだけど…」


そこで気づく

隠れんぼ、と提案したのは誰だったろうか

その時は隠れた場所で一夜を過ごせばいいかと、安易に頷いてしまったけれど


ああ、そうだ、それはそうだ

今思えば、勝てることが前提で提案してたのか…


球磨「安易に頷いたお前が悪いクマ」


風呂上がりなんだろう

濡れた髪をタオルで混ぜっ返しながらどっかりと腰を下ろす球磨


木曾「おまえ…。髪くらい乾かしてこいよ…」

球磨「ほっときゃ乾くだろう、こんなもん…」


球磨の背中。重そうに張り付く長い髪

薄手のパジャマは水を吸い、素肌と下着の紐やらがうっすらと透けて見えていた


多摩「…」


そんな姉を横目にすると

足元に転がっていた扇風機を蹴り出す多摩

雑と書いて器用に足の小指でスイッチまで入れると羽が回りだした


「くぅぅぅまぁぁぁぁぁ…」


マイク代わりにされた扇風機の羽が、鳴き声を裁断していく


木曾「面倒なら切れよ…」


姉からタオルを奪い取り、根本から毛先まで軽く叩いて水気を切っていく


球磨「切るのも面倒だクマ」

木曾「ぉぃ…」

白露「それさ…提督さんが ショートが好きって言ったらどうすんの?」


ちょっとした疑問が半分、残りは悪戯半分の問いかけ

個人的には綺麗だと思うし、切ってしまうのは勿体無いと思わなくもないけれど


球磨「こうして…」


後ろ髪を雑に纏めると、その根本をチョキでチョッキリと


球磨「こうだクマ」

白露「あ、はい…」


何も言えなかった。それが答えだった

仮に、ほんとに言われたとしたら、淡々と実行するだろう説得力が滲み出ている

思考を挟む余地なんてまるで無い。伸ばしてるのは提督の趣味ってだけなのがハッキリと分かる


ーみょんっー


頭のアホ毛が復活する頃には

髪もすっかり乾き、風鈴の様な涼やかさで揺れていた



ー廊下ー



睦月 「水無月ちゃん」

水無月「ん?」


後ろから抱きついてきた姉を受け止めると、肩越しに振り返る水無月


睦月 「シロちゃん見なかった?」

水無月「シロ?ああ、白露かい?」

睦月 「そうそう」


すっかりネコ扱いだ。名前からして もうそれっぽい


水無月「さっき呼んでたじゃん?」


むっつんの事だ。あれで、当たりは付けたと思ってたけど


睦月「なんだけどにゃぁ…」


納得いかなそうに唇を尖らせている

手応えの割に釣り上げた魚は小さかったと、不思議そうに眉根をひそめていた


水無月「司令官に聞いてみたら?なーんて…」


思いもしたけど、それじゃ流石にゲームにならないか

その気になれば、何処で誰が何をしてるかまで見当をつけてくるし


睦月 「いや、ありだな…」

水無月「へ?ちょっと?」


冗談のつもりが、姉はすっかり乗る気になり

肩にかかっていた重みが弾んで無くなった


水無月「ちょいちょい、隠れんぼでしょ?流石にズルいって」


水無月は間違ってない、胸を張って言い切れた

だからって、聞いてもらえるとは限らなかった


睦月「勝てばよかろう。なんだよ、水無月ちゃん?」


肩に手を置かれる。悪い顔だ、自信満々の上に何を言ってるのか分からない

いやさ、分かりたくないってのが強いけど


水無月「そんな勝ち方で良いのかい?」


暴論に正論なんて無意味

それは分かる、良く分かる。身をもって体感したことだってある

だからこそ、訴えるべきはモラルに心情に心根に


睦月 「睦月は言ったよ?勝てばよかろうなのだ、と?」

水無月「えぇ…」


聞く気はない、か。聞いた上で却下されてはもうどうにも


文月 「じゃあ、プランBならどう?」

水無月「それ、今作ったでしょ?」


状況を打開したのは文月の声

けどそれも、暗雲を湛えて今にも雷が落ちそうだった


文月 「硬度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に、だよ?」

水無月「それダメなやつじゃんかさ」

睦月 「いや、それでいこう」

水無月「いくのっ!?」

文月 「さっすが、お姉ちゃん。話がわっかる~」


ガッチリと握手を交わす2人

そしてそのまま「いこいこ」と、文月に手を引かれて歩き出していた


水無月「ああっもうっ。ちょっと待っててばっ」


悪ノリを初めた2人を止められる気はしなかったけど

だからって、放っておくわけにもいかなかった



ー球磨ちゃん達のお部屋ー



白露「時に皆さん」


皆さんと言っても、多摩さんの寝息が聞こえているから実質2人だけど


白露「夕立ちゃんに勝つにはどうしたら良いかな?」


割りと切実な質問

そも、勝ってれば ここにはいないのだから最重要案件とも言える


球磨「練度を上げて物理で殴ればいい」


バカにでも出来る簡単な方法だと、あっけらかんと宣った

「鍛え方が足りない」長良さんと言ってることが変わらない、やっぱり脳筋(バカ)はダメだった


白露「却下ですっ、次っ」

球磨「軟弱な…」


なんて小言も聞こえないふり。出来ればとうにやっている

それに、練度なんて上げれば上げるほど実感が薄くなる上切りがない

頂上で振り返ってようやっと分かる頃には次の壁

だったら、壁を越えればいいが、白露は今すぐどうにかしたいのです


木曾「そんなもん、時雨にでも聞けばいいだろう」

白露「それは聞いたよ…」


聞いたんだけど「夕立に付き合いすぎるんだよ、姉さんは…」と分かるような分からないような答え


木曾「まさかお前…真正面からぶつかってったのか?」

白露「ダメなの?」

木曾「あぁ…」


頭を抱える。いや、自分にも覚えがある分なまじ否定もしづらい

白露が脳筋(バカ)の類だったらそれでも良いんだが


木曾「白露…わりぃが…」

白露「?」


一応先に謝って

首を傾げている白露の顔めがけ、真っ直ぐストレートに拳を伸ばした


白露「っ!?」


慌てて顔を引く白露。当然だ、当然の反応だ

多分俺だってそうするし、提督ならもう掻き消えている頃だろう

そうして次は球磨へ、断りもなく不意打ち気味に拳を伸ばした


球磨「ぁん?」


避けるまでもない、避けるつもりもないのか

拳をガッチリと掴まれ、そのまま握りつぶす気なのかじわじわと熱が篭ってくる



木曾「この差だろ?」


言いながら、球磨に掴まれていた拳を強引に振りほどく


白露「う、受け止めろって…事ですか…」


想像してぞっとする。真正面からぶん殴ってくる夕立の姿

なんの躊躇いもないどころか、まっすぐ行ってぶっ飛ばすまでの勢いだ

下手に受け止めようものなら、ゼロ距離で砲撃をぶっ放してくるわで、手の打ち様がない現状


正直怖い…


木曾「ちげーよ。なんていうかな、アレだよ…」


握り拳を作って、胸の前で合わせてみせる


木曾「がーって、行くから、ドーンってなるんだよ…」


木曾さんは口下手だった


木曾「で、力負けするからバーンって弾かれる訳だ」


白露も話こそは聞いているが、頭の上に?ばかりが増えていく


木曾「だからな、こうひょいっといって、ドンっ…な?」


再び拳と拳を合わせて、ぶつかる前に逸らしてみせる

そこから、横槍でも刺すように拳を弾いてみせた


白露「…ひょい?」


胸の前で手を交差させる白露。傍から見たらなんか変なポーズだった


木曾「ひょいじゃなくて、ひょいっだ」

白露「ひょいっ?」

木曾「そうそう」

白露「あー…あー?」


面と向かって、腕を交差させている2人

何をしているかわからないし、何を伝えたいのかもイマイチだった


多摩「一発で倒せばいいだろう…それで終いだにゃ」


見かねたのか、煩かっただけなのか

丸まっていた多摩が体を伸ばして…また寝転がる


白露「一発って…そんなの…」


今まで何百発もぶち込んでるのに、今更それだけで良いとか言われても…


ぴん♪ ぽん♪ ぱん♪ ぽーん♪


かすれた鐘の音が部屋中に、というか鎮守府全体に流れ出す


睦月「◯◯◯◯ー◯◯ー◯◯◯◯…3分間だけ待ってやるし」


ぴん↓ ぽん↓ ぱん↓ ぽーん↓…


定型的な番号の羅列と、設けられたリミット


白露「きゃぁぁっぁぁ!?たんまたんまたんまっ」


途端、慌てて飛び出していく白露だった




木曾「姉貴は…言葉が足りねぇよな…」


開けっ放しの部屋の扉を締めて戻ってくる木曾

ようやくと静かになった部屋の隅で寝っ転がっている多摩


そりゃ下手な鉄砲を撃ってスキを晒すぐらいなら

一意専心。その一撃に全部を預けた方がマシな事もあるけども


多摩「おまいう…」

木曾「うっせ。苦手なんだよ、こういうのは…」


大井や北上あたりならまだ綺麗に纏めたのかもしれないが

どうにも自分は球磨の妹らしい、口で言うよりやったほうが早いって


球磨「ま、瑞鳳は一見に如かずっていうクマ」

木曾「…。いや、いわねーよ?」


一瞬、頷きかけてしまった

あまりにも当然の様に言うもんだから「そうだけどな」っていいそうになってしまった


木曾「だいたいどういう意味だそれ…」

多摩「有無を問うより見るのが早い…」


と、言うように、何でも体験してみたほうが手っ取り早いという事(艦娘国語辞典より抜粋


球磨「意外とあるかもしれんクマ…」

多摩「無くても提督のストライクゾーン…」

木曾「…」


どこから突っ込もう

瑞鳳の下りか、あるいは提督の趣味についてか

以前に、百聞は瑞鳳に如かず、ではダメだったのだろうか…とか



ー北上さんたちのお部屋ー



北上「あはははははははっ」


爆笑だった、傍らの大井が呆れるくらいに笑い転げている

バンバンと叩かれるちゃぶ台。その度に急須の蓋がガタガタと揺れている


大井「北上さん、笑いすぎ…」

北上「いや、けど…ふへっ、ふふふふふふっ」

大井「はぁ…」


さっきの放送を聞いてからこれだ

確実な手段だとは思うけど、中々にえげつない手ではある


考えたのは誰か…少なくても睦月じゃないだろう

あの娘なら自前のモノがあるだろうし、ダメでももう少しシンプルな手で行くはず

こんな回りくどい癖に急所に刺して来るような手段は


大井「…」


ポツリと…呟いてみる


「たまたま拾った玉手箱、たまらず開けた多摩」


北上「や、やめっ、大井っち、ちょっと…たんま…」

大井「あーあ…」


完全に出来上がっていた

何を言われても面白い年頃だ、布団がふっとんだーとか言っても笑い転げそうだった


お茶でも淹れてこよう

これ、しばらくは使いものにならないだろうから



ー放送室ー



水無月「ねーねー、文ちゃん?」

文月 「なぁに?」


睦月が番号を読み上げているその隣

マイクに声が入らないよう小声で話しかける


水無月「その番号って、なに?」


どこかこう、電話番号のような…

いや、電話番号だとしたら、その宛先の心当たりなんて


文月 「何って、□□鎮守府の番号だよ」

水無月「うわぁ…うわぁ…」


感嘆に唖然して思わず声が漏れていた


脅したのだ、要するに。いますぐ出てこないとお家に電話するって

家出娘の弱点を最大限に利用して…


水無月「文ちゃんさ…人からえげつないって言われたこと無い?」


力ない言葉。なんかもうそれしか言うことが思いつかなかった


文月「ないよ?」


良い笑顔。それは完璧に無垢な少女であったけど


文月「ないよね?」


念を押すような言葉

指を、人差し指を、水無月の頬に置き、滑らせる様に柔らかな唇をなぞっていく

指の動きに合わせて引き結ばれていく唇は、縫い付けられたように動かない


そうしてもう一度


「ね?」


水無月「ん、ん…」


何も言えなかった。いやさ、言ったらダメだと思った




睦月「来たか…」


放送室の扉が開く。廊下からの逆光を背に、肩で息をする白露の姿


同時に


白露「ちょっとまってぇぇぇぇっ!?」


いっぱいいっぱいの悲鳴の様な懇願だった



ー睦月達のお部屋ー



白露「ぁぁぁぁ…あ、れ?」


ぼんやりと意識が浮かび上がってくる

薄暗い部屋、カーテンから漏れる光に目を細める

背中には柔らかい感触、体を包む毛布がベッドの上だと教えてくれた


昨日はどうしてたんだっけ?


夕立と喧嘩して飛び出して…

戻るに戻れなくてたしかそう…


「にゃぁ…」すやすやと未だに朝の来ない寝言のような吐息

ご飯にお風呂にお布団に、すっかり面倒を見られてしまっていた

昨日半日、なんのかんのも関係のない場所で騒いで

そうして一晩休んでみれば、時化っていた心も随分と凪いでいた


一向に妹に勝てなくて、焦ってたのはそうだけど

だからって、何も言うだけ言って飛び出すこともないだろう

コレでは一番艦(お姉ちゃん)どころか、まるっきり子供のダダじゃないか


白露「はぁ…どうやって謝ろ…」


戻りづらいなぁ…


飛び出した手前、それはなお重く伸し掛かる

昨日のうちなら、夕立に顔を合わせづらいだけで済んだのに

時間が経てば立つほどに、周囲にかかる迷惑と心配が累積していくばかりだった


暖かい布団。人心地が恋しくて毛布を抱き寄せ丸くなる

残っていた眠気に引きずられ、次第に溶けていく頭の中


何も考えなくていい、何にも考えたくない

もう少し、もう少しだけ眠っていたい


柔らかい布団、人肌が温かい、睦月の寝息がくすぐったくて…


白露「はっ!?」


じゃないっ、ちがうっ、なんだこれっ


ハッキリと目が覚めると、それに蹴飛ばされて飛び起きる


睦月「んぅぅぅ…」


捲れ上がる布団

入り込んできた朝の空気に、安らかだった睦月の寝顔に線が入る


どうしてだ、なぜ あたしは睦月と一緒に寝ているのだ

朧気だった記憶を掻き集め、眠る直前までを遡る

お風呂に入って、ご飯を食べて、木曾さん達に愚痴って、放送室に駆け込んで、それからそれから…


そこだけが、そこからが、抜けていた…


何か手がかりになる物はないか

現状を否定するみたいに首を振りながら周囲を見渡す


綺麗に整頓されている部屋、所々にある女の子らしい飾りは如月のものだろうか

自分はベッドの上、服は…パジャマか…パステルカラーで子どもっぽい

人のパジャマを借りているというのが、なんともくすぐったくて落ち着かない


白露「ぅっ…」


ひんやりとした朝の空気に背中が丸くなる

布団を手繰り寄せ、自分の体を抱きしめると

パジャマのボタンが1つ2つと外れていることに気がついた

そりゃ寒い、夏だからってお腹を出して寝てれば風邪だって…


白露「…」


頭を抱えこんでいた


彼女のお部屋で、彼女の布団で、彼女のパジャマで…そして彼女と二人で


何をしたのっ、昨日のあたしっ

問いかけても返事はない。そこだけ、そこいる自分だけが返事をしない


白露「睦月っ、起きてっ」


こうなればと、傍らの彼女に聞くしか無かった


睦月「にゃぁ…。なぁに、白露ちゃん…まだ朝だよ…んむぅぅ…」

白露「もう朝なのよっ!?」


小鳥だってチュンチュン鳴いている

家じゃ今頃、総員起こしにが鳴り響いてる頃だ


如月「昨日は遅かったんだし、もうちょっと寝かせてあげたら?」


一人、白露が騒いでいると部屋の奥から如月が顔を出す

また、その手に持っているのが厄介だった


白いカップに上がる湯気

漂ってくるのはコーヒー特有の魅惑的な香り


白露「ややこしい物を持ってくんなっ」

如月「何を言っているの貴女は…?」

白露「だって、だってぇ…」


目が覚めたら女の子と二人きりで

服は乱れてるし、小鳥はチュンチュン鳴いてるし、コーヒーまで持ってこられたらさ


それに…


白露「その格好はなんなのよぉ…」

如月「これ?」


真っ白なワイシャツ一枚きりのその格好

薄手の生地と、余った服の隙間から桃色の下着が見え隠れしている


如月「変、かしら?」


自分の体を見下ろしながら小首を傾げる如月


変か?と言われれば変じゃない。むしろ逆だった…

落ち着いた仕草のせいか?それとも、ほんのりとした色気のせい?

時雨や村雨とはまた違う、少女らしい曖昧さの中で一層際立っている彼女自身の魅力

変に似合ってる、という言い方をするなら変かもしれないけど


白露「もしかして、それ…提督さんの?」


それは、ちょっとした疑問。本人の物しては、ちょっと大きめのそのワイシャツ

前に一度、妹が同じような格好をしていたのを思い出す

その時は、由良さんに没収されてそれっきり…アレは何処にいったのか


如月「ふふっ」


笑われた


白露「こわいこわいこわいっ」


ベッドの上じゃ逃げ場なんて何処にもないのに

それでも、手繰り寄せた布団を抱いて端まで後ずさる


睦月「むぅぅっ…」

白露「あ、ちょっ!?」


不満げな声。同時に布団を引っ張られ丸め込まれる


奪われた布団を奪い返し、肌寒さが心地よさに変わる中

見つけた湯たんぽを抱えるように、白露の背中に手を伸ばして抱き寄せる


白露「えっ、ちょっ、近い近い近いってっ」


目の前には睦月の顔。あどけない寝顔は妹たちのそれと比べると子供みたいだけど

なんか良い匂いがする、それに柔らかいし温かい

睦月のパジャマに、睦月の布団、なにより睦月に抱かれて


その気はなくても、そんな気が起こりそうで、あるいは起きてしまったのかもしれなくて


白露「…あぁ、もういいや…」


ちょっと疲れた

寝ても覚めても、どうでも良いことが山のように積み上がって、本題を考えてる暇がまるでない

しかし、諦めてしまえば意外と悪くないことにも気づく

頑張んなくてもいいやって、思ったら肩の力が抜けていく


一番艦で初期艦で、あたしがやらなきゃ誰がやるって…


別に誰でも…それこそ夕立だって…


瞼が重くなる。ごちゃごちゃとした考えも睦月の吐息に吹かれて消えて

睦月の鼓動に誘われるように眠りに落ちていった



ー□□鎮守府・執務室ー



ここは□□鎮守府、提督というものありけり

艦娘に混じりて、指揮を取りつつ、戦のことに使いけり

名をば、万津 彩華(よろず さいか)なんいいける…


夕立「夕立は悪くないっぽい…」


バツが悪そうに そっぽを向いている夕立

そうは言いつつも、目を合わせようとしない辺り

そこそこには自分の非に自覚はあるようだった


彩華「良いとか悪いとかの話をしてるんじゃねーよ」


その内心を表すように頭を掻く

姉妹喧嘩なんて好きにしろとは思いもすれど

飛び出して、まるっと一日戻ってこないでは笑えもしない

世が世なら脱走兵扱いされてもしょうが無い


彩華「どこ行ったか知らねーか?」

夕立「そんなの…」


こっちが聞きたいくらいだった

演習(ケンカ)を吹っかけられ、返り討ちにしたと思ったら

言いたい放題言われて、突然どっか走り出してさ


夕立「知ったこっちゃないっての…」


全く意味がわからない。思い出すだけでも腹立たしい


「夕立が来るまでは あたしが一番だったのにっ」

そんな泣き言、そんな戯言を、夕立の知ったことではなかった

「そんなに一番が好きならくれてやるわ」それで夕立の何が変わるわけでもないのだから

そんな些事に構っているほど夕立は暇ではない。彩華さんの膝の上で丸くなるっていう大事な任務がまっていた


なんて言い捨てて見れば火に油で、終いには飛び出していった


彩華「まだ怒ってるのか?」

夕立「ぽいっ…」


知らないと、そっぽを向きすぎて、ついには背中を向けて丸くなる


時雨「彩華さん、指輪の方は?何か反応はないかな?」


完全にへそを曲げた夕立を宥めつつも

やはり、飛び出した姉への心配が隠せない様子の時雨


彩華「使ってくれれば分かりやすいんだけどな…」


とはいえ、そんな事態になってるなんて最悪以外の何物でもない

そういう意味では一応の安心は確保できてはいるものの


彩華「せいぜい方角くらいか…」

時雨「十分じゃないかな。演習の後で そんな遠くには行けないはずさ…」

彩華「んー…向こう、か…」


指輪に意識を向ける。流れてくる感覚を白露一人に絞ってみれば

なんとなくでも、その細い糸の先に掛かるものがあった


時雨「向こうって…」


顔を向ける。その方角にあって、白露が立ち寄りそうなその場所


彩華「うわぁ…最悪だ…」

時雨「駆け込み寺としては、まぁ安心ではあるけどね…」


不承不承、受話器に手を伸ばす彩華の姿に、苦笑微笑している時雨だった



ー◯◯鎮守府・執務室ー



皐月「司令官、電話だよ」


差し出された受話器。電話口の向こうは誰だろうか?

なんて、このタイミングで掛けてくる相手なんて そう多くはないだろう


提督「居ないって言って」

皐月「居るって言った」


「ほら」受話器を投げてよこす皐月

コードレスなのが恨めしい、今度黒電話に取り替えておこう


ーぴっ♪ー


皐月「あっ…」


飛んでくる受話器をキャッチ

そして流れるように通話終了のボタンを押した提督だった


提督「朝から電話かけてくるなんて失礼な人だと思わない?」

皐月「もう良い時間だと思うよ?」


少なくとも陽は昇りきっているし


提督「皐月は私とおしゃべりする時間がなくなってもいいの?」

皐月「さっきまで寝てたじゃんか…」

提督「明日より今が大事」

皐月「昨日の話をしてるの」


なんて、取り留めのない会話をしていると

再び震え始める受話器


皐月「取らなきゃ終わらないと思うけど?」

提督「「司令官大好きっ」て言ってくれたら?」


語尾にハートマークを付けて、似つかわしくもない物真似をする提督

毛色が悪いと思わなくもないし、からかわれてるのは分かるけど


皐月「…」


きょろり、きょろきょろ


部屋を見回す皐月

三日月は席を外してる。望月は…寝てる…と思いたい


じゃあ、仕方がない。言わなきゃ出ないって言うんだし…まぁ、そのくらいなら


皐月「司令官…あの…その…」


ーぴっ♪ー


皐月「…」


逡巡して、一周回って決めた覚悟は、味気ない電子音に蹴り飛ばされていた


提督「娘は預かった。返してほしければ…」


受話器片手に話し出す提督。これで違う相手だったら恥ずかしいことこの上ないが


提督「って、お前から貰うもんもないな」

彩華「それはそれでムカつくな、おい」


その実、思った通りの相手で


彩華「居るんだな。その言い方…」


不安と安心と疲労感と脱力感をいい感じに含んだ声だった


提督「やーいっ、逃げられてやんのっ」

彩華「うるせぇっ。俺のせいじゃないって」

提督「喉に小骨引っ掛けたまま言われてもなぁ…」


くつくつ…と、いやらしい笑みを浮かべる提督だった


「俺は悪くない」だなんて、真っ先に自分の立場に線を引く

まるで、自分が責められる覚えがあるかのようだ


彩華「やかましい。それより白露は…」

提督「さぁ?うちはネコを拾っただけだし…」

彩華「ネコだ?」


そんな疑問に答える義務もなく


ーぴっ♪ー


やっと静かになった。やはり家出娘を預かるものではないな


提督「まるで誘拐犯だ…」

望月「そのものだろ」


そんな皮肉にも楽しそうに笑っている提督

それを横目に、転がってるソファから首を伸ばす望月


皐月が座っている机の上。案の定むくれている女の子が一人

そのまま放っておけば、人のこと笑ってられない事態になりそうな


望月「明日は我が身じゃね?」

提督「ん?ああ…」


声をかける。けれど、何を言うまでもなく頷いた様子からするに

当然と言うか、絶対わざとだなって




三日月「え、えーっと…」


その光景はなんと言ったら良いものか。普段は皐月が1人で座っている その机

ほんとなら司令官が座ってなきゃな場所なんだけど、ほとんど皐月の机になってるそこ


怒ってるのか喜んでるのか

感情の置き場所に困った皐月が、それを誤魔化すようにペンを握っている

何よりなのが、そんな皐月を膝の上に乗せて満足そうにしている司令官

いや、満足そうなのはお互い様なご様子で、私が離れてる間に何が合ったのか…


答えを聞こうと望月の方を見やると、苦笑して首を振るだけ

つまる所、いつもの事らしい


提督 「おかえり、みつき」

三日月「あ、はい。只今戻りました」


笑顔で迎えてくれる司令官に軽く頭を下げて、一歩、踏み込んだ


三日月「姉さん…」

皐月 「な、なに…?」


妙に改まった妹の声に思わず顔を上げる皐月

金色の瞳が、そこに映る自分と重なった


三日月「イチャついてるんですか?」


静かな、静かな声


皐月「違うし…これは司令官が、ボクは仕事中だって言ったのに…」


取り敢えずでも体裁を保つ為に、再びとペンを握り直す皐月


三日月「イチャついてるんですね?」


静かな、静かな声


皐月 「だから、違うって…」

三日月「イチャついてますよね?」


静かなだけで、その圧力はだんだんと強まってくる

気づけば顔は目の前に、伏せて逃げようにも限度がある

このまま認めてしまえば開放してくれるのだろうか?

けれど、仕事中に司令官とイチャついてます、なんて認めるのは若干の抵抗もなくもない


皐月「何さ…」


視線を合わせず、言葉だけで妹を押し返す

「だって、司令官が…」なんて言い訳は、自分の物で

そんなことを言ってないと嬉し恥ずかしくって、仕事も手につかなかった


三日月「ううん」


優しく首を振る三日月。その後「ただね」と付け加えると


三日月「良いなぁ…って?」


微笑んだ。姉を覗き込むように、姉に見せつけるようにして微笑んでみせた


皐月「良いとか…仕方ないじゃんか。放してくれないんだもん…」


だからといって、抵抗する気はもっと無いけど


三日月「ふーん…」

皐月 「だから…」

三日月「だから?」

皐月 「ああっもうっ!」




望月「取られてやんの」

皐月「うっさいよ」


三日月の圧力に負け、言ってしまっていた


「だったら三日月が変わってよっ」


言ってしまった手前、ソファに移動するしかなく

所変わって満足そうな三日月が、提督の膝の上に落ち着いていた



ー食堂ー



金剛「先方に連絡は?」

大鳳「今日中に戻るなら良いんじゃない?」


朝食も軽く済ませ。ティータイムを楽しんでいる2人

この後どうするかと、目下の問題は突然現れた白露の扱いについてだった


金剛「提督が素直に受け入れるなんてね…」

大鳳「あれを素直といえる私達も大概だけど…」


昨日一日、睦月にネコっ可愛がりされている白露の様子を思い出す

睦月が楽しそうで何よりなのは良いけれど、あの人が何もしないってのは意外と言えばそう


金剛「素直でしょ?睦月が間に入らなかったら今頃どうなっていたやら…」

大鳳「ネコミミ…くらいは生えていたかもね…」


それは流石にあざといだろうと思うけど

この手の遊びは冗談なくらいが丁度いいというのそう


金剛「あとは卯月の餌だね」


ニヤつく卯月の顔を想像するのは簡単だった

「尻尾はないの?」と、スカートまで捲られるまでは固いだろう


大鳳「弥生が何をするのかわからないのが一番怖いんだけど…」

金剛「really…」


互いに苦笑しあう

だとしても、卯月と弥生が楽しそうにしてるならそれはそれ

やり過ぎたときは、自分達が止めればいいだろうと




ポーラ「ゔぅぉんじょぉぉるのぉぉぉ~」


呑気で陽気な声

ゆーに手を引かれて、あるいはゆーの手を引いて食堂に入ってくるポーラ達


大鳳 「おはようポーラ」

金剛 「ぐっもーにんっ」

ポーラ「はぁい。お早うございま~す、お二人は今日も早いですねぇ」

大鳳 「あなたが遅いのよ?」

ポーラ「だって、ゆーちゃんさんが起こしてくれないんですよ?酷いと思いません?」


責任をなすりつけるように、ゆーの肩に頭を乗せて頬擦りを始めるポーラ


ゆー「思いません。あと重いですって」


面倒くさそうに目を細めながら、小さな両手でポーラを押し返す

けどそれだけ、ムニムニとポーラの肌を揉むだけでまるでビクともしなかった

どころか、そんな些細な抵抗が楽しいのか嬉しいのか、顔がだらしなくニヤけている


金剛「はーい。そのくらいにしてあげて」


見かねた金剛が、ポーラからゆーを剥ぎ取ると

そのまま自分の席まで持っていき膝の上へと落ち着ける


ゆー「ふぅ」


開放感と安心感。肩の力を抜いて、金剛に体を預けていると

程なくしてティーカップに紅茶が注がれた


ポーラ「ぁんっ、ひどいですっ。ゆーちゃんさんが取られました」


抱きつく先を無くしたポーラが今度は大鳳に縋り付く


大鳳「自業自得でしょうに」


擦り寄ってくるポーラの頭をあやすように撫でる大鳳


妙な感じだ。睦月たちには良くこうしているけれど

自分と背格好も大して変わらない娘に抱きつかれるというのは

嫌というわけでもないけれど、提督と戯れるのとはまた別の気恥ずかしさもある


大鳳「それより、それ。お酒なしだとキツくない?」


頬と頬が触れ合う距離。そうまでくれば良く分かる お酒の匂い

全くない、ということもないけれど。朝から飲んだ、とまではいかないようだ


ポーラ「…分かりますか?」


すぅっと、ポーラの顔から表情が消え、波打ってた声が平坦になっていく


大鳳「演技だからって大げさにやり過ぎ」


こそこそと、耳元でささやきあう2人


ポーラ「そう…」

大鳳 「素直に少し飲んできたら?」

ポーラ「…あんまり飲むと、ゆーが抱きつかせてくれませんので…」


それに…


ポーラ「お酒臭い女はモテないでしょう…」

大鳳 「今更気にしちゃって…」

ポーラ「今だから余計に…」


冷たいよりは、度が過ぎてても明るいほうが良いだろう

馴れ馴れしいとか、苦手に思われることもあるけれど、極端に嫌われることもなし

実際、不特定多数の絡む場所ではそれで良かったし

年がら年中酔ってる女というラベルは、人前で態度を選ぶ必要もなくて楽でもあった


癖になってしまったのを除けば大きな問題もなかったが

ゆーちゃんさんに提督さん、鎮守府の皆さんと親しい人達に

「お酒臭い」と言われるのは、少しばかり気になった


自業自得、それはそう…なんだけど

今でこそ皆さん、笑いながら言ってくれるけど

それが何処まで許されるのか分からないし…

かと言って、素面の能面では人当たりも何も合ったもんじゃないしで


今まで、お酒に頼りっきりだったのを少しばかり後悔しないでもなかった


ポーラ「ゆーちゃんさーん。朝食は何が良いですか~?ポーラがお作りしますってぇ~」

ゆー 「おいもが良い」

ポーラ「は~い♪」


陽気に、あくまでも陽気に厨房に引っ込んでいくポーラ


大鳳「…」

金剛「…」


そんな背中を見送る2人


金剛「ま、そのうち分かるでしょう?」

大鳳「そうね」


仕方もないと笑うしかない

問題児ばっかりなのだ、多少問題児が増えた所で誰も気にもしないと

そのうち分かる、いや慣れるだろうと

ひとつ屋根の下、いつまでも隠し通せるものでもないのだから


「頑張らないとね、金剛お姉ちゃん」「頑張りましょうね、大鳳姉さん」




ポーラ「はーい。おまたせしました~」


じゃがいものポタージュ、ジャーマンポテト、ポテトサラダ…


全体的に白っぽい料理だった

所々、緑や赤色・茶色等、頑張ってはいるけれど

どうしたって、ポテト色が辺り一面を覆っている


ゆー「ぉぉ…」


けれど、主賓には好評だった。目が輝いてさえ見える


ただ、それよりも気になることが一つ


大鳳「どうして飲んだの?」


仄かに漂うお酒の香り。並んだ ポテト料理とはまた別の所からだった


ポーラ「お酒が合ったので、つい?」


ほんのりと赤くなっている頬

見た目のテンションこそ飲む前より落ち着いているけれど、全体的にぼんやりとしていた


金剛「ああ…ダメね、これ」


この娘あれだ

なんのかんの理由はあれど、基本的に酒が好きでたまらないのだ

素面が冷たく見えるというより、お酒が抜けると逆にどんな顔していいか分からないってだけだ


大鳳「はぁ…ほんとに」


二人して息を吐いていた



ー港ー



村雨「ご到着っと」

如月「いらっしゃい」


勝手知ったる何とやら

友達の家に遊びに来たような気安さで、顔を出した村雨を笑顔で迎え入れる如月


如月「今日はどうしたの?」

村雨「予想通りじゃないかしら?」


どうもこうも、不肖の姉がご迷惑おかけしましたと

菓子折りの1つでも持参したい状況なんだけど


如月「予想通り、ねぇ…」


そよぐ海風に揺れる髪。頬に掛かる髪を手で抑えての一思案

その仕草は実に様になっていた、写真にでも収めればとても映えるだろうとも


如月「だそうよ、提督?」


宙に投げる言葉。いないと思った受け手は気づけばそこに立っていた


提督「如月なら上げないよ?」


如月を後ろから抱きしめて、一歩後ろに下がる提督

それは、宝物を腕の中に隠す少女の様にも見えた


村雨「とらないから…」


むしろとれないが正しい

そんな事をしようものなら如月ちゃんが泣いちゃって大変なことになりそうだ


如月「何処にもいかないわ。ずっと、お側に…ね?」


提督の腕の中。村雨に背を向けて そっと背を伸ばす

近づく距離、触れ合う肌と肌、伝わる熱は夏の日差しよりも尚熱く


村雨「…」


人前…なんですけどー。なのに当然の様にイチャつかれても困る

見せつけられているなら見るべきなのか、ここは空気を読んで回れ右でもするべきなのか


村雨「さて、そろそろ良いかしら?」


どっちにしろ耐えられそうになかった

放っておいたらいつまでも続けていそうな空気を寸断するより他もない


提督「お付き合いどうも」

村雨「お楽しみの所悪いんだけどね…」


心配まではしてないが、気にならないと言えば嘘になる

いちゃつくならそれでも良いが、先にこっち要件をすましてほしかった


提督「別に…楽しいとか…」

村雨「そうは見えなかったけど」


なんて、呆れて見せれば

単に気まずいのか照れているのか、バツが悪そうに視線を逸らす提督


如月「それじゃ、いきましょうか」


不意打ちが成功したのに気を良くしたのか、提督の腕に抱きついて歩きだす如月


そこまでは良かった。けれど、その立ち位置が微妙に気になる

提督さんと村雨、わざわざその間に立っている


考えすぎかと思うでしょ?


そう思って反対側に回ってみると、同じように回ってくる


村雨「…」

如月「…」


そうまでされると、悪戯心も湧くってものだ


右へ回り込む。流石、いい反応だ。すかさず提督さんとの間に滑り込んでくる如月


けれど、負けませんとも

すかさず向きを変えて、左に回り込むと提督の手を掴んで前に出た


村雨「行きましょ?提督さん」


馴れたものだ。最初は誰かの後ろから覗き込んでいたのに

手を握れるようになったのは進展ではある


如月「どういうつもりかしら…村雨さん…」

村雨「うふふっ。貴女が可愛くて、つい?」

如月「ついじゃないっ、良いから手をっ」

村雨「手を?」


わざとらしく、いやわざとだけど

何も知らない風を装って、掴んでいた手を両手で包み、胸の前へと持っていく


如月「もうっ!」

村雨「あはははは。ごめん、ごめんってばっ」


その先は言葉にならなかった。ヤキモチを握りこぶしに包んで村雨を追い回す如月

2人、提督を軸にいてクルクルと追いかけっこを始めていた




如月「だいたい、あなたもなによっ。手を握られたくらいで嬉しそうに…」


追いかけっこが終わってみれば、自ずと矛先は提督へ


提督「…」


何もは言わない。こういう時は何を言っても無駄なのだ

唯できることと言えば、恨めしく村雨を見つめるくらい


村雨「…(ごめんねっ♪」


その視線に気づいた村雨が、悪びれるでもなく舌を出していた



ー睦月達のお部屋ー



村雨「…」


なんというか、随分と愉快な光景だった


姉と睦月が戯れている、そこはいい

けれど「にゃんにゃん」とか言っている、これでもかと撫で回されている

顎を撫でられ「ごろごろ」と、大層ご満悦のようにも見えた


白露「へ?村雨…なんで?」

村雨「…」


微笑んだ。いつものように柔らかく、包み込むように

驚き、固まっている姉を生暖かく見守るようにして


白露「ち、ちがうんだよ…これはね?」


慌てて睦月の後ろに隠れ、その肩越しに顔だけを覗かせた


村雨「何が?」


すっかり手なづけられている

この状況がそれ以外のなんだというのか、何かあるのなら教えて欲しい


睦月「白露はネコであるっ、名前は「シロ」」

白露「ちょっとっ!?」


余計な事を言わないで欲しい

たださえ面倒な状況が余計にややこしくなる


村雨「もうこっちの娘になっちゃったのね…」


「村雨、寂しいわぁ…」続く涙は「およよよ…」嘘くさいのは承知の上、だって嘘だもの


白露「ならないよっ!?ただ、これは、やむを得ない理由といいますか…」


実際、罰ゲームみたいなものだ。一宿一飯の恩義と言えば格好も付くほどに

泊めてもらう替わりに、睦月のオモチャになれってこれはそういう話で

それが、途中からイヤでもなくなり、意外と心地良い事に気づいたのとは別の話で


睦月「イヤ、だったの?」

白露「ちがっ…う、けど…」

睦月「だよねっ♪」


にぱっと笑顔。その笑顔に思い浮かんだ反論の1つや2つあっさりと吹き飛ばされた

白露は睦月に逆らえない、手綱を握られていた…


村雨「で、ほんと何よこれ?」


状況は分かった

これ以上本人から内容のない釈明を聞いても埒が明かないと

さも楽しそうに状況を俯瞰している提督へと話しを振る


提督「何でもするから一晩泊めて、だってさ?」

村雨「ふーん…」


それはまた、スカート捲られなかっただけ良しするかどうかは人によりそうな話だことで


にしたって、一日で良くもまあ ここまで躾けたものだ

意外と言えばそう。睦月は可愛がられる方だと思っていただけに

睦月型の長姉…お姉ちゃん力とか言えばいいのか、うちの長姉にも もう少し望みたいものだ


白露「にゃはぁ…」


姉が喉を鳴らして可愛がられている

意外と、初めてかも知れない。姉が甘えている姿を見るというのは


一番艦で初期艦で、一番はじめから一番に頑張って来て

村雨達もそんな姉の背中に続いてきた

ただ、見ていたのは背中だけだったのかもしれない

振り返る姉はいつも笑顔だったから…どんな顔をして一番前を歩いていたかなんて…


それが、いまは「にゃーにゃー」いってた…正直、可愛いと思った

あざといが、それぐらいでいいと思う


村雨「シロちゃん、こっちおいで」


腰をかがめ、目線をあわせて手を広げるも

怪訝な瞳を向けられた挙句、余計に睦月の方にしがみついてしまった


村雨「あらら…。まるで最初の合ったときの提督さんみたいね」


溜息1つと、脳裏をよぎる面影

最初にあった時は如月の後ろから こっちを警戒していたっけか…


如月「違うわ、間違ってるわよ村雨ちゃん」


何も分かっちゃいないと首を振る如月


村雨「え、なにを…?」


間違ってるほど間違っていたかな?

それとも、文句を言っても良いのは自分だけとかいう趣味でも合ったろうか


如月「この人はもっと酷かった」


真っ直ぐに提督を指差す如月。だって、思い返すまでもない


「すぐ逃げる、気づけば居なくなる、私をからかう

大好きだとか突然滅茶苦茶言わされる、かと思ったら人をラブコメに巻き込んで赤面させる

挙句はキスよっ、私をどうしようっていうのよっ」


村雨「そ、そうなの、ね…」


散々な言われようだけど、冷静に聞いてみればただ惚気けているだけだった



ー母港ー



夕張「ほいっ、直しといたから」


艤装を展開する白露

手を広げ、自分の体を見回しながらクルクル回っている


夕張「あと一回くらいなら全力で戦えるから、ね?」


フルで直して上げたいけども、白露型のパーツなんてあるわけもなく

妖精さん達と一緒にどうにかこうにか形にはした程度なのが口惜しい

「こんな事もあろうかと」ていうチャンスだったのに、本当にもったいない


白露「うん、ありがと…」


お礼こそは言っているけども、その反応は大分重い


夕張「まだ戻りたくない感じ?」

白露「ぽい…」


頷くというより、項垂れている。思ってたよりも重傷のようだった


睦月「はっ、まるで負け犬ではないか」

白露「うっ…」

夕張「ちょっと睦月…」


言いすぎだ、とは思う。けれど、その言葉自体は間違ってるとも思わなかった


白露「睦月だって、夕立と戦ってみれば分かるよ…」

睦月「分かる?ああ、白露より睦月が強いとな」


大げさに大仰に頷く睦月


白露「むっか…。あたし、睦月に負けたわけじゃないんですけど…」

睦月「負けるだなんてそんなそんな。そもそも、勝負にもならないし」

白露「かっちーん。だったら今ここでっ」

睦月「お次はこうさっ」


主砲を構えた白露の眼前に、睦月の指が突きつけられた


睦月「睦月と戦った後だからって、夕立に言い訳をするんでしょ?」

白露「そんなのするわけっ」

睦月「ない、が。出来る。出来るならするよ、提督だってそうだもん」

白露「あの人いつもじゃないのっ!?」

睦月「それの何が悪いっ!」

白露「開き直んなっ!」

睦月「それの何が悪いっ!!」

白露「くどいわっ!!」


「でもね…」と、上がっていく熱を冷ますような落ち着いた睦月の声


睦月「睦月と戦ってお茶を濁すより、先にやることがあるんじゃないかなって睦月は思うんだ」


それはそうだった

睦月と戦って勝った所で、絶対に気は晴れないだろう

いや、もっと怖いのはそれで満足して、夕立から目をそらすのが一番怖い

逃げ場があるなら誰だって逃げる、あの提督さんじゃなくたってそう

もし、踏みとどまったとしても その誘惑は抗いがたい…


「退路は断つものよ」とは長良さんのお言葉で、それは敵にしろ自分にしろ


白露「あーもうっ!」


茹だってきた頭を掻き回すと、見事に髪が跳ね回った

それを振り切るようにして睦月を見返すと


白露「いいわよっ。今から夕立すっ飛ばして次は睦月だからっ」

睦月「よいぞっ。歓迎しようっ、盛大になっ」

白露「吠え面かいても知らないんだからっ」

睦月「吠え面がなんか言ってるしっ」

白露「ほんとっ、口ばっかりは達者なんだからっ」


止めるべきなんだろうか?


傍らで様子を見守っていた夕張はふと考える

取り敢えず、焚き付けることには成功したし今はいいけど

ほんとに、帰ってすぐに夕立に突撃しても結果は見えてるんじゃと、冷静にもなって欲しいが


夕張「ま、いいか」


喧嘩するほど仲が良い

仲が良い者同士の諍いに、外野は不要かな




村雨「色々とご面倒おかけしました」


提督に向かい、丁寧に頭を下げる村雨


提督「で、村雨は何をしてくれるんだい?」

村雨「そうね、何でもはしないけれど…」


提督の冗談に笑って返す

流石に何でもはしないけど、何かしらはしてあげても良いくらいは思う

たとえばそう、提督さんの好きそうなこととかはどうだろうか…


村雨「提督さん、ちょっと良いかしら?」


招き村雨を演じてみせると、思ったよりもあっさりと近づいてくる提督さん


それでは例にならいましょう


背をのばし、首に手を回して、そっと顔を近づけ…


如月「…」

村雨「あら…」


ふと、袖をひかれた。同時に、内心胸を撫で下ろしていたりする

予想では、手を回して、の辺りで止められると思ったのに

変に我慢されたお陰で、思ったよりも近づいてしまったじゃない


如月「何をしているのかしら?」


笑顔、笑顔ではあるが。友好的にと言うよりは牽制の意味合いで


村雨「お礼を、ね?」

如月「そこまでする必要はあるの?」

村雨「そりゃ、喜んでもらいませんと」

如月「させるとでも?」


笑顔が消して、目を細める如月

そろそろ冗談が通じなくなりそうな空気が漂ってきている


村雨「ざーんねん。提督さんまた今度ね♪」


冷えてきた空気を茶化しながら、提督から離れる村雨


すかさずその間に如月が割って入ると、今度は提督へ矛先を向けた


如月「あなたも、なにデレデレして…」

提督「デレデレはしてないよ、ニヤニヤしてるけど」

如月「似たようなものじゃないのっ」

提督「全然違う」


だって、如月のふくれっ面を見てるのが堪らなく楽しいのだから

村雨がどうとかこの際、いやこの表情引き出してくれた分は感謝してもいいくらい


村雨「…(それじゃあね)」


如月が提督に小言を重ねている内にそっと海に上がる

途中、目が合った提督さんと小さく手を振りあった

うん、楽しそうで何より。村雨が少し恥ずかしい思いをしたかいはあるというもの


如月「あっ、村雨ちゃんも話はまだっ」

村雨「ごっめーん。急ぐから~、ばいばーい♪」


機関始動、全速前進だっ。逃げるが勝ちとはよく言ったものだとおもう

「もうっ、まったくもうっ」背中から聞こえてくるのは如月の声

ついでに、頭の上に何かが降り掛かってきた。白くて、サラサラした…


塩撒かれた…


きっと航海の安全を祈られたんだろう、きっとそう



ー□□鎮守府・執務室ー



白露「彩華さーんっ、勝ったよっ勝ったよっ!!」


文字通り、執務室に飛び込んでくる白露

その顔はとても嬉しそうで、ボロボロの制服からして入渠すら忘れているようだった


彩華「はぁ…」


机から立ち上がると、白露を迎えに立ち上がる

本当なら抱きとめて「よくやった」と褒めてやるのも良いんだが

その前に言わなきゃいけないことがありすぎる


嬉しそう、本当に嬉しそうだ

そこに水を差さなきゃいけない心苦しさも上乗せして、飛びついてきた白露の頭に拳を落とした


白露「いったぁぁぁあいっ!?なっ、いたっ、いたっ、な、なに、なんで…?」


途端に泣き顔

褒めてもらえるつもりだったんだろう

期待を裏切られたショックと、頭に落ちた拳の痛みに目を白黒させて床にへたり込んでいる


彩華「よう、家出娘…」

白露「あ…」


それで叩かれた理由を思い出したらしい、一瞬にして顔から血の気が引いていく


彩華「勝手に飛び出して、戻ってきたら夕立と再戦(ケンカ)か、好き勝手やってくれる」

白露「それは…その、なんと言いますか…」


取り繕う言葉はなかった。最初から最後まで白露が悪いのは確かにそう


白露「ごめん、なさい…」


俯いて、絞るようにそう呟いた


彩華「こっちを見ろ」

白露「あの、その…ごめんなさい…」


おそるおそる顔を上げてもう一度


怒ってる怒ってるよね、それはそうだ…だって白露が悪いもの


また、手が伸びてくる。痛いのは嫌だけど…

目を引き結び、スカートの裾を握りしめて次の痛みに備える

けれど、いつまでたっても痛みは来なかった


恐る恐る目を開けると、頭の上まで来ている手

やっぱり叩かれると思って慌てて肩を竦ませた


白露「あ…」


ふわり


頭に掛かる重みは優しいものだった。撫で方はちょっと雑だったけど…


彩華「バカ娘が、あんまり心配かけんな」

白露「うん…ごめん」


胸が締まる。いっそ、怒鳴られた方が気が楽なくらいに締め付けてくる

この人に心配をかけた自分が恥ずかしい


彩華「無事なら良いんだ…取り敢えずはな」

白露「あ…」


手が離れていく

雑だなって思っていても、無くなってみると物寂しかった


彩華「ん?」

白露「いや、その…」


気がつけば手を掴んでいた

離れていく彩華さんの手を追いかけて、それでも握る勇気がなくて小指の端っこを摘んでいた


白露「あの、あたし…勝ったん、だよ?」


理由は、何でも良かった

ただ、もう少し撫でていて欲しいだなんて言えるわけもなく

適当な理由をつけてでも褒めてほしかった


彩華「あーっと…そう、だな」


見上げてくる白露

何かを期待しているのは分かるが、何を期待されているのかの見当がつかない

褒めてやれば良いのだろうか?「おめでとう」と「よくやった」とでも言うべきか

しかし、そのタイミングは自分で叩き割ったし、改めて言うのも何処か照れくさい


白露「うん、そうだよ?」


摘まれている小指が引っ張られる

抵抗もせずに牽引されていると、手の平は白露の頭の上で止まっていた


相変わらず、上目遣いで見上げてくる白露。その視線がくすぐったくて目をそらす

催促されているようだった。多分、間違ってはないんだろう…

このまま手をおろして、もう一度頭を撫ぜてやれば顔を綻ばせてくれるような そんな気はしていた



ー執務室・扉の前ー



時雨「盗み見かい?」

夕立「そんなんじゃないわ…」


そこに嘘はない

扉を前にして廊下の壁に背を預けている夕立

ただ、その視線は扉の向こうを見るように固定されたまま


夕立「負けたわ…」

時雨「そうだね」


夕立の隣。同じように壁に背を預ける時雨

まさか返ってきた途端、夕立から勝利をもぎ取っていくとは、我が姉の行動力が恐ろしい

結果的には、夕立の罪悪感とか遠慮に付け込んだ形にはなったが

それだって、夕立が手を抜いたわけもないし。白露がそこまで考えてるとも思えない

コンディションを整えるのも戦いだ。それならやっぱり、勝ちだと宣言しても良いだろう


夕立「あたし、弱いかな?」

時雨「まさか」


悪い冗談だ。夕立を弱いと言ってしまったら

僕も含め、世界中の艦娘の8割位は可愛いだけの女の子だ


夕立「でも、負けたわ…」

時雨「負けるのは いけない事?」

夕立「勝たなきゃ、何にもならないでしょう?」


そんな当たり前の話。負けて喜ぶやつなんていやしないのだから

勝って勝って勝って勝って勝って…それから…


時雨「勝ってどうする?」

夕立「彩華さんに褒めてもらう」

時雨「ふふっ」


分かりやすい答えに思わず笑みが溢れる


時雨「けど、勝たなくたって彩華さんは褒めてくれると思うよ?」

夕立「それじゃダメよ。慰めてもらいたいわけじゃないもの」

時雨「素直に悔しいって、言ったらどうだい?」

夕立「言わないわ。夕立はまだ負けてないもの」


「よく頑張った」と言われたいわけじゃない、夕立は「よくやった」と言われたい

夕立は彩華さんの艦娘なんだから、深海棲艦だろうがなんだろうが…


夕立「付き合って…」

時雨「ああ…」


背中で壁を叩いて体を起こすと、廊下の奥へと歩いて行く夕立

その背中を追って、時雨も後に続いていった



ーおしまいー



Cパート



ー中庭ー


木陰の下に並んだ机

その上には、お菓子と紅茶とが顔を合わせティータイムの様相を呈していた


金剛「それで、どうして貴女が此処にいるの?」


紅茶の香りを楽しみながら体面に座る彼女、ビスマルクの様子を伺う金剛


ビス子「あら、友人に会うのに理由がいるかしら?」

金剛 「そうね。それはいらないけど…」


友人と、その言葉を否定するほどでもなかった

ティータイムに招いて、何でもない話しに華を咲かせるくらいの仲だとは思う

ただ気になるのは、何故そうも得意気なのかと


金剛「ねぇ、ビス子?あなた、向こうにお友達いないの?」


友達を友達と、改めて宣言する必要なんて無い

わざわざそうするのは、自分にも相手にも確認が欲しいだけで

その上で気になった。未だに彼女の口から 他の娘の名前があまり出ないこと

少なくとも、夕立とケンカして負けた以上の話は覚えがなかった


ビス子「失礼ねっ。友達の1人や2人くらい」

金剛 「言ってみて?」

ビス子「オイゲンでしょ、レーベでしょ、マックスでしょ…」

金剛 「oh…」


身内じゃねーか、そう思ったのは金剛だけじゃなかった


ゆー 「姉様…」

ビス子「何よ…」


ビスマルクの袖を引っ張り、その先を押しとどめたのは ゆーだった


ゆー「身内から数えるのを止めて、恥ずかしいから…」


辛辣だった


ビス子「は、恥ずかしいって何よっ。そういう ユーはどうなのよっ、あなただって大概でしょうっ」


少なくとも。少なくともビスマルクの記憶の中では、自分達の後ろをついて回っていた印象の方が強かった

人の友だちを心配する前に、自分の心配をしてほしいと思うくらいには


ゆー「ゆー?」


不思議そうに首を傾げた後、小さな手を広げて指折り数え始めた


ゆー「こんごう でしょう、みーなでしょう…」


名前を呼ばれて、ゆーに笑顔を返す2人

同じ席を囲む娘から上げるあたりは、可愛がられ方を知ってるようだった


ゆー「ポーラは…どうしようっかな」


そうして最後、ポーラの番になり首を傾けた


ポーラ「あぁん。そんな寂しいこと言わないでぇ、ポーラも仲間に入れてくださいって」


すかさず ゆーに擦り寄り抱きついて、頬擦りを始めるポーラ


ゆー「ポーラ…離れて、お酒くさいから…あと真似しないでって」


ポーラの顔を小さな両手で押しのけるゆー

けどそれだけ、面白いようにポーラの頬が形を変えるだけで、それ以上にはならなかった


ゆー「わかった、わかったから…一応、ポーラもって」


結局、根負けした ゆーが、一応でも頷いていた


ポーラ「やーりまーしたーっ」


勝利の雄叫び。それにしては、大分に間延びしているが、それでも嬉しそうに両手を上げる ポーラ


ビス子「アナタは…それでいいの?」


一応って、そんなぞんざいな扱いで満足してしまっているポーラが不思議で堪らない


ポーラ「おや?ポーラが羨ましいんですかぁ?寂しいなら、ポーラが慰めてあげますよ?」

ビス子「誰が羨ましいもんですかっ」


両手を広げるポーラに食って掛かるビスマルク


ゆー 「姉様座って、みっともないから…」

ビス子「み、みっともないって…あなたね…」


なんだろう、合う度合う度口が悪くなっている気がするのは…

けれど、たしかにこれ以上騒ぐと言葉通りなのは確かで、渋々と、何でもない風を装って席に座り直すしかなかった


水無月「まぁまぁ、ビス子さんだって、ちょっと恥ずかしかっただけだよね。分かる分かる」


いくら友達だからって、改めて友達ですっていうのは ちょっと恥ずかしいってのはそう 思うもの


ビス子「そこのアナタ。ビス子じゃなくて、ビスマルク」

水無月「ん?でも皆呼んでるよ?」

ビス子「だからってアナタが呼んでいい理由にはっ」

水無月「もう、しょうが無いなぁ…」


でも、たしかに一理はある

あって間もないし、いきなりビス子と言われるのがイヤって言われたら仕方ない


だったら


水無月「まるるん?」


とても良いと思った

ちょっとビスマルクさんは刺々しいから、この辺で角をとっとくくらいが丁度いいかなって


金剛「…」


顔を伏せる。危なかった、紅茶を口に含んでいたら吹いてたかもしれない

ポーラなんか隠しもせずに「まるるん、まるるん」言って面白がっているし

ゆーは1人、小さく深呼吸をしていた


ビス子「まるるんって言うなっ」

水無月「もうビスマルクさんってば…ケチなの?」


友達なんだから、あだ名で呼ぶくらい良いと思うのに

それとも、やっぱり恥ずかしいのかな…


ビス子「だ、だれがっ」


半ば、椅子を蹴っ飛ばすように立ち上がるビスマルク

けれど、その頭に冷水のような冷たい声が被せられた


ゆー 「姉様…みーなに手を上げたら…ゆー、怒るよ?」

ビス子「いまのはこの娘がっ」


竦みそうになった背筋を必死に伸ばす

もともと静かだった娘だったけれど、今はそれよりも冷たいとそう感じるほどだった


金剛「みぃ、I'm sorry?」


見かねた金剛が間に入る


水無月「あ、うん。ビスマルクさん、そのごめんね、ちょっと言い過ぎたよ」

ビス子「あ、えっと…」


冷たいゆーの言葉に頭が冷えて、素直に下がる頭に毒気が抜かれる

立ち上がった足と、握った拳のやり場に困り、中途半端な体勢で固まってしまった


金剛 「ビスマルク」

ビス子「いいわよ、もう。私も大人気なかったわ」


窘められるように名前を呼ばれると、渋々ながらも席に戻るビスマルク


水無月「よかった。それで、水無月は結局、ビス子とまるるんってどっちで呼べば良いのかな?」

ビス子「きぃっ!」

水無月「あわわわ、ごめんなさいごめんなさいっ」


キツイ視線を向けられて慌てて平謝りを始める水無月だった


ビス子「ったく。もう、ビス子でいいわ…」


少なくとも、まるるんって言われるよりは余程良かった


水無月「そか。よろしくねっ、ビス子さん」

ビス子「え、ええ…わたし、こそ…」


屈託のない笑顔。好意の形がそのまま表情を作ってるような

対して自分はどうだろうか、彼女の瞳に映る自分が見られずに

言葉を濁しながら、なんとか頷くだけはできた


ポーラ「でー?なーにをそんなカリカリしてるんですかぁ?」

ビス子「カリカリなんて…」

ポーラ「ご冗談を。焼けたベーコンの方が美味しいだけマシですよ?」

ビス子「うぐ…」


図星、ではあった

指摘されれば、その苛立ちの一端でも水無月に向けてしまったのは申し訳なく思う


ポーラ「さぁさ、のんで?のんで?それで吐き出しましょ?」


どこからか、とりだしたワイングラス

紅茶の香り漂う席に、ほんのり果実酒の誘惑が漂いだした




ビス子「だってぇ…だってぇ…」


出来上がっていた

真っ赤な顔、湛える涙、口元の雫は見ないふり

とてもじゃないが、とてもじゃない


ゆー 「ぁっ…」

水無月「ゆーちゃん、ストップ」


開きかけた ゆーの口を さっと抑える水無月


ゆー「なに?」


不思議そうに水無月を覗き込む ゆー

何と言われれば、何でもない。ただ、予感がした

飾り気のない言葉がビス子さんに突き刺さるんじゃないかって


水無月「なんでもない、けど」

ゆー 「ふーん。ぅっ…」


再度、小さな口を手で抑える


ゆー 「みーな?」

水無月「そ、そいう遊びだよ…多分」

ゆー 「ふーん。へんなの…」


苦し言い訳。だけど、とりあえずは納得してくれたようで

それから少しの間。開きかけるゆーの口を抑える遊びを続けることになった




金剛 「夕立に負けたなんて、いつもでしょう?」

ビス子「そうだけどぉ…また、強くなってんのよ、アイツ…」

ポーラ「あなたが弱いんじゃありません?」

ビス子「え…」


きょとんと、ポーラの顔を見つめたかと思えば


ビス子「あぁぁぁん、そんな事ないもぉぉぉぉん」


泣き出した。割りとマジで


ポーラ「お、おぅ…」

金剛 「ポーラ、おだまり…」

ポーラ「あい」


お口にチャックをして、ビスマルクからお酒を取り上げるポーラ


金剛 「HEY、ビスマルク。だからって、ここで泣いても解決しないよ?」

ビス子「ひっく…。そうだけど、そうじゃなくて…白露が…だから」

金剛 「ああ、そういう…」


途切れ途切れの言葉から、摘みとった内容

そうは言っても、家出した白露が戻ってきたら勝ってたんだから、なにか秘密があるんじゃないかって

さらに悪夢だったのは。白露に負けたあと、夕立がまた強くなってるという事実


金剛「まぁ、負けっぱなしじゃ終わらないわよね。あの娘なら…」


分かる話だ。勝てないなら練度を上げて魚雷で殴ればいい、それを実践するタイプ

下手な小細工なんて蹴飛ばして歩いてくるから

機雷原を中央突破された時の気持ちを想像すれば、そら恐ろしくもなる


相性が悪いんだろう

ビスマルクの練度だって低くはない、そりゃあれだけ殴られてれば嫌でも上がる

けど、下手に練度が高いと要らないことまで考えるから

勝ち筋を想定して、実践して…、悪いとは言わないけど

予定が狂ったときの融通のきかなさが、敗因に思える


だからこそ、言わなければいけない


金剛 「ビスマルク」

ビス子「なによぉぉ…お説教なんて…」

金剛 「Non。ただのアドバイス…」


「戦艦は簡単に沈みませんよ」それが、私たちの合言葉


その後迎えにきたオイゲンが平謝りしながら、ビスマルクを引きずって帰っていった



ーおしまいー




水無月と水着



ー執務室ー



嗄れたベルの音

どこから引っ張り出してきたのか机の片隅で震える黒電話


皐月「はーい。こちら◯◯鎮守府」


受話器を取り上げると、向こうの方からくぐもった声が聞こえてきた


「皐月っ、なんか変な手紙届いてなかったっ」


誰だろうか?

古い電話のせいで、声がかすれていまいちと判断が付かなかった


水無月「さっちーん。なんか占守から手紙きてるよー」

皐月 「ああ…」


それで糸が繋がった

今しがた届いた変な手紙。差出人は占守で、電話口にいるのは喋り方からして国後だろう


皐月「今来たみたいだけど、何かあったのかい?」

国後「焼いてっ今すぐっ!」


必死だった。理由は分からないが、それだけは分かった


水無月「おっ、水着じゃん。かわいいかわいい」

皐月 「ん?」


けれど、そんな国後の焦りなんて知りもせず

興味の赴くままに封を切っていた水無月。出てきたのは一枚の写真だった


皐月「水着の写真?」

国後「ぎゃーっ!?あ、アイツはっ、今っいるのっ!?」

皐月「アイツって…司令官?」

国後「見られる前に、破って!焼いて!打ち捨ててっ!!」

皐月「何もそんな…」


よほど酷い水着を被せられたのか

水無月が持ってきた写真を覗き込んで見る


そこには、占守に取り押さえられている国後が映っていた

必死にカメラのフレームから逃れようとしている国後が、どこか如何わしくも見える

その姿が水着であるなら尚の事。あんまり暴れたせいか、少しズレてるのも気になった


桃色で可愛く纏まっている水着姿

お腹に胸元に、少々露出が多いのは背伸びしたい年頃なのか、それさえも愛らしい

角度の浅いパンツの部分、それを補うためにスカート状に広がったフリル

惜しげもなく晒される太もも、日に焼けることもなく まっさらなままに

厚手の上着で隠れていた胸も、それだけになってしまえばしっかりと曲線が見て取れた


皐月「可愛いと思うけど?」

国後「ありがとうっ、焼いてっ」

皐月「そんなにイヤかい?」

国後「アイツに見られたときのこと想像してみなさいよっ!」

皐月「んー…まぁ…」


好きそうだとは思う、からかいそうだとはもっと思う

この場にいないだけで手は出されないだろうけど、良からぬことは考えるんだろうとは


国後「でしょっ!」


皐月の沈黙を同意と受け取ったのか、語気を強める国後

隣りにいたなら両肩でも掴まれていそうな勢いだ


皐月「分かった、分かったから。焼き増しは裏に書けばいい?」

国後「きぃーっ!!」


威嚇された。もう言葉ですら無い

電話口の向こうで髪を逆立てているのが容易に想像出来る


皐月「ごめん、ごめんってば。見られないうちに処分するからさ。これでいいかい?」

国後「うん…。悪いけど、お願い…」


聞き入れられた事で、ようやっと声を落ち着ける国後

その向こうで「どうして司令官に見せないっすかっ、このいくじなしっ」「だからメールでおくりましょうって…」


国後「るっさいわよっ、アンタ達っ!」


などと、主犯の皆様方の声が漏れ聞こえ来ていた




とは言えだ、人の写真を切り刻んで燃やすというのも少々抵抗がある

かと言ってゴミ箱に入れるだけだと、バレる可能性も無くはない


水無月「司令官って、こういう水着好きなのかな…」


ソファに寝っ転がって、しげしげと写真を眺めている水無月


皐月 「嫌いじゃないとは思うけど?」

水無月「好きなのかな?」


曖昧な皐月の答えが物足りないのか、体を起こしてハッキリと問い出す


皐月「いや、まぁ…。ていうか、どうしたのさ?」


妙に食いついてくる妹に気圧されながら首を傾げる


水無月「だってさー、司令官さー、あんまり水無月のこと構ってくれないしさー」


ソファの縁に顎を乗せ、頬を膨らませたかと思えば

さも、つまらなそうに足をバタ付かせ始めた


皐月 「そうかい?仲良さそうには見えるけど?」

水無月「仲いいだけだもん…だいたいさ…」


遊んでもらうにしたって、いっつも水無月から行かないとだし

そのくせ水無月が困ってる時には余計に困らせてくるしさ


皐月「司令官はだって、ボクらが右往左往してるの見るのが趣味な所あるから…」


口にして思うが、それは妹も同様のようで


水無月「今更だけどさ…性質悪いよね…」

皐月 「ほんとにね…」


あれでも丸くはなったんだけど…

というより、ボクらが慣れて、司令官も落ち着いてきたが正しいとは思う

あの写真を見せたらどんな反応をするか…感想を書いて送り返すくらいはしそうだ


水無月「そうは言ってもイチャイチャするんだよねー、さっちんはー」


目を細め姉を見つめる。間延びした言葉の端々からは不満が漏れ聞こえくるようでもあった


皐月 「別にイチャついてなんか…」

水無月「ないって言ったら この写真、司令官に見せに行くから」

皐月 「その写真っても…」


突き出された1枚の写真。映ってるのは変わらず国後の水着姿

哀れ国後は人質にされてしまった…んだけど、ボクにはあんまり関係なかったりもする

一応、処分しとくと言った手前もあるから「どうぞ?」とも言いづらいだけで


水無月「考えてもごらんよ?国後に釘付けになる司令官の視線」

皐月 「…」


言われて写真を見つめ直す皐月

呆れ顔だったそれは、次第につまらなそうに表情を消していった


皐月「貸して」


半ば奪い取るように水無月の手から写真を取り上げ、自分の懐に収めてしまった


水無月「分かる分かる」


予想通り。姉の様子に満足そうに頷く水無月

そりゃ国後は可愛いよ?目が向いてしまうのは仕方がないのも

で・も・だっ、隣に自分達がいるんだから こっち見てよさって

思ったって悪くない、思ったって良いはずだ、いわんや こっち見ろと思ったって


皐月「それで、水無月は何が言いたいのさ?」


妹の提案は簡単だった


「水着選ぶの手伝ってっ」



ー母港ー



金剛「て・い・と・く~♪」


桟橋の先、送られてくる熱いラブコール、水着姿の金剛さん

本当なら砂浜にまで行きたかったけど「暑い、めんどくさい」と

望月のような事を言って譲らない提督を、何とかかんとか外まで引きずり出していた


桟橋に突き刺さったビーチパラソル

後で直すハメになる妖精さん達の苦労を代償に夏の日差しから影を作っていた

そんな日陰の下から金剛を眺める提督


眩しい。日差しも相まってか、見せつけるように晒された素肌が一層輝いて見える

シンプルな赤いビキニもまた、彼女の熱量を引き上げていた

それ自体は赤い水着でしか無いのに、彼女の魅力はそれをも取り込んで一段上へと昇っている

豊満な胸も、くびれた腰つきも、肉付きの良い太ももまでも

一際目立つ赤い色に誘われるように、思わず見入ってしまう


「提督?」


静かに呼ばれる

気づけば金剛の隣で小さく手を振っている大鳳。金剛の例に習うように水着を着ていた


スクール水着とまではいかないが

競泳でもする気なのだろうか、機能美を追求したようなしっかりとしたデザイン

そこに、色はなくても華はあった。紺色に包まれた大鳳の体

露出は少ない。けれど、密着する水着、浮き出る体のラインは水着の向こう側を想像するのに苦労はなかった

紺色と、肌色のコントラスト、見えない分だけ見てみたくなる誘惑

じっとりと、汗の滲む首筋。そこから続く鎖骨と胸元

普段より広めに空いた腋の下とその奥の膨らみ。引き締まった太ももに食い込む水着のライン


金剛「む、やりますね…大鳳」

大鳳「まあね?」


不適に微笑む大鳳。伊達に普段からトレーニングをしてるわけではないのだ

見せて困る体はしていないし、こういう時に使わないのは勿体無いとさえも思う


方向性は違えども

自分の魅力はしっかりと理解している2人だった




ならば勝負とならないはずもなく、目標は海の先に浮かぶブイ

ルールなんてのは適当で、よーいのドンて先に着けばそれでいい


大鳳「頑張りましょうね?」

金剛「負けませんからっ」


軽く、金剛の肩を叩く大鳳

それに勝ち気な笑みを返すと、飛び込む構えを取った


提督「よーい…どん」


手を叩く提督。上がる水飛沫と


「きゃぁぁぁぁっ」


悲鳴だった


先を行く大鳳とは裏腹に、水面に顔をだす金剛

胸元を手で隠し、キョロキョロとその場で浮足立っていた




三日月「うわぁ…」

望月 「…うわぁ」


呆れる姉と、それに輪唱する妹


提督 「外れたか…」

三日月「いやいや、今のはだって…」


正確に言えば外された

緩んだ所に、飛び込んだ衝撃。ビキニブラの弱点が露呈した形になっていた

敗因は金剛がちゃんと結んでいなかった…では無く。勝因は大鳳の小細工が正しい


金剛の肩に触れた時

お互いの健闘を祈るようの素振りの後ろで、ちょろっと結び目を引いていた

上手いことやったものだ。少なくとも金剛は気づかなかった、気づかなかったからこうなっているが

後ろから見ていた、3人にはバッチリと見えていた

それでも、随分とさり気ない仕草だったのは賞賛すべきなのかどうかは人による


「大人気ねぇ…」


その呟きは誰のものでもなく、ただの総意だった


望月「さいきんさ、隠さなくなってきたよな…」

提督「バレてるのも承知なんだろう」

望月「開き直るってのは厄介だよねぇ…」


提督のそばに寝っ転がっている望月

白昼堂々行われた闇討ちに、呆れるやら感心するやら


三日月「…あなたが言うの?」


それが、お姉ちゃん的には不満だったらしい

主立ってはその格好。制服なのはスカートだけで、あとは暑いの一言で脱ぎ捨ててしまっている

灰色の肌着、それだけで特に飾りっ気もないけれど

汗ばんだ肌に張り付いて、いろいろと浮き出ているのが気にはなる

それがどうだと言われれば、だらしがないとしか言えないけれど


だって、海に出ている金剛さん達に比べたら、それくらいは大した事のない格好ではあったから


望月「下に水着着こんでる奴に言われたくはねぇ…」


あたしがだらしないってんなら、三日月は往生際が悪いとしか言いようがない


三日月「っ!?」


口を閉じる。これ以上妹を突っつけば墓穴だと理解した


提督「なに、今面白い話が聞こえたけど?」


が、理解した所でしっかりと提督の耳には入っていた


三日月「なんでもありません」

提督 「三日月?」

三日月「こっち見ないで下さいっ」


興味深そうに向けられる視線を退かすように、提督を望月の方に押し付ける三日月


提督「やだ、ふられたわ」

望月「あついっての…」


三日月に押されるままに、望月の方に倒れ込む提督

しかし暑い。肌が触れあえば、流れた汗で引っ付いてしまいそうな気さえする


提督「大丈夫、私も暑い」

望月「離れればいいのに…」

提督「やだよ。そっちこそ離れれば?」

望月「やだね」


意地の張り合いにも及ばない

お互い暑い暑い言いながらも、ベタベタと引っ付いている


三日月「見てる方が暑いんだけど…」


けれど、着込んだ水着から目をそらさせるには致し方もなくもない




金剛「たぁいほぉぉぉっ!!」


叫ぶ金剛。気づいた時にはもう遅い

大鳳はすでに半分くらいまで泳ぎきっているし、自分の両手は塞がっている

外れたことに気付かなかったらどうなっていたことか


ほうら、向こうで大鳳が手を振っている

きっと自分も同じようにしただろう、そうなっていたら…


ゆー「こんご…落ちてた」


悔しさに歯噛みする金剛の前に、差し出された赤い水着


金剛「さんくす、ゆー…」


できればもう少し早く持ってきて欲しかったけども

それで追いつけたとは思えないので、もうどうとでも


金剛「…ていうか、あなた。どうして、スク水を?」

ゆー「こっちのが楽だったから…」


いつもの艤装(スーツ)は確かに動きやすいけど着るとなると面倒くさかった

足を通すのも、胸元まで引き上げるのも、腕を通すのだって一苦労だ

その点、コレは良かった。伸ばせば伸びるし、太ももに引っかかる事もないぶんすんなりだ


ゆー「へん?」


首を傾げる

気になることと言えばコレくらいのもので、ゆーが水着を付けても似合わないんじゃないかという事くらい


金剛「いえ、似合ってはいますが…」


言い換えれば子供っぽいとも言えそうだけども

もともとの容姿がそうなのだから、それで違和感を生じるはずもなかった


ゆー「かわいい?」

金剛「いえす…」


素直に頷く。だって元々が可愛いのだから

多少スク水が野暮ったくても、それで霞む程ではないし

むしろ、いつもと違う格好は、新鮮さを伴って新しい刺激になっている


ゆー「よかった…」


安心したように息を吐くと、そのまま波に紛れて流れていってしまった


金剛「はばないすでい…」


それを見送る金剛。溺れないよう気をつけては、する必要のない心配だろう


残った問題は大鳳だ。やり返そうにも、相手の水着は完全防備のワンピース

肩紐を外すにしたって、指をかけた瞬間バレるだろうし

いっそ、ここから砲撃して中破させると手もあるが…流石に大人気がないだろう


金剛「覚えてなさいよ、あんちくしょうめ…」


いずれ訪れるかもしれない機会に備える金剛さんだった




水無月「あ、いたいた」


桟橋の根本に司令官の姿を見つけるや、嬉しそうに駆け寄っていく水無月


水無月「司令官、司令官っ」

提督 「おや…」

水無月「どうかな?どうかな?」


物珍しそうに目を開く提督に、見せつけるようにして体を広げる


爽やかな水色。彼女の髪もそうだけど

それよりも目についたのは胸元で、チューブトップの水着が撒かれていた

下の方はデニムの短パンを履いており、白いお腹が眩しく見える

少し背伸びもしたのだろう。短パンのチャックだけを上げて、外したままのボタン

その奥に見えたのは、上とおそろいのビキニのパンツだった


提督 「良いんじゃないか?」

水無月「えぇ…、それだけ?そんだけなの?」


流すような提督の感想に不満を隠さない水無月


水無月「もっとちゃんと見てよっ」


提督の真正面に立つと、逃げられないように両頬を手で抑えて固定する


提督「ちゃんとって…」


目のやり場に困る。正直な感想がコレ


水無月「いいんだよ?いいんだよ?素直な感想を言ってくれてもさ?」


座っている提督に、目線を合わせるように屈み込んでくる水無月

自然と胸元が、それも上の方から視界に入ってくる

なる程どうして、水着に軽く締め上げられた胸

僅かながらに出来た谷間、続いていく膨らみは確かに少女のものだった

覗き込んだわけもないのに、見えてくる短パンの奥

下着ではない。ただの水着なのだけれど、そう見せられるとそうとしか見えなくもなっていた


水無月「へ?」


脇腹を掴む。見ている分には飽きないが、いつまでも見てるには心臓に悪かった

不思議そうな顔をする水無月をそのまま持ち上げて、桟橋の先へと向かっていく


提督 「かわいいぞーっ、水無月っ」

水無月「え、あ、ちょっ、たんまたんまぁっぁ!?」


放り投げた、放り投げられた

上がる水飛沫の中から、水無月の恨み言が聞こえてくるのも束の間


睦月「てーいーとーくー、睦月も睦月もっ♪」

提督「仕方もなし、か」


制服のまま駆け寄ってくる睦月

飛び込んでくるままに受け止めると、勢いをつけて海に放り投げる


睦月「きゃーっ♪」


悲鳴は一緒。だけど、こちらは随分と楽しそうだった


卯月「うーちゃんも、うーちゃんもーっ」


見つかったのが最後だろう

今度は飛び込んできた卯月を受け止めて、海へポイッ


菊月「司令官…」


両手を上げて、投げられる準備の完了した菊月をまた海へと投げ込んだ


如月「如月も、如月もー」

提督「いいけど…」


珍しいな、とは思う


如月「やだ…どこ触って…」


持ち上げてみるとこうだった。わざとらしく頬を染めてさえいる

両手で抱えあげれば自然と触ってしまうし、何より両手を上げて待機しておいて何を言うか


提督「それがやりたかっただけだ、ろっ」

如月「やーん♪」


お望み通り海へと放り投げた


「ずいほーもずいほーも」


聞こえてくる声。なんとなく卯月のような気もするし、卯月が良いそうな事でもある

けれど、辺りを見回しても瑞鳳の影もなし、投げ込もうにも弾がない


ーぱちんっー


指を弾く、簡単なことでございます


「へ?」間の抜けた瑞鳳の声が水面に吸い込まれていた


瑞鳳「ぷはっ、な、なによ…いきなり…」


ずぶ濡れ。物の見事なまでに体中どころか、首から下が海に沈んでさえいる


卯月「ぷははははははっ、ずいほーっおほほほほほほっ」


何がそんなに楽しいのだろうか、濡れ瑞鳳を指差しながら笑っている卯月


瑞鳳「うーづーきーっ」


吼える。そうして捕まえようと手を伸ばす

やったのは提督だろうけど、そんなのは後だ

目の前で笑っているバカウサギの頬を引っ張らないと気がすまなかった


卯月 「もうっ!どうして ずいほーはすぐうーちゃんのせいにするのっ!」

瑞鳳 「卯月の言うことかっ!」

卯月 「水無月がやったかもしれないでしょっ!」

水無月「待ってっ!?どうして水無月を巻き込むのっ!?」

瑞鳳 「どっちでも良いわよそんなもんっ」

水無月「そんな乱暴なっ」

瑞鳳 「しるかいっ、アンタの姉ちゃんが悪いんだからっ」

水無月「むっつんっ、たすけてーっ!?」

睦月 「なんとーっ!」


見境もなく駆逐艦に襲いかかる瑞鳳。良くわからない光景出来上がっていた


如月「あらあら…どうしましょうか?」

菊月「混ざるか?」

如月「いいわね…」


姉と妹、頷きあうと、姉妹たちを追いかけ回す瑞鳳を追いかけていった




長月「ぉぃ…」

弥生「なに?」


日陰の下で、楽しそうに遊ぶ娘達を眺めている2人

怪訝な顔をする長月に、不思議そうに首を傾げる弥生


長月「いや…なんというか」


なんて言おうか、何を言うべきか分からない

取り敢えず面白がっているのはそうだけど、その無表情からはそれを読み取るだけで精一杯だった


弥生「ひどい、長月ったら…弥生を疑っているの?」


言動は傷ついた少女のそれだった

けれど、表情が伴わないとこうも説得力に掛けるのかという良い見本でもあった


長月「いや、疑ってはいないよ…?」


疑う余地もない。それどころか確信さえもする

卯月の声のようではあったが、姉の声を聞き間違えるはずもなく


弥生「そう…。よかった…」

長月「…」


分かっててやってるのか。どこまでが本気なのか

ただ確実なのは。寄りかかってくる姉の重みが肌に心地いいことと


長月「暑いな…」

弥生「そうだね…」


季節的にどうしようもないことくらいだった




文月 「三日月も三日月もっ!」

三日月「ちょっと待ってっ!?」


余計な一言とはまさにコレだった


提督「三日月…?あぁ、そういえば水着だったね」


振り返った提督は、しっかりと三日月を見つめていた

悪いことに、水無月が有耶無耶にしていた事を思い出させてもいた


文月「今年の新作はねっ…」


制服の裾に掛かる指。そのまま一気に持ち上げると、おへその当たりが顕になった


三日月「わーわーわーっ!?」


慌てて服を手繰り寄せる三日月

引っ張られる服の裾、見え隠れする脇腹


提督「ほぅ…」


少なくとも、少なくともだ。ワンピース型という線は無くなった

上と下は別れている、お腹周りがそう語っている

更に見えたのは淡い桃色。ブラの端っこに、パンツの隅っこが少なくともそうだと言っている

黒い髪に、黒い制服、その下から覗く桃色。いつもと違う彼女の風味に俄然興味がそそられた


三日月「もうっ、姉さんのバカっ!」


振り切り、駆け出していく三日月


文月「まったく…」


困っちゃうなぁ。未だにスク水で誤魔化そうとするだもん

往生際が悪いとはまさに、(無理やり)手伝った文月の事も考えて欲しいよ


望月「止めときなよ司令官…」


追いかけようとした提督の裾を引いて、その場に縫いとめる


望月「ありゃ、本気で泣くぜ?」


考えるのは、困った姉もいたたものだと


提督「そうか…」

文月「そうそう」


考えるのは、困った妹もいたものだと




皐月「おっと」


桟橋に向かう途中、前を見ないで走ってくる三日月をなんとか受け止める


三日月「ねえさぁぁん」


ぶつかって初めて姉と分かり、たまらず抱きついていた


皐月「なに?どうしたのさ?」


半分くらいは泣いてそうな声音

縋り付いてくる三日月の背中を擦りながらも、司令官がまたやりすぎたのかとも考える


三日月「水着…見られそうに…なって…だから…」

皐月 「いや、見せなよ?水着でしょ?」


なんか良くわからないことを言われた


三日月「だって…はずかしいじゃない…」

皐月 「それは、そうだけど…」


自分だって、適当に言い訳してスク水で誤魔化してる口だから、そこに対して強くは言えなかった


皐月 「新しいの選んだんだろ?」

三日月「ぅぅ…」


唸るだけ。不満そうに声にならない声を漏らす

そうは言っても、とは言わないけど、そう言いたそうには見えた


皐月「分かったから。取り敢えず着替えてこようか?」

三日月「ん…」


三日月の背中を擦りながら、鎮守府に踵を返す皐月


仕方がない。無理に司令官の前に突き出すわけにもいかないし

そんなことをすれば明日は我が身の保身もあるし




「随分と可愛いの選んだじゃん…」

「あっ、もうっ、見ないでよっ!?」

「はいはい」




瑞鳳「はぁはぁ…」


ずぶ濡れであった。逢魔が時にずぶ濡れの少女が海から這い上がってくる

それはある種の妖怪と言えば信じてもらえそうな程の絵面だった


手には卯月を、手には睦月を、肩には如月と菊月を引っ掛けて

桟橋にせり上がってくると同時に倒れ込む


瑞鳳「つっかれた…」


後も先もないこの一言が全てだった


卯月「ふひぃ…」

睦月「にゃしぃ…」


抱えられた2人は満足そうに伸び切って


如月「さ、少し休んだらお風呂行きましょうか。風邪を引いてしまうわ」

菊月「うん」


肩に引っかかった2人もまた、楽しそうに笑い合う




「ちっがぁぁぁぁうっ!!」


内心、頭を抱え叫んでいた水無月


すっかり遊んでしまった、遊び終わった挙句の疲労でようやっと思い出したと言っていいほどに


せめて、せめて「かわいいねっ」てくらいは言って欲しかった

いや、言われたんだけど。あんなんじゃなくて、せめてもっと普通にって

冗談めかしててもいいから、面と向かって言われたかっただけなのに


「どうしたこうなったぁぁぁぁっ」


再び叫んで、顔を上げる

いてもたってもいられない、言質は取るものだと瑞鳳も言っていた事にする


水無月「しーれーいーかーんっ」


鎮守府に戻るその背中を見つける

そのまま駆け出して、手を握り、引っ張り回して、工廠の裏にまで引き込んだ


提督 「なに?」

水無月「何じゃないよっ。みーずーぎーっ、感想が聞きたいのっ!」

提督 「感想って…」


薄暗い工廠の裏。すでに夕方な事もあってか、一足早く夜の帳が降り始めている

人気もない、誰もいない、そんな中に水着の女の子と二人きり


濡れた髪と、乾ききっていない肌から滴る雫

強引に走ったせいか息は上がり、うっすらと肌が朱に染まっている


水無月「それとも…似合ってない?」


とんと落ちる声音。自分では自信があったつもりなのに

そうでなかったら…そんな不安が影になって落ちていた


提督「んー…」


茶化す場面ではないが。正直なんと言って良いのやら

「かわいいねっ」て、それで良いのだろうか?皐月の真似してとか言われないか?

以前に、信じてもらえない可能性が…。あったとしたら日頃の行いとしか言えないけども


水無月「しれい、かん?」


服の裾を掴まれる。見上げてくる視線は不安に揺れていた


提督 「水無月…」

水無月「へ?」


彼女の頬に手を添える

そうして、その口が何かを言う前に…


柔らかい、温かい、乱れた呼吸が慌ただしく入れ替わる

驚きに開いた目、何かを言おうと口の端からくぐもった声だけが漏れている


「ぁ…」


物足りなさと、開放感。戸惑に ときめく胸に押されてただ、何も言えずに声だけを漏らす

しばらく、ううん、たぶんほんの少しの間だったんだろうけど、自分には随分と長く感じられた一時

何も考えられずに、ただ司令官の顔を見つめ続けていた


提督「かわいいよ、水無月」


「ぁ、あ…」その言葉にようやく意識が戻ってくる

自分がされたこと、自分が言われたことが実感になって返ってくる

何か言おうにも何も言えない、自分がどうしたいのかも分からない


可愛いって言われたかった、可愛いって言われたのに

ありがとうとか、もっと感想をねだることも、司令官をからかうだとか、色々考えてたのに

頭は真っ白になって全然動いちゃくれなかった


口元を抑えていた、唇をなぞっていた

残ってるはずもない司令官の温もりと感触を思い出してるみたいだった

司令官の顔が近づいてきて、気づいた時には触れ合っていた


キス…なんだよね…


どうだったかなんて、もう覚えちゃいなかった

考えが彼方に飛んでったと思ったら、胸が煩いくらいになっていただけ


「うわ、あ、あー、あぁぁぁぁ」


駆け出していた。何か言った気もするし、何も言えてない感じもしたし




提督「私、間違ったかな?」

夕張「てはないとは思うけど。こんな所でラブコメすんなっては思う」


工廠の裏。人気もないと思ったら

窓から顔を覗かせて夕張さんが、水無月の背中を見送っていた



ー執務室ー



飛び込んできた水無月が、なりふりも構わずソファに突っ込んで動かなくなっていた


皐月「…どう、したんだい?」


呆気にとられているままという訳にもいかず

声をかけてみたけども、何も言わずに動かないまま、しばらく静かな時間が流れている


「き、ぅ…ちゅーされた…」


それを破ったのは水無月の方からで、その内容は素っ頓狂なものだった


皐月「は?」


言ってる意味が分からない

キスと言いかけて、ちゅーと言い直した理由は恥ずかしかったからだろうけど

なんで行き成りそんな話になってるのかが分からない


水無月「どうしよう、さっちん…」

皐月 「どうしようったって…それは、よかったん、じゃん?」


少なくとも自分ならそうだし

そもそも、もっと仲良くなりにいったんだから結果オーライとも思う

さすがに、ちゅーされるまでは考えてなかっただろうけど


水無月「良くないよっ!?」

皐月 「そ、そう、なの?」


何も言えない、というか状況が分からない

水着のまま突っ込んできたと思ったら、ちゅーされたって状況を最初から説明して欲しい


水無月「水無月っ、明日からどんな顔して司令官に合えばいいのさっ!?」

皐月 「いつも通りで良いじゃんか…」

水無月「いつも通りって何っ!?水無月どんな顔してたっ!」

皐月 「どうって、鏡…見るかい?」


差し向けた手鏡。けれどそれは、両手で遮られてしまった


水無月「わーわーわーっ、だめだめだめっ。いま水無月ぜったい変な顔してるもんっ」

皐月 「顔はともかく…」


変なのはそうだった


水無月「お願いだよっ、さっちんはどうしてるのさっ」

皐月 「どうって…」


なんだろう。今これ、妹にちゅーの仕方を教えろって言われてるのかな


水無月「いつも平気でやってることでしょっ!?」

皐月 「いつもはしてはないよっ!」

水無月「けど、してるんじゃんっ!?」

皐月 「そうだけどっ…そんなの…わかんないし…」


水無月の調子に合わせて強まっていった語気も

思い出したような羞恥心に阻まれて次第に口ごもっていった


水無月「次されたらどうしよ…水無月、うまく出来るかな…」

皐月 「いや、上手いとか下手とか…そういうのは…」

水無月「さっちん…ちょっと、してみよっか」

皐月 「は?」


「は?」なんて、一日で2度も言うとは思わなかった

言ってる意味がわからないんじゃない、その意図が汲み取れない

「お前は何をいってるんだ?」と問いただしたくもなる


水無月「だから、ちゅーだよちゅー、れんしゅー」


ソファから飛び上がると、唇を尖らせながら姉に迫る妹


皐月 「まってまってまってっ、どうしてそうなるのさっ」

水無月「妹が恥をかいても良いっていうのっ」

皐月 「恥とかそんなの無いからっ」

水無月「水無月が嫌なのっ。されなくなったらさっちんのせいだからねっ」

皐月 「落ち着きなよっ。イヤとかじゃなかったのかいっ」

水無月「そんな事言ってないでしょっ」

皐月 「だったら司令官のとこ行ってきなよっ」

水無月「いけるわけ無いじゃんっ!?さっちんってバカなのっ!」

皐月 「バカって何さっ!キスくらいで騒いでる水無月の方がバカみたいじゃんかっ!」

水無月「さっちんだって騒いでるじゃんっ!そんなに言うならおとなしくキスされろよっ!」

皐月 「あーもうっ!知らないんだからっ!」


そんな騒がしい夏の一日でした



ーおしまいー



後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです



ゆー「うーちゃん姉さんのー」
弥生「やってみたかっただけのコーナー」
卯月「ぴょーん♪」

提督「ま、今回は私がやるんだけどな」
弥生「何するの?」
提督「まずは、うたた寝をしている菊月を用意します」

「zzz…」

卯月「今がチャンスだぴょん…」
弥生「しぃ…起きちゃうから…」

提督「ゆー、これ歌って?」
ゆー「ん?わかった…」
提督「せーの…」

ゆー「やーがてー、ほしがふるー…ほしがふるー…ころー♪
   こーころ…、ときめいて、ときめいて…♪」

菊月「ん…むぅ…」

提督「ふふ…」
弥生「…」
卯月「寝苦しそうだぴょん…」

長月「止めてやれ…お前ら」
ゆー「良い歌、だと思うけど?」
長月「かも知れないが、良い思い出が無いんだよ…」
ゆー「…たいほーに歌ってもらう?」
長月「マジでやめろ」
大鳳「どういう意味かしら?長月?」
長月「いやまて、私は何も…おい…ぁ…」

提督「すまない、今しかできないと思って…」
弥生「食べないでくださーい」
卯月「食べないぴょんっ」
ゆー「そんなお話だったっけ?」

一時期、意味もなく腰のあたりで左手を回す遊びが流行りました


ー以下蛇足に付き


皐月 「…」
水無月「…」

提督 「どうしたの?」
皐月 「うっさい、司令官が悪いんだよ」
水無月「そーだそーだ…」
提督 「意味分らん…」



提督「まぁ、皐月たちが拗ねてるので、このままコメント返しだよ」



・いつも通りの皆さん

提督「っても、昔に比べて、文月と弥生のはっちゃけっぷりが目立つ気がする」
弥生「司令官に言われたくはない」
文月「司令官に言われたくはないかな」

水無月「ツッコミ役を所望しますっ!」
長月 「わかる」
三日月「うんうん」


どうせ皆ギャグ要因

・海防艦

国後「なんであんなのが提督なのよっ!」

占守「クナったら、帰ってからそればっかりっしゅ…」
択捉「…」(←無言の撮影
占守「何してるっす?」
択捉「状況証拠を固めておこうかと…はい」
占守「抜かりなしっすね…」
択捉「準備は大事」

これから先どうなるにせよ、国後が弄られ続けるのは変わらないと思う

・改2

文月「可愛い女の子だと思った?残念文月でしたぁ」

なので次回はそうなります

・ろくろ首

卯月「瑞鳳は塗り壁」
瑞鳳「卯月はすっからかん」
卯月「瑞鳳は一反木綿」
瑞鳳「卯月はとんちんかん」

「なによっ」「なんなのっ」

とりあえず首をお戻し下さい。43話を差し上げますので



最後までご覧いただきありがとうございました
コメント・評価・応援・オススメも合わせ、重ねてお礼申し上げます

注:私はビスマルクは大好きです。でも彼女をからかうのが楽しくてしょうが無いのです
好きな女の子には悪戯しないと気がすまないのです
でも、頑固で融通が聞かない所はあると思います。だから余計に…(以下無限ループ
そろそろカッコイイシーンも作ってあげないとという気もしますが、また今度

夏イベ前に上げられたし、これでゆっくり大規模作戦が出来るというものです
皆様に於かれましては、この作品がイベント中の暇潰しの一助になれば幸いに思います

新艦娘はアークロイヤル?なんて名前がちらほら見受けられますが
なにそのカッコイイ名前、菊月が喜びそう、一緒になって私も喜ぶ

文月「そして改2はあたしっ」
提督「自動的に次のメインをゲットしました」
文月「シリアスにする?ラブコメにする?それとも…わっふるわっふる♪」
提督「本当にわっふるわっふるのタグ付けたらどうするんだろうねこの娘は」
文月「司令官のえっちー、べーだっ。あははははは」

最後に、暑中お見舞い申し上げます
次にお会い出来る時は残暑も多少はマシになっていることを祈りたいですね
それでは皆様良いイベントを、良い艦これ日和を


ー以下プロフィール(長いー


提督
練度:神頼み 主兵装:刀
「触らぬ神に祟りなしって、言うだろう?」
長髪で黒髪、何時も気だるげな表情をしてる
一応、白い制服を着けてはいるが、上から羽織っている浴衣が全てを台無しにしている、不良軍人
そもそも、軍人どころか人ですら無い、元土地神様
覚えている人もいなくなり、ようやく開放されたと思えば、深海棲艦が湧いてきて…
3食昼寝付きの謳い文句も手伝って、提督業を始めだした
性格は、ほとんど子供。自分でやらないでいい事はまずやらない、明日できることはやらないで良い事
悪戯好きで、スカートめくりが好きなお年ごろ
また、結構な怖がりで、軽度は人見知りから始まり、敵は全て殲滅する主義

皐月ー愛称:さつきちゃん・さっちゃん・さっきー
練度:棲姫級 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「え、司令官かい?そりゃ…好き、だよ?なんてな、えへへへ♪」
初期艦で秘書艦の提督LOVE勢。提督とは一番付き合いの長い娘
その戦闘力は、睦月型どころか一般的な駆逐艦の枠から外れている程…改2になってもっと強くなったよ
「ボクが一番司令官の事を分かってるんだから」とは思いつつも
まだまだ照れが抜けないせいか、ラブコメ時には割とヘタレである

睦月ー愛称:むつきちゃん・むっつー・むっつん
練度:褒めてっ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「提督っ、褒めてっ!」
わかりやすい提督LIKE勢、「ほめて、ほめて~」と、纏わりつく姿は子犬のそれである
たとえその結果、髪の毛をくしゃくしゃにされようとも、撫でて貰えるのならそれもよしっ
好感度は突っ切っているが、ラブコメをするにはまだ早いご様子

如月ー愛称:きさらぎちゃん・きさら
練度:おませさん 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「司令官?ふふ…好きよ?」
提督LOVE勢。良い所も悪い所もあるけれど
むしろ、悪い所の方が目立つけど、それでも あなたが大好きです
だから、何度でも言いたいし、何度でも言われたいの、ね?司令官?

弥生ー愛称:やよいちゃん・やよやよ・やーよ
練度:無表情 主兵装:3式爆雷 好感度:★9
「司令官?好きだよ、普通に」
普通の提督LOVE勢。変わらない表情をそのままに平気で悪戯をしてくる娘
表情が変わらないならと、大袈裟なリアクションも いつもの澄まし顔で本気に取ってもらえない
結局は卯月の姉、卯月絡みで何かあったら半分くらいは弥生のせいと思っていい

卯月ー愛称:うーちゃん・バカうさぎ、うーちゃんねーさん
練度:ぴょんぴょん 主兵装:超10cm高角砲★MAX 好感度:★7
「司令官?そんなの大好きに決まってるぴょんっ」
ぴょんぴょんする提督LIKE勢。毎日ぴょんぴょんと、あちこちで悪戯しては怒られる毎日
主な対象は瑞鳳、「だって、からかうとおもしろいだもん」なんのかんので構ってくれる瑞鳳が好き
口が滑る水無月と違って、一言多いタイプそれもわかった上、いらん事をよく言う2人である

水無月ー愛称:みぃ
練度:うん、わかるよ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★7
「司令官、呼んだかい?」
よく笑う提督LIKE勢。艦娘として姉として妹として仲間として
頼って欲しいと自己アピールは欠かさない。欠かさないけど裏目にでる
胸を張った途端の平謝りが板についてきた
一言多い卯月と違って、よく口が滑るタイプ、いらん事を良く言う2人である

文月ー愛称:ふみ、ふーみん、文月さん
練度:ほんわか 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「しれいかん?えへへー…なーいしょっ♪」
ふんわりとした提督LOVE勢。ちゃっかりと美味しい所はいただくタイプ
ラブコメをする姉妹たちの背中を押したり、喧嘩の仲裁に入ったり
緩衝材みたいに立ち回りつつ、実際はプロレスのロープみたいに跳ね飛ばしてくる
二人っきりになるとそこはしっかりと、ラブコメだってやってみせる
本人曰く「大福餅」白くて甘くて…その先は内緒

長月ー愛称:なつき、なっつん、なっつ
練度:頼りになる 主兵装:5連装酸素魚雷 好感度:★8
「司令官…いや、まあ…いいだろ別にっ」
おでこの広い提督LOVE勢。司令官に ちゅーしてこの方
自分の感情を見ない振りも出来なくなり、最近は割りと素直に好意を見せてくれたりもする
自分の感情に振り回されるくらいにはラブコメ初心者。あと、シスコン(菊月)

菊月ー愛称:菊→菊ちゃん→お菊さん→きっくー→くっきー
練度:威張れるものじゃない 主兵装:12・7cm連装砲B型改2★MAX 好感度:★8
「ながなが?ながなが ながなが」
箱入り提督LIKE勢。おもに長月に過保護にされてるせいでラブコメ関連はさっぱり
しかし、偶に見せる仕草はヘタなラブコメより攻撃力は高い。やっぱり如月の妹である
大艦巨砲主義者、主兵装は夕張に駄々を捏ねて作らせた。それとシスコン(長月)
最近、司令官との共通言語が出来た。合言葉は「ながなが」

三日月ー愛称:みつき・みっきー
練度:負けず嫌い 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「し、しれいかん…そ、その…好きですっ!」
おませな提督LOVE勢。どこで仕入れたのか変な知識は一杯持ってる
そして、変な妄想も結構してる。すぐ赤くなる、可愛い
提督と望月に、からかわれ続けたせいで、たくましくなってきたここ最近
ラブコメモードは基本に忠実

望月ー愛称:もっちー、もっち
練度:適当 主兵装:12・7cm連装砲(後期型  好感度:★MAX
「司令官?あー、好きだよ、好き好き」
適当な提督LOVE勢。とか言いつつ、好感度は振り切ってる
だいたい司令官と一緒に居られれば満足だし、司令官になんかあれば不言実行したりもする
ラブコメには耐性があるが、やるとなれば結構大胆

球磨ー愛称:ヒグマ・球磨ちゃん
練度:強靭・無敵・最強 主兵装:46cm…20.3cm(3号 好感度:★MAX
「提督?愚問だクマ」
突き抜けてる提督LOVE勢。気分は子グマの後ろに控えている母グマ
鎮守府と提督になんか有ろうものなら、のっそりと顔を出してくる、こわい
積極的にラブコメをすることもないが、昔は提督と唇を奪い合った事もある
大艦巨砲主義者。最近、私製46cm単装砲の命中率があがった、やったクマ

多摩ー愛称:たまちゃん・たまにゃん
練度:丸くなる 主兵装:15・2cm連装砲 好感度:★6
「提督?別にどーとも思わないにゃ?」
気分は同居ネコ。とか言いつつ、なんのかんの助けてくれる、要は気分次第
絡まれれば相手もするし、面倒くさそうにもするし、要は気分次第
特に嫌ってるわけでもないし、いっしょに昼寝もしたりする、要は気分次第
ラブコメ?何メルヘンなこと言ってるにゃ

北上ー愛称:北上様・北上さん
練度:Fat付き 主兵装:Fat付き酸素魚雷 好感度:★7
「提督?愛してるよん、なんちって」
奥手な提督LOVE勢。気分は幼なじみだろうか
このままゆるゆると、こんな関係が続くならそれで良いかなって思ってる
最近の趣味はFat付きをばら撒いて海域を制圧すること

大井ー愛称:大井さん・大井っち
練度:北上さん 主兵装:北上…53cm艦首(酸素)魚雷 好感度:★8
「提督?愛してますよ?」
分かりにくい提督LOVE勢。そうは思っていても口にはしない、絶対調子に乗るから
足と両手が埋まったなら、胸…艦首に付ければいいじゃない、おっぱいミサイルとか言わない

木曾ー愛称:きっそー、木曾さん
練度:悪くない 主兵装:甲標的 好感度:★7
「提督?まあ、アリなんじゃないか?」
カッコイイ提督LOVE勢。提督に赤くさせられたり、提督を赤くしたりと、まっとうなラブコメ組
そういうのも悪くはないが、本人はまだまだ強くなりたい模様
インファイター思考だけど、甲標的を使わせたほうが強いジレンマ

金剛ー愛称:こう・こうちゃん・こんご
練度:Burning Love 主兵装:Burning…46cm3連装砲 好感度:★MAX
「提督…Burning Loveです♪」
分かりやすい提督LOVE勢。提督の為ならたとえ火の中水の中
何時からだったのか、出会った時からか
ならそれはきっと運命で、この結果も必然だったのだろう
けれど、鎮守府ではオチ担当、艦隊の面白お姉さん
取り戻せ、お姉さん枠

瑞鳳ー愛称:ずいほー・づほ姉ちゃん
練度:卵焼き 主兵装:99艦爆(江草 好感度:★6
「だれがお姉ちゃんよっ」
気分は数ヶ月早生まれな幼なじみ。ラブコメルートもあった気がしたけど、何処行ったかな
卯月にからかわれて追っかけまわすのが日課。弥生に唆されてモヤモヤするのも日常
だからって、別に卯月を嫌ってるわけでもなく実際はその逆である

夕張ー愛称:ゆうばりん
練度:メロン 主兵装:軽巡に扱えるものなら何でも 好感度:★6
「ゆうばりんって…気に入ったのそれ?」
気分は一個上のお姉さん。卯月や菊月の駄々に付き合ったり
球磨や提督の無茶振りで、アレな兵装を作ったりと、信頼と安心の夕張さんである
特に決まった装備は無く、戦況次第でなんでも持ち出すびっくり箱、安心と実績の夕張さんである

大鳳ー愛称:大鳳さん
練度:いい風 主兵装:流星改 好感度:★9
「提督、愛してるわ」
素直な提督LOVE勢。金剛見たいにテンションを上げるでもなく、息を吐くように好意を伝えてくる方
ラブコメに悪戯にと我慢強い方だが、許容量を超えると…
その落ち着いた物腰からは、艦隊の保護者っぽくなっているが、内心は見た目通り歳相応だったりもする
最近は大人気ないと周知の事実、本人は一応否定してるつもり

U-511ー愛称:ゆー、ゆーちゃん
練度:ですって 主兵装:WG42 好感度:★7
「Admiral…提督さん、次は何をすれば良い?」
好きとか甘いは良く分からないけれど、Admiralの お手伝いが出来ればいいなって思います
素直、とても素直、素直すぎてすぐ手が出るくらい素直
如月に貰った三日月型の髪飾りは宝物

ポーラ-愛称:ポーラさん
練度:赤ワイン 主兵装:白ワイン 好感度:★7
「提督さん?面白い人ですよねー」
ゆーの舎弟。あんまりな言い方をすれば、そういう立場
酒は飲んでも飲まれるな。口も態度も緩くなるが、意外と理性は残ってる
酔が醒めると口も態度も固くなるのを気にしてか、平時はもっぱら酔いどれている


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2017-10-06 13:06:09

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2017-08-08 01:20:02

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2017-10-06 13:06:06

SS好きの名無しさんから
2017-08-08 01:20:03

このSSへのコメント

3件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-08-08 01:20:57 ID: OVOiDeQ9

今回も楽しかったです。次回の文月回も待ってます!

2: SS好きの名無しさん 2017-09-07 22:35:50 ID: 8KilRjo7

1話からぶっ通しで見てます‼皐月可愛いですなぁ❤ラブコメもドンパチもお上手ですね!もっと皐月の強いところが見たいです‼というか睦月型全員強すぎる…恐ろしいです
ドンパチ‼ドンパチカモン‼皐月無双もっと見たい‼あと水無月と皐月の絡みも大好きです…のでたくさんお願いします皐月と水無月は姉妹っていうか親友って感じですよねっ
ちなみに水無月は誰に鍛えられてるんでしょう?球磨さん?皐月?どっちにしろ怖い…
あと皐月と夕立の最初の演習はどんな感じだったんですか?そこんとこ詳しく!
次回も楽しみに待ってます‼

3: SS好きの名無しさん 2017-09-18 16:51:38 ID: prfBwMgW

どーもこんにちはー文月改ニきましたねー!皐月改ニに続き睦月型は天使ですっ
質問ですがツッコミが少ないとのことですが皐月はツッコミ枠ではないのですか?なんだかんだで色々みんなのフォローしていると思うのですが…まだまともな人枠なんですかねー?

さて今回は白露回でしたが猫白露可愛かったですね!睦月×白露?可愛ければすべてよしっ

水無月の水着姿…目に浮かぶようです
1話から読み直してますが相も変わらず文章力高いですね‼

次回も楽しみです
長文失礼しました~(^-^ゞ


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