2017-08-15 18:21:19 更新

概要

【由良改二 未改装並びに未ケッコン提督諸氏は閲覧注意】


前書き

由良は改ニに、それでなおのことの平常を願う。しかして、その影に潜む本心は?

個人的には、由良には溜めに溜めていた「好き」って感情を爆発させて欲しい勢です。

















「由良は、このままでもいいかな、って、思っていたり……」






 そう誰かから訊かれたとき、私はこう答えました。


 質問したのは五十鈴姉さんで、「もっと提督と一緒に居ようとは思わないの?」と言われたのです。




「ハァ……これは先が思いやられるわね……」




 頭を抱えてしまった姉さんは手を振りながら、廊下の角の向こうへ消えていってしまいました。


 あとに残されてしまった由良は、独り「はて……」と首をかしげました。




「え? 由良、ヘンなこと言っちゃったのかな」




 そう言えば以前にもありました、こういうことが。


 村雨ちゃんに、「村雨が、提督のこと貰っちゃいますよ~?」、って。


 その時は会話のタネだと思って流しちゃったけど、改めて考えてみると……由良は、「そう」、なのかしら? だからこう言われるのかな?


 いや、そうだとしても。由良にそんな器量はありません。そう思っているからこそ、由良は今まで、役立つためだけに奔走してきました。自分なりに、どこか忘れられないように最善を尽くしてこられました。


 それは、少しは由良のことを覚えてもらおうって思って、由良なりのアピールポイントを出してみたりしたけど……それは「そう」いう意味でやってきたわけではありません!


……あ。でもでも、そうするようになってから、提督さんが由良に話しかけてくれることも増えて、由良、ちょっぴり嬉しかったり……ちょっぴりだけ。


 最近だと由良の髪も褒めてくれて、あの時は嬉しかったなぁ……。




「……あっ!」




 慌ててかぶりを振りました。由良には、そんな資格はない! この暗示を紐解いてはいけません。


 だって由良には、阿武隈ちゃんのような雷装も、神通さんのような火力もなければ、五十鈴姉さんの対潜能力にも追いつけない。


 そんな由良が、そんな、そんなふうになっていいわけない。それこそ由良より強い人なんか何人もいるし————そうよ、あまり気にしてはダメ。常に平静を意識して、軽巡洋艦の艦娘としての自覚をもっと持たなくちゃ。その本懐を貫いて、今まで通りでいるのよ、由良!




「…………」




 でもどこか、痛い気がする。そう、「軽巡洋艦の~」って思ったあたりから、どこかこう、しびれるような痛みが。まるでまとわりついてくる感じで。




「由良は、長良型軽巡洋艦の四番艦。駆逐艦の子たちを見守る、水雷戦隊の旗艦で、だからそれらしく在らなくちゃ」




 そんな自分に喝を入れようと思いましたが、それに反発するかのようにしびれは明確な痛みになってきしみを上げます。どうして……? 由良のこの考えは、おかしいものではないでしょう……?


 お願い、落ち着いて……。でなければ、由良はどうにかなってしまいそう……。




「——ここにいたか。探したんだぞ、由良」


「……ッ。提、督さん」




 って、あ、れ……?


 短い間でしたが、由良を苦しめていた痛みは波のように引いていき、代わって身体がポカポカしていくのを感じ取っていました。


 どうしてだかそれは、未体験のもののはずなのに不快感はなく、むしろ心地いいものでした。




「……ど、どうされましたか? 確か、今日の秘書艦は五十鈴ねえさ、じゃ……あ」


「そうだ。だからその五十鈴にお前の居場所を探してもらっていたんだ」


「そうだったのですね。それは失礼しました……。それで、由良に何か……」


「ああ、これをな。お前に似合うと思って」


「これは……妖精さん? なんだかこの妖精さん、由良に似ていますね! ふふ、変な感じです」


「そうだな。私も、ッン”、そう思うよ」


「……提督さん?」




 なんだか、由良にこの妖精さんを渡してから、どことなく提督さんは様子をおかしくしていました。咳ばらいを何度もし、軍帽の鍔の位置をひっきりなしに気にしています。これは、何かありそう……そう思ってもうひと声かけてみようとしたら、視界の下でキラリと何かが光りました。


 艦娘として、そのわずかな光源も見逃せません。反射的に由良はその方へ視線を向けました。




「————こ、れ……って…………」


「な、なんだ、お前にはこれからも励んでいって欲しいからな。餞別代りにとでも思って受け取ってくれたら嬉しい」


「…………っあ、あ、ああ!」




 由良の中の、何もかもが爆発しました。


 ちっぽけな矜持も、僻みも、こずるいのも、全部。全部全部消えて無くなって、真っ白けっけになっちゃいました。


 その白い、まったいらな胸中に、小さいともしびが輝きました。はじめは小さかったけど、次第に熱を、光を帯びていって、力強さを宿していきました。その感情を、いまさら「ダメだ」なんて押し返せない。こんなに大きなものを消してしまうことなんてできない。私には余りあるものだけど、望むらくは——火勢を消そうだなんて思わなく在りたい。


……それならば、もう「これ」を自分の中で抑え込まない方がいいですよね。……ねっ?




「…………ありがとうございます。提督さん、由良にはもったいないくらい、嬉しいです。」






「由良も、提督さんが、好き、です……」






後書き

『イエネコマタ』のこでらさんと『艦これil2』の伍長さんの両名に影響を受けて由良への好奇心を高められました。お2人には感謝の言葉が見つかりません。
もしこの両名の作品に触れたことがない方には、これを強くオススメします。とくにこでらさんの描かれる由良は激カワで、伍長さんの中の由良像には甚だシコリティを抱いて止みません。


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