2017-08-07 14:32:23 更新

概要

長月&菊月のいざこざを解決し、とうとう本格的に開始された悪い島風ちゃんのリアル連動型艦隊これくしょん。わるさめちゃんがアイデアマンとして加入し、もはや艦これ関係なし!


前書き

ぷらずまさんのいる鎮守府(闇):終結

の続きの蛇足編です。

【注意事項】

↓新たなオリキャラ注意です。

・悪い島風&悪い連装砲君。


【艦隊これくしょん Android】
・悪い島風ちゃんが想の力で海の傷痕が製作した艦隊これくしょんをモチーフに製作したスマホゲームです。


※蛇足編はやりたい放題および勢いの投げっぱとなります。気分でお話ごとに台本形式、一人称、三人称だったりするかもしれません。海のように広い心をお持ちの方に限りお進みくださいまし。

※不定期更新です。


※今回の日常編は話が一部、生々しく重いですのでそういうのダメな方は日常編を飛ばしてください。読まなくても続きが分かるように次回の概要に簡潔に記載しておきます。

その部分、削除するかも。





【特ワ●:ま、これはこれで幸せなのです】



長月「おい司令官、スマホ触りすぎだろ」



提督「これも仕事みたいなもんですから……」



長月「ここの資材の類は運び出すんだろ。めんどいからそのついでに輸送業者にゲーセン設備も倉庫に運び込んでもらえばよくないか? あれ、数字見て驚いたけど出費が半端ないぞ……」



卯月「とんでもないぴょん! あのエデンをここから運び出すなんていちいちアーケードやりにゲーセンまで足を運ばならなくなるし、あそこはあのままでいいぴょん!」



菊月「どう考えても要らないだろ……」



提督「もともと少しの間という約束で放置しておいたんですからね。あれは海の傷痕戦に挑む前のお情けで許可した設備です。ゲーセンなんてこの鎮守府には要りません」



卯月「しっれいかーん……ダメ?」ウワメヅカイ



提督「ダメです。往生際が悪いですね」



卯月「く、やはりこの手は通用しないか。ならばお願いするぴょん。あの歌番の一件、長月と菊月にだけプレゼントあげたくせに、うーちゃんにはなにもくれなかったぴょん!」



提督「翌日にご飯奢ってあげたじゃないですか」



ぷらずま「はわわ、はわわわ……!」



長月「電は急にどうした」



ぷらずま「司令官さんからご褒美をもらったのです!? 私はそんなのもらったことないのに!」



菊月「司令官、電はあの戦争での功労者だし、勲章以外でも形にしてなにかあげてもいいんじゃないか?」



提督「それいったら皆さん功労者ですし」



卯月「じゃー、うーちゃんにもなにか寄越せし!」



卯月「あ、このペン欲しいし」



菊月「この本だな」



長月「あ、この椅子は座り心地いいな」



提督「手当たり次第に。ドラクエかな?」



長月「でも卯月に電、私からしたらお前らのその腕につけているのが羨ましいぞ。私と菊月はその時この鎮守府にはいなかったから、その約束のブレスレットは輝いて見える」



菊月「そうだな。由良と弥生の分も用意してくれ」



ぷらずま「はわ、 こんなのただの形でお二人ともこの鎮守府の仲間であることに変わりはないのにまだこれ以上欲しがるのですか!?」



ぷらずま「はわ、はわわ……!」



提督「ならそうですね、水族館に行きますか。海が広がって水族館のラインナップが充実したみたいで」



ぷらずま「!?」



ぷらずま「司令官さん、すぐに準備してくるので待っているのです!」



タタタ



卯月「顔赤くしてたけど、なんかデートと勘違いしてないかー?」



卯月「面白そうだからうーちゃん達、ご一緒するのは遠慮しとくぴょん。あ、長月と菊月、少し耳を貸せし」



長月「なんだ」



菊月「わざわざひそひそ話する必要があるのか?」



卯月「二人きりにして尾行するぴょん」コソコソ






瑞鶴「おちび、急に私を部屋に拉致してどしたの」



ぷらずま「このクローゼットです」



瑞鶴「ほーう、おちびって意外と私服を持ってるんだね」



ぷらずま「ぽんこつ空母、ファッションに詳しそうですよね。今からお出かけするので、私をコーディネートするのです。あ、卯月さんも連れて来たら良かったですね」



卯月「呼ばれて飛び出てぴょん!」



ぷらずま「ナイスタイミングなのです」



瑞鶴「よく分からないけど、どこ行くの?」



ぷらずま「水族館です」



卯月「司令官とデートぴょん!」



瑞鶴「嘘だろ……」



卯月「ぽんこつ空母」コソコソ



瑞鶴「大分前からもうぽんこつじゃないわよ。っていうか、提督さんとデートって? 提督さん頭でもぶつけたの? それとも脅迫された?」コソコソ



卯月「電が勘違いしているだけだぴょん。ちょっと電がだたこねたから、司令官がご機嫌とりで水族館にでも行きませんかっていい出しただけ。でもそれはいわぬが華だし」コソコソ



瑞鶴「おちびは提督さんとタメなのにねえ。時間の流れって残酷だね……でもそういうことなら協力してあげるかな」コソコソ



瑞鶴「まずおちび、ぷらずまモードしまいなさいよ。雰囲気ちょっと柔らかくしたほうがこの服に合うと思うし、電モードで」



電「……なのです」



卯月「OK、電なら容姿も雰囲気も受け止めやすくてメイクしやすいぴょん。手持ちの服的にもあまり華美なのは止めて、装飾少なめなシンプルかつ素朴な服装で可愛く化けるぴょん!」



瑞鶴「そうねえ。おちびは口さえ開かなければ可愛いから」



瑞鶴「ちなみにショーとか見るなら薄生地にしたら。水飛沫かかれば少し透けるし、あの提督さんちらちら見たりして」



電「……はわわ」



卯月「計算高いし……お前、大学でそうやって男を漁っていたのか。淫乱空母だぴょん」



瑞鶴「してないから。提督さんにそういうことさせてみるってのも面白そうじゃんって思っただけ」



卯月「うーちゃんは計算高いよりも、ちょっと不器用なほうが男ウケいいと思うぴょん」



瑞鶴「馬鹿っぽく見えてもあれだしねえ……」



電「あ、この中ならこのお洋服が良いのです」



卯月「んー? それは少し子供っぽいけど」



電「構わないのです」






提督「もう二時間も経つ……準備に時間かかりすぎですね。なにかトラブルでもありましたかね……」



電「お待たせしました」



提督「あ、来ましたか。それじゃ行きますか」


プルル


提督「……ん、携帯が。LINEとは珍しい」



……………


……………


……………



卯月《あ、来ましたか。それじゃ行きますか、じゃねーぴょん! 時間かけておめかしさせたのは目がついていれば分かるだろ!》



提督(……なるほど、それで時間がかかったのか)



瑞鶴《(੭⁾⁾・ω・)੭⁾⁾提督さんのトーク力》



提督「お似合いですね可愛らしいです」



卯月《はい10点! 機械的事務的マイナス90点!》



電「……はわ」



瑞鶴《だけどおちびは嬉しそうだから満点あげよう!》



提督(なんだこれ……)






卯月《会話無さすぎだし。くっそ初なカップルの初デートか》



瑞鶴《(੭⁾⁾・ω・)੭⁾⁾提督さんのトーク力》



提督(ついてきてる上、ばっちり監視されてる……)



提督「そういえば艦娘は抜錨して珍しい海の生物を見かけたりするんですか?」



電(……ぽんこつ空母と卯月さん、それに長月さんと菊月さんもいますね。先程から司令官とやり取りをしているのです。全く、別に静かなままでもいいのです)



電「珍しい、というのもアレですが、お魚はよく見ていたのです。昔に遠征に出掛けた時、響きお姉ちゃんがイルカを発見してじーっと眺めていましたね」



提督「あー、それ聞きました。電さんとよく似てたからだそうですよ」



電「……似てますか?」



提督「イルカって遭難した人間を助けてくれたりするじゃないですか。そういうところが似てる気がしないでもないですね。電さんって優しいイメージもありますから」



電「なのです。ちなみに司令官さんを例えるとしたら貝類ですね。毒があるやつ」



提督「あー、来世は貝でもいいですねえ……」






卯月「なんか見ていて退屈だなー」



長月「そうか? いい雰囲気じゃないか」



菊月「ああ、電のあんな感じは何気に初めてみた。フレデリカの時ともまた違うが、あっちが素なんだろ?」



瑞鶴「そうねー。ま、ゆったりとしたあの雰囲気でいいじゃない。私達から見て面白いトラブルなんてないほうがいいわよ」



……………


……………


……………



卯月「結局、二人で魚を眺めて、話をして、アイスクリーム食べて終わりだなー。話は弾んだり弾まなかったりのふっつーな感じ」



瑞鶴「……」



長月「ん? どうした?」



瑞鶴「提督さん今なんていったんだろ」



菊月「……」



瑞鶴「おちびの顔色が変わったわね」



菊月「あ、司令官がこっちに来るぞ」



提督「皆さんお揃いで。別に遠慮してこそこそしなくて良かったのに」



瑞鶴「おちびになんていったの?」



電「~~」カオマッカ



提督「お礼をいっただけですけど」



卯月「お礼いっただけでそれ? 気になるぴょん!」



提督「ぷらずまさんの今の服装って昔に一緒にお花を育てていた時とすごいデザインが似ているんですよ。ぷらずまさんが選んだ服装みたいなので、きっと覚えていたんだろうなって。だからいったんです」



提督「わざわざありがとうございますって。似合っていて可愛らしいですね、と」



提督「照れさせるつもりはなかったのですが」



瑞鶴「へえ! やればできるじゃん!」



卯月「それを最初にいわずにさっき口から滑りでた、と。お前天然ジゴロとかいうほんとムカつくタイプかー?」



提督「素直に話したらこのいわれようですか……」



電「司令官さんも余計なこと言わなくてもいいのです! 特に卯月さんの口が軽いですから瞬く間に鎮守府内に広まりますよ! 」



提督「別にこのくらい広まってもいいじゃないですか」



電「……思えばあなたも変わりましたよね。前は人を寄せ付けずに口数も少なくてなに考えるか分からない感じの子だったのです。でもなぜか私がお花の話をしたら黙って耳を傾けていましたけど……」



電「知らない知識だったからなのです?」



提督「ですね」



提督「あ、そうだ。帰りにひまわりの種を買って行きますか。あの時のは自分が育てましたけど、今度は一緒に育ててみません?」



電「はわわ、お願いするのです!」



電「後、歩き疲れたのでおぶって欲しいのです」



提督「了解です」



長月「……」



卯月「どしたー?」



長月「司令官も電もあの子供染みているというか自然体の雰囲気、二人だから出せるんだろうか。だとしたらそれもまた羨ましいな」



瑞鶴「提督さんのほうは夜に飲んでるとあの砕けた雰囲気だけど」



菊月「駆逐が寝静まってからの酒宴か」



卯月「今度に顔を出すかー」



瑞鶴「私達も行こっか」



………………


………………


………………



提督「……」ハアハア



電(私をおぶって5分で息切れしているのです……)



電(……背中、大きいな)



電(生きた歳月は同じだけど、止まった時間のせいで、端から見たら叔父さんと姪っ子とか、そんな風に見られるのかな)



電(私が司令官さんと同じく成長を止めなかったら、どんな大人になっていたんだろう。隣で肩を並べて、わざわざ見上げなくてもあなたの顔を見ることができたのかな?)



電「……」



提督「どうしました?」



電「なんでもないです。それより私、そんなに重いのです……?」



提督「自分の体力がないだけですね……」



電「じゃ、降りてあげないのです」



電(少なくとも私はこうやって軽いノリで背におぶってもらうような子供っぽい甘え方はしないでしょうね)



電「ま、これはこれで幸せなのです」



提督「?」




【1ワ●:わるさめちゃんと悪い島風ちゃん】




システムの構築は無事に完了した。

このゲームはサービスが終わらない限り、延々とアプデを繰り返していくソーシャルゲームだ。我ながらいつ消えて終わるか分からないゆえ、ストーリーはあえて臭わせる程度にしておいた。他のソシャゲも参考にし、ストーリーはあえて臭わせる程度、私の消滅とともにエンドを迎える予定である。しっかり完結するよ!



わるさめ「長月と菊月と卯月みたいになんかはっちゃけたことしたいな! これまた面白そうなトラブルが起きているみたいだけど今の私は暇だ。暇だ。暇だよ――――!」



とわるさめがレッちゃんの艤装に高速で頬擦りしていた時だ。心を見透かしたかのように私は登場してみました。



悪い島風【おっす! 非日常がお望みですか!】



わるさめ「おー、お前がぷらずまのやつを軍艦に変えて、司令官の車を海にドボンさせたやつか? 何者なの? 根本的におかしいだろ。なんでロスト空間消えたのに活動しているんだよー……」



悪い島風【まあ、ロスト空間は溜まり場の器なんですよー。コップが消えたらその中身の水まで消えません。といってもロスト空間内でしか形を保てない水なので、こちらの光に当てられて蒸発してしまいますねえ。要は残滓みたいなもので、あなたと電の艤装が溜まり場です。まだ完全に消えていないので、私は戦争終結によって戦後復興のシステムにより、私は現海界したわけです】



悪い島風【海の傷痕が想の魔改造によって作った戦後復興プログラムでっす。大多数の幸福のため、ただいま想力を活用して、艦これのブラウザゲーを製作しておりまっす! あ、まだ特定の人にしか配信してませんが、アンドロイドでも出来ますよ!】



わるさめ「最近、司令官がよくスマホを難しい顔で眺めているのはそのせいか。司令官の様子も少しおかしかった。でも、海の傷痕ほど焦っている様子はなく、大した問題ではないのだろう、とは思っていた。少なくとも世界滅亡とかそういう話ではなさそうかな?」



悪い島風【今回の戦後復興ですが、艦娘さんの皆さんを幸せにすることが、なによりと判断しまして、そのためのゲームです。そして私から見て最も誰かの助けが必要なのは闇の提督さんです】



わるさめ「なんで?」



悪い島風【お父さんが死んだ時に母親に捨てられたんだって。気持ち悪いっていわれて、遺産だけ持っていって、それから恋愛方面において女性を信じられないのがあの人が鉄の理由だね】



わるさめ「……あの司令官、そんな過去を持っていたのか。でも、それならば色々なことに頷ける、かな。あの司令官のあの戦争への熱は異常だった。だって、理由がない人があそこまで戦争に躍起になった理由もそこか」



わるさめ「逃避行の先がこの戦争?」



悪い島風【察しがいいですね。その通りです。逃避行があの戦争だったんですよ。何故かと問われたら、理由は1つです。あの人はそれ以外になにも出会えなかったから、です。ま、この鎮守府に着任してからは多少マシになりましたが、あの人は肩の力の抜き方が下手くそで、物事にクソ真面目すぎますね】



わるさめ「完全に同感だなー……男としての欲がダメだよねー。浮気は男の甲斐性とかいうほど器がでかくない私にとっては、そこもいいところなんだけどね☆」



悪い島風【浮気以前にあなた彼女でもないでしょうに】



わるさめ「うーん……」



悪い島風【ん、それはSNSですか?】



わるさめ「暇だし、わるさめちゃんもやろうかな。にゃが月と菊にゃんはあのテレビ効果ですげーフォロワー増えてるー……」



悪い島風【…………ぴっこーん!】



そうだ。いいこと考えた。この子の性格的にこっちサイドと手を組んでくれる可能性はなきにしもあらずだな。基本的にノリとテンションで生きているやつだ。最低限のラインさえ守ってやれば一緒に遊ぶことは出来るかもしれない。



悪い島風【そんなのつまんないですよ! しょせん2.5次元の知り合い未満の赤の他人以上のフォロワーの数よりも、ゴミ拾いしたほうが自慢としては上等ですって!】



悪い島風【見るのは面白いですけどね!】



わるさめ「分かる。面白いよね。司令官も誘ったけど、断られたよー。司令官どんなこと呟くのか興味あったんだけど、自分は日記帳にでも書くべきことをいちいち全世界に公表する神経が理解できませんって。相変わらずつまんねーやつだよー……」



悪い島風【つまんないやつだから仕方ないですよ。わるさめさん、あなたは私と上手くやれそうなので声をかけました。人手が欲しくてですね、人材を募集しているんですよー。私と一緒に想の力でコーティングした艦これの運営やりませんか?】



わるさめ「ktkr」



悪い島風【リアル連動型でして、例えば画面の艦娘さんタッチしたらリアルのほうにも伝わります! 出撃関連、遠征周りはセットしてあるのですが、任務関連に遊び心を入れたいんですけど、アイデアがなかなか。そこで企画者が欲しいんですよー!】



わるさめ「任せろー!」



悪い島風【お返事超はっや――――いっ!】キラキラ



わるさめ「いいよ。なんでもやる。だけど、条件が2つほどあるけど、それを守ってくれるのなら、の話ねー」



悪い島風【お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。のスタンスなんですが、うさんくさいとはよくいわれますねえ。人助けするのも身分証明書とか必要だなんてどれだけ臆病者なんだって。でもそれは本当で大体、私が契約した人は自分から墓穴掘るだけですよー。あ、電のはからかっただけだですし。ちゃんと戻しましたよー?】



わるさめ「まあ、私達を騙してなんかしようと本気で思ってるのならザコだしね。それがそっちの墓穴となることは分かる?」



悪い島風【ん? どゆことです?】



わるさめ「あの司令官さんは、海の傷痕当局の時とは比較にならないくらいお前の存在には緊張感も焦燥感もない。恐らくお前は敵とも見られていないと思われ。でも念には念のため、手を打っておいてあるのがあの司令官の怖いところだよー」



悪い島風【意外です。敵ともみなされていないんですか?】



わるさめ「たまたま耳に入ったんだけど」



わるさめ「海の傷痕ではなく、想の魔改造によって作られたお前は仕官妖精と同じカテゴリー。その性格は妖精の個性の範囲内だと。つまり、仕官妖精と持たされた役割が違うだけの妖精で海の傷痕当局のような危険度はないってさ」



悪い島風【正解ですね……似ても似つかない仕官妖精と同じカテゴリだと見抜ける辺り機械的に冷静な分析力ですねえ。まあ、初見でほとんど私のこと見抜かれましたし、その上マーマもいます。恐らく生態系は把握されてますねー……】



わるさめ「条件1は『笑えないオチはやらないこと』ね。誰かの命を奪うとか、宝物を壊すとかさ。わるさめちゃん基準の価値観の徹底ね」



悪い島風【いいですけど、そっちのアイデアが退屈だったらクビにしますよ】



悪い島風【それにこちらに1人いたほうがそっちとしても安心でしょう。私は別にスパイやらなんやら近くに置いても邪魔さえしなければ構いませんので】



悪い島風【遵守のため、契約しましょうか】



悪い島風【Srot4:生死の苦海式契約履行装置】



悪い島風【契約内容が守られる限りは不死の力を得ます。といっても応急修理要員と女神の間程度ですけどね。あなたが契約内容を破った時、私は破棄する権利を持ちますね。この書類の署名欄に髪の毛をおひとつ乗せて頂ければ契約完了です】



悪い島風【契約内容:艦これの運営企画に全面的に協力する。運営企画に対してわるさめさん基準の価値観に沿って執り行い、殺害等々の笑えないオチは直接間接的問わずになし】



悪い島風【細かいことまで決めてありますからご納得頂けましたら】



わるさめ「あいよー」



悪い島風【んー、ご署名していただければ、想の力を貸してあげますね。妖精がロスト空間に行けたのと同じパスみたいなもんです。ここに書いてある通り無許可で誰かを連れてきたらダメですからねー】



わるさめ「ふむふむ、任せろー。それじゃちょっくら司令官に報告してくるね!」



2



わるさめ「とのことだ☆」



悪い島風【とのことでーす!】



提督「正気ですか?」



長月・菊月「(`・ω・´)キッ」



悪い島風【時限式の高速修復材の件で怒ってるの?】



長月「当たり前だ! 親切なモノくれたと思いきや、落とし穴を用意しただろ! 一歩間違えば大惨事だったんだぞ!」



悪い島風【でも、高速修復材のお陰で成功しましたよね。あれがなければ出演は出来なかったと思いますよ。あの酷い顔はダメですからね。ほら、ちゃんと救済もしているでしょ?】



長月「……そ、それはそうなんだが、別に落とし穴なんて作らなければ、素直に感謝できたんだし、それで良かったじゃないか」



悪い島風【(●´ڡ`●)】



悪い島風【そ・れ・は・私・の・個・性・でっす!】



わるさめ「……つか、菊にゃんはなんで司令官の膝の上を占拠してるのお?」



菊月「最近ここが落ち着くんだよ」



わるさめ「なつかれたもんだねー……司令官もすんなり受け入れているし」



提督「邪魔な時はどかすだけなので不都合がない時なら構いませんよ。たまにぷらずまさんも落ち着くとかって座ってきましたし、慣れてもいますからね」



大淀「こほん」



悪い島風【あのさ、私としても別に長く生き長らえるつもりはなくて、あくまでも目的を達成したらもうさよならで構いません。ま、騙すのが好きなのは否定しませんが可愛いの範囲で済ましますから、わるさめさんを貸して?(ノ≧▽≦)ノ】



大淀「よりにもよってわるさめさんですか。他にまとも、あ、間違えました。大人の方もそちらに」



わるさめ「よどよど、わるさめちゃんへこむんだけど、本当にみんなを悲しませるような真似をすると思うの?」



大淀「はい」



わるさめ「司令官はどうなの?」



提督「そこはあまり心配はしていませんが、カタストロフガンを乱発されるのも困りますね。わるさめさんを指定してくる辺り、悪ふざけしたい感じがすごい伝わりますけど……」



悪い島風【テートクさん、このゲームは皆さんを幸せにするゲームだっていいましたよねー】



悪い島風【長月&菊月コンビはどう?】



悪い島風【幸せですか?】



長月・菊月「幸せだぞ」



悪い島風【ほらね、もっとちゃんと私を見てくださいよ。最終的にはお約束した通りにみんなこの二人のようにしますから!】



悪い島風【あー、じゃあ対価を払うからわるさめさんをレンタルさせもらうって取引はどうです?】



大淀「対価ですか?」



悪い島風【製作秘話には私の製作理由はあっても、私がしてきた過去のことは書いていないのではないですかー】



悪い島風【65人です】



大淀「……はい?」



悪い島風【私が最初に現海界してから今まで契約した人の総数です】



悪い島風【その中で成功したのは4人のみです】



大淀「どうせそんなのあなたが電さんにしたように取引した人達をハメたからではないんですか?」



悪い島風【んー、確かに私は悪いことしたよ。何人も殺したしね】



大淀「……」



提督「大淀さん、抑えてください。続きは?」



悪い島風【殺したのは、殺す必要があったからですね。あなた達だって目的があって深海棲艦を殺してたのと同じですよ。私の殺しは確実に戦後復興に貢献したのは現代が答えですかね。私は間違いだなんて思ってませんし】



提督「おかしいですね。あなたは目的のために殺しの手段を取れないはずでは」



悪い島風【私はね。でも、契約に関しては別なんですよ。何事にも特例はあるもので契約者の願いがその類であり、また、それが戦後復興に貢献するのならば殺しも出来ます】



悪い島風【61人は自爆しましたよ。私との約束を破った者、与えた力の使い方を間違って自らの落とし穴にハマった人。これはほら機密流した人がそれだね。与えた力を利用して自分の私利私欲、心を満たすために使いましたし、そんな奴らばかりでした】



提督「……4人といいましたね。甲大将と、雷さんの他に上手くやれた人がいるのですか?」



悪い島風【そうですね。甲大将の家計は二人目の成功者です。1人目は私利私欲のために契約した人です。ですが、戦後復興に貢献したといえた人と判断しています】



悪い島風【最初期の兵士でしたね】



悪い島風【島風の艤装適性者】



提督「!」



悪い島風【天津風の死体を抱えていましたね。最初期の記憶はパーパから艤装に流し込まれて真実を知っているんですよね? 大淀さん、どうなんです?】



大淀「ええ。始まりの艤装の電の死に様、中枢棲姫に殺されるだけの残酷な光景でした」



悪い島風【あんな光景ばかりの世界で現海界したものだからねえ。確かあの島風は北方領土奪還作戦の生き残りだったはずです。詳しい契約内容は言えませんが、彼女のお陰で作戦は成功して、あそこに北方の鎮守府が創設されたはずです。あの鎮守府は元帥の鎮守府となる横須賀に劣らずの歴史があるところですね】



悪い島風【おっと、話が逸れましたねー……】



わるさめ「ところでお前、その想力を維持したまま、此方ちゃんみたいに人間になろう、とかは思わないの?」



悪い島風【それで誰かが幸せになるのならそうします。私は自分の幸福は度外視設定されておりまして、別に生きることが目的ではないので必要さえあれば自分さえ殺すようなやつですよー】



わるさめ「……」



悪い島風【自分が餓死するとしても、自分のパンを餓えている人にあげます。きっと理解できる人はそういないのかもしれませんね。偽善者だと思いますか?】



わるさめ「……いや、すげーと思うよ。それはしょせん第3者の視点だと思うからね。わるさめちゃんがお腹すいて死ぬ寸前だったら、死ぬほど感謝するか、泣いて断ると思うから」



悪い島風【……1つ現実を教えてあげましょう。例えみんなが帰ってくる場所を作ったとしても別れは必ず来ますよ。それぞれの道に、とかそういう話ではありません】



悪い島風【人は必ず死にますから。それも生きようとする限り、死に方を選べません。パーパとマーマがいってました。あなた達の今を生きる力は、未来でも過去でもなく、今を最大限精一杯に生きてこそ、輝くものだと】



悪い島風【怖い、とか、危険、とか、最初から約束された安全なんてどこにもありません。この戦争に関わってきたあなた達なら分かるはずです。さあ、なにがしたい? なにをしよう?】



悪い島風【良い言葉ですよね】



悪い島風【今もその時】



提督「……4人といいましたね。残りの1人は?」



悪い島風【前世代の陽炎です】



大淀「……解体して街に戻った方ですか」



菊月「知ってる。あの陽炎はかなり強かったみたいで噂は私の耳にも入ってきていた。卯月並の素質だったと聞いたぞ」



長月「ただ夜間哨戒時に深海棲艦に襲われて2名の殉職者が出たとか。それが原因であの陽炎は解体申請したと聞いた。ほとんど入れ替わりで今の陽炎がアカデミーに来た、と記憶しているが」



大淀「そうですね。今の不知火さんも一緒に来ました」



悪い島風【前世代陽炎は最終世代陽炎&不知火と深い関わりがあります。同郷ですしね。予定ですけど、次のメインクエストはその人と関わってもらう予定です。どうも介入しないとハッピーエンドにはならなさそうなので】



悪い島風【なんとかしてあげなきゃダメな子だと思いますね】



悪い島風【皆さんのお仲間である最終世代の陽炎さん】



悪い島風【現代の闇ですよ。駆逐適性者あるあるですが、めちゃくちゃ重くてどろどろした過去をお持ちでしたねー……】



提督「……」



悪い島風【さ、艦隊これくしょんを進めてくださいなっ!】



【2ワ●:鎮守府(闇):リアル連動型・ピエロット・マン】



1 談話室にて



大淀「パソコンでなにしているか知りませんが、例の悪い島風さん関連なら私に一報を入れてくださいね?」



提督「大丈夫ですよ」



大淀「あなた大本営からこの鎮守府に連絡を入れる時、私はこういいました。『またここに連行されることはしないと誓えますか』と。あなたはイエスと答えてその実なにをしていました?」



大淀「鹿島さんと明石君に、中枢棲姫勢力との密会の段取りつけていたことは分かっているんです。あなたの大丈夫は全て大丈夫ではありましたが、それは結果論でしかありませんからね?」



提督「……少しこの艦これのゲームに違法行為が通る余地があるか確かめてみるつもりです。どんな無茶な要求されるか分かったものではありませんからね」



大淀「分かりました。そんなに本も持ち込んで……私は片付けませんからね」



提督「そのくらい自分でやりますって」



大淀「はあ……どうぞ、お茶です」



提督「どうも。大淀さんも羽を伸ばしたらどうです。しばらくはこちらにいることを許可されたと聞きましたが」



大淀「この一件が片付くまでゆっくり出来ませんよ」



提督「大淀の適性者って、明石艤装に負けず劣らずのブラック兵士の役割持たされますからねー。うちもなにかとお世話になりましたから。なにかお礼が出来ればいいんですけど……」



大淀「……」



提督「まあ、お互い仕事でしたし、そういうのはなしでもいいか」



大淀「少し期待した私が馬鹿でした」



提督「あ、なら、そうだ。この本を差し上げますよ。確か前に読んでみたいとか言ってたじゃないですか。もう絶版となりましたが、最初期の適性者達の本です。世界に1つだけしかないです」



大淀「それって、最初期に政府が回収したやつですよね?」



提督「ええ、自分が補佐官として着任した時に丁准将がくれたのです。自分は内容頭に入ってるのでどうぞ。年季が入ってますが」



大淀「あの人、こんなお宝を持っていたとは。大淀、ちょっと嬉しいです」



2



由良「ねえ、阿武隈」



阿武隈「はい、あたしも驚いています」



由良「いい距離感というか、雰囲気だよね」



阿武隈「うーん、提督も大淀さんもかなり自然体でいい感じですねえ。あの二人はなかなか古い仲だとは聞いてはいましたが」



長月「司令官と遊ぼうと思ったんだが、入りづらいな」



菊月「仕方ない。日を改めるか……」



阿武隈「というかあたし的には長月ちゃんと菊月ちゃんが提督になついていることのほうが驚きなんですけど」



由良「確かに。帰ってきたら司令官と3人で仲良くお昼寝していたしね。あの歌番の一件聞いてから納得はしたけど」



弥生「……」



阿武隈「どうしました?」



弥生「なんとなくだけど、卯月がなつくのも分かった、かも、です。卯月は甘えさせてくれる人になつくから、きっとあの人、面倒見がいいと思う……」



阿武隈「はい、優しくて尊敬できて信頼できます。でも弱いところもあって、とっても素敵な提督ですよ。あの人も最初に比べるとかなり良い方向に変わったと思います、はい」



瑞鶴「ん、みんなどうしたのー」



由良「あ、瑞鶴さん、提督さんって本読む姿は絵になっていてかっこいいですね。大淀さんと雰囲気も似てなくもない、かな。色々とマッチしてる」



弥生「本読む姿は、って何気にひどい、です」



由良「言葉の綾というやつだからね?」



阿武隈「そうですねえ……なにか集中している時は話しかけづらいオーラでためらうのに、大淀さんは自然に混ざれてますねえ。あれはちょっと羨ましいかも」



瑞鶴「関係なく話しかけちゃっても嫌がる感じじゃないから話しかけたらいいじゃん。規律には鹿島さんより厳しいけど」



弥生「瑞鶴さんは、よく一緒にいます、よね……」



長月「あいつは私達のことを子供として見ているな。接していてそれがよく伝わる」



菊月「まあ、子供ではあるんだけどな」


ガチャ


提督「皆さん、なにかご用で?」



由良「これといった用はないんですけど、観察していたといいますか……」



瑞鶴「提督さんと大淀さんが仲良いなあ、みたいな話を」



阿武隈「ええ、まあ」



提督「あの人とは腐れ縁なだけですよ」



大淀「妙な勘繰りはストレスになるので勘弁してくださいね……」



提督「ちょうどよかったです。皆さん今鎮守府にいる人全員、間宮亭2階の宴会場に集合かけようと思っていましたので」



提督「いない人はええと」



大淀「わるさめさん鹿島さん響さん雷さん陽炎さん不知火さん初霜さん翔鶴さん瑞鳳さん金剛さん榛名さんゴーヤさん明石君明石さん秋月さん秋津洲さんと、電さんは雷さんのところに向かいましたね。なので16名が不在です」



提督「という事で龍驤さん瑞鶴さん暁さん由良さん阿武隈さん長月さん菊月さん弥生さん卯月さん間宮さん島風さん天津風さん大淀さんがいるはずです」



長月「例のやつのことか?」



提督「ええ、例のやつのことです」



2 間宮亭2階宴会場



提督「突如出現した面倒くさい戦後復興妖精、名称は『悪い島風ちゃん』と『悪い連装砲君』です。詳細はお手元の資料をご確認ください」



島風「なんで私の姿を真似ているの?」



提督「島風さん、あなたの艤装はアンティークであることは知っていますかね?」



島風「アンティークというか、最初期からの使い回しって話は知っていますよー。最初期の夢にもうなされるもん。といっても、穏やかな海の景色の記憶ですけどー」



提督「最初期の島風、歴代初の島風さんはですね、天津風さんとともに北方領土の奪還作戦の功労者です。その作戦で命を落として殉職、そして艤装は回収です。死体は見つからずです」



提督「そしてその作戦には天津風さんも参加しています。こちらは死体しか見つかっておりません」



提督「頭の片隅で構いませんが、置いておいてください。悪い島風さんはなぜか本来は天津風さんの艤装である連装砲君を艤装にしている。発見されなかった島風さんの身体と、発見されなかった天津風さんの艤装を足したような見た目ですね」



天津風「……だから?」



提督「あの作戦にもいくつか謎がありまして。事後の報告書によると、島風さんは姫4体、それぞれ旗艦とした6体編成の4艦隊、計24隻の深海棲艦を沈めた形跡がありました。孤立した島風と天津風でその戦果は素晴らしいですね」



提督「実力的にはあり得ません。あの時代、兵士は充実した訓練積んでいませんし、適性者の素質もデータを見る限りは下の上といったところ。奇跡と考えない場合なにかしらの要因があると思うのですが、資料からはその要因が読み取れません。そして当時は艤装自体の解明があまり進んでおらず、その上適当に処理されておりまして、ろくに調査はされておらず、なんです」



島風「ほえー……」



天津風「その件と偽島風が関連しているのを頭の済みに置いておいて欲しいというのは、そこがなにかしら役に立つかもしれないということかしら?」



提督「というより、製作秘話によると、その妖精の基盤となった想が歴代初の島風適性者なんですよ。そこまでは書いてありますが、なぜその島風適性者なのか、までは記されていません」



提督「もしかしたらお二人は悪い島風さんと悪い連装砲君になにかしらの影響力がある『かも』という可能性の次元の話です」



島風・天津風「了解」



提督「そしてこの『艦隊これくしょん Android』に注目です」



提督「画面にいるのは誰か分かりますね」



龍驤「うちやーん!」



提督「はい、では画面の龍驤さんをこしょぐります」



龍驤「く、ふ、あっはは! なんか、脇腹をこしょぐられ、ふっ、ちょっとなんやのこれ! やめてー!?」



瑞鶴「え、なにどゆこと?」



阿武隈「……まさか」



提督「悪い島風さんは想の力であなた達とこのゲームのキャラをリンクさせています。この通り、画面の龍驤さんを触ると、リアルの龍驤さんに伝わるリアル連動仕様という悪ふざけの極み仕様です」



長月・菊月・弥生「」



由良「リアル連動するのはそこだけですか……?」



提督「……」



由良「黙らないでください。怖いですから……」



提督「このゲーム、我々が行っていた戦争をモチーフにされておりまして仕様も酷似しています。イベント海域に悪い島風さんがボスとして設定してあり、そこを突破すればクリアなのですが」



提督「とにかく装備を開発するにも出撃するにも、資材が必要です。その資材の入手方法ですが、まず任務の報酬としてもらえます。このスクリーンをご覧ください。右上にあるのが燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトです。そして任務画面にある報酬設定で、もらえる資材が確認できます」



提督「その任務ですが、最初は『秘書官の××××に10回タッチせよ! 制限時間はただいまから1分です!(ノ´∀`*)』という内容でした。ちなみにその時はグラーフさんで……」



天津風「せ、セクハラじゃない!」



提督「ええ、その通りです。やりたくてやってるわけではないのでご理解ご協力を。ここにクジがあります。この中で外れを引いた一人を秘書官にしたいと思います」



提督「イージーな内容ならば資材のために協力を要請するので覚悟を決めて頂きたい。あまりに過激なものなら最大限スルーして別の方法を模索します。前以て聞いておきますが」



提督「秘書官を名乗り出てくれる勇者はいたら挙手で」



一同「……」



提督「あ、そうだ。間宮さんはすみません。このゲーム、どうやら給糧艦は兵士として実装されていないみたいなんです。それに間宮さんになにかあるとこの鎮守府のご飯のグレードが落ちるので今回は間宮さんはなしでお願いします」



間宮「秘書官なんて私には荷が重いですしね……」



龍驤「間宮さんに行って欲しかったけど、しょうがないなー」



瑞鶴「適任は明石君でしょ。だけど甲大将の鎮守府だっけ。いつ帰ってくるか分からないからしょうがないね」



阿武隈「まあ、はい。あたしはいいですよ!」



瑞鶴「私もー」



龍驤「うちもええよー」



弥生「……」スッ



由良「あ、せっかくの機会なので私も」



島風「私も構いませんよっ!」



天津風「え、島風いいの?」



島風「だって私達から協力して欲しいってこの鎮守府に来たんだから、やれることはやったほうがいいよね!」



天津風「……それもそうか。なら、私も」



長月「私も構わないぞ」



菊月「ああ、力になれるのなら」



提督「感謝します。なら大淀さん含めて11人ですね」



大淀「!?」



提督「なら月曜日は大淀さん、火曜日は阿武隈さんと瑞鶴さん、水曜日は龍驤さん、木曜日は弥生さん、金曜日は由良さん、土曜日は島風さん、日曜日は天津風さんのローテーションです。長月さん菊月さんは上記の方になにかあった時の代理で設定させてもらいますね」



提督「そして遠征についてですが、この遠征に組み込まれた人は遠征中、睡眠状態になります。つまり出発してから帰ってくるまで意識がなくなります。といっても今遠征可能な練習航海は15分です。皆さんの予定や睡眠時間に合わせてシフトを組みたいと思っていますが、どうでしょう?」



龍驤「やるしかないん?」



提督「ええ、やるしかありませんが、あくまでリアル優先姿勢で組むつもりです」



瑞鶴「まあ、仕方ないかー……むしろ今の暇な時間に終わらせとかないと面倒くさいことになりそうだし」



天津風「というか今更だけどなんか可笑しくないかしら!」バンッ



暁「びっくりした……急になによっ」



天津風「ゲームの自分にタッチされたらリアルの自分に影響するとか遠征出かけたら意識失うとか、なんでそんなに自然体で飲み込めているの!? 私には訳分からないんだけど!」



暁「ああ……天津風は海の傷痕と直接戦ってないもんね。想の力ならあり得るし、そもそもこんなくだらない冗談をいう司令官じゃないから、本当ってこと」



天津風「なんか納得できない……」



島風「でもなんかいいね! 噂で聞いていた通りに退屈しない鎮守府です!」



提督「それでは、まずこの場で試して行きたいと思います」



大淀「……出撃に関しては」



提督「そうですね。この場で伝えておきますか」



提督「どうやらダメージ判定というのもありまして、皆さんご存じの通り損傷状態は『小破』『中破』『大破』です」



提督「大破した状態で進軍すると、轟沈の恐れがあり、轟沈イコール、ロストとお考えください。リアル連動なので」



提督「ロスト者は、死ぬ恐れがあります」






大淀「練習航海、長距離練習航海、警備任務のクリア条件は見えましたね。皆さんお疲れ様でした。この報告は」



提督「ネットにアップします。サイトは作っておきましたので、参加者には見られるように載せておきます。これは参加者で情報を出しあって探っていく他ない部分なので」



提督「このサイト内で出撃に関しての作戦を将の皆さんと練り上げたいと思いま……」



《新たな任務が追加されました》



一同「……」



提督「……確認しますね」



【鎮守府(闇):難易度 史】



【特単発任務】



【制限時間8時間:挑戦可能回数infinity(無限):参加者指定:『提督』、『暁』、『由良』、『弥生』】



【『ロスト空間世界:ピエロット・マンをクリアせよ』】



【『任務成功で各資材8000+開発資材50+高速修復材50を獲得』】



【この任務は受注した時点で私のマイホーム(疑似ロスト空間)へ飛ばされます】



提督「ピエロット・マン……?」



提督「どなたか知っています……?」



由良「……」ビクビク



提督「なぜびくびくしているのですか」



由良「阿武隈と卯月ちゃんに付き合わされてやったこと、あります」



卯月「あー、PCでやれるフリーゲームだぴょん」



提督「ゲームですか? どんな?」



卯月「寂れた夜の遊園地で殺人道化師をモチーフにした悪霊から逃げ回るゲーム。捕まればゲームオーバーのシンプル仕様」



阿武隈「詳しくいえば最怖フリゲの1つとして地位を確立した有名なゲームで、かなーり理不尽です。謎解きもあって、なによりその悪霊が怖いです。しばらくは夜一人でトイレに行けなくなりますね……」



暁「」



提督「艦これ関係ないという……」



弥生「予習しておくべき、ですね……」



弥生「……みんな、で」



暁「やりたくないけど、賛成! 大賛成!」



龍驤「がんばれ」



島風「私もやりたかったなー」



天津風「あなた、足使うの得意だしね」



提督「確かに島風さんと天津風さんは欲しかったですね。怖がっている風ではありませんし」



大淀「では参加者の皆さんはそのゲームの予習、ですね」



暁「大淀さんも、というかみんなも予習はやるの! ホラーはみんなでやるものなの!」



長月&菊月「怖がってるだろ」



暁「よ、余裕だし!」



間宮「でも提督さんいますし、なんとかなりますって」



瑞鶴「それは確かに。幽霊とかにびびるやつじゃないしね」



大淀「加えて謎解きにも活躍してくれそうですね」



暁・由良・弥生「お願いします」



提督「産まれてこの方、ホラー系統でびびったことはないですけど……大丈夫、とはいってあげられません。やはり挑戦してみないと分かりませんから」



大淀「あ、丙少将、乙中将、甲大将……のところからは北上さんですね。サイトに書き込みがありました」



阿武隈「うわあ、どこのゲームも悲惨です」



提督「丙少将鎮守府は桃鉄、乙中将鎮守府はスマブラ、甲大将鎮守府はマリカですか……有名どころですが……」



提督「桃鉄とスマブラのリアル連動型はヤバすぎる……」



卯月「ぷっぷくぷw どれも観戦したいぴょんw」



【3ワ●:鎮守府(丙):リアル連動型・桃鉄】



丙少将「俺、天城、加賀、雪風」



加賀「なぜ私が。大和さん、あなたが丙少将との空白の時間を埋めるためにも交代してください」



大和「別に空いた時間を埋める必要はありませんって。もともとあまり口も利きませんでしたし、この人は柄の悪い友達と好き勝手遊び呆けていただけですし」



日向「1/5作戦の後から凄まじく落ち込んで准将に当たり散らしているという子供っぷりだからなー」



丙少将「悪いと思っているよ。だが、俺なりに大和を大事にしていたつもりが伝わらないもんだねえ……」



大和「大事にされた記憶もないですけどね……」



丙少将「小遣いとかあげてたろ」



大和「ギャンブルで買った時の話ですか……」



日向「そういうのは性格だが、優しいのは本当だぞ。こう見えてかなり人気のある人なんだ。近くにいると欠点も多く見えるのは仕方ない」



大和「色々と良い噂は聞いてますけど、小さな頃からのこの人を知っているとまた違うんです。変わっている気はしませんし」



丙少将「ま、とにかく俺もアイツに救われた身だ。やってやろうじゃねえか」



天城「ところで桃鉄ってどんなゲームなんですか?」



丙少将「サイコロの目で進むボードゲームなんだが、全国の駅を決められた年数内で目指しながら資産を増やしていく感じ」



丙少将「もちろん悲惨な場合、マイナス、借金を背負うこともある」



加賀「……どの程度の額なんですか」



丙少将「何百億とか」



天城・加賀「」



大和「天城さんが例のポーズで倒れましたが……」



丙少将「八百長しようぜ。ジャンケンで負けたやつが一人負けで、被害は減らせる」



日向「お前の得意な全員生還の指揮どこいった」



丙少将「冗談だよ。お前らは喜ぶといい。俺達のゲームは大当たりだ。難易度は丙、つまり易しいんだ。俺の読みでは悲惨なのは甲さんとこと、闇のところだな」



大和「あ、それもそうですね。マイナスになればプラスになることもある。前向きに考えればなんとかなりそうな気がします」



丙少将「おう。問題はリアルにそのまま連動するかという点だな。とにかく俺らのリアルに影響するとしても四人の合計がプラマイ0以上になるようゲームメイクしていけば全員生還となる」



丙少将「そして、このゲームは戦略も大事だが、サイコロを回す以上、運が重要なファクターとなってくる。そのキーとなる女神様の運用が大事だな」



一同「(ーωー)」ジーッ









雪風「ゆ、雪風ですか?」



3 丙少将鎮守府:モニタールーム



わるさめ「丙んとこの全員生還教連中、このゲームが友情崩壊ゲームと知っているのかなー?」



悪い島風【某賭博録のごときドロッドロな人間の浅ましさが露呈するのが楽しみですね】



悪い島風【全てのゲームにオリ要素があるとも知らずにね!】



悪い島風・わるさめ【「あっはっは!」】



【4ワ●:鎮守府(乙):リアル連動型・スマブラ】



乙中将「バグってんだけど!」



ル級「……」



乙中将「なんでル級が秘書官になっているんだよ!?」



タッチタッチタッチタッチタッチ!



山城「……っ」



山城「ストップ! それ絶対に私です!」



乙中将「なんで山城さん!?」



悪い島風《あー、放送機具からすみません。すぐに直しておきます》



山城「しっかりしなさい。ブン殴るわよ」



悪い島風《元ヤンこっわー……》



山城「私はヤンキーに絡まれてケンカしただけで、私自体はヤンキーじゃないわよ!」



島風《一回落としてもう1度起動してもらえたら直っていると思いますのでー》



乙中将「詫び資材ね」



悪い島風《クレクレ来たー。私の運営はそんなんあげません。それじゃ健闘を祈ってますね!》



乙中将「く……スマブラってみんなやったことある?」



白露「夕立と時雨と神通さんの四人で、やったことあるよー!」



夕立「お部屋にあるっぽい!」



山城「ええと、確かあれでしょ。コントローラーが山の字を逆さまにしたようなゲーム機よね?」



夕立「?」



白露「チャンネルみたいなやつかなあ」



神通「……ジェネキャですかね」



山城「神通あんたうるさい」



扶桑「問題なのはゲーム内容が暴力系ということですよね。リアル連動型なら、想像が容易い……かなり危険、です」



時雨「そうだね。とりあえず通信設備の要領で鎮守府の外にゲームごと持ち出すべきじゃないかな。部屋の中で吹っ飛びまくるのはさすがに大惨事だしさ」



乙中将「外でも、吹っ飛ばされる飛距離によっては」



蒼龍「乙さん、飛龍のやけ酒が止まりません!」



山城「飛龍、あんた覚悟を決めなさいよ」



飛龍「おかしいじゃないですかあ。なんで肉弾戦士の山城さんと神通がメンバー選抜されていなくて、乙中将と私と扶桑さんと夕立なんですかー……」



山城「あんただって艦娘時代は私並みの力だったじゃない」



神通「でもクリアしないと先に進めませんし、こんなのに束縛され続けるのは勘弁でしょう?」



乙中将「その通り。選抜メンバーは潔く覚悟を決めましょう」



2



悪い島風【ただのスマブラではなく、わるさめちゃんプレゼンツの魔改造ボスが待ち受けているんですよねー……】



わるさめ「マスターハンド(18禁仕様)だゾ☆」



わるさめ「キャハハ(*≧∀≦*)」



【5ワ●:鎮守府(甲):リアル連動型・マリカ】



サラトガ「くすぐったいのは収まりましたね……」



大井「……甲さんは今回不参加のようで、インストされていないらしいですが、これ誰かがサラさんを秘書官にしてタッチしていましたよね」



グラーフ「なんたる狼藉だ」



北上「誰ですかねえ……」



北上「うちらの代理提督は」



北上「ということでスマホチェックのため今この鎮守府にいる皆さんに集まってもらいましたよっと」



漣「もう犯人こいつしかいないじゃないですか」



一同「(ーωー)ジーッ」



明石君「……」ダラダラ



漣「一回、潮ちゃんを秘書官に変えて触っただろー! お前が巨乳好きであることはタイプと公言した翔鶴さん鹿島さん、そして妹のアッキーの証言、そして秋雲から借りたらしい同人誌からネタはあがっているんですよ!」



曙「こいつには躊躇いなくクソ提督って呼べるからある意味で気が楽ね」



明石君「だって! リアル連動型だなんて思うわけないじゃん! 本物に伝わるならさすがに止めたわ!」



秋月「す、すみません! うちの馬鹿兄貴が!」



球磨「アッキーが謝ることはないクマー」



多摩「上がだらしないと下は大変ってことがよく分かるニャー」



明石君「多摩さんもなかなかあるよな」



秋月「いい加減にしてください! せっかく決戦時の活躍で株が大上がりだったのに、もう跡形もないですよ! ただでさえモテないのにチャンスを棒に振るなんてなに考えているんですか!」



明石君「あー、彼女欲しいわ」



山風「こいつは、もう、ダメだ……」



グラーフ「お前は自分のところの提督をもっと見習え。准将は尊敬に値するが、お前は足元にも及ばない」



秋月「お兄さんとアッシーを比べるなんておそれ多いです!」



秋雲「ストップストップ。じゃあ彼女に立候補してくれる人を秘書官にすればいいんじゃない?」



明石君「俺の心えぐろうとしないでくださいよ……」



大井「なら、私が」



明石君・秋月「!?」



北上「あー、私も」



木曾「俺もいいぞ」



北上「よかったなー。綺麗どころが3人も」



大井「ええ、私達が優しくて救われましたね」



木曾「どうした。早く選べよ」



明石君「粗相したら完全に雷撃してくる面子じゃないすか!?」



秋雲「はーい、じゃあ新たな選択肢ねー。明石さん連れてきたー」



明石さん「皆さんおそろいで、どーしました?」



明石君「その人は俺の『Worst-Ever:歴史最悪』なんですけど!?」



明石さん「?」



北上「かくかくしかじか」



明石さん「なるほど、明石さん立候補しちゃおうかな♪」



明石君「嫌だよ! あんただとなんかこう、秘書官から仲が深まって、淡い青春発展の可能性が皆無だしさ!」



明石さん「それはそうですが。弟子とイチャイチャは無理ですね。おも、弟にしか思えません」



明石君「あんた今おもちゃっていおうとしたよな!?」



秋月「しょうがないですね。妹の私が……」



明石君「妹はちょっと……」



悪い島風《面倒くさいなー》



悪い島風《山風ちゃんか秋雲パイセンの二人から選んでー》



山風・秋雲「!?」



明石さん「……、……」



明石さん「まあ、いいんじゃないですか。あんまり粗相はさせないようフォローはしますんで」



山風「明石さんがそういうのなら……」



秋雲「で、どーすんの?」



明石君「じゃあ山風さんに頼むわ」



北上「ほんっとにお前は一点で選ぶのな」



秋雲「なんだか腹立つけど、まあいいや」



山風「……ぐ、まあ、我慢する、よ」



漣「ちなみに私は尊敬できる提督じゃないとご主人様とか呼ばない気高き漣でっす」



木曾「なんだこれ。くっだらねーな……」



明石君「あー、このマリカの参加者は木曾さんと山風さんと俺と球磨さんだから」



山風「え、あたしいいよ別にやらなくて……」



明石君「つっても、指定されているからなあ……」



明石君「あ、そうだ。曙さんこのゲーム知ってる?」



曙「なんでここで私に振るのよ。知ってるけど、それがなに」



明石君「コースアウトすると助けてくれるやついるだろ」



明石君「じゅげむ役で曙さんが指定されてるから」



曙「」



朧「どんまーい。でも曙は釣り得意でしょ」



曙「嫌いじゃないけど得意じゃないし、そもそもそのゲームで釣るのは魚じゃないでしょうが!」



潮「プレッシャーかけるわけじゃないけど」



潮「ゲーム内容的にロスタイムから復活させる役割だから、かなり重要だと思うなあ」



漣「そうだねえ。ぼの様のテクで皆をフォローしなきゃ」



木曾「なー、マリカってなんだ?」



北上「木曾、マジか。国民的ゲームだぞ?」



大井「ゴーカートみたいな乗り物に乗って走るレースゲーム」



木曾「へえ、リアル連動型ってことは実際にやれんのか。面白そうじゃねーか」



曙「はあ、どん臭そうなのは山風よね」



山風「あたし、ゴーカートなら得意、だよ」



グラーフ「待て。このゲームのリアル連動型だと」



サラトガ「最高時速はどのくらいです?」



秋雲「さあ……100キロくらいじゃないかな」



山風「」



明石君「やべーな……艤装よりも速度が出る」



秋月「正直、桃鉄やスマブラよりはイージーと思いきや、事故を起こせば大怪我してしまいますね」



明石さん「レースゲームですし、タイムを競う、となると、低速でってのはクリアに差し支えますしね」



木曾「おいヤローの明石、お前は大将の代理だろ。なんか案はないのか?」



明石君「俺に提督は荷が重いって。妖精可視の才能あっても、提督としての素質は最悪だからなあ」



明石君「でも、そうだな……」



明石君「俺らの他にプレイヤーがいる。つまり敵もレースに参加するから、山風さんはその妨害役としてとろとろ走っていればいい。周回遅れは妨害のチャンスだからな」



明石君「進路妨害する程度の役割でいい。念のために俺が側につくから、木曾さんと球磨さんで1位を狙っていって、俺と山風さんが支援をするってことで」



北上「お、なかなかまともなアイデア出すじゃん」



球磨「やるからには1位は譲らないクマー」



木曾「当たり前だ。手を抜かれた時点で俺は抜けるぞ」



大井「大丈夫でしょうか……」



グラーフ「ところで准将のところのこのゲームはなんだ?」



グラーフ「難易度的には丙少将がイージー、乙中将がハード、私達がベリーハード、准将のところはアルティメットとあるが、これは准将のところが最も難しいと受け取った」



サラトガ「この『ピエロット・マン』というゲームはなんです?」



漣「あー、サラの姉さんそれPCのフリゲだったかと」



曙「そういうマイナーなのは秋雲が詳しそう」



秋雲「マイナーだなんてとんでもない」



秋雲「それ、フリゲの中ではかなり有名どころだよー」



秋雲「脱出タイプの最恐ホラゲだけど、廃墟の夜の遊園地でピエロの悪霊から逃げ回りながら、脱出方法を探すというシンプルなゲームではあるね」



大井「うわ、疑似ロスト空間で行うんだから、リアルで体験するってことだし、ホラー系は最悪じゃない」



北上「しかも面子が悪意を感じる。暁、弥生、由良というメンバーよ。頼りになりそうなの准将さんだけじゃん」



木曾「あいつんところは心配要らねえだろ」



2 甲大将鎮守府モニタールーム



わるさめ「お前らはお前らの心配するといい! 歴代のマリカをミックスして作った夢の複合ステージ、しかも相当手強い相手を用意しているからね!」



悪い島風【おう"っ! 甲と闇は簡単にはクリアさせませんよー!】



悪い島風【ここには私も参加しますからね!】



【6ワ●:いざ、ピエロットマンの世界へ!】



暁・由良・弥生「」



龍驤「あかん……みんないる場でやったのに魂抜けとる……」



長月「な、なあ、き、菊月、トイレ行きたくないか?」



菊月「ああ。ちょうど行きたくなったところだ」



長月・菊月「二人で行こう」



暁「ふえええええん! ムリムリムリ、こんなの絶対無理――――!」



由良「……わ、私もこの世界に行くのは」



弥生「む、無理です。心臓、止まる……」



提督「……うーん、なかなか驚かされましたね。ここで来るかな、と思ったところで来ない。からの、ドーンって感じがなかなかで、ピエロットマンがゆっくり遠くから姿を表してこつこつ近付いてくるのが不気味ですね。謎解きもこれになぞらえたものならば、攻略したも同然ですが……問題は」



提督「オリ要素をぶち込んでくる可能性があること、かな」



提督「自分一人で行ってきてもいいのですが、五人強制参加な以上は腹をくくってください。自分からしたら夜に見る深海棲艦のほうが余程怖いと思いますけどねえ……」



由良「深海棲艦なら倒せますから……」



瑞鶴「でも暁がガチで怯えてるね。マジ泣きしかねないわ」



阿武隈「全員で固まって動くのが吉ですかね」



天津風「明るい音楽入れたモノを持っていくのはどう?」



暁「そ、それナイスアイデア! イヤホンも!」



島風「あ、ジャージ……動きやすい服に着替えてきたほうがいいと思う!」



提督「ええ、死にたくなければ」



暁「冗談やめてよっ!」



提督「……暁さん、後ろ」



暁「そういうの止めてってばあ! 司令官のバカ――――!」



間宮・大淀「……」



龍驤「間宮さんと大淀もさっきから動かへんで……」



………………


………………


………………




提督「龍驤さん、代理よろしくお願いします」



龍驤「こっちのことは任せとき」



提督「お願いします。皆さんジャージに着替えてきましたね」



提督「おさらいをしてきます。まずこの遊園地自体にはなぜかホテルや人形の館という建築物が外れにあります。その土地一体は遊園地の経営者が買ったものですが、壊そうとしてもなぜか不幸が続いて壊せない。仕方なく駐車場は別に作ってそのままにしておくことにした、というエピソードです」



提督「この土地自体が曰く付き、ま、人形館に出てくる幽霊もホテルの化け物も、モデルが存在しますね」



阿武隈「あれ、モデルがあったんですか?」



提督「ええ、悪い島風さんも海の傷痕と同じ産まれ、つまり19世紀の人物で似ている有名な殺人鬼が一人います」



暁「さ、殺人鬼」ビク



由良「ど、どんな?」ビクビク



提督「殺した相手の血を啜る吸血鬼ですね。彼は最後に、蝋人形館の蝋人形に公判の時の自分が着ていた服を人形に着せて欲しい、と願ったそうですし」



提督「内装にもいくつか有名どころをモデルとしているところが見受けられました」



提督「覚悟はいいですね?」



暁・由良・弥生「(`・ω・)人(`Δ´)人(・ω・´)」



提督「それじゃ押しますね」タッチ



《Welcome to》



《PIERROT MAN WORLD》



【7ワ●:いざ、ピエロットマンの世界へ! 2】



由良・弥生「……」



提督「……」



由良「う、わ」



由良「暁ちゃんがいない――――」



弥生「スタート地点は、ゲームと同じパークの入り口、です」



提督「すみません、暁さんを探しに行きますね」



由良「!」


ぎゅっ


提督「ふたてに別れ、て……いたたたた!」



由良「単独行動は死亡フラグだからねっ、ね!?」


ぎゅぎゅー


提督(めちゃくちゃ強い力で腕をつかんでくる……)



提督(完全に置いてくな、の意味……)



提督「……なら一緒に行きましょう。暁さんならまず一人しかいないことに気付いた瞬間に泣き叫ぶはずですが、声が聞こえないということは声を出せない状況下にある……密閉空間にいるか、自分達とは遠く離れたところからスタート、とかですかね」



提督(一応持ってきたけど、やっぱり携帯は使えない、か)



弥生「司令官、す、進むの速いです」



提督「すみません。少しペースを落とします」



提督(予想しづらいからこれといった作戦は用意してなくて腹だけくくってくれ、といったけど、恐らく分断されるかな……)



提督「お二人ともお分かりかと思いますが、自分は身体能力は低く、悪霊に追いかけられた時に逃げ切れるか分かりません。その時はお二人だけで逃げてくださいね」



提督「全員アウトになれば任務失敗でカタストロフガンによる罰が下りますし、リトライするにしてもなるべく先に進んで情報は持ち帰るべきなので、そこらの辺りはお願いします」



弥生「りょ、了解です」



由良「……、……」



提督「それでは、園内に入ります」



2 



暁「ふええええええん……」



暁「司令官も由良さんも弥生もいない……」



暁「ここ、レストランの辺りよね……」



暁(……そこのお店のピエロの像が怖いけど、あ、あの隣の案内板見て司令官達がいそうな場所に向かわなきゃ)


コツコツ


暁「……」ジーッ



暁(パークの入り口は、ここと真逆の位置)


パリン


暁「っひ、なんの音……」キョロキョロ


パリンパリン


暁「っ、レストランの食器が、落ちて割れてるうう!」






暁(はあはあ……ここは、メリーゴーランドの近く、ベンチに座って少し休もう)



暁(このピエロの銅像、可愛くもないし、なんでこんなのマスコットにしたんだろう……)



暁「もうっ、あなた恐いのよっ!」ゲシゲシ



暁「え、柔らかい……?」



PIERROT「……」ギョロ



暁「銅像じゃない――――!」



PIERROT「♪」スチャ



暁「ほ、包丁っ!」



暁「ふぇ、ふえええええん!」



暁「じれいがあああんだずげでえええ――――!」


タタタタ



3

 

 

由良「今のは暁ちゃんの声!」



提督「大体いる方角は分かりました」

 

 

提督「由良さんと弥生さん、自分は駆け足で行くので、そこの茂みに隠れていてください。全員でジョーカーと接触する必要はありません。ちゃちゃっと救出して戻ってきますから」

 

 

由良「だ、だから単独行動は死亡フラグで……」

 

 

提督「……すみません、暁さんを一人にしておけないんです。あの子、遊園地にトラウマあるはずですから」

 

 

由良「……、……」

 

 

由良「分かりました」

 

 

弥生「私は由良さん、とそこに、隠れてます、ね」

 


提督「お願いします」

 


………………

 

………………

 

………………

 

 

女子トイレ個室にて

 

 

暁「……」ガタガタ

 

 

暁(響ぃ、雷ぃ、電ぁ~、お姉ちゃんはここでもうデッドエンドかもしれない……)

 

 

暁(というか、このデスゲームの参加者って、怖がりを選んだ感じよね……想力ってそんなことも、いや、艤装に適性率つけるくらいだから、分かるのかな?)

 

ガタ

 

暁「……っひ」

 

 

Pierrot「カアカアカアカアカツキちゃあああん♪」



暁(なんか私の名前、呼んでるううう!)

 

 

Pierrot「ココカナ」

 

ガチャ

 

Pierrot「……イナイナア」

 


Pierrot「ココニハイナイノカナ……アッア、ソトニ、ダレカイル」


 

暁(行ってくれた……)ホッ

 


暁(……思い出しちゃうな)

 

 

暁(私、遊園地でお母さんにここで遊んで待っててねって……)

 

 

暁(閉園の時間になっても、良い子にして待ってた)

 

 

暁(ずっと、待ってた)

 

 

暁(けど)

 

 

暁(お母さん、迎えに来なかったんだ)

 

 

暁(あれから遊園地、あんまり好きじゃない)

 

 

グサ

 

暁(……ん、扉になにか刺さって……?)

 

 

Pierrot「ココココココココカナ――――!」

 

グサグサグサグサ

 

暁「ぴぎゃ――――――!」

 

 

暁「と、扉、開いちゃう……!」

 

 

暁「っ、た、ただでやられてあげないんだから……!」


 

暁「えいっ!」

 


Pierrot「ンー……タックル、シタノ?」



暁「す、すり抜けた……?」

 


Pierrot「♪」スチャ

 

 

暁「あ、あ、ダメ、腰が抜け……」

 

 

提督「なるほど……そういう仕様ですか」

 

グサ

 

Pierrot「いた、イ――――!」

 

 

暁「し、しれいかん――――!」

 

 

提督「トドメです。この悪霊には地獄にお帰り願いましょう」

 


暁(容赦なく胸に突き刺した……)


 

Pierrot「」

 

 

提督「ご無事なようでなにより。迎えに来ましたよー」

 

 

暁「お……遅すぎだからっ!」

 

 

提督「立てます?」

 

 

暁「……」

 

 

提督「失礼して、よっこらしょ」

 

 

4


 

暁「し、司令官、あいつを何で倒せたの?」

 

 

提督「しょせん疑似ロスト空間であり、ここで使われているのは想力です」

 

 

提督「元ある仕組みの応用ですよ。あのPIERROTもファントムステルスになれるみたいですね。なので、一部の艤装の破片で傷はつけれます。傷つけたのなら、仕留めは出来ます」

 

 

提督(……まあ、こちらの情報を持ってるわるさめさんを引き込んでいますし、これで終わりではないでしょうが)

 

 

提督「しかし、まさか立ち向かうとは意外と勇気ありますね。あの海で度量が身に付いたようで」

 

 

提督「お陰で少しの間、観察する余裕が出来ました」

 

 

暁「ちょっと傍観してたんだ!? すぐに助けてよっ!」

 

 

提督「すみません……」

 

 

暁「でも、迎えに来てくれたから許したげる……」

 

 

暁「しれいかん」


 

 

暁「怖かった――――!」

 

 

暁「ふええええ――――ん!」

 

ヒュー

 

提督「!」

 

 

暁「何の音?」

 

 

提督「観覧車のゴンドラが落ちてきました。暁さん、ごめんなさい!」


 

――――こっちはすげー司令官の望む通りにがんばってんだから、お守りしてないでクリアしよーよ……鈍ってんねー。

 

 

――――契約上、私は手は抜けないんだよ。

 

 

――――PIERROT倒しちゃダメじゃん。正規ルートで謎解きしてクリアじゃないとね☆

 

 

――――この程度のこと、予想していない

 

 

――――わるさめちゃんだと思ったか☆

 


【8ワ●:全滅】

 

 

龍驤「ちょちょちょっと待てや!?」

 

 

卯月「司令官の体が潰れたし……びしゃっと飛び散ったの血だぴょん。うげー、司令官が肉塊になるの見ちゃったし……」

 

 

天津風「あなた落ち着き過ぎでしょ! 准将さん死亡とかこれ洒落になってない!」

 

 

阿武隈「て、提督」


 

大淀「……いえ、これ確かに内臓飛び散りましたが、傷口を見てください。この再生力、覚えがありますね」

 

ムクリ

 

提督「自分の臓物の悪臭のする目覚めとか最悪ですね……」

 

 

島風・瑞鶴「生きてる!」

 

 

提督「悪い島風さんとの契約で、契約が切れるまでは不死にされてますからね……助かりましたが」

 

 

提督「このゲーム、死にゲーでしたね……」

 

 

由良「う……刃物で」ムクリ

 

 

弥生「……刺され、た」ムクリ

 

 

暁「」

 

 

阿武隈「と、とにかくご無事でなによりですっ。皆も死なないようにされていたみたいで、なによりです!」

 

 

由良「そうだね……」

 

 

天津風「怖いから口元から垂れてる血を拭って!」

 


島風「ほいティッシュ」

 

 

長月「……大丈夫か?」

 

 

由良「もうヤダ、提督さん私もう嫌……」

 

 

弥生「同じく……」

 

 

菊月「この様子じゃリトライは無理そうだな」

 

 

提督「こっちが死なないのをいいことに、何度も殺してきますね。問題なのは、痛みがリアルだったこと。死の痛みは慣れるもんじゃないです」

 

 

瑞鶴「みんなもう心折れてる……」

 

 

暁「……」

 

 

大淀「暁さんが重症ですね……人形のように生気が」

 

 

卯月「うーちゃんなら余裕なのになー……」

 

 

提督「難しすぎる……リアルで心を鍛えてから挑戦しないとだめですこれ。いっそのことスルーしたいレベル……」

 

 

龍驤「無理にやらんでも。各資材8000+開発資材50+高速修復材50やったか。大きいけどさ、こんな辛いのスルーして他の方法で探せばええんちゃう?」

 

 

提督「それだけあれば色々と試行錯誤が可能になるんですよ。この艦隊これくしょん、とにかく時間を持って行かれるんで、短期でクリアするには、これをやるしか」

 

 

提督「ですが、龍驤さんのいう通り急がば回れ、ですかね」

 

 

暁「司令官!」

 

 

提督「どうしました?」

 

 

暁「なんでわるさめさんの声が聞こえたけど、あの人って偽島風さんと手を組んでる風だったわよねっ」

 

 

瑞鶴「はい、説明」

 

 

提督「悪い島風さんが手伝ってくれる人欲しいとのことで、製作秘話にない情報提供と交換でわるさめさんを貸し出しました。ゲームに容赦ないのは契約故みたいですね。向こうサイドに一人いてもらうのも悪くないですし、わるさめさんなら信用も出来るので……任務も与えてあります」

 

 

提督「由良さん弥生さん暁さん」

 

 

由良「あのですね、仲間が死ぬところを見たんです。例え死なないとしても、何度も繰り返すのは無理です(キッパリ」

 

 

弥生「仲間を守るためならともかく、げーむ、で特攻命令は聞かない」

 

 

提督「ですよね。お二人はキスカの事件、暁さんは珊瑚の囮の件がありますもんね……」

 

 

提督「……、……」

 

 

島風「その画面なんですかー? 私達の横に出ているハートマークみたいなの」


 

提督「なんでもありませんよ」

 

 

卯月「隙ありー! スマホ奪取!」

 

 

提督「ちょ……画面にタッチしてはダメですよ! 自分以外が操作するとセキュリティが作動しますから!」

 

 

卯月「……、……」

 

 

卯月「ぷっぷくぷぅ。これうーちゃん達→司令官の好感度だぴょん。想力で解析されているとなると、信憑性はたっかいなー」

 

 

一同「面白そう」

 

 

提督「っと、奪取」

 

 

一同「……」ジーッ

 

 

提督「知らなくていいですよ。当てになりませんから」

 

 

阿武隈「気になる……トップ3だけでも知りたいかなあって……」

 

 

瑞鶴「感情って色々あるからねー。予想がつきやすそうでつきにくい」

 

 

卯月「電、間宮、わるさめの三連単に間宮アイス」

 

 

間宮「私はどうなんでしょう。提督さんのことは好きなのは好きなのですが、初霜ちゃんとか電ちゃんとか秋月ちゃんの好感度というか忠誠度が常軌を逸していそうな気が……」

 

 

提督「止めましょう。誰も得しません」

 

 

龍驤「真に受けんから損もなしやで。気になって眠れんから、行こやー」

 

 

一同「……」ジーッ

 

 

提督「こういうのはダメです……あ」

 

ガチャ

 

わるさめ「ふう、勤労意欲を発散してきたぜ」

 

 

わるさめ「みんなもお疲れー! どう面白かった!?」

 

 

弥生「は?」

 

 

2

 

由良「春雨さん……!」

 

 

わるさめ「まーた私、こんな役回りなのかー」

 


わるさめ「事情は後で話すから司令官に報告させてー」

 

 

提督「……報告書にまとめてもらっても?」

 

 

わるさめ「あ、うん。長くなるしそうするー。じゃあ口頭で1つだけ。カゲカゲとヌイヌイのクエスト追加されるから、それさ」

 

 

わるさめ「絶対にクリアしてね」

 

 

わるさめ「新システムも解放されるから」

 

 

提督「了解です。では、早速自分は少し調べものを」

 

 

提督「大淀さん、前世代陽炎さんのデータって」

 

 

大淀「……ええ、分かりました」

 

 

わるさめ「いってら!」

 

 

暁「わるさめさん、話してもらうからね」

 

 

わるさめ「その前にこの部屋、臓物臭いから掃除しよ?」




ピコーン、




新任務が追加されました。



【9ワ●:陽炎&不知火 戦後日常編】



意外と世の中って単純なのかもしれないわね。



総務省の統計いわく全世界安全海域されたことでこの国の失業率は低下し始めているとかなんとか。海のどこに行っても深海棲艦はいない。ならば、今その見栄えのいい数字の足を引っ張っているのは深海棲艦との闘いを稼ぎにしていたところ。もちろん艦の兵士だって例外じゃないのよね。



駆逐艦陽炎の化身として過ごす日々は終わりを迎えた。



高校二年生の時から止まっていた普通の人間の女の子としてまた時計は針を進め出した。私は高校生になっても化粧とかしなかったけど、世話焼きの不知火に嗜みとして押し付けられたモノがこの家にはある。



私は少しやんちゃだったのよね。少しだけね。少しだけよ?



なんとか女のおしとやかってやつを演出しようと、清楚な感じのフレアとかキュロットスカートとか、結局一回も使わなかったファンデにマニキュアとかないのに除光液だけあったり、ヒールもある。なんだか洒落っ気に目覚めた少女の残骸がちらほらと。



やっぱり落ち着くのは陽炎型の制服ではあるんだけど、街で過ごしていくからには陽炎の殻から脱皮しなくちゃ。



この陽炎型の制服は丁寧にしまっておいて、今あるモノから好きなのを選んで、外を歩いてみた。ジャージにスニーカー、と動きやすいほうが好きなのは今も変わらず、だ。我が人生に色気がないわけだわ。



掛け時計を見る。あの日からの時間を取り戻したわけだけど、もしかして私の時計の針、手動式なんじゃないかしら、と思うくらいに進んでいかない。



思い返すと、陽炎として過ごした海の日々は辛いことばかりじゃなかった。失ったモノより得たモノのほうが多いくらいだ。やっぱりあの戦争ってどこか変ね、と思う時もあったけれど。



誰とはいわないけど、そう思わせるほどの恐るべき執念が戦争の悲惨に打ち克った。



きっと戦争の名を冠された長期の争いで、ここまで人道的に終結した戦争はない。この戦争の兵士は街の平和を維持するための生贄、防波堤だなんてもいわれていたし、この軍にくるやつなんて理由こそ違えど、普通じゃなくて切羽詰まった連中ばかりなのよ。



司令は、こういった。

あの海の結末を、こう解釈していた。



自分達は『平和を守るための尊い犠牲』みたいなクソみたいな社会の歯車の役割でもなかった。人間が産んだ罪の象徴、海の傷痕当局を倒すことで、此方という『1人の女の子を助けるための救助活動』に命を捧げたのです。

この事実が私達の本当の勲章であり、共通の救いであるはずだ、と。



こういうと私達、まるでスーパーヒーローみたいよね。



だけど、めでたしめでたし、と終わるわけもなかったわけで。



この一件は終結した戦争の後でも、晴れ渡る空をいまだに防空頭巾かぶって恨めし気に睨みながら、まだ奪われることに怯えていた被害者の救命活動のお話だ。



前世代陽炎のね。

私より早く艤装から解き放たれたあいつは未来の私、みたいなものなのかしら。でもあの人はまだグローバルで縮こまった狭い世界で深海棲艦と戦っていたみたいだ。



前世代の陽炎、私もあんたと同じ陽炎艤装をつけて戦っていたから分かる。私もあんたの境遇だったら同じことしていたと思うからね。イフの未来を歩んだもう一人の私みたいなもん。



でも、あんたの心の傷はそう簡単に癒えるものでもないからさ、いつか必ず、だなんてコツコツやっていけばいいんじゃないのかなって。



どうせ世界はずぅっとさ、

性懲りもなく回っているわけだしね。






不知火「陽炎、その悲しいまでのダサい恰好はギャグですか」



こいつは朝っぱらから不愛想な面だ。私のジャージの襟を引っ張ると、その中をちらりと見て、更に不機嫌そうな顔になる。中までチェックすんな。



不知火は性格ゆえ、私服できちっとしているのだけども、私からいわせれば服を殺しているのよね。主に怖い眼光が。



陽炎「私服私服というけど、あんたそれ陽炎型の制服よね?」



不知火「外に出る際の制服は便利ですから。とりあえず間違いはないかと」



じゃあ、私も陽炎の制服でいいや、と着替えてこようと踵を返すと、不知火に肩をつかまれる。なにやら難しそうな顔をして、いった。



不知火「それはどうなんでしょう。どこかの学生服でもないのに、街で同じ服装で出かけるのは少しおかしいのでは。海に抜錨する時は普通でも……」



そもそも『海に抜錨する時は普通でも』って言葉がすでに普通じゃないわよね。こういうのは時間が経てばきっとなんとかなって行くんだろうけど、今すぐにっていうのは難しい。



不知火が私の家の玄関を開けると、「陽炎をメーキングします」と手招きした。自信ありそうだが、どうせ根拠はないだろうな。こいつはこいつでズレているから不安な気しかしないわ。






不知火「陽炎、立ち鏡に向かって柔らかく笑ってみてください」



ブラウスとフレアスカートを着せられた。ツインの髪は、陽炎の黄色のリボンでポニーに結ばれる。うっすらと化粧もさせられた。めかしこんだ私はもはや陽炎っぽくない。指示通りに柔らかく笑うと、不知火が「大人びて見えます」といってなぜか自慢気だ。確かに誰これっていうくらい、外は落ち着いた雰囲気だ。でも、内はめちゃくちゃ落ち着かない。陽炎型の制服と艤装が恋しいわ。ワーシック。最悪な病気ね。



不知火「男性視点の意見が欲しいですねっと、誰か来ました。不知火が出ますね」



私のスマホに司令から『着きました』ってメッセージ届いているし、司令よね。不知火が玄関口で敬礼しているから間違いなさそうだ。「お、おはようございます!」とあいさつもしている。近所迷惑考えなさいよね。「汚い部屋ですが、どうぞ」やかましいわ。



陽炎「司令、時間通りねえ。ちょっと片づけてお茶出すから待ってなさい」



提督「お邪魔します」司令が目をぱちくりとさせる。「雰囲気ががらりとお変わりですね。ここが陽炎さんの家であること、それとその声で陽炎さんであるとは分かりますが、街ですれ違っても気づきませんね……」



陽炎「……なら着替える」



提督「不知火さん、えっと、自分はなにか失礼なことをいってしまったでしょうか」



不知火「陽炎のことなら大体分かりますので、申し上げましょう」不知火がいう。「陽炎はああ見えて司令のことをかなり気に入っているので『街ですれ違っても気づかない』というセリフにすねたんですね。気づいてもらえないのは嫌だという陽炎の乙女心です」



陽炎「ち、違うから! 不知火あんたうっさい!」



不知火「リアルのツンデレは苦労しそうな気がします」肩をわざとらしくすくめて、やれやれ、といった風に肩をすくめている。



提督「……」



陽炎「なんか思いつめた顔になったけど、どうしたのよ」



提督「いえ、なんでも」



陽炎「あんたのダンマリには大体こっちの想定を超えた意味があるから、口を開くより黙り込んでいるときのほうがうるさい」



提督「それは酷い……今、対深海棲艦海軍で起きていることは伝わっていますね?」



陽炎・不知火「まあ」



適当に茶を出して、三人でちゃぶ台を囲んで座る。



その起きていることというのは、島風の姿を真似た戦後復興妖精が出現して、軍周りのことで悪戯して回っているとかなんとか。

黒潮からも連絡来たけども、海の傷痕みたいに切羽詰まった感じじゃなかったし、「ゆっくり里帰り満喫しときー」と返ってきてもいる。

そのうえ、闇の連中からもそう大した危険をもっている感じではなかったので、気には留めていた程度ね。

それだけに司令の話には驚いた。秘書官にタッチすると、リアルにも伝わるとか。



提督「あ、新しい任務が……」



不知火「今の陽炎と2ショット写真を撮って闇のグループに写真を投稿すればいいのですね。なるほど、グラーフさんとガングートさんのCMから薄々察してはいましたが、悪い島風さんというのはわるさめさんの同種みたいなものですね。彼女を誘うのも納得です」



陽炎「イヤだからね。報酬は資材格500ずつ? リアルの私達、モチーフにしているのならそう大きい数字でもないし、私は自分の判断を優先させてもらうわ」



提督「ところがどっこい大きいです。サービス任務と見ました」



不知火「陽炎、協力できることはしましょう。このしわ寄せは鎮守府の皆さんに行くことになりますから」



陽炎「……はあ、分かったわよ」



不知火「司令、ツンデレもとい陽炎はこのように建前を用意すればちょろいです」



陽炎「だからあんたはうるさいってば!」



仕方がないのでこのお遊びに付き合うことにした。おい、送信する前に任務であることを書きなさいよ。すぐに司令の携帯に着信が入った。表示されている登録名は『ぷらずまさん』だった。反応が早すぎて、向こうの発狂した様子が目に浮かぶわ。私の携帯から例の任務の一環だと書き込んでおいた。



明石君《ンだよ陽炎さんかよ。化粧と服でここまで印象変わるって、もう一種の改装だなオイ》



暁《明石君は常にしっつれいね……》



龍驤《めかしこむと印象変わるなあ。うちだとスタイルの問題であかんわ》



瑞鶴《へえ、陽炎のイメージと離れているけど似合うじゃん。でも、その隣にいる男の生気の無さがマイナスに作用しているわね》



卯月《心霊写真かと思ったし》



提督「」




しまった。色々と飛び火してしまった。



陽炎「司令、とりあえず置いといて」



提督「ええ、そろそろ一つの本題に入りましょうか。この陽炎&不知火の戦後日常編を丸く収めよ、という任務があります。そこでお二人にお聞きしたいのですが、なにか里に帰ってから問題は発生していませんか。もっといえば前世代陽炎さん関連です」



珍しく不知火が司令の言葉に即答しなかった。



私もあの人のことを話すのはためらうわね。実は幼馴染といってもいい人だが、すっかり変わり果ててしまっていた。あれが同じ陽炎だったとは思えないほどに、人格が変わってしまっている。まだこの戦争をかき乱そうと裏でなんかやってるみたいだし。闇堕ち陽炎よ、あれ。



提督「自分も前世代の陽炎さんのことは軍の資料から調べさせてもらいました。彼女の噂は何度も耳にしましたし、話題にもあがりました。全体的な素質性能は総合一位の駆逐艦、あの卯月さんが総合力で二番に甘んじる成績」司令は少しだけ間を開けて、いう。「前世代の不知火さんと黒潮さんが殉職した作戦の後、抜錨無許可で鎮守府を抜け出し、独断の捜索活動を開始した、と。その途中、深海棲艦に襲われて、孤島に避難、その翌朝午前0530に救出、彼女の適性率は『なぜか1パーセントを切っていて兵士として活動が困難』、そして解体申請の流れですね。陽炎さんと不知火さんの地元です。お二人は彼女と入れ違いで来た、と」



ああ、司令がわざとらしく強調した部分からして大体の見当をつけていそうだ。確かに臭うわよね。適性率が一気に64%も下がった事案はそいつが初めてだって聞いたし。



わざわざ私達の問題に任務としてチョッカイかけさせたのは戦後復興妖精みたいだし、自然とその適性率低下の理由に悪い島風が関わっていそう、という発想に辿り着く。あまり当たってほしくないが、そんな濃い予想がすぐさま思い浮かんだ。



不知火「司令、申しわけないのですが、あの人との関わりは不知火の口から話すことはできません。陽炎にとって家族を失った思い出が関わってきますから。例え、陽炎の事情を司令が書面で知っているとしても、不知火の口からは……」



陽炎「司令はどこまで把握しているのよ?」



提督「陽炎さんが過労による怪我で植物状態になっている間に、家族が他界したと。施設に籍は置いてあったものの、すぐさま軍行き、です。不知火さんはその後を追うように軍に来た、とまでは。前世代陽炎さんのお里もここですから、陽炎さんが軍に来た理由は彼女が関連している可能性が高いとみています。ざっとそんなところ、ですかね」



不知火「……」



陽炎「簡潔に話すわね。私はおばあちゃん子だった。おばあちゃんは叔父と一緒に暮らしてた。ある日、私が学校に行こうとすると、警察が家の前にいて、外をうろついていたおばあちゃんを連れてきた。虐待発覚。その事後処理の後、私は家計を助けるためにバイト始めて、その頃叔父が秘密裏に私に接触してきた。金寄越せって高校生の私にね。従わないと母親を殺すって脅してきた。私はそのことを不知火にも黙って部活も辞めて働きまくった。私が過労でぶっ倒れて意識なくなっていた理由ね。その後、その件でお母さんと叔父が揉めて叔父がかっとなってお母さん殺害、私には不知火と前世代陽炎さんしか、仲いい人はいなくなった。そのうちの一人が泣いてた。私は叔父のほうを殺そうと思ったけど、不知火とその親に止められたから、殺しても許される深海棲艦のほうへ仇討ちへ。陽炎の適性が出て海へ。オシマイ」



提督「」



珍しく司令が鳩に豆鉄砲食らったようなレア顔をしている。



かなり簡略化したけども、めちゃくちゃ重いわよね。ちなみにこの話をしたのは、不知火を除いて司令と黒潮くらいだ。心のどこかでしこりとして残ってはいるけれど、今では別にそこまで気にしていないといったら、私は薄情に思われるのかしらね……。



陽炎「駆逐が軍に来るまでの事情なんて基本不幸でしょ。不知火に雷、卯月、雪風もか。そこの辺りが特別なだけで、戦争参加に明るい動機や立派な大志があるほうが珍しいわ」



不知火「不知火は陽炎が心配だから私も、で親は納得してくれましたから。不知火の家と陽炎が家族のような関係だったのが幸いしましたね」



陽炎「でも今はもうダメージ受けることではないから司令、その雰囲気止めてよね……」



提督「……いいえ、あなた達が着任した時に無理にでも聞いておけばよかったですね。丙少将からあなた達のことは書面でもらいましたが、前世代陽炎さんのことは少しひっかかっていたんですよ。それ恐らく明石君と同じパターンですね」



不知火「といいますと」



提督「適性者にレア分けはあるものの、基本どれも発見しにくいんです。ここから陽炎不知火二人を輩出、というのは恐らく海の傷痕が明石君に適性を無理やり出したのと同じ可能性がありますね。ただお二人の場合は戦後復興妖精、悪い島風さんになりますかね」



陽炎「は、はあ? どうしてそうなるわけ?」



提督「ああ、悪い島風さんから聞いたのですが、前世代の陽炎さんと契約したそうです。恐らくその日に一夜にして適性率が64%、意図的に低下させたのだと思われます。あの時に存在がバレるとその時点で想力発見ですからね。きっと前世代陽炎さんは何らかの口封じもされています、ね」



陽炎「でも、そんな時に戦後復興妖精が現海界して、なんであの人と契約するの?」



不知火「……あ、その事件が起きた頃は確か」



提督「中枢棲姫勢力誕生です。キスカ事件では由良さん達が海の傷痕に与えた損傷により誤作動した思考機能付与能力が戦後復興妖精にも及んでいた、と考えるのが妥当ですかね。製作秘話ノートもその異常事態から書き込み情報がかなり減っていますし、此方さんいわくその頃はぶらずまさんとわるさめさん、瑞穂さんのバグ関連で相当ブラックな労働環境だった、と」



提督「その前世代陽炎さんの事件、同時期のキスカの事件に上書きされるように落ち着きましたよね……」



陽炎「……一応、つじつまは合うわね」



不知火「司令……少しお伝えしなければならない報告が出来ました」



提督「お願いします」



不知火「そういえば、陽炎が目を覚ましたのは、ヒーロさん、もとい前世代陽炎さんがお見舞いに来てすぐです」



提督「ほぼ確定ですね。それが与えられた『契約のリターン』です」



提督「そのですね、瑞鶴さんと前世代陽炎さん不知火さんについて話をしたことは?」



陽炎「なんで瑞鶴さん? というか私ら基本的に他人の過去については詮索しないから、個人的な事情は話題にしないわよ。そういうの忘れたくて戦争やっているやつすらいたくらいだからね。過去の話は相応の理由がない限り話題にしないわ」



不知火「瑞鶴さんがなにか?」



提督「……知らないのは意外ですね。前世代の陽炎さん不知火さんは瑞鶴さんと同じ鎮守府にいました。瑞鶴さんが一度解体処分されているのは聞いたことあるかと。彼女、実はその件で提督を半殺しにしたからなんですよね」



陽炎・不知火「」



知りたくなかった嫌な繋がり。



提督「……申し訳ないお願いなのですが」



提督「お二人の過去をお話してもらっても」



陽炎「構わないわよ。不知火が喋るわ」



不知火「なぜ不知火……陽炎がいいのならお話しますが」



【10ワ●:想題、不知火】



通学団で一緒になり、道端の虫とか猫とかに目を向けて、触ろうとする女の子がいました。これが陽炎なのですが、手のかかるやつで目を向けていないと通学団の輪からいなくなることも多々あります。



なので、不知火は横断幕を持つものとして、陽炎の見張りをしていました。そのせいか陽炎とは言葉を交わすようになり、距離は縮んでいきました。一緒に遊ぶようにもなり、いつの間にやらどこに行くのにも一緒です。端から見たら、連れ回される私が陽炎の金魚の糞でしたが。



ある日に、最近この辺りをうろついている野良犬を見つけに行こう、と近所を散策しました。空き地でその犬を発見しました。確かに首輪がなかった。しかし、大型犬で私と陽炎は尻込みました。ワン、と吠えられたら、びくっと身体が固まりました。威嚇されて、噛まれる、と予感した時に、



「がるる!」



という威嚇の声が後方から聞こえました。振り替えればそこにいたのは近所にある商店街に住んでいる高校生女子でした。その威嚇の声で犬は驚いたのか、尻尾を巻いて反対の出口から逃げて行きました。私と陽炎は、その人にお礼をいいました。



ここから陽炎がなつきました。自然と私も仲良くなりました。駄菓子屋でお菓子を買ってくれたり、公園で秘密基地を作ったりして遊んだのは今も思い出として覚えています。



商店街の催し物で、ヒーローショーのヒーローをやっていた人なので顔も名前も知ってはいました。本当にその通りの人で勇敢で頼りがいのある人でした。



日曜日になると、商店街に出かけて遊んでもらいました。その時期辺りですね。ヒーロさんは軍に行く! といい出しました。ここの動機はよく分かりませんけど、人のためになると考えただけなのでしょう。そういう人です。



適性検査施設についていって、私と陽炎も検査を受けましたが、適性はありませんでした。ヒーロさんは陽炎の適性が出ました。

それから親を施設の人と説得して、2ヶ月後には海へと旅立つことになりました。

私達は止めましたが、最後にはきっとこの人なら、と答えを出しました。好きな人を信じてしまう。きっと子供過ぎて戦争のことよく知らなかったからですね。



兵士になってから、ヒーローさんの活躍は届いていました。やはり、あの人はヒーローです。不知火は返ってきたお手紙に自慢気に胸を張っていました。戦争はいつ終わるのでしょうか、と考えている間に季節は流れ、桜の花びらが散っては芽吹いてゆく。たゆたう時に、平和を謳い、穏やかに過ごしておりました。



高校一年生になった時です。

こいつ、こほん、

陽炎の様子がおかしくなったのは。



陽炎が部活を止めて、付き合いが悪くなりました。忙しい、とのことです。あえて私はなにも聞きませんでした。陽炎とは家が近い上に、親同士も仲がよかったので、家庭事情は耳に入ってきます。家のことを手伝っているのだろう、と思っていました。



しかし、日が経つごとに、陽炎は疲れた顔で笑うようになりました。子供の頃から元気なやつだっただけに心配です。私は陽炎と違って顔には出ませんが、本当に心配していました。



だから、少し学校が終わった後に陽炎を尾行してみました。隣町まで自転車で向かいます。なにをしていたのかというと、アルバイトをしていました。お仕事が終わるのを出待ちして、陽炎に声をかけました。そんなに疲れきってまですることなのか。一体なぜ急にそんなに働き始めたのか。口外しないから相談して欲しい、と不知火は素直にそういいました。



しかし、誤魔化されました。



ショックでしたが、仲が良いとはいえ、知られたくないこともあるのだろう、と不知火はそれ以上の詮索は止めました。



それから陽炎の元気も戻りつつあり、ヒーロさんがお盆に帰ってくることになりまして、陽炎と不知火でなにかお疲れ様の贈り物をしようと考えました。



「ん、なにかあった?」



ヒーロさんは陽炎を見て、そんなことをいいました。陽炎は別になにもないわよ、と答えて、3人で英雄の商店街の凱旋にお供しました。歓迎するつもりが、商店街の人達に食べ物をサービスしてもらったり、と逆にもてなされてしまいました。



なぜかヒーロさんは元気がないようにも思えましたが、深くは聞きませんでした。



それから日がそう経たない内に、幸せを3つ、不幸の嵐が非情にも奪ってゆきました。



陽炎が怪我をして、目覚めない身体になってしまったこと。



目覚めぬ内に陽炎の母親が亡くなってしまったこと。



ヒーローさんが仲間を失った海戦により、軍に居られなくなるほど、適性率がなくなってしまったこと。



大地に強い熱が浴びてむわっとした気体が視界をぐにゃりと歪ませる夏のことでした。



【11ワ●:プラモ店の2階の変な部屋】



提督「不知火さん、ありがとうございます。そこから、ですね。その部分です。前世代陽炎さんが戻ってきた理由、恐らくその海で戦後復興妖精と出会いましたね」



不知火「……どういうことです?」 


 

提督「適性率がなくなった件についてですが、あの陽炎さんにおいては少し変だったんですよ。適性率を測る検査ではまだ陽炎の適性は60%ほどは出るはずでしたが、なぜか妖精を使ったシステム的な検査では1%を切ったそうです。そして艤装を扱えないということから、システムのほうで答えとなりましたけど、適性率の数値には融通は利きます」



陽炎「なるほど、やっぱり男の明石君に無理やり適性出した芸当の逆パターンってこと?」


 

提督「ええ、ということはやはり……」



不知火「時期的にキスカ事件の後ですから、もしかしてあの時、由良さん達が与えた損傷で起きた中枢棲姫勢力への思考機能付与能力が戦後復興妖精という司令の推理も当たりですか」 


 

提督「かもしれませんね……+現海界になりますが」


 

提督「陽炎さん不知火さん、前世代陽炎さんのところへ案内して頂いても?」


 

陽炎「いいけど、あいつ今はもうただの引きこもりよ?」



不知火「とにかく重要な任務だと解釈しました。ヒーロさんのところまで案内します」






遠くに見える大きなショッピングモールは私がこの町にいる頃に出来たのですが、あのショッピングモールは3回もリニューアルしたらしい。家電量販店、スーパーなどはもちろん、大抵のモノはあそこに行けばそろう。波のように定期的にやってくるデフレのせいで、活気ある地元の商店街は今や寂れた木枯らしがお似合いのシャッター商店街になってる。



提督「競争は非情ですね……」



不知火「あのショッピングモールが地域の王様になるのを阻止せんと近場のネームドといってもいい系列の家電量販店、老舗の食品店も奮闘したのですが、高級店はほとんどその歴史に幕を閉じたそうです。この商店街にはあのショッピングモールには手に入らないモノもあったのですが……」



陽炎「肉屋さんには5円から高くても15円という揚げ物があったわね……そのお陰でもうコンビニで揚げ物類は買う気にならないし」



提督「個人商店の素晴らしさですよね。自分の地元にもそういうところあれば活用したんですが……」



陽炎「そういえば司令の家も貧乏だったんだっけ……」



提督「ええ、ここだけの話、自分の場合は雑草の味も知っているくらいです。あの頃は本当に参っていましてね……」



陽炎「そこまでだったんだ!?」



提督「冗談です」



ちょっと冗談には聞こえないわね。その不健康な見た目と、司令の食べ物は栄養が取れたのならなんでもいい、のスタイル。ある意味で調理された食べ物に対しての侮辱にも受け取れますが、いただきます、と、ごちそうさま、を欠かさないし。その根元を聞いたような気がしないでもなかった。



不知火「着きました。ここですね」



まだ店仕舞いはしていない。この店は根強い理由はちょっとマニアックな模型店だからだ。細かいパーツがショッピングモールではそろいにくい。ネットが苦手なアナログ人がちょっと遠くからも車で来ている。



提督「お邪魔します」



金属やプラスチックのパーツがずらりと並び、雑貨屋のようにごちゃっとした店内には見知らぬ少女がレジにいた。「いらっしゃいませ」とあどけない笑顔で出迎えてくれた。



少年「あれ、陽炎さんと不知火さんと准将さんですね」



不知火「おはようございます:



提督「店頭のそれは……」



少年「今ホットなので、なかなか売れ行きがいいんですよね」と店頭の棚にある模型を指差しました。電、春雨、瑞鶴、龍驤、と並んでいるのは間違いありません。闇所属の軍艦でした。「在庫品薄です。どうです?」



提督「む、それなら」と司令は全部買ってる。組み立てるの大変よそれ。 



陽炎「ねえ、私達人に会いに来たんだけど」



少年「あ、二階にいますよ。来たら通していいといわれていますのでどうぞ。奥の関係者以外立ち入り禁止になっている階段をのぼっていただければ」



提督「了解です。それではお邪魔しますね」



1階の商売スペースから見えない踊り場でターンしたら、足の踏み場もないほど物が置かれていた。草の根をかき分けるようにして進み、銀のネームプレートに立ち入り禁止、と銀のネームプレートが貼ってある扉をノックした。「どぞ」と潜むような小声がした。



提督・不知火「……、……?」



司令と陽炎が面食らっている。この部屋は暗く、天井にはなぜかスターウォーズのプロローグみたいに文字列が写し出されて流されていた。中央にはリクライニングに横たわった人間が一人いる。その周りには8つの画面があり、なにかのグラフを映し出している。



彼女は左手でマウスを操作して、器用にも足の指でキーボードを叩いている。もうその人間は、生き物というよりはこの部屋のプログラムの一部といった感じね。



「すみませんね。ちょっと目が離せないんでこのままで」



不知火「この部屋は?」



「お、不知火か。そういえば前来た時は店先だったっけ。この部屋は職場だよ。そうだねえ、波を見ているんだ。このグラフの波を見ているんだ。じっとね」そういうとカチッとマウスをクリックする音が聞こえる。「海で波を眺めているとさ、なんだか予兆みたいに天気の動きが予測できたりしない? しないか。でも、まあ、そんな感じで経済を眺めているのよ。ここって思うところをクリック。投資しているだけね」



陽炎「何の仕事なのよこれ……」 



「投資家でも無職でも。今の時代なんていうの。ほら、ユーチューバーが本業とかだと履歴書にはなんて書けばいいのかな。進化の多様性に時代が追いついてない感じがするわ」



提督「……戦争は終わりましたよ」



「准将、終わってからが本番なんですよ」と、顔も見ずにいう。「今の時代、市場の流れを見ていれば大体の事情は予測できますから。一部エネルギー事業が頓挫してシフトし始めていますね。この金の流れを辿れば、日本関連企業方面か。どーも、想の力ってやつは世界革命起こしかねないですね。どこも保険を打ち始めています。これ、火種ですねえ」



提督「……どのくらい漏れているんです?」 



「さあ……でも異常ですよ。これ、財閥が国内政治操作しようとしてますね。多分、まあ、これ、此方か。此方の尋問内容とそれを手にする奴らを洗えば、とりあえずこの財閥が出てくると思います。そいつらの、ええっと、映像系、ですね」



陽炎「頭が痛くなってきた……」



不知火「戦争は終わりました。もう、こんなことしてまで戦う必要はありますか?」



「海の傷痕此方が生きている限り、あります。准将さん、違いますか」



提督「それはどういった意味でしょう」



「証拠がつかめずにいますが、的中していると思います。それを聞くなら遠慮なく推測を述べさせてもらいますかね……」ヒーロさんは寝返りを打って、自嘲気味な含み笑いをしている。「『戦後復興妖精が現海界することをあなたは知っていた可能性が極めて高い』かと」



陽炎「はあ? 色々と疑問が沸くんだけど。まずあんたがこっちの事情に詳し、」



「陽炎も知っているはず。役人のミスで炎上したし報道もされたからあの海のことがリークしたことくらいはね。最後の電、春雨、初霜、准将さんだけが知っている海の傷痕の当局との最後が気になる。なにを話したのか知らないけど、当局が此方の身柄を託したのは報告書からして読み解けるし、そう考えたら当局の行動にも合点が行くしね」



陽炎「だから?」



「当局と結託して戦後復興妖精を利用しているんじゃないのかなって。そもそもおかしいじゃない。疑似ロスト空間が復活して、想力を扱える戦後復興妖精って、海の傷痕レベルの大事なのに妙に静かだしね。そこらも想力四次元ポケットでどうとでもできるでしょ。戦後復興妖精に危険がない確信があるとしたら……」



不知火「……したら?」



「当局、または仕官妖精が此方のためにアイデアを出して准将さんがそれに乗ったってところかな。どう考えても此方を普通の女の子として生活させる選択肢に世の中が流れるわけないじゃん。私達が産んだ生き物だとしても、だから我々は罪を悔い改め、あの女の子の生を許容しましょう、だなんてマジで謳ってんのどこぞの新興宗教だけでしょ。深海棲艦は何万の人を殺したと思ってんの」ヒーロさんはいう。「艦娘……いや、明石君の加入から公式名称は艦の兵士か。ガングートさんみたいに艦の兵士ですら殺せっていう過激な人いるし」



不知火「司令、そうなんですか?」



提督「いいえ」



不知火「ヒーロさんの妄想ということですね」



「不知火、あんたが准将をすごい好きなのは分かった。前世代より忠犬素養あるわね。でも、もっと客観的に考えてみなさいよ。その人、書面からわかるほど個性的かつストレートな変人だし、私よりあんたらのほうが分かるはず」




「本当に目的のためにその人は身内を騙さないって思うの?」




不知火「その問いにはいいえ、ですが、だからなんですか、と」



「ええー……」



陽炎「無条件で信用できるやつもいるってことよ」



不知火はちょっと妄信的に思えるけど、私の答えも同じね。例え、司令がすべてを知っているとして、私達に話していない部分があるとしても、この司令なら信用できる。鎮守府(闇)の連中ならみんなそういうだろうしね。裏切られた、としても、死ぬまで信じているだろう。



裏切られても信じたことを誇りとして胸を張れると思う。司令が私達に与えたモノがどれほどのモノか、理解しているかは怪しいけど。



提督「いや確かにあの場で当局から此方さんの生存方法についての入れ知恵はありましたし、戦後復興妖精のプログラムが作動するよう最後に調整しておく、といわれましたよ。あの場では自分だけが教えてもらいましたから、電さんも春雨さんも初霜さんも知りませんし、教えてはいません。軍にも一部しか知らせていない機密です」



陽炎・不知火「」



提督「海の傷痕消滅についての情報を探りに来るとは読んでいまして、省内だけでなく大本営や北方の総司令部にも網は張り巡らせておきましたが」司令はスマホの画面を難しい顔で眺める。「電子に想力を乗せてこの艦隊これくしょんのゲームを開発してくるとか読めなかったですね……」



陽炎「それでも読んじゃえる気がするからこその変態司令なのにね」



提督「陽炎さんはわるさめさんを自由にしてなにし始めるか読めますか?」



陽炎「ごめん無理。ざっぱなら分かるけど具体的にといわれるとさっぱりになるわ」



中枢棲媛勢力と2年も遊んでいたやつの行動は読めないわ。



「……私に教えても大丈夫なんですか?」



提督「言葉が悪いですが、愚問です。まずはお伺いしたこちらの誠意ですから」



「……あ、なるほど。私と戦後復興妖精の情報ね。それが知りたいってことは、うん、ごめんなさい。陽炎不知火の信頼の通りだわ。あいつの情報を機密漏らしてまで教えてくれるってことは決して八百長なんかしていなくて、想定外の事態が起きている故の聞き込みってことね」



「この手の話すると気を失っていたんだけどね。それが口止め方法。戦争終結してから条件がバグってるのか海のこと喋っても意識なくらなくなった。前はあの海のこと喋ろうとすると意識なくなってたから」



提督「きっびしい制約つけられましたねー……」



「不思議ですね。此方を最も憎悪してもおかしくないあなた達がなぜか全員擁護派です。あの海での戦い、なにがあったのでしょう。情報は断片として漏れていますが、最後のロスト空間で当局と会話したあなたと駆逐艦電、そして駆逐艦春雨の会話を知りたいです。その時になにか当局と契約染みた取引をしたと私は予想しています。ここについてはなぜか比較的、情報を漏らしていると思われる精神影響者のわるさめも完全に口を閉ざしている、いや、上手くいい逃れしていますね。あなたが口裏を合わせるよう指示したのなら納得も出来ます」 



提督「そんなことまで、予想できるのですか。バグに関しては色々と流れていますがネットの情報でも真に受けました?」 



「ネットの情報を真に受けるなんてご冗談を。でもその全てにヒントはあるんですよ。火のないところに煙は立たない。煙は無視しても構いませんが、火種は情報の塊です。情報の情報の情報まで分析して、それらを見極める資質を備えれば真実は自ずと見えてきます」



提督「あなた陽炎適性者だったとは思えないほど性格が変化してますね……」 



「あなたの性格なら私の解体理由も調べていますか?」



提督「姉妹艦の殉職をきっかけに、とは」



「陽炎適性者ですよ、分かるでしょう」




「私は私でケリつけないと気が済まないの」 




提督「あ、そうなんですか」



司令は意外そうな顔をしている。きっとこれはもうなにかよく分からない駆け引きが始まっているわね。この手の勝負なら司令に任せてお口にチャックよ。不知火が察したのか黙っているし。なにかいいたそうな顔がうるさいけど。



提督「効率のため、解体したのかと自分は思っていました。うちの陽炎さんはあなたより成績が劣りますが、陽炎の後釜です。想の力で契約したあなたはそちらの役割に回って戦うことにしたのではないのですか?」



そこで彼女は始めて体勢を変えた。寝返りを打って司令のほうを凝視しています。髪は伸び放題、部屋に引きこもっているからか肌は白く、そして肌は小綺麗だ。



「……ごめんなさい」



提督「契約内容について、それ以上の融通は利きませんか?」



その問いには答えずに、再び仰向けになる。



天井のスクリーンにはチャットの文字列が流れ始めている。どこのどなたか存じ上げませんが、相手のハンドルネームは『億万長者(笑)』とあります。二人はよく分からないグラフを出しあってよく分からない専門用語の混じったチャットを始めました。司令は「お邪魔しましたね」と声をかけると、部屋を後にしました。最後に、とメッセージを残しました。



提督「救いは、艦隊これくしょんに携わったあなたにも確かにありました。受け止め方次第ではありますが、自分でお力になれることがあれば遠慮なく」



「……どうも」



司令は去ったけど、私はこの場にまだ留まることにした。



陽炎「どういうこと? 私には戦後復興妖精と手を結んで、富を築いたようにしか思えないし、対深海棲艦海軍の周りに金の流れを作ったとしたら、それが戦後復興に結びつかなきゃ……」



陽炎「戦後復興妖精はこっちに想の力を持たせることで『海の傷痕:当局&此方』の殺害に協力したってことになるわよね。その戦後復興妖精、親殺しをしようとしたの?」



陽炎「ヒーロさんの仲間の敵討ち、此方を仕留めるまで終わらないわけ?」



「人の心には壁があるもんなのよ」



「此方の罪は消えないからね」



不知火「だからなんですか。不知火達だって深海棲艦たくさん沈めました。戦争を終わらせることで此方にとっての最愛の人を二人も殺したも同然です。そんな悲しいだけの連鎖は終わったんです。不知火は悲しい。いつまでも憎んでいるだけでは害悪です」



大局的に見て正しいのは不知火、だと思うけど、しかし、個人の感情で測った場合はモヤがかかるわね。大切な人を失った痛みは憎悪と化して、その奪った相手に矛先が向くのはごく自然なことだからね。過去の経験からして私にはわかる。



「誰もが肯定する絶対的な正しさが世界に1つでもあれば、歴史はもっと穏やかだったはずだ。ないから正義の反対はまた別の正義になる。争いが正義と悪に別れているのなら、世界は単純すぎる。意見が食い違うのはあの最後の海を経験したか否か。私の性格は知っているはずよね。私は私の手で一発やんないと気が済まない訳」



陽炎「方法の問題よね。前のあんたならきっと今すぐにでも大本営に乗り込んで此方と話をして一発ぶん殴って終わることができるはずよ。引きこもってネットの海に浸かっているから、そんな風になったんじゃないの?」



「不知火はどう思う?」



不知火「好きにすればいいと思います。言葉にするのは心苦しいですが、此方さんは生きるべきだと思っています。尊重するべき命です。あの存在の発祥こそが人間の罪ですから」



私達が産んだというのなら、私達は母親になるのかしら。



殺すか生かすかならば、後者を選択する。母が子を見捨てるのは間違っていると思いますから、助けられるのなら、それを此方が望んでいるのなら、そうしてあげたいわ。



それに擁護派には想の力に関する重要参考人、世界の命運を分ける人物を殺すのは愚かだ、という正当な主張も確かにある。情報が完全に抜かれる前に脇を固めてさえしまえば此方さんは人間に迎えられるはず。だけどこれをいっても平行線でしょうね。鹿島艦隊の悲劇、鹿島さんが中枢棲姫勢力を許せたかどうかといえば答えはノー、だ。されども最後には彼等に敬礼を送った鹿島さんのような強さを身につけるべきよね。



「陽炎」



陽炎「陽炎だから、私はあんたの考えていることも気持ちも分からなくもないわよ。だけど、こっちの陽炎不知火の気持ちも考えてみて欲しい」



あの海での戦いの憎しみを語りたいわけじゃない。



この部屋に残る確かなあの日の残骸が眺められただけでも、来た甲斐はあった。陽炎としてきたわけじゃないのよ。また昔みたいに不知火と三人ではしゃぐことができたらいいなって思った。動かそうとしている時計の針は思いの他、重いようだ。



興味をなくしたように、マウスをいじり始めました。チャットが更新されていく。最新の株価の数字がずらりと表示されると、億万長者(笑)さんが「そっちの近場のショッピングモール、また吸収されるかもねー(笑)」とおどけた発言をしている。



知ってはいたけど、戦争終結してもめでたしめでたし、とはいかないか。






不知火「別に不知火は落ち込んでなどいませんよ、ええ……」



怖い顔をして、不知火はそんなことをいう。司令は頬杖を突いて、窓外の空をぼけっと眺めている。問題発生時に珍しく言葉ではなく、ため息でも出しそうな雰囲気だった。不知火「ヒーロさん、重症ですよね。不知火ではどうしようもありません」



だから司令、なんとかしてください、とでも繋がりそうなニュアンスだった。



陽炎「司令でも無理でしょ。先輩の私ながら面倒臭いわ。確かに私がヒーロさんだったら、絶対に自分でもなんか一発ブン殴ってやらないと気が済まないし、海の傷痕とか戦後復興妖精の肩を持っている軍の言葉なんか綺麗事にしか聞こえないだろうしね」



提督「性格でしょうね、やっぱり陽炎の適性者です。あの人、陽炎さんと似ている部分が」



陽炎「はあ? 今のあいつと私は似ていないでしょ……」

 


提督「切羽詰まったらガンガンいこうぜ、を選択する。なまじ感情を制御できるから瑞鶴さんのように欠陥作戦を立てた提督に感情をぶつけることもなく、阿武隈さん鹿島さんのように海から逃げることもしない。暁さんも最後の海ではそうでした。自分の命令を無視して即探照灯の照射始めましたし、責任感があらぬ方向に行くネームシップ症候群?」

 


陽炎「なによそれ……」



不知火「わからなくもないですが、司令、この場合はどう動けば……」



提督「それを答えるだなんてとんでもない。もう自分はあなた達の指揮を執る気はありませんからね。あなた達はもう艦ではないですし、自分で操縦どうぞ」司令は不知火と私の顔を交互に見ていう。「長月さんと菊月さんは難題を自力で解決しました。あなた達にもできますよ」



不知火「ああ、那珂さんの歌番の一件はさすがに驚きましたね。街の男の子たちと仲良くなったそうで、SNSのほほえましいやり取りは見ました」不知火はあごをテーブルの上にだらしなく乗せていう。「しかし、今回は子供のケンカではありません。不知火の手には負えないので司令なら、と思ってもいたのですが。あの海関連のことですし」



提督「不知火さん」



不知火「はい」




提督「うざいです」




ちょっとの間はなにをいわれたのか理解するのに少しの時間を要したみたいね。その時の不知火の顔といったら、それはもうこの世の終わりのような絶望色に染まってた。いや、まあ、良い薬にもあるからね。最近の不知火、司令司令とうるさいし。



不知火「」



陽炎「ちょっと司令、不知火の口から魂抜けているんだけど……」



提督「あの人のことなら自分よりよほどあなた達のほうが詳しいでしょう。あの人がやろうとしていることは把握しましたが、どうしたらあの人の力になれるのかは自分には判断できません。常識人の正論説得が関の山ですが、それでは止められませんからね」



陽炎「じゃ、ヒーロさんがやろうとしていることだけ教えて」



提督「あの部屋のPCと繋がっていた機械、外付けのハードかと思いきや、違いますね。見間違えるはずはないです。艤装の一部を改造したモノでした。海戦時を探した可能性もありますけど、近代化回収でも使用しなかった部分は廃棄されるので一般でも入手出来なくもないですが、あの方は戦後復興妖精と契約しているので、そこからもらったギミック付きの代物かも。または妖精可視の才があった彼女が自前でこしらえたモノのどちらか」

 


陽炎「は? なんでそんなもんがあるわけ?」



陽炎「本当になにかしようとしているわけ? まさかその艤装デバイス、その想力のたまり場になった一部の艤装みたいになってる?」



提督「恐らくそれが彼女のあの妙なやる気の源でしょうかね。それに疑似ロスト空間に繋がっているのなら、意思疎通で飛べるかもしれませんね。それに想力のたまり場になった艤装が有効打とはなり得ることは確認済みです。最もそれで戦ったところで勝ち目はありませんが、あの感じだと当たって砕けろでもおかしくはないかと」



淡々と準備していたってことね……。



もしもあの人が戦後復興妖精と協力したのが五年前だとしたら、きっとあの日からああいう風にこの町で戦後復興のためとやらに敵にほぼ強制的に働かされていたのだろう。憎い相手に手を貸して、それでもなお軍の支援を選んだ。だとしたらその執念は決して私達が言葉でピリオドを打てるものではないのだろう。司令が、いった。



提督「どうしますか」



陽炎「放置以外にないわね」



司令が、そうですか、と昔みたいな無感情な声で返した。不知火がなにかいいたそうな顔でこっちを見ている。ちょっと視線が戦艦がかっているし、責めるような雰囲気だ。



なにか間違ったことをいったつもりはないのだけども、私はこの居辛くなった自宅から逃げるようにして散歩に出かけた。



【12ワ●:線路沿いにて思い出会う】



吹き付ける春の柔らかい風が地肌を撫でていく。



陽炎「あー……だっる」



照り付ける直射日光をまともに受けながら、線路沿いのあぜ道をまっすぐと進む。周りは田んぼだらけで、上を向いてぷかぷかと浮かぶ叢雲を意味もなく見上げながらどこまでも歩く。信号もなければ車の交通量も少ない緑の田舎道だ。



ここは免許取り立てのやんちゃ坊主達がメタリックなボディの単車のエンジンをふかして、そこの踏切をスタート地点として電車とレースを始める通称、不良道として有名だった。

今はどうなっているのかな。

そういう元気溌剌かつちゃんと環境を選ぶような不良は絶滅しているのかな。口からフーセンガムを膨らましながら、そんなこと考えた。



そういえば戦争終結してから1キロくらい体重が増えたっけ。



少し胸も大きくなった。陽炎やっていたころは体の成長なんか止まっていたし、気にしたこともなかったわ。好きなモノも飲み食いしてもこの体の見栄えは変わらなかったけど、今はもう違う。帰還して眺めた着実に肥大化していっているメタボ気味の町のようにならないように体調管理も必要か。うん、甘いモノは控えよう。



この風景も明らかに緑が減っていて、建売住宅なんかも出来ている。春休みのこの時期には竿を持った少年がここでザリガニ釣っているのは風物詩だったが、今日は見当たらない。

夢見のように繰り返していた戦争終結を願いながらも、いざ終わってみれば変わらないモノばっかり探しているのはなぜかしらね。この町には嫌な思い出も多いはずなのに。



陽炎「……」



いや、小学生ではないけれども、ザリガニ釣ってるやつがいる。麦わら帽子をかぶった学生服の女の子だ。高校生くらいの女の子が一人でザリガニ釣っている。なんだこれ。流行りなのかそれとも変わった趣味を持った女の子なのかどっちよ。



というか、あの学生服、どこかで見覚えがあるわね。どこだっけ。いやいやいや、どう見ても白露型じゃん。コスプレなのか似た制服の私立でもできたか。通りすがりにその子がぽつりと漏らした言葉で、足を止める。



春雨「体重がー、とか、ファッションがー、とか、実に平和ですね」聞き覚えのある声だ。「女の子らしい悩みを満喫していますね」