2018-02-08 23:11:08 更新

前書き

今回も今回とてn番煎じです





提督「ああ、頼むッ!この通りだ!」←土下座



明石「いやいやいや!どうしたんですか急に!

急にここに来たと思ったら土下座までして!

今の私、困惑しかないですよ!」



提督「…ある夢を見たんだ」



明石「夢、ですか?」



提督「いや、天啓と言うべきかな…

まあ取り敢えず聞いてみてくれよ」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




その娘はがばりと寝床から身を起こした。



目は見開かれ身体には汗が滲んでいる。



酷い悪夢を見たのだ。



それは、自らが好いている人に嫌われる夢。

それも彼の身勝手ゆえでは無い。


否。寧ろ、その彼は常に優しかった。


常に優しく、常に平等で。

怒っている所や人に誹りを言う所など見た事が無い…それ程柔和な人だった。


そんな彼が、怒った。

そんな彼が、嫌悪した。


そんな彼が、自分を疎外したのだ。


纏わり付いてくるなと。

目障りだと。我慢の限界だ、と。


我慢?


そう、彼はずうっと我慢をしていたのだ。

その娘の全てに対して。


その態度の全ては、彼のその我慢が弾けただけだったのだ。


彼はただ、自らの思っている事を正直に吐き出しただけの事だったのだ。



勿論、それら全ては彼女が手前勝手に見た夢だ。現の事では無い。


もし今、彼の所に行ったとしてどうなるか?


彼はいつも通りに笑い掛けてくれるだろう。

いつも通りに優しく話しかけてくれるだろう。



(我慢なんてしていない。

しているはずが、無い…)



娘は気分を変える為に外に出て、夜風に当たりながら、何度もそう思おうとした。


だが思おうとするたび、その脳裏にその夢の中の彼の顔が浮かぶ。


あの軽蔑と嫌悪、憤怒が混じったような、彼の見た事の無いあの顔を。


他ならぬ、自分に向けられた顔を。


そしてその顔が浮かぶたびに息が荒くなり、胸が苦しくなる。



(いやだ…違う。違う。違う!)



そうしてひたすらに夜風を浴びていた…その時だった。



『おや−−−。どうしたんだ?夜遅くに。

それも、こんな場所で』



彼女は声を掛けられた。

愛しきその『彼』…提督に。


いつもなら、そんなシチュエーションになった時、彼女はとても喜んで彼と楽しく対話をする。


いつもならば。



だが彼女にとって不都合な事に、今の状態はその『いつも』ではなかった。



『……!』



彼の人懐こい顔を見る。軍人らしい筋肉の付いた体躯も。愛おしい、その全てを見る。


それと共に、脳裏にあの全てがよぎる。


嫌悪の目。容赦の無い罵倒。我慢の限界…



気づけば、彼女は後ずさっていた。



『お、おい。どうした?ひょっとして、何か気を悪くさせちまったか?』



困惑する提督。



そしてその顔は。

今の彼女の目には、その困惑の表情は困惑の表情では無く。最も恐ろしい物に…

つまりは、嫌悪の表情と映った。





『…!嫌わないで…!』


ピピピピ ピピピピ ピピピピ







提督「………」パチリ




ムクリ




提督「…夢、か」



提督「ああクソっ、こんないい所で…!」




【起床時刻也】




提督「ああー…朝、かぁ。」



提督「あーあ…あのまま、あの娘がどういう反応したのか知りたかったのになぁー」イソイソ



提督「……いや、待てよ?」ピタリ



提督「…まさか、この先は現実で見ろと言う事か?神が俺に向かってそう言っているのか?」



提督「…ああ、そうだ!そうに違いない!

これは天啓だ!これを現実にやれというのが俺の使命なんだ!」



提督「よっしゃ、そうと決まればこうしちゃいられない!明石だ!明石の元に急ぐぞ!!」





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明石「…で、つまり。

貴方は私に夢を操る機械を作らせて、特定の娘に貴方に…提督に嫌われる悪夢を見せて。

で、それからその娘とコミュニケーションを取ろうとしているという訳ですか。それで、その娘の反応がどうなるかを見ようと」



提督「説明ご苦労。

ざっと言うとそう言う事だ」



明石「…何処からツッコんで欲しいんですか」



提督「ツッコミどころなんて無いだろ」



明石「…まず何で提督一人でそんなに騒いでたんですか?ていうか、何でそんな発想に思い至ったんですか?で、夢を操って悪夢を見せようとするって、どんだけ性格が歪んでればそんな発想に思い至るんですか?」



提督「おおう、一息に言い切りやがったな…まあそんな事はどうでもいいんだ、重要な事じゃ無い。だからそれらの問いにも答えん」



提督「問題は一つ。この機械をお前が作ってくれるか、だ。機械そのものが無けりゃ話にならんからな。皮算用にすらならん」



提督「と、いう事で。頼む、この通りだ。

夢を操れる機械を作ってくれないか?」



明石「…作った所で、私の利益がありません」



提督「…前の時のようにインカムをつけよう。あともう一つ、今度は小型カメラもな。それでお前は、曇った顔の娘達を見逃さない筈だ」



明石「…そんな事で、乗ると思いますか?」



提督「ああ、乗るさ。乗るとも。

何せお前は俺と同類だからな」



明石「…同類?」



提督「ああ。お前も俺も、愉悦を感じる為なら何でもやる。艦娘達の良い表情を見る為ならば何でもやる…そんなヤツだ。そうだろう?」



明石「て、提督と一緒にしないで下さい!!」



明石「………」



提督「前と異なり、今回は俺は強制しない。

お前が嫌だと言うならばそれを拒否しろ」



明石「……!」




提督「さあ、どうする?どうするんだ明石!」





明石「…最高の顔を見せる。それが条件です」




提督「GOOD!それでこそお前だ!」




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【数日の後】




明石「出来ました!」



提督「うおお、ゴツい見た目だな…

こりゃ前みたいに持ち歩きは出来ないな…」



明石「いかんせん機能が複雑なもので…小型化する時間も無かったし…で、でも!機能は恐らく文句の付けようがありませんよ!」



提督「ほう。射程距離は?」



明石「この鎮守府中です!」



提督「発動させる条件は?」



明石「目の前のそこのスイッチを押すだけです!」



提督「相手を選ぶ事は?二人以上への同時使用は?」



明石「勿論出来ます!」



提督「パーフェクトだ明石。

では早速やっていこうじゃないか!」



明石「お、早速ですね。

最初は誰にやるつもりですか?」



提督「そうだなぁ…」



提督「……」



明石「…提督?」



提督「…いやな、本当に咄嗟のアイデアだった上、これが出来るまでワクワクするだけして、誰にやろうかとか全然考えて無かった」



明石「ええ…馬鹿ですか貴方は」



提督「う、うるせぇな。

…そうだな、夕立なんてどうだろう?」



明石「夕立ちゃんですか?それまた何で」



提督「言っちゃ悪いが、あいつは結構能天気な奴だからな。アイツで効果があるんならば他の奴にも効果があるだろうって事さ」



明石「ああ、実験も兼ねるんですか。

…ほんと、息をする様に下衆の思考をしますね、」



提督「おうありがとよ。さて、そうと決まれば…ここで操作できるのか?」



明石「あっはい、そこで対象や見せたい夢などを選んで、最後に決定ボタンを押せば発動します」



提督「オッケイ。…良し、決定ッ!」




カチリ




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【翌日】




提督「聴こえてるか、見えてるか?」



明石『はいはいバッチリですよー』



提督「良し。…しかしアレだな。夢という性質上、一日に一人…無理しても数人ぐらいにしか出来ないのはネックだな」



明石『まあそればかりは…提督が増えないとどうしようもないですからね』



提督「っと。夕立発見。さて、様子はどうかな?」




夕立改二「……」




提督「ふーむ…心なしか元気が無いな。

これなら成功かな?」



明石(ちょっとふらふらしてる様な気も…

大丈夫かしら?)



明石『そういえば、執務室で仕事しないで、こんな所をほっつき歩いてて良いんですか?』



提督「仕事なら終わらせて来た。

と、いう事で接触してくるから話せなくなるぞ」



明石(に、人間離れしてる…

この人はこの意欲をもっと他の所に使えばなぁ)




提督「おーい、夕立」



夕立「!!」ビクッ



提督「よお、元気か?」



夕立「あ…て、提督さん!こんにちは!」ニコリ



提督(ムム、笑顔。だが…)



明石(不自然な笑顔…取り繕ってるって感じね)



提督(俺が夕立に見せた夢は、ずばり、触れ合いに辟易した俺が突き飛ばして罵倒するといったような…そんなものだった)


提督(どうやらかなり効果があったようだな。

今迄通りならば、夕立は既に飛びついてきたりのボディタッチ的なものをしてくる筈だ)




夕立「何か用事っぽい?」



提督「いや、特に用事って訳でも無いがな。

ただ話し掛けただけさ。駄目か?」



夕立「…ううん、全然駄目じゃないっぽい」



提督「そうか。…そうだ、ここで会ったのも何かの縁だ、何か食べに行くか?」



夕立「本当!?やった、提督さん大好きっ…」ガバッ



ピタリ



夕立「…っぽい」



提督「…なあ、どうかしたか夕立?」



夕立「え?」



提督「こう言うと何か、まるで催促してるみたいで気持ちが悪いかもしれんが…今日はヤケに大人しいというか、こう、触ってこないというか」



夕立「き、今日はそんな気分じゃ無いだけっぽい」



提督「…そうか?俺には今、わざわざ行動を中止したように見えたが。本当に何もないのか?」



夕立「……ッ」



提督「…夕立?」



夕立「…何も無いっぽい。」




提督「…夕立!」



夕立「ひっ…!」ビクッ



夕立「…ご、ごめんなさい…

て、提督さん、お、怒らないで…」




提督「…夕立」



夕立「…ッ!提督さんが嫌な事はもうしないから、提督さんがやれって行った事なら何でもするから、だから…!」



提督「…待て、話を聞いてくれ、夕立。

俺は怒ってなんかないんだ。…大きい声を出してすまなかった。誤解させちまったな」



提督「俺は怒ってない。

俺はただお前の事が心配なんだ」



夕立「……!」



提督「…もし俺が信用出来ないと言うなら、言わなくても構わない」



夕立「!そ、そんなこと!」



提督「でも、出来たら話してくれないか?」




夕立「…うん」



夕立「…ねえ、提督さん。

…夕立の事、きらい?」



提督「まさか。そんな筈は無い」



夕立「じゃあ、いつも夕立がしてる行動にイライラしてたり、してない?」



提督「勿論さ」



夕立「じゃあ、それじゃあ!提督さん、私の事好き?」



提督「……」



夕立「…好きじゃ、ないの…?」ジワァ




【提督、抱擁】




提督「済まない。そんな風に思わせてしまった。辛い想いをさせてしまったな」



夕立「…!!」



提督「大好きだよ、夕立。嫌いな訳が無いじゃないか」



夕立「…う、うう…!」



夕立「提督さ〜ん…!」グズグズ



提督「うわ、服に鼻水を垂らすな!」





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提督「成る程、俺に嫌われる夢を」



夕立「うん…夢の中で、提督さんが触るのが嫌だって。我慢の限界だって言って、私の事を突き飛ばしてきたっぽい」



提督「…大丈夫だよ。俺はお前のそう言った行動全てが好きだし、嫌がって我慢なんかしていないから…というか思う訳が無いからな」ナデリ



夕立「んっ… ありがとう、提督さん」



提督「とんでもない、俺も好きでやってる事だ。礼を言われる筋合いなんてないさ」



夕立「本当にありがとうっぽい!」スリスリ



提督「話を聞いてくれ」



夕立「…ねぇ、提督さん!これから先も提督さんに抱きついたり、今みたいにすりすりしてもいいっぽい?」



提督「ん?ああ、勿論いいとも」



夕立「そ、それで…またこういう夢を見ちゃったら…また提督さんに、話を聞いてもらっていい…?」



提督「…いつでも来るといい」



夕立「!うん!ありがとう提督さーん!」




【夕立はそのまま走り去って行った】




提督「あ、おい!一緒に何か食いに行くんじゃ無かったのかー!?おーい!」





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提督「良し良し、いい感じだ。

俺の考えていた感じにとっても近いぞ」


提督「…にしても夕立は、結構思い詰めるタイプみたいだな…これからはそれを踏まえて接しないとな」



明石『いやー、全部貴方が仕込んだ事って知ってるこっちからすると、こういう人を邪悪って言うんだなーなんて事を思ってましたよ』



提督「いつも明るかったり気丈に振る舞っている娘の、その顔が曇っている所…やはりとても良い物だ。

そして、それが晴れる所もな」



明石(あ、この人この手の悪口には最早反応すらしないや)



提督「しかし…夕立は後に取っておくべき逸材だったかもしれん。使い方を覚えてる最中の今に、手を出すべきじゃなかったな」



明石『と、いいますと?』



提督「もっと使い方に慣れてから夕立に対してこれをやれていたなら、もっともっと良い顔を作り出せたかもしれん。ま、後の祭りだがな」



明石『何を変な拘りを見せてるんですか』




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明石「さて、次はどの娘にするんですか?

まさかやらないなんて事は無いでしょうし。」



提督「その通り、やらないなんて事は無いぞ。

…次のターゲットはズバリ、霞だ!」



明石「また駆逐艦の娘ですか…

…ひょっとして提督ってロr」



提督「違うわ。これはただ駆逐艦の割合が多いだけであって、そこに他意は無い」



明石「まあそう言う事にしときましょうか。

…ところで、霞ちゃんにやるって事はやっぱり…?」



提督「…うん。まあぶっちゃけ、霞はこの装置を使う相手の大本命に位置する娘だ。」



明石「…ですよねー…

実際、この装置ってこういう娘を狙い撃ちにするようなものじゃないですか。本当に性格の悪い…」



提督「作った時点で貴様も同類だろ」



明石(…何も言い返せないや)



提督「ま、お前の思っている通りだよ。

この装置は、その娘からの俺に対しての負い目があればあるほど、反応が面白くなる」



提督「逆に言うなら、素直だったり、あまり迷惑を掛けてないと…少なくとも自分で思ってる娘にはあまり効かない。こんな事はあり得ないと夢と現に区切りをつけれるような娘にも然りだ。」



提督「その点、霞、満潮あたりはトップクラスに負い目もあるし自分自身が罵声を浴びせてるという実感もある。…うーん、最高だな!」



明石「…そこら辺の娘達は、ボロボロに心が傷付いている様な過去がありますからね?せめてそんな手酷い悪夢は見せないようにしてあげて下さいよ?」



提督「なぁに、それ位は解ってるとも…

つー事で夢のセッティングを始めよう」



明石「…あの、因みに霞ちゃんにはどんな夢を?」



提督「ん。まあ大した物じゃあないよ。ただ普通に」



提督「霞の度重なる罵倒に耐えかねた俺が霞の目の前で絶望し、拳銃自殺するってだけだ」



明石「よ、容赦ゼロじゃないですか!!」



提督「?不服か?」



明石「いや流石にドン引きっていうか…

もう少しこう、何というか…手心と言うか…」



提督「痛くなければ覚えませぬ」



明石(ああダメだ話が通じない… ごめんなさい霞ちゃん、私はとんでもない物を…)



提督「という訳で、セット完了!

準備オッケー!あそれ、レッツ・ゴー!」




カチリ




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【再び翌日】




提督「外はいい天気だよな。

鳥たちは歌い、花は咲き誇る」



提督「こんな日こそ、霞のような娘には…

悪夢を見てもらうべきだろう。違うか?」



明石『確実に違うと思います。

ていうか悪夢は既に見てるんでしょうが』



提督「細かい事はどうでもいいのさ。

という事で今俺は執務室の前にいる。

で、霞は今日秘書艦だ。」



明石『あら、タイミングぴったりですね。

…もしかしてそこらも考えてのセレクトで?』



提督「いや、ただ都合の良い偶然だよ。

…それじゃあ逝ってくる」




ガチャ




提督「おはよう、霞」



霞「…ん、おはよ」



提督(さて、様子はどうかな?)



提督「いやぁ、相変わらず早いな。

俺も遅れて来たって訳じゃあ無いんだが…」



霞「少し前に来るくらいが普通なのよ。

あんたも軍人なんだしそれ位しなさいな」



提督「はは、手厳しいな」



霞「甘え過ぎなのよ、このクズ」




提督(…ふむ。ざっと見たところ、あまり変わった様子は見られないな)



提督(…ちょっと顔色が白く見えるか?

でもまあ、それくらいか。)



提督(正直少し以外だ。もっとこう、色々と反応というか影響というかがあると思ったが…)



提督(…この態度はツンデレのツンじゃあなく、ただ単に俺が嫌いだったのか?うーん、そんな事は無いと考えてたんだがなぁ…)



提督「済まん済まん…

まあそれじゃ、仕事するか」



霞「…言われなくても解ってるわよ」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





提督(…?)



提督(なんか、霞…今日はミスが多いな)



提督(勿論支障が出るとかいうレベルじゃ無いが、それでも自他に厳しい霞らしからぬような…)チラリ



霞「……」カリカリ



提督(…ひょっとして、あの俺の見せた悪夢のせいで寝不足だったりするのか)



提督「…なあ霞。お前、大丈夫か?」



霞「は?何がよ」



提督「体調が、だ。もしかして体調を崩してたりしてるんじゃないかと思ってな」



霞「…そんな事無いわ。平気よ」



提督「そうか?自覚が無いだけで、疲れてるのかもしれない。少し熱があるのかも」



霞「大丈夫だってば!」



提督「…本当か?本当は無理して…」




霞「大丈夫って言ってるでしょ!

いちいち構わないでよ!」パシッ




提督「痛っ…」




霞「……ッ!」



提督(差し出した手を振り払われる、か…

覚悟してたとはいえ、少しは凹むな)ショボン



提督「…済まない。余計な事をしてしまった」



提督「全く、こんなヤツが上司で悪いな。

なんて……」



提督「…霞?」




霞「…」



霞「……」




バタリ




提督「!?お、おい!霞!?霞!!」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「大丈夫って言ってるでしょ!」




咄嗟に、差し出された手を打ち、振り払った。


瞬間。彼の目が、顔が。哀しさを帯びた。


ぞくりと悪寒が走るようなそんな顔。


それは、つい今朝方に夢にて見た彼の絶望の顔と酷く似通っていた。


度重なる罵倒に堪え兼ね、遂に絶望の一線を超えてしまったその顔に。



本当は全く似てなぞ無かったのかもしれない。

だが少なくとも、彼女はそう思った。

思ってしまったのだ。



(違う。私は、礼を言わなきゃ。

気を遣ってくれてありがとうって…

気をかけて、心配してくれてありがとうって。

そう言わなくちゃいけないのに)



ざりざりと、悪夢のフラッシュバックが彼女の思考をノイズの様に妨げる。回らせるべき舌は止まり、動かさねばならない唇は動かない。




「…済まない、余計な事をしてしまった」


『済まない、本当に済まない…

俺は、いつも余計な事ばかりを…』




彼が、提督が、謝罪を口にする。


彼の言う事が、彼女の悪夢と重なる。


彼女の見た夢が、彼女の認識を蝕んでいく。




「全く、こんなヤツが上司で悪いな…」


『俺のような無能は…

もうお前たちの上に立つべきでないんだ…』




(違う。やめて。違うの、私はそんな。

そんなつもりじゃ)



心中の訴えを他所に、提督がホルスターから拳銃を取り出し、そして自らの口内へ。上顎へと押し当てる。


現実の提督が行っていないその行為を、彼女は夢を記憶した脳と、悪夢を錯覚したその網膜で見ていた。



(違うの。私は、貴方を責めてはいないの)



心の中の声は、一言も発す事が出来ない。

身体は、金縛りにかかった様に動かない。



『こんな俺を…許してくれ…』



(お願い、銃を下ろして。口からそれを出して)



『さよならだ』



(やめて。やめて!やめて!!)




パァン




(あ、あああ、ああああ、あ!)




彼女の耳が、現実では発せられていない銃声を聞き。

彼女の目が、現実では無い飛散する脳漿を見た時。



彼女の意識は既に夢に連れ去られていた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




【in 仮眠スペース】





霞「…ん、あれ?」



提督「よう霞。おはようさん」



霞「…ごめん。あたし、どれ位寝てた?」



提督「…安心しろ。そう大して時間は経ってないよ」



霞「…そ。それじゃあ仕事を再開しましょ」



提督「今日はお前は非番だ」



霞「…何ですって?」



提督「俺がさっきそう決めた。だからお前は今日お休みだ。ゆっくりしてるといい」



霞「ちょっと、アンタ…」



提督「そんな顔で仕事をするつもりか?

そんな、ファンデーションだらけの白い顔で」



霞「…ッ!」



提督「濃ーい隈を粉塗りたくって何とか隠した、そんな酷い状態で仕事なんて出来る筈が無いさ。だから休んでてくれ。」



霞「でも!」



提督「…取り繕って何かをしても綻びはいつか出る。なら、綻びなんて作らないようにやった方が良い」



霞「……」



提督「…霞。お前は、弱みを見せたくないんだろう。だからそんな白い面をしてでもここに来て、そして何事も無いかのように振る舞った。そうだろ?」



提督「でも、弱みくらい誰にだってあるんだ。

だからな。隠す必要なんて無いんだよ」



霞「……」



霞「…それでも、私がやらないと。

…私がちゃんとしないといけないのよ」



提督「…」



霞「それに、私が体調を崩したってどうでもいい。そんな大した事じゃないもの」



提督「…おい、霞」



霞「…何?」




ギュッ




霞「きゃっ…!は、離…」



提督「…お前は色々と背負い込み過ぎだ。

もう少し俺を信用してもいいじゃないか」



霞「…!」



提督「言いたくないなら何があったかは言わんでもいい。でも。それで何かがしんどいのなら、そのしんどい物を俺に任せてくれてもいいだろ?」



霞「…でも」



提督「そんなに俺が信用ならないか?」



霞「でも、だって… いいの?」



提督「勿論。なんてったって、俺はお前たちの提督なんだからな」



霞「…それのせいでアンタの心が追い詰められちゃったら、どうするのよ」



提督「そん時はそうなる前にお前にも任せる。

お互い無理しない程度にしてな」



霞「…私なんかに任せて、いいの?」



提督「俺は、お前ほど叱咤激励をしてくれるような頼もしい奴を他に知らん」



霞「こんな、罵倒ばかりの娘が?」



提督「おや、俺はいつもお前の罵倒で元気を出しちまってたのか」




霞「…」



霞「……」ギュッ



霞「…ねえ。信じて、いいのよね」




提督「当たり前だ。

だから今日はゆっくり休め。な?」




霞「イヤよ」




提督「ああ…」


提督「…って、えぇ!?

いやいや、ここは頷く流れだろう!」



霞「うっさいわね、私がやるべき分くらいやんないと目覚めが悪いでしょ。だからちゃっちゃと終わらせるの」



霞「どうせアンタの事だし、大して時間は経ってないなんてのは嘘なんでしょ」



提督「!」ギクッ



霞「で、私が起きるまでアンタは仕事に手を付けないで、ずっと私の側にいたんでしょ」



提督「!!」ギクギクッ



霞「やっぱりね… ほら、今からでもその分も含めてやっちゃうわよ!」




ズルズル




提督「…いや。でも、お前…」



霞「…ねえ、『司令官』」



提督「ん?」



霞「ありがとう。頼りにしてるわ」



提督「…おう」



霞「言いたい事はそれだけよ。

それじゃ行きましょ、クズ」ズルズル



提督「解ったから引きずるのを止めてくれ」




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明石『…無反応なんて見当違い。でも、霞ちゃんはその苦しみを他人に…提督に見せまいと、取り繕ってたんですね』



提督「…ああ」



明石『?どうしたんですか、馬鹿に元気が無い。提督的に今のは成功ではないんですか?』



提督「いや、その…俺はもっと、罵声が飛んでこなくなるとかの軽いイメージをしてたもんだからさ…その…何というか…」



明石「…?」



提督「ちょっと…やり過ぎたっていうか。

少し反省をしてるんだ」



明石『…成る程。

…では、もうこの機械は使わないと?』



提督「それはそれとして全然使うけど」



明石『クズですね』




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提督「そんじゃあ次だな、次」



明石「あ、マジでやるんですか」



提督「当然。反省とは次に活かす為にあるものだろ?」



明石「は、はぁ…それじゃあ、今度は誰に?」



提督「ふむ、そうだなぁ…

…よし、榛名にしよう」



明石「あら、榛名ちゃんですか?

…なんかちょっと意外ですね…」



提督「ん、そうか?」



明石「はい。だって以前提督がこの装置は負い目があまりない良い娘には効かないって言ってましたし」



提督「あー、そうだな。確かにそんな事言ってた」



明石「それに、霞ちゃんと同じ基準でターゲットを決めるなら曙ちゃんとかになるんじゃないかなーと思ってて」



提督「曙は前回組だから保留だ。

…でだな。今回榛名なのは少し思いついた事があっての事だ」



明石「はぁ。というと?」



提督「まず、今回の榛名に対しては俺に嫌われる旨の夢は見せない」



明石「…まあ、前の霞ちゃんの時点でもそうでしたもんね。気づいてるかどうか知りませんが、今回の企画割とブレブレですよ」



提督「うるさい、俺が楽しけりゃいいんだよ。

…ま、とりあえず榛名への夢の内容は明日へとお楽しみって事で…」カチャカチャカチャ



明石(あ、もういじり始めてる。

ていうか操作覚えるの早っ)



提督「…うし!それじゃあ、榛名!

良い夢を見ろよ!ポチッとな!」




カチリ




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【翌日】




提督「さぁて、と。榛名はどこかな?」



明石『早速ですね。 …で、そろそろ教えて下さいよ。昨夜どんな夢を見せたんですか?』



提督「そう焦るな。この後に教えるつもりだから、ちょいと待ってな」



明石『はぁ(いやに焦らすわね)』



提督「お、榛名だ。丁度いいな。そんじゃちょっくら行ってくる」




提督「よお、榛名」



榛名「! 提督…えっと、何か御用でしょうか?」



提督「あー、済まん。特に用は無いんだがな…

その、なんというかだな」


提督「…お前と話しをしたくってな?もし良かったらなんだが、少しの間付き合ってくれないか」



榛名「…!はい!榛名でいいならお相手しましょう!」



提督「…俺から言い出した事だけど、いいのか?何かやる事があったりはしないか?」



榛名「いえ、榛名は大丈夫です!

…それより、立ち話もなんですし…その…」



榛名「…は、榛名の部屋に来ませんか?」///



提督「え、だが…」



榛名「!す、すいません、嫌ならば、その…」



提督「はは、嫌な訳が無いだろう。俺にとっては得しか無いんだからさ」


提督「そうだな…それじゃあ、折角だし、お邪魔させてもらっていいか?」ニコリ



榛名「は、はい!」




明石(出た、提督のやけに爽やかな笑み。

あれにドキリと来ない娘は少ないでしょうね)



明石(にしても…なんというか、提督も榛名ちゃんもどちらもただ普通に仲睦まじくしてる様にしか見えないわ。…一体、どういう…?)




【その後、榛名の部屋に入った後も悪夢に関する様な事は一切行われなかった。明石は砂糖を吐いた】





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明石「で、どういう事なんですか?」



提督「さて、なんの事やら」



明石「いやいや、しらばっくれるのは無理があるでしょう。榛名ちゃんとはただイチャイチャしてただけだったじゃないですか」



提督「ああ、そうだな」



明石「そうだなって… あれですか?結局、あの装置はもう使わない事にしたんですか?」



提督「…今回は幾つか小細工を用いるつもりでな。

同時に、結構長期に渡って行うつもりなんだ」



明石「?」



提督「…ただ悪夢を見せるだけじゃあ、いつしか、あくまであれはただの夢だと思うヤツが出てくる」


提督「それじゃ駄目だ。それでは俺が詰まらない」


提督「そして、榛名も恐らくその中の一人だろう。

俺が見せようと思っている夢を今見せても割り切ってしまうだろう。何てったって、金剛型の姉妹の絆は途轍もなく強固だからな」



明石「…?何の事を…」



提督「だからこその小細工。

だからこその昨日見せた夢だ。俺は昨日、榛名にあいつと仲睦まじく話す夢を見させた」


提督「そして今日、榛名は俺と仲睦まじく話した。

まるで夢と同じようにな。」


提督「一日だけなら偶然に思うかもしれない。

だが、それが何度も続いたらどうだろうな?」



明石「……!!」



提督「さあ、次回は2日後。

次は…そうだな。デートにでも誘う夢を見せよう」



明石「提督…あなた…」ドン引キ



提督「さあ榛名、良い夢を見るんだ。

…その後の悪夢をより最悪にする為にな…」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




榛名「……ッ!!」ガバッ



榛名「……」



榛名「夢、よね…」



榛名「……」



榛名「……私は…」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





提督「さあ、遂に参りました。本命の日です!」



明石「あ、朝っぱらテンション高いですね… 」



提督「当然だろう。今日この為に何日も何日も費やしたんだ、テンションが上がらぬ訳がない」



明石「では、今回見せた夢を聞かせていただいても?」



提督「ああ。今回見せたのは、俺にケッコン指輪を渡された榛名が次第に姉妹内から疎まれていき、嫌悪されていくってものだ」



明石「あー…成る程。確かに前言っていたように、榛名ちゃんは普通ではただの夢として受け取るでしょうね」



提督「だろう?だからこそのここまでだ。だからこその小細工。何度も何度も見た夢が再現させられてからこうなったのなら、盲信とはいかぬとも何か感じる筈だ」



明石「…ん?ケッコン指輪を渡すんですか?」



提督「あぁ。さっきそう言っただろうが」



明石「いやでも」



提督「っと、榛名発見。という事で話せないぞ」



明石「アッハイいってらっしゃい」




提督「よう、榛名」



榛名「!提と…」



提督「どうしたんだ?ひどい顔だぞ。

何か悪い夢でも見たか?」



明石(うわ、白々しい)



榛名「…いえ、大丈夫です。少し疲れが溜まっちゃっているだけですので」



提督「それはそれで良くないんだけどな…

あー、その、だな」



榛名「?何かご用でしょうか?」



提督「えーっと、もし暇だったりしたらなんだが、

少し付き合って貰えないか?」



榛名「…!」



提督「いやほんと、急を要する事でも無いんだがな?

用事って程の事でも無いしな?」



榛名「…いえ、榛名で良いのならばお相手します!」



提督「そ、そうか。じゃあ済まんが、付いてきて貰えるか?」



榛名「はい!」



提督(…さて。今まで、取り敢えず見せた夢と殆ど同じ行動を取ってる。ここまで続くのなら、榛名はこの後、指輪が渡されるのではという思案をするだろう)



提督(…いや、実際しているようだな。なぜなら…)チラッ



榛名「……ッ」///



提督(…あんな複雑な表情は。頬を赤らめながら顔を顰める、なんて複雑な表情はしない筈だもんな)





【提督達、人目の付かぬ場へ】




提督「…良し、ここなら誰も聞いてないかな?」



明石(私が聞いてますけどね)



提督「で、だな。榛名。

お前、最近練度が99になったな。おめでとう」



榛名「あ、ありがとうございます」



提督「…あー、駄目だな、このままじゃ尻込みして言えなくなってしまいそうだ。…榛名よ」



榛名「…はい」



提督「単刀直入に言ってしまおう。

このケッコン指輪を受け取って貰えないか?」



榛名「…!!」



提督(俯いたな…やはり夢を意識しているな。

さあどうする、どうなる?どういう反応を)



榛名「ありがとうございます、提督…!

その指輪、是非とも受け取らせて頂きます!」



提督(するのか…

ってあれ、普通に受け取るのか。しかも判断が早いし。表情にも陰りが見えない。どういう事だ?夢は夢として割り切ったのかな?)



提督(…少し揺さぶってみるか)



提督「…無理は、しなくていいぞ?」



榛名「え?」



提督「いや、なんて言うかな…

君の顔に焦りというか陰というか…そんなのが見えた気がしてな。勘違いなら悪いが…」



榛名「……」



提督「当然だが、この指輪は提案であり強制じゃあない。そりゃ受け取って貰った方が嬉しいがな。

だから、嫌ならば拒否してくれ」


提督「悩みがあるとかならば、それを言えばいい。

取り敢えず聞く事だけは出来るからな」



提督(本当は全然陰りなんて無かったが…

さあ、何か反応が起こるか?)



榛名「…」




榛名「……ッ」




榛名「………」ボロボロ




提督「…!?ど、どうした榛名!?」





榛名「…ぐすっ…好きなんです」



榛名「提督が、大好きなんです」





提督「そ、そうか(…?)」



榛名「…最近、提督と榛名は二人で色んな事をしました。部屋で話をしたり、買い物へと行ったり…」



榛名「そしてその度に夢を見ました。

その全ての、行った通りの夢を」



榛名「だから、夢を見る度に胸をときめかせてきました。夢を見る度提督の顔が頭から離れなくなりました」



榛名「そして今日また、夢を見ました」



榛名「…悪夢でした。金剛お姉様も、誰も彼もが榛名を疎む、そんな夢を見ました」



提督「…」



榛名「…なのに」



提督「?」



榛名「それなのに、榛名は嬉しかったんです。

提督に好意を向けられ、指輪を渡されるという事が。それだけで嬉しく思ったんです」



榛名「…榛名は…」



榛名「私は、いつだって皆を守りたいと思っていた筈なんです」


榛名「…なのに私は、皆に嫌われるはずの夢を見た事より、提督から指輪を渡された事に重きを置き、そしてそれに喜びを感じていました。

…感じてしまいました」



榛名「それはつまり、私は艦隊の皆よりも、姉様たちよりも提督を想っていたという事…」



榛名「…いえ、本当は、皆の事も大切に思って無かったのかもしれません。本当はただ、自分がただ『いい子』である為に。

私はそんなに醜い子じゃないと。そう自分に思い込ませる為だけに、艦隊の皆を大事なものとしていたのかもしれません。」



榛名「…私は身勝手です。榛名は、榛名は…」




提督「……」




榛名「…ぐすっ、すみません、急にこんな事を言ってしまって…」





提督「…榛名。一度この指輪は保留にしよう。

このまま受け取ってもらっても、お前が危ない」



榛名「!!は、榛名は…!」



提督「『大丈夫』…じゃないだろう。

お前は、その見た夢のせいでひどく不安定な状態だ。そんな時にこの指輪を渡されても、ただ辛いだけだ。…お互いな」



榛名「…!でも、私は…!」



提督「何と言われても、今は渡さないぞ」



榛名「…」



提督「…ただ、一つだけ言っておくよ」



提督「…お前は、悪夢で心を傷付け、自らの心の中にある筈の信念にまで疑念を抱き、疑念に苦しみを感じた。…とても大変な事だ」


提督「だが、その苦しみは、そのままお前の優しさを表してる事に気がついているか?」



榛名「…?」



提督「本当にお前が他の娘に好意など持っておらず、ただ自らを騙す為の上っ面の感情だったのなら、お前はそんなに苦しむ筈がない」


提督「他の娘に対し思いやりがあるからこそ、お前はここまで苦しみ、悩んだんだ」


提督「そして、その思いやりこそが優しさなんだ。優しさと想いがあるからこそ、お前は今、苦しんでいるんだ」



榛名「……」



提督「…お前は本当に優しい娘だよ、榛名。だからどうか、その苦しみを誇ってくれ」




榛名「…ありがとう、ございます…」ポロポロ



提督「そして、そうだな。

それらの悩みが少しでも軽くなったら…」



提督「…そうだな、今度はお前から俺の所へ来てくれないか?生憎、指輪を渡す勇気を使い果したんでな」



榛名「……!は、はいっ!」





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





提督「何だかちょっと意外だったなぁ。もっとこう、榛名は貰うか貰わないかの狭間で揺れるものだと思ってたが」



提督「ま、それだけ俺が愛されてるって事か」



明石「そういうのって自分で言ってて虚しくなりませんか?」



提督「うっせぇな…まあともかくとして、榛名も中々良い顔を見せてくれたじゃないか。見たかあの綺麗な泣き顔からの晴れ渡った笑顔」



明石「いや…はい」



提督「最初泣き出してしまった時のあの光の無い目。

あれだけでここまで時間を掛けた甲斐があった。

そう思わないか?」



明石「まあ、そうですね」



提督「…さっきからどうした?何か考え事か?」



明石「いや、その、何というか…

さっきも言いそびれたんですが」



明石「榛名ちゃんに指輪渡す事を確定させて良かったんですか?」



提督「…何?」



明石「いやだって提督、まだケッコンしてなかったですし、結構な事件にもなるんじゃ?」



明石「その事も含め…色々、大丈夫なんですか?」



提督「…ばっかお前、それくらいは予測範囲内で…」



提督「もちろん大丈夫…」



提督「……」



提督「……大丈夫じゃないわ。

やっべ、何も考えて無かった」



明石「…先見の明が無いにも程があるでしょう」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




提督「……」



明石(流石に悩んでるな…

こんな事になっちゃったし、もうやらないんじゃ)



提督「……よし、葛城。次のターゲットは葛城だな」



明石「…あ、あれ?やるんですか」



提督「ん?そりゃやるよ。何を言ってんだ」



明石「いやでも…榛名ちゃんとケッコンしましたし…バレたらマズイんじゃあないんですか?」



提督「なあに、昔の偉い人もバレなきなゃイカサマじゃねぇって言ってるし、へーきへーき」



明石「えぇ… …もし何かあっても私は一切弁護とかしませんからね?」



提督「薄情だな… まあそんな気はしてたが」



提督「さて、話を戻そう。装置の準備は出来てるか?」



明石「あっはい。ええ、それはもう。いつでも動かせますよ」



提督「よしよし流石だ。

じゃあ葛城に照準を定めてだな…っと」



明石「にしても、葛城ちゃんですか。

また何というか…」



提督「はは、この装置が良い感じに効きそうだろ?どう反応するのか楽しみじゃねえか」



明石「…ちなみに、どんな夢を見せる予定で?」



提督「至ってシンプルなもんだよ。原点回帰と言ってもいい。俺が軽口にも近い悪口にキレて、相手を嫌うってだけの夢さ」



明石「ああ…最初の考え通りってとこですね」



提督「そういう事…んじゃ、スイッチオン!」



カチリ




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−






提督「よう葛城。元気か?」



葛城「あ、おはよう…って、どうしたのあなた!」



提督「ん?」



葛城「その隈の事よ!…凄い事になってるけど」



提督「あ…隈出来てるか。最近、寝てないからかな」



葛城「…それって大丈夫なの?」



提督「まあ大丈夫だろ。仕事に支障は出てないし」



葛城「そういう事じゃなくて!

…あなたが無理して倒れたらどうするのって事よ!」



提督「いや、無理なんてしてないよ」


提督(…実際、この隈も相手の反応が楽しみで寝れてないっていう下らない理由だし)



葛城「嘘。だって、無理でもしなきゃそんな隈なんて出来るはずがないもの」



提督「そんな心配しなくてもいいって…

本当にただの軽い寝不足だから、な?」



葛城「…そう。そう、なの…」



提督「ああ。

…それに、多少の無理ならするさ。

お前らの為ならちょっとくらいはな」



葛城「……ッ!」



葛城「…それなら、ずっと無理してればいいじゃない」



提督「…ん?」



葛城「ずっと無理してればいいじゃない!

…ずっとずっと無理して、私達の事も考えないで!そうやってずっと働き詰めになってたらいいじゃない!」



提督「お、おい?どうした…」



葛城「自分だけ無理してればいいなんて考えて、もし何かあっても周りの事なんて考えもしないで、残された人達の事を思わないで!」




提督「…待った葛城、一旦落ち着…」




葛城「うるさい、うるさい!あなたなんて…」




葛城「提督なんて、そのまま死んじゃえばいいじゃない!」





提督「……」





葛城「……」ハッ




葛城「ご…ごめん、なさい。私…」




提督「…葛城」




葛城「……!」ビクッ





ナデリ




提督「済まなかった。

辛い事を言わせちまったな。」



葛城「…!」



提督「…謝らなきゃならないな。俺は…」



葛城「…やめて、謝らないで!」



葛城「…悪いのは私なのに…!ただ、私がひどい事を言っただけなのに…」



葛城「自分の事しか考えてなかったのは私なのに…嫌われても仕方の無い事を言っちゃったのに…!」



葛城「…そんなに優しくされたら、私…!」



提督「…違うんだ、悪いのは俺なんだ…

もう一つ、謝罪しなきゃならない事があるんだ」



葛城「…?」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





葛城「…はあ!?ただの趣味で寝不足になってただけ!?何よそれ!」



提督「…済まない」←肝要な事は隠し、事情説明



葛城「全く、真面目に心配した私が馬鹿みたいじゃない」



提督「心配、してくれていたんだな。」



葛城「うっ……

……まあ、それは、ね?」



提督「はは、ありがとうよ。

…あと、そうだ。さっき言ってた言葉あるよな?」



葛城「…どれの事?」



提督「『嫌われても仕方の無い事』ってヤツさ。あれ、無いからな。」



葛城「は?…どういう事?」



提督「俺がお前の事を嫌いになるなんてあり得ないって事さ」



葛城「…〜〜ッ!あなたッ…!」



提督「キレられる前に退散!」ドヒュン



葛城「あっ、待てこの…!」



葛城「…はぁ、全く…」




葛城「……」///






提督「あ、やっぱり最後に一つ」



葛城「きゃっ!な、何よ!」



提督「あれは何て言おうとしてたんだ?

『そんなに優しくされたら私…』って」



葛城「え?それ、は…」




葛城「…」




葛城「……〜〜ッ!」//////




提督「ヤバっ!今度こそ退散ッ!」





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−







提督「…うーん」



明石「…納得行かないんですか」



提督「ああ…何か今回、初めて上手く行かなかった気がする。見せた悪夢の内容とはあんまり関係の無い笑顔の曇らせ方になってしまった」



明石「…確かに、提督の身を案じた結果、言い過ぎて自滅をしてただけですもんね」



提督「強いて言えば撫でようと手を伸ばす時に警戒していたが…それだけだしな」



明石「葛城ちゃんにはあまり悪夢の効果が無かったんでしょうか?」



提督「そういう訳でも無いと思うんだけどなぁ。いやー、今回もコンセプトは間違っちゃいない筈なんだけど…」


提督「ま、ともかく今度は夢の内容も、もっと熟慮しておかなきゃな」



明石「それでまた数日がかりの企画出されても少し困りますけどね」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




提督「なあ」



明石「はい?」



提督「嵐なんかどうだろう」



明石「随分と急に言い出しましたね。

…ていうかまた駆逐艦の娘ですか」



提督「駆逐艦は数が多いんだからしょうがないだろう。数が多い分これを試したい相手も多いのさ」



明石「まあ確かに多いですからねぇ。

他の艦種と比べても一回りくらい。

…それで、どうして嵐ちゃんを?」



提督「ん。そうだな…

嵐には『一見ボーイッシュ』って所に惹かれてな」



明石「…?どういう事ですか?」



提督「…嵐は、一人称は『俺』で、サバサバとした言動。元気もあって、まさにボーイッシュって言葉が似合うような艦娘だ」


提督「だが、間違いなく女の娘だ。その見た目も、そして心もな。彼女と少しでも過ごせばそれが解る。言葉の端々や行動からもな。

…だから『一見』ボーイッシュなんだ」



明石「は、はあ…成る程…

でも、それと今回の選択に何の関係が?」



提督「…今回、俺は悪夢を見せない」



明石「…?提督に嫌われる夢、ではなく、悪夢すら見せないんですか?」



提督「ああ。寧ろ俺が見せるのはその逆。

俺に好かれる夢さ」



明石「…??ますます意味が…」



提督「…詰まる所、この夢を操る機械が創り出してくれてるのは差異であり、ギャップなんだよ」


提督「現実で優しい俺が夢では恐ろしい人間となっていた差異。現実には無いような事とそれがあってしまった悪夢のギャップ。俺達は、彼女らがそれに対する姿を見てきたのさ。

…思わぬ闇を垣間見ながらもな」



提督「今回も同じさ。

俺はこの機械で、現実と夢に差異を作る。

そして、嵐をその違いに直面させるんだ」




明石「……」ポカン




提督「まあ、取り敢えず見ているといい。

お前も満足するような結果になる筈さ」カチャカチャ



提督「では行くぞ!

今回のテーマは『思い込み』だ!」



カチリ




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





【一週間の後】




提督「…よし」



明石『あの日から、随分と待ちましたね。

今日、何かあるんですか?」



提督「ん。まあな。ある、な」



明石「…煮え切らない態度ですね?」



提督「今日はな、嵐が秘書艦の日なんだ」



明石「…あー、成る程」



提督「ああ、で、俺はこの日の為に一週間程待ったのさ。何だかんだ、秘書艦の時に絡むのが一番都合がいいからな」



明石「都合、ですか?」



提督「相手に、二人きりだという心理を作らせるし、色々と仕掛けるチャンスが多い。そして何よりも…」



提督「…憲兵さんにしょっぴかれそうになる確率が段違いに減る」



明石「…何回か、そういう事があったんですか?」



提督「…黙秘権を行使する」



明石(…この人、いっそしょっぴかれた方が良いんじゃ…)



提督(聞こえてるぞ貴様)



明石『ナチュラルに心を読むのは止めてくださいって。てかどうやってんですかそれ』



提督「さて、茶番は終わりだ。

今から執務室だ、お前とは喋れなくなるぞ」




コンコン キィ パタン





提督「嵐は…まだ来てねえか…ん?」





バターン!!





嵐「わ、悪りぃ司令!遅れちまった!」



提督「よう嵐、元気いっぱいだな。

大丈夫、俺も今来たところさ」



嵐「そ、そうか…?」



提督「それより、お前凄い勢いで扉に当たってたが、大丈夫か?」



嵐「へーきだって!全く、大袈裟だなぁ」



提督「いや、しかし音も凄かったし…

特に、その肩…」スッ



嵐「きゃっ!」ビクッ




提督(…『きゃっ』か)




嵐「あ、いや…!今のは…」///



提督「…おや、どうした?

やっぱり、肩痛めてしまったんじゃ」



嵐「い、いやいや大丈夫だって!

それよりほら、仕事しちまおうぜ!な?」



提督「…まあ、お前がそういうならそうしようか。ただ…」



提督「無理だけは、してくれるなよ?」



嵐「あ、ああ…」



嵐(……いつも通り、いつも通りだ、俺!

たかが変な夢見ちまっただけだろうが…!)








後書き

あまりに遅くなってしまいそうなので先っちょだけでも投稿します…


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1: SS好きの名無しさん 2017-07-01 09:50:25 ID: o91hFyye

好きな娘だからイジメタクなるんだねえw

2: Naトリウム 2017-07-07 08:33:18 ID: -wM-y38R

期待

3: SS好きの名無しさん 2017-07-10 23:26:49 ID: HByen4n8

支援

4: SS好きの名無しさん 2017-07-11 19:47:34 ID: GI4siO8K

いいのういいのう…

5: SS好きの名無しさん 2017-07-11 20:58:42 ID: UJPryVnC

頑張ってください期待してます

6: SS好きの名無しさん 2017-07-24 05:49:34 ID: jZlhbQ84

面白いです。ぜひ続けてください

7: SS好きの名無しさん 2017-08-20 13:12:38 ID: sza7NcBn

榛名来たー!(゚∀゚)続きとても楽しみにして待ってます!

8: SS好きの名無しさん 2017-08-21 19:19:59 ID: 5uqBtGFw

泥棒猫って言われるシチュだと見た!いいぞもっとやれ

9: SS好きの名無しさん 2017-09-06 14:56:53 ID: R6PWwoSW

悪魔の魅せる夢は甘美で切なく最悪な物になる。
其は予知夢のように人を惑わせる

10: SS好きの名無しさん 2017-10-15 02:52:01 ID: OCD1btFL

新しい引かれらルな

11: SS好きの名無しさん 2017-10-22 14:29:31 ID: 6cJkE6L2

可能であれば瑞鶴と葛城をお願いします。

12: マロニー 2017-10-22 19:51:08 ID: Rc3z_Rcz

すいません、二人纏めてという事でしょうか?そうで無いならば取り敢えず葛城了解です。

13: SS好きの名無しさん 2017-10-22 23:48:50 ID: 6cJkE6L2

二人セットっぽいイメージがあるので瑞鶴と葛城と書きましたが、葛城だけでもよいです。

14: マロニー 2017-10-23 00:01:50 ID: MEwKkUbx

二人同時登場させるという事がまだ未熟故上手く出来なくて…
申し訳ありませんが、この場は葛城のみとさせて頂きます。

15: SS好きの名無しさん 2017-10-30 02:14:55 ID: oah-Hgq6

陽炎型からもお願いします

16: マロニー 2017-10-30 17:51:24 ID: TyKEBPtQ

了解です。陽炎型から一人見繕い、リクエストに答えます。

17: SS好きの名無しさん 2017-11-07 06:44:01 ID: Odq5Kjg9

トラウマの如月ショックを暖かく包んであげてくれよ。
何だかんだで彼なら傷を癒せる。
皆さ。心の中の闇が見せてるんだ。早い内に解消し
包んであげて。霞ちゃんが良い例だよ。

18: マロニー 2017-11-07 21:13:53 ID: e88KdtMW

コメントありがとうございます。
如月を果たして癒せるかどうか…

ともかく、リクエスト了解です。

19: SS好きの名無しさん 2017-11-22 07:25:23 ID: FxK9Swv9

村雨をお願いします

20: マロニー 2017-11-23 19:09:17 ID: Kknxwmqh

村雨了解しました。

21: SS好きの名無しさん 2017-11-25 20:56:03 ID: J-z5ggzF

千代田でお願いします。

22: マロニー 2017-11-25 23:07:38 ID: rMjs3Ew1

リクエストありがとうございます。
本当に嬉しいです。

しかし、大変申し訳ないのですが、リクエストの数を溜めすぎてしまい、消化しきれなくなってしまいそうな為、取り敢えず保留にさせて頂きます。

本当、すいません。

23: SS好きの名無しさん 2018-01-05 06:28:29 ID: IwxTEK59

初夢で戦艦になれるいいゆめをプレゼント!
清霜君。駆逐だからこその汎用性なんだよ。
だから指輪を贈ると戦艦になれるアプデを早く実装してくれw


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