2019-03-15 21:41:23 更新

前書き

今回も今回とてn番煎じです。





提督「ああ、頼むッ!この通りだ!」←土下座



明石「いやいやいや!どうしたんですか急に!

急にここに来たと思ったら土下座までして!

今の私、困惑しかないですよ!」



提督「…ある夢を見たんだ」



明石「夢、ですか?」



提督「いや、天啓と言うべきかな…

まあ取り敢えず聞いてみてくれよ」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




その娘はがばりと寝床から身を起こした。



目は見開かれ身体には汗が滲んでいる。



酷い悪夢を見たのだ。



それは、自らが好いている人に嫌われる夢。

それも彼の身勝手ゆえでは無い。


否。寧ろ、その彼は常に優しかった。


常に優しく、常に平等で。

怒っている所や人に誹りを言う所など見た事が無い…それ程柔和な人だった。


そんな彼が、怒った。

そんな彼が、嫌悪した。


そんな彼が、自分を疎外したのだ。


纏わり付いてくるなと。

目障りだと。我慢の限界だ、と。


我慢?


そう、彼はずうっと我慢をしていたのだ。

その娘の全てに対して。


その態度の全ては、彼のその我慢が弾けただけだったのだ。


彼はただ、自らの思っている事を正直に吐き出しただけの事だったのだ。



勿論、それら全ては彼女が手前勝手に見た夢だ。現の事では無い。


もし今、彼の所に行ったとしてどうなるか?


彼はいつも通りに笑い掛けてくれるだろう。

いつも通りに優しく話しかけてくれるだろう。



(我慢なんてしていない。

しているはずが、無い…)



娘は気分を変える為に外に出て、夜風に当たりながら、何度もそう思おうとした。


だが思おうとするたび、その脳裏にその夢の中の彼の顔が浮かぶ。


あの軽蔑と嫌悪、憤怒が混じったような、彼の見た事の無いあの顔を。


他ならぬ、自分に向けられた顔を。


そしてその顔が浮かぶたびに息が荒くなり、胸が苦しくなる。



(いやだ…違う。違う。違う!)



そうしてひたすらに夜風を浴びていた…その時だった。



『おや−−−。どうしたんだ?夜遅くに。

それも、こんな場所で』



彼女は声を掛けられた。

愛しきその『彼』…提督に。


いつもなら、そんなシチュエーションになった時、彼女はとても喜んで彼と楽しく対話をする。


いつもならば。



だが彼女にとって不都合な事に、今の状態はその『いつも』ではなかった。



『……!』



彼の人懐こい顔を見る。軍人らしい筋肉の付いた体躯も。愛おしい、その全てを見る。


それと共に、脳裏にあの全てがよぎる。


嫌悪の目。容赦の無い罵倒。我慢の限界…



気づけば、彼女は後ずさっていた。



『お、おい。どうした?ひょっとして、何か気を悪くさせちまったか?』



困惑する提督。



そしてその顔は。

今の彼女の目には、その困惑の表情は困惑の表情では無く。最も恐ろしい物に…

つまりは、嫌悪の表情と映った。





『…!嫌わないで…!』


ピピピピ ピピピピ ピピピピ







提督「………」パチリ




ムクリ




提督「…夢、か」



提督「ああクソっ、こんないい所で…!」




【起床時刻也】




提督「ああー…朝、かぁ。」



提督「あーあ…あのまま、あの娘がどういう反応したのか知りたかったのになぁー」イソイソ



提督「……いや、待てよ?」ピタリ



提督「…まさか、この先は現実で見ろと言う事か?神が俺に向かってそう言っているのか?」



提督「…ああ、そうだ!そうに違いない!

これは天啓だ!これを現実にやれというのが俺の使命なんだ!」



提督「よっしゃ、そうと決まればこうしちゃいられない!明石だ!明石の元に急ぐぞ!!」





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明石「…で、つまり。

貴方は私に夢を操る機械を作らせて、特定の娘に貴方に…提督に嫌われる悪夢を見せて。

で、それからその娘とコミュニケーションを取ろうとしているという訳ですか。それで、その娘の反応がどうなるかを見ようと」



提督「説明ご苦労。

ざっと言うとそう言う事だ」



明石「…何処からツッコんで欲しいんですか」



提督「ツッコミどころなんて無いだろ」



明石「…まず何で提督一人でそんなに騒いでたんですか?ていうか、何でそんな発想に思い至ったんですか?で、夢を操って悪夢を見せようとするって、どんだけ性格が歪んでればそんな発想に思い至るんですか?」



提督「おおう、一息に言い切りやがったな…まあそんな事はどうでもいいんだ、重要な事じゃ無い。だからそれらの問いにも答えん」



提督「問題は一つ。この機械をお前が作ってくれるか、だ。機械そのものが無けりゃ話にならんからな。皮算用にすらならん」



提督「と、いう事で。頼む、この通りだ。

夢を操れる機械を作ってくれないか?」



明石「…作った所で、私の利益がありません」



提督「…前の時のようにインカムをつけよう。あともう一つ、今度は小型カメラもな。それでお前は、曇った顔の娘達を見逃さない筈だ」



明石「…そんな事で、乗ると思いますか?」



提督「ああ、乗るさ。乗るとも。

何せお前は俺と同類だからな」



明石「…同類?」



提督「ああ。お前も俺も、愉悦を感じる為なら何でもやる。艦娘達の良い表情を見る為ならば何でもやる…そんなヤツだ。そうだろう?」



明石「て、提督と一緒にしないで下さい!!」



明石「………」



提督「前と異なり、今回は俺は強制しない。

お前が嫌だと言うならばそれを拒否しろ」



明石「……!」




提督「さあ、どうする?どうするんだ明石!」





明石「…最高の顔を見せる。それが条件です」




提督「GOOD!それでこそお前だ!」




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【数日の後】




明石「出来ました!」



提督「うおお、ゴツい見た目だな…

こりゃ前みたいに持ち歩きは出来ないな…」



明石「いかんせん機能が複雑なもので…小型化する時間も無かったし…で、でも!機能は恐らく文句の付けようがありませんよ!」



提督「ほう。射程距離は?」



明石「この鎮守府中です!」



提督「発動させる条件は?」



明石「目の前のそこのスイッチを押すだけです!」



提督「相手を選ぶ事は?二人以上への同時使用は?」



明石「勿論出来ます!」



提督「パーフェクトだ明石。

では早速やっていこうじゃないか!」



明石「お、早速ですね。

最初は誰にやるつもりですか?」



提督「そうだなぁ…」



提督「……」



明石「…提督?」



提督「…いやな、本当に咄嗟のアイデアだった上、これが出来るまでワクワクするだけして、誰にやろうかとか全然考えて無かった」



明石「ええ…馬鹿ですか貴方は」



提督「う、うるせぇな。

…そうだな、夕立なんてどうだろう?」



明石「夕立ちゃんですか?それまた何で」



提督「言っちゃ悪いが、あいつは結構能天気な奴だからな。アイツで効果があるんならば他の奴にも効果があるだろうって事さ」



明石「ああ、実験も兼ねるんですか。

…ほんと、息をする様に下衆の思考をしますね、」



提督「おうありがとよ。さて、そうと決まれば…ここで操作できるのか?」



明石「あっはい、そこで対象や見せたい夢などを選んで、最後に決定ボタンを押せば発動します」



提督「オッケイ。…良し、決定ッ!」




カチリ




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【翌日】




提督「聴こえてるか、見えてるか?」



明石『はいはいバッチリですよー』



提督「良し。…しかしアレだな。夢という性質上、一日に一人…無理しても数人ぐらいにしか出来ないのはネックだな」



明石『まあそればかりは…提督が増えないとどうしようもないですからね』



提督「っと。夕立発見。さて、様子はどうかな?」




夕立改二「……」




提督「ふーむ…心なしか元気が無いな。

これなら成功かな?」



明石(ちょっとふらふらしてる様な気も…

大丈夫かしら?)



明石『そういえば、執務室で仕事しないで、こんな所をほっつき歩いてて良いんですか?』



提督「仕事なら終わらせて来た。

と、いう事で接触してくるから話せなくなるぞ」



明石(に、人間離れしてる…

この人はこの意欲をもっと他の所に使えばなぁ)




提督「おーい、夕立」



夕立「!!」ビクッ



提督「よお、元気か?」



夕立「あ…て、提督さん!こんにちは!」ニコリ



提督(ムム、笑顔。だが…)



明石(不自然な笑顔…取り繕ってるって感じね)



提督(俺が夕立に見せた夢は、ずばり、触れ合いに辟易した俺が突き飛ばして罵倒するといったような…そんなものだった)


提督(どうやらかなり効果があったようだな。

今迄通りならば、夕立は既に飛びついてきたりのボディタッチ的なものをしてくる筈だ)




夕立「何か用事っぽい?」



提督「いや、特に用事って訳でも無いがな。

ただ話し掛けただけさ。駄目か?」



夕立「…ううん、全然駄目じゃないっぽい」



提督「そうか。…そうだ、ここで会ったのも何かの縁だ、何か食べに行くか?」



夕立「本当!?やった、提督さん大好きっ…」ガバッ



ピタリ



夕立「…っぽい」



提督「…なあ、どうかしたか夕立?」



夕立「え?」



提督「こう言うと何か、まるで催促してるみたいで気持ちが悪いかもしれんが…今日はヤケに大人しいというか、こう、触ってこないというか」



夕立「き、今日はそんな気分じゃ無いだけっぽい」



提督「…そうか?俺には今、わざわざ行動を中止したように見えたが。本当に何もないのか?」



夕立「……ッ」



提督「…夕立?」



夕立「…何も無いっぽい。」




提督「…夕立!」



夕立「ひっ…!」ビクッ



夕立「…ご、ごめんなさい…

て、提督さん、お、怒らないで…」




提督「…夕立」



夕立「…ッ!提督さんが嫌な事はもうしないから、提督さんがやれって行った事なら何でもするから、だから…!」



提督「…待て、話を聞いてくれ、夕立。

俺は怒ってなんかないんだ。…大きい声を出してすまなかった。誤解させちまったな」



提督「俺は怒ってない。

俺はただお前の事が心配なんだ」



夕立「……!」



提督「…もし俺が信用出来ないと言うなら、言わなくても構わない」



夕立「!そ、そんなこと!」



提督「でも、出来たら話してくれないか?」




夕立「…うん」



夕立「…ねえ、提督さん。

…夕立の事、きらい?」



提督「まさか。そんな筈は無い」



夕立「じゃあ、いつも夕立がしてる行動にイライラしてたり、してない?」



提督「勿論さ」



夕立「じゃあ、それじゃあ!提督さん、私の事好き?」



提督「……」



夕立「…好きじゃ、ないの…?」ジワァ




【提督、抱擁】




提督「済まない。そんな風に思わせてしまった。辛い想いをさせてしまったな」



夕立「…!!」



提督「大好きだよ、夕立。嫌いな訳が無いじゃないか」



夕立「…う、うう…!」



夕立「提督さ〜ん…!」グズグズ



提督「うわ、服に鼻水を垂らすな!」





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提督「成る程、俺に嫌われる夢を」



夕立「うん…夢の中で、提督さんが触るのが嫌だって。我慢の限界だって言って、私の事を突き飛ばしてきたっぽい」



提督「…大丈夫だよ。俺はお前のそう言った行動全てが好きだし、嫌がって我慢なんかしていないから…というか思う訳が無いからな」ナデリ



夕立「んっ… ありがとう、提督さん」



提督「とんでもない、俺も好きでやってる事だ。礼を言われる筋合いなんてないさ」



夕立「本当にありがとうっぽい!」スリスリ



提督「話を聞いてくれ」



夕立「…ねぇ、提督さん!これから先も提督さんに抱きついたり、今みたいにすりすりしてもいいっぽい?」



提督「ん?ああ、勿論いいとも」



夕立「そ、それで…またこういう夢を見ちゃったら…また提督さんに、話を聞いてもらっていい…?」



提督「…いつでも来るといい」



夕立「!うん!ありがとう提督さーん!」




【夕立はそのまま走り去って行った】




提督「あ、おい!一緒に何か食いに行くんじゃ無かったのかー!?おーい!」





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提督「良し良し、いい感じだ。

俺の考えていた感じにとっても近いぞ」


提督「…にしても夕立は、結構思い詰めるタイプみたいだな…これからはそれを踏まえて接しないとな」



明石『いやー、全部貴方が仕込んだ事って知ってるこっちからすると、こういう人を邪悪って言うんだなーなんて事を思ってましたよ』



提督「いつも明るかったり気丈に振る舞っている娘の、その顔が曇っている所…やはりとても良い物だ。

そして、それが晴れる所もな」



明石(あ、この人この手の悪口には最早反応すらしないや)



提督「しかし…夕立は後に取っておくべき逸材だったかもしれん。使い方を覚えてる最中の今に、手を出すべきじゃなかったな」



明石『と、いいますと?』



提督「もっと使い方に慣れてから夕立に対してこれをやれていたなら、もっともっと良い顔を作り出せたかもしれん。ま、後の祭りだがな」



明石『何を変な拘りを見せてるんですか』




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明石「さて、次はどの娘にするんですか?

まさかやらないなんて事は無いでしょうし。」



提督「その通り、やらないなんて事は無いぞ。

…次のターゲットはズバリ、霞だ!」



明石「また駆逐艦の娘ですか…

…ひょっとして提督ってロr」



提督「違うわ。これはただ駆逐艦の割合が多いだけであって、そこに他意は無い」



明石「まあそう言う事にしときましょうか。

…ところで、霞ちゃんにやるって事はやっぱり…?」



提督「…うん。まあぶっちゃけ、霞はこの装置を使う相手の大本命に位置する娘だ。」



明石「…ですよねー…

実際、この装置ってこういう娘を狙い撃ちにするようなものじゃないですか。本当に性格の悪い…」



提督「作った時点で貴様も同類だろ」



明石(…何も言い返せないや)



提督「ま、お前の思っている通りだよ。

この装置は、その娘からの俺に対しての負い目があればあるほど、反応が面白くなる」



提督「逆に言うなら、素直だったり、あまり迷惑を掛けてないと…少なくとも自分で思ってる娘にはあまり効かない。こんな事はあり得ないと夢と現に区切りをつけれるような娘にも然りだ。」



提督「その点、霞、満潮あたりはトップクラスに負い目もあるし自分自身が罵声を浴びせてるという実感もある。…うーん、最高だな!」



明石「…そこら辺の娘達は、ボロボロに心が傷付いている様な過去がありますからね?せめてそんな手酷い悪夢は見せないようにしてあげて下さいよ?」



提督「なぁに、それ位は解ってるとも…

つー事で夢のセッティングを始めよう」



明石「…あの、因みに霞ちゃんにはどんな夢を?」



提督「ん。まあ大した物じゃあないよ。ただ普通に」



提督「霞の度重なる罵倒に耐えかねた俺が霞の目の前で絶望し、拳銃自殺するってだけだ」



明石「よ、容赦ゼロじゃないですか!!」



提督「?不服か?」



明石「いや流石にドン引きっていうか…

もう少しこう、何というか…手心と言うか…」



提督「痛くなければ覚えませぬ」



明石(ああダメだ話が通じない… ごめんなさい霞ちゃん、私はとんでもない物を…)



提督「という訳で、セット完了!

準備オッケー!あそれ、レッツ・ゴー!」




カチリ




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【再び翌日】




提督「外はいい天気だよな。

鳥たちは歌い、花は咲き誇る」



提督「こんな日こそ、霞のような娘には…

悪夢を見てもらうべきだろう。違うか?」



明石『確実に違うと思います。

ていうか悪夢は既に見てるんでしょうが』



提督「細かい事はどうでもいいのさ。

という事で今俺は執務室の前にいる。

で、霞は今日秘書艦だ。」



明石『あら、タイミングぴったりですね。

…もしかしてそこらも考えてのセレクトで?』



提督「いや、ただ都合の良い偶然だよ。

…それじゃあ逝ってくる」




ガチャ




提督「おはよう、霞」



霞「…ん、おはよ」



提督(さて、様子はどうかな?)



提督「いやぁ、相変わらず早いな。

俺も遅れて来たって訳じゃあ無いんだが…」



霞「少し前に来るくらいが普通なのよ。

あんたも軍人なんだしそれ位しなさいな」



提督「はは、手厳しいな」



霞「甘え過ぎなのよ、このクズ」




提督(…ふむ。ざっと見たところ、あまり変わった様子は見られないな)



提督(…ちょっと顔色が白く見えるか?

でもまあ、それくらいか。)



提督(正直少し以外だ。もっとこう、色々と反応というか影響というかがあると思ったが…)



提督(…この態度はツンデレのツンじゃあなく、ただ単に俺が嫌いだったのか?うーん、そんな事は無いと考えてたんだがなぁ…)



提督「済まん済まん…

まあそれじゃ、仕事するか」



霞「…言われなくても解ってるわよ」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





提督(…?)



提督(なんか、霞…今日はミスが多いな)



提督(勿論支障が出るとかいうレベルじゃ無いが、それでも自他に厳しい霞らしからぬような…)チラリ



霞「……」カリカリ



提督(…ひょっとして、あの俺の見せた悪夢のせいで寝不足だったりするのか)



提督「…なあ霞。お前、大丈夫か?」



霞「は?何がよ」



提督「体調が、だ。もしかして体調を崩してたりしてるんじゃないかと思ってな」



霞「…そんな事無いわ。平気よ」



提督「そうか?自覚が無いだけで、疲れてるのかもしれない。少し熱があるのかも」



霞「大丈夫だってば!」



提督「…本当か?本当は無理して…」




霞「大丈夫って言ってるでしょ!

いちいち構わないでよ!」パシッ




提督「痛っ…」




霞「……ッ!」



提督(差し出した手を振り払われる、か…

覚悟してたとはいえ、少しは凹むな)ショボン



提督「…済まない。余計な事をしてしまった」



提督「全く、こんなヤツが上司で悪いな。

なんて……」



提督「…霞?」




霞「…」



霞「……」




バタリ




提督「!?お、おい!霞!?霞!!」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「大丈夫って言ってるでしょ!」




咄嗟に、差し出された手を打ち、振り払った。


瞬間。彼の目が、顔が。哀しさを帯びた。


ぞくりと悪寒が走るようなそんな顔。


それは、つい今朝方に夢にて見た彼の絶望の顔と酷く似通っていた。


度重なる罵倒に堪え兼ね、遂に絶望の一線を超えてしまったその顔に。



本当は全く似てなぞ無かったのかもしれない。

だが少なくとも、彼女はそう思った。

思ってしまったのだ。



(違う。私は、礼を言わなきゃ。

気を遣ってくれてありがとうって…

気をかけて、心配してくれてありがとうって)



ざりざりと、悪夢のフラッシュバックが彼女の思考をノイズの様に妨げる。回らせるべき舌は止まり、動かさねばならない唇は動かない。




「…済まない、余計な事をしてしまった」


『済まない、本当に済まない…

俺は、いつも余計な事ばかりを…』




彼が、提督が、謝罪を口にする。


彼の言う事が、彼女の悪夢と重なる。


彼女の見た夢が、彼女の認識を蝕んでいく。




「全く、こんなヤツが上司で悪いな…」


『俺のような無能は…

もうお前たちの上に立つべきでないんだ…』




(違う。やめて。違うの、私はそんな。

そんなつもりじゃ)



心中の訴えを他所に、提督がホルスターから拳銃を取り出し、そして自らの口内へ。上顎へと押し当てる。


現実の提督が行っていないその行為を、彼女は夢を記憶した脳と、悪夢を錯覚したその網膜で見ていた。



(違うの。私は、貴方を責めてはいないの)



心の中の声は、一言も発す事が出来ない。

身体は、金縛りにかかった様に動かない。



『こんな俺を…許してくれ…』



(お願い、銃を下ろして。口からそれを出して)



『さよならだ』



(やめて。やめて!やめて!!)




パァン




(あ、あああ、ああああ、あ!)




彼女の耳が、現実では発せられていない銃声を聞き。

彼女の目が、現実では無い飛散する脳漿を見た時。



彼女の意識は既に夢に連れ去られていた。





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【in 仮眠スペース】





霞「…あれ?」



提督「よう霞。おはようさん」



霞「…ごめん。あたし、どれ位寝てた?」



提督「…安心しろ。そう大して時間は経ってないよ」



霞「…そ。それじゃあ仕事を再開しましょ」



提督「今日はお前は非番だ」



霞「…何ですって?」



提督「俺がさっきそう決めた。だからお前は今日お休みだ。ゆっくりしてるといい」



霞「ちょっと、アンタ…」



提督「そんな顔で仕事をするつもりか?

そんな、ファンデーションだらけの白い顔で」



霞「…ッ!」



提督「濃ーい隈を粉塗りたくって何とか隠した、そんな酷い状態で仕事なんて出来る筈が無いさ。だから休んでてくれ。」



霞「でも!」



提督「…取り繕って何かをしても綻びはいつか出る。なら、綻びなんて作らないようにやった方が良い」



霞「……」



提督「…霞。お前は、弱みを見せたくないんだろう。だからそんな白い面をしてでもここに来て、そして何事も無いかのように振る舞った。そうだろ?」



提督「でも、弱みくらい誰にだってあるんだ。

だからな。隠す必要なんて無いんだよ」



霞「……」



霞「…それでも、私がやらないと。

…私がちゃんとしないといけないのよ」



提督「…」



霞「それに、私が体調を崩したってどうでもいい。そんな大した事じゃないもの」



提督「…おい、霞」



霞「…何?」




ギュッ




霞「きゃっ…!は、離…」



提督「…お前は色々と背負い込み過ぎだ。

もう少し俺を信用してもいいじゃないか」



霞「…!」



提督「言いたくないなら何があったかは言わんでもいい。でも。それで何かがしんどいのなら、そのしんどい物を俺に任せてくれてもいいだろ?」



霞「…でも」



提督「そんなに俺が信用ならないか?」



霞「でも、だって… いいの?」



提督「勿論。なんてったって、俺はお前たちの提督なんだからな」



霞「…それのせいでアンタの心が追い詰められちゃったら、どうするのよ」



提督「そん時はそうなる前にお前にも任せる。

お互い無理しない程度にしてな」



霞「…私なんかに任せて、いいの?」



提督「俺は、お前ほど叱咤激励をしてくれるような頼もしい奴を他に知らん」



霞「こんな、罵倒ばかりの娘が?」



提督「おや、俺はいつもお前の罵倒で元気を出しちまってたのか」




霞「…」



霞「……」ギュッ



霞「…ねえ。信じて、いいのよね」




提督「当たり前だ。

だから今日はゆっくり休め。な?」




霞「イヤよ」




提督「ああ…」


提督「…って、えぇ!?

いやいや、ここは頷く流れだろう!」



霞「うっさいわね、私がやるべき分くらいやんないと目覚めが悪いでしょ。だからちゃっちゃと終わらせるの」



霞「どうせアンタの事だし、大して時間は経ってないなんてのは嘘なんでしょ」



提督「!」ギクッ



霞「で、私が起きるまでアンタは仕事に手を付けないで、ずっと私の側にいたんでしょ」



提督「!!」ギクギクッ



霞「やっぱりね… ほら、今からでもその分も含めてやっちゃうわよ!」




ズルズル




提督「…いや。でも、お前…」



霞「…ねえ、『司令官』」



提督「ん?」



霞「ありがとう。頼りにしてるわ」



提督「…おう」



霞「言いたい事はそれだけよ。

それじゃ行きましょ、クズ」ズルズル



提督「解ったから引きずるのを止めてくれ」




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明石『…無反応なんて見当違い。でも、霞ちゃんはその苦しみを他人に…提督に見せまいと、取り繕ってたんですね』



提督「…ああ」



明石『?どうしたんですか、馬鹿に元気が無い。提督的に今のは成功ではないんですか?』



提督「いや、その…俺はもっと、罵声が飛んでこなくなるとかの軽いイメージをしてたもんだからさ…その…何というか…」



明石「…?」



提督「ちょっと…やり過ぎたっていうか。

少し反省をしてるんだ」



明石『…成る程。

…では、もうこの機械は使わないと?』



提督「それはそれとして全然使うけど」



明石『クズですね』




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提督「そんじゃあ次だな、次」



明石「あ、マジでやるんですか」



提督「当然。反省とは次に活かす為にあるものだろ?」



明石「は、はぁ…それじゃあ、今度は誰に?」



提督「ふむ、そうだなぁ…

…よし、榛名にしよう」



明石「あら、榛名ちゃんですか?

…なんかちょっと意外ですね…」



提督「ん、そうか?」



明石「はい。だって以前提督がこの装置は負い目があまりない良い娘には効かないって言ってましたし」



提督「あー、そうだな。確かにそんな事言ってた」



明石「それに、霞ちゃんと同じ基準でターゲットを決めるなら曙ちゃんとかになるんじゃないかなーと思ってて」



提督「曙は前回組だから保留だ。

…でだな。今回榛名なのは少し思いついた事があっての事だ」



明石「はぁ。というと?」



提督「まず、今回の榛名に対しては俺に嫌われる旨の夢は見せない」



明石「…まあ、前の霞ちゃんの時点でもそうでしたもんね。気づいてるかどうか知りませんが、今回の企画割とブレブレですよ」



提督「うるさい、俺が楽しけりゃいいんだよ。

…ま、とりあえず榛名への夢の内容は明日へとお楽しみって事で…」カチャカチャカチャ



明石(あ、もういじり始めてる。

ていうか操作覚えるの早っ)



提督「…うし!それじゃあ、榛名!

良い夢を見ろよ!ポチッとな!」




カチリ




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【翌日】




提督「さぁて、と。榛名はどこかな?」



明石『早速ですね。 …で、そろそろ教えて下さいよ。昨夜どんな夢を見せたんですか?』



提督「そう焦るな。この後に教えるつもりだから、ちょいと待ってな」



明石『はぁ(いやに焦らすわね)』



提督「お、榛名だ。丁度いいな。そんじゃちょっくら行ってくる」




提督「よお、榛名」



榛名「! 提督…えっと、何か御用でしょうか?」



提督「あー、済まん。特に用は無いんだがな…

その、なんというかだな」


提督「…お前と話しをしたくってな?もし良かったらなんだが、少しの間付き合ってくれないか」



榛名「…!はい!榛名でいいならお相手しましょう!」



提督「…俺から言い出した事だけど、いいのか?何かやる事があったりはしないか?」



榛名「いえ、榛名は大丈夫です!

…それより、立ち話もなんですし…その…」



榛名「…は、榛名の部屋に来ませんか?」///



提督「え、だが…」



榛名「!す、すいません、嫌ならば、その…」



提督「はは、嫌な訳が無いだろう。俺にとっては得しか無いんだからさ」


提督「そうだな…それじゃあ、折角だし、お邪魔させてもらっていいか?」ニコリ



榛名「は、はい!」




明石(出た、提督のやけに爽やかな笑み。

あれにドキリと来ない娘は少ないでしょうね)



明石(にしても…なんというか、提督も榛名ちゃんもどちらもただ普通に仲睦まじくしてる様にしか見えないわ。…一体、どういう…?)




【その後、榛名の部屋に入った後も悪夢に関する様な事は一切行われなかった。明石は砂糖を吐いた】





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明石「で、どういう事なんですか?」



提督「さて、なんの事やら」



明石「いやいや、しらばっくれるのは無理があるでしょう。榛名ちゃんとはただイチャイチャしてただけだったじゃないですか」



提督「ああ、そうだな」



明石「そうだなって… あれですか?結局、あの装置はもう使わない事にしたんですか?」



提督「…今回は幾つか小細工を用いるつもりでな。

同時に、結構長期に渡って行うつもりなんだ」



明石「?」



提督「…ただ悪夢を見せるだけじゃあ、いつしか、あくまであれはただの夢だと思うヤツが出てくる」


提督「それじゃ駄目だ。それでは俺が詰まらない」


提督「そして、榛名も恐らくその中の一人だろう。

俺が見せようと思っている夢を今見せても割り切ってしまうだろう。何てったって、金剛型の姉妹の絆は途轍もなく強固だからな」



明石「…?何の事を…」



提督「だからこその小細工。

だからこその昨日見せた夢だ。俺は昨日、榛名にあいつと仲睦まじく話す夢を見させた」


提督「そして今日、榛名は俺と仲睦まじく話した。

まるで夢と同じようにな。」


提督「一日だけなら偶然に思うかもしれない。

だが、それが何度も続いたらどうだろうな?」



明石「……!!」



提督「さあ、次回は2日後。

次は…そうだな。デートにでも誘う夢を見せよう」



明石「提督…あなた…」ドン引キ



提督「さあ榛名、良い夢を見るんだ。

…その後の悪夢をより最悪にする為にな…」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




榛名「……ッ!!」ガバッ



榛名「……」



榛名「夢、よね…」



榛名「……」



榛名「……私は…」




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提督「さあ、遂に参りました。本命の日です!」



明石「あ、朝っぱらテンション高いですね… 」



提督「当然だろう。今日この為に何日も何日も費やしたんだ、テンションが上がらぬ訳がない」



明石「では、今回見せた夢を聞かせていただいても?」



提督「ああ。今回見せたのは、俺にケッコン指輪を渡された榛名が次第に姉妹内から疎まれていき、嫌悪されていくってものだ」



明石「あー…成る程。確かに前言っていたように、榛名ちゃんは普通ではただの夢として受け取るでしょうね」



提督「だろう?だからこそのここまでだ。だからこその小細工。何度も何度も見た夢が再現させられてからこうなったのなら、盲信とはいかぬとも何か感じる筈だ」



明石「…ん?ケッコン指輪を渡すんですか?」



提督「あぁ。さっきそう言っただろうが」



明石「いやでも」



提督「っと、榛名発見。という事で話せないぞ」



明石「アッハイいってらっしゃい」




提督「よう、榛名」



榛名「!提と…」



提督「どうしたんだ?ひどい顔だぞ。

何か悪い夢でも見たか?」



明石(うわ、白々しい)



榛名「…いえ、大丈夫です。少し疲れが溜まっちゃっているだけですので」



提督「それはそれで良くないんだけどな…

あー、その、だな」



榛名「?何かご用でしょうか?」



提督「えーっと、もし暇だったりしたらなんだが、

少し付き合って貰えないか?」



榛名「…!」



提督「いやほんと、急を要する事でも無いんだがな?

用事って程の事でも無いしな?」



榛名「…いえ、榛名で良いのならばお相手します!」



提督「そ、そうか。じゃあ済まんが、付いてきて貰えるか?」



榛名「はい!」



提督(…さて。今まで、取り敢えず見せた夢と殆ど同じ行動を取ってる。ここまで続くのなら、榛名はこの後、指輪が渡されるのではという思案をするだろう)



提督(…いや、実際しているようだな。なぜなら…)チラッ



榛名「……ッ」///



提督(…あんな複雑な表情は。頬を赤らめながら顔を顰める、なんて複雑な表情はしない筈だもんな)





【提督達、人目の付かぬ場へ】




提督「…良し、ここなら誰も聞いてないかな?」



明石(私が聞いてますけどね)



提督「で、だな。榛名。

お前、最近練度が99になったな。おめでとう」



榛名「あ、ありがとうございます」



提督「…あー、駄目だな、このままじゃ尻込みして言えなくなってしまいそうだ。…榛名よ」



榛名「…はい」



提督「単刀直入に言ってしまおう。

このケッコン指輪を受け取って貰えないか?」



榛名「…!!」



提督(俯いたな…やはり夢を意識しているな。

さあどうする、どうなる?どういう反応を)



榛名「ありがとうございます、提督…!

その指輪、是非とも受け取らせて頂きます!」



提督(するのか…

ってあれ、普通に受け取るのか。しかも判断が早いし。表情にも陰りが見えない。どういう事だ?夢は夢として割り切ったのかな?)



提督(…少し揺さぶってみるか)



提督「…無理は、しなくていいぞ?」



榛名「え?」



提督「いや、なんて言うかな…

君の顔に焦りというか陰というか…そんなのが見えた気がしてな。勘違いなら悪いが…」



榛名「……」



提督「当然だが、この指輪は提案であり強制じゃあない。そりゃ受け取って貰った方が嬉しいがな。

だから、嫌ならば拒否してくれ」


提督「悩みがあるとかならば、それを言えばいい。

取り敢えず聞く事だけは出来るからな」



提督(本当は全然陰りなんて無かったが…

さあ、何か反応が起こるか?)



榛名「…」




榛名「……ッ」




榛名「………」ボロボロ




提督「…!?ど、どうした榛名!?」





榛名「…ぐすっ…好きなんです」



榛名「提督が、大好きなんです」





提督「そ、そうか(…?)」



榛名「…最近、提督と榛名は二人で色んな事をしました。部屋で話をしたり、買い物へと行ったり…」



榛名「そしてその度に夢を見ました。

その全ての、行った通りの夢を」



榛名「だから、夢を見る度に胸をときめかせてきました。夢を見る度提督の顔が頭から離れなくなりました」



榛名「そして今日また、夢を見ました」



榛名「…悪夢でした。金剛お姉様も、誰も彼もが榛名を疎む、そんな夢を見ました」



提督「…」



榛名「…なのに」



提督「?」



榛名「それなのに、榛名は嬉しかったんです。

提督に好意を向けられ、指輪を渡されるという事が。それだけで嬉しく思ったんです」



榛名「…榛名は…」



榛名「私は、いつだって皆を守りたいと思っていた筈なんです」


榛名「…なのに私は、皆に嫌われるはずの夢を見た事より、提督から指輪を渡された事に重きを置き、そしてそれに喜びを感じていました。

…感じてしまいました」



榛名「それはつまり、私は艦隊の皆よりも、姉様たちよりも提督を想っていたという事…」



榛名「…いえ、本当は、皆の事も大切に思って無かったのかもしれません。本当はただ、自分がただ『いい子』である為に。

私はそんなに醜い子じゃないと。そう自分に思い込ませる為だけに、艦隊の皆を大事なものとしていたのかもしれません。」



榛名「…私は身勝手です。榛名は、榛名は…」




提督「……」




榛名「…ぐすっ、すみません、急にこんな事を言ってしまって…」





提督「…榛名。一度この指輪は保留にしよう。

このまま受け取ってもらっても、お前が危ない」



榛名「!!は、榛名は…!」



提督「『大丈夫』…じゃないだろう。

お前は、その見た夢のせいでひどく不安定な状態だ。そんな時にこの指輪を渡されても、ただ辛いだけだ。…お互いな」



榛名「…!でも、私は…!」



提督「何と言われても、今は渡さないぞ」



榛名「…」



提督「…ただ、一つだけ言っておくよ」



提督「…お前は、悪夢で心を傷付け、自らの心の中にある筈の信念にまで疑念を抱き、疑念に苦しみを感じた。…とても大変な事だ」


提督「だが、その苦しみは、そのままお前の優しさを表してる事に気がついているか?」



榛名「…?」



提督「本当にお前が他の娘に好意など持っておらず、ただ自らを騙す為の上っ面の感情だったのなら、お前はそんなに苦しむ筈がない」


提督「他の娘に対し思いやりがあるからこそ、お前はここまで苦しみ、悩んだんだ」


提督「そして、その思いやりこそが優しさなんだ。優しさと想いがあるからこそ、お前は今、苦しんでいるんだ」



榛名「……」



提督「…お前は本当に優しい娘だよ、榛名。だからどうか、その苦しみを誇ってくれ」




榛名「…ありがとう、ございます…」ポロポロ



提督「そして、そうだな。

それらの悩みが少しでも軽くなったら…」



提督「…そうだな、今度はお前から俺の所へ来てくれないか?生憎、指輪を渡す勇気を使い果したんでな」



榛名「……!は、はいっ!」





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提督「何だかちょっと意外だったなぁ。もっとこう、榛名は貰うか貰わないかの狭間で揺れるものだと思ってたが」



提督「ま、それだけ俺が愛されてるって事か」



明石「そういうのって自分で言ってて虚しくなりませんか?」



提督「うっせぇな…まあともかくとして、榛名も中々良い顔を見せてくれたじゃないか。見たかあの綺麗な泣き顔からの晴れ渡った笑顔」



明石「いや…はい」



提督「最初泣き出してしまった時のあの光の無い目。

あれだけでここまで時間を掛けた甲斐があった。

そう思わないか?」



明石「まあ、そうですね」



提督「…さっきからどうした?何か考え事か?」



明石「いや、その、何というか…

さっきも言いそびれたんですが」



明石「榛名ちゃんに指輪渡す事を確定させて良かったんですか?」



提督「…何?」



明石「いやだって提督、まだケッコンしてなかったですし、結構な事件にもなるんじゃ?」



明石「その事も含め…色々、大丈夫なんですか?」



提督「…ばっかお前、それくらいは予測範囲内で…」



提督「もちろん大丈夫…」



提督「……」



提督「……大丈夫じゃないわ。

やっべ、何も考えて無かった」



明石「…先見の明が無いにも程があるでしょう」




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提督「……」



明石(流石に悩んでるな…

こんな事になっちゃったし、もうやらないんじゃ)



提督「……よし、葛城。次のターゲットは葛城だな」



明石「…あ、あれ?やるんですか」



提督「ん?そりゃやるよ。何を言ってんだ」



明石「いやでも…榛名ちゃんとケッコンしましたし…バレたらマズイんじゃあないんですか?」



提督「なあに、昔の偉い人もバレなきなゃイカサマじゃねぇって言ってるし、へーきへーき」



明石「えぇ… …もし何かあっても私は一切弁護とかしませんからね?」



提督「薄情だな… まあそんな気はしてたが」



提督「さて、話を戻そう。装置の準備は出来てるか?」



明石「あっはい。ええ、それはもう。いつでも動かせますよ」



提督「よしよし流石だ。

じゃあ葛城に照準を定めてだな…っと」



明石「にしても、葛城ちゃんですか。

また何というか…」



提督「はは、この装置が良い感じに効きそうだろ?どう反応するのか楽しみじゃねえか」



明石「…ちなみに、どんな夢を見せる予定で?」



提督「至ってシンプルなもんだよ。原点回帰と言ってもいい。俺が軽口にも近い悪口にキレて、相手を嫌うってだけの夢さ」



明石「ああ…最初の考え通りってとこですね」



提督「そういう事…んじゃ、スイッチオン!」



カチリ




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提督「よう葛城。元気か?」



葛城「あ、おはよう…って、どうしたのあなた!」



提督「ん?」



葛城「その隈の事よ!…凄い事になってるけど」



提督「あ…隈出来てるか。最近、寝てないからかな」



葛城「…それって大丈夫なの?」



提督「まあ大丈夫だろ。仕事に支障は出てないし」



葛城「そういう事じゃなくて!

…あなたが無理して倒れたらどうするのって事よ!」



提督「いや、無理なんてしてないよ」


提督(…実際、この隈も相手の反応が楽しみで寝れてないっていう下らない理由だし)



葛城「嘘。だって、無理でもしなきゃそんな隈なんて出来るはずがないもの」



提督「そんな心配しなくてもいいって…

本当にただの軽い寝不足だから、な?」



葛城「…そう。そう、なの…」



提督「ああ。

…それに、多少の無理ならするさ。

お前らの為ならちょっとくらいはな」



葛城「……ッ!」



葛城「…ならずっと無理してればいいじゃない」



提督「…ん?」



葛城「ずっと無理してればいいじゃない!…ずっとずっと無理して、私達の事も考えないで!そうやってずっと働き詰めになってたらいいじゃない!」



提督「お、おい?どうした…」



葛城「自分だけ無理してればいいなんて考えて、もし何かあっても周りの事なんて考えもしないで、残された人達の事を思わないで!」




提督「…待った葛城、一旦落ち着…」




葛城「うるさい、うるさい!あなたなんて…」




葛城「提督なんて、そのまま死んじゃえばいいじゃない!」





提督「……」





葛城「……」ハッ




葛城「ご…ごめん、なさい。私…」




提督「…葛城」




葛城「……!」ビクッ





ナデリ




提督「済まなかった。

辛い事を言わせちまったな。」



葛城「…!」



提督「…謝らなきゃならないな。俺は…」



葛城「…やめて、謝らないで!」



葛城「…悪いのは私なのに…!ただ、私がひどい事を言っただけなのに…」



葛城「自分の事しか考えてなかったのは私なのに…嫌われても仕方の無い事を言っちゃったのに…!」



葛城「…そんなに優しくされたら、私…!」



提督「…違うんだ、悪いのは俺なんだ…

もう一つ、謝罪しなきゃならない事があるんだ」



葛城「…?」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





葛城「…はあ!?ただの趣味で寝不足になってただけ!?何よそれ!」



提督「…済まない」←肝要な事は隠し、事情説明



葛城「全く、真面目に心配した私が馬鹿みたいじゃない」



提督「心配、してくれていたんだな。」



葛城「うっ……

……まあ、それは、ね?」



提督「はは、ありがとうよ。

…あと、そうだ。さっき言ってた言葉あるよな?」



葛城「…どれの事?」



提督「『嫌われても仕方の無い事』ってヤツさ。あれ、無いからな。」



葛城「は?…どういう事?」



提督「俺がお前の事を嫌いになるなんてあり得ないって事さ」



葛城「…〜〜ッ!あなたッ…!」



提督「キレられる前に退散!」ドヒュン



葛城「あっ、待てこの…!」



葛城「…はぁ、全く…」




葛城「……」///






提督「あ、やっぱり最後に一つ」



葛城「きゃっ!な、何よ!」



提督「あれは何て言おうとしてたんだ?

『そんなに優しくされたら私…』って」



葛城「え?それ、は…」




葛城「…」




葛城「……〜〜ッ!」//////




提督「ヤバっ!今度こそ退散ッ!」





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提督「…うーん」



明石「…納得行かないんですか」



提督「ああ…何か今回、初めて上手く行かなかった気がする。見せた悪夢の内容とはあんまり関係の無い笑顔の曇らせ方になってしまった」



明石「…確かに、提督の身を案じた結果、言い過ぎて自滅をしてただけですもんね」



提督「強いて言えば撫でようと手を伸ばす時に警戒していたが…それだけだしな」



明石「葛城ちゃんにはあまり悪夢の効果が無かったんでしょうか?」



提督「そういう訳でも無いと思うんだけどなぁ。いやー、今回もコンセプトは間違っちゃいない筈なんだけど…」


提督「ま、ともかく今度は夢の内容も、もっと熟慮しておかなきゃな」



明石「それでまた数日がかりの企画出されても少し困りますけどね」




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提督「なあ」



明石「はい?」



提督「嵐なんかどうだろう」



明石「随分と急に言い出しましたね。

…ていうかまた駆逐艦の娘ですか」



提督「駆逐艦は数が多いんだからしょうがないだろう。数が多い分これを試したい相手も多いのさ」



明石「まあ確かに多いですからねぇ。

他の艦種と比べても一回りくらい。

…それで、どうして嵐ちゃんを?」



提督「ん。そうだな…

嵐には『一見ボーイッシュ』って所に惹かれてな」



明石「…?どういう事ですか?」



提督「…嵐は、一人称は『俺』で、サバサバとした言動。元気もあって、まさにボーイッシュって言葉が似合うような艦娘だ」


提督「だが、間違いなく女の娘だ。その見た目も、そして心もな。彼女と少しでも過ごせばそれが解る。言葉の端々や行動からもな。

…だから『一見』ボーイッシュなんだ」



明石「は、はあ…成る程…

でも、それと今回の選択に何の関係が?」



提督「…今回、俺は悪夢を見せない」



明石「…?提督に嫌われる夢、ではなく、悪夢すら見せないんですか?」



提督「ああ。寧ろ俺が見せるのはその逆。

俺に好かれる夢さ」



明石「…??ますます意味が…」



提督「…詰まる所、この夢を操る機械が創り出してくれてるのは差異であり、ギャップなんだよ」


提督「現実で優しい俺が夢では恐ろしい人間となっていた差異。現実には無いような事とそれがあってしまった悪夢のギャップ。俺達は、彼女らがそれに相対する姿を見てきたのさ」



提督「今回も同じさ。

俺はこの機械で、現実と夢に差異を作る。

そして、嵐をその違いに直面させるんだ」




明石「……」ポカン




提督「まあ、取り敢えず見ているといい。

お前も満足するような結果になる筈さ」カチャカチャ



提督「では行くぞ!

今回のテーマは『思い込み』だ!」



カチリ




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【一週間の後】




提督「…よし」



明石『あの日から、随分と待ちましたね。

今日、何かあるんですか?」



提督「ん。まあな。ある、な」



明石「…煮え切らない態度ですね?」



提督「今日はな、嵐が秘書艦の日なんだ」



明石「…あー、成る程」



提督「ああ、で、俺はこの日の為に一週間程待ったのさ。何だかんだ、秘書艦の時に絡むのが一番都合がいいからな」



明石「都合、ですか?」



提督「相手に、二人きりだという心理を作らせるし、色々と仕掛けるチャンスが多い。そして何よりも…」



提督「…憲兵さんにしょっぴかれそうになる確率が段違いに減る」



明石「…何回か、そういう事があったんですか?」



提督「…黙秘権を行使する」



明石(…この人、いっそしょっぴかれた方が良いんじゃ…)



提督(聞こえてるぞ貴様)



明石『ナチュラルに心を読むのは止めてくださいって。てかどうやってんですかそれ』



提督「さて、茶番は終わりだ。

今から執務室だ、お前とは喋れなくなるぞ」




コンコン キィ パタン





提督「嵐は…まだ来てねえか…ん?」





バターン!!





嵐「わ、悪りぃ司令!遅れちまった!」



提督「よう嵐、元気いっぱいだな。

大丈夫、俺も今来たところさ」



嵐「そ、そうか…?」



提督「それより、お前凄い勢いで扉に当たってたが、大丈夫か?」



嵐「へーきだって!全く、大袈裟だなぁ」



提督「いや、しかし音も凄かったし…

特に、その肩…」スッ



嵐「きゃっ!」ビクッ




提督(…『きゃっ』か)




嵐「あ、いや…!今のは…」///



提督「…おや、どうした?

やっぱり、肩痛めてしまったんじゃ」



嵐「い、いやいや大丈夫だって!

それよりほら、仕事しちまおうぜ!な?」



提督「…まあ、お前がそういうならそうしようか。ただ…」



提督「無理だけは、してくれるなよ?」



嵐「あ、ああ…」



嵐(……いつも通り、いつも通りだ、俺!

たかが変な夢見ちまっただけだろうが…!)






提督「…嵐。嵐?」





嵐「え?な、何だよ?」



提督「何だよ、じゃなくって…書類を進める手が止まってるぞ」



嵐「…悪ぃ、すぐやるよ」



提督「…汗ばんでるな。暑いのか?」



嵐「!!あ…ああ、ちょっとだけな。」



提督「部屋が閉め切ってるからな…

篭ってしまったかもしれん」




嵐(…閉め切ってる、か…)



嵐(…)



嵐「…なあ提督。

ちょっと…服、脱いでもいいかな?」



提督「……」



提督(さて、ここまで計画通り進んだな。…今回見せた夢の内容はズバリ、俺が嵐のはだけた服を見てつい興奮し…ゲフンゲフン、といった内容だ)



提督(その甲斐あってか嵐は相当俺を意識しているようだ。それこそ肩に触れただけで嬌声に近い悲鳴をあげるほどに…)



提督(…そして、その意識した状態で。

顔を赤らめ。…服を脱ぐ。…これで嵐の意図してる事が読めない程に鈍感じゃない)



提督(だからこそ…)




提督「おう、いいぞ。

暖房も少し弱めようか」



嵐「…あ、ああ、頼む」





提督(…だからこそ、俺はそれを無視する)



提督(それを無視し、嵐に、俺が嵐を女として全く見ていない…と思い込ませる。自惚れだった、思い込みだった…と思わせる!)



提督(…さぁ、どうする、どうなる嵐?)




嵐「……」シュン…



嵐「…こ、こっち見るなよな!」



提督「はは、言われずとも見ないよ。

安心しろ」



提督(…衣擦れの音がする。…正直ガン見してしまいたいが、ここは確固たる意志を持って見ない)




嵐「…よし、もういいぜ」



提督「おう…って、また随分と大胆な格好だな。今度は寒くなるんじゃないか?」



嵐(軽装)「ハハ、そしたら司令に暖めてもらうか!」



嵐「…あ!い、今のは、その、変な意味じゃなくって!」///




提督「はいはい、大丈夫、わかってるさ」




嵐「…あー、そうか」



嵐「……」ガリガリ




提督(よし、いい調子だ。この調子でどんどんフラストレーションを貯めていこう)




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嵐「…コホン」



提督「……」




嵐「…」ムッ



嵐「司令…司令ったら!」



提督「ん?何だ?」



嵐「いや、何だって…その…!」



嵐「…俺のこの格好見て、何か…

その、ないのかよ?」



提督「……?」



嵐「…ッ。悪い、何でも無い」



提督「そうか。ならいいんだが…

なんか済まないな」



嵐「…何で司令が謝んだよ」



提督「いや…寒いんなら暖房をまたつけようか?」



嵐「大丈夫。ていうか、寒くなったらまた服を着るから」



提督「…それもそうか」



提督「…どうも様子が変だな、嵐。

具合が悪いならそこで仮眠するか?」



嵐「いや、そんな」



提督「遠慮はしなくていいぞ。仕事なら後で倍やってもらうからな」



嵐「それ聞いたら絶対仮眠なんかしねぇよ」




提督(…よし、今だ)




提督「まあまあ、それは冗談としてだ。

一休みくらいしたらどうだ?

気持ちがリフレッシュするかもしれないぞ」




提督「…ああ、ひょっとして俺が何かすると思ってたりするか?確かに、薄着だもんな」



嵐「…ッ」





提督「だがまあ安心しろ。

俺はお前をそういう目で見ちゃいないから」





嵐「あ……」




嵐「……」




嵐「そう、か」




提督「おおよ、何とも思ってない」




嵐「…」




提督「だから安心して–––」





嵐(そっか。そりゃそうだよな。

司令が俺をそういう目で見てる訳ないよな)



嵐(こんな女所帯なんだ、俺以外にも色んな人がいるし…)



嵐(…何よりこんな、俺みたいな半端者をそんな目で見るはずが無い。分かってたじゃねぇか、全く)




嵐「なあ、司れ–––」ポロポロ



提督「!?」



嵐「!?」



嵐「え?あれ、何でだ?悪ぃ、ちょっと待ってくれ。おかしいな…」



嵐「何でかな。急に、ぐすっ、涙が止まらなくなっちまって。寝不足かな?はは。すぐ止めっからさ、その」




嵐(…わかってるんだ。わかってたんだ。アレはあくまで夢だって。俺に都合の良いだけの夢なんだって…)



嵐(でも、何で涙が出るんだ。

何で、どうして踏ん切りが付かないんだ。

俺は諦めないといけないのに。

…いつも、諦めようとしてるのに)





提督「…」ギュッ




嵐「…ッ!ぐす、は、離せって!…離してよ!」



提督「……」




嵐「…ッ。何とか、言えよ…」




提督「…ごめんな。酷い事言って」




嵐「…やめろ」



嵐(俺を受け入れないでくれ)



提督「…お前に、無用な心配をかけたくなくって言ったんだ。だから」




嵐(…優しくされたら、尚更––)




提督「…泣くな、嵐。」




嵐「……うん」




嵐(…尚更、諦められないじゃないか…)




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嵐「…俺は、他の娘や姉さんたちみたいに『女の子』してない。身嗜みも、一人称だってそうだし、身体つきも…」



嵐「…それでも、何か期待してたんだ。

司令が俺を好きじゃないかなって。…俺の事が好きだって言ってくれないかなって…」



嵐(だから…だからこそ、俺は心の中で『あれ』を求めてた。司令を、愛する事。…司令から雌として愛される事)



嵐「でも、そんな事はあり得ない。司令が俺を選ぶなんて事は無い。…だからこの気持ちにもいつかケリをつけないと。…そう思ってたんだ」



嵐「…ごめん、困るよな。急にこんな事言われても」



提督「…いや、ありがとう。それを言う事は凄く大変だったし、辛かっただろ」




嵐「…あと、恥ずかしい」



提督「我慢しろ、俺もだ」




提督「…まあその。正直言ってだ。

さっきの何とも思ってないてのは強がりでな。さっき薄着になった時からなるだけ意識しないようにしてたというか…」



嵐「…」



提督「だからまあ…自己評価を高めろとか言うつもりは無いが。そんなに卑下する事は無いぞ?」



嵐「…そっか。そうだな。」




嵐「……でさ。その…」



提督「ん?」



嵐「…さっきの。告白みてぇなもんだと思うんだけど…えっと、返事を…」




提督「……」




嵐「……」





提督「…すまない、ちょっと保留を」




嵐「うわ、サイテー!」



提督「すまん…」




嵐「…まあいいよ!もう、決めたからな!」




提督「?何」





チュッ




提督「を…」




嵐「…もう勝手に折り合いをつけねぇ!

諦めないし、妥協しない!

姉さん達にも譲ったりしない!」



嵐「司令と、ケッコンする!」




提督「」




嵐「…へへ。恨むんなら自分を恨めよ?

誰にでも見境なく優しくすっからいけねぇんだからな。この女誑し」



提督「お、女誑しって…」




嵐「それじゃな!

…覚悟しとけよ、司令!」




嵐「俺は一途で、しつこいぞ!」






【嵐はその勢いのまま去っていった…】





提督「…じゃあなってお前…

秘書艦だろうに…」





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





明石「…それで?」




提督「そのまま呼び戻したよ。

仕事はまだ残ってたからな」



明石「鬼畜ですかアンタ」



提督「勢いで言った後に連れ戻したからな。

あの後はしおらしい事しおらしい事」



明石「…貴方、一人で仕事くらい終わらせられるでしょう。わざわざ呼び戻したのって…」



提督「はっは、何のことやら?」



明石(うわ、うざい)




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





明石「では、次どうなさるんです?」



提督「…」



明石「…?提督?次は」



提督「いや、聞こえてるよ。すまん、ちょっとな…」


提督「そろそろ足元を掬われそうな…

煮え湯を飲まされそうな…そんな気がして」



明石「まあ確かに因果応報の運命的にそうはなりそうですけど…じゃあ、そろそろやめときます?」



提督「馬鹿を言え。運命が俺を取り囲むってんなら俺は運命を欺く。続けるさ。今度は如月にやってやる」



明石「決め言葉のつもりかもですがサムいですよ、それ」



提督「うるせぇ」



明石「しかし如月ちゃんですか…どういったものを見せ…いや、ひょっとして」



明石「…うちの如月ちゃんて一度沈みかけた事ありましたよね?…まさか…」



提督「そのまさかさ」



明石「…うわぁ…」



提督「まあ流石に手心は加えるさ。そんなに酷いようにはしないからヘーキヘーキ」



明石「前そう言って全く容赦しなかったじゃないですか!」



提督「そんな前の事なんて覚えてないなぁ」



明石「いやいや、ちょっと前の事でしょう…ってあれ?」



提督「つべこべ言ってないでほら、やるぞ…ってまぁ一人でやるんだが」ガチャガチャ



明石「あ、ちょっと物思いに耽ってるあいだに…」



提督「ほいじゃ行きましょう。

レッツゴー!」ポチッ





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夢だった。それを見て直ぐに夢だと分かった。明晰夢だった。



(これは、いつもの…)



戦いがひと段落つき、ほんのちょっぴり。

ほんのすこしだけ油断をしてしまうのだ。


当然、逃れようとする。どんどんと迫り来る鉄火を逃れようとするが、叶わない。


何をしようが、自分は撃たれる。


撃たれ、討たれる。


動悸が激しくなり、震えが全身に回るが、その震えすらも徐々に出来なくなる。


身体が動かなくなる。血が通わなくなり、みるみる冷たくなっていくのを感じる。身体の中の空気が無くなり、どんどんと水に沈む。


口から塩水が入るその不愉快な冷たさ。苦しさ。目から、身体の穴から、海の水が入る激痛。


…いやだ。いやだ、いやだ!!



助けて。誰か。司令か–––






…ろ



……しろ!





提督「如月!?おい、しっかりしろ!!」



如月「!!…はぁ、はぁ…」



如月「…?司令官?

…助けに来てくれたのね…」



提督「?何を…

いや、そんな事より!お前大丈夫か!?」




【in 如月部屋】




如月「…あぁ、そっか、私…

…ごめんなさい。もう大丈夫よ、司令官」



提督「…魘されて泣いている人間が大丈夫なワケあるか」



如月「…ごめんなさい。心配させるつもりは無かったのに」



提督「なんで謝るんだ。…どうして…」



提督「…どうして頼ってくれない。

どうして泣いてた事について話してくれない。…慣れているからか?…慣れる程、悪夢を見ているのか?」



如月「…女の子から、そんな根掘り葉掘り聞くものじゃありませんよ、司令官?」



提督「いいや聞くね。…恨むなら、こんな男が上官になった運命を恨むんだな」


提督「…俺に出来る事なら何でもしよう。

だからどうか、一人で抱え込まんでくれ」



如月「…身体が冷えちゃった。

同衾してくれませんか?何て…」



提督「ああ、いいぞ」



如月「えっ」



提督「言ったろ、何でもするって。

隣失礼するぞ」



如月「……はい」




如月「…司令官」




ギュッ




如月「…怖かった、怖かった…!」


如月「忘れようと思ってても思い出しちゃって、ずっと忘れられないんじゃ無いかって。こわかった…!」


如月「…忘れられないで、どうしようも無い如月を見て、司令が失望するんじゃ無いかって怖かった…」



提督「…そんなわけ無いだろ」



如月「…ごめんなさい」



提督「必要以上に立ち入ったりはしない。

…ただ一つだけ、教えてくれ」



提督「君の為に、俺は何をしてやれる?」




如月「…じゃあ、一つだけ」


如月「『大丈夫』と言って欲しいんです」



提督「…」



如月「嘘になってしまうから言えない…なんて顔をしてますね」



如月「…でも、そんな事無いんです。…司令官がそう一言言ってくれれば、それはもう嘘なんかじゃ、無いんです」



提督「…そうか」



如月「ええ」




ギュッ




提督「…大丈夫。大丈夫だよ。

お前達は俺が守るから」




如月「…はい」


如月「…もう少し、このままで」



提督「気の済むまでしてるといいさ」



如月「…ありがとう、司令官。

愛してるわ」



提督「…ああ。」





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





明石「随分と迫真の演技でしたね。

自分が夢を見せた癖に」


明石「というか如月ちゃんも夢うつつだったからか全く言及しなかったですけど何で部屋に行ってたんですか?」



提督「…」



明石「?提督?」



提督「いやな、俺、その…夢が操作される前日はその娘の部屋を見るって習慣をつけてて」



明石「…えぇ…」



提督「ん、どうした」



明石「いや、なんか…猟奇殺人犯のエピソードみたいな事言うのやめてほしいんですが」



提督「…で、部屋を見回ったら部屋の外までうめき声が聞こえて来てな。ついつい気にして入ってしまったという訳だ」



明石「は、はあ。…ん?前日って事は、ひょっとしてまだ夢を…」



提督「…ああ。如月に悪夢見せるの、今回中止だ。ちゅーし」カチャカチャ



明石「…成る程、演技じゃ無かったんですね…」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




提督「…ふむ…俺はウチの娘が苦悩してる姿を見たいが…ガチで辛くなってるところを見たいワケではないんだよなぁ…」



明石「…何をしみじみと言ってるんです?」




提督「いや、何か思ってな」




明石「そうですか…

ていうかそれ一行で矛盾してません?」



提督「いーや、してないね。

俺が言うんだ、間違いない」



明石(傲慢な事この上ない…)



提督「…よし決めた、次は村雨だな」



明石「…まーた駆逐艦ですか」



提督「またとはなんだ、またとは。

いいだろ別に」



明石「いやまあ別にいいんですが…

ええと、理由は?」



提督「微妙に重い感じの娘だからな。色々と」



明石「変態臭い」



提督「不敬罪に処すぞ。

…まあいい。重すぎず、かつ軽すぎず。今の心境には持ってこいってところだから。理由はそんなところだな」



提督「で、夢の内容はまたのお楽しみにしておくって事で…」



提督「よし、それでは、Go!」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





村雨(…あれ?ここ、何処だろ。浜辺?)



村雨(ええっと… 他に誰か…

!あのシルエットは…!)




村雨『提督ー!おーい!』



提督『 –––––– 』



村雨『…ん?何て言った?提督ー!

もっと大きな声で!』



村雨(…あれ?村雨、いつのまにこんなに提督の近くに来てたっけ)




提督『 ––––…』




村雨『…?えっと…提督?

村雨、何か機嫌損ねちゃったかな?

それとも、イタズラか何か…』




提督『…–––– 』 サラ…



村雨『……!?』


村雨『て、ていと…!』




提督『……』サラサラ…





サラ…



村雨『…あれ?提督…?』



村雨『…提督?』



村雨(…?何が、起きたの?)



村雨(…これが。この手の中にあるのが『提督』?こんな、砂が?このまま消えて…?)



村雨(…いや、違う、こんな…こんなの、違う。違うはずだ。だって、提督はずっと ––)




村雨『あはは…や、やだなー。こんなので村雨が騙される訳がないじゃない。ほら、隠れないで出てきてよ…!」








村雨『…ねえ提督、どこ?もう、冗談はやめてよ。隠れないで、ねえ。…お願いだから、お願いだから…!』









村雨『…ッ!謝るから…何か、嫌な思いさせてたなら、謝るからッ!だから、だからッ!

お願い、嘘だって言ってよ提督!!』



村雨『はぁっ…はぁっ…!』









村雨『…うう…う…!』



村雨『…ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい…提督、提督…ああ、あ…』






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–






提督(さて、村雨には目の前で俺が消える悪夢を見せた。夢特有のよくわからないシチュエーションでな)



提督(で、俺はいつも通りに朝、ここに…執務室に居る…んだが…)




村雨「…」



提督「…ええと。そろそろ…」



村雨「…」



提督(…どうやら俺が来るずっと前から待っていたらしく、俺が部屋に入った瞬間立ち上がったと思ったら急に抱きついてきて…)



提督「…な。何があったかぐらいは話してくれてもいいだろ?だから、せめて顔を上げてくれないか」



村雨「…」フルフル



提督(困ったな…まあ何があったかってのは十二分に理解してるんだが…このまんまじゃちょっとした仕事すら出来ない)



提督「わかった。取り敢えず何も聞かない。だから、何か話す気になったら…良かったらだが…話してくれ」



村雨「…ごめん」



提督「…?」



村雨「迷惑だって、面倒くさいって事…自分でも分かってる。…でも、それでも、もう少しこうさせて欲しいの」



提督「ああ、村雨の気が済むまで付き合う。

俺はお前たちの『提督』だからな」



提督「…だから、なんだ。…あまり泣くな」




村雨「…ひっく……だって…

急に怖くなっちゃって…」



提督「何がそんなに怖いんだ?」



村雨「…ぐすっ。

今、村雨に優しくしてる提督は明日になったら居なくなるんじゃないかって…」



提督「…」



村雨「…これまでずっと考えないようにしてた事が…明日になっても、大事な人がそこで微笑んでる確証は無いって。それが頭から離れないんです」


村雨「明日にはこの艦隊の仲間も、白露型の皆も、提督も。村雨の手が届かない場所に居るかもしれないって…」



提督「…ずっと、考えないようにしてたのか。ずっと、心の奥にそんな考えがあったんだな」



村雨「…うん。考えてもキリが無いし、考えてると震えが止まらないから、忘れてた…ううん、忘れた気になってた…なのに」



提督「…忘れるなんて悲しい事を言うな。

それは、忘れちゃいけないものだよ村雨」



村雨「…こんなに辛いなら、こんな感情忘れちゃいたい。そんな細やかな我儘もダメなの?提督は許してくれない?」



提督「ああ、駄目だ。

…喪う事を恐がる事は当然の事だ。だからこそ、それを受け止めなきゃいけない。」



村雨「そんな綺麗事、聴きたくないッ!!」



提督「…」




村雨「…村雨は、ずっと提督と一緒に居たいよ!!梅雨が来たら一緒にてるてる坊主を作って。バレンタインのチョコを送って!次第に暖かくなる気候に春うららを感じる…」



村雨「そんな!…そんな普通の時間を、提督と、姉妹達と、皆と!ずっとずっと過ごしてたい!!」


村雨「それが無くなる事を怖がるな、なんて、村雨には出来ない…!」



提督「…いいか。俺はいつか死ぬ」



村雨「!!」



提督「寿命ともいかないだろう、職業柄。人知れずか、凄惨にか。いづれにせよ、多分お前たちより早く死ぬ事になる」




村雨「…やめて…!」




提督「…人間は限られた時間の中に生きるものだ。…だから死を受け入れろなんてカルトじみた事は言わん」


提督「でも、だからこそ限られた生で、何かと繋がろうとする。きっとそれが『人』なんだ」



村雨「…」



提督「恐れを忘れちゃいけない。忘れたら、その繋がりすら手放してしまう事になる」



提督「…それに。恐れが大きいほど、皆への想いも大きいんだって、保証してくれてるとも思えるだろう?」



村雨「…それでも、ヤだよ。

忘れないと、村雨は何も出来ない。今だって、怖くて怖くて震えが止まらないの」



提督「それなら俺を頼れ。忘れさせてはやれないが、和らげるくらいならできる。…お前が背負いきれない想いの分は俺が代わりに背負ってやる」




村雨「…ううぅ…提督…提督…!」




提督「…だから、気が済むまでこうしてるといい。顔も、まだあげなくていい」



村雨「…うん。…でも」



提督「…ん?」



村雨「…『お前たちより早く死ぬ』って所だけは撤回してもらうわ。村雨が、ぜーったいそんな事させないんだからね」



提督「…そうか。そいつは頼もしい」





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–






明石「…ずっと、考えてたんですね。自分の大切な人が皆いなくなってしまったら…って。それを意識的にトラウマとするくらい」



明石「…今回、何処かの誰かさんがそんなトラウマをほじくり返してましたが」



提督「ち、違… 俺、そんなつもりじゃ…」



明石「何を被害者ぶってるんですか」



提督「だって…もっと『提督いなくならないでー』くらいの微笑ましさをイメージしての悪夢だったのに…こんな心の傷に触れようとは思ってなかったのに…」



提督「…ていうか最近俺カウンセラーみたいになってないか?」



明石「自作自演って事を除けばですがね」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–




提督「…そろそろ、さ」



明石「?」



提督「そろそろ駆逐艦以外の娘に使ってみようと思う」



明石「あぁ、何かと思えばそんな事ですか…

まあ、そこらの選択はご自由になさってどうぞ」


明石「…というか既に何回か駆逐艦じゃない娘にやってるじゃないですか。何を一大決心みたいに言ってるんです」



提督「そこらはニュアンスだよニュアンス。

最近やってなかったのは事実だしな。

しかしそうだな…」ガチャガチャ



提督「…うん、千代田。行ってみようかな」



明石「千代田ちゃんですか。これまた唐突というか突拍子も無いというか…

…見せる悪夢の内容は?」



提督「千歳と俺がケッコンする夢なんてのはどうだ。慕ってる姉が俺に盗られる…なんてな。どうだ、かなり面白い事になりそうじゃないか?」



明石「…それ、提督にヘイトが向いちゃったりしませんか?いや夢と割り切ってくれるかもしれませんけど…」



提督「…」



提督「…ま、まあ、流石に大丈夫だろ。

危害を与えてくるような事をする娘ではない筈だし…」




提督「…中止はもう出来ないし…」



明石「…ああ、既にもう…」



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(ああ、幸せだな。)



私の愛する千歳姉が。

敬愛し、想いを馳せ、ただただ好きである姉が、あんなにも幸せそうな顔をしている。

我らが提督の隣で。頬を赤らめ、口角を上げて嬉しそうに、楽しそうに。


…それを見つめる事は私の願いだった筈だ。

悲願、切なる思いだった筈。



なのにどうして涙が溢れるんだろう。

どうして滂沱が止まらないのだろう。


嬉しいから?そう。きっとそうだ。

これは嬉し涙であって、何かを悔しんでのものなんかでは決して無い。


その目が千歳姉ではなく、その隣の男を追うのも、他意があってでは無いのだ。



ふと。目が合い、二人がこちらに来る。


微笑んで、私の名を呼んでくれる。

千代田、と。


姉と提督が、二人が微笑みかける。



千代田。

千代田。



私の視線が向くのは…




千代田。



ああ、その顔で微笑みかけないで。




千代田。



千代田!




「千代田!」





千代田「ッ!は、はい!?」



提督「…おい、大丈夫か?

まさか体調不良とかじゃあないだろうな」



千代田「…ごめんなさい、少しだけ呆けちゃってた。体調を崩してる訳じゃないから」



提督「…そうか。それじゃ、ぼーっとするのは仕事を終えてからにしてくれ」



千代田「…はい。ごめんなさい、提督」



提督「いやまあ気にしてないが…

どうしたんだ、少し変だぞ?」



千代田「ううん、本当に大丈夫。

…心配してくれてありがとう」



提督「なら良いんだが」





失態だ。まさか見た夢にうつつを抜かして仕事に手がつかなくなる、なんて。



ふと、提督を見る。



仕事は、出来る。流石にこの短い期間で成り上がっただけある。


顔立ちも…まあ、悪くない。

鼻はそこそこ高いし目もぱっちりしてる。

服のセンスは…軍服だから解らないけど…


間違いなく変人だ。…まあ、変人じゃなきゃこんなに多くの個性的な娘たちと仲良くなんて出来ないんだろうけど。


総合的に、千歳姉ぇがもし結ばれても、提督は千歳姉ぇを幸せにしてくれると思う。



じゃあ何であの夢を見て、私はあんなにも嫌な気分になったんだろう。



提督が気に入らないから?


いや、そんな事はない。確かに変な人ではあるけど心根も優しく誰かを思いやれるとても良い人だ。悪し様に思うはずは無い。


つくづく不思議だ、何故こんなに…

こんなにも、あの夢のことを思うともやもやするのか…






––– 判っテるクセに






千代田「–––ッ!!」ガタッ



提督「…!?どうした!?」



千代田「…!ううん、何でも…」



提督「何でも無い訳無いだろう。

…鏡を見ろ。真っ青だぞ」



千代田「…え?」



提督「…そろそろ良い時間だ。休憩にしよう。

待ってろ、茶淹れてくる」



千代田「……」




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





提督「…うん、だいぶ顔色は良くなって来たみたいだな」



千代田「…ごめんなさい、迷惑かけて」



提督「まあ、お前らの体調管理も俺の仕事だからな。…で?」



千代田「…『で?』って?」



提督「…何か抱え込んでるんじゃないのか。

トラウマでもフラッシュバックしたか?

それとも…人間関係とかか?」



千代田「…」



千代田「…変な声が聞こえるの。

チょっと前から、頭に響くような」



提督「…!それは…」



千代田「ただの幻聴なら良いんだけど、どうもその声が私の心の外に出ていない部分を代弁してるみたいな…そんな気がして…」



千代田「…提督。私、おかしいノかな?」



提督「……それは…」



千代田「……」



提督「……」




提督「…わからん」



千代田「えぇー…」



提督「イヤ、そりゃあ俺にだって分からん事はある…ていうか分からない事ばかりだよ、俺なんて。特にお前らの事はな」



千代田「…じゃあ何で聞いたのよ?

話すだけ、損だったじゃない」



提督「いやあ、損じゃないさ。

…ほら、顔色が良くなった」



千代田「…え?」



提督「…確かに俺はお前らの事分からないけどさ、これでも分かろうとしてるんだ。その為に話をしてるんだからな」


提督「それに、悩みってのは話すだけでも気が楽になったりするもんだ。こういう民間療法的なのは結構、馬鹿にできないぞ?」