2017-07-11 23:22:52 更新

概要

 鎮守で色々をしてくれる妖精さんも昔はいなかった。妖精さんはどういう経緯で鎮守府に来たのか?彼等が来ないと行けないようなことにした事件とは一体何なのだろうか?そんな話。


前書き

 鎮守府は昔、妖精さんがいなかった。では妖精さんが鎮守府に来ないといけないようにした事件とは一体何なのだろうか?



「妖精さーん、これ直してー!」


「妖精さーん、あれ作ってー!」


 現在、鎮守府ではこんな声が飛び交っている。だが、頼めば何でもやってくれる万能な妖精さんも昔はいなかった。



 以前の鎮守府は、提督、百人を越える艦娘、そして艤装の整備などなどをするゴリゴリマッチョの男連中で構成されていた。


「整備員さーん、これ直してー!」


「おうよ!」


「整備員さーん、あれ作ってー!」


「おう!」


 見目麗しい艦娘たちとゴリゴリマッチョの男たち。何かもう、カオスだった。

  

「お疲れ様でーす」


「「「おー!瑞鳳ちゃんだ!」」」


 そんな鎮守府の男陣に特に人気があったのは瑞鳳、この小柄な軽空母だった。


「卵焼き、食べりゅ?」


「「「食べりゅゥゥゥウウウウ!!!」」」


 毎日あるこのやり取りだが、やる度に鎮守府に地震が起きたものだ。


 そして、アイドルのような存在にはストーカーがつきものだったりする。瑞鳳も例外ではなかった。


「…提督、相談があるんだけど」


「何だ?」


「何か最近視線を感じるんだよね…」


「どんな?」


「何か、ヤラシぃやつ…」


「…気のせいだろ」


「そうかなぁ」


 これがいけなかった。もし此処で、此処で彼女の一大事に気づけていれば…。


 とにかく何も気にすることなくその日は、というかその日に限らず相談がある度に何もすることなく終わった。



 俺は彼女が本当に悩んでいることに、いつまでも気づけないでいた。

 




 そして事件はおきた。


「瑞鳳、今夜執務室に来てくれ。昼の件を片付けておきたい」


「ん、わかった」


 この日の昼、俺は秘書艦だった彼女を部屋へ来るように言っていたのだが、


「…」


 瑞鳳は来ない。


 仕方なく俺は外へ探しに出る。


「瑞鳳は何処に行った?」


 道行く他の艦娘に尋ねる。


「さぁ、知りませんよ?」


「そうか…」


 嫌な予感がする。理由も告げずに彼女が遅刻するなんて…。


「キャーーーーーーーッ!!!」


 悲鳴。胸騒ぎがする。俺は外へと駆け出した。




「おいっ、瑞鳳!どこだ!」


「ヤメテ!誰か、誰か助けてぇ!」


 やがて、大柄な影に覆いかぶさられる小柄な少女を見つける。


「おい!」


 大声で怒鳴りつけると、大きな方の影が全力で立ち去っていった。慌てて近寄ると、


「来ないで!」


 悲鳴にも似た金切り声で静止の声が掛かる。


「瑞鳳、なのか?」


「…うん」


 影でよくは見えないが、服の状態が明らかにおかしい。俺は上着を脱いで、それを投げて寄越した。


「着ろ」


「あ、ありがとう…」


 聞こえてくる声に次第に涙声が混ざる。


「落ち着いたら出てこい」


「うん…」


 そして、俺の前に姿を現した彼女は髪が乱れ、擦り傷が見える範囲でも数十個はあり、顔は赤く腫れていた。


 痛々し過ぎる姿の彼女は目を伏せている。


「か、帰るか」


 どう声を掛けたらいいかわからない。わからなかった俺は取り敢えずこう言う。


「うん…」


 鎮守府へと歩き出す。


「…ッ!」


 少しも歩かない内に瑞鳳はしゃがみこんでしまった。どうやら足も悪くしているようだ。


「おぶされ」


「…」


 そう言うので精一杯だった。




 鎮守府が近づくにつれ、握り締めた彼女の手の力が強まっていく。


「大丈夫か?」


「うん」


 一歩一歩踏み出す度に尋ねる。


「大丈夫か?」


「…うん」


 次第に返事は遅くなる。


「大丈夫か?」


「…」


 そして返事はなくなった。


 俺は歩き続ける。


 


 鎮守府に着いた。すると


「ねぇ…」


 不意に彼女から声が掛かる。


「何だ?」


「…」


 返事は無い。


「無理に話さなくていい。取り敢えず今日は寝なさい。今、祥鳳呼ぶから待っててくれ」


 俺は答える。


「違う」


 瑞鳳が食い気味に答える。


「…何がだ?」


「違うの…。とにかく祥鳳ねぇは呼ばないで…」


「構わないが、一体どうした?」


 瑞鳳は押し黙る。


「…」


 俺は待った。彼女が答えるのをただひたすらに…。



 長い時間が過ぎる。



 やがて瑞鳳は俺の背中に顔を埋め、


「…して、上塗りを、して。提督で教室の事を忘れさせて…」


 告白紛いの事を言う。


 震える彼女を、意を決したように、何かにすがるように握る力を強めた彼女を背中に感じ、「でも」などと言うのは野暮だと思った。


「ああ」


 そう一言いって、俺の部屋へ向かう。




「風呂、入るか?」


「シャワーでいい」


 部屋での会話は最低限必要なものだけだった。


「出たよ」


「ああ」


 俺も汗を流す。


 戻ると俺の足音に反応して瑞鳳がビクッと跳ね上がる。振り返った彼女の目は涙で潤んでいた。一人が怖かったのか、足音が怖かったのか、俺にはわからない。だが少し申し訳ない気持ちになる。


「…」


 黙って彼女を腕に抱くとキスをした。それに答えるように彼女から口に舌を入れられる。


「ん、んあッ…」


 淫靡な夜が始まる。


「てい、とく…、電気、消して…」


 暗がりで互いの体液が混ざり合う。


「ていとく、ていとくぅ…」


 嫌な思い出を消すように、瑞鳳は激しく俺を求める。


「ん、んん…。あっ、んあ、あ…」


 俺たちは一つになった。




「ていとく、いる?」


「ああ…」


 彼女は言う。


「ていとく、いる?」


「ああ…」


 彼女は尋ねる。


「ていとく、」


「何だ?」


「手、握って」


「ああ」


 彼女は求める。


「ていとく、いる?」


「ああ、ずっと側にいるよ」


 俺たちは夫婦になった。





 この事件の犯人はゴリゴリマッチョの整備員の一人であった。憲兵が言うには「瑞鳳好き過ぎて、見てたらムラムラが止まらなくなった」そうだ。


 そして、大本営はこの事件を受け、艦娘と性処理が不十分な男が同じ空間に居続けるのは危険があるとして対応策がこうじた。それが妖精、今この鎮守府を支えている彼らなのである。


「妖精さーん、これ直してー!」


「妖精さーん、あれ作ってー!」


 今日も鎮守府に声が響く。


後書き

 読んでくださってありがとうございます。これからも頑張ります。


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伊10さんから
2017-07-12 23:26:18

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