2018-08-20 21:19:10 更新

概要

古鷹×翔鶴SS
古鷹さんの初恋物語


前書き

古鷹×翔鶴というあまり見ないカップリングを描いてみました。
甘酸っぱい物語をお楽しみください。


プロローグ 芽生え

耳を劈くような爆音とともにに破裂した砲弾が私の艤装を砕き、肉を抉っていく。でも、もう痛みは感じない…というよりも、もうほとんど身体の感覚がない…。かろうじて立っていることはわかるけど…もういつ倒れてもおかしくない。

顔を上げると十数隻の深海棲艦達がゆっくりとこちらに照準を合わせているのが見えた。


もう抵抗する力は残ってない…どうやら、私はここまでのようだ。

…私は…ちゃんと足止めできたでしょうか…? 先に逃がした皆さんが無事なら…それでいいのですが…





…でも…やっぱ、り……沈むのは…怖い…





「………加古……み、んな…………死にた、くない…よ…………た…すけ、て…」




























「第一次攻撃隊、発艦始め!!」


突然響き渡った声とともに、私の背後から何かが深海棲艦に向かって飛んでいった。そして、凄まじい轟音が響くと同時に深海棲艦達が黒煙を上げ始める。


間違いなくあれは…味方の艦載機。…でも、一体誰が…?


するとその時、1人の艦娘が私の前に舞い降りた。紅い袴に白の弓道着。そして、この血腥い戦場とは対照的な綺麗に輝く銀色の長髪…

私は無意識のうちにその人の名を口にしていた。


「…翔、鶴…さん…?」


「古鷹さん、助けに来るのが遅なってしまってすみません…でも、もう大丈夫です。貴女を沈めさせはしません」


その言葉に安心したのか、私はそこで気を失ってしまった。暗くなる視界の中、私の目には敵艦に向けて艦載機を放つ翔鶴さんの凛々しい横顔がはっきりと映っていた。






私が次に目覚めたのは鎮守府のベッドの上だった。私が目覚めた途端、傍らにいた加古が私に飛びつき、1人で無茶した事への怒りや助かってよかったといったことを早口にぶつけてきた。

本当に心配をかけてしまった…と反省しつつ、私は1つ気がかりだったことを加古に訊いてみた。


「…ねぇ、加古。あの後…どうなったの? 翔鶴さんは…無事?」


「ん、ああ…翔鶴さんなら大丈夫だ。すごいよな…あたし達が駆けつけた時には敵をほぼ殲滅してたんだ」


あれだけの数の深海棲艦をたった1人で…?

少し前に改装して装甲空母になったとは聞いていたけど、そんなに強くなっているんだ…


「…まぁ、それでも中破ほどの損傷は受けてたんだけどな。それでもあの人は自分の怪我よりもずっと古鷹のことを気にかけてたよ」


「翔鶴さんが…私のことを…?」


その時、私の脳裏にあの時の翔鶴さんの姿が鮮明に浮かび上がった。


沈みかけて恐怖に震えていた心を落ちつかせてくれた、あの優しい微笑み…そして、敵に向かって見せた凛々しい横顔…



その瞬間、私の胸がトクンと大きく高鳴り、体が熱くなるのを感じた。


「ん? どうした、古鷹? …なんか、顔赤いけど?」


「…っ!? な、何でもない!」


そう言って私は慌てて布団を引き上げ顔を隠した。それでも、顔が熱くなるのを止められない。



しばらくの間そのままの状態でいると、加古が思い出したように声を上げた。


「あっ、そうだ! 古鷹が目を覚ましたら報告してくれって提督に頼まれてたんだ…ちょっと行ってくる!」


そう言って、加古はドタバタと大きな足音をたてながら部屋を出ていった。

足音が聞こえなくなった頃、私はゆっくりと起き上がると胸に手を当てて、気持ちを落ち着けるように大きく息を吐き出した。


…なんでだろう…翔鶴さんのことを思う度に胸のドキドキが大きくなる……これって、もしかして…






「古鷹さん」


「ひゃいっ!!!?」


突然名前を呼ばれ、思わず変な声が出てしまった。すぐに顔を上げ、声のした方に顔を向けるとすぐ側に翔鶴さんが立っていた。


「勝手に入ってしまいすみません、起き上がっているのが見えたものですから…体はもう大丈夫ですか?」


「あ…は、はぃ…おか、げさまで…」


私は俯きながら消え入りそうな声でそう答えた。

うまく言葉が出てこない…というよりまず、翔鶴さんの顔が全然見られない…どうしよう…どうしよう…!



「…古鷹さん、ちょっといいですか?」


「ふぇっ? ………ふぁあっ!!?」


またしても変な声が出てしまった。

それもそのはず、翔鶴さんは私の頬に手を添えて顔を上げさせると自分のおでこを私のおでこにくっつけてきたのだ。

ち、近い! 顔が、近いですよ! 翔鶴さん!! 突然の出来事に私の心はもうパニック状態。し、心臓が飛び出してしまいそう…!


「…うーん、やっぱり少し熱いですね。顔も赤いですし…本当に大丈夫ですか?」


そんな私のことをつゆ知らず、翔鶴さんは私に心配そうな顔を見せる。その表情から私のことを本気で心配してくれているのがしっかりと伝わってくる。

…でも、翔鶴さんにはそんな顔してほしくない…そう思った。


「だ、大丈夫です! さっきまでこの部屋が暑かっただけなので…本当に、風邪とかではないです」


「そう…ですか? それならいいのですが…あまり無理をしてはいけませんよ?」


翔鶴さんはそう私を窘めつつ、ふわりと優しく微笑んだ。その瞬間、また私の胸がトクンと大きく波打った。

…ああ、そっか…やっぱり、そうなんだ。

さっきまでは確信が持てなかったけど…翔鶴さんと会った今なら、はっきりわかる。



私は…翔鶴さんのことをどうしようもなく好きになってしまった…翔鶴さんに恋をしてしまったんだ、と。






第一章 協力者

まだ少し肌寒さの残る3月の下旬、怪我から復帰した私は第三艦隊の一員として鎮守府近海の哨戒任務に当たっていた。


そんなある日、いつものように任務を終えて鎮守府に帰投する途中、私は小さくため息をついた。

理由は簡単。私が翔鶴さんへの恋心を自覚したあの日からもうすぐ一ヶ月も経つというのに…あの日以来、進展どころか翔鶴さんとまともに会えてすらいない日々が続いている。

というのも、翔鶴さんは第一線で活躍する第一艦隊所属。ただでさえ忙しい身なのに、空いた時間を見つけては日々鍛練を重ねていると聞いている。


そんな状況だから、会える訳もないのは分かっている…けど…



……できれば、会いたい。







「どうしたの、古鷹? ため息なんかついちゃってさ」


「え? あっ、瑞鶴さん…」


声をかけてきたのは、今回の任務旗艦の瑞鶴さんだった。物珍しげな視線を向ける瑞鶴さんに私はぎこちない笑みを返した。


「いろいろ、ありまして…あんまり大したことじゃないんですけど…」


「ふーん…もしかしてさぁ、翔鶴姉のこと?」


「ふぇっ!!??」


突然翔鶴さんの名前を出されて思わず変な声が出てしまった。それと同時にまた顔中が熱くなる。

そんな私の様子を見て、瑞鶴さんはさも可笑しそうに笑いだした。


「やっぱり。さっきの古鷹、完全に恋する乙女の雰囲気だったし…それにしても、古鷹が翔鶴姉をね…」


「……うぅ…」


…顔から火が出そうなほど恥ずかしい。

こんな簡単に気づかれるなんて…私ってそんなにわかりやすいのだろうか…


「…でも大丈夫? 翔鶴姉、その手のことに関してはかなーり鈍感だし…古鷹の方から積極的にいかないと絶対に気づいてもらえないよ?」


「そ、それは…分かっています。でも私、誰かを好きになるなんて初めてで…どうしたらいいか…」


仮に今ここで翔鶴さんに会ったとしても、挨拶をすることが精一杯でそれ以上のことはできないと思う。そういう数少ないチャンスをものにしないといけないのに…本当にどうしたらいいんだろう…


「…よし、わかった! 古鷹、私も協力してあげる!」


「………ふぇ?」


「だから、私が古鷹と翔鶴姉の間を取り持ってあげるって言ってるの!」


「な、なんで…」


「…実はね、翔鶴姉、最近訓練ばっかりで食事や寝る時以外全然休んでないんだ。私が休むよう言っても、大丈夫の一点張りで…だから、翔鶴姉に恋人でもできれば、翔鶴姉も少しは訓練以外に時間を使ってくれるんじゃないかなって。古鷹だったら私も安心して任せられるし」


そう言いながら照れくさそうに笑う瑞鶴さんを見て、瑞鶴さんが本当に翔鶴さんのことを思っていることを改めて実感した。

私としても、瑞鶴さんの協力はとても心強い。


「わかりました…よろしくお願いします、瑞鶴さん」


「任せて! そっちの経験があるわけじゃないけど…大丈夫! 大舟に乗ったつもりでいなさい!」



…本当に大丈夫かな…?






第二章 儚いモノ

…どうして…どうしてこうなったの…? 瑞鶴さん、今日は『予行練習』のはずじゃなかったんですか…!?

混乱する頭をなんとか落ち着けながら、私は目の前にいる人に視線を向けた。すると彼女は、私に優しい笑みを返してくれた。


「では、行きましょうか。今日はよろしくお願いしますね、古鷹さん」


「………は、はい…お願い、します………翔鶴さん」


紅くなった顔を隠すため少し俯き気味になりながら、消え入りそうな声でそう答えた私は改めて思った。




………本当に…どうしてこうなったんだろう…?











「デ、デート!?」


時は遡って3日前。瑞鶴さんの口から出たその言葉に私は思わず驚きの声を上げた。


「そう! 翔鶴姉と恋仲になりたいんだったら、まずそこから入んないと」


「いや…でも、いきなりデートって…ハードル高すぎますよぉ…」


「甘い甘い! そんな甘いこと言ってたら、一生、翔鶴姉に思いを伝えられないよ?」


「………うぅ…でも…」


確かに翔鶴さんにはこの思いを伝えたい…でも、いきなりデートなんて…私にはとても…

そんな私を見て、瑞鶴さんはため息をつきながら「しょうがないなぁ…」と声を漏らした。


「…じゃあさ、予行練習しようよ。確か古鷹、明々後日休みだったよね? 私が付き合ってあげるからさ! ね?」


練習…練習かぁ…まあ、それくらいなら…大丈夫かな。それに早かれ遅かれ、翔鶴さんとデートすることがあるんだろうし…


「わ、わかりましたよ…よろしくお願いします」


「よし、決まり! じゃあ、当日までにデートプランをしっかり組んでおいて。…あっ、それと当日は本番さながらの格好で来てよ? じゃないと予行練習にならないからね」


そう言うと瑞鶴さんはぐっと親指を立て、立ち去って行った。

私はそれを見送った後、自分の部屋でデートするのに良さそうな場所を調べ上げ、馴れないながらもなんとか予行練習の前日にデートプランを立てることができた。




そして予行練習当日。

事前に瑞鶴さんから『部屋まで迎えに行くから待ってて』と言われていた私は身仕度を整え、自分の部屋で瑞鶴さんを待っていた。

…しかし、約束の時間を過ぎても瑞鶴さんが訪ねてこない。


どうしたんだろう…何かあったのかな…?


そう思った時、コンコンとドアがノックされた。どうやら、少し遅くなっただけみたいだ。


「もう…遅いですよ、瑞鶴さん! 準備にそんな時間が……………ふぇっ?」


瑞鶴さんへの不満を漏らしながらドアを開けた私は、驚きのあまり変な声を出してしまった。


ドアの前にいたのは瑞鶴さんではなく…私服姿の翔鶴さんだった。


「おはようございます、古鷹さん。…ごめんなさい、瑞鶴ったら今朝まで演習の予定が入ってることをすっかり忘れていたみたいで…それで、今日は私が瑞鶴の代わりに御一緒することになりました」



そして、話は冒頭へと戻る…











そんなこんなで現在、私と翔鶴さんは鎮守府近くの繁華街に向かうバスの座席に並んで座っている。

今日はなし崩し的に翔鶴さんと一緒に過ごすことになってしまった…確かに準備は万全にしてきたつもりだけど…本当に、大丈夫かなぁ…


そんな心配をしつつ、私は隣で外の景色を眺めている翔鶴さんの方に顔を向ける。

鎮守府では紅白の弓道着姿しか見た事がなかったが、今の翔鶴さんは白い丈長のワンピースに袖を通し、その上に薄桃色のカーディガンを羽織って、頭にはつば広帽を被っている…文字通り絵になる美しさで、私はしばらくの間、その姿に見とれてしまった。


「…? 古鷹さん、どうかしましたか?」


私の視線に気がついたのか、不意に翔鶴さんがこちらへ振り向き、そう尋ねてくる。


「あっ、いえ、あの…その服、とてもよく似合ってるなぁ…と思ったもので」


「本当ですか? ありがとうございます。この服は私も気に入ってて…こうして出かける時はよく着ているんですよ」


翔鶴さんはそう言って、嬉しそうに頬を緩める。その姿を見た瞬間、私の胸がトクンと大きく高鳴り、じんわりと体が熱くなってくる。

…お、落ち着け、私。ここで取り乱したら絶対変に思われる…!


「そう、なんですか。…でも、気に入っている服なのに普段は着ないんですか?」


「ええ、普段は鍛錬で忙しいですし…それに、いつ出動要請があるか、わかりませんから」


そう言って、翔鶴さんは車窓に広がる海をじっと見据えた。 窓ガラスに映ったその顔は第一艦隊の名に恥じないほど真剣でとても凛々しいものだった。…それなのに、いや、だからこそ私はとても気になってしまった。

……翔鶴さん、貴女はどうして…そんな悲しそうな目をしているんですか…?

その疑問を口にしようとした時、車内にアナウンスが響いた。



───まもなく、静浜町、静浜町。お降りの方は御手元のブザーで…




「あら、もう着くみたいですね。降りる準備をしましょうか」


「えっ…あっ、はい…そう、ですね」


アナウンスを聞いて、翔鶴さんが窓の外に向けていた顔を再びこちらに戻す。その時には、先程の雰囲気が嘘のように消えていた。

私は口に出かけた疑問を無理矢理飲み込み、近くにあった降車を報せるブザーを押した。


後書き

ゆっくりと更新していきます(´ω`)


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2017-11-06 00:38:56

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2018-08-18 00:49:05

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2018-01-04 18:28:47

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2017-11-18 00:10:37

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2017-11-06 00:38:08

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2017-11-06 00:33:37

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