2017-09-13 19:51:36 更新

概要

前回、大湊との演習の予定をウッカリ忘れていた呉鎮守府の紅羽提督は、帰ってきた加賀、瑞鶴、武蔵、金剛、北上、木曽を連れて大湊へと向かう。しかし、そこでは艦娘が提督を虐待しているありえない光景があった。そんな大湊の状況を変えようと、呉鎮守府一行は原因を探るため奮闘する。しかし、そんな中、海軍の上層部による黒い陰謀が渦巻き、彼女たちを襲う。


前書き

初めまして、前回から引き続き2作目となりました。yanmiです。
相変わらず更新速度は亀並みですが、今回も読んでいただければ幸いです。
なお、今回から、書き方を少し変更いたします。前回よりは見やすいのかな?とは思います……はい。
それと、今回も作者の勝手な解釈・想像が沢山ございますので、苦手な方・許せない方はどうかブラウザバックを。
それでも構わない・別に気にしないという方は是非是非、ご観覧ください。






[ prologue: 暴力 ]








いつからだろう……彼女たちが私に対して暴力を振るうようになったのは…………







「 おらおらおらおらぁ!!! 天龍様必殺コンボだぁ!!! 」






「 カハっ………も、も”う”や”め” 」






辛うじて紡いだ言葉さえも吐かせまいと拳が腹に突き刺さる。

只でさえ人以上の力を持っているのに、さらに日々の鍛錬を欠かさないでいる彼女たちの力だ。

殴られでもすれば内臓が破裂する。







「 『物』が喋んじゃねぇよ!! カスが!!!! 」






もう随分と抉られた私のお腹は、彼女たちの拳の形に穴が空いている。

そこからドクドクと心臓と脈の鼓動に合わせて血が流れ出ると、辺りは一気に生臭くなる。







「 ちょっと? この辺、何か匂いますわ? ねぇ? もがミン? 」






最上「 もう、天龍も摩耶ももっと別のところでやってよ! 」






天龍「 悪りぃ悪りぃ! ちっと溜まってたもんでな! 」






摩耶「 クソが! コレの所為で服が穢れたじゃねぇか 」






そう言いながら私の血で汚れた自分の服を脱ぎ、持ってきていたのであろう別の服に着替える。

そして、今度は私を足で蹴り続ける。






摩耶「 オラオラ!! ◯ね◯ね!!! 」






頭、腕、足、もう既に片方ずつしかない腕と足はともかく、頭を蹴られると流石に気を失ってしまう。

しかし、それもほんの僅かな時間だ。私に気絶することは許されない。眠ることも、食べることもだ。

人間としての最低限の生活すらも許されない私が、唯一彼女たちに許されている事。



それは、生きる事。



というのも、私が本当に死ねば、自分の代わりに他の提督が配属され、今このようにストレスを発散することが出来なくなる事を考慮してのことだ。その証拠にと言うわけではないが、あともう少しすれば『高速修復材』を持った者が来るだろう。







「 はい、これいつもの。ったく、なんであたしがこんな事を……… 」






天龍「 おっ、今日の当番は葛城か。んじゃ、一発頼むぜ」






葛城「 言われなくても! さ、存分に叫びなさい? 」






そう言って葛城は、私の体に本来、艦娘に対しての使用しか認められていない修復剤がかけられる。

すると、かけられた部分から焼けるように熱く、痛く、そして苦しくなる………



痛い……痛い……イタいイたいいタいいたイ!!!!!!!!






「 あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ!!!!!! 」






「 なに? 喉が渇いたって? なら、い〜っぱい飲ませてあげる 」






高速修復剤が喉を焼き、食道を焼き、気管を焼き、肺を焼き、胃を焼き、全身を焼き尽くす。






熱い、痛い、苦しい、死ぬ…………






「 あ”があ”あ”ああ”あ”あ!!!!!!!!! 」






「 まだまだ修復材は残ってるのよ? それに、まだ身体は治ってないみたいだし」






遠のく意識の中で彼女たちの高らかな嘲笑が聞こえる。

あぁ、いつから……いつからこうなってしまったんだ………

私が原因なのか? それなら、理由を教えてくれ………




助けてくれ………………叢雲………………









[chapter: ようこそ!大湊へ!!]










提督「 ようし ! どうにかこうにか大湊へ到着 ! ! 」





瑞鶴「 ちょ………ま 」





木曽「 ぐ………後は、任せ……た 」





意気揚々とした提督の後ろは、加賀や武蔵たちを除き死屍累々である。というのも昨日、大湊へ演習に行く話を聞かされ寝る時間を返上して準備をしてきた瑞鶴と木曽がいるからだ。鈴谷とマックス、それから夕張がいないのは間に合わなかったと言うのと、純粋に提督不在中の代理のためである。






加賀「 ほら、五航戦。 だらしないわよ、もっとシャキッとしなさい 」





武蔵「 そうだ。 いくら準備に1日を要したからと言って、相手は手加減などしてくれないぞ 」





瑞鶴「 寝る間を惜しんだ事への労りはないの !? 」





金剛「 ヘーイ! テートク!! 今日は私から目を離しちゃNo !! なんだからね ? 」






目的地へと到着した安堵から、演習相手の門前にも関わらずいつもの感じで会話をしていると、門の奥から艦娘が1人こちらに近づいてくる。

その艦娘は一行を見もせずに無機質な早い口調で一行を奥へと誘う。






「 こんにちは。皆さんの事は事前に伺っております。 さ、どうぞ中へ 」





提督「 あ、ありがとうございます! 」





紅羽が元気よく大湊の艦娘に挨拶すると、その艦娘はこれ以上にないほどの軽蔑の目を彼女に向け両耳を塞ぐ仕草をした。





「 少し、静かにしてもらえます? 耳の奥まで響いて頭が痛いので 」





提督「 す、すいません……… 」





彼女の声はどこまでも冷たかった。

心の底からそう思っている事が伝わる分、紅羽へ与える精神的なダメージはかなり大きい。

それ故に紅羽は彼女に謝罪した後、しょんぼりとした様子で顔を下に向け、慰めを求めて加賀の方へと近づいていく。





加賀「 ちょっと? あなた、私の紅羽に随分な言いようね? 」




その様子を一部始終(元気な紅羽から落ち込んでいる紅羽まで )を見ていた加賀が、目の前の艦娘に少しきつい口調で当たる。

目の前の艦娘もその口調に感化されたのか、こちらを振り返って反論する。





「 それは………って!! 加賀先輩!? 」





加賀「 ……………? 」





加賀の頭の上には数え切れないほどのはてなマークが浮かび上がっているが、対する大湊の艦娘は久しぶりに先輩に出会えた感動で、先ほどまでの表情が嘘のように消え、今ではその瞳をキラキラと輝かせながら、自分の近況や今までのことを話し始めている。





「 ーーーーそれで! 」





加賀「 ごめんなさい。 とても言いにくいのだけれど、私は貴方のことを全く知らないわ 」





「 あ〜……、 それもそうですよね…… 何せ、私ったらいっつも瑞鶴先輩の後ろにいたんですから 」





加賀「 瑞鶴の?……… あ、今、思い出したわ 」





加賀「 ごめんなさい。すっかり忘れてしまっていたわ………葛城 」





葛城「 いえいえ! あたしは全然気にしてないですから! 」






葛城「 そ、それより、その……… 非常に言いにくいんですが……… 」





瑞鶴「 なに? あたしならここにいるけれど? 流石に天城や雲龍はいないけど 」






その瞬間、 葛城の瞳が加賀と話していた時以上に輝く。

そして、島風もビックリな速さで瑞鶴の元へ行き、彼女の手を優しくまるで壊れ物でも扱うかのような力加減で握りそして…………






葛城「 瑞鶴先輩の柔肌! 瑞鶴先輩の白魚のような指! 今まで満たされていなかった瑞鶴先輩があたしの身体に染み渡って………… 」






『変態』。 この場にいる誰もがそう思った瞬間であった。

彼女はハッと意識を戻してかなり名残惜しみながらもその手を離し、その代わり、瑞鶴を先頭に連れて、大湊警備府内を隅から隅まで案内してくれたのだ。











宿舎<時間とは常に進み、過去を刻んで行くものだよ











葛城「 それで!! ここが瑞鶴先輩たちの泊まる所です!! 」





そう言って案内された宿舎は、本当に自分たちが泊まってもいいのかと思わせるほどに立派であった。

外装は和の趣があり、内装はその外装を尊重するかのような造りで、玄関には土間がありそこから続く長い廊下の両側には、各部屋へと続く襖が並んでおり、さらに奥へ行くと木製の綺麗な階段が上階へと続いているのが見える。





瑞鶴「 へぇ〜? 今まで見てきた施設もそうだけど、なんか、凄いわ 」





葛城「 そりゃあ、 瑞鶴先輩や他の皆さんを失望させるわけには行きませんから!! 」





瑞鶴「 はいはい、ない胸を張っても虚しいだけよ 」





葛城「 はぁん!! そんな辛辣な先輩も………イい 」





瑞鶴「 加賀さ 「 無理よ 」 ………ですよね 」





武蔵「 だが、確かにいい設備だ。建物自体もそうだが、それぞれの素材がとてもいい 」





金剛「 とても過ごしやすいデース!!! 」





北上「 え〜? あたしはウチのがいいと思うけど 」




そう言いながら北上は視線を先程から険しい顔をしながら黙っている自分の妹に向け、その理由を伺う。




木曽「 …………………… 」





北上「 木曽っち、どした? さっきから黙りこくって 」





木曽「 ……… 変な胸騒ぎがする 」





北上「 気のせいじゃない? それより…… ほら、ズイズイを助けないと 」





木曽の胸騒ぎはよく当たる。

嫌な予感ほどよく当たると昔からよく言うが、木曽の嫌な予感ほどよく当たる物は北上は聞いたことがない。

それ故に不安が浮かんで来た北上は、その気分を紛らわせるかのように話を目の前で繰り広げられている事に変える。





葛城「 先輩!!! あたしもここにいて良いですか!!! 」





瑞鶴「 抱きつくな!! 泣きつくな! 服が汚れる!! 」





葛城「 グヘヘへ……… これで合法的に先輩とのお風呂でズイズイできる 」





瑞鶴「 思惑が邪だっつーの!!! 」




そんなやり取りを尻目に、武蔵が気になっていた事を聞こうと口を開く。





武蔵「 ところで葛城よ。先程から我らの提督の姿が見えないのだが……… 」





葛城「 あぁ、それはご心配なく。 提督さんには先に専用のお部屋を案内させていますから 」





葛城のその言葉に引っかかった木曽は、少し前へと出て葛城にその部屋へはどう行くのかと尋ねる。

しかし、葛城は自分はまだ着任したてだから知らないと、木曽に向かって申し訳なさそうな顔を向けた。





武蔵「 まぁ、明日になれば相棒も顔を出すだろう 」





北上「 紅羽のことだから、泊まった部屋の自慢でもしてくるんじゃない? 」





加賀「 ………………ブハッ!!! 」





瑞鶴「 ちょぉぉぉぉぉ!!!!!! 」





葛城( そう………特別なお部屋に、ね? )











[chapter: 光 ]










地下室










ここは大湊の地下室。

様々な拷問や尋問を行う際に使われたとされる場所で、息を軽く吸うだけで拷問で流された人間の血液の臭いが鼻を強く刺激する。






天龍「 ………にしてもよぉ? 幾ら何でもバカだろコレ 」





摩耶「 なぁ? 呉の提督さんよぉ? 」





2人の視線の先には十字の磔台に縛りつけられ、鞭で打たれた跡が身体中に付けられている呉からの客人の姿があった。

その姿は、目隠しをされて猿轡を嵌められて、衣服は全て脱がされている有様だ。






提督「 フーッ………フーッ………… 」





天龍「 ま、俺的にはオスの方が良かったんだけどな 」





摩耶「 同感だ。 でも、いいじゃねぇか。メスの方もヤりがいがあるぜ? 」





天龍「 だな! 」





摩耶「 さて、そろそろクスリの時間だな 」





提督「 ン”ー!ンー” 」





摩耶が発した言葉に激しく拒絶する。

『案内』と称して捕らえられて、初めてクスリを打たれてからコレを入れて10度目である。

打たれれば身体は燃えるように熱くなり、身体中の感覚が常に敏感になって軽く息を吹きかけられるだけでも軽く達してしまう。

しかし、彼女が何より恐れているのはクスリを打たれた後に行われる責め苦である。






摩耶「 おいコラ!! 暴れんじゃねぇ!!!! 」





提督「 グブッ!!? ゴボッ!! 」





天龍「 おい、あんま見える所殴んなよ? 」





摩耶「 そりゃ、コレの行い次第だな 」





天龍「 それもそうか!! 」





摩耶「 おら! これで〜…………何本目だ? 」





天龍「 分かんねぇからもう一本いっちまえ!! 」





摩耶「 ははっ!!! そいつはいいなぁ 」





提督「 ゴッ………ン”ン” 」





首筋から体内に注入されていくのが分かる。

ソレはやがて心臓へと到達し身体中を駆け巡る。

あぁ………何故、どうして?


どうして……この娘たちはこんなに……………





ー 光のない瞳をしているの? ー











[ chapter: 提督 ]










武蔵「 見当たらん!!!!!!!! 」





瑞鶴「 な、なに!? 敵襲!!? 」





金剛「 What!? な、何ですか!? 気合いは! マイクは!? 」





武蔵の大声で飛び起きた2人は、状況を確認するべく先ずは辺りを見回す。

至って普通の昨日の部屋のように思うがそうではないようで、問題はまた別の方にあるようだ。






加賀「 煩いわね。脳筋戦艦は一体何を騒いでいるの? 」





武蔵「 いないのだ!! 相棒が!!!!! 」





北上「 いないって……確か、専用の部屋にいるんじゃなかったの? 」





武蔵「 そう思ってここの艦娘に聞いたのだが、誰1人知る者がいないのだ 」





金剛(榛名)「 それは……榛名とっても、とっても心配です 」





北上「 う〜ん、聞いた人がたまたま知らなかっただけなんじゃ 」





木曽「 そうでもないようだぞ 」





皆が声のする方へと振り返ると、そこには木曽に抱えられた裸で傷だらけになった提督の姿があった。

提督の方はぐったりしているようで、辛うじて息をしているのが窺える。





加賀「 ッ!!!!? 紅羽? 紅羽!! 大丈夫なの!? シッカリして!!! 」





金剛(榛名) 「 提督!! お願いです! シッカリして下さい!! 」





武蔵「 ………どこで発見した 」





木曽「 ここの艦娘を尾行した時に地下へ通じている階段があってな 」





木曽「 そこで拘束されているこいつを見つけたんだ 」





武蔵「 ……………そうか 」





木曽「 俺が見つけた時は、今よりも酷い状態だった 」





武蔵「 何にせよ。ご苦労だった 」





木曽「 ……………あぁ 」





加賀や金剛(榛名)たちの必死の尽力もあって、提督の容態は安定し絶え絶えになっていた息も落ち着いてきた。





北上「 ……………んで? こっからどうするかって話なんだけど 」




武蔵「 下手に動き回らんほうがいいだろう 」




木曽「 いや、多少危険を冒してでも動くべきだ 」




金剛(榛名)「 で、でも、それで私たちがどうにかなってしまったら……… 」




北上「 それこそ目も当てられないよね〜 」




瑞鶴「 なら、葛城に直接聞いてみるのは? 」




武蔵「 聞いて話してくれるとも思えんがな 」




瑞鶴「 それは……そうだけど 」




木曽「 取り敢えず、あいつの回復を待とう 」




考えは煮詰まるばかりで一向に対抗策が出てこず、全員は葛城が来るまで頭を抱え続けた。










執務室<一方!! その頃!!!









「 そう、見つかってしまったのね 」




葛城「 ごめん。あたしが油断してた 」




天龍「 良いじゃねぇか、また捕まえりゃ 」




摩耶「 バカが。これであいつらにバレただろうが!!! 」




「 ………どうしますか? 大井さん 」




大井「 そうね………向こうには確か、北上さんもいたわよね? 」




「 はい、確認しています 」




天龍「 どうすんだ? 俺の龍田みたいにヤる気か? 」




大井「 ………貴女はやり過ぎよ 」




摩耶「 いや、あんたも人のこと言えないだろ 」




大井「 コホン! とりあえずは彼女たちの様子を伺いましょう 」




大井「 仲間にするのはいつでも可能ですから……… 」




「 では、そのように皆に伝えます 」




そう言った彼女はすぐさまその部屋を後にする。

そして執務室から少し離れた廊下に差し掛かった時、彼女はその足を止める。

いつかこんな風にこの警備府の事情を知らない人間がやってくるのを待っていた。

いつからか暴力の蔓延る場所と変わり果ててしまったここを変えるために………

彼女は真面目に彼女たちの駒として動くことを良しとした。それ故に彼女たちは彼女を信じ、重要な役にまでつけた。




「 伝えます………伝えますよ 」




「 こんな地獄を終わらせるために………… 」




朝潮「 待っていてください………司令 」




今はある艦娘の奴隷と成り果てている自分の司令官を助ける為、朝潮は歩み始める。

しかし、それを密かに物陰で見ている者が1人。

その様子を見て今後の展開を予想し、1人楽しんでいた。





「………いやぁ、実に面白いねぇ〜 」




「 謀反、裏切り、反逆………… 」




「 どれもこれも、俺が好きな言葉だ 」




「 だが? そう簡単にはさせないがな 」




男は懐から通信機を取り出し通信を図る。




「 ………あぁ、俺だ。1人、裏切り者がいる 」




「 えぇ? さあね? 誰がそうなのかは当ててみなよ 」








ー意外と近くにいるからさぁ?









[ chapter: 密告の罪 ]












ー ………あぁ、なんて事だ。ここに来客が来てしまうとは ー





3、4日前に艦娘たちが話していたのを聞いてから、どうしようもできない今の自分に腹が立った。

今のこの娘たちなら必ず何かしらの行動を起こすだろう。

この鎮守府の現場を知られた場合、それをもみ消すように何か手を打つだろう。

あぁ、客人よ。どうか許してほしい。

そして、何も気づかずにここから去ってくれ。




ー いや……出来れば私を救って…………… ー





大井「 ほら、起きなさい 」





その声とともに頭から冷水をかけられる。

そのおかげか曇っていた私の思考が少し晴れたように感じる。





原提督「 ……ゔゔ、あ、ああ 」





大井「 情けない声ね……声帯を焼かれたのかしら? 」





その通りだ。何度も何度も殴られ、蹴られ、打たれ、斬られ、撃たれ、刺され………

死にかけになる度に、口を開けさせられ流し込まれる修復材。人の体にかければまるで酸をかけられたかのような激しい痛みに襲われ、かけられた部位は焼けただれる。





大井「 それに酷い臭い……叢雲が居たらどんな顔するかしら 」




不意に彼女の名前を聞かされた私は、彼女の安否が気になる。

彼女はどこにいる? 何もされていないか? 解体されていないか………

気になり始めるとキリがない、が今の私にはそればかりが気になってしまう。




大井「 気になって仕方がないみたいね? 」




大井「 安心しなさい? 彼女には何も手を下してはいないわ? 」




その言葉を聞いて少しばかりの安堵を得る私だったが、次の大井の言葉を聞いて私は叢雲に対して無性に申し訳なくなった。




大井「 ま、彼女は地下深い所の牢屋で大人しくしているだけなのだけどね? 」




原「 う”う”あ”ぁ”……… 」




大井「 あぁ、そうそう。さっさと此処から出たいから手短に言うわ 」




大井「 貴方を解放してあげる 」




解放? 何を言っている。俺をここから出せば困るのはお前たちだろう。

それをなぜ自ら手放そうと言うのだ。分からない。





大井「 それと言うのも、代わりになる新しい玩具を見つけたの 」




ー 何だって? 代わり? 新しい玩具?




大井「 だから………解放するの 」




大井「 あぁ、勘違いしないでよ? 」




大井「 解放といっても野放しにするわけじゃないから 」




大井「 するわけないでしょ? そう、ならどうするか……… 」




ー まさか………私を殺すと言うのか?




大井「 貴方を殺すのよ……それも、新しい玩具の目の前で、ね? 」




その言葉を聞いた瞬間、私は今出せるありったけの力で暴れた。

私を繋いでいるワイヤーが僅かに揺れ、両手両足に打たれた杭がキィと少し軋む。





大井「 あら、まだ動けたんですか 」




大井「 なら、最後の時間まで動いていてくださいね? 」




彼女は私の近くまで来ると私の首に麻酔薬を打ち、遠ざかっていった。

あぁ……意識が遠のく、ダメだ……ダメ、なんだ。









大湊警備府〜廊下〜









木曽「 …………よし、行けるぞ 」




武蔵「 了解だ。ほら、ついて来い 」




あれから色々話し合った結果。

自分たちでこの警備府の提督に会いに行こうと言う結果になり、こうしてコソコソと隠密行動を取っているわけだ。





北上「 今回、木曽が非常に真面目になってお姉ちゃんは寂しいです 」




瑞鶴「 ちょっと!ふざけてないで早く歩きなさいよ! 」




金剛(比叡)「 なんだかかくれんぼみたいでドキドキしますね! 」




瑞鶴「 遊びじゃないわよ! 見つかったらどうなるか分かんないのよ!? 」




加賀「 ほら、紅羽。もっとこっちに寄って 」




提督「 う、んん……まだ、痛むや 」




加賀「 安心して、もう同じ目に合わさない 」




「あの、何をなさっているんですか? 」




瑞鶴「 敵襲ぅぅぅぅぅぅ!!? 」




「 ま、待ってください! 落ち着いてください!!! 」




一行の後ろから声をかけたのは、見た目は駆逐艦であろう女の子だ。

真面目そうな雰囲気を醸し出しており、如何にもクラスに1人は必ずいる委員長タイプである。





武蔵「 どうした。何かあったのか? それとも………皆! 下がれ!! 」




木曽「 ッ……………… 」




「 わ、私は……その、皆さんの味方です!!! 」




加賀「 スパイならお断りよ。それに、そんな言葉を信じるとでも? 」




「 確かにそうです。おっしゃる通りです 」




木曽「 …………目的は何だ 」




「 皆さんにこの警備府の状況を知って欲しいんです! 」




木曽「 状況? 笑わせるねぇ 」




木曽「 他人の指揮官をあんな目に遭わせておいてよぉ? 」




木曽「 あんたらは楽には死なさせねぇよ……苦しませてやる 」




木曽「 あイツが アジわった ツらさ イジョうになァァぁ !!!!!!! 」




武蔵「 木曽!! 止めろ!!!! 」




木曽の瞳の色が激しい憎悪によって深海の深い蒼へと変わっていく……

纏う空気も周りを冷たく刺すかのように冷たいものへと変化し、目の前にいる憎い相手をその場で固めて逃さない。




「 や、やめ………やめて 」




提督「 木曽!!! 」




木曽「 ッ!!!! 」




あと数ミリ下に下ろせばその体は二つに断たれていただろう既のところで刀は止まっている。相手の艦娘は自分の生の終わりを間近に感じたのか、ヘナヘナと力なくその場にへたりこむ。




提督「 私は大丈夫だし、その子は私に何もしてないから…… 」




提督「 だから………その、甘いっていうのは分かってるんだけど 」




木曽「 ………………… 」




提督「 許してあげて? 」




その一言で木曽は刀を鞘へと仕舞い、その場にへたりこんでいる艦娘へ手を差し伸べる。




木曽「 うちの提督に感謝しろ 」




「 ほぇ………は、はい! 司令官に感謝します!!! 」




木曽の言葉に飛んでいた意識を戻し、ビシッと綺麗に敬礼を決めながら紅羽への感謝の意を表す。




提督「 そこまでしなくたっていいよ 」




優しい紅羽の声音にその艦娘はそれではいけませんと、余計に堅苦しくなってしまいそれをどうにかするのに30分を要した。




提督「 それで? 私たちに知ってほしいことって? 」




「 はい……あ、それよりも自己紹介がまだでした 」




「 朝潮型駆逐艦の1番艦、朝潮です。以後、よろしくお願いします! 」




提督「 朝潮ちゃんね? よろしくね 」




朝潮「 はい! よろしくお願いします!! 」




提督「 それで、ここの状況なんだけど…… 」




紅羽がそう聞くと朝潮は少し悲しげな表情したのちに、覚悟を決めたかのように前を向き直し話し始める。

そう、それはこの警備府がまだ他と変わらない平凡な場所であった最後の日のことだ。










回想? それよりも砲雷激戦ね!!(回想です











〜2年前〜









私は頼まれていた遠征任務を頼まれていて、1週間ほど警備府を留守にしていました。

そして、事件はその1週間の間に起きていたのです。

私が警備府に帰還した時に一番初めに見たのが司令官が無残に十字架に磔にされた姿でしたから………






朝潮「 司令……官? 司令官!!! 」




原「 あ”ゔ あ” あ、さしお? 」




朝潮「 待っていてください!! 今、助けますから!!! 」




私は遠征で警備府を離れた事を後悔しながら、司令官に刺さっている杭を引き抜き、硬く締められていた縄を必死に解き、なんとか司令官を解放することに成功しました。




朝潮「 司令官!! 大丈夫ですか!? 誰がこんな事を? 深海ですか? 」




原「 ゔ ぐぅ……あ、はぁ……はぁ、よ、く聞け 」




朝潮「 はい! なんでしょう!! 」




原「 とお、く…に、に、げろ 」




朝潮「 い、行けるわけ 「良いから行くんだ!!! 」 っ!!?? 」




原「 がはぁ!? ゔがぁ……… 」




朝潮「 司令官!! どうしてですか! 貴方をおいて行けるわけ…… 」




原「 お、前がいない1週間の間……彼女たちは、変わった 」




それから聞かされたのは私がいなかった1週間の間に起こった悲惨な出来事の数々でした。

みんな態度が一変し、司令官を激しく嫌うようになり、揃いも揃って司令官を道具のように扱い始めた事。そして、暴力を振るい始め遊びやストレス発散の為の道具にし始めた事……




原「 彼女たち、は……心の底から私を嫌っていた 」




司令官はそう言っていましたが、その瞳には恨みや憎悪の色はありませんでした。




原「 な、ぁ……朝潮。聞いても、良いか? 」




力なく私にもたれ掛かりながら、司令官は私にそう尋ねました。

その時の司令官の声が今でも忘れられません。

恐れているようで、それでいて気遣うようなそんな口調でした。




朝潮「 はい! 何でもお聞きください!! 」




原「 私は、今まで君達と共に歩んできた…… 」




原「 辛い時も、悲しい時も、楽しい時も……… 」




原「 どこで違えたのだろうなぁ……… 」




原「 なぁ、朝潮。私はどこで、間違えたのだろうか? 」








〜回想終了……ハラショー、こいつは力を感じる










[chapter: 密告の罪Part2 ]











朝潮「 それから……それからぁ、じれ”い”がん”は 」




話終わる前に朝潮の声は震え、その瞳には涙が溢れていた。

提督はそれでも状況を必死に伝えようとする彼女を静かに抱きしめた。

誰がそれを止めただろう。誰が2人を引き剥がそうとするだろうか?

今、目の前にいる彼女はまだ精神も未熟であろう。そんな彼女が見た光景はあまりにも残酷で、

彼女の精神を壊すのには十分すぎるほどだっただろう。それでも彼女は自らの大切な者を助けようと、

今まで必死に堪え頑張ってきたのだ。





提督「 ………もう、大丈夫? 」




気づけばかなりの時間を紅羽の胸の中で過ごしてしまったようで、

少し視線をずらせば周りの風景が先ほどと違う場所であることが分かる。




提督「 辛かったよね……ううん、そんな言葉じゃ貴女の経験した出来事は片付けられない」




辛いの自分の筈なのに、目の前にいる呉の司令官は私よりも辛そうで悲しそうな顔をしている。

艦娘の事でこんな顔をする司令官は私の中ではこの司令官の他に後1人だけ……




朝潮「 そんな顔、しないでください…… 」




私はその顔に伝う涙を親指で拭って彼女の顔を見る。

泣いているせいか少し顔が赤くて目が腫れぼったいが、その顔はとても綺麗で見ているだけで吸い込まれそうになる。




提督「 うん……ごめんね? なんかさ、私、涙脆くって 」




私の知っている司令官も同じように涙脆くて、出撃から帰投した時なんかはいつも泣きそうな顔で港で待っている。

そして、私達が笑顔で手を振ると泣きながら手を振り返してくれる。そんな優しい人。




朝潮「 いえ、朝潮の司令官も……同じでしたから」




瑞鶴「 いい雰囲気なのは良いけど、そろそろ移動するわよ 」




提督「 ここも危ない感じ? 」




瑞鶴「 危ないなんてもんじゃないわよ 」




瑞鶴「 さっき木曽から通信で聞いたんだけど、向こうが血眼になって私たちを探してるみたい」




朝潮「 そんな……気付くにはまだ早い段階では? 」




瑞鶴「 知らないわよそんな事。 ともかく、私たちが追われているのは確かよ 」




朝潮「 なら、あまり時間はありませんね」




提督「 とりあえず移動しながら話そっか 」




朝潮「 は、はい! 」




瑞鶴( はっは〜ん? )




朝潮の反応を見て瑞鶴は全てを悟った。




瑞鶴( 紅羽ってば、後何人侍らすのかしら? )




意外と浮気には寛容な貧n……ズイカクサマデシタ<次言ったら……分かるわよね?










[ chapter: 密告の…… ]












「 ………はぁ? どうして私がそんな事しなきゃならないのよ 」





仲間の中で裏切り者が出た。という報告を受け、府内の艦娘が真っ先に頭に浮かべたのは彼女である。

従って彼女は今その容疑をかけられ問い詰められているのである。




大井「 貴方でないとすれば一体誰が? 」




「 私に聞かれても知らないわよ。大体、監視カメラを確認しなさいよ」




大井「 それで? 三隈、カメラに何か不審な点は? 」




三隈「 いえ、特に不審な点はありませんでしたわ? ねぇ? もがみん? 」




最上「 うん。至っていつもの風景だったってことは確かだよ」




大井「 そう………… 」




ふと、大井が何かを思い出したのか無線で別の艦娘を呼び出した。





青葉「 ……な、なんですか? 」




呼び出された艦娘は大井の前に姿をあらわすと、怯えた様子で彼女の様子を伺いながら跪いている。




大井「 遅いわ。私が呼んだらすぐにとあれほど言いましたよね? 」




青葉「 す、すすみません!! 先程、出撃から帰ったばっかりで……… 」




大井「 いつ口答えしてもいいと言いました? 」




大井が目の前の彼女を睨み付けると彼女は肩をすぼめ先程以上に体を小さくする。




青葉「 ………申し訳、ありません 」




大井「 はぁ……いいです。聞きたいことだけを聞くことにします 」




大井「 朝潮はどこにいるんですか? 」




青葉「 あ、朝潮ちゃんなら呉の方々と一緒に行動しています」




大井「 へぇ〜? 他に何か情報は? 」




青葉「 その、あの………… 」




大井「 あら? どうしてそこで止めるんですか? 姉妹の命が惜しくないんですか? 」




青葉「 い、言います!! 言いますから!! どうかそれだけは!!! 」




大井「 なら、早くしてください。事と次第では彼女を殺さねばなりませんから 」




青葉「 ……その、朝潮ちゃんが呉の方々にここの現状を話したそうです」




大井「 …………そうですか 」




「 いい気味ね。そして、無様ね」




大井「 何ですって? 」




「 聞こえなかったのかしら? 詰めの甘い無様な奴って言ったのよ 」




大井は彼女、叢雲に近づくと彼女の顔を思い切り殴りつける。殴って、殴って、蹴って、蹴り潰して……

やがて、大井が立ち上がると顔中血まみれの叢雲の姿が見えた。




大井「 ………青葉 」




青葉「 は、はい!!! 」




大井「 府内の全員にこう言いなさい 」




青葉「 何でしょうか!! 」




大井「 『裏切り者の正体は駆逐艦朝潮である。朝潮を捕まえよ 』とこの通りに一字一句間違わずに」




青葉「 了解いたしました」




大井「 あぁ、それと、裏切り者の生死は問わないことにするわ? 」




青葉「 あの、一緒にいるあおの方達は…… 」




大井「 もちろん、全て捕まえてください 」




大井「 あぁ、北上さんは私のところまで生きて連れてくるように 」




青葉「 分かりました!!! では、青葉、これで失礼します」




大井「 あぁ、それから青葉? 」




青葉「 は、はい。何でしょう」




大井「 貴方の行動は逐一全て監視しているから、呉々も勝手なことは慎むように」




大井「 さもなければ……… 」




青葉「 ………肝に命じます」




大井「 ハッキリと刻み込みなさい」






かくして、大井たちに裏切りがバレてしまった朝潮!と呉鎮守府一行!!

彼女たちは無事に原提督と狂ってしまった警備府を救うことは出来るのだろうか!!?












[ chapter: そんなこんなあったんだよ…… ]

















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