2017-08-26 11:45:37 更新

概要

前にあげた『やはり俺の結婚生活はまちがっていない。』のサイドストーリー的なものです。
八幡といろはが結婚しており、二人の娘がいます。オリキャラばっかりの上にキャラ崩壊注意です。
前作を読んで頂いた方が話を理解できると思うので、そちらもよろしくお願いします。


前書き

前作に続き文章が拙いですが、よろしくお願いします。




第一話 『比企谷若葉はどうしようもなく孤高でありたがる』




青春とは嘘であり、悪である。

私の父はこう述べたという。


では、私の考えはそれと同じだろうか?


私、比企谷若葉は自他共に認める孤高のボッチであり、それは、誠に遺憾ではあるが父親に似ているからである。

似ているから考えも同じか?

答えは否である。


私は青春を嘘とも悪とも思わない。


確かに、クラスで楽しそうに談笑する彼ら彼女らの関係は欺瞞と建前で出来たハリボテの偽物だと言わざるを得ないが、それでも私はそれを悪いとは思わない。

彼らは彼らなりに今という時間を楽しみ、彼女たちは彼女たちなりに青春という形の無いものを作り上げようと努力している。その結果が、この殺伐とした教室なのだ。

本音のみで話せば疎まれ、建前ばかりじゃ弾かれる。

身も心も未成熟な10代の男女を数十人単位で一まとめにしているのだから、そうなるのも自明の理だ。

クラスメイト、知り合い、友達、親友、恋人……線引きの曖昧な関係性を自分と相手と第三者とで折り合いをつけて暫定し、そのレッテルは日々更新される。

そんな異常な空間で一週間の内の5日間も過ごしている彼らのメンタルは強靭だと思う。


ダラダラと訳の分からない理論を並べていくのは私の欠点であり、父との類似点でもある。

これ以上長くならないよう、簡潔に結論を言おう。



リア充たちよ頑張れ。やっぱボッチ最高。




…………………

…………

……





和葉「若葉姉ぇー!朝だぞ!」


若葉「ん……」



眠りから覚めるのってなんでこんな絶望を感じるんだろう?

布団から出るのとかもう苦行、下手したら死ぬ。

でも土曜日の朝は清々しい気持ちで起きれる、二度寝の気持ちよさを知ってるから。


つまり、平日の朝滅びろ。



和葉「起きた?そろそろ準備しないと遅刻しちゃうよ!」


若葉「んー……お姉ちゃん胃がヘルニアでアレだから今日は休みたいかな」


和葉「いや意味わかんないし……朝ごはん冷めちゃうってママ怒ってるから、早く来てねー」



金曜日の夜を思わせるくらいテンションの高い和葉が部屋から出ていく。

あの子はどうしてあんなに元気なのだろうか、私の分の生気を持っていったのかな?


ともあれ、母さんの作った朝食を食べないわけにもいかない。

私は鉛よりも重い体を起こし、布団から出る。そして諸々の準備を終えてリビングへ。



いろは「あ、若葉起きた?おはよう」



リビングには洗濯物を取り込む母さんと、朝食を食べている途中の和葉が。



若葉「おはよう、母さん」


いろは「ほら、早く朝ごはん食べちゃって」


若葉「んー」



和葉の向かい側……私の定位置である席に座り、朝食を食べる。

そしていつもと違う部分に気付いた。



若葉「そういえば、父さんは?」



普段なら私たちより準備も遅く、家を出るのも最後である筈の父さんの姿が今日は無い。

そのせいで私がだらけてるみたいになってる。これは訴訟ものだ。



いろは「お父さんなら部下のミスが見つかったからとかで今日は早くに出たよ」


若葉「へー」



俺は必要最低限しか働かない、とか言ってる人の行動とは思えないね。そんなことしてるから会社内でも謎にモテるんだよ。

ボッチになりきれない半端者めが、私を見習って欲しいくらいだ。



和葉「パパ優しい!……けど、私とパパの朝の貴重な時間を奪うとか何考えてるんだろ?会社ごと燃やしてやりたい」


若葉「うわぁ……」



ほんとなんで和葉はこんなファザコンなの?

私も別に父さんのこと嫌いじゃないけど、この子が異常なのは火を見るよりも明らかだろう。

高校生になった今でも隙あらば一緒にお風呂入ろうとするし……普通にキモいわ。



いろは「あ、それと今週の土曜日に雪乃さんと結衣さん来るから予定入れないでねー」



え、急過ぎじゃない?いきなり言われてもこっちにも予定というものがあるんですが?



若葉「ん、了解」



いやまぁ、そもそも私に予定とか無いんだけど。



和葉「えっ、雪乃さんと結衣さん来るの!?やったー!」



うるさい、妹がうるさい。

テンション高すぎでしょ。まだ8時前だよ?



いろは「朝のうちに買い物行きたいから、どっちかついて来てくれる?」


若葉「私は土曜日はアレだから」


いろは「若葉ってほんとにせんぱい似だよね……」



父さんに似てる?自覚はあるけど悪口かな?



和葉「私ついて行く!」


いろは「和葉ちゃんは私似だよねー」



母さんに似てる?悪口かな?



若葉「まぁ何でもいいけど、土曜は家にいればいいんでしょ」


いろは「そうだよー、若葉にとってはいつも通りだよね」


若葉「そうだね、休みに外出るとかありえないし」



休みなんだから休むんだよ。父の声が聞こえた気がした。



いろは「じゃあよろしくね」


和葉「はいはーい。むぐむぐ……っと、ごちそうさまでした!」


若葉「ごちそうさま」


和葉「え、お姉ちゃん早くない?ちゃんと噛んだ?食事と摂取は違うよ?」


若葉「ちゃんと噛んだから、ほらもう行こうって」


和葉「起きるの遅かったの若葉姉ぇのくせにー」



ぶつぶつと文句を言う妹を引き連れて玄関へ。



和葉「じゃ、いってきまーす!」


若葉「行ってきます」


いろは「はーい、いってらっしゃい」



愛しい妹と共に家を出て、学生の檻……即ち学校へと足を運ぶ。

可愛い和葉と一緒の登校は私にとって無味乾燥な日々を彩る重要なイベントなのだが、その後に待っているのは地獄にも等しい学校だ。

この世の真理は等価交換……何かを得るためには何かを捨てねばならない。

妹との登校を手に入れるために学校へ行かねばならないというのか。人体錬成してないのに臓器取られた気分だ……。



和葉「お姉ちゃん、また目が濁ってるよ!」


若葉「またって何、私の目は元々腐ってるから。失礼なこと言わないでよ」


和葉「なんでその目に誇りを持ってるの……」



エリートボッチの証なのだから当然だ。

この目のおかげで人が寄り付かず、悠々自適なボッチライフを送れている。

父からの遺伝に感謝を。



和葉「もう、若葉姉ぇがそんなだから私心配だよ」


若葉「何が」


和葉「クラスでもそんな感じだから友達出来ないんだよー」


若葉「出来ないんじゃなくて作らないの。私は持つものが多いから、これ以上何かを背負うことなんて出来ない」


和葉「なんかカッコイイけど、持つものって?」


若葉「漫画とアニメとラノベ」


和葉「全部自分の趣味でしょ!はぁ……お姉ちゃん見た目はすっごく良いんだから普通にしてれば人気者なのになぁ」


若葉「まぁね、私スペック高いし」



目の腐敗と共に器量の良さも父から受け継いだ、大体のことは出来る。まぁやらないけど。



和葉「自分で言ってる時点でもうダメだよ……」


若葉「私はいいの。別に友達欲しいとも思わないし、静かに過ごせればそれで十分」



その為に学校では影薄く、波風立てず生きているのだ。

人との関わりは必要最低限に、問題は起こさず、目立たず静かに。

父の固有スキルにして私も持っているステルスヒッキー、今では完全に父さんを超えたと断言できるレベルだ。



和葉「でもー」


若葉「でももヘチマも無いの。余計なこと考えてないで和葉は自分のこと考えなさい」


和葉「むー……はーい」



この子の場合、可愛すぎて同性の敵が多そう。

いじめられたりしてないか心配してる私の身にもなって欲しいものだ。

まぁ、和葉のことだから上手くやってるんだろうけど。


ともあれ、今日からまた一週間の地獄が始まる。

隣を歩く天使に癒されながらも、やはり月曜日の朝は憂鬱になるのは仕方ないことである。

どうか何も変わったことが起きない様にと天に祈りながら、私は長い欠伸をしたのだった。




…………………

…………

……





私は苦手なものが多い。

それは食べ物もだし、他のものでもあり、人間は言わずもがなというやつだ。


例えば食べ物だと、トマトとキャベツが苦手。

虫も嫌いだし、暑いのも寒いのも苦手だ。あとやる気とか自主性とかチームワークとか色々嫌い。


そして何よりも人が苦手だ。

もちろん家族とか、雪乃さんや結衣さんみたいな知り合いは別だけど……クラスメイトとか、同学年の人たちとか、先輩後輩も含めて――他人が苦手だ。


どんな風に接すればいいか分からない。どんな顔をすればいいか分からない。

一体どれほど踏み込んでいいのか、その距離の取り方が、私はすごく不得手なのだ。

だからキョドるし、会話の中で相手を傷つけているかもしれない。

そう考えれば考えるほどに余計分からなくなり、人付き合いが嫌になっていく。


だからこそステルス能力を磨き、誰にも気づかれない影の薄さを獲得した筈なんだけど……そんな私でも忍びきれない時間がある。

それは私の実力不足が原因ではなく――



彩奈「若葉ちゃ~ん、一緒にご飯食べよう」


和葉「若葉姉ぇっ、一緒に食べよーっ!」



こんなにも尊い天使が二人して私の席に来る昼休みを、どうすれば目立たず過ごせるだろうか。

学内でもトップクラスの可愛さを持つ戸塚彩奈、そして学内にファンクラブが存在しているらしい我が妹の比企谷和葉。


普段から暗い私の横にそんな二人が来れば注目を浴びるのは必然。

だから私は昼休みがあまり好きじゃない。

いや、両手に花な状況はむしろ大歓迎だけどね?



和葉「む、彩奈ちゃん?若葉姉ぇは私と一緒に食べるんだよ」


彩奈「え、えー……私だって若葉ちゃんと一緒に食べたいよ」


若葉「別に私は一人で……」


和葉「ダメ!女の子のボッチ飯とか和葉的にポイント低いよっ!」


彩奈「皆で食べた方が美味しいよ、若葉ちゃん」



二人とも可愛い(確信)。

でも和葉、それ私のネタなんだけど?あんたがやると普通にあざとかわいいからやめて欲しい。



若葉「分かった、分かったから和葉はもうちょっとボリュームを抑えて。うるさいし目立ってるから」


和葉「わーいっ!じゃあ早速食べよう!」



ちょっとー?なんでこの子は自分に都合の良いことしか耳に入んないの?

二年の教室でそんだけ堂々としてられる自信もどっから来てんの?



彩奈「あはは、和葉ちゃんはいつも元気だね」


若葉「馬鹿なだけでしょ」


和葉「ひどっ!?彩奈ちゃん!お姉ちゃんがいじめるぅ~!」


彩奈「あ、あはは……よしよし」


若葉「おい彩奈、撫でるなら和葉じゃなくて私にして欲しい。そして結婚しよう」


彩奈「え、えぇ……お、女の子同士だし、それはちょっと……」


若葉「大丈夫、昨今の倫理観は大きく変わってる。同性婚が常識的になる日は近い」


和葉「若葉姉ぇ、普通にキモい」



ぐっ……!妹からの辛辣な言葉は胸に刺さる!

というか、どさくさに紛れて彩奈に撫でてもらってるあんたが悪い。今度私もしてもらう。



若葉「大体、あんた自分のクラスで食べなよ。毎日私んとこ来てるし」


和葉「だってお姉ちゃんと一緒にご飯食べたいんだもーん」



なんだそれ可愛いな。

やっぱ私の妹天使だわ、この腐った世界に舞い降りた一人のエンジェル。



若葉「和葉、クラスに友達いないの?」


和葉「え、若葉姉ぇだけには言われたくない台詞なんだけど」


若葉「私は彩奈がいるから」



むしろ彩奈さえいればいいまである。

もうほんと結婚したい。私を専業主婦として雇って欲しい。



和葉「彩奈ちゃんだけでしょ?」


若葉「日本は一夫一妻制だからね」


和葉「はいはい、それキモいから」


若葉「…………」



父さんにキモいって言う時はもっと冗談っぽくしよう。

素のキモいがここまで胸に刺さるなんて……ごめん、父さん。



彩奈「でも、若葉ちゃんはクラスの子たちからも人気あるんだよー?」


和葉「えっ!そうなの!?」


若葉「え、そうなの?」



初耳なんだけど。



彩奈「若葉ちゃんはクールだからね、女の子たちはカッコイイって言ってるよ?」


和葉「ほえー、お姉ちゃんの良さって万人にも受け入れてもらえるんだね」



私の良さ壮大すぎない?一般人には分からない何かがあるの?



彩奈「それに優斗くんや瞬くんとも仲良しだよね」


若葉「おいやめろ彩奈、あんなリア充(笑)たちと孤高のエリートボッチである私を仲良しとか言うな」


和葉「若葉姉ぇはあの二人を毛嫌いしてるもんねー」


若葉「別に嫌ってないよ、ただ気に入らないだけ」


和葉「もっと酷いよ」



???「随分と嫌われてるんだな」



なに?言霊?

名前呼んだから来るとか金斗雲か何かなの?

自分の名前言われてる時は悪口言われてる時だってことを知らないのかな?



若葉「……何か用?葉山くん」



私が一番いけ好かない男――葉山優斗。

クラスのトップカーストに位置するリーダー的存在であり、通称ハリボテ王子。ちなみに呼んでるのは私だけ。



優斗「いや、若葉じゃなくて和葉にね、部活のことでちょっと」


若葉「あっそ。若葉って呼ばないで」


優斗「あ、ああ、悪い……比企谷」



???「アハハっ!相変わらず若葉ちゃんには頭が上がらないねぇ、優斗くん」



出た。

私の人生においてこれ以上無いほどの蛇足。無駄を結集して生まれたかの様なキングオブ無駄男――戸部瞬だ。



瞬「若葉ちゃんも、優斗くんには随分と辛辣なことで」


若葉「戸部くん、ここは学校っていって野生動物が来ていい所じゃないんだけど」


瞬「ひどくね?ははっ、その悪口やべーわ、俺じゃなかったら怒ってるわ」


若葉「悪口じゃなくて忠告だから」


瞬「俺の嫌われ方もやべー、いやマジ若葉ちゃんやばいわ」



うざい。

どうしてこんなにもうざいんだろう?人をイラつかせる能力に関しては彼は世界でも有数だと思う。



優斗「瞬には名前で呼ばれても文句言わないんだな」


若葉「動物に怒っても意味無いでしょ」


優斗「酷いな」



人間と違って動物とは会話が出来ないのだ。

呼ぶなと言ったところでどうせ呼んでくるし、怒るのも無駄。流石はキングオブ無駄男、何しても無駄。



若葉「それより、和葉に用事だったんじゃないの?」


優斗「ああ、そうだった」


和葉「はいはーい、どしたの?」


優斗「次の合宿についてなんだけど――」



よし、いけ好かないクソ王子は和葉に行った。

和葉もよくあんなハリボテ野郎と同じ部活でいられるよねー、私だったらその日の内に退部だわ。むしろ問題を起こして廃部させるまである。



彩奈「優斗くんと和葉ちゃんは仲良いのにね」


若葉「あんな野郎と仲良く出来る妹ほんと有能」


瞬「そりゃあまぁ俺たち言うて幼馴染だし?若葉ちゃんだけが孤立しようとしてんだし」


若葉「幼馴染じゃない、ただ小さい頃からの知り合いってだけでしょ」


彩奈「若葉ちゃん、それを幼馴染って言うんだよ……」


若葉「いや、馴染んでないから。幼知り合いならまだしも私は戸部くんとも葉山くんとも馴染んでないから」



親同士が仲良いからと言って子供もそれに合わせる義務など無い。

彩奈とは仲良いしこれからも末永くよろしくしたいけども。



瞬「分かってるってー、若葉ちゃんのそれは照れ隠しだろ?アレだ、ツンデレ!」


若葉「次言ったら知り合いやめるから」


瞬「そりゃ困る、ただでさえ低い身分が無くなるのはやばい」



ニタニタと笑う、私はこの男のこういう所が気に入らない。

自分が上にいて他人で弄んでいるかのようなこの態度が心底気に入らない。

そして事実、こいつは私よりスペックが高い。だから余計に腹立つ。



若葉「はぁ……それで、あんたは何の用?」


瞬「ん?ああいや、友達が集まってたから絡みに来ただけ」


若葉「そうか。なら去れ」


瞬「えぇ……俺も一緒に昼飯食べていい?」


若葉「ダメに決まってるでしょ、私と彩奈の愛の時間の邪魔をするな」


瞬「……やべー、思わずキマシタワーって言うとこだったわ」


若葉「失せろ姫男子」



あとキマシタワーじゃなくてキマシタワーだよ。うちの父親にダメ出しされるよ。



瞬「まぁこれ以上ウザ絡みすると若葉ちゃん本気で嫌がりそうだし、そろそろ退散するわ」



これ以上絡んでくるなら本気で怒ろうかと思った矢先、そんなことを口にする。

うるさくてうざいくせに人のことをよく見てる、そんなところも気に入らない。

あれ?もしかして全部気に入らない?



彩奈「何だかんだ言って、瞬くんとは仲良いよね」



去っていく奴の背中を見ながら彩奈が言う。



若葉「いやいや、あっちが一方的に絡んできてるだけだから。私は嫌いだから」


彩奈「若葉ちゃんって本気で嫌なら完全無視するよね?」


若葉「…………」


彩奈「あははっ、本当にツンデレなのかも」


若葉「彩奈?」


彩奈「あっ、ご、ごめん……そんなに怖い顔しないでよぉ」



別に怖い顔なんてしてないけど……。

でも、私はあの二人が嫌いだ。昔からの知り合いだからって無闇に話しかけてこないで欲しい。

それは葉山くんと戸部くんのことが本当に嫌いだからとか、そんな理由じゃない。


私と彼らのカーストは違うのだ。


私はクラスの最底辺、根暗で陰湿なボッチ女。

対してあの二人はクラスのトップ、明るく優しく、誰にでもいい顔が出来る人気者。

そんな対極な私たちが仲良くなんかできない。

いや――周りがそれを許さない。



???「ほら、また……」


???「なんで葉山くんたち、あの子とあんな仲良いの?」


???「全然キャラ違うし合わないのにねー」


???「っていうか、めっちゃ感じ悪くない?」



若葉「……はぁ」



ほらね、こうなる。

誰からも好かれる人なんていない。

私が何かをした訳じゃなくても私のことが気に入らない人たちは必ずいる。

彼女たちからすれば、「葉山優斗と戸部瞬、クラスの人気者と仲の良い暗い女」はそれだけで気に入らないのだ。


別に他人から何を思われ、何を言われても構わないけど……気にならないかと言われれば、それはまた別の話。

私だって人間だから、陰口はそれなりに精神的にくるものがある。


だから関わらないで欲しいんだ。

だから話しかけてこないで欲しいんだ。

だからボッチがいいって言ってるんだ。



彩奈「若葉ちゃん……」


若葉「ん、なに?」


彩奈「……ううん、何でもない」



クラスの子達の陰口に気付いたのだろう、彩奈が悲しそうにこちらを見つめてくる。

大丈夫、私には彩奈がいる。

父さんなんて独りでこれに耐えてたんだから、私が耐えられない理由が無い。



若葉「……だから、いけ好かないって言ってるのに」



何も分からず、何も気付かずに話しかけてくる葉山くんも。

分かってるくせに絡んでくる戸部くんも。


私は苦手だ。




…………………

…………

……





放課後とはなんと素晴らしい言葉の響きだろうか。

学校という名の個性破壊場での授業を終え、あとは天国である自宅へと帰還するのみ。

朝通った道と同じとは思えない程に景色は輝き、足取りも軽くなる。

教室から昇降口に向かうことさえウキウキしてしまう程だ。


今日は帰って読み切っていない小説を読もう。そして寝る前に二度読み、これが至高。



???「すみません、ちょっといいですか?」



いや待てよ?確か今日はラノベの新刊が出る日……しまった、あっちも読みたい。

くっ!どうする?続きが読みたいのは勿論だが、新刊も同じくらい読みたい……けど、やっぱり読みかけっていうのもアレだし、いやでもでも……。



???「あ、あの……比企谷さん?」


若葉「……へ?」



突然呼ばれた自分の苗字に応答が遅れた上、ものすごく間抜けな声を出してしまう。

呼ばれた方へ振り返ると、見覚えのある女子が一人。



???「やっと気付いてくれましたね、さっきから呼んでたんですけど」


若葉「え、えっと……」



少しテンパった脳を落ち着かせ、フル回転させる。

え、なに?だれ?なんでこの子、私に話し掛けてるの?

あ、ダメだ落ち着けてない。


確かこの子は、同じクラスの……子。

名前は思い出せないけど、クラスのまとめ役をよくしている子だ。

クラス上位カーストに属する一人であり、私が見た中では知性のあるタイプ。


そんなリア充(笑)が何故私みたいな陰湿根暗ボッチに声を掛けるんだろうか?

喧嘩売ってるのか?罰ゲームか?

理由の如何に関わらず返り討ちにしてやろうかしら。



???「急に呼び止めてしまってごめんなさい、比企谷さんに頼みたいことがあって」


若葉「私に、頼みたいこと……?」



あ、ダメだコミュ障出ちゃってる。

返り討ちどころかメンタルブレイクしそう。



若葉「えっと、ごめん……あんた、誰?」


???「……同じクラスなんですが」


若葉「……だから、ごめんって言ったでしょ」


???「はぁ。私は名取凪沙です、次は忘れないで下さいね?」


若葉「あ、はい」



名取凪沙ね、あーはいはいそんな名前だった気がするわ。



若葉「それで、名取さんが私に何の用?」



早く帰って本読みたいんだけど。本屋に寄らなきゃいけないから急いでるんだけど。



凪沙「比企谷さんは確か、まだ部活に所属していませんでしたよね?」


若葉「え?まぁ、うん」


凪沙「では、私と部活動をやりませんか?」


若葉「ん?」



あれ?おかしいな……私の聞き間違いかな?

部活がどうとか聞こえたけど?



若葉「ごめん、もう一回言ってもらってもいい?」


凪沙「私と一緒に、部活動をやりませんか?」


若葉「…………」



ふむ。




若葉「やりません。じゃ」



話の内容がどうあれ、面倒な香りしかしない。

こういう場合における行動……私の人生経験が導き出す答は、触らぬ神に祟りなし、これに尽きる。

帰ろ。



凪沙「ま、待ってください!せめて話を聞いて――」


若葉「聞かない。理由がどうあれ今日初めて会った人と何かをするつもりは無いし、そもそも私は部活に入る気も無い。聞いたところで何も変わらないから」



大体何だって二年のこんな時期から部活なんてせにゃならんのだ。



凪沙「待ってください!」



早口で捲し立て足早に去ろうとする私の腕を掴む名取さん。

流石の私も振り払ってまで逃げようとはせず、ため息をつきながら振り返った。



若葉「……なに」


凪沙「話を聞いてください」


若葉「はぁ……聞いても変わらないって言ったでしょ」


凪沙「変わります。あなたは必ず考えを変える筈です」



なんだこの女、妙な自信と言い切る態度が気に入らない。

やっぱりリア充(笑)は調子に乗るからいけない。ここは毅然とした態度でその謎の自信を叩き潰してあげなければ。



若葉「じゃあ話してみなよ、聞いてあげるから」


凪沙「ありがとうございます」



律儀にお礼を言うあたり、そこら辺の猿みたいな連中とは違うんだろうけど。

そもそも何故私なのか。部活がしたいなら他の奴らと勝手にしてればいいのに。

まぁ理由を聞いてからバッサリと断ってやろう。それで私と名取さんとの関係は終わりだ。



凪沙「私があなたと一緒にやりたい部活というのは――奉仕部なんです」


若葉「っ!……え?」



頭の中で用意していたお断りのが口から出ない。

耳慣れない言葉でありながら、聞き慣れた言葉が脳を揺さぶったからだ。



若葉「……なんで、奉仕部を知ってるの?」



奉仕部――私の父が高校時代に所属していた部活であり……私の両親が、出会った場所だ。

部長である雪乃さん、そして父さんと結衣さんのたった三人の部活……父さんたちの卒業を機に廃部となり、それ以来無くなったまま。

無くなってから十年以上も経っている部活を、どうして彼女が知っているのか。



凪沙「比企谷さんのお父さんは、かつて奉仕部に所属していたそうですね」


若葉「なんで父さんのことまで……」


凪沙「調べました」


若葉「……なんで?」


凪沙「奉仕部を復活させるためです」



今のなんでは、どうして知っているのかを訊いたつもりだったけど……もうそっちはいい。



若葉「なんで復活させたいの?部活なんて他にいくらでもあるし、私じゃなくてもいいでしょ」


凪沙「私がしたいのは奉仕部です。そして、比企谷八幡さんの娘であるあなたと一緒にしたいんです」


若葉「……なんでそこまで?」


凪沙「奉仕部は……あなたのお父さんが残したものは、私にとってとても大切なんです。無くなったままなんて嫌だから、比企谷さんと奉仕部を復活させたいんです」


若葉「…………」



彼女に何があったのかなんて私は知らない、奉仕部が彼女に何を残したのかも分からない。

でも、ここまでしてるのだから、名取凪沙の言葉に嘘は無いのだろう。

本気で……本心で奉仕部という部活を復活させたいと願っているのだろう。

その為に、比企谷八幡の娘である私にも協力して欲しいと言ってきているのだ。


……でも。



若葉「……私には関係無い」


凪沙「なっ!?」


若葉「名取さんがどういうつもりなのかは知らないけど、私は奉仕部に入るつもりは無い。協力するつもりもね」


凪沙「まっ、待ってください!あなたのお父さんは奉仕部で多くのものを残したんです!たくさんの人を救い、守ったと聞いています!比企谷さんは――」


若葉「私と比企谷八幡は違う」


凪沙「っ!」



父さんが私と同じ年の頃に何をし、何を成したのか、そんなもの私には全く関係が無いことだ。

私と父さんは違うのだから。



若葉「悪いけど、私は父さんみたいなお人好しじゃないんだよ……それじゃ」


凪沙「……私は!あなたが入ってくれるまで諦めませんよ!」


若葉「…………」



最後の言葉に、私は返事をしなかった。

本屋に寄る時間が無くなってしまった、今日は真っ直ぐ帰って……読みかけの小説を読もう。

振り返らずに歩きながら、そのことだけを考えていた。





…………………

…………

……








後書き

読んでいただいてありがとうございます。
こっちはゆっくり更新していくつもりです。『やはり俺の結婚生活はまちがっていない。』もよろしくお願いします。
いろは以外のSSも書こうかなと思っている今日この頃です。


このSSへの評価

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2017-09-02 17:21:51

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1件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-09-11 21:02:26 ID: 5V9hXawa

一人ノリツッコミは笑う

もう少し文章見直した方がいいのでは


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