2017-11-07 20:50:53 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い


前書き

44回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

ーそれでは、本編をはじめましょうー


↑前 「提督と白露」

↑後 「提督と遠征」




提督と改2(文



ー執務室ー



「へーいっ♪て・い・と・くぅっ!」


確認するまでもない。廊下から とったかとったか 響いてきた足音

元気なのを元気なままに打ち開かれた扉に いつもの声


金剛「今日も素敵だねっ…ぇ?」


本音が半分、リップサービスも半分くらい

とはいえ、私の提督がいつも素敵なのは確定的に明らかなので

これはもう真実と言っても差し支えないのじゃなかろうか


Q・E・D…証明完了


そう、思っていた時期が金剛にもありました


突然 飛び込んできた金剛に驚くでもなく

「今日も元気だね、金剛さんは」机の上から顔を上げ、軽く言葉を掛ける皐月


そこはいつも通り。提督の様子に目を奪われつつも、なんとか「はぁいっ」と手を振り返せた

問題は次、ソファの上で横になっている提督

そこもいつも通り、寝顔だって可愛いものだ。それでも素敵と言い切った自分の色眼鏡は伊達ではない


なのだが


はたして、この状況はどう見たものか

寝苦しそうな提督、そのお腹の上に馬乗りになっている文月

無論、総員起こしが掛かりそうな時間はとうに過ぎてるので「さっさとおきろー」との言は正しい


間違ってるのは何だ?

眼鏡の度数か、起きない提督か、馬乗りになってる文月か、止めもしない皐月の方かもしれない

けれど、それが正しくも思えていた。一つ一つはおかしいのに、全体で見るとそれがすっかり嵌っている


日常、そういう事なんだろう

それが金剛の日常で、提督にじゃれついている文月に何を思うでもなく声をかけていた


金剛「へーいっ文月っ、改2おめでとーっ!!こんぐらっちぇれーしょんっ♪♪」


「いぇーい♪」親指を立て、サムズアップをする金剛さん

素直に、純粋に、ただ妹の成長を喜ぶような姉の姿は眩しくも見えたが

その割に、周りの空気は氷の様に固まっていた


皐月「あ…」


反射的に顔を上げ、金剛の方を見るも時既に遅し

空いた口は塞がらず、飛び出た言葉は戻らない

恐る恐ると下がる視線は、自然と文月の方を伺っていた


金剛「ん?」


頭に疑問符を浮かべながら皐月につられて視線を落とす

微動だにしない文月の背中、さっきまで提督のお腹を捏ね回していたのが嘘のよう


提督「へぇ、改2か。良かったじゃん…」


うっすらと目を開けた提督

ぼんやりと、文月を見上げると曖昧に笑みを浮かべて手を伸ばした


文月「うんっ。すっごいでしょー、着替えてくるからちょっと待っててねー」


伸ばされた手に軽く頭を下げると、提督の指が頭を撫でていく

一頻り頭を撫で終えると、名残惜しそうに頬をくすぐりながら指が離れていった


文月「それじゃ行こっか、金剛さん」


弾みを付けて提督の上から降りる文月


金剛「へ?どうして私?」


金剛の疑問を置き去りに、あれよあれよと扉の向こうに引きずっていく


文月「自分の胸に聞いてみなよ…」


司令官の耳には入らないように呟いていた

新発見、感情というのは度が過ぎると一周して冷静になるらしい

いやさ、司令官の前で笑顔を保っていられたのは流石文月さんとしか言いようがない、自画自賛をしても良い

司令官に撫でてもらって、多少溜飲が下がったのもあるかもしれないが、それにしたって度し難い



ー執務室前ー



金剛「あの、あのっ、金剛が、金剛が悪かったから…」


ここまでくれば金剛にだって察しは付いていた

良くは分からないが…いや、機雷に触れた覚えはあった

提督の口から出た「良かったじゃん…」の言葉

まだ知らなかった。と言うことは、いの一番に自分から報告したかったのだろうと

今更ながらに触れた機雷の大きさに戦々恐々としてくる


文月「別に、怒ってはいないよ?怒ってはね…」


但し機嫌は悪い、凄くとっても大層に


金剛「うそっ!声が怖いわっ!!」


普段、雲のように浮ついている彼女の声音は今や落雷一歩手前

嵐の前の静けさ。すぐに荒れるのが分かっているのに、波の1つもおこらない不気味さが漂っていた


文月「怖い?あたしが?まさか…」


だって、文月はいつもこんな声だもん…


姉の口癖は割と便利だと思った



ー執務室ー



「いったぁぁぁぁいっ!!」


卯月のような金剛の鳴き声だった

扉越しでも朗々と聞こえる完璧な悲鳴である


望月「まぁ、そうなるよな…」


サッカーよろしく真正面から浮いている機雷を蹴飛ばしたんだから


提督「なに?望月も知ってたの?」

望月「まぁ…」

提督「私だけ仲間はずれ?提督寂しいわぁ…」


後ろから望月を抱え上げると、その髪に顔を埋める提督

「暑苦しい…」とは言いつつも、こそばゆそうに身体を揺らすぐらいで

結局、2人でじゃれ合ってるだけだった


皐月「文月が自分で言いたいって言うだもん。仕方ないじゃん?」


気持ちは分かる。金剛さんを怒りたくなる気持ちも そこそこには

せっかく司令官を ときめかせる良いタイミングだったのにって、傍から見ててもそう思う


望月「皐月姉の時とはえらい違いよな」


着替えさせ、司令官の所に見せに行くまで丸一日

とてもじゃないがとてもじゃない…。あたしらが どれだけ ヤキモキしたか分かってるのだろうか、この姉は


皐月「良いでしょっ、ボクの話は…」


瞬間、顔を赤くしてそっぽを向く皐月

思い返したのはいつぞやの、司令官と過ごした夜の事…


皐月「今は文月がっ」

望月「いや…すんなり着替えてくるだろ」


「なぁ?」と、同意を求めるように司令官の方を伺ってみれば「だな」と、なんでもなく頷いてくれた


皐月「ぅっ…。そんなのわっかんないじゃん」


もしかしたら急に気恥ずかしくなったりするかもだし

金剛さんがネタバレしたおかげで調子が狂ったりするかも知んないし


それからそれからそれから…と、あれやこれやと考えるけど、そのどれもが いまいち想像できなかった

むしろ、司令官達のの意見に同意したほうが余程しっくりくる


それでももし…。何か理由をつけて少しでも迷うようなら…今度はボクの方が蹴っ飛ばしてやるんだと


提督「なに拗ねてんのさ、さっちんは?」

皐月「拗ねてなんかないしっ」


そう口では言ってるものの

合わそうとしない視線に、なにか含むように膨れるほっぺ

おまけに所々で荒くなる語気、これで拗ねてないなら随分とご機嫌斜めのようだ


望月「そりゃ、あーた。この後 妹とイチャイチャするとこ想像したら気が気じゃないだろ…」

提督「あー」


納得と、望月の胸の前で手を合わせる提督


皐月「誰が、そんなこと…」

提督「思ってない?」

皐月「…」


返事は返ってこなかった



ー執務室前・廊下ー



三日月「あ、文月…?ん…え、なに?」


すれ違いざま、ぷんすかと煙を吹き出しながら階段を降りていく姉と

その来た方には脛を抑えて転げ回っている金剛さん


三日月「えっと…なに?」


階段を下っていく姉の背中を見送って、もう一度金剛さんに視線を戻す

新手の遊びだろうか?パンジャンドラムごっことか? そんな思いつきを頭を振って追い払った


面白い娘だと思うけど、そこまで愉快な娘だった覚えはないし。なにより本当に痛そうだった

さっきの悲鳴のこともあるし、おそらくは文月に蹴っ飛ばされたんだろうけど…

何かしたのか、何をしたのか、多分にそうなんだろうとは思うけど取り敢えず


金剛「しくしく…しくしく…」


壁にぶつかり、回転を止めるパンジャンドラム(金剛)

かと思えばすすり泣きを始めだす。面倒くさそう…きっとその予感は間違ってないと思ったから


そろり、そろーり、こっそりと…


廊下に転がる金剛を迂回していく三日月


三日月「うわわわっ!?ちょっとっ!?」


スカートが何かに引っかる。いや、振り返ってみれば引っ張られている

ずり落ちそうになるのを慌てて抑えると、なんとかその指を振り払った


三日月「なっ、何するんですかっいきなりっ」

金剛 「お願いだよ三日月っ。いっしょに文月に謝ってっ」

三日月「あっ、ちょっ、きゃっ!?」


振り払われた手をまた伸ばし、三日月の細い足首にしがみつく

逃げようと後ろに下がるが、結果的に足を引っ掛けられる形になると

たまらずバランスを崩し廊下に尻もちを付いてしまった


金剛 「みぃかぁづぅきぃ…へるぷへるぷみ~」

三日月「えっ、ちょっ、金剛さんっ、離れてってっ」


倒れたのを良いことに、そのまま三日月に擦り寄っていく金剛

太ももを掴み、腰に手を野ばし、肩に手をかけ、上から押さえつける


金剛 「おねがいだよぉぉぉ」

三日月「ぇぇ…」


人の胸の上で泣きじゃくり始めた金剛さん

正直重たい、どかそうにもまるでビクともしやしない


三日月「どうしろっていうの…これ」


今日は厄日になりそうだった



ー工廠ー



夕張「それで、金剛さんは?」

文月「もっちろん。文月きっくを御見舞してやったぜっ」


親指を立てて勝利のポーズをとる文月


夕張「ご愁傷様…」


金剛にも文月にも、この言葉を送りたいと思った

私が金剛さんに話したのが原因と言えばそうだけど

ムードとタイミングは考えたほうが良いと思う、いやほんと…


夕張「はい、出来た」


新しい艤装に新しい制服、それに合わせてか文月自身も少し大人びたように見える

女の子の成長は早いと言うけれど、いつ見ても不思議な光景だ


文月「どうかな?」


その場でくるりと回ってみせる文月

長いポニーテルが後に続き、軽やかに弧を描いていく


夕張「うん。可愛い可愛い」

文月「えぇ…なんか適当くない?」


不満そうだわ。小学生並みの感想、それが年頃の女の子には物足りないらしい

けれど、小学生が女の子に素直に可愛いと言うか?と言えば多分NOだろう、8割方くらいはきっとそう

となると、家の提督もそういう事になるけれど…せめて中学生レベルは望みたい


まぁ、中学生もして変わらんと思うけど


夕張「適当くない。それとも褒めちぎってほしいの?」

文月「そりゃもう、だって褒めて伸びるタイプだし」


「えっへん」と、小さな胸を張る お嬢さん


夕張「そりゃ、あなたの お姉ちゃんでしょう?」

文月「姉に出来て、妹に出来ない道理があるもんかっ」

夕張「姉より優れた妹なんて…とも言うわ」

文月「でも私達の場合って、妹のが強いよね…」

夕張「マジレスやめい」

文月「あはははははっ」


ころころと笑い出す文月

本当に、愛らしいというか、愛くるしいと言うべきか。どちらにせよ…


夕張「そうやって、提督の前で笑ってあげればきっと喜ぶわよ?」


だからって、あの人が素直に可愛い言うかは五分五分だけど


文月「ぉ…」


想像でもしてるのか、笑顔に代わり何か考え込んでいる


夕張「…今更恥ずかしいとか?」

文月「逆だね」

夕張「逆?」

文月「うんっ、どうすればもっと司令官にときめいてもらえるかなーって?」


普通に行っても可愛いと言われる自身はあれど、それだけじゃ物足りない

一日中、背中に張り付いて焦らしてみるのもいいかな?

こっそり行って脅かしてみるのも良いかも?


が、その全てのプランは金剛さんによって難易度を跳ね上がっているのは言うまでもなく

ともすれば…そう、女の子の最終兵器は


文月「色仕掛け…とか?」


なにを想像したのか「きゃっきゃっ♪」言いながら身体を捩り始める文月

思い返せば提督がよくやってるポーズではあるが、文月がすると随分と可愛らしい


夕張「色仕掛けって…あーた…」


そりゃ、魅力的にもなりましたけど

まず何色で仕掛ける気なのかという疑問と地味に痛い現実

「きゃーはずかしー♪」とか悶ている文月

フリなのか、虹色の妄想を膨らませているのかは置いといて、空いた手で叩いてくるのは止めて欲しかった


夕張「無色透明が何言ってんだが…」


おませさんのおでこを弾く、と、同時に反撃が飛んできた


文月「文月ぱんちっ」

夕張「おっとっ」


間一髪、体をそらして拳を避ける。真っ直ぐな良いストレートだった


文月「失敬なっ、夕張さんぐらいはあるもんっ」

夕張「おっと…」


久しぶりにこの話題がこっちに飛んできたな

好意的に取れば理想的なサイズであるとも言えるが、取り敢えず…


夕張「まずは改に戻してから続きを聞きましょうか」

文月「すみませんでしたー」

夕張「よろしい」


ダイナミックに土下座謝罪をする文月だった



ー睦月達のお部屋ー



睦月「あちゃー」

如月「やってしまったわねぇ…」


頭を抱える姉と静かに首を振る姉

仕草は違えど思う所は大体同じのようだった


三日月「うん、だよね…」


悪気はなかったとは言え、文月のターンを横から掻っ攫ってしまったのに違いはない

文月きっくの1つで済んだのなら安いものではないのかと


金剛「ですが…。なにかこう、なんとかこう…」


胸の前で合わせた指先を捏ね回しながら、やり場のない感情を誤魔化している金剛さん


言ってしまったものは仕方ない。聞かれてしまったのも同様に

埋め合わせるにしろ謝るにしろ、何かいい手はないものかとお姉ちゃん’sにお伺いを立てているのが現状


睦月「でも、文月ちゃんならもう怒ってないと思うよ?」


うちの妹はそんな根に持つ方ではなかったような?


如月「たまに掘り返されるのは覚悟するべきだけど」


根に持つ方ではないけれど、忘れた頃に釘を刺しにくる方ではある


金剛「そういうの根に持ってるって言いません?」

如月「まさか、ただ面白がっているだけよ?」


特に金剛さんは反応が素直だから、からかいたくなる気持ちも良く分かる


金剛「あなた達 姉妹はどうしてこう…」


がっくりと項垂れる。悪戯をすることに躊躇がないというか、余念が無いというか

あの人の艦娘だからと言うならそうだけど、それなら私も含まれてしまうのでそこは否定したい


如月「問題は文月より提督かしら?」

睦月「それにゃー…」


頬に指を当てて考え込む如月の隣で、うんうんと頷いている睦月


知らないうちなら奇襲もかけられたでしょうけど

知られた今となっては、あの人がどう動くのか…

検討は付けど、ついた所で打つ手がないのがどうにも


睦月「まずお部屋には居なくなるよね」

如月「屋根の上か、多摩さんの所か…だとしても…」


文字通り、高みの見物だろう。普通に近づいたとて逃げられるのが目に見えている

満足すれば出てくるとは思うけど、それがいつかまでは…


金剛「つまり、金剛が提督を捕まえれば…」


そうだ、雲隠れした提督を捕まえて文月と二人っきりにできれば

チャラとは行かないでも、いい感じに埋め合わせにはなるのではなかろうか?


如月「それはそうだけど…」

睦月「金剛さんに出来るかにゃ?」

金剛「出来ますともっ」


胸を張っての宣言。立ち上がり、左手を掲げ、見せつけるように手を開く

煌めく指輪は絆の証、いつも隣に あの人がいる感覚を辿っていけば、簡単なことでございますっ


金剛「提督の嫁と書いて金剛デースっ。絆は此処にっ、エンゲージっ!!」


しーん…


しかし何も起こらなかった

いつもなら ぱーっと咲き乱れる桜吹雪もこの時に限っては すんとも出ない


如月「読まれてるわ…」

睦月「バレバレだし…」


きっと今ごろお腹を抱えて笑っているのが嫌というほど想像出来てしまう


金剛「ちっくしょーっ!?あの人はっ、ほんとにもうっ、もうっ、三日月っ!!」


地団駄を踏むだけ踏んだかと思えば、三日月の手を掴んで歩きだす


三日月「へ?ちょっ…えぇぇっ、まって、まってってっ、どこに行くのっ!?」


向いた矛先、驚きに背筋を伸ばす暇もなく、引きずられるように立ち上がる


金剛 「徒歩(かち)でいくよっ!家中をひっくり返しても見つけてやるわっ」

三日月「そんな無茶なっ」


普段使う場所だけなら兎にも角

一応でも元廃校だ、使われてない場所なんてどれだけあるんだか分かったもんじゃない

それを司令官と本気で隠れんぼなんて、文字通り雲を掴むような話

正直 申し上げたって勝ち目なんてありゃしない


三日月「姉さんっ、たすけ…」

睦月 「いてらー」


伸ばした指先は届くことはなく、笑顔の姉に見送られる三日月だった




如月「ほどほどになさいね」


予感はしていたし、それは案の定でもあった

あんな面白い金剛さん、近くで見なきゃ嘘でしょうし


睦月「ていとくーっ」


窓に飛びかかる睦月

あわや衝突かと思えば、いつのまにやら提督の胸の中に抱かれていた


提督「ダメとは言わないのね?」


楽しそうに、愉快そうに、飛びついてきた睦月の癖っ毛を撫ぜ回す提督


如月「如月の言うことなんて聞いてくれないんでしょう? どうせ…」


わざとらしいと自覚はしつつも、それでも拗ねては見せておく


提督「好きって言ってくれたら幾らでも」

如月「はぁ…」


溜息一つ。分かっていた事とは言え…

それでも、そう言われれば言わずにはいれない自分も大概だとも思いながら


如月「愛してるわ、提督」


微笑みに迷いは無く、真っ直ぐに届けられる好意の言葉


睦月「睦月も睦月もーっ♪」


右に同じと、妹に習う睦月であったが、その内容はいささか食い違ってる気もする


提督「私もだ…」


如月の言葉に頷きながら睦月の頭をくしゃりと撫で終えると、何時のまにかその姿はなくなっていた




如月「いらっしゃい」

睦月「はーい」


招かられるままに如月の前に腰を下ろす睦月。その頭は提督のお陰で見事にアホ毛が乱造されていた

慣れた手つきで櫛を取り出すと、その飛び跳ねまわってる頭を宥めにかかる


睦月「好きって言わなくてよかったの?」


ちょっとした疑問だった

提督がああ言うなら「好き」って言えば多分に止めたと思う

そすれば、提督を文月に引き渡してこの騒ぎも解決だったのに


如月「良いのよ」

睦月「さよか…」


それでも妹は「良い」と言う

髪を撫でる手つきはいつもより優しくて、それで良いんだと実感はできた

が、それの何が良いのかと、首を傾げずにはおられない


如月「文月ちゃんの邪魔をする事もないでしょう?」

睦月「それならやっぱり…」

如月「そういう遊びなのよ」

睦月「隠れんぼが?」

如月「鬼ごっこかもしれないわ?」

睦月「面妖な…」

如月「ほんとにね…」


最後に一撫で。ぼっさぼっさだった睦月の髪も、おしゃべりと一緒に落ち着きを取り戻していた



ー執務室ー



文月「しれいかーんっ」


元気よく扉を開く

多少の手違いはあったものの、それでも司令官に見せびらかせずには居られなかった


長月「いないぞ…」


バッサリと斬り捨てるようだった

ソファの上で書類に目を落としたまま文月の所を見もしない


文月「知ってたよっ」


そりゃそうだ、居るわけがない。一応覗いてみただけだしーって言い訳をしても良いくらいだ

先に司令官の身柄を確保出来なかった時点で文月の負けだった

オマケに改2の情報まで知られているとなれば、不意打ちで逃げ場を塞ぐもできやしない

捕まえてしまえば可愛いと言わせる自信はあるのに最初の階段が高すぎる


文月「どこに隠したのっ」


だからこれはただの八つ当たりで、悔しさとか もどかしさを妹にぶつけていた


長月「隠してどうする…」

文月「イチャつくのさっ」

長月「ならそうしてくれ…」


それっきり興味をなくしたのか、手元の書類に意識を戻す長月

さっきの金剛といい、あっちにもこっちにも付き合っていられなかった


文月「あれ、皐月お姉ちゃんは?」


長月の隣へ腰を下ろす

とりあえず待っていたら戻ってくる…わけもないだろうけど

この後の作戦を考える必要はあったから


長月「海に出てるよ」

文月「ながながが代わり?」

長月「ながながが代わりだ…」


ページをめくる長月。こっちを見るでもないけれど

涼しい顔で仕事を片付けている横顔は少しカッコイイとか思ってしまった


長月「似合ってるな…」


思い出したような お褒めの言葉。嬉しいことは嬉しいのだけど


文月「そういうのはもうちょっと気持ちを込めてだね」

長月「そうだな。かわいいかわいい…」


不満に答えたのは右手の一つ

無遠慮に頭に置かれ、無造作に撫でくり回される


文月「ぶー…」


言ってるだけ。いや、実際そうは思ってくれてるんだろうけど

仕事の手は止まる気配もない上、視線は書類に落ちたまま

扱いが二の次なのがどうにも面白くなかった


文月「菊ちゃんはっ、どうっ、文月可愛い?」

菊月「良いんじゃないか?菊月にはよく分からんが…」


長月だってかわいいと言っているし、良くは分からないが変ということも無いはずだ

次いでによく分からん書類の束を机の上に放り投げてもおく


菊月「司令官も好きそうな感じだしな」


そもそも、皐月と同じ制服なのだから外れることもないだろうし


文月「そこの心配はしてないんだけどねー」


だからと言って視線を釘付けにする努力を怠っていいとは限らない、ここ重要


菊月「そうか。なら、金剛の心配をした方が良いかもな」

文月「金剛さん?」


首を傾げた時だった


「てーいーとーくーっ、どこですかーっ!!」


菊月「な?」

文月「ちょっと行ってくる」


またしても立ちふさがるか金剛さん

選択肢は大きく2つ、先に司令官を確保するか、金剛さんを抑えるか…


文月「ぇぇぃっ、ままよっ」


考えてる時間がもったいなかった




駆け出していくポニーテールが扉の隙間に吸い込まれていった後


菊月「慌ただしいな」

長月「いつものことだろう」

菊月「まあ…」


そのまま口を閉じてしまえば静かなものだった

だからこそ余計に、階下から聞こえるドタバタは文月が加わったせいか、よりはっきりと聞こえてくる


菊月「私も、改装したらああなるのか…」


何となくだった

少なくとも、姉2人がそうだったのだから自分もあるいはと考えていた


長月「そうだな…ん?」


右から左へ流ていく言葉

適当に頷きかけた所で、その言葉尻を慌てて捕まえる


長月「ああって…」


書類から顔を上げ、意味もなく執務室の扉に目を向ける

思い描くのは文月の背中、思い返すのは皐月の赤い顔


菊月「変か?」

長月「変ではないが…」


急だなとは思っていた

そういう年頃と言えばそうなんだろうが、菊月がそういう事に頓着するのが意外だった


そう、変ではないのだ

妹だって女の子だし、可愛いとか言われたいと言い出しても それは良い事だとも思える

けど、けれど、落ち着かないのは何故だろう?やきもち…だなんては思いたくはないが…

その可能性を最初に考える当たり、間違ってもいないのかと…


菊月「しかし機銃や大発を増やしてもなぁ…」

長月「ん?」


けれど、妹の心配は真逆の方向にあったようだ

期待はあれど若干の憂鬱、とてもじゃないか色恋に惚けてる顔ではなかった


菊月「上着はマントみたいでカッコイイけど…」

長月「そっちかよ…」


思わず溢れた溜息、一緒に肩の力も抜けていった

菊月が相変わらずのようで安心したというか、それはそれで不安でもあるというか


菊月「どっちだ?」

長月「なんでもない…」


まったく、人騒がせな話だ

落ち着いてみれば、勝手に桃色の考えを巡らせていた自分が恥ずかしくもなってくるが

そこは紛らわしい事を言う妹のせいにしておこう


菊月「ふーん…」


内心、面白くはなかった

また菊月を子供扱いしているなと、そんな顔しているまでは察しが付くが

その内容にまで思い至らない当たりは、やはり まだ子供だという事なのか


菊月「でもまあ…大きくなるのは良いことか…」


身体を見下ろし、無い胸を手を当てる

多少背でも伸びれば この胸のもやもやも解決するのだろうか

まずは形からとも言うし、大きくなっても損は無いはずだ


長月「…」


いや、どっちだ…


妹の言動に振り回される姉だった



ー廊下ー



「あ」


声が重なり足が止まる。目の前には司令官

その顔を見るだけで、いつかの夕日に染められた顔が、思い出したように赤くなる


水無月「お、おはよう…」

提督 「おはよ みぃ」

水無月「う、うん…」


ぎこちない挨拶。それでも朝だもん挨拶くらいはした方が自然を装える筈だった

司令官の顔が目に入る、いつもと変わらない…そう、あの時もいつもと変わらない顔で…

ふと脳裏に過る光景に、知らず口元に手を触れていた


提督 「なに?口元抑えたりなんかして?」

水無月「いや、あっ、なんでもないなんでもないっ」


言われて気づいて手をはなす。これじゃ意識してますよーってアピールしてるようなものだった

その手を後ろへガッチリと、変なふうに動かない様 手の平を合わせる


提督「顔赤いよ?大丈夫?ちゅーしようか?」

水無月「しないしないしないしないっ!?」


顔を覗き込んでくる司令官から慌てて飛び退る


提督「昔は みぃの方からせがんできたのに、提督寂しいわぁ…」


およよよよと、可愛くもない泣き真似をする提督


水無月「昔って、いつの話してんのさっ」

提督 「思い出は作るものだよ?」

水無月「捏造すんなっ」

提督 「まるっきり嘘ってわけでも無いじゃない?」

水無月「それは…まぁ…」


見に覚えは無くもなかった。けど、あの時とは状況が違うし

仲良くなるのに手っ取り早いかなって、若さゆえの過ちといいますか

だとしても、まうすちゅーまうすなんて想定外だし


水無月「あれは ほっぺにだったでしょ…」

提督 「つまり…」

水無月「だめっ」


言わせるものか「ほっぺになら良いよね?」なんて言わせてなるものか

言わせた後には、なんかゴネられて良い事にされそうな予感しかしない


提督 「まだ何も…」

水無月「ダメったらダメったらダメなのっ。とにかく今はっ」

提督 「ふーん…」


一歩、踏み込んだ

そうして、いっそこのまま唇を奪いそうな勢いで顔を近づけると、水無月の頬に手を添える


提督 「いつならいい?」

水無月「そんなの…分かるわけ…」


顔も逸らせず、逃げるように視線を下げる

見える足元、汗ばんだ手の平はズボンを握りしめていた


「ああああああっ!?」


提督「なんだ?」


油断したと言えばそう。予定外ではあるが、予想外でもない程度


「司令官っ!」→「何やってんのっ!?」←「提督っ!」


前門の金剛と、後門の文月。鉢合わせの合間に丁度 居合わせてしまったようだ


提督「みぃ。後は任せた」


逃げ場はないが、必要もないので問題にもならない

軽く水無月の肩を叩くと、音もなくその場から逃げ出した


水無月「へ、うそ…」


ホントだった。顔上げる、そんな瞬き一つの間に居なくなっている

当然、矛先はこっちに来た


金剛 「水無月っ、提督と何してたのっ」

水無月「何もはしてないよっ」

文月 「そんな顔赤くしちゃってっ、何もなかったわけ無いじゃないっ」

水無月「あんなの別にっ、何かの内に入らないからっ」

金剛 「ちゅーなのっ、ちゅーをされたのねっ!」

水無月「されてないっ、まだされないからっ」

文月 「まだっ!?まだってなにっ、後でするつもりなのっ!?」

水無月「しないからっ!?」


さすがに多分とまでは口にしない

口にしようものならもっとややこしくなるのが目に見えていた


金剛 「どうしてっ!」

水無月「どうしてっ!?」


意味がわからない。疑惑をもたれただけで、詰め寄られるのに

今度はちゅーしろとおっしゃられるか


「この間はしてたのに…」


騒がしい中で、いやに耳に残る言葉だった

「え…」と、金剛と水無月が声を合わせ、問答を止めて文月さんに顔を向けている


金剛 「ちょっと詳しく…」

文月 「んとねー」

水無月「まってまってまってってっ!!」




大鳳「野暮なことは言わないものよ?」


文月の口のを抑え、水無月を救い上げるたのは大鳳だった


水無月「たいほーさーん…ぇく、ぇく…」

大鳳 「はーい、よしよし」


しがみついてくる水無月の背中を落ち着くまで撫でさする

泣きたくなるのはまあ分かる

提督に ちゅーされて頭いっぱいになってる所にコレだもの、酷いタイミングだと本当に


金剛「だって、きになるでしょうっ」

大鳳「そんな、それくらいで…」

金剛「それくらいなもんですかっ」


「羨ましいっ」と、本音はダダ漏れである


文月「…大鳳さん、まさか…」


その違和感は余裕に見えた


大鳳「うふふ…」


不敵に笑う大鳳。あくまで、あくまで余裕の笑みである

その笑みは沈黙であり肯定だった


金剛「ひぃぃっ、ちゃっかりしてやがりますわっ」

文月「なんて恐ろしい娘なのっ…」


お互いに抱き合って、怖いものから逃げるように大鳳から距離を取る2人だった


三日月「…」


三日月は知っている。毎朝早くに、彼女が執務室から出てくるのを…

何をしてるかまでは知らないけれど、満足そうな彼女の顔を見れば大体の想像はついていた


なんて、言わないほうが良いよね、絶対…



ー北上様たちのお部屋ー



大井「お帰りはあちらですわよ提督」


笑顔。それを貼り付けて扉を指し示す大井


提督「あらやだ大井っち。いつもみたいに旦那様って呼んでくれても良いのに」


あと「照れてるの?」て付け加えたらめっちゃ睨まれた


大井「ぶっ飛ばしますわよ、旦那様」


あと「大井っちて言うな」って付け加えたら、めっちゃ笑われた


北上「…はぁ」


なんだろうねぇ…この、なんかねぇ…


「大井っちって言って良いのは北上様だけって?」「そう言ってんのよ」


何とも言いようのない光景だった

ケンカしてるようにしか見えないのに、その実そんなでもないっていう

あれだ、針とか灸でマッサージをしているような、見た目痛そうなのに そんなでもないっていう


じゃあ良いじゃん?問題なんて何もない、それが2人のコミュニケーションならそれもいい

一つ難を上げるとすれば、なんかこうモヤっとする点

3人でいるのに自分だけ会話に入れないから?それは合ってるような間違っているような


北上「まーまーまー。喧嘩するほど仲いいのは分かるけどさ」


続きそうな口論の合間に割って入ると、二人の手をひいて畳の上に座らせた


大井「別に喧嘩なんて…」

北上「なら追い出そうとしなくても良いっしょ?」


あれが喧嘩じゃないっていうなら、ほんとただ仲いいだけじゃなかろうか…

そう言うとムキになりそうなんで取り敢えずは黙っておく、あたしは大人でいたいのさ


大井「追い出すとかじゃ…ただ…」

北上「ああ、皆まで言うな、皆まで言うな」


大井っちの口を抑え、その先に蓋をする

どうせまた つっけんどん と、言葉を投げるのだろう。そんなの提督が喜ぶだけなのに

いや喧嘩じゃないなら わざとやってんだろうけど、それはそれで話が進まない


北上「提督もさぁ…。大井っちが可愛いのも分かるけど、今はこっちじゃなくて、あっちじゃん?」


ただでさえ金剛さんがやらかして、ドッタンバッタン大騒ぎしてるのに

さっさと文月と惹かれ合って、夕暮れ空にそっと指を重ねてきてほしいもんだとは思う


だというのに


提督「北上様だってかわいいよっ♪」


語尾に はーとまーく でもついてそうな声音だった

んや、ついてただろう。頬に手を添えて 「きゃっきゃっ」なさってらっしゃるもの


北上「北上様を褒めたってなーんもでないよ?」


そう、あたしはクールに返すのさ。ニヤけそうな顔を必死に抑えてね


提督「愛なら出る?」

北上「ためしてみるかい?」


差し出された手をとり、お互いに ゆっくりと顔を近づけていった


大井「…はぁ」


なによこれ、この、なに?


新手のにらめっこだろうか。顔を近づけるだけ近づいて2人で微笑み合ってる

正直 気味が悪いとも思わなくもない

けど、それだけだった。現在進行形で甘いにらめっこを続けているけど、一向に愛が出る気配がない


じれったい…


いっその事、後頭部をひっぱたいてやろうかと、あの距離だ是非もない

それで少しは進展するなら、それもいいかと…


北上「なーんてうっそぴょーんっ」


大井が手を振りかざしたその時だった


はにかみ笑いながら、両手でうさぎの耳を作って提督から離れる北上

照れ隠しなのか、必死に耳というか手をパタパタと動かしていた


北上「少しはドキドキしたかい?」

提督「そりゃもう、今夜は眠れないわ」

北上「なにより。んじゃ、子守唄は文月に歌ってもらいぃな?」

提督「はーい」


頭の上で手を折り曲げ、扉を指し示す北上様

一通りじゃれ合って満足したのだろう、素直に扉をくぐる提督の背中を2人で見送った




「その手はなんだい?」


振り返った大井っちの手が 上に持ち上がったまま固まっていた

こっちを向いた北上さんの両手が頭上でパタパタと跳ね回っている


そしてもう一度


「その手はなんなの?」



ー廊下ー



三日月「2人とも、ちょっと待ってってば」


喧嘩かな?と思いきや、我先にと とったかとったか先を急ぎだす2人

走りこそしてない、見た目だけならそうなんだけど

気を抜いている間にその後ろ姿は廊下の向こうへ隠れていた


慌てて追いかけはするけれど、走っている内にふと思う


あれ、これ、私なんで追いかけてるんだろう…ん??


元々 金剛さんに引きずられて巻き込まれただけ

その金剛さんは文月と張り合いだして、私のことなんて忘れているし

これ以上ついて回る理由はあるのかなと…


数秒後


走り出しかけていた足が止まる。余力で出た最後の一歩を軸にして回れ右


三日月「帰ろ…」


執務室に戻ろうと向きを変えた


卯月「みーかーづーきーちゃんっ♪」


ぴょんぴょんと、それはやってきた

我が姉上が、笑顔を浮かべてやってきた

ほっぷすってぷっと、テンポよく、跳ねて回って目の前に両足で着地する


嫌な予感がする。漠然とした想像に、一歩、姉から距離を取っていた


三日月「な、なに?」

卯月 「どして逃げるの?」

三日月「逃げてなんか…」


ぴょんっと、空いた隙間が埋められる

なにか、やっぱり何かがあるんだろう…予感は正しく、卯月の肩越しに嫌なものが見えてきた


瑞鳳「うぅぅぅづぅぅぅきぃぃぃぃっ!!」


やっぱりだ。巻き込まれてなるものかと、即座に回れ右を決め込むと


卯月「どこいくぴょん?」


手が引かれ、進みかかった足が引き戻された


三日月「仕事がまだ…」

卯月 「お姉ちゃんを見捨てるって言うのっ」

三日月「うんっ」

卯月 「ひどいっ」


ひどくなんてあるもんか

むしろ躊躇なく妹を巻き込みにかかる姉の方がいくらか酷いだろう


卯月「コレ上げるからっ」


掴まれた手に袖の下、紅白の布っきれを握り込まされる


三日月「もうっ、絶対コレが原因じゃないっ」


押し返そうとした時だった

卯月の両手に包み込まれると、表彰台の上ででもする様にそのまま掲げられた


卯月 「ずいほーっ、犯人捕まえたぴょんっ!!」

三日月「ちょっ!?」


手の平から溢れ出るのは紅白の布っきれ

ひらひらとはためくそれは、追いかけてくる瑞鳳の視線を釘付けにするには十分だった


瑞鳳「あなたもなの三日月っ」


完全に濡れ衣だ、人をブルータスみたいに言わないで欲しい


三日月「もうっ、やーだーっ」

卯月 「うぷぷぷぷっ♪」


結局、道連れを見つけてごきげんな姉に手をひかれながらしばらく鎮守府内を駆け回る事になった






カツカツカツ…とんとんとんとん…


廊下に響く軍靴の音

合わない歩幅を埋めるため、軽い方は若干駆け足気味だった


文月「どういうつもりかな?」

金剛「どうも?金剛は提督に用があるだけよ?」

文月「後にして、今は文月が先。分かるでしょ?」


カツッ…とんっ…


「木曾っ」「木曾さんっ」


木曾「お、おぅ…」


とつぜん肩を掴まれた。とつぜん裾を引っ張られた

見下ろせば文月、見上げれば金剛

もろもろ違いはあっても、二人して妙な迫力で迫ってくる


「提督は何処っ」「司令官はどこっ」


木曾「しらんしらんしらんっ」


両手と首を一緒に振って、知らぬ存ぜぬをアピールする

というか、お前らが捜して見つからんもんを 俺が知るわけもなく

もっと言えば、本気で逃げた あいつを捕まえられるかって話にもなる


金剛「嘘をつくと為にならないよっ」


だからって信じてもらえるとも限らなかった


文月「マントの下とかに隠してたりしない?」

木曾「いねぇよっ、そんなところにはっ」


潜り込んでくる文月を引き剥がし、ついでに2人からも距離を取る


文月「いるかも知んないじゃんっ、スカートの中とかさっ」

木曾「捲るだけじゃあきたりねーってかっ。どんだけだっ!?」

金剛「じゃあ何処なのよっ」


頭を抱える金剛。いい感じに煮詰まってきていた


木曾「んなもん…」


知らんと言いたいが、その辺に居るんだろうなぁとは思う

きっと…コレを何処かで見てるんだろうと思うと良い感じに趣味が悪い


文月「ぁっ…」


すっと鼻をくすぐる感覚に思わず振り返っていた

捜していたもの、司令官の匂い、そこにいるような、そんな気がして


文月「球磨さん…」


すっと目を細める。隣にはいないけど、その感じはまだ新しいものできっとさっきまで一緒だったんだろうと


球磨「くま?」

文月「司令官、どこ?」


有無を言わせない、イエスかノーしか認めない

そんな脅し文句を言葉尻に含ませて、球磨さんに視線を送る


球磨「くま…」


肩を竦ませ、道を開ける

廊下の背中を預けると、親指で元来た道の先を示した


文月「助かるっ…」


駆け出した。いま行った所でいるとは限らないけど、考えてる時間も勿体無い




「ぉぅっ」


変な声が聞こえた、絞られた布巾みたいな声だった


球磨「金剛はこっちだクマ…」


流ていくポニーテールを見送った後、続く白い服の襟を鷲掴みにする球磨

そのまま浮いた踵ごと金剛を引きずり歩き出していた


金剛「やーだやだやだやだっ、提督のとこいーくーのーっ、金剛が二人っきりにしてあげるんだからーっ」

球磨「くぅまぁ…」


うるせー、それが感想の一つ。子供かこいつは、それが二つ目


3つ目?ねえよそんなもん


三日月「木曾さ-んっ、ちょっとどいてどいてっ」

木曾 「お、今度はなんだっ」


向こうから駆けてくる三日月、それと卯月も

それとなく道を開けると、さらにもう一つの影も見えてくる


瑞鳳「まぁぁぁてぇぇぇいっ!!」


まあ、そうなるな。としか言いようのない


球磨「瑞鳳っ!」

瑞鳳「はひぃぃっ!?」


鶴の一声、蛇に蛙

球磨の一喝に背筋を伸ばして、慌てて急ブレーキを掛ける瑞鳳


球磨「ったく、どいつもこいつも子供じゃあるまいに…」


やれやれと首を振る球磨ではあったが


木曾「まあ、俺らの提督からしてそうだからなぁ」

瑞鳳「あ、それ私も思う」

金剛「そこが良いんでしょ?」


頷き合い、納得を交換する三人だった



ー母港ー



風が吹いていた。この頃は残暑も鳴りを潜め、日も陰ってくると海風が肌に心地よく感じる


提督「でもこの風、少し泣いています…とかどう?」

多摩「何をメルヘンなことを言ってるにゃ…」


護岸に並んで座る多摩と提督

何をするでもない。暇ではあったが退屈ってわけでもなく

一緒に眺めている夕日は、それはそれで綺麗なものだった


提督「夕日、綺麗だもの。メルヘンな気分にもなるさ」

多摩「多摩は花より団子だにゃ。夕日を見るとお腹が空いてくるにゃ…」


そろそろ良い時間。食堂にでもいけばきっと誰かのご相伴に預かれるだろう


提督「夕日か…何に見える?」

多摩「んー?みかん…」

提督「もう少し寒くなったらそれもいいな」

多摩「こたつが恋しいにゃぁ…」

提督「今から出す?」

多摩「暑いだけ。もう少し我慢…」

提督「だな…」


中身のない会話

ただぼーっとしながら、思うままに口を動かしていた


「しーれーかーんっ」


多摩「きたか…」


声が聞こえると同時に立ち上がる多摩


提督「見つかったか…」

多摩「いい加減にしておくにゃ」

提督「それはそう」


まあいい。日も暮れるし、そろそろ潮時なのはそう思う


「ふーみーづーきーっ、きぃーっくっ!」


多摩「にゃぁ…」


あくび一つ噛み殺し、漂ってくる香りに引かれて食堂に流されていく

後ろですったもんだと騒いでいるが、そんなもの多摩の知るところではなかった



ー食堂ー



ポーラ「あはははははははっ、おバカですね~金剛は~」


ポーラが笑っていた。机の上に突っ伏した金剛の肩を叩きながら笑っていた


ゆー「ポーラ…ほんとのこと言っちゃダメ…」


ポーラの腕を引いて金剛から引き離そうとする ゆー

けれど、酔っぱらいはびくともせずにワインボトルを傾けたまま、金剛に絡みついて離れやない


金剛「だってぇ…だってぇ…」


机の上に顎を乗せ、伸ばした手をばたつかせている金剛さん

多少の不満はあるにしろ、やっぱり埋め合わせが出来なかったのは口惜しい


ゆー「そんなの、あとで幾らでもすればいい…」


ひとつ屋根の下なんだから、機会なんて幾らでもあるし

そもそも文月がそんな事引きずるとは思えない…それをネタに揺すられるとは思うけど


金剛「いけませんっ、改2は今しかなれないのよっ」


コンバートなんて贅沢品、金剛達には用意されてはいないのだ

たとえどっちか一方のままってのが多いとしても


ポーラ「そっれっっをっっぅふっ、ネタバレするとか、あはははははははっ」

金剛 「いーわーなーいーでーっ」


聞きたくないと耳を塞ぐ金剛さん


ゆー「だからポーラ…ほんとのこと言っちゃダメって…金剛がかわいそう…」


ぐずる金剛の背中を優しくさすってあげるゆー


金剛「かわいそうって何ですかっ、かわいそうってっ」


まるで金剛がダメな娘みたいじゃないですかっ


ゆー 「何って、ホントのことだし…」

金剛 「ホントことは言っちゃダメなんでしょっ」

ゆー 「?」

金剛 「不思議そうな顔をしないでっ、あなた さっき自分でっ」

ゆー 「金剛…。言い訳はよくない…」

金剛 「ゆー…あなた。都合が悪くなると人の話聞かなくなりますよね…」

ゆー 「そんな事はない、ゆーは良い娘だもの。ね、ポーラ?」

ポーラ「はい~♪それはもうっ」

ゆー 「ほら?」


あてにならない酔っぱらいの言葉を借りて、小さく胸を張ってみせる ゆーだった




瑞鳳「なんか、ごめん…」


頭の冷えた瑞鳳が申し訳なさそうに目を伏せる


三日月「つーん…」


怒っちゃないが、理不尽に追い掛け回されたのだ

わざとらしくも、そっぽを向いて見せても許されると思う


卯月「ぴょーん…」


捕まった主犯(卯月)は瑞鳳の膝の上に囚われて、ほっぺを伸び縮みさせられている

なんて良くわからない光景。瑞鳳をからかうだけからかって満足したのか、大人しく弄ばれている卯月だった


弥生 「お疲れ様」

三日月「どこ行ってたの…」


そもそも、弥生が卯月を野放しにしてるから自分がこんな目にあったのではないか

それは八つ当たりなのはそうだけど、終始姿をくらませていた姉に聞かずにはいられなかった


弥生「酷い言い方。まるで弥生が悪いみたい」


そんな感情が言葉尻にでも乗っていたのだろうか

理不尽に責められた弥生が悲しそうに両手で 無表情を隠してみせた


三日月「む…。そうは、言わないけど…」


それでも言いたくなるのは姉の日頃の行いと、少しばかりの甘えかなとは思う


弥生「ううん、良いんだよ」


バツが悪そうな三日月の肩に手を置く弥生

そうして、耳元でそっとネタばらし


「だいたいあなたの予想通りだから…」


三日月「…」

弥生 「いたいいたいたい…」


それでさえ棒読みだった

思わず伸びた手を抑えることもせずに、弥生のほっぺを引っ張り倒す

少しは反省して欲しい所だけど「するわけがない」と言いそうで言われそうで

それは卯月も一緒だろうと思うと、頭が痛くなってきた




「ポーラっおかわりっ」

「おおっ、良い飲みっぷりですぇ。さぁさもっと のんでっのんでっ♪飲んだら脱いでっ♪」


三日月「…」


今度は向こうだった

あられもない光景、脱ぎ散らかされた衣服と漂ってくるお酒の香り

あと一枚もう一枚と脱いでしまえば、大分目のやり場に困ることになりそうだった


止めるべきか…

いや、なんかもう今日は色々ありすぎて、どうにでもなれと思わなくもないけども


弥生「平気」


赤く染まった頬を擦りながら、逡巡している三日月を制する弥生


弥生「あれは ゆーの仕事」


「ほら」と、姉の視線につられて見ると


「どうしてすぐ脱ごうとするの?ばかなの?おろかなの?」

「あー…」「いー…」


魚雷を突きつけられている2人

その鉄の冷たさもあってか、顔から血の気が引いていた


三日月「たくましいなぁ…」

弥生 「ねー」


何となく、何となくだった。同意する姉に何かを言いたくなっていた

けれど言葉が出てこずに、なんとなくその無表情を見つめていた



ー母港ー



気づけば日は落ち、見上げる空にはお星様と

それだけなら良かったのだが、それどころではなかった

突然の衝撃が飛び蹴りだったのに気づいた頃には、固いコンクリートの上の押し倒されていた


ズキズキと、痛む背中を持ち上げる暇もなく

肩を抑えられ、馬乗りになった文月の顔が視界を塞いでいた


文月「で?」


端的な言葉。それだけでは意味を成さないのに怒ってることは伝わった

次いでにその心当たりもあるし、分かっててやってるんだから言い訳のしようもない


提督「どれの話?」


それでもはぐらかそうというか、からかおうと口が滑るのは

性分というか、そういう生き物なのだと言わざるを得なかった


文月「全部だよっ」


肩を押さえつけていた手に力がこもる


文月「なんでいっつも ふらふらしてんのっ、待ってて言ったよねっ

   かと思えば みぃちゃんからかって遊んでるしっ、お次は多摩ちゃんなのっ」

提督「いや、多摩とは何も…」

文月「やかましいっ。改2だよっ、金剛さんがネタバレしてたでしょっ、着替えてくるの知ってたでしょっ」

提督「いや、だから余計に…」

文月「しゃーっ!!」


威嚇された、もはや言葉もなくなっている


文月「でっ!」


そして最初に戻る問いかけ


提督「こんどはどれ?」

文月「決まってんでしょうよっ。人を散々駆けずり回しておいてっ、これで可愛いの一言も無かったら怒るからっ」

提督「自分で言う?」

文月「しぃれぃかんが言わないからでしょっ。何でそれ言わせるだけなのに文月はこんな面倒なことになってんのさっ」


肩を掴む手に力が入る。抑えきれない感情のままに司令官の肩を揺さぶりまくった


提督「でも私 劇作家(シェイクスピア)じゃないから、ありきたりな言葉しか…」

文月「それでいいから、言えーっ!」


「可愛いよ、文月」


なんて、言わせてみれば随分とあっさりとしたものだった

納得はいかないけど、取り敢えずは押さえつけていた手からは力を抜く

「きゃっ言っちゃったっ」とか染まった頬に手をあてている司令官

見下ろせば見下ろすほどに毛色が悪いが…言う方も気恥ずかしいのは まぁ分かる…けど

どうせなら、どうせ手を当てるなら文月のほっぺにすれば良いとも思った


司令官の頬から両手を引き剥がし、自分の頬へと持ってくる


文月「もう一回。文月の事 ちゃんと見ながら言って」


だからなんだ、それがどうした、言わせてるだけじゃないのかと

自分でだってそう思う。けれど、そうまでしても言って欲しいこともあるものだ


しばしの沈黙

あたしの顔を行ったり来たりと落ち着かない司令官の視線

触られているわけでもないのに、それがくすぐったくてこっちまで落ち着かなくなってくる

たまに視線が合ったりもするけれどそれだけで、どっちからでもなく逸らしていた


それを、一分か十分か…きっとそんなにはなかったはず

手の届く距離で見つめ合ってるだけ、それだけでそんなに時間が立つはずもなく

止まったように感じていた時間は司令官が口を開くのと同時に動き出した


「可愛いよ、文月」


そう言って、さっと頭を撫でられた


文月「遅いんだよ。まったく…」


2回とも同じ言葉だったけど、大事なことなのでそれで良い

いやむしろ、何回言われても足りないくらいだろう


提督「いや、可愛くってついね…」

文月「そういう可愛いはいらないの」

提督「で?」


オウム返し

あたしが問い詰めた時よりは柔らかいものの、同じくらいに端的な問いかけ

でも、思うほど思い当たることもなく自然と首が傾いていた


文月「?」

提督「退いてはくれない?」


下敷きになっている司令官が身動ぎをする


文月「退いては上げない」


当たり前だ。文月さんはお疲れなのだ

それに、今日一日中特別扱いされるって予定が大幅に狂っている。それをチャラにするまで退く理由がない


提督「お風呂にまで付いてくつもり?」

文月「当然」

提督「やだ えっち」

文月「いつも平気でやってるくせにぃ」

提督「いや、可愛くってついね…」

文月「そういう可愛いは…ん、いや、ありか…」


むしろ裸を見せているというのに、何も無いのが辛くはなかろうか?

でもなぁ、司令官の場合は裸見て喜んでるんじゃなくて、裸見られて恥ずかしがってるの見て悦んでる気がするしなぁ


文月「おっ…」


納得するべきか否か。頭の中でうだうだ言っていると、急に体が持ち上がる

それもまあ器用に、膝を抱えられ、背中に手を回されて、宙ぶらりんになる両手を慌てて司令官の首に巻きつけた


提督「そろそろ戻ろう。流石に夜は冷える」

文月「そんな事言って。このままお風呂に連れ込む気なんでしょう?」

提督「じゃあ降りる?」

文月「やーだっ♪」


ぎゅっと、逃さないように離さないように

回した両手に力を込めて、そのまま司令官の胸に顔を埋めた



ー執務室ー



狭い、とか言ったら怒られそうだ。寝ぼけ眼にそんな事を考える朝

離れないって言ったのは比喩でもなんでもなく、結局あの後ずっと引っ付いて回られていた

そうなると当然 寝床も同じになるわけで、普段は1人で寝っ転がってるソファの上

丸くなっている文月に押し込まれるような形になっていた

にしたって寝付くまで人の体をベッド代わりにしてたのだから、こっちのほうが楽といえばそうだけど


薄ぐらい部屋の中、なんとなく…文月の寝顔を眺めていた

他にすることがなかったというのはそうだし、寝ている文月を起こしてまでやることも特には思いつかなかった


あどけない寝顔。昨夜の勢いは何処へやら、幸せそうに寝息を立てている

呼吸の度に小さく揺れる体と、かかる吐息がくすぐったい

薄く開いた唇とその隙間。それはとても柔らかそうで、思わず触れてみたいと指が伸びる

あるいはいっそ、そのまま塞いでしまおうかと 寝ている彼女の唇にそっと…




文月「ん…? おはよ、しれーかん…」


朧気に目を覚ます

いつもよりお布団が温かいのはきっと司令官と一緒に寝てるから


提督「うん、おはよう」

文月「おはよーのちゅー…」


ぼんやりと浮かぶ司令官の顔。寝ぼけているのを言い訳に、ちょっと強引に顔を引き寄せる


まんぞく…文月さんは実に満足である

独り占め、司令官を独り占め。お休みを言った昨夜の皐月ちゃんの不満そうな視線でさえ気分が良いぞ

あんまりやり過ぎると拗ねるだろうけど、今日一日くらいは押し通そう

それで皐月ちゃんが やきもちやこうとも、どうせ喜ぶのは司令官だ、何も問題はない


だんだんと冴えてくる頭。良いことも悪いことも、楽しいこともつまんないことも

一緒くたに回る頭のなかで、今日は何をしようかと考える


まあ、でも…


取り敢えずもう一回くらいしといても良いかなって思った時だった


「ぐっっもーにんっ!て・い・と・くーっ!あっさだよーっ!!」


けたたましく開く扉。同時に今日の初イベントが決定した


文月「すぅ…はぁ…」


大きく深呼吸をして立ち上がる

司令官の温もりこそ名残惜しいが、以前にはっきりさせておく事が出来た


金剛「うぇいとうぇいとうぇいとっ、まってっ、おねがいよっ、わざとじゃないのっ」


宜しい、良く分かってらっしゃる

文月さんが何かを言う前に平謝りを始める金剛


文月「良いんだよ、文月さんは全然怒ってないのだから」


そういえば、艤装の実戦テストがまだだったかな

昨日の予定ではあったが、司令官が余計な手間を取らせるから…ほんとに


文月「ねぇ、金剛さん。そういえば文月、艤装の試験がまだなんだよね?」

金剛「い、いえ、金剛はこれから遠征が…」

文月「戦艦を遠征に出すわけがないでしょうよぅ…」

金剛「ひぃぃぃっ!ごめんなさーいっ!!」


後ろを向いて駆け出す金剛さん

逃げるということはそういう事だ、真実わざとじゃなかろうが後ろめたいことは抱えている訳だ


文月「どうして謝るの?金剛さんは何も悪いことはしていないのに…」


閉まり始めた扉に身体を滑り込ませて彼女の後を追う


文月「あ、司令官。文月のカッコイイ所、ちゃーんと見ててね?」


何事も無かったように閉まっていく扉


その隙間から、笑顔の文月が手を振っていた



がしゃんっ



ーおしまいー




球磨と秋祭り



ー球磨ちゃん達のお部屋ー



球磨「ちょっと出てくるクマ」

木曾「おうっ…って、なんだその格好は」


着物だった。白地に赤い牡丹を散らせたような そんな柄

普段は流しっぱなしの髪も、濃緑色のリボンで束ねられていて

跳ねたアホ毛は何処か楽しげに揺れてさえいる


なんかこう…あれだ、あれな光景だ


木曾「デートかよ…」


そう、そんな感想を抱かずにはいられなかった


球磨「だが?」

木曾「ふーん。きをつけてな…」

球磨「行ってくるクマ」


常と違う、姉の後ろ姿が扉の向こうへ消えていく


木曾「デート…ねぇ…ん、んん?」


そこで、やっと頭が追いついた


デート、デートと言ったか?

誰と?いや、提督だろうけど、あいつらそんなんだったか?


木曾「お、おいおいおいおいっ、たまっ、多摩ねぇって」


立ち上がることも忘れて、部屋の隅で転がっていた多摩の所まで身体を伸ばす


多摩「にゃ?」

木曾「にゃじゃないっにゃ、い、いま、球磨が…」


扉を指差しながら多摩の顔を行ったり来たりと視線を彷徨わせる

あれは一体何だ、あれをどうにか説明して欲しい


多摩「んなもん。姉ちゃんが誰と乳繰り合ってようが多摩に関係ないにゃ…」


言うだけ言って、ほんに興味も無さそうに慌てる木曾に背を向け丸くなった


木曾「ち,ちちとか言うなよっ」

多摩「…」


むしろ、ちちとかで反応してんじゃねぇとか思う。中学生じゃあるまいに…


多摩「なら、おっぱいだにゃ」

木曾「おって、おまっ、言い方の問題じゃっ」

多摩「…」


小学生だったにゃ…嘆かわしい


多摩「気になるなら一緒に行けばいい」

木曾「気になるとかじゃねぇけど」

多摩「なら座ってるにゃ」

木曾「お、おう…」


言われるままに多摩の前で正座をする木曾

うむ、物分りの良い妹で多摩は助かるにゃ


しばしの沈黙

木曾に覚まされた目が再び重くもなってくる頃


木曾「た、多摩姉は気にならねぇのか…」


思わずと言うか、我慢が出来なかったというか

おずおずと口を開く木曾


多摩「別に…」


仮に気になったとして「ひゅーひゅー」とかからかいだしたら

それこそ中学生以下も良い所、多摩はそこまで子供にはなれんのよ


多摩「やっぱり、気になるにゃ?」

木曾「ん…まぁ、一応…な」


2回めの問いかけは案外と素直なものだった



ー鎮守府・正門前ー



「だーれだっ」


正門の柱に背を預けていると、突然視界が塞がれた

同時に顔を覆う柔らかい感触と、降って湧いたような誰かの気配


球磨「やってて恥ずかしくないクマ?」

提督「待った?とかのが良かった?」


開ける視界。すると、今度は目の前で提督が小さく手を振っている


球磨「今来たところだクマっ♪」


可愛い娘ぶる提督に可愛い娘ぶって返してみる


………


球磨「アホだクマ」

提督「ほんにな」


ときめきは起こらなかった

羞恥に顔が赤くなることも、色恋で頬を染めることもなく

ただただ、白々しく、空々しい。秋の夜風の方がまだ暖かみもあると言う程に




球磨「どういうつもりだクマ?」


秋の夕暮れ、すすきの小道

海の向こうへ沈みゆく夕日に照らされながら2人で歩いていた


久しぶりに袖を通す浴衣は、ひらひらしていて歩き辛くはあるけれど

デートに誘われて、いつもの制服というのも味気がないのもそうだった


提督「球磨の着物姿が見たかったから、とかどう?」


なにより、こいつが喜ぶならそれで納得は出来る程度の話でもある


球磨「なら、家でも良かったクマ。なんなら風呂場でスク水だって着て見せてやったのに」

提督「あれ、風呂場で着るとなんか如何わしいよね」

球磨「エロ本の読み過ぎクマ」

提督「でしょうけど…」


ああ言えばこう言う、気兼ねのない言葉を重ねていく2人


提督「2人で夕日を眺めながら歩くというのも。ろまんてぃっく で良いじゃない?」

球磨「何をメルヘンな事を…」


夕日に照らされる提督の姿、その微笑み

それだけなら、ろまんてぃっく な情景だったのだろうけど

相手がコレではいまいちピンとこない、どころか からかわれている気がしないでもなかった


提督「あはははは。多摩ちゃんそっくりだな、それ」

球磨「そりゃ、姉ちゃんだからな」


楽しそうに笑う提督、胸を張って返す球磨

ろまんてぃっく は何処にもなく、むしろ長い伸びる二人の影は

いつかの日に見たノスタルジーに包まれていた



ー祭り会場ー



「艦娘じゃんけんじゃんけんぽんっ」


提示されたのは ぐーとぱー


球磨「くまくまくまくまっ♪」


妙な笑い声を口の端から漏らしながら、カップに刺さった焼き鳥を一本引き抜く球磨


球磨「ほれ、提督。素直に球磨ちゃんに「ちょーだい」って言えば恵んでやらんでもないクマ」


「ん?」と、提督の前で焼き鳥を見せびらかす球磨


時は縁日、夕日も沈んで見えなくなった頃には、どこかの神社の階段を登り終えていた

夥しい数の電球、人、食べ物、それ以外の雑多な匂い

呼び声鳴き声話し声と、雑音が右から左へ流ていくようなそんな場所


活気があると言えば聞こえは良いが、その実 1人でくるのは億劫で

デートの誘いには丁度いいが、果たしてこの人混みに ろまんてぃっくはあるのだろうかと首を傾げたくもなる


けれど、それはそれ


じゃんけんに勝ったやつから、おやつを食べられる そんなしょうもない遊びも

祭りの非日常に浸けてしまえば、それはそれで楽しいものだった


提督「あむっ」

球磨「あ…」


宙を泳いでいた焼き鳥。その上半分が提督の口の中に飲み込まれた


球磨「ルール違反は負けと同義だクマ」


呆れつつも、残った下半分に齧りつく


提督「そんな事はどうだって良い。私の分がなくなるだろう」

球磨「提督が弱いのがいけないクマ」

提督「ひどいっ、弱さは悪だっていうのっ」


芝居がかった声音と、わざとらしい鳴き真似


球磨「強さは正義か?」

提督「いや、勝ったほうが正義だろう」

球磨「道理だクマ」


想いだけでも、力だけでも…

そんな事を誰かが言っていた気がするが、勝たん事には始まらない


つまり、球磨が食べる前に焼き鳥の上半分を奪ってしまえば

それはそれで、正しいということにもなるが


提督「あむっ」

球磨「もう、じゃんけんする気もねークマ…」


カップから焼き鳥を引き抜いて、提督の口の前に運ぶ球磨

どうせ横取りされるなら最初からこうした方が楽ではある

そうして、残った半分は自分で食べてまた次へと繰り返していく


提督「勝負をするから負けるんだよ」


人差し指を立て、得意げに語る提督


球磨「戦わずに食う飯は美味いクマ?」

提督「うんっ」

球磨「良い笑顔だクマ…」


いっそ眩しすぎて目を逸らしたくなった




球磨「クマ…」

提督「ん?」


餌付け用の焼き鳥がなくなった頃。まぁ、これも縁日の常なのか

喧騒から離れた影で、小学生くらいの男の子が数人固まっていた

皆で集めた おやつを持ち寄ってる、なんて可愛い雰囲気でもなく

むしろ、1人を囲んでせびっているようなそんな絵面ではあった


提督「おやおや…」


なにか面白いものでも見つけたように笑みを浮かべる提督

このまま 任せても解決はするんだろうけども、きっと誰も幸せにはならないんだろうなと

そう思わせるには十分な笑みだった


球磨「くまぁ…」

提督「お…?」


しょうもなさそうに溜息を付きながら、その喧嘩とも言えない輪の中に球磨が割って入っていった




球磨「随分と楽しそうだクマ?」


男子達の視線が一斉に向く

ひーふーみーと、あと一つ、全部で4人分


男子「なんだよ、おばさん」


それもまた、つまらない煽り文句であった


球磨「失礼な、クマはこれでも5歳だクマ」

男子「嘘つけっ、そんなでかい5歳がいるかよ」

球磨「くまくまくまくまっ♪」


それはそう、そこれは正しい意見ではある


球磨「クマだって、こんなデカイ幼稚園児がいるとは思わなかったクマ」

男子「誰が幼稚園児だよっ」

球磨「それは自己紹介か?」

男子「もうっ、うっさいなっ、あっち行ってろよっ」

球磨「くくくくくくくっ」


口喧嘩に勝てないとなればあっちに行けと、まんま発想が子供だクマ


球磨「まあいい。クマだってお前たちに用はねークマ」


「なぁ、少年」1人、背中を丸めながらことの成り行きを伺っていた少年の肩に手をかける

こっちに話が向くとは思っていなかったのか、それは驚いた様に肩を跳ねさせた


少年「は、はいっ」

球磨「これはそういう遊びなのか?」

少年「いや…その…」


目を伏せながらも、男子達の様子を伺う少年

まったく、そんな所に答えはないのに一体何を期待しているのか、頭が痛くなってくる


男子「俺達遊んでただけだよな?」


事さらに圧を強めて、3人にで口封じにかかる男子達

そうなると、口をつぐむしか無いのがいじめられっ子の性か

男子たちから目を逸らし、曖昧に頷いてみせるのだった


球磨「そうか。じゃあ、質問を変えるクマ」


男子達から少年を庇うように間に割り込み、腰をかがめて視線を合わせる

それでもと逃げる視線を捕まえて、頬を両手で挟んで無理やり瞳の奥を覗き込む


球磨「今ここで、全員クマにボコボコにされるのと、その後さらにこいつらにボコボコにされるのとどっちがいい?」

少年「な、そんなの…」


そう、ただの脅し

どっちも気に入らんから取り敢えず全員殴るだけ

その上で、まだこいつらに殴られたいならそれはもう球磨の預かり知るところではなかった


少年「でも…」

球磨「後ろじゃない。こっちを見るクマ」


背中越し、男子達の方を伺う少年の顔を押さえつける


球磨「悩むな。ボコボコにしたいのか、ボコボコにされたいのかの差だろう。答えは決まっている…」


「クマ?」瞳の奥の奥を覗き込み、有無を言わさず視線に圧力を乗っける


少年「ん、ん、っ」


半ば脅された形ではあったが、そんなもんに いじめられっ子が盛られるはずもなく

逃れたい一心で必死に頷くのだった


球磨「さてと、じゃあ神罰執行だクマ」


ゆらり、立ち上がり男子達の方へ向き直る


男子「な、なんだよ。子供に手を上げるのかよっ」

球磨「は?ガキを子供と言わんよ…」


そうして、どこかで引っ掛けた水入りのゴム風船を握りしめた


球磨「クマは風船を握りつぶして言いました」


ばんっ!!


破裂する風船、飛び散る水と、滴る雫


祭りの喧騒の片隅では、誰の耳に届くでもない音は

それでも、男子達の背筋を濡らすのには十分だった


単純に、単純に、殺気を向ける球磨

深海棲艦にそうしているように、次はお前たちだと宣言するように


「今度はお前たちがこうなる番だ…」




少年「いたっ」


安い捨て台詞を残して走り去る男子達。球磨に殴られておけば良いものを…

まあいいと、そんなものを見送るでもなく振り返ると、球磨が少年の頭に拳を落としていた


少年「な、なんで…」

球磨「は?全員ボコボコにするって言ったクマ」

少年「うっ…。お姉ちゃんって、野蛮だって言われない?」

球磨「言われないクマ」

少年「だよね…」


きっと皆怖いから言わないだけだと思うけど、そんな事口が裂けても言えなかった




少年「あ、あの…お姉ちゃん?僕もう、帰るから…その…」


縁日の本通り。人混みの中、少年の手をひいて歩く球磨


球磨「は?そんなしょぼくれた顔で帰るつもりクマ?」

少年「そんなの、別に…」

球磨「言いたい事は、はっきり言うべきだクマ。じゃないならクマが勝手に決めるクマ」

少年「あ…」


力強く握られる手

家族でもない、年上の女の子に手をひかれるというのは どうにも気恥ずかしい

それでも、その温かさと力強さは同じくらいに頼もしかった


ぱっと、空が明るくなる

見上げれば人と人の隙間から綺麗な光が漏れていた


遅れて響く爆発音は、さっき聞いた水風船よりも大きく体の奥まで響いてくる


少年「あ、ちょっとっ、お姉ちゃんっ…」


体が浮き上がる

ゆらゆらと、後ろにひっくり返りそうになるのを必死にこらえて

掴めそうな所に手を伸ばすと、それは丁度 お姉ちゃんの頭だった


肩車…


そう気づいた頃には花火どころではなくなっていた

太ももの内側から感じる肌の温もり、栗毛色の髪の毛がこそばゆく

身動ぎしようものなら、寄せ合った肌が擦れ合う…


心臓がバクバク鳴っている

子供扱いされるのがイヤというよりも、もっと別の意味で早鐘を打っていた


少年「お、おろしてってっ、お姉ちゃんっ」

球磨「暴れると落ちるクマ」

少年「だったらっ」


降ろして、言いたい事はハッキリ言った


球磨「くまくまくまくまっ♪」


だからって聞いてくれるかどうかは別の話だった

口の端から妙な笑い声を漏らすばっかりで、一向に降ろしてくれる気配はない

どころか、面白がっている節さえある


球磨「なんだ、照れてるのか?いっちょ前に?」

少年「照れてなんかっ、子供扱いしないでってっ」

球磨「子供だろう?」

少年「んんんっ!!」


言い返せない

だって、それが悔しくってわざとらしく、手に太ももにと力を込めていたのだから

「くまくまくまくまっ♪」相変わらず妙な声で笑っているお姉ちゃん

僕の抵抗なんて意に返さず、楽しそうに笑ってさえいる


頭上には煌めく花火

けど、そんなもの殆ど覚えちゃいなかった

多分、今までで一番楽しかった花火の時間だったけど

そんなものよりも、お姉ちゃんと一緒にいられた事の方が楽しかったから


それが少年の初恋だった…のはまた別の話



ー帰り道ー



提督「酷いんだ。提督ほっぽりだして、他の男と遊ぶだなんて」

球磨「人のこと言えるクマ?」

提督「それはそう」


花火も終わり、まばらだった人気もなくなった頃

静かになった夜道を2人で歩いていた


逃げ出した男子達の消息は球磨の預かり知るところではなかったが

まあ、碌な目にはあってないだろう事は、提督の満足そうな顔からして間違いは無かった


「ねえ、球磨ちゃん…」

「ん?」


ふと名前を呼ばれる


「言い忘れてたんだけど…着物姿も、その、良いな…」


潮騒の音が聞こえる帰り道

着物袖を振り合わせながら2人並んで帰る夜


「おせークマ」


どちらからでもなく手を握る


それだけの夜、ただそれだけの夜だった



ーおしまいー


誰もが一度は考える?


以下、深海棲艦これくしょん、苦手な方は要注意



仄暗い海の底から



沈んでいる…沈んでいく…沈んでいた…


多分、としか言いようがない。ただただ引かれるままに落ちていく、そんな気分だった

思い返すのは逃げ回る人でごった返す甲板。誰かを呼ぶ声、誰かの鳴き声と…その全部を掻き消す爆発音

放り出された冷たい海、煌々と燃え盛る船が夜空を朱に染めていた


死んだかな。あるいは死んでいるのか、どちらにせよ結果は同じような気はしていた

口の端から気泡が漏れる度に体の力も一緒になって抜けていくような気がする

きっとここが境目なんだろう。足掻いて藻掻いて、藁でも掴めばきっとまだ…そんな生と死の境界線


しかし、それは奇跡だ

それを起こせるほど僕には根性も…何より未練も無かった

走馬灯の一つも見られるかと思えばそれもない。それはそう、見られるほどの思い出もないのだから仕方ない


別に不幸に生まれついたわけでもない

ただ、普通に生まれて、普通に育って…不満はないが期待もない、そんな人生

普通じゃないのはこの一瞬だけ、最初で最後の溺死の経験くらい…


きっと両親は悲しむだろう。普通の人達だ、人並みに悲しんで、きっと人並みに折り合いを付けるんだろう

友達もきっとそう。それでも一週間もすれば、机に置かれた花が枯れる頃には話題にすらならなくなっているはずだ

そんなことよりも、彼ら彼女らには先がある、勉強に遊びに恋に、振り返ってる暇なんかないのだから


まあ、良かったのかもしれない

目的も無かった人生だ。学年が上がる頃には自然と出来ると思っていたが、そんなに甘くはなかった

漫然と勉強して、漫然と生きる日々。積極的に自殺もしない代わりに、消極的に生きるだけ


まあ、良かったのかもしれない

幸いにも苦しくはないのだ。息を止めて一分も潜っていられない自分がこうも沈んでいられるんだ

苦しくはないが、もう戻れない所まで来ているんだろう

死ぬのがこれほど楽ならば、もうちょっと早くに試していれば良かったか

あるいは、いつでも死ねると達観を決め込んで好き放題に…ないな、する事がない


終わりかな…。もう考えすら纏まらない

走馬灯は空っぽで、自分が死ぬことへの納得を課しただけだった

最後に何か一つ、良い事悪い事、どちらでも、生きていた記憶を…


ないか、そんな贅沢…。結局、自分の人生はそこに終止していた






天国…なわけも無さそうだ

普通に呼吸も出来ているし、背中越しに感じる感触は多分ベッドのそれだろう

瞼の向こうから感じる煩わしさは、多分に電灯のそれで、億劫に開けてみれば見覚えのある天井だった


「ここは…?」


船室、一応はそう見える

さっきまで?いや、昨日かもっと前かは分からないけど、自分が最後に寝ていた部屋にそっくりではあった


「ばぁっ♪」

「うわっ」


白い女の子だった。白い服に白い髪に白い肌、そんなんだから青い瞳がより印象的だった


女の子が覗き込んでくる。赤子にでもするように手を広げて屈託なく笑っている

それだけなら可愛い子だなとも思えたが、やっぱり異様なまでの白さが気になってしまう

特にその瞳、冷たい冷たい氷の様な瞳。笑顔ではあるけど、その一点だけが決定的に冷めていた


「あはははははっ、おきたおきたっ。あはははははっ」


笑いながら駆け出していく女の子

白いワンピース、肩から下がっているのは浮き輪だろうか?

床に届きそうなほど長い髪をはためかせながら船室から出ていった




状況が飲み込めず、ベッドの上で呆けていると、程なくして再び扉が開かれた


さっきの子が戻ってきたのかと思ったけども、今度は黒い女の子だった

黒い着物に黒い袴、それに黒いブーツ。水底で染め上げたみたいに黒い髪が頭の横で渦を巻いている

時代錯誤といえば言葉が悪く、大正浪漫と言えばコスプレに近くなるような二昔前の出で立ちだった

それにしても黒い、喪服と言うにも昏すぎる。さっきの白い子とは随分と対象的だ

けれど、同じもの何だなと、自然に納得できたのは、冷たい程に青い瞳と異様なまでに白い肌のせいだろうか


「気分は?」


その端的な問いかけに何と答えたものか

良くも悪くもないが、状況が飲み込めない不気味さはあった


「なんとも」


結局、曖昧な返答でお茶を濁していた


「そう。まぁ、そんなことより お茶どうぞ?」

「は?」


そんな不気味な状況に出て来た日常的な単語

遅れてパタパタと聞こえてきた足音。カチャカチャと危なっかしい音を立てながら

白い女の子がお盆と一緒にお茶を持って帰ってくる


姉の手伝いをする妹の様だった。不慣れな手つき、見よう見まねのような無作法

おずおずと差し出された茶碗が微笑ましい


「ありがとう…」


違和感。受け取った茶碗と、かすかに触れた指先

熱い、底に手を添えれば持てないほどではないにしろ、白い子がそうしたように側面を掴むのには熱すぎた

なのに、顔色一つも変えないのはどういうことか。熱いと言って取りこぼしたってしょうがなくも思えるのに

それに、その指先。冷たい、とても人の体温とは思えないほどに


「のまないの?」


白い子が見上げてくる


「いえ、頂きます…」


促されるままに茶碗に口を付けて一口

疑問は尽きないが、この日常的な風味と温度に一息は付けていた


「おいしい?」

「ええ…まぁ…」

「それって、どんなかんじ?」

「?」


質問の意図を測りかねて首を傾げてしまう

美味しいとは何か、哲学的な問いをされているようには見えない

ただ、好奇心のままのせがまれている様だ


「気にしないで。私たちには良く分からないものだから…」

「分からない?」


その答えが分からない

食べ物の、美味い不味いに分かる分からないもあるものか?

あったとしたら、それは味覚そのものが無いという事なのか…


「あっ…」


気づけば、白い子が急須から直接お茶を口に流し込んでいた


慌てて手を伸ばす。いくらなんでも火傷するんじゃないかと…だが、それも杞憂に終わる

飲みきれずに口の端から零れる液体、お茶を流し込みながら小さく動く喉

熱さに叫ぶこともなく、飲むだけ飲んだら飽きたように急須を口から放す


「…へんなの」


やっぱりわからないと首をひねるばかり

その代償として、真っ白なワンピースがお茶色に染まっていた


「そうね。ま、所詮はただの名残だし…」


黒い子が急須を傾け、空いていた茶碗を満たしていく

そうして一口。表情に変化はない、だからか余計に空しいと感じてしまっていた


「話をしましょう…」


茶碗を置いた黒い子が、居住まいを正し真っ直ぐに自分を見つめていた






人間ではない。そう言われても驚きはしなかった。むしろ安心さえする

そうと言われれば、白い子が火傷の一つも無いのも「おいしい?」と問われた意味もまあ理解できたから


深海棲艦。彼女たちはそう言った

それが何なのかは答えてくれはしなかったが

ニュースや新聞の向こうの…いわば敵が目の前にいる現状に、動揺しないでもない

そうして、なんかの気まぐれかで、白い子が自分を拾ってきたのが現状らしい


「帰りたいならそうぞ」


その補足は「但し海の底だけど」と、半ば監禁状態であるとの宣言だった


「住み着く分にも構わない」


その補足は

白い子のオモチャになること、いちいち騒がないこと、船室からは出ないこと

詰まりは、この部屋で大人しく白い子の遊び相手になってればいいらしい

缶詰程度で良ければ食事付きと待遇は上々だ


ただ一つ、塞がれた窓を開かないこと、この条件に否やはないが殊更に強調する理由は気にはなる


「一つ、良いかな?」


それは、結局の所の疑問だった


「僕は死んでるんですか?」


自分の感覚は現実だと伝えているが

生憎と天国とか地獄に行ったことはないので、割りとリアルな場所だったりする可能性もあったから


「そう…」


黒い子が目を伏せる。何事かを思案した後、真っ直ぐにこちらを見つめると


「早い方がいい」


ー 人として死にたいなら ー


何故だろう?


その言葉はまるで、目の前の自分ではなく、いつかの自分に問いかける様に聞こえたのは






妙な生活が続いていた


水底、と言っても窓の塞がれた船室では本当なのか分からないが、その中で軟禁される日々


ひっきりなしにやってきては気づいたら居なくなる白い女の子

随分と懐かれたのか、自分が寝入っている時に隣で丸くなっている時もしばしばだった


黒い子と3人で食事を取ることも増えてきた

相変わらず、味の程は分かってないようではあったが

白い子は自分の真似をして遊んでいるようで、黒い子はただ昔を懐かしんでいるように見えた


人のようで人ではない何かとの生活

そのうちに殺されるのかと思えば、そんな様子もなく

せいぜいが「お腹が空いた」と漏らした時に、白い子が魚雷を押し付けてきた事くらい

途中で黒い子が止めてくれなければ、その日が自分の最後だったろうことは想像に難くない




そんな生活が続き、それが当たり前と日常に代わり始めた頃


油断、ではあった。慣れと言ってもいい


ふと湧き上がる好奇心

いや、今に始まったことでもない。それはいつもそこにあった

ただ、最初の約束と彼女たちへの疑念?あるいは恐怖と畏怖といった感情が蓋をしていただけで


この外はどうなっているんだろう?


彼女たちはいつも扉を開けて入ってくる

それで海水がなだれ込んで来たことはない以上、船全体が水浸しということもないらしい

隙間から除き見えた廊下は薄暗く、光源は分からないが、うっすらと青白い光が漏れてもいた


外、そこに出る度胸はない


何があるか分からない上、見つかったら何をされるかわからない


けれど


窓の外を伺うくらいならどうだろう?

散らばった新聞紙で塞いだ程度だ、少し捲って見るくらいならバレ無いんじゃないかと


白い子はさっき出ていったばかりで、廊下から足音が聞こえる気配もない

好奇心は鼓動に変わり、身体を急かしてくる。何度も何度も扉を振り返りながら窓辺ににじり寄ると


そっと、封に手をかけた


「ぅっ…」


思わず、口元を抑え慌てて窓から手を離す


今のはなんだ?


海だ。海底というには不思議な程に青白い光に満たされていたが

ゆらゆらと歪む景色はそれが水の塊だと示している


いや、違う


そんなもの見れば分かるし、問題はそこじゃない

けれど、それをコレ以上考えてはいけないと、頭が警笛を鳴らしていた


「みたんだ…へぇ…」

「あっ…」


振り返れば白い女の子


「あはっ、ははははははっ、みちゃったみちゃったっ、もうもどれないぃっ、いひひひひひっ」


釣り上がる口角、狂ったように無表情な笑い声を響かせると

背中を向けて扉の向こうへと消えていく


「あっ…あっ…」


言葉が出ない。これから起こる事への恐怖か

それもあったが、何より目の前の光景が頭から離れない

ほんの一瞬なのに目に焼き付いて、脳裏にまでこびり付いている


考えないように考えないように目を逸らし、思考を誤魔化す

けれど、考えないようにと考えるだけその光景ばかりが頭に浮かんできてしまう


いっそ、殺されるかもしれないと恐怖に怯えた方がまだ良かったとさえ…




あれは…なんだったのか


あれは、人間だったんじゃないか?


やめろ…


あれは、女性だったんじゃないのか?


考えるな…


あれは、下腹部だったんじゃないのか?


やめろ…


あれは、膨らんでいたじゃないか、蠢いていたじゃないか


やめろ、やめろ、やめろ…


ああ、それはまるで…




「僕を、殺しますか?」


佇んでいた黒い子に問いかける


「別に」


けれど、答えは期待とは違っていて

何を思うわけもなく、特に興味はなさそうだった


「分からないのはこっち」


黒い子が、船室の隅で蹲っている自分の所まで来ると同じようにしゃがみ込んでくる


「どうして?どうしてアレを見て騒がない?」


前もその前も、拾ってきた人間たちは一様にこう言った


「このバケモノって」


そうして決まって、船室を飛び出し、船から飛び降りて、勝手に自殺するんだ


「どうして…か…」


このバケモノ。そう言いたくなる気持ちも理解は出来る、それこそ吐きそうな程に

けれどそれだけだ、同族が陵辱される嫌悪感は生理的なものだとしても

それを自分の感情に上塗りしたって誰も変には思わないだろう…なのに、そうはならなかった


図太いのとはまた違う。これはもっと単純に


「薄情…なのかな。ああ、うん。昔、友達にそう言われたことがあったかな」


まあ、あの時は友達が病気で倒れたんだか怪我をしたんだが、命に関わる話ではなかったけれど


「薄情…ね」


納得した。というよりは、その横顔は理解できないから捨て置いたに見えた


立ち上がり、立ち去ろうとする黒い子。その背中に「何処へ?」と、声をかけていた

黒い子の足が止まると、開いていた扉の前でこちらに振り返った


「人を、殺しにいく…。アナタの時と同じに」

「…」


憎んで良いんだろう、恨んだって良いんだろう

けれど、とっくに諦めていた人生だ。いまさらどう言われても罵声も何も浮かばなかった


それはもう、薄情というよりももっと別の何かのよう


「アナタも、壊れてるのね…」

「見たい、だね…」


扉が閉まる。それからしばらく、黒い子は姿を見せなかった





「えっ…」


扉が開く、同時に黒い子が倒れ込んできた

何日ぶりだろう、そもそも時計もないし陽も見えないで時間の感覚なんてとっくになくなってはいたが


慌てて駆け寄り、黒い子を抱き起こす

じっとり、手の平に濡れた感触が伝わる。腕の中の彼女は随分と弱々しく見えた


「まだ、いたんだ…」


震えるようにか細い声

もう、幾ばくも無いのだろうと、嫌でも予感できてしまう


「ええ、まあ…」


幸い食べ物にも困らなかったし

白い子の遊び相手の任のお陰か言うほど退屈はしなかったのもある

積極的に死にたいわけでもないという消極性が、命を繋いでいただけといえばそう


「しずむの?」


傍らから覗き込んでくる白い子

その感情の無い問いに、黒い子は小さく頷いて答えていた


仲が良かった、姉妹のようだと。そんな風に見えてはいたけれど

その別れを惜しむ様子もなく「ふーん」と、ただつまらなそうに鼻を鳴らすだけ

まるでテレビの向こうの誰かが死んだ、その程度の話しでしか無さそうだった


「そう、か…」


そう思う自分もまた例外でも無いのだろうが…


手の平を伝わる感触がいよいよとなって床に零れだす

命が流ていく感触、命が終わる感触、それに直に触れている


終わった命が終わっていく、もう瞳も開かない

呼吸も、鼓動も伝わっては来ない、ただただ流て流て落ちていく


「いやだ…」


自分が何を口走ったのか…そんなことよりも、溢れた涙の理由が知りたかった






ベッドの上、傍らでは白い子が丸くなって眠っている

理由は分からないが寝心地が良いらしい


「そういえば、名前…聞いてなかったな」

「いまさら…」

「いまだから」

「なんでも良いでしょう、そんなもの…」


答えたくないのか、強引に打ち切られる会話

替わりにと差し出されたのは湯気を立てる茶碗


「そんなことより、お茶どうぞ…」


妙な生活は続いていた…



ーおしまいー



後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです



卯月「うーちゃんのーっ」
弥生「やってみたかっただけのコーナー」
ゆー「ぱちぱちぱちぱち…」

卯月「今日のゲストは豪華だぴょんっ」
弥生「ゲスト(被害艦)…」
ゆー「かわいそうに…」



菊月 「アークロイヤル…完成していたのか…」
アーク「いや、未成艦ではないのだから…」
菊月 「えー…」
アーク「まてまてまて、なんだその反応は、何が不満なんだ」

弥生 「はい、台本」
アーク「なに?…いやいやいや、やるわけ無いだろう…こんな」
ゆー 「ウォースパイトはやってくれたのに…(嘘だけど…)」
アーク「??? あの娘が…嘘でしょう…」
ゆー 「…(嘘だもん…」
卯月 「ぶー、もしかして、英国の空母ってケチなの?」
アーク「な、ケチだと。良いだろう、この程度の芝居、見てろよ…」

弥生「ちょろい…」



菊月「アークロイヤル…完成していたのか…」
アーク「おーほほほほっ!虚弱貧弱無知蒙昧なアナタ達には及びも付かなかったでしょうねっ」
菊月 「ふっ、だが偽装の方は急造のようだな…」
アーク「結構。アナタ達を倒すのにそれ以上は必要ないということよ」

ウォー様「まぁ…何かしら、あれ」
卯月  「ぴょーんっ、うぉーさまー」
弥生  「あのお姉ちゃんが怖いの…」
アーク 「え?」
ウォー様「まあ、可哀想に。良い娘なのだけど、きっと来たばかりで戸惑っているのね
     さあ、向こうでお茶にしましょう、美味しいケーキがあるの」
うーやー「わーい」

アーク「まて、なんだこれは」
ゆー 「大丈夫、面白かった」
アーク「下手な慰めはよせっ」
菊月 「またやろうっ」(きらきらきら
アーク「やらんぞっ」



ー以下蛇足に付き


皐月「…」
文月「不満そうだね、皐月お姉ちゃん?」
皐月「べつにー」
文月「そんなに あたしが右往左往するのが見たかったの?」
皐月「期待はしてなかったよ…」
文月「むふふふ。そういうのも可愛いけど、照れてばっかりだと勝機を逃しちゃうよ?」
皐月「わかってるよ…」
文月「なら良いけどねー」



提督「なぁ、球磨」
球磨「クマ?」
提督「あんまりラブコメにならんかったな」
球磨「そりゃそうだろう。まあ、とりあえずコメント返しするクマ」
提督「だねー」




・皐月改2のお話

菊月「文月が怖かった」
長月「小学生並みの感想だな…」
文月「皐月ちゃんが うだうだしてるのが悪い」
皐月「ボクのせいにしないでよさ。だいたいは、司令官が…」
提督「提督のせいにしないでよさ」
皐月「真似すんなっ」

「どんな顔したら良いか分かんないじゃんか…」とかね、個人的に大好き


・皐月と水無月

皐月 「親友みたいって」
水無月「自分達じゃ良くわからないね」
皐月 「まあ、仲は良いよね」
水無月「うんっ」

絡みって響き、なんかえっちぃよね


・水無月は誰に鍛えられてるの?

水無月「特に決まってないかも?
    あ、でも、最初球磨さんにボコボコにされた時は死ぬかと思ったかなぁ…いや、ほんとに」

口が悪くなってない以上、球磨はあんまり手を付けてないのかもしれません


・皐月と夕立の馴れ初め

夕立「馴れ初めとか言わないで今戦うっぽいっ」
皐月「嫌だよ。夕立さんと戦うの疲れるんだもん」
夕立「夕立は楽しいっぽいっ」

どんなって…。最初の頃だからね、誰も彼も加減が良くわからない頃だからね
艤装も練度も揃ってなかったってのが幸といえばそうだったんじゃないかな、きっと


・皐月は天使

提督「睦月型も天使」

QED。まあ、証明するまでもないね。存在が答えだからね


・皐月は突っ込み枠?

皐月 「いや、だって、ボクは司令官の面倒見ないとだし…」
水無月「そーやって、すぐ司令官の隣を確保したがるよね、さっちんは」
文月 「いやらしい」
水・文「ねー」
皐月 「いやらしいってなんだよっ。しょうが無いでしょ、ホントの事なんだから」
提督 「ん?なんだったら、三日月に面倒見てもらうから大丈夫だよ?」
三日月「や、まって、巻き込まないでっ」
皐月 「司令官は黙っててっ!」

どうあれ誰かに面倒見てもらう気満々の提督は提督の鑑


・睦月x白露

白露「さあ、妹たち。今日の演習でもいっちばんをとるよっ」
睦月「おーい、しろちゃーん」
白露「にゃー…あ…」

夕立「は?」
時雨「ふふっ」
村雨「あらー」

白露「ちょっと睦月ちゃんっ、それ止めてって」
睦月「ふははは。相手の弱点を付いて何が悪い」
白露「はっ…。アナタまさか、そこまで考えて…」
如月「睦月ちゃん、そこまで考えてないと思うわよ…」

当初の予定は、白露にネコミミとか生やそうとか考えてました


・水無月の水着

水無月「これで司令官の視線も釘付けだねっ」
提督 「色仕掛けをするということは、色々される覚悟はあると?」
水無月「え?まってまって、たんまたんまたんまっ」

水着の描写、伝わって良かったです


・ドンパチ

まさかドンパチ方面を所望されるとは思ってませんでしたが
こちらの方面も、精進させていただきます


・文章力

ありがとうございます
毎度毎度、表現に四苦八苦していますが、楽しんでいただれば幸いです



夏イベ…嫌な事件だったね
まあ、私はE7を速攻で丙にしたので、E7よりもE4とか他の海域の方が面倒だった覚えはあります
E5の甲報酬が一品なのは、E4を丙にさせない嫌がらせだったのかと思うほど
しかし、松輪を見てると この子戦場に出して良いのかと…本気で
初期艦選定の時の電を見た気分を思い出していました

最近の悩み、海外艦を出そうと思うと名前が長すぎて何処で区切って良いものか

次回は特に決まってないけど、年末年始クリスマスをやる前に一つくらいは作りたいですね
そして、それを書き終わる頃には今年の終わりも目前…一年って結構短いですよね

最後までご覧いただきありがとうございました
コメント・評価・応援・オススメも合わせ、重ねてお礼申し上げます





ー以下プロフィール(長いー


提督
練度:神頼み 主兵装:刀 物理無効・神出鬼没
「触らぬ神に祟りなしって、言うだろう?」
長髪の黒髪、何時も気だるげな表情をしてる癖に、人をからかうときだけはすっごい楽しそう
一応、白い制服を着けてはいるが、上から羽織っている浴衣が全てを台無しにしている、不良軍人
そもそも、軍人どころか人ですら無い、元土地神様
覚えている人もいなくなり、ようやく開放されたと思えば、深海棲艦が湧いてきて…
3食昼寝付きの謳い文句も手伝って、提督業を始めだした
性格は、ほとんど子供。自分でやらないでいい事はまずやらない、明日できることはやらないで良い事
悪戯好きで、スカートめくりが好きなお年ごろ
また、結構な怖がりで、軽度は人見知りから始まり、敵は全て殲滅する主義

皐月ー愛称:さつきちゃん・さっちゃん・さっきー
練度:棲姫級 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「え、司令官かい?そりゃ…好き、だよ?なんてな、えへへへ♪」
初期艦で秘書艦の提督LOVE勢。提督とは一番付き合いの長い娘
その戦闘力は、睦月型どころか一般的な駆逐艦の枠から外れている程…改2になってもっと強くなったよ
「ボクが一番司令官の事を分かってるんだから」とは思いつつも
まだまだ照れが抜けないせいか、ラブコメ時には割とヘタレである

睦月ー愛称:むつきちゃん・むっつー・むっつん
練度:褒めてっ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「提督っ、褒めてっ!」
わかりやすい提督LIKE勢、「ほめて、ほめて~」と、纏わりつく姿は子犬のそれである
たとえその結果、髪の毛をくしゃくしゃにされようとも、撫でて貰えるのならそれもよしっ
好感度は突っ切っているが、ラブコメをするにはまだ早いご様子

如月ー愛称:きさらぎちゃん・きさら
練度:おませさん 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「司令官?ふふ…好きよ?」
提督LOVE勢。良い所も悪い所もあるけれど
むしろ、悪い所の方が目立つけど、それでも あなたが大好きです
だから、何度でも言いたいし、何度でも言われたいの、ね?司令官?

弥生ー愛称:やよいちゃん・やよやよ・やーよ
練度:無表情 主兵装:3式爆雷 好感度:★9
「司令官?好きだよ、普通に」
普通の提督LOVE勢。変わらない表情をそのままに平気で悪戯をしてくる娘
表情が変わらないならと、大袈裟なリアクションも いつもの澄まし顔で本気に取ってもらえない
結局は卯月の姉、卯月絡みで何かあったら半分くらいは弥生のせいと思っていい

卯月ー愛称:うーちゃん・バカうさぎ、うーちゃんねーさん
練度:ぴょんぴょん 主兵装:超10cm高角砲★MAX 好感度:★7
「司令官?そんなの大好きに決まってるぴょんっ」
ぴょんぴょんする提督LIKE勢。毎日ぴょんぴょんと、あちこちで悪戯しては怒られる毎日
主な対象は瑞鳳、「だって、からかうとおもしろいだもん」なんのかんので構ってくれる瑞鳳が好き
口が滑る水無月と違って、一言多いタイプそれもわかった上、いらん事をよく言う2人である

水無月ー愛称:みぃ
練度:うん、わかるよ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★7
「司令官、呼んだかい?」
よく笑う提督LIKE勢。艦娘として姉として妹として仲間として
頼って欲しいと自己アピールは欠かさない。欠かさないけど裏目にでる
胸を張った途端の平謝りが板についてきた
一言多い卯月と違って、よく口が滑るタイプ、いらん事を良く言う2人である

文月ー愛称:ふみ、ふーみん、文月さん
練度:ほんわか 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「しれいかん?えへへー…なーいしょっ♪」
ふんわりとした提督LOVE勢。ちゃっかりと美味しい所はいただくタイプ
ラブコメをする姉妹たちの背中を押したり、喧嘩の仲裁に入ったり
緩衝材みたいに立ち回りつつ、実際はプロレスのロープみたいに跳ね飛ばしてくる
二人っきりになるとそこはしっかりと、ラブコメだってやってみせる
本人曰く「大福餅」白くて甘くて…その先は内緒

長月ー愛称:なつき、なっつん、なっつ
練度:頼りになる 主兵装:5連装酸素魚雷 好感度:★8
「司令官…いや、まあ…いいだろ別にっ」
おでこの広い提督LOVE勢。司令官に ちゅーしてこの方
自分の感情を見ない振りも出来なくなり、最近は割りと素直に好意を見せてくれたりもする
自分の感情に振り回されるくらいにはラブコメ初心者。あと、シスコン(菊月)

菊月ー愛称:菊→菊ちゃん→お菊さん→きっくー→くっきー
練度:威張れるものじゃない 主兵装:12・7cm連装砲B型改2★MAX 好感度:★8
「ながなが?ながなが ながなが」
箱入り提督LIKE勢。おもに長月に過保護にされてるせいでラブコメ関連はさっぱり
しかし、偶に見せる仕草はヘタなラブコメより攻撃力は高い。やっぱり如月の妹である
大艦巨砲主義者、主兵装は夕張に駄々を捏ねて作らせた。それとシスコン(長月)
最近、司令官との共通言語が出来た。合言葉は「ながなが」

三日月ー愛称:みつき・みっきー
練度:負けず嫌い 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「し、しれいかん…そ、その…好きですっ!」
おませな提督LOVE勢。どこで仕入れたのか変な知識は一杯持ってる
そして、変な妄想も結構してる。すぐ赤くなる、可愛い
提督と望月に、からかわれ続けたせいで、たくましくなってきたここ最近
ラブコメモードは基本に忠実

望月ー愛称:もっちー、もっち
練度:適当 主兵装:12・7cm連装砲(後期型  好感度:★MAX
「司令官?あー、好きだよ、好き好き」
適当な提督LOVE勢。とか言いつつ、好感度は振り切ってる
だいたい司令官と一緒に居られれば満足だし、司令官になんかあれば不言実行したりもする
ラブコメには耐性があるが、やるとなれば結構大胆

球磨ー愛称:ヒグマ・球磨ちゃん
練度:強靭・無敵・最強 主兵装:46cm…20.3cm(3号 好感度:★MAX
「提督?愚問だクマ」
突き抜けてる提督LOVE勢。気分は子グマの後ろに控えている母グマ
鎮守府と提督になんか有ろうものなら、のっそりと顔を出してくる、こわい
積極的にラブコメをすることもないが、昔は提督と唇を奪い合った事もある
大艦巨砲主義者。最近、私製46cm単装砲の命中率があがった、やったクマ

多摩ー愛称:たまちゃん・たまにゃん
練度:丸くなる 主兵装:15・2cm連装砲 好感度:★6
「提督?別にどーとも思わないにゃ?」
気分は同居ネコ。とか言いつつ、なんのかんの助けてくれる、要は気分次第
絡まれれば相手もするし、面倒くさそうにもするし、要は気分次第
特に嫌ってるわけでもないし、いっしょに昼寝もしたりする、要は気分次第
ラブコメ?何メルヘンなこと言ってるにゃ

北上ー愛称:北上様・北上さん
練度:Fat付き 主兵装:Fat付き酸素魚雷 好感度:★7
「提督?愛してるよん、なんちって」
奥手な提督LOVE勢。気分は幼なじみだろうか
このままゆるゆると、こんな関係が続くならそれで良いかなって思ってる
最近の趣味はFat付きをばら撒いて海域を制圧すること

大井ー愛称:大井さん・大井っち
練度:北上さん 主兵装:北上…53cm艦首(酸素)魚雷 好感度:★8
「提督?愛してますよ?」
分かりにくい提督LOVE勢。そうは思っていても口にはしない、絶対調子に乗るから
足と両手が埋まったなら、胸…艦首に付ければいいじゃない、おっぱいミサイルとか言わない

木曾ー愛称:きっそー、木曾さん
練度:悪くない 主兵装:甲標的 好感度:★7
「提督?まあ、アリなんじゃないか?」
カッコイイ提督LOVE勢。提督に赤くさせられたり、提督を赤くしたりと、まっとうなラブコメ組
そういうのも悪くはないが、本人はまだまだ強くなりたい模様
インファイター思考だけど、甲標的を使わせたほうが強いジレンマ

金剛ー愛称:こう・こうちゃん・こんご
練度:Burning Love 主兵装:Burning…46cm3連装砲 好感度:★MAX
「提督…Burning Loveです♪」
分かりやすい提督LOVE勢。提督の為ならたとえ火の中水の中
何時からだったのか、出会った時からか
ならそれはきっと運命で、この結果も必然だったのだろう
けれど、鎮守府ではオチ担当、艦隊の面白お姉さん
取り戻せ、お姉さん枠

瑞鳳ー愛称:ずいほー・づほ姉ちゃん
練度:卵焼き 主兵装:99艦爆(江草 好感度:★6
「だれがお姉ちゃんよっ」
気分は数ヶ月早生まれな幼なじみ。ラブコメルートもあった気がしたけど、何処行ったかな
卯月にからかわれて追っかけまわすのが日課。弥生に唆されてモヤモヤするのも日常
だからって、別に卯月を嫌ってるわけでもなく実際はその逆である

夕張ー愛称:ゆうばりん
練度:メロン 主兵装:軽巡に扱えるものなら何でも 好感度:★6
「ゆうばりんって…気に入ったのそれ?」
気分は一個上のお姉さん。卯月や菊月の駄々に付き合ったり
球磨や提督の無茶振りで、アレな兵装を作ったりと、信頼と安心の夕張さんである
特に決まった装備は無く、戦況次第でなんでも持ち出すびっくり箱、安心と実績の夕張さんである

大鳳ー愛称:大鳳さん
練度:いい風 主兵装:流星改 好感度:★9
「提督、愛してるわ」
素直な提督LOVE勢。金剛見たいにテンションを上げるでもなく、息を吐くように好意を伝えてくる方
ラブコメに悪戯にと我慢強い方だが、許容量を超えると…
その落ち着いた物腰からは、艦隊の保護者っぽくなっているが、内心は見た目通り歳相応だったりもする
最近は大人気ないと周知の事実、本人は一応否定してるつもり

U-511ー愛称:ゆー、ゆーちゃん
練度:ですって 主兵装:WG42 好感度:★7
「Admiral…提督さん、次は何をすれば良い?」
好きとか甘いは良く分からないけれど、Admiralの お手伝いが出来ればいいなって思います
素直、とても素直、素直すぎてすぐ手が出るくらい素直
如月に貰った三日月型の髪飾りは宝物

ポーラ-愛称:ポーラさん
練度:赤ワイン 主兵装:白ワイン 好感度:★7
「提督さん?面白い人ですよねー」
ゆーの舎弟。あんまりな言い方をすれば、そういう立場
酒は飲んでも飲まれるな。口も態度も緩くなるが、意外と理性は残ってる
酔が醒めると口も態度も固くなるのを気にしてか、平時はもっぱら酔いどれている


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SS好きの名無しさんから
2017-10-06 14:58:11

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SS好きの名無しさんから
2017-10-06 14:58:07

このSSへのコメント

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1: SS好きの名無しさん 2017-09-29 08:43:41 ID: aKDsgbBD

こんにちは新人提督です。とは言ってもパソコンができないからアーケードの方ですが。アーケードだとお金がポンポン飛んでいくんだぜ
いつも楽しく読ませていただいております
文月改ニのお話とても面白かったです
金剛は相変わらずオチ担当ですね…けどそんな金剛も可愛いです
あと球磨とのデートもとても良かった!
けどラブコメっぽくならないなぁ…
深海棲艦の話も面白かったです‼
あの深海棲艦の二人は駆逐古鬼と…ほっぽちゃん?すみません深海棲艦はあまり詳しくないもので…無念
睦月型も球磨型も金剛さんたちもみんな可愛い‼
だが提督、あーたいたずらはほどほどにしなさいね?やめなさいとは言いません面白いから。
それからもうちょいみんなのこと褒めたって…そしてみんなの照れた顔が見たい‼
質問です。いつき提督の海域に野良レ級が出た回がありましたよね?その野良レ級が皐月たちの海域に出たら倒せますか?
大和は一人で倒してましたが皐月や球磨はサシで倒せますか?
ついでに睦月型の強さの順番も教えてくれると嬉しいです
長文になってしまい申し訳ありません‼次回も楽しみに待ってます‼

2: SS好きの名無しさん 2017-10-03 15:44:32 ID: -l6zfQAb

またまた失礼します新人提督です
深海棲艦の話の白い女の子はほっぽちゃんではなく潜水新棲姫ですかね?調べてきました!間違ってたらごめんなさい‼でも深海棲艦って可愛い子多いですよね…沈めにくいです。でも沈めねば我が愛しの嫁が沈んでしまう…
もちろん我が嫁は沈めませんので深海棲艦の皆様には沈んでいただきます
あーーーテストでアーケードができない
死んでしまう…

3: フラン 2017-10-17 23:33:05 ID: tRdEMkK3

今回も素晴らしかったです!
文月回なのに申し訳ないのですが北上様可愛すぎか…ニヤけそうなのを我慢したり照れ隠しで卯月の真似して誤魔化しちゃったりしてクールなふりして心臓バクバク何だろうなと思うと更に可愛いですw(もしかしたら1番乙女なのは北上様なのでは?)北上様の好感度もそろそろ8以上になるのだろうか。1歩踏み出せたのなら一気に9とか行きそうな感じしますw

大鳳さんはいつも通り大人っぽくてやることはやっている人。控えめに言って最高です。

文月は一直線で良かったです。提督が雲ならば突風の様な勢いで雲をそのまま掻っ攫う感じでしたね。可愛いです。

金剛は最初から睦月レーダーを使っていれば...

まさかの球磨!球磨と提督は熟年夫婦の様な繋がりを感じますね。そんな球磨でさえも提督のいたずらには悩まされる様ですがw最後はいつも無茶苦茶な2人が大人っぽい終わりで2人きりの時にしか出ない雰囲気があって良かったです。

いつも楽しく読ませていただいてます!これからも頑張ってください!


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