2017-09-08 03:08:25 更新

概要

地の文あり。のぞえり。


今日は、なんだかえりちがすごく気になる。ずっとえりちの顔を見てしまう。

最初にそのことに気付いたのは、朝、えりちに会ってから。

それから、ずっとえりちのことが頭から離れない。

それなのに、えりちは普段通りに、

「希、どうしたの?」

と聞いてくる。



授業中も、えりちの顔ばっかりを見ていた。

そのせいで、授業もまともに受けられなかった。

「希、今日あなた変よ?」

そうえりちは言ってくる。

違う、変なのはえりちの方なんや。



えりちが注目を浴びると、すごく嫌な気分になる。

何というか、誰にもえりちのことを見て欲しくない。

そんなウチのことも気にせず、えりちはいつも通り、堂々と前に立つ。

えりちはいつもそうだった。何というか、人の前に立つのが好きなんだろう。

えりちのそんなところが好きだった。ウチとは対照的なその性格が。

でも、今日ばっかりは裏目に出ている。

自分でも、どうしてこんな気持ちになるのか不思議でたまらない。



昼休み。えりちと一緒に食べるおひるごはん。

たわいもないおしゃべりをしながら、お弁当を食べる。ウチはこの時間が好きだ。

その日、えりちはパンだった。

つい、ボーっと眺めていると、えりちは、

「そういえば、今日の朝はごはんだったわ。」

と、言った。

そんな感じで、二人のお弁当はなくなっていった。

声をそろえて、ごちそうさまをした。

今日は、なんとなく一人になりたくて、散歩してくると言ってえりちと別れた。



なんで、今日はこんなにえりちのことが気になるんやろう。

そんなことを考えながら、一人で歩いていた。

なんらかわらない、いつもと同じ日常のはずなのに。

体育館あたりにさしかかったところで、何か声が聞こえてきた。

こっそり見てみると、告白をしているところだった。

どうやら、振られてしまったらしい。

そりゃそうだ。普通、女の子同士の恋愛なんておかしい。

―――えりちはどう思ってるのかな。

ふと、そんな疑問が頭に浮かんだが、すぐに消した。



教室に戻ろうと、歩いていると、にこっちを見つけた。

もしかしたら、このことをにこっちに相談すれば、何か解決してくれるかもしれない。

そう思って、にこっちに声をかけようとした。

だが、すんでのところで声を止めた。

何というか、一人で解決しなきゃいけないような気がしたからだ。

そしてまた歩き出した時、

「あっ希。」

と、にこっちに声をかけられた。

「あっにこっち。どうしたん?」

ウチは、何も怪しまれないように、なるべく自然に返した。

「いや、別に・・・・・・」

そう言ったっきり、にこっちは何かを考え込んでいる。

行こうかな、って思った瞬間に、にこっちが口を開いた。

「その、なんて言っていいのかわからないけど、素直に言ったほうがいいと思うわよ。それだけ。じゃ。」

そう言ってにこっちは去っていった。

にこっちには、すべてお見通しだった。

「素直に、か・・・」

ひとりでにそう呟いた後、教室に向かってまた歩き出した。



「今日の散歩は長かったわね。」

教室に戻ってくるなり、えりちにそういわれた。

「ちょっと、考え事してたんよ。」

「今日の希、ちょっと変じゃない?」

その言葉に、すごく動揺した。鼓動が早くなっているのを感じた。

「そんなことないよ。ほら、授業始まっちゃうし、はやく席に着こう?」

そう言って、お茶を濁した。

えりちに伝えようとしていた言葉は、すっかり消えてしまっていた。



終業のチャイムが鳴った。

「さ、授業終わったし、練習いこうか。」

自然に、えりちにそう言う。

「希、今日は練習お休みって言ってたわよ。」

えりちは冷静にそう返す。

「あれ?そうやったっけ?アハハ・・・」

「やっぱり、今日の希変よ。きっと疲れてるのね。まっすぐ家に帰って、寝たほうがいいんじゃない?」

「大丈夫大丈夫。せっかく練習休みやし、パフェでもいかん?」

「・・・いや、今日はまっすぐ帰りましょう。パフェなんていつでも行けるわ。」

えりちにそういわれてしまった。

ハハ、えりちに心配されるなんて、やっぱり今日、ウチは変なんやな。



えりちとおしゃべりをしながら、帰り道を歩く。

太陽はもう傾いていて、すこし暗くなっていた。もうちょっと経てば、きれいな夕焼けが見えそうだ。

やっぱりえりちはいつも通りで、いつもと同じように話していた。

「じゃあ、私はこっちだから。またね。」

気づくと、十字路についていた。ウチとえりちは、いつもここで別れる。

「うん、また明日やね」

そう言って、お互い背を向けて歩き出そうとした。

その瞬間、ある考えが頭をよぎる。

本当にこのままでいいのか?

今ここで伝えなかったら、絶対に後悔すると思う。

「素直に言ったほうがいいわよ。」

今日、にこっちに言われた言葉が頭に浮かぶ。

その通りやな、にこっち。ほんとうにありがとう。

これを言ったら、えりちに嫌に思われるかもしれない。えりちのプライドを傷つけるかもしれない。

それでも、ウチは伝えたい。

今日の昼に見た告白の風景に、一瞬不安になる。

だけど、ウチは、今、言うんや!

「えりち!」

ウチはそうやって呼び止めた。

えりちは、不思議そうに振り返る。


伝えるのが怖い。不安で仕方ない。えりちはどんな反応を返すんだろう。

だけど、絶対に今言わなくちゃいけない。

深く息を吸い込む。










「ほっぺたにおべんとさんついとるよ」









静寂が訪れる。じれったくなって、えりちの頬のお米を取る。

「ほら」

そう言って、取ったお米を見せる。

「・・・・・・いつから?」

えりちは心底不思議そうに聞いてきた。

「え~っと、確か、朝からかな?」

「・・・・・・」

しばしの静寂。そして、

「何で言ってくれなかったのよ!!」

えりちの怒号。

「気づいたときに行ってくれればよかったのに!あ~恥ずかしい!」

「いや、えりちのプライドを傷つけちゃうかな~って。」

「そんなことで傷つくわけないでしょ!全く・・・」

急にえりちが黙り込んだ。もしかして、怒らせちゃったかな?そう思った瞬間

「もしかして、今日希が変だったのって、これのせい?」

「あ~、うん、考えてみたらそうやね。」

「は~、妙にそわそわしてたし、急に呼び止められたから告白かと思ったわ・・・」

そこで、頭に浮かんだ疑問を、素直にぶつけてみる。

「あっそういえば、えりちは女の子同士の恋愛ってどう思う?」

「う~ん、私はいいと思ってるわ。だからいつでも告白してね!OKしてあげるから!じゃ、またね!」

「あっそうなんや。じゃあ、またね!」

そう言って、背を向けて歩き出そうとした。

あれ、さっき、OKしてあげるからって・・・。

「ちょっと、えりち!さっきのどういう意味~!?」

そう叫んでみたが、既にえりちは逃げ終えていた。


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