2018-04-28 17:54:06 更新

前書き

n番煎じな設定な気もしますが、見逃して下さい。




電「失礼します」



ガチャリ



電(こんにちは、電なのです。

今日も鎮守府は平和です)



「お、来たね?」



電「ひゃっ!

…す、すいません、遅れちゃいましたか?」



「あーいやいや!ちょっと暇で先に仕事してただけだから気にしないでおいて!

で、早速だけどそっちの書類…」




プルルルル




「あ、ごめん電ちゃん、やっぱそっちの内線取り次いでもらってていい?今書類書いててさ」



電「は、はい、了解なのです!」



電(お日柄もよく、任務も予定通りに進行。司令官さんも優しい方で、正に模範的な鎮守府です)



電(…ただ、やっぱり普通じゃないのは…)




動くペン「いやー、ごめんね?取り憑いてる状態の方が何かと効率が良くてさ!人型になるのもちょっと面倒くさいし!」



電「い、いえ、大丈夫ですよ?」アハハ




電(…司令官さんが人間じゃない事なのです)





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電(当然ながら、最初から司令官さんは幽霊だったわけじゃありません。元々は身体もある、真っ当で立派な司令官さんでした。

今でも立派な事には変わりは無いのですが…)



電(それが変わってしまったのは、二年前の事です。いつも通りのある日の事、彼は深海棲艦に連れ去られてしまいました)



電(本当に突然の事で、誰も反応できず、そして、司令官さん自身も身動きが取れない状態にされてしまっていたのだといいます)



電(…まさか、いつも通りに演習を見守っている最中にこんな事になるなんて、と。油断をしてしまっていたのです)



電(直ぐに捜索隊が組まれて、昼夜を問わず司令官さんを探しだしました。ほんの少しの痕跡でも残っていたらという希望を持って。


…意外にも痕跡はすぐ見つかりました。

深い絶望を一緒に背負って)



電(見つかったのは大量の血痕と内臓。

…全てが司令官のものと判定されました。

何があったかは分かりません。でも、生存はあり得ない。そう断定できるものでした)



電(その悲しみがようやく落ち着き、そして、司令官の弔いをしようとした時です)




『おーい!ただいまみんなー!』




電(…皆が望んだその声が、何事も無かったかのように響いたのは)



電(そう、司令官さんは帰ってきたのです。

…半透明な身体になって)



電(司令官自身も、どうやら死んだ自らを受け入れているようで、非常に精神的に安定しています。その様子を、大本営は指揮能力に問題は無いと判断しました)



電(そういう訳で、司令官さんは前代未聞、幽霊の身で指揮官となり、ここはイレギュラー中のイレギュラーな鎮守府になったのです…が…)




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ペン改め提督「で、誰からだった?」



電「工廠の妖精さんからです。

新しい艦が出来たとの事です!」



提督「!そうか!!よーし!」




【ペンからまろび出た物、人型へ】




人型(提督)「じゃあ早速向かうか!」ワクワク




電「は、はい…」



提督「あっそうだ!今思いついたんだけどさ、こうやって、首だけ地面に出すって言うのはどうかな?」



電「イインジャナイデショウカ」




提督「そうか!よーし、早速やってみよう!

今度の娘はどんな反応をするかな!」ワクワク




電(…いつもいつも新しい娘にトラウマを与えようとするのだけはやめてほしいのです)




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提督「やあ、こんにちは赤城!それと、加賀!

相変わらず気持ちの良い食いっぷりだな!」



赤城「あ、提督。おはようございます」



加賀「あら提督。仕事は終わったの?」



提督「まだだけど、ちょっと気分転換に。

食堂で皆の様子を見ようって思ってるんだ」



赤城「そうですか、程々にして下さいね?」



加賀「あまり食べている所を見られたくは無いのだけれど…」



提督「まあまあ、そんな硬い事言わずに!

別に貰ったりはしないさ…というか食べられないし!」



赤城「味わったりも出来ないんですよね」



提督「身体が無いからどうもね…」



赤城「…あの、提督。」



提督「ん?」




赤城「以前から思ってたんですが、提督にとって食べ物の匂いだけを嗅いでるのってかなり辛いんじゃないですか?」


赤城「それって、まるで飢餓状態に食べ物をちらつかせられて結局貰えないような…そんな状態じゃないですか」



提督「あー…そうだね。お腹が減る事は無いけど、美味しさとかを感じられないのは辛い時はあるね。まあでも、そういう時は…」



赤城「?」



提督「んー…加賀さん、ちょっと良いかな?」



加賀「はい、どうぞ」



提督「それじゃあ、失礼!」ヒュルリ



赤城(!!加賀さんの身体の中に…!)



加賀『…ふーむ、今日は鯖の塩焼きか。

シンプルだけど、だからこそ美味しいな!』



赤城「……!!」




【提督、加賀から出てくる】




提督「と、こんな風に偶にガス抜きさせてもらっているんだ」



加賀「…あまり頻繁では無いけれどね」



赤城「へぇー…そんな器用な事やってたんですね、二人共」



提督「ま、今加賀さんが言った通りそんな頻繁じゃないけどね。たまーにだよ」



赤城「そうなんですか… …というか、折角の息抜きですし、もっと回数を増やしては?それくらいならバチは当たらないでしょう」



提督「そうしようとも思ったんだけどね」



加賀「私も以前そう言ったのだけれど…

やはり、私達の『身体』は少し特別らしくて」



提督「長い間留まり過ぎたりあんまり頻繁にやると…何というか、押しつぶされそうになるんだよね」



赤城「押しつぶされる?」



提督「艦の時の記憶っていうか、艦娘としての自浄力っていうか…まあそういうので、僕が僕で無くなっちまいそうになるんだ。別の物に憑いた時は全くないんだけどなぁ…」



赤城「やっぱり私達の身体って凄いんですね」



提督「何を他人事みたいに言ってるのさ。

…まあ、艦娘ってのは特別だってのが一つ」



赤城「もう一つ理由があるんですか」



提督「まあ微々たるものなんだけど。

ほら、生きてる娘に次々と取り憑いて、身体を好きなようにー…って、完璧にただの悪霊でしょ?

僕は悪霊とかにはなりたくないからね!」



加賀「もう手遅れな気もしますが」



提督「ちょっと、何て事を言うんだ加賀さん」



加賀「新しく着任した娘、気絶していたらしいわね」



提督「…」ギクッ



加賀「それの理由は、この鎮守府の提督の、ただ楽しむためだけの行動だったとか。

正に悪霊の所業のようね」



提督「待って、妙に詳しくない?詳しすぎない?」



加賀「秘書艦の娘が愚痴をこぼしていたわ。

後始末は任せられるとか、その後の説明が大変だって」


加賀「その娘達からしたら、既に手遅れなんじゃないのかしら?」



提督「……ごめんなさい」



赤城「…あの、すいません。

話、戻してもいいですか?」



加賀「?戻す程の話があったかしら」



赤城「ええまあ、少し気になって… 提督ってその息抜き、他の娘の身体は使ってますか?」



提督「?いや。ないけど。

加賀さんだけだね、これに付き合って貰ってるのは」



赤城「何故加賀さんなんでしょうか?

さっきから、気になってるんですよ」



提督「おっ、よくぞ聞いてくれた、赤城!

そう、あれはある日の事!加賀さんが」



加賀「提督」



提督「ごめんダメだ。口止めされた」



赤城「大丈夫ですって、まだ提督は名前を呼ばれただけです」



提督「いやいや、見てよこの目。

言ったら殺すって感じの目つきもん。

どうやってでも消すって感じの凄味だよこれ」



加賀「……」



提督「怖い怖い、怖すぎるよ加賀さん。

…怖いから僕はそろそろ行くよ」



赤城「あら、行ってしまわれるんですか?

もう少しゆっくりなさっては?」



提督「ゆっくりできなくさせたのは君だろうが…

まあいいや。そんじゃ、また今度ね!」




スタコラサッサ




赤城「…そんなに必死にならなくても、提督は言わなかったと思いますよ、加賀さん?」



加賀「……別に、必死では」



赤城「顔、真っ赤ですよ?」



加賀「!?」



赤城「嘘です♪」



加賀「ッ!?赤城さん…!」



赤城「加賀さんがここまで照れるような出来事があったんですね、提督との間に」



加賀「……ッ!はぁ、敵わないわね」



赤城「で、何があったんですか?

ここだけの話として、教えてくださいよ」



加賀「…間宮アイスをくれると言ったら考えます」



赤城「…じゃあ諦めます」ションボリ



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金剛「ヘーイ、提督!」



提督「へい金剛!今日も相変わらず元気だね!」



霧島「お姉様、もう少し静かに…」



提督「と、霧島か。なんかちょっと珍しい組み合わせだね。他の二人はどうしたの?」



金剛「比叡は料理の練習をしてして、榛名はその付き添いデース」



提督「おお、最近頑張ってるねぇ比叡ちゃん。

…どう?毒性はどれ位薄まった?」



霧島「驚かないで下さいね提督…

食べる事が可能になっています」



提督「それは本当かい金剛」



金剛「本当デス!」



提督「…努力ってのは実を結ぶもんだねぇ。

いやー凄いもんだ。君達も頑張ったね」



霧島「それ程でも…

ところで、提督は何をしていらっしゃったのですか?ただ歩き回ってる様に見えましたが」



提督「ん。見立て通り歩き回ってるだけさ。

食堂にちょっと居られなくなったから、ちょっとそれ以外の場所でも見回ろうと思って」



金剛「それじゃあ少しお話しませんカ?

ちょうど私達も暇でしたからネー」



提督「…そりゃ魅力的な提案だ。」



提督「…けど残念、そろそろ戻らないと行けない時間なんだ。申し訳ないけどまた今度、お話ししよう」



金剛「ブー、提督はいつもそれデース」



霧島「まあまあ、お姉さま」



提督「はは、いつもって…そんなに断ったりしてない気がするんだけどなぁ」



金剛「いーや、いっつも断ってマース!

ぶーぶー!」



提督「いやいや、そんな事は無いって!」




金剛「…『あの話』をするのを避ける為に私と会話をしない様にしているのデスか?」




提督「……」



霧島「…?(あの話?)」




提督「…」



提督「…残念ながら違うよー。

今回は、そろそろ帰らないと電ちゃんが鬼のように怒っちゃうから。おにおこだよ?鬼怒だよ?」



霧島「……」



提督「そんな何言ってんだコイツってな目で見ないで欲しいなぁ…」



提督「…金剛、そう思わせてしまったのは僕だ。

だが信じてくれないか?本当に違うんだ。

ただ本当に君と話す機会が無かっただけさ」



提督「そう考えるまでに話さなくてゴメン。

言い訳じゃないが、マジに暇が無くてね…」



提督「いつかそう遠くない時、また話そうよ。

それで許してくれないかな?」



金剛「…むぅ」


金剛「許すも何も、私は怒ってなんかいませんヨー」



霧島「えっ?」



金剛「霧島」



霧島「あっはい」



金剛「ともかく、私はただ心配だったんデース。

何かとても思いつめてるような気がして…」



金剛「…それに、いつか何処かへ行ってしまうのでは無いかと思って…」



提督「…ありがとう。僕は大丈夫さ。

それじゃあ、もう行くよ」フリフリ



霧島「…ええ、それでは。

電ちゃんにも宜しくお伝え下さい」



提督「ああ。じゃあね」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



霧島「…姉様、あの話って何の事なんですか?」



金剛「…そんな大した事じゃあないヨー」



霧島「何も、隠さなくとも…」



金剛「隠し事は年長者である姉の特権デース!」



霧島「…言うつもりは無いんですね、解りました。

では、私もその事は忘れておきます」



金剛「流石霧島、良く解ってるネ。

そうしてくれるとありがたいヨ」




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提督「……」



提督「…露骨過ぎた、かな」



提督「まあ金剛は聡い娘だからな…

…多少は、仕方がないか」



提督「…今度はもっとバレないようにだな」





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【夜中】




「……」コソコソ



「…誰だ」



「ッ!?」



提督「夜中に歩き回る悪い子は誰だぁぁ!」



「きゃあああ!」



提督「っと、その声は…!」



古鷹「て、提督ですか?

えっと、すみません、これは…」




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提督「いやー、ははは!意外だなぁ!

何というか、優等生の古鷹が夜中に…

しかも、お腹が空いちゃったから歩き回るなんて!」



古鷹「本当にすいません…!

先程、夕食をとり損ねてしまいまして…

残り物でもあったら、と思って…!」



提督「あーいやいや、責めてる訳じゃないよ!

むしろ、空腹はあまり我慢しちゃいけないからね。

夜中に歩き回るなんて全然いいとも!」



古鷹「え?しかし、さっきはあんなに怒って…」



提督「はは、違う違う!

あれはただ僕が驚かせたかっただけだよ」



古鷹「…そ、そうですか」



提督「…よしそうだ!

折角だし、僕が何か軽く用意しようか!」



古鷹「えっ?い、いや、其処までして頂か無くても!」



提督「いーんだって、どうせ僕は寝る必要も無いし、この夜中ヒマだから!親切は受け取っておいた方がいいよ!」



古鷹「そ、それでは…宜しくお願いします」




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提督「はいどうぞ…つっても、料理とも言えないようなものしか出せないけどね!」




【おにぎり数個+たくあん】




古鷹「いえ!凄く有り難いです!

…では、いただきます!」



提督「どう?不味くはないかな?」



古鷹「はい、とても美味しいです」



提督「そう?ま、おにぎりを不味く作るなんて事は逆に出来ないだろうから当然かな?はは」



提督「…ね、ところでさ。変わった感じでしょ?」



古鷹「え?」



提督「そのおにぎり。

僕が目の前で握ったそれだよ。

…なんて言うか、冷たいでしょ?」



古鷹「…いえ、そんな事…」



提督「あるはずだ。握った者の温度がさっぱり無いから。…ふふ、作り置きしたような物ともまた少し違うでしょ?」



提督「そう、握っても握っても温度なんて移らないんだよ、僕は。身体が無いからね。でも何故か握る事は出来る。ほんと、つくづくどうなってんだろうね」



古鷹「…あの…?」



提督「はは、ただの与太話さ。僕は提督よりよ寿司屋が向いてるんじゃないか、っていうね」



古鷹「…あの。凄く失礼かもしれませんけど、一つ聞いても良いですか?」



提督「ん?何だい?」



古鷹「その…提督はどうやって…いや、何故、その状態に成ったんですか?」



提督「…」



古鷹「死んだ人間が皆幽霊になっていたら、今頃この世の中は幽霊だらけになってしまってるでしょうし。

…えっと、お気を悪くしてしまったらすいません…」



提督「良いよ。確かに疑問に思うよね。

知っての通り、僕は一回死んだ。

で、この体になれた理由。それはね…」



古鷹「…それは?」



提督「…『愛』さ」



古鷹「愛…ですか?」



提督「そう、愛さ。僕が死んだ時、君たちへの愛が僕をこの状態にしてくれたのさ!

『僕が戻らねば』『君たちが心配だ』とね!」



古鷹「…」ポカン



提督「呆気に取られたかな?」



古鷹「あ…いえ、そんな事は」



提督「そんな顔をしていたけどね?」



古鷹「う…」///



提督「…ところでさ。

愛ってのは何だと思う?」



古鷹「…え?急に言われても…

ある人を大事に思ったりする事、とか?」



提督「そうだね。

それで、何が生じる?」



古鷹「え、えーっと…その人を守ってあげたい、とか思うようになるとかですか?」



提督「うんうん、それもまた合ってる。

…だけどね、僕の持論は違うんだ」



提督「僕はね、愛の本質とは、盲目になる事。

その為になら全てを捧げれる様に思える事。

それが生じる事にあると思うんだ」



古鷹「…」



提督「愛に全てを殉じ、それに捧げる。

普通に考えたらやらないような事も行う。

人から深く、そして正確に考える力をも奪う」


提督「そして、思いをとても強い力とする。

…それはまるで何かに似ているようじゃないか」



古鷹「…何か、ですか」



提督「ああ。…狂人に似ているんだ。

そう、まるでただの狂人じゃないか」


提督「愛とは、狂気と表裏一体の…

いや、むしろ隣り合わせとかの言葉の方が良いくらいに近くにある物だ、と。そう思ってる」



古鷹「…あの、提督?」



提督「そして、狂気という物はそれこそ憎悪や、憎しみ、嫌悪とかに近い物だろう。

ならば、それらに似た感情を強く持ち、今ここにいるのは一体何だ?」



提督「ただの悪質な地縛霊、狂った悪霊、はたまた破滅をもたらす疫病神か?

いや、それですら無いのかもしれない。俺は…!」



古鷹「…提督!」



提督「……」



古鷹「…すいません。

私が変な事を聞いてしまったから」



提督「…なあに、君は悪く無い。

…ただの与太話さ。つまらない話を聞かせたね。ごめんごめん、ご飯もまずくなっちゃうよな」



古鷹「いや、そんな事は…」



提督「それじゃあ、僕はそろそろ見廻りに戻る。

古鷹はまあ、自由にしといてくれ」



古鷹「…提督、私はそうは思いません」



提督「…?」



古鷹「…愛って、多分もっと良い物だと思います。人を心の底から想って、誰かの為に身を投げ打つ事が出来る感情が駄目な物の訳がありません」


古鷹「だから提督は、決して悪霊とか、疫病神なんかじゃ無いです。私たちを守る為にその姿になっているのなら、もっと良い存在だと思うんです」



古鷹「…例え、そうじゃなくても。

私は、その、提督を…」



提督「古鷹」



古鷹「す、すいません、やっぱり何でも無いです!」



提督「…現金なようだが…

重巡洋艦の。いや、君の良いところ。

改めてすごく解った気がするよ。ありがとう」



古鷹「あ、いえ、こちらこそ、ありがとうございます…!」



提督「…それじゃあ、また明日。」



古鷹「…はい!」





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【ある日】




大淀「提督、お手紙が」



提督「ん、そこに置いておいてくれる?」



大淀「大本営からです」



提督「ほんと?じゃあ、直接頂戴。

…ん、ありがとう」



大淀「はい、それでは」




提督「…はぁ」



電「…溜息をつくくらいの内容なのですか?」



提督「いいや、まだ読んでないよ。

でも、大本営からの連絡は碌なモノが無いからねぇ…確認するのすら億劫だよ」



提督「まあ読まない訳にもいかないけど…

……何?」



電「何て書いてあるのですか?」



提督「…ただ一つ、『出頭を命じる』って」



電「…司令官さん…」



提督「ち、違う!僕は何もやってない!…筈!」



電「断言はしないのですね…」



提督「…知っての通り前科が多いんで…

でもこの手紙はどうやら、ただ大本営に来いっていうだけの意みたいだ」



電「いつですか?」



提督「出来るだけ早くとの事だ。

…今から行って間に合うかな?」



電「ええと…船に成れば間に合うのではないでしょうか?」



提督「おっけい、じゃあちょっと行ってくるよ!書類は明日僕がやるから、サボっちゃってもイイヨ!」



電「あ、それなら、司令官についていくのです!」



提督「気持ちは有難い…けど!ごめんね、那智ちゃんに付いてきて貰う予定なんだ!

埋め合わせはまたいつかするから!」



電「…了解なのです。」



提督「それじゃあね!」



バターン



電(…本部へと呼び出された時はいつもこうなのです。いつもよりテンションが少し高めで…)



電(…そして、気づいてないのでしょうけど、眉を顰めて、険しい表情をしています)



電(あの表情を見るたび、電は少し、不安に駆られるのです。何処かに行ってしまいそうな、そんな不安に…)




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





那智(提督はいつも、本部へと呼び出された際、私を伴わせる。)



提督「いやー、那智ちゃんはキチンとしているからさ。僕がぬぼーっとしてても何とかしてくれてすっごく助かるんだ!」



那智(彼は、私をいつも伴わせる理由をそう説明した。それもまた、真実なのだろう)



提督「…ここから先は、秘書艦は待機しないといけないらしい。と、いっても。いつもの事だし知ってるよね」



那智(こういった『いつもの事』をいちいち説明せずとも物事が進むから、ずっと同じ艦を選ぶ、というのも、恐らく理由の一つ)



提督「…それじゃ、ちょっと行ってくる」



那智(…だが、私は。それ以外にも理由があるのだと思っている)




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





那智「…お帰り」



提督「…ああ、那智。随分待たせたかな」



那智「いいや、そうでもないさ。

…それに。いつもの事、だろう?」



提督「はは、そうだな…

で、どうする?いつもの通りに、か?」



那智「ああ、宜しく頼む」



提督「そうくると思って、例の如く書類は後回しにしておいた。…では、行くか」



那智「ああ、そうだな」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




【ある酒屋にて】




那智「…ぷはっ」



提督「ははっ、良い呑みっぷりだ。

見ていて気持ちが良い」



那智「折角の旨い酒だ、ゆっくりと味わいたいものだが…どうも酔いたくてな。

…いつも通りに、な」



提督「ハハ…」



提督「…今日言われた事は、お前は本当に人間に仇なす者では無いのか。本当に奴等の手先では無いのか?そんな事だ。

これも、いつも通り」



那智「…確かに。殆ど代わり映えしないな。

…で、どうだった?」



那智(…彼は、私が酔った時、唯一愚痴を溢す。行われた身体へのテストの厳しさや、報告の不備について)



那智(…そして、拷問にも近い尋問に)




提督「キツかったさ。進行形でキツイ。

何度も、何度も、何度も。

呼ばれる度に聞かれ、吐かされ、言わされ。

そうなると、本当に解らなくなってくるのさ。何者なのか、正しい記憶を持ってるのか。俺が、俺なのかも…」



那智(捲したてる様にして彼は弱音を晒す。




那智「…なあに、心配はいらない。

貴様は貴様だ。私が保証するとも」



提督「…だと良いがな」



那智「…何かしらを思い詰めている時の貴様は」



提督「?」



那智「…いや、やはり何でもない。

だが、確信を持って言えるぞ。

…提督が、私達の提督だと言う事はな」



提督「…気休めだとしても、ありがたい。

その言葉だけで、少し地に足が着いた気持ちになれる」



那智「そう言って貰えるなら幸いだ」



提督「…さて、そろそろ帰ろうか。

我らが鎮守府に。我らが戦場に」



那智「…そうだな。あまり長い事空けてしまうと、また姉さんにも怒られてしまう」



提督「はは、違いない。

…ああ、そうだ。」



提督「『今日言った事は忘れてくれ。最も、酔った晩は記憶から消えるんだったか」』



那智「ああ、そうだな。『きっと私は、何も覚えてはしないだろう』」



那智(ああ、そうだ。心情の吐露を聞き、酒を呑み。そして私は、『いつも通り』酔った夜に聞いた事は全て忘れるのだ。



那智(…最初は確か、私がやり始めたんだったかな?『酔った時の記憶は何も無くなる』『何でも話してくれていい』とな)



那智(…当然、本当に忘れているかどうか、何て事は彼は直ぐにでも解っただろうし、私に至っては嘘を隠すつもりすら無かった)



那智(それでもこの茶番は終わらない。彼が自己の矛盾に耐え切れなくなる度、この寸劇は始まり、そして終わる)



那智(酒を呑み、酔い、そして忘れてくれるという大義名分がある。だからこそ、彼は私に弱さを少しでも出せるのだろう)



那智(だから私は、彼の安らぎになれているのだろう。だから…)




提督「なあ、那智よ」



那智「…何だ?」




提督「礼を言う」



那智「…どういたしまして」




那智(…だからこれはきっと。

私だけの、特権)




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




提督「…そういえばだが。ただ一つ。

『いつも通り』では無い事を知らされたよ」



那智「…それは一体?」



提督「当然、翌日以降鎮守府の方でも改めて広めるが…どうやら最近、我らの鎮守府の近くの海域に、ある深海棲艦の目撃情報が出ているらしい」



那智「…普通の深海棲艦程度ならば、わざわざ大本営が知らせる事は無いだろう。

ならばつまり…」



提督「…姫、鬼級の何かか。

はたまたそれに準ずる脅威の化け物か」


提督「…俺に関係する者なのか」




那智「…もしくは……」




提督「…そのどちらも、という事だろうな」



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後書き

次回からまた少しほのぼのとしていきます。


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1: SS好きの名無しさん 2017-09-21 05:10:01 ID: A-64P3hS

ゲームでそんな展開があったなあ。
主人公に悪魔の魂が体を取り返すまでの間という契約で
最後は体を取り返すも主人公と長く戦い続けた影響で。
完全に融合してしまうという。

2: ダイル・クライス 2017-09-25 05:36:58 ID: vjQE08b_

なかなか面白いです!
続きを期待しています!

3: ウラァー!!ハラショー!! 2019-07-09 05:45:12 ID: S:1x9QXm

死してもなお指揮を続ける提督の鏡


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