2017-11-17 23:45:27 更新

概要

( ・ω・)ほとんど神風が刀一本で深海棲艦を倒そうとがんばるお話です。


前書き

※キャラ崩壊注意です。


・ぷらずまさん
深海棲艦の壊-ギミックを強引にねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた電ちゃん。

・わるさめちゃん
深海棲艦の壊-ギミックを強引にねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた春雨ちゃん。

・神風さん
提督が約束をすっぽかしたために剣鬼と化した神風ちゃん。

・悪い島風ちゃん
島風ちゃんの姿をした戦後復興の役割を持った妖精さん。

・明石君
明石さんのお弟子。

※やりたい放題なので海のような心をお持ちの方のみお進みくださいまし。


【1ワ●:くだらねー蛇足の物語】



丙少将「ようやく解放されたってのに、わざわざ集まってもらって済まねえな」



乙中将「いや、別に構わないんだけどさ」



提督「……」チラ



北方提督「……」バリバリフリフリ



丙少将「ポテチ喰ってんじゃねえよ! というかうす塩になんで塩を更に振りかけてんだよ!うす塩を愛する者として邪道食いは止めて頂きたい!」



北方提督「味が薄いんだ。しかし、支障はないだろう。どうせ取るに足らない尋問だ。お菓子食べながらじゃないと聞いてられないよ」



丙少将「あんたは相変わらず変わらねえな……准将、この人とは初顔合わせだろ? というか北方のことどのくらい知ってる?」



提督「戦争終結してからメンバー程度は、ですね。戦果や経歴は存じておりません。最終作戦時の策の組み立ても元帥殿から丙乙甲元闇のメンバーで、とお達しだったので、北方に関しては目を通しておりませんでしたから」



丙少将・乙中将「……」



北方提督「前々世代の響改二だ。齢10の時に建造した。そして解体してから龍驤さんと同じく提督として活動を始めた。肉体年齢はそうだな、准将さんの一つ下の歳になるかな」



提督「確かに響さんとどことなく雰囲気が。というかそんなに立っているなら髪のその白は染めているってことですよね……」



乙中将「響ちゃんの1つの未来だよね。見た目はミステリアスな美人さん。ただ中身はこの人と同じにはならないで欲しいけど……」



北方提督「あの子にフリーダムな素質なければ大丈夫だと思うよ。ああそうそう、ここに電いるよね。元は私の秘書官だった。あの子はあの後にフレデリカのもとへ行ったけどね」



提督「となると、ああ、例の珊瑚の作戦で第6駆逐隊を囮に使い、暁、響、雷を殉職させた提督さんですか」



北方提督「そうなるね。私はあなたのように軍法会議とまではいかなかったけど、提督の任からは降ろされた。しばらく内陸で傭兵でヘッドショッターとして名を挙げていたら元帥さんからなぜか北方に就かないか、と誘われた。それから北方の鎮守府で提督の任に着いた。提督としての経歴は准将さんと似ているね」バリバリ



提督「似てません。ヘッドショッターってなんですか(震声」



北方提督「遠距離狙撃によりテロリストの頭を吹き飛ばす。自慢だが、雪の戦場では女のヘイヘと称えられる程の腕前を誇るよ」



提督「肉体年齢10歳かそこらで?」



北方提督「ああ」



提督(世界が自由すぎる……)



提督「……丙少将、珊瑚でのことはぷらすまさん達も大丈夫だと思いますよ。子供のような対応はしないと思いますから」



丙少将「おう。さっきハラハラしながら見ていたけど、電や雷、響暁も別に睨んだりしてなかったしな。問題はそこじゃなくて、今後、海域を攻略しておくにつれて北方の連中が指示に従うかどうかが甚だ疑問なんだ。あんたんところの鎮守府の戦果、説明してくれ。色々とおかしい箇所があり過ぎる」



大淀「……ええ、お手元の資料に目をお通しください」



丙少将「分かりやすい異常は望月と若葉と神風だな」



乙中将「望月ちゃん、ここ2年で9回しか抜錨してないんだけど(震声」



北方提督「あの子そんなに抜錨していたのか。私の記憶にないな。多分三日月が強引に引きずってドラム缶でも担がせたんだろう。詳しくは私じゃなく三日月か天津風の常識人枠に聞いてくれ」



乙中将「」



丙少将「まあ、望月は最後の海でMVPだし、そこはおいといても」



丙少将「若葉はなんだよ。抜錨回数は平均的でまともだ。遠征もこなしてる。参加した作戦は撤退作戦が多すぎるな。中には殲滅戦もあるようだが、それにしては深海棲艦の撃沈数が哨戒での10っておかしくねえか」



北方提督「すごいだろう。若葉は旗艦をやりたがるからやらせてあげていた。そして旗艦にすると深海棲艦と遭遇した瞬間、艦隊を即時撤退作戦に移行させる。必ず全員生還させてくれるんだ」バリバリ












提督「敵前逃亡じゃないですか(震声」



丙少将・乙中将・大淀「」



大淀「……」



大淀「神風さんは抜錨回数は異様に多いですが、あまりにも結果が出ていないんです。作戦参加回数は多いのですが、深海棲艦撃沈数0、遠征0、演習参加記録0です。やはり適性率故、ですか?」



北方提督「ああ。大破撃沈はどのくらいだい?」



大淀「252回とか嘘ですよね。2桁間違ってますよね(震声」



丙少将「神風は北方に3年もいないだろ……」



乙中将「生きているのが奇跡じゃないか……」



北方提督「……私が把握してないのもあるね。いや、神風は私が陸で狙撃していたから訓練中の事故として報告してあるよ。適性率故に追及はされなかったし」



大淀「……ええ、神風さんのことは元帥があなたに一任したとのことなので、もちろん訓練内容も」



乙中将「気になるね。適性率が15%まで落ちた兵士を再起させたのならそれは偉業だ。そのくらい使い物にならなかったはずだし」



北方提督「そうそう。だから馬鹿げた訓練をしてた。ぼく(私と香取さん)がかんがえたさいきょうになるくんれん」



乙中将「だよねー。攻撃性能がないなら、そういう次元の話にもなるよね……」



北方提督「神風は艦の兵士の中では間違いないね。香取さんお墨付き」



北方提督「ワースト1、最弱の烙印を押されてた」



北方提督「適性率故だね。あの子は身も心も欠陥品だ。私としては准将さん、兵士として活動するならここへの異動を勧めたんだけどね。ここはどんな欠陥品でも使いモノにしてくれるみたいだし」



提督「一体うちをなんだと……」



北方提督「神風が出来たのは航行のみだ。明石さんに艤装を魔改造してもらって航行性能は上昇させもらったよ。だがその代償にここの卯月と同じく戦艦並の燃料を食う。だから神風は遠征禁止にしてた」



北方提督「砲雷撃はどうにもならなかったね。機能させられなかった。装備妖精にも艤装にも神風だと認識してもらえなかったレベルでね。だから艤装から砲塔も魚雷菅も全て取り外した」



北方提督「明石さんから特性の神風刀を開発してもらって、その刀1つで戦っていたよ」



乙中将「ああ、木曾さんみたいな」



丙少将「軍刀っつっても剣仕様じゃなくて、もっと技術いる細身の刀だろ? それで砲弾を受け流すのはクソ難しいって木曾から聞いたことあるわ。刀で艦載機の群れを処理出来るとは思えねえし、そもそも刀じゃ深海棲艦は倒せねえ。切れて肉部分だが、あいつらの本体である艤装の耐久装甲につけられてもかすり傷程度だろ」



北方提督「そうだね。支援をつけて神風を突撃させたことはあるが、沈められなかったし、味方が中破大破させた深海棲艦を狙うだなんておこぼれを預かるような真似を嫌った」



北方提督「刀では至近距離でしか切れない。装備も損傷させずの至近距離では深海棲艦の攻撃も回避は不可能に近い。装甲耐久値も適性率低さゆえ本来の神風の数値とはかけ離れていて、潜水艦のろーちゃんより少し上程度だよ。だからその成績だ」



乙中将(……3年足らずで大破撃沈数252だろ。馬鹿げてるにも程がある。神風ちゃんがそれでも諦めなかった、ってことが異常過ぎるんだよ……)



乙中将(ただならぬ執念を感じるけど、でもだとしたら)



乙中将(なんで神風ちゃん、海の傷痕が発表した重と廃のいずれかに名を挙げられなかったんだろ……?)



北方提督「神風は優秀だ。だけど軍が定めた項目に彼女が満点を取れるであろう教科がなかったんだよね」



提督「眉唾ですね……」



北方提督「なぜだい」



提督「適性率10%~20%だとあなたのいう通り、建造できても艤装とのリンクが上手く行かず、稼働しないパーツがほとんどですし、装備の砲塔角度すら装備妖精が変えてくれないレベル」



提督「神通さんはあくまで特例ケースで、あの人は執念のただ一点の10%がたまたま神通において艤装を稼働させるに当たり、重要な想の割合を占めていただけのマッチング的な話」



提督「神風さんがそのケースに当てはまれば海を越えて自分の耳にも届いたはずです。しかし、そうではないのでしょう。砲雷撃もこなせない。燃費も悪い。刀1つで戦う艦娘だなんて」



提督「作戦時においては無駄死にする危険が高過ぎます」



提督「つまり邪魔なだけだ」



提督「個人の希望とかそんな話ではなく、解体させるべきでしょう。あなたは捨て駒として盾として神風さんを起用するような、自分と同種の人間には見えません。あなたには提督としての違和感があります。自由な人といえばそれまでですが」



北方提督「最もだけど、それは私の提督としての在り方の問題だね。珊瑚で後任の自分と姉妹達を失ってから決めた在り方のね」



提督・丙少将・乙中将「……」



北方提督「この子に関しては私から1つ」



北方提督「秀でた素質もなく、適性率15%で地獄のような訓練を繰り返した。もがき続けて、その結果ラノベ主人公のように最弱(弱いとはいっていない)を体現した兵士だ」



北方提督「あくまで軍が定めた成績の付け方でその数値に至るだけ。実情は北方のみなに聞いてくれ。口をそろえていうはずだ」



北方提督「『神風は強い』とね」



北方提督「ああ、ガングートを第1艦隊にしていたのは私と気が合うこと、そして成績的な基準で選んだまでだ。第1艦隊の旗艦は鎮守府の顔だろう。成績的にあまりにも角が立つから控えたまでだよ」



北方提督「どれだけ最高でも私は神風だけは絶対に旗艦にしてやれないよ」



提督「は、はあ」



北方提督「……」



提督「そのガングートさんですが……」



北方提督「戦場で深海棲艦ごと味方を介錯した。ややこしい問題に発展してね、司法裁判行きの問題になったけれど、実刑中でも建造艦娘パワーで労働をがんばってたらしい。出所してからガングートの艤装がまだあったから軍に戻ったみたいだね。腐っても彼女は貴重な戦艦戦力、そして軍人としても優秀だ」



丙少将・乙中将・提督「」



悪い島風【っと、アライズ! お話中すみませんね!】



一同「……」



悪い島風【闇を拠点にするから部屋もらうね。ゲーセン施設空っぽだったからそこが私のリアルでの職場兼居住地でーす】



大淀「……話はそれだけですか?」



悪い島風【いや、もう1つ。マーマと直接会って話がしたいから、そのお願いに。バレないようにやりますからー】



大淀「話の内容は?」



悪い島風【今話題にしてる北方ですよ。私の調べ方か基準が悪いのか知らないですけど、北方の皆さんと想を繋げた時に想定外のトラブルが起きまして。メンテナンス対象なんですよね……】



悪い島風【神風】



悪い島風【マジでびびったんですけど】



悪い島風【私の調べでは『廃課金』だったんです】



悪い島風【まあ、薄々気づいてはいたんですけど】



悪い島風【この物語が】



悪い島風【くだらねえ蛇足だってことは】



【2ワ●:雪降る北の鎮守府の、神風型1番艦、神風と申しやす……】

 


提督「やっと来ましたか。もう日は暮れていますよ。あんな北国からここまで走ってくるだなんて解体された年頃の娘なら控えたほうがよいかと。それとそのひょっとこのお面なんですか?」

 

 

金剛「一応テートクの側についているケド……神風、荒事はなしの方向でお願いしマース」

 

 

神風「一つ、人の世の生き血をすすり。二つ、不埒な悪行三昧。三つ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう、桃太郎」


 

提督「あ、桃太郎侍の台詞ですか……」

 

 

提督「なにやつ」

 

 

神風「一かけ二かけ三かけて、仕掛けて殺して日が暮れて、橋の欄干腰おろし、はるか向こうを眺むれば、この世は辛いことばかり、片手に線香、花を持ち、何処行くの」

 

 

神風「私は必殺仕事人、雪降る北の鎮守府の、神風型の一番艦、神風と申しやす……」


 

提督(それっぽい雰囲気出てる。似合うなー……)

 

 

神風「それで今日は何処のどいつを殺ってくれと仰るんで」



神風「大五郎!」

 

 

神風「ちゃん! そいつに天誅を!」


 

金剛「混ぜすぎ危険デース……」

 

 

神風「嗚呼、声だけでここまで腸が煮えくり返るものなのね。このひょっとこの仮面を外して顔を見てしまえば今すぐにでも青山司令補佐のタマを奪ってしまうそう……」

 

 

提督「自分を相当に恨んでいるというのはお聞きしておりますが……」

 

 

神風「大和さん達から聞いたのね。いやいや、あの話はあくまで一部のみ。私が殺意を芽生えるほどに憎まれる心当たりはあるかしら」

 


提督「……ありすぎるんですけど、ただ1つ言うのならあの作戦後に自分がアフターケアしなかったせいですかね。謝罪しようとは思いませんが、なぜだか分かりますか」

 


神風「それはあんたがそういうやつだから」

 

 

提督「自分の指揮は間違っていなかった。裁きの場でもそういいましたよね。あれが本心です。ミスがあるとすれば、理想を即座に捨てて大和さんを捨て駒にしたことのみです」

 

 

提督「言い方は悪かったと思いますが……あの時の神風型の皆さんには腹をくくってもらう必要がありましたので」

 

 

神風「そうね。その通り。私達は弱かったから。その結果、解体の道を辿った春風旗風はあなたを恨んではいないわ。私もあの作戦については身の程を弁えている。あの時、犠牲になってくれた大和さんのために作戦を成功させた青山司令補佐の指揮に文句はなく」

 

 

神風「されど、なぜここまでこの心は怒髪天を突くのか」

 

 

提督「……使い捨てにしたからですか?」

 


神風「あなたが諦めていなかったから、かな。私のちょこれいとと一緒に入れておいた手紙事件の後、私はまだあなたと関わりに行って」

 

 

提督「ええ」

 


神風「軍法会議の後、陸軍に連行されたあなたを見たわ。内陸に飛ばされると知ってなお、あなたの顔つきは変わらず。その時、私は青山司令補佐の全てを許した」

 

 

神風「青山司令補佐と交わした約束の先に報いがあると信じて寒い冬を幾度も乗り越え」

 

 

神風「適性率15%のこの身で私はあがき続けた。航行するのが精一杯のこの身が抜錨すると民間人から指を差されながら嘲られた。恥の炎に焼かれ、慚愧の波にうちひしがれてなお」

 

 

神風「一歩を強く踏み続けました」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「そこまでして頑張る意味が分かりませんね。未来のことを考えれば春風さんや旗風さんのように新しい道を選んだほうがいい。その苦悩の先に救いは見積もれたのですか?」

 

 

神風「その通り。なぜこんなに惨めな日々を。諦めて艤装を手離してしまえば味わう必要のない地獄の日々からは抜け出せた。そうしなかったのは青山司令補佐」

 

 

神風「私はあなたを本気で好いていたからです」

 

 

提督(なつかれているとは思っていたけど……)

 

 

神風「恋心だけはどうしようもなく、身体の性能を置き去りにするが如く、精神は理想へと突き進む」

 

 

神風「もはや恋心は始まりに過ぎなかった。そんなものはしょせん私個人の欲望の域を出ません。それは意地と覚悟とに変容を遂げて、献身の至りへと。先代丁准将が語った『心技体』を体現し、登り詰めました。『なに者にもなれる可能性』をつかみとり『最強の艦の兵士』に」

 

 

神風「私の足ではあなたの速さに追い付けなかったのが心残りです」

 

 

神風「……おめでとうございます」

 

 

神風「戦争終結、見事に成し遂げましたね」

 

 

神風「天晴れです」


 

提督「神風さん……」

 

 

提督「ありがとう、ございます」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

神風「とでもいうと思いましたか……?」

 

 


金剛「テートク! 危ないデース!」

 

 

神風「……」

 

 

金剛「!? シット!」

 


提督「マジか……うちでは体術においてトップの金剛さんを軽くあしらうとか……」

 

 

神風「とりあえず」

 

グチュ

 

提督「っ!」

 

 

神風「あら、本当に直るんだ。まあ、これでとりあえず殺意は抑えられたから今日のところはいいわ」

 


卯月「うわ、気になったから様子を見に来たら司令官の右目をえぐり出して手のひらで玩ぶ神風を見ちまったぴょん……」


 

卯月「おい神風、テメー、さすがに限度ってモノがあるし」

 

 

神風「そうね……恨んではいない。けれど、こいつはいっつも私の心を無視するわ」

 


神風「八つ当たり」

 

 

提督「……まあ、構わないのですが」

 

 

提督(この嫌われようどうしようか……とても仲良く作戦こなせるとは思えないんですけど……)

 

 

卯月「ったく司令官、男ならやり返せし。世の中にはお前の得意な理屈が通用しない人種だっているぴょん」

 

 

神風「卯月さんだったかしら。大層な才能をお持ちのようですが、どの程度なのかしらね……」

 

 

卯月「あん?」

 

 

神風「地域で持て囃されても、県の大会になれば成績を残せず、県の大会で持て囃されても、全国では通用せず。演習内容を見るに、ただの天狗のように見えましてね……」

 

 

卯月「やれやれ、凡人のいちゃもんか。ネットにでも悪口書いているといいし。それに県だの全国だの凡人らしい物差しでは計れないぴょん。うーちゃんの素質は」

 


卯月「メジャー級だし」

 


神風「そういえば個人演習記録では前世代陽炎には及ばずとも彼女が解体してからは駆逐部門1位だったとか」

 

 

卯月「前世代の陽炎はアブー系列だからなー。1つ次元が上のスペース級だったぴょん。だがしかーし、うーちゃんは徒手空拳でも強いぞ」シュッシュッ

 

 

神風「へえ」

 

 

提督「はい、ストップです」

 

ガシッ

 

神風「あれ、私の腕に触ってるのこれ。いや、つかんでるわね。へえ、ほーう、青山司令補佐、勇気がありますね?」

 

ボキッ

 

提督「……とりあえず皆さんのところまで行きますよ」

 

 

神風「!?」

 

ズルズル

 

卯月「お、おお、腕が変な方に折れてるけど、神風の腕を離さず、引っ張っていく……珍しく司令官が根性方面で男を見せているぴょん」

 


提督「どうせ折られようが千切られようが治ります。神風さん、根比べは結構ですが、その決着がつく前に目的地に到着させますので、後にしてくださると助かります」

 

 

提督「卯月さん、金剛さんのほうお願いします。伸びてしまっていましたので……」

 

 

卯月「任せろー」

 

 

2 新食堂

 

 

阿武隈「提督の腕が変な方向に折れてる上、神風さんが明らかに人間の目玉を片手に持ちながら、人体の急所を殴打しまくってるんですけどぉ!?」

 

 

提督「お気になさらず。神風さん、そこの席にお座りください。まずは話より先に腹ごしらえとなりまして」

 

 

三日月「刀を持っていない状態とはいえ、神風さんをあしらえるだなんて……」

 

 

神風「ゾンビみたいな耐久力していやがるわね……」

 

 

提督「首を折りに来ません」

 

 

提督「じゃれつかれている気分ですねえ……」

 

 

神風「あん?」

 

ガシッ

 

武蔵「ったく、いい加減にしろって。とりあえずそこの席に座って飯食いながら仲間と親交を深めるといい」

 

 

提督「そうしてください……」

 

コツコツ

 

丙少将「お前、一時期の俺以上に恨まれてねえか……」

 

 

提督「そのようですね。理由は神風さん自身にもよく分からないというから怖いですよ……」

 

 

北方提督「まあ、行き場のない大きな感情が全てあなたに向いているだけだよ。あなたは神風にとっての始まりと終わりだからね」

 


乙中将「……」

 

 

乙中将「それで僕らどうするの? 一応、席はある程度、艦種に別れていて僕らもどこかのテーブルに混ざる手筈だったけど」

 

 

乙中将「あそこにだけは入りたくない……」

 

 

『暁型・白露型・神風型』


 

電・わるさめ「……」ジーッ

 


暁「電、その殺気を抑えてもらえないかしら……」

 

 

白露「春雨も……」

 

 

時雨「みんな、食事は楽しく、ね?」


バキッ

 

 

響「神風さん、物に当たるのはよくないよ」

 

 

神風「あ、ごめんなさい……青山司令補佐の顔が視界に入ってつい椅子を壊してしまったわ……」

 

 

時雨「視界に入っただけでそれかい……?」

 

 

電「神風さん、電の椅子をどうぞ使ってください! 電は新しい椅子を持ってくるのです!」


 

神風「あ、ありがとう」

 

 

暁・雷「……ほっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



電「おばあちゃんに席を譲るのは当然のことなのです!」

 

 

 

 

 


神風「( #^ω^)ビキビキ」

 

 

暁・雷「」



わるさめ「ま、ぷらずまのいうことにいちいち目くじら立ててると身がもたないよー」

 

 

わるさめ「それで神風、なんでそんなにオープンザドア君を嫌っているのー?」

 

 

神風「うーん、G君を見たら殺したくなるでしょう。その上、潔癖気味だから憎しみも沸くんです。青山司令補佐が私にとってそれなんですよね」

 

 

わるさめ「……まー、いいや」

 

 

わるさめ「それで神風、部屋割りのことだけど、お前の部屋を教えておくね? 司令官のこと好きそうだけど、同部屋はさすがに無理だかんねー」

 

 

神風「いえ、離れているほうがありがたいので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



わるさめ「排水周りも老朽化して夜中になると催すみたいだからお手洗いの近くにしといたゾ☆」

 

 

 

 

 

神風「( #^ω^)ビキビキ」

 

 

江風「きひひ! お前ら随分と仲良さげじゃンか!」

 

 

白露「江風は一体なにをいってるのかな……」

 

 

江風「ンだよ白露の姉貴、ケンカするほど仲が良いってやつだろー?」


 

わるさめ「私は神風に興味あるけどねー」

 

 

わるさめ「そんで江風、ご飯を食べながら立ち上がってしゃべるとか行儀悪いぞー。お姉ちゃんが教育してやらなきゃダメだねこりゃ」

 

 

江風「お前を春雨の姉貴だと思ったことは1度もねーよ!」

 

 

ギャーギャーワーワーポイッ

 

 

 

丙少将・乙中将・提督「あそこのテーブルだけは嫌だ」

 


乙中将「電ちゃんわるさめちゃんともに絶好調じゃないか……!」

 


丙少将「山風が、私は白露とアカデミーのどっち、とか聞いて、どっちでも、と答えたらすぐにアカデミーのほうのテーブル行った理由が分かるぜ……」


 

丙少将「神風のことはお前が原因なんだから責任取って行ってこいよ……あそこは誰か行かないとダメだろ……」

 

 

提督「責任は取りたいのですが、今の神風さんを下手に刺激すれば爆発、ぷらずまさんも連鎖爆発、下手すればこの部屋吹き飛びます……自分、出会ってから神風さんに殺されましたし……ほら右目に血の跡あるでしょう。えぐられたんです。なお行けというのなら腹をくくりますが……」

 

 

丙少将「く……」

 

 

丙少将「とにかく俺は空母勢のとこ行かせてもらうぞ」

 

 

乙中将「丙さんずっるいな! 瑞鳳さん大鳳さんに翔鶴さん天城さんに飛龍蒼龍とか常識人枠が多いオアシスじゃん!」

 

 

提督「いえ、オアシスではないですね。よく観察すべきかと」

 

 

『空母テーブル』



赤城「……」モグモグパクパク

 


蒼龍「赤城さん、山のように料理はありますし、もう少しゆっくり頂いたらどうです……」


 

赤城「あれ? ゆっくり食べていますが……」

 

 

天城「その身体のどこにその量が入るんですか……」

 

 

龍驤「お前らはええよな。好きなだけ食べても栄養が一部分にいってさあ! うちは、うちらはなあ、大鳳!」

 

 

大鳳「全くです。私はお腹回りに来ますし、痩せようとしたら胸が減ったりと散々なのに……羨ましい」

 

 

大鳳「ところでサラトガさんにグラーフさん、先程からいかがしました?」

 

 

サラトガ「……」キラキラ

 

 

グラーフ「神風の刀を北方の提督が持っているだろう。あの刀と神風に興味津々みたいでな」

 

 

サラトガ「刀、和服、神風、つまりサムライですね……!」

 

 

龍驤「お前、日本文化好きすぎやろ」

 

 

蒼龍「んー、でも私も神風さんには興味あるなあ。刀1つで戦う艦の兵士ってすごいことだと思いますし」

 

 

龍驤「そうやなー」

 

 

龍驤「サラトガが犬みたい。グラーフが手を離せば神風と北方提督に飛び付きそうや。その手を離すんやないでー」

 


グラーフ「私も食事を済ませたいのだが、まあ、提督の誰かが来たら代わってもらうとしよう」

 

 

加賀「翔鶴、あなたなぜか箸を持って口に運ぶ仕草」

 

 

加賀「色気があるわね。少しだけ襲いたくなるわ」

 

 

翔鶴「!?」

 

 

瑞鶴「おーおー、私の前で翔鶴姉を口説くとかいい度胸じゃないの」

 

 

加賀「そんなつもりはないわ。あなた翔鶴のことになるとケンカ越しになりすぎなのよ。そんな風に平静を欠くから艦載機飛ばせないポンコツ空母になってしまうのではないかしら」

 

 

瑞鶴「ああん!?」

 

 

翔鶴「落ち着きなさい……もう、世話の焼ける……」

 


飛龍「……」オエップ

 

 

瑞鳳「飛龍さん、何で初っぱなからテキーラ行ってるんですか!?」

 

 

飛龍「……いや、飲んだことなかったから試しにって思ったんだけど、予想以上に胃に……」

 

 

瑞鳳「お水です。そこに弱いお酒がありますから」サスサス

 


飛龍「づほちゃんありがとー……」

 


 

 

提督「あそこだけですよ。始まって5分で7つの大罪を6つは制覇してますよ……」


 

丙少将「いや、 暁白露神風型のところよりマシと見た!」

 

タタタ

 

 

乙中将「僕は重巡、航巡、アカデミーグループで!」

 

タタタ


提督「利根さん筑摩さん明石師弟に秋月さん、青葉さんプリンツさん、大淀さん速水さん、秋津洲さんに間宮さん。そこと潜水艦テーブルが最も落ち着いて食事ができそうですね……」

 

 

北方提督「仕方ない。私が神風のところに行こう。今の電達は珊瑚の件で私を恨んでいないんだろう。なら准将よりも私のほうが良さそうだ。なに、暁型も神風もあやし方は心得ているよ」

 

 

提督「元響さんですし、北方の提督さんですもんね」

 

 

北方提督「軽巡、球磨型のところは後で私が様子を見に行く。陽炎型、7駆、睦月もね。准将さんは戦艦勢力のところに行ってくれ。陸奥さんと山城さんが准将に手招きしているよ。その後に潜水艦テーブルだ」

 

 

提督「了解」

 

 

山城「ちょっとあんた早くこっち来て説明しなさいよ……!」

 

 

陸奥「さすがにその怪我見せられたらね……。神風ちゃんとのことで色々と聞きたいことがあります」

 

 

ガングート「准将、私の隣に座れ。個人的に聞きたいことがある。ああ、酒は注いでやる」

 

 

武蔵「そんなに強くねえからあんまり飲ませてやるなよ」

 

 

扶桑「無礼講ですし、潰れたら私が介抱して差しあげますよ。あの人が酔うところ見てみたいですしね。丙甲の演習後の宴会には乙の艦隊は参加できなかったですから」

 

 

大和「あ、海の傷痕と鬼ごっこしてたんですよね。私、そこのところのお話、興味あります」

 

 

扶桑「私は現場にいませんでしたし。山城、お話して差しあげて」

 

 

山城「思い出したくもないわ……」

 

 

大和「……」キラキラ

 

 

山城「仕方ないわね……肴にするには笑えない話だけど」

 

 

提督「ですね。自分はあそこに顔だします。北方提督さん、よろしくお願いしますね。ぷらずまさんやわるさめさんを止める際に自分を出汁にしてもらって構いませんので」

 

 

北方提督「任せてくれ。和気あいあいとさせてくるよ」

 


悪い島風【私は陽炎睦月型7駆テーブルに行きますね!】

 

 

悪い連装砲君【ジャ、潜水艦テーブルに】

 

 

提督「突然アライズしてこないでください。というか鎮守府内を拠点にしているんだから歩いてこればいいのに」

 

 

悪い島風【細かいことは気にしなーい♪】

 


【3ワ●:交流会、戦艦テーブル】



金剛「お話中、失礼しマース!」



金剛「比叡霧島榛名、運んでくれてさんきゅ、デース」



比叡「いえいえ!」



榛名「怪我がなくて良かったです!」



霧島「しかし神風さんでしたか。金剛お姉様を投げ飛ばすだなんてただ者ではありませんね……」



長門「面白そうな話だな。金剛が体術で負けたのか?」



金剛「イエース……。あ、提督、少し神風について確信したことがあるので聞いてくだサーイ!」



提督「お帰りなさい。なんです?」



金剛「んー、榛名のバーニングラヴワゴンの旅で神風が強盗をのしてた時の映像、私のスマホに入ってマス。あの時は榛名に夢中で気づきませんでしたケド、神風は妙な体術ですね。木曾と近い我流殺法だとは思いますケド」



金剛「ちょっと色々な要素がとにかく速すぎデース……」



金剛「戦果的にはなにもしていなかったみたいな風ですケド、神風の性格的にサボっていた訳でもないはずデース。ならば、なにか特殊な訓練をしていたのは間違いありまセーン!」



提督「艦兵士の軍学校の科目にあります?」



金剛「んー、私の時はそんなのなかったデース。陸奥は教官経歴持ちのはずデース。そこの辺り詳しいデスカー?」



陸奥「一応はね。軍隊格闘術は軍学校の選択科目にあるけれど、砲撃ならまだしも拳銃を持った人間相手の対処法なんて陸軍じゃあるまいし、短い期間のアカデミーでは学ばないわ。あくまで深海棲艦想定した訓練だから」



金剛「そして深海棲艦を沈めていないのなら、大して役立てている訳でもないデショ?」 



金剛「それが深海棲艦相手に非効率的な訓練と知ってなお打ち込んだというのならば」



金剛「まるで艦娘を傷つけるために訓練していたようで不気味じゃないデスカ……」



一同「……」



金剛「だから、あの神風ちょっと怖いネ……」



長門「ガングート、そこの辺りどうなんだ?」



ガングート「そう見えるのも無理はない。神風は艦の兵士相手ならめちゃくちゃ強いからな」



ガングート「私が着任したの准将がここに着任したよりも後のことだ。そんときゃすでに神風は今の形に近かったよ。聞いた話では特別、近接の格闘技をならったわけじゃないそうだ。自分の感覚的な体術に過ぎないはず」



霧島「うちの木曾と同じく感覚派?」



ガングート「艦の兵士としては木曾のほうが上だろう。神風は刀でしか戦えないからな。こいつは本当に変わり種で強いんだが、軍の評価的には弱いんだ。見てみるのが一番だ」



金剛「……やっぱり適性率故の特殊訓練デスカー?」



ガングート「そうだな。姫鬼の体の構造は人間と同じで強度は艦娘と変わらん。懐に入るしかない神風だから覚える必要があったまでのこと。あいつはあいつなりに最短距離を走ってた」



長門「北方から走って3日以内に来てるんだろう。骨のありそうな駆逐艦じゃないか。ああいうタイプなかなかいないぞ」



ガングート「警告しておくが、勧めはしないぞ。刀を鞘から抜いて海の上にいる神風はありゃ一種の災害だ。私も負けたしな。あれが仲間っつーんだから尚更性質が悪ィ」



長門「警告するならもうちょっと興味をなくす言い方にしてくれ。その言い方だとむしろ興味しか湧かんではないか」



武蔵「つか、准将は神風に嫌われ過ぎだろ。確かにお前ひでー仕打ちしていたが、作戦関連は割りきれてるっていってたしそんな風に永続的に憎悪されるほど酷いとは思わなかったぞ。お前、私が伝えた以外になんかやらかしたのか?」



山城「そう、そこよそこ。戦争終わってからも血なんか見たくないんだからきちっと仲直りしてきてよね。ここの睦月型暁型秋月型陽炎型の話聞いた限り、あんた駆逐の世話は意外と出来るじゃないの」



扶桑「寝惚けた駆逐にパパ、と呼ばれたのでしたっけ?」



提督「あー……まあ、似たような真似もしましたから。多感な年頃の子達も多いので街に出すとトラブってくる子も多く。泥まみれなのは構いませんが、ケンカは控えてもらいたいな……」



大和「ふふっ、パパさんですか。歳的にはお兄さんですよね」



提督「ええ。皆さんの鎮守府は戦争終わってから平和ですか。特に甲大将のところはやんちゃ系統の子が多くて頭痛いでしょう」



比叡「む、そんなことないですよ。それは江風さんだけのイメージが大きすぎますねえ。7駆は漣さんが元気過ぎるだけですが、街に行ってもトラブルは起こしたことありません」



霧島「でもやはり江風ですかね。あの子は門限破りますし、それを咎める面子も限られていますので。ま、平和といえる日々でしたよ。なんか旅路に近くまで来たから泊めてくれ、と比叡山近くまで来たのは驚きましたが」



提督「まーた一人旅してたんですか……」



榛名「球磨型はのんびり猫の多磨以外は姉御肌ですよね!」



扶桑「うちは手のかかる子がいないですね。白露が皆の面倒しっかり見られるお姉さんしていますから」



伊勢「私のところは今駆逐少ないからなあ。平和だよ平和。戦争はすぐに終わっちゃったけど、もう少し続いていたら丙さんの申請が受諾されてたから、増えていましたけど」



提督「ん、誰です?」



伊勢「照月ちゃん。念願の防空駆逐ですよ」



日向「うん? 私はそんな話知らないぞ。照月は無理だったんじゃなかったのか?」



伊勢「一度はダメだったみたいだけど、1か月後に状況が変わったとかなんとかの連絡が来たんだよね。照月ちゃんも受諾してくれたみたい。所属するならうちか闇がって希望があったんだとさ。それで申請していたうちに話が来たんだよ」



提督「あー、うちには秋月さんいますもんね。ですがうちの戦力的に彼女の受け入れは無理、ですね」



日向「闇は色々と潤沢だからなー。秋月型の防空駆逐なんて鎮守府に一人いるだけでも恵まれてるといえるだろ」



提督「ですね。1つに特化している艦は作戦に組み込みやすいですし、防空の点となると提督からしたら垂涎モノですからね」



ガングート「照月は欧州の支援に回されて外国住まいだろ。リシュリーのやつと入れ替わりじゃないか。あいつがこっちの支援に来てたが、もう少しで欧州で防空駆逐と入れ替わりで戻るっていう話を聞いていたぞ」



陸奥「あ、思い出した。海の傷痕が大本営に殴り込みに来てからうやむやになっちゃってた感があるけど。照月ちゃんって秋月ちゃんの妹よね。明石君がどんな反応するのか面白そうよね」



榛名「立派な兄をやると思います。明石君は歳下には鼻の下を伸ばさないです。いかにも女性らしいというかそんな雰囲気の歳上相手にはすぐにデレデレになるんですが……」



金剛「照月のエロさは油断できないデース!」



山城「そういえばあいつ扶桑お姉様にも変な目を向けていたわ。准将、あの色ガキを扶桑お姉様の視界に入らないようにしてよね」



提督「それは現在進行形で難しい……」



日向「話を戻すぞ。武蔵は知っている風だが、神風となにがあったんだ。面倒事はもう勘弁だ。私達も気を回しておくぞ?」



提督「……」



山城「しゃらくさいわね。たまには歳上にも頼ればどうなの。戦艦勢はほとんどあんたより長く生きてんのよ」



提督「神風型は1/5撤退作戦で指揮を取った子達です。そこが理由ではないみたいですが、どうもあの子には先代の鎮守府で勉強していた頃から気に入られていたようです」



提督「神風さんは自分を気に入ってくれたようで、軍法会議の後に会いに来てくれたんです」



提督「もしも自分が提督になったら、その鎮守府の第1旗艦を神風さんに、とそんな約束を」



提督「戦争終わってから思い出しましたが」



一同「……あっ(察し」



提督「ところでガングートさん」



ガングート「なんだ?」



提督「島風さん天津風さん神風さんと三日月さんとあなたと提督さん以外の他の北方の人、見当たりませんが……」



提督「あ、鹿島さんから香取さんと一緒に遅れて来ると連絡ありました」



ガングート「香取か。所属だけうちに置いていたみたいだが、各地に飛び回ってたから私はまだ会ったことないんだよな……」



ガングート「隼鷹とポーラはどっか寄ってるんじゃないのかね。リシュリューとビスマルクは母国に戻っていて到着が遅れるらしい。望月は気が向いたら来るとのことだ」



伊勢「なんか全体的にフリーダムだよね……」



ガングート「提督のせいだろうよ」



【4ワ●:暁型白露型神風型テーブル】



北方提督「Добрый вечер(こんばんは)」



響「Добрый вечер」



電「はわわ、相変わらずあなた響お姉ちゃんが成長した姿の予想図まんまなのです」



北方提督「うーん、電、私が響だった頃はこの子より落ち着きがなかったかな。でも最終世代の暁型はみんな落ち着いているというか、凛々しいね」



暁「うーん、なんか今の響より尖っている感じね」



北方提督「ああ、君が一番落ち着きがあるね。なにがあったか知らないけれど暁にしては珍しくお姉さんという雰囲気が普段からまとえているじゃないか」



暁「実際、私はお姉さんだし!」



北方提督「それと雷、ごめんね。一時期君からの異動希望がうちに来たけれど、ちょっとうちは変わり種が多すぎるし、君とは馬が合わなさそうなタイプも多いから見送りにさせてもらった」



雷「北方には私を頼りにしてくれそうな人が多かっただけに残念だったけれど、提督さんの判断なら仕方ないわね。あなたもほら、珊瑚の件で傷ついていると思ったから」



北方提督「ああ、そこに関してはもう大丈夫さ」



雷「そう。なら安心。やっぱりあの件は尾を引くものだったから……」



暁「それより北方の提督さんでしょっ。神風さんのじゃじゃ馬っぷりなんとかしてくれないかしら。神風さんのイメージとはかけ離れ過ぎよ」



響「今はいいんじゃないかな。仲が良さそうだ」



江風「ちっくしょ勝てねえ! 時雨の姉貴、もっと力入れてくれよ!」



時雨「全力だよ……」



夕立「勝つまでやるっぽい!」


ガル


神風「噛みつくな夕立、死なすぞ」



夕立「ひ」



時雨「夕立を一言でびびらせるなんて……」



神風「非力過ぎますね。白露型の皆さんは訓練にもっと励むべきかと」



わるさめ「五人で一人に腕相撲勝てないとか神風、お前どんだけマッチョだよ! 胸はややある程度かと思ったけどそのかすかな膨らみは全て大胸筋か!?」



神風「は? ちゃんと女性らしくありますけど? 引き締まった理想的な体型を維持してる文武両道系大和撫子候補生ですけど?どこぞの年配の航空駆逐艦よりもありますが?」




コツコツ











龍驤「藪から棒になんやの。買ったるからさっさと表出ろや」



わるさめ「そういえば龍驤、解体してから念願の成長はあったのん?」



北方提督「こら、酷なことを聞くんじゃない」



龍驤「ないよ。白露はもともと全体的にあれやけど、暁型と神風、駆逐のお前らどうなん?」



暁「私と響と雷は身長伸びた」



電・神風「まだなにも」



龍驤「そか」



龍驤「ようこそフラットの世界へー♪」



龍驤「₍₍ ◝('ω'◝) ⁾⁾ ₍₍ (◟'ω')◟ ⁾⁾」



電・神風「」



白露・時雨(ここで死ぬ気かな……?)



神風「一緒にしないでもらえる? もともとなくはないです」



電「私はまだまだ成長過程なのです。理想像への希望は龍驤さんと違って潰えていないのです」



響「そういえば一昨日に間宮さんが赤飯炊いていてくれていた。祝い事だ」



北方提督「へえ……なるほど。それはめでたいな」



神風・北方提督「……」



神風・北方提督「龍驤さん?」



龍驤「北方勢お前らほんまええ加減にせーよ」



【5ワ●:阿武隈VS神風さん】



提督「暁さん、攻略法は頭に入っていますね?」



暁「2周したわよあのゲーム!」



提督「よい意気込みです。壁を開くギミックがあることが予想されるため、2手に別れます。自分は弥生さんと暁さんは由良さんと行動です」



由良「はいがんばります……」



提督「さて、行きますか。最短ルートで向かいます」



悪い島風【あー、もうあなた達こんな私のアップデート時間作るための前座ゲーに時間かけてやりすぎですって。PIERROTとゲストキャラから逃げさえすれば攻略本に沿ってゴール出来たのにー】



悪い島風【日付変わると同時にこのWeeklyクエストは消えますから最後のチャンスですよ。がんばってくださーい】



悪い島風【さて】



悪い島風【シアターにお集まりいただいた皆さんのために、特別にテートクさん達の奮闘に私と悪い連装砲君が密着しながらの映像をお届けしたいと思います!】



わるさめ「実況はお馴染みこの私」



丙少将・乙中将「邪魔」



わるさめ「ふええ……」



神風「……」



電「おや、司令官さんのこと嫌いかと思いきや見に来たのですね」



神風「泣き叫ぶ顔が見られたら一興と思いまして」ニコ



電「無理なのです。ここの友軍艦隊は私なので」



神風「その格好はなんですか……」



グラーフ・響「総統、武運長久をお祈りしています」



電「ま、擬似ロスト空間内ならば任せておくのです」



阿武隈「電さん、あんまり無茶苦茶やらないでくださいよぅ。特に弥生ちゃんは驚かせるようなことはあまり……」



電「存じておりますとも」



神風「阿武隈さん、でしたか。ここの第1艦隊旗艦の」



神風「会いたかったです」



阿武隈「え、そ、そうですか。どうも……」



電「……」



阿武隈「神風さん、ですよね」



神風「私と命を賭けて果たし合いしてください」



阿武隈「」



悪い島風【ったく、すでにお前ら擬似ロスト空間内に艦これの世界は形成してある。そこの演習なら死なないように設定してあるからここじゃなくて艤装つけて演習場でやってくださいよ】



悪い島風【合意と見ても?】



阿武隈「よろしくないんですけどお!」



神風「まあまあ、私もこのような不躾なお願いをただでとはいいません」



阿武隈「ただでなくとも嫌なんですけど!」



神風「准将に今後は二度と手を出しません」



阿武隈「うん……?」



神風「偽島風のいうことが本当なら死にはしません。個人演習ならば指揮官は必要もなく、私とあなたの単艦で単純な武を競えます」



神風「私はただあなたと戦ってみたいだけです」



阿武隈「なんでそうまでして。とても仲間を見るような目ではありませんよう……」



神風「私は3年近く日々鍛練していましたが、知っての通り私は海の傷痕との作戦から外されました。口惜しい。私がもしも海の傷痕:当局と戦っていたら」



神風「勝っていた、と奢る始末」



神風「あの作戦で深海棲艦総大将の海の傷痕を倒した鎮守府(闇)の第1艦隊旗艦はどの程度なのか」



神風「最強の鎮守府の第1艦隊旗艦のあなたと刃を交えることで」



神風「この神風」



神風「艦の兵士として歩んだ旅路に報いが欲しいのです」



電「止めておいたほうがいいのです」



神風「何故です」



電「戦争は終結しました。阿武隈さんは鈍っていますし、仲間相手にもう本気で危害を加え合うほど錬磨する必要などありません」



電「あなたが本気であればあるほど、その過去の産物である艦の兵士として鍛えたその力を振るうのは、戦争を掘り起こす行為に等しくなってゆく」



電「この鎮守府(闇)への侮辱行為かつ名誉毀損なのです」



阿武隈「いえ、それなら阿武隈、受けて立ちます!」



電「……」



阿武隈「だってさすがに提督があんな風に人体の一部を千切られるとか、空気はコメディ染みていてもやっぱり嫌じゃないですか」



阿武隈「提督のお力になりたい。この一点において戦争が終結してなおあたしのやりたいことですから。それがたまたま艤装で個人演習という形になってしまいましたが、提督からあたしのやりたいことをやってくださいって前にいわれたことありますしね」



阿武隈「阿武隈! 提督の期待に応えます!」



悪い島風【合意と見て】



阿武隈「よろしいですよっ!」



悪い島風【えー、ご連絡です! ただいまピエロットマンの世界の放送の他に並行したイベントが行われまーす!】



悪い島風【阿武隈VS神風】



悪い島風【の個人演習でっす!】



悪い島風【見物したい方は私が擬似ロスト空間の演習場まで連れて行きますね! バトルツアーご所望の方はこちらにお集まりくださーい! 擬似ロスト空間と繋げた皆さんは狂喜乱舞してぜひとも想力を生産して我が会社へとお流しくださーい!】



陸奥「私こっちー」



木曾「俺と江風もこっちだなー。長門がこねえのが意外なんだが」



江風「それなー。武蔵さんは准将と仲いーから分かっけど」



陸奥「弥生ちゃんと暁ちゃんが心配で動けないみたい」



江風「ああ、あの人そこが傷だよな……」



卯月「睦月型も望月以外はこっちだぴょん!」



菊月「戦いを見る方が面白い」



長月「ああ、ホラーが嫌だとかいう訳では決してないがな」



三日月「わ、私はホラー苦手なので」



卯月「正直なのはいいことぴょん。弥生は司令官と由良がついているから問題ないし。つーか、あいつらの困る顔見るのは楽しいけど、驚く顔見ても別に楽しくねーぴょん」



三日月「卯月はもう少し謙虚に生きてください」



龍驤「うちもこっちー」



乙中将「あ、僕と神通もこっちでお願い!」



神通「ええ、興味あります」



神風「神通さん、あなたにはぜひ見て欲しいです。同じ低い適性率の苦悩の壁を突き破った同志として、勝利をお約束します」



神通「はい。本当に苦難ですよね。応援、してます」



阿武隈「神風さん、約束を忘れないでくださいね!」



神風「誓います」



神風「ところで練巡のお二人が見えませんが。香取さんにもお見せしたいのに」



悪い島風【鹿島と積もる話を外でしていましたよー】



悪い島風【とにかく行きまっしょい!】



【6ワ●:間宮さんの恋話と、画面越しの提督と】



丙少将「よう、間宮さん」



間宮「あ、丙少将……どうしました?」



丙少将「大した話でもないんだが、今いい?」



間宮「はい。構いませんよ?」



丙少将「准将達、がんばってるよな。悲鳴がうるせえけどさ」



間宮「そうですね。ここにいる皆さんも一生懸命に見守ってくれています」



丙少将「暁、見違えたよ。ぴぎゃー、とかいって泣きながら逃げ回ると思ってたのに由良の手を引っ張ってどんどん奥に進む。最後の海はさ、あんな風に深海棲艦と戦ってたんだろうなって」



間宮「暁ちゃん、丙少将のところから異動してきてから成長しましたよ。うちと演習やった時からその成長は見られたはずです。それに最近も飼っていた子犬が死んでしまって」



間宮「それでも、凹みながらもお庭にお墓を作ってあげて、あのピエロットマンのゲームをクリアするために部屋に籠って一人でやっていました。あの子はレディーとかよくいいますが」



間宮「きっと将来は素敵な女性になりますね」



丙少将「そうだなあ。暁は性格も可愛いし、街に出たら周りの男が放っておかねえだろ。俺が小学生の頃に好きになった子そっくりだぜ」



丙少将「間宮さんはあいつ好きなんだっけ」



間宮「意外です……丙少将がそんな話を振ってくるだなんて」



丙少将「意外なのかよ。俺はオンオフきちっとしているだけで基本的に異性関連はだらしねえほうなんだ。俺が軍に興味持ったの女の子被弾して脱げるからだぞ?」



間宮「意外と最低なんですが……」



丙少将「自覚してるから。で、准将は変わったか?」



間宮「それはもう。提督さんが良き方向に変わったのは丙少将は私よりお分かりなのではないですか?」



丙少将「そりゃマシになっただろ。俺よか艦の兵士のこと考えてフォローしているのは知ってる。睦月型とか陽炎不知火の話も暁のことも榛名一同の信じられねえ旅も聞いたわ」



丙少将「でも、人間的にマシになったかどうかではなく」



間宮「ええ、いいたいことは分かります」



丙少将「む」



間宮「あの人はただ症状が柔らかくなった。前に進む意思を手に入れた。それでもなお、あの人自身が抱えている根本的な問題はなに1つ解決してはいないまま放置されているってこと」



丙少将「へえ……説明聞かせてくれるか?」



間宮「あの人があんな風に機械みたいな性格になってしまったのは過去のお母様が始まりの原因だと聞きましたから。女性恐怖症、それに恋愛の拒絶、無理もないことだと思います」



間宮「それは恐らく直ってなんかいません。女性関連に関しては相変わらずのままですから。電ちゃんだけは例外みたいですけどね」



丙少将「だなあ。俺も聞いたけどよ……正直、情けねえ男だなってイメージしか持てねえわ」



間宮「繊細、なんですよね。きっと皆が思う以上に」



瑞鶴「え、なになに恋バナ? 混ぜてー」



丙少将「お前、ほんとノリが軽い瑞鶴だよな。さすが大学で遊んでそのままの気分で軍に来たやつだわ」



瑞鶴「砕けていて絡みやすいといって欲しいわね。残念ながら丙少将、間宮さんは口説き落とせないわよ。うちでは唯一のガチラブ勢だからね」



間宮「電ちゃんとか初霜ちゃんとか金剛さんとか秋月ちゃんとか」



瑞鶴「戦争終わってからそういう話題もよく出るけどそいつらみんな男に向けての恋愛感情じゃないし。提督さんのこと今ではみんな好意的だけど、恋愛感情持ってるのは間宮さんだけだって結論出たしねー」



瑞鶴「だから誰も提督を口説いてないし、みんな陰ながら見守ってるんだけどなあ。いや、まあ、コミュの取り方においては金剛さんとかはあれが普通なわけだけど、あくまで提督としての好きがあんな感じになってるただの愛の自由人だから」



丙少将「すげー素朴な疑問なんだが」



丙少将「あいつのどこがいいんだ……?」



間宮「1度だけです。あまり喋りたいことではありません」



丙少将「了解」



間宮「きっかけは感謝、そして気づかせてくれたことです」



間宮「私はずっとこの鎮守府にいただけだと思ってました。間宮亭には笑顔はあって皆の綺麗な思い出があって」



間宮「阿武隈さん達のキスカの事件、鹿島艦隊の悲劇、鎮守府の壊滅、電さんのタイプトランスとしての苦悩、次々とみんなが死んだり壊れたりしていく。皆に私の言葉は届かなかった。私の料理は喉を通ってもくれない。なにも出来ない地獄のような日々でした」



間宮「それでも間宮亭には確かに笑顔はあった。あそこには皆の綺麗な思い出が残ってて、またいつか皆で笑いあえる場所になり得るんだって思ってました。だから鎮守府(仮)を丙少将や甲大将にお願いして再建を頼んだんです」



間宮「あそこだけはってすがるような想いです。電ちゃんが戻ってきた時、二人だけの鎮守府(仮)が始まった時、この子だけは私が守るんだって決意を秘めてリスタートしました」



間宮「電ちゃんは次第に砕けていった。笑うようにもなった。それは全て、あの人が着任してからです」



間宮「私ではなく、あの人が着任してからです。これは間違いありません」



間宮「私はずっとこの鎮守府にいただけだったんだと思いました。だって事実として阿武隈ちゃんも卯月ちゃんも鹿島ちゃんも戻ってきて、あの人の指揮で過去の痛みを、自身の欠陥を克服して、この海の戦争の終わりを叩きつけた」



間宮「加えて、電ちゃんを」



間宮「解体不可能のタイプトランスを解体可能だと証明し、電ちゃんや春雨ちゃんを闇の中から救い上げました。だから、私はただここにいただけの何も変わっていないんだなって」



間宮「そんな私にあの人は教えてくれました」



間宮「電ちゃんがわざわざまたここに戻ってきたのは私のお料理が美味しいからだって」



間宮「貴女がいたから今の自分達がいるんです、と」



間宮「その瞬間、私の抱えていた闇も晴れました。あの人は私も助けてくれました。感謝です。そこまではまだ恋、ではなかったのかもしれません。でも」



間宮「まだあの時しか見たことありませんけど、あの人は子供のように泣いている私に手を差し出しながら」



間宮「『こちらこそ助けていただいていたこと感謝しております』と。『貴女に出会えて本当に良かった』といいながら」



間宮「無防備に笑っていたんです」



丙少将・瑞鶴「……」



間宮「言葉と感謝とその笑顔に、私は自分の胸からあふれでた感情に気付きました」



間宮「あの人は、あの頃の私に出会えて良かった、といってくれました。ただそこにいただけだと、自分の存在価値も理解していなかったポンコツの私を、です」



間宮「言葉に出すのは恥ずかしいけれど」



間宮「私はあの人と一緒にいたいです」



間宮「もう1度、あの人があの日のように笑えるようになった時に出る答えを受け入れるつもりです。それまでは諦めたくありません」



間宮「いつまで経ってもあの人の顔を見るのは飽きません。きっと」



間宮「こんなに男の人を好きになること二度とないです」



丙少将・瑞鶴「……」



間宮「……」



瑞鶴「この鎮守府は色々ありすぎたからね。こんなに他人の恋を応援したくなること2度とないと思うわ……」



間宮「翔鶴さんもいつかはその時が来ると思いますが……」



瑞鶴「1つだけいえるのは明石君にだけはやらないわ。あいつはあっちこっちの女を好きになりすぎだからね」



丙少将「予想以上の収穫だぜ。ちょうど悩んでたんだよな」



間宮「……はい?」



丙少将「悪いんだが、その話を神風にもしてやってくれねえか」



間宮「な、なんでですか? もしかしてそれで提督さんとの仲が良くなるのですか?」



丙少将「いや、ありゃ放置できねえだろ? 空母勢と話してたんだよ。それで人生の先輩のお姉さん方と結論を出した」



丙少将「多分、間宮さんより先に神風がガチ惚れしてるってな」



瑞鶴・間宮「!?」



瑞鶴「いや、でも負けの目はないわね。天地がひっくり返ってもあいつが駆逐に手を出すのはないわ」



丙少将「それは間違いねえ。だが、語弊があったな」



丙少将「間宮さん→男として好き」



丙少将「電→唯一神として好き」



丙少将「神風→司令官として好き」



丙少将「これが結論だ」



瑞鶴「なぜおちびを入れたのか……でもおちびは間違いない。大本営から帰ってきた後からはもう提督さんのこといつだって神のごとく褒め称えてるし。実際に唯一神っていってたしね」



漣「あのー、ちょっと気になったので聞き耳立ててたんですけど」



丙少将「いつの間にいたんだお前」



漣「どこもかしこもイチャイチャしやがって!」



瑞鶴「突然キレてどうした……」



漣「私らのところの大将は女だからその手の話はないんすよ!うちの大将についていれば漣は間違いなく惚れてたんですけどね!」



瑞鶴「甲大将が男なら私でも即落ち2コマだわ……むしろなんであの人女なのよ。いい加減にしろよ」



丙少将「俺は今でも男として見ることあるわ」



漣「大将に脚色して報告してやるからな!」



丙少将「勘弁してください」



漣「ねえ、漣達だって鎮守府で恋話とかしたかったですよね! ねえ、北上大先生に大井の姉御!」



大井「聞いてないことにしたかったのに巻き込むな」ギロ



漣「怖っ! オソロー!」



北上「しかしだな、私らの提督があんなんだから、うちの鎮守府が世間から極道艦隊とかっていわれるのも事実なんだよねー……」



丙少将「実際お前ら手を出してきた深海棲艦を海の果てまで追いかけてケジメ取らせる極道艦隊じゃねえか」



北上「丙ちゃんそこは仁義に厚い仲間想いな鎮守府といってくださいよ。周りがそんなこというから私らに男とか寄って来ないんだからね」



大井「……私はむしろありがたいのですけど、北上さんは寄ってきて欲しいんですか?」



北上「明石君とか絡むと面白いじゃん」



大井「なんてこと……北上さんの感性が全く理解できない……」



明石君「……」

 

 

丙少将「どうしたお前」

 

 

明石君「いんや、間宮さんってポンコツと自覚してんのになんでポンコツのままなんだろうなって」

 

 

間宮「」

 

 

瑞鶴「そーいえばあんた提督さんと仲良いよね」

 

 

明石君「瑞鶴さんもだろ。割と兄さん、あんたの話するしな。まあ、俺とはやっぱり男同士だからな。お互い同性だからこその話ってのもあるしなー」

 

 

間宮「そういえば明石君て乙中将と海の傷痕の鬼ごっこ事件の時に提督さんとフーゾク行ってましたっけ……」

 

 

丙少将・北上・漣「マジかよ……」

 

 

大井「不潔……海の傷痕と戦いが控えた時期にとか、頭の構造が信じられない……」

 

 

明石君「何件かはしごしちゃうほど兄さんは普通に楽しんでたよ。あれが女性恐怖症とか片腹痛くなるぜ」

 

 

明石君「鎮守府だって別にあんたら前にしてきょどったりしてねえし、距離を考えるのは戦争中における提督と艦の兵士の関係を考えてのことに過ぎねえ。そして兄さんは女に対して友達や彼女までなら欲しい、ともあの時にいってたぞ」

 

 

明石君「要は結婚したくねえんだよ。家族は欲しいらしいけどさ、今の俺ら下手な家族より余程縁は切れねえから満足してると思うよ」

 

 

明石君「間宮さんガチで結婚したいレベルだろ。結婚前提のお付き合い満々だろ。今の理由聞いてた限り重いよな。悪いとはいわないけど」

 


明石君「振られたんだろ。ならそれが答えだ……なにが女性恐怖症だからー、とか、トラウマがー、とかだって」

 


明石君「間宮さん」


肩ポンッ

 

明石君「現実、受け入れようや」

 

 

間宮「▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂うわあああああああ!」

 

 

瑞鶴「お前、容赦ないわね……」

 

 

明石君「優しさだよ。見込みがねえ部品は解体して再利用してやるのさ」

 

 

明石君「間宮さんには悪いけど、兄さんと合うのは鎮守府内じゃどう考えても明石の姉さんだろうよ。あの二人めちゃくちゃ相性いいだろ。弟子の俺がいう。3度の飯や家庭よりも機械弄りの明石の姉さんとやっていけるのは、あの生き方を尊敬して尊重できる兄さんくらいだと思うし、逆もそうだ」

 

 

間宮「うう、そうですよね。あの二人、話してるところ間宮亭で見ている限りすごい雰囲気いいですもん。明石さんとかも珍しく素の顔で笑えていますもんね……」

 

 

瑞鶴「お互いにくっつく気は100%ないけどね……」

 

 

漣「この話、出口が見えねーっすよ」



【7ワ●:ピエロットマンの世界 said 弥生&提督】

 

 


弥生「抱えてもらって、すみ、ません。肺が痛くて……」

 

 

提督「いえいえ、身体のことは仕方ありません。弥生さんくらい軽ければ自分でも抱えて走ることくらいは」

 

 

弥生「まだ追いかけてきて、いますか?」

 

 

提督「いいえ。蝋人形の館の内部に入った途端、ピエロットマンは消えましたね。暁さん達が殺人鬼の蝋人形をホテルのほうで入手してくれるそうですから、それを館に飾る。その後に遊園地に戻って暁さん達と合流して出口から抜け出る」

 

 

提督「で、終わりだといいのですが……どうもうちが一番の難易度誇るらしいですし、何かありますね」

 

 

悪い島風【教えませんよー。あ、いけね。しゃべるつもりなかったのについつい。あなたは1あげたつもりが10もぎ取られそうですし、お口チャックしてますねー】

 

 

弥生「……なにがありそうか、見当はつきましたか?」

 

 

提督「この面子、自分以外は明らかにホラーが苦手なメンバーが選抜されています。暁さんが予想外にがんばってくれているのは嬉しい誤算、この要素だけでも大分、クリアしやすくなったとは思うのですが」

 

 

提督「本当に難しくしつつクリア可能な範囲の難易度に収めるとしたら、この面子の中で唯一ホラー耐性のあった……」

 

 

提督「自分を潰すギミックを用意してくると思うのですが、そこはまだよく分かりませんね。世界観に沿うのならばホラー系統の理不尽なトラップの類だと思いますが」

 

 

提督「わるさめさんいわく、このゲームは悪い島風さんが作ったらしいのでよく分からないみたいですし……」

 

 

弥生「蝋人形ばかりで、不気味、です」


 

提督「絶対に振り返らないでくださいね。この鍵のある扉の前までの廊下、振り返るとすぐ後方に蝋人形の群れが道を塞ぎ始めて、前に視点を戻すとピエロットマンが表れ、挟み撃ちの強制デッドエンドになりますから」

 

 

提督「館から出る帰りも、です」

 

 

提督「帰りは走ります。扉を出て少し歩けば後ろにピエロットマンが現れますから。走って外に出なければ気付かずこれまたデッドエンドですので」

 

 

電「友軍艦隊到着なのです。司令官さん、この人形達は私が始末しておくのです」

 

 

弥生「電さ、」

 

ガシッ

 

提督「おっと弥生さん、トラップの可能性が高いです。電さんの声ですが、彼女の声の抑揚に違和感がありました。なので振り返ってはダメです。目を詰むって耳を塞いでくれていても構いませんよ」

 

 

弥生「了解、です」

 

コツコツ

 

提督「身体で扉を押して開きますね」

 

キィ

 

提督「っとこの部屋のサイドボードの引き出しに遊園地出口の鍵があるはず……これか」

 

 

弥生「鍵、取ったら上の写真の女の人が笑いました……」

 

 

提督「ですね。もう館から出て暁さん達を待つだけです。こんな気味の悪い場所からはさっさと抜けて外の空気でも吸いましょう」

 

 

悪い島風【……】ニヤニヤ

 

 

提督「……では出ます」

 

キィ

 

提督「では、一気に外まで走ります」

 

 



 

 

 

 

 


――――元気だった?

 

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「――――!」

 

 

【8ワ●:ピエロットマンの世界 said 暁&由良】

 

 

暁「由良さん、大丈夫?」

 

 

由良「蝋人形、重いよ……ど、ドラム缶担いでいたけど、やっぱり解体されると、あの頃がいかに強化されていたか思い知っちゃうな……」

 

 

由良「提督さんは弥生ちゃんにつけるべきだし、体力のない提督にやらせるよりは、と思って提案したんだけど厳しいね……」

 

 

暁「ゲームだとアイテムとして収納されるんだけど、デッドエンド時の大破並の痛みといい、こういう苦痛なところばっかりリアルにしてあるし……」

 

 

暁「でも後少しで蝋人形の館なんだから、もう一踏ん張り」

 


由良「ありがとうね、暁ちゃん」



由良「ホテルから蝋人形までの最短距離までしっかり覚えてナビしてくれて、頼もしいよ……」

 


暁「そのくらいいいわよっ。飼い主の私が泣いていたら苺みるくさん起こしちゃう。私のピンチに駆けつけちゃうスーパーヒーローだからね!」

 

タタタ

 

由良「あれ、あそこに倒れているの弥生ちゃんじゃないかな……」

 

 

暁「な、なにがあったのよ。司令官が見当たらないけど……」

 

 

タタタ

 

 

由良「弥生ちゃん、大丈夫?」

 

 

弥生「……あ、由良さん、私は大丈夫だけど」

 

 

弥生「司令官が……デッドエンドになっちゃった」

 

 

由良「あの提督さんがトラップにひっかかった……?」

 


弥生「よく、分からない。お化け、にしては怖くなかった。普通の女の人だったし……」

 

 

弥生「司令官が動かなくなって、すごく汗をかいて、振り絞るような声で」

 

 

弥生「一人で逃げてくださいって、鍵、渡されて」

 

 

由良「確かこの蝋人形を館の部屋におけばピエロットマンが出なくなって、弥生ちゃんの手にある鍵で遊園地の出口から脱出だよね。ここから先は提督さんの仕事のはずが……」

 

 

暁「私達でやるしかないじゃない」

 

 

電「おっと、助っ人到着なのです」

 

 

暁「い、電! そうだった。友軍艦隊がいたんだった」

 

 

電「おやおや、司令官さんは犠牲になりましたか。ちょっと私の予想を越えるナニカがあったみたいですね」

 

 

電「屈辱。何気に初めてのことなのです」

 

 

電「私達が全員生還できなかったのは」

 

 

由良「それじゃ一番力のある私が行くしかないね。道は覚えてるし、これを運ぶよ。多分、私はアウトになるけど、ここは犠牲を払ってもやらなきゃ。このまま人形置かずに出口に行けば、ピエロットマンに確殺されちゃうからね……」

 


電「……暁お姉ちゃん、ここからゴールまではどのくらい?」

 

 

暁「一キロくらい、だと思うけど」

 

 

電「ま、10分程度です。それでその蝋人形を置いてください。私は弥生さんをゴールまで輸送護衛するので」

 

 

暁「ど、どうして? ゴールは皆で行けば……」

 

 

由良「……なんか嫌な気配するね」

 

 

――――元気、なの?

 

 

暁「……、……」

 

 

暁「この声、聞き覚え、ある」

 

 

電「珊瑚の囮作戦のやつです。雷お姉ちゃんが喰らわせて出来た腹部の傷もありますし」

 

 

電「私の初めてのお姉ちゃんズを殺した空母棲姫なのです……あいつはきっちり見つけ出してブチ殺した後、持ち帰ってぐちゃぐちゃにしてやりましたよ」

 

 

電「その後フレデリカのやつがこの身に混ぜて7種にしやがりましたが……」

 

 

電「……忌々しいのです。どうせ動かなければならないので弥生さんを護衛しながらゴールに向かうのです」

 

 

由良「だね。館の強度はどうせ壊れるようになってるだろうし……ここで暴れられるのも困るし、それがいいね」

 

 

電「さ、弥生さんはきっちり私の後ろについていてくださいね」

 

 

電「トランス」

 

 

 

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

2

 

 

弥生「それ、大丈夫、なんですか……?」

 

 

ぷらずま「大丈夫なのです。疑似ロスト空間限定なうえ、違法建造化ではないので一体化しておらず、これはただ単に深海棲艦艤装を扱えるだけに過ぎませんので」

 


ぷらずま「……それにしても」

 

 

ぷらずま(……あいつ倒せない仕様ですか。艦載機も無限ですし、追ってくる)

 

 

ぷらずま「っち、鈍ってますね。たかが空母棲姫一体程度と制空権争うような私の性能ではないはずなのに……」

 

 

ぷらずま「ま、恐らくメモリー渡す前提ですね。さすがは当局の娘だけあってクソ運営のクソ調整ですよ。あの程度から弥生さんを守りながらでも余裕なのです。ご安心を」

 

 

ぷらずま「弥生さん、走れますか?」

 

 

弥生「……はい、大丈夫です」

 


3

 

 

金剛「テートクー! ナイスファイトデース!」

 

 

金剛「最後は以外なデッドエンドでしたケド、電ちゃん達は無事にゴールまでたどり着けそうデース!」

 

 

由良・暁「」

 

 

榛名「お二人が心ここにあらず……」

 

 

悪い島風【蝋人形置いて部屋から出れば確殺ギミック発動しますから由良さんと暁さんは死亡確定ですからねー。全員で行ってたらアウトでしたよっと】

 

 

悪い島風【そっちの作戦は成功ですね】

 

 

弥生「戻り、ました」

 

 

ぷらずま「最後のメモリーです」

 

 

提督「ええ、皆さんお疲れさまです」


 

提督「……、……」

 


わるさめ「し、司令官……どうしたの。普通の女の人だったし、そんなに怖くなかったはずなのに、固まっちゃって」

 

 

間宮「ほ、本当ですよ。ピエロットマンに比べたら私でも怖くなかったくらいでしたよ……?」

 

 

丙少将「……誰だよ? 知り合いか?」

 

 

電「お母さん、ですね? 司令官にあそこまで冷や汗かかせるのはそれ以外に考えられないのです」

 

 

提督「ですね……」

 

 

間宮・わるさめ・金剛・榛名「……」

 

 

提督「すみません……あれだけはいまだ自分にとって」

 

 

提督「必殺、に成り得ます……」

 

 

提督「……不意討ちで驚いただけで知ってさえいれば耐えられた、とは思いますが」

 

 

丙少将「まあ、電達の様子を見るに大丈夫そうだ。あの子らに助けられたな」

 

 

提督「ですね……由良さん弥生さんもキスカで海の傷痕と交戦したメンバーだけあって、いざという時の肝は座ってますね……」

 

 

悪い島風【……ま、あなたにここまで聞くとは思いませんでしたが、相当に母親に思い入れあるんですねー】

 

 

悪い島風【わるさめちゃんプレゼンツは終わったし、残存していた全ての想の回収も終えました】

 

 

悪い島風【さて、ここらで運営のほうからある程度、ゲームシステムについて基本的な説明をしておきましょう】

 

 

悪い島風【と、その前に阿武隈さんと神風のタイマン場まで行きましょうかっ!】

 

 

【9ワ●:疑似ロスト空間、演習場】

 

 

提督・電「……、……」

 


龍驤「さすがに驚くよね……」

 


電「龍驤さん、なにがあったのです? さすがに信じたくない現実ではありますが」

 

 

電「電にはうちの阿武隈さんが大破していて」

 

 

電「ろくに艤装もない神風さんが無傷に見えますが?」

 

 

龍驤「神風の完全勝利Sやで」

 


龍驤「ただ神風のあれは強さではあるんやけど邪道も邪道や……」

 

 

龍驤「アブーが選んだ装備は中口径の砲を二つに夜偵だったんだが、意味を成さなかった」

 

 

龍驤「神風のやつ、20分は海の中で潜水していたしさ……」

 

 

電「!?」

 

 

日向「トランスタイプで潜水性能もなければ、潜水艦ですらない……まさか時代は潜水駆逐艦なのか……?」

 


提督「……あれが強いといった時点で身体能力頼りの強さなのは予想してましたが」


 

提督「建造されている艦の兵士の運動能力からして潜水艦でなくともそのくらいは潜っては入られますが、あり得るかあり得ないかでいえば、の次元の話ですね……」

 

 

提督「阿武隈さんが選んだ装備では探知出来ないまでは分かります。さすがに潜る駆逐艦と戦うのは初ケースなうえ、夜戦……」

 


提督「至近距離で浮上なんかすれば、それを見逃す阿武隈さんではないと思いますし、無傷っていうのが疑問ですね……」

 

 

日向「よく分からんが奇妙な体術で、浮上と同時に阿武隈をひっくり返していたぞ?」

 


提督「呆れて物もいえないです……」

 

 

龍驤「ああ、あんなん馬鹿げてるわ。神風は深海棲艦を倒してないんやろ。剣で味方の護衛艦が精々の限界のはずやで。あんな至近距離での戦い方を覚えて何の意味があるっちゅーねん。あんな奇天烈な戦い方、作戦に組み込んで動かせるはずがないやん」

 


龍驤「ただアブーに勝てばそれでいい。それ以外を削ぎ落としていたわ。非常に見ていて気分が悪い。結果以外になにもない不格好な戦い方や」

 

 

龍驤「合同演習の時のキミらとまるで同じ」

 

 

コツコツ

 

 

神風「ほら、阿武隈さんを入渠させてあげなさいよ」

 

ドサッ

 

龍驤「……マナーが悪いなあ。内容は咎めんが、相手を投げ捨てたらあかんやろ」

 

 

卯月「アブ―――――!」

 

 

卯月「大丈夫か!?」

 

 

提督「阿武隈さん、大丈夫ですか……?」

 

 

阿武隈「う……ごめんなさい……」

 

 

提督「いえ、勝ち負けを気にしてはダメです。それに謝ることはありませんよ。どうせ吹っ掛けられただけでしょうし」

 

 

神風「……」

 

 

ゲシッ

 


阿武隈「っ」

 


龍驤「……」

 


電・卯月「その足をどけろ」


 

神風「逆よ。侮辱されたのは私のほう」

 

 

神風「愛刀さえ抜く必要なかったわ」

 

 

神風「あなた達、結果が全ての鎮守府じゃなかったんでした? だから、戦争終結させたんじゃないのかしら。その第1旗艦が手も足も出ずに負けるって」

 

 

神風「仲間だ愛だ友達だ優しさなど、その物差しでこの演習の度合いを見積もった結果がこれなのでは? しょせんここも馴れ合いの鎮守府ということが分かったのは収穫ですが」

 

 

神風「負けたら死あるのみ。兵士ならその覚悟で戦うべし」

 

 

提督「よいしょっと、阿武隈さん、入渠施設まで連れて行きますね」

 

 

神風「青山司令補佐」

 

 

神風「あなたはいつも私の心を」

 

 

神風「無視しますね」

 

 

提督「1つだけ……」

 

 

提督「あなたをそんな風に変えてしまったのは自分ですか」

 

 

神風「そうね」

 

 

提督「見当はついても確信が持てません」

 

 

提督「……ごめんなさい」

 

 

龍驤「アブーはうちが運ぶよ。キミはここに残っていざこざどうにかしなよ」



提督「すみません。お願いします……」



電「司令官さん、謝ることはありません。こいつが不貞腐れて歪んだまでのことです。神風さんお前、やり過ぎなのです。お転婆もいい加減にしてください」

 

 

神風「これまた侮辱ですね。信念が言葉で変わると?」

 

 

神風「力でこの神風を沈めてみなさいよ」

 

 

電「……戦争みたいにいわないで」

 

 

神風「そういえばあなたは」

 

 

神風「軍の最高戦力なんだっけ?」

 

 

電「…………」

 

 

神風「海の傷痕:此方を生かしたのも、馴れ合いじゃないのかな。私なら殺せる。それほどの存在ですからね」

 

 

電「……まさか身内から穢されるなんて」

 

 

電「私達の戦争の一番の勲章を」

 

 

電「電のお友達を」

 

 

電「司令官さん、少しあの頃に戻りますが、これからのことを考えた上なのです」

 

 

電「本気で戦ってあげます」

 

 

卯月「おい電、お前が負けたらうーちゃんが行くからな!」

 

 

電「ご安心を。ちと私、電モードでここまで怒るのは初めてなので戸惑いがありますが」

 

 

神風「へえ……」

 

 

電「私が勝てば、お前はもうここから消えろ」

 

 

【10ワ●:あの電、凪ぎ払わせてもらう】

 


北方提督「すまない。私が神風に与えられたのはあんな強さだけだった。阿武隈さんには悪かったけれど、彼女のためにも必要な工程ではあるから、止めなかった」

 

 

北方提督「私はこのために来たようなものだ」

 

 

北方提督「電と戦わせたかった。あの時とは電の状態は違うけれど、あなたの相棒である電と神風に演習させてやりたかった」

 

 

香取「失礼します」


 

提督「香取さん。あの子を鍛えたのはあなたですか?」

 

 

香取「提督と私です。心残りでしたが、私は途中から他の鎮守府へ行くことになりましたので……」



香取「鍛えがいがあった子でした。私は練巡として様々な教え子を持ちましたが、私の練巡人生の中での最高の艦の兵士ですね。もちろんメンタルの話です」

 

 

香取「あの電さんは鹿島の教え子という認識で?」

 

 

鹿島「はい。構いません」

 

 

北方提督「では鹿島さんと香取さんの教え子、どちらが強いんだろうね。これは戦争においてどちらが練巡として上なのかが分かるね」

 

 

鹿島「いいえ、これで測れるのはどちらが強いか、のみです。私は敵を捩じ伏せる単純な力のみの強さは教えていません。ここに来てからの私はあくまで生き残る術を教えていたつもりです」

 

 

北方提督「あの悲劇から、変わったよね」

 

 

北方提督「それまでは香取と同じく戦果を伸ばす、つまり深海棲艦を捩じ伏せる力に焦点を当てて、それこそがその生き残るに繋がると信じていた風な鍛え方だった」

 

 

鹿島「否定はしませんが」

 

 

鹿島「絶対に電さんはあの神風さんには負けません」

 

 

香取「感情論で語るのは昔からの悪い癖です。そこが鹿島の理でもあるのですけどね」

 

 

北方提督「いや、違うかな」

 

 

北方提督「神風はあくまで艦の兵士だ。私から見たら海の傷痕:当局と単艦でやり合えると判断しているよ」

 

 

北方提督「だが、トランスタイプでもない艦の兵士がそこまで強いのなら」

 

 

北方提督「『艦隊これくしょん』の運営管理をしていた海の傷痕からしたら、一種のバグだよ。メンテナンス対象であるはずなんだ。しかし、海の傷痕は神風を外野に入れた。この点から海の傷痕を倒した電よりも神風の実力は下だと見積もるのが普通」

 

 

北方提督「だが、悪い島風さんから聞いただろう。あの神風が廃課金だと。ならば大本営で神風が名を挙げられなかったのはなぜか。その矛盾こそが」

 

 

北方提督「神風の勝利の根拠だ」

 

 

提督「あなたがそこを根拠にしている時点で自分の意見は変わりませんよ。あの子があの海にいても邪魔なだけです」

 

 

提督「だから、海の傷痕にも相手されなかったのかと」

 

 

提督「あの種の強さは勝ったから強いというわけでもありませんから」

 

 

北方提督「……、……」

 

 

北方提督「ま、最後の海戦における外野の役割を軽視するつもりはないけれど、やはり不完全燃焼だ。なぜなら私達は」

 

 

北方提督「始まったその瞬間に終わりを突きつけられたのだから」

 

 

提督「電さんは名実ともにあの海で最高の兵士になりました」

 

 

提督「神風さんがあなたにとってのそれならば、お気持ちは分かります。今後のためにも」

 

 

提督「決着させておきましょう」

 

 

北方提督「その優しさに感謝する」

 

 

北方提督「少しだけだ」

 

 

北方提督「日が暮れても帰りたがらない子供の我が儘に付き合ってくれ」



悪い島風【テートクさん、何か賭けとく?】



悪い島風【私は神風ですけど】



提督「賭けませんが、電さんです」



悪い島風【えっとね、テートクさんもマーマも知らないと思うけど、あの神風はパーパからしたら立派な『バグ』であり『メンテナンス対象』ですよ】



提督「……、……」



悪い島風【気付くことが出来なかっただけ。もちろん探知から逃れたとかステルスとかそういう意味ではないです。メンテナンス対象に昇華した時にはあなた達が海の傷痕を倒してしまっていたからです】



悪い島風【要は完成したのが、戦争終結と同時だったということですね】



悪い島風【あいつにおいてはマーマの個性が関わっていますよ。欲しい女性の想、艤装の適性を設定したマーマの個性がね】



悪い島風【テートクさん、私からしたら『アレ』が】



悪い島風【適性率15%だとか設定ミスですよ】



悪い島風【神風の艤装にもう一段階上さえあれば、響改二と同じ適性率100%越えの現象が起きていたと思います】



北方提督「……そうなればいいのにね。准将、あの子と交わした約束を覚えているかい?」



提督「……第1艦隊旗艦の話のことを?」



北方提督「ああ。だが、分かる。例え覚えていてもあなたは彼女に声をかけなかった。だが、結果的に正解かな。でも見ていてくれ」



北方提督「神風の戦果を」



北方提督「終わりに向けて突き進んだあなたの隣に並ぼうと戦っていた彼女の歴史を」



北方提督「その想の深度を知ってるからこそ私は神風を第1艦隊の旗艦にしなかった。出来なかったよ」



北方提督「それをしていいのはあなただけだ」



北方提督「八つ当たりで悪いけど」



北方提督「あの電、凪ぎ払わせてもらう」









【11ワ●:戦後想題編神風:脣星落落、返り咲き】


勇敢に戦い、守り、生き抜いた。

私達を守ってくれた神風型の皆さんに感謝を捧げます。人命にも積み荷にも一切の被害はありませんでした。さすがは丁将の精鋭達です。


数の差のあまりに潰走して逃げ回っていたのだけど、周りにはそう見えていたらしい。私は敗走していただけだ。中破してもなお無数にいた深海棲艦から自分の命を護っただけだ。どこへ行っても敵と遭遇するという禍去って禍至る海に戦意は喪失していた。民間人なんてどうでも良かった。私が助かればそれで良かった。


この逃げる艦娘に対して深海棲艦が本能に従い、私のほうに来ただけだ。それがたまたま護衛対象の輸送船から引き剥がして見えたというだけなのだろう。その少し後に救援艦隊が来てくれたから私の醜態が露呈せずに済んだだけの話だった。


大和さんの命。

私の艦の兵士の適性率。

それらと引き換えに、とても恥ずかしい勲章を手に入れた。




足元には鋼鉄で構成された重厚な三本指のような三連装砲、その形は今この私の手にある装備を巨大化したような形をしている。透き通るほど溌溂とした氷河色の瞳からはクリーンな闘志の慕情を放ち、容赦のない命のやり取りを押しつけてくる。その人体の純白の部分を血に染めても、力の限り戦う修羅を船化したような深海棲艦を見た。


神風「……っひ」


足柄「また魘されていたの? 大丈夫?」


殺風景なコンクリートの景色を視界に収めるだけでもこの胸を安堵に撫で下ろすことが出来る。虚しく一人で騒いでいるようなテレビの音声の喧騒が私の心に破紋を立てた。清々しいほどの水色の空も、エメラルドブルーの海も、砂浜ではしゃぐ人々の胸も、この双眸のフィルターを通せば、すぐに鉄と煙と血に塗れて加工される。海を振り払うようにチャンネルで電源を落とした。


あの日から意識が覚醒する度に『助かったのか』と思い知る。あの撤退作戦の海で救助されてから目覚める度に助かったのか、と何度もこの身に触れて夢現の真偽を確かめてしまう。


大至急到着した支援艦隊を含めても20隻、事後報告書に寄れば敵深海棲艦の内、残骸は姫が17体、鬼24体が確認された。その最悪、こちらの戦死者は一名、作戦においては勝利Sだ。


神風「あの戦いだけを楽しむような深海棲艦……北方水姫、でしたか」


元帥「神風君、早速で悪いが」元帥は帽子のつばを降ろして、表情を隠した。「君、海を見るだけでダメなんだろう。神風艤装の適性率も15%まで低下している。これを踏まえて進路の話だ」


神風「解体、申請をします」


もう無理だった。艤装を目に入れるだけで、足がすくむ。無理やり海に出ても、艤装が上手く動かせなかった。航行すらろくに出来ないポンコツと化してしまっていた。それどころか周りが海と空に見たされるだけで、意識が飛びかける。これが意味するのは艦の兵士としての寿命の終わりだった。


元帥「街でなにがしたい?」


元帥は肩の荷が降りたのか、優しく口元を綻ばせた。この人には好印象を持っている。あの意味の分からない突然の深海棲艦の作戦後、忙殺の日々に追われているのに、こうやって毎日のように私の見舞いに来てくれるのだ。私に祖父はいないが、おじいちゃん、という砕けたイメージもある。


神風「特に、ありません」


元帥「それを見つけるのも楽しいもんだ」


そうかもしれない、と思う。鎮守府にいた頃、生真面目な性格だからか、質実剛健を胸に訓練に励み、丁の准将に声をかけられた。神風としての役割を果たすことにただ生真面目に生きていた中、楽しい思い出といえば鎮守府の皆と過ごした何気ない平和な日々だった。


あの急襲が始まる前までの日々は充実していた。アカデミーの時よりも真面目に訓練に勤しみ、実力をつけていった。胸に残るのは少女としての淡い思い出の泡沫だ。何気ない、些細なきっかけから想いを馬鹿みたいに膨らませた。読書中の素の私の妄想力故だ。


神風「青山司令補佐の処分は、どうなるんです?」


元帥「ああ……あの男か。知ってどうする」


神風「大和さんの分も海で戦えないこと、そしてその人と交わした約束が心残りです」


元帥「特に処分はない。執った指揮にミスはなく、最重要項目の船団の護衛救助も成功だ。民間船に被害は一切なかった。だが、まあ……彼には内陸に異動してもらうことになったよ」


神風「なぜです。最後のあの海のことくらい、正直に教えてもらいたいのですが……」


元帥「その後に敵を作り過ぎたからだ。大和君を自らの指示で死なせたことに悔いはないと。そう実の兄の前で煽るような態度でいっちまいやがった」元帥は大仰にため息を吐く。「その後も懲りた態度もなく口から出るのはただの色気のない理屈だ。失ったのが最高戦力の大和だぞ。司令部内の派閥の対立さえ煽る展開のおまけつきだ。ったく、師と似たような欠陥を持っていやがる」


すぐさま青山司令補佐がその色気のない理屈を展開する様が想像できた。


愛想もない淡々とした口調だったのだろう。大和さんの死を尊重した言葉を吐いたとしても、そこになにかしらの熱がなければ人の心には響かない。その結果、買うのは不信感だ。あの人が鎮守府でもそうやって浮いていたのは周知の事実だった。


神風「最後に会わせてもらっても、いいですか」


元帥「ああ、いいよ。明日までこの鎮守府にいるはずだ。ただ部屋から出ないようにいってある。爆弾は出歩かせられんよ。見張りにはいっておくから会えばいい」


そういった元帥の表情は少しだけ曇っていたのは、あの青山司令補佐に会って、私の傷がえぐられることを危惧していたのだと、今は思う。


足柄「神風ちゃん、その人のことの時だけ少し元気になるのね?」


からかうようなニュアンスだったため、私は目を背けた。


足柄「秋津洲ちゃんを思い出すわ。若いっていいわね」


と老けこんだことをいった。




青山司令補佐の部屋に行く途中に春風と旗風に遭遇した。聞けば、目的地は同じだったらしい。二人も酷く元気がなくなっていて辛そうだったが。私はなにもいわない。いっても、この二人には空元気であることをすぐに見抜かれて、逆に気を遣わせてしまうことを懸念した。


部屋の前まで来ると、見張りに「お話は聞いていますが、今はちょっと」と断りを入れられた。なぜか、と問おうとした時、その扉の向こうから声が聞こえた。声の主で先人が武蔵さんであることは分かった。いつも青山司令補佐とはあしらう風に会話をしていたけど、今日は違った。怒気を抑え込んだような声音は張り詰めた糸を思わせる。いつプチン、と切れてもおかしくなさそうだった。


部屋から武蔵さんが出てきた。片手で顔を覆い隠していた。初めてみる弱弱しい顔だった。


武蔵「……よう。元気、じゃなさそうだが、お互い命があってなによりだったな」少しだけ無理に笑っているのは、過ごした時間で分かる。「今、あいつとはしゃべらないほうがいい。お前らが求める答えを絶対に返してこねえから」


誰もなにもいわなかったのは、どんな会話が展開されたのかこれもまた想像に容易いからだ。武蔵さんは片手で顔を覆い隠したまま、いった。


武蔵「あいつの指揮にミスはなかった。大和の通信記録も残っていた。後は頼みます、との最後の通信にも応えて、私達は生きて帰投した。あいつは大和の勇姿を尊重して後悔はしていない、といった。それでいい。あいつは無機質だが大和を想う情は本心だと、信じたかった」武蔵さんは続ける。「なのに、『この程度』とかって言葉を口から出しやがる。もう顔も見たくねえ」


その言葉の後にハッとした顔になる。


武蔵「済まねえ。私はなにお前らになに愚痴ってンだろうな。頭、冷やしてくるわ」


返す言葉は見当たらず。

あの作戦で最も精神的なダメージを負ったのは、姉妹艦を見捨てる策をなかば強引に押し付けられた武蔵さんなのはいわずもがな、だった。大和さんは少しだけぽわぽわとしたところがあったけれど、誰にでも優しくて強かった。その気持ちは痛いほど気持ちが分かった。そしてその犠牲が春風や旗風ではないことに安心する自分が気色悪かった。


私は部屋へと入る。実際に会って話してみたいことがあったからだ。


殺風景な部屋にぽつんとある椅子に青山司令補佐は座っていた。窓外のほうを眺めていて、微動だにしなかった。左頬に大きなガーゼが貼ってある。いつも生気のない人だったけれど、いつにも増していた。今は部屋の一部として溶け込むような、生き物として薄い存在力だった。


神風「青山司令補佐、武蔵さん怒っていましたよ?」


提督「言葉にする文章を間違えました」


いつもとなにも変わらない。


提督「大和さんが後は任せます、の言葉のため、この程度で、といったのですが、いやはや武蔵さんとはその程度も解釈してもらえないほどの信頼関係だったみたいですね。なので、今はあまりしゃべるべきではないと判断しました。自分も混乱していますので」


ほら、分かりづらいだけで、ちゃんと人間らしい言葉が出る。あの作戦は特異過ぎた。混乱して当たり前だ。丁准将と大和さんが戦死、まだ誰も現実を受け入れ切れていない。突然過ぎたのだ。そこにあったいつもの日常が砂上の楼閣であるかのように大きな波に飲み込まれて、消え失せた。その深海棲艦(波)を私達(防波堤)では受け止めきれなかった。


今になって思うと、私は青山司令補佐のいった混乱の意味を履き違えていたと確信を持っていえる。あの鎮守府のことじゃない。大和さんや師を失ったことではなく、唐突に出現した100体もの深海棲艦、その直前に丁准将が死んでいた理由がさっぱり分からず、混乱していただけなのだろう。


神風「私からは、一つだけ、です。青山司令補佐は軍に残るのですか?」


投げた問いへの答えは返ってこない。


数分経過した後に、青山司令補佐は、ぽつりと漏らすようにいった。


提督「ええ、この戦争の海にしか生きている理由がないので」


これが、きっと、私が初めて聞いたこの人の心からの言葉だった。


海に生きる理由などすぐに分かった。丁准将からも何度も聞いている。この人の戦争終結への信念は異常だと。この人の部屋にはこの戦争の歴史で埋め尽くされていたのも知っている。それが生きている理由というよりは、それがこの人の唯一の酸素のように思える執着ぶりだった。


機械だの、感情がない、など、そう見えるのは心が尖り過ぎているだけなのだ。


神風「……約束、覚えていますか」


提督「すみませんが、神風さん」青山司令補佐はいう。「自分はもう提督として鎮守府に着任することは絶望的であり、あなたはもう艤装をまとうことが出来ず、です。諦めてください。自分は別の方法を模索しているところです。もしもそれが叶ったとして、あなたはその適性率ではろく戦えないですよね。なので自分はあなたを兵士として数えることはできません」


神風「……そう、ですね」


ここで、違います、と答えたらどうなっていただろう。取り戻します。諦めません。私が大和さんを越える兵士になります。こんな言葉を返せるほど勇敢な神風だったのなら、あの日の約束をあなたは覚えていてくれたのだろうか、と思う。飽きも懲りもせず腐るほど妄想したイフだった。


答えを聞けてよかった。


部屋から出ると、旗風がいう。


旗風「……そんな顔しているのなら、よかった」


春風「私達は、もう、解体申請もしましたし、一旦、お別れ、ですわね……」


神風「止めないんだ?」


二人は顔を見合わせていった。


春風・旗風「神風の覚悟って、分かりやすいから」


らしい。実は答えはもう決まっていた。この二人にはまた会える。私が生きてさえいればね。二人からしたら心配でしかないかもしれないけれど、私からしたら二人が街に行くのはむしろ安心する。


武蔵さんとは抱いた印象は違った。青山司令補佐はちっとも折れていない。あの悲劇を味わってなお、大和殺しのレッテルを貼られてなお、戦争終結への信念は微動だにしていない。空想夢想妄想の悪癖が顔を出した。この戦争終結だけに突き進む彼の掲げる御旗のもとにある最高の光は報いに満ちている。


過ごした鎮守府、姉妹達、お世話を焼いてくれた恩人、そして艤装適性。全てなくなった。持ち物は私の意思だけになってしまった。街でやりたいことは分からないけれど、今海でやりたいことは一つだけあった。行けるところまで行ってみよう。むしろ、身軽になれた気がしている。


空を見ると、恐怖で足がすくむのに。


浮き砲台にすらなれない私が戦う方法なんてないのにね。




元帥「神風として軍に残る、ね。尊重する」


それが元帥の返事だった。覚悟しておいてくれ、ともこの時に念を押された。当然だった。艤装適性が認められない適性率の兵士が軍に留まるというのは今まで通りに、という訳にも行かない。神風の後任者が適性施設から見つかってその子から入軍希望が出れば、神風艤装は没収であり、私がこの神風を名乗ることも許されなくなるだろう。私くらいの年齢の少女を軍に残すには建造されているという強みのみだ。常人よりも強力な身体能力を生かして役に立つ役割しか用意してもらえないのも承知だった。書類上、未成年の私に対して組織として融通が利かせられない線も把握している。


この時、甲大将が司令部の命を受けて、丁の鎮守府の奪還作戦を開始していた。


わずか三日であの鎮守府を奪還した。さすが甲の大将だ。しかし奪還したのは、丁の鎮守府から既存の安全海域の脅威を確実に保守できる海域内のみだ。つまり撤退作戦時の海域の半分程度の奪還だ。重要拠点として優秀な司令官が就く将の鎮守府が潰されるとはこういうことだった。私は元帥と秘書の大淀さんに頼みこみ、その調査隊の一人として向かった。船に乗り込み、空を見ると、何回か気分が悪くなり、嘔吐したが、二人に気を遣わせないよう、見られないように努めた。


平穏な毎日を送っていた私の故郷は、徹底的に破壊されていた。


陸の上に瓦礫が積み重なっているだけだ。ここまで建造物が跡形もなく吹き飛ばされ、陸の形が変わるほど削り取られているのは違和感だった。確かに鎮守府や艦娘、その指揮を執る司令官に攻撃的なのは事実だが、捨てた拠点をここまで破壊された、ということは聞いたことがなかった。


海軍と陸軍、それに民間の業者が入り混じり、作業に当たっている。


海軍の指示に従って力仕事をこなした。瓦礫を掘り起こす度に、思い出が掘り起こされる。この無骨なコンクリートに色があり、どこの建造物のモノかを予想することが出来る。今、私がいるのは鎮守府の一号、指令室の建物だろうか。この木彫りのインテリアは丁准将が愛用していたものだ。そして、深くから出てきたのは、手の平に乗るサイズの人形の頭だった。


そういえば、と思い出した。


そういえば、丁准将は青山司令補佐の他にも気に入っていた司令官がいたはずだ。


丁准将の口から直接聞いたことはないが、秘書官の大和さんが最近、新造の鎮守府に着任した非常に優秀な提督と仲が良い、といっていたのを覚えている。あの阿武隈のキスカの事件で、あそこの鎮守府に丁准将は監査を申し出て足を運んでいた。同行した大和さんから、青ちゃんさんとよく似ている女性でした、と一度だけ感想を聞いたし、丁准将が人形なんか持っていたことも珍しいので話題にもなった。紳士として女性への手土産だ、とあの人を知る人ならば聞けば忘れることのない怖気が走る発言もしていたとか。その相手の名前はフレデリカだった。階級は大佐だ。


丁准将は色々と問題はあった司令官だったが、それでも嫌いではない。作戦遂行におけるあのプログラム的に容赦のない作戦の組み立ては素直に感心していた。困難な作戦でも、「実現可」と思わせるだけの理を必ず含ませていた。そして欠けているものを訓練に取り入れ、この身は熟成していったのだ。


恩師、といえる司令官だった。人間的な意味合いを除けば、理想的な上司といえた。


積み重なった瓦礫の空間に隙間を見つける。そこにこの人形の胴体部分が転がっていた。


隙間に手を伸ばして、人形の胸部をつかんだ。衣服かなにかがひっかかっているようだった。力任せに手元に寄せた。ずるり、と這いずるように出て来た。


違う、とそこで気付いた。衣服の繊維が瓦礫にひっかかっていたのではなく、その千切れた衣服のドレス部分を、つかんで離さない手があったからだった。


司令官だった。恩師だった。


その暗闇にある丁の准将の死に顔を見た。瞳孔の開いた瞳がこちらを見ている。口元は嘲笑の形に歪んでいた。あの瞳に色があったら、「フハハ」と笑うような、そんな顔をしていた。口元を抑えて、その場から飛びのいて、嗚咽を漏らした。


その気味の悪さに、吐き気を催した、大和さんも、こんな風にこの海のどこかで朽ちているのだろうか、と思うと、瞬時にこの鎮守府で愛した思い出が血塗られてゆく。


初めて丁の准将や青山司令補佐に共感できた気がする。


絶対に負けられない戦いがある。そんな台詞をテレビから聞いたことがあった。人間の争いではなく、人間と異形の種の化け物との海取り合戦。その丁准将の亡骸は私に「情けも容赦もない相手に負けるというのはこういうことだ」と最後に教えているようだった。


対深海棲艦海軍が敗北を喫するのは、人類がこの結末を迎えるのを意味する。


この時、泣いていたのか、吐いていたのか、今はもう覚えていなかった。




「やあ、今いいかな。私、対深海棲艦海軍所属、北国の鎮守府の提督の任についている者だ。あなたは、神風さんだよね。少しだけ聞きたいことがある」


と声をかけられた。燦々とした日光に照らされてなお、全体的に白い女性だった。帽子、髪の色も、その足元の軍靴まで白かった。はっと目が覚めるような美人だ。記憶に該当するのは響改二のイメージだが、駆逐艦にしては背が高くスマートで年齢が私より一回りほど上に見える。


神風「っ、あ……ひ」


片手で口元を抑えて込みあげた嘔吐感を抑えつける。その真白のシルエットが、あいつと、北方水姫とかぶって見えた。目を合わせていると、全身の筋肉が弛緩して、全身から血を噴出してしまいそうな、そんな感覚に襲われる。深呼吸した。意を決して面をあげた。


神風「……な、にか用でしょうか?」


「……丁の准将、鎮守府の誰かから恨みを買っていたかい?」


目を合わせた途端に吐き気を催して口を抑えるだなんて無礼を咎めることもないそのたんぱくさは少しだけ青山司令補佐と似ていた。丁准将なら憎まれ口の一つでも叩くだろうが。


神風「なぜ、そんなことを聞くのです」


「ちらっと死体を確認したんだけど深海棲艦がやったとは思えないからね。ナイフで刺された痕跡が一目瞭然で確認できた。ナイフの扱い方に長けた者の刺し方でもなかった。ナイフでの殺し方を嗜んでいれば、あの滅多刺しは疑問でね。まず恨みの因果を疑って然るべき」


ナイフで滅多刺しの痕跡があり、死因は戦死ではないことを疑われているというのは衝撃だった。確かにあの丁准将は憎まれ口を叩く。かくいう私もよくからかわれて、うとんでいた節もあるが、それは殺意とは呼べないものだ。あの人は司令官として命を預けるに足る器を持っていた。普段は皆から慕われるような性格ではないのも確かだが、そこまで憎んでいる相手に心当たりもない。


「作戦開始時には丁准将の死亡は通告されていたんだよね。誰が死体を見つけたんだい?」


神風「この応答は軍部でお話しましたので」


ぺらぺらと見知らぬ人に話すことではなかった。


第一発見者については詳しく聞いていなかった。丁准将の死体の発見を告げる放送は、突如として出現した深海棲艦の群れにおける撤退作戦において、青山司令補佐が代わりに総指揮を執るにおいての説明程度だった。その点の混乱よりも肉眼で確認できた深海棲艦の対処が最優先として行動していた。


「そうか。では気になった点をもう一つだけ」


神風「……お話は出来ないです」


「その話は止めておくよ。神風型は戦えなくなったと聞いたけれど、軍を辞めないのかい」


神風「私の自由意思の選択、です」


「ん、君の口から聞きたかっただけだ。さきほど元帥さんから君のことをよろしく頼まれた。神風は私の北方の鎮守府に来るといい。ほら、最初期の頃に有名な奪還作戦のところ」


アカデミーの授業でならった記憶はあった。北方領土奪還作戦、本土近くの深海棲艦を薙ぎ払った対深海棲艦海軍の歴史初の作戦完全遂行の勝利Sを収めた作戦だった。その名残で泊地に過ぎなかった北海道の拠点を鎮守府に改装し、北方領土に留まる露との共同作戦をたびたび持ちかけられる面倒な鎮守府だった。国の外交官もよく鎮守府に来るとも、聞いたことがある。


神風「……私」


「分かっているさ。落ちた適性率を戻せる可能性はなくもない。私は二十年ほど前にヴェールヌイをやっていたんだけど、適性率が30%から85%まであがった実例がある」その言葉の反応を伺うように、間を置いた。「まあ、適性率がなくとも艤装が身にまとえる時点で戦える可能性は残されてはいるけどね。明日にはここから経つから私と共に来るかい?」


神風「兵士として、ですか?」


その人は口元を綻ばせた。懐に手を入れた。そして、視線を空へと向ける。釣られて、視線を今日の蒼天に向けた時だ。破裂のような大きな音が鼓膜を乱暴に殴ると同時に、空に赤い血飛沫が舞った。右腕の上部に強い衝撃で、身体が半回転した。少し遅れて、痛みの波が押し寄せる。


「兵士として扱って欲しければ、至近距離からの銃弾を避けられるようになろう。そのくらい君が選ぼうとしている道は大変だ」


馬鹿げている。その場にひれ伏しながら、顔をあげて睨みあげる。


発砲音を周囲が聞きつけ駆けつけて大騒ぎになった。この人には元帥の雷が落とされていたが、本人は反省した様子もなかった。帰り際に「次はバレないようサイレントかな」といっていた。反省はせずとも学習はする人のようだ。自由過ぎる。



私はこの時、その銃弾を避ける、という言葉をただの冗談だと捉えていた。それが冗談ではないと知ったのは北方の鎮守府について、炊事の役割を任されてからのことだった。




神風艤装はすぐに北方に輸送されたのだけれど、それを身につけ抜錨することがまず出来なかった。航行のために稼働するモノが思うように動いてくれずに、ただ波に弄ばれる始末だった。荒波を越えるように設計された軍艦ではなく、柔い葉っぱで作った船のようなあり様だ。もちろん砲撃も出来ず、魚雷も撃てなければ、対空、対潜装備も機能しなかった。


そして、働かざる者、喰うべからず。


食堂の炊事を担当しながら、夜が更けると司令官から渡された訓練メニューをこなした。といっても、ただの筋トレでなにがためになるのかはよく分からなかった。建造された艦娘は建造された時点で人間の限界を越えている。筋トレでは体感できるほどの身体能力向上はあり得ない。


三日月「あ、あの、大丈夫、ですか?」


神風「ええ。三日月ちゃん、明日は秘書官の仕事で朝早いのよね。私のことは気にせず、もう眠ったほうがいいと思うわ」


三日月「ここの司令官は自由人というか、無茶を平気で押し付けますし、自分も無茶をしますから、あまり真面目に付き合っていると病みますよ。私がそうでしたから……これ、差し入れです」


差し出された水のペットボトルを受け取った。ちょうど与えられたメニューは終えたところだった。ここに来てからすでに一週間は経過するけれども、あまり口も利かなかった。どこにいるか分からないのだ。執務室に行けば三日月ちゃんがいて、分からないことを教えてもらっている。


神風「あの人が執務室にいるところ、あまり見たことない……」


三日月「執務なんて滅多にしません。やるのは私と天津風さんとポーラさんです。本当に重要な項目だけ、あの人がやりますが、基本的に目を通さず私達が通しています。きっとまたよしなにしている軍人さんと会いにいっているのかと……近くにロシアさんの駐屯地もありますし」三日月ちゃんはいう。「恐らく銃器の類もそこから密輸しているのかと……私はもう慣れましたけど」


神風「控えめにいって頭おかしいと思う」


三日月「そうですよね。普通じゃないですよね。おかしいの、私じゃないですよね」


胸を撫で下ろした三日月ちゃんが、執務室のほうに目を空ける。そこにはワイン飲みながら、判子を手に持ったこれまたおかしな重巡が仕事をしているし、夜になると明かりが灯る部屋は望月ちゃんか。哨戒によく出ているという隼鷹さんと島風ちゃんと若葉ちゃんだけれど、若葉ちゃんは深海棲艦を見ると報告して撤退してしまうらしい。隼鷹さんがボトル片手に酔いながら艦載機を発艦させて、適当に沈めて帰ってくる。とても連携もなにもない正しく秩序もない自由な風潮の鎮守府だ。


神風「作戦は誰がやっているの?」


三日月「第一艦隊の旗艦はビスマルクさんです。自尊心の高いお方ですが、旗艦として仕事を与えると生き生きするという理由ですね。リシュリューさんもいるのですが、そのリシュリューさんも酒飲み勢、というか、お酒に対して寛容というか、司令官が酒の供給源を絶ってポーラさんと隼鷹さんを脅……こほん、お酒を控えさせて重要な作戦に当たらせています」三日月ちゃんはいう。「薄々気づいていると思いますが、最も戦争拠点として機能していない鎮守府です」


確かに薄々感づいていた。丁の鎮守府にいた頃よりも格段に作戦遂行命令が司令部から発令されなかった。難易度の低い、丁丙乙甲を動かせない、または任せるまでもない任務ばかりが回ってくる。演習なんて一度もやっているところを見たことがなかった。


艦娘の現存艤装があまっている始末なのは知っている。兵力として数えられるのなら、滅多に強制解体はされない。そのハードルの甘さが極まっているのがこの鎮守府の惨状といえた。


三日月「真面目な方が来てくれて、本当に助かります……」


歳とは似つかない苦労が滲むため息だ。


U「あの、哨戒、終わりました……」


神風「あ、お疲れ様です」


U「……っ、はい」


声をかけると、びくっと身体を震えさせて、駆け足で入渠施設のほうへと行ってしまった。あの子とは鎮守府に来た際のあいさつ時、それと食堂でこれまたあいさつを交わす程度だった。人見知りの潜水艦の子だと聞いている。ああいう子を見ると、距離を詰めて打ち解けたくなるのが以前の私だ。今はそれならそれでいい、と思うようになっていた。丁准将にいわれた一番艦の気質は、適性率とともに消えてしまったのかもしれない、と思った。


どうしてあの子が最速オリョクル王者として海に名を轟かせた『ディスって☆ろーちゃん』になったのかといえば、大体私の訓練に付き合わせてしまったせいである。




神風「……疲れた」


北方提督「やあ、遅いご飯だね。今日は私がよそってあげるよ」


鎮守府内の外周を150周、陸軍式の筋トレを各70セットをこなせば、艦娘といえどこのような遅い時間にもなる。ご飯を食べてからだと、吐きそうになるので、いつもご飯を食べるのは日付けが変わってからだった。この広い食堂で、一人でご飯をのろのろと食べる。


神風「あの、本当に銃口を向けるのはやめてもらえませんか?」手元に当たり前のように置いてある銃を手に取った。もちろん、法律違反である。「艦娘といえど、死ぬほど痛いんです」


北方提督「程度は弁えている。心の痛みは治りにくいが、慣れやすい。身体の痛みは治りやすいが、慣れにくい。特に死の痛みというのは何度経験しても克服するのは不可能といってもいい。新人が大破でそのまま適性率なくなっちゃった、ってケースもあるからね」


神風「加えて規定違反です。提督の指揮権利を拡大解釈したとしか思えません。アカデミーでもそんな訓練しませんよ。至近距離の銃撃を回避することに何の意味があるというのです。そもそも私達といえども、それは不可能ですよ。あくまで深海棲艦を想定した訓練を」


つらつらと、今までの不満が漏れ出てしまう。提督は表情を変えず、いつも通りだった。容姿は似ても似つかないが、このような不動は青山司令補佐とかぶって見える。


北方提督「艤装を扱えない君にアカデミーのような訓練をしろ、と?」


神風「いいえ。そうではなく、軍規は軍人として守るべきだと申し上げているんです!」


北方提督「ただの人間でも銃弾を回避できるよ」と誇らしげにいった。「最も、確実にとはいわなく、お互いの技量や読み、身体能力と様々な要素も混じるけれど、艦娘の場合はもっと不可能ではないよ。集中力を数値でいえば、人間では100が限界点だ。通常時なら20もあれば十分になにかに集中しているといってもいい。この数値、艦娘なら通常時がその三倍の60という数値が出ている」


神風「は、はあ?」


北方提督「海外の大学が通常の人間と艦娘を比較した実験をいくつもしているんだ。例えば、6500分の1、これは人間がよく使う踏むもので実験した結果の数値だ。なにか分かるかい?」


神風「……そのヒントだけで分かるわけがないじゃないですか」


北方提督「階段を踏み外す確率だよ。6500段に一度、人は階段を踏み外してしまう。これを艦娘で調べると、面白いことにおよそ19500分の1になるんだってさ。その集中力と比例しているよね。無論、身体能力で比較すれば艦娘は三倍以上だ。個々によって差異するけどね」


なんて意味不明な実験なのかしら。酔っ払いの大学生の悪ふざけとしか思えない研究内容だ。


神風「……艦娘の集中力ならば銃弾すら回避できると?」


北方提督「無理だろうね。でも、神風が海で戦うにはこの道しかない」頬を綻ばせた。「もう超能力染みたモノに頼るしかないね。そして超能力は訓練で身につくものだ。信じてもらえないだろうけれど、現乙中将がその類の才能を持っている。君が若い駆逐で良かった。不可能ではないよ」


神風「中破クラスの損傷を肉体に受けますが、どのように報告するつもりです」


北方提督「中破とそのまま報告するよ。損傷関連を弄ると戦果報告書の虚偽を疑われてしまうからそこは真実を報告する。安心してくれ。君の訓練内容は私に一任されている。その条件で君を引き取ったんだよ。もはや欠陥どころではない度を越えたポンコツの君をね」


棘の含まれたモノ言いにも意味がある、と言い聞かせて、金曜日のカレーを喉に押し込んだ。外傷はないので入渠はしていないが、疲労は溜まる。なぜか大盛りでよそわれたその日のカレーを口に運ぶが、胃に重たく、なかなか喉を通っていなかった。



北方提督「馬鹿げた訓練をするんだ。誰にも理解されない訓練の方法に賭けるしかない」



神風「……はい。覚悟は決めているつもりです」



北方提督「神風は深海棲艦を倒す時、なにを想う?」そういって、首を横に振る。「いや、やっぱり答えなくていい。庭を見てくるといい。明日から世話をしてやってくれ」


その日から雑務が増えた。何のためにどこから調達してきたのか知らないが、なにも入っていなかった小屋の中に若鶏が増えていた。その鶏の世話をすることになった。ここだけの話、私の癒しだった。初めて世話をした時、ピイと鳴いたのでピイちゃんと、もう一羽のほうをヒィちゃんと名付けてあげた。

毎日、癒しをもらっていた。




気の休まる場所がなかった。なぜかといえば、この鎮守府にいると、信じられないことに突然狙撃されることがあるからだ。ある時は屋上から、ある時は空いた部屋の窓から、ある時はお手洗いに入った時とまるで戦場にいるような気分だった。決まって右腕を撃ち抜かれる。一歩間違えば死あるのみだっただけに日中なにをするにも神経を研ぎ澄ましていた。心身ともに疲弊の極みだ。


神風「……ああ、心休まるベッドから、なんか怖気が」


毛布をめくってみると、シーツから刃物が突き出ていた。気付かずにダイブしたら、下腹部辺りにグサリ、と刺さる位置だった。危なすぎる。苛々もしてきた。なんだこの馬鹿げた訓練は。


神風「ピイちゃんに会ってこよ……」


鶏小屋に向かって、能天気なピイちゃんの頭を人差し指で撫でる。最初は逃げ回っていたが、最近になって餌をくれる人と認識して心を許してくれているのか近づいても逃げないようになった。ああ、可愛らしい。もしかして青山司令補佐も餌付けすれば、こんな風になついてくれたのかな、と鶏に重ねて失礼なことを考える。そういう妄想だけが、この地獄のような訓練の日々の救いだった。


一カ月を過ぎた後に、殺気、というのだろうか。感覚的に察知できるまでになっていた。感覚というのはどうも研ぎ澄まされ、感知性能を向上させるようだった。イヤな予感、といえばいいのだろうか。例えば、人を見て、あ、この人はヤバそうだな、とか、強いだろうな、とか根拠もなく、感じ取る。そういった真偽の精度が増していくような感じだ。


ビスマルク「アトミラールいわく、タツジン、の境地だって。強くなったの?」


と気だるそうにいった。ビスマルクさんは基本的に無愛想な人で、あまりあいさつ以外に声をかけられた試しがなかった。リシュリューさんもそうだが、こちらもお高く止まっている、といった印象だった。二人とも雑務の全てを拒否している。そんなモノはこの高貴な私がなぜやらないといけないの、といった海外の貴族といった振る舞いが煩わしく思う。


が、この鎮守府のことも分かってきた。それが許されているのは二人の戦果を見たら分かる。要はこの北方の鎮守府は自由な分、実力主義なのだ。ある程度の我が侭は力があれば許容されるし、ここの司令官も咎めることはしない。要は役割を果たしていれば、自由にしていい制度だ。


ビスマルク「おい新入り、無視するの?」


リシュリュー「品がないわね。あなた無愛想な上、威圧的だから警戒されているのよ」


神風「強くなった……とは思えないです」


正直に答えておいた。


リシュリュー「理解できないとは思うけど、意味はあるわよ。そういう人だから。ああ、それと深く考えているようでもっと深く考えているわ」


神風「何気にリシュリューさんから励ましてもらったの初めて」


あらそう、とどうでも良さ気にシャットダウンされてしまった。


ビスマルク「アトミラールが気にかける理由が分からないのよね。艤装使えないのに登録上は艦の兵士だし、意味の分からない訓練の意味もなにもかもが分からない。私に迷惑をかけないならそれでいいんだけれど、あまりアトミラールの手を焼かせないでもらえる?」


リシュリュー「勝手に連れて来られたのはあなたなのにね」リシュリューさんはため息をついた。「ビスマルクは気にしなくてもいいわ。根は悪くはないのだけれど、見ての通り感じ悪い人だから」


ビスマルク「なにそれ。別に虐めているつもりじゃないのだけれど」


神風「あ、大体分かっているので問題はないです」


ビスマルク「じゃあ、分かっていなさそうなことをいうわね」


神風「はい?」


ビスマルク「あんたが作る料理、不味い」


そんな馬鹿な。変な色気を加えずにレシピ通りに作っているのに。


神風「……だからビスマルクさんはよく残していたんですね」


リシュリュー「ニギリメシ、というのは美味しいわ」


神風「ありがとうございます……精進しますね……」


リシュリューさんの優しさに救われる。誰が作っても一緒なような気がするのはさておき。


そういって二人は席についた。それと入れ替わりで三日月ちゃんがやってきた。その隣に「てへ☆」と意味不明にあざといポーズをしている見慣れない女の人がいる。ピンク髪色と髪の型、色彩、そしてシルエットからすぐさま誰かは分かった。工作艦の明石さんだった。


明石さん「どうも、工作艦の明石さんでっす!」


神風「あ、こんにちわ。三日月ちゃんもこんにちわ。明石さんは装備改修に来てくださったのですか?」


明石さん「はい♪」


三日月「実は神風さんが着任した時から申請をしていたんです。超がつくほど多忙な人で、本当はもっと先になる予定だったのですが、神風さんに興味があるとのことで、スケジュールを調整して来てくださったんです」


神風「……私に、ですか?」


明石さん「ええ、ここに来る旅路がてら、神風ちゃんのデータは拝見させてもらいましたよ。艤装がほぼ動かせないとのことですが、明石さんがちょっと修理して稼働させちゃおうかなって!」


神風「ほ、本当ですか!?」


バンとキッチンを叩いて食器がひっくり返ってしまった。構わず明石さんに詰め寄った。鼻と鼻が触れるほどの距離まで明石さんに詰め寄った。「もちろんです。卯月ちゃんを越える最高傑作を作り挙げて差し上げますよ!」という明石さんの瞳はお星様の幻影が見えるほどにキラキラしていた。


明石さん「ただいまから装備……いいえ、艤装改修こと魔改造に入ります。失敗しても神風艤装をブチ壊して妖精さんに作り直してもらうだけなのでリスクゼロです」アデューです、とポーズを決めて走り去ってしまった。どうやら昼食のためではなく報告のためだけに来たようだ。


三日月「良かったですね!」三日月ちゃんが笑う。「最近は徐々に例のトラウマも克服しかけているみたいですし、この調子だと上手く行けば近い内に抜錨できますっ!」


神風「取り戻せるかなあ」


三日月「才能ありますよ。普通、そんなにがんばれません」


神風「あはは……期待に応えてみせますよ」


才能がある、といわれて嬉しかった。同時にガンバるだけで才能あるといわれるのがハードルが低そうで嫌にも思える。実際私に才能があったかどうかは分からない。才能というものがどういうものかを知るのは戦争が終わってからだ。


若葉「話途中悪いが、飯をもらっていくぞ」と用意されている盆をそそくさと取った。「神風、その時が来たら私と一緒に撤退作戦をしよう」


神風「う、うん」


若葉「楽しいぞ」


よく分からないことを得意げにいって、席へと向かっていった。あの子が何気に一番の謎人物だった。そして苦手でもあった。撤退作戦しかやりたがらない。それに例の撤退作戦についてよく根ほり葉ほり聞いてくるのだ。悪気はないのだけれど、あの海のこと平気で語れるほど今の私は強くなかった。


神風「三日月ちゃん、適性率が一桁の私が抜錨出来る日が来るのかな……」


三日月「大丈夫です。だって神風さんはしっかり神風さんらしいです」


確かに適性部門の研究では艤装の適性率は肉体と精神が条件として関わってくる。十代前半だとほぼ軽巡、駆逐の適性しか出ずに戦艦や空母は稀だ。そして精神面においても軍は明確にしていた。艤装ごとに擬人化した適性者を導き出して、こういう性格だと艤装適性率がありますよ、と公開している。ネットに出回っているため、世間のイメージは正にその適性率100%の艦の兵士が定着している。実際に艦娘と会うと、イメージとの齟齬があることがほとんどだとか。


三日月「あ、それとよしなの方から電報があったのですが」と三日月ちゃんは珍しく興奮している。「明石艤装ですが、後任者が見つかったそうです。なんと男性の適性者ですよ!」


神風「……え、男? 男が艦娘に?」


三日月「はいっ、60%以上も出たそうで軍部は大騒ぎです!」


聞いたことすらない。突拍子もない常識外れの情報に一瞬、頭が真っ白になる。長い対深海棲艦海軍の歴史でも初めてのことのはずだ。基本的に女性にしか適性は出ない。男性に出ることもあるが、それは小数点の話で、艤装を身につけられても稼働させられないというのが一般常識だ。


三日月「それにあたり公式の場では艦娘から艦の兵士と名称を改めるそうです!」


へえ。でも艦娘よりも、艦の兵士の呼び方のほうがかっこいいかも。娘、とつくのは兵士である以上、あまり良い印象を与えないのもある。そこらは色々と込み入った事情はあるようだ。なぜか妖精さんが作るモノは服や艤装、可愛らしいモノばかりなのはいまだに謎のままなのよね。


最後に、明石さんの艤装とともに香取さんがやってきて指導をしてくれる、ということを伝えられた。


この日はみんなにお礼をいって回った。




三カ月振りに神風艤装を身にまとい、抜錨ポイントで航行を試みた。何年にも渡って毎日のように身に着けていた艤装の勝手が違うけど、前へと進むことは可能だった。それを見て、司令官や様子を見に来ていた皆から歓声があがった。私も最高の気分だった。ようやく艤装をまとって海へと往くことができるのだ。


神風「明石さん、ありがとう、ございます……!」


明石さん「いやー。錨の操作だけは完全に出来るとのことですが、残っている適性のリンクしている部分が航行性能全振りでして。説明しておきますが」


明石さんは相変わらず子供のように目をキラキラと輝かせたまま、艤装の説明を始める。要点を得ない趣味全開のお話ではあったけど、まとめるとこうだ。


艤装の適性が唯一リンクしている航行能力のことだが、燃料庫とボイラー機関の連結が上手く調節出来ていなくタービンが十分に回っていなかった。その結果、適性者を航行させるほどの航行能力が発揮出来ていなかったらしい。その問題点を解決するために神風艤装を魔のつく改造、燃料を多く消費することでプロペラを大きく回して、スクリューに伝える処置が限界のようだった。


神風「あの、スロットが撤去されているんですが」


北方提督「私が頼んだんだ。使えないのなら要らない。少なくとも今はね。その分、速さは出るようにしてくれているよ。ああ、増設スロットだけはある。場合によってはタービンをそこに」


神風「……」


速さが出ても装備がないと戦えないじゃないか。今は機能しないけれど、いつか機能するようになるかもしれないのに。不格好な艤装だった。戦闘面において速いだけでどうしろというんだろう。この艤装はドラム缶の運搬すらできない。


北方提督「明石さん、問題点はあるよね?」


明石さん「残念ながら。一つ、燃料を大和型と同程度喰う割に航行能力は本来の神風とそう大差はありません。航行距離は報告書に描いておくので後で目を通してもらってください。二つ、砲雷撃に留まらず、対空、対潜装備はどうあがいても機能させられませんでした」


北方提督「ねえねえ明石さん、前々から思っていたんだけど、艤装って燃料じゃなくてソーラーシステムなんかで航行できないのかな。無理なのかい?」と司令官は突拍子もないことをいったが、明石さんは律儀に反応する。


明石さん「可能ではありますよ。ただ現実的ではありませんね。ソーラーのをつけたとしても、あれかなり繊細ですから深海棲艦と戦ってかすり傷でもついた途端に終わりですからね。修理費も燃料費より遥かに上になるとです。そもそも構造から作り直さなきゃなりません。今の構造が一番、良いですよ。ちょっと色気はありませんが、単純な仕組みは利点でもありますし」


若葉「神風、ちょっと海に出よう、散歩程度に」


と会話を遮って、抜錨ポイントから艤装をまとった若葉が隣にやってくる。


北方提督「そうだね、ちょうど哨戒の時間だ。護衛艦としていっておいで。今日はそうだな、念のためにビスマルクも偵察機を積んでついていって」


ビスマルク「昼食の運動にはちょうどいい散歩ね」


とビスマルクさんが旗艦として海を往くことになった。若葉ちゃんの後について、海に出るが、通常の哨戒ルートからは外れた航路をビスマルクさんは選択していた。


若葉「ビスマルク、どこへ往くんだ」


ビスマルク「そのポンコツのせい」ビスマルクさんはうっとうしそうだ。「海に出た瞬間から、目が死んだ魚みたいになっているし、手足も震えて航行しているのがやっとじゃない。でも、陸が視界に入っていれば多少はマシになるみたいね」


若葉「お前がそんな気遣いをすること自体は置いといても、直接口に出すのは驚いた」


ビスマルク「気付いていないからわざわざ指摘してあげただけ」


神風「……すみ、ません」


最初は久しぶりに抜錨したからか、波に酔っているだけかと思っていたが、確かに手足の制御が覚束なかった。この鎮守府に来てから海や空には慣れたけれど、まだ心はあの時の恐怖を覚えているようだった。でも、海を航行できている。ここまで成長したのも、毎日が命賭けだったから、お陰なのかな。


進路を取った陸地のほうには港があった。今日は祝日ということもあり、子供の姿もちらほらと見える。農協の人達が出張していて、なにかバザーみたいなことをやっているのが見て取れる。うちの食堂もよく世話になっている。通りがてらあいさつでもして行こうかな。


艦の兵士だ、と子供が騒ぎ始めた。


わあわあ、と歓声があがるのを見てビスマルクさんの反応が顔に出ている。嬉しいくせに高飛車ぶってクールに振る舞おうとしているのはこの人の可愛いところでもある。この人、持て囃されるためにこっちに来たんじゃないか、とすら思うほどに御満悦。


島風「へっへーん、私の勝ちだね!」


と島風ちゃんが山道のほうから子供達と一緒に港まで走ってきた。子供達は十秒ほど遅れてきて、膝に手をついて荒い呼吸を整えている。島風ちゃんはよくここらの地域の子供達と遊んでいるのを見かける。私も鎮守府の外周を走っていると駆けっこしよう、とよく勝負を吹っかけられる。


島風「あれ神風ちゃん、艤装をつけてるね!」


神風「うん、明石さんが艤装をちょっと弄ってくれたんだ。航行しか出来ないけど……」


島風「速い?」


神風「遅いです……」


ねえ島風姉ちゃん、と隣の子供にジャージの袖を引っ張られていた。


ずいぶんと懐かれている様子なのも相変わらずだった。島風ちゃんだけでなく天津風ちゃんもここらの人達に愛されている。天津風ちゃんのほうはお年寄りのほう。どうも最初期にここらの島の危機を救ったのが二人のようで、その伝説染みた戦果は今も語り継がれており、島風と天津風の適性者は特別視されているようなのだ。祀っているといっても過言ではないほど。


「この人、なんで他の人みたいに艤装に砲がないの?」


子供の無邪気に罪はない。この日から私は指を差されるようになった。深海棲艦も沈めることができず、味方に守られるだけの非力な存在なのはすぐに広まったからだ。胸にあるのは交わしたたった一つの約束のための執念だった。


何のために海に出ているのか。何のために艦の兵士を続けているのか。


無邪気に私は嘲られた。その度に顔から火が出る思いを味わった。


軍艦の中に民間船が混じっているぞ。




北方提督「なるほど、それが最近よく訓練をサボって引きこもる理由か」と部屋に入ってきた司令官はいった。「今の君に慰める気は一切ないけど、大事なことを聞くのを忘れていた」


神風「……」


北方提督「実は途中で諦めるかと思っていた。艤装を身につけて一度、抜錨したら現実を知ると思ってそこで折れると思っていた。私としては真面目だけど、超能力訓練なんて真面目にやるやつは疑問だしね。今になって気になったんだ。そこまでして海に居残る理由を教えてくれ」


神風「意味不明な訓練は、役立っています」


求められたものとは違う答えを返した。質問には答えたくはなかった。ただでさえ身も心も辛い毎日だ。戦えない艦の兵士のわがままで海に出ると、鎮守府の仲間にまで気を遣わせてしまう。必死の想いで抜錨する度に、私の心の安全海域が削られてゆくような、そんな窮屈さが日々増してゆくばかり。


膝に顔を埋めたまま、いった。


神風「服で隠れていますが、腰回りのホルダーにコルトがある」


北方提督「マジか……」


初めてこの人が驚いた時の反応を知った。当たりのようだ。本当になんとなくの感覚で伝わる。超能力染みている。気配といえばいいのか、虫の知らせ的な予感というのか、嫌な感じが司令官の腰の辺りからする。最もいつも狙撃されていたため、この人が現れると全身の毛が逆立ち、自然と警戒力が高まる。偶然なのかは分からないけれど、根拠もなく確信染みていた。


北方提督「すごいね、二人目だ。メディアには露出しないけれど、世の中には本当に達人という存在がいる。あり得ない、と口から漏れてしまうような正しくファンタジー染みた神業だ。常人からは理解されないゆえに、世界はその水準で回ることはないけれどね」


そういえば、と思い出した。


青山司令補佐は丁准将の会議に頻繁に呼ばれていた。それも重要な作戦の時ばかりだ。青山司令補佐は「いつも導き出す結論は似たり寄ったりで、自分がいる意味があまりありません」と。その時、丁准将はいった。「とんでもない。君は才能を自覚したまえ。ある程度の情報を与えれば、効率的かつ最短を探り当ててしまう。我輩にはない勘の類の才能だ」と褒められていた。


感覚による勘か。少しだけあの人に歩み寄れたようで胸が弾んだ。私は本当にそれだけが支えなんだな、と改めて自覚した。


北方提督「なるほど、男か」


神風「それ超能力ですか……?」


北方提督「ある程度のことは大淀さんから聞いているし、内緒に、と口止めしたけれど、君の姉妹艦とも会って話したよ。それに神風に身よりはいない。姉妹艦は生き残っているよね。大和さんのことか、あの時の無力を嘆いているのか、それとも別のナニカか。まあ、私の40年の人生経験で判断してみた」


神風「……約束しまして。あの人が提督になった時、第一旗艦に私がって。絶望的な未来だけど」ぽつり、と胸に秘めていた想いを吐露する。「大和さんを失ったあの作戦で命以外を失ったけど、あの人は諦めていなかった。なら、その約束は私が反故にしない限り、有効です」


北方提督「……あそこから、やり直せると?」


神風「こればかりはあの人を知らないと、分かりません。ただ私の感覚が確信しています」と根拠のない破綻した論理を展開する。「あの人は必ずこの戦争を終結させます」


そんな気が、するのだ。


神風「私の終着点に繋がる線路はあの人の指揮下でしか見当たりません」


北方提督「とんでもないこというね……」


司令官は軍帽を取って、ベッドの上に腰を降ろした。


北方提督「鹿島艦隊の悲劇、丙少将管理下の鎮守府の壊滅、フレデリカの戦死、まだ秘匿されているみたいだが、深海棲艦艤装を展開できる駆逐艦電の保護。近頃の海は騒々しい。おまけにその全てがきな臭い。丙少将の保守海域にある鎮守府を襲ったのは、丙少将の鎮守府が中枢棲姫の深海棲艦勢力に大規模な襲撃を受けた直後、だ。かなり臭う勢力だよ」


キスカの事件に、あの撤退作戦、そして男性の兵士の発見、ずうっとここ最近の海は忙しいが、北方の海は比較的、静かといえた。数年の内にこうも安全海域を侵略されるのは例を見ない。


一つだけ気になっていたことがあった。


神風「艦娘が深海棲艦となるのは有名な説でした。それが証明されたのことですよね。駆逐艦電が深海棲艦化しているみたいですし、私にもその力が手に入りますか?」


北方提督「深海棲艦艤装を展開できる以外は全て謎だ。知っているはずのフレデリカ大佐が戦死してしまったからね。それに仮に艦の兵士に深海棲艦の力を与える手段があったとしても、辞めておいたほうがいい。研究部の人から噂を聞いたが、電は心が壊れてしまっているみたいだ。神風もその胸に抱えている想いすらも失くしたくはないだろう。戦う理由すら消してまでも力が欲しいかい?」


神風「……そう、ですね」


恐らく、ここから先が海の傷痕当局が身定める廃課金の領域なのだろう。全てを失ってもこの海に留まるような、欲望から昇華した本能に成り果てるまでの執念の想いの深度だ。私は、その海に溺れて兵士として残留している。いつの日か必ず、あの人は表舞台の海に舞い戻ってくるはずだ。


北方提督「君は想いの深さに心が追いついていないね」


そういって腕を取られて、部屋から連れ出された。


北方提督「そろそろ時期だし、心の訓練を始めよう」


この訓練というのが、私のネジを飛ばすかのような地獄だった。


10


「やり方は覚えただろう。やってみて」


司令官の服や肌は赤黒く汚れている。鶏小屋の鶏を羽がい締めにして、頭を逆さにして地面に触れない高さでロープにくくって吊るした。ヒィちゃんのほうが暴れて、羽が宙に舞って地面に散乱している。その様子を色のない顔で司令官は観察していた。


神風「動物虐待だなんて、見損ないました……!」


北方提督「もともとここに飼っているのは愛玩動物じゃないからね」


ロープを切り落として、鶏が解放される。地面にぐったりと横たわっている。私は駈け寄って上体を確かめる。まだ生きている。けれど、元気は見ての通りになかった。司令官がいった。「ありがとう。そのまま抑えておいてくれ」と言葉を聞き終えた瞬間だった。


神風「え――――?」


ヒィちゃんの頭部をわしづかみにして引っ張った。伸びた首筋にナイフの刃が通る。返す刃で二度切りつけると、首から上が地面に落ちた。衝撃的な展開に、頭のなかが真っ白になった。大量の血を流した首のない胴体が横たわり、羽をばたつかせ、その場で回転するような軌道で動きまわる。


神風「……なに」


北方提督「愛玩動物じゃないからね」


神風「なにしているんですか!」


とっさに手が出る。司令官は回避行動を取ったが、受け止められた刃の上から強引に腕を振り抜いた。軍人とはいえ、普通の人間だ。力の差は駆逐艦とはいえ歴然であり、司令官はフェンスに叩きつけられて、後頭部を置いてある棚の上にある餌箱にぶつけていた。


神風「ひどい……! なんでこんな酷いことを平然と出来るの!?」


北方提督「食用の鶏だからね。頃合いになったから事をしただけだ。どいてくれ」


神風「私がこの子達のこと大事に可愛がっていたこと、知っているくせに……!」


首を切られたヒィちゃんの胴体は動かなくなっていた。小屋の中で逃げ回るように動いている残されたピイちゃんを抱えて胸に抱きしめた。混乱しているのか腕や胸、首筋を強くつつき回されるが、この胸から離すようなことは絶対にしない。


北方提督「深海棲艦を慈悲もなく沈める先輩達を見て、同じことを想っていたな」なつかしむような口ぶりでいう。「ひどい。なんでこんなひどいことを平然とやってのけるのだろうって」


神風「深海棲艦相手になにいって……!」


北方提督「君こそ食用の鶏相手になにをいっている。君だって命を奪う仕事をしているだろう。そこの認識ミスは兵士として死を呼び寄せる。電の話はしたよね。深海棲艦の正体は食用の鶏どころではなく、同じ鎮守府の仲間になるかもしれないよ。その時、君は今と同じように深海棲艦を庇うのかい。そうだというのなら軍から去れ。違うというのならそいつを離せ」


神風「っ」


返す言葉が思い浮かばなかった。軍人のあり方としての覚悟を試されている。


北方提督「君の兵士としての活路は一つだ。近々、君のために作られた深海棲艦と戦う武器の軍刀が届く。深海棲艦を倒したい、といったね。君は深海棲艦の攻防を潜り抜け、至近距離まで詰める以外に沈める方法はない。常に死の一歩を踏み込むんだ。常人の域を越えた心技体の先に君の望む栄光はあるはずだよ。もちろん強制はしない。選択肢は君が吟味すればいいさ」


つらつらと、淡々とした口調で言葉を吐いた。


反論の余地を探している時点で、恐らく私の心は弱い。海にしがみつく唯一の理由の深度を測量されているような気さえした。でも、でも、それでも私にとって大事な仲間だもの。一周り小さな頃からずっと成長を見てきて、たくさんの癒しをもらって、毎日を生きる力をもらっていた。


北方提督「それが答えか。了解した。なら私からの評価は一つだけ」


小屋の出入り口に向かって歩いた。


北方提督「その青山とかいう人間は分かりやすいからいえる。君は選ばれない」


追い打ちをかけられた。あの作戦の指揮内容を確認すれば誰でも分かることだ。青山司令補佐は即座に大和さんを犠牲にする判断が出来た。かつ大和さんはすぐにそれを受け入れることができた。そうじゃなければあの戦い、絶対に全滅していた。その二人の判断が唯一の命綱だった。それほど壮絶な戦闘内容だったのは誰よりもこの身と心が知っている。


神風「……う」


その通りだった。その通りだ。あの人は作戦において機械的で情を一切混ぜない。そして兵士としての覚悟を求める。それを成せなければ兵士として信頼はされないだろう。必要がなければ、誰でもいいというのなら、第一旗艦にしてもらえるかもしれないが、そんなのは嫌だった。


足元から鶏の鳴き声がした。


抱えていた腕の力が不意に抜けてピイちゃんを手放してしまった。これが丸裸にされた私が無意識に選んだ答えだった。空いた腕で、目元の涙を拭った。


北方提督「さあ、やり方を教えるから君がやるんだ」


神風「できるわけが、ないでしょう……!」


鬼の所業だった。弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂。


北方提督「君の仕事は炊事全般だ。選んだのなら役割を果たせ」


その日はあの日以来の地獄だった。愛した命に謝罪をしながら礼を述べ、生命を絶ち切った。そんな私が未熟者だから、ピイちゃんの首を落とすのに何十回も刃をのこぎりのように削る羽目になった。苦痛を与える殺し方になってしまった。前へ進むために大事なモノを落としてしまった気がする。


訓練された兵士というのはきっと、自分を殺した人殺しのことをいう。


英雄というのはきっと、人間として破綻している欠陥品のことをいう。


私の身体のどこかから大事なモノがまた一つ削ぎ落されていくような軋みが聴こえた。


事を終えた後の司令官はいつもと違って、優しかった。それをすぐさま食事の材料として使用しようと羽をむしって、熱湯につけていた。命を奪う時とは違って、優しい手だった。奪った命に懺悔するような、そんな身勝手な人間の感謝の心を押しつけるように丁重だった。


司令官はいった。


なにを食べたい?


空っぽの心が無意識的に答えた。


辛くて柔らかいもの。


作ったのは鳥ガラの麺だ。その日、皆から美味しい、と褒めてもらえた。笑顔が食堂に溢れた。今までで一番、気持ちを込めて作った料理だっただけに嬉しかった。だけれど、口に合わないといって料理を残したビスマルクさんを半殺しにしてしまった日でもある。「食べ物を粗末にするな」と鎮守府内での立場の差も加減も恩義さえも弁えず、身体に叩き込んだ。


戦艦を軽くあしらう体術を知らぬ間に得ていた。


神風「ありがとうございます。今日は残さず食べてくれたんですね」


ビスマルク「え、ええ、とても美味しかったわ」


やり過ぎてしまったようでビスマルクさんは委縮してしまっている。謝罪はしたのだが、すこってしまったのが尾を引いている。あれからは入渠したビスマルクさんにリベンジのケンカを売られたのだが、熱は収まっていなかったのもあって返り討ちにしてしまった。こうも怯えた顔を向けられるのは本意じゃない。


神風「昨日は、すみません……」


ビスマルク「別に……一晩経ったら、どうでもよくなったわ。ちょっと怖いけど、あなた悪口いわれてびくびくしたり、落ち込んだりするから、そのくらい図太いほうがいいんじゃないの」


ここ自由だしね、とビスマルクさんはいった。確かに。


10


北方提督「やあ神風」


神風「あ、おはようございます」


北方提督「おはよう。今日で炊事の役割は外すね。香取さん来るから訓練に励んで。それだけ」


神風「了解です……やっとですか……」


その日の午後に香取さんがやってきた。司令官から話を聞いたところ、興味を持ったようで、練巡として今世代の神風を鍛え上げてくれるという。この人に会うのは二度目となる。私がアカデミーにいた年の教官をしてくれていた人だった。また世話になることになった。


香取「その刀と剣はどちらを主に扱って訓練しているのですか?」


神風「まだ使用を許可されていないので、どちらも使った試しはありません。ですが握ってみた感じ、フィットするのはやっぱりオーダーメイドとして製作してくれた刀のほうです」


香取「ならそっちで行きますか。三日月さん、本当に悪いのですが……」


三日月「お任せください。明石さんに予備を大量に発注しておかなければなりませんよね!」


香取「私がいわんとしていることを……なんて優秀な秘書官なのでしょう……」


三日月「最近になって提督が突拍子もなくなにいうかも分かってきました」


春風、旗風、お元気ですか。


ここにまた一人、司令官によって超能力者が誕生していた模様です。


まず剣と刀の扱いの座学を受けた。艦の兵士において刀というのは主に飾りとして産まれたものらしい。製作された当時が西洋文化よりも自国の文化を優先したために産まれた実用性の低い欠陥品であること。艦功や砲弾を防ぐことは可能だが、西洋剣と比較して細身な分だけ、防御面にどうしても不備が出てくること。そりゃそうだ、と納得した。軍艦が飾りの軍刀一つで戦うとか嘲笑の的である。最もその類の罵倒もすでにこなれていて心を乱す程ではなくなっているけど。


香取「まず極意から教えます」


神風「極意、ですか。格好いいですね」


香取「最大限、刀を使用しないことです」


一体全体どういうことだ、と疑問に思う。刀でしか戦えないのに、それを使うな、などとまるで意味が分からない。宮本武蔵の刀を抜かずして勝つとかいう道理は深海棲艦に通じるとは思えない。刀を抜かなければ、私はずうっと民間船のままじゃないか。最近は荷物が詰める分だけ民間船のほうがマシ、だとまでいわれたことあるのに。


香取「これが艦の兵士における刀の理法です」


唯一、利点があります、と香取さんはいった。その理を分かりやすく教えてもらった。


剣よりも優れている点、それは本来の西洋の剣と刀の違いと同じ。


西洋の剣は叩っ切るイメージ、そして刀は単純に切り落とす、というイメージ。優れているのは切れ味だという。その切れ味こそが、深海棲艦における必殺に直結するとのことだ。


それは姫級と鬼級のように『身体がある深海棲艦』を倒すにおいて刀のほうが有効である、と研究部が実験のもとに証明しているとか。剣においては鋼材を研がないゆえの固さ、正しく叩き切るという面においては上だが、深海棲艦相手に戦艦が使っても致命傷には至らない、確かに、そうだ。一撃で頭を潰しても、動くような生命力である。だが、深海棲艦は人間の肉に艤装と一体化しているため、身体も固いが、艤装を扱うにおいて間接等々の曲がる部分がある。


まだあの重量をどうやって支えるに至るのか、は解明されていない部分もあるが、一体化した艤装の場合、接合部を切り落とすことができるのが、研いだ刀のみ、と実証されたようだ。


香取「修羅の道、ですけどね」


艦の兵士が至近距離線を行うことは珍しくはないが、そこで刀を使うのは装備が損傷するほど追い込まれた際だ。攻撃の武器ではなく、受け流すための装備としての愛用者は多く、特に耐久装甲面に不備がある駆逐艦に愛用されているのは知識としてあった。要はその極意は、壊れやすいから抜くなという点と、最大限航行による回避を重んじること、そして被弾する際は損傷箇所を予想して役割において航行に不備が出ないと判断した時も、刀で受けないこと。そういったことを念頭において、複数の敵から単体で深海棲艦を沈めるにおける場面を想定しているという。


神風「脳筋というやつですか。攻撃は最大の防御とか、そんなイメージを受けますが」


香取「今のあなたがやれば傍からはただの死にたがりですね。戦果を考慮して撃沈数を減らすため、普通は提督が誰かを動かす羽目になる。こんな艦の兵士は戦場において邪魔なだけです」


神風「おっしゃる通りです……」