2018-10-17 14:22:03 更新

概要

「В одно перо и птица не родится」同じ羽の鳥は産まれない。もう君は私ではない。この僅かな命、どうしようか。女子力あげて、フクロウ飼って、共に勝利を望んだ草野球。戦後日常編:響。


前書き

※キャラ崩壊注意です。


・ぷらずまさん
深海棲艦の壊-ギミックを強引にねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた電ちゃん。

・わるさめちゃん
深海棲艦の壊-ギミックを強引にねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた春雨ちゃん。

・神風さん
提督が約束をすっぽかしたために剣鬼と化した神風ちゃん。やってるソシャゲはFGO。

・悪い島風ちゃん
島風ちゃんの姿をした戦後復興の役割を持った妖精さん。

・明石君
明石さんのお弟子。

・陽炎ちゃん
今の陽炎の前に陽炎やっていたお人。前世代の陽炎さん。


※やりたい放題なので海のような心をお持ちの方のみお進みくださいまし。


【1ワ●:いい加減にするのです!】



電「……」



悪い島風【やべ、電ちゃんがげきおこですよ】



提督「どうしました?」



電「司令官さん、そろそろいい加減にして欲しいのです」



電「戦争は終わりましたよね……?」



提督「はい」



電「戦争終わってやっと日常が来ると思ったのに!」



電「私は司令官さんと昔の続きを、私が海に行って途切れた日々の続きが訪れると思ってたのに」



電「悪い島風とかいうダボが戦争延長戦みたいな真似を初めてこの有り様なのですよ! 司令官さんもまた戦争のことごちゃごちゃとほじくり返すように考え事していますし!」



電「長月さん菊月さんとは保護者みたいな真似して! 陽炎さんと不知火さんとは仲良くするどころか不健全行動を! 苺みるくさんが天国へ行ってしまった時も私も響雷お姉ちゃんもかなしかったのに、暁お姉ちゃんばっかり構って! 今日に榛名さんをお姫様抱っこしていたのを見たのです!」



電「ええ、ええ、電は我慢してきましたとも! お友達が司令官さんと遊んでいる間も私は被りたくもないぷらずまさんの仮面をかぶって悪い島風とかいうダボが指定した支援艦隊として渋々がんばっていましたとも!」



電「挙げ句の果てに」



電「神風!?」



神風「……なんですか」



電「司令官さんとの約束あったからって、急に現れては昔の女気取りしてんじゃねーのですよ!? 北国で隠居してろなのです!」



神風「は? どこに昔の女気取り要素があったの?」



電「ありかなしでいえば」



神風「……さ、さあ」



電「ほらほらすでにラブ勢の兆しあるじゃないですか! 私はテメーと会った時から一目で司令官さんの見る目があれなことに気づいてはいたのですよ! 可愛さ余って憎さ百倍が反転! 憎しみ余って可愛さ百倍みたいなオーラが出ているのです!」



電「いっておきますが!」



電「私と司令官さんの付き合いはお前より長いんですからね!?」



北方提督「ん? この鎮守府で知り合ったのではないのかい?」



電「私と司令官さんは小学校の同級生なのです!この場にいる誰よりも私が一番、早く出会っているのです!」



神風「だからなによ……別にあなたの司令官さん取ったりしないってば……」



電「このゲームで司令官さんの旗艦やる気満々だろーが!?」



電「司令官さん!」



提督「は、はい。ですが、まあ、神風さん旗艦適性ないわけではなく、約束を忘れていた自分が悪いので、ええとこの件に関しては」



電「ああ、ああ、もう司令官さんがそういう態度ならばもういいのです! とことん付き合ってこの神風とかいう速いだけのダボの指揮下にでも入ってやりますが、もうこの場で答えてもらいますよ! 私の胸に秘めておくつもりでしたがこの場でいうのです!」



電「最終作戦の時、お花畑であなたはいったはずです!」



電「私が『初恋』でした、と口説いたじゃないですか………!」


ガチャリ


北方提督「午後10時35分、大英雄を未成年者に対しての淫行容疑にて確保。詳しくは署で聞かせてもらおうか」



神風「大の男が暁型を口説くとか引く……」



提督「」



提督「」







提督「」



電「今はもう違うともいわれましたけど、それでも私は嬉しかったのですよ! あなたが私の体と心に対してもたらした救済はあまりにも大きいですから、そんな過去形でも嬉しかった!」



電「あれは死亡撃沈する可能性を減らすための方便で、狙っていたのは私の戦意高揚(キラ付け)だったの? と疑いたくなってくるまでに戦争終結しても距離感が変わらないのです!」



電「そこのところどうなのです!?」



卯月「修羅場だぴょんw」



提督「い、いや、嘘ではありませんよ。あの少年の自分はあなたに好意を抱いてその形も伝えた通りですし、海の傷痕戦は本当に電さんが殉職してしまう可能性も高かったです。今までのこともありましたし、腹を割って話しておくべきだと……」



悪い島風【ま、私のせいでもありますから、この場は私の話術でなんとかしてあげますよ!】



悪い島風【ちゃんと司令官さんは電のことも考えているよ。あなたとわるさめはトランスタイプの兵士で精神面が少しイカれちまっている部分があるので】



悪い島風【わるさめちゃんと同じくこの人が身元引き受け人になるよう、話を進めています。もちろんあなたがそれを望めば、の話ですけどね。そういう風に日常に戻る日は見通し立って来てるので、もうちょっと司令官さんを信用してあげてもいいんじゃないかな。あなたとわるさめさんが巣立つまで面倒見ようってのは結構な男気だよ?】



電「!?」



わるさめ「司令官がお兄ちゃん、わるさめお姉ちゃん、末っ子電の3P暮らしってことでおk?」



電「お前は黙っているのです!」


ドンドンドン!!


わるさめ「」



電「司令官さん、それはどういう意味なのです?」



提督「まだ先の話ですが、あなた達の精神影響面は成りを潜めているに過ぎないので、そこのところをよく知る自分が適任ですし、あなた達さえ望めば、という条件がありますが」



提督「ゆっくり時間も取れますし、良い形かと」



電「……」



提督「あの時から歩みを止めたあなたにしてあげたいことです」



電「ま、まあ、それならこの件は水に流してやるのです」



卯月「ちょろー。もともと軍所属の孤児駆逐の管理責任なんか提督任せだし、今の鎮守府暮らしと同じようなもんだぴょん。もっとふんだくればいいし」



悪い島風【卯月、お前は営業性能高いぞ! 頭の回転速い悪童って性質悪いですよねー!】



悪い島風【さて、そんな未来の日常のお話はおしまい!】



悪い島風【艦隊これくしょんの説明の前にメモリーも渡したことだし、私の目的についてお話したいと思いまーす!】



【2ワ●:メンテナンスしたい】



丙乙「……」



悪い島風【目的からいいますが】



悪い島風【『生死の苦海式契約履行装置』のメンテナンスです。ここに戦後復興妖精である私の願いを書き込みたい。それが出来ないようになっている制限の解除のためにこのゲームの製作に目をつけました】



悪い島風【あ、後で総指揮の丙少将にその願いの内容は教えます。こっそりと、そして秘密にして欲しいので今は勘弁しておいてください】



悪い島風【それと、私の装備は擬似ロスト空間、まあ、ロスト空間消失によって本来のゲームサーバーからデータを取れなくて本来の性能を引き出せておりません】



悪い島風【榛名さん達の旅でやって見せた時間空間的な操作はこれ、スロット2のwelcome to my homeです】



悪い島風【時代を変革する戦後復興の世界創成力】



悪い島風【なぜパーパが私をトランスタイプとして作り直したかもメモリーにありますのでそちらを参照してください】



悪い島風【さて今の丙少将の秘書官設定は大鳳さん】



悪い島風【乙中将は扶桑さん】



悪い島風【甲代理の明石君は山風ちゃん】



明石君「それって途中で代えたりも出来るのか?」



悪い島風【ええ、はい。ただ初期メンバーは他の鎮守府艦隊に異動は出来ません。絆を深めてくださいねえ。そういう想も欲しいので】



悪い島風【准将は神風。メンバーに電は固定として】



悪い島風【北方さんの設定はまだですね】



北方提督「神風が抜けたから准将、そちらのメンバーを一人貸してもらいたい。実はすごく気に入った子がいるんだ」



提督「誰です?」



北方提督「わるさめちゃん。私と相性がすこぶる良さそうだ」



わるさめ「司令官、わるさめちゃんが他のやつに奪られちゃう!」



提督「いえ、まあ、わるさめさん今回はそちらでお願いします」



わるさめ「ったく、しょーがないなー。私は電みたいにガキじゃないから1つ返事で愛と忠誠をアピールしちゃいます♪」



電「……ぐっ」



乙中将「アクセルしかない車に更にアクセルを積んだか……」



悪い島風【じゃあ、北国さんはわるさめちゃんで】



悪い島風【それと二人のトランスタイプはここで没収です。駆逐艦電と春雨としての艤装をお渡しします。神風は事情が事情ですから特例でそのままです。お二人は適性率関係なく艤装を扱えるように設定しておきますので】



丙少将「へえ、そんな事まで出来るのか」



悪い島風【パーパの艦隊これくしょんはマーマの欲しい想をこれくしょんするためだったので適性率が設定されていたんです。そんなのにこだわらなければ適性に限らず、大抵はどうとでもなりますから】



悪い島風【さて、他のメンバーですが、希望異動、つまりシャッフルしてもらいたいんです。ゲームなので楽しく好きなようにやろうよ。みたいなノリでの参加をお願いしたいので♪】



丙少将「……」



悪い島風【なんならいくらでも私に制限かけるための契約をしても構いませんよ。信用してもらうためです。何回もいいましたけど、人間さん達に危害を加える気なんてありませんので】



悪い島風【それやるなら戦争中にやってます】



丙少将「まあ、皆あそこの鎮守府で出撃してみたいなー、とかそういう話もよく聞くし、好きなところに入ってもらおう。戦力的なことは希望を見て偏った時に考えようぜ」



悪い島風【それじゃ各提督さんはそれぞれ『こういう感じでやってくんで』的な演説アピールしてもらいまっしょい!】



北方提督「滾る。我が艦隊に加えたい人がたくさんいるんだ」



悪い島風【じゃあ食堂に集合で!】



【3ワ●:スカウトアピール】



丙少将「えー、俺んところはそんな気張らずにリアル優先でやって行きたいと思う。方針は今までと変わらずに被害を抑える方向で行くつもりだ。やる時はもちろんやるけども、一人に負担が行かないようにシフトは組む」



丙少将「以上だ。聞いての通りあんまり気乗りじゃない」



悪い島風【まあ、もう艤装つけるのかったりーみたいに緩い気分でやりたいリアル優先! 安全策の英断が冴える丙少将の鎮守府メンバー募集演説でした♪】



悪い島風【乙中将、行きましょうか】



乙中将「えー、僕のところは真面目に程ほどに攻略していきたいと思う。まったりでもなければガチでもない。ただ抜錨する以上は皆のやる気に応える指揮は執るし、作戦も真面目に考えて行けると踏んだら高難易度の海にも出撃する」



乙中将「以上だね。海にまだ思い残したことがあって、だけど、程ほどにやりたいなって感じの人はおいでー」



悪い島風【聞いての通り、せっかく戦うなら歯応え欲しいけど、そこまでガチで攻略していくのはなんだかなーって人はここ。無理しない範囲で敢闘をお望みの方は乙中将の指揮下にどうぞ!】



悪い島風【じゃあ明石君どぞー♪】



明石君「甲の代理だけど俺が真似したらただの無謀だし、そもそもやる気は全くない。俺の指揮下に入りたい人はいねえだろうしな。だから、ほとんどなにもしねえ。他のところが行き詰まったりしたら、ちょこっとその海域の情報を集めたり、他鎮守府に行ってもらったり他の鎮守府んところの演習相手を請け負ったり。そんな支援的な動きオンリーで行く。そんな認知でよろしく」



悪い島風【ゲームでいえばログイン勢! お付き合いでこのゲーム始めてみましたが、正直ポチポチやるならリアルで酒飲んでゲームやっていてーよー、とかいう奴等はここっきゃねえ!】



悪い島風【じゃあ、北国の提督さんどうぞ!】



北方提督「初顔合わせも多いんだ。長くなるけど、自己紹介を兼ねても?」



悪い島風【構いませんよ!】



北方提督「北国の鎮守府の提督だ。過去にヴェールヌイとして戦っていた過去もある。この海の秘密は私もこの場に混ざることで情報を得た。予想はしていたが、確信を持った」



北方提督「私には夢がある。そのために力を貸してもらいたい」



北方提督「想力というのは、要は『短縮』の力だ。なんでもできる。何故ならばそのなんでも出来るが、人間の頭で想像出来ることに限られるからだ。人間の時間は限られているからこそ、魅力的な効率の魔法といえるだろう。堕落の力ともいえるから、正しく用法要領を守って使わなければならない」



北方提督「過去に、私は過去に、囮を使用して暁と響、雷を殉職させてしまった咎人だ。その時から私は弱さと傷を隠すように戦いの日々に明け暮れた。怒りの余り時にはサンマも乱獲した。あんな子達が死なない世界を」



北方提督「戦争終結とは違う意味で追い求めていた」



北方提督「様々な文化や価値観が世界には入り交じり、どこもかしこも常識が縛りをかけて、自由を歌いながら自らを鎖で縛るようなイカれた呪いの世界だ。本当のフリーダムなんかどこにもない」



北方提督「ならば」



北方提督「私がやるしかないじゃないか……!」



北方提督「そうだ! この北国に自由の旗を立てよう!」



提督・丙少将・乙中将・明石君(自由通り越してただの奇行種……)



北方提督「そのために勲章が欲しかった。海の傷痕を撃沈したという勲章が欲しかったんだが、それは逃してしまった。そこの戦争終結ド変態のせいでね」



北方提督「真実を語るものは機知のないものだ、とはロシアの文豪ドエトフスキーの言葉だが、あなたを見ているとそう思う」



提督「ふ、最近はユーモアも成長しているんですよね」



北方提督「つまらない返しだな。故に気のせいだろう」



提督「=(´□`)⇒グサッ!!」



北方提督「自由への道はいまだ無限大。私は想力を利用し、『北方自由共和国』を建国するつもりだ」



響「自由、共和、国……」キラキラ



丙少将「いかん! 小さいほうの響が共鳴を始めてる!」



北方提督「やはり君もフリーダムの素質を持つ者か。ならば私と行き着く理想は同じだ。前々世から僕は君を探し続けたよ~♪」



北方提督「そして政治世界にも影響力を持った共栄自律教団の力さえあれば建国への障害は短縮される」



北方提督「雷、頼りないお姉ちゃんに力を貸してくれ」



雷「頼りに? あ、そう、な、なら仕方ないわねえ……」テレテレ



乙中将「ずるくない!? 元響ちゃんだからか扱いを心得た上でさっきから狙撃してるんだけど!?」



北方提督「……」テレテレ



乙中将「褒めてないよ。この人の取り扱い説明書はよ……」



悪い島風【まあまあ、所属を決めるのはこの人ではないですから】



北方提督「鎮守府名は『北方自由共和国(仮)』だ」



北方提督「海の傷痕が残したまだ見ぬ宝を探すがごとく、私の鎮守府が甲の役割を果たそう。この海に残された自由を求める戦士は私のもとへ来るといい。まだ見ぬ景色を拝ませてあげる」



北方提督「以上だ」



悪い島風【えー、聞いての通りここはガチ勢です。自由の御旗のもとに我こそが皆のために道を切り開く! という方や、このクソゲーとっとと終わらせたいから全力出すぜ! って方もここ! その先にあるのは苦労に見合った最高峰の栄誉(カタルシス)!】



悪い島風【さて、ラストに准将! 行きましょうか!】



提督「ええ、ではそうですね……」



神風「青山司令補佐」



神風「ここは私にお任せを。あなたがいわんとしていることは私に分かります。しかし、あなたが効果的な口説き文句をいえるとは思いません。なので、この場は第1旗艦の私にお任せを」



提督「……なら、お願いします」



神風「すー……はー……」



神風「(☼ Д ☼) クワッッ!!!」



神風「廃課金の領域に踏み込む覚悟を求めます」



神風「私達は司令官の延長した手足、然るに我欲など不要なり。司令官が殺れといえば殺る。そうでなければもはやその手足は病気です」



神風「際限なく財産(命を含む)を差し出し、海に投げ捨てられる者、仲間を盾にしてまでも勝つ気概のある者はここへ。喜び勇み、深海棲艦の血肉を餓狼のごとく喰らい、精根尽き果てるまで刃を海に突き立てる。その覚悟がある者に限り、海軍の大英雄の指揮下に加わり屍を晒す栄誉をお約束致しましょう」



神風「生きて帰投する度に死ねなかったことを恥と思いなさい」



神風「以上」



提督「」



提督「神風さん」



神風「この程度のこと造作もなく。誉めるには至らないわ」



提督(めっちゃ自慢気な顔だよ……怒れないよ……)



悪い島風【人生終わってもいいかな。最後に自らの血肉を栄養とした一花咲かせてやろう、という心中上等の最上位な廃課金どもにはここが最適。あまりにあれなのでいっておきますが、ここは面白いと思いますよー!】



悪い島風【私のオススメでっす!】



神風「イメージダウンするから止めてもらえない……?」



悪い島風【さすがの私もこいつからいわれたら動揺ですよ……】



提督(この有り様だし、気を回してくれる優しいお姉さん達の獲得はなくもないかな……)



悪い島風【あ、そうそう! 後で面白い情報を公開しときますね!】



悪い島風【とのことで、はい、アピールタイム終わりです! 寝る前に希望を書いて意見箱にぶちこんでおいてくだっさい!】



悪い島風【もちろん希望は必ず通るわけでもないので、第2希望の欄もあります。詳しくはお渡しした資料を読んでくださいね!】



悪い島風【それでは皆さん良い夢を♪】



丙少将「よし、提督勢はちっと執務室で会議だ会議」



【4ワ●:好感度システム☆数値公開】


1 食堂



明石さん「あは、はー……」



明石さん(とりあえず笑っとけー……)



明石さん(艦これに備え付けた好感度システムの数値が公開されたけど、誰がこの結果を予想したでしょうか……故障を疑いたい……)



悪い島風【故障じゃなくて真実でっす! 現実は残酷ですよね、想いを数値にするって不粋にも程がありますよねー!】



明石君「はい、兄さんラブ勢はちょっと俺のところに集合な。区切りとしては金剛さんから上って感じかね」


コツコツ


金剛「……」←8位



榛名「……」←同着8位


コツコツ


わるさめ「……」←7位


コツコツ


秋月「……」←6位


コツコツ


間宮「……」←5位


コツコツ


明石君「4位の初霜さんは不在と」


コツコツ


神風「……」←3位


コツコツ


電「……」←2位















明石君「そ の 程 度 な の?」↑1位





電「俄然納得行くわけがねーのです! この私が司令官さんを愛する心が明石君以下とかバグとしか思えないのです! 明石君なんか司令官さんのために命を捨てる覚悟なんてないくせに!」



明石君「……はあ、これが2位の時点でお察しだな」



明石君「兄さんのために命を捨てて、兄さんが喜ぶとでも思ってんの? 『あくまで目的のために兵士の気構えを求めていた』だけだし、戦争終わってからそんなんして兄さんどう思うんだ?」



明石君「そんなんだから、お前はクソガキなんだよ」



電「……ぐ、」



明石君「死ぬことは簡単なんだ。全てを諦めちまえばいいだけだからな。だから、悲しいことなんだよ。今まで俺はあんたらのことは不干渉だったけどさ、なにも分かってねえ」



明石君「分からねーや」



明石君「兄さんから俺と同じ救いを受けたアッキーがなんでその順位だよ!? あのまま街にいたら俺ら近い未来に野垂れ死んでただろーが! 今周りにある幸せは元を辿れば兄さんのお陰だぞ!? お兄ちゃんはアッキーがそこまで薄情なやつだとは思わなかった!」



秋月「あ、秋月だって秋月なりに最大限の愛をですね……!」



秋月「愛を、ですねえ……!」ウルッ



明石君「……っち、ここは甘やかしてやらねえぞ」



明石君「金剛さんなんか露骨に好き好きオーラ出している代表的なオープン勢のくせに8位とかいう中間ですよ!?」



金剛「私も、ちょっと、し、信じられないデース……!」



金剛「正直、妄想ではすでに老後、共に入るお墓を見に行くところまで進んでいたくらいデス……私より上位はそれ以上ってことデスカ!? 皆さん普段はどんな妄想してるんデース!? 提督と一緒にこの世の終わりを見届ける世界終末エンドくらいまで行ってまセンカ!?」



神風「……ねえ、明石君だっけ? あなたってそっち?」



明石君「うっざ。俺の重巡から上の女好きはそのうち分かる。兄さんに対してはあくまで敬愛だ。だからこそガチでラブってる勢の想いの程度に思うところがあるんだよ刀馬鹿!」



明石君「大体、神風お前なんなの!? いきなり現れて電の下につくとかどれだけ会わない間に好きを蓄積してたの!? 会えないと妄想進んで想いが強くなりまくる妄想系文学少女なの!?」



神風「初対面で呼び捨てとか馴れ馴れしいですね……」



明石君「そんなやつだからな。俺のが歳上だぜ。軍艦の浸水日は知らねーけど」



神風「私のほうが上よ。生意気な小僧ね……私より浸水日的な歳上はこの中では金剛さんくらい」



金剛「誰がおばあちゃん?」



神風「いってませんから。というか私が驚いているわよ……」



神風「この鎮守府の伝説、世界の教科書に載るレベルのことなの。そんな最高なまでに無欠の指揮下に入って海の傷痕を沈めたのに、その青山司令補佐への好感度が私より低い? 私はあなた達の感性を疑うわ……」



明石君「俺は俺が1位ってことに嬉しい以上に腹が立つ。あれだけオープンに愛だのなんだのと、結局は恋に恋する乙女ですか」



明石君「なあ、間宮さん!」



間宮「泣きそう……! 異性であることの好意も含めても明石君より下とかあああ……!」


コツコツ


秋雲「やっぱりさ、男のことは男のほうが理解出来るし、BLってそこんとこの理があると思うんだよね」



明石君「秋雲先輩はちょっとあっち行ってて!」



秋雲「うぃ~っす……」



わるさめ「ということはだ」



わるさめ「少なくとも間宮さんから上は」



わるさめ「Bくらいは行っちゃえるレベル」



わるさめ「……神風、お前さ」



神風「ないないない……」



わるさめ「自分にいい聞かせている風だけど……こいつ物理的には攻めるやつでも恋愛的なもんには奥手か」



わるさめ「でもまあ、はっつんや明石君は敬愛が強いだろーから一概には決めつけられなくて、要は深度のレベルで明石君が一番司令官へ忠誠誓ってるってことだね。そう考えりゃ順位的にはわるさめちゃんも納得だよ」



わるさめ「あれ? でもそれで司令官に肉体関係ばっちこい的な発言してたわるさめちゃんってビッチじゃねーか!?」



電「うちの痴女枠がなにを今更いっているのです……」



響「待ってくれ。私が暁と同着なのはともかく、9位なのが納得行かない」



響「へこむ」



暁「だからこそ言えるけど、これ別に下だからって嫌いって意味ではないわねっ!」



悪い島風【そうですね。闇に関しては普通より好き以上しかいませんし、准将が関係に気を回してくれていたからこその今の形ですね。ま、なんだかんだで中間管理職は向いてる人ですよ】



悪い島風【……他の鎮守府でも割と旗艦や秘書官が思いの外、低かったり】



………………


………………




伊勢「……」←4位



日向「まあ、その、なんだ……」←2位



プリンツ「ご、ごめんなさい」←1位



大和「落ち込まないでください。ええと、私が最下位に近いですし……いや、私に関しては納得している面もあるのですが」



伊勢「大和さんって本当にあれだよね。家だと顔合わせても挨拶せずに通りすぎるだけなリアルな感じの仲だよね」



大和「あ、はい。実家ではそんな感じでした」



…………………


…………………



神通「そんな……」←3位



夕立「イッチバーン!」ッポイ



白露「ガーン……! 夕立に負けた!」



山城「夕立の愛は純粋だけど、その愛に全員負けるとは以外ね。これは私達が不幸なのか乙中将が不幸なのか……」←4位



時雨「いやいや、別に僕も嫌いなわけじゃないしむしろ乙中将のことは好きだから、これって上位が強すぎるだけのパターンだ」



………………


………………




木曾「俺が2位かよ。大将相手じゃ1位かと思ってたわ」



江風「認めねーぞ! なんで江風が4位なンだよ!? こいつが1位っておかしいだろーが!」



漣「漣が1位ですか! いやー! 大将への愛は大きすぎましたね! あなた達はちょっと付き合いが長すぎて愛が更年期的なあれで冷めてしまっているのかと! そこでフレッシュな漣が1位に、ね!」



朧「漣と私が3位なのはどうなんだろ……木曾さんや江風さんには負けると思ってただけに漣の主張に理がある気がしないでもないね……」



北上「うちと大井っちは5位と6位か。そんなもんかなあ。大将はこういうチャラい話題振るとうざがるから、胸に秘めとけよー」



漣「ええ、これネタにしてイチャイチャしたいー……」



…………………


…………………




望月「来てみたらなんだこれ……」



望月「また引きこもりがMVPかよ」←1位



三日月「私が2位で島風さんと天津風さんが3位と5位」



島風「望月はなんか意外だねー。うざがってた感じあるし」



天津風「素行不良が目に余る。さっきも建国とかいってたし、あれが本気としか思えないのがヤバいと思うわ」



望月「うちの司令官、人望ねーなあ……」


コツコツ


神風「あら、望月、来たんだ。1位おめでとう。私はこっちでは4位でした。おっかしーなあ、あの司令官にはかなり感謝してるのに……」



三日月「神風さん……あなたは准将よりもこっちの司令官のほうのトップ3に食い込んで欲しかったです……!」



神風「私は食い込むと思ってたけど……」



望月「神風は着任してから最後まで准将にお熱だったし、仕方ねーわ……」



…………………


…………………



卯月「あ! 望月――――!」



望月「おー、卯月……」



卯月「色々と遠くから情報流してくれたのありがとっぴょん!」



弥生「……卯月が素直にお礼いってる。偉い」



望月「お前ら生きてたんだよな……」



望月「……あー、夢じゃねーか」



長月「だな。心配かけて済まなかった」


フニフニ


望月「ほお、ぴっはるにゃ……」



長月「部屋は睦月型で固めてあるから、アカデミーの時と同じく私達と同部屋だぞ」



菊月「三日月は私と弥生と一緒な」



三日月「あ、はい。部屋割りは聞いてます。アカデミーの時と同じですよね。懐かしいです」



菊月「そーだな。なんか修学旅行みたいな感じで気分が高揚しないでもない。望月、夜は寝ろよ」



望月「嫌じゃ。夜こそ起きてやることあるだろ。テレビとかも夜中のがおもしれーじゃんか」



卯月「一理あるぴょん」



三日月「目に余るならゲーム壊しちゃってもいいので」



望月「やっぱミカはこえーよ……」



【5ワ●:陽炎ちゃん】



提督「ようこそおいでくださいました」



瑞鶴「よ」



加賀「……元気そうですね」



陽炎ちゃん「あー、うん。お互い生きててなによりです」



陽炎ちゃん「あれ陽炎と不知火はいないの?」



提督「ええ、大本営に」



陽炎ちゃん「ああ、初霜と入れ換えで此方の護衛か」



瑞鶴「つーかあんた変わったわねえ。陽炎特有のフレッシュさがないというか」



陽炎ちゃん「……」←手で陽炎の髪型にしてみる。



瑞鶴「あ、面影はある」



陽炎ちゃん「瑞鶴さんが私の立場だったら、瑞鶴特有のフレッシュさがなくなると思うの……」



瑞鶴「街でなにがあったんだ……」



陽炎ちゃん「戦後復興妖精と一悶着あったのよ。私の適性なくなったのあいつのせいだからね……」



瑞鶴「そんなことが……」



加賀「……准将」



提督「把握してますので大丈夫ですよ」



提督「陽炎ちゃんには個室を用意してますので、御願いできますか」



陽炎ちゃん「ちゃんは止めて……まあ、でもなんかもうそれでいいや」



陽炎ちゃん「想パイプのハッキングは経験あるだけだからね。その艦これの攻略ホームページは私がまとめてあげるけど、海域の報告書はなるべく詳細にお願いね」



提督「そのつもりです」



提督「あ、なにか食べます?」



陽炎ちゃん「今日は部屋に荷物卸して酒飲んで寝る」



陽炎ちゃん「とりあえず丙少将と乙中将には挨拶しといたほうがいいか。艦娘時代に色々と世話になったし」



瑞鶴「なんだか大人にはなった感じするわね」



陽炎ちゃん「瑞鶴さんはあんまり変わらないよね。落ち着きが翔鶴さんと加賀さんの半分くらいは欲しいところ」



加賀「無理よ」



瑞鶴「うるへー」



コツコツ



神風「あら、あなたは……」



陽炎ちゃん「その見た目、なんか適性なくなっても頑張ってたとかいう神風だっけ? 前世代陽炎です。今回のゲームのサポーター役として召喚されましたよろしくー」



神風「過去最強の素体の駆逐艦……陽炎艤装にてその栄光を手にしたというのは伝説の1つに違いなく。神風刀が勇んでいます」



神風「私と死合っていただけませんか」



陽炎ちゃん「」



瑞鶴「神風……あんた程ほどにしときなさいよ。確かにこいつの兵士時代はなにやらせても頭おかしいほど強かったけどさ」



加賀「悲しいまでに才能に溢れた子でしたね……」



提督「まあ、陽炎ちゃんも艤装を身に付けられなくもないですが」



陽炎ちゃん「嫌よ……勝つまで挑んできそうだし」



神風「そこをなんとか」



提督「……」←秘書官タップ



神風「んきゃ……!」



神風「ふ、ふふ、な、なんか急に脇腹辺りがくすぐっ……!」



瑞鶴「あ、知らないの? 第1旗艦が秘書官でゲームの画面に置かれるのよ。リアル連動しているから画面の神風を触ると、現実の神風にもその感触が伝わる仕様。あいつの遊び心らしいわ」



提督「(*>ω<*)σ)Д`*)ゞ」



神風「……」ハイライトオフ


カチャ


神風「鐘の音が聞こえるか? ………首を出せい」



提督「すみません調子乗ってました。その刀を首から退けて……」



神風「間宮さんと恋仲でありながら、陽炎との不純異性交遊、青山司令補佐は私が思っていたよりたらしなのは把握しましたが」



神風「サンポゼットウ!」



提督「新撰組じゃないか……」



神風「時代が時代だからと」



神風「誰も彼もが婚前交渉当たり前だと思わないでくれますか……?」



陽炎ちゃん「なるほど、適性無くして面白い感じになっちゃってるのか」



瑞鶴「あーあ……別に間宮さんとお付き合いしてるわけじゃないし、1度きっちりお断りしているからね? そこ教えておかないと酷い評価が流れそうだから一応ね?」



陽炎ちゃん「陽炎とのあれは戦後復興妖精が能力で事故起こしただけじゃん。あの陽炎は人前であんな真似するほど男に積極的じゃないし。暴走した不知火ならやりそうだけど」



神風「……む、私の目が曇っていましたか。ならば、この場は収めます」



提督「どうも……」



神風「が、私の好感度なんてあげても軍公式データの通りです。精々頑張って水着を着る程度ですよ。そのくらい神風が異性間に対して潔白気味なのは提督なら知っていますよね?」



加賀「そもそもなんで准将があなたの好感度あげる前提なのかしら?」



陽炎ちゃん「加賀さん、そこは純情駆逐あるあるで聞かぬが花ですよ。つか、神風さんはなにしに門前まで来たの?」



神風「あ、そうそう。間宮さんには許可もらったんですけど明日の仕込みを任せてもらいまして、と一応報告に」



提督「了解。人数だけに間宮さんだけでは回りませんからね」



陽炎ちゃん「それで私の部屋どこ。長旅で疲れたから瑞鶴さんそこまでおぶってって……」



瑞鶴「なんだかんだで駆逐っぽいわねー……」



【6ワ●:アズライール】


深夜2時


暁「……とふぃれー……」ムクリ


トコトコ


暁(ふぇ、庭に誰かいる……)



暁(苺みるくさんいないのに、誰だろ……みんな寝ているし、ここから声出すと迷惑よね。降りようかな……)



2 中庭小屋



「ありがとう。その血の1滴にさえ、感謝を捧ぎます。その命、余すことなく頂戴させていただきます」



鶏「コケコケケ……」



「生とは罪の積み重ね……あなた達は罪の業から解き放たれ、私が更なる罪を背負い」



暁(あれ? 小屋から鳴き声が……鶏さんが3羽かな……?)



暁(なんで逆さ吊りに)




――――聴くがよい。









晩鐘は汝の名を指し示した。






告死の羽、首を断つか――――








ア ズ ラ イ ー ル








暁「ぴ……」



暁「ピギャアアアアアアアアアアアアア!!!」



2



提督「悲鳴あげてどうしました……?」



暁「ふ、ふええ、司令官、さっき、あ、あの小屋で……」ポロポロ



提督「小屋、誰もいませんが……」



暁「鶏抱えてどこかに……」



提督(……その前に)



提督「失礼、よいしょっと……」



……………


……………



暁「……ふぇ、お風呂とか着替えとか色々ありがとう」



提督「セーフセーフ。服は洗ってみんなのと一緒に干しておきましたよっと、ま、6駆は遠征仕様で寝てますし、自分以外、見ていなかったですから」



暁「……」


ナデナデ


提督「よしよし」



提督(小屋に血の跡とか張った湯があったし、暁さんの証言からして犯人とかもう確定的……)



提督「館内放送は使えないし、まあ、ゲームのシステム利用して呼び出しますか」


タッチタッチタッチタッチタッチタッチタッチタッチ



タタタタタタタ


神風「遠隔タッチは止めろっていって」


キョロキョロ


神風「ドコダアアアア? ……ヤツの気配感知!」



提督「完全にホラーですよこれは」



タタタタタタタ、バタン



神風「一歩音超え二歩無間三歩絶刀……!」



提督「あなたもしかして小屋で鶏を捌きましたか?」



神風「……ん? まあ、明日のご飯の仕込みに」



提督「とう!」



神風「そのような手刀が当たるはずがないです。というか青山司令補佐! そのゲームで私に触らないでっていいましたよね!? 刃物扱ってたんだから危ないじゃないですか!」



提督「暁さんが目撃して大層、怯えてました」



暁「……」プルプル



神風「……………う」



提督「あなた、鎮守府内で帯刀するの禁止です。ということで刀は預かります。神さん、あなたも相当アレな感じに育ってしまったようなので非常識、デリカシーに欠ける言動は諌めていきます」



神風「い、いや、しかしですね、あの鶏は食用で」



提督「百歩譲ってだとしても、ここは養鶏場ではなく、そのような真似をしてそれを皆が目撃したら暁さんのように怖がる子も出てきます。鶏の命を奪うのが鎮守府内である必要はありますか」



神風「も、申し訳ありません……」



提督「よろしい。刀はあなたの素行がマシになれば返してあげます。そもそも疑似ロスト空間以外で持つ必要もなしですし」



暁「というか神風さん怖いのよっ! なんか深海棲艦みたいに常時殺気振り撒いてるし! あなたは神風さんの皮をかぶった野獣みたいでレディーどころか人間だとも思えないし!」



神風「」


コツコツ


北方提督「私の部屋の近場でなにを騒いで……ん?」



三日月「……あれ、准将さんと暁さんに、神風さん?」



北方提督「神風から猛禽類のような血の臭いがする」



提督「よいところに……神さんが生きた鶏を刀で捌いてたんで叱ってたのです」



三日月「」



北方提督「あー……神風、気持ちは分かるけど迂闊だね」



提督「とにかく刀は預かります。次に変なことやったら説教では済ましません。反省してくださいね」



神風「はい……必ずや名誉挽回を……」



北方提督「やれやれ、私の銃ならともかく鎮守府で刀を持ち歩くなんて普通に考えて許されるはずがないだろう」



提督「神さん名誉挽回のチャンスです」



神風「了解しました」



北方提督「ちょ、私のFN ブローニングM1910が奪われてしまった。これ1つしかないんだよ。神風は私より男を取るということか? これだから女の友情なんて……!」



提督「銃なんかもっとアウトです。っと電話をかけねば」


プルプル


提督「明石君ですか? 夜分遅くすみませんが、ちょっとバラして欲しい武器がありまして……ええ、はい。ありがとうございます」



北方提督「」



提督「あなた達、懲りてくださいよ……普通に考えれば危険なものだと分かるでしょうに……」



北方提督「ふて寝させてもらう」



提督「おやすみなさい」



タタタ


神風「青山司令補佐、私は鶏さんのために仕込みに戻りますね」



提督「ええ……行ってらっしゃい」



三日月「……、……」



三日月(と、とても常識のある人な上、あの司令官と神風さん相手に臆すことなくこうも正しく諭してみせるだなんて……)



三日月(やはり人は会ってみなければ分かりませんね……! あの卯月の面倒を見ている司令官なだけはあります……!)



提督「?」



三日月「……」キラキラ



※三日月の評価がググンと上がりました。



3 翌朝



提督「いただきます……」パクパク



神風「……」ジーッ



神風「美味しいですか」



提督「え、ええ」



青葉「いやー! おはようございます! 朝から女の子の手作り料理を食べられるなんて幸せ者ですねえ! 胃袋つかんじゃえば大体の男は落ちると古事記にも書いてあります!」



神風「まあ、美味しいのならいいんです。その一言を聞くために3世代前の遺伝子から鶏を選別し、手法も煮詰めた挙げ句に夜にばっちり生きたヤツを捌いた甲斐があったというもの」



青葉「こんなのもう惚れるしかないです……」



間宮「あれ提督さん、辛いもの食べられたんですね? 前にお出しした時は少し苦手な感じだったような……甘いものが好きだといって皆さんと甘味を召し上がっていたような」



神風「あれ? 私が聞いた時は辛くて柔らかいものが好きと」



間宮・神風「……」



提督「……あっ」



神風「どっちに対してテキトーに答えました?」



提督「は、早とちりですよ。食べ物に好き嫌いはなく、全て美味しく頂けますので、はい、ごちそうさまでした」



青葉「色々と過去のツケが回ってきてますねえ……」



ピンポンパンポーン


ぷらずま《お友達のみなさん起きるのです!》



大淀「えー、皆さまおはようございます。食堂の廊下に組分けが張り出してあるので朝食の後にご覧になって、各教室にてブリーフィングです。その後、提督さん達は皆のシフト調整を組み立てますので各執務室までお越しくださいね」



提督「む」



神風「全く、食事は日常的なことですから、嗜好があったほうが毎日の楽しみが出来ると思うのですが……」



提督「分かるんですけどね……」



間宮「まあ、提督さんがこんな感じなのも分かってはいましたけどね」



提督「うーん、確かに毎日の楽しみに繋がるのでなにか嗜好を探しておきますかね……」



間宮「楽しみといえば組分けどうなるんでしょうね。私は出撃出来ないので炊事当番ですが、あの希望表は確か所属をバラけさせたいから第1希望のところに現所属書くのは禁止されてましたし」



提督「うーん、丙少将と大淀さんで組分けたらしいので知りませんけども、人気どころは恐らく丙少将、乙中将、明石君のところかと思いますが、うちと北方はガチ勢だし……分かんないですね」



神風「来るのは覚悟を決めたものだけで十分です。私は少数精鋭もこれまた趣があると思っていますが、あなたの指揮下に入りたい人は必ず大勢いることでしょう」



提督「まあ、サムライソードに惹かれた空母さんが一人確定で来るとは思いますので……」



【7ワ●:丙・組分け後、初顔合わせ】



丙少将「とりあえず、この場のメンバーでやっていく」



丙少将「秘書官大鳳、白露、時雨、夕立、曙、朧、榛名、比叡、瑞鳳、飛龍、蒼龍、秋月、イク、ゴーヤだな。よろしく!」



大鳳「皆さんよろしくお願いいたします」



一同「よろしくお願いしまーす!」



丙少将「1ついいたい」



丙少将「平和だヨッシャアアアアア!」



丙少将「あ、旗艦は瑞鳳で頼むわ」



瑞鳳「この面子を私が、ですか……?」



丙少将「自信持て。データ的に瑞鳳がこの中で最も旗艦適性が高いから任せる。その次に、比叡榛名かな。大鳳は唯一の装甲空母だし、秘書官の仕事もあるから、今回はこの3人が核としてみんなを支えてやってくれっつーことで」



瑞鳳「まあ、比叡さんと榛名さんもいるなら大丈夫かな。お二人ともよろしくお願いしますね」



比叡「ええ、はい、頑張らせていただきます! こちらこそよろしくお願いしますね!」



榛名「榛名もやれることはやろうと思いますので!」



飛龍「まあ、確かにここは当たりと見る」



蒼龍「ぶっちゃけ全員が常識人枠、癒し枠も多いし」



曙「でも2航戦は出撃前にお酒飲むじゃない」



飛龍「気付けというか、ジンクス的な意味合いで、戦闘に支障は出さないから!」



朧「鉢巻きは巻かないですからね……」



蒼龍「ええ? 気合い入るよ」



時雨「いや、でも本当に良かった。このメンバーなら安心安全に戦えそうだ」



白露「なにより適材適所で働けそうだしね! 防空には秋月ちゃんいるし!」



夕立「っぽい」



秋月「ええ! 飛んでいるものならお任せください! 前に丙少将のスカウトをお断りしてしまいましたので、この機会に、と思いまして!」



丙少将「そりゃ振られた甲斐もあったっつーもんだ」



丙少将「潜水艦の私服って新鮮でこれまたいいねえ。伊19も伊58も可愛いぞ」



伊19「ど、どうもなのね……」



伊58「なんか嫌な予感がするでち……」



丙少将「だが、やはりスク水だよな。というわけで資材のほうも心配なし、だ! クルージングランキング2位と3位だし!」



伊19「まったり詐欺なのね……」



伊58「まー、丙少将には色々とお世話になったから、その恩返しにやってきたでち。なので限界オリョバシクルしても構わないよー」



大鳳(……平和って素敵ね)



【8ワ●:乙・組分け後、初顔合わせ】



乙中将「扶桑、霧島、金剛、伊勢、初霜、卯月、弥生、翔鶴、瑞鶴、伊26、伊401、利根、筑摩、龍驤、漣、潮」



乙中将「よっろしく―――――!」



乙中将「この中で旗艦適性が一番高いのは龍驤さんかな! 」



龍驤「うちかー。とねちくー、進化したうちのお手前、指揮ともどもみせたるでー」



利根「我輩はぶっちゃけそんなに肩の力を入れてやる気はないがなー。龍驤が妙なプライドでヘマせんければそれでいいぞ」



筑摩「うーん、私も戦争終結してやる気はないのですけども、あの海でもう少し戦果を挙げたかった、という名残の気持ちとのジレンマでほどほどの乙中将のところです」



乙中将「とんでもない! 軍でも希少な航巡がうちに二人も来てくれるとは嬉しい誤算としか!」



乙中将「空母は翔鶴さんも来たし! 妹のほうフォローしてあげてね!」



翔鶴「はい。でも、私より瑞鶴のほうが空母としてはもう実力的に上ですよ?」



瑞鶴「その通り。私、最後には翔鶴姉と同レベルには戦えるまでに空母の腕も成長してるからねー」



乙中将「なら助かる! 距離詰めて殴りに行くの禁止ね!」



乙中将「漣ちゃんはあんまりはっちゃけないでね!」



漣「いやー! 漣のノリ的には乙中将がベストだと思いまして!でも7駆一人じゃ寂しいので潮ちゃん連れてきちゃいましたー!」



潮「漣ちゃんあんまり迷惑かけないようにね……私はほどほどでのんびり過ごしたいなあって」



乙中将「漣ちゃんのために来てくれてありがとね! 潮ちゃんというブレーキもいるから大丈夫でしょう!」



乙中将「そして伊401ちゃんと伊26ちゃんもようこそ! わざわざ南の海からよく召集に応じてくれました!」



伊401「んー、私は久しぶりにクルージングしたいかなーって、長いお暇だしね」



伊26「同じくですー!」



乙中将「健康的で元気なお二人! これは備蓄も捗りそうだ! この鎮守府にいる人達は癖の多い人達いるし、特に北方勢とわるさめちゃんには気を付けてね!」



乙中将「そして戦艦勢が手堅い! 四人もいる!」



金剛「イエース! 乙ちゃんのところに舞い戻ってきたヨー! 霧島と扶桑と、この中で素質的には伊勢が最高峰カナ!」



霧島「性能的にも戦艦が上手いバランスですよね。これは任される仕事に集中できそうですね。まあ、金剛お姉様と組めるだけで私は満足ですが、そこそこ頑張ります」



伊勢「そうだねー。高速戦艦二人に扶桑さんと私は低速の航戦だし、使い分けできそうで良いバランスだね」



扶桑「不幸で足を引っ張らないよう頑張りますね……」



金剛「その不幸を吹き飛ばしてくだサーイ! と私が扶桑に柔術教えてあげたじゃないですかー!」



霧島「最もです。このメンバーに恵まれたのが幸運ですよ。扶桑さんも解体されて艤装の呪いから解放されて運気上昇中かと」



扶桑「幸の運気とは無縁かと思いましたが、確かにその通りですね」



タタタタ



初霜「すみません遅れました!」



一同「はっつん、ひっさしぶりー」



初霜「はい、大本営からの任務、陽炎不知火さんに引き継いで帰投しました。苺みるくさんのお墓に線香をあげてから来ました! 事前にラインで提出しておいた希望通りですね!」



初霜「乙中将! みなさん、よろしくお願いします!」



一同「よろしくー」



乙中将「疑似ロスト空間な以上」



乙中将「切り札だよね」



金剛「はっつん、此方との戦いではホントにすごかったデース」



初霜「いえ、皆さんのお力あってこそでしたから」



伊勢「私としては弥生ちゃんが卯月に引っ張られてきたのは分かるけど、卯月がここを希望したのが意外」



乙中将「確かに。しかも第1希望だよね」



卯月「弥生、乙中将といえば」



弥生「鉢巻き?」



伊勢「……まさか」



卯月「乙中将、全員分の鉢巻き用意するよね?」



龍驤「把握した」



瑞鶴「営業か……」



翔鶴「孝行者ですね……」



乙中将「なるほど、構わんさ」



卯月「お安くしておくぴょん! 毎度あり! BRRどうぞよろしく!」



【9ワ●:明石君・組分け後、初顔合わせ】



明石君「いやー……正直、ログイン勢力の俺んとこは艦隊1つ組めれば上等って気持ちだったんだが……」



明石君「ええと、まだ来てない人もいるけど」



明石君「山風、ガングート、リシュリュー、長門、陸奥、武蔵、大和、山城、速吸、明石さん、秋雲、大淀、阿武隈、由良、天城、陽炎ちゃん、黒潮(陽炎ちゃんサポ)、青葉、隼鷹、ポーラ、香取、鹿島、球磨、多摩、陽炎、不知火、北上、大井、秋津洲」



明石君「お姉様方やる気なさすぎじゃないスか!?」



北上「戦争終わったじゃんかよー。定年退職してなぜ働かねばならないのって」



大井「その通りです」



明石君「いや、大先生と大井さんはまあ、なんとなくここに来るかなって分かってたんですわ。大淀さんも、まあ」



大淀「私は主に執務のほうもありますから」



明石君「秋雲先輩も趣味のほうに時間割きたいんだよな?」



秋雲「そんな感じー」



山風「というかアッシー、これだけいるなら私を秘書官から降ろしてよ……このメンバーまとめるなんて、無理だよ……」



明石君「仕方ないなー。あ、大淀さんこの中で秘書官のオススメって誰です? 俺自体、執務とか向いてないんでそれ考慮した人選をお願いします」



大淀「速吸さんですかね」



速吸「速吸が秘書官ですか?」



明石君「おっけ! なんかいい! 学生時代にこんなマネージャーいたらその部活入っちゃうよね! って感じで素晴らしいです! ということで速吸さん、お願いします!」



速吸「ま、秘書官経験はあるので大丈夫です! お任せくださいね!」



明石君「ああ、ジャージって実に素晴らしい……」



明石さん「弟子よ、勘違いしないで欲しいのですが別に秘書官にした子を侍らせられる訳じゃないですからね?」



明石君「違うの!? 提督って秘書官とイチャイチャできるイメージなんだけど!?」



速吸「ふふ、その気なら指名料とボトルサービスしてくれても速吸は一向に構いません」



明石君「もちろん労いはしますよ! 期待しててくださいね!」



隼鷹「それなら私とポーラも秘書官やるぞー」



ポーラ「なにげに秘書官経験ありますからねー」



明石君「ウェルカム! といいたいですが、あなた達、すでに酒飲んでますし、一目で秘書官向きじゃないって分かるんだけどね!」



明石君「そして愛しの鹿島さん!」



鹿島「い、いとしの……?」



明石君「そ、そのお隣の人が香取さんで鹿島さんの」



鹿島「ええ、姉妹艦です」



香取「ふふ、よろしくお願いします」



明石君「練巡最高っスね!?」



香取「刺があるタイプですよ?」



明石君「刺さりに行くレベルの甲斐性はあるんで!」



香取「このような可愛いタイプの提督さんは初めてで楽しそうではありますね。鹿島からも聞いていた通り楽しそうな子です」



鹿島「楽しい……ふふ、そうですね♪」



明石君「後、多摩さん球磨さんはマジでログイン勢な感じでいいんですよね? 多摩さんとか眠そうにごろってるし」



多摩「にゃー……」



球磨「まー、ログイン勢クマー」



球磨「というかツッコミたいクマ」



球磨「大和武蔵長門陸奥山城ガングートとかいう戦艦戦力がログイン勢っておかしいとしか思えないクマ!?」



球磨「最前線でドンパチしてこいクマ!」



武蔵「資材が飛ぶぜ?」



球磨「いや、それはそうだけど……」



大和「うーん、私と武蔵は青ちゃんのところに行こうかなって思ったんですけど、システム的にはここがベストかなって」



明石君「システム?」



長門「む、配られたものも目を通してないのか?」



明石君「すみません……読もうとしたけど途中で寝ちまったんだよなー。速吸さん、早速だけど、俺に説明お願いできますか」



速吸「えっと、このメンバー全員が明石君の指揮で出撃も出来るんですけど、解放された友軍艦隊枠でもあるんですよ。とのことで他の提督さん達に戦力としてお貸しできるんです」



速吸「との理由でここは他よりも人が多く配置されたとのことです。ほら、水上機母艦って秋津洲ちゃん一人ですし、そういうのは共有でってことですね」



明石君「なるほど。でもあれ秋津洲さんって」



秋津洲「工作艦じゃないよ! あくまでお手伝いとしてやっていただけで本職じゃないかも!」



明石君「ああ、そうだったそうだったな。工廠で一緒に仕事してた日々が長くて水上機母艦ってこと忘れてたわ……」



明石君「だから明石の姉さんや補給艦の速吸さんとかの希少艦がここに集まっているわけね、納得」



明石君「長門さんに陸奥さん、それにガングートさんも、要は色々なところに行きたいって理由?」



ガングート「その認識で構わない」



陸奥「ガングートさんは甲さんいればそこに希望してそうよね」



ガングート「ああ。甲大将の指揮下に入ってみたくはあった。准将のところと迷ったんだが、あそこは神風がいる。私はあそこ行くと下手に水差しそうだから自重した」



明石君「意外と気は回せる感じの人なんだ……」



明石君「山城さんがここに来た理由も分かった」



山城「所属鎮守府の第1希望がダメだからね。ここをパイプにして扶桑お姉様のところに送りなさいよってことだからね? 間違ってもあんたの指揮で出撃なんかしたくないわよ……」



明石君「そういわれると燃えるのが俺だ。山城さん出撃の際はよろしく」



山城「絶対ろくなことにならないわ……お互い不幸体質でしょーが……」



明石君「悲しいけどそーですね……」



明石君「阿武隈さんと由良さんは戦艦の人達みたいじゃなくて、北上大先生達みたいにノリ気じゃない感じか?」



阿武隈「ですです。どこかであたし達が入り用な場合は駆けつけますが、基本的にのんびりしたいので」



由良「阿武隈と同じかな。ピエロットマンでの精神的ダメージがまだ残ってるから……」



明石君「了解。天城さんは?」



天城「やる気ないというか、今回は人手が足りていない炊事を。間宮さんをお手伝いしたいかなって思いまして。大淀さん、その旨を書いたのですが、許可していただけたのですか?」



大淀「もちろんです」



明石君「了解です。丙甲演習の後に天城さんが作ってくれた料理美味しかったですし、飯のグレードは大事」



明石君「……で、見慣れねえ人がいるんだけど」



陽炎ちゃん「ああ、お初ー」



大淀「あ、前世代の陽炎さんです。今回は執務的な方面でお力を貸していただく予定です。攻略において、の情報収集役として准将が協力を取り付けてくれました」



黒潮「うちは陽炎ちゃんのサポートなんでよろしゅー」



明石君「ってことは黒潮さんはあの陽炎さんとこの陽炎さんの両方知り合い?」



黒潮「せやな。うちにとって最初の陽炎やなあ。ちょっとトラブルあって海から去った時から連絡ガン無視されとったけど」



陽炎ちゃん「謝って事情話したじゃん。ごめんってば……」



長門「この陽炎、抜錨させないのか? 最後の海でも艤装は2つ用意出来ただろう? 正直こいつが裏方はもったいないと思うが」



ガングート「強いのか?」



長門「ああ、一時期教官をやったことがあるんだがその時の教え子だな。アカデミー生の個人演習で私を中破させたのは後にも先にもこいつだけだぞ」



ガングート「へえ、長門がそういうからには興味が湧くな」



陽炎ちゃん「勘弁してよ……今はもう引きこもりだから」



陽炎ちゃん「素質最強はそっちの阿武隈だから。阿武隈さん脳筋達の相手してあげて」



阿武隈「イヤイヤイヤ! 北方勢と戦うのは嫌です!」



陽炎ちゃん「なにがあったし……」



陸奥「いや、まあ、あんな速度で嗤いながら猪突猛進してきたり潜水してきたりの神風ちゃんと戦ったらトラウマが出来るのも分かるわね」



阿武隈「間近で見た時の神風さん、深海棲艦なんか目じゃないくらいの静かな殺気を剥き出しにしてますからね! 金縛りにあったみたいに動けなくなって……!」



ガングート「ああ……神風は嗤いながら猛スピードで突撃してきて刀で身体を切り落としてくるからな。あれは恐ろしい」



武蔵「お前が怖がるってことは実際に相手したら相当ヤベーんだろうな……」



ガラッ



リシュリュー「Bonjour♪」



リシュリュー「ガングートがいるし、ここが明石君のところでいいのよね?」



ガングート「よう」



リシュリュー「意外よね、あなたと神風は准将のところに行くかと思ってたわ」



明石君「………あなた、は仏の」



明石君「オオオオオオオオオ!」



明石君「ウオオオオアアアア\( 'ω')/アアアアアッッッッ!!!!」



山風「うるさい……」



大淀「明石さん、あまりに目に余るなら、しつけてくださいね……」



明石さん「はい……」



明石君「よろしくお願いします! 甲代理の野郎の明石です!」



リシュリュー「あら、可愛らしい男の子ね」



chu♪



明石君「!!?」



リシュリュー「amiral,こんな感じで割と砕けたリシュリューよ。よ・ろ・し・く・ね?」



大和「わー……文化の違いを感じますー」



明石さん「ちょ、リシュリューさん!」



リシュリュー「あら明石さん、お久しぶりですね。お弟子さんへのただのbiseですけど、問題ありました?」



明石さん「歳上に惚れっぽいんやつなんでその手のコミュは弟子をダメにするんですよ! 」



秋雲「もともとダメじゃん」



明石さん「そうではあるんですけど!」



リシュリュー「Aucun problème(問題ないわ」



明石君「明石の姉さん、大至急翻訳して!」



明石さん「全く問題ないって……」



明石君「……」プルプル



明石君「速吸さん、日本って鎖国してたことあったよな」



速吸「え、あ、はい」



明石君「バッカじゃないのオオオオオオオオオ!?」



山風「馬鹿はお前だよ……」



【10ワ●:北方自由共和国・組分け後、初顔合わせ】



北方提督「わるさめ、日向、江風、神通、木曾、暁、雷、響、赤城、加賀、イヨ、ヒトミ」



北方提督「起立」



北方提督「フリーダムの旗に」



北方提督「敬礼」



伊14(んっふふー……)



伊13(……嫌な予感は、してた……)



伊14・伊13(完全に間違えた)



伊14(ヒトミ、どうしよう……第2希望適当に書いちゃったせいだよね)アイコンタクト



伊13(……うん、もう祈るしか……)アイコンタクト



北方提督「ハハハハハハ! スパスィーバ!」



北方提督「甲の旗艦、木曾! 乙の旗艦、神通! 丙の旗艦、日向! 将の艦隊旗艦が自由の旗の元に募るとはね! さすがは日の丸が誇る歴戦勇者の選別眼といえよう!」



北方提督「さいっこうにハイってやつだ!」



神通「ええと、失礼ながら私は第2希望を適当に選んでしまって」



伊13・伊14「他にもいた……!」



木曾「バッキャロー! 潜水艦の双子に神通、テンションあげろ! そんなんで漁運が恵って来るかよ!」



木曾「北方といえばアルフォンシーノ!」



木曾「アルフォンシーノといえば、なんだ江風!」



江風「木曾さんのマントの大漁旗仕様みりゃ分かるよ……」



木曾「サンマだろーが! 漁なら俺に任せとけ!」



日向「おいおい、我々はサンマ漁のために集まったわけではないぞ」



江風「全くだ。アゲてこーっところは同感だけどな。日向さんはここの戦艦主戦力だ。頼むよ」



日向「任せろ。ところで北方の、持ちかけてきたあの話は本当だろうな?」



北方提督「ああ日向、君は全スロットに瑞雲を積んでくれ」



日向「やはり私の目に狂いはない。あなたは丙さんにはないものを持っている御方のようだ」



江風「」



わるさめ「いい! この好き勝手感、滾る! 実にわるさめちゃん好みの艦隊だ! 闇丙乙甲の提督勢にはないこのノリに合わせるのもまた一興! わるさめちゃん、とりあえず脱ぎます!」



響「……」ウズウズ



暁・雷「響はそっちいっちゃダメ!」



加賀「響さん暁さん雷さんは私と赤城さんで護ります」



赤城「まあ、ノリについていけない方へのお世話係が必要かと思いまして希望したのですが……」



北方提督「暁、響、雷。君達は毎晩私の部屋に来るといい。皆で一緒に寝よう。もふもふと可愛がってあげる」



暁・雷「遠慮するわ!」



北方提督「航空戦は1航戦に任せるとして……戦力的には十二分に戦える。栄光までの道は現実的だ」



わるさめ「おいおい提督さんよ、この程度で満足してるのか?」



北方提督「……なに?」



わるさめ「中枢棲姫勢力はもっともっとイカれていたさあ! レッちゃんネッちゃんスイキちゃんセンキ婆の狂乱のノリは正しく【Rank:SSS】だ! その次元にはまだまだ程遠い! 」



わるさめ「だってここには血が流れない! ツッコミ役のツッコミで誰も内臓ぶちまけないんだもんよお!」



伊14「ヒトミー! この人全裸で怖いこといってる! 噂通りに壊れてるよ! こんなの全然春雨さんじゃないよ……!」



伊13「スタイルは、いいですね……」



わるさめ「春雨ちゃんなんか違法建造してわるさめちゃんになった時点でおなくなりになったのだよ!」



加賀「伊14に伊13、なにナマモノと会話しているんですか。変な病気に感染する前に早くこっちに来なさい」



伊13「イヨ、早く安全地帯に……」



伊14「うん……!」



北方提督「全くゲームなのだから弾ければいいものを」



北方提督「まあ、いい」



北方提督「実は私だが、後二回の変身を残している元響さんだ!」



江風「突飛なうえに意味がわかンない……!」



江風「面白そうだと思ったけど、江風とノリが違う……!」



北方提督「ふふ、江風もいずれ馴染むさ。まずはアルフォンシーノで今晩のおかずも確保がてらに気付けの出撃といこうか。旗艦は木曾に任せるよ」



木曾「請け負った」



木曾「野郎ども! 抜錨だア!」



わるさめ「あー、お待ちください」



木曾「なんだよ、お前にしちゃ珍しく空気読まないストップだな」



北方提督「だがそれもまたフリーダム」



わるさめ「わるさめちゃんさ」



わるさめ「フレデリカに騙されてトランスタイプにされた時から人を見るようにしてきたんだ。悪い島風はどちらかというとチューキちゃん達と似てる。悪役だけどいいやつみたいな」



赤城・日向・神通「……」



わるさめ「だけど元ヴェールヌイさん」



わるさめ「この面子の意味、分かるよねー?」



北方提督「分かるさ。この性格、経歴からして私は信用されないだろうし、丙少将も乙中将も准将も平和ボケするほどあの海でなにも学んでいない間抜けではないだろうし」



北方提督「真面目にいえばそんなこと思われて将の各艦隊の旗艦や1航戦がここに配属されたとはなんとなく察している」



わるさめ「ふむふむ、ただの面白自由人ってわけではないのか。ならばよろしい! 秘書艦の役目にも指揮にも従ってやろう!」



北方提督「君こそなかなか人を見る目があるようで驚いたよ。ま、今は疑問も置いておけばいいさ。性格は嘘でもない。私はこういうやつなのさ」



わるさめ「りょかい! みんなノリを妨害してごめんね♪」



木曾「……ま、なんかあったその時はそん時だ」



木曾「今は楽しくいこーぜ!」



【11ワ●:闇・組分け後、初顔合わせ】



神風「あそこの1-A教室ですよね」



提督「はい」



神風「教室が静かなんですが。丙少将、戦力を均等に分けなかったんですか……?」



提督「まさか……教室に置いてあるメンバー表を確認すれば分かりますね。まだ予定の時間まで少しありますから、そろってないだけかもしれません」



ガラッ



神風「選ばれし戦士の皆さまおはようござ、」



ろー「おはよー!」



神風「ろーちゃん! あなたは来てくれると信じていました……!」



電「……司令官さん」



提督「ええ……ですがまだ集合時間より早いので希望はあると思います」



サラトガ「神風さん准将さん、グッモーニンです! サラはサムライソードのお側に………!」キラキラ



提督「ぐっもーにん」



提督「サ ラ さ ん は 知 っ て た」



神風「サラトガさんと電さんね。よろしくお願いします」ペコリ



神風「でも、4人……まさか、ね」



提督「学級閉鎖かな?」



ろー「んー、その紙に書いてある、ですって!」



提督「ん、この紙切れですか」



《神風、電、サラトガ、グラーフ、ろー、長月、菊月、三日月、望月、雪風、島風、天津風、ビスマルク、プリンツ》



提督「……、……」



ガラ



長月「司令官すまん、遅れた! 主に望月のせいでな!」



望月「ええ、あたしのことはほっとけって……」



菊月「新編成初日くらいしっかりしろ!」



三日月「その通りです。夜中に無理やり寝させたのに、12時間も寝ないと無理ってなにをいってるんですか……」



神風「睦月型……望月、ここに来るだなんてあなたやっぱりやる気あるんじゃない!」



提督「これは北方のエースが来ましたか」



望月「あたしはやる気ねーぞ、明石君のところ希望したのに通らなかったんだよ……」



望月「それに最後のMVPはたまたまだよ。だりーからあたしに期待すんな……」



提督「いや、望月さんは遠征のエースなので。遠征すると自動で眠りにつくんです。12時間といわず、毎日20時間くらい寝させてあげますから」



三日月「そうなんですか。望月、良かったですね!」



望月「」



プリンツ・グラーフ「Guten Morgen」



グラーフ「希望が通ったようだ。准将、よろしく頼む」



提督「お二人ともよくおいでくださいました」



プリンツ「ビスマルク姉様も来るとのことなので!」



提督「なるほどー……」



神風「グラーフさん、相性検査1位でしたよね……?」



グラーフ「みたいだな。安心しろ。お前がよほど間抜けではない限り、秘書官をやろうなどととは思わない」



神風「む」



プリンツ「ろー!」



ろー「久しぶりだね! 一緒にがんばろー、ね!」


キャッキャ


グラーフ「准将、ビスマルクは今、部屋に荷物を置いている。寝坊していた雪風と一緒に直に来るはずだ」



提督「了解……っと、来ましたね」



雪風「准将さん! おはようございます!」



提督「おはようございます。ビスマルクさんは初めまして、ですね」



ビスマルク「ええ、おはよう。帰国していたから遅くなったわ」



ビスマルク「……」



神風「なんです?」



ビスマルク「あなた、なんか楽しそうだなって思ったけれど、それもそうか。念願の准将の旗艦だものね」



神風「まだ形だけですけれど」



電「たりめーなのです。私はお前に旗艦適性あるとは思ってないのです。下手なことしたら即交代でそこは妥協しないのですよ。神風さんもお情けの旗艦ポジションなんて嫌でしょう?」



神風「分かってるわ……やってみせるから……!」



神風「命に代えても……!」



電「私が認めているのはそこと速さくらいなのです」



電「さてお集まりの皆さんに電から一言あるのです。皆さん、悪い島風さんこと戦後復興妖精についての資料は読みましたよね」



電「電の司令官を選んだことは正しく英断といえましょう」



電「……おそらくこの人、悪い島風さんのことは全部読んでいるので、このゲームを一番有利に進められます。丙少将にも話していないことがあるはずです」



電「例えば確定的な情報じゃないから、とかいう言い訳で隠しているはずなのです」



提督「……そうですね。メモリーは後で皆にも開示致しますし、悪い島風さんは【殲滅:メンテナンス】という目的も大体、メモリー1を見た時から予想はしていました」



提督「なので皆さんにはまず自分の見解を伝えて、その目的に沿って動いてもらいたく、それがきっとこのゲームのクリアにも繋がりますから……」



提督「……悪い島風さんのことも大体、見当がついたので詳しいお話をしたいと思います」



………………


………………


………………



提督「お手元の資料にあることですが、黒板に注目です」



・悪い島風ちゃん(戦後復興妖精)装備項目


【Srot1:ハピネスガン&カタストロフガンver自律式】


・別名 悪い連装砲君

戦後復興妖精の力と想でリンクしているため、Srot4を除いたSrot1~5の機能を独自に所有している。使用自体は戦後復興妖精認可がいる模様。

・金剛さん青葉さん秋津洲さんの証言により、『なにかの想が入っている』と思われる。その想は『女性口調』だったとのこと。



【Srot2:ご都合主義☆偶然力】


・想による強制運命力権の行使。あくまで起こり得ることしか起こせず、その範囲は定かではないが、例がある。

・『長月&菊月さんの証言からタクシーを目前まで導く』、『陽炎さんとの一件で出現させた鋼材で足をつまずかせる』等々のことが確認出来ている。



【Srot3:welcome to my home】


・疑似ロスト空間へと意思疎通なしに人間を飛ばす深海妖精のようなパスポート譲渡機能。本来の妖精の力を自身の力で扱えるための能力だと思われる。



【Srot4:生死の苦海式契約履行装置】


・本来の戦後復興妖精の核機能。

・海の傷痕当局が製作した装備。

・これが最も想力を制限なしに扱えるが、

『戦後復興に役立つ範囲でないと契約できない』とし、

『現在は戦後復興の見解において、なぜか艦の兵士を幸福する』という基準に設定されている。

そして製作秘話ノートから『直接的に人間に危害を加えることは禁止されている』とのこと。

・また『本来はその設定に言動を準拠させるため、当局と想でリンクし、契約の合否が判断されていたが、今回はその制限がない』と思われる。

・そして『この装備そのものに施されているロックで自身が願いを書き込み、契約をすることは出来ない』。悪い島風さんいわく、これを【殲滅:メンテナンス】し、自身の願いを書き込みたいとのこと。



【Srot5:想力工作補助施設】


・小手先の技は全てコレが原因。疑似ロスト空間形成と維持、想力の変換を担当し、想力を加工して応用する際の技術担当。

・想の生産は能力上不可能なため、我々とリンクすることで得ている想で存在と疑似ロスト空間を保っている状態。ここらの事情が『我々に好意的かつ親切である理由』だと思われる。

・この力によって艤装を作れるのは戦後復興妖精自体が仕官妖精と同じく特別な妖精であり、全ての妖精の機能を保持させてあるためと思われる。



提督「現段階では以上です」



グラーフ「む、さすがだ。なんだか今回は准将も遊んでいるだけのように見えたがしっかりしているではないか」



提督「……悪い島風さんの目的からして遊び、どちらかといえば協力するつもりだったんですが、北方提督……元ヴェールヌイさんが想の力を私利私欲で入手しようとしているので、本気に成らざるを得なかったのです」



提督「……神さん、あの提督、建国だのなんだのとどこまで本気なのか分かりますか?」



神風「少なくともあの場で語ったことは本気だと思います」



ビスマルク「建国ねえ。そういったのなら確かに本気なのかもね」



望月「そう思わせるだけの人ではあるよな……」



提督「……ここからは自分の見当になります」



提督「皆さん、これはなるべく胸に秘めておいて欲しいのですが、よろしいでしょうか?」



電「大丈夫なのです? それなら話しておく必要がなければ話さないほうがいいと思うのです」



提督「……まあ、その時はその時で構いませんので」



神風「皆、いい?」



一同「……」コクリ



提督「結論からいいますと」



提督「あの元ヴェールヌイですが」



提督「……自分より早く海の傷痕の存在を察していたか」



提督「または海の傷痕:当局と繋がっていたか」



提督「過去に戦後復興妖精と接触している可能性が高い」



電・神風「!?」



グラーフ「……それ、危険な案件なのでは」



ビスマルク「……まあまあグラーフ、根拠を聞いてからね。あるんでしょ? 見当っていうのはある程度の予測に基づくものよ」



望月「乙中将はその予測を嗅ぎ付けるから、この人と乙中将って組ませるとヤバいのよねっていう話はしたことあるな……」



提督「……あの人の経歴は不審すぎる点がいくつもあります」



提督「あれ、と思ったのですが」



提督「あの人、資料では『ヴェールヌイの適性が30から85%まであがった』という資料があることです」



電「……?」



電「それのどこがおかしいのです? 響お姉ちゃんがヴェールヌイになった時、それどころではない『170%』とかいう驚異的な数字を叩き出したはずなのです」



提督「此方さんいわく『適性後のほうが適性の高い響はあの子が初めて』だと。それらの担当は此方さんだったので信じてよいかと。つまり、認知してないんですよね」



電「……!」



グラーフ「待ってくれ。そもそもヴェールヌイは海の傷痕が探知できない真白だからこそ、経過程想砲が通用しないと」



グラーフ「……、……」



グラーフ「済まない。自己解決した。適性率があがった、ということ自体が稀有だ。そしてその情報は秘匿される類のものではないからその他の艦の兵士にもその情報は伝わるな。資料が残っているなら、尚更だ。海の傷痕の探知可能範囲内ではあるか」



提督「ええ、此方さんのほうは想の解釈はかなり得意な人でして、此方さん自体もあり得ないというほどです」



提督「此方さんが担当していたはずの分野の驚異的なことを知らない。つまり当局か戦後復興妖精が関わっていたとしか思えず。機能を記した通り、戦後復興妖精の仕業でも当局には伝わる仕様ですから、少なくとも此方さんは知らなくても当局は知っていた、または戦後復興妖精が当局の探知を逃れてなにかをしたというのが自分の読みです」



グラーフ「……、……」



神風「ごめんなさい。この機会だから聞きたいんですけど、私が出会った離島棲姫は知ってますか? 疑似ロスト空間で私の記憶が流れたんですよね?」



提督「ああ、あなたが出会ったとかいう離島棲姫ですが」



神風「艦爆を地雷として応用するとか驚きましたよ……」



望月「あー、あいつか……」



提督「思考機能付与能力を与えられた深海棲艦です」



電「まさか、中枢棲姫勢力にもう一人いたということなのです……?」



提督「違いますよ。これは此方さんが知ってまして、当局の仕業みたいですね。妖精工作施設の調整のためにロスト空間で製作した深海棲艦に逃げられたとか。経過程想砲を喰らわしたみたいですが、バグゆえに探知に手こずったそうです。まあ、現海界時点で落ちたポイントの大体は把握していたそうですが」



提督「そこにたまたま神風さん達が来たそうなので、丸投げしたとのこと。定められた仕事以外はほんっと適当な人ですよ」



神風「……なるほど、思考能力付与機能ね。海の傷痕の仕業ならあそこにポツンといたのも勝手に大破していたのも納得ね」



提督「そこまでなんですよ」



提督「ここらが疑問なんです。それを鹵獲されたらどうなるか。少なくとも海の傷痕に辿り着く情報となり得ますから、海の傷痕が確信なく艦の兵士に委ねる案件だと思いません」



提督「その明らかに違和感を覚える深海棲艦を」



提督「殺せ、と命令したのは?」



神風「……司令官ね。私も殺せ、と指示をすぐに出されたわ。トドメを指したのは望月ね」



望月「司令官から命令されたからなあ」



三日月「ちょっと待ってください。あの状況で抹殺命令なんて当たり前です。放置しておくのはもちろん、あそこは完全に人里に深海棲艦艦載機が届く範囲内でしたから、鹵獲なんて指示を出すのがおかしいです。あの頃はまだ想力関連の情報なんて公開されていませんし、市民の命を優先して然りです」



三日月「それにお言葉ですが、司令官をそういわれるのは少しだけ不愉快です」



ビスマルク「子供ねえ……」



提督「いえいえ、自分は怪しいと思っているだけで、怪しくないと思う根拠がなかっただけです」



提督「すみません、北方の皆さんには謝罪します」



提督「あなた達がそう思うのならきっとあの人は良い人なのでしょう。そう認識できる根拠になり得ますが」



提督「自分はあのヴェールヌイを信頼していないということだけは把握しておいてください。北方の皆さんと齟齬が起きるところなので」



三日月「了解です。こちらこそ、す、すみません。今はこのゲームに関する作戦会議なので准将に謝ってもらうこともないです」



電「三日月さん、この司令官さんのこういうとこはろ慣れるしかないです」



神風「全くね。こういうところは変わってないですね」



電「そういうのほんっとうざいのです。昔の女気取り」



神風「心外ですね! 本当に司令補佐は昔から作戦会議ではこんな感じだったんです!」



提督「あのー、自分や他の皆さんからしたらそういうやり取りのほうがあれなので自重してくださいね?」



電「……ごめんなさい、なのです」



神風「でもこの感じは普通のことじゃないかしら。むしろ北方のほうが異常だったのよ……」



提督「そこで北方勢の方に任務です。あの方の資料をお渡しするので、お配りした資料になにか疑問点があったり、元ヴェールヌイさんの言動に不審点があればご報告ください」



三日月・望月「………」



提督「本当に北国に新しい国が出来るのは困りますよね。あの人はあの人でこの海で思い残しがあるというのならば、ちょっとくらいの利用方法なら自分を目を瞑ろうと思いましたが」



提督「どうもあなた達の意見を総括するとガチでアレな方なので」



提督「嫌なら今からでも異動希望をどうぞ。通るかは分かりませんが打診はしてもらえるかと」



三日月「なんというか、妥協と甘さがないですね……」



望月「長月&菊月、この人こんな感じが普通なのか?」



菊月「私も長月も最後の海では途中参加でこれといった指示をもらって戦っていない。だから今回が初めてのようなものだ」



長月「普段はもうちょっと柔らかいと思うが、作戦自体にシビアなのは聞いてるし、丁将席にいる時点で分かるだろ」



ビスマルク「……」



神風「ビスマルクさんはどうです?」



ビスマルク「良いと思うわよ。私はもともとこういう規律的なアトミラールとは相性良いし、聞いている限りは目的のために身内を率先して疑うのも必要と判断しただけでしょう。まあ、機械的だって評価も納得したけどね」



グラーフ「ビスマルクお前、dreiになってIQあがったのか。てっきり旗艦を栄光のドイツ戦艦である私がー、などと騒ぎを起こすと思っていたことを謝罪する」



ビスマルク「失礼ね……」



ろー・雪風・島風・プリンツ「zz……」



神風「無邪気勢が長々とした理屈の話で眠ってしまったわね……」



提督「いえいえ、構いませんよ。その人達にはその人達の役割がありますので、そこさえがんばって頂ければ自由に。という北方の風潮に合わせると致しましょう」



三日月「そういえば天津風さん、ずっと黙りこんでいますが……どうかしたのですか?」



天津風「神風さんのスカウトアピールは司令官の表情からして意に沿ってないと思ったのだけど、難易度的にいえば『丁』ではなく、真剣な艦隊の認識でいいのかしら?」



提督「先の神風さんのあれはいい過ぎですが、まあ、ガチですね。難易度的にいえば北方提督さんのところより一つ上の『史』です。気概的にいえば、ですが」



天津風「目的はゲームクリア、つまり、イベント海域のラスダンであの偽島風の撃沈することでいいのよね?」



提督「はい」



提督「サラトガさん、やっと真面目な感じになってくれましたね」



サラトガ「No problem」



サラトガ「確かに真面目にやる人達が必要ですね、と思うと、少しだけ真面目な気分になりました」



電「頼もしいのです。記録的には今世代の最強空母ですからね」



神風「もっと大人っぽいイメージあったんだけどなあ。なんかこのサラトガさんイメージより子供っぽいというか」



長月「そんなことはない。とても母性的な人だぞ」



菊月「ああ、抱き締められた時は母のような安心感があった」



サラトガ「ふふ、街の子達と仲直り出来て良かったですね」



提督「あの件でそのようなことが起きてましたか……」



提督「こほん」



提督「皆さん、悪い島風さんがあんな感じなので誤認しがちですが、とりあえず、メモリー1は皆さん視聴したかと思います」



提督「普段の言動からして、わるさめさんのようなふざけた奴という認識もあると思います」



長月・菊月「全くだ」



提督「それ撃沈に繋がるので、この場で釘を指しておきますね」



提督「今からいうことは嘘偽りのない事実です」



提督「悪い島風さんは人間を知り尽くしている」



提督「初代島風さんと同化することで人間に対する情を覚えたために」



提督「最初期の地獄をこちら側の軍人として奮戦し、いくつもの死から最初期の兵士を救った」



提督「この海の歴史『艦隊これくしょん』の顔といえる存在」



提督「海では高速修復材、高速建造材、開発資材を対深海棲艦海軍にもたらし」



提督「陸では戦後復興の創世力により、世界の生活水準向上に貢献し」



提督「数々の功績を人知れず残してきた」



提督「艦の兵士歴150年の大英雄です」



神風・電「……!」



提督「本官さんは第二次世界大戦の軍人でしたが、あの人と同格とされている妖精なだけあって相応の偉人です」



提督「その莫大な経験的に練度や素質も最上位だとお考えください。その上、提督の戦略、艦の兵士の戦術的なことも熟知しているはずです」



提督「加えてあの装備、今はまだふざけたことにしか使ってませんが戦闘用にフルで機能させたのなら、海の傷痕の装備はもちろん、それ+アルファで未知の兵器が作れます。戦闘する際は想力工作補助施設が一番に潰しておきたい装備ですね」



提督「あの頃は想力が未知の塊だったことも踏まえて、人間を改装することで第2の海の傷痕誕生を阻止しようとした海の傷痕:当局ほどの危険度ではないものの」



提督「単純な戦闘力では」



提督「海の傷痕:当局を凌ぐとご認識ください」






長月・菊月「燃えてきた……!」



神風「今まで神風艤装にしがみついていた甲斐があったというもの」



神風「首を凪ぎ払って司令補佐にプレゼントしますね♪」ニタニタ



電「……」



提督(……島風さんは寝ているので後で話しますか)



提督「神風さん、あなたを運用するに当たっては策も色気もあまり出せないです。『刀で撃沈できる相手を狙う』というわっかりやすい弱点が筒抜けになってしまうので」



提督「それを踏まえてなお予想を越える一手が必要になってきます。その戦闘スタイル、もっと研ぎ澄まします。これが恐らく勝敗に関わってくる部分だと思っていますので」



神風「!」



ビスマルク「待って。神風ってまだ強くなれる余地があるの?」



提督「はい。感覚で凌いできたようですが、その感覚ですら今は理屈ですよ。彼女がそれを知らなかっただけです。幸いにも想力というにおいてこの海の戦争での分野は把握しておりますので」



提督「疑似ロスト空間内においては」



提督「訓練次第でもっと速くなれます」



神風「最強の兵士になれるってことですか……!」



提督「ロスト空間内で本気になった初霜さんと張り合える素質はありますよ。ただ想いですのであなたの心次第です。覚悟とかそういうのではなく、『あなたがここまで強くなった理由』の部分を入れ換えて、もっと伸ばします」



提督「さて神風さん、自分との約束のためだったのは分かっています。が、その望みは現状で多方面からの圧力もあり叶っています。その理由なくして、今までの向上心は維持できそうですか?」



三日月「むしろ叶っている現状だからこそ頑張れるのではありませんか?」



提督「ブースト的なものかと」



提督「叶わなかったからこそ、あそこまで頑張ることができたと思いますので、自分はこの形で神さんと再会出来て良かったとも思ったのです」



三日月「……なるほど」



神風「……、……」



神風「…………、…………」



電「なさそうなので成長は頭打ちなのです」



提督「『悪い島風さんの首を斬ってください』」



提督「それが自分があなたに」



提督「兵士として求めるものです」



神風「……」



神風「御意」



神風「あの日が、再び相成りましたね」



神風「今度は私が」



神風「お約束します」



グラーフ「いい顔だ。やはり准将はこの手の問題児の扱いはこなれているか」



提督「わるさめさんは本当に気分で生きているので相当ガチな状況じゃないとアレですけどね……」



提督「さてぷらずまさんは神風さんの補助をお願いします。ともにろーちゃんをつけると思いますが、鹿島さんの指導もあって全ての技術は電艤装でも並みより上、基本的に神風さんの護衛艦についてください」



電「了解なのです。クレームは容赦なくつけますし、我慢の限界もありますが、司令官さんの指示には従うのです」



提督「長月さんと菊月さんも基本的に護衛の役割です」



長月・菊月「了解」



提督「この艦隊は神風さんを特攻させるための部隊のようなものです。なので軸の神風さんが旗艦であり、その旗艦能力の訓練も行いますが、どうしても懐に飛び込む特攻仕様のため、別の指示系統が艦隊にもう一つ必要です」



提督「6名で動くのではなく、3:3、4:2で動くというイメージで構いません。幸いながら空母のサラトガさんとグラーフさんなら自身の露払いはある程度なら支障なくこなせますから」



提督「その別の指示系統ですが、その役割は……」



提督「天津風さん、よろしくお願いします」



天津風「わ、私!?」



提督「ビスマルクさんとグラーフさんは主戦力なので指示系統のほうに余計な気を使わせたくありませんし、今までの問答であなたが一番適任と判断しました。必ず出来ます」



天津風「そ、そう。私、ぱっとしない戦果しか挙げてないけれど、あなた程の人がいうのならば自分の能力を信じてみる価値はありそうね」



三日月「初霜さんもあそこまで育て上げた方ですし、信頼して大丈夫だと思います!」



望月「……」



提督「望月さんもやる気になったらいってもらえれば、活躍の場を与えてあげられますからいつでもどうぞ」



望月「あたしゃまったり勢遠征要員でよろしく……」



提督「了解。そちらも重要ですからね」



提督「ま、ゲーム仕様的に自分がやれるのは『準備』と『陣形選択』と『進撃または撤退』程度で、現場の動きが重要です。作戦自体もある程度は現場でなんとかしてもらう必要が出てくるかもしれません。各自、今までの戦いとは違い、提督の存在を頼らず、抜錨したら艦隊のお仲間を当てにしてくださいね」



提督「ここらは実際にやってみたほうがいいですかね」



提督「神風さん、電さん、天津風さん、サラトガさん、ビスマルクさん、三日月さん」



提督「とりあえずこのメンバーで一度、抜錨しますか」



【12ワ●:『艦隊これくしょん ver android』の海域へ】


1 悪い島風ちゃん 運営施設



北方提督「やあ、君達も来たんだね」


ポンポン


北方提督「隣に座るといい」



提督「ええ、ですが、なにここ……」



電「ゲーセン跡地が改装されているのです」



悪い島風【Welcome♪ 見ての通り、想力工作補助施設で製作した次々々世代くらいの未来機能でっす♪】



悪い島風【今まではβ版だったからね、わるさめちゃんプレゼンツの時間で製作したnew-versionをご説明しましょう!】



悪い島風【そのアーケードの筐体、ああ、元ヴェールヌイさんの隣が闇の席ですからね。その筐体にあるスマホケースにお手持ちのスマホをセットしてください】



提督「はい……おお、勝手に起動して艦これが起動して」



提督「筐体の画面に反映された」



悪い島風【うす。もうスマホは取っても大丈夫ですが、その端子は充電機能もあります。充電なんか無線で出来ますが、想力の節約ってことで電池が切れそうな時は充電してくださいね】



提督「……筐体からなにか出てきましたが」



悪い島風【編成されている艦の兵士のカードです。スマホから編成メンバーの情報を抽出してカードにしてあります。これは私のWelcome to my homeのようなパスとお考えを】



悪い島風【神風、電、サラトガ、グラーフ、ろー、長月、菊月、三日月、望月、雪風、島風、天津風、ビスマルク、プリンツのカードが出てきましたね?】



提督「ええ、間違いありません」



提督「神さんのカードだけキラキラしてますが」



悪い島風【戦意高揚状態です。その状態だと想力で少し能力にブーストかかる仕様にしてあります!】



悪い島風【その中から出撃させる6名のカードを読み取り口に入れてください。全員でも構いませんが、海域に出撃出来るのは6名、そして連合艦隊を組める海域では12名、+支援艦隊となりますね。ああ、読み取らせたカードの人は疑似ロスト空間に飛びますので無闇に飛ばす意味はなっしんでっす!】



提督「……了解」



悪い島風【ゲームといえど練度数値は最後の海域データであり、特別な仕様の艦の兵士もあります。例えば最終世代の響改二とか、神風とかね。あ、資材は各3000ずつに今までの報酬を上乗せした分となっています】



悪い島風【じゃ実際にやってみてください】



提督「質問しても?」



悪い島風【なに?】



提督「あなたの性格からして安全安心設計とは思えません。このゲームにおいてのロスト仕様は存在しますか。するのなら、ロストしたら死亡なのかという点と」



提督「この舵は……」



悪い島風【画面で艦隊の位置を俯瞰できるのでその舵を操作すれば海域のルート指定が艦隊に伝わります。あ、Android仕様そのままで羅針盤回すしかない海域もありますねー。艦隊航行中はそこらのボタン偵察機とか魚雷を飛ばせーとかも指示可能です】



悪い島風【ロストですが】



悪い島風【あるよ♪】



悪い島風【条件は教えてあげませんが】ニヤニヤ



悪い島風【ああ、そうだ】



悪い島風【これはゲームですが、あなた達のためのゲームなので、海域解放については『丙乙明石君北方闇の誰かが突破さえすれば誰でも次の海域に出撃可能』です】



悪い島風【そしてイベント海域には『戦争終結から残っていた残滓を回収して、特別な報酬』を用意してあります。まあ、なにがもらえるかはクリアしてからのお楽しみ♪】



悪い島風【その他の機能も色々と弄ってね♪】



提督「そこの両替機は……」



悪い島風【攻略に手こずるようなら、お気持ち次第でお助けをね?】



提督「了解……」



提督「ではかなりの人数で協力して攻略できますね」



北方提督「准将、2-4に来てくれ。アルフォンシーノまで行きたいんだけど、そこの突破が難しくてね。協力プレイといこう」



北方提督「闇の戦力があれば行けるさ」



提督「初出撃の手探りですし、うちはあなたのところのように血気盛んではないので安全策を取りますからね……」



提督「さて皆さん、よろしいですね?」



一同「はい!」



…………………


…………………


…………………



提督「……っと装備はこれでいいか。あんまりないから、後で開発しとかないと」



提督「マップ、この仕様は」



提督「スマホ版と同じく羅針盤方式ですか」



グラーフ「……准将、運はあるのか? こういう場面で雪風やプリンツをこちら側で使うのも策だと思うが」



提督「確かに。でもあの二人の運頼みに関しては別の運用を考えてますので、とりあえず……よし、ポチっとな」






三日月「艤装も久々って感じがしますね」



天津風「海も穏やか、ではないわね。うじゃうじゃ反応がある。でも、こいつら動かないわね。こっちの固定された進路に待機している感じ」



ビスマルク「ま、私がいるから大丈夫よ」



電「自信があるのはいいですが、根拠が根拠になっていないのです……」



ビスマルク「言葉が足りなかったわね。北方自由共和国の連中がある程度食い散らかした跡があるから、私の火力があればあなた達の紙装甲が足を引っ張らない限りボスマスまで行けるってこと」



サラトガ「うーん、偵察機を飛ばしてみましたが、ルート固定が機械的ですね。視界的に見えない壁があるかのように、進路が制限されています。羅針盤に従う他ありませんね」



神風「勅命が出たわ」



神風「すー……はー……」



神風「往きましょう」



……………


……………



三日月「あっ、身体が勝手に動いて……!」



電「……陣形選択で司令官さんが単横陣を選択したのです。なぜ火力重視の単縦ではなく、潜水警戒陣なのかは……ああ、これは司令官の心を汲み取る必要がありますね」



天津風「単縦だと旗艦の神風さんが最前列になるからじゃないのかしら?」



サラトガ「……なるほど、ある程度神風さんの補助をしなけらばならないので最前線に位置取りをさせて、かつどの位置からでも飛び出せる単横を取らせたというわけですね」



電「……複縦陣ではない以上、対空は私と天津風さんと三日月さんの駆逐勢の実力を期待されていますね。装備的には私と三日月さん、でしょう。それとサラトガさん、早く制空権をお願いします。向こうはもう始めているのです」



ビスマルク「あなたが仕事果たせば、後は私が戦艦を弾着で沈めてあげるわよ。あんなのル級の1発が怖い程度のありふれた水上打撃部隊じゃない」



サラトガ「それでは、発艦です」



電(しかし、こうも司令官さんの出番が少ないのですね……通信できない以上、司令官さんの意思を汲み取り、迅速な対処と現場の判断が求められますが、急造の艦隊ではむずかしいと思うのです……)



電(……木曾とかならこういう状況の舵取り上手そうですね。加えて未知の海であることを踏まえると、やはり甲の連中が得意とする性質の海なのです)



電(今回は感じをつかんで戻ったら演習でそこらを補完してから再度抜錨するべきだと司令官に進言しますか……)



電「天津風さん、指示はお願いするのです」



天津風「電さんは神風さんの護衛でビスマルクさんは昼戦の駆逐の火力で貫けない戦艦狙いで、サラトガさんは空母の相手をしながら神風さんと電さんも見てあげてください。今後の戦術面で大きく影響するからリアルでの海の深海棲艦と習性が差異するかの確認もしておくべきよね。私と三日月ちゃんで陽動しましょうか」



天津風「神風さんの神風タイミングはあなたの感覚に任せるから、敵艦隊の旗艦を狙うことね。以上!」



電(……ふむふむ、なかなか合理的な判断を素早く出せますね。特に焦っている風でもないですし、神風と折り合いの悪い私がやるよりも天津風さんのほうが適任……かな)



神風「感覚が告げました……ここね! 私、出陣するわ!」



電「判断もですが、色々と速すぎなのです!? 神風お前、護衛艦の私が追い付けない速度を始めから出すんじゃねーのです!」



………………


………………


………………



《旗艦 大破》



《旗艦 神風が大破しました。進撃は困難です……迅速に帰投します》



提督「」



グラーフ「……神風と電が旗艦に向かって突撃して、電が敵旗艦のル級eliteにダメージを10与えて、神風がターンして電に引きずられるように自陣に戻り……」



提督「それを振り払った神風さんが再度突撃して、電さんが神風さんに砲撃ぶちこんで大破させましたね」



グラーフ「仲 間 割 れ」



北方提督「ハラショー。実に自由な艦隊だ」



提督「やかましいです……」



提督「とりあえず神風さん入渠させてこっちに戻しますか……」






神風「なんで邪魔したのよ! 切り刻まれたいのオ!?」



電「機転なのです! お前ル級に完全に弾着でロックオンされてたから、電がル級に撃ってあげて助けてあげたんじゃないですか! 」



神風「必要ありません。あんなの避けられます!」



電「じゃあ! 仕留めたその後は!?」



電「あのタイミングで至近距離に突撃なんかするから敵艦隊全員がお前狙いに切り替えてましたよ!? それも全て感覚でどうにかしようとするただの運ゲに巻き込まないで欲しいのです! そんなの引っ張って退かせるに決まっているのです!」



電「それを振り払って再度突撃して被弾したダボの極み! 電モードの私でもぶちっと来るのですよ!」



神風「護衛艦が旗艦である私の判断に従わないとか! 天津風ちゃんだって私のタイミングでいいっていったでしょう! それに味方を後ろから撃つだなんて噂通りのやつね! 信じられないわ!」



神風「司令補佐の初陣に泥を塗った罪、この場で償え! 首を出せ首を!」



グラーフ「……呆れ返る他ないな」



提督「二人は仲良くなるまで出撃禁止です」



電・神風「!?」


ガチャリ


北方提督「さすがに准将と他の皆が気の毒だ。手錠で繋げて過ごしてもらうのが手っ取り早い。鍵は准将に渡しておこう」



提督「ありがとうございます」



提督「それが罰です。それまで旗艦は天津風さんに変更ですね。お二人とも自分が艦隊の戦闘に支障を来さないと判断するまで海域への出撃はなしです。まずは絆を深めてください」



三日月「連携の訓練不足な面もありましたが、それ以前の問題もありますからね……」



天津風「こんな様子じゃ指示を出しても意味がないわ……」



ビスマルク「准将、もうこの二人抜きで進めたら?」



グラーフ「それも視野に入れるべきだと私も思う」



サラトガ「うーん、この件はサラにお任せください。お二人が仲良くできるよう取り計らいます♪」



提督「お願いします……」


タタタ


初霜「提督っ!」



提督「! びっくりした、突然突撃してこないでください」



初霜「お久しぶりです! 会いたかったです! 」スリスリ



提督「はい。長らくの任務、お疲れ様でした」ナデナデ



初霜「あ、皆さん、初めましてとお久しぶりです」



初霜「初霜ことはっつんと申します」



初霜「なんか電さんが怖い顔をしてますが……」



電「お久しぶりなのです。気にしないで欲しいのです……」



初霜「?」



北方提督(初霜ってこんな風に提督に抱きつくような子だっけ……)



北方提督(……うちでは暁や響、暁にわるさめ、江風もか。この人)



北方提督(駆逐から異様に人気あるよなあ……)



北方提督「……准将」



提督「なんです?」



北方提督「どうも私は酷く迫害を受けているようでね。話がしたい。気持ちよく今後を協力するために」



提督「ああ……了解です」



【13ワ●:仲良くするための訓練 1】



神風「お風呂もお手洗いも着替えもなにもかもがめんどくさ……! 抜刀してなにか切り刻みたいわ……!」



電「お前は気に喰わねーのですが、もう少しその脳禁さえどうにかしてくれたのなら上手くやれると思っているのですが……」



サラトガ「Why?」



電「……」



サラトガ「准将がお気に入りなのは同じですものね。そこでお二人は仲良くできるとサラは思います」



電「分かっているのなら聞くんじゃねーのです……」



サラトガ「なので、お二人で納得する戦い方を考案するのはどうですか? それならケンカもしないで済みます。もちろん私もその輪に加わりますよ。幸い皆が実力者でその戦術は有効です」



神風「……、……」



神風「電さん、飛び出すタイミングよね?」



電「……その通りなのです。お前の感覚が壊れ性能なのは演習して分かりましたが、それはその他からしたら狂気の沙汰なのです。そんな博打に艦隊を付き合わせるのはどうなのです?」



サラトガ「優秀な練巡がいますし、演習で訓練ですかね?」



電「なのです。そこさえなんとかすれば、司令官さんのため、という目的の合致もあってシナジーは悪くないとも思うのです」



サラトガ「北方で艦隊組んだ時は?」



神風「自由にやらせてもらっていました。皆もそれを信頼してくれていたので。しかし、記録通りに深海棲艦の撃沈数は0です。ある程度戦えるようになってから艦の兵士相手では無敗だったのですが……深海棲艦となると難易度は跳ねあがる私なので」



サラトガ「うーん、准将に旨を報告して許可をもらいましょう」



【14ワ●:響の適性率100%越えの真実】



大淀「乙中将は海域に出撃中。後で教えて、とのことです。卯月さんが探照灯を大漁に持ち出して、木曾さん達と北方海域でなんか遊んでいる模様です」



丙少将「それで元ヴェールヌイちゃんはなんて?」



北方提督「いやー、私のところに各将の旗艦に1航戦を寄越しただろう。人事的に私は疑われているようでね」



北方提督「まどろっこしいのさ。悪い島風さんもいるし、彼女の力を借りてまでも潔白を証明したい。まずなぜ私が疑われているのかもよく分からないし、隠そうと思っていることなんてない。そこらのために質疑応答しよう、ということかな」



丙少将「俺らで話し合った限り、完全に信用出来ないというのが結論だよ。あんた、自分の性格分かってないのか?」



北方提督「それでも性格的に信頼されないというのは好きじゃなくて」



丙少将「ここは准将か。どうなんだ?」



提督「あー……疑ってはいますけど、悪い島風さんが協力してくれるなら自分が疑惑に思っているところは晴れますかね……」



提督「ほら、あの情報の塊である離島棲姫を始末しろ、といったところとか、1度不祥事がきっかけで提督降ろされてまたその席に着くのも珍しいですよね。提督は候補たくさんいるのに」



提督「北方の皆さんがあなたを疑うべきではないという意見もありましたし、そこも納得自体は出来るので……」



提督「唯一の妖精にある軍の保管庫にある響さんの艤装を調べていただければ、です。あの響さんの適性率100%越えの現象」



提督「自分あの現象は戦後復興妖精と元ヴェールヌイさんが発端だと考えますから」



悪い島風【私の記憶にないよ? 北国さんの適性が30%から85%にあがった件だよね?】



提督「ええ、そしてこの元ヴェールヌイさんがヴェールヌイとして過ごしたのは僅か3日です。その後に軍から退いています。所属鎮守府の提督がご結婚された時でしょうかね」



北方提督「まあ……私は初恋が司令官な故に耐えられなかったから、子供の暴走で兵士を辞めたよ。数年は自由気ままに過ごしたかな。提督のほうの学は妖精可視の才もあったから響の頃に修めていた。役立つ場面もあるのは龍驤や初霜の戦果を見たら分かるはずだ」



丙少将「……悪い島風、調べてもらえるか?」



悪い島風【北国さんと私が出会っていたというのは私の記憶にないことなので、気にはなるので。それに私の記憶には空白の部分とあるはずの記憶が欠けていますからね。まあ、サービスです!】



丙少将「……ロストしたな。それで今の響のヴェールヌイの適性率は170%だろ。本来あり得ない数値なのは分かるし、艤装製作者の海の傷痕の此方ちゃんも当局のほうもぶったまげたとか」



大淀「100%越えの例はありませんからね……」



提督「あくまで仮説の域を出ないですし、長くなります」



大淀「あ、お茶用意しますね」



丙少将「頼むわ」



悪い島風【調べて戻ってきました!】



悪い島風【驚き桃の木山椒の木です! あの響改二の艤装、色々と本来のスペックを凌駕してましたね! 耐久数値なんか50は越えていると思われまっす!】



北方提督「本来のヴェールヌイではあり得ない数値だね」



丙少将「最後の海では中枢棲姫勢力が全滅するような死地で生き残ったほどの艤装だからな……100%越えなら本来の艤装の性能を凌ぐことを意味するからあり得なくもないんだろうが」



悪い島風【准将さん、なにか知ってるなら教えて? ちょっとさすがの私もびびってます!】



悪い島風【改修用のネジを皆に5つプレゼントとして配付しますので!】



提督「オーケー」



提督「まだ艦隊の皆さんには公開していませんが、悪い島風さんって当局のことを恨み始めていて、島風さんに感化することで戦後復興の役割に支障を来すようなバグを起こしていきましたが」



提督「陽炎ちゃんの話を聞く限り、彼女と契約した頃には役割に忠実な妖精の路線に戻っていました」



悪い島風【そこだよね。恐らくパーパとケンカして『殲滅:メンテナンス』されたのかと私は考えていますが】



提督「同じく。そしてあなたは本官さんこと仕官妖精とは違って海の傷痕に1から作られた存在です。陸と海の関係上、艦隊これくしょんのシステムについても知識を与えられていたはずです」



悪い島風【はい。もちろん響艤装のこともでっす】



提督「悪い島風さんが当局を憎悪するに至って、親子喧嘩勃発、その一杯喰わしてやろうと考えで、響艤装に目をつけてギミックを仕組んだ。そこはメンテナンスにより忘却しているのかと」



提督「彼女の適性率があがったという時期は、あなたの記憶が抜けている時期かと思います」



悪い島風【そうだね。それで北国さんの適性率があがったとかいう件について私はざっぱにしか知らないから詳しく教えて?】



北方提督「ヴェールヌイ時代に救助作戦に参加した。その時の救助対象は艤装を損傷して航行不可だったからドラム缶に資材を、妖精も連れていった。その場で直してやってくれ、と司令官からの指示だ」



北方提督「目的地に向かっている途中に、響の艤装に改造してくれ、と妖精さんにお願いした。まあ、響時代と比べて適性率故に響のほうが戦果をあげていたからね。ただの気まぐれだし、出来ないのも知ってた。ヴェールヌイから響になるには艤装を完全に壊すしか方法がないから」



北方提督「その時、妖精さんは困ったような顔で『カーンカーン』と音を立て始めた。その後に仲間のもとに到着して、仲間の艤装を直した。ああ、その時の妖精さんはまだヴェールヌイの艤装を見つめていたね。帰投の途中で辞めた。 まあ、響に戻せなかったからだろう」



北方提督「その時かな。なんとなく適性率を聞いてみたら、85%だと教えてくれた。なんかの間違いだと思っていたから、後で詳細を確認しようとした。ああ、その帰投の時のことなんだが」



北方提督「運悪く北方棲姫に出くわして艤装を沈めてしまった。後日に回収されて再び艤装を身につけた時は30%に戻ってた。そんな感じかな」



提督「……順を追いますと、響改二艤装の探知不可能な点に目をつけて悪い島風さんは海の傷痕に一杯食わせる方法を思いついた。ヴェールヌイ艤装だからこそ海の傷痕は探知できなかった。それに加えて当局のほうは想の解釈は得意ではなかったみたいですね。ここは此方さんが最も上手で此方さんなら気付けていたかと」



提督「仕組んだギミックはIFコンバート」



提督「響改二は悪い島風さんによりコンバート可能となっていましたが、そのコンバートデータは艤装にはあってもロスト空間メインサーバーにデータにはないため、システムとして未実装のデータ上だけの存在になっていたと思われます」



提督「ヴェールヌイから更に改造されたんですよ。その妖精はその未実装のデータで改造を試みた。だから困ったような顔をしたのだと思います。つまり『ヴェールヌイとして適性があがった』のではなく、『ヴェールヌイとは別の適性を求められたため、適性があがった』のであって、だから『再びヴェールヌイとしての適性を測った時には元の30%に戻っていた』という見解ですね」



悪い島風【……、……】



提督「あなた、香取さんから教官の才能がおありだと褒められていたそうですね。あなたの訓練は確かにこの海の想力を知る人からしたらなかなか効果的なものです。特に鶏の件は素晴らしいと自分もそう思います」



提督「練巡」



北方提督「まさか……そのコンバートというのは」



北方提督「響経由の練習艦なら……」



北方提督「『декабристы』」



提督「ええ、декабристыの適性が85%だったのかと」



丙少将「でもそれこじつけ解釈っぽくねえか? 何の確証もない話だし、本当にその時だけなぜかヴェールヌイの適性が上がった線とか妖精さんが測り間違えた線もある。あいつら成功もすれば失敗もするだろ。だから過去の適性者のデータ解析したのを機械化して、適性施設ではそれ使うようになったわけだし」

 

 

提督「最もですが、ヴェールヌイ艤装にはデカブリストではなくともなにかの想が混入していた可能性が極めて高いのです。100%超えの理屈もこれで説明できますので」

 

 

提督「ヴェールヌイは艤装としての生命がロスト空間からは完全に独立している想であり、それは言うならば我々、今を生きる人間と同じカテゴリであるから、艦隊これくしょんのシステム内の海の傷痕には探知できなかった。まあバランス調整、意図的なバグのようなものです」


 

提督「しかし、海の傷痕にとっても度肝を抜かれた100%超えは事実として起きていた」

 

 

提督「そして響さんいわく、艤装の声を夢見で聞いたとのこと。それで最終作戦に遅刻したそうです。元ヴェールヌイさん、あなたはヴェールヌイに改造した時はどうでした?」

 

 

北方提督「声なんか聴いてないね。電には話したけれど、ただぽっかりと胸に穴が空いたような、大切ななにかを忘れてしまったような、そんな感じにはなったかな」

 

 

提督「響艤装にあった想は空白のヴェールヌイ、それとデカブリストの2種だと仮定しておきます。あなたはデカブリストに改造されたことでデカブリストの想は目覚めましたが、すぐにコンバートしてヴェールヌイに戻された。そのタイミングはまあ、あなたが海で艤装を落とした時となりますね」

 

 

提督「この説だとそこで改造し直されたんです。誰がやったのかといえば、戦後復興妖精以外に考えられないんですよね。海の中で改造され直されたので、普通の建造妖精には無理。深海妖精にも無理、そして海の傷痕当局&此方さんは知らない。仕官妖精こと本官さんには知り得る限りのことを教えてもらっていましたが、そんなことは一言も。なので、動機もある悪い島風さん、戦後復興妖精がやったという消去法です」

 

 

提督「目覚めたデカブリストの想とヴェールヌイの想は影響しあって、自我が目覚めた。響さんのヴェールヌイの改造は本官さんに頼みましたが、その本官さんが気づかなかったのでヴェールヌイ主体でまとまっていたのかと。メモリー1を見て想の同化があり得るという実例を確認しましたからね。 戦後復興妖精と島風さんが同化したのと同じく」



提督「ヴェールヌイ&デカブリストの想により、あなたにはなかった夢見現象が響さんには起きた」


 

提督「響さんの最初に測ったヴェールヌイの適性率は25%です。が、夢見であがりましたね。恐らくヴェールヌイ&デカブリストが望むモノを響さんか満たしていたためだと思われます。あの響艤装には二つの想があり、響さんの適性率170%の内訳は上昇したヴェールヌイが100%未満、デカブリストが70%以上ですね」

 

 

提督「これなら適性率100%超えが起こり得るので」

 

 

提督「ヴェールヌイではあり得ない訳の分からない耐久数値も説明可能です」

 

 

提督「この説を此方さんに聞いて意見を伺えば真偽はハッキリします。あの海のシステム上、あり得るとしたらこれが最も高い線だと考えています。辻褄も合いますし」

 

 

悪い島風【まあ、中枢棲姫勢力も出来るっちゃ出来るけどあの頃はいないしね。確かにそれをやるなら私だ。恐らく響艤装の特性を利用してパーパやマーマをハメようとしたんだと思う。いかにも私が考えそうな手ではありますし】

 

 

悪い島風【デカブリストなら、まあ、北国さんの適性が上がったのも頷けるし、響艤装にその他の軍艦の想なんかシステム上混ぜられないから、多分デカブリストだと思う】


 

提督「……、……」

 

 

悪い島風【なに?】

 

 

提督「いえ、別に。とりあえず自分、元ヴェールヌイさんへの危険な疑いはとりあえず晴れました」

 


北方提督「……、……」

 

 

丙少将「……乙さんがなんか臭うとかいったから危険視していたけども、どうやら最悪な展開はないと見てもいいかな」

 

 

北方提督「…………、…………」

 

 

丙少将「だが、俺的にはあんたの性格的になにやらかすかは分からないからあの面子を送りつけたんだよ。日向はふざけることも多いが、きっちり重要なところは見てるから信頼できるしな。配置は変えないからそこはよろしく」

 

 

北方提督「了解した。ところで丙少将に大淀さん」

 


北方提督「私のその適性率とかの情報知ったのつい最近のはずだ。少なくとも戦争終結して北方勢が関わり始めて資料を確認してから」


 

北方提督「目の当たりにしたのは初めてだけど、噂に違わないね。持ってる情報量のせいもあるけれど、戦争関連における准将の思考回路と見当の冴え、ド変態過ぎないかな」

 

 

丙少将「そこは同意する。俺は撤退作戦の軍法会議で初めて喋った時から頭おかしいやつだと思ってたわ。乙さんが自分から仲良くしてたから、なんかあるやつなのは確信してたが」

 

 

大淀!「まあ、この人に海のこと考えさせるとちょっと変態染みてしまいますね。同格というと今はもういませんが、中枢棲姫さんとフレデリカさんのお二人ですかね」

 

 

提督「意見を求められたので持論を展開したらこの貶されようですよ……」

 

 

提督「フレデリカさんは確かに最上位の天才と海の傷痕から評されるだけはある御方でしたね……性格には難ありでしたが、たった数時間で響が特攻艦であることや海の傷痕当局の目的まで看破した人ですから」

 

 

提督「中枢棲姫さんやフレデリカさんの力がなければ海の傷痕に勝てていたかは怪しいくらいです」

 

 

北方提督「神風が『あの人は戦争を終結させる』とまでいった根拠を私は垣間見た」

 

 

提督「悪い島風さん、ご納得していただけたのなら報酬のほうお願いしますね」

 

 

悪い島風【もちろん!】


 

悪い島風【さて、あげた分だけ損させる方法考えよっと!】

 

 

提督「性格悪っ……」



【15ワ●:戦後日常編 響】



やあ、響さんだよ。

これは先輩の私から聞いた話だよ。

 

そういえば空母とか戦艦とかもうなくなるとかいう話を聞いた。それは戦争が終わったからかい? と私は聞いたんだ。

 

違う答えが返ってきた。

 

艤装を量産したほうがコスト的にもなにもかも安上がりでこれからは戦争空母作るよりも艤装作るようになる、とかいう話をワイドショーでしていたそうだ。

 

確かに軍艦なんか作るとなると時間も費用もかかる。けど艤装っていうのは2ヶ月もあれば作っちゃえる上に戦艦とか空母の力を人間一人で発揮できちゃうんだから。確かにその通りだ。

 

深海棲艦の次は普通の人間相手に戦う、だって?

 

私は悲しかった。戦争を終わらせたのに、人類はもう次の戦争のことを考えている。司令官から聞いた通りだ。平和は嵐の前の静けさ、主旋律に移る前の間奏だ。

 

いつの日か必ず海の傷痕は輪廻するだろう。


私はどうしたらいいのだろう。分からなくて胸が張り裂けそうだ。叫びたくなる。

 

私はやり場のない想いをどこかに吐き出すために先輩の私と日々を謳歌した。

 

春場なのに意味もなく冬季迷彩で身を隠して山を登った。害獣に困っている人達のためにアライグマやクマを捕獲したり、商店街の弱小草野球チームの助っ人として精肉フェニックスのエースナンバーを背負ったりもした。大手食品会社×艦隊これくしょんのコラボも実現させた。いや、していたというべきか。先輩の私が響とヴェールヌイのCGキャラを作成し、CMデビューさせていた。

 

《FREEDOM・カップヌードル・自由を掴め》

 

ふむふむ、あのCMの台詞には思うところがある。

 

《あの船で地球は再生する》

私達という船で確かに地球は過去の海を取り戻すことができた。

 

《人間はまた同じ過ちを繰り返すのでは》

その疑問には共感できる。

 

《賭けてみようじゃないか》

信頼していいのか? 彼等に賭けてもいいのだろうか?


《自由を掴め》

私達は自由を手に入れた。海に深海棲艦はいない。

 

私達は海の傷痕という過去最悪の大波を、この防波堤の身を以てして押し返し、人類を救ったんだ。でも私が思うほど世界を救済したわけではないようだ。今なら海の傷痕:当局が人間を改装しようとした理由も分かる。

 

私達は今以上をいつも求めつつ、変化のない穏やかな今も求めてしまう。今以上を求める心で争いを起こして、変わらない今を愛する心で平和を願う。



この悩みを、この心からのポエムを誰かに伝えたい。

 

 

 




 

 


そんなこと考えて、私はYouTuberになったんだ。

 


【16ワ●:ноги змее】


卯月「スッゲエエエエエっぴょん!」


菊月「うるさいな……静かにしてくれ」


長月「私達は6月から街の学校に編入する予定なんだ。それまでまでに勉強をしておかなければならない」


菊月「夏になればドームでドッジの予選もある。やることがたくさんあるんだ」


とまあ、戦争中ではあり得ないような会話が成されている。


卯月「いや、お前らスッゲエエエエエ! ぴょん!」


卯月さんは教室の机の上に乗ってぴょんぴょんと跳ねている。その机の周りには睦月型が集まっている。場所は鎮守府内の支援施設といえどみんな制服だし、なんだか学校に登校しているような気分になるね。平和だ。


卯月「響! 青葉チャンネルは見たか!」


響「ああ、そのことか。確かに二人はすごい」


青葉チャンネルというのは青葉さんが作ったネットチャンネルだ。あの人は抜け目がないというか、戦争終結とともに世界的に知名度が爆発的に増加したのをいいことに艦の兵士のチャンネルを作った。その中で様々な動画があるのだけれど、その中でも『長月&菊月』の動画の再生数が1000万を越えているのだ。


その動画の内容は先日に歌番に出た二人のことだ。世界を救った二人が街の少年に向けて歌った音楽、その参加に至るまでの背景を紹介した動画だった。これまた反響を呼び、艦の兵士でも飛び抜けた人気を誇るに至る。


卯月「愛の海に溺れて永遠にさあ!」


響「DanceとMusicでYeah Yeah Yeah Yeah♪」


長月「なんじゃそりゃ……」


卯月「お前らヒップホッパーのくせにヒップホップの有名どころが分からねーのか!」


菊月「別にあれは卯月に付き合っただけだろ……」


卯月「うーちゃんが曲作ったのに、お前らばっかりスポットライト当たるし! うーちゃんが青葉チャンネルでフリゲ実況しても最高で再生数4000だし!」


長月と菊月がご飯食べながら談笑しているだけの動画で、再生数50万も届いているしね。この鎮守府のエンターテイナーさ。


響「私の動画は900だ……」


長月「響の動画は面白いと思うんだがなあ……」


響「面白いかは置いておいても、皆に知ってもらってよく考えて欲しいことなんだ」


卯月「トランス現象について。海の傷痕はそれで産まれたから、2度と『艦隊これくしょん』が始まらないようにー、とかいう啓蒙動画とかクッソつまんねーからうーちゃん寝ちまったぴょん」


響「悲しい」


卯月「カップヌードルのやつは爆笑したぴょん。あれは再生数が万越えだし。要は真面目要素よりもおふざけだぴょん」


あのCMは大きい私が昔から目をつけていたらしく、兼ねてから作成してたというモデリングを持って戦争終結後に営業をかけたそうだ。それで実現しちゃうなんて、大きい私の行動力に痺れる。司令官からは、反面教師にしてくださいね、といわれた。


卯月「本気でその路線やるなら司令官も出演させろし。あいつその方面では研究部からも賞賛されてるよーな変態だぴょん。やつはあの海に関しては24時間語るぞ。きっと似たような変態の視聴者を獲得できるっぴょん!」


響「1度頼んだんだけど、断られたよ」


菊月「まあ、そーだろな……目立つの好きじゃないみたいだし、そもそも英雄扱いされてるのも思うところがあるみたいだ」


長月「あー、卯月、後その音楽も消してくれ。集中出来ん」


卯月「ん、司令官が来たぴょん」


提督「勉強教えて欲しいといわれたので」


長月&菊月「……」


提督「♪」


響「曲に合わせて踊りながら近づいてきた……?」


提督「ダンス♪└|∵|┘♪┌|∵|┘♪ダンス」


卯月「あいつ最近面白れーぴょんw」


響「はらしょー……」


提督「ダンス♪┌|°з°|┘└|°ε°|┐ダンス♪」


長月「司令官ロボットダンス上手だなオイ!?」


卯月「さすが機械男だし」


提督「ツクエカラ、オリナサイ」


卯月「我々は宇宙人だニュアンスで……あだだだだ!」


司令官に側頭部をグリグリされて、机の上から引きずり下ろされる。「卯月さんも勉強します?」というと、「誰か誘ってスプラトゥーンやってくるぴょん」と脱兎のごとくその場から逃げ出してしまった。


響「司令官、申し訳ないんだけど質問がある。私の動画のトランス現象について、が伸びないのはどうしてだろう?」


提督「……視聴者の層では。青葉チャンネルはどうも楽しい雰囲気の動画が伸びているイメージがあります。神さんのここ3年間の修行とか紹介したらすごく伸びると思いますよ」


司令官にすごく悪いイメージつきそうな。


提督「響さんの1日に密着するだけでも面白そうですが、もっと楽しい雰囲気で伝えるべきかと。長月&菊月さんのは観ていて微笑ましいというか癒し枠です」


確かに私の動画は辛気臭い空気があるかもしれない。少しでもこの平和が続くように皆がトランス現象や海の傷痕について自分の意見を持ってくれれば、と思う。どういうアプローチの仕方にするべきだろう。


菊月「……癒し枠とか心外なんだが」


提督「自分のことはお父さんではなくお兄さんでお願いします」


菊月「ちょっと待て! もしかしてそこも紹介されてるのか!?」


うん、実に平和な朝だ。


2


一時間くらい外の丘で風に吹かれて考え事をしていた。お昼になったので、お腹になにか入れようと食堂のほうへ踵を返した時だ。


悪い島風【想力ですか、なんでこうも魔法の力みたいに思われるんですかね?】


悪い島風さんがいつの間にか背後にいた。

最近は艦これのアップデートも完了して皆が最終海域に突入するだけなのを待つ身になって暇を持て余しているらしい。皆がやっているのは資材集めに艦隊の錬度を限界数値まであげたり、そのゲームの仕様を分析して特設のサイトに載せたりの準備だ。


響「そういえば悪い島風さんは戦時復興妖精で最初期は政治のほうにも関わったのかい?」


悪い島風【ああ、そういえばあなたはそっち方面の目的がありましたね。でも、残念ながらあなたの目的はすでに達成されかけていますね。今、孤児院の職員は大幅改善化の革命が起きています】


響「ああ、知っているさ。夢を失くしてしまった。でも、良いことだ」


孤児院での暮らし、職務環境の改善、私が響を利用してやろうとしていることはすでに他の誰かが代わりに動いてくれている。というのも、私達が戦争終結させて世界的に有名になってしまったお陰かな。日本国内に留まらず、多くの声があがって、政治が動き始めている事実があった。


悪い島風【誰かの不幸があって、それをなくすために皆が動いて、実現しかけているってことでっす。こんな風に想力なんて借りなくても、想力で実現出来ることはもともとあなた達に出来ることなんですよね】悪い島風さんはにたにたと嗤った。【といっても子供のためにっていうのは怪しいところです。子供とか命とかそういうの、建前として強い武器ですし】


そういえば長月と菊月が昔に遊んでいた公園から遊具がほとんど撤去されていたといっていた。私も子供の頃は様々な遊具で日が暮れるまで遊んだことがある。そういうのがなくなっていくのは悲しい。でも、危険だから、といわれると従うしかない。子供のため、とか、危険、とか、最もな正論に反論できず物事がなくなっていくのは切ない気分にもなるね。


悪い島風【大人にいってみな。『じゃあお父さんも怪我したら嫌だから車に乗るの止めて』って。絶対に止めないですよ。戦争と平和だって似たようなもん。大人が戦争は最終的な外交手段だとか、いかにも理屈の迷彩をかけたのさ。戦争と平和のやつっは子供の頃、なんて名前だったかといえば】


響「……いえば?」


悪い島風【喧嘩と仲直りだよ。だから、指差して怒ってやりなさいよ。『喧嘩して仲直りできない大人がいるー! 情けないなあ!』ってね! おーう"ぉっう"ぉっう"ぉっ!】


そう自分でいって、腹を抱えて床の上を転げ回る。戦争と平和は子供の頃は、喧嘩と仲直り、か。悪い島風さんは面白いことをいう。まあ、現実の戦争でも神話なんかでも痴輪ケンカが多くの人達を巻き込む大戦火になるケースは確かに歴史にはある。


悪い島風【あ、そういえば響に興味出たんでした!】


響「あ、ちょっと、なにをするんだ」


悪い島風さんが私のペンダントを引っ張って、まじまじと観察している。ヴェールヌイの艤装の一部分を抜きだして作った特性のアクセサリで私の宝物だった。


悪い島風【なるほどねえ、こっちか。全く、艦これシステム運用していたのが祟って響艤装を見逃しちゃっていたか。このペンダントに残滓があるね。もう残り時間は少なそうだし、聞きたいこともあるから、ちょっと思考機能付与能力を与えて現海界させてくるね】


なにやら不穏な言葉がいくつも聞こえた気がするが、悪い島風さんは有無をいわさずにペンダントを持って、トランス、と装備を展開した。スロット番号的には想力工作補助施設のようだ。妖精工作施設とは対照的な白腕だった。ペンダントをその真白の手の平に包み込むと、シェイクする。


響「思考機能付与能力と現海界だよね? 一体なにをしているんだい?」


悪い島風【ヴェールヌイを妖精化しました!】


響「ほ、本当かい……?」


悪い島風【それだけだと響さんには視えないのでダブルトランス・悪い連装砲君&想力工作補助施設!】と、白腕が今度は悪い連装砲君をこねくり始める。【入魂変化! verヴェールヌイ!】


悪い連装砲君が白い光を帯びて形を変えてゆく。薄幸の白のカラーリングの少女に姿に変えた。見間違えるはずもない。コレは私と全く同じ容姿だけれども、私よりも表情に色がなかった。


ヴェールヌイ「ひび……ヴェールヌイだ、信頼できる、という自己紹介は置いておこうか」そういって、まじまじと吸い込まれるような瞳を向けられる。「やあ今を生きる私、夢見以来かな」


響「ほ、本当にヴェールヌイなのかい?」


ヴェールヌイ「その聞き方は誤解を招く。ヴェールヌイの本物とは一体どんな基準で決まるのか分からないな。私は君が身にまとっていた艤装に眠っていたヴェールヌイだと答えておく」


響「やっと会えたね。あの時、力を貸してくれたことに礼をいいたかった」


そういうとヴェールヌイは表情を変えないまま、こういった。


“ноги змее”


蛇足だ、と。


3


響「彼女の尋問は終わったかい。私はしばらくの間、ヴェールヌイと過ごすことにしたから」


北方提督「ああ、准将が大変驚いていて長らく拘束させてしまったね。それで君は……」


ヴェールヌイ「あなたが前々世代の響か。うろ覚えで申し訳ない。あの時デカブリストの想が目覚めることで私は自我を持つことができたから、あなたのことは記憶にあまりない」といってから、更にいう。「けど私はデカブリストの性質が強い。私の空白に彼女が混じって私が産まれたから」


北方提督「私がお母さんということかい?」


ヴェールヌイ「違う。先祖は軍艦響、母は海の傷痕だ。あなたはそこのヴェールヌイの歴史を歩まなかった私と同じだ。感情を与えてくれた存在に過ぎない」


北方提督「……後輩の私、とりあえず今からいうことを覚えておいてくれ」


先輩の私は司令官から聞いたというヴェールヌイの存在状態について教えてくれた。このヴェールヌイは悪い連装砲君の中身を入れ替えて、想力によって姿を形作られている存在だということ。存在維持に必要な想力は悪い島風さんが疑似ロスト空間から供給しているとのこと。それが途切れたらすぐに消えてしまうとのことだった。そして唯一の特別な存在であり、他の艤装に入れられた想とは性質が違う。通常の艤装は死人の記憶から軍艦の魂を形成していたが、ヴェールヌイには実装当時にまだ在籍していたため、自分が軍艦の化身であるという認識はなく、その記憶にあるのはデカブリストの記憶だという。だから響の歴史自体は知識としてあるそうだ。


響「産まれてもすぐに消えてしまうとか、なにか手を打たなければならないね」


ヴェールヌイ「不粋だな。気持ちだけ受け取っておく」


と彼女は突き放すようにそういった。

私はすぐに言葉足らずの彼女の心を思考してみる。なぜだか自分のことのように分かってしまう。不粋というのは産まれた命に手を加えるということを意味しているのだろう。そもそも彼女は私より遥かな時を生きている。その大半の生に自我がなかったとはいえ、それも彼女の生の証の一部なのだろう。不粋、というのは余計なことをしなくていいということだ。


ヴェールヌイ「君は私の願いを叶えてくれた。だからこれ以上は蛇足だ」


確かに海の傷痕という大きな波から世界を冠水から守り、この身は戦争を越えてなお姉妹艦とともに生きている。それこそが彼女の望みだったはずだし、それを叶えるために本来の限界を越えた力を貸してくれたのだ。


響「私だけではないよ。あの海で君の願いを叶えてくれたのはたくさんの仲間と司令官だ」私は彼女の語弊を諫めておくとした。「それに蛇足ではない。人生は洗練された物語ではないはずだ」


ヴェールヌイ「ならば仕立てなくていい。私のことは放っておいてくれて大丈夫だ」


悪い島風【ヴェルちゃんの適性率100%データは厳密な部類ではないですけど、こんな感じ。『愛とか恋とか、なんのことなんだ? 教えてくれるのかい?』】


ヴェールヌイ「必要はない。それを教えてくれたのが響だ」


響「本当に知ることが出来たのかな。私を通して知ったその感情は間接的だと思う。それって媒体を通した知識的なモノに過ぎないのではないかな?」


なんとなく、違和感があった。この彼女の感じ、司令官と同じなような気がする。愛とか恋を知っていても、理屈で知っているだけで自分の心ではよく分かっていない。必要ない、とか正しく司令官みたいなことをいうしね。なんだかちょっと不安だ。愛という感情は誰かを通して知るモノでは、自らの中で芽生えたモノとはやっぱり違う。本当の感情は自分自身から芽生えて初めて知ることができるのだとも思う。


北方提督「愛とか恋を私が教えてあげようか? 教えることに関しては褒められたからね」


ヴェールヌイ「悪いけど遠慮する。あなたは歴代響の中でも最大の節操なしといえる」


響「でも、せっかく現海界したんだ。なにかしてもいいんじゃないかな」


ヴェールヌイ「私達がやるべきことは一つだろう。少しでも長くこの平和を守るために第二の海の傷痕を産ませないよう取り計らうことだ。皆はなにも分かってはいなさそうだ」


ヴェールヌイは今朝の朝刊の一面を指差していった。想力についての報道だった。最近はずっとコレばかりだな。機密が漏れてしまってから、ずっとこの力にご執心だ。


北方提督「確かにね。彼等はもっと私達をよく見るべきだ。人民は私達を英雄だのと笑いながら褒めているけれど、なにも見てくれてはいない。海の傷痕という大波はまた起こり得る。本当に見るべきなのはその大波で傷ついた防波堤だね。垂れ下がった想力という甘美な好餌によだれを垂らすのみ。チャップリンの言葉を思い出すよ。正しく人は集団になると頭のない獰猛な怪物だ」


響「それがヴェールヌイのやりたいことかい?」


ヴェールヌイ「まさか。いかに義があろうと今を生きる人間を導くような真似はしない。私に構っている暇があるのなら君達は君達のやるべきことをやるべきだ。なければ探すべきだろう」


響「それは君も同じだけど埒が明かなそうだから。こういおう。私は君と遊びたいな」


北方提督「それはいい。同じくだ。まあ、私は時間のある時しか出来ないけれど、響には特別においとまを出そう。どうせ出撃は控えて資材を貯めている段階だしね」


ヴェールヌイ「やれやれ。過去の私も未来の私も違うのは背丈だけのようだ」ヴェールヌイは私と先輩の私を交互に見ると、帽子のつばを下げて顔を隠した。「自由にするといい。どうせ暇だ」


なにをしよう。私も別にやりたいことはなかった。


とりあえずなにかを探しに散歩にでも出よう。こんな感じで街に出るのも、長い長い冬が終わって春がめぐってきたおかげだ。春の訪れとともに冷え込んだ戦争も冬眠に入って、外にはきっと新鮮な景色がたくさん芽吹いているはずだ。ヴェールヌイの手を引っ張る。ヴェールヌイがいった。


ヴェールヌイ「ああ、そうだ。執務室についてきてくれ」


4


丙少将「お、ヴェールヌイちゃん。どうした?」


ヴェールヌイ「この小さいほうの私のためにいくつか質問をした」


響「私?」


ヴェールヌイ「戦争は終結した。となると後の問題は想力関連のゴタゴタだけれど、それは兵士である私達が口を出すのはあまりに政治的な問題だから置いておこう。私のやるべきことといえば」ヴェールヌイは淡々とした口調でいう。「響、君をあの海から解放して普通の子に戻すことだ」


響「うん? 私は私だけど……」


ヴェールヌイ「まず適性率の説明を……大きいほうの私、長くなるから頼む」


北方提督「長く喋るのは苦手でね。小さいほうの私、頼む」


響「私も苦手だな。司令官、お願いする」


響・ヴェールヌイ・北方提督「ジェットストリーム☆プリーズ」


提督「白い三連星……」


司令官は少し間を置いてから、説明を始める。


提督「艤装には当時その軍艦を知る者の想が凝縮されています。だから艦の兵士はその軍艦の歴史を知ることが出来るのです。そして適性者は建造による様々な影響、例えば夢見で、その過去から思うところが出てくるものなんですよ。そういうのが精神影響とされています。それが海の呪いといいたいのですかね?」


ヴェールヌイ「ああ」


響「そういうことか。適性率というブレはあれど、それとなく精神影響で人格は『響』に変わっていく。容姿だってそうだ。髪が白くなったり、身体の成長が止まったり。だから、過去の適性者はどことなく似通っている部分が多い。要はそれを海の呪いだと、ヴェールヌイはいいたいのか」


ヴェールヌイ「そういうことだ。君は軍に来る前はもっと女の子らしかった。君だけの話ではないけれど、艦の兵士は普通に戻るために努力が必要だと思う。極端な例をあげれば口調とかね」


そういう話は卯月さんから聞いたことがあるな。彼女は一度解体して阿武隈さんと街で四年を過ごしていた。その時の後遺症として口調はお馴染みの「ぴょん」とか「ぷっぷくぷ」の言葉が自然と声に出て、よく周りから変な目で見られて苦労したという。要はその類のことだろう。


北方提督「そういえば小さい私の適性率が100%を越えた理由は『ヴェールヌイが求めるモノを満たしていたから』といったね。それは具体的になんだい?」


提督「そこは自分ではなく、ヴェールヌイさんに聞けば早いですよ」


ヴェールヌイ「答えたくはない」


響「気になる」


北方提督「まあ、愛とか恋の類だろう」


代弁してくれたのは先輩の大きい私だ。


暁も雷も電も口をそろえて、「響をそのまま背を高くした人みたい」というんだ。心外だな。あの人ほど私は自由奔放でもないさ。さすがに銃なんて持ち歩いていないしね。でも、あれが未来の私ならば悪くはないとも思う。だって、元気そうだし、とても綺麗な人だからね。


北方提督「准将の説的には目覚めたデカブリストの想が、私の恋心に興味を持って、ヴェールヌイと同化した時に、それが君の興味にも繋がっていったのだろう。そしてその愛や恋の答えをこの小さい私が持っていた、という流れが自然かな。ふふ、准将、私の推理はどうたい?」


提督「長く話せるなら説明もしてくださいよ。……まあ、じゃあそれで」


響「確かに母の愛も、暁達への愛も私は知っているけど、ちょっと待ってくれ。私が司令官に向ける好きは恋心だと?」


北方提督「准将の顔が引きつったよ。全く、駆逐は司令官に惚れやすいものなのさ。なんたって私達の面倒を見てくれる上に、何度も私達の窮地を救ってくれるからね。うら若き乙女が惚れるのもまた自然な流れだ。なのに軍が世間体だのなんだのと駆逐と司令官の恋路を快く思わない」


提督「違いますって。だって響さんに姉妹そろって全員生還した歴史を刻んでくれたと礼を言われて。好きともいわれましたけど、リミットオーバー(適性率100パーセント越え)を起こしたのはその感情が芽生える前ですから、恋というなら姉妹の誰かとか?」


響「そうか……私は暁や雷、電に恋をしていたのか。同性愛な上に姉妹。禁断だよね。私は距離を取って頭を冷やしたほうがよさそうだ。しばらくロシアにでも行くよ」


提督「タイムです。街にいた頃、それか闇にくる前の鎮守府、丙少将とか」


丙少将「っぶ」後ろの席にいた丙さんが茶を噴きだした。「俺だったら駆逐の面倒視ていた日向か伊勢が察して一言いってくるわ。俺の好きと准将の好きは違うのか?」


響「……同じ類の好きな感じがする」


司令官と丙さんが胸を撫で下ろしていた。


響「二人は私に恋されると迷惑なのかい……?」


北方提督「響が帽子を深く降ろすのは泣きそうな顔を隠したいか、照れた顔を隠したいかだよ。この場合はいわずとも分かるね。二人とも本当に酷いね。銃があれば撃っている」


提督「え、ええと響さん、動揺したからといってその解釈ではありません」司令官はいった。「あの海で正しく少年誌のような想いの力に触れた自分はそれを迷惑だなんて思えませんよ。真剣に考えて対応致しますとも。丙少将もそうですよね?」


丙少将「もちろんだ。響みたいな可愛い女の子から好かれるとか生きていて良かったわ。乙さんもそう思いますよね?」


乙中将「そだねー」


北方提督「照れるから止めてくれ」


丙少将「お前じゃねえよ。ったく響にはこんな大人になって欲しくねえもんだ」


ヴェールヌイ「全くだ。大きい私は生きてさえいなければ美人なのにね」


北方提督「私だって泣くんだよ」


提督「そういえば響さんはなんで北国さんの所属を希望したんですか」


響「先輩の私に興味が湧いて、この鎮守府を選択してみた。安心してくれ。司令官のことが嫌いになったわけではないから」


提督「それはそれは……安心しました」


本音をいってしまうと司令官のところが良かったんだけど、所属鎮守府を第一希望に書き込めなかったから、先輩の私に興味が湧いて、北国の鎮守府を選んでみた。


大きい私は小さい私にいった。


北方提督「やっぱり君も私と似ているよ。私の初恋も司令官だったさ。そして叶う見込みがないところもね。こっそり明石君に聞いたんだけど、准将は大きい胸のほうが好きらしい」


響「司令官……本当かい?」


提督「丙少将、自分そろそろ大破しそうですので支援してください」


丙少将「巨乳派なのか? まさかお前とそんなところで気が合うとはねえ……」


提督「乙中将ー……」


乙中将「今、ネットの攻略情報を見て作戦立てているからー」


提督「孤立無援ですか……」


北方提督「私の時の司令官もそうだった。だけどね、その先を進んで絶望したのが私だ。私は間違えた。運命力が必要なんだよ。現実は残酷なんだよ。だからまず中身を磨いたほうがいい」


中身も大事だけど、外も大事だよね。まあ、私は六駆の中では最も少女らしくない。暁のように可愛い物が好きではなく、鉄臭いミリオタ方面に興味ある。雷のように世話焼きではなく、どちらかというと放任的だ。それに電のようにお花なんか別に大した興味もなかった。


響「司令官、私は姉妹の中で最も女の子らしくないのかもしれない。司令官にすら負けている気がするんだ」


提督「自分に……? まさかさすがにそれはあり得ませんよ」


響「司令官は一人暮らしが長かったみたいで、料理が出来るそうじゃないか」


私は料理なんて全くできない。ガチ装備の冬季迷彩で海の魚を獲るほうが得意だ。それに私は司令官とは違って、体力がすごくある。女の私が男である司令官よりも体力があるって、なんだか私は女の子だという自信がなくなってくるね。思えば、私の持ち物で可愛らしいモノなんて着るものくらいだ。趣味的なモノはモデルガンやエリア51関連の本とロシアの軍事本、それにご神木を削って作った木の釣り竿という始末だった。お隣の未来の私もそうだ。私より突き抜けている。女子力はないね、うん。


ヴェールヌイ「ようやく気付いたね。そう、大きい私と小さい私には女子力が足りない」


響「……なんてことだ」


北方提督「提督勢に真摯な質問をする。真面目に答えてくれ。第6駆逐隊で最も女の子らしいと思う子を挙げてくれ。さあ、さっきから逃げている乙中将から聞こうか」


乙中将「6駆じゃ僕は雷ちゃん派ー」


北方提督「分かる。彼女はとても母性的だからね。では丙少将」


丙少将「暁で。あの子、俺の初恋の子に似ているそこらが大きいかなー」


北方提督「暁は普段からレディーってうるさいしねえ」


ヴェールヌイ「さあ、准将はどうなんだい?」


提督「えっと、ひび、」


北方提督「なるほど、電にいった『初恋』は、本当のところ彼女のキラ付け狙いだったということか。電はもちろん、この鎮守府にいる全ての人達に向けて館内放送で報告してくるよ」


提督「すみませんでした。電さんで」


北方提督「素直でよろしい。電はそうだね、なんだかんだで最も女の子しているからね」


なんてことだ。誰も私の名を挙げなかった。第六駆逐隊の中では私が最も女子力から遠い場所にいるということか、今まで気にしてもいなかったけれど、自覚できる分、きっとそれは間違いではない。だがしかし、それがどうしたと胸を張ろうじゃないか。私は私の道を往く。


ヴェールヌイ「だから響の適性者は婚期を逃すのさ」


北方提督「ヴェルちゃんは私に当たりがキツくないかな」


ヴェールヌイ「誤解だよ。あなたは一途だという意味だ。だけど、いつまで引きずっているんだい。もうあの司令官は孫がいる頃の歳だろう。もうあなたの恋は終わったはずだ」


北方提督「うわああああ……」


女性としての魅力に欠けている、という事実をヴェールヌイから突きつけられた私達はこの場で約束をした。


女子力をあげようとね。


私としてはあまり興味もない分野だけれど、なんといってもヴェールヌイの頼み事だし、取り組んでみるのもやぶさかではなかった。


響「ヴェールヌイ、見ていてくれ」


ヴェールヌイ「私はサンプルを収集しよう。カメラで暁達の女子力を撮影しよう。それを参考にして、フリーダムへの道を自重するように努めるんだ」ヴェールヌイはいった。「楽しみにしているよ。新たな可能性を切り開いた響の登場をね」


5


鹿島「響ちゃん、そこに正座です」


提督「大きい響さんのほうもですよ……」


深夜に執務室に連行されて、私達は正座で反省を余議されなくなっていた。なぜ怒られることになったのかといえば昼間に誓った女子力アップ作戦が原因といえよう。いかに私は無力なのかを思い知らされた日々に頭がショートして悪さをしてしまった。


ヴェールヌイ「ふむ……暁達はさすがだね」


撮影したカメラの映像をパソコンに繋げて流している。

暁はもう私物からして女子力高い。子犬のぬいぐるみに可愛いアクセサリの数々に、読んでいるのは女性のファッション誌だ。


雷はおねむになった暁に膝枕をしてあげて、子守唄を歌っている。その行動自体もそうだし、包容力に満ちた歌声も女子力に満ちている。


場面は切り変わり、門前の花壇を映し出した。そこにはお花の世話を楽しそうにする電の姿がある。電にはお花がとてもよく似合う。普通に女の子っぽい。


雷「ヴェールヌイが現海界していたこととか色々驚いたけど」


暁「響と大きい響に一体なにがあったのよ……」


電「校舎のほうの窓ガラスを割ったのはこのお二人なのです……?」


北方提督「違うんだ。女子力をあげようとしたんだ」


神風「女子力あげるために窓ガラスを割る? 相変わらずあなたは意味不明ですね……」


なぜか電と神風さんは手錠で繋がれている。聞けば仲良くなるために二人セットで行動しているようだ。そして


この神風さんにも意外と女子力がある。正直この剣鬼さんには負けていないと思ったのだけど、地味に神風さんは料理も出来るし、雷のようにしっかりしていることにも気付いたよ。神風型の一番艦なだけはあるね。


ヴェールヌイ「皆、この映像を見てくれ。青葉さんと二手に別れて今日一日の二人を密着撮影した」


ちなみに動画に流れる歌は私が歌ったんだ、と自慢気にヴェールヌイはいった。


ヴェールヌイ「女子力アップ大作戦。まずは小さいほうの私の戦果からだ」


パソコンの画面に、今日一日のダイジェスト映像が流れ始めた。



駆逐寮の

芝生の上

吸い込まれる空

ミリオタな男の趣味燃やしていた



神風「ヴェールヌイさん歌上手いわね……しかしですね、なぜこの選曲……?」


提督「響からの卒業とか自由とかの繋がりかと……」


電「すごく響お姉ちゃんらしいだけにすでに女子力から遠ざかっていると思うのです……」


雷「でも形から入るのは別に悪くないと思うわ。あの軍事関連の本を響が焼却するだなんてすごく本気だと思うし」


暁「とりあえず見ましょ。私がレディーの点数をつけてあげる」



料理を教わることで女子力磨きながら

間宮《んー、とりあえず自分が好きな料理を作ってみますか?》

素麺に卵焼き乗せた野郎飯だった


自由な心

学んだ女子力

意味なく思えてとまどっていた



鹿島「……」



夕食後

館外ふらつき

私達は風の中

孤独瞳に浮かべ

脱衣場向かった。



可愛い服の

女子力が

飽和した風呂で



腕立ての

ハイスコア

競いあった



行儀よい響なんて

出来やしなかった



夜の鎮守府

窓ガラス

壊してまわった


ウラー


暁・雷・電「」


提督「こ こ で す」


鹿島「バットでガラス割るだなんて不良ですっ!」


響「ごめんなさい」


ヴェールヌイ「さて二番が始まる。次は大きい私のほうの戦果だね」



みんなの

豊かな胸を

揉んで回ることで



私が

どれだけ自由か

知りたかった



自由だけが

女子力と

頑なに信じて



従うことは

負けることと

いい聞かした



生きるために

計算高くなれ

というが



妹想う

姉妹愛だけは

無垢と信じた。



北方提督《いか……いや、いなず、違うか……雷》



大切な妹達

その風呂あがり

雷と電の

区別迷った



若葉《若葉だ》



あーああああ



行儀よい響なんて

クソくらえと思った



夜の鎮守府

窓ガラス

壊してまわった


ウラー


神風「二回メエエエエ!」


北方提督「子羊みたいに鳴いて! 神風先生あなたはかよわき響の、」


神風「意味分かんないから代弁は無理です! なんであなた達は最終的に窓ガラス壊して回るの!?」


提督「……電さん暁さん雷さんはヴェールヌイさんをお部屋まで案内してあげてください。鹿島さん、今晩は彼女の見張りを頼んでもよろしいですか」


鹿島「はい……ではお二人のことはお任せしますね」


提督「ええ。大きい響さんと小さい響さんはお残りください」


ヴェールヌイが電達に連れられて部屋を出ていった。


残された私と大きい私と司令官の三人が執務室に残った。さすがに暴走し過ぎたことは自覚している。司令官のことだから長い説教を覚悟しておかねばならない。今晩は朝まで覚悟するべきか。


司令官からは予想外の言葉が飛んできた。


提督「愛とか恋とか女子力とか、あなた達うんぬんではなくて、多分ヴェールヌイさんがそれを知りたいと思っているのかと」


響「どういうこと?」


と私が聞いたらすぐに答えを教えてくれた。


提督「響さんが前にいった通りですよ」


あのヴェールヌイが自我に目覚めたのは大きい私がデカブリストに改造されたことがきっかけ。その時にデカブリストが艤装を通して大きい私から受け取った想は『愛や恋』の類であり、ヴェールヌイは自我が目覚めた時にそこへの興味だけを持って産まれた。そしてその答えを私が持っていた故に、あの適性率に至るという説明であった。コレを前提として。


提督「あくまで響さんという媒体を通して知った答えです。映画や小説、そんなモノを見るのと同じですよ。だからあのヴェールヌイさんはまだその手のことを知りたがっているのかと。まあ、彼女の性格でしょうね。素直にそんなこというのは躊躇われるのだと思います」司令官はいう。「だからあなた達をけしかけ、観察することで学ぼうとした。つまりからかわれているんですよ」


北方提督「あのヴェルちゃん小悪魔系なのか……」


提督「彼女は悪い連装砲君の力を借りているだけで、我々が最終海域に到達すれば、ヴェールヌイさんは剥がれます。もっと早い可能性も十分にあり、そんなに時間はありません。あの子には自分もお世話になっていますので、恩返しはしたいです」司令官はいう。「彼女が求めているのは『親愛』かもしれませんね。あの子自身と皆との絆です。お互いのために思い出作りを提案します」


北方提督「少し作戦を練る時間をくれ」


響「ああ、明日の朝には完成させる」


私達を眺めるだけでなく、もう少し自分から輪に入ってこればいいのに。そう思うけれど、ヴェールヌイといえばそんな感じの子だ。夢見でもそうだった。すぐそこにいるのに、私を遠くから見つめているような距離間で話しかけてきていた。恥ずかしがり屋なのか、壁を作ってしまう子なのか。


どうやらやるべきことは一つのようだ。任せてくれ。


あの子を笑わせてみせるさ。


【17ワ●:ヴェールヌイの日記帳 1】


暁も雷も電も元気そうでなによりだ。彼女達はこうして生きているのに、失った過去を知っているだなんておかしな話だ。やはり私は彼女達とは違う存在だ。


では私はどういう存在なのだろう。


艦娘が軍艦の機能を宿した人間なら。

深海棲艦が人間の機能を宿した軍艦なら。

その軍艦を真似られて製作された艤装の私はただの兵器だ。

今すぐにでも軍の保管庫にでも入るべき存在のはずだ。

実際、そうだった。私の艤装は(仲間)はみな保管庫で眠っている。


だから、遠慮して遠くから見つめちゃうんだ。

君達がそれを望まないと分かっていてもね。


それに加えて。

響、ヴェールヌイ、デカブリストの想力が入魂されているものの製作者が恐らく雑に作ったためか、響が参加していないはずの戦いの記憶まで混入している。だからもう存在としてはチグハグだ。


姉妹達が寝静まったのを確認してから、私はこっそりと外に出る。見張りの鹿島さんには上げた水に少し盛っておいたから朝まで起きないんじゃないかな。監視されるのは好きじゃない。


こっそりと私は外に出た。

鎮守府の門外を柵に沿って歩く。途中、風吹く丘にある石碑と英雄達の艤装が見えたんだ。中枢棲姫勢力の最後は響を通して見ていたから知っている。勇敢で果敢、そして誇り高き兵士だった。

人間だとか深海棲艦とか私達はずいぶんとくだらないことを100年以上も悩んでいたようだ。想によって深海棲艦にも艦娘にもなる。結局は心の有り様って考えばすぐに分かるオチだ。


街に出た。

ガードレールに腰掛けながらしばらく人の波を眺めていた。街の知識としてあるのはデカブリストに詰め込まれた響時の記憶と最終世代響の少しの記憶だ。


黒人がスカウトをしている。読めない言語の店がある。時代を感じさせるレトロなレコード店の店員は白人だった。戦時とは違って街には様々な文化が入り乱れる刺激的な人種の坩堝だった。


変わった。ぐろーばる、というやつか。


私達が手に入れた平和だけれど、そこにあるお店が具体的に何の店かも判断できない程に街のこと自体よく分からない。知っていることも大きい私と小さい私をフィルターにした知識に過ぎないのだ。私は海の歴史しか知らない。


ただなんだろうな。

昔と変わらない。いや、私の乗員達よりも生気が薄い。例え色濃い死が立ち込める日でも気炎万丈の勢いで砲雷撃戦に身を粉にしていた乗員よりも酷く疲れた顔をしている。遠慮せずにそのアスファルトの床で雑魚寝でも始めたほうがいいんじゃないか、とすら思う。可哀想だ。


自由について、考えさせられる。

あの二人の私は何のために自由だのなんだのとうるさいのだろう。


喫茶店の2回にある花火模様の小型の観覧車に目が行った。点滅するその色彩の灯りの中に老婆と老爺がいた。光に反射した薬指の指輪を視認できた。二人は手を仲良さげに繋いでいる。向かい合って微笑み合っている。その深い皺は二人の歴史を感じさせる。とてつもない愛と平和を私は目撃したような気がした。


羨ましい、と思った。

私は生きた年月と比較して、あまりにソレを知らない。この身にはあの二人のように皺がないどころか、歴史を感じさせない真白だ。つい最近までずっとこんなことすら思うことすら許されず、存在を凍結させられた冬眠の日々だった。戦争終結したらそのまま消え失せるだけだったのに、なぜだか私はここにいる。


そういえば今は雪解けの季節か。

春はいいな。いつだって春の来ない冬はないから。


【18ワ●:свобода】


響「YouTuber・響」


思い出を残すというのなら、やはり記録に残しておくことは外せないね。


そして同時に解決しておきたいことがある。これは私の意地ではあるけれど、ちょっと響は回りに誤解を受けているようなので、そのイメージアップも兼ねている。


北方提督「青葉チャンネルがある。そこで私達の素晴らしさにより、再生数1位をぶんどるのさ。なぜかといえば悪い島風さんが報酬をくれるというからだ」


悪い島風【いや、単純に私も興味あるから記録に残して欲しいって流れがじゃあ動画にしようってことになりまして、更にネットに載せようぜって流れになりまして】


ヴェールヌイ「なるほど。いいんじゃないのかな。私達に興味を持っている人は大勢いるんだろう。需要があるのならそれもいい。観ている人が元気になる内容にするべきだ」


響「そのつもりだ。私はトランス現象について語ったんだけど再生数が伸びなくて。司令官のアドバイスも踏まえて、楽しい雰囲気にしようと思っている」


北方提督「平和を強調する感じでね。そんな幸せを振り撒けば自然とこの平和を想う心も芽生えてくるはずさ。それが海の傷痕を遠ざけることにもなると願って、ね」


昨晩、案を出し合ってそういうことに落ち着いた。

なんだかんだいって私がヴェールヌイとの想い出を作りたいという意味合いが強かった。私にとって特別な存在だからね。


時間切れが来る前にこの物語を蛇足といった彼女を心から笑わせたのなら完全勝利Sさ。


2


ヴェールヌイ「……これは?」


自販機の前に立って、じいっと見つめる。


響「自動販売機を知らないのかい? そこにお金を入れてボタンを押すと飲み物が出てくるんだ」


ヴェールヌイ「ああ、思い出した……なんとなく知っている」


喉が乾いたのではなく、興味を持ったのだろう。もちろん構わなかった。私のお給金の半分は彼女のモノだし、今は彼女の要求を私が出来る限りで応えてあげたかった。小銭を入れると、ヴェールヌイは迷わずボタンを押した。さすが未来の私だ。ブラックが飲めるなんて。


ヴェールヌイ「……こはっ」


噴き出していた。


響「飲めないのにブラックを選んだのかい? 君、暁の適性もあるんじゃないかな……?」


ヴェールヌイ「違う。恐らくデカブリストの部分のせいだ。私はただのヴェールヌイではなく、デカブリストの想も混じっている。彼女、なかなか自己主張の激しいやつでね……」


響「とにかく私のと変えよう。私はなんとかいける」


暁がドラマの影響で一時期、よく飲めないブラックを飲もうとしていた。噎せていたので、その度に私のと交換していたので、飲めなくはなかった。ヴェールヌイは「すまない」といって、私のエナジードリンクを飲み始めた。「まずっ」そっちもダメなのか……。


ヴェールヌイ「君は病気なのか……?」


響「ああ、それはそういう味だよ。薬のような味がするよね」


ヴェールヌイ「今の世の中の流行りについていけないな」そういってもう一口飲むと、表情が固まった。「ウラジオストクで本体と一緒に眠りたい気分だな」


支援施設から自転車を二つ持ち出して、外へと出た。私は乗れるし、ヴェールヌイも乗れる。先輩の私は乗れないらしいが、歩くのは速く私達がゆっくり車輪を回せば、ちょうどいい感じだ。「私のことはいないものと扱ってくれ」といった。

 

とろとろと自転車は進み、春風の陽気にほだされて私が口笛を吹くと、ヴェールヌイも真似をしたが、空気が掠れた音が鳴るだけだ。口笛を吹くのに夢中になっている。

 

商店街のほうへと出る。そういえばここらは私が苺みるくさんを散歩に連れ出す時の散歩コースだった。弟のことを思い出して少しナイーブな気持ちになる。

 

「お、響ちゃん! と……」精肉店のお兄さんの表情が凍る。「もう一人の響ちゃんに大きい響ちゃんだと……」


北方提督「初めまして。姉妹なんだ。響繋がりの、ね」

 

機転を利かせた。詳しい事情は話す訳にも行かないし、その簡易な説明で構わないか。精肉店のお兄さんと少しお話をした。この店の一人息子の彼はこの店を継ぎながら草野球を趣味に毎日を過ごしているらしい。鎮守府の食料品のお買いものも大体ここだし、間宮さんもそうだけど、お使いを頼まれた人は皆ここの人達と仲が良い。オマケしてくれるのは個人商店のいいところだよね。

 

「そうだ、響ちゃん達野球やらね? 今週の日曜日に試合あるんだけどメンバー足りなくてさ、あの鎮守府もうちの町内だし」

 

北方提督「やろう。楽しそうだ」

 

「大きい響ちゃんはノリいいね。ついでにこれをやろう」

 

といって店の奥から持ってきたのは野球の道具だった。

 

響「これは……」

 

「ああ。古いやつたくさんあったけど、思い入れあって捨てられなかったんだ。だからやるよ。5つあるけど、まあ、3人だし、3つでいいか。暇潰しにでも使ってやってくれ」


響「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

 

ヴェールヌイ「グローブにサインが入ってる」

 

響「なんだって……! もしやプロ選手のサインかい?」

 

「おちゃめな俺だ」

 

響「そうか……」

 

「ハハ、贔屓にしてくれているからな。コロッケも持ってけ持ってけ。揚げたてだぞ」

 

北方提督「おお、ありがとうございます」

 

この人、丁寧語を喋れたのか。腐っても大人だね。

おっちゃんとはここで別れた。今から鎮守府に配達に向かうらしい。今は人がたくさんいるから、食料関係はこの商店街の人達のお世話になっている。戦争が終わってから近所の人達との付き合いも多くなった。今や闇は地域密着型の鎮守府になりつつあるね。鎮守府ごと平穏に溶け込み始めていた。

 

2


商店街を越えたら、段々と人口密度が増えてゆく。

自動車も増えていて、長蛇の列も見かける。こういう時の自転車は便利だ。自転車は渋滞にひっかからないし、速度だって時速36キロと、あの島風さんの速さの世界に突入可能なうえ、ガソリンだって要らないし運動不足解消にもなる優れものだからね。


ヴェールヌイ「……そういえば」

 

またヴェールヌイが自転車を止めた。見ているほうはペットショップ・マルタというお店だった。


ヴェールヌイ「君の記憶にあった苺みるくさんがいなかったけど」

 

響「……ああ、そうだね。話しておくべきかな」

 

苺みるくさんが天国へ行ってしまったことを話した。産まれてから371日を生きてこの世からお別れしたこと。あの時は鎮守府が悲しみに沈んだ。けれど苺みるくさんは最後までたくましく生きて暁との約束を守って逝った。私達にたくさんの宝物をくれた最高によく出来た弟だ。


ヴェールヌイ「素晴らしい犬だったんだね。動物に興味が湧いたよ。見てもいいかな」

 

響「うん。いいよね?」

 

北方提督「もちろん。動物は良いよね。食べ物はいわずもがな、ペットとして飼えば人生のパートナーにもなってくれる」

 

ペット・ショップを見て食べ物というのはどうかと思うんだ。この私は私でもよく分からないところがある。きっとそれが同じ響でも私との違いなんだろうね。先輩の私に未来の私に、なんだかいっててこんがらがってきた。


様々な動物がいるけれど、店内は動物特有の匂いがしなかった。ファンシーな店内の配色に動物種ごとに別れている。店員さんによれば配色は動物に気を回して色をつけていたら、カラフルになったという。動物には落ち着く色があるそうだ。私は犬に思い入れがあるから、犬のコーナーを見ていた。みな毛並みが良い。ちなみに大型犬では私はハスキーが好きだ。暁は気品があるダルメシアンが好きで、雷はゴールデンレトリバーで、電はラブラドールが好みらしい。

 

響「先輩の私は?」

 

北方提督「ここにはいないけど、グレートデンかな。飼ってたことがあるんだ。自転車くらい大きい癖に臆病なやつでね、鶏の威嚇で尻尾を丸めるような子だったさ」

 

響「……可愛いね。犬は良い」

 

苺みるくさんも大人になれば、かなり大きくなってたはずだ。そう思うと胸がチクリとする。ダメだな、私は。天国にいる苺みるくさんに心配をかけてしまいそうだ。

 

ヴェールヌイ「……私は翼があるのがいい」

 

いつのまにか背後にいたヴェールヌイが私の袖を引っ張った。連れて行かれた先は猛禽類のコーナーだ。彼女が足を止めた先には鳥がいた。白とグレーと黒の混じった羽毛を持ったフクロウだ。アフリカオオコノハズクと名札にあった。

 

ヴェールヌイ「とても可愛い子だ」

 

可愛いというよりカッコいい印象だった。ヴェールヌイとフクロウはじいっとお互いを見つめあって動かない。

 

近くにいた店員さんが話しかけてきて、フクロウのことを教えてくれた。この子はフクロウの中でも人間になつき安くて、飼いやすい部類だという。そしてまだ子供だけれど、店員さんが見てきた中で一番頭の良い子らしい。


フクロウがヴェールヌイのほうを見て甘えたような声で鳴いた。

 

それがトドメらしい。ペット・ショップあるあるだ。


ヴェールヌイ「欲しい。私はこの子が気に入った」

 

響「それはさすがに……動物を飼うということは簡単じゃないんだよ」


北方提督「任せてくれ。私と後輩の私で面倒を見る」

 

先輩の私がそういった。いやいや、飼うって今いる場所は鎮守府だし、大丈夫なのかな。確かにあの鎮守府はペットオーケーとはいえ、フクロウだよ?


ヴェールヌイ「いいのかい……?」


響「司令官に聞かないと……」

 

北方提督「ダメ、が帰ってくる。買って帰ればこっちのものだ。動物好きの皆を総動員しても、悪い島風と契約してまでもこの子を飼ってみせるさ。もちろん世話もきっちりやる」

 

響「了解した。それなら私はこの場は口を閉ざそう」

 

北方提督「店員さん、この子も引き取りたい。世話を見るに当たって色々と教えてもらっても構わないかい?」

 

そして新たな家族が増えることになった。

先輩の私は肝心なところを見ていなかったようで、お会計の時に冷や汗を流していたよ。お値段云十万円の世界だからね。先輩の私は「それでヴェールヌイの笑顔が買えるのなら安いものさ」とかすれた声でいっていた。自分にいい聞かしているような感じだ。


響「名前はどうするんだい?」

 

ヴェールヌイ「свобода」

 

スヴァボーダ。

自由という意味だ。


3


提督・丙少将・乙中将「大きいほうの響いいいいいい!」


提督勢がキレた。司令官が大声出すのも珍しいね。前に電と幼馴染みだったということがバレた時と、演習で秋月さんにエールを飛ばした時の2回だけ聞いたことがあるくらいだ。


北方提督「事情は話そう。まずは落ち着いてくれ」


と、そちらの相手は先輩の私に任せるとした。

皆がスヴァボーダさんに興味津々のようだ。私はお説教を受けるより、そちらの方に混ざりたい。

 

暁「ええと……?」

 

電「フクロウさんなのです……」

 

雷「電に似てるわね」

 

電「!?」

 

雷「トランスした時の瞳はこんな色彩だったじゃない」

 

電「む、確かに。なんだか親近感が湧いてきたのです」

 

暁「ヴェールヌイに響、動物を飼うってことちゃんと分かってる?」

 

ヴェールヌイ「ああ。愛情を注ぐよ」

 

暁が真摯な顔での問いに私も頷いた。もちろんだ。苺みるくさんの時と同じように責任を持つつもりだ。惜しみ無い愛情を注いでパートナーと呼んでみせるさ。それにヴェールヌイが愛情を注ぐといった。これはきっと彼女にとっても良いことだ。司令官もきっと納得してくれるはずだ。

 

卯月「ヴェルー、名前はー?」


ヴェールヌイ「スヴァボーダ。自由という意味さ」

 

卯月・長月・菊月「かっこいい(っぴょん)!」

 

初霜「そういう感じがかっこいいんですね」メモメモ

 

電「初霜さん多分この3人はあれなのです。ナチスとか聞くとかっこいいとか思っちゃうようなちゅーにな頃なのもあると思うのです」

 

ヴェールヌイが口笛を吹いた。スヴァボーダがそれに呼応するように飛翔した。スヴァボーダはさっと伸ばした右腕に舞い降りてきた。

 

ヴェールヌイ「いい子だ」

 

初霜「す、すごいです……!」

 

このパフォーマンスに皆が沸いた。私も感動したよ。これはとてもかっこいい。

 

弥生「……」

 

弥生さんが後ろからじーっとスヴァボーダを見つめているの気配を察知したのか、スヴァボーダさんは首だけ回転させて真後ろを向いた。弥生さんが凍りついたように動かなくなる。スヴァボーダさんがまた羽ばたいて、今度は弥生さんの頭に降りる。

 

弥生「ひ、た、助けて……」

 

卯月「弥生、動くなよー、下手に動くと爪で怪我しちゃうぴょん」

 

弥生「ひぃ……」

 

ヴェールヌイ「大丈夫」


スヴァボーダさんは弥生さんの頭から飛び上がり、次は廊下のほうに飛んでいってしまった。弥生さんは胸を撫で下ろしていた。

 

廊下から白露型の皆の声が聞こえてきた。気になったのかスヴァボーダさんは廊下へと飛んでいった。


わるさめ「んんん!? 姉様一同に聞く! わるさめちゃんの頭に飛んできた謎の飛行物体はなに!?」

 

時雨「鳥……?」

 

白露「フクロウさんじゃないかな、これ……!」

 

夕立「夕立知ってるっぽい! アフリカオオコノハズクさんだ!」

 

白露・時雨「かっこ可愛い」

 

わるさめ「イタタタタ! そのアフリカなんとかバードがわるさめちゃんの頭の上で足踏みしてるっス……! 鉤爪のせいで頭皮装甲が損傷してると思われるんだけどわるさめちゃんがなにしたというの!?」

 

白露「猫ちゃんが毛布の上に乗って足を踏み踏みするあの感じじゃないのかな?」

 

ヴェールヌイ・響「スヴァボーダっ」


私達が呼んでもスヴァボーダは来ない。わるさめさんの頭に乗ったままだった。「ふええ」とわるさめさんが愚図っているが、頭の上から退こうとしない。どうやらわるさめさんがいたく気に入った様子だった。次の瞬間には電のほうへと羽ばたいた。


電「はわわ!」


電がさっと右腕を伸ばすと、それを木枝代わりに止まる。なにやら目を閉じている。繊細な生き物だと聞いたけど、どうもスヴァボーダさんは人になつくし、人に囲まれてもマイペースなままだ。飼いやすそうな子だった。


ヴェールヌイ「申し訳ないね。どうやら電とわるさめさんが気に入ったようだ」


響「電、そのままの体勢で歩いてくれ。スヴァボーダさんを用意したお家の中に入れよう」


電「了解なのです。雷お姉ちゃんと暁お姉ちゃん、電の右腕を支えてください。ちょっと重いし、腕を伸ばしたままだと歩き辛いのです……」


翌日、司令官がスヴァボーダさんの本を買ってきてアフリカオオコノハズクの生態や飼育についてまとめたモノを食堂廊下の掲示板に張り出した。特別にスヴァボーダさんと私と先輩の私、そしてヴェールヌイの部屋が用意されて、住むことになった。


【19ワ●:ヴェールヌイの手紙、響へ】


この身体を手に入れて1日が経過したけれど、残り僅かなタイムリミットは刻一刻と迫っている。それを思うと、決して今の状態にされたことを幸運だとは思えないよ。


忠犬、苺みるくさんと私を比較してみる。

あの子は残り僅かな命の灯火で暁達に尽くしたんだろう。正しく名犬といえる子だったと私は思う。私は妹達にも小さい私にも大きい私にも、あの夢を叶えてくれた准将のためにも尽くそうという想いは湧き上がらなかった。


だろうな、と私は納得もしている。海の傷痕を撃破して暁の水平線に私達は欠けることなく帰投した。それで執着といえるモノは無くしてしまった。そこで終わりで良かったんだ。だから、この物語は蛇足、と答えた。


ああ、君のいいたいことは分かる。

分かるんだ。私は君とずっと一緒だったんだから。それはきっと君も一緒だろう。


けど、そこを誤解している。

他の誰よりも私を知っているからといって、私の心を知っているとは限らない。きっとそこで齟齬が起きるかもね。ほら、君は私がこんなこと書いているとは思わないだろう?


ペットショップでのこと。

顔には出ない私だけど、スヴァボーダさんを飼うことを許可してくれたのは意外だった。周りは私が姿を借りているだけの残滓であることを知っている。永くない私が動物を飼おうだなんて、無責任極まりないことだと知っていて、欲しいといったんだ。


後ろに手が回るというのかな。

大きい私は「これでヴェールヌイの笑顔が変えるのなら安いものさ」といった。生きていると何気ないことから、責任というものがまとわりついてくるんだね。


今日の1日は別に面白くも楽しくもなかった。

加えていえば、周りが私にばかり構ってくるのが少し煩わしい。心の奥底では放置しておいて欲しいと思っていた。このままスヴァボーダさんと見つめ合ってそのまま消えてしまうだけで私は良いんだ。本音をいえばね。


でも、そんな私のままではダメだとも思う。

だから、行動しようと思う。

自由だったけれど、暇ではなくなった。


そろそろ立ちあがらなければならないね。

最後の海で何度絶望しても折れずに立ち上がり続けた君達の隣に並べるようにね。


まず明日に誘われた野球のルールを調べた。

明日の試合、勝ったら笑えるかなって思った。

なんだか日常に興味が出てきたよ。


この日から私は生きることを始めたんだ。


ルールを覚えた後、私は立ち鏡に向かい合った。

笑顔の練習を始めたよ。

今はまだ筋肉が動いただけの笑顔とは呼べない表情だけれど。


この時ばかりはカメラが回ってなくて助かったと思う。


【20ワ●:В одно перо и птица не родится.】


提督「そんな大事なことを今日になって……」


先輩の私が今日に草野球に参加するという旨を伝えたようで、司令官が慌てふためいた。司令官はなんだか最近、近所付き合いも含めて、人と関わることに敏感だ。私達の管理責任もあるし、配慮といったことも色々とあるのだろうが、気負うこともないと思う。誘われた野球に参加するだけだ。


響「そこまで気にすることかな?」


提督「いえ、スヴァボーダさんのお世話を大きい響さんがやるとのことなので自分が代わりにお二人の付き添いに……」


響「ああ、なるほど……司令官、忙しいところ悪いけれど、お願いできるかい? そうだな、私はここであの約束を使おう」


約束というのは最後の作戦で帰投した時に司令官がみんなと約束した『1つだけいうことを聞いてくれる』との内容だった。司令官は了解です、支度を始めた。どうやら融通は利くらしい。


提督「……」


響「どうかしたのかい?」


提督「雨が降らなければいいんですけどね、と」


そういえば降水確率は午後から20%だったかな。でも雨がぱらついた草野球っていうのも乙だよね。それはそれで良い演出だ。プレイ続行不可能にさえならなければそれでいい。


ヴェールヌイ「……行こうか」


2


雨が降るかもだけど、ヴェールヌイが「箱の中は好きじゃない」といったので皆で自転車で向かうことになった。司令官が一キロくらいで息を乱し始めた。


ヴェールヌイ「准将は体力不足だね。鍛えたほうがいい」


提督「ええ、明日から島風さんの朝のランニングに付き合って見ようかな……」


県営グラウンドには商店街の皆が集まっていた。司令官は商店街の皆に挨拶をして回っている。司令官はこんなところでも人気者のようだ。世界を救った英雄がいりゃ安心だな、だなんていわれたからから、ひきつった笑いを浮かべていた。まさか参加させられるとは思っていなかったのだろう。「期待しているよ」と私は司令官に意地悪をいってみたら、更に困ったような顔をした。


私達は肉屋さんのおにいさんの車の中でユニフォームに着替えて、グラウンドに出た。司令官はカメラを回したいので、控えでお願いします、とのことだ。お兄さんは「准将さんの作戦、楽しみにしてますよ」と笑っていた。司令官は参加を避けたつもりが、火を避け、水に陥るといった風だ。もう覚悟を決めてくれ。


「うーん、今日はピッチャーとキャッチャーが足りないんだけど、荷が重いから守備は外野の、」


ヴェールヌイ「キャッチャーをやらせてくれ。そしてピッチャーは小さい私がやる。期待して任せてもらえないだろうか」


ヴェールヌイがこのような場で自己主張をしたのにも驚いたけど、私がピッチャーに指定されたのはもっと驚いた。


「……大丈夫か? 向こうのチーム、本格的に力を入れているところだぞ? 気楽にやろうぜ、とかいって勝ちに全力の連中だぜ」とおにいさんはそう自分でいって「まあ、何事もやってみなくちゃ分からねえか。あまりに難しそうなら准将さんからタイム入れるようにいってもらうからさ、無理なら無理っていってくれな」


ヴェールヌイ「いわない。必ず勝つ」


決意に満ちた顔だった。

一体君はどうしたんだ。この時からヴェールヌイのことがよく分からなくなってきた。


彼女のその真剣な雰囲気が伝わったのか、皆も納得してくれた。負けられない、とヴェールヌイはサインを発案した。サインは覚えたけれど、私はピッチャーだなんてやるのは始めてで、変化球どころか、ストレートの握り方すら知らないど素人だ。ヴェールヌイだってキャッチャーなんてやるのは初めてのはずだ。ヴェールヌイが「大丈夫だ。私がサインで助ける」といってくれたので、がんばってみるとした。


後ろには頼りになる商店街の皆もいるしね。

背番号『1』のエースナンバーを背負って立つマウンドは気分が高揚する。防具をつけたヴェールヌイがマスクを取って、立ち上がった。そして両手をあげて、


ヴェールヌイ「しまっていこう!」


信じられないくらい大きな声をあげた。

一体どうしたんだ。本当に彼女はあのヴェールヌイなのか?


3


向こうの一番バッターが帽子を取って、審判に挨拶した。ヴェールヌイに向かって微笑んでなにか言葉をかけていた。なんだか孫を見るような感じだ。見た目がこんな子供だし、相応に扱われても仕方がないだろう。向こうはなんだか手加減気味に気楽に振ってみるかな、だなんて空気が全身から滲み出ている。


私の投球には速度がなく、制球力はある。ただサインのままにヴェールヌイのミットめがけてボールを放っただけだったけれど、なんと1回表を三者凡退に抑えることができた。


ヴェールヌイ「偶然に過ぎないけれど、君はすごく運動神経がいいんだね。70キロくらいも出せるなんて思わなかった」


「響ちゃんすげーな。うちの肉を食べているだけはある」


響「建造状態ならプロ顔負けのボールを投げるんだけどね」


「はは、今のままでも十分すごいって。キャッチャーの響ちゃんのほうの配球指示もドシロートとは思えなかったぜ。ぶっちゃけ滅多打ち覚悟していたけど、二人とも軍人だし、身体使うことは苦手じゃないか。嬉しい誤算だぜ」


司令官、目を背けてどうしたんだい?


「おいおい、今のバッティングはなんだ。ぶっちゃけ俺も孫を慈しむみたいに目の保養していたけど、ツーアウトになった時に気付いただろ。めちゃくちゃ勝つ気で投げてるし、手加減が気に入らないらしい。俺らもちょっと大人げなく行こうや」


「はは、大きな声でいいやがって。マジで大人げねえや。どうやら次からが本番みたいだ。大丈夫か?」


響「ああ、もちろん。体力はあるし、精神も並みのことではへこたれない」


ヴェールヌイ「本気で来てくれなきゃ勝つ意味も薄い。私達が大人をもたまげさせた英雄だと気付いてくれたならなによりだ」


この調子なら勝てる。ヴェールヌイは司令官(マネージャー)に防具を外すのを手伝ってもらっていた。「司令官、私の勇姿を見たかい?」と聞いていた。准将、ではなく、司令官と呼んだ。


提督「もちろんです」


ヴェールヌイ「そうか」笑ってはいないけれど、嬉しそうだった。「司令官、作戦についてアドバイスがあったらいつでもいってくれ。あなたの言葉なら耳を貸すから」


ヴェールヌイが夢見で話しかけてきた時も現海界をして話した時も、私より大人といったような印象だったけれど、実のところ、そう振る舞っていただけで、本当の彼女はこんな風に見た目相応の女の子なのかもしれない。そう思うと、今の彼女のはしゃぎようは胸に込み上げるものがある。


彼女は今を生きる人間のような変化を見せているから。


ああ、と私は駆逐艦響になる前の人間時代を思い出した。私には血の繋がった姉がいた。あまり欲のない子で今のように誰かが楽しそうにしているのを見るだけで、私は幸せな気分になれる。


お陰さまで気合いが入ったよ。

商店街精肉フェニックスのエースナンバーを背負う者として全ての回を三者凡退に抑えて、皆に教えてやろうじゃないか。


信頼の名は伊達じゃない、ってね。


4


9回表だ。

私達はやり遂げていた。なんども危ない場面はあったけれど、守備に助けられてなんと私とヴェールヌイのバッテリーは無失点だ。だけど、向こうも無失点だ。


ここに来て息も上がってきた。


5回を過ぎた辺りから向こうのチームは、露骨に本気を出し始めた。ベンチからサインを出したり、選球を始めたり、バントを駆使してきたりしてきたのだ。球数を稼がれ、バントの処理に走り回された。私を疲れさせる作戦だと気付いたのは7回だ。


その作戦は今の私の疲れようからして効果的だった。それに加えて向こうは盗塁もし始めた。ヴェールヌイの肩では刺すことは出来なかったから、塁に出られたら自然とスリーベースになってしまう。


向こうが大人げないなどとはいわない。本気を出してくれていることに感謝をいいたいほどだ。今や私は完全にアスリートの精神を持っていた。


4番バッターと向かい合う。大学で野球をやっているという助っ人の大学生のようだ。守れば壁のようにホームベースに立ち塞がるキャッチャーだ。攻撃のほうもこの人だけは1回も三振を取っていなかった。凡退に抑えられたのはヴェールヌイの配球と、守備が冴えているお陰だろう。打席に立たせたら必ずボールを前に飛ばされている。いつ柵を越えられてもおかしくない。


7回に入った時から雨が降ってきている。少し手元が滑り始めて暴投を意識してしまって制球力にも乱れが生じている。それでもここを凌いで次の攻撃で1点を取れば勝利だ。


軍艦響になる前、ここまで勝負事に真面目になったことはなかった。あの頃の私は病弱で体育も見学することが多かった。ベンチで皆を眺める日々が多くて、私は運動する皆の笑い声を聞いていた。そしてやってきた幼い私にはあまりに辛い家族の死去の連続。優しかった父が、やんちゃだった姉が、私と二人きりになってから疲労で死んでしまうほど社会と戦ってくれていた母が、この姿を見たら、なにを想うのだろう。


今の私は、こんなにも真剣に生きている。


響という存在の力を借りて、この健康な身体を手に入れた。そして、その響としての使命も果たすことが出来た。

あの艤装にヴェールヌイ、君がいてくれたからこそだ。だから私達は海の傷痕に負けなかったし、皆の力を借りることであの歴史最悪の神様を海に還すことも可能にした。ヴェールヌイ、君がいれば私は誰にだって負ける気がしないよ。


その君は勝ちたいと心から願っている。


私は強く歯を食い縛った。


死んでも負けたくない。


陸の上の勝負でこんなこと思ったの人生で初めてだ。私も街に出るようになって、ヴェールヌイのいった海の呪いから解放されかけているようだ。あの日に建造で被った響の殻からまた抜け出して街の女の子に戻る時が近付いてきている。


『艦隊これくしょん』を卒業する日は今日なのかもしれない。


ヴェールヌイのサインに頷いて投球フォームに入る。今までぱらついた雨の悪さで制球力を落とさないよう、緩く投げていたけれど、全力で投げろ、との指示だった。


大きく振りかぶった。腰をひねり、左足を地面から浮かして、正面に戻ってきたグローブの中から右手を抜いた。右肩から腕がぐわんと回る。頭上より高いリリースポイントからボールを放った。全力投球だ。響となってから初めて砲弾を放ったのにも似た衝撃が身体を揺さぶった。


5


ヴェールヌイ「気にしなくていい。むしろ心折れずに次の打者をよく打ち取ったよ。切り替えよう」


4番には本塁打を打たれてしまった。

真芯で捉えた小気味の良い音が炸裂してから、意識が飛んだかのように記憶が飛び飛びだ。最後に見たのは次のバッターが打ちあげたファールボウルをヴェールヌイがグラブに収めた光景だった。


「落ち込んでんなあ。あっはっは」


響「なにがおかしいんだい」


「おっと、ごめんごめん。俺はそういうの好きだぜ。草野球1つでも本気で喜んだり悲しんだり出来るのは、間違いなく才能の1つだ。響ちゃんは絶対に野球、上手くなるよ」


ヴェールヌイ「そうだ。次に活かせばいい」ヴェールヌイが私の背中を叩いた。「司令官、次は私の打席なんだが策はないか。私はまだバットにボールを当てもしていない」


「あったら遠慮せずにいってください」


提督「うーん、8回裏に気付いたのですが」司令官はいう。「あの投手の球種はカーブとストレートとスローボールのみですね。あの投手にはいくつか癖がある模様。カーブを投げる時に手首を分かりやすく内側に曲げる癖があります。利き腕がグラブから出ている時なので打席からも分かりやすいかと。それが当たれば、球種を絞ることができるのでは、と……」


「かか、試してみる価値はありそうだな」


ヴェールヌイ「私が塁に出る。当てても内野を越すかどうかだけど、繋げることは出来る。サヨナラ勝ちを目指そう。司令官、一応聞いておくけど他にはないかい。なんでもいい」


提督「ならサード方向に球をバントで転がすとか。向こうの三塁手、足が遅いです。強肩のピッチャーとキャッチャーが処理していますね。かなり難易度が高そうですが、バントで三塁手に処理させるよう上手く転がせれば、ヴェールヌイさんの足ならきっと」


ヴェールヌイ「やってみるよ。バントなら当てられそうだ」


バットを持ってネクストバッターズサークルに入る。前打者は強烈な当たりを出したけど、2遊間の選手が打球に鋭く反応し、飛び付いた。スーパープレーをしてアウトになってしまった。ここに来て向こうの守備も更に冴えを見せ始めてきた。


「すまん。今のはヒットかと」


そば屋のおじちゃんが悔しそうにいった。


響「大丈夫。私達が取り返す。守備に助けられた分はこの回のバットで返してみせるさ」


「それは頼もしい。ベンチから応援しているよっと。あいたたた、最近バットを思い切り振ると腰が痛くて仕方ねえや」


ヴェールヌイは大きな声で挨拶をして、打席に入る。バットを構えた。バントの構えはしていない。まさか前進守備をさせないようにしているのだろうか。


提督「……む」


司令官も驚いている。ヴェールヌイはなぜこんなにも野球のルールに詳しいのか。昨夜、調べたとしか思えなかった。そう考えたのなら、あそこまで勝ちに固執してプレイボールから気合いが入っていたのは全力で勝ちに行くと昨日から決めていたからか。


ヴェールヌイは一球目を見逃した。球が曲がっていた気がする。外角高めのストライクゾーンから逃げるカーブだったのかボールだ。そして2球目は今までの打席と同じく思い切り振った。


響「ば、バントじゃないのかい?」


提督「読みのボールが来ていない。だから餌巻きしたんじゃないですかね。一度バントの構えを見せて前進守備を取られたら終わりです。ヴェールヌイさんは今までボールに触れられもしていないですから、向こうはやってくるでしょう。なので、一度目のバントで成功させなきゃ厳しいです。今の大振りはバントを悟らせないためとか?」


「あの子よく考えてんなー」


そして3球目が放り投げられた。

本当だ。投手の手首が内側に曲がっている。そのカーブにヴェールヌイはバントの構えを見せた。顔を前に出しすぎて当たらないか心配だった。ヴェールヌイはプッシュバントでサード方面に球を転がした。濡れたグラウンドだから球の勢いをつけてプッシュバントにしたのか。


「上手い! ファールかどうか際どいぞあれ……って取るのか!」


しかし、そのバントは完璧とはいえなかった。

キャッチャーの反応が速く、そして的確だった。ファールを期待するよりも投げて刺したほうが確実だと判断した、いや、していたような速さだ。バントされた時のことを考慮していたのか。


響「ヴェールヌイ!」


懸命に走る彼女の名を私は叫んだ。

ヴェールヌイは不格好なフォームで一塁へとがむしゃらに駆けている。すでにボールは一塁手へ向かってレーザーのような軌道で飛ばされている。ヴェールヌイが足を滑らしたのか体勢が崩れるが、倒れる前に右足を軸にして不格好に飛んだ。


ボールはグラブに吸い込まれるようにして収められ、ボールがグラブの皮を叩く心地のいい軽快な音がした。

ヴェールヌイは一塁ベースを両手で抱き締めている格好のまま動かなかった。審判は判断に困ったのか、グラウンドには緊迫した静寂が支配した。審判は高らかな声でジャッジを下した。


セーフ!


私達はチームメイトの皆とハイタッチを交わした。


提督「……タイムです」


6


ヴェールヌイ「繋がった。勝てそうだ」


ヴェールヌイの白い姿は泥まみれだった。ベースに飛び付いた時か、頬に擦り傷が出来ている。司令官が救急箱で応急処置をした後にいった。


提督「右足、挫きましたね?」


ヴェールヌイは確かに右足を気づかったような歩き方をしていた。「問題はない」と彼女は強くいった。


響「ダメだ」私は同じく強く返した。「冷静になろう。勝ちたいんだろう。怪我をした足ではアウトになる危険が跳ねあがる」


彼女がこの試合に賭ける思いの程は理解しているつもりだ。だからこそストップを賭けた。野球はチーム戦だ。今まで私達の失敗を守備でカバーしてくれた皆が信じられない訳がないはずだ。


ヴェールヌイがしばしの沈黙の後にいった。


ヴェールヌイ「確かに信頼できる。後は任せられる」


「おう、任せとけ。次は俺だな」


そして誰が代走を務めるかの話に流れた。こちらの選手はもともと今日はメンバーが足りず、ギリギリだった。ならば代わりに走れるのは司令官だけだった。


提督「ちょっとこの場面で自分に任せるのは背水の陣的な判断だと思いますが……やるしかないですよね。覚悟を決めます、か」


その時、曇天を鳥が舞った。ヴェールヌイの右肩に舞い降りてきた。見間違えようもない。スヴァボーダさんだ。続いて声高らかに声がした。


北方提督「聞こえていたよ。ヴェールヌイの代走はヴェールヌイの私が担う」


響・ヴェールヌイ「大きい私!」


北方提督「この回は1点でもいい。延長戦で私に回してくれたら必ずサヨナラホームランを打つさ」


頼もしい助っ人がやってきてくれた。


7


私はネクストバッターズサークルに移動した。


バッターボックスには7番のおにいさんがいる。

本人いわく長打力はない足回りが得意な選手だったという。攻撃よりも守備に燃えるといっていたのだけれど、この打席回は気合いが入っているようだった。ただならぬ熱を全身から放っている。打つ、と予感させる気迫だった。これが9回裏ツーアウト、ビハインドの魔法なのかもしれない。


私は深呼吸を繰り返して、何度もシミュレーションをした。集中力を高めたいのだけれど、大きい私が盗塁だなんて真似をするから気が気で入られなかった。だけど、大きい私は足が速かった。あの強肩のキャッチャーでも刺せない足に戦慄すら覚えた。晴れの日だったらプロ選手にも劣らない足を発揮するのではないだろうか。


打球音が響いた。

打球は一、二塁間を鋭く転がった。

アウトのコースだったけれど、グラウンドが濡れて荒れ始めているのか、打球が面白い跳ねかたをした。まるで私達の味方をしてくれているかのように2塁手の前で斜めに跳ねた。ボールがグラブを大きく弾いて、地面を転がる。すぐさま拾い上げたが、一塁はもう間に合わない。牽制したのは三塁のほうなので、大きい私は三塁を蹴ってホームに行くことはしなかった。


また勝利への道が繋がった。


私は静かに燃える闘志を携えて、バッターボックスに入る。


向こうのチームは前進守備を取った。

私はヴェールヌイより力があって3回の裏で外野にボールを運んでヒットにしているからだろう。センターは前進守備を取ることでその時のヒットをアウトに出来る位置に陣取っている。加えてスクイズも潰されている。


ヴェールヌイ「響! 点を取ってくれ!」


ベンチからヴェールヌイの想が飛んで来る。任せてくれ。


向こうは完全に私を打ち取る気満々だけれど、こちらにも手はある。まだ向こうはこちらが球種を読めていることに気付いてはいない。だから、今の打席は前回よりもバットに当てられる可能性は高い。だけれど狙ってゴロやフライを打つ技術もない。


だったらどうする。

私の心に従った。

バットの頭を自由な空へと向けた。


ホームラン予告だ。外野の頭を通過させてその守備を取ったことを後悔させてやりたかった。本塁打で取られた点は、サヨナラホームランで倍にして叩き返す。


燃える。この身体の内側から発される熱が身体に落ちた雨を蒸発させてしまいそうな程に心が熱く煮えたぎっている。最後の海でヴェールヌイと一緒に戦った時を思い出した。あの時は砲が身体の一部かのように繊細に扱えた。放つ砲弾が海の傷痕に当てるまでの行程が、手を伸ばして触れる、というような不思議な感覚だった。今回はこのバットが延長した手のように感じた。


カーブ。

枠内に入っている。内角少し高めだ。曲がれば私の腰辺りにまで落ちる。最も打ちやすいところに来た。思い切りバットを振り抜いた。真芯で捉えた衝撃がバットから全身に波紋のように響いてくる。高く高く空へと吸い込まれるようにして、ボールは飛んでゆく。


バットをそのまま投げ捨てて、私はとにかく走った。ボールを眺めている余裕なんて必要ない。グラウンドの泥が私を鈍足にする。なぜ走るんだ、と嗤っているかのように思えた。


審判の声が聞こえた。

ゲームセット。


それでも私は足を邪魔する泥をはね除けるように蹴りつけて、一塁のベースに向かって飛んだ。


8


整列。

ありがとうございました、と挨拶をして、踵を返した。


隣にいるヴェールヌイが、唇を噛み締めている。


泣いてしまった。泣かせてしまった。

センターフライでアウトになってしまったのは私だ。彼女にかけてやる言葉がなかった。


響「ヴェールヌイ、その、私は……」


ヴェールヌイ「……」


ヴェールヌイが、口を利いてくれなくなった。



私も泣いてしまった。


【21ワ●:ヴェールヌイの手紙 響へ】


怒るつもりなんてなかった。

何故ならば君は精一杯やったからだ。

結果は仕方ない。だけど、私は感情を抑えきれなかった。今もだ。君にホームランを打って欲しかった。そうして大逆転して君とハイタッチを交わしてみたかったんだ。そのために付け焼き刃だろうと、野球の知識を頭に叩き込んだ。


夢、敗れた。

 

突き放すような態度で君を泣かしてしまった。

君の記憶を思い出すよ。君も姉がやっていたパズル、その残りを埋めてしまって、翌朝、姉が泣いてしまった。その時と同じことを考えた。こんなはずじゃなかった。

 

そろそろお別れだね。

誤解しないで欲しいんだけど、君のことは嫌いじゃない。むしろ大好きさ。こんなことのんきに思えるのもきっと海の戦いを終わらせたからだね。素晴らしい自由が溢れてる。


でも私は君に声をかけずにいようと思う。

私は言葉足らずだから、また余計に君を泣かしてしまうかもしれないからね。でも、お手紙ならその心配もない。だから君がこの手紙を読んだ時、泣き止んでくれると助かる。


10年か。君と私が響で繋がって今日までの時間は。

君は本当に私にたくさんのことを教えてくれた。

 

大きい私にも礼をいうよ。

今の私がいるのは大きい私が響の歴史を継いだ兵士になってくれたお陰だ。

 

二人はこれから街へと戻って、響の記憶を持ちながら新しい自分になってゆくのだろう。私も還るべき場所へそろそろ帰ろう。とっくに暁の水平線に浮かんだ太陽は沈んでいる。たくさん遊んだし、そろそろ私も帰らなくちゃね。


私は足の痛みを堪えて最後の散歩に行くけれど、スヴァボーダさんは少し貸してもらうよ。この子が私の身体にくっついて翼を羽ばたかせると、抜けた羽が舞う。なんだか私に羽が生えているような気分になる。訳の分からない気分の高揚だけど、理由は聞かないでくれ。


小さい私というのも失礼だったね。ごめんよ。

わたしはあなた。あなたはわたし。

もうその期間は終わって、少しだけれどそれぞれの毎日を生きて、頭では違うことを考えていた。もう私と君は全く別の存在さ。もっと早くに気づいていれば、私はきっと響を泣かせることもなかっただろう。


В одно перо и птица не родится.


同じ羽の鳥は産まれない。

 

【22ワ●:響とВерный:четыре】


北方提督「ヴェールヌイは部屋に鍵をかけてしまった。まあ、そっとしておいてあげよう。准将も下手に慰めるのは止めておいてやってくれ」


提督「ええ……」


北方提督「放置しておけばいいさ。このような子供同士のケンカに大人が介入するのではなく、自分達で仲直りさせるべきだと私は思う。まあ、かける言葉はあってもいいと思うけれど、私は思い付かなくて参っているところだ」

 

食堂に来たけれど、大人の私のような食欲は湧かなかった。

今、私の中は後悔で一杯だ。しても仕方のないことだと分かっている。けれど、心で割り切れずにいた。

 

雷と電が心配そうに声をかけてくれているけど、その内容は頭にまるで入って来なかった。暁が珍しくむすっとした顔をしている。両手をバンッと強くテーブルに叩きつけた。

 

暁「ねえ響、苺みるくさんのこと覚えてるわよね」

 

暁は真剣な顔だった。

 

暁「私も苺みるくさんに泣かされちゃったし、そんな風に酷く落ち込んだけれど、今はもう大丈夫。あれから少しずつだったけれど、もう笑えるようになったし」


響「……ヴェールヌイと苺みるくさんはまた別なんだ」


暁「誰のお陰で笑えるようになったかといえば、第1に苺みるくさんね。苺みるくさんが頑張って、一歳の誕生日を越えて生き抜いてみせてくれたお陰よっ」


響「暁は一体なにがいいたいんだい……?」


暁「響がヴェールヌイを本気で泣かせてしまったのなら、響がヴェールヌイを本気で笑わせてあげることも出来るってことだし!」


提督・北方提督「珍しくお姉ちゃんしてる……」


暁「はいそこぷんすか!」

 

暁の言葉は真に迫るものがあった。

確かにその通りのように思えた。本気で泣かせるほどの影響力があるのなら、本気で笑顔にさせる影響力もあるはずだ。私は椅子から立ち上がり、ヴェールヌイのもとへと走った。


2


司令官、後で説教は聞くよ。鍵がかかっている部屋の木扉をバットで破壊した。中を見渡した。かごの中にいるはずのスヴァボーダさん、そしてヴェールヌイの姿も部屋にはなかった。

 

悪い島風【おっす。ヴェルちゃんは出て行きましたよ】

 

代わりに椅子に座った悪い島風さんがいた。

 

悪い島風【タイムリミットのこと伝えに来たけど、どうやら自分で悟っていたみたいですね。まあ、残り数時間で悪い連装砲君に戻るでしょう。ああ、スヴァボーダさんは私が連れ戻してくるんで大丈夫でっす!】

 

響「どこに行ったか教えてくれ」

 

悪い島風【ヴェルちゃんの気持ちを尊重して教えませっん! これを読んだら風呂入っておねんねしなさい!】

 

投げ捨てた手紙を拾って内容を読んだ。

現海界してからの1日ごとの日記帳だった。怒ってない。君のことが好きだ、という一文にますます彼女に会って伝えたい言葉が増えてゆく。

 

悪い島風【ねえ、ロスト空間が消えたらどうなるか。そろそろ気付いた? 私もついこの間に確信を持ったんですけど】


響「……」

 

悪い島風【ロスト空間がなくなるだけで想は消えない。この世界のどこかで観測されずにひっそりと引き込もっているんだよ。だから、別に会わなくても大丈夫さ】


響「大丈夫じゃない」


悪い島風【いい顔だ。第2の海の傷痕がー、とかそんなこと考えているほど、あなたは余裕を持っていないはずだからね。自分のことで精一杯、そんな器じゃないんですって】

 

響「……そうだね。でも、今はそんな戯れ言に構っている暇はない」

 

私は部屋から走り去った。悪い島風さんが教えてくれないのならば、彼女が行きそうな場所を自分で探し回るしかなかった。自転車置き場でロードバイクを持ち出して、街のほうへと駆け抜けた。

 

3

 

一体どこにいるんだ。

商店街にもスヴァボーダさんのいたペット・ショップにも、そしてあの野球のグラウンドにもいなかった。がむしゃらに街中を駆け抜ける。おかしいな、君のことなら分かるつもりだったのに、ずっと一緒にいたはずなのに、もう君のことが分からなくなってしまっている。

 

怒らせてしまって当然だ。

私は君を知ったかぶっていたってことなんだから。

考えてみれば、すぐに分かることだった。


同じ羽の鳥は産まれない。

 

仮にこの世に産まれ落ちて2日程度で消えてしまうとしたら、私なら絶望する。そしてヴェールヌイは幸せの中に包まれて眠りについたのだ。そんなのは蛇足だ。

 

でも彼女はスヴァボーダさんの一件で生きることを始めた。直に消える灯火を燃やし尽くそうとした。かつての海の傷痕のように今を最大限精一杯に生きた。

 

だからあの野球の試合に本気で勝ちに行ったのだろう。生きているという証を刻もうとしていた。あの時、私がホームランを、いや、そのことに気づいていたのならば、私は君の隣で、同じ理由の涙を流しただろう。


負けたくなかった、ではなく、勝ちたかった。

自分のために、だ。

 

ヴェールヌイ、この広い世界のどこにいるんだ。

君に会いたい。

 

その時、私は今度こそ君を笑わせてあげられる。

サヨナラ勝ちを決めることができる。

 

4


電光掲示板にある時刻はもう0400を回っていた。体力はあるほうだと思っていたけれど、さすがに脚がパンパンだ。足を休める代わりに、頭を働かせた。

 

その時だった。司令官から連絡がかかってきた。

 

響「司令官、ヴェールヌイが見つからない」

 

神風《あ、神風です。携帯を借りているだけですよ。深夜に叩き起こされて何事かと思いましたが、あのヴェールヌイさんですよね》

 

響「ああ、神風さんも会っているだろう?」

 

神風《あの気配、他とかなり違った感じしますからね。私の感覚に過ぎませんけど、鎮守府内のどこかにいるはずです》

 

響「ありがとう。さすが陸上電探神風号さんだ」

 

神風《その呼ばれ方はちょっと……》


灯台元暮らし。

鎮守府に向かってペダルを漕いだ。

 

【23ワ●:Bечный Хибики】


神風「見つけときました。慰霊碑のほうです」


響「ありがとう!」


お礼をいって、そのまま脇を通り抜けて門内に突入した。あのいいようだとまだヴェールヌイは消えてはいないのだろう。慰霊碑のある丘へと1秒でも速くたどり着くために、ペダルを更に回転させた。坂の途中、とうとう体力がなくなって倒れてしまった。ロードバイクを置いたまま、私は丘の天辺まで走った。


中枢棲姫勢力の背の高い艤装が見えた。

不意に慰霊碑から翼が生えた。あれはきっとスヴァボーダさんが翼を広げたのだ。私は彼女の名前を呼んだ。返事は返って来なかった。慰霊碑の裏側に回ると、ヴェールヌイは慰霊碑に背中を預けて海の水平線を眺めていた。


響「やっと会えた」


ヴェールヌイ「そうか。私は伝えたい言葉はあっても、直接会うのは割けたいと思っていた。司令官達も来て声をかけてきたけど、気を回して去ってくれたというのに」


響「私は君に伝えたい言葉がある」


ヴェールヌイ「こうなったら仕方ない。その前に私からいわせてもらってもいいかな。まとめ切れていないから、少し長くなるかもしれない」


響「うん。一言一句聞き逃さない」




私は君よりも大人のつもりだった。だけれど、この身体で過ごした毎日でその化けの皮が剥がれていったんだ。スヴァボーダさんを飼いたいとわがままをいったり、君を無視して泣かせたり、実に子供みたいだ。なんだか私はヴェールヌイでも、実は君よりもよほど響(子供)なのかもしれない。


それは恐らく私が今を生きてしまったからだ。

今なら海の傷痕:此方がこの世界で生きたいがために世界に『艦隊これくしょん』をリリースしたのかが分かる。


人間として君と出会った。

愛を知りたくて君達をけしかけた。

街にこっそりと出た。

サイクリングをした。

商店街で一緒に食べ物を食べた。

野球の試合に誘われて試合に出た。


負けたけど、時間を置けばそれでも良いと思えるようになった。泥だらけになって君と遊んだあの時はとても楽しかったから。


願わくは、こんな風にもっと今日も明日も遊び呆けたいな。

この世界は私が思うよりもずっと希望に満ちていたようでさ。

参っちゃうよ。


だけど、それを求めるとキリがない。だから、私は帰るよ。

別に心配はないさ。

この世界に私と君を繋ぐ場所はたくさんある。


この目の前の大海原も、

門から抜けた先にある商店街も、

あの野球グラウンドも、

スヴァボーダさんも、

スヴァボーダさんがいたペットショップも、

そして私達の歴史の始まりであり、残骸でもあるウラジオストクに眠っているもう一人の私も、

そしてこの鎮守府も、

あそこで横になっている自転車も、

お手紙も、

君が首からぶらさげている私の家から作ったそのペンダントも、

暁や雷も電も大きい私も司令官も、


今、君が眼に写している全て、

そして、

今、君の眼が写していない君自身も、


私の中で永遠となった。

ずっとずっと私の中で途切れることなく温もりを奏でる永遠の響だ。


感謝しよう。

私は私の心から感情が芽生え、愛を知ることが出来た。


一度しかいわないから、聞いてくれ。

ありがとう。

私は君のことが好きだよ。


声に出すのは、さすがに恥ずかしいね。








これからの君の幸せを、心から願ってる。






【24ワ●:戦後日常編:終結】


戸惑った。

素直な愛の言葉を面と向かって放たれて、私の頭の中で組み立てていた台詞が丸々と吹き飛んでしまった。「えっと、あの」しどろもどろな言葉しか出てこなかった。


響「ご、ごめん。ありがとう」


しまった。動揺のあまり簡略化し過ぎてしまった。

ヴェールヌイは「それでは私が振られたみたいじゃないか」と頬を膨らましてすねてしまった。


そして「なんて冗談だ。君の顔を見たら分かる」といって、笑った。やっと笑ってくれた。その顔さえ見られたのなら、拙い言葉でも正解だ。彼女に私がいいたいことは伝わった証だ。


ヴェールヌイの身体が淡い光の粒に変わってゆく。代わりにその白い身体は、鉄の黒に彩られていった。私は彼女の隣に並んであの日と同じように海の水平線を眺めた。


ヴェールヌイ「ああ、そうだ。司令官や大きい私が回していたカメラだけど、アップロードは止めてくれ。なんだか恥ずかしい」


響「それは私もだ。泣いちゃったところとかも先輩の私がカメラに撮っていた。彼女は少しデリカシーに欠ける」


ヴェールヌイ「あなたは一生、結婚出来ないだろう。そんなあなたの幸せも私は願っているとそう伝えておいてくれ。正直、あちらのほうが心配なんだ」


響「了解した」


スヴァボーダさんが私達の頭上を舞っている。


翼、か。自由の象徴だよね。


空を舞うスヴァボーダさんを見ながら、私はこれからのことを考えた。


今のゴタゴタが収まったら、私も暁達を誘って街の学校に入り直そうかな、と考えた。途切れたあの日の続きを始めてみるのも悪くない。そしていつの日か大人になったら、ウラジオストクの私にも会いにいこう。先輩の私、司令官、暁達も誘ってね。


また会おう。


ヴェールヌイは最後にそういって、パパとママに名付けられた私の名前を呼んだ。なんだかそれだけで私は新たな私になれたような気がする。


そういえばまただな。私が決意に満ちた未来に踏み出す時は決まっていつも夜明けだ。




 


後書き




お疲れ様でした。読んでくれてありがとう。
↓7編のお話(またデータ飛ばしてしまったので、しばらくお待ちを……)

【1ワ●:仲良くなるための訓練 2】

【2ワ●:E-1】 

【3ワ●:E-1 突破報酬】

【4ワ●:若葉さん】

【5ワ●:鋳造された自由の奴隷】

【6ワ●:悪い島風ちゃん、大本営へ】

【7ワ●:戦後想題編:メモリー2-1】

【8ワ●:死にたい】

【9ワ●:切り札】

【10ワ●:あの日の神社にヤツがいる】

【11ワ●:戦後日常編 鹿島 with 提督&神風&大和&雷&卯月】

【12ワ●:愛憎渦巻く鹿島‘sマンションへようこそ♪】

【13ワ●:ガチャ騒動と幽霊騒動】

【14ワ●:現実の世界に理想を、理想の世界に現実を】

【15ワ●:剣鬼の神風さん VS 謎のファントム・ステルスさん】

【16ワ●:戦後日常編:終結】

【17ワ●:疑似ロスト空間にて】

【18ワ●:本?:メ?ンサー??】


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2018-10-24 04:51:10

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2018-10-17 18:11:06

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2017-11-01 19:40:37

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2017-10-23 06:35:15

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2017-10-11 09:09:24

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2017-10-21 21:39:07

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1: SS好きの名無しさん 2017-10-03 23:19:43 ID: WvY3tvCX

秋刀魚で一気に吹いたwww

2: 西日 2017-10-11 02:22:44 ID: _Rdf3gGp

時事ネタを入れずには入られなかった。そして私は本編戦後編でやったうーちゃんの探照灯ネタがゲームvoiceで実装されてたの知ってお草が生えました

3: 木鈴 2017-11-01 19:04:36 ID: mVMuqxoR

この物語の大和さんと神風さんが好きすぎて辛い…

4: 西日 2017-11-04 00:01:34 ID: LOxtyLvg

( ゚Д゚)ゞ了解しました。その二人にスポットライト更に当ててゆきます。

5: SS好きの名無しさん 2018-10-17 18:12:43 ID: 4Gc9LjkH

平成30年『防衛白書』86頁

💀韓.国.🇰🇷💀

19年連続で『軍拡』実施

特に『ミサイル・海軍・空軍』の『軍拡』が顕著である。

極めて危険な『兆候』

かが『流石に気分が高揚します。』


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1: SS好きの名無しさん 2018-10-17 18:11:59 ID: 4Gc9LjkH

平成30年『防衛白書』86頁

💀韓.国.🇰🇷💀

19年連続で『軍拡』実施

特に『ミサイル・海軍・空軍』の『軍拡』が顕著である。

極めて危険な『兆候』

かが『流石に気分が高揚します。』


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