2017-10-06 19:01:04 更新

概要

引き続き、慰労休暇中の堅洲島鎮守府の様々な動き。

大浴場で打ち解ける白露と陽炎型たち。そこに訪れる鹿島と、勃発する桶バトル。

異動を考える下田鎮守府のメンバーと、提督の私室の掃除で青葉からの隠し撮り写真を見つける曙。

意気投合する瑞穂と摩耶。

姫の能力を使って明石を発見し、異動の約束を取り付ける提督と姫。

意外なことにその拠点は秋葉原の『DNN社』のビルだと判明する。

提督に付いて呑みつつ話す、赤城と扶桑、金剛という珍しい組み合わせ。

そして、特務第七の川内と堅洲島の川内は、何らかの打ち合わせをするのだった。


前書き

慰労休暇ひき続きです。

大浴場で白露と話す陽炎たちと、途中から入って来る鬼鹿島とのケロリン風呂桶バトルが勃発します。

後に戦場がだいぶ大規模になるようですが、浴場は大丈夫なのでしょうか?

遂に、明石が登場します。みんなも知っているあの企業と、何やらあのゲームの名前まで出てきますね。

どうやら初期の強すぎる装備を開発したのはこの明石らしいのですが、果たして無事に合流は出来るのでしょうか?

そして。下田鎮守府のメンバーも堅洲島に異動することになりました。

戦力は充実してきていますが、提督の読みではまだまだ足りないようですね。


第六十三話 慰労休暇・後編




―2066年1月6日、ヒトハチマルマル(18時)過ぎ、堅洲島鎮守府、執務室。


初春「それにしても、あっという間にずいぶん艦娘が増えていくのう」


提督「いや、まだまだ足りないよ。現状で大規模侵攻に遭遇したとして、順次撤退戦ののちこの島に敵を誘導したとして、一時間程度しか持ちこたえられないはずだ」


―妙にリアルな時間が出てきて、一瞬だが微妙な空気が漂った。


初春「なんじゃ?もしかして貴様は、頭の中には既に侵攻阻止作戦の絵図が出来ておって、いつも現状とすり合わせが出来ておるのかの?」


提督「それはもちろん!だからこそ、戦力の不足を痛感しているんだよ」


初春「ほう!良い心がけじゃな!しかし、少し休んだ方が良くないかの?慰労休暇なのに司令官が休まないでどうするのじゃ」


提督「ん、まあそれもそうか。後は少し適当にこなそう」


初春「良いぞ!では手始めにわらわや皆とお茶でもするのじゃ」


提督「それもそうか・・・というわけでお茶会開始!如月ー、コーヒー淹れとくれ」


如月「あら?私のコーヒーの気持ちなのね?待っててね!」


―如月のコーヒーは少し工夫してあり、バニラフレーバーで、駆逐艦の子たちに人気だ。疲れた時は香りも馬鹿にならず、提督も時々淹れてもらっている。



―同じ頃、大浴場。


―カコーン・・・。


―演習で気心が知れたのもあり、陽炎型何人かと白露が一緒に入浴していた。


白露「ねぇねぇ、ここのお風呂、直ってたら最高じゃないの?」


陽炎「ふふーん、どうよ?うちの鎮守府の大浴場は!雪を見ながら露天風呂とか最高よ?・・・壊れてるけどね」


白露「そうだねぇ、最近壊れた感じだよね?誰かが酔って暴れたとか?」


黒潮「さーて、誰やろなぁ?」


-黒潮は磯風の方を向くと、にやりと笑った。


磯風「うう・・・その、なんだ・・・面目ない」


不知火「ここが壊れたのは別に構いませんが、陽炎姉さんと司令のお風呂タイムを台無しにしてしまった方が問題かと」


黒潮「あーっ!そうやで?ぶち壊しにしたんや!」


磯風「なにっ?陽炎姉さまと司令はそんな関係だったのか?意外だぞ!」


―磯風は陽炎の身体をじっくり見て、それから自分の身体を見た。


磯風「・・・・・・解せぬな」


陽炎「わぁー、ナチュラルに失礼!」


白露「えっ?なになに、意外とここの提督って陽炎が好きなわけ?」


―白露は陽炎の身体を観察するように見て、それから自分の身体と見比べた。


白露「・・・・・・解せ・・・わぷっ!」


―バッシャア!


陽炎「なに磯風のネタにかぶせてんのよ!そういう関係じゃないわ!居眠りしてたら司令のお風呂の時間になっちゃっただけ。ちょっとお話してただけよ」


磯風「冗談はともかく、姉さまは魅力があると思っているぞ?今の練度はともかく、強くなるだろうし、何より明るいからな」


陽炎「今の練度はともかくってのは余計よ!でもありがとう!」


秋雲「うーん、陽炎ねぇのカラダは結構男好きするタイプだと思うんだけどなぁ~。意外とこういう快活なタイプの方が、陰でドスケベな事をやってたりするもんだよ~?」


陽炎「なな、何て事を言うのよ!」


黒潮「なるほどー・・・ネームシップやし、最近司令はんの長女好きが噂になっとるからなぁ。こんなんでも長女らしいところはあるしなぁ」


浦風「ん?提督さんて長女好きなん?」


初風「ああ、あれね?妙高姉さんにそう言ったらしいけれど、本気かどうかは半々じゃないかしら?私には、すごく良く考えられた言葉にも思えるのよね」


浦風「ん?どういう意味なんじゃ?」


白露「面白そうな話だね。どういう話なの?」


初風「考えてもみて?長女が好きだって言えば、各艦種や型式をまとめやすくなると思わない?妹たちが気を使うもの。・・・もちろん、実際に長女が好きそうって部分もあるだろうけど、とにかく無駄のない人だから、うちの提督は」


陽炎「あー、確かに一理あるわ、それ。ネームシップが司令に好意を持っていたら、妹たちは気を使うだろうから、干渉は減るわよね」


浦風「ほうじゃろか?うちは気にせぇへんけどな。任務とこういうのは別じゃろ?」ニコッ


陽炎「・・・えーと、陽炎型は当てはまらないみたいねぇ。でもそうよ、そういうのは姉妹だからどうこうっていうのは無しだわ。何しろ陽炎型は色々な子がいるからね!・・・と言うわけで、陽炎型だったら誰が司令のお気に入りになりそう?」


白露「話題的に置いてかれてる!・・・でもまぁ、こういう分析も大事だよね。あたしの見立てだと、・・・うーん、磯風とかどう?うちの妹に欲しいくらいなんだけど」


磯風「ほう、わかっているな」ドヤァ


浦風「なーんでうちじゃないんじゃ?磯風はねぇ、確かに美人さんじゃしええ子じゃけど、料理させたらまあ百年の恋も冷めるくらい酷い腕前なんじゃよ?利島鎮守府のキッチンを二回も使えなくしたくらいじゃしなぁ・・・」


磯風「それで分かった事もある。料理というのはまぁ、理屈が全然わからないという事だ!」


陽炎「・・・それ、分かったって言うの?」


磯風「結局は愛情という事だ。そう、愛情さえ込めれば何とかなるものなのだ!利島では込めたい愛情というものがそもそもなかったのだ」ドヤッ


浦風「磯風の言う愛情でも、砂糖は塩に変わらんし、炭の塊が刺身に戻る事も無いと思うんじゃけど?(ここでもやらかしそうじゃなぁ・・・)」


磯風「ははは、細かい事は気にするな、浦風よ」


陽炎「うーん・・・なんかこう、真面目な子ってあまりいないわね、私たち陽炎型って」


黒潮「なーに言うとるんや。親潮がおるやろ?」


陽炎「あっ!あの子は真面目だわね。でも、今は全然いないのよね。こんな時世だから、苦労してないと良いんだけど・・・」


白露「話の腰を折って悪いんだけど、鹿島さん強すぎない?伊達に鬼って呼ばれてないよね。演習で気持ち悪いくらい攻撃が当たらないしさぁ」


陽炎「あれは精神的に来るわ。でもきっと何かコツがあるはずよ。近々司令に聞いてみようと思うの!」


不知火「ほう!自然に司令と話す話題を引っ張ってこれるとは、少し練度が上がりましたね!」


陽炎「何の練度よ!そんなんじゃないわ。鹿島さんは確かに教導艦として強いけれど、鹿島さんくらいコテンパンにできるようでなきゃ、深海を相手にできないわよ?」


―ガラッ


鬼鹿島「あら、私をコテンパンにしたいんですか?望むところです。今後も、時間のある限り演習の相手をさせていただきますので、よろしくお願いいたしますね?」ニコッ


―髪を結わえてタオルを巻いた鹿島も大浴場に入ってきた。漂っているふんわりした色気とスタイルに全員が圧倒される。


白露「うわー、えげつないなー・・・」


秋雲「さすが、昔は『艦娘の夜の女王』と・・・へぶっ!」バゴッ


―どこから飛んできたのか、どうやったのか、秋雲の額に空の風呂桶がぶつかった。『ケロリン』と書いてある黄色い風呂桶だ。


鬼鹿島「あれ?風呂桶がどこかから・・・大丈夫ですか?」ニコッ


黒潮(こわっ!)


初風(ダメだわ、提督でないと手に負えない!この鹿島さん)


―しかし、秋雲はめげない。


秋雲「ほんと、どっから飛んできたんだろうね?いたたた。・・・さすがは『艦娘の夜の女王』って」


―ヒュッ・・・バゴバンッ!


―秋雲に当たると思われた風呂桶が、別の風呂桶に弾き飛ばされた。


鬼鹿島「驚きました。これを見切って当てるなんて」


磯風「ふっ、的が大きすぎてつまらんな。それにしても、教導艦にしては足癖がいささか悪いようだが」


陽炎「えっ?ちょっと何、今の!」


鬼鹿島「・・・指導のし甲斐がありそうですね」ニコッ


磯風「道場剣法の動きで、果たして指導になるかな?」ニヤッ


―その一瞬後に、大浴場はケロリンの風呂桶が飛び交う壮絶ないくさの場と化してしまった。



―同じ頃、提督の私室。


曙(なんか・・・どっか騒がしいわね。大浴場かな?)


―慰労休暇と新規の艦娘で、にぎやかな雰囲気が漂う堅洲島鎮守府だったが、曙は特に浮かれるでもなく、いつものように提督の私室の掃除をしていた。


曙「ん?」


―提督の机の上に『いい情報入ってます。青葉より』と書かれた茶封筒が置かれている。その厚さと、青葉という名前から、中身が何らかの写真であることは容易に想像がつく。


曙(まだ開けてない?封はされてないわ。機密や任務でもないわね・・・)スッ


―パラパラッ


曙「あっ!」


―封筒から零れ落ちた写真。それは、大晦日からの地域特務・・・神社仏閣の手伝いに出た艦娘たちの、着替えや巫女姿の隠し撮り写真だった。


曙(青葉さんたら、提督はこんなのでそう喜んだりしないのに・・・)


―しかし、どれもこれもなかなか良い表情をしている。青葉はみんなの事をよく見ていると感じた。


曙(でも、普通にいい写真ね。こういうのは嬉しいのかしら?わかんないけど)


―しかし、このまま提督に着替えの写真が渡るのもどうか?いや、自分のだけは残すべきか?それとも・・・?


―ガチャッ


提督「ああ、お疲れ!いつもありがとう。・・・何か飲むかい?」


曙「あっ!」


―パラパラッ


―驚いて振り向いた拍子に、写真が何枚か散らばった。また怒られるかな?と曙は一瞬考えたが、察しの良い提督はすぐに笑った。


提督「青葉が言ってたのはこれかー!良い写真は有ったかい?」


曙「みんないい表情なんだけど、着替えの写真も結構あって、それはどうかと思ってたところ・・・なの」


提督「着替え?盗撮かぁ・・・仕方ないな」フゥ


曙「こういう画像って、嬉しいもんなの?」


提督「男としては嬉しいが、一応部下である立場の子たちの盗撮ってところが問題だな」


―パラッ


―小さな紙が写真の間から落ちる。


―紙切れ『写真の裏に番号が振ってあるので、気に入った番号を書いて渡してください。画像データもありますから。一枚300円、大判は500円です。ポスター化や、壁紙化も対応しています。応相談。青葉」


提督「修学旅行の写真かよ!・・・まったく、青葉と来たら。・・・曙、着替えの盗撮はそのまま封筒に戻して、普通の良さげな写真だけ番号振って青葉に戻しといてくれ。あーあと、青葉の写真も入れなかったら受け取らない、とも」


曙「見なくて良いわけ?」


提督「見てどうすると?」


曙「つ・・・使い道とか、あるんじゃないかって。時にはクソ提督にならないと、疲れだって取れないというか、癒されないというか・・・」カアッ


提督「あー、クソ提督は甲斐甲斐しい秘書艦のシンデレラバストで満足しているからいいのです!」キリッ!


曙「シンデレラバストだとぅ?」


提督「自覚があるって事か?その反応」


曙「ぐぬぬ!」


提督「ふっ、それより、お茶でいいか?」


曙「えっ?うん!」


提督「部屋は十分に綺麗だし、慰労休暇なんだから、のんびりしていいんだぞ?まあこんなこと言ってるおれも、仕事してたら司令官なんだから率先して休めって言われてしまったけどな」


曙「そうなんだけど、この格好だと何だか掃除してないと落ち着かないというか・・・」


―曙は今日も、着物にたすき掛けだ。しかし、とてもよく似合っている。


提督「大丈夫!眼福だから仕事になってる」


曙「そっ・・・そうなの?」


提督「そうだよ。あ、ここでお茶より、間宮さんとこ行くか?」


曙「・・・漣とかも呼んでいい?」


提督「七駆のみんなを呼ぶのも全然構わんよ?」


曙「じゃあそれで!(やっちゃった!)」


―二人で食べ物だけ受け取って展望室に行く、あるいはこの部屋でとか、色々考えられたはずなのに、結局みんなを呼んでしまう。曙には、それが自分でも照れなのか仲間意識なのかがわからない。たぶんどちらもだが、その割合がわからない。


―チラッ


―曙は一瞬だけ、提督のベッドを見た。司令船の中では榛名が付き添っていたし、金剛が来てからはよく金剛が一緒に眠っている。このままのペースではダメなはずだが、なぜか提督は信頼できる気がして、こんな感じでもいいかと思ってしまう自分が居る。


曙(変なの。あたし、クソ提督が何だか信じられるみたい・・・)


提督「ほら、じゃあみんなを呼んできな。オーダーがあれば、先に注文しておくぞ?」


曙「うん、行ってくる!みんな最初は御汁粉で良いと思うの。冷えてきたから」


提督「諒解。じゃあ先に行ってるぜ?」


―ガチャッ、バタン


―提督が部屋を出ると、曙は素早く青葉のメモに発注内容を書いた。みんなの巫女姿と、自分のだけ、着替えの画像を発注する。『以上、データで。着替えのはあたしのだけで、公認です。曙』。曙は自分の着替えの、際どくない画像だけは提督に渡るようにしていた。



―甘味・食事処『まみや』


摩耶「・・・そっか、すんげぇ大変だったんだな。あたし、ひどい事言っちまったなぁ。気持ちはバレバレだし、もうグダグダだよ・・・へっ」


瑞穂「そんな事ないです。篤治郎さんがあんなに鈍い人だったと思わなくて。私、もっとずっと人気のある方だと思っていて、誰かから好意を伝えられたことがあるかと思っていたんです」


摩耶「あたしさぁ・・・その、こういうの苦手だからさ・・・。気持ちとか全然伝えらんなくてよ。あいつもあんなだしさぁ」カアッ


瑞穂「びっくりしました。摩耶さん、心の中では思いやりが溢れている感じがして。やっぱり提督と艦娘は影響し合っているんですね」


摩耶「そうだな。そうなのかもな。・・・ほら、ここの艦娘たちは妙に鋭そうで強そうな感じがするだろ?あたしらは提督の影響を受けてるんだろうな」


瑞穂「摩耶さんは、以前と同じように篤治郎さんのもとで任務に当たるんですよね?」


摩耶「いや、たぶん異動するぜ?」


瑞穂「えっ?何でですか!?さっきのは勢いじゃないんですか?」


摩耶「考えたんだけどよ・・・、まずさ、あたしって女の面が自分でも結構気持ち悪いんだなって思っちまったんだよ。もう少し成長しないとダメだなって。それに、うちの提督はここの提督さんに救われたようなもんだろ?今のままじゃあ、しばらく世話になりっぱなしだと思うし、下田鎮守府もどうなるか分かんねぇ。誰かが恩を返す必要があると思ったし、あとは飛龍の事かな」


瑞穂「飛龍さんですか?」


摩耶「あたしと蒼龍と飛龍は、いつも作戦で一緒だったんだ。夜間や航空劣勢の時は、あたしが二航戦を護ってた。でも、あの日・・・たぶん蒼龍が沈んじまった日は、あたしは早々に大破しちまって、ろくに二人を護れなかったんだ。あたしも・・・悪いんだ・・・っ!」グスッ


瑞穂「そうだったんですね・・・」


摩耶「また湿っぽくなりそうで悪い。・・・それにさ、昨夜飛龍が言ってたんだ。遠くの海に蒼龍が居るって。今のままだと、あたしらは上層部に適当にあちこちに異動させられかねねぇだろ?きっと飛龍も頭がいいから、そうなる前にここに異動を申し込むと思うんだ。ここは飛龍も蒼龍も居ねぇし、ここの提督さんには貴重な二航戦も必要だと思うんだ。きっと探しに行くはずなんだよ。なら、あたしも今度こそ、あの二人を護りたいんだよ」


瑞穂「・・・色々と、合理だと思います。でも摩耶さん、異動する前に、篤治郎さんにはちゃんと気持ちを伝えて下さいね?とても大事な事だと思います。だって、こんな事が無かったら、きっと篤治郎さんは摩耶さんと仲良くなっていたと思いますから・・・」


摩耶「わかってるよ。色々とけじめをつけなきゃなんねーしな。気持ちも落ち着いたし、飛龍や高雄姉たちと、この後相談してみるよ。・・・瑞穂さん、あいつの事、よろしくな!」


瑞穂「はい!摩耶さんも!今後、何かあったら色々と相談しましょう?」


摩耶「おうよ!」


―タイプが全く違う瑞穂と摩耶だが、同じ男性を好きになった部分が共感できるのか、この日を境に、何かと相談できる気やすい関係になって行くのだった。



―ニーイチマルマル(21時)過ぎ、特殊演習場下部、偽装船渠内、戦艦『遠江』、高高次戦略解析室。


提督「・・・と、概要はそんなところなんだが、何とかなるだろうか?」


姫「ええ、全く問題ありません。特殊帯端末というのは、膨大な意識の海に開いた窓のようなものです。その鹿島さんのノートタブレットの情報を経由しつつ、特殊帯端末から製作者サイドの情報を見ることも可能です。そちらの壁際に走査解析用ドラフターがありますから、その中にこれを。情報につぐ情報を経由し、トンネルのように製作者まで走査しましょう」


提督「ありがたい!では早速・・・」バコン・・・ストッ・・・バコン・・・ガチャッ


機械音声『特殊帯端末の走査・解析を開始いたします』


―部屋の照明が落ちると、光源がどこにもないのに水色の光が満ち始め、見えるともなく意識の中に鹿島の記憶や思い・・・おそらくノートタブレットに保存されたデータに絡んだものが流れていく。


提督「これが・・・特殊帯の情報の海か!」


―おかしな感じだ。自分の五感に、やや距離間のあるもう一つの五感が上書きされているようだ。おそらくそれが鹿島の記憶なのだろう。


―おそらく自分であろう、師の仇への敵意、あちこちで指導を続ける忙しい毎日と虚しさ、不満、失恋・・・そしてしばらく暗黒が続いたが、ふと、どこかの大きなビル内らしい映像に切り替わった。


提督「これは・・・!」


姫「見えますか?これはもう、鹿島さんの記憶ではありません」


提督「呉の工廠のような雰囲気と匂いだが、何か洗練されているな。デザイナーの事務所のような?・・・むっ?」


姫「最新型の3Dプリンターが複数置いてありますね。型式からこれらの納品先を・・・」


提督「いや待て、全てロゴがあるぞ?見覚えがある!これは・・・DNN社だ!確か、秋葉原に最新型の工作機械をそろえた工房があったはずだ!結構でかい企業だぞ?」


姫「・・・上場企業ではないようですが、よくご存知でしたね?」


提督「あー・・・ごほん。男は大なり小なり世話になっている企業だからな。そういえば艦娘とよくコラボもしていたようだが・・・」


姫「ああ、成人男性向けのコンテンツで大きな収益を上げている企業のようですね。マスターも成人男性ですし・・・なるほど。それに、最近は艦娘とコラボした、『艦娘これくしょん』・・・略して『艦これ』というゲームが人気のようですね。・・・開発元のパソコンに行き当たりました!」


提督「『艦これ』ね。ふむ・・・冷静だなぁ」


姫「失敗しました。こんな時、少し恥ずかしがるべきでしたね」


提督「いやまあ・・・」


―ここで、特殊帯の情報はノートタブレットのOSを開発しているらしいオフィスに切り替わった。


提督「これは・・・ウェブカメラかな?・・・あっ!」


―桃色の髪の長い艦娘が忙しそうに歩いてくると、目の前に腰かけ、少し不機嫌そうにパソコンに向かっている。


明石「一体どこにあの薬を流したのよ!全く!追いきれないじゃない・・・あれっ?」


―明石はなぜか、ウェブカメラを覗き込んだ。


明石「えっ?まさか・・・」ガラッ、ゴソゴソ


―明石は単眼鏡のような機械を取り出すと、それでウェブカメラを覗き直したが、すぐにそれをやめた。その顔色が青ざめていく。


明石「なんて事!こんな・・・ここが覗かれて見つかるなんて!そんな事が出来るのは・・・!逃げないと!」


―プツ・・・ウウン・・・


―特殊帯の情報が消え去り、部屋が通常の状態に戻った。


提督「気付かれたようだが・・・」


姫「大した技術を持っていますね。しかし、ここまでできる何者かから逃げる事が出来ないのを、彼女自身が一番理解しています。彼女自身は軍令違反が多数存在しているようですから、見つかって解体されることを恐れているようです。既に紐づけは可能ですから、メッセージを送る事も可能ですが、どうしますか?」


提督「このオフィスのセキュリティを乗っ取り、外部に情報を漏らさぬように、彼女と話す事は出来るかな?」


姫「可能です。彼女もその可能性を考えていますね。見て下さい」


―画像はオフィスの監視カメラからの視点のものに変わった。明石は先ほどの発言と裏腹に、部屋から出ておらず、監視カメラからなるべく映りづらい部屋の隅に移動して身をかがめ、大きなモンキーレンチを握り締めて周囲をうかがっている。


明石「今も見ているでしょう?いつかはこんな日が来るってわかっていたわ!深海側なら・・・残念ね、このビルにある爆薬で私は死ぬから、絶対にあなたたちの仲間になんか、なりませんから!・・・でも、もし万が一、『人間の側の姫』とかかわりのある組織なら、私をなるべく早く連れ出してください!」


提督「姫、向こうのスピーカーを通して話す事は可能?」


姫「はい。繋ぎますね」


提督「すごいな!覗きが趣味だったら、君ほど最高のパートナーはいないだろうな」


姫「えっ!?・・・あ、マスター、それは冗談を仰ったのですね?・・・接続完了です」



―東京都秋葉原。DNN社秋葉原ファクトリービル、開発フロア、明石のオフィス。


明石(きっと相手は私を見ていて、出方を考えているタイミングのはず。どうか、運営や一条御門さんやその息のかかった上層部ではありませんように!)ギュッ


スピーカー「あーテステス、ただいまスピーカーのテスト中。明石さん、聞こえてますか?」


―スピーカーから、良い声だが緊張感のない口調で、男が話しかけてきた。


明石「・・・聞こえているわ。あなたは誰なの?」


スピーカー「君が開発して売っているノートタブレットで、おれの情報が一部だけ伝わったせいで、不必要な立ち合いを強いられた者だよ。・・・まあ、今になってみれば、それは僥倖だったのだが」


明石「不必要な、立ち合い?・・・その話をそのまま信じるなら、あなたは特務第二十一号の提督さんですか?」


スピーカー「驚いたな。当り!間宮さんとこで一食奢ろう!」


明石「いいえ、まだです。あなたが特務第二十一号の提督さんなら、今の仮の名前が言えるはずです。戦時情報法第二十六の二によって保護されていても、私の立場ならあなたの正体を確認するのに必要な手続きなのは、理解していただけますよね?」


スピーカー「というか、何でそんなにおれについて詳しい奴ばかりなんだ?サインなんか勉強してないし、コンサートも開いた事は無いんだがな。戦時情報法は肝心なところでガバガバだよ!」


―明石はスピーカーの向こうの声に敵意が無い事を感じ取った。


明石「ふふっ、緊張を和らげようとしてくれているんですか?アフリカ脱出後から、現時点までので結構です」


スピーカー「そこまで知ってんのかい・・・アラン・スミシーだ。それ以前の名前は・・・ちょっと勘弁して欲しい」


明石「こちらの情報と合ってる!・・・まさか、本当に?」


スピーカー「まあ、疑って断るなら別に構わんよ。ただ、総司令部は君の捜索に関して変に面倒くさがってはいるが、案件そのものの重要度は高い。・・・これはつまり、必ず捕まえなくちゃならない標的だが、なぜか現状での優先順位はそう高くない事を意味している。これはどういう事なんだ?」


明石「・・・あなたが本物で、私をちゃんと保護出来たら教えてあげますよ。ちなみに、私を探している勢力は三つ。あなたで四つ目という事になります」


スピーカー「モテモテだな!面倒だったら他に譲っても「絶対にダメです!」」


明石「一つめの組織に捕まると、私は解体はおろか『いなかった事』にされてしまいます。二つめの組織だと、矯正施設行きの上にどこかの研究施設からずーっと出られません。三つめの組織だと、たぶん人類が負けます」


スピーカー「ああ、待遇が良いのはうちだけか・・・」


―察しの良い提督は、明石が遠回しに自分がどこから追われているのか伝えていると気付いた。二つめの組織は矯正施設と言っていることから、総司令部サイド。三つめの組織は深海側だろう。だが、一つ目の組織がわからない。


明石「私、以前は『運営』に所属していました。でも、ちょっと新装備の開発に熱を出し過ぎちゃって、運営からも追われてしまったんです。震電改とか、艦首魚雷はやり過ぎましたねぇ・・・」テヘッ


スピーカー「なるほど・・・理解した」


―一つめの組織はどうやら『運営』つまり、国家総計画運営委員会らしい。艦娘の装備や、艦娘そのものをロールアウトしているとされる組織だ。


スピーカー「背景のゴチャゴチャはともかく、こっちは一刻も早く工作艦・明石が必要なんだ。明日直接迎えに行くよ。これから、SNSのIDをつぶやいてくれ。こちらから送る」


明石「わかりました。怪しかったらすぐ拒否しますよ?・・・まあ、ここにアクセスできる時点で、私の拒否権なんてほぼ無いような相手なのは理解していますけれどね。・・・じゃあ、ゆっくり言いますね・・・」


―明石がIDを言い終えて少しすると、『提督権限でのアクセスIDを確認しました』という表示が明石のスマホに出た。現在の明石はどこにも所属していないが、そのスマホは複製した秘書艦用のものをわざと使っており、提督からのアクセスがわかるようにしていたのだ。


明石「来ました。あ、本当に提督さんなんですね!」


スピーカー「だろう?」


明石「良かった。でも、あなたたちがここにアクセスできた時点で、おそらくもうそんなに時間がありません。明日、午後から夕方にかけて、準備ができ次第連絡をください。水上機の使用が可能なら、隅田川の水上バス発着所を任務使用したほうが良いと思います。私はいつでも出られるようにしていますから、よろしくお願いしますね」


スピーカー「諒解した。幸運を祈る。明日を楽しみにしているよ」


明石「こちらもです。私にとって最後のチャンスですから」


スピーカー「では・・・」プツッ


―スピーカーの電源が一瞬切れる音がした。明石は注意深く立ち上がると、自分のパソコンやノートタブレット、ビルのセキュリティサーバをチェックしたが、大深度検索をかけてもアクセスの履歴が見つからない。


明石(『運営』よりも上のアクセス権。やっぱり、『姫』の能力でアクセスしてきたのね。私、今回は消されないで済むかもしれない・・・)


―明石は異動の準備を始めることにした。



―堅洲島鎮守府、戦艦『遠江』内、高高次戦略解析室。


提督「思ったよりスムーズに進んだが、君が居なかったら絶望的な案件だったな、こんなの」


姫「鹿島さんのノートタブレットが無ければ、手掛かりは得られませんでした。幸運・・・ならいいのですが・・・」


提督「何者かが状況を制御している可能性は考えているよ」


姫「すいません。私の力が限定的ですから、違和感があれば仰ってください」


提督「わかった。ではありがとう。そろそろ失礼するよ」


姫「はい。能力を少しだけ使いましたから、後は休むことにします」


提督「ああ、おやすみ」


―プシューン・・・ガシャン・・・コッコッコッ・・・


姫(ごめんなさいマスター。私、まだ寝ません。・・・DNN社の成人男性向けコンテンツと言っていましたね。マスターの購入・閲覧履歴は・・・)


―姫の保存筒の内部に小さなインジケーターが立体可視化された。提督の過去の「成人男性向けコンテンツ」の購入・閲覧履歴を割り出しているのだ。もちろん、本来はやってはいけない事なのだが、強大な力を持つ姫のマスターとなる者の事は、詳細に把握しておかねばならないのだった。『判断の揺らぎ』をなるべく減らすために必要な事なのだ。


姫(例えば、本来なら殺し合い、その命を奪うべき相手でも、自分にとって魅力的なら、それをしばしば回避するのが人間です。そういう揺らぎは、私たちにはまだあまり理解できません・・・。マスター、あなたの判断は揺らぎがとても大きいのに、結果は悪くありません。私はそれを知りたいのです)


―姫は、提督の過去を書類に残されている範囲では把握している。味方だったものが敵対したり、敵対したものが味方になったり。その結果として、生存率1/100000以下の現在を生きている。それが不思議でたまらないのだ。


姫(政府上層部のデータベースには、工作員だった女性のデータは詳細に残っています。例えばこれらのデータと、マスターが購入・閲覧した成人男性向けコンテンツには共通点が見られるはず・・・)


―チカチカ・・・チチッ


姫(これは、どういう事なの?)


―インジケーターが点灯し、割り出しが完了したが、意外なことに何もヒットしなかった。提督は冗談めかしてああ言っただけで、実際にはDNN社のコンテンツを何も利用していない、という事だろうか?


姫(謎の多い方ですね)


―姫は今度こそ休息することにした。



―特殊演習場、メインゲート


提督「あれ?どうしたんだ?」


青葉「提督、大浴場が壮絶ないくさの場と化してますよ?何か複雑な陣営に分かれて、風呂桶と、お湯と、タオルで戦っているようです」


提督「えーと・・・陣営は?」


衣笠「白露型・陽炎型連合軍と、香取・鹿島コンビがまず対立。次に、妙高型チームと下田鎮守府の高雄型チームが対立していましたね。その間を潜水艦チームが暗躍している感じです」


提督「風呂場に被害は?」


青葉「出した時点でそのチームは負けという条約が交わされているようで、まだありません」


提督「条約って、うーん・・・それならまあ、慰労休暇中だし、戦意の高さの表れという事で・・・」


青葉「勝ったチームは提督の写真セットという事みたいですが、いいんですね?」


提督「やっぱ禁止で」


青葉「良かったぁ!着替えや入浴は用意できても、紳士の一人遊びというか・・・自分で慰める系の写真や、雨の日に捨て猫か捨て犬を拾う写真とか、難易度高すぎでしたからね」


提督「何でそんな条件が?」


青葉「青葉型は最初のほうで敗退したんですよー。それで条件をつけられちゃって」


提督「あまり聞きたくない気もするが、紳士の一人遊び写真って、誰の希望?」


青葉「あーそれは、イクちゃんですね。あの子提督のファンですから」


提督「ファンから違うものにクラスチェンジしそうな気もするが、そうか。捨て犬か捨て猫を拾うってのは?」


衣笠「あ、それはみんなの希望です。ギャップ萌え的な」


提督「なんでだ!まったく・・・これ以上風呂場が壊れても困るから、現時刻でその遊びは終了。後日トーナメント制の演習でも組むから、そのつもりでいるようにと」


青葉「かしこまりー!です」シュバッ


衣笠「行って来ますねー!」


―青葉と衣笠は急いで鎮守府に戻って行った。



―甘味・食事処『まみや』


―珍しく、赤城と扶桑、金剛が同席していた。赤城が扶桑を誘い、途中から金剛に扶桑が声を掛けた感じだ。


赤城「扶桑さん、色々考えたんだけれど、どうして私にさっきの話をしたの?考えてしまって、眠れそうにないわ」


扶桑「だからと言って、奢ってまで話を聞こうとしなくても良かったのよ?私は戦艦だもの。細かい事を考えずにとる言動は多いものよ?」クスッ


赤城(そう、こういう読み切れないところがあるのよね、あなたは・・・)


―赤城から見て、扶桑のこういう部分はどこか提督と似ていた。


金剛「赤城ー、そんな難しく考えちゃダメデース。扶桑の良いところは、『よくわかんないけど結構的確』な所デース」


扶桑「戦場では、考えている時間も無いものね。戦艦は少なくともそうよ。いけそうなところに撃ってみる。それだけ。さっきのあなたとの話もそんな感じよ?」


赤城「という事は、何か必要性を感じたからですよね?」


扶桑「あなたがどこか、辛そうだったからよ」


赤城「ああ・・・そう見えていましたか?」


扶桑「最初の頃の提督みたいだったわ」


赤城「なるほど・・・」


金剛「あー、わかりマース。赤城は実力を隠していますよネー。提督みたいデース。総司令部からの異動で訳アリかもしれませんが、上が信用できなくても、私たちと提督が居ますからネー?」


赤城「えっ?ありがとう、金剛さん・・・(やっぱり、みんな鋭いわ。提督もきっと何か感じていても、何も言わないでいてくれるだけなんでしょうね)」


金剛「金剛でイイネー。ところで扶桑、榛名の事、ありがとうデース。昨日の夜、添い寝役を譲ってくれたでしょ?あの子、何だかすごくキラキラしてマース」


扶桑「あら、私は提督と添い寝した事は一度も無いわよ?昨夜も様子を見に行こうとしただけ。榛名が来てくれたから良かったけれど」


金剛「エッ?アレッ?そうなの?」


扶桑「私、金剛や陸奥ほどいい子じゃないわ。提督も何となく感じていることはあると思うの。だから、これくらいの距離感が一番いいのよ」


赤城「複雑ですねぇ。要するに、一緒に眠ったら抑えが効かないかもしれない、と?」


金剛「扶桑と提督はどっか通じている空気がありますもんネー。なるほどー」


扶桑「金剛が来てからの提督は、以前より元気そうよ?きっとよく眠れているんだわ。提督の『長女が好き』という発言も、金剛の事を意識している部分は絶対にあるはずよ」


金剛「それは嬉しいケド、女として意識されていないんじゃないかなって、たまに心配になるのデース」


扶桑「そんな事無いと思うわ」


金剛「しっかりしてる人だけど、しっかりし過ぎというか何というか・・・ウーン」


赤城「ここに来る前に、提督の女性関係の資料を見た事があります。しばらく前から、親しくなったのは女性の工作員だけでした。ある意味、ぞんざいに扱ってもいい、都合よく扱ってもいい相手としか、そういう事にはなっていなかったようです。だからきっと、金剛さんの事は大事なはずよ?」


金剛「でも、男の人ってあんなに抑えが効くものなんですかネー?フゥ」


扶桑「心配なら、せっかく一緒に寝ているんだし、気を使わないで聞いてみたらいいのよ。あなたには本音で答えてくれると思うわ。大切なはずだから」


金剛「そうね。聞いてみるわ」


―金剛は提督に手出しをされたいと思っているわけではない。それよりも、提督がすごく無理をして自分を傍に居させていないか心配なのだ。



―一時間ほど後、執務室ラウンジ。


叢雲「おかえりなさい。飛龍さんが待っているわよ?」


飛龍「こんな時間にすいません」ペコリ


提督「すごいな、あれだけ呑んだのにもう素面っぽいな」


飛龍「とても楽しい時間をいただけて、だいぶ気持ちが落ち着きました」


提督「何か話があるのかな?」


飛龍「はい。あの、提督さんはあちこちから艦娘を探していますよね?上層部は公式には否定していますが、太平洋の様々な泊地には、まだ残された艦娘がいるという噂もあります。いずれは敵の制海域に出て、そういう泊地の子たちも助けたりしますか?」


提督「どこ、とは言わないが、既にそういう泊地を一か所確認していて、現在合流作戦の準備中だよ。今まで出かけていたのも、それの一環だな」


飛龍「えっ!?その中に蒼龍はいましたか?」


提督「いや、駆逐艦と軽空母がほとんどだな。しかし、蒼龍もどこかには居ると思う。間違いなくね」


飛龍「やっぱり、そうなんですね。これから大事な話をしたいのですが、みんなを呼んできます。お時間は大丈夫ですか?」


提督「ああ、大丈夫だが・・・」


飛龍「では、すぐにまた来ますね」ガチャッ・・・バタン


提督「叢雲、これはどういう話なんだ?」


叢雲「夕方から、下田の子たちと瑞穂さん、金山刀提督が色々と打ち合わせをしていたの。たぶん、うちに異動してくる考えじゃないかしら?今のまま状況を報告したら、下田の子たちはバラバラに異動させられかねないでしょ?アンタの考えがそのまま通れば、何もしなくても構わないだろうけれど・・・」


提督「確かに、人事に隙ができるな。余計な思惑が介在すれば、そこを突かれるとまずい」


―提督は金山刀提督との話し合いで、下田鎮守府を再編し、金山刀提督は名前を変えて下田の提督として再任され、特防及び特務第二十一号のサポートをする鎮守府、という形で復活する筋書きを考えていた。が、再編期間に下田の艦娘たちが総司令部付きにされると、その異動はバラバラになる可能性もわずかに存在していた。


―ガチャッ・・・バタン。ゾロゾロ


金山刀提督「こんな時間まで悪いな。もう少しだけ付き合ってほしいんだ。大事な話だし、悪い話じゃないからよ」


提督「どうしたんだ?みんな揃って」


―そこには、金山刀提督、瑞穂、高雄、愛宕、摩耶、飛龍、長月、夕立、龍驤が揃っていた。


金山刀提督「みんなで話し合ったんだけどよ、ダブってしまう夕立以外、うちの子たちをそちらに異動させてくれないか?」


提督「総司令部の人事権が及ばないようにするって意味の、一時的な異動かな?それは別に構わないが・・・」


金山刀提督「いーや、ずっとだ」


提督「何を言っている?馬鹿な事を言うな!大規模侵攻で全員死ぬかもしれないんだぞ?」


金山刀提督「いーや、そうはならねーよ。あんたは必ず勝つ。おれにはわかる。それに、異動させなくたって次回の大規模侵攻の日、上層部が何を言おうが、おれと、おれの艦娘はここにいて、あんたたちと一緒に戦う。だから同じことだ。とことんついていくぜ?」


提督「なんだと?」


金山刀提督「そもそもおれは、上層部に騙されて終わっちまってるはずだったんだ。でも、そうならないで瑞穂と知り合い、生きてこいつらとも再会できて、自分の目論見も当たっていた。それは、途中であんたと知り合ったからだ。おれだけじゃ無理だったんだよ。だからおれはあんたにとことんついていくって話を通し続けるんだ」


提督「・・・・・・考えは分かるが」


金山刀提督「あんたでダメなら、世界は深海化する運命だ。でもそうでなかったとしたら、奴らを倒すのはあんただろうよ。うちの子たちも、あんたの下にいた方が絶対に生き残れる。ここの子たちを見ているとそう思えるんだ」


高雄「それに、うちの提督はもう瑞穂さんを見つけてしまいましたからね。摩耶もそうだけど、私たちには仕切り直しが必要な気がします。さっきも楽しかったんですよ?こちらの妙高型の皆さんとお風呂場で戦って。・・・それに提督さんに特定の誰かがいない鎮守府は、希望でもありますからね」パチッ


―高雄はそう言ってウィンクをした。金山刀提督へのちょっとした皮肉が込められている。


金山刀提督「はは・・・面目ねぇ」


愛宕「そうねぇ、私たち、結構やるのよ?提督さんもまだまだ大変みたいだし、私たちも出来る限り活躍させてほしいわ。燃えるじゃない、次の大規模侵攻の阻止とか」ニコッ


飛龍「私は蒼龍を見つけたいんです。どこか遠くの海にいるって。そんなところに出られるのは、きっとこちらの鎮守府くらいだと思うんです。私はここに自分の運命を感じたんですよ?提督さん、きっと最後まで生き残って見せますね!」


摩耶「提督さんよぉ、あたしはさ、飛龍と蒼龍の背中をずっと守ってきたんだ。次は絶対にこんな事にはしない!あたしも沈まねーし、誰も沈めさせない。それに、一度言ったことは守りたいし、うちの巨乳好きと瑞穂さんを守ってくれたろ?だからあたしは恩を返すし、暴れまわりたいんだ!」


金山刀提督「巨乳好きは否定できねぇ・・・」


龍驤「聞いたやろ?そういう理由で、うちはこっちのほうが好みなんや!いい司令官ていうのは、胸の大きさとかこだわりなく艦娘を動かすもんなんや。ウチ、めっちゃ役に立つから見たってや!」


長月「長月だ。練度はそこそこだが、経過は全て聞いている。きっと役に立って見せよう。・・・ところで、こちらの司令官はどういうフェチなんだ?うちの司令官は親しみやすいが、ちょっとフェチを前面に出し過ぎでな・・・よろしく頼むぞ」


瑞穂「・・・私、もう少し胸が小さかったら見捨てられていたんでしょうか?」ニコッ


―瑞穂が少しだけ怖い笑みを浮かべた。


金山刀提督「そっ、そんな事は断じてねぇぜ?」


下田鎮守府の夕立「あたしはこのまま提督さんについていくよ!こっちにはもう別の夕立が居るからね。瑞穂さん、よろしくっぽい!」


瑞穂「ええ、よろしくお願いしますね!」


漣「ご主人様、長月ちゃんの質問には答えないんですか?」ニヤッ


提督「ああ、おれのフェチ?・・・まず、長女的な性格の子が結構好きだな。身体的なもので言うなら、胸の大きさには特にこだわりはないな。で、背中フェチだ。いい女は見えない背中が綺麗なものだからな。背中、くびれ、尻のラインこそ、女性らしさを一番感じるねぇ」


一同「ほおーう・・・」


高雄「いい女は背中が綺麗、ですか。・・・素敵な事をおっしゃいますね」


愛宕「うふふ、うちの提督の事ではないけれど、胸以外の部分を見てくれる人は好感が持てるわぁ」


金山刀提督「あんたも普通に男っぽい事を言うんだな」


提督「そりゃ、男だからな」


金山刀提督「しかし、なるほど背中かぁ。確かに瑞穂の背中は奇麗だな」


瑞穂「ちょっ!篤治郎さん、いきなり何を言うんですか!」


―この日の提督の発言以降、堅洲島鎮守府では、お風呂場で背中を入念にチェックする艦娘が増えていくのだが、提督はそれを知る由もない。



―大食堂、カウンター席。


特務第七の川内「私さぁ、あなたが羨ましいよ。あの提督さんから教えてもらったら、きっとすごく強くなれるはずなんだよね」


川内「うちの提督、そんなに強かった?」


特務第七の川内「もう提督一人で良いんじゃないかな?ってくらいだよ!まあ、私たち艦娘の攻撃みたいなダメージは、おそらく深海には通らないからどうしようもないんだけれどね」


川内「やっぱりそうなんだね。初めて会った時、すっとぼけてたけど、とても強そうだったもん」


特務第七の川内「えっ?初見でわかったの?」


川内「わかったよ?何となくだけれどね」


特務第七の川内「そっかぁ、やっぱり着任していると何か違うものなのかなぁ?」


川内「たぶん、また提督の活躍も見られると思うんだ。明日、しっかりやろうね!」


特務第七の川内「ええ、お互いにうまくやりましょ?」


―特務第七の川内と、堅洲島の川内は、明日以降の特殊な作戦についての打ち合わせを終えた。次は志摩鎮守府と特防の件、そして明石を仲間に加えなくてはならなかった。




第六十三話、艦



次回予告



横須賀で再開する、提督と特務第七の鷹島提督。そして、帰還する川内。


総司令部を訪れた提督は、幾つかの案件をまとめる為に奔走する。


そして、『わだつみ』を隅田川の秋葉原最寄りの発着所につけてDNN社に向かうのだが・・・。


同じ頃、張り込みの末に川内と鷹島提督のフェリーへの帰投を確認した志摩鎮守府は、遂に秘匿された特務第七の司令室に襲撃を掛け、川内が捕まってしまう。しかし・・・。



次回『甘い言葉』乞う、ご期待!



提督『お風呂場は戦場じゃないぞ?』


金剛『体を洗浄するところデース!』


提督『ん、まあそうだが、ややこしいな!』


金剛『と・こ・ろ・で♡、お背中流してあげまショウかー?』


提督『えっ?じゃあ頼もうかな』


金剛『ほっ、本気デース?みっ、水着着用デスヨー?』


提督『おう、ありがとう!』


金剛『・・・・・・///』カアッ


榛名『榛名・・・待機命令、諒解です・・・』ムスッ



後書き

今回のさんま祭り、集めるのが大変な気がしますね。


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1: SS好きの名無しさん 2017-10-05 22:12:19 ID: jAOWbdD6

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