2018-03-18 11:38:13 更新

概要

いつも通りの日常を送ってた現役高校生の荒波 輪道。だが、ある日からひどくリアルなファンタジー世界を夢見ることになる。夢だと思って楽しく見ていた荒波だが、勇者の苦し紛れで放った魔法が荒波を巻き込むことに!?爽快ギャグ異世界物語が堂々開幕!




 『よくぞここまで来た、勇者よ。【勇者】の称号を授かってから約20年くらいか?しっかり鍛えたそうだな。』



  ラスボスのバトルに相応しいような荒れた土地で2人は向かい合っていた。



『あぁ、この世界に生まれてからの宿命を果たす今日まで俺は死に物狂いに訓練と冒険をしてきた。生まれてから自由なんて俺には無かったが、そんな事は些細な問題に過ぎない!お前を葬って皆を幸せにする為ならばな!』


 そう、今から世界の命運を掛けた戦いが始まるのだ。



『我も【魔王】の立場上、貴様を倒さねばならん。先代の魔王と勇者が相討ちし、同時にこの世界に誕生した半ば双子の様な関係だがな。しかし、それが宿命なのだから仕方あるまい。』



『悪いが俺はそんな風にお前を思ったことがない。おっと、無駄話もここら辺でいいだろう。早いところお前の首を持って帰らなきゃ行けないんだ。』


『クフフフフフ...そんな易々と首なんか持っていかれる程我は弱くはないぞ?』


『勇者レギナント!』


『魔王アルデミラン!』


  2人は互いに名乗り合り戦い始めた。







 あー...今日はここで終わりか。最近この手の夢が多いんだよな。多いっていうか寝るたびに勇者の物語を見るんだよね。起きてから次の眠りに入ると起きてる間にも物語が進んでるみたいで所々分からないことが合って気になることが多いんだけど、「どうせ夢だし」って思って毎日の楽しみの1つになってる。因みに、今まで1:00位に寝てたのが22:00位に寝るようになった。そして!今回の勇者と魔王のクライマックスバトル!これは熱盛り!続きが気になってもう1度寝たいけど流石に無理だな。うん。


 スマートフォンの画面には7:00と表示されてた。俺は手早く準備を済ませて学校へ向かった。



 俺の名前は“荒波 輪道”で17歳で高校2年生をやっている。運動神経も学業もどれも平均的で何か特別なことをやってる訳でもない。

 部活には入っておらず仲良しの友達も居ない。いわゆる“ボッチ”という奴だ。クラスで話すのも業務連絡並みだし、LINEも入ってるけど使ってない。

 スマホは連絡用と言うよりはゲーム機に近かった。通学途中や昼休みの時はひたすらスマホを横に倒してゲームをする。そんな日々を淡々と過ごしている。クラスの人は顔は分かるけど、名前は当然ながら全員言えない。

  そんな一般の華やかな高校生活を送っている人とは掛け離れている人物って言うのが俺のプロフィールだ。


  学校に着き、いつものように後ろのドアから目立たないようにクラスに入り窓側の一番後ろの席に座る。俺は授業が始まるまでいつものようにアプリを起動して自分の世界に入った。


  出席を取り終えて、授業が始まったので夢の続きが気になるので眠りに入った。たくさん寝たからと言っても眠いものは眠いのだ。

 て事でお休みなさい。






『ハァハァハァ... やはり一筋縄では行かないか グフッ』


 

『当然だ...我は魔族の王なり!そんな簡単にくたばるものか!』




  やっぱり結構進んでたよ!

 て言うかほとんど終わりに近くない?勇者死にかけてんじゃん。魔王も結構深手を負ってるけど割と大丈夫そうだし。

 えぇ、勇者負けちゃうの?頑張れー!正義は勝つんでしょ!



『そろそろ止めの時間の様だな。貴様の死体は我の家でじっくりと焼いてやろう!クハハハハハハ』



 魔王めっちゃサイコパスじゃん!勇者立て!立ち上がるんだ!お前はまだ行けるって!最後の大技とかないのー!?あるっしょ!




『これだけは何が起こるか使いたくなかったんだが、使うしか無いようだな...。』




『んん?まだ何か隠し球でもあるのか?出し惜しみせずに使ってみるがよい。全力でぶつかってこい!クハハ』



 お!やっぱりあるのか!そうこなっくちゃね!さすが主人公!

 余裕ぶってる今がチャンスだ!

 最後の攻撃をお見舞してやるんだ!



『父上...母上...そして世界の皆!ごめん!俺は最後これに掛けるしか無いんだぁ!アルデミラン!その余裕を保ってられるか見物だな!』



『汝、この身を全てが捧げる世界よこれに相応しき魔導を発動したまえ!“パンドラミック・ディザスター”!』



 おおお!それっぽい!ラストに相応しい技じゃん!

 どんな技かは知らないけど、「身を捧げる」って言ってるあたり勇者も死んじゃうのか...?

 今まで間接的だけど見守ってきたから悲しいな...まぁ、感動のシーンとしてはありだよね。今までよく頑張った!やっちまえ!



『!?貴様!その呪文は狡いだろ!』



 おうおうおう、魔王さんもビビってるよ。

 どんな技かは知らないけど!はははははは!



『フッ 狡いだと?これも立派な作戦だ!お前を倒すために【魔導の極み】まで習得したんだよ!覚悟しろ!』



『道理で魔法耐性が高い我に魔法を沢山使いながらの戦闘スタイルだった訳か…小癪な。』



 だからどんな技かって聞いてんだろうが!

  今のはどっちかが説明する流れだったでしょ!普通に進めるなよ!




《パンドラミック・ディザスター : 術者本人が使用した総合魔力分の効果を持つ魔導をランダムで発動する。これは術者も分からない。》



 いやいやいや、それは最後の賭け過ぎるでしょうよ!何!?ランダムって!勇者の癖にそれは卑怯じゃないか?

  あ!お前!ドヤ顔するな!腹立つわー!



 激しい地鳴りと暴風が2人の周りに起こり始め、正に大技と言ったシチュエーションになり始めた。

  そして、勇者の魔導の発動により突如勇者と魔王の間の空間が裂け、まるで宇宙空間にでも繋がってるのではないだろうかと思われるくらいに真っ暗な空間が出現した。




『グッ! なんだ!?この凄まじい魔法は!?いや、これは魔法なんかではないッ!“深淵魔法”か!!』




『フッ...よく分からんがなんか成功したっぽいな...アルデミラン!俺れらの代もどうやら相討ちのようだな!仲良くあの世で会おうぜ!はははははは!』



  俺の知ってる勇者じゃねー!こんなのアニメでも漫画も見たことないんだけど!?

  なんか魔王が可哀想だわ!魔王耐えろー!耐えるんだー!



『勇者め!クソッ “抵抗レジスト”が出来ん!我の肉体がこの裂け目に吸い込まれてゆく!グアアアアアア』



  魔王の肉体は分子レベルまでに粉々になりながら“パンドラミック・ディザスター”によって出現した裂け目に吸い込まれていった。

 同じく力尽きた勇者も吸い込まれ、2人の決着は勇者の実力とか全く関係なしの超絶ランダムな呪文によって幕を閉じた。



 魔王ー!...お前はよく戦った。お前は勇者に勝ってたからな!相討ちなんかじゃないぞ!後世にも伝えてあげたい!

 絶対メディアがスクープ記事で[見事!勇者は魔王と相討ち!]みたいに書くでしょ!号外とかでさぁ!酷いわぁ。ないわぁ。



《時空の歪みを検出しました。緊急回避措置を実行します。》



  ん??

 今なんか聞こえた!聴覚からじゃないけどなんか聞こえた!



《魂と肉体の波長を同期中...》



  なになになに!?この人は何言ってるの?人かどうか知らんけど!



《完了しました。緊急回避実行。》



  ちょっとー?おーい。勝手に実行しないで?



《スリープモードに入ります。》


 

 淡々と一方的に告げられた直後、猛烈な睡魔が俺を襲う!

 なん・・・・・だ、これ?

 もう限界だ・・・


 俺はそのまま死んだように眠りについた。



 さて、いったいどういう事だろう。

 夢の中だと言うのに何故か急に猛烈な睡魔が押し寄せ寝てしまった。

 そんで、起きたら見たこともない森の中だったという奇妙な事件。

 いや、どこのファンタジー世界だよ。

 まだ、森しか見てないからファンタジーとも言い切れないけども。

 試しに、夢から覚めようとして木に頭を思いっきりぶつけてみたけど滅茶苦茶に痛かった。

 おでこ擦りむいたもん。

 

 だけど本当にここはどこなのだよ!夢の中だろうけど、全く知らないところの夢を見るかね?

 確かにリアルではひたすらゲームに勤しんでたよ?

 人間関係を全て捨て去る勢いでやってましたとも。

 決してコミュ力が低いわけじゃないんだよ!

 ゲームする方が友人と話すよりよっぽど有意義に感じれたからだしー。

 別に話せたしー。

 虚しいな。うん。

 ・ ・ ・

 と・に・か・く!この状況を誰か説明したまえ!


《勇者の魔導による『パンドラミック・ディザスター』により、時空の歪みを検知し早急に肉体と魂を再構築致しました。》


 突然、俺の脳裏に声が響いた。


 は?

 何?なんなの?

 肉体と魂の再構築...だぁ?

 俺が勇者と魔王の戦いを観戦してる最中にも、変な声が聞こえたような気がしてたけど、本当だったのか?

 周りに誰がいる訳でもない。人と話す感覚とはまた違った感じ・・・脳に直接文字起こしされてる・・・?うまく説明出来ないけど、流暢に喋るロボットみたいな?スラスラ喋ってるけど感情というものが一切ない感じ。

 人間ではない。これは断言出来る。


 それで?どうして夢の中のはずの出来事だったのに俺はこんな所に居るの?

 君は管理者かなにかか?是非とも俺を現実世界に戻してくれ。

 授業中なのですよ。


《否。今まで貴方が見てきたのは夢ではありません。実際にこの世界で起きたものです。》


 

 でも、俺は眠りに入って今まで勇者の成長期を見てきたよ?つまりこれは俺の夢の中だ。間違いない。

 これはきっとあれだな、夢の中の俺が夢とじゃないって思いたいんだな。

 現実逃避乙です。

 まぁ、それにしても随分としっかりした世界だよな、こんなリアルに映し出せるものか?

 全ての五感がしっかりと働いてる感じがする。今までの夢とは何かが決定的に違う。


機械のような冷たい声は、俺の疑問に応えるように続けて話し始めた。


《解。ここは夢の中ではありません、あなたの現実世界です。しかし、貴方が勇者と魔王の戦いを見るためには眠りに入るという手段しかありませんでした。したがって貴方が、この世界が夢であるという主張は理解できないという訳ではありません。》


《が、ここは現実世界です。怪我をすれば勿論血が流れてダメージを負いますし、何も食べなければ空腹状態になり餓死する危険もあります。》


《今は、まだ実感がないかも知れませんがこれから身をもって貴方はこの世界について知っていくでしょう。私の存在もあと少しで消えます。あなたの質問に全て応えることが出来なくて申し訳ありません。》


《貴方の魂に私の一部を埋め込んでおきます。私のように流暢に会話することは出来ませんが必要な事は教えてくれるでしょう。》


 まてまてまてーい!一方的すぎるだろうが!

 大した説明も無しに勝手に俺をサバイバルに送り込みやがって!

 せめてガイドをしろ!

 無責任すぎるだろ!


《これからは、貴方が自分のみの力でこの世界を生きてゆくのです。お詫びとして貴方のステータスにちょっとしたギフトを授けます。後で確認してみるといいでしょう。》


ステータス?ギフト?お前はいったい何を言ってるんだ!ここはゲームの世界なのか!?


《否。・・・ザーこ・・・こはゲームの世界で・・ザーはありません・・・時間切れ・・ザー・・・のようです・・・。》


「おい!消えるんじゃねぇ!まだ、終わってねぇぞ!」 

 声まで出して呼び止めたが、声は帰ってこなかった。

 あの野郎、早々に消えやがって。


 まぁ、終わった事をグチグチ言ってても仕方が無い、切り替えねば。

 現実的に考えると、ここは99.9%夢の中だ。

 だってありえないもん。

 そう自分に言い聞かせた。

 言い聞かせるしかなかった。

 突然一方的に告げられ、あろうことか未開の地に飛ばされたのだから。

 

 しかし、まぁ夢だ夢だって言い続けてても意味がないし、例え夢の中だからといって軽率な行動をし本当に現実だとしたら取り返しのつかない事になったりしたらそれはそれで面倒なので残りの0.1%の可能性の現実世界と言う仮定で動こう。

 まだ、他の転生シリーズみたいに赤ちゃんからスタートじゃなくてよかったわ。

 赤ちゃんで森スタートって開幕絶望だよな。

 まずは、さっきあいつが言ってたステータスを確認したいんだけどどうすれば良いのだろう?

 それっぽい事を言ってみるか!


「ステータス表示!」


『荒波 輪道  LV1

 ステータス

 HP : 18 / 20(+10)

 MP : 12 / 12(+10)

 攻撃力 : 22(+10)

 防御力 : 15(+10)

 魔法力 : 15(+10)

 スキル

 「魔人の卵LV1」 「魔の窮地LV1」 「念話」』


 お、おう・・・なんて言うか・・・


「な ・ ん ・ じゃ ・ こ ・ りゃ!!!」

 全力で叫んじまったよ!

 ステータスが低いのは分かるよ?ずっと只の高校生で部活もやってなくてだだの引きこもりのヒッキーだったからさ!

 驚くのはステータスの弱さじゃなくて、ステータスに見合ってない2つのスキルだよね!

 なんで「魔」が付いてるの!?意味わかんないんだけど!

 あの野郎とんでもないギフト寄越しやがった!くたばれ!

 平凡な思春期の夢見る男の子になに持たせてんだ!

 この世界で俺は魔王側で戦わないといけないのか!?

 でもでもでも!その結論に至るのはまだ早いよね!

 『魔』の力を持った冒険者だって居るよ!

 うん!気楽にいこう!

 いねーよ!絶対にいないわー。いてたまるか!



 まぁまぁ、そんな先の話はとりあえず置いといて!

 今のことに集中しよう!

 だいじょーぶ!俺OK?? 

 まず、さっきから気になってたけど、どうしてステータスの全てに(+10)があるのだろう?何の効果?


《解。それはスキルの『魔人の卵』の付加効果によるものです。『魔人の卵』の詳細を表示しますか? YES / NO》


 うおっ!?お前居たのか!

 そういえばさっき『一部を埋め込んでおく』とか言ってたもんな。

 納得納得。

 今はそんな事はいいや。YESで!


【魔人の卵 : 戦闘直後の貰える経験値が上昇。戦闘によって死にかけた場合更に上昇。全ステータスに(+10)を付加する。】


 ブホォッ!?めちゃチートじゃねぇか!?

 いきなりぶっ壊れゲットしちまってるよ!

 なんんかどうでも良くなってきたわ!

 次!行ってみよー!おおー!テンション上がってきたー!


「次は『魔の窮地』の詳細おしえてー!」


《【魔の窮地 : 自分の総HPが残り10%以下になると『魔』の力を使用し全ステータスが急上昇】です。ON / OFFの切り替えが可能です。常にONにしますか?YES / NO》


 これは俗にいう『火事場の馬鹿力』って奴か。

 でもこれって相当ピンチな時だよね?ONにしててもいいんじゃないか?『魔』の力って言うのがなにか引っかかるけど。YESで!

 ラストはこれだな。だいたい想像はつくけど。


「最後に『念話』の説明プリーズ!」


『解。【念話 : 直接相手の精神へ語りかける】』


 ま、ですよねー!

 ・・・ん?待てよ。

 ちょっと、おかしくない?話すのは人だよね?人と話す時に『念話』いる?しかも結構序盤の方で・・・。

 ていうかさ、え?いるよね?この世界に俺以外の人いるよね!?


 めっちゃ不安になってきた。

 とりあえず街でも里でも見つけて一旦腰を落ち着かせたい。


 ここからどっちの方面へ行けば良いのか分からないな。

 見渡す限り、木、木、木、木!

 改めてどうしようもない場所に送ってくれたな!

 

 リアルでも知らない森で一人になったことねーよ!? 

 そもそも家から出なかったしー?

 まず家から出て遊ぶ人もいなかったしー・・・

 ボッチだったし・・・

 やべ、目から何か溢れてきた。

 

 やめだやめだ!ネガティブ思考になるの禁止!ただでさえ最悪な状況なのに!自分で気分を下げてどうするよ!

 こういう時は今向いてる方へ進むに限る!

 無心って大事だと思うわー!

 え?何も考えてないんじゃないかって?

 そんなことはない。

 ないったらない。



 はぁ・・・結構歩いてるけど、この森から抜け出せるビジョンが見えない。

 それに、魔物っぽい生き物も見るんだけど見た目がかなりイカつい!

 ゲームの序盤とかで見るような可愛い見た目の生き物じゃない!

 こういう時って『鑑定』スキルでちゃっちゃと鑑定してチートコースみたいな流れが欲しかった。

 ギフト送るならもっと実用的なの寄越せよ!俺を『魔』の道に進めようとするな!絶対に行かないからな!俺は絶対に道を踏み外さないぞ!


 まぁ、無いものねだりしながら歩いてたら異世界っぽい物を見つけちゃったよね。

 荒波の目の前には高さ5mくらいの大きさのダンジョンの入口が合った。中からは風の音が気味悪く聞こえてくる。

 BOSSと書いてボスが思いっきりいるわ。長年のゲーム勘で分かる。

 なにこれ?洞窟?ダンジョン?迷宮?どれをとってもヤバさしか感じられない。

 レベル1でここに入れと?神様今からでも遅くないので、俺を人間の町へ飛ばしてください。

 流石にここはナンセンスっしょ。1発でイチコロですわー。


 呑気に入口を観察しながら、「これはないな」と決定づけていると、どこからか爆音が聞こえ一瞬身体が宙に浮くほどの衝撃を受けた。


 ってぇ、なんだ?今の衝撃は?

 地震?異世界の地震は縦に揺れるのか?


 次第に爆音の音源が近くなり、その頻度も増すにつれ地鳴りが起こり始めた。周りの草木が次々と折れていく音も聞こえてきた。

 明らかに何か近づいてきてるよね?不味くね?俺を追ってきてる?そんな馬鹿な事は無いよね?

 まだ何も悪いことしてないよ?散歩なうだよ?もしも俺を追ってきてるなら適当に森の中へ逃げても100%追いつかれるよね。

 えー、この洞窟に入らなきゃダメなの?

 目の前からは俺を追ってきてるかもしれない化け物、後ろは何があるか分からないまだ生きる可能性が少しだけ残されている未知の洞窟。


 取るべき選択は後ろでしょ!

 やべー行きたくねー!やけくそじゃー!

 とうっ!


 洞窟へ勢いよく入っていった荒波だが、入口は凄まじいほどの急な下り坂だったらしくそれを知る由もない荒波は本気で転がり落ちていった。


 だだだだだ!これめっちゃ痛いんだけど!?止まらねぇ!これいつまで続くんだよ!早く止まってー!


「ゴフッ...いっててて」


 思いっきり壁に衝突しました。はい。

 すごく痛い。痛覚が半端なく警告しとる。

 普通の壁ならまだ良かったんだけど、洞窟の壁って無駄にゴツゴツしててゴツゴツしてる先っぽに本気で背中を打ち付けちゃって真面目にどっかの骨折れたんじゃないか?っていう勢いで痛い。


 うわ、口の中が血の味する・・・。

 これ結構重症じゃない?

 子供のころに自転車漕いでる時に下り坂で本気で滑りこけた時合ったけど、こんなに重症にはならなっかぞ。

 問診票で「過去に大きな怪我や病気を起こしたことはありますか?」の所に書けるわ。

 誰かー、この洞窟内でお医者様はいらっしゃいませんかー?

 はーい。いませんねー。

 とりあえずステータス確認しよ。


『荒波 輪道 LV1

ステータス

HP : 5 / 20(+10)

MP : 12 / 12(+10)

攻撃力 : 12(+10)

防御力 : 5(+10)

魔法力 : 5(+10)

スキル

「魔人の卵LV1」 「魔の窮地LV1」 「念話」』


 うぉう!うぉう!

 5!?

 5ってマジか!?5って!後ちょいでゲームオーバーやん!

 こんな所で魔物にでも遭遇したら・・・。


 はい。こんにちは!どーもー!

 横向いたら赤い目をした自分と同じくらいの蜘蛛と目が合っちゃったね。

 くそったれ!フラグ建てるの上手すぎるだろ!馬鹿野郎が!そうだよ!俺は大バカ野郎だよ!


 しかも、勘だけどこの蜘蛛毒持ってるわ。

 確証がある訳じゃないんだけどね?なんか見た目的にも毒々しい紫と白の斑点模様が背中にあるし、こんな色合いしてて無いって言う方が驚きだもんね。

 どーすっかなー。


 うげっ!あの野郎、牙品剥きながらこっちに走ってきやがった!

 やばいやばいやばい!直ぐには立てないんだけど!?しかも走って逃げるほど力ないんだけど!

 最後のあがきとして取り敢えず顔面ぶん殴っとく?

 いやー、かなり積みに近いわー。


 《戦闘を確認。『魔の窮地』が発動します。》


 お!そうだった!俺にはこの力があるんだ!どこまでパワーアップしてるか分からないけど覚悟しやがれ!

 拳を向かってきた蜘蛛の顔面めがけて発射。

 『魔』の力を纏った拳が蜘蛛の身体を貫通した。

 お、おう。

 この威力レベルに見合ってねー。

 確かに相手は昆虫だけど魔物だよ?それを拳一つで貫通させる意力ってとんでもねぇ。


 《熟練度が一定値になりました。〈魔人の卵LV1〉が〈魔人の卵LV2〉になりました。》


 《熟練度が一定値になりました。〈魔の窮地LV1〉が〈魔の窮地LV2〉になりました。》


 うわ、レベル上がっちゃったよ。これは上げたら名前的に不味そうだから上げたく無かったんだけどな・・・

 でも、今回はこれに助けられたから仕方ないか。


 《経験値が一定値になりました。荒波 輪道はLV1からLV2になりました。》


 お!俺もレベルアップした!おおー!身体中の痛みが消えた!レベルアップでHP全回復はありがてー!これなら探索できる!


 《ステータス値が各種上昇しました。》


 序盤のレベルアップ報酬は美味いねー!

 やっぱり魔物を倒してレベルアップするのか、本当にゲームの世界何じゃないのか?ゲーム脳って言葉を良く聞くが、これはやり過ぎでしょ。

 あー、身体も心做しか軽くなったし。気分もなんか快調快調!

 んじゃ!洞窟探索にでも行きますか!

 正拳突きで倒した蜘蛛の死骸を担いで移動を開始する。

 え?持っていく理由?決まってるでしょ。

 最悪を想定した非常食です。こんな過酷な場所で好き嫌い言ってたら怒られる。

 て、調子に乗って無計画に移動しまくってたら、迷っちゃった。

 だってー、アホみたいにこの洞窟広いんだもん!デカすぎるわ!最初に入る場所じゃなかったよね!

 どうやらこの世界の神は俺をさっさと殺したいらしい。お前の思惑通りにはならんぞ!俺は生きるぞ!

 そう行ってる間にも分かれ道だよ?無理っしょー。

 魔物にも結構遭遇しました。その時その時逃げまくりました。迷子になりました。はい。


 そして、逃げ続けてたら凄いもの見つけちゃったんだよねー!

 なんと!上半身のない人間の死体!

 わーお!

 その周りには血だらけになった服と鞄が転がってた。

 武器らしきものはないから観光者?そんな訳ねぇか。

 あ、鞄に変なマークが付いとる。なんかの調査隊の人なのかな?ま、ご愁傷様です。

 俺も一歩間違えたらこんなふうになるんだよねー。油断禁物。

 ま、先人を敬ってこの遺品はしっかりと貰っておこう。ん?不謹慎だって?いやいや、甘い事言っちゃ行かんよ。利用できるもんは利用しないとダメだって。

 分かれ道を出たら巨大な通路を見つけた。

 ここら辺で1回休憩しよう。

 さー、お待ちかねのー!鞄の中に何が入ってるかなーのコーナー!いぇーい!ふーふー!

 はい。悪ふざけもこの辺にしておきましょう。

 缶詰とか入ってると嬉しいんだけどなー、えーっと?

 まずは、地図!

 うーむ。印とか付いてないからどこがどこか全く分からんぞ?所謂ゴミという奴では?ゴミは言いすぎたな、今の所は不要の物。

 次は、本?広辞苑以上に分厚いけど・・・読む気があまり起きないな。

 とりあえずパラパラとめくってみた!そしたら、なんと!魔物の生態調査報告書のまとめだった!

 この報告書を持った人がここに居るって事は、報告書の内容に記載されてる魔物は全てここの洞窟のエリアって事になるな。

 これは、結構いいものを貰った!

 お、これって俺がさっき倒した蜘蛛の魔物じゃない?

 赤い目がに白と紫の斑点模様、鋭利な毒々しい牙を持つ蜘蛛の絵がそこには描かれていた。


〈スモールファネリアスタランタス : 幼体でありながらも毒は強力で、蜘蛛糸と組み合わせて敵を捕食する。〉


 ぶへっ!?

 この大きさでスモール!?

 成虫になったら何メールになるんだよ!

 あー。考えたくねー。

 次だ次!

 て、後はめぼしいものは特にないな。

 ペンケースとランタンの燃料っぽい奴とマッチか。

 火を起こせる物は合っても燃やせる元が無いんだよなー。


 ・・・このブレザーよく燃えるかな?こっちの世界に来た時に唯一残ってる元の世界の私物。

 特に思いでないけど、悲しいな。

 くっ、背に腹は変えられん!許せブレザーよ!

 先ほど倒した蜘蛛の足にブレザーを巻き付け、ランタンの燃料を掛けてマッチで火を付ければ、はい完成ー!松明ー!

 つか、眩しぃー!ヤバい!目が潰れる!

 あ、松明投げちゃった。

 消えちゃった。

 ・・・

 で、でも!松明無くても今まで行動できてたから要らないよ!うん!

 そいえば、必死に逃げながら迷ってる時になんかスキル獲得してたの思い出したわ!見てみよ!


『荒波 輪道 LV2

ステータス

HP : 30 / 30(+10)

MP : 18 / 18(+10)

攻撃力 : 25(+10)

防御力 : 20(+10)

魔法力 : 20(+10)

スキル

「魔人の卵LV2」 「魔の窮地LV2」 「念話」 「暗視LV2」 「危険感知LV1」』


 なるほどね。

 この『暗視』ってスキルのおかげか。

 しかし、凄いなぁ。

 この場所にいるだけでスキルが育っていくし、スキルが取得できる。

 もしもここである程度生きていけるようになっていったら俺って結構強くなれるんじゃね?

 『魔人の卵』のボーナス経験値もあるし。

 行けるな!

 決めたぞ!ココで鍛えて俺は冒険者になる!

 ふふふ、楽しくなってきたぞー!

 一つ課題として残ってるのは、食糧問題だな。

 一応、蜘蛛の死骸を持ってきたけども。

 これを食べるにはかなりの勇気と根性がいる。

 だが、ここで餓死する訳にも行かないよな・・・。

 俺は決意を固め、蜘蛛のお腹に思いっきり食らいついて鼻をつまみながら全力で食してみた。

 頭痛と腹痛に襲われた。

 蜘蛛の毒だった。

 その日はずっと苦しんだ。

 後から『毒耐性LV1』と『痛覚緩和LV1』を獲得したのでなんとか凌いだ。




 そうだ、探索に出掛けよう。ある程度落ち着ける場所へ!

 この大きな通路みたいな場所なんだけど、全ッ然落ち着けない!

 仮眠を取ろうと思っても『危険感知』が作動して、敵の位置を常に教えてくれちゃってる せいで全く寝れないわ!

 しかもだよ!

 その後しっかりと魔物来るんだよね〜!

 ざーけんなよ!落ち着く暇が無いわ!

 襲来してくる魔物は全て最初に出会った蜘蛛!

 もちろんの事、戦闘力の低い俺なんかじゃ大したダメージを与えることも出来ずにあっさり瀕死ですよ。

 何回死の危険に合わなきゃ行けないんだよ・・・マジで!

 え?瀕死になって何度も来る蜘蛛をどうしたかって?

 それはもうお分かりですよね?

 『魔の窮地』発動ですよ。安定の一撃コース。

 そして、レベルアップで全回復。

 また襲来。瀕死。

 このループだよ!拷問受けてる気持ちだったわ!

 気がおかしくなるわ!

 そのせいで俺自身もだけど、嫌なレベルが結構上がったけども。


『荒波 輪道 LV5

ステータス

HP : 115 / 180(+10)

MP : 65 / 90(+10)

攻撃力 : 250(+10)

防御力 : 250(+10)

魔法力 : 160(+10)

スキル

「魔人の卵LV5」 「魔の窮地LV5」 「念話」 「暗視LV5」 「危険感知LV7」「毒耐性LV4」 「痛覚緩和LV5」』


 うむ、本格的にやばくなってきたね。

 『魔』関係のレベルが上がりすぎると絶対なにか不吉なことが起こる!勘だけど!

 まー、ここまで育てば普通に倒せるんじゃないか?『魔人の卵』の補正で相当強くなってる筈だし。

 それでも、落ち着くまではなるべく戦闘を避けたい。


 まぁ、そういう訳で少しでも落ち着ける場所へ行きたいわけですよ。

 でも、こんな大きな洞窟を目的も無しに歩き回るほど馬鹿ではない。

 目的は一応合ってですね。

 どうやら、報告書の記載に寄ると、洞窟の深くないところに水辺があるらしいんだよね。

 鍾乳洞っていうの?N〇Kの「自然の素晴らしさ」的なタイトルで出てきそうな場所があるんだって。

 そこを第一目標にして行動しようと思う。

 食事の面はさっきまで襲われてた蜘蛛の死骸があるから良いんだけど、水分がどうしても足りないんだよね。

 水分欲しさに蜘蛛をしっかりと咀嚼しようと思わないもん。

 もう何匹か食べたけど、血汗涙を滲ませながら食べないと食えない。

 な、の、で!飲み水の確保!

 やっぱり人間って水分が必要なんだよねー。そろそろ魔人になっちゃう俺だけども。

 それでも水っていうのは欲しいものなのよ。


 わ、まーたいつもの魔物が出てきたよー。

 今回は『魔の窮地』発動させずに倒したい!

 さーすがに、もうレベルが折り返し地点だからね!

 レベルを上げる訳には行かないのだよ!


 キキキキ。シャー!


 おう。敵意マックスやね。

 ただ、威嚇はしてくるけど、まだ襲いかかってくる気配はない。

 様子見てるのか?今までのやつだったらなりふり構わずぶっ殺しに来てたのに。


 どうしよ。

 様子を見てるって事は、少なからずあいつには今までのやつより考えるだけの知性があるってことだ。

 今までは『魔の窮地』でなんとかゴリ押ししてたけど、そろそろチート能力に頼った戦いは避けねばならない。

 その代わりと言ってはなんだけど、蜘蛛の死骸の前足を武器にしてみた。

 こいつらの前足は鎌状になってて小さな刃が豊満に整列している。

 同じ種族で基本は同レベルだと考えると、この前足は中々に仕事をしてくれると期待できる。

 仕事してくれないと、魔人の階段のーぼーるーになっちゃうからね。

 笑い事じゃなくて。

 幸いな事に、今の俺の状態はレベルアップほやほやでHPにかなりの余裕がある。

 いけるか?こいつらの特性は、基本は突っ込んで毒牙を打ち込んでくる。

 そこを狙おう。

 作戦としては、突っ込んできた際に全力で脚を振り下ろす。

 単純明快スーパー作戦だな。穴の無い失敗の仕様がない作戦。

 俺にはこれしか思いつかん。


 他になんか合ったとしても生きるか死ぬかだ。死ぬ事はないだろうが。

 だったら、もう何も考えるまい。

 自分のBESTを尽くすだけ。

 それでもダメだったら、俺の人生が短くなるだけだ。

 人として終わるのは嫌だけど死ぬよりかはマシだ。


 覚悟を決めろ。俺ならできる。

 ステータスも結構上がってるし。

 目の前の敵だけに見据える。


 敵も俺が臨戦態勢に入ったのを理解したらしく、牙に毒を滲ませてる。

 重心を手前に傾けている。

 まるで、クラウチングスタートのように最高のスタートが切れるようにするためのようで。

 俺の読み通り、敵は地面を駆り立てながら走ってきた。

 それを助走にして、勢いよくジャンプ。

 空中で大きく前脚を振りかぶる敵に、俺は、全意識を集中させた。


 俺は前方に走りこむと同時に、空中にいる敵の頭に向かって真っ二つにする勢いで鎌状の前脚を振り下ろす。

 コイツは俺を甘く見過ぎた。

 自分の優位性を捨て、空中に自ら飛ぶという愚行に走った。

 前脚の刃で攻撃も悪くはない。

 勢いによっては俺の腕なんかあっさりと切断できる。

 悪くはないんだ、だけど得体の知れない相手には、牽制で使うべきだ。

 お前らの武器は蜘蛛糸による拘束と、毒による状態異常攻撃。

 正面切って戦うにはあまり適さない。それこそ俺が、丸腰で戦い方を知らない時以外だが。


 空中で断末魔を上げながら真っ二つに斬れる蜘蛛。

 そのまま、地面に墜落する。

 あっさりと、俺が勝ってしまった。


《経験値が一定値になりました。荒波 輪道はLV5からLV6になりました。》


《ステータス値が各種上昇しました。》


 全身の緊張が一気に解けて、その場に座り込む。



 蜘蛛の襲撃を難なくやり過ごすことに成功。

 いやー。

 こいつ結構頭いいんじゃね?みたいな感じでめっちゃ警戒してたけどその必要も無かったくらい馬鹿で良かった。

 

 俺は自分の身体能力をある程度は理解しているつもりでいる。

 今の俺のステータス的にこの付近の魔物は、俺のステータスと蜘蛛の前脚で倒すことが出来る。

 もちろん、蜘蛛以外の魔物もいると思うけど。戦闘能力的には蜘蛛と差ほど変わらないと睨んでる。

 でないと生態系のバランスが崩れちゃうからね。

 更に言うと、この手の迷宮やダンジョンは階層によって強さが分かれてるのがゲームでは定石だ。

 だから下に行きすげなければ、緩やかなペースでレベリングが出来るシステムだ。

 そういうのをひっくるめてこの階層では、俺はなかなか戦えると判断できる。

 突っ込んできた敵に対して、力いっぱい蜘蛛の前脚でぶん殴る。

 俺には攻撃手段がこれしかないから、この攻撃に命を懸けなければならない。

 この攻撃が万が一外れてカウンターでも入れられたりしたらそこで敗北することはないけど、魔人カウントが進み、人としての時間が無くなってしまう。

 まぁ、人間を捨てた時点で悪魔に魂を売ってるから負けなんだけどね。だから、避けれるならとことん避けて人として強くなっていきたいってのが俺の本音だ。

 スキルをフル活用してレベル上げる方が、効率的だって言うのは分かってる。

 でも、最初から用意されてる最高の道を辿って手に入れた力が強くたって、それは本当の力じゃない。

 この誘惑に打ち勝って、自分を追い込んで得た力が真の力だと俺は思ってる。

 それで死んだら笑えないんだけどね。


 あー、沢山考えてたらお腹ペコペコ。

 見た目も味もかなりのゲテ物だけど、そんなことで気後れする精神は、最初の蜘蛛を食したときになくなってる。


 というわけで、いっただきまーす。


 ふぅ。

 ご馳走様でした。

 見た目こそ最悪だけど、俺の舌の感覚が可笑しくなってきたせいで不味いと感じなくなってきた。

 それに、漠然とした感じではあるが蜘蛛成分?か分からないけど身体に馴染んでるっていうか疲れが緩和されてる気がする。

 あ、痛い。

 脚は固いなー。やっぱ。

 いつも食べれないから捨ててるけど、今回も食べれなかったか。

 捨てよ。





 俺たち冒険者チームは迷宮で調査をしつつ狩りをしていた。

 先日調査隊を派遣したところ、連絡が着かなくなってしまったとの事。

 そこで我らが所属するギルドマスターより、様子を見てきてくれと依頼されたのだ。

 この迷宮は”テリアデル大迷宮”と言って、世界3大迷宮の一つに入るところだ。

 その特徴としては、十数年前に迷宮外で突如発生した龍種がそこを根城にした為に、地上の魔物が迷宮へ逃げ独自の進化を遂げて元のステータスなんか宛にならないほど力を増してると言う。


 何とも馬鹿げてる話だが、実際に現場で狩りをしていると見たことも無いような種が目白押しにいる。

 例えば、今目の前にいる“スモールファネリアスタランタス”なんかは元々は地上で活動してた“スィクルタラント”と呼ばれる蜘蛛だ。糸は出さない代わり  に、素早い動きと跳躍力を使いながら敵を翻弄し鋭利な刃が詰まった鎌状の前脚を主武器として相手を仕留める蜘蛛だった。その蜘蛛が迷宮内に居  た、“ポイズンタランタス”っていう粘着性の高い蜘蛛糸と即効性の高い致死毒を主武器として戦う蜘蛛と交わって異常個体として産まれた。

 お互いの強い特性を掛け合わせて生まれた異常種。

 ただでさえ油断のならない蜘蛛がここまで進化してしまうと、はっきり言って経験値稼ぎなんか言ってる場合ではない。

 前までは、駆け出し冒険者が最初の目標としてここを目指すが、これからはそうも行かなくなるな。


「ねー、ここに血痕があるよ。」


 仲間の声に、俺は視線の先を確認する。

 そこには、明かりを僅かに反射させる、生々しい血痕があった。

 ここまで鮮明な赤色の血って事は人間のだ。

 「おい、見ろ。蜘蛛の足に丈夫な布が巻き付けてある。しかも、燃えた跡がある。」

 「きっと、襲われたときに脚に布を食い込ませて弱点である火を放ったのね。」

 ファネリアスタランタスと言う魔物は火に弱い。

 皮膚も頑丈ではなく、剣や矢も効きやすい。

 正面切って戦えば、よっぽど慣れてない限り倒されない魔物である。

 異常種だなんだの言っても結局はDランクモンスターだ。

 俺らBランクチームじゃ相手にもならん。

 「おいおい」

 「まじかよ」

 仲間たちの呻くような声に、俺も思わず地面を眺める。

 そこには、大量の蜘蛛の脚と頭が散乱していた。

 他にも、蜘蛛の体液と思われるものも散らばっている。

 「ねぇ、これ・・・どう思う?」

 これは、明らかにただの戦闘跡ではない。

 不自然なほど正確に千切り取られた脚と頭。

 こんだけの量のスモールと言えどファネリアスタランタスにいっぱしの調査隊の人が襲われたら少し怪我をする程度ではすまないはず。

 一体どうなってやがる。それとも偶然に誰かが助けに来たのか?

 だとしても、蜘蛛の脚は説明しにくい。助けに来た冒険者が頭の可笑しいやつなら全ての辻褄が合うんだが、それはないだろう。

 「他には何か落ちてなかったか?」

 「いや、ないな」

 ものすごく嫌な予感がする。

 長年冒険者をやっているが、凄まじく不穏な空気を感じる。

 「どうする?」

 「奥まで進むぞ、油断はするな他に人らしい気配を感じてもいくなよ」

 「それってどういうこと?」

 「これは魔物の仕業では無いって事さ」

 どんな奴かは分からないが、野放しにしておくと危険そうだぞ。

 魔物であろうと、人であろうと。

 最近は魔族に動きがあるってちらっと噂で聞いたが、それと関係あるのか?

 なんとか原因を究明せねば。




 ステータスを確認してみる。


  『荒波 輪道 LV7

ステータス

HP : 1 / 250(+10)

MP : 20 / 170(+10)

攻撃力 : 370(+10)

防御力 : 370(+10)

魔法力 : 230(+10)

スキル

「魔人の卵LV6」 「魔の窮地LV6」 「念話」 「暗視LV9」 「危険感知LV9」「毒耐性LV8」 「痛覚緩和LV7」 「集中LV2」 「探知LV2」 「忍耐」』


 絶望的なまでに瀕死だ。

 どうなりこうなり命をなんとか繋いでいる。なんとかね。

 ここからどうやって生き延びよう。

 そもそもどうしてこうなった?




 報告書に記載されてる鍾乳洞のような泉を目指して奇襲してくる魔物達を慣れた手つきで躱しながら歩いてた。

 レベルも少し高くなってきて、そろそろ上がりにくくなるかなーって思ったけど、『魔人の卵』っていうチート染みたパッシブスキルの恩恵で滞りなくレベルが上がっていく。

 上層の魔物なら6体くらい狩ればレベルが1上がる。非常に効率が良い。

 これは波が来ているな。このまま鰻登りでレベリングが出来ればこの迷宮の攻略も待ったなし!ガハハハ。

 この調子でどんどん奥へ進んでいこう!この迷宮の生態系が壊れるくらい狩ってやる!

 ふーふーふーん。気分よく迷宮探索続行だ!

 今の俺なら、そこらの魔物なんか敵じゃないし。

 力任せに蜘蛛の前脚を振れば大体の魔物は一刀両断出来ちまうもん。

 道中に何種類か蜘蛛以外の魔物にも出会ったけど俺の敵ではなかった。

 複数に囲まれても、戦闘に身体が慣れてきたってのもあって無意識のうちに対処出来てる。

 今の俺に敵なし!。ガハハハ。

 うん?

 なんか、すごく嫌な感じがするぞ?

 最初に森で感じた、嫌な予感が。

 早めにここから離れないとやばそうな感じが。

 ゆっくりと後ろを振り返る。

 真っすぐに伸びてる大きい道。その奥から、薄気味悪い風が悲しげに肌に触れる。

 

 「ガアアァァアア!」


 ビリビリと強大な魔力を伴った咆哮が迷宮内に響き渡る。

 ホワッツ!?アババババ!?

 なにこの咆哮!?迷宮内のボスなのか!?

 通路の奥から、荒々しく身体を壁にぶつけながら全力で疾走してくる黒い影が確認できた。

 やばい。絶対にBOSSだ!

 しかも、確実に俺の事をロックオンしてる!

 走る。逃げる。

 これしかない。

 右後ろの方で何かが砕け散った音がした。

 スピードを落とさないように振り返ると、口で石を生成して発射していた。

 アホかー!?

 その遠距離攻撃はだめでしょ!一撃でも喰らったらワンチャン即KOですよ!

 走れ走れ走れー!

 あ、分かれ道。

 右と、左。ここは右に進、も、うん?

 チラッと後方を見る。

 その刹那、自分の顔と大きさの岩が真横で爆発した。

 その衝撃で、地面と壁が吹き飛び吹き飛んだ下から大穴が出現した。

 え?あー、これは、とんでもなく深くて広い穴ですねー。落ちたら死にますねー。

 ヤバいー!?落ちるー!?

 なんとかして壁に沿わないと、叩きつけられる。

 頑張れ俺!

 壁に向かって身体を空を切りながら体当たりをして地道に壁との距離を近づけていく。

 いっそげー!いっそげー!

 もう底が見え始めてるから!

 早く早く早く!

 うおおおおおおお!

 よし、壁に張り付くことが出来たぞ!

 後は、地面に着くか着かないかの所で壁を地面に対して平行に蹴って落下ダメージを軽減させるのみ!

 そろそろだな、行くぞ。3、2、1!GO!

 ていっ!壁を蹴る事に成功したぞ、これで!ウエエエエエェェェェエイ!?

 反対側の壁にぶつかろうと思ったのに、別の通路に吹っ飛んで入っちゃったよ!

 止まれー!ごふっ!

 いっっっって!むっちゃ痛い!

 地面に降りれたけど、加速してた反動で絶賛凄い転がってます。

 あたっ!

 ようやく止まれたけど、初めて迷宮に入った時みたいに思いっきりぶつかった。

 あー、死ぬかと思った。

 とりあえず周囲の探索から開始しなきゃ。

 足は正常に動く、問題なし。左腕はさっきのガード時に吹っ飛んだから全身無事とまでは行かないけど、死ぬよりかはマシかな。

 レベルアップで完治に期待するしかないか。

 

 え? ええ?? ええええええええええ!?

 これってまじですか!

 立って辺りを見渡すと、目標の泉が目の前にあった。

 それだけじゃないぞ!ここら辺一帯は調査団の仮拠点だったらしくテントが数か所に広がってる。

 神はまだ俺を見捨ててなかった。ここに来て初めての感動!

 調査隊の人に治療序でに色々と話を聞こう。

 ふと下を見ると、『地面に飛び散る血血血血血血血血血血』、壁にも同様の血がぶちまけられてた。

 そして、無残にも切り裂かれた調査隊と思われし人達の死体。

 うわ、まじか。

 戦闘行為の痕は見られない。きっと一方的な虐殺だったのだろう。

 にしても酷いな。基本的に調査隊の皆さんは半身がなんだよね。

 爪で裂かれたか食い千切られたか。

 折角絶景スポットに来てるのに突如として巻き込まれた大量殺人事件って嫌だわー。

 ん?でも待てよ?

 報告書の通りならここに魔物は近づかないって書いてあったよな?

 それなのに何故この場でこの人達がやられてるんだ?

 これは魔物の仕業じゃなくて人為的な介入による事件なのか?

 だとしたら、この迷宮内で危険なのは魔物だけじゃないって事か。

 油断はできねぇな、人だったら魔物と違ってかなり賢い。正攻法じゃ敵わない可能性がある。

 最悪、最終手段である『魔の窮地』でゴリ押せばいいんだけどね。これはあくまで禁じ手だから最後の最後だ。

 でも、今誰かと戦闘になったら否が応でも『魔の窮地』が発動するんだけどね。

 ていうかよく生き残ったな、我ながら驚きだわ。

 狩ってる時にゲットした『忍耐』ってスキルのお陰かな?


 【忍耐 : HPが0になる場合、MPを消費して1残るようにする。】

  

 おおー。結構な不死性能だね。

 俺のMPが20しか無いって事は、落ちてる時に数多死にかけたって事か?

 一回死にかける度にどれくらいのMPを消費するか分からないけど、それは後々検証していけばいいでしょ。

 今は、生きてる事に感謝して緊張感を持たないと。

 その前に一旦休憩でも挟もうかな。ここの所しっかりと休める時がなかったし。

 俺がこの迷宮に入って体感時間だけど一週間くらいかな?正確には分からないけど多分そんくらいだと思う。

 泉で顔を洗ってと、あ~、きもてぃー。

 そして、テントの中で少しだけ仮眠っと。おやすみなさーい。







 

 

 

 

 「ガアアァァアア!」


 迷宮内に轟く魔物の咆哮。

 調査隊がここに送り込まれた原因の一つである闇の瘴気を纏った生物。

 見た目はまだはっきりとは確認されておらず、正確な強さも不明。

 口で石を生成して、吐き出して攻撃する。

 名前はない。自分が誰かも分からない。

 ただ、目の前の生き物を殺す。

 もう殺しはしたくない。

 だがこの身体に纏わりついた瘴気の所為で俺の意思は自分の身体に反映されない。

 そして、また新たに発見した獲物達。

 あの場所は、普通の魔物は入れないけどこの瘴気があれば無効化できる。

 人に気づかれないように背後から迫り、一人、一人、確実に仕留める。

 そして、最後の一人も裂いていく。

 ああ、またやってしまった。

 すまない、罪の無い人間たちよ。

 ん?遠くにまた新たな気配がする。

 人間?いや、人間とは少し違う感じだ。

 身体もそれに興味を示したらしく、それに向かって走り出す。

 僕はいつになったら止まるんだ?

 頼む、誰か、僕を殺してくれ。

 






 「ねぇ、今の鳴き声聞いた?」

 「ああ、勿論だ。気を付けろよ、距離的にはそんなに離れていない」

 クソッ、謎の変死体の正体も明かさなきゃいけないのに、今度は”黒の魔物”だと?

 悪い冗談は止してくれ、質の悪い事にどっちも得体の知れない正体不明だしよ。

 今、この迷宮で何が起こってるんだ?

 すごく気になるが、これに関わると命がいくつあっても足りなそうな気がする。

 取り敢えず、それなりの情報を入手して早くギルドに帰りたい。

 帰ったら、たんまり報酬が貰えるんだろうな。ぐへへ。

 っと、捕らぬ狸の皮算用は無にして集中しないいと。

 俺らには頼れるリーダーも居るし!丸投げしちゃえばいいや!

 「どうする?」

 ありゃりゃ、リーダーさん眉を寄せて考えちゃってるよ。

 ごめんねー。でも、俺にはわっかんねぇや。

 「もちろん、このまま進む。危なくなったら転移石でここから出ればいい。行くぞ」

 ま、ですよね。

 俺はあんたに着いて行きますよ。

 あんたは、依頼は半端では終わらせない人だ。

 そして、絶対に仲間は見捨てない。

 絶対的な安心間の下、俺らは行動できる。

 「こいつは、一体どういう事だ?」

 リーダーの重々しい声に、リーダーの視線の先に俺も視線を合わせる。

 暗くて見にくいな。ランタンを近づける。

 そこには、地面が崩壊して広大な空間があった。

 原因は恐らく、”黒の魔物”による攻撃。

 ただ、そこまでは良いとして、本当の問題は何に対して攻撃をしたかだ。

 あの変死体と関係があるのだろうか?

 「おい、余り近づき過ぎるなよ。落ちたら100%死ぬぞ」

 「おう、すまねぇな。ちょいと考え事してた」

 「このまま右の通路に進むぞ。この下は確か、調査隊の仮拠点だったな」

 「うん、そうだね。泉の発するエネルギーが魔物達は苦手で近づかないらしいよ」

 「それじゃあ、そこに出発だね!レッツゴー」

 そんなに、気は進まないけど行くしかないよね。

 俺らの結果報告次第で軍、或いは勇者が動くかも知れない。

 まったく、とんでもない依頼を受けちまったぜ。やれやれ。

 ま、ギルマスに恩を売っといて損はねぇかんな。

 やるしかないっしょ。

 

 




 

 はい、おはようございます。

 仮眠のつもりが爆睡してました。

 体感時間的に12時間位寝てたのではないでしょうか?

 いやー、やっぱり疲れてたんですよ。

 慣れない土地に来て、慣れない事をするって言うのはね。

 見えないストレスってのが発生してるんですよ。

 よく寝たよく寝た。身体がすっきりしたもん。

 しかし、気持ちはリラックスできても身体の痛みは取れなくてですね、俺の左腕は潰れてます。

 寝ても治りませんでした。

 まぁ、普通に考えたらそうなんだけど、この手のゲームて基本は寝たらHPとMPが全回復するのが鉄則じゃん?

 俺はそれを期待しつつ寝たんだよ。

 で、朝起きました。治ってませんでした。

 相変わらず昨日の絶望的なまでの瀕死ステータスです。どーもー。死にかけです。

 で、今俺が何をしてるかと言うと、レベリングだ。

 寝て治らないんだったら、レベルアップ報酬で全回復するしかない。

 こういう時に薬草とか、回復呪文を持ってたら便利なんだけどね。

 一応、テントの中を物色して包帯と消毒液は見つけて使用したけど<当然ながらHPは回復しなかった。

 ここまで、俺がこんなに大怪我をしているのに冷静な判断が取れる理由はきっとスキルの『痛覚緩和』のお陰だね。

 このスキルの恩恵で、見た目の傷に対して痛みを然程感じない。

 だから、こうして目の前のでっかい蛇に左腕を噛まれても、冷静に胴体を手刀で切断して倒すことが出来る。

 今は絶賛『魔の窮地』発動中でーす。

 お近くの魔物さんは是非俺のところまで足を運んできてくださいねー。

 そんな事言ってるけど、まじでやーばい。

 俺のレベルは上がらない癖にスキルのレベルは恐ろしく上がるの早い。

 5匹倒すと『魔の窮地』と『魔人の卵』のレベルが1上がる。

 それに対して俺自身のレベルは全くと言っていいほど上がらない。

 上層で蜘蛛を6体狩れば1上がってたのに対して、ここの蛇は10体倒しても上がらない。

 うおおー、なぜだー!

 蛇の方が持ってる経験値少ないのか?

 中層だよ?上層より強くなきゃダメでしょうよ。

 メタルキング的な存在いないかなー。

 という願望を抱きながら次々と襲ってくる蛇を叩き潰す。


 蹂躙開始から小一時間ほどしてようやくその時がきた。


 《熟練度が一定値になりました。〈魔人の卵LV8〉が〈魔人の卵LV9〉になりました。》


 《熟練度が一定値になりました。〈魔の窮地LV8〉が〈魔の窮地LV9〉になりました。》

 

 《経験値が一定値になりました。荒波 輪道はLV7からLV8になりました。》


 《ステータス値が各種上昇しました。》


 《条件を満たしました。称号〈魔物殺し〉を獲得しました》


 《条件を満たしました。称号〈仮初の支配者〉を獲得しました》


 《称号〈仮初の支配者〉の効果により、スキル〈魔の契約LV1〉〈魔力感知〉を獲得しました》


 《熟練度が一定値になりました。〈探知LV9〉が〈探知LV10〉になりました》


 《条件を満たしました。スキル〈探知LV10〉がスキル〈探知術〉に進化しました。これにより、スキル〈危険感知〉〈魔力感知〉〈気配感知〉がスキル〈探知術〉に統合されます》

 

 おおお!めっちゃスキルがゲットできたー!

 そんで完全回復来たー!

 よし、左腕も完全回復。他の折れてる骨も治ってるね。

 快調快調。生き返るー!

 ずっと瀕死で戦ってて気づいたんだけど、『魔の窮地』発動中って防御力も底上げされてるから、蛇に噛まれても防御力が高すぎてHPに届かないっていうね。

 改めてこのスキルの凄さを知ったよね。

 『魔の窮地』様様だけど、このスキル使うと『魔人の卵』のレベルも上がっちゃうんだよなー。

 そして、残すこと後1レベル。10レベルになると何かが起こると俺は予想を立てている。

 これもゲーム知識だけどスキルって言うのは、何十レベルも上がらずに10レベルを境に他のスキルに統合されたり、新しいスキルに派生したりする物なのだ。

 だから、『魔人の卵』が10レベルになった時、孵化するのか別のスキルになるのか。

 あー、いやだな。

 本当に人間じゃなくなってしまうのかな?

 見た目もかなりえぐくなったらどうしよ。まだ人型なら人間に紛れ込めるけど。

 俺の行方は神のみぞ知るってやつか。

 今回は俺をガッカリさせないでよ?

 さっきも、やっと人に合えると思ってワクワクしてたのに全員死んでたし。

 一個くらい俺に幸せをくれても良いんじゃない?

 虚しくなってきたな。

 ステータスでも確認しとくか。


 『荒波 輪道 LV8

ステータス

HP : 320 / 320(+10)

MP : 240 / 240(+10)

攻撃力 : 400(+10)

防御力 : 400(+10)

魔法力 : 310(+10)

スキル

「魔人の卵LV9」 「魔の窮地LV9」 「念話」 「視覚強化LV2」 「毒無効」 「痛覚無効」 「集中LV6」 「探知術」 「忍耐」 「魔の契約LV1」

  称号

  「魔物殺し」 「仮初の支配者」』


 どんどん『魔』に近づいてるな。

 新しくゲットしたスキルでも見ていきますかね。

 まずは、『魔の契約』から!

 【魔の契約 : MPを消費し、消費した分の魔物の眷属を召喚する】

 お、おう。

 これはもう魔人だよ。うん。

 まだ人間だけど魔人だよね。

 動物とかだったらセーフだよ?でも召喚されるのが、魔物ってあかん奴やん。

 まだ、使わなくていいだろ。

 ていうか使いたくない。どうせ使ったら『魔人の卵』のレベルが上がるんでしょ?

 次でレベルマックスだよ?やってられっか。

 あー、でも将来的にみて絶対に俺魔人になるよね。

 だったら、もう躊躇わずにバシバシ使ってよくね?

 もうめんどくさくなってきたわ。

 いや、諦めちゃダメだ。例え最終的に俺が魔人になろうとも今を諦めちゃいけない。

 最後まで抗ってやる。

 じゃあ、『仮初の支配者』見ていきますか。

 【仮初の支配者 : スキル「魔の契約」「魔力感知」を取得でき、MPを自動で回復する。戦闘時魔法攻撃力が上昇する】

 これもう魔人だよね。

 仮初って魔人の事でしょ?

 魔人になってないのにほとんど魔人みたいな感じじゃんん。

 そして、支配者っていうフレーズね。

 闇しか感じられない。

 

 まぁ、HPも全回復になったところだし?

 探索にでもでかけますか。

 目指すは地上。下層で自分を磨くのもありだけどね。

 今はその時じゃないかな?

 地上か、蜘蛛の前脚!

 今の俺が求むものはこの二つだ。

 蜘蛛の前脚ほど使い勝手の良い武器ないよ?

 あれは、もう一度手に入れておきたい。

 蜘蛛狩りじゃ。

 



と、意気込んで落ちた穴を目指して


 

 

 

 

 

 



 




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2017-10-16 17:26:20

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