2017-12-04 03:29:53 更新

概要

鹿島さんの頼みとあって提督が会った女の子は彼氏持ちの動画配信者。情事目撃、痴話喧嘩仲裁、恋人いない歴=年齢の提督と鹿島さんが現代若者の恋愛に振り回されるLove&Businessな戦後日常編です。


前書き


※キャラ崩壊&にわか注意です。


・ぷらずまさん
被験者No.3、深海棲艦の壊-ギミックを強引にねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた電ちゃん。なお、この物語ではほとんどぷらずまさんと電ちゃんを足して割った電さん。

・わるさめちゃん
被験者No.2、深海棲艦の壊-ギミックを強引にねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた春雨ちゃん。

・瑞穂ちゃん
被験者No.1、深海棲艦の壊-ギミックをねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた瑞穂さん。


・神風さん
提督が約束をすっぽかしたために剣鬼と化した神風ちゃん。今はなんやかんやで和解して丸くなってる。やってるソシャゲはFGO。

・悪い島風ちゃん
島風ちゃんの姿をした戦後復興の役割を持った妖精さん。

・明石君
明石さんのお弟子。

・陽炎ちゃん
今の陽炎の前に陽炎やっていたお人。前世代の陽炎さん。

・元ヴェールヌイさん(北方提督)
今の響の前々世代に響やっていたお人。
北国の鎮守府の提督さん。

・海の傷痕
本編のほうで艦隊これくしょんの運営管理をしていた戦争妖精此方&当局の仮称。



※やりたい放題なので海のような心をお持ちの方のみお進みくださいまし。


【1ワ●:仲良くなるための訓練 2】



提督「……お帰りなさい。何回目の大破か分かりますか」



神風「ここ3日で64回目の大破撤退です……」



提督「予想以上に連携が上手く取れませんねー……」



グラーフ「アトミラル、艦隊の士気がもはやないも同然だ」



グラーフ「あのお花畑の前で体操座りをしている彼等を見てくれ……死んでいると錯覚するほど生気がないだろう……?」



提督・神風・グラーフ「……」



電「……ぽちっ」ミュージックオン



電「引っこ抜かれてーあなただけについて行くー……♪」ハイライトオフ



電「今日も運ぶー」



サラトガ「戦うー」ハイライトオフ



ビスマルク「被弾するー」ハイライトオフ



ろー「そして大破するー……♪」ハイライトオフ



電「でーも、私達ー……」ジーッ



一同「あなたに従い尽くしますぅー……♪」ハイライトオフ


アア、アア、アノソラニ、コイトカシナガラー




提督「切なすぎる……!」



神風「あのろーちゃんも参っちゃってるかあ……」



神風「みんな! なにかアドバイスがあれば遠慮なくいってください! 次こそは完璧な指示を出してみせます!」



電「……ぽちっ」ミュージックオン&ダンシング



電「いなずまミンは短射程♪」フリフリ



ビスマルク「びすまるミンは長射程♪」フリフリ



ろー「ろーピクミンは溺れない♪」フリフリ



サラトガ「さらとがミンはフライハイ♪」フリフリ



一同「個性がイロイロ生きているよー♪」ハイライトオフ



提督「だそうです……神さん、個性はイロイロ咲かせてあげましょう……」



神風「そうは思うんですけど上手く行かなくてえええ……」



神風「司令補佐……後生の頼みです……!」



提督「旗艦指示に関して教えられることは教えたので後は実戦あるのみと判断したのですが……これはまずこちら側で鍛えるべきですかね……」



提督「仕方ありませんね。とりあえず教えたことを紙にして渡しますので暗記して覚えてください」



神風「それはもう頭に入っています!」



グラーフ「そういう神風の勤勉さも踏まえて普通に艤装が扱えたのならば旗艦適性の1つでもあるのだがな。周りもやはり刀1本なうえ、常軌を逸した直感戦法に適応するには時間がかかる」



神風「……う、青山司令補佐あ」



提督「覚悟を問います」



神風「もちろんこの命に代えても」



提督「かなり厳しくいきますね」



提督「あなた、ただの使えないゴミです。判断力、技量はもちろん、勇気や度量と履き違えているその蛮勇と無謀は目に余る。香取さんの特訓で本来得ているはずの土台が失われています。かなり辛い思いをしたはずなのに、3歩で忘れる鳥頭なのかと」



神風「……」



提督「そんなあなたが命とかいってもその覚悟を感じられません。ただ安っぽく聞こえるだけの戯れ言にしか聞こえません」



提督「あなたには覚悟が必要です」



提督「かつてのぷらずまさんを越えるまでの覚悟が、です。疑似ロスト空間で決闘演習した時に彼女の想は伝わったはずです。神さんは自分自身と比較してどう思いますか?」



神風「……まだ届かない、と」



提督「その通りです。だからあなたは敗けたのです。さて、このスマホの艦隊これくしょんの秘書官は神さんですが」


タッチ!


神風「きゃあ!」



グラーフ「!?」



神風「止めてください!」


ドガッ!


提督「……痛いですね」



神風「いいいい、今、私のの、胸……」



提督「顔赤くして乙女している場合ではないんです。やはりあなたはまだダメダメです。自分が真面目な場面で意味なくこんな真似をする人だと思っているわけでもないはずです」



神風「それはそうですが!」



提督「『50パターン』」



提督「このタッチシステムが戦闘システムの穴でして、自分と旗艦の神さんが戦闘中に直接的にやり取りが唯一可能な情報となります」



提督「これを利用して指示を出します。そのパターンがざっと『50』です。つまり『その50パターンを伝えるために神風さんの身体に触ります』」



神風「……理屈は分かりましたけど」



神風「触る場所は考慮すべきだと思います! 仮にも私とあなたは異性ですし、私はそういったことに対して潔癖だともいったはずですよね……!」キッ



グラーフ「なるほど、確かに命に代えても、という神風の言葉は戯れ言ではある」



神風「それとこれとは……!」



グラーフ「同じだと思う。なぜならこれは『艦隊の命を預かった提督の指揮としての提案』だからだ。生命に直結するぞ」



グラーフ「必要があるんだ。准将の人柄を把握している今ならば、少なくとも私は真面目に考えて答えるが」



提督「先にいっておきますね。女性、いや、神さんが触れられて過敏に反応する部分であるほど伝達の効果は高い。損傷状態の場合は痛みで感覚が麻痺していくので、指先で触れる程度では伝わりません。頭の次に肩に触れる、といった複数の接触のパターンを組み込むとするのならば、見逃す危険も高くなります」



提督「そして、超感覚を持つあなたにも適していますよ。幸い、自分からも映像を通して現場の様子は見ることができます」



提督「協力を、とはいいませんが、理解は求めますよ。もちろん、拒否するのならどうぞ。ですが自分からはこれ以上効率的な策を思い浮かべることは出来なかったですし、躊躇いはありましたので、提示するのは見送って地道に訓練させていたのです」



提督「あなたが応じるのならば自分は性犯罪者の烙印を覚悟し、この訓練を煮詰めています」



提督「さて神さん、改めて質問しますので、本気で考えてお答えください」



提督「あなたはどこまで捨てられますか?」



神風(昔より容赦のなさが増している気がするわ……)



神風「その訓練は手で触れるだけなのか、という点と、その、言葉には出せませんが、例えば」



提督「まあ、この時点でもう大分あれなので遠慮なしでハッキリいっときますね」



提督「必要さえあればもちろん×××から×××まで、更に必要があるのならそこから更に×××や××まで」



神風・グラーフ「」



神風「お嫁に行けないじゃないですかあっ!」



提督「かったるいですね……もともと自分の難易度は最難関といったはずですし、あなたもスカウトアピールの際にすべてを投げ打つ覚悟を皆に求めたでしょう? 故の提案に過ぎません」



提督「嫌ならノーといえばいいのです。時間はかかるかもしれませんが他の方法を考えてみますよ。なのでいちいち本題とは逸脱した点をヒステリックに指摘しないで頂きたい」



神風「……!」



神風「ちょっと電さん! こんなこといってるけど信用できるの!? 本当は私にいやらしいことしたいだけとか……!」



電「ざっけんな! テメーごとき駆逐艦が司令官さんの理性ゲージ吹き飛ばせるのなら色々と話は楽なのです!」



電「テメーはもう1回沈められたいのです!?」



神風「なんで私はキレられてるのかしら!?」



電「テメーに付き合わされて私達が何回大破という死ぬほど痛い目に遭っていると思っているのです!?」



神風「……う」



電「私はこの戦争終結を目指した時、この身を最後の殉職者とするために非道にも手を染めました!」



電「お嫁? 貞操? 私は戦争が終わるためならば、そんなもの嬉々としてゴミのように棄ててやったのです! テメーが廃課金とか今でもなにかの間違いとしか思えないのです!」



電「そこに踏み込めねーやつがこの人の指揮に応えられる訳がないのです! 分かったらぐだぐだいってないでとっととイエスかノーで答えるのです!」



電「嫌なら旗艦は私がやるのです」



電「( ゜д゜)、ペッ」



提督「まあ、触るといってもしょせんスマホのディスプレイの間接的なことですし……あ、これ逆にマニアックな気がしてきた」



提督「そもそもこれ妥協案なんですよね。神さんが旗艦としてしっかりやれば済む話なので、それが出来ない故の提案であり、艦隊を巻き込むからこそ提示した方法に過ぎません」



神風「……、……」



神風「分かりましたよっ! 挑戦させて頂きます!」



提督「了解です。ではグラーフさん、お願いがあります」



グラーフ「なんだ?」



提督「今から神風さんと別室にご案内致します。別部屋からこの機能で触りまくるんで、神さんの『感度が高い箇所』をまとめてください。最も高いと思われる場所とそうでない場所でパターンを組んで行きますので。必要ならば鹿島さんか香取さんに声をかけていただければ協力してもらえるかと」



グラーフ「お安い御用だな。了解した」



神風「徹底的だぁ……もう本当にお嫁に行けないや……」



神風「責任取りなさいよぉ、この鬼ぃぃぃ……」ウルッ



提督「すみません……」



提督「結果は必ず出してみせますから……」






鹿島「香取姉、練巡として呼び出されたと思えばこれまた疑問ですね……私には理解が及びませんのでお力になれるとは思えません」



香取「いやいや、私が教えられることは教えました。ここから先は私では無理ですが、鹿島なら導いてあげられます」



神風「」ピクピク



鹿島「香取姉に無理なことを私がだなんて……」



香取「いいえ、あなたはこの海において私より上にいける練巡の適性者です。確かに教え子の結果でいえば私のほうが数値的には勝りますが、こう見えても私はかなりの欠陥持ちですからね」



香取「鹿島の提督さんを練巡にしたかのような理屈タイプです。やる気や熱意のある兵士はたくさん見てきましたが、そろそろ私では理解できない高みに行こうとしています」



香取「あなたはそこから上へ兵士の背中を押すことができるはずです。それはあなたがこの鎮守府(闇)で過ごした記録、そしてあなた自身と話して分かりました」



香取「……正直」



香取「戦争終結したのにこの子がここまでがんばる意味を全く理解できないので。ここから先は想の羽で飛ぶ境地なのでしょう。なので神風さんにつく練巡としては私より鹿島のほうが適任です」



鹿島「いや、私だって……」



香取「不出来さ故にサンドバッグになる気持ち分かるわね? 私には全く分かりません」



鹿島「そ、それはまあ……ですけど、酷い言い方しますね……そういうところ確かに提督さんと似てます……」



香取「ごめんなさいね。でもここはズバッといったほうが伝わるので♪」



香取「軍刀の扱い方ならお力になれるので、鹿島の判断で必要だと思ったら遠慮なく声をかけてくださいね。それでは♪」


コツコツ ガチャ



神風「」ピクピク



鹿島「とりあえず提督さんに休憩の連絡をしますね……あ、すぐに連絡きました。10分ですがお茶を淹れますので休憩しましょう」



神風「オカマイナク」ハイライトオフ



鹿島「え、ええと、戦争も終わったのに、なぜそこまで努力するんですか? 確かに疑似ロスト空間が写したあなたの歴史から提督さんに追い付きたい気持ちは分かりましたが……結末は迎えられたはずです」



鹿島「なのに、まだ自分を削って嫌なことまでやって」



鹿島「……提督さんだって望んでいるわけではなく、きっとすっぽかした約束の埋め合わせにあなたを旗艦にしたはずでその理由はでっちあげです。だって正直に申し上げますと、あなたに旗艦適性は」



鹿島「……ありません」



鹿島「ご自分でもお分かりですよね。旗艦として必要なのは周囲の戦況をよく観察して迅速かつ正しい判断を下すこと。ですがあなたは海に出る度に自分のことで精一杯で、深海棲艦1つを倒すのに全神経を傾けなければならないのですから」



鹿島「……応援はしたいです。海に出て生死をかける以上、生きて帰らせてあげたいですから」



鹿島「その結果、私は死神と呼ばれた始末です。おまけに私は海から逃げました。なおも留まり続けたあなたに指導出来ることなんてあるのでしょうか、と。特に心の分野ではあなたに教えを乞う立場だと思っています」



鹿島「今の神風さんの根底を形成したのは……っと、すみません」



神風「……いいですよ。お世話になる身です。お話しましょう」



神風「信じられないような笑い話ですけどね」



神風「私が人生で初めて通った学校の名は対深海棲艦海軍のアカデミーです」



鹿島「……はい」



神風「父子家庭で育ちましたが、父がギャンブル狂でして。よくある駆逐適性者の劣悪環境です。恐らくはその中でも特殊ケースだと思います。小さな頃から色々な賭場に連れ回されました」



鹿島「日本だとパチンコとかですか? 最近は駐車場に子供を預ける施設が併設されているところもありますね。それとええと、すみません、フィクションのギャンブル漫画の知識くらいです」



神風「いいえ、そんな可愛いレートではありませんし、主に非合法のところですね」



鹿島「さすがによく知らないですね……都市伝説の類のようなものだと思ってましたが、実在するんですね……」



神風「まあ、父は大学生の時に泥沼にはまったそうですね。先輩から裏に招待されて大勝ちして大金を手にしたそうですが、その賭場は非合法ですので、勝ち逃げはさせてくれず」



神風「学校に来たらしいです。毎日のようにまた遊びに来いよーってな感じで。それで負けがかさんで借金までしてって流れみたいです」



神風「とうとう母も愛想を尽かして、私を残して去りました。そして父と私は逃避行の日々を始めましたね……幼い私なんかどうして連れていっていたのか。それは次第に気づきました」



神風「チップ代わりです」



鹿島「」



神風「非合法の場所では賭けるモノに価値を見いだしてもらえたら、それをテーブルに乗せることは出来ることも多々ありました」



神風「クスリ臭くて、タバコの臭いが染み付いて、イカサマの横行するような勝てば正義の世界です。勝っても負けるまでやらされるパターンもありますけどね。もちろん紹介があろうがなかろうが外様なんて基本的に完全な餌ですよ。だから私は売り飛ばされました。その時は私がちょくちょく父からくすねていた金をまとめて出して挑戦したギャンブルに勝つことでなんとか我が身を守りましたが」



鹿島「」



鹿島「」






鹿島「」



神風「……ま、ここからは似たような話なので飛ばしますが、色々あって日本へ戻って来たんです。その時の私は16歳ですね。日本語はつたなかったですが、やはり母国語なお陰もあり、すぐに話せるようにはなりました。読み書きもある程度は」



神風「父が賭場から足を洗おうと決めた故の帰国でしたね」



鹿島「安心な流れに……なるほど、それで普通の生活に戻りつつ健康診断を適性施設で受けた時に適性検査を勧められて?」



神風「いや、その日に父はグランドオープンしたパチンコ店に行くからあそこにいろって」



鹿島「足を洗うはずが、すぐに踏み込みましたね……」



神風「その時の適性施設にですね、先代の丁准将がいたんですよ。そして知っての通り、私には神風の適性が出まして」



鹿島「なるほど、丁准将ともなればあなたのような子を保護可能な力はありますね。適性が出たのなら尚更そうするはずです」



神風「負けて帰ってきた私の父がその話を聞いてですね」



鹿島「まさか……」



神風「娘が欲しければ賭けをしよう、と丁准将に持ちかけました。そして私はこの身を売り飛ばされて、そのままアカデミーへぶちこまれました。私は戦争なんて嫌だ、といいましたが、あのジジイは笑いながら戦利品に拒否権なぞないのである、とね。そこで始めて学校というところに通いましたね」



鹿島「先代丁准将は一体なにをなされているんですか!?」



神風「そういうやつですよあの男は……だから嫌いでした。司令官としては優秀だと認めていますけども」



神風「ちなみに春風と旗風は私の卒業と入れ代わりでアカデミーに入ってきましたね。直接会って話したのは丁准将の鎮守府です」



神風「私に神風の適性が出たのは幼少の頃から父や周りで見てきた腐った大人達を反面教師にした故だと思います」



鹿島(……もしかして、子供の頃からのその壮絶なギャンブル観察経験が彼女の鋭い感覚の根元なのでしょうか……?)



神風「訓練をしながら、空白を埋めるために私は本を読み漁りました。毎日のように私の歳の頃なら誰でも知っているような知識を詰め込んでいましたね。そうして私はどんどん真面目な委員長気質へと」



神風「卒業する頃には立派な神風ちゃんです。適性データの純100%の私は私の理想とする女の子でしたから嬉しかったです」



神風「そして丁鎮守府であのくっそうっとうしいジジイにからかわれながら訓練に励み、その1年後に」



神風「青山司令補佐が着任しました。丁准将が内陸の情報課からヘッドハンティングしてきたみたいですね」



神風「すごく海に熱心で仕事に真面目だったのは伝わりました。みんなはつまらない人だとかなに考えているのか分からないといっていましたけど」



神風「私にはなんだかこう解釈できたんですよね」



神風「その真面目の色は私と同じな気がしましたから」



神風「『ここ以外に居場所がないから必死』って」



神風「ですが過去の経験上、男という生き物は苦手です。頭の中ではくだらないことばかり考えているやつらしか見てきませんでしたから。異性間に関して私が潔癖気味な理由ですね」



神風「だから別に親しくなんかしませんでした」



神風「でも何気ないことで」



神風「私は無意識に勇気を出していたんですよね。そこからは鹿島さんが見た私の歴史です」



神風「あの日のきっかけから、あの人ならって思えましたけど、結果は知っての通り、ダメダメなまま戦争終結しました」



神風「まあ、あの日に適性施設で適性が出たのは幸運でした。きっと神風を知らない私のままじゃ、こんな気持ちとは出会わなかったと思うんです」



神風「ただつけ加えると……」



神風「初めてだったんですよね」



神風「男の人、好きになったのって」



神風「今もその色はよく分かんないままで」



神風「分かんないけど」



神風「けど」



神風「終わってからもらえたあの人の言葉でも」



神風「なんか今、すごく充実してて」



神風「そんなよく分かんない力で海にしがみつく毎日です」



神風「あはは……」



神風「ごめんなさい。私でも本当によく分からなくって」



鹿島「……ふわ」



鹿島(……鏡見たら分かると思う、というのは止めておきますか)



鹿島「でも賭博はお嫌いではないのですか? 戦場なんて正しく命をベッドするようなものですよ?」



神風「そうですね。個人的に人間とこの身を賭けて勝負するよりも、深海棲艦は怖かったです。人間のほうが残酷ですが、非ではないんです。あの冷たく燃える炎の心は人間では無理」



神風「だから、自分でも驚いていますよ。そんなのを相手にしてなおも」



神風「『命を預けたいと思える程の男性の司令官』」



神風「実は私は間に合っていたのかもしれません」



神風「神風に出会えたことで」



神風「私はたくさんプレゼントをもらえた」



神風「私は神風に」



神風「すごく感謝しています!」



鹿島「……」



鹿島(力になってあげたいなあ……)



鹿島(……神風さんの好きって、多分、尊敬とか恋とか理想とか色々複雑に混じりあって、それ故に訓練堪えて来られたわけですよね。その想いが根元なら……)



鹿島(提督さんに頼んでデートの1つでもセッティングしたら更に想いは燃え上がりますかねっ!)



鹿島「うふふ♪」



鹿島(……え、いや、むしろ満足しちゃうことで冷めてしまうこともあるのかな? うーん、好きな男性と過ごす日々って……)



鹿島「……あれ?」



鹿島「……恋?」










鹿島(この時私に電流走る――――!)







鹿島(……恋ってそもそもっ!)



鹿島(私、恋とかっ)



鹿島(したことありませんっ……!)



鹿島(ロスト空間が想いに呼応するとはいえ、恋心を利用して強さに繋げるとかどうやるんですか……?)



鹿島(……いや私、身体は21でも、実年齢ではアラサーなのに)



鹿島(そういえば初恋もまだだったんだ――――!)



神風「……んっ」ビクッ



神風「あいつ、唐突に再開しましたね……!」



鹿島「神風師匠! お伺いしてもよろしいでしょうか!」



神風「はい? し、師匠……?」



鹿島「お、お好きな男性に触れられるというのはむしろ嬉しいことなのではないでしょうかっ!」



鹿島「二人きりだからいいますが」



鹿島「わ、私はお好きな殿方を妄想して今の状況を想像してみてもよく分かりませんが、なぜだか触ってもらえるのはとても嬉しく思えるような気がぼんやりとするんですっ(混乱」



鹿島「確かに状況はマニアックだと思いますが、そういう風に愛し合っていると思えば今の状況は心の有り様でむしろ楽しむことも(錯乱」



神風「」






神風「っあ……ひんっ」





青葉「グラーフさんどいてください」



グラーフ「貴様だけは絶対に断る。部屋に帰れ」



青葉「さっきから神風さんの色っぽい喘ぎ声が聞こえてくるんです! 一体なにしてるのかはさすがの青葉でも聞きませんけど、静かにしてくださいよ!」



リシュリュー「グラーフ、まさか神風が男を連れ込んでいるのかしら?」



グラーフ「いや、他にいるのは香取が出ていったから鹿島だ。私は見張りをしている」



リシュリュー「まーた変な訓練やっているわけね……」



グラーフ「察しが良くて助かる。迷惑をかけて申し訳ないが、中を覗くのは勘弁してやってくれないか。貴様らもその、なんだ、痴態を見られるのは嫌だろう?」



青葉「本当、何の訓練ですか……?」



グラーフ「下手に黙って騒ぎが大きくなるのもごめんだし、口止めされている訳ではないから教えてもいい。タッチシステムがあるだろう。それを利用した情報伝達を作戦に組み込むために神風の感度の確認をしている最中だ」



青葉「さすが准将、他の提督には出来ないことを平然とやってのけるそこに青葉は痺れる憧れます(白目」



リシュリュー「あ、そうだ。私、准将とお話したかったのよね。執務室のほうにいるのかしら?」



グラーフ「ああ、執務室にいるはずだ」



リシュリュー「グラーフあなた、帽子取って愛想ある顔したほうが可愛いと思うわよ?」



グラーフ「脈絡なく貴様はなにをいっている……」






タッチタッチタッチタッチタッチタッチタッチタッチタッチタッチタッチタッチ



提督「指が疲れてきた」



阿武隈「提督さーん、これ表で郵便員さんから提督さん宛の手紙預かったんで届けに来ましたー……ってスマホいじってどうしたんです? ゲームにハマりました?」キラキラ



提督「まあ、ゲーム、ですかね。画面にいる美少女の身体にタッチするだけの遊びですが」



阿武隈「どうしました? ガチな感じで頭ぶつけましたか?」



提督「最もつつかれて反応するのは、うなじと内腿の付け根、ですか」



阿武隈「提督さんホントに何のゲームやっているんですかあ!」



提督「お気になさらず」


コンコン


提督「どうぞー、あ、リシュリューさん」



リシュリュー「ボンジュール♪」



提督「こんにちは。自分になにか用が?」



リシュリュー「これ、フランスのAmiralからあなたへの親書です♪ あ、私が預かっただけの個人的なモノですね」



提督「仏の対深海棲艦海軍のAmiralというと」



提督「大将殿、ですよね……?」



阿武隈「これまたすごい人から……」



提督「その時は海の傷痕の大本営襲撃の後に拉致られた研究部でお会いしましたね」



リシュリュー「そう。あなたに興味というか、Amiralからの個人的なものです。それと、私が持参してきた当時は極秘扱いだった資料をあなたに引き渡しますね……」



リシュリュー「ああ、一応私は日本に籍を置いているので余計なことは私の口から軍のほうには伝えておりません」



リシュリュー「……はあ」



阿武隈「どうしました?」



リシュリュー「ご結婚なされたらどうですか?」



提督「突然なにを」



リシュリュー「お言葉ですけど、もう少し立場を理解したほうがいいかと。あなたは海の傷痕を倒して世界を救うだけに留まらず、ロスト空間で想力を解明、活用を行い、かつ廃の領域にいる唯一の提督です。目をつけている人が多いですから。独身というだけでつけこまれますよ」



リシュリュー「かくいう私も隙あらばこっちの娘と見合わせてくれ、とかいわれましたし。あなただけでなく、丙少将乙中将もです。もちろん政治的な理由も含みます」



提督「上手くやりますよ。ところでこの資料」



提督「最初期のですか?」



リシュリュー「そうです。悪い島風さんのメモリーは見ましたから、その中で当たりのものだけを。他にも欲しければどうぞ今夜にでもリシュリューのお部屋を訪ねてくださって?」



提督「……、……」



提督「…………、…………」



阿武隈「すみません……こういう提督でして……」



リシュリュー「噂通りねえ……」



提督「日本軍の記録と違いますねえ……」



提督「ここの島風さんが第2適性者、悪い島風さん説濃厚……あのメモリーの裏付けですね。どうやら悪い島風さんのメモリーには嘘なしか」



リシュリュー「当時の日本にはアメリカの影響力が強くて当時の資料は不都合的なものは差し替えられているのかも」



提督「まあ、資料を拝見する限りそうですね。北方の奪還作戦といい、妙に非効率な場面での捨て艦戦法をしていたのは、せざるを得ない状況だったから、ですかね。日本兵を犠牲に深海棲艦のデータを集めさせ、それを基に自国の艦の兵士は錬度をあげていたってところですかね……」



リシュリュー「当時のフランス海兵が記録として持ち帰ったその時期のモノが保管されていましたので、ちぐはぐで闇だらけの最初期と悪い島風さんに対しての整合性のご助力となれば」



提督「ええ、ありがとうございます」



提督「正直、悪い島風さんは尊敬の人物ではありますから、出来ればこの手で仕留めたくはないんですよね……」



提督「……北方の奪還作戦の後すぐに第2の島風適性者が現れたとこちらの記録にもありますから」



提督「それも悪い島風さんだとはなんとなく予想しておりましたが」



阿武隈「最初期、ですか」



提督「メモリーの2-1は見ておくべきです。最初期の戦争というものがよくわかりますよ。今のあなた達がどれだけ過去の恩恵を得ていたのかも再認識できるかと」



提督「悪い島風さんは北方奪還作戦の後、マリアナ海域へと駆り出されております。日米連合艦隊と悪い島風さん、清霜、大鳳さんの3名で深海棲艦105体と激戦を繰り広げている映像です」



提督「戦死者は954名、生還したのはたったの96名です」



阿武隈「あの頃となると最初期の深海棲艦が人間にも過敏に反応するということで、数の少ない艦の娘をサポートするため軍艦が囮になっていた頃ですよね。実物の零戦とB29が共に空を舞って共闘していたとかって話を聞いたことがありますっ」



提督「ええ。日米と深海棲艦の戦いですが、マリアナ海戦再び、ですからねー。当時の軍艦大鳳の乗組員もまだ生きていた人がいた時代です。その頃に大鳳の適性者が現れたということもあり、大鳳さんに支給された軍服の背中には彼等が縫った大鳳の刺繍があって、皆の仇を、と出撃前日に熱く鼓舞されたそうですよ」



リシュリュー「下手な戦争映画より面白かったわ。どう見ても本物、よねえ。あの零戦とかヘルキャットは……」



提督「本来ならあんな映像を取るのに何十億とかかるはずなのに、製作費0円というのが想力の恐ろしいところですよ……」



阿武隈「想力に人件費はかからないですしね……」



提督「神様はお金を取らないのです。故に施し」



提督「実質、奴隷ですけどね……」



リシュリュー「ハッピーエンドじゃないから嫌なら見ない方がいいとは思うわ。目を背けたくなる光景の連続だから。しょっぱなから晴嵐のプロペラが整備員の首を巻き込むグロ映像だし」



リシュリュー「戦争の傷が癒えていないにも関わらず、日本兵と米兵が深海棲艦を倒すために手を取り合うのは胸に来るものがあったわ。私達、案外捨てたもんじゃないのかもってね」



提督「ですねえ……未知の侵略者からこの星を守るためになら、人類は一丸となれるのかもしれませんね。少なくとも現場では」



阿武隈「おっと! ネタバレはそこまでにしてくださいねっ! みなを誘って大迫力のシアター設備で観賞してきます!」



提督「さて自分も神風さんの次の訓練に向かいますかね」



リシュリュー「ならリシュリューは噂の間宮さんのお手前を拝見しに♪」






菊月「せい!」



神風「そんな簡単に砲弾逸らせるとか……」



菊月「教えてもらわなかったんだろうな。機銃ならともかく砲弾を構えて真正面から受け流すとか無理な。体ごと刀が壊れるのがオチだ」



雪風「次、行きまーす」



菊月「こうやって回避しながら、受け流す感じで」


クルッ


菊月「まあ、これは大道芸に過ぎんが」


ボキッ



菊月「痛って! 肩外れた……」



神風「……鹿島さん、どゆことですか?」



鹿島「刀で受け流す余裕あるってことは体捌きだけで避けることが出来たってことですね。被弾前提で刀折ってまでもダメコンするなら話は別ですが、そもそもの原因が航行ミスなので実戦でやったら怒られますよー」



鹿島「確かに軍刀にも色々種類はありますし、受け流すために調整された軍刀もあります。それでも1回受けたらほぼ折れますし、下手すると全身の骨が砕けますから……」



菊月「そうそう。やるならもっと丈夫な軍刀でやるべき蛮勇だ」



鹿島「神風さんには要らない技術です。避ける。それ1つです。それがダメなら大破します。すごくシンプルですし」



菊月「早く成長しろ。お前の修行に必要な高速修復材、望月達の遠征で間に合わなくて司令官が自腹切ってくれているんだぞ?」



天津風「うーん、神風さんのために道を作ってあげるんだから、そこの本番だけ頑張ればいいんだし、最後の防衛戦よりは難易度も低いはずなのにね……」



提督「その通り。しかし、理想の完成形まで時間はかかりますね。それは間に合わないと判断。神風さんと電さんもマシになりましたが、予想よりも足並みが揃わず。よってプランBに移行です」



天津風「あー……単純に数を増やすのよね? 私が第2艦隊の旗艦にシフトするやつ。そっちのほうを練習したほうが良いと思う。最終海域、連合艦隊で出撃だし」



島風「私はどっちだっけ」



天津風「あなたねえ……私と同じよ。私と島風、三日月にビスマルクさん、プリンツさん」



提督「もう1つは神風さん、長月さん、菊月さん、ろーちゃん、サラトガさん、グラーフさん。ここに長月さんか菊月さんは護衛艦としての性能によっては変更するかも」



提督「電さんにはちょっと後でお話があります。ちょっと自分に手伝って欲しいことがありまして」



提督「神風さんのその感知性能の本領を真に高めるのは」



提督「夜戦です。これなら深海棲艦の空母の性能は落ちますし、あなたの場合は五感に電探性能あります。これは光らない探照灯の性能になるので闇討ち成功の可能性は上がります」



提督「神風さんは損傷なしで特攻対象の懐に入りさえすれば、刀の一振りで装甲耐久関係なく即死の一撃を震えますので」



提督「夜戦部隊に移行しますか。グラーフさんも夜で機能する空母ですし」



提督「とのことなので、サラトガさん」



サラトガ「御意♪」



サラトガ「といってみたかったです!」



神風「なにこのサラトガさんすごい可愛い」



提督「Mk.IIMod.2に」



提督「F6F-3Nの夜間戦闘機型艦載機も積みましょう」



提督「菊月さん、探照灯を装備です」



菊月「神風のために照らせばいいんだな?」



提督「護衛艦というより囮艦になりますけど頼めますか?」



菊月「ああ。苦手ではない。任せてくれ」



提督「お願いします。練習を一通り終えたら明石君のところから借りて演習してみましょう」



提督「太陽が出ている間は第2艦隊が主力になりますね。当然ではあることなのですが、頑張れば頑張るほどありがたいです。夜になれば夜戦仕様型神風特攻部隊が深海棲艦を凪ぎ払うので」



天津風「完全なる闇討ち特化の色モノ艦隊ね……」



提督「さて神風さん、試してみましょうか」



提督「香取さんからいわれたことを今一度。速く、そして、最大限、刀を抜かないこと」



提督「……それと武士の心を」



提督「命よりも名誉を重んじましょう」



鹿島「……む、それは疑似ロスト空間のために?」



提督「はい。ジャンルは問わず速度関連においては魂を燃やした方々がたくさんおられます」



提督「先のぷらずまさんとの戦いで呼応して速度があがりましたね。あれがあなたの風です。もっともっと速く、です」



神風「燃えてきました」



提督「神風さん、丙乙甲の艦隊は懐に入られたくらいで切れるとは思わないように。特に甲の艦隊は武闘派ヤクザの通り名なので……」



天津風「噂では聞いてるわね。サラトガさん、本当ですか?」



サラトガ「ええと、木曾さん大井さんと北上さんは無茶していたかと。深海棲艦のお口の中に魚雷をよく突っ込んで自分ごといってました。今を生きているのが不思議なお三方ですね」



天津風「」



サラトガ「でも艦の兵士なら手加減してくれると思いますので大丈夫です」



サラトガ「ところで准将さん」



提督「はい」



サラトガ「神風さんの感覚探知のことなのですが、素晴らしい武器なのは分かりますが、とっても合わせ辛いので、サラにも理屈で教えて頂けませんか?」



鹿島「あ、そこ私も聞いてみたいです。一言でいえば電探とのことですが」



提督「ああ、そのほうがイメージしやすいかと思いまして。感覚による気配察知。それだけに留まらず想探知、悪い島風さんが行っている想の解釈に近いですね」



提督「彼女いわく気配には色があるそうです。イメージ的には皆さんと同じく赤が怒り、緑が癒し、のような」



提督「まあ、これが『浄化解体されてなお出来た』とのことなので、想の探知は」



提督「まだ人類が解き明かしていないだけで、我々にも備わる機能の1つだと思われますね」



提督「要は神さんは戦況とその感情色を頼りに突撃タイミングを決定しています。なので場合によっては例え艦載機の嵐の中でも、目標の感情色彩的に隙を見出だすと、突撃。もちろん勘の類なので、皆さんは『なんで?』となります」



提督「そこが皆さんの連携が崩れる要因」



神風「そうそう。言葉にしづらかったですが、そうなんです。深海棲艦は追い詰めるほどその色が単色的に赤くなっていく感じで、艦の兵士は強ければ強いほどその逆で青く冷静になっていくような」



鹿島「要は艦隊は戦況の中における心理状態をコントロールする。制空権の度合い、損傷状態まで考慮していくとなると、これはちょっと連携における不備は解消が困難ですね……」



サラトガ「ですね。でもそんな時こそプラス的思考をしますと、わるさめさんとか欲しいです」



提督「……ん?」



提督「……、……」



提督「サラトガさん、ナイスです」



サラトガ「サラで構いません♪」



提督「サラさんナイスです」



提督「そっか。煽り性能による絡み手、そういう手もありますね。参考になります」



提督「何か考えておきますよ」



提督「さて神さん」



提督「あなたは本番タイプです。戦場での想いの矛先は速く、です。このファンタジー空間は少年誌のような奇跡を贈ってくれるでしょう」


神風「はい!」



提督「速く。そに訓練をしてきたあなたの初志を貫徹し」



提督「最遅こそ最速」



提督「その尖った速度がこの空間では物理法則を越えて」



提督「想いの速度が」










提督「0秒を越えた時」






提督「あなたはぷらずまさんを越えられるかと」



【2ワ●:E-1】



比叡「瑞鳳さんに、朧さん時雨さん……どうしました?」



朧「私にもよく分からなくて!」



時雨「身体が勝手に動いて攻撃が全て……」



瑞鳳「潜水艦を狙ってしまいます!」



飛龍「なんじゃそりゃ。対潜装備なんて積んでないのにかー」



榛名「でも瑞鳳さんは最初の航空戦には参加出来ましたし、対空には朧さんと曙さんも……これは一体」



瑞鳳「仕様っぽいし仕方ないですね! 飛龍さんと榛名さーん! ロ級後期型×3は開幕の航空戦で沈めましたから、お二人でリ級、ヲ級をお願いします。私と朧ちゃんと曙ちゃんで旗艦のカ級を沈めますね!」



飛龍・榛名「了解!」


……………


……………


……………


朧「ごめんなさい……夜戦で魚雷に被弾して大破して」



丙少将「気にするなよ。俺が残りかすダメで沈められるからと欲を出して夜戦突入したのが原因だ。夜の潜水艦は相手しないほうがいいな。まるで当たらねえ。対潜積んで昼の内に刺す方向だな」



瑞鳳「ええと、私と朧さんと時雨さん。艦種でいえば軽空母と駆逐艦が強制行動を強いられましたね」



悪い島風【(●´ڡ`●)】



丙少将「うぜえ……」



陽炎ちゃん「あー、ほんとそいつ見ると殺意が湧くわね」



悪い島風【お詫びに解析行動を許してあげているじゃないですかー。まあ、かなり意地悪したけど、ボスマス以外は割られちゃったかなー。ま、ボスマスだけは割らせないですけどね!】



陽炎ちゃん「……とりあえず、この海域の敵艦隊の編成パターンは割り出したし、羅針盤は読み通り一定の索的値がないと逸れるし、艦種制限もある」



陽炎ちゃん「戦艦と空母が入っていると、今のハズレマスに逸れる。ただ航戦は複数じゃなければ大丈夫みたい。E-2まで調べたからデータまとめてサイトにあげておいたけど」



黒潮「丙はん、貸してもらえる航戦は友軍枠の明石君のところの山城さんしかおらへんわ。その山城さんも今日は扶桑さんとお出かけ中や」



丙少将「帰ってきたらで問題ねえ」



瑞鳳「あ、その必要もなさそうですよ。見るからにやる気満々の集団が来ました」






乙中将「丙さんのお陰で追加で情報を入手した。ここは僕らにbossの撃破を任せてくれて構わないよ」



丙少将「そういえば最近ずっと考え事していましたね」



乙中将「ああ。ちょっとこのゲーム、思うところが出来てね。予定していたよりガチで行こうと思う」



乙中将「悪い島風ちゃん、これを」


ポイッ


悪い島風【!?】



丙少将「ちょ、ちょっと乙さん! このクソゲーに身銭でそんな大金放り込むとかガチ過ぎません!? 」



乙中将「クソゲーじゃないと僕の勘が告げている。この艦隊これくしょんは僕らが損害被っている部分を抜いて単純にゲームとして見てみるとかなり出来が良い。流行りそう」



乙中将「むしろ面白いゲームだと思うからね」



乙中将「青ちゃんの目的も大体読めた。おっかしいとは思ってたんだよ。悪い島風さんが現れてやけに冷静でさ。敵視していないあの感じ、不自然だったからね」



乙中将「だってこんな性格で信用できないはずだ。それに加えて疑似ロスト空間なんて世間に広まれば、大事どころじゃすまない。というかこれだけ派手にやればバレるはずだよ。僕らの行動なんて監視されているはずだからね」



乙中将「これ、まず想力である可能性が高いね」



乙中将「雷ちゃんの新興宗教がクリーンなイメージを保っているのと同じようなことをされていると思う」



丙少将「……、……」



丙少将「おい、悪い島風」



悪い島風【邪魔が入らないようにフォローしてるだけー】



乙中将「……ともかく、突破するための編成も装備も完璧だ」



乙中将「旗艦龍驤さん、伊勢さん、利根さん、卯月ちゃん、弥生ちゃん、翔鶴さんの編成で行く。全員のスロット増設してそこにタービンや対空砲を装備させておく。制空値も羅針盤もバッチリだ。道中は苦戦するほどではないからね。ボスマスには行ける」



龍驤「伊勢」ギュッ



伊勢「ええ、皆さん鉢巻きを締め直して今一度、入魂を」



卯月「任せろし。潜水艦なら例え姫級でもうーちゃんと弥生の二人が何回でもぶっ壊して着底させてやるぴょん」ギュッ



弥生「うん」ギュッ



利根「そうしてもらえれば吾輩は対水上艦に加勢できるしな」



翔鶴「私と龍驤さん以外は潜水艦に攻撃が吸い込まれますから、制空権の確保はもちろん、夜戦前に少しでも水上艦を削っておく、ですね?」



乙中将「その通り。それじゃ出撃だ」



3



乙中将「よしよーし、陽炎ちゃんの解析データは間違ってなかった。無事にボスマスへは行けたね」



陽炎ちゃん「そのボスマスの編成は見抜けませんでしたけど……」



乙中将「この海域の編成制限からして意地悪な置き方すると、耐久力のある潜水艦、旗艦にはこれまた高耐久を設置するよ」



乙中将「ほら、潜水新棲姫が2列目にいる……」



丙少将「旗艦は、ああ、読み通り面倒臭い」



水母棲姫《イイノヨ……? コッチニキタラア……?》



乙中将「水母棲姫だね。耐久数値は350」



乙中将「夜戦で刺せるし、皆の実力なら昼で終わりもあり得るね」



乙中将「後は皆に任せるしかないけどねー……」



4



卯月「ブランクはあると思ってたんだけど」



潜水新棲姫「……」



卯月「やつは大破ー。うーちゃん、才能に溢れすぎてて困るぴょん」



卯月「つーか、つまらねーな。プログラム通りに身体が動くだけで機械的だし、もっと想力で楽しませて欲しいぴょん。これなら表の世界で戦ったほうがまだ面白いし」



クルッ



水母棲姫「!」



卯月「そのレベルならうーちゃんには当たんねーし。めんどくさくなってきた。龍驤、とっとと前座海域の敵に引導渡せし!」



龍驤「分かってるよー」



龍驤「うちら本当に強くなってるなあ。油断大敵とはいえ、艦隊組むと水母棲姫が取るに足らん敵のようにすら思えるわ」



翔鶴「常に劣勢かつ深海生還無限わきのデスサドンデスの海を越えてしまいますとね……」



伊勢「龍驤さんなんか此方さんとタイマンしてますし」



利根「ま、肩慣らし程度の相手じゃの」


ドンドン


水母棲姫「……!」



弥生「……とう」ドン



伊勢「全てが予定通りですねー」



龍驤「提督が優秀やとスリルないなー。まあ、ええことやけど」



卯月「その辺り、あいつは想像越えた策をいつも用意してるからスリルはあったなー」



弥生「戦いにスリルとか、いらないから。心臓に悪い……」



翔鶴「でもなんか違和感がありますね。水母棲姫ってこんなに弱かったですか? 私達が強くなったとはまた違うような感じが」



利根「といってもS勝利の文字が空に描いてあるぞ?」



翔鶴「……まあ、杞憂に越したことありませんね」



卯月「さて労働も終わったし、帰投して飯食うぴょん!」



【3ワ●:E-1 突破報酬】



龍驤「無事帰投したよー!」



乙中将「ありがとう! お疲れー!」



悪い島風【楽しかったー?】

 


利根「久しぶりに抜錨出来てそれなりに楽しかったぞ」

 

 

悪い島風【なによりでっす。楽しんでもらうことが目的でもありますからね! だから海の傷痕が用意したような死ぬか生きるかの難易度ではないからそこは安心してね】

 

 

悪い島風【あくまでゲームのレクリエーションでっす!】

 

 

卯月「突破報酬はー?」


 

乙中将「突破報酬は勲章×4に試製甲板カタパルト、それとネジ×5に、なんだこのシークレットカード」

 

 

悪い島風【突破報酬の新しい仲間ですー。その排出された新しいカードを差し込めばあそこから現海界します!】

 


丙少将「もしかしてあそこのステージそのために用意したのかよ……」

 

 

乙中将「……、……」

 

パンパカパーン

 

??「提督、お疲れ様です」

 

 

 

 


 

瑞穂「水上機母艦瑞穂、推参致しました。どうぞよろしくお願い申し上げます」

 

 

乙中将・丙少将「……」


 

龍驤「……瑞、穂?」

 

 

伊勢「まさかとは思うけど」

 


卯月「うーちゃん達の瑞穂といえばあいつぴょん……」

 


翔鶴「いやいや、まさか……」

 

 

瑞穂・利根「?」

 

 

2

 

 

わるさめ「事情は聞いたけど」ジーッ

 

 

瑞穂「え、ええと?」

 

 

わるさめ「スイキちゃんの感じはしないかなあ」


 

乙中将「……」

 

 

電「同じくです。最終世代ではなく前世代の瑞穂さんという線はないのです?」

 


大淀「23年前に中部海域で戦死しております。その頃の記憶はあるようでしたので、資料と照合したところ矛盾は見受けられず、あのスイキさんの神経を逆撫でしようとしたこちらの誘導尋問にもひっかかりはありません」

 

 

龍驤「そもそもあの瑞穂なら会った瞬間にぎゃあぎゃあやかましくすると思うんやけど。これは……」

 

 

瑞穂「……ええ、と?」

 

 

龍驤「瑞穂さん」

 

 

瑞穂「丙少将……あ、いえすみません。吉さん」

 

 

大淀「元帥の名字ですね。あの頃の元帥は確か丙将席にいまして、瑞穂さんとも顔見知りなのかな?」

 


瑞穂「そうですね、私はそこで艦娘、艦の兵士として今の元帥さんと過ごして、南方のほうへ異動しました。今の丙少将はお若いのですね」

 

 

丙少将「いや、まあ、若くみられるけどよ。それいったら乙さんとか軍の歴史でも最若年の22歳で乙将席だぜ?」

 

 

瑞穂「それは凄いですね……とても才能に満ち溢れた方なのですね」

 

 

乙中将「才能ねえ……ここだけの話、完全な実力って訳でもないんだよね。その世代の乙中将に推薦された候補が僕の他に一人だったからさ。その人は問題あるとのこと。まあ隣にいる」

 

 

北方提督「私だ。作戦ヘマしたから出世道を外れたよ。窓際提督の通り名もあるよ」

 

 

丙少将「あんたが乙の旗とか誰でも止めますわ。まあ、性質的には乙の旗に分類されるとは思うけどさあ」

 

 

乙中将「そしてそこにいる彼が現丁准将だ。23年前だと先代丁准将は知ってると思う。その席を引き継いだのが彼」

 

 

大淀「フレデリカさんが道を外さなければ、今世代はフレデリカさんが丁の席にいたと思われますね。主に周囲への好感度的な要素で」


 

提督「自分の人間的評価にびびる」

 

 

大淀「ちなみに戦争終結において提督側の最優功績の勲章も持っております」

 

 

瑞穂「それは凄い……なるほど、ふふ」

 

 

瑞穂「私達の積み重ねの美味しいところをかっさらったお方ですか」

 

 

提督「仰る通りで……」

 

 

大淀「後、丁将席の例に違わず変態ですね」

 

 

提督「そんなことはありません。というかさっきから刺があるんですよねえ……」

 

 

提督「そういえば丙少将、聞いた話アカデミーの相性検査では瑞穂さんが1位だったとか」

 

 

丙少将「あー……そだな。日向と伊勢には話したっけか。瑞穂さん欲しかったんだけど、フレデリカのやつが手ごめにしやがったからなー」

 

 

乙中将「案内してあげたらどう?」

 

 

丙少将「もちろん。瑞穂さんエスコート役は俺で構いませんか? その後、ご飯でもご馳走しますよ」

 

 

瑞穂「ありがとうございます。良ければお礼に瑞穂がなにかお作りしてもよろしいしょうか?」ニコ

 

 

丙少将「そりゃ楽しみだ。いやー、これが瑞穂さんだよなあ……俺らが見てきた瑞穂ちゃんとか瑞穂さんの形をしたナニカだったんだよ」

 

 

提督「……」

 

 

丙少将「お前の三点リーダ沈黙怖いんだけど」

 

 

提督「別の案件の考え事してました。すみません」

 

 

丙少将「別の案件? 悪い島風か?」



提督「いえ、若葉さんです」



北方提督「あの子がどうかしたのかい?」



提督「資料を整理していたのですが、興味が出まして」



北方提督「撤退回数のことかい? 若葉は何気にそつなくこなすタイプだよ。何気にあの子、素質性能高いからね」



提督「ですね。敵前逃亡なのですが、そんなこと繰り返していたら打撃のしっぺ返しを受けます。損傷していない敵に背を向けたら、その通りに背中を撃たれるだけですから。現に若葉さんを旗艦にした艦隊メンバーは何回か損傷を受ける羽目になっていますが、そのどれもが致命的とはいえない範囲に抑えるための指示を出せています。戦況を調べて若葉さんの旗艦行動を見てみれば別の見解が出てきまして」



提督「受ける損傷を把握した上で撤退出来るなら撤退している傾向が見受けられます。敵艦隊と遭遇した時から撤退するまで。経過をよく観察すれば『無理な撤退を可能にする艦隊の立ち回り』とも解釈できます」



提督「逃げることで他の人に仕事を押し付けているのもありますから、先入観が出てきますが……」



北方提督「む、そこは気づかなかった。ろくに執務していないのが仇になったか」



提督「してくださいよ……みんな命駆けて海に出るんですから……」



提督「まあ、その前提で若葉さんの旗艦能力を見直してみると理不尽を受けてなお完璧に近いです。指揮系統的に丁将と丙将の器が見て取れますね」



提督「訓練にはアカデミー時代から不真面目ですね。しかし、そつなくこなしている感じからして天賦の才、なのかな。旗艦能力に至ってはかなりの素質を秘めているような」



提督「あの子の扱いの難易度はかなり高いと思いますが……」



北方提督「そういえば三日月から若葉を旗艦で出すと、作戦を練る必要もなくなるから助かるっていっていたっけな。常務の作戦なんか私は丸投げだったし、よく分からないけど」



提督「北方は色々とポテンシャルがもったいないです」



大淀「そういえば若葉さんはまだ提出してないんですよね。少し待ってくれ、と直に頼まれまして」



提督「あー、そういえば……」



乙中将「面白そう。後で僕も見てみよ」



提督「っと、脱線しましたね。すみません」



丙少将「じゃ俺は瑞穂さんを案内してくる」



3

 

 

提督「で、あの人は最終海域突破したら死ぬんですか?」

 

 

悪い島風【さあ】

 

 

乙中将「ごまかしていいところじゃないよ」

 

 

悪い島風【それでも、さあ?】

 

 

一同「……」

 

 

乙中将「……ま、置いておこうか。青ちゃん、前に1度集まって会議したじゃん。ああ、暁ちゃんに僕の家の話をした時の会議、覚えてる?」

 

 

提督「ええ。今回は想力で我々も繋がれているから、資料だけ作って作戦会議はまた様子見してから決めようとのことでしたよね。悪い島風さんに関しては大淀さんのほうから通達しましたし、その追加情報ですかね?」


 

乙中将「丙さんにもね。今の状況、気付いてる?」

 

 

提督「ええ。しかし、打つ手はありませんね。情報が不足し過ぎている」

 

 

乙中将「北方提督さんと大淀さんとわるさめちゃん龍驤さん卯月ちゃんは気づいていないよね?」

 

 

北方提督「む、なにか刺がある言い方だな。私が鈍感みたいな言い方じゃないか」

 

 

乙中将「いや、仕方ないことだと思う」

 

 

龍驤「電の名がその中にないな。区分けからして廃課金以上か? 乙ちゃんも最後は廃だと海の傷痕に認められたっけ」



乙中将「それは置いといて、龍驤さんはさすが」



卯月「想力関係ってことしか分からねーぴょん」



わるさめ「同じくー」



電「あー、悪い島風の装備が関係していそうとは」



乙中将「そう、それ。丙さんも『この鎮守府にみなを召集する』ことで試してみたんだと思う」



乙中将「僕らが今、どんな存在かは知っているよね。英雄と持ち上げられながらも政府の拘束は罪人から自白迫るような感じに近かった。想力関連の情報を全て抜くためにね」


 

乙中将「だからこそ、監視されててもおかしくないんだよ。それに加えてこんな大勢で集まってなにかしてるんだよ?」


 

乙中将「戦後復興妖精やら疑似ロスト空間だなんて僕らの内輪に収めるには手に余るとんでもない大事だ。今は安全性が証明されつつある此方ちゃんよりも、ね」


 

乙中将「僕らが一ヶ所に集まってなにかやってるっていうのに役人一人もそこを追及しない。ましてや戦後復興妖精というか、想力を知ってさえいれば、僕らの日常を知ればどこかで違和感を覚える人もいるはずだ」

 

 

乙中将「これだけ悪い島風ちゃんは好き勝手やってるし、これだけの大所帯だし、どこかから漏れてもおかしくない。どう考えても周りが静か過ぎるんだよねー」

 

 

大淀・龍驤・卯月・わるさめ・北方提督「……あ」

 

 

提督「今までそれに気付いたのは『悪い島風さんが同行していた榛名さんと神風さんと行動を共にした記者のお二人』ですね。このことから悪い島風さんの何らかのテコ入れがないと廃以上を除いて自分から気づくことは出来ない。または、気づいても忘れてしまう可能性もありますね」

 

 

乙中将「なんだろうね」

 

 

乙中将「まるで僕らが世界の中心みたいな」

 

 

乙中将「ご都合展開は」

 

 

提督「Srot2:ご都合主義☆偶然力、かな」

 

 

提督「確信とまでは行きませんが、現状だけを見たのならその射程は超より上、海の傷痕の経過程想砲と同等の世界規模という線も濃いです」

 

 

乙中将「その確信とは行かない理由は、当局がそんな凶悪な装備を持たせるか? ましてやあの子、海の傷痕当局に謀反起こしてる危険分子だし、だよね?」

 

 

龍驤「待ち。ヤバない?」

 

 

卯月「世界はあいつのご都合で動かせるってことで」

 

 

電「世界征服されてるも同然なのです……」

 

 

北方提督・わるさめ「キャハ☆」

 

 

北方提督・わるさめ「かぶったうえーい!」ハイタッチ

 

 

大淀「あなた達仲良いですね……」

 

 

電「……」

 

 

わるさめ「安心したまえ。ぷらずまも親友だ☆」

 

 

電「失せろといいたいのが分からないのです?」

 


わるさめ「うーん、前にも司令官にいったけどさ、悪い島風ちゃん悪いやつじゃないと思うんだー」



悪い島風【ありがとー。私もわるさめちゃんは好きですよ!】



提督「……とにかく具体的な最終海域の作戦会議をのためにもここは各々、考えを巡らしておくべきところですかね……」

 

 

大淀「というか悪い島風さんに聞いてみるのは」

 


わるさめ「あ、どっか行っちゃった。書き置きあるよ。晩飯までには帰ってくるって」

 

 

4

 

 

丙少将「いやー、お酌までしてくれるなんてすみませんね」

 


瑞穂「いえいえ、ささやかなお礼です。途中にお会いした皆さんにご挨拶させて頂いた時にフォローしていただきました。私の後任者の瑞穂さんは皆の興味を集めるお人のようですね」

 


丙少将「まあな」



丙少将「案内しながらごちゃごちゃ喋ってたらいい時間になっちまった」

 

 

提督「間宮亭にいましたか。失礼します」

 

 

丙少将「どした? 電にわるさめと神風も……」

 

 

提督「あの後話し合いまして、少し瑞穂さんとお話を」

 

 

神風「司令補佐、彼女から邪悪な気配がします」


 

わるさめ「父さん妖気を感じます。それと同レベルだゾ☆」

 

 

丙少将「必中性能じゃねえか(震声」

 

 

提督「スイキさんのほうはご存じですよね。当時バグの3名はフレデリカさんのもとにいました。わるさめさんと電さんはお互いがバグだと気付けましたが、お二人とも瑞穂さんだけは分からなかった。それは何故かといえば」

 

 

丙少将「怪談の季節はまだ先だぜ。というか導入からすでに俺の人生で聞いた中でぶっちぎり最恐の怪談なんだが……」

 

 

提督「お二人は深海棲艦の第6感でお互いを感知できたからですね。しかし、被験者No.1の瑞穂さんは手探りゆえにその第6感性能が極めて薄い低級深海棲艦艤装を投入されていたため感知に至らなかった訳です。そして知っての通り当時は」

 

 

丙少将「止めろ……止めてくれ……」

 

 

提督「ぷらずまさんは電さんを、わるさめさんは春雨さんの仮面を完璧に被っておりまして、第6駆や白露型、間宮さん阿武隈さん卯月さん鹿島さんも気づけなかったレベルの」

 

 

提督「猫かぶりが標準装備、なんですよね……」

 

 

電「はわわ、電は怖くなってきたのです……!」ギュッ

 

 

電「あ、強く袖をつかんでしまって皺が……司令官さん、ごめんなさいなのです……」

 

 

春雨「その人は瑞穂さん、なんですよね。司令官っ、あまり人を疑うのは良くないです、はい……」

 

 

丙少将「いい加減にしろ! その話は終わっただろ! ここにいるのは瑞穂さんだ。瑞穂ちゃんなんていねえんだよ!」

 

 

提督「そのご飯は瑞穂さんがお作りになったそうで。まだ手をつけていないとお見受けしました、さあ、神風さん」

 

 

神風「御意……」クンクン

 

 

神風「多分、毒が入ってますね。これを司令官のほうに持っていって調べてもらえば確実です」

 

 

丙少将「瑞穂さん! こいつらになんとかいってやって!」

 

 

瑞穂「はい。では瑞穂からは一言だけ」ニコ

 

 

 

 


 






 

 

 

 

 


――――ガ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――オー

 

 

 


 

 


 

丙少将「そんなウワアアアアアアア!!」

 

 

電・わるさめ「――――」

 

 

瑞穂「なーにがエスコートだっつの! 実家よりここで過ごした日のほうが多いくらいよ! 毒殺してやろうと思って猫かぶりして前世代の瑞穂の情報も駆使したのにねえ!」

 

 

提督「マジか、うわあ……」

 

 

丙少将「茶番で1日潰されたに留まらず暗殺されかけたのかよ! 俺としたことがちくしょう! 中枢棲姫勢力の芸人の系譜に暗殺されかけたの2回目じゃねえか!」

 

 

瑞穂「ざけんじゃないわよ! 准将お前フレデリカさんがいた時、最終決戦前に私があんたにいった約束の言葉をここでいってみなさいよオ!」

 

 

提督「『いっとくわ。私はもう深海棲艦で終わり見えてる。けどさ、善悪問わずにかけがえのない命が未来を奪われて散っていくということを忘れないでよね』」



提督「『生き残るあんたらがね、また私達の墓を掘り起こす真似したら、マジで許さないから』」


 

瑞穂「テメー、1度目は海の傷痕戦で掘り起こして違法建造の素材にした! 即破ったわよね!」

 

 

瑞穂「あろうことか2回目だぞゴルア! また死んだのにまた生き返らせられてまたギャグ要員させられるってなんなのよ!? もうお前から生涯暮らせるレベルの慰謝料ぶんどれるわよね!?」


 

提督「かかってきなさい」

 

 

瑞穂「なぜだか勝てる気がしないわ!」



瑞穂「というか相変わらず過ぎてむしろほっとしちゃう私がいる」

 

 

瑞穂「って! そんな訳あるか馬鹿野郎!」

 

 

瑞穂「ほんとなんなの!? あんたらそんなに瑞穂ちゃんのこと大好きなの!?」

 

 

神風「これが違法建造(バグ)の精神影響ですか。確かに瑞穂さんの形をしたナニカですね……」

 

 

神風「あの、これ人間社会崩壊クラスの『Rank:SSS』ですよね。こんな馬鹿っぽいやつに世界はビビってたんですか……?」

 

 

提督「神さんの気持ちは分かります。でも、認識に誤解はあったんですよ。周りがよく見ずに騒いでたのも大きいです。基本いい人達ですよ」

 

 

瑞穂「ハアアアア!?」

 

 

瑞穂「カミさん!? 准将、お前駆逐と結婚したの!? ロリコンに命預けたとか私の人生の汚点よ!」

 

 

神風「あ、そっか。神さんだと初対面の人に……」

 

 

神風「ち、違いますからね……!」

 

 

電「まさかお前もそっち側に行く気なのです……?」

 

 

神風「行かないわよ!」

 

 

神風「私は神風型一番艦の神風で、あだ名が神さんです!」

 

 

瑞穂「ああそう! くっそどーでもいいわ! というか! 復活させられてから余計な言動できないようにされた状態でしばらく監禁された挙げ句、突如としてカチ込んできたRJ御一行にスイキちゃんブッ殺されたんだけど!」

 


瑞穂「ってことは3回目じゃねーか!」

 

 

電「ほんとうるさいのです。それは置いておいても」

 

 

電「さすがにあなたが出てきたらダメでしょう……」

 

 

瑞穂「10割被害者の瑞穂ちゃんが責められちゃうんだ! 本当に嫌! もう嫌! 天にまします我らが神よ! 瑞穂ちゃん生ある限りこいつらの足を引っ張って生きます!」

 

 

わるさめ「このオモローなヒス芸は――――」キラキラ

 

 

わるさめ「スイキちゃんだあああ――――!!」キラキラ


グイグイ


瑞穂「崩れるから引っ張らないでよ! というかわるさめ! あんた私の味方なら准将ぶっ殺すの手伝いなさいよ!」

 

 

わるさめ「遊ぼー! たくさん遊ぼー!」グイグイ

 

 

瑞穂「うっとうしいわね! あの世でネッちゃん&レッちゃんに遊んでもらえよオラア!」

 

ボグッ

 

提督「容赦なく鳩尾に拳叩き込んだ……」

 

 

瑞穂「トドメのストンピングver踵落とし!」

 

ボグッ

 

ムクリ

 

わるさめ「痛みすら愛しいよスイキちゃ――――ん!」

 

 

瑞穂「不死身か!? あーもうイライラする!」

 

 

瑞穂「怒りのちゃぶ台返し!」


ドンガラガッシャーン

 

 

神風「おい。食べ物を粗末にするな。その首、落とすぞ?」

 

 

瑞穂「恐いわねえ!? でもリコリスのおこに比べれば全然怖くないわ! わるさめと遊ぶついでにぶち殺してあげるからかかってきなさいよ!」

 

 

瑞穂「よいしょっと」

 

 

瑞穂「ゴング代わりのちゃぶ台返し返し!」

 

ドンガラガッシャーン

 

神風「成敗」

 

 

瑞穂「トランス!」

 

 

提督・電・神風「!?」

 

 

瑞穂「行きなさいPT.小鬼群!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


キャハハ                                                       

キャハハ

 

                                               

キャハハ キャハハ

キャハハ

 

                                                 キャハハ キャハハ

キャハハ

 

  キャハハ                                                                          キャハハ

 

                                       キャハハ キャハハ

       キャハハ


 

                                                  キャハハ キャハハ

 

 

 

 

 



提督・丙少将「うるさ!」


 

 

電「付き合っていられないのです……」

 



【4ワ●:若葉さん】

 

 

初霜「若葉!?」



若葉「アカデミー以来か」



若葉「今晩は良い月だな」

 

 

初霜「月? ええ、そうですね」

 

 

初霜「それとお久しぶりです。ですが正確には北方さんと乙中の演習以来です」

 

 

初霜「それとそのだらしのない服の着方はなんですか。いっても直りませんね! 」



初霜「ちょっと立ってください。ネクタイはきちっと締めないと」



若葉「おお、首が締まる」


 

若葉「というか初霜、あまり私に触るの止めてくれ……」


 

初霜「触衝の記憶、まだ根に持っているんですか?」

 

 

若葉「なくはない。キスカ撤退作戦に参加した記憶に触れたかった。というか、私自体があまり触られるの好きじゃない」

 

 

初霜「あれ、以前よりかなり背が高い、ですね……」



若葉「浄化解体を受けてからどんどん背が伸びる。昨日計ったら解体される前から10センチも伸びてた。今は149センチもある」

 


初霜「す、すごい伸びましたね。なんだか大人に見えます。あ、胸も大きく?」

 

 

若葉「少しな。お前はまだ私服の時は腕に鉢巻き巻いている」

 

 

初霜「魂の象徴ですから」キリ

 


初霜「それは置いといて、首周りのよれたシャツから胸元が見えてはしたないです。まったく、北方の鎮守府は女所帯とはいえ……」

 


若葉「……」ペラペラ


 

初霜「もう暗くなってきていますから読むのなら中のほうが」

 

 

初霜「ファイルですか? あ、読み終えたのですか?」


 

若葉「読み終えたらダメなことに気付いたから閉じたんだ。この鎮守府の戦争の資料をファイルにまとめていた」

 


若葉「今回の戦後復興妖精の件も。メモリーも含めてな」

 

 

若葉「准将、すごいな。」

 

 

初霜「それは、はい」

 

 

若葉「書類の几帳面さだ。提出する報告書とは他に自分用の書類も作成している。かなり細かい資料だ」

 

 

若葉「なのに……どこだろう」

 

 

初霜「?」

 

 

若葉「がんばるぞ」

 

 

初霜「ええと」

 

 

初霜「やらなければならないことほどやりたがらない若葉が自発的にだなんて珍しい……」

 

 

若葉「長くしゃべるのは苦手だ。ライン飛ばすぞ」



若葉《やらなければならないことはしたくない。戦え、と言われるほど、逃げたくなる》

 


若葉《だが逆にやりたいと思えることはやる。 戦えといわれても逃げたければ逃げる。幸い私は罵倒やら罰やらには打たれ強いからな》

 

 

初霜「相変わらずよく分からない姉です……適当かと思えばそうやって陰ですごく勉強している。なのに、本番では手を抜くような真似をしますし」

 

 

若葉《アカデミーの頃から私は初霜に対してよくわからないやつだと思っていた。だが、ここの連中はどうやら私と同じく初霜のことを不思議に思っていたはずだ。私に対してのよく分からないは、お前と同じく素質依存のものだろう》

 

 

若葉《初霜は不思議っ子なら、私はただの変な子だが》

 

 

初霜「ですけど私達、嗜好傾向はすごく同じですよね。服とか小物とか」



若葉《じゃあな。ああ、これを捨てといてくれ》ポイッ


コツコツ


初霜「直に夜になるのに外に出るんですか? 補導されちゃいますよ!」

 

 

若葉《死ぬわけじゃないし、そこらは上手くやるぞ。北方は自由にさせてくれたから私は私に必要なことを学べた》

 


若葉《やりたくもないのに強制されたものを毎日やるのは非効率的かつ洗脳隷属の始まりだ。なに1つ魂の糧になりやしない》

 

 

若葉「……夜風に当たってくる」パクッ

 

 

初霜「あ、若葉! タバコを吸い始めたんですか!?」

 

 

若葉《喫煙はしたことない。これはただの禁煙グッズだ》

 

 

初霜(相変わらずよく分からない……)

 

 

2

 


 

若葉「島風と乙中将か」

 

 

島風「おっす!」

 

 

初霜「なぜグラウンドに倒れているのですか?」

 

 

乙中将「あー、走り回ってたからね」

 

 

島風「乙中将に1回もかけっこで勝てない……」

 

 

若葉「む、乙中将は妖精の意思疏通分野以外にも特技があったのか」

 

 

初霜「若葉、その言い方は失礼です」

 

 

乙中将「あはは、構わないよ。僕、こう見えてもかなり運動性能は高いよ。小さい頃から犬と並んで野山を駆け回っていたから、キノコや草木の見分けとか、木登りも得意だ」

 

 

若葉「そうか。確かにすばしっこそうだな」

 

 

初霜「いつから走ってたんですか?」



島風「3時くらいかな。速くなれた気がする」

 

 

若葉「まあ、神風には勝てんだろう」

 

 

島風「悔しいけど神風ちゃんは確かに厳しい……」

 

 

乙中将「神風ちゃんのタイムいくつなの?」

 

 

若葉「10秒97」

 

 

乙中将「僕は6秒前半だけども、女子では速いほうなの?」

 


若葉「100メートルだぞ?」

 

 

乙中将「速すぎだろ! ワールドクラスの化物かよ!」

 

 

若葉「持久力も半端ない」

 


乙中将「まあ、北海道からここまで走ってくるくらいだしね」

 

 

初霜「」

 

 

島風「神風ちゃんは深海棲艦周りで戦果出せていないけど、基本的になにやってもすごい。速いし、真面目で頭もいいし、速いし、お料理も上手だし、速いし」

 

 

乙中将「なぜあんな風になってしまったんだ……」

 

 

若葉「主にうちの提督の教育と准将が約束すっぽかしたせいだな」

 

 

島風「最後、北方水姫を仕留める寸前に暁の水平線到達だからね。そのちょっと前に航行部分以外、経過程想砲で壊されてたからあれが最後のチャンスだったけどタイミングがね」

 

 

若葉「それから抱えていた矛先全てが准将に向かった。皆にあることないこといって当たり散らしていたな」

 

 

若葉「大和武蔵が来た日はタイミングが悪い。私達のなかでマーリンピック神風だけ外してご機嫌斜めだったのもある」

 

 

乙中将「……ところで若葉ちゃん、今回の件さ、種々ときな臭いと思うんだけど、なんか意見ある?」


 

若葉「資料は読んだ。途中で気付いて止めた」

 

 

若葉「ライン教えてくれ」



初霜「あ、若葉は長くしゃべるのが苦手で、長くなる時は媒体を通したがるんです」



乙中将「ふーん。今、持ってないや」



若葉「私のスマホに文字打って見せるぞ」



若葉《考えたらダメなことにな。私達は提督側から言われたことをやるだけに留めるのが最善というのが結論だ 》

 

 

若葉《だから、保留していた希望書は提出しないことにした。いわれたことを機械的にやる。これが最善というのなら私は気乗りしない》

 

 

乙中将「……、……」

 

 

初霜「それは想力で解釈されて策が漏れてしまうからですかね?」

 

 

若葉《そうだな。それと気になった准将のことは観察してた。スマホのデータに彼の部屋の盗撮映像が入っている。紙切ればかり眺めていて尻尾は出さないが》

 

 

初霜・島風「」

 

 

乙中将「尻尾というのは?」

 


若葉《事の重大さを自覚していないとは思えない。なのにあのやけに冷静沈着なうえ、戦後復興妖精に友好的な態度は違和感がある》

 

 

若葉《准将はすでに手は打っていてもおかしくない》

 

 

若葉《戦後復興妖精を今すぐにでも抹殺できる手を》

 

 

若葉《なぜそれをしないのだろうと思った。きっと准将と戦後復興妖精は利害関係にあり、お互いに相手の喉を切り裂けるからこそ手も結べるとしたら納得だ。武力がある国家が協力するように、今のお互いを探る状況は二人にとって都合がいい》

 

 

若葉「悪い島風は准将の切り札を探っている」

 

 

若葉《だから私は考えるのを止めた。序盤から想力を節約せずに常時、私達に繋げていて、准将と親しい闇の連中に特にお節介出しているのが分かりやすい》

 

 

若葉《私達が考える。不安を煽られたら、解決策を考える生き物だ。それは悪い島風の協力をしているようなものだろう》

 

 

若葉《まあ、准将のあの余裕な様子からして『私達がどれだけ考えても分からない手である』ことだけは分かる。ここらは最も探ってはダメなところだと判断した》



若葉「そんなところだ。だから私は自由に過ごすぞ」


 

乙中将「……その旨は丙さんと大淀さんに伝えとくよ。ありがとう。やっとモヤモヤが輪郭を帯びた」

 

 

乙中将(なるほどねえ、これ海の戦いではなく……)

 

 

乙中将(陸の戦いか)

 


乙中将(思えば勝利で戦争終結させたのなら当然じゃん)

 

 

乙中将(…………戦利品を獲りに行くのはさ)

 

 

乙中将(青ちゃんは戦後復興妖精のどの装備に興味を持ってるんだ?)

 

 

乙中将(どれも性能はぶっ飛んでいるけど、Srot3:welcome to my homeとSrot5:想力工作補助施設が臭うなー……)



乙中将(……今の状況を考えて戦後復興妖精対策になにか僕も仕込んどくかな。龍驤さん達に話しておこ)

 


乙中将(考えすぎな感じもするなー……)


 

乙中将「若葉ちゃん、指揮官の才能あるんじゃないかな。青ちゃんも資料見て褒めていたよ」

 

 

若葉「ないな。初霜もそう思うだろ?」

 

 

初霜「若葉は提督の責任を放棄して好き勝手やってすぐに任を解かれると思います」キリッ

 

 

乙中将「あはは、その手の子はさ、どういう風にやる気を出させるか、が肝要なのさ。卯月ちゃんと一緒だね。鹿島さんや香取さんも同じこというと思うよ。鞭の打ち甲斐があるって」



若葉「香取には打たれたが、反応せずに耐えて過ごしたら向こうが根をあげた」

 

 

初霜「ところで島風さんがおねむみたいです」

 


島風「感性派だからこむずかしい話は眠くなるんだよー……」



【5ワ●:鋳造された自由の奴隷】

 

 

提督「なんだこれ……」

 

 

北方提督「ん? それ私の鎮守府の資料かい?」

 

 

北方提督「ああ、皆の経歴か。ま、君なら見ても問題ないだろう。さすがの私もつつくのは自重するところだから、そこらはお願いするよ。明るい過去じゃないからね」

 

 

提督「もちろんです。神風さんのこれマジですか?」

 

 

北方提督「そっか。補佐官だと兵士の詳細資料は読めなかったっけ。そこを先代の丁准将が守っていたのは驚きだけど」

 

 

提督「小学校どころか保育園すら通ったことないんですか。義務教育を受けたことがない、と」

 

 

北方提督「親がギャンブル狂いだったとか。賭博場は合法のところより非合法のところが多いね。神風は幼い頃から父親に世界のあちこち連れ回されていたんだと」



北方提督「チップ代わりに」

 

 

提督「」

 

 

北方提督「酒とクスリとイカサマの卑劣な世界に生きてきたみたいだ。神風のあの刃のように鋭い感覚は身を護るために磨いた素質ゆえんだろうね。あの異性間の潔癖も毎日のように貞操の危険がテーブルに乗っていたせいだろう」

 

 

北方提督「負けたら奴隷か殺されるか変態の愛玩動物の世界だし」

 

 

北方提督「ちなみに父親は娘に神風の適性が出たことを出汁に軍の人間にギャンブルを仕掛けた」

 

 

北方提督「その父親を負かしてチップの神風を手に入れたのが何を隠そう先代の丁准将だよ」

 

 

提督「あの人ほんとおかしい。なにギャンブル楽しんでるんですか。普通に神さんを保護してくださいよ。それが出来る立場でしょうに……」

 

 

北方提督「私もカジノに一時期はまってね。その頃にフランスのホテルのカジノでリシュリューと会ったんだ。だからたまにリシュリューとはカードで遊ぶ」

 

 

北方提督「二人で神風にトランプゲームをしかけたことがある。まあ、しょーもないことだけど賭けをした。私はリシュリューとグルでやったんだけど、負けてしまったよ」

 

 

北方提督「神風にイカサマありのテーブルゲームさせると戦慄させられる。古典的なイカサマ道具なら全て見抜くし、それを逆手に取るところなんか神がかってる」

 

 

北方提督「本人はやりたがらないけどね。トランプすら見るの嫌らしい」

 

 

提督「そりゃそうでしょうよ……」

 

 

提督「はっつんさんや雷さんクラスの特殊例です……」

 

 

提督「……でもギャンブルやりますよね?」



北方提督「ゲームはやってるね。本人いわく楽しいけど、忌々しい。きっと血だと」



提督「なるほどー……」



提督「ああ、そうだ。神さんと長月さんとともに少しお出かけしてもらいたいところがあるのですが、引き受けてもらえませんか?」

 

 

北方提督「貸しておこう。どこだい?」



北方提督「というかなぜ私」



提督「ちょっと戦える人に様子見てきて欲しいので……ああ、今すぐではないです」



北方提督「こき使うのは構わないんだけど傷物にするなら神風とダブルで責任取ってね?」



提督「ええ。自分でよろしければ。ですが念のためです。街中ですし」



【6ワ●:悪い島風ちゃん、大本営へ】


1 大本営にて



陽炎「……とのことよ」



甲大将「おいおい、中枢棲姫勢力幹部復活とか、もみ消し安定の火種じゃねえか……」



不知火「……此方さんが先程、陽炎のスマホを見ながら黙っていますね。例の人の装備報告になにかありましたか?」



此方「『想力工作補助施設』」



此方「……なにこの装備」



此方「こんなの当局が作る訳ない」



甲大将「つまり、海の傷痕が与えた装備じゃないと?」



此方「だと思う。だってこれ、要は想力の用途を変える装備で、詳しく話せば『想の願いの形成成分を分解して抽出して、想に質量を与える力』だからね」



此方「『トランス現象によって産まれた海の傷痕のみが所有する能力』だ。つまり、戦後復興妖精、は――――」



此方「第2の海の傷痕」



此方「といってもいい。しかも」



此方「艦隊これくしょんのルールに縛られていない。私と当局があの戦争のルール内の決めごとを遵守していない状態で現海界していると思っていい……」


甲大将「待て。なんか血の匂いがする……」


コンコン、ガチャ


悪い島風【失礼します。マーマ、お久し振り!】



陽炎「歩いて表から? 廊下には」



悪い島風【通してくれましたよ】



悪い島風【まあまあ、その物騒な装備は降ろしてくださいよ。客人な上に此方さんの家族なんですし】



甲大将「聞いていた姿と違うな。その血の匂いが染み付いたボロ布の甚平と、草履かそれ」



悪い島風【当時の軍服でっす!】



悪い島風【あー、そろそろかと思いまして本来の姿に戻っておきました。といっても、変わるのは服くらいですけど。思考機能付与能力と現海界システムでトレースしたのが島風だし、心象形成しておいたのも悪魔なんでそう変化はないでっす】



悪い島風【メモリー見ただろ。艦の兵士が最初からあんな可愛い服で戦っていたわけじゃないですし】



悪い島風【当時の資源の惜しみすぎなんですよねー。子供用に仕立ててもらえないし、どうせ死ぬやつらだし】



甲大将「綺麗な軍服を頂戴して写真の1つでも撮っていれば、遺族にも手紙と一緒に自慢してかっこつけられただろうにな」



悪い島風【ハハ、さすがに甲はいい威勢していますねー】



悪い島風【でも当時、強制連行されて与えられたのは】



悪い島風【シケた最後の晩餐と】



悪い島風【深海棲艦をブッ殺す道具と】


 

悪い島風【心中する仲間だけだ】



悪い島風【最初期の電がチューキにブッ殺されたメモリーは見たんだろ? 今の制服着ていなかっただろ? アレはマーマのデザインの後付けで妖精にセットしたものだからねー】



悪い島風【さて、本日は営業に参りました!】



2



悪い島風【とりあえず此方さん以外はお口チャックです。聞きたいことはその後に教えて差し上げますから】



悪い島風【可愛い娘へのご褒美ーとかいえるような普通の家庭じゃないしね。私が欲しいのは想でも金でもないので、要求からいいましょうか】



悪い島風【妖精工作施設】



悪い島風【の基データを教えろ。それしか戦後復興妖精の役割を解放する手段がない】



此方「なんで? 想力工作施設は妖精工作施設も兼ねた性能だと思うけど」



悪い島風【私の役割縛りはオリジナルでないと解除できない造りになってる。妖精工作施設に含まれた基の想のどれかが必要だから、それがどんな想なのかを特定しなけらば想力工作補助施設でその想を複製して制限を解けない】



悪い島風【扉の鍵を開けるためにはその鍵か鍵穴を調べなきゃコピー作れないのと一緒。でもその両方がもうないから、その扉を作った本人に鍵の形状を聞きに来たってわけです】



悪い島風【同じようなのが契約履行装置にもかかってるんだよね。私が契約書に私の願いを書き込めないのがそれ】



悪い島風【准将も電もわるさめちゃんも知らない風だし、製作秘話ノートに載っていないはず。まあ、これも後で確認するけどね。それが出来る状況には漕ぎ着けたから】



此方「私にはどんな利があるの?」



悪い島風【気付いているだろ?】



悪い島風【想力工作補助施設は当局が私に与えた装備ではなく、私が妖精の機能を使って自ら違法建造した装備だ】



悪い島風【メンテされた後にね。なぜ残っているのか知らないけど、残ってるってことは当局にメンテされてもバレないように手を打っていて、私が読み勝ったということ】



此方「……?」



悪い島風【この装備を使えばあら不思議】



悪い島風【生死の苦海式契約履行装置以外の装備の性能が限界突破です】



悪い島風【Welcome to my homeは疑似ロスト空間で世界をいくつも自由に形成できまっす!】



悪い島風【ご都合主義☆偶然力はもう使ってる。世界が艦の兵士達中心に回ってます! 今なら人殺しても捕まらない偶然が降り注ぎ、戦争始めたら大多数に肯定されちゃうレベルでっす!】



悪い島風【ここに来たのも偶然、誰にも会わなかったんですよ! 監視はオールタイムなのにどんな偶然が重なったんだろうね!】



此方「一人のために回る世界を一つずつ用意出来るってことね……」



悪い島風【マーマは本当に人間として幸せになれると思ってるわけ。あり得ないよね。そこの甲大将とか元帥がどう頑張ろうともそれは政治的な決定に過ぎない】



悪い島風【そんな圧政、まかり通っても誰も納得しません】



悪い島風【ハンマーで出る杭を叩いたつもりが狙いをズラして地盤を打っちまうがごとし】



悪い島風【むしろ釘が浮くだけだろ】



悪い島風【無理無理、海の傷痕の罪は精算できっこない。街を歩けば石を投げられる。その素性を隠して生きていかないと、人並みの幸せには届かない】



此方「その力でなんとかするのが見返り、と? ごめんだよ」


 

此方「だって、一人じゃないもの」



此方「そんなの意味ないよ。全面的に協力してあげるから、装備を廃棄して解体しなよ。今なら明石君がいるから、トランスタイプのあなたを解体できる技術もある」



此方「その契約書に書き込みたい願いがあるんだよね? 私が代わりに書いてあげるよ。もちろん妖精工作施設の件も協力する。これじゃダメなのかな?」


 

悪い島風【いや、妖精工作施設で制限解除しなきゃ発動しない願いの類なんだ。その上でマーマが納得して書き込んでくれるならありがたいかなあ】


 

此方「……」


 

悪い島風【『完全なる戦後復興妖精の消滅』】



悪い島風【それが私の書き込みたい願い。ロスト空間がなくなっても想は世に溜まる。2度とこんな風に復活する可能性を消してくれ。早く終わりにして欲しいんだよな】



悪い島風【あの時に出来なかったから、たくさん遊んでるけどあんまり楽しくねーや】



悪い島風【気も触れる】



悪い島風【人の心を持たされたんだから】


 

悪い島風【話の進みが悪いな。皆さんメモリー見た?】



甲大将「……いや、私達は見てはいねえな」



悪い島風【あなた達にも真面目に考えてもらうために、少し映像を流し込もう】



悪い島風【仕官妖精(キョーダイ)とは違う最初期の記憶】



【7ワ●:戦後想題編:メモリー2-1】



溶接の火花が飛び散り、金属を打つ不格好な音が騒がしい。艦に水上爆撃機を艤装中に熱心な彼等の顔は酷く疲れている。


敗戦してなお戦争は終わるどころかより苛烈さを増していた。この国の技術に疎いアメさんの技術員が編成されたものだからか足並みも鈍く、それをお互いのせいにする。鎮守府では英語と日本語の怒声とケンカが絶えない毎日だった。


今日は騒々しい悲鳴が聞こえた。艤装中の晴嵐のプロペラに間抜けが首を持っていかれていたようだ。静かにしてくれ、と古びて黄ばんだ紙を丸めて耳栓にする。ただでさえ鉄と汗臭い不衛生な寝床だ。戦果に見合った兵舎くらいは用意しろ、と思う。


瞼を降ろすと、小気味の良い帰投した日の光景が蘇る。


先の北方の奪還作戦において、深海棲艦撃沈数105を記録した。


あの海域で確認された深海棲艦を全てほふり、生きて帰った島風は救世主のような尊敬の眼差しを一斉に浴びた。一隻で百隻を撃沈させた戦果は軍の残り種に火をつけるほどの効能はあったようだ。切羽詰まった深海棲艦の猛攻に対しての反逆の意思が活気を呼んでいる。


捨て艦戦法を指示したやつに誉められるとはイカれた時代である。持ち帰った仲間の死体の詰まった袋を突きだしてやっても割り切って敬意を払う対応はかなり苛立った。


島風(前よりも待遇は遥かに良くなったね。ほら大戦時の現場を支えたのは男性ばかりで、それが小娘に頼るしかない現状に思うところがあったみたいでさ。でも戦果を挙げてから扱いは変わった。こんな子供を一人の海軍士官として扱ってはくれているよ)


戦後復興妖精「馬鹿かお前は。勲章どころか軍服の一つも支給されてないんだぞ。上が投げつけたのは新しい甚平と草履だけだっつの。艦の娘だっけか。奴隷船が擬人化した生き物か?」


よくもまあ幼き子、しかもど素人の兵士に特攻命を出した連中がそんな態度を取れるものだ、と思ったのも束の間、北方の鎮守府の第一艦隊の旗艦の任を与えられた。もらえたのは軍人の肩書きではなく、船の肩書きだ。


ま、どうでもいいか、とすぐに切り替えた。少しバランス調整のためにこちら側での活動を許可されただけだ。早い話が島風となった状況を逆手に取って戦後復興妖精として協力者を探すために軍内部に潜伏している状況だったが、この目利きが反応する程の人材は見当たらない。


島風(そういえば私の艤装は?)


戦後復興妖精(回収されているはずだ。修理は終わる頃だが、島風の後釜はそうそう見つからねえと思う。それまでに私はやることやって行方を晦ませねえと。どうせ作戦参加の日々だろうし、適当に戦死に艤装して島風の仮面は捨てる)


唐突に頬を打たれ、固い木製のベッドから上半身を起こした。


最近になり海軍省から発足した対深海棲艦海軍のバッジを着けた男だった。「応答しなさい」との怒号が耳栓を越えて鼓膜を揺らした。軍内部といえど、こういった鞭の打ち方は腹に据えかねるものがあったが、島風はコレもちゃんと軍人として扱ってくれているからだよ、と奇妙なことに嬉しがっていた。


だが、私は許さない。


オラ、と軽く平手で張ってやると、男は吹き飛ぶようにして壁に激突した。ただの人間が建造状態の艦の娘に喧嘩を売るのは賢くない。やられたらやりかえす。本来なら営倉行きだそうだが今は艦の娘が命を繋ぐ必要不可欠な水と同等の存在であると知っているからこそ、やり返しても口先だけで怒られるのみだった。


戦後復興妖精「少佐君、婦女子の部屋に入るなら紳士的な作法を心がけたまえ」


少佐君「ああ、すみません。普段の後輩に対しての態度がよく出るのです」鼻血を吹いて、立ち上がると、ペラペラと喋り始める。「まずは先の北方領土奪還作戦、お見事でした。さすが島風の艤装適性者だけはあります。我が国が誇る島風の名に恥じぬ戦果です」


戦後復興妖精「少佐君、船みたいに扱うのはせめてもの嫌味かな?」


少佐君「と、とんでもありません。気を悪くしたのなら謝ります」


戦後復興妖精「司令部からの次作戦のことだろ。紙だけ置いて消えろ」


少佐君「お言葉ですが、そうもいかないのです。詳細を私の口から説明申し上げねば、作戦として軍令部との齟齬が生まれかねません。どうか組織の御理解を願います」


中では少佐君はマシなほうだった。軍人気質ではあるが、命を慈しむ心は並より上だった。ただ島風いわく、ここ最近でとっても痩せこけたとのことだ。それもそうか。戦死者を出すのを極端に嫌う男が特攻命を敷いて、撤退命令を出す許可を与えられなかったのだ。島風一人だけだが戦果よりも生きて帰ってきたのを喜んでいた唯一の男だった。


というか、適性者をもっと集めろよ。特に空母と戦艦だ。コストは多少高くても構わない。実物軍艦にかかる莫大な費用からしたら艦の娘の費用はガキの小遣い程度で可愛いものだ。艤装も製造され続けており、弾薬も燃料も戦う分には十分といえる状況だが、肝心の兵士がいないのだ。


少佐君「やがて事態が落ち着けば」


正解だ。最初期は凶悪な深海棲艦を用意せざるを得なかったが、歳を重ねるごとに深海棲艦も変化していく。それに伴って艦の娘の待遇も改善されていくだろう。本来成し得るはずだった未来予定からは大幅に軌道が逸れているが、私が本来想定されていた復興水準まで持って行ける。だが、この時期は通らなければならなかった。マーマとパーパにとっては必要な深海棲艦が災害認定されるために用意された最初期の地獄なのだ。


少佐君「お陰様で屍ではありますが、深海棲艦鹵獲に成功。事態は好転しておりまして、艦の兵士の生還を視野に入れられる状況に恵まれたかと。次作戦において司令長官から」


紙切れの文字に目を通す。



1 物資的損害を考慮せず。

2 深海棲艦の侵攻に際して止むを得ない場合、人的犠牲をいとわず。

3 被害状況により通信連絡が遮断された場合、旗艦島風の独断指揮を許可する。



戦後復興妖精「4 どう読んでも『死んでも海域を保守しろ』との解釈しか出来ず。5 断る。とつけ加えて今すぐ長官に叩き返してブン殴ってこい」


少佐君「あ号作戦を思い出しますね。アレは本当に辛い作戦でした」といつもの昔語りだ。大した戦果も挙げてない割に自慢のように語る。「我々は米軍の侵攻を留めなければならなかった。あの海域に銀色の怪鳥を配備されたら、我が国の領土が射程圏内に収まってしまう」


恩師といえる御方こそ戦死してしまいましたが、とため息をついた。


少佐君「マリアナ海域の保守です。しかし今回は米軍との共同戦線となりまして、そこで栄光の第一艦隊旗艦に抜擢されたのが島風さんです。我が国の代表ですよ」


ああ、そう。


耳に心地の良いおべっかを軽く聞き流して、頭を別のことに回した。島風が希望の星になっている現状ではあるが、この対深海棲艦あ号作戦は望みは薄だ。現状この島風の戦果を期待した上での決死作戦のようだ。無論この海の戦いに通じている以上、深海棲艦などというデクの棒を壊すのは造作もないことであるが、この身はあくまで影であり、先の大戦は島風の願いによる特例としての表戦争への介入だった。これ以上の注目を浴びては本来の役割に不備が出てくる。


戦後復興妖精「しかし、今日はいつもより騒がしいが、なんかあったのか。出撃の日が近いからか?」


少佐君「もちろんそれもありますが、今作戦海域で先行していたリンガ泊地を拠点に奮戦していた米国の艦の娘がとうとう撃沈した報告があがりまして……」


戦後復興妖精「誰?」


少佐君「エンタープライズであります。やはり近くまで敵国同士であったためか、こちらの兵士が心ない言葉を浴びせてしまいまして、それが原因で今朝からケンカが堪えないのです……」


戦後復興妖精「エンタープライズだとう……」


パーパとマーマの介入で歴史が少し変わったか。退役して後10年以上は残っているはずだと思ったが、大方こちらの現状と同じく対深海棲艦に回されて沈んで、艤装のラインナップに加えられたのだろう。適性者も早期に発見できたレア者だったろうに。


少佐君「ざっと大まかな流れをご説明しますと、その戦線の残存戦力によりけりですが、リンガ泊地に進撃してもらい、そこで補給艦神威により洋上補給を行った後、第二戦線に合流します。そこの深海棲艦勢力水上打撃艦隊を殲滅していただいた後、油資源の豊富なリンガ泊地に進撃してもらい帰投となりますが、あくまで予定です。特にあなたの戦力は敵こ……こほん、海外国もいたく感銘を受けておられる様子でして」


戦後復興妖精「もう深海棲艦殲滅世界一周旅行でいい」


少佐君「申し訳ございません……良い旅を……」


作戦開始予定日は明後日。まだ時間はある。


残り島風として果たすべく役割は戦力の補完、今の生きて帰れば拾いモノというどんつまりの解消、つまり艦の娘の育成だった。そもそもの捨て艦戦法はろくに訓練を受けさせる時間もなく、和平交渉が出来ない深海棲艦を対処させなければいけないのが根底にある問題だった。


今はまだ艦の娘の艤装の性質をろくに理解できておらず、その指導者は大戦を行きのびた連中だろうと教えるのは無理だ。鹿島や香取といった練巡適性者が現れた時それはひっくり返るだろう。適当なやつを契約履行装置により練巡適性を持たせれば話は楽ではあるが、その手のことはマーマの意に背くことなのでパーパが許可しないのは明白だった。


戦後復興妖精「少佐君、ただちに次の旅行に同行するお友達を召集したまえ」


少佐君「なにゆえ」


戦後復興妖精「私が学んだ艤装の扱い方を叩き込んで錬度をあげる」


兵士は増やせずとも私が周りのザコの錬度を三日であげることは可能だ。上にも得しかないし、そもそも私が教官につけ、という指示が下されなかったのが疑問だ。仲間を全て失った先の海戦の島風に気を回したとのことらしいが、どうも嘘臭いのだ。その場では飴と鞭の使い方が下手くそだね、といっておいて、いいたかった揶揄は飲み込んでおいた。海でらんちき騒ぎして、娘とろくに会ってもいない男どもの不器用な情なのだろうと思うことにしておいた。


戦後復興妖精「で、どうなんだ」


少佐君「それはそれは」と膝まずきそうなほどの感動した眼で敬礼をすると、鼻唄混じりに退出していった。


お友達に関しては予想外の幸運に恵まれた。北方領土奪還作戦の間に軍は『大鳳』の適性者を確保していたのだ。


2


戦後復興妖精「おっす。私がお前らの旗艦の島風だ。教官を兼ねているからねー」


各自の自己紹介を始める。他に集まったのはたったの装甲空母大鳳と駆逐艦清霜の計3名の寄せ集め戦隊で戦線を保守するとのこと。深海棲艦自体の数はまだそう大したことはないが、艤装の性能差を錬度と頭で繋ぎとめる必要がある。軍艦の記憶で賄えるのは戦の苛烈の程度だ。


大鳳「ご質問があります。私は空母艤装なのですが、駆逐艦の島風さんが私のきょ」


戦後復興妖精「ドカン」


大鳳の鳩尾に拳をのめり込ました。私の中の島風が猛抗議をしてくるが、関係なかった。嗚咽の声をあげて、膝をついた大鳳の頭頂部の髪を乱暴にわしづかみにして上を向かせる。


島風「この程度で心まで損傷させんな。確かに艦載機を扱えない私に空母の指導が出来るのかというのは最もな質問だが、この程度で心まで損傷していたら戦場ではすぐ死ぬぞ。現場ではこの程度が可愛いと思えるくらい飽き飽きするほどの理不尽の雨が降り注ぐ」


大鳳「い、いえ、何のこれしき……!」


戦後復興妖精「ドカン!」


二発目だ。


戦後復興妖精「痛いなら痛いといえ。お前は軍艦の記憶に学べよ。最新鋭空母のお前はなぜ沈んだか思い出してみなさいよ。魚雷で軽質油庫に被弾しましたー。でも異常はありません、大丈夫です、航行できます。あ、やっぱりダメそうです。対処はしました。これでなんとか。それで大爆発(ドカン)して搭乗員何名死んだのか。悪いとこは改善しないと今度は百日も持ちませんよ?」


大鳳「すみません。とても痛い、です」


戦後復興妖精「私の前で堂々と弱音吐いてンじゃねえぞ!」


最大の一発をお見舞いしておいた。打ちどころが悪かったのか、気絶してしまった、


構わず次に行く。


清霜「ハイ先生! 私は武蔵さんみたいな戦艦になる訓練したいで、」


戦後復興妖精「なれるかア! テメーはその元気で現実を直視しろ!」


清霜にも似たような理不尽を与えた。急造の鎮守府で行っていたこの訓練を視察していた海軍の将校達の表情が面白かった。子供が自分達の真似をしているようにも受け取り、そして子供達が悪ふざけをしているようにも見えたのだろう。口を挟まないのは正式な訓練であるからだ。


本格的に視察が仕事に熱を入れ始めたのは訓練を初めてからだった。一日目は基本中の基本、駆逐には航行の仕方、そして砲雷撃、空母には艦載機の射出の仕方を基礎に叩き込んだ。理屈で教えられる者がいるだけで成果は断然違ってくる。妙に頭で考えず舵を取られる軍艦と同じく、従うだけでいい。そこから妙な色気を出すには土台の経験が貧弱すぎる。


二日目は座学だ。


戦う敵の知識と、艦の娘としての効率的な陣形等々だ。潜水艦には単横陣、対空処理には輪形陣といったこと、この形状の敵は駆逐艦等々の戦うための基本知識だ。コレを知って指揮を執れるほどの適性者がいなければ先の奪還作戦のような乱闘になり、結果ただの心中でしかなくなる。さすれば性能差もあり頭数で負けている深海棲艦相手に敗北は免れず、だ。


三日目は大破の痛みに慣れること。


こここそ最も必要な継戦能力をあげるための必要課程なのだが、許可が降りなかった。入渠のための資源なんざたかが知れているが、損傷させるのは禁止されているようだ。


ああ、そうか。まだ艦の娘の入渠時間が把握出来ていない故の返答だ。明日の出撃に間に合わなくなる恐れを懸念しているようだった。大丈夫、といっても納得させることは不可能だし、入渠時間についての情報を教えることも役割上出来なかった。今やっていることもけっこうギリギリのラインだ。


なので、偶然を装うことで情報を引き渡す。


大鳳が発艦された天山が飛行甲板に戻る際に着艦失敗し、大鳳の適性者に微弱な損傷を与えた。すぐさま訓練は中断され、入渠が取り行われた。事故としておけば不名誉はともかく、入渠させざるを得ない。そして今の大鳳の錬度であの程度の傷ならば一時間もかからないはずだ。データが積み重なれば机仕事の連中が数字にして答えを導き出すだろう。


その日の12:40、艦隊の皆に親族との面会が許可された。今の島風には親族などいないことになっているが、他の連中は違う。彼等はお国の存亡のため強制連行された若き命に過ぎなかった。どういう後付けの説明をされたのか知らないが、親族の顔は穏やかだった。突然まだ歳端もゆかぬ我が子を生還一割を切っている海戦へと駆り出されるのだから気が触れてもおかしくないと思っていた。あの与えられた我が子の胸にある軍のバッジの魔法だろうか。海軍士官に送るようなたっぷりと世辞の入った誇大表現な激励を述べていた。


大鳳適性者の家族はこれまた一風変わっている。


歳の離れた兄が「皆の仇を」といっている。聞けば大鳳の例のガス漏れ事故で同期の仲間を失っており、今作戦で名誉挽回を、とのことだ。マリアナの海に散った翔鶴と大鳳の話を始め、血縁者があの大鳳の化身としてその御身をお国に捧げることは彼にとっては感激の極みに値するようだ。


対して清霜のほうはありふれた母と子の会話が繰り広げられていた。あえて戦いには触れないといった意図を母のおしゃべりからは感じた。現実に触れてしまえば、今までの艦の娘の散り様を連想するだけだしね。


大鳳適性者の家族はこれまた一風変わっている。

そして血縁者との面会が終わると、後ろで待機していた男達がこぞって二人に押し寄せた。軍艦清霜、そして大鳳に携わった海の男どもだった。ともに苛烈に生きた軍艦だ。その依り代として選ばれた兵士二人に激励を飛ばしに来たようだった。彼等の想に触れるだけで苛烈な戦の想いがこの身を焼き焦がした。


代表者により、軍服を手渡されていた。

大鳳と清霜はそれを今の薄着の上から着る。

背中には誇るように大きな『清霜』と『大鳳』の文字が刺繍されている。


かつてのマリアナから生存を果たしている乗員からの強い希望により、大鳳の背には軍艦名が刺繍されたようだ。少佐君いわく、この大鳳や清霜に携わった者が集まり長官がおらねば寄せ書きのごとく文字が編まれていた、とのことらしい。男って生き物はどうもくだらない馬鹿騒ぎが好きだね。


見事な本場の敬礼が二人には送られていた。


その軍艦が艤装となり、唯一深海棲艦という未知の化物と戦うことが出来る。そして深海棲艦と戦うということは『生きて帰ってこない』という印象が強かった。だからこそ全員生還を敬礼で誓い、それを忘れるようにばか騒ぎして面白おかしく過ごすのだ。


二人はもう兵士の顔になっていた。


島風(あなたも挨拶してきなよ。旗艦としてあの二人の命を預かる身なんだよ!)


戦後復興妖精(かったりいわ)


当然のようにこっちにも来た。艤装効果で島風がどんな歴史を持っているかは探知しなくても把握している。二水戦、そしてレイテの仲間が声をかけてきた。素っ気ない態度で対応した。


深緑の甚平のポッケに手を突っ込みながら、知るか、と内心で悪態をついた。今の段階でどういった言葉を吐けるというのか。大鳳適性者の兄は戦果を楽しみにしており、清霜のほうの母親は娘の生還を願っているのが分かる。つまるところ完全勝利Sだ。結果をお土産にする以外、戯言の域を出ないではないか。


くだらぬ慣れ合いは押し売りされた島風のみで懲り懲りだった。


3


特別に、と空母のガンルームに召集されて、そこでシケた晩飯を囲むこととなった。少佐君が彼等の気合いに火をつけたいらしく、戦意高揚を狙って音頭を取っている。


無視して思考を巡らした。この作戦のどこでこの身の島風を殉職処理させ、姿を消すか。


このマリアナの作戦はまず艦の娘の超人的体力のうえ立案されていた。継戦不可となるまで続く押し寄せる作戦の波が予想される。司令部の考えではアメリカとの共同戦線でマリアナの死守は可能、残存戦力は期待できず、との見方なのは立案された後続作戦の徹底のなさから伺える。


少佐君「第一艦隊旗艦の島風さんからも一言ありませんか?」


戦後復興妖精「上とアメリカさんのほうにも付随する軍艦は邪魔だと伝えろ。何の整備をしているかと思えばこの作戦に随伴する空母の整備かよ。深海棲艦相手にまだそんなもんで戦おうとか乾いた笑いが出るんですけど」


少佐君「そんなことはいっておられません。先の勝利は軍を活気づけましたが、事態は深刻なままです。増してやマリアナ以降、軍から逃げ出した腰抜けの私が妖精が見えるという理由で強制連行された始末です。新たに設立された対深海棲艦海軍はまだ組織としてままならず、軍としての実績がないので、過去の大戦に従事した中将殿の発言力により、やりくりされております」ハハ、と笑った。「海に投げ捨ててやった戦術書をまた送りつけられるとは歴史はこうも繰り返すのかと」


対深海棲艦海軍ね。まだ記憶に新しい組織だ。その構成メンバーはいまだ戦火の魂がおとろえぬ益荒男気質で構成された組織だと聞いているが、その実は子を遣い捨てて勝利に舌なめりし、帝国時代の終わらぬ夢に魂を売り払い済みのとんでもない男どもでもある。彼等が苛烈さを増せば、敗戦時から視察に来ている米国人を天誅だと切り捨てかねない。上は膿をまとめて出して処理してしまいたいのか、などという邪推さえしてしまう。


少佐君「皆さん、1946年の例の駆逐艦電の真珠湾防衛戦をご存じですか」


少佐君はいつものように過去の話を自慢げに語り始める。


少佐君「現在確認されている深海棲艦の中で最強格と位置付けされた中枢棲姫に単独、勇敢に立ち向かい、そして華々しい一撃を加えた。あなた方以上に訓練もままならぬ子が敵勢力の親玉に一杯喰らわした。油断大敵とはいえ、あなた方が思っているより、敵は貧弱勢力の可能性もあります」


この楽観的な性格はこの場ではプラスに働いてはいた。幻覚な軍人の言葉を拝聴するよりも、清霜や大鳳には肩の力を抜かせる効果はあったのだろう。少佐君の続きの言葉に耳を傾けている。


少佐君「あの電を初期艦とした小倉提督はなにを隠そう、私の師であります。出会って1日で経たずに彼は真珠湾で戦死を遂げましたが、その前日に彼と引きあわされ、妖精分野の教えを教授していただきました。あの二人を越す戦果を持ち帰る。つまり勝利Sかつ全員生還の軌跡をこの作戦で描く」


お前の師、今や可愛い姿で生きているんですけどね。


始まりの艤装、電の話には乾いた笑いが出た。


どこでねじ曲げられたのかは知らないが、駆逐艦電が中枢棲姫に一撃を与えたというのは嘘八百だ。ただ蹂躙された挙句に「殺して」と敵に懇願する醜態を晒して死んだ。仕官妖精のやつはどこでなにをしているのか知らないが、しばらくは様子見だろう。深海妖精可視の才は100年に5人にしか与えられず、このばったばた戦死者が出る今にばらまくのは得策ではない。


昨年の英雄譚に飽きたのか、清霜が食事を再開した。


清霜「大鳳さん、これなにー?」


大鳳「ああ、タラバガニです。甲殻を齧ってはなりません。中の身を食べるものですよ」


大鳳がカニの食べ方を教えていた。知らなかったのでその食べ方を見て覚えて口をつけた。なかなか美味い。奪還作戦時のしけた飯の記憶とは比べものにならなかった。清霜も大層満足したようで、口周りによだれを吹かずにむしゃぶりついていた。


少佐君「島風さんが先の作戦で海域を奪取してくれたお陰ですよ。それはその海で獲れたモノであります。勝利を重ねれば近い内に深海棲艦も取るに足らぬ敵となることでしょう」


清霜「島風ちゃんのお陰なんだ。ありがとー!」


戦後復興妖精「おう」


死ねば海域を奪還してもまた奪取されるだけだ。生きて帰り、その経験を生かして、新人に伝授し、知識と知恵で深海棲艦勢力と対峙していく構図が最もリスクが少ないように思える。特に今の深海棲艦は突撃馬鹿だ。


こちら側が生き残ることで繋がっていく。この作戦から生きて帰ることで島風の役割はそいつらにブン投げることも出来る。次にランス調整のために潜伏するのは内陸のほうだ。対深海棲艦海軍の設立とともに立ちあげられた研究部に向かうべきだろう。


応急処置に過ぎないが、それで現場側のテコ入れは終わりだ。後は相棒を見つけて、政治にメスを入れていく。それを影からフォローしてやって、と、そこまで航行予定の海図を拡大したところで少佐君から「食べないのなら私がもらってもよろしいですか」間抜けな声で現実に引き戻された。


4


抜錨地点で保管されていた兵装を受け取り、身にまとう。


大鳳がうきうきと浮かれた雰囲気なのは、今朝に与えられた軍服のせいだろう。海軍服に身をまとった彼女はすっかりその気だ。


大鳳「皆の想いが伝わります」


島風(そうだね。艤装って犠牲者の想から作られているんだから、戦死してしまった人の想いを武装。生き残った人の想いを背中に受けているわけだからね。当時の皆が大鳳の適性者に乗っているも同然だよ!)


島風がはしゃいだ声をあげた。


島風(想いは時を越えるんだね!)


かくいうこの身もそうだ。動きやすく肌に馴染んだこの甚平で往く、といったのだが、却下された。旗艦がそのような服ではまた蛮人だの品位だの、と入らぬ苦情が入りますゆえ、とのこと。


三人ではろくな隊列も組めないが、指示された通りにあくびが出るほどゆるやかな速度で海を往く。陸地の高い丘のほうに、島民の姿が見えた。春先の薄着の子供達がこちらを見て「おーい!」と大声をあげて手を大きく振り、はしゃいでいた。多くの期待を背負っての出陣だ。


といっても、船渠から出て来たスケール違いの軍艦に島民の視線は全て持って行かれたけど。


航行航路の鈍足が煩わしい。空母とその護衛に軽巡が一隻、駆逐艦が四隻、その護衛艦の護衛を私達が担うというよく分からない陣形に至っては突っ込まないことにした。馬鹿じゃねえの、とは思うが、彼等は生きて死ぬかの戦いに赴くのだ。民衆からの視線の主役を浴びてせめて満足して沈んでいけ。


軽巡の艦橋に立つ伝令兵が子供達に向かって叫ぶ声が聞こえた。先輩にブン殴られていた。呆れてため息が出る。


艦位測定が空頼みということが煩わしい。深海棲艦相手なら想力探知であれば私の指示する進路を取ればいいだけなのだが、人類が知らない情報を与えるわけには行かないのだ。

 

しかし、艦隊の士気は上々だ。

 

かのマリアナに突入する。深海棲艦相手ではあるものの公式な戦争作戦であり、乗員は燃えている模様だった。先の敵国とはいえ深海棲艦相手の場合は手を取り合っている。大戦時のこともあり同志というモノはいなかったが、「見ていろ」とそれぞれの海軍の威光を競い合う関係が生まれていた。


空母の連中が執拗に水中聴音機の情報を艤装の通信に垂れ流し、艦橋は敵艦載機が見えているかのようになにもない空を見上げ続けていた。あまりに神経質な通信に文句が出た。監視兵のお隣にいた米兵が「今のお前に必要なのは水中音でなく隊長の足音を聴くことだ」と腹を抱えて笑ったそうだ。その神経質な伝令兵は分隊長の鉄拳で沈んだという。


風が出てくると米兵がうるっさい音楽を垂れ流して、歌いながら仕事に取り掛かり始めた。うっとうしい視線を日本兵が送っている。まだアメリカンな文化はこっちには馴染めない模様だ。


偵察を終えて着艦した二式大艇のパイロットからマリアナ海域の情報が伝達されたところで、ようやく緊張感が芽生え始めた。


通信器具から流されてくる戦闘海域の情報を聞いた。


確認された深海棲艦数105体。水上打撃艦隊、水雷戦隊、空母機動部隊が入り混じっているが、過去の例とは違って妙に統制が取れているらしい。その点を司令長官は注視していたようだ。さすがに馬鹿ではないようだ。私は高知能型の深海棲艦が統率を執っていると予想した。姫でもいるのかな。


姫級ならばこの拠点軍艦隊の心もとないフォローは戦力として期待するだ無駄である。たった三名で海域の保守は不可能。この場合、他の艦の娘の共同戦線を張ると作戦所にあったが艦名は未記入だった。米国との会議で決めかねていたようで、出航当日に通達されたようだ。


サラトガ。


このサプライズに同乗していた米兵の歓声が爆発した。


戦後復興妖精「大鳳、清霜、戦闘準備だ。多分、出遅れる気がする」


気がする、ではなく、そうなる。


こちら側が有していない情報を事細かに話すわけにも行かないのが歯がゆい。新規に発見された空母棲姫の艦載機の航行可能距離は2000キロメートルに設定されていたはずだ。そして最初期の突撃気質からして必ず先手を取られるだろうと予想できた故の声かけだった。


が、今作戦の総指揮は歴然の優秀な兵だった。

 

少佐君《あー、島風さん、戦闘開始したら、敵の元を断ってください》


戦後復興妖精《ほう、つまり周りのデクの棒が狙われている内に深海棲艦を沈めろと》


少佐君《我々でもその程度の囮や時間稼ぎは出来ますが、始まりの艤装が命と引き換えに証明しましたからね。深海棲艦を倒せるのはあなた達の艤装のみとなります。今の司令長官から、今度は私達を遣い捨ててくれ、と笑えない冗談を》


戦後復興妖精《分かってるやつじゃん。任せとけ》


そして最初期の深海棲艦は人間も狙うからな。周りのデクの棒の被害は気にせず、元を断つのは正しく数の差を頭で繋ぐ策だった。しっかりと現状を把握し、効果的な作戦を立案できる司令官がこの艦隊に潜伏していたようでなによりだった。これだけで頭にあった多くの懸念は払しょくされてゆく。


改めて清霜と大鳳に作戦を入念に確認させながら南下する。その時、マリアナ諸島北方の敵深海棲艦艦隊の全容をつかむ。まだこちらは発見されておらずだった。進撃の相図が改めて伝達、寄せ集め艦隊は更なる緊張感をまといながら海を往く。予定より15キロ北西の地点に到達した時、聴音機が深海棲艦と思われる反応をキャッチし、開戦の相図がくだることとなる。司令長官の口から「発艦開始」の号令が発された。


空母の飛行甲板から次々と発進する戦闘機を見た。すぐにこちらにも戦闘の指示が出た。


深海棲艦の電探の性能は良く、ここで人間サイドのミスその1だった。捕捉されるのを防ぐために低空飛行を続けていた戦闘機は予定よりもずっと早く捕まり、突撃気質の深海棲艦の意識が一斉にそちらに動いた。


この身の機能として宿る想力の繋がりから情報を分析力したところ、展開している深海棲艦艦隊の八割の戦力に標的とされたようだ。


しかし、こんなものは想定の内だ。


ぐんぐんと南下し、とうとう水平線上に深海棲艦を肉眼で捉える。


あまり速度を出し過ぎると、艤装の排水が追いつかなくなり敵地まっただ中で棒立ち状態になりかねない。背後に続く清霜のことも気遣って六分程度の速前進に留めておく。


敵艦隊の視線は先行した機動部隊の囮により、艦の娘からは逸れている。「深呼吸して落ち着け。まだ敵はマストで風を受けてゆるやかに進む訓練材の的となにも変わんないからな」と戦闘前の最後のアドバイスを送って、砲塔の角度の調節に務めた。


私は前に出て砲雷撃を始めた。初撃の不意打ちに全砲門で空母を急襲、その後に敵艦隊に切り込みを始める。大鳳が後方から発艦した天山と彗星で低級深海棲艦を狙い、敵艦隊が展開する陣形を削り始めた。私はすでに全方位で囲まれている状況だが、妖精の感知仕様で深海棲艦の存在、装備など手に取るように分かる。ハ級の砲塔を手でつかみ、その小さな体をフン投げて飛んできた砲弾を防いだ。


少数精鋭が大艦隊相手に取る戦法なぞ、限りがある。あの空母棲姫を仕留めるだけで殲滅効率はダンチだろう。考える頭を多少持っていてこちらの陣形を猿真似しているのか、それとも生前の知識でなんとなく陣形を取らせているかは分からずだが、深海棲艦の烏合の衆の中では上等な部類といえる。


すぐに最悪の想定外に見舞われる羽目となる。


深海棲艦型艦載機に狙いをつけられ、高度をあげていた戦闘機一機が突如として急降下を始めた。


敵艦載機は小さなモノだが艦の娘が扱う艤装兵器でない限り、機銃だろうと爆弾だろうと無傷だ。神風特攻は戦況を好転させるには値せず、どうせダメならと、パイロットの矜持でしかなかった。戦闘機からもくもくとどす黒い煙が立ち上がっている。急降下中の戦闘機は定めた目標に機銃を乱射しながら突撃していく。


この神風特攻で機体は無残に散った。


その死なばもろともの精神が最悪の結果を招いたのだ。黒煙を風が洗うようにさらっていき、晴れた中にいるヲ級エリートの渦巻く感情の矛先が後方の艦隊に向けられた。全機発艦、百に近い艦載機が後方の艦隊を襲い始める。それに釣られるように低級の深海棲艦が進撃を開始した。


島風(戻るよ!)


身体が勝手に舵を切り、ターニングを始める。島風が介入を始めた。うっとうしいことこのうえなかった。この頭ではどう考えても後ろを顧みずに空母棲姫を仕留めに行くべきだと思うのだが、今後のことを考えると作戦失敗に追い詰め、早々と大鳳と清霜を生還させるのも悪くはないように思えた。


敵艦隊に向けての砲雷撃に背中をさらしても、この身はなぜか被弾しない。


この身に宿した想力による偶然力操作である。ご都合主義にはロスト空間から供給されている想力を必要とし、そのパイプの栓はパーパが握っているのですぐさまこちらの状況を察したはずだ。島風と同化し、今を生きる人間となったこの身である。死ねばロスト空間に吸収され、そこからパーパがまた現海界させるだろう。島風の身を捨て戦後復興妖精の役割に戻ることができて、理想的ともいえる。


運営(パーパ)もそう判断したのか、想力の供給がカットされている。もとよりその究極的な運を利用して空母棲姫を仕留める手はずだったが、この時点で限りなく困難になったといってもよかった。


戦後復興妖精(島風。弾薬燃料補給をすました後、すぐに出ます)


すでに艦隊は撤退を始めていた。清霜と大鳳もガンバってはいるが、錬度数値10かそこらでの初陣、ヲ級改の空母機動を捌くのは難易度が高いだろう。すでに敗戦の雰囲気が感じ取れる戦場、海は死の相貌を描き始めていた。


今までこんなことを何度も繰り返してきたはずだ。打つ手なし、そう思わせるための最初期の乱なのだから。


燃料補給を担当する駆逐艦に搭乗し、艤装を外すと、すぐさま燃料弾薬の補給が開始される。乗組員の制止の声を聴かず、艦橋のほうへと移動した。艦橋内部は慌ただしく、騒乱の度合いは表と変わらなかった。すでに戦闘機6機が堕ち、もちろんパイロットの救命はされておらずだ。


少佐君「島風さん、なぜこんなところに」


戦後復興妖精「無理、マリアナは諦めて撤退しようぜ。どうせ大した錬度もないサラトガとかアイオワの投入も止めたほうがいい。ここを死に場所とするには惜し過ぎる性能だ」


開始一時間経たずに撤退安定のボロ負け。撤退は許されないとか、そりゃ少しでも勝ちの目がある時の話だ。


総指揮さんはたまったもんじゃねえだろう。あのパイロットの独断神風で作戦は一気に失敗にまで追い込まれた。


北方の奪還作戦の時とは違う。他に人がいなければ誰にも見せる訳には行かない性能でこの海域を奪取することも出来たのだが、今回は人目があまりにも多過ぎる。


少佐君「すでに撤退に入っておりますが、引いたところで彼等は突撃してくるのみです」


む、確かにそうだが、人目さえはけたら潰してやるよ、とはいえない。慌ただしい伝令兵の声が鼓膜を殴るようにして打ちつける。


艦橋のガラス越しで戦場を観察する。目をつけられた戦闘機が臆病風に吹かれて、飛行甲板に戻ってきていた。大量の深海棲艦艦載機を大鳳が処理しているが、まるで追いついていない。魚雷に被弾したのか、空母が大きく揺れた。噴き出した火炎が艦橋をなめるように炙り始めると、艦尾が蒼天へと延びていくような傾斜を始めた。平らな飛行甲板は戦闘機や乗組員が転がり堕ちていく坂となっている。海へと身を投げるやつ、救命艇で脱出を試みるやつ、次々と空母に内蔵していた内火艇で脱出を図っている。周りの艦は接艦をすでに諦め、海に漂う人間の救命を優先し始めていた。


少佐君「……ああ、またマリアナで我が国の空母が」


戦後復興妖精「おい! お前らも逃げろって!」


辺りを散策するように飛行していた敵艦載機がここの艦橋に狙いをつけた。機銃がガラスを突き破り、内部に鉄の雨を横殴りに降らす。


最悪の事態だ。艦内に敵艦載機の侵入を許した。この一機は燃料がなくなるまでこの艦内で暴れ回るだろう。しかし、偶然にも近くを通過した戦闘機のほうに興味を持ったのか、すぐにそちらのほうに向かった。あの想の感じ、生前は敵戦闘機の撃墜数を誇るタイプの人間だったようだ。


島風「少佐さん、大丈夫!?」


また島風に舵を取られた。気持ちの悪い島風の声が勝手に喉から放たれ、倒れている少佐君にかけ寄った。少佐君が打ち抜かれたのは左腕だった。残念ながら治療室などもはや機能していないも同然で、応急処置しか出来ず。


そろそろ艤装の補給も済んだ頃だ。海へ往くべきなのだが、少佐君はその場に横たわる仲間の意識確認を始めていた。一人だけ息があるようだが、その他は不運にも急所を貫通して即死していた。


戦後復興妖精「逃げろって。また来ているぞ」


少佐君「同志を運んであげてください。その後、すぐに抜錨を」


戦後復興妖精「キツイ。私の損傷要因を減らすために見捨てる判断しろよ」


ぶっちゃけ造作もないが面倒臭い。


舵を取られたままの身体はその負傷兵の身体を持ちあげる。この兵士の想が伝わった。脳裏に浮かんだのは清霜の適性者と母の姿だった。それと感じが似ている。この色を解釈していくと、予想はついた。どうやら先日、故郷で娘が産まれた模様だった。故郷の家族に想いを馳せているようだ。娘の名を呼んでいた。


戦後復興妖精「少佐さん、行きますよ!」


敵艦載機が飛んで来ている。すぐさま部屋から逃げ出して扉を閉める。少佐君の指示に従って救命艇までせっせと向かった。どこから侵入したのか知らないが、その道中に敵艦載機一機と遭遇した。少佐君が「ここはお任せを」と腰の軍刀を抜いて斬りかかった。


よくやった。敵機の気が少佐君に向けられた。


少佐君「今のうちに早く……って速い!」


すでに通り抜けて抜錨地点に向かっている。


戦後復興妖精「達者でな! 少佐君のこと嫌いではなかったぞ! 好きでもねえけどな!」


少佐君「つまりどうでもいいと! 私は島風さんに敬意を払っているのに!当てつけに生きて帰ってやりますからね!?」


がんばれ。先の迅速な判断は褒めるに値した。

どこからか濃厚な油の臭気が漏れている。爆発に巻き込まれたら建造状態といえども死は免れなかった。抜錨地点にいた担当の補給兵に負傷兵を引き渡して、すぐさま艤装を身にまとう。


5


増設スロットに積んである機銃と砲で空を牽制する。


沈みゆく船に、浮かぶ人間の死骸、炎上して爆発を引き起こす空母、ありとあらゆる兵どもの夢の跡が海上には見てとれる。すでに壊滅的打撃を受けているといってもよく、マリアナの海は再び軍に死に化粧を塗りたくっていた。最悪なのは艦の娘の勢力、当てにしていた大鳳の艦載機が敵機によって次々と墜とされていっていることだ。


島風(あの敵の艦載機、こっちの艦載機を複数でいじめてる……)


戦後復興妖精《大鳳、命令な。艦載機を飛行甲板に戻しながら私と合流しろ》


制空権の確保なぞ無理、と判断しての命令だった。


日本の戦闘機というのはそもそも運動性能を高めるために防御力が弱点に挙げられる。この海でのかつての海戦ではその弱点で航空戦力に打撃をもらっていた。大鳳に搭載した艦載機は日本式ゆえ、軽量化の代償として犠牲にしている装甲は一つの弾が軽々と貫通し、操縦妖精を絶命させるまでに脆弱だった。

 

空母の周りに浮いている救命艇を守っていた清霜と合流した。初霜の護衛につけていた外部ユニットの連装砲ちゃんを艤装に戻しながら、清霜のそっ首をつかんでその場から引き離す。清霜が威嚇射撃してもその連中が標的にされるだけだ。おまけに対空射撃なぞぶっつけ本番では弾薬を減らすだけの自殺行為である。おかあさーん、と清霜は泣きじゃくっていた。


戦後復興妖精「っち、ガキが」


それが出来なければもう知るか。なにがお母さんだ。たかが人間の女一人の名を呼んで、なにがどうなるというのか。清霜は戦力として外して策を張り巡らせた。生きて帰らせる。初陣を乗り越えただけでも清霜は軍の宝になるだろう。


またまた島風に舵を取られた。


島風「帰らなきゃ母親に会えないよ。お母さんだけじゃない。あなたもいつの日か本当の仲間に出会うよ。夕雲型や武蔵さんやたくさんの仲間と出会うんだ。その時、この戦いを乗り越えたなたが彼等を守ってあげる役目を担わなきゃ」


まさか自分の声帯からこんな優しい声が出るとは驚きだった。


島風「そうして生きて帰って繋ぐことだけが、この戦いを終わらせる方法なんだから!」


清霜の顔つきがわずかに引き締まる。なるほどね、と少しパーパの言葉に共感した証拠だった。確かに心は学ぶ必要がありそうだ。


大鳳と合流し、不恰好ながらも隊列を組んだ。大鳳は空を睨み付けるように見上げていた。気持ちは繋げずとも伝わる。すでにこの海では痛恨の嘆きが有機物無機物問わずに渦巻いているのだ。


悠々とした大空を飛ぶ雄々しい戦闘機の羽は痛恨の軋みの鳴き声をあげ、憎悪の色をした煙を吹き出し、海の上でただただ燃えあがっていた。あの戦闘機一機にどれだけの人間の歴史があるのか、理解できない船の依代ではない。


その人間の全てをゴミのように屠られていくだけの海戦に、


大鳳が燃えている。

その魂から燃える炎を轟々と吹かしていた。もはや勝つまで撤退はない。海域を死守せよ。その命はすでに彼女にとって、逃げなくて済む、仇を取れる、今度は私が敵を伐つ、という動力に変換されていた。


戦後復興妖精「……ん? 君達、どうやら嬉しい知らせだ」


空を曳跟弾の一条の軌跡がすぅっと伸びていく。その後を追うように、見慣れぬ操縦妖精の搭乗した艦載機が鳩の群れのように羽ばたいてゆく。あの艦載機の操縦妖精は生き生きとしており、爆音で音楽までかけているやつもいるあり様だった。死中に縋る神拾ったり。支援艦隊の到着だった。


清霜「なにをいっているか分からないよ!」


戦後復興妖精《What is your name please?》


返ってきた言葉を翻訳して伝える。


戦後復興妖精《米軍対深海棲艦海軍所属、サラトガマーク2、あなた達の王子様だとさ》


スロット数80を誇るLexington級の二番艦、正規空母のサラトガだ。支援の話は聞いていたが、まさか米国が秘蔵のサラトガを改二の錬度まであげていたとは予想外だった。


改二になるにはどれだけの時間を要すると。


くそったれが、と唾を吐いた。やけに非効率的な捨て艦戦法を軍が命じ続けるのは疑問だったが、そういうことかよ。在中しているアメリカ兵は指揮系統にしか加わらないと思いきや、こっちの艦の娘に仕事を押し付け、そのデータをもとにせっせと自国の艦の娘の錬度をあげていたっつうことか? カチン、と来た。


島風(あ、すごい怒っている……)


戦後復興妖精(見てみろよ。あの艦載機のスゲえだろ、といわんばかりの見世物染みた派手な航行をよ。本土でやられたら全国民の心をアメリカに持っていかれちまうわ)


錬度をあげる時間の少ない中、ここまでの圧倒的性能は政治的手段にすら昇華するだろう。


清霜「それでどうするの? 私、もう弾薬残り少ないよ!」


大鳳「島風さん。戻した艦載機をどうしたら……」


戦後復興妖精「サラトガの仕様操縦妖精のドヤ顔腹立つ……」


あの程度、二航戦の適性者が持参する装備のほうが性能は遥かに高い。


戦後復興妖精「見せてやろう」


大鳳に指示を出した。飛行甲板に艦載機を乗せて、操縦妖精に指示を出す。


残存機をまとめあげて、そこに妖精のこの身で『意思疎通』を試みて、敵機の戦法を操縦妖精に伝える。妖精可視の才に空母の性質を合わせた妙である。今や一機の残存が生死を大きく隔てる状況において持ってこいの技術だった。


戦後復興妖精「大鳳、発艦しろ!」


大鳳の号令が下り、艦載機が空を舞う。


F6-F5の群れに零戦が混じる。今までの大鳳の艦載機は錬度の低い個々能力に頼った航空戦だったが意思疎通により、もともと彼等が有している操縦の歴史から適した戦術を指示した。操縦妖精が敬礼の後、飛行甲板から飛び立ち、意気揚々と天を舞う。性能では負けていても、パイロットの地力が違う。


戦後復興妖精「ダメ押し!」


天山と零戦に偶然力による祝福を与えた。敵機の隙間を縫い、操縦技術と奇跡的な運に彩られた最高の幸運機と化した零戦だ。その飛行機は被弾することなく、死線をかい潜り、一機で十機をなんなく落とす撃墜王として空を制圧していく。


戦後復興妖精「行け行け! 私達の空を遮る敵機を落としてマリアナの太陽を取り返せ!」


空さえ取り返せれば、下手くそな脳筋砲雷撃を避けて逃げるだけでよくなる。生存率はダンチといえよう。


サラトガの航空支援は地獄に垂らされた蜘蛛の糸に等しいが、これまたミスに気付いた。このド派手な航空戦に興味を引いたようで敵艦隊のボスが介入してきたのだ。


戦後復興妖精《全員、撤退する!》


空母棲姫の躊躇いのない搭載数100を越える高性能艦載機の全機発艦が開始された。ようやく明るく見えてきた太陽の光が遮断されるほどの絶望だった。


島風の艤装で相手していられっか――――!


空母棲姫は中枢棲姫と比較こそすれば可愛いものだが、小さな島を1分で地図から消す程の航空戦力を単艦で所有している。海の怨霊艦に課せられた姫の名は伊達ではないのだ。鬼級は単純に、鬼のように強い、とその強さからの命名だが、姫級は異名に近い。鎮座する姫のように、その場から動かなくてもこちらの決死の軍勢をなんなく圧倒するその様から名づけられた。


空母棲姫装備の詳細をロスト空間のメインサーバから引っ張り出して――――!


艦の娘、深海棲艦とともに小型化されている装備のはずが本来の爆撃と同等の威力を与えられた深海地獄艦爆52機。


燃ゆる冷たい憎悪で蜂の巣になるまで執拗に攻撃をしかけてくる深海復讐艦功56機。


そんなグレムリンの群れが零戦を凌ぎF6F5とタメを張れる深海猫型艦戦60機の護衛されながら成り振り構わず突撃してくるときた。戦後復興妖精の能力で強化した艦載機といえども、偶然の隙間を縫うことすら許可されない。加えて弾薬燃料は想力によって補給される分、継戦能力も高い。


うん、無理。


戦後復興妖精「ちっくしょうがア! 勝利の女神ってやつは尻軽過ぎるだろ! 数秒で心変わりして向こうにキスしやがった!》


機銃を乱射しながら、悔恨の叫びを散らした。


戦後復興妖精《大鳳を旗艦に清霜とともに支援艦隊の軍艦拠点まで撤退しろ! 必ず生きて帰れ!》


大鳳「島風さんは?」


島風「『私からの最初の拳骨』だよ」


島風がまたまた身体を動かして、ゴツン、と大鳳の顔をブン殴ったが、大鳳の表情は微動だにしなかった。昨日までは一発殴っただけで泣きそうな顔をしていたくせに、強い意思の籠もった眼で真っ向から睨み返してきて同じ言葉を繰り返し、吐いた。初陣の小娘がいっちょ前の顔しやがって。


島風「絶対についてこないで。私一人なら空母棲姫を仕留められる」


大鳳「了解しました」


すぐさま行動に出た。え、え、と困惑している清霜の腕を取って撤退を開始する。すでに空は探さねば味方機が見当たらない程だった。精度自体は高くなく、数打てば当たるの深海棲艦だ。上手く行けば大鳳の装甲ならばいちるの望みも見込めた。


すぐさま旋回してタービンを回した。全速前進最大速力を持ってして海を切り裂くような鋭い航行を開始した。深海棲艦の攻撃を回避しながら、空母棲姫めがけた特攻をしかける。


島風(戦後復興妖精さん! おっ! そ――――いっ!)


戦後復興妖精「速えだろ!?」


島風(私はもっと速かったよ!)


戦後復興妖精「そりゃ私にゃ本来は島風の適性がねえから艤装の性能はお前ほど引き出せないんだよ! そこ回りは私の権限で整備できねえし!」


といっても艤装は駆逐艦の中でも最高級の性能を誇る島風艤装だ。雷装に比重を置いた攻撃性能、そして航行性能、それらの整合性を取ってなお速い。魚雷に偶然力(セレンディピィ)を上乗せして、込んでいる道を整理し、進路を強引にこじ開ける。


それでもあの深海棲艦型の艦載機は球形ゆえ真上からだろいと真下に機銃の雨を降らしてくるのだ。回避には限界があり、直撃弾こそもらわずとも、雨粒から傘もなく逃れられる道理はない。ジリジリとこの身の命の炎は雨に打たれて死に向かって冷え込んでゆく。


島風(もっと速く! より速く! 全っ然おっそい!)


戦後復興妖精「気が散るから黙ってろ!」


清霜に乗せてある電探の索的範囲外に出るまで切り込んだ。


戦後復興妖精「……捉えた」


まるでこの艤装モデルの最後を思い出すような航行だ。回避しながらも機銃掃射で蜂の巣にされていく。浸水はすでに始まり、長くは持たず。それでも、前へ。もっと速く。そのためには道が混みすぎている。酸素魚雷で道をこじ開ける。違法性能と決死を持ってようやく捉えた。


近距離まで飛びこむと、空母棲姫の顔色が変わった。


すぐさま想を繋げて感情の解釈に移った。その想は燃えあがる紅蓮色だった。そしてその表情から怒りだと結論づける。自慢の性能を潜り抜けられただけに留まらず、射程距離に捉えられたことが逆鱗に触れたと見える。

 

空母棲姫「オオオオ………!」

 

その髪留めは人間でも真似てみたのかい?

結んだ可愛い髪の印象が台なしだ。煮えたぎる憎悪の想いが美しき姫の相貌の皮を剥がし、露になった鬼の形相で天を突くかのような怨念の怒号を発した。


あの錬度のサラトガまで投入したこのマリアナ海、日米連合艦隊が負けることなぞあってはならんのだ。必死に大戦時から繋いできた国の心が死ぬ。そして今後の肩身も確保するために最大の戦果は日本の対深海棲艦海軍が頂戴する。


あえて海に身を投げて海中へと沈んだ。


突如としてロストする場面は絶対に見られるわけには行かず、念には念を入れて海中で行う。


妖精のパスを繋げてロスト空間(ヴァルハラ)へと還った。


そこは無限の資材の海だ。妖精の性能を回転させて艤装を修復、燃料弾薬を補給に平行し、マリアナ海戦の座標を特定して現海界の行程に移った。暗闇の視界が暗転した。次に視界に映ったのは空母棲姫の間抜けな後頭部だった。


戦後復興妖精「よう、エンタープライズの婆さん」


背中を軽く叩いてやると、すぐさま振り向いた。


――――みなの仇だ。


二人の声が静かに重なった。


空母棲姫の口内に砲口を突っ込んでブッ放す。死肉が爆ぜて、辺りに飛び散った。頭部を失った姫はその手足を不格好に動かしてあがいていた。しからばダメ押し、といわんがごとき、砲撃が何者からか飛んできた。

 

すでに壊滅的な味方艦隊からの最後の一撃だ。

砲撃こそ外れたものの、起爆した砲弾が破片を撒き散らし、周辺に被害を与える。だがその程度の叡知はこの『艦隊これくしょん』の海の前では全く持って無駄だ。その破片は深海棲艦の想力の防護仕様により、弾かれる醜態を晒すのみ。

 

姫の座まで届かず。

 

人間どもの最後の一撃は一子報いず。

しかし、天晴れ。

その心意気の熱に当てられ、連装砲ちゃんの砲塔が火を吹いた。

 

戦後復興妖精「姫様、お前を愛した船乗り達がヴァルハラで待ってるぜ」

 

反転建造システムのため艦の娘とは逆に艤装を本体に設定しているが、身体の接続部を失えば艤装は沈む。姫といえどもその損傷では長くは持たないだろう。


遠くで立ち込める黒煙が見えた。

探知能力で繋いで被害を確認する。

 

ああ、しまった。そういえば潜水艦の処理をしていなかった。あの炎上の仕方は拠点軍艦ではなく、燃料庫に誘爆した艤装と思われる。では誰がマリアナ海域で潜水艦の魚雷に被弾したのか。想探知の確証に加え、ギミックの一つとして取り入れられている史実効果の裏付け――――大鳳である。


見えないナニカが、傷みの産声をあげる。


傷に傷を重ねて、なにが癒えるという。

19世紀の海の傷痕は広がる一方だった。



【8ワ●:死にたい】



陽炎「……、……」



不知火「陽炎、気持ちは分かるが落ち着いてください」



甲大将「……」



悪い島風【おう甲の姉ちゃん、さっきまでの威勢はどうした。30年も生きてねえやつが、あの時代を知ったかぶってゴタゴタ抜かすんじゃねえよ。とりあえずそのまま黙っといてくださいねー】



悪い島風【さてマーマ】



悪い島風【私はあなたを恨んでいないよ】



悪い島風【憎悪なんてのは若い心が持てる感情だ。私は長く行き過ぎて、視野が海のように広く深く成りすぎた】



悪い島風【戦争は終結した。マーマの息の根を止めようなんて思わないぜ。傷に傷を重ねるだなんて所業なぞだるいっての。お前のせいで傷ついたんだ。だから寄越しな、だなんて乞食根性も歩んだ歴史のどこかで落としちまった】



悪い島風【時は人を変えるが、それでもなお歴史が似るのは子が親の背を見るがごとし。先立つした老兵の後に続く若き兵が老兵の夢の軌跡を描く故の歴史だ。繰り返し押し寄せる変わらぬ波を塞き止めるには人間はあまりにも分不相応に構築されてゆく】



此方「……」



悪い島風【あなたが本官のやつを愛したように、私の友であった島風はもう消えちまった。あいつはかつての大戦の軌跡を真似るかのように燃える海の歴史に奴隷船として漂う私の】



悪い島風【提督(お友達)だったよ】



悪い島風【愛することと人間としての生を教えてもらった】



悪い島風【友達だから私を縛り付ける海の傷痕を】



悪い島風【私の代わりに呪ってくれた】



悪い島風【海の傷痕を塞ぐことこそ戦後復興だと、お前らを始末すると誓った】



悪い島風【が、終わったな。まさか本官のやつがオープンザドア君だなんて大当たりを引いてくるだなんて思わなかったぜ】