2017-11-15 12:58:59 更新

概要

料亭(艦娘)に元気のないビスマルクがやって来て・・・


前書き

のんびり更新していきます。


料亭(艦娘)にビスマルクがやってきた。


「いらっしゃいませ・・・あら、ビスマルクさん!」


霧島が席に案内する。


「ご注文はお決まりですか?」


「・・・・・・」


ビスマルクは下を向きながら、何も言わない。


「・・・ビスマルクさん・・・ビスマルクさん!」


「!? なっ・・・何よ!」


「ご注文はお決まりですか?」


「あっ・・・そうね・・・この・・・スタミナ丼をくれる?」


「かしこまりました・・・少しお待ちください!」


霧島は注文を受け、


「司令! スタミナ丼お願いします!」


「はいよ!」


提督は調理を始めた。


・・・・・・


「お待たせしました・・・スタミナ丼です!」


「・・・・・・」


注文が来ても、ビスマルクは下を向いたままだ。


「ビスマルクさん!」


「!? 何? ・・・ああ、ありがとう。」


ビスマルクは静かに食べ始める。


「・・・・・・」


いつもうるさいと思う程元気なビスマルクが今日は全く元気がない・・・それを見て霧島は心配する。


「あの・・・何か悩みでもあるのかしら?」


「・・・私? いいえ、別に・・・」


顔をそらすが、何か思い詰めているのが見てわかる。


「・・・ごちそうさま・・・代金、ここに置いておくから・・・」


そう言って、半分も食べないで100円を置いていくと、料亭から出て行った。


「・・・・・・」


霧島は彼女を見つめていた。


・・・・・・


数日後、またビスマルクがやってくるが・・・やはり元気がない。


「・・・・・・」


いつもなら昼食は丼系を2杯は注文するはずなのだが、前と同じ半分だけ食べて出て行く・・・


その日も元気がない・・・


2日後も・・・


また翌日も・・・


・・・・・・


「いらっしゃいませ!」


またビスマルクが来店・・・しかし、相変わらず元気がない。


「・・・・・・」


力無く椅子に座り、適当に注文して顔を下に向ける・・・その姿を霧島が心配そうに見ていた。


提督もビスマルクの態度には気になっていたようで、霧島の気持ちがわかっていた。


「お待たせしました!」


「・・・ありがとう。」


注文した料理を静かに食べ始め・・・


「・・・ごちそうさま。」


また半分だけ残して店から出ようとした時、


「おい、ビスマルク。」


提督が止めた。


「・・・何か用?」


ビスマルクが首を傾げて、


「安物だが、このペンダントをやる・・・癒しの効果のある石がついた物だ。 今日から身に着けてみろ。」


「・・・・・・」


提督に渡されてビスマルクは眺める。


「確かに・・・何か安っぽいわね。」


相変わらずの態度だが、


「でも・・・今の私にはお似合いね。」


と、自信なさげな言葉を放つ。


「ありがとう、大切にするわ。」


そう言って、ビスマルクは出て行った。


・・・・・・


ここは、ビスマルクが着任している鎮守府。


「戦艦ビスマルク・・・貴君の戦績は他の戦艦に劣る! もっと功績を上げたまえ!」


「・・・ごめんなさい。」


「・・・下がってよい!」


司令官から叱責を受け、執務室から出るビスマルク。


海外艦が次々に着任し始め、今までビスマルクが先頭に立っていたのが、イタリア艦、イギリス艦と徐々に増え


出番が少なくなってしまい、戦果もろくに取れずに司令官から叱責される毎日・・・


やがて戦闘する意欲もなくなり、給料も激減。 毎日の時間が過ぎて行くのを待つ日々であった。


ビスマルクの性格も拍車がかかり、皆がビスマルクを避けるようになり本人も皆との交流がほとんどなく「孤立」した状態であった。


「・・・・・・」


ビスマルクが財布の残高を見ていた。


「そろそろまずいわね・・・このままでは生活できないし・・・何とかしないと・・・」


給料をほとんど貰っていないため、財布の中身は底を尽きかかっていた。


唯一の救いが料亭(艦娘)の1品が一律100円なこと・・・最近行く頻度が高いのはそのためであった。


「・・・・・・」


提督から貰ったペンダントを見つめる。


「・・・・・・」


「これを売って少しでも生活の足しにしようか」・・・と、思ったのであろう。


「・・・そんなことを考える私はもう終わっているわよね。」


貰ったばかりの品物を売ろうと考えた彼女はまた落ち込む。


「・・・・・・」


再びペンダントを見つめ・・・


「どうせならもっと高価なペンダントが欲しかったわ!」


急に開き直り、そのペンダントを投げ捨てた。


「私には似合わないわよ・・・あんなペンダント・・・」


彼女は再び落ち込む・・・そこに、


「いてて・・・何すんだよ!」


「・・・え?」


急に声がしてビスマルクが声のした方向を見た。


「・・・・・・」


当然ながら、そこには誰もいない。


「・・・・・・」


「おい、お前! 何すんだよ! 痛いじゃないか!」


「・・・・・・」


声のした方向・・・それは・・・さっき投げ捨てたペンダント?


「・・・もしかして・・・このペンダントが・・・?」


ビスマルクはペンダントを拾うと・・・


「おい、お前! 何でオレを投げた? もっと物を大事にしろよな!」


ペンダントが喋った。


「・・・何でペンダントが喋っているのよ?」


ビスマルクの問いに、


「悪いか? 喋りたいから喋るんだよ!」


「・・・・・・」


「オレはペンダントに宿る「石の精霊」だ・・・今度からもっとオレを大事にしろよな!」


「・・・・・・」


「態度がデカいわね!」と思ったビスマルク。


「それで・・・お前の名前は何だ?」


「・・・・・・」


「石の精霊のくせに生意気ね!」と思っていたが、今は話し相手もいなくほぼ「孤立」した状態・・・寂しさを紛らわせたい


気持ちがあったのか・・・


「ビスマルク・・・ドイツの戦艦・・・ビスマルクよ。」


「ほぅ、ビスマルクかぁ・・・よし、今日からお前をビスケットと呼んでやろう!」


「はぁ? 何でそんなおいしそうな名前になるわけ?」


「いいだろう! それから、オレのことは今日からイッシ―と呼んでいいぞ! わかったか? イッシ―だからな。」


「・・・石だからイッシ―ってこと? 変な精霊ね・・・」


ビスマルクは呆れるも、何故か無意識に笑みが出た・・・


・・・・・・


「ほぅ? 戦果が取れずに自信を無くしている?」


「うん・・・最近新しい海外艦が着任して、私以外の戦艦も着任して・・・活躍が少なくなってきて・・・」


彼女は再び下を向く。


「それだけ? たったそれだけで落ち込んでるのか? 肝っ玉の小さい奴だなぁ!」


「な、な、な、何ですって!」


ビスマルクは怒って、


「ペンダントのくせに何偉そうに言ってるのよ!!」


ペンダントに八つ当たりした。


「お~怖っ! 怒る時は一丁前に叫ぶんだな! この弱虫がぁ!!」


「うるさいわね、この!!」


またペンダントを投げて・・・


「い、いってー!! お前なぁ! また投げたな!! この弱虫女!!」


「うるさい! あんたになんて私の気持ちなんかわかってたまるか!!」


「知るか! お前みたいな弱虫の心なんて興味もねぇよ!!」


ビスマルクは朝まで喋るペンダントと喧嘩をしていた。


・・・・・・


「はぁ・・・はぁ・・・」


朝まで口喧嘩を続けていたため、ビスマルクの声はかすれのどが渇いていた。


「ほら見ろ! 後先考えず怒鳴り続けた結果がこれだ、早く水分を取りなこの弱虫!」


「言わなくてもわかってるわよ、このドSペンダント!!」


そう言って、ビスマルクは部屋から出て行った。


「ごくごく・・・ふぅ~・・・」


水飲み場でたらふく飲むビスマルク・・・


「全くあのペンダントは・・・可愛げが無いわね!」


不満を漏らすが・・・


「・・・でも、久しぶりに長時間話ができたわね・・・」


今まで誰とも話せず、自身の心に溜めていたものが晴れて気分が良かった。


「でも、人ではなく喋るペンダントだけどね・・・」


再び部屋に戻るビスマルク。


・・・・・・

・・・



ある日の深夜、


出撃予定のないビスマルクが部屋から出ようとして、


「おい、ビスケット! こんな深夜にお出かけかい?」


「うるさいわね・・・どこへ行こうが私の勝手でしょ!」


イッシ―の言い分などお構いなしでビスマルクは部屋から出て行った。


・・・・・・


「よく来たな・・・さぁ、今日はお前が私と夜戦する日だ。」


そう言ってビスマルクは提督と一緒に布団の中に入る。


・・・・・・


ビスマルクは望んでしているわけではない・・・もっと言うなら、この鎮守府にいる艦娘のほとんどが夜戦を望んでいない。


全ては提督に気に入られ、高い地位に上るため・・・そのために嫌でも自身の体を差し出しているのだ・・・


「どうしたビスマルク? 今日は静かだな、お前の声を聞かせてくれ。」


「・・・・・・」


愛のない夜戦は全然嬉しくも気持ちよくもなく、早く時間が過ぎるのをひたすら待つビスマルクだった・・・


・・・・・・


ビスマルクが部屋に戻ったのは、それから2時間後の事だった。


「・・・・・・」


静かに部屋に戻り、着替えを済ませるが・・・


「おかえり、こんな時間にどこをほっつき歩いていたんだ?」


「・・・あなたには関係ないでしょ!」


「もしや、司令官とお楽しみ中だったか?」


意外にもイッシ―は鋭い・・・ビスマルクも図星をつかれて何も言い返せない。


「そうか・・・ラブラブでいいのぉ!」


「別に・・・好きでやってるわけじゃないんだから!」


「え~? そういうもんなの? じゃあ何で好きでもないことをやっているんだ?」


「・・・・・・」


物に相談しても仕方ない・・・と思っていたが、何故かその時は話したい気持ちがあったようで・・・


「提督に気に入られるために・・・」


ビスマルクは口を開く。


・・・・・・


「・・・で、提督に気に入られ評価を上げるために皆が止むなくやっているってか?」


「・・・うん。」


「つまり、お前らは「軽い女」ってことね。」


「・・・何でそう言う解釈になるわけ?」


「好きでもない相手に体を出すことがそもそも「軽い」と言いたいのだが?」


「だから・・・仕方がないのよ。 これで、何とか生活できているの、夜戦を断ったら生活が出来ない。」


「いっそのことこの鎮守府から出たら?」


「はい?」


「司令官が嫌いで居心地が悪いんだろう? 何を我慢している? こんな鎮守府さっさと出ればいいだろ!」


「そんなこと言ったって・・・」


「じゃあ何か? 嫌だけど行く当てがないから仕方なしにここに留まってるってか?」


「・・・・・・」


ビスマルクは無言で首を振って、


「だったら文句言うなよ! 自身で出ていく勇気もない分際で、一丁前に「嫌だ」なんて口を出すな!」


「・・・・・・」


「人って言うのはやろうと思えば裸一貫でも生活できるんだぜ? それを何だ・・・やるのが怖くてやれない・・・


 そう言うのはただの「口だけ達者」と言うんだよ!」


「・・・・・・」


言われていることが正しい事だけに何も言い返せないビスマルク。


「全く・・・ビスケットの相談に乗ってやろうと思ったのによぉ・・・こんな中途半端なやつに何の同情を掛ける必要もないなぁ。」


そう言って、その日は一切喋らなくなった。


・・・・・・


翌日、


ビスマルクは他の海外艦と共に出撃をしていた。


旗艦はイタリア艦のリットリオ・・・ビスマルクたちは彼女に従い進軍していく。


「お~! あのイタリア艦・・・元気があっていいなぁ!」


ビスマルクの首に飾られたペンダントが叫ぶ。


「しかも、皆を気遣って・・・うんうん、彼女が旗艦なら文句あるまい! それに比べて・・・」


イッシ―は急に話題を変えて・・・


「ビスケットは自己中だし、周りに気を遣わないし、偉そうだし・・・そりゃあ旗艦降ろされるわなぁ。」


「・・・うるさいわね、今は出撃中よ! 文句があるなら帰ってからにして!」


「ほらまた怒る! 短期は損だぜ・・・それだから皆遠ざかるんだよ!」


「・・・・・・」


何も言い返せないビスマルク。


「まぁいいや。 ビスケットがそこまで言うならオレは部屋に戻るまで何も言わない・・・後は勝手に頑張れ!」


イッシ―はそれ以降話をしなくなった。


「やっと静かになったわね・・・」


ビスマルクはほっとして進軍を続けた。


・・・・・・


敵が出現、リットリオたちが応戦するが・・・


「ああっ!!? ・・・くっ!」


敵戦艦の砲撃により、ビスマルクが大破する。


「ビスマルクさんが負傷、皆は反撃しつつ彼女を守って下さい!」


リットリオの的確な指示により、敵部隊を撃沈・・・ビスマルクは無事であった。


「これでは進軍は無理ですね・・・撤退しましょう!」


「まだまだ・・・これからよ!」


「ビスマルクさん! 次砲撃を受けたら、本当に沈みますよ!」


「・・・・・・」


「今回は仕方がありません! 皆さん! 撤退します!」


リットリオの指示で皆が撤退していく。


「また負傷したの?」


「これだからビスマルクとなんか・・・」


微かに聞こえる皆からの愚痴・・・


「・・・・・・」


ビスマルクは何も言えず撤退をした。


・・・・・・


入渠時間は約22時間・・・資材も多く消費し、司令官からまた叱責を受けたのは言うまでもなくまた落ち込むビスマルク。


「次にまたこのような事態になるなら貴君を鎮守府から追い出す! 覚悟して取り組んでくれたまえ!」


司令官からの除隊宣言・・・解体までは行かないが、追い出されるということで彼女はさらに落ち込む。


「・・・グスッ。」


瞳から溢れ出す大粒の涙・・・


「ううう・・・ひっく・・・グスッ。」


堪えきれずに泣きだす彼女・・・


しかし、入渠場にはビスマルク1人しかおらず、いくら泣いても誰の目に入らなかった。


「何泣いてんだよ! この弱虫!」


鎮守府に戻った事で、イッシ―がまた話し出した。


「大破したが戻ってこれただろ? まだ生きてるだろ? 運がいいじゃねぇか! 何をそんな落ち込む必要があるんだよ!」


「・・・・・・」


「それとも、周りが密かに言った愚痴を気にしてるのか? まぁ、オレももし同じ艦娘だったら言うがな・・・お前への不満を!」


「・・・本当にはっきりして遠慮がないのね! このドS!」


ビスマルクがまた怒り出し、


「お、戻った・・・いつものビスケットに戻った・・・なら大丈夫だな・・・心配して損した!」


「・・・・・・」


「大体あの時左に回避したのが悪いんだよ・・・その先にもう2人の戦艦が砲撃準備していただろ? そりゃあ狙い撃ちにされるわな。」


「! 何、あなた・・・私の行動を把握していたの!?」


「ああ、首に吊るされているんだからお前の行動は一心同体で分かるわ!」


「じゃあ何で、その時教えてくれなかったのよ!?」


「お前が「うるさい、話すな!」と言ったからだろう!!」


「・・・・・・」


何も言えないビスマルク。


「どうだ? これで少しはオレの話に耳を傾ける気になったか・・・どうだ?」


「・・・・・・」


ビスマルクは少し考え、


「そうね・・・今まで言っていたことはすべて正しいし、言い方には頭に来るけど全部間違っていないわ。」


「そうだろ? オレは口はデカいが正論しか言わないんだ!」


「・・・・・・」


「これからはオレの言う事をちゃんと聞け! わかったか? ちゃんと聞くんだぞ!」


「・・・わかったわ。」


ビスマルクは不満ながらも返事をした。


・・・・・・


司令官から呼び出しを受け、ビスマルクは執務室に行った。


内容はもちろん、出撃途中の負傷である。


「貴君を修理するのにどれだけ資材が掛かると思っている? 戦績は悪いし資材は大量に持って行く・・・貴君は損ばかりだな!」


「・・・ごめんなさい。」


また落ち込むビスマルク・・・そこに、


「おいビスケット・・・これからオレが小声で言葉を伝えてやるから大きな声で言ってみろ。」


イッシ―が小声で話しかけて・・・


「何? 私は今怒られている所よ・・・」


ビスマルクも小声でイッシ―に話しかけ・・・


「いいから・・・オレに案があるんだ・・・いいか、オレが今から言う事をそのまま大声で言え。」


「・・・・・・」


そう言ってイッシ―が言うと、ビスマルクが大声で、


「うるさいわね、仕方がないでしょ! 私は戦艦よ! 大破したら資材が掛かるのは仕方がないでしょ!」


「な、な、な、何だって?」


急に大声で言われて司令官が驚く。


「大体ね! 司令官も私にもっと気遣うことは出来ないの? 私は確かに自己中だけど、褒められて伸びるタイプなのよ?


 それなのに悪い所だけねちねち言って・・・座ってただ言うだけのぼんくらには言われたくはないわ!!」


「・・・な、な、な・・・き、貴様!」


「何? たかが艦娘1人に言われたくらいですぐに感情的になるの? それならあなたは司令官の器ではないわ。


 その辺の通りすがりの会釈してくれる丁寧な学生の方がはるかにマシよ!」


「出て行け! このアマ!」


「ふん! 出て行くわよ! この能無し司令官!」


そう言って、ビスマルクは執務室から出た。


・・・・・・


「・・・・・・」


ビスマルクは廊下を歩いていて、


「あなたの言う通り言ってみたけど・・・喧嘩を売っちゃったじゃないの!」


「そうだよ、ああいう上から目線の司令官には一度お灸をすえた方がいいんだよ。」


「・・・・・・」


「今まで誰1人文句すら言えなかったんだろ? ちょうどいい機会だ、これからはお前がどんどん言ってやれ!」


「私が? 今の件で追い出されるかもしれないのに・・・」


「構わん、お前はこの鎮守府にいるべきではないんだよ、お前は心に相当不満を溜め込んでいるだろう?


 そんなんじゃいくら頑張ったって無駄、毎日叱責を受けて不満が溜まるならいっその事追い出される覚悟で自分の主張を言ってやりな!」


「・・・・・・」



確かに・・・この鎮守府での生活は不満が溜まる一方・・・でも、他に行くところがないし生活のために仕方がなくここにいる毎日・・・


次第に気持ちを抑えていて苦かったのは事実・・・仮に違う場所で働いていてもこの気持ちではすぐに挫折する・・・


このペンダントはそれを見越して私に助言してくれたのね・・・



「わかったわ・・・これからあなたが言った事全てを信じるから・・・ちゃんと正確に助言してよ?」


「そうかそうか・・・いいだろう! オレの指示は的確だからな・・・ちゃんと聞くんだぞ、ビスマルク!」


「・・・・・・」


「あら、今私の事「ビスマルク」って呼んでくれた?」と気づいた彼女。


「ほら、まだこれからだ、どんどん指示していくからしっかりオレについてきな!」


「また偉そうに・・・うん、期待してるわ。」


ビスマルクは部屋へと戻った。


・・・・・・


当然ながら、司令官に対して意見をしたことで、ビスマルクは編成から外されることに・・・


「はぁ・・・編成から外されちゃったじゃないの・・・」


「まぁな・・・でも、どうだ? 少しは鬱憤晴らせてすっきりしただろ?」


「・・・うん、確かに少しは気分が晴れたかな・・・」


ビスマルクの表情は初めての時とは違って笑顔になっていた。


「? あら? リットリオ?」


目の前にリットリオがいて、


「ビスマルクさん、凄いです! 見直しました!」


「・・・えっ?」


急に褒められてビスマルクは困惑する。


「あの提督にさっきガツンと言ってるのをドア越しに聞いていました・・・皆が言えない状況でビスマルクさん・・・凄いです。」


「そ、そう・・・」


照れくさくなるビスマルク。


「何か相談があればこのリットリオ、いつでも相談に乗ります。」


そう言ってリットリオは立ち去った。


「・・・彼女から話しかけに来たのは初めてだわ。」


「そうか・・・でも、これで話し相手が1人出来たな。」


「? ・・・! まさかあなた・・・最初からそれを計算の上で?」


「さぁ、次に行こうか! まだまだお前にはやってもらうことがたくさんあるからな!」


「・・・はいはい、わかったわ。」


少し、笑みをこぼしつつビスマルクはその場から離れた。


・・・・・・


それからと言うもの・・・


「ほら見ろ! 目の前の駆逐艦が重たそうに荷物を抱えているだろ? 手伝ってやれ!」


「え~っ・・・嫌よ、面倒くさい。」


「お前・・・オレの言う事を聞くんじゃなかったのか?」


「・・・わかったわよ、手伝えばいいんでしょ?」


そう言って駆逐艦の子の荷物を持ってあげる。


「どこに運べばいいかしら?」


「あ・・・あの、厨房までお願いします。」


「わかった、厨房ね。」


ビスマルクはせっせと運んでいった。


駆逐艦の子から「ありがとうございます」と言われ、厨房から出たところで・・・


「おい、ビスケット! あそこにいる戦艦のローマだったかな・・・何か困っているぞ、相談に乗ってやれ!」


「え~っ・・・ローマと? 私と凄く仲が悪いんだけど・・・」


「お前とローマの仲なんて知るか! ほら、早くしろ!」


「・・・・・・」


ビスマルクはローマに近づき、


「何か困りごと? 私で良ければ相談に乗るけど?」


「・・・・・・」


ローマは一瞬睨んできたが・・・


「今日提督の秘書艦なんだけど、あまり気が進まないというか・・・やりたくないのよね。」


「・・・・・・」


イッシ―が小声で言い、


「なら私が代わりに秘書艦やっておくわ。」


「!? えっ、ビスマルクが? そんな・・・悪いわよ。」


「構わないわ、ちょうど私も暇だし・・・無理にやって支障をきたしても仕方がないでしょ。」


「・・・・・・」


ローマは少し考え、


「・・・じゃあ、お願いするわ。 この借りはどこかできちんと返すから・・・」


「気にしなくていいわ、困ったときはお互い様よ!」


「・・・・・・」


ビスマルクの態度の急変に困惑しつつもローマは立ち去る。


「あの能無しの秘書艦やるの? はぁ~・・・」


ビスマルクはため息をつき、


「いいだろう、別に! どうせあっちも嫌っているんだしな!」


「なら、尚更やりたくないわよ!」


「これは試練だ・・・我慢しろ!」


「・・・・・・」


その後、秘書艦を代わりに行い、司令官の愚痴にも耐えながら今日1日を終えた。


・・・・・・


次の日も、誰かの手伝いや相談を行う・・・


翌日も・・・その次の日も・・・


次第にビスマルクを避けていた皆が徐々に近づくようになって、


ビスマルクの表情が笑顔になっていった。


ある日の事、


「ビスマルクさん、お願いがあるんですが・・・」


戦艦の1人がビスマルクに話しかけてきて・・・


「私たちの編成が1人足りないんです、ビスマルクさん・・・編成に加わってくれませんか?」


「・・・私でいいの?」


ビスマルクは驚いて、


「お願いします! 後数分で出撃をします・・・すぐに艤装を装着してください!」


そう言って、戦艦の子は立ち去った。


「ちょっと・・・私が出撃? 本当に出撃? やったわ!」


嬉しいのか工廠場に走って行くビスマルク。


「やったなビスケット! これでまた海に出られるな!」


「うん! ここ数日鎮守府に留まり続けていたから海に出たかったのよね~。」


「よし! 今度は海上でオレが的確な指示を出してやる! ちゃんと言う事を聞くんだぞ!」


「うん、わかったわ!」


ビスマルクは急いで工廠場に向かう。


・・・・・・


「ビスマルク、艤装装着完了したわ!」


ビスマルクが編成に加わり、出撃を開始した。


・・・・・・


「敵影が見当たらないわね・・・」


ビスマルクが辺りを見回す。


「皆さん、いつ襲ってくるかわかりません! くれぐれも慎重に・・・きゃあっ!!」


旗艦が被弾した。


「!? どこ!? どこにいるの!?」


皆は辺りを見回すが、敵の姿が無い。


そしてまた1人・・・また1人と被弾していき、


「どうなってるの・・・どうしてこんなに被弾者が・・・」


その時、イッシ―からの指示が、


「海底からの攻撃・・・潜水艦だ! 全員急いで退避するように言うんだ!」


「何ですって!? ・・・わかったわ! 急いで伝える!」


ビスマルクはすぐに旗艦に報告する。


「わかりました・・・各員、撤退をします! 急いでください!」


旗艦の指示で皆が撤退の準備をする。


「私たちも撤退するわよ!」


しかし、イッシ―からの次の意見に・・・


「!? 正気なの!? 私1人残れですって!?」


イッシ―からの意見は、「ビスマルク1人が残り、囮として皆を撤退させること」だった。


「私を囮にですって・・・そんなの嫌に決まってるじゃない!」


イッシ―の意見にビスマルクが反論する。


「だが、このままでは撤退した皆が敵の追撃で更に損傷を受け、下手をしたら轟沈する・・・それでもいいのか?」


「ううっ・・・」


「お前の大事な「仲間」だろう? 「孤立」していたお前にできた「大切な仲間」だろう? 皆を助けたくないのか?


 お前だけは損傷していない、ならお前が皆のために・・・「皆の盾」に今こそなるべきではないのか?」


「・・・・・・」


「心配するな! お前に沈めと言っているわけじゃない! 必ず鎮守府に戻れる! オレを信じろ!」


「・・・・・・」


ビスマルクは考えた後・・・


「わかったわ・・・私はあなたを信じる・・・私の命、あなたに預けるわ!」


「よし! その意気だ!」


ビスマルクは決意して旗艦に報告する。


「!? そんな無茶です! ビスマルクさんを1人残すわけには行きません!」


「私は大丈夫、心配しなくていいから・・・早く皆を連れて避難して! その間私が囮になって時間を稼ぐから!」


「ビスマルクさん!!」


「さぁ、早く行って!!」


「・・・・・・」


旗艦は悩んだ末に・・・


「わかりました・・・ビスマルクさん、必ず戻って来て下さい!!」


そう言って、ビスマルクを除く皆は撤退を始めた。


「・・・はぁ~・・・」


ビスマルクはため息をついて、


「どうするの? 私1人でどうにかなるの?」


「・・・わからん! とりあえず敵の攻撃を回避し続けろ!」


「・・・わからないって、あなたねぇ! 今あなたに命を預けたばかりよ!」


「知ってる! ならオレの言う事を信じろ! いいか、敵の攻撃を回避しろ! わかったな?」


「・・・わかったわ!」


ビスマルクは主砲の構えを解いた。


敵の砲撃が容赦なく降り注ぐ・・・ビスマルクは回避に専念した。


・・・・・・

・・・



「もう終わり? 私はまだ全然余裕なんだけど?」


敵の砲撃をほとんど回避、多少損傷をしているものの、戦闘続行は可能だ。


「何ナノダ・・・コノ艦娘ハ・・・」


敵がさらに攻撃を仕掛けようとするが・・・撃てない? そう、弾切れだ。


「クッ! タカガ艦娘1人二テコズッテ! ・・・撤退シロ!」


攻撃が無力化された敵部隊が撤退をした・・・ビスマルクの勝利である。


「はぁ~・・・助かった。」


緊張感が解けて、その場に座り込むビスマルク。


「よくやった! ビスケット!」


「ええ・・・あなたも・・・的確な指示・・・ありがとう!」


「オレは言っただけだ・・・お前が頑張った成果だ。」


「・・・うん・・・さぁ、鎮守府へ帰りましょう!」


ビスマルクたちは鎮守府と帰還した。


・・・・・・


帰還すると、旗艦含めた皆がビスマルクの帰りを待っていた。


「ビスマルクさん! 良かった! 無事に帰って来て!」


皆からの厚い労いを受けてビスマルクも顔を赤くした。


この事があって、以降皆からの信頼を得られたビスマルク・・・そう、彼女はもう1人ではないのだ。


・・・・・・

・・・



「いらっしゃいませ! ・・・あらビスマルクさん!」


料亭にまたビスマルクがやってきた。


「スタミナ丼とかつ丼を頂戴!」


いつものビスマルクに戻ったようで、元気いっぱいに注文をした。


「あらあら・・・前は元気がなかったのに急にどうしたんですか?」


「別に・・・皆が私の事を頼りにしてくれるから、落ち込んでないで頑張らなきゃって。」


「なるほど・・・皆が頼りにしてくれるんですね。」


霧島と2人で会話をして、


「今度の出撃で旗艦として任命された? 凄いじゃないですか!」


「でも、今度の出撃は連合艦隊・・・12人で2人旗艦がいるとはいえ、私は皆を支えられるかしら?」


不安なのか霧島に打ち明けるビスマルク。


「大丈夫ですよ、ビスマルクさんならできますって!」


霧島が「出来る」と言ってビスマルクも安心する。


「ありがとう・・・よし、今日はいっぱい食べて昼後の出撃を頑張ろうかしら!」


そう言って注文した物をガツガツと食べ始める。


「頑張って下さい! それでは、ゆっくりして行ってくださいね!」


霧島は来店した客を席に案内し始めた。


「・・・・・・」


ビスマルクはペンダントを見る。


「本当は・・・このペンダントが私を導いてくれたのよね・・・」


1人では到底できなかったここまでの道のり・・・それをこの喋るペンダントがビスマルクに道を示したのだ。


「最近は「オレがいなくても何とかなるだろう?」とか言って、何も話さなくなったけど・・・次の連合艦隊の出撃・・・


 何とか助言が欲しいのだけど・・・」


不思議な事に、今までうるさいほど話しかけて来たペンダントは、最近になってほとんど話さなくなった。


「どうすればいいのよ・・・私に12人の旗艦なんて・・・務まるのかしら・・・」


不安になりまた下を向くビスマルク・・・その時、



ジュウウウ~  ジュウウウ~ 



「・・・? 何、この音? 何かを炒める音?」


ペンダントから聞こえる僅かな音・・・ビスマルクは耳を傾ける。



ジュウウウ~  ジュウウウ~



「やっぱり・・・何か炒めている音・・・でも、どうしてペンダントから炒める音が?」


疑問に感じていたが、その答えはすぐにわかった。


「もしかして・・・」


ビスマルクは何かに気付き・・・


「霧島! ・・・お手洗いはどこかしら?」


霧島に教えてもらい、ビスマルクはトイレに向かう。


・・・・・・


「・・・・・・」


トイレに向かった・・・わけではなく、ビスマルクが向かった場所は・・・トイレの向かい側の厨房・・・


「・・・・・・」


ビスマルクは気づかれないように陰からのぞくと、



ジュウウウ~  ジュウウウ~



提督が注文を受けていたチャーハンを炒めていた。


「・・・ああ・・・あああ・・・」


ビスマルクは悟った。


「どうして気づかなかったの・・・ペンダントから聞こえる声は幼い子のように聞こえたけど・・・あの言葉遣い・・・そう、


 私にあんな口調で言える人はあの人しかいないじゃない・・・」


途端に泣きだすビスマルク。


「・・・・・・」


ビスマルクはもう一度ペンダントに問いかける。


「ねぇ・・・もう一度私の話を聞いて・・・お願い。」


ビスマルクが話すと、


「何だよ! オレは寝てるんだぞ! 静かにしろよ!」


ペンダントからの声と・・・厨房から響く全く同じ言葉が聞こえた。


「私ね・・・今度連合艦隊の旗艦になったの。」


「そうかい、良かったな! 日ごろの努力でそこまで登りつめたんだよ!」


「でも、私は不安なの・・・そんな大事な役割・・・私に務まるのかなって。」


「何だ・・・やる前から既に「できない」ってか? 相変わらず弱虫だなぁ!」


「・・・・・・」


「お前ならできるよ、オレが保証する!」


「あなた・・・」


「散々オレの罵声に耐えて、オレの指示を聞いて皆とも打ち解け、出撃もできるようになった。


 オレは「指示した」だけ、後はお前が頑張った結果だ・・・もっと自信を持て!」


「でも・・・旗艦よ・・・怖くて不安だわ。」


「お前・・・成功することしか考えてないか? 忘れるな! 大事なのは戦果じゃない! 皆の無事が最優先! 戦果は二の次だ!」


「・・・・・・」


「失敗したら皆に謝ればいい、素直になれず威勢を張ってても皆がまた離れてしまうぞ? いいか、お前はできる!


 オレが保証する! だったら不安になってないで、皆と作戦会議でも開いて対策を取れよ!」


「うん・・・うん・・・」


「よし! ・・・オレが言えるのはここまで。 後はもう、話すことも助言することもない・・・お前はもうオレがいなくても大丈夫だ!」


「・・・・・・」


「忘れるな! お前は1人じゃない! お前を頼りにしている皆がいるってことだ、忘れるな! お前は1人じゃない!」


「・・・ええ・・・そうね・・・わかってる!」


「よし! 初めて話した時とは別人だ・・・後は、お前の幸運を祈る! さらばだ!」


そう言って、ペンダントはもう二度と話すことはなくなった。


・・・・・・


「・・・・・・」


ビスマルクが席に戻ろうとして・・・


「はいよ、チャーハンお待ち!」


提督が出来たてのチャーハンを運び終えたところで、


「お、ビスマルクじゃないか。」


「・・・・・・」


「おや? そのペンダントまだ着けていたのか? お前にしては珍しいな。」


「・・・・・・」


「もう少し高価なやつをやろうか? もちろんそれと交換になるが・・・どうだ?」


「・・・・・・」


ビスマルクはペンダントを強く握って、


「いいえ、私にはこのペンダントが必要だから・・・これでいいわ。」


「ほう、そうかい・・・なら大事にしろよ!」


「ええ、もちろんよ。」


そう言ってビスマルクは席に戻って行き・・・


「旗艦頑張れよ・・・ビスケット。」


提督は小さな声で呟いた。


・・・・・・

・・・



その後、ビスマルクは自身を含む12人の連合艦隊の旗艦として出撃・・・


多少の損壊を出しつつも、旗艦であるビスマルクの的確な指示で、喪失感なしの大勝利を収めた。


この活躍を機会に自信を取り戻したのか、ビスマルクは皆を支える「剣と盾」になったのであった。









「ペンダント」 終










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2017-11-14 14:56:34

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2017-11-14 01:55:55

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2017-11-12 13:58:56

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1: Abcdefg_gfedcbA 2017-11-14 14:56:27 ID: OxPPJTk-

どこかで見たと思えばBJのあの義手の話...懐かしい気持ちになりながら、作品も楽しく読むことができました。お疲れ様でした

2: キリンちゃん 2017-11-14 21:06:16 ID: c3qH4P-m

コメントありがとうございました~♪


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