2017-11-21 13:05:09 更新

概要

メシマズで有名な磯風が料亭(艦娘)にやって来て「ここで働きたい。」と申し立てるが・・・

のんびり更新していきます。


前書き

参考までにキャラ紹介。

提督(大将):提督業を辞め、料亭の大将に転職した元提督、皆からは相変わらず「提督・司令」と呼ばれ、
        慕われている。 (追記:提督は意外とドSである。)
        そして・・・提督の意外な過去も明らかになる。

霧島:元提督の秘書艦、今は料亭の従業員。 お勧めは野菜嫌いでも喜ぶ霧島特製野菜カレー。

村雨:料亭の従業員、お勧めは村雨特製ほろ苦チョコレートパフェ。

サラトガ:料亭の従業員、お勧めはサラ特製の煮込みシチュー(1日限定10食)

磯風:鎮守府最強のメシマズ駆逐艦、彼女の料理を食べて体調を崩した人間は数知れず・・・

浦風・浜風:磯風と違って料理は得意、磯風が料亭で働きたい理由はこの2人が関係しているらしい?



「いらっしゃいませ! お席へご案内します!」


相変わらずいつも忙しい、


「司令! チャーハン1つとステーキ丼2つお願いします!」


確かに忙しいが、皆はやりがいを持っていた。


「はいは~い♪ 今日の村雨の新作は・・・苺をふんだんに使った苺パフェですよ~♪」


村雨が新作のパフェを白露たちに出していた。


最近はチョコレートパフェ以外に数種類の新作パフェを開発中で、駆逐艦の人気となっている。


「はい、お待たせしました! 霧島特製野菜カレーです!」


注文したのは時津風と天津風・・・野菜嫌いな駆逐艦である。


「サラトガ! あなたのお勧めシチューは頼めるかしら?」


ビスマルクとアイオワが注文しようとしたが、


「ごめんなさい、たった今売り切れました。」


サラのシチューは限定10食で人気が高く、メニューに出れば1時間の経たずに売り切れてしまう程。


提督の調理する料理とは別に、艦娘特製メニューも追加され、この料亭は大盛況していた。


そんな時である・・・


料亭に珍しい駆逐艦がやってきた、それを見た一部の艦娘は驚く。


「あら、磯風さん・・・どうかしましたか?」


「司令はいるだろうか?」


どうやら、磯風の目的は提督のようだ。


「少しお待ちください・・・司令! お客さんですよ~。」


霧島に呼ばれて、提督が駆け付けると・・・


「・・・初対面かな? とりあえず・・・いらっしゃい。」


「・・・・・・」


磯風は提督に近づき、そして言った。


「私を・・・この料亭で働かせて欲しい!」


磯風の言葉に皆が驚いた。


・・・・・・


いきなり「働かせてほしい」と言われ、驚きつつも提督は違う部屋で話を聞くことにした。


「どうしてここで働きたいんだ?」


当然ながら提督は尋ねると、


「料理が上手くなりたい・・・から。」


磯風は小声で答える。



駆逐艦磯風は鎮守府では「メシマズ(料理が超下手)」で有名な艦娘である。 今まで彼女の料理を食べて体調を崩した


艦娘や提督は数え切れず、磯風には「調理禁止」とまで厨房で札を張られる始末だとか。


磯風の姉妹艦の浦風・浜風は普通に料理は出来て磯風に何度もアドバイスをするのだが・・・


磯風が作った物は必ず浦風たちの予想と違って「不味くなる」らしい。



「ふ~ん、働きたいねぇ~・・・」


もちろん提督は磯風と初対面なのでこのことを全く知らないが、2人の様子を伺っていた艦娘たちはかなり動揺していた。


「磯風さんがこの料亭で働きたいって・・・大丈夫ですか?」


「鎮守府では数え切れない艦娘たちが、食べた後体調不良で倒れたって聞きましたよ・・・」


「そんな彼女がここで働いたら・・・お客さんどころか私たちにまで被害に・・・」


皆の意見は一致していて提督に「磯風さんはダメ、絶対!」と思っていたが、


「そうか・・・では、明日から・・・」


皆の願いをよそに提督は明日からの予定を立て始めて、


「ちょっと! 司令!」


堪えきれなくなった霧島が提督に駆け付けた。


「何だ霧島! 陰でこそこそ見ていたのか・・・見苦しいぞ!」


「すいません・・・司令、少しご相談が・・・」


「? 何だ?」


「ここではなんですので・・・少し外でいいでしょうか?」


「・・・わかった。 磯風悪いな、少しだけ待っていてくれ。」


提督と霧島は一旦外に出た。


・・・・・・


霧島は理由を説明する・・・


「ふむ・・・料理が下手で体調不良で倒れた人間がいるほど・・・」


「はい・・・そんな人間を司令は雇おうとしていたのですよ?」


「そうか・・・」


「司令は納得してくれた。」 と・・・これで磯風さんが働きに来ることはないと安心したが、


「とりあえず、明日磯風の様子を見てみるかな。」


と、明日料亭で働かせる旨を伝ええられた。


「司令! 私の話を聞いていましたか!?」


霧島は動揺するが・・・


「まぁ、最初の内は下手な人間もいるだろう・・・だからと言って、いきなり突き放すのはどうかと思う。


 明日磯風の態度を見て判断するよ、霧島たちは普段通りにやってくれ。」


そう言って提督は部屋へと戻った。


「はぁ~・・・」


霧島はため息をつく。


「確かに・・・いきなり突き放すのは良くないとは思いますが・・・下手の度合いが違うんですけど・・・」


「また問題が起きるな」と心に思う霧島だった。


部屋に戻って提督は「明日朝来るように」と伝え、


磯風も「よろしく頼む」と言い、料亭から去った。


当然皆もこの結果に動揺を隠しきれなかった。


・・・・・・


翌日、


早朝にも関わらず、磯風が店の前で待機していた。


「早いな・・・では、始めるか。」


磯風を厨房に案内する提督。


・・・・・・


「まずはカレーを作ってみてくれ。」


提督が腕前を見るために鎮守府定番の「カレー」を作ることを要求した。


「・・・わかった。」


磯風は提督の許可を受け食材を次々に取り、調理を始めた。


「・・・・・・」


提督が隣で見学していて、


「ほぅ・・・材料は・・・カレーの定番の人参・じゃがいも・玉ねぎ・肉に・・・ん? エビとイカ・・・肉を入れるのに海鮮系まで入れるのか・・・」


「・・・・・・」


磯風は無言のままだ。


「まぁ、とりあえず彼女に任せてみよう・・・カウンターで待っているか。」


そう思った提督は厨房から出て行った。


・・・・・・


カウンターで待っている間、休憩中だった村雨と海風が隣の席に座った。


「提督、磯風さんを雇って良かったんですか?」


村雨が心配そうに呟き、


「ん? オレはまだ雇っていないよ・・・「腕前を見せてくれ」と言っただけだ。」


「・・・・・・」


「でも、提督・・・磯風さんは、悪い意味で鎮守府で有名なんですよ。」


海風も小声で呟き、


「そうなの? でも、ここは鎮守府ではなく料亭だからな。」


「・・・・・・」


提督は相変わらずのんきである。


しばらく待っていると、厨房からあり得ない音が・・・



グシャッ!! バキッ!! ザクッ!!



「・・・・・・」


村雨と海風は言葉を失う、


「・・・包丁から出る音ではないな。」


提督は冷静である。


・・・・・・


「司令・・・カレーが出来た・・・」


磯風が提督の前に皿に盛ったカレーを差し出す。


「・・・・・・」


目の前にあったのは・・・カレー? それとも、何かの残飯?


カレーの中から野菜以外に甲殻類の破片らしき物体が真上に突き出していて、ご飯は真っ黒焦げ・・・


肝心のカレーも本来茶色を帯びているはずが・・・何だか・・・白っぽい?


「うううっ・・・」


「ちょ、ちょっとこれは・・・予想以上のものが・・・」


村雨と海風が震え上がる。


「司令・・・私のオリジナルを含めた特製カレーだ・・・さぁ、味見してくれ。」


磯風は自信満々に提督の前に出すが・・・


「磯風・・・」


提督は一言、


「オレはカレーと言ったはずなのだが?」


「ああ・・・磯風特製のカレー・・・」


「それとも・・・オレに喧嘩を売っているのか?」


提督の表情が険しい。


「いや、本当の本当だ・・・私が今まで作ったオリジナルの特製の中で一番の・・・」


「そうか。」


提督は皿を持って・・・ゴミ捨て場に  ポイっ!!


「な、な、な、何をするんだ司令!?」


提督の行動に驚きを隠せない磯風。


「あれじゃあ、人間どころか蠅すら寄って来ないな。」


「・・・・・・」


「作り直し! 材料費は今日のお前の日給から遠慮なく引いておくからそのつもりでやってくれ。」


「・・・・・・」


磯風は作ったばかりのカレーを捨てられ、悔しくて手を震えるも・・・


「・・・わかった・・・磯風・・・もう一度作る。」


磯風は厨房に戻っていった。


・・・・・・


「出来た・・・司令・・・今度こそ味見を・・・」


「・・・・・・」


提督はカレーを見て一言、


「作り直し!」


「!!?」


またもや、作り直しの宣告を受けた。


「ほら、何をやっている? 客が作り直せと言っているんだ・・・早くしろ!」


「・・・・・・」


磯風は悔しながらも、厨房に戻った。


・・・・・・


「作り直し!」


また作り直し宣告を・・・


・・・・・・


「作り直し!」


恒例の作り直し・・・


・・・・・・


「お前はやる気があるのか?」


今度は磯風に罵声を浴びせる提督、


「どうして・・・私のカレーに何が問題があると言うのだ!」


急に開き直って、磯風が怒り出す。


「じゃあ聞くが、どうしてあれがカレーだと言えるんだ?」


「だから! 私の特製だと!」


「オレは特製を作ってくれと言っていない! カレーを作ってくれと言ったんだ。」


「・・・・・・」


「お前なぁ、客が注文してるのに何を勝手に自分のオリジナルを作っているんだ? ふざけるのもいい加減にしろ!」


「で、でも・・・それだけでは物足りないし・・・少し・・・工夫を凝らしてだな。」


「その工夫があれか? お前の工夫は失敗作を作ることか?」


「・・・・・・」


「聞いてるだろう・・・お前の工夫とは、失敗作を作ることなのか?」


「酷い・・・あんまりだ・・・そんな事、今まで誰も言った事がなかったぞ!」


「そうか・・・皆はお前に気を遣っていたのか・・・それをお前は「出来る」と勘違いして・・・これはお笑いだ。」


「な、何を・・・」


「どうせ、こんな失敗作を作るくらいなんだから自分で味見もしていないんだろう? とんだ自信家だな!」


「・・・・・・」


「もう諦めろ、 お前には料理の腕は皆無! 二度と来るな! 目障りだ!」


そう言って磯風を追い出してしまった提督。


・・・・・・


「磯風さん・・・追い出されてしまいましたね・・・」


「まぁ、結果は分かっていたけど・・・予想通りだとあまり嬉しくないわね・・・」


磯風が外に出される場面を見て感じた2人、


「おい、2人とも。 休憩時間はとっくに過ぎてるぞ! ほら、仕事仕事!」


「はいは~い!」


「はい、すいません。 すぐに作業に戻ります!」


2人は急いで現場へと戻った。


・・・・・・


「何なんだ、あいつは!」


店を追い出された磯風は不機嫌である。


「せっかく、私が一生懸命作った特製カレーを全部捨てて・・・」


あんな店に二度と行くか! と思った磯風だが・・・


「・・・・・・」


冷静になって、考える。


「後何日猶予がある? ・・・後3日・・・それまでに作れるだろうか?」


どうやら磯風は何かを完成させたく、提督の店に働きに行った様子で・・・


「・・・他の店も当たってみよう・・・3日しかないとも言うが、まだ3日ある・・・とも言える。」


磯風はそのまま歩いて行った。


・・・・・・

・・・



「24時・・・今日の仕事は終了です! 皆さん、お疲れ様でした!」


今日も1日仕事が終わり、各皆が寮に戻る中・・・


「さぁさぁ♪ 今日はいくら稼げたかしら?」


村雨がわくわくしながら今日の集計を待つ。



村雨たちが貰える給料は月給制ではなく、出来高制なのだが・・・少し変わった出来高制である。


カレンダーには各日付ごとに従業員の名前が書いてあり、今日が村雨である。


この料亭は一律100円で、24時までに注文した数✕100円が日付に書かれた艦娘の給料となる。


例えば、1日で1000食売れた場合は、その日の給料は10万円となる計算である。


但し、条件があり各艦娘が出している特製メニューが1日で合計100食達成することが条件になっている。


100食に満たない場合は、通常の注文食の数は換算されず、100食未満の給料のみ支払われると言う過酷な条件である。


※例として100食達成して1日1000食なら10万円がその日の給料となり、


  96食で1日1000食なら 96✕100円で9600円しかもらえない。    ←雲泥の差w だから皆必死w



「今日1日の注文数は・・・1200食!」


「1200食・・・じゃあ12万円ですね! わ~い♪」


「艦娘メニューは・・・残念ながら98食・・・今日の給料は9800円だ!」


「ええ~っ!! ちょっ、待っ!!」


村雨の絶叫が響き、


「約束だからな、我慢しろ・・・はい、9800円。」


「2食くらい大目に見てくださいよぉ・・・お願いしますよぉ~。」


「今日、30分ほど仕事サボっていたのが仇となったな、まぁ次も頑張れ!」


提督は村雨の訴えを無視して部屋に戻った。


「ぷぅ~・・・何か納得いかないよぉ~(泣)」


村雨はしょんぼりしながら部屋へと戻った。


※そう言いつつも、村雨は先月30万円以上稼いでいたww


・・・・・・


「夕立、今日はお泊りに来たっぽい♪」


この日は珍しく、夕立が料亭に泊まりに来た・・・部屋はもちろん村雨の部屋だ。


「少し待っててね、布団敷いてくるから。」


「わかったっぽい♪」


夕立はカウンターで座って待つ。


「提督さん、何か面白いお話してっぽい~♪」


「面白い話? う~ん、桃太郎とか金太郎とかはどうだ?」


「何度も聞いたことあるっぽい! もっと、聞いたことが無くて面白そうで、泣けそうなお話がいいっぽい!」


「う~ん・・・」


提督は少し考え、


「わかった・・・昔々ある村に1人の青年がいて・・・」


「1人の青年がいて・・・」


夕立が興味津々で聞く。


「あらあら・・・」


霧島もその場にいて、提督の話を聞いていた。



昔々ある村に1人の青年がいました。その青年は不思議な力を持っていて、村人から恐れられ、誰も近づこうとはしませんでした。


ある日の事、村人が100年に1度行う儀式のために、その青年を生贄に選びました・・・青年は文句も言わず、村人たちに従いました。


そんな時、青年の前に1人の女性が現れました。その女性と一緒に過ごして青年は恋に落ちました。でも、生贄である以上は


恋をすることは許されませんでした・・・それでも、青年は女性を諦めることが出来ず、2人で決意して村から出ることにしました。


村から出た2人はその後結ばれ今でも幸せに暮らしている・・・とさ。



「・・・へぇ~・・・それってどんな題名っぽい~?」


「オレが勝手に考えて話しただけだ。」


「え~っ、そうなの~?」


「どうだ、面白かっただろう?」


「全然~・・・何だかよく意味が分からなかったっぽい~!」


「そうか・・・夕立にはまだ早い話だったかな。」


そう言って提督は夕立の頭を撫でた・・・夕立は「もっともっと~♪」と喜んだ。


「・・・・・・」


側で聞いていた霧島にはその話に何か違和感を感じていた。


「・・・・・・」


でも、あくまで提督の作り話という事でその時はあまり気にもしなかった霧島だった・・・


・・・・・・


2日後の事、


磯風がまた料亭にやってきた。


「司令、頼む・・・もうここしか頼れないんだ・・・もう一度私にチャンスを・・・」


深々と礼をして頼み込む磯風・・・彼女は真剣である。


「その前に聞きたいのだが、何を作りたいんだ?」


「・・・・・・」


提督にはわかっていたようで、磯風が来た理由は「働きたい」ではなく、「何かを作りたい」でこの料亭に来たと気づいていた。


「・・・か、カレーを作りたい。」


どうやらカレーを作りたかったようだ。


「・・・誰に食べさせたいんだ?」


「!? なぜ知ってる!?」


「そうでなければ、わざわざこんな料亭まで足を運ばないだろう?」


「・・・・・・」


磯風は少し沈黙した後、


「浜風と浦風に・・・食べさせたい。」


「浜風と浦風って?」


「磯風さんの姉妹艦ですよ。」


霧島が説明してくれた。


「いつも・・・あの2人のは世話になってるから・・・たまには私が作った物を食べさせたくて・・・」


口ごもりながら、呟く磯風。


「なるほど・・・それで、勝手に「特製カレー」をあの時作ったんだな?」


「・・・・・・」


磯風は無言で首を振った。


「自分のオリジナルを作って姉妹に食べさせたかったわけか・・・」


「・・・・・・」


「いいだろう、オレが横についてやるから、お前特製のカレーを作って見せろ!」


「司令・・・よろしく頼む!」


磯風は提督と料亭に入っていった。


・・・・・・

・・・



「何度も言うが・・・どうしてそのタイミングで野菜を入れるんだ!」


提督の怒号がいつもより響く。


「・・・ダメだ! やり直し!」


何回目のやり直しだろうか・・・鍋を洗ってまた調理し始める。


何度かやって気づいたことは、


最初から中間までは何の問題もないが、後半になると磯風が何かを思いつくらしく勝手に具材を入れたり、


違う作業に移ったりし、結果「失敗」に終わる。


「磯風・・・」


提督が何かに気付き、


「何も考えずにカレーを作って見ろ。」


「? 何も考えないのか?」


磯風は首を傾げる。


「そう、作り終わってから考えろ・・・調理中は何も考えずにとりあえず作って見ろ。」


「・・・わかった、司令。」


磯風は提督の指示に従った。


・・・・・・


「・・・うむ。」


できたカレーを提督が味見して、


「うん・・・上手くできてる・・・完ぺきではないが、合格としよう!」


「本当か! 司令!」


「ああ、今日の出来事を忘れずに姉妹たちに食べさせてやりな!」


「司令・・・本当に、ありがとう!」


磯風は出来たカレーを持って料亭から出て行った。


要は、調理中に何かを思いついてあらぬ行動をするのだから、調理中は「何もしなければ」問題ない、に気づいた提督。


「さてと・・・これから皆の夕食を作るとするか・・・」


そう言って、提督は調理を始めた。


・・・・・・


ある日の事、


「少し出る・・・帰りは夕方になるかな。」


提督が珍しく、荷物を持って外出した。


霧島がそれを見て、


「風呂敷に花・・・」


提督の持っていた物に疑問を感じた霧島・・・


・・・・・・


料亭から遠く離れ、海に面した辺り一面の砂浜に提督はいた。


「・・・・・・」


その砂浜の先に、1つの墓石が建てられていた。


「・・・・・・」


提督は花を添え、線香を立てると黙祷・・・顔を上げると、供え物を置いた。


「・・・・・・」


「誰のお墓ですか?」


「?」


提督が振り向くと、そこに霧島がいて・・・


「ついてきたのか・・・」


「すいません・・・ですが、お互い隠し事はしない約束でしたよね?」


霧島が隣に立ち、線香を立てた。


「いずれは話すつもりだったが・・・」


提督は少し考え、


「飲みでも行くか?」


「・・・はい、是非。」


霧島を飲みに誘い、2人はその場を後にした。


・・・・・・


「ほら、霧島飲め。」


霧島のコップにビールを注ぐ。


「ありがとうございます。」


霧島はビールを一気に飲み干した。


「それで、司令・・・さっきの話ですが・・・」


霧島が聞こうとしたが・・・


「霧島・・・前にオレが夕立に話した昔話を覚えているか?」


提督に話題を変えられて躊躇いつつも、


「昔話ですか? ええ、青年と女性の話でしたよね?」


霧島は冷静に答えた。


「実はな・・・あの昔話には続きがあるんだ。」


「続き・・・ですか?」


霧島は首を傾げる。


「青年が女性に恋をした後・・・」



青年は女性と恋をして2人で村を出ることを決意しましたが、村人たちはそれを許しませんでした・・・


村人たちは青年を地下に閉じ込め、女性は村人たちから拷問を受け、「裏切者」と烙印を押された後に、殺されてしまいました。


女性が死んだことを知った青年は復讐を決意しますが、直後に深海棲艦が村を襲撃。 村は近海に位置していたため、


狙われてしまったのです。 その日のうちに村は壊滅、残ったのは復讐に燃える青年ただ1人だけでした・・・



「どうだ? 中々上手くできた昔話だろう?」


提督は笑いながら話す。


「まさかですが、その青年はもしかして・・・」


霧島が気付き、提督に尋ねた。


「・・・・・・」


提督は急に態度を改め、


「まぁ、本当の話はもっと近代的だが・・・昔、好きだった人が人間たちに殺されたのは事実だ・・・」


「・・・・・・」


「心配するな・・・復讐する気はない、今のところはな。」


「・・・・・・」


「それに、今復讐しても正直つまらないんだよ、人間たちが弱過ぎてな。 もっと技術や戦力を上げてからでないと・・・


 殺し甲斐がないだろう?」


「・・・・・・」


「それだけだ・・・さぁ、飲むか。 店員さん、ビール追加ね!」


提督はまたビールを注文する、霧島は提督から言われた話に言葉を失っていた。


・・・・・・


「ただいま~。」


提督と霧島が料亭に戻る。


「提督、遅いですよ! あら、霧島さんも一緒だったんですか?」


「ああ、霧島と飲みに行ってた。」


「え~っ! ずるいです! サラも連れて行ってほしかったです!!」


「悪い悪い、また今度な。」


「・・・後、今日の集計をお願いします!」


「そうだったな・・・確か今日は・・・」


「私ですよ、提督♪」


「わかった・・・少し待ってくれ。」


提督は部屋に戻っていった。


・・・・・・


「今日の注文数は・・・750食!」


「750食という事は・・・7万5000円ですね!」


「そして、艦娘メニューは・・・115食! 目標達成だな! じゃあ今日の給料は7万5000円ね。」


提督がサラに封筒を渡す。


「ありがとうございます! さてと、何を買おうかなぁ~♪」


サラは上機嫌である。


「あ、忘れてました・・・村雨ちゃん。」


サラトガは村雨を呼ぶと、


「この前のお給料、少なかったんですよね? 少ないですが、私からの気持ちです、受け取って♪」


そう言って村雨に1万円を出すサラトガ。


「そんな・・・いいですよ。 この店のルールですから・・・」


「明日妹さんと会うんでしょう? お2人の外食代として使ってください。」


「サラトガさん・・・ありがとうございます。」


村雨は遠慮しつつもお金を受け取った。


「では、私は部屋に戻りますねぇ~♪」


サラトガは部屋へと戻り・・・


「相変わらず元気だな、あの子は・・・何だか癒されるよ。」


提督はぼそっと呟く。


「・・・・・・」


霧島は隣で見つめていた。


・・・・・・


ここはサラトガの部屋・・・


「珍しいですね、霧島さんがここに来るなんて・・・」


サラトガはコーヒーを出して、


「何か相談があって来たんですね?」


「・・・・・・」


霧島はゆっくりと口を開いて、


「実は、今日司令が・・・」


少しずつ説明していく。


・・・・・・

・・・



「そうですか、提督がそんなことを・・・」


「サラさんはどう思いますか? このまま放っておけば、司令が何か良からぬ事をしそうで・・・」


不安な霧島を見て、


「大丈夫ですよ、提督は♪」


相変わらず、明るい笑顔で答えるサラトガ。


「そうでしょうか?」


「はい♪ 過去にも何度かそんな事態がありましたけど・・・提督は一度もしませんでしたよね?」


「まぁ、そうですね。」


「じゃあ大丈夫ですよ♪ 私は提督を信じていますから♪」


「・・・・・・」


サラトガには何の迷いもない、本当に提督の事を信頼している・・・と感じた霧島。


「そうですね! 私ったら、どうして不安になってたのかしら・・・」


霧島は大きく深呼吸をして、


「部屋に戻ります! サラさん、聞いてくれてありがとうございました!」


「いいえ、では おやすみなさい♪」


霧島は部屋から出て行った。


・・・・・・


数日後の事、


磯風からの手紙が料亭に届き、


内容は・・・”司令のおかげで2人は喜んでくれた・・・本当にありがとう。”と綴られていて、


「いい事だ・・・これで磯風も普段からまともな食事が作れるといいな。」


そう思いつつ、これからの生活を願った提督であった。


・・・・・・


「24時・・・今日の仕事は終了しました! 皆さん、お疲れ様です!」


村雨と霧島は部屋に戻り、サラトガは明日の仕込みに掛かり、海風は提督が集計を終えるのを待っていた。


「今日の注文数は・・・1000食!」


「凄いです! 皆さんよく頑張ってくれました!」


「そして艦娘メニューは・・・105食! 目標達成! じゃあ今日の給料は10万円ね。」


提督は海風に封筒を渡す。


「ありがとうございます! 助かります! このお金で江風と山風と食べに行ってきますね。」


「ああ、好きに使え。」


「はい! では、提督。 おやすみなさい!」


海風も部屋に戻った。


・・・・・・


その後も何の問題なく料亭を開いていたが・・・


「・・・・・・」


提督が部屋で何かの作業をしていた。


珍しく今日は、霧島たちに任せて提督は部屋に籠っていた。


大きな用紙に定規と鉛筆・・・どうやら何かを描いて(設計して)いるようだ。


「猶予は後・・・1年くらいか・・・」


提督は小声で呟き、


「この世界の人間どもが1年以内にどれだけ戦力を整えられるかな・・・」


独り言を呟きながら提督は机で作業をしていた。


・・・・・・


「よし、完成した。」


描き(設計し)終わり・・・


「霧島、少し店を開ける・・・帰りは夕方になるかな。」


「わかりました司令・・・あまり無茶をしないでくださいね!」


「ああ、では・・・行ってくる!」


提督は料亭から出て・・・


・・・・・・


着いた場所は・・・明石がいる工廠場。


「あら、元提督・・・珍しいですね。 何かご用ですか?」


「この設計図に書いてあるものを作成して欲しい・・・用紙A・B共に4人分、この用紙Cは・・・時間が掛かるだろうが、1体で頼む。」


「・・・・・・」


明石が設計図を見ると、


「これは・・・何ですか? 見たことのない想像的な武器? 防具ですか? ・・・後このロボット? みたいな絵は・・・」


「作れるかな・・・鎮守府一のメカニックのお前ならできると思っていたが・・・」


「う~ん・・・できないこともないですが・・・大量の資材と費用が掛かりますよ?」


「それなら用意している。」


そう言って、明石の前に資材の書類と小切手を出す。


「流石ですね・・・はい、これだけあれば作成可能だと思います!」


「後、これは極秘で頼む・・・その時が来ればまた指示をする。」


「・・・何か理由があるんですね・・・わかりました! この事は私と元提督の秘密として堅く守ります!」


「頼んだぞ明石。」


提督が去り・・・


「しかし・・・この防具? ・・・艤装? あの方は変わった発想をお持ちですね。」


設計図を見て首を傾げる明石だった。


・・・・・・


「よし、これで対策は取ったと。」


提督は料亭に戻りながら、


「霧島、村雨・・・それにサラトガ・・・後は皆に・・・任せる。」


・・・・・・


意味ありげな言葉を発しながら、料亭へと戻る提督であった。









「提督と磯風」 終










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