2017-11-19 17:57:04 更新

概要

過去の作品同様オリジナル要素、流血描写、轟沈描写、キャラ崩壊などが多数存在します。
特に、艦娘の被弾描写については、衣服の破砕ではなく四肢の欠損などといった、いわゆるスプラッタ描写を採用しています。
上記の描写が苦手な方、受け付けない方はブラウザーバックを推奨します。


前書き

前作のサブタイトルがそろそろ本文と合わなくなってきたので、新しくしました。



序章





 ――――僕は、間違っていたのだろうか。


 海原に漂う夥しい女形の屍に向かって、彼は、そう呟いた。


 彼には、護りたいモノがあった。

 彼には、掲げるべき御旗があった。

 彼には、ヒトの不幸を哀しみ幸福を願うことが出来た。



 ――――僕は、間違っていたのだろうか。


 頬から一筋の滴を流し、彼は今一度、そう呟く。


 彼は、彼の娘達が人類のエゴのもと散って逝くのが【可哀想】で嘆かわしかった。

 彼は、彼の娘達が人類のエゴのもと虐げられるのが【理不尽】で憤りを隠せなかった。

 彼は、彼の娘達が人類のエゴのもと滅んでゆくのを【救済】したくて父と成ろうとした。


 だが、彼はすべてを失い、世界の敵と成ってしまった。


 許されぬと熟知しながらも尚願い、焦がれ、禁忌を犯したが故に。彼は世界に拒絶され、愛し愛された者たちの怨敵となり果ててしまった。


 「・・・・なあ、教えてくれないかい?・・・僕は、何を間違えてしまったのかな・・・・?」


 己が願いで全てを失い、全てに見限られ、彼は前に立つ人外の小さき者に向かってそう問うた。


 ――――願わくば、教え導いてほしい。


 僕の犯した罪の在り方を。

 僕の犯した罪の償い方を。

 僕の頬を伝う、この滴の意味を。


 彼の最後の問いに対し、その小さき者は、唯一つだけ応えた。



 『・・・・貴方は、何かを間違えたのではない。ただ、世界が貴方を、貴方の御旗を、拒んだのだ・・・・』






第五十三章


グリニッジ標準時1006

セイレーン起動艦隊第三艦隊付近。





 凪いでいたはずの海原に、幾重もの水柱が上がる。


 その天高くそびえ立つ赤黒い水柱は、潮でありながら鉄色に染まり、海水でありながら鉄臭く、冷感でありながら生暖かった。


 エセックス「負傷した娘達は損傷の修理を優先して。動ける娘達は、副艤装の復旧を急いで!」 


 横須賀の艦隊からのクラッキングから、約16分。

 磯と血液と油の交じり合ったえも言わぬ臭いを撒き散らす戦海の唯中で、エセックスは、何とか攻勢の糸口を掴もうと回復したばかりの通信機片手に被害の掌握に奔走していた。


 エセックス(く・・・っ。なんて様なの・・・!?)


 まるで運動場に設けられたトラックを周回するかのようにして、エセックスは全速航行を行いながら艦隊間の損害把握に努めていたが、右を見れば、四肢を失い血反吐にまみれた僚艦。左を見れば、轟沈寸前で「コロシテ」と唯々呻き声をあげる僚艦という有様。

 かつて無敵を誇り、七海の覇者たるアメリカ合衆國最強とまで言わしめた我らがセイレーン起動艦隊の栄光とはまるでかけ離れた醜態に、エセックスの心中は沈痛よりも屈辱の色が濃くなっていた。


 エセックス(・・・あれは。まさか、ホーネット・・・!?)


 第1艦隊と第2艦隊との間に差し掛かったところでおもむろに航行(あし)を止めたエセックスは、波間で膝を着く一隻の艦娘に驚愕の顔で見つめるや一目差に駆け寄る。


 エセックス「ホーネット、しっかりして・・・!?ホーネット!!」


 ホーネット「・・・・・・ねぇ・・・さ・・・ま・・・・?」


 姉の必死の呼びかけに朦朧とした様子で応えながら、ホーネットはゆっくりと顔を上げる。

 それをエセックスの顔に、沈痛とも憤怒とも取れる表情が浮かび上がった。


 ――――なんて、なんて酷い・・・。


 精根尽き果てた様子で波間に膝を着く自身の姉妹艦は、最早艦と呼べない状態だった。


 身に着けた主艤装はそのほとんどが崩落し、蜜柑色のセミロングの髪は自身の流した鮮血で赤黒くまだら模様に染まっている。

 傍らに浮かぶM16A2アサルトライフルを模した飛行甲板は真っ二つに折られ、トリガー部分にはホーネットの右腕そのままくっついていた。

 ひざ下まである浅葱色のワンピースタイプの制服は、両の袖が腕ごとが無くなっており、左わき腹は大きくえぐれ、薄紅色の肉塊がいまにも零れ落ちそうに顔を覗かせていた。 


 ホーネット「・・・ねぇさま・・・。かん、たいは・・・・てい、とくは・・・どう、なり・・・っ」


 そう言いかけた所で、ホーネットの口と鼻から赤黒い液体が溢れ出し、直下の水面が獨色の赤に染まっていく。

 もう意識を保つことすら困難であろうに、それでも艦隊や提督達の事を心配する妹の背中を優しくさすりながら、エセックスは「大丈夫」と何度も慰める。


 エセックス「大丈夫、心配しないで。艦隊は、全艦健在にして損害軽微よ」


 「この惨状で我ながらよくもしゃあしゃあと嘘を並べられるものだ」と、エセックスは自嘲したが、ホーネットの負傷具合を鑑みれば、余計な心労は避けた方が賢明と言うものだった。


 【主艤装に乗艦させていた応急修理要員(ダメコン)が居なくなっている】


 もぬけの殻になっている増設装甲を横目に見つつ、エセックスは応急手当をするためホーネットの背中を摩りながら開いた手で自身の主艤装から応急箱を取り出す。


 それもその筈である。

 大破以上(これだけ)の損害だ。普通なら轟沈していても可笑しくはない。

 そうならなかったのは、提督がセイレーン起動艦隊全ての艦娘に必ずダメコンを搭乗させているからであった。


 だが、果たしてそれがいまのこの娘にとって幸運だったのかと問われれば、きっとエセックスは首を縦に振ることを躊躇したであろう。


 ホーネット「ごふ・・・っ。が・・・はっぐ・・・ぐうぅぅう・・・・」


 息をする度に、ホーネットの口から唾液交じりの鮮血が飛び出し、抉れた脇腹からは噴水のごとく噴き出す鮮血と共に薄紅色の肉塊がずれ落ちてくる。

 だが、その肉塊がずれ落ちる度に、その肉は淡く光り「にゅちゃり」と音を立て、また体内へと戻っていく。


 ――――これが、ダメコンの能力というの・・・・。 


 眼前で繰り広げられる摩訶不思議な光景に、エセックスは取り出した滅菌ガーゼを患部にあてがい包帯できつめに固定していく。

 ダメコンは、その役目を担った妖精が己の生命力と引き換えに艦娘を轟沈(せんし)から防いでくれるものだと教えられてきたが、エセックス自身、その加護が発動しているところを見るのは初めてだった。


 エセックス(・・・・こんなの、まるで拷問じゃない・・・・!?)


 ダメコンの加護は、その妖精が搭乗している艦娘が轟沈したと認識した時のみ発動する。

 そして、ダメコンの加護は発動させた艦娘をあらゆる攻撃―同じ艦娘や深海棲艦を除く―から護り、現世に止め置こうとする。


 だが、それは言いかえれば【我、致命的な攻撃を受け轟沈セリ】という現実を彼の妖精の力で【我、致命的な攻撃を受けるも、未だ健在ナリ】という現実に無理やり覆すということ。


 故に、実質その加護を受けた者たちは「死」と「生」の狭間で永劫苦しむことになる。

 誰かが、自身を【救済】してくれる、その時まで。







後書き

誤字脱字は常時修正して行きます。


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