2017-12-06 16:15:17 更新

概要

ドラゴンボールヒーローズ ビクトリーミッションX 04の続きです


―――シャメルたちの裏切りによりビートは暗黒魔界へと連れ去られてしまった



―――しかしそこでビートはトワという女性に出会う



―――トワはビートの憎しみに支配された心を過去の自分自身に重ね合わせ、自身の優しさで凍りついていたビートの心を溶かしていく



―――憎しみを捨て去り、大切なものを守ろうとする心が自分を強くする、そう思い出したビートはついに超サイヤ人ゴッドへと覚醒する



―――そしてビートは世界を救うため、時の広場へと帰還するのだった



―――トワとの再会の誓いを胸に秘めながら…






[mission05︰進化を超えた神化]







―――時の広場



ビート「………」スタスタ


ビート「…あ」


カギュー「おはようございます、ビートくん」


ビート「おはよう、カギュー」


カギュー「…よく休めました?」


ビート「ああ、ぐっすりだよ」


カギュー「そうですか、良かったです」


ビート「……カギュー」


カギュー「はい?」


ビート「…聞きたいことがあるんだけど…」


ゼン「おはようございます、お二人とも」


ビート「うわっ!」ビクッ


カギュー「び…びっくりしましたよ…ゼンくん」


ゼン「す…すいません、お二人をお見かけしたのでつい…」


カギュー「別にいいですよ それでなんでしたっけ、ビートくん」


ビート「…いや、なんでもないよ」


ゼン「それにしても…無事で本当に良かったです」


ゼン「暗黒魔界からドラゴンボールを持って脱出してくるなんて…やっぱりビートくんはすごいですよ」


ビート「ああ…ありがとう、ゼン」


ビート「……………」





―――

――







―――昨夜



時の界王神『…驚いたわ…誰かが時の広場に接近してきたと思ったら、まさかビートだったなんて…』


ツバサ『まさか暗黒魔界から脱出してくるとはな』


よしとくん『それにドラゴンボールまで持ってくるなんて…すごいよビート』


ももちゃん『おかえり…ビートくん』


ビート『…心配かけてごめん、みんな』


カギュー『本当に…無事で良かったです…ビートくん…』


フローズ『…………』


ビート『カギュー…』


ビート『…フローズ…』


フローズ『…悪運の強いやつだ』


ビート『フローズ…その…色々ごめん…』


ビート『オレ…みんなにひどいことしてた…』


フローズ『…別に構わない』


フローズ『生きててさえくれればな…』ボソッ


ビート『…え?』


フローズ『…なんでもない』


カギュー『…フローズくん』


時の界王神『…ビート、それにみんなも今日はもう遅いしゆっくり休んで』


時の界王神『また暗黒魔界が何か仕掛けてくるかもしれないし…』


ビート『はい…』


ソラ『(…ビートの気の種類が変わっている…だからここに近付いてきたのがあいつだとわからなかったんだ…)』


ソラ『(何より…あれだけあった憎しみの気が完全に消えている…)』


ソラ『(いったいお前に何があったんだ…?ビート…)』



こうしてビートはトワのことはうまく伏せながら、今までの経緯を説明したのだった





――

―――





ビート「…じゃあオレは部屋でご飯食べてくるよ」


ゼン「そうですか、では」


カギュー「行きましょうか、ゼンくん」


ゼン「ええ」






ビート「…………」クルッ


ビート「(…昨日は上手く話せてよかった…)」スタスタ


ビート「(トワのことを言う必要は無いよな…話が混乱するだけだ)」スタスタ


ソラ「おう、…ビート?」


ビート「(…トワ…)」


ソラ「ビート!」


ビート「うわっ!」


ビート「ソラ…」


ソラ「どうしたんだ?何か考え事か?」


ビート「いや、なんでもないよ」


ソラ「そうか」


ソラ「とうとうなれたんだな…超サイヤ人ゴッドに」


ビート「…うん」


ソラ「しかし…あれだけ手こずっていたのにいきなりなれるなんてな」


ソラ「…何かあったのか?」


ビート「…いや…」


ビート「大切なことを思い出しただけだよ」


ソラ「…そうか」


ソラ「もう一度ゴッドにはなれそうなのか?」


ビート「わからないけど…でも…」


ビート「必ずなってみせる…そして早くトキトキ都へ行くんだ」


ソラ「(…どうなってるんだ…?連れ去られる前とはまるで違う…)」


ソラ「(こんなこと…ノートの仇を討ったからって出来るものなのか…?)」


ビート「ソラ…どうしたの?」


ソラ「いや…なんでもない なら修行しないとな、精神と時の間は好きな時に使っていいぞ」


ビート「ありがとう、早速行ってくるよ」タタタッ


ソラ「(…復讐のために戦っていたあいつが…)」


ソラ「(戦う理由が変わったのか…?だとしたらいったい…)」







―――精神と時の間



ビート「はあああっ!!!」


ビート「ぐ…ぐぐっ…!」


ビート「ぐ…はぁっ!」


ビート「はぁ…はぁ…」


ビート「…だめか」


ビート「…もう一度ゴッドになるには…どうすれば…」


ビート「あの時ゴッドになれたのは…大切なものを守りたいと思ったから…」


ビート「トワが…いたから…」


ビート「大切な存在を近くに感じられないと、ゴッドにはなれないのか…?」


ビート「………」


ビート「一休みするか…」





その後も修行を重ねていくビートだったが、超サイヤ人ゴッドへの再変身には至らなかった





ビート「はぁ…はぁ…」


ビート「く…くそ…」


ビート「…何が足りないんだ…?」


ビート「条件は満たしているはずだし…心もあの時の感覚に近づけている…」


ビート「…いったい…何が……」


もう一度ゴッドになったときのことを思い返す


何故あの時なれたのか そしてどうして今はなれないのか


するとある一つの考えが浮かび上がってくる


ビート「…もしかして…今のオレの体が、ゴッドのパワーに耐えられないのか…?」


ビート「…そういえばあの時も、すぐに変身が解けちゃったし…」


ビート「(…思えば、超サイヤ人3になれたのも超クラスアップしてからだった…)」


ビート「(クラスアップのときにも3の感覚はあったけど…結局なれなかったし…)」


ビート「(超クラスアップよりさらに上の力が無いと…ゴッドのパワーに耐えられないのか…)」


ビート「あの時が特別だったんだ…」


ビート「…………」


ビート「…ソラに相談してみよう」






ビート「あ、ソラ」


ソラ「おう、どうしたんだ?」


ビート「うん…実はさ…」







ソラ「そうか…ゴッドになるには今の状態じゃ無理ってことか」


ビート「うん…悔しいけどさ、どうすればいいの?」


ソラ「…実はオレもお前がゴッドになったって聞いて驚いたんだ」


ビート「え?」


ソラ「お前の力は極限まで上がっていたのに、お前はその体で超サイヤ人3を超えた」


ソラ「一時的にだがゴッドになれた」


ソラ「お前の中の何かが、お前をもっと上に行かせたんだ」


ビート「オレの中の何か…」


ソラ「とにかく!お前はもうゴッドになれる!それだけでも大きな前進じゃないか」


ビート「そっか…そうだよね」


ソラ「ビート…オレが必ずお前をもう一度ゴッドにしてやる」


ソラ「だから…もう少しだけ待っててくれないか?」


ビート「わかったよ じゃあオレは少し休んでくる」


ソラ「ああ」


ビート「……ソラ!」


ソラ「どうした?」


ビート「…ありがとう いつもアドバイスくれて」


ソラ「あ…ああ 頑張れよ、ビート!」


ビート「うん!」


ソラ「(…あいつ…ゴッドになれなくても、必要以上に焦る様子が無くなった…)」


ソラ「(以前だったら…オレたちの制止も聞かずに復讐のために戦っていたあいつだったら…がむしゃらに修行を続けていたはずだ…)」


ソラ「(自分の現状を冷静に正しく認識して…今自分が何をすればいいか…その目的をちゃんと理解してる…)」


ソラ「(また強くなったな…ビート)」


ソラ「(お前の戦う理由はわからないが…もうお前はなれてるよ)」


ソラ「(ヒーローに…な…)」








その後、タイムパトロールたちは来たるべきトキトキ都奪還に向け、さらなる特訓に励んでいた


ビートが憎しみを捨てたことにより、彼らの結束はより強固なものになっていった


一方ソラたちも、ビートたちをさらなる高みへ上げるため、日夜研究に励んでいた


ソラが開発しているもの…それが完成した時こそ決戦の時…


絶望的な状況から好転し始めたタイムパトロールたち


しかしビートが帰還してから5日後


運命はビートにさらなる試練を与えることになる…






―――ミーティングルーム



時の界王神「ごめんね みんな修行中なのに呼び出したりして」


ゼン「いえ…それより本当なのですか?暗黒魔界からメッセージが届いたというのは」


時の界王神「ええ…亜空間を利用して送られてきたの」


フェン「…それで、どんな内容だったんです?」


時の界王神「…どうやらこれを送ってきたのは…ダーブラみたいなの」 


みんな「!!?」


ゼン「だ…ダーブラ!?」


フローズ「暗黒魔界の王か…この戦いも佳境ってわけだな」


カギュー「しかし…王が自ら…」


時の界王神「私も想定外だったわ…こんなに早くダーブラが戦いに乗り出してくるなんて…」


時の界王神「指定された日時と場所がここに書かれているわ…つまり…」


ビート「そこに来い…ってことか」


ワイル「でも…罠かもしれないわ」


フェン「…いや、逆にチャンスかもしれない」


ワイル「え?」


フローズ「…ダーブラを倒せば、暗黒魔界軍の統制をとる者はいなくなる」


時の界王神「その通りよ、後はドミグラたちだけになるわ」


時の界王神「暗黒魔界軍を壊滅させられるチャンスだわ」


時の界王神「(…でもミラが倒された今…次に動くのはダーブラじゃなくて彼女だと思ってた…)」


時の界王神「(暗黒魔界で何かあったのかしら…それとも…ビートが何か…?)」


時の界王神「(暗黒魔界から戻ってきたビートを見たとき…最初はビートじゃないかと思った…それだけ彼が変わっていたから…)」


時の界王神「(暗黒魔界でビートに何かあったとしか…)」



ゼン「…界王神さま?」


時の界王神「え?」


ゼン「どうかされましたか?」


時の界王神「…なんでもないわ」


ビート「それで…指定された日時はいつなんですか?」


時の界王神「…今から2時間後よ」


ゼン「に…2時間後…すぐじゃないですか!」


時の界王神「今から作戦を立てるわ」


時の界王神「まず…ダーブラと戦うメンバーなんだけど…」


ビート「オレが行く」


ゼン「ビートくん…」


ビート「心配しないで、もうあの時とは違うから」


ビート「今度こそ超サイヤ人ゴッドになってみせる…そのためにもダーブラと戦いたいんだ」


時の界王神「そう言うと思っていたわ」


時の界王神「ただ…罠だということも警戒して、時の広場にも戦力を残しておきたいの」


時の界王神「結界で厳重に守られてるとはいっても、彼らがドラゴンボールを奪いにくるかもしれないし…油断は出来ないわ」


時の界王神「だからビートの他にあと二人…出来るだけ少人数で構成したいの」 


フローズ「オレも行く…いや行かせてくれ」


カギュー「私も行きます」


ビート「フローズ…カギュー…」


時の界王神「…わかったわ」


時の界王神「何が起こるかわからないから、私もビートたちに同行するわ 他のみんなは時の広場で待機…いいわね?」


みんな「はい!」


時の界王神「じゃあ3人は2時間後にここに来て」


カギュー「わかりました」


フローズ「…了解だ」


ビート「…はい」


ビート「……………」









―――ビートの部屋



ビート「ダーブラか…今までの相手とはわけが違う…」


ビート「けど…負けるわけにはいかない…」


ビート「もう一度トワに会うために…」


ビート「(トワ…大丈夫だよね…?)」


ビート「(約束…守ってくれるよね…?)」


ビート「…トワ……」



コンコン ガチャ



カギュー「入りますよ、ビートくん」


ビート「カギュー、どうしたの?」


カギュー「いえ…フローズくんが『あいつはルーズだからもう呼びにいったほうがいい』と言っていたので」


ビート「フローズのやつ…」


ビート「じゃあ行こうか、カギュー」


カギュー「はい」


カギュー「…………」


ビート「…カギュー?どうかした?」


カギュー「いえ…なんでもありません」


カギュー「行きましょうか」









時の界王神「みんな集まったわね…準備はいい?」


ビート「はい!」


フローズ「問題ない」


カギュー「大丈夫です!」


ゼン「みなさん…気を付けてくださいね」


ワイル「必ず無事で帰ってきてね」


ワイル「こっちは僕達に任せて!」


ビート「みんな…」


ビート「(…ノート…見守っててくれ…)」


時の界王神「…じゃあ行くわよ」スッ…




ソラ「ま…待ってください!」ドタドタ


ビート「ソラ?」


時の界王神「どうしたの?」


ソラ「いえ、ビートに渡したいものが…」


時の界王神「じゃあ完成したのね!」


ソラ「ええ、まだ一個だけですが…」


ソラ「ビート、受け取れ」


ビート「これは…カプセル?」


ソラ「お前の力を引き出すものだ 言ったろ?ゴッドにしてやるって」


ビート「これが…」


ソラ「ただな…これを使ってもゴッドの力を使いこなせるとは限らない」


ソラ「ゴッドは神の力だ そう簡単に会得出来るものじゃない」


ソラ「お前が本当にゴッドになりたい…心からそう思ったときに使うんだ」


ソラ「そうすればお前は、必ず強くなれる」


ビート「ソラ…」


ビート「わかったよ ありがとうソラ」


ソラ「頑張れよ、ビート」


時の界王神「じゃあ…今度こそ行くわよ」



キィィィ…ン



――シュン










―――バトルフィールド・荒野




――シュン



時の界王神「着いたわよ」


カギュー「ここは…」


フローズ「ち…」


ビート「…………」



「逃げずによくここまで来たな」



ビート「!!」バッ



ダーブラ︰ゼノ「ふふふ…」


時の界王神「ダーブラ!」


ダーブラ「ネズミ3匹と、まさか時の界王神までいるとはな」


フローズ「…オレたちの知っているダーブラとは違うな」


カギュー「ええ…バビディのマークもありませんし…」


ダーブラ「さぁドラゴンボールを渡してもらおうか」


時の界王神「あいにくね、ドラゴンボールはここには無いわ」


時の界王神「(一応念のため四星球はカギューに持たせてあるけど…それを言うわけにはいかないわ)」


ダーブラ「ふふふ…そんなことだろうと思っていた」


ダーブラ「本当の狙いはサイヤ人…お前だ」


ビート「…なんだと?」


ダーブラ「貴様さえ殺せば、暗黒魔界のゲートを塞げる存在はいなくなる」


ダーブラ「死んでもらうぞ…サイヤ人」


ビート「………」


カギュー「…やはりビートくんを付け狙ったのはそういうことだったのか…」


フローズ「…そう簡単にはやられないぞ…ビートは」


ビート「フローズ…」


ビート「時の界王神さま、オレ行きます」


時の界王神「…わかったわ けど…絶対に死んじゃだめよ」


ビート「…わかってます」


ビート「フローズ、カギュー 界王神さまを頼む」


カギュー「わかりました…ビートくん」


フローズ「すぐに片付けてこいよ」


ビート「ああ!」




バッ スタッ



ビート「………」


ダーブラ「ふふふ…ザコが…」


ビート「…ザコかどうか…試してみろよ」


ダーブラ「…威勢だけはいいようだな」


ダーブラ「…サイヤ人め」


ビート「…オレには約束を誓った人がいる…そのためにもダーブラ、お前はオレが倒す」


ダーブラ「…何か勘違いしているようだな」


ダーブラ「貴様の相手は私ではない」


ビート「…なんだと?」


ダーブラ「ふふふ…お楽しみはこれからだ」


ダーブラ「さぁ…出て来るがいい」




「はい」



ザッザッザッ…




ビート「…え…?」












暗黒トワ「…………」ザッ…



ビート「…ト…ワ……?」



暗黒トワ「…フフ…」



シュン



ドゴオッ



ビート「ぐはっ!!」



時の界王神「!!」


カギュー「び…ビートくん!!」


フローズ「なんだ…あいつは…!」




ダーブラ「ふふふ…さぁトワよ このサイヤ人を血祭りにあげてやれ」


暗黒トワ「はい、お兄様」


暗黒トワ「…………」ザッザッザッ…


ビート「ぐ…」ヨロッ…


ビート「(どういうことなんだ…?)」


ビート「(髪型や服装は変わっているけど間違いない…トワだ…)」


ビート「トワ…!オレだ、ビートだ!」


暗黒トワ「…知ってるわよ」


ヒュッ


ドゴオッ


ビート「ぐはあっ!!」


ビート「げほっ…げほっ…」ガクッ


暗黒トワ「ちゃんと覚えてるわよ、ビート」


暗黒トワ「私のことを優しい人…あなたはそう言ってくれた」


暗黒トワ「だから…すぐに終わらせてあげるわ」ブゥ…ン


ビート「…!?」


暗黒トワ「はあっ!!」


ビート「ぐ…!」



ド ォ ー ン




カギュー「うわっ!!」


フローズ「く…くそ…!」


時の界王神「っ!ビート!」





ビート「が…あ…」


暗黒トワ「………」ザッザッ…


ビート「トワ…どうしちゃったんだよ…」


暗黒トワ「あら、私はいたって普通よ」


ビート「違う!そんなことするなんてトワじゃないよ!」


暗黒トワ「私は今幸せよ…あなたは嬉しくないの?」


ビート「し…幸せ…?」


ビート「な…なにがあったんだよ…トワ!」


暗黒トワ「…気付いたのよ 自分のすべきことを」


ビート「…え?」


暗黒トワ「私はお兄様のおかげで生まれ変わったの」


ダーブラ「ふふふ…」


ビート「キサマ…トワに何をした…!」


ダーブラ「暗黒魔界には高度な科学力を持った戦力が必要だった… そのために私はトワの心に暗黒の力と憎しみを与えた」


ダーブラ「その結果、トワは生まれ変わったのだ」


ビート「っ!トワを洗脳したってことか!?」


ダーブラ「違うな…元の姿に戻しただけだ」


ダーブラ「憎しみに支配された我が妹…トワに…」


暗黒トワ「…そういうことよ」


ビート「そ…そんな…そんな…」


ビート「約束したじゃないか…トワ…」


暗黒トワ「あら、約束は守ったでしょ?こうして会えてるじゃない」


ビート「違う!オレが会いたかったのは、あの時の優しいトワだ!」


暗黒トワ「…あの時の私はどうかしていたんだわ これが私の本当になりたかった姿なの」


暗黒トワ「憎しみに支配された…この心が…」



ヒュッ ドゴオッ



ビート「ぐはっ…」


ビート「ぐ…トワ…」




フローズ「…あいつ、なんで戦わないんだ…?相手が女だからなのか?それとも…」


カギュー「!!」ハッ


カギュー「(思い出した…あの女性の声…あの時の…!)」


カギュー「(ビートくんと話した夢を見たときに聞こえた声と同じだ…!)」


カギュー「界王神さま…あの女性はいったい…?」


時の界王神「彼女はトワ…暗黒魔界の科学者で…ダーブラの妹よ」


フローズ「科学者…それにダーブラの妹だと?」


時の界王神「ミラを造ったのは彼女よ トワはキリと呼ばれるエネルギーをミラに注いで、ミラを最強の戦士にしようと画策したの」


時の界王神「おそらくあの姿は暗黒の力によるものね とても邪悪な気を感じるわ…」


フローズ「だったら敵のはずだろ、どうして攻撃しないんだ…ビート…!」


時の界王神「(…トワ…)」







暗黒トワ「ほらどうしたの?攻撃しなさいよ」


暗黒トワ「このまま死ぬつもりなの?」


ビート「ぐ…攻撃なんてしてたまるか…」ヨロッ…


ビート「トワ…思い出してよ…あの時のことを」


暗黒トワ「…………」


ビート「オレは大切なトワに攻撃なんかしない だから優しいトワに戻ってよ…」


暗黒トワ「…ビート…」









ドゴオッ



ビート「!! ぐああっ!!!」



暗黒トワ「甘いわね」



ビート「がは…」



暗黒トワ「今あなたが相手にしているのは、暗黒魔界の戦士なのよ!!」


暗黒トワ「はあああっ!」ブゥゥ…ン



ドドドドドドド



ビート「ぐっ…!」


暗黒トワ「逃がさないわ!」ヒュッ


ビート「!!」


ドウッ


ビート「ぐあああっ!!」



ド ゴ ー ン





ダーブラ「ふふふ…それでいい…トワ」


ダーブラ「長い時の中で憎しみに支配された心…それこそがお前の本来の姿なのだ」


ダーブラ「(お前が歴史改変から手を引くと言い出したときは驚いたが…)」


ダーブラ「(殺すには惜しい戦力だ…お前には裏切った分働いてもらわなくてはな…)」





時の界王神「(私は…ひょっとしたらトワは悪い存在じゃないのかもしれないと以前から思ってた…)」


時の界王神「(憎しみに支配されているだけで…本来は優しい人物だと…)」


時の界王神「(ビートが攻撃しないのは…トワと何かあったからなの…?)」


時の界王神「(…もしかして…ビートを憎しみから解放したのは…トワ…あなたなの?)」


時の界王神「(もしそうだとしたら…)」






ビート「ぐ…」


暗黒トワ「さぁ早く超サイヤ人になりなさいよ 2でも3でもゴッドでも」


ビート「トワは敵じゃない…そんなことのためにオレの力は使わない…」


暗黒トワ「くどいわね…」


ビート「オレのこの力は何かを守るためにしか使わない…そう思い出させてくれたのはトワじゃないか」


暗黒トワ「………」


ヒュッ バキイッ


ビート「ぐわっ!!」


暗黒トワ「…だったら仲間を守るためにその力で私を殺してみればいいわ」


ビート「ぐ…そんなことするか…!」


ビート「オレが今一番守りたいのは…トワなんだ!」


暗黒トワ「…敵である私のために…仲間を見殺しにするって言うの?」


ビート「目の前の一人も守れなくて、仲間みんなを守ることなんてできない!」


ビート「逆に仲間を守るためにトワを殺していい理由になんかならない!」


ビート「オレはあの時そう決めたんだ!!」


暗黒トワ「…タイムパトロールが聞いて呆れるわね…」


暗黒トワ「あなたの仲間に同情するわ…あなたみたいに甘さを捨てきれない戦士が、世界を救うために必要なんて…ね」



バキイッ



ビート「ぐあっ!!」



ビート「…ぐ…トワ…」



暗黒トワ「…つまらないわね 少し早いけど終わらせてあげるわ」



ビート「…嘘付き…」



ビート「大切な人の約束を破って…本当に平気なのかよ…トワ…」



暗黒トワ「………」



―――

――




ダーブラ『…これは…どういうことだ!トワ!』


トワ『…お兄様』


トワ『これをやったのは全て私です』


ダーブラ『な…なんだと…?』


トワ『お兄様…私はもう…歴史改変から手を引きたいと思います』


トワ『私は気付いていたのに…罪を犯し続けた… だから償いたいのです』


ダーブラ『…本気で言っているのか…?トワ』


トワ『はい…お兄様』


ダーブラ『いくら我が妹と言っても、流石にこの事態を見逃すわけにはいかない お前には処分を受けてもらうぞ』


トワ『…承知の上です』


ダーブラ『……………』


ダーブラ『…ならば…着いてくるがいい…』


トワ『はい…』


トワ『(…さようなら…ビート…)』






ダーブラ『…気分はどうだ…トワよ』


暗黒トワ『ええ…とても良い気分です 本来の私に戻れた気がします』


ダーブラ『ふふふ…トワよ 暗黒魔界の復活のため尽力してもらうぞ』


暗黒トワ『もちろんですわ、お兄様』


暗黒トワ『…これこそが私の成すべきことなのですから…』






――

―――




暗黒トワ「(…これでよかったのよ…)」


暗黒トワ「(私とあなたは違う世界の人間…だから幸せにはなれない…)」


暗黒トワ「(あなたが私を想ってくれる気持ち…それは私に向けるべきものじゃない)」


暗黒トワ「(私には決して向けられてはいけないものだから…)」


暗黒トワ「…………」


暗黒トワ「…これで終わりよ」



そう言うとトワはビートに向けて拳を放った






―――ガシッ






暗黒トワ「!?」


ビート「………」ググッ…


ビート「…あの時もこうやってオレの手を握ってくれたよね…」


ビート「…それだけじゃない」


ビート「頭を撫でてくれたり…」


ビート「抱きしめてくれたり…」


ビート「キスしてくれたり…」



暗黒トワ「は…離しなさい…!」




ビート「トワにとってはそれだけのことかもしれないけど…」


ビート「たったそれだけのことで…オレは救われたんだ」


ビート「オレにとっては一生忘れられない…かけがえのないものなんだ…」


ビート「トワが死んだら…その瞬間から何もかも思い出に変わっちゃうんだ!」


ビート「そんなのオレは嫌なんだよ!!!」



暗黒トワ「…ぐっ…!」バッ



暗黒トワ「はぁ…はぁ…」



ダーブラ「トワ! 何をしてる!早くとどめを刺せ!」



暗黒トワ「…はい…お兄様…」



暗黒トワ「優しさを持った私が本当の私だと思っているのなら…後悔するわよ…」


ビート「…それでも構わない」


ビート「いつからだって…人はやり直せる!」


暗黒トワ「やり直せるですって…?」


暗黒トワ「私は…今のままが幸せなのよ!!」



ドゴオッ



ビート「ぐはっ!!」




フローズ「く…くそ!ビート!」


カギュー「待ってくださいフローズくん!」


カギュー「ここは…ビートくんを信じましょう」


カギュー「ビートくんが再び私たちを信じてくれたように…私たちもビートくんを信じるんです」


フローズ「信じる…ビートを…」


フローズ「…わかった」


時の界王神「フローズ…」


時の界王神「(…トワがビートを助けたのなら…トワを助けられるのはビートしかいないわ…)」


時の界王神「(ビート…トワを…助けてあげて…)」




暗黒トワ「いくらあなたが私のことを優しいと思っていても! それはあなたの願望でしかないの!」


暗黒トワ「私は憎しみの心で…あなたを倒す!」


ビート「ぐ…なら…オレは…優しさでトワを助けてやる!!」


ビート「うああああーっ!!」



暗黒トワ「終わりよ!!」バッ



グオオオオオ



ビート「!!!」



暗黒トワ「マイナスキリゾーン!!!」




ド ド ド ド ド




ビート「うわああああああ!!!!」




ド ド ド ー … ン





時の界王神「ビート!!!」




暗黒トワ「はぁ…はぁ…」



ビート「ぐ…うっ…」



暗黒トワ「ど、どう!?これが私の本当の姿なのよ!?」


暗黒トワ「憎しみに支配された心…それこそが私の求めていたものなの!!」




ビート「…嘘だ」



暗黒トワ「!?」



ビート「そんなの…絶対に嘘だ」



暗黒トワ「っ! まだわからないの!?」



暗黒トワ「私は今の姿が一番幸せなのよ!!」



ビート「…だったら…なんで…」












ビート「なんで泣いてるんだよ…トワ…」






暗黒トワ「…え…?」ツー









ダーブラ「…泣いているだと?」



時の界王神「(…トワ…)」




ビート「それは…トワが苦しんでるからだ」


ビート「大会な人を傷付ける…その行為に心が耐えられないからだよ」


ビート「耐えられないくらい…トワが優しいっていう証拠なんだ」


暗黒トワ「だ…黙りなさい…」


ビート「そんなトワが…オレも…大切なんだ」


暗黒トワ「っ…」




ビート「トワの優しい心が…いつだってオレを暖めてくれた」


ビート「トワが…オレを助けてくれたから…」


ビート「今度はオレがトワを助ける番なんだ!!」


ビート「トワがくれた優しさを…今度はオレがトワに返す!!」


ビート「もう二度と…大切な人を失うわけにはいかない!!!」


ビート「もう二度と…トワに悲しい思いはさせない!!!」


暗黒トワ「ぅ…っ…」ポロポロ


暗黒トワ「…ビート…」ポロポロ



ビート「トワ…」



ビート「…信じてくれ」



暗黒トワ「…ビート…助けて…」



暗黒トワ「助けて…!」



涙を流しながら、こちらにすがるように出たトワの手を、ビートは強くそして優しく掴む



ビート「…トワ…!」ギュッ



暗黒トワ「ビート…」



ビート「必ず…助ける!!」



ビート「オレはこの手を…決して離さない!!」ギュッ



シュアアアア…



トワ「……ビート…」



ビート「トワ…!」




カギュー「姿が…変わった?」


時の界王神「違うわ…あれが本来のトワの姿なの」


時の界王神「優しさを持った彼女の心そのもの…」


時の界王神「(…それがあなたの本当に望んだ姿なのね…トワ…)」






ダーブラ「ば…馬鹿な…! 暗黒の力を浄化しただと…!?」



ダーブラ「くそ…サイヤ人め…!!」






ビート「トワ…よかった…」


トワ「ごめんなさい…私…あなたにひどいことを…」


ビート「いいんだ…悪いのはトワじゃない…憎しみの心なんだ」


ビート「オレも…あの時トワの優しさを傷付けた…」


ビート「でもトワはあきらめずにオレを助けようとしてくれた」


ビート「だからオレも…必ず助けるって決めたんだ 何があっても…」


トワ「…ビート…」


トワ「…ありがとう」






時の界王神「(ビートのサイヤパワーが暗黒の力を浄化したのね…でもそれだけじゃない)」


時の界王神「(ビートの大切なものを守りたいと思う心…それこそがビートが変わった理由だったんだわ)」






トワ「…ビート…お願いがあるの…」





トワ「お兄様を…憎しみから解放してあげて…」



ビート「…!」



トワ「お兄様も…ミラと同じで…闇の中をさまよってる…」


トワ「だから…助けてあげて…」


ビート「…本当にいいの?」


ビート「それってダーブラを…」


トワ「……………」


トワ「…私…暗黒魔界を復活させるためだったらなんでもするって…本気でそう思ってた…」


トワ「お兄様が正しいって…ずっと信じたかった…」


トワ「でもそれは…お兄様に嫌われたくなかったからなの」


トワ「一人になるのが…怖かったからなの」


トワ「でも…」


トワ「これ以上お兄様に苦しんで欲しくないわ…」


トワ「だから…」



ビート「…わかったよ」



トワ「ビート…ありがとう…」



最後にそう呟くと、トワは気を失った



ビート「…トワ」



時の界王神「ビート!」シャッ



ビート「界王神さま…」



時の界王神「トワは私に任せて…あなたはダーブラを…!」


ビート「…トワをお願いします、界王神さま」


時の界王神「わかったわ」



ビート「…………」バッ




時の界王神「…トワ…」ギュッ







ダーブラ「ち…トワのやつ…」



ビート「………」スタッ


ダーブラ「…サイヤ人よ…貴様はことごとく私の邪魔をしてくれるな…」


ビート「…お前を倒す」


ダーブラ「…ザコが」



ビート「………」スッ…



ビート「(今なら…)」




ビート「(…今ならなれる)」





ビート「(大切な人を守りたいと…心から思えている今なら!!!)」





カチッ




―――カッ




カギュー「っ!?」



フローズ「な…なんだ!?」




シュアアアア…




超サイヤ人ゴッドビート「…………」シュウウウ…







ダーブラ「な…なんだと!?」



カギュー「ビートくんの…色が…!」


フローズ「それに…格好も違っている…あれはいったい…」


時の界王神「」シャッ


カギュー「界王神さま!」


フローズ「そいつは…!」


時の界王神「色々と聞きたいことがあるでしょうけど、今は戦いに集中して」


カギュー「界王神さま、ビートくんのあの姿はいったい…」


時の界王神「あの赤髪の姿…あれこそが超サイヤ人ゴッドよ」


フローズ「あれが…超サイヤ人ゴッド…」


時の界王神「ビートの気が感じられないでしょ?あれこそ神の気を纏った証拠なの」


時の界王神「そしてもう一つ…ソラたちが開発を進めていたもの…」


時の界王神「それがゴッドクラスアップなの」


カギュー「ゴッドクラスアップ!?超クラスアップよりさらに上の進化が存在したって言うんですか?」


時の界王神「進化の度合いは超クラスアップの比じゃない 神にも等しい力を手に入れられる…神化なのよ」


時の界王神「だからこそ開発するのに今までかかってしまったんだけどね…」


フローズ「さらに上の力があるということか…」


時の界王神「トキトキ都での決戦の時までに、あなたたちもゴッドクラスアップしてもらわないといけないわ」


時の界王神「そのためにも、神の力に見合う実力をつけてもらわないとね」


フローズ「オレたちはまだなれない…のか…」


フローズ「…ビート…」


フローズ「やっぱりお前はすごいやつだよ…」


カギュー「…ビートくん…」








SSGビート「(これがゴッドクラスアップ…みなぎる力が今までの比じゃない…)」


SSGビート「(この力でオレは…世界を救ってみせる…)」


SSGビート「(大切なものを…守ってみせる!!!)」


SSGビート「…………」ザッ…


ダーブラ「…生意気ながきだ…すっかりそのつもりか…」スッ…


SSGビート「…………」


SSGビート「いくぞ」



ドンッ



ダーブラ「なっ!?」


SSGビート「こっちだ」


バキイッ


ダーブラ「ぐあっ!!」


ダーブラ「ぐぅ…」



フローズ「!!」



カギュー「速い…!!」



ダーブラ「ち…この暗黒魔界の王を本気にさせたいようだな…」


ダーブラ「」ブンッ


ダーブラ「さぁこの剣で貴様を斬り刻むとしよう…」チャキッ


SSGビート「………こいよ」


ダーブラ「………だああっ!!」



ドンッ



SSGビート「…はあっ!!」グワッ



スカッ…



SSGビート「…!?」



カギュー「ざ…残像!!」



ダーブラ「もらった!!」シャッ


フローズ「!! ビート!!」


SSGビート「…………」





ガキイッ




ダーブラ「な!?」


SSGビート「………」ググ…


SSGビート「…はっ!!」


グシャ


ダーブラ「ば…馬鹿な…私の剣を…」


ダーブラ「き…貴様…いったい…」



SSGビート「………」スッ…


SSGビート「…お前みたいなひどいやつでも…トワにはたった一人の兄さんだった…」


SSGビート「…お前に…嫌われたくなかったんだよ トワは…」


ダーブラ「…!」


SSGビート「それだけあんたを大切に思っていたんだ」


SSGビート「…だから…今度はやり直してくれよ ミラと一緒に…」


SSGビート「…それが…トワの願いだから…」



ダーブラ「…!!」




ド ウ ン ッ  



ダーブラ「(…トワ…)」


ダーブラ「(お前はいつも私に従順だった…それは私に嫌われたくなかったからだったのか…)」


ダーブラ「(思えば初めてだな…お前が私に逆らったのは…)」


ダーブラ「(それは反逆などではなく…お前の成長だったというわけか…)」


ダーブラ「(…お前が始めた兄妹喧嘩…)」


ダーブラ「(私には最期までお前と同じ考えにはなれなかったが…)」


ダーブラ「(これからはお前の道を行くがいい…トワ…)」


ダーブラ「(今度は誰かの顔色をうかがうのではなく…自分自身の意志で…な…)」




ド ド ー … ン





ゴオオオオオオ…




カギュー「や…やった…!」


カギュー「ビートくんが…ダーブラに勝った!」


フローズ「…ビート…やったな」


時の界王神「ビート…」






ビート「…………」フッ…




ビート「(終わったよ…トワ)」


ビート「(…トワの想いは…きっとダーブラにも伝わってるよ)」


ビート「(だから…安心して…)」







フローズ「…ダーブラを倒したはいいが…こいつはどうする?」


時の界王神「……………」


フローズ「やはりローラと同じく結界で厳重に封じ込めるべきじゃないか?」


フローズ「暗黒魔界の科学者なんだからな」


カギュー「しかし…洗脳されていたのなら悪い人とは言い切れないのではありませんか…?」


カギュー「(…それに…気になることもある…)」


時の界王神「…フローズの言うことも一理あるわね」


カギュー「界王神さま…」


時の界王神「確かに言い切れないかもしれないけど…それを確証できるとも言い切れないのよ」


時の界王神「(…私もトワのことを信じてあげたい…でも時の管理者である私が私情で動くことは許されないわ…)」


時の界王神「(フローズの言う通り…彼女が暗黒魔界の人間である事実は変わらない…でも…)」


時の界王神「(……トワ…)」


時の界王神「……………」



バッ スタッ



ビート「…待ってくれ」


フローズ「…ビート」


カギュー「ビートくん…」



時の界王神「(ビート…)」



ビート「…カギュー」



ビート「聞きたいことがあるんだ―――」



























ずっと…悪い夢を見ていたような気がした



暗闇の中をずっと一人でさまよっている…そんな夢だった



けど誰かが自分の手を引いて明るいところへと連れ出してくれる



その手はとても温かい とても温かくてとても優しいものだった



苦しんでいた自分を、孤独だった自分を、優しいぬくもりで温めてくれた



その人の顔は何故か自分からは見えない



ただ手のぬくもりだけが、その人が誰なのかを伝えてくれたような気がした



この手のぬくもりは覚えている



自分が辛かったとき、哀しかったとき、寂しかったとき



いつだって自分を助けてくれた



側にいてくれた



優しくなれた



顔は見えないし声も聞こえなかったけれども、助けてくれたのが誰なのか確信できた



それはきっと…










トワ「…………」



トワ「…ここは…」



時の界王神「気が付いたみたいね」



トワ「…あなたは…」


トワ「時の界王神…さま」


時の界王神「…あなたにそう呼ばれるのはなんだか調子が狂うわね…」


時の界王神「私の名前はクロノア そう呼んで」


トワ「…ここは?」


時の界王神「ここは時の広場よ あれから2日間、あなたは気を失ったままだったの」


時の界王神「暗黒の力に体力を奪われていて、危険な状態だったけど…無事に目が覚めたみたいでよかったわ」


トワ「どうして…?」


時の界王神「…そこに寝ている彼のおかげよ」


トワ「…え?」チラッ





ビート「………」スゥ…スゥ…



トワ「! ビート…!」


時の界王神「ビートがあなたに自分の気を与え続けていたの 2日間一睡もせずにずっと…ね」


トワ「ビートが…?」


トワ「(また私を…助けてくれたの…?)」


時の界王神「トワは自分が助ける…そう言ってあなたの側を離れようとしなかったわ」


トワ「…………」


時の界王神「……トワ…?」


トワ「私は…ビートを傷付けたのに…」


トワ「どうして…」


時の界王神「…ビートはそうは思ってないわ」


時の界王神「あの時…」






フローズ『…じゃあこの人がビートとカギューの心を繫いでビートを説得させたってことか?』


ビート『うん…多分ね』


カギュー『…やはりあれは夢ではなかったんですね…ビートくん』


時の界王神『…トワがあなたのことを助けてくれたのね…』


ビート『…はい』


ビート『それはトワが…優しい心を持っているからです 誰よりも憎しみの恐ろしさを知っているから…』


ビート『確かに暗黒魔界の科学者だし…何かよくないことが起こるかもしれないけど…』


ビート『本当は優しくて…大人に見えるけど寂しがりやで傷付きやすくて…』


ビート『でもここまで優しさを持って接してくれたトワなら、オレはそれだけで信じられます!!』


ビート『トワがオレのことを信じてくれたように!!』






時の界王神「…そう言ってあなたのこと…必死で庇ってくれたの」


トワ「…ビート…」


トワ「……ねぇ…」


トワ「……こんな私でも…やり直せるの…?」


時の界王神「…………」





時の界王神「もうやり直せてるんじゃない?」



トワ「え…?」




時の界王神「変わろうと思ったところで、それはもう変われているものじゃないの?」


時の界王神「それに…あなたのところから戻ってきたビートを見ればわかるわ」


時の界王神「あなたが助けてくれたんでしょ? ビートのこと」


トワ「…助けたって言うか…見てられなかったから…」


時の界王神「…私もそうだったわ」


時の界王神「…私も…憎しみに支配されたビートを助けてあげたかった…」


時の界王神「とても…苦しいことだって知ってたから」


時の界王神「だからあなたがビートのことを助けてくれたって聞いて、私はすごく嬉しかったの」


時の界王神「でも私は…あなたのことも助けたかった…」


トワ「……!」


時の界王神「長い時の中で…憎しみに支配されてしまったあなたを…助けてあげたいって、ずっとそう思ってたの」


時の界王神「でもあなたは自分で過ちに気付いて、ビートを憎しみから解放してくれた それはあなたがやり直せてる証拠でしょ?」


時の界王神「優しさを取り戻したあなたに…もう憎しみを持ってほしくないの」


トワ「…私を助けたこと…いつか後悔するかもしれないのに…?」


時の界王神「私は…あなたのことを信じるわ」


時の界王神「界王神だからとかじゃない 私があなたを信じたいの」


時の界王神「それじゃダメなの?」



トワ「…………」


トワ「………私も…」


トワ「…私も……信じたい」


時の界王神「!」


トワ「ビートのことも…あなたのことも…」


時の界王神「そう…」


時の界王神「これからよろしくね、トワ」


トワ「…ええ」



時の界王神「…じゃあ私は戻るわね あとであなたの着替えと部屋を用意しておくから」


トワ「その…ごめんなさい…何から何までお世話になって…」


時の界王神「…そういうときは『ありがとう』って言うのよ」


トワ「…!」


時の界王神「ね?」


トワ「…ありがとう…クロノア」


時の界王神「どういたしまして!」ニコッ



ガチャ ―――バタン




トワ「…………」


ビート「…………」スゥ…スゥ…


トワ「…私のこと…信じてくれてたのね」


トワ「約束を破ろうとした私を…」


ベッドの端で突っ伏しながら寝ているビートの頭を少しだけ撫でる あの時のように


トワ「…………」ナデナデ


ビート「………ん…」


トワ「………ビート…」ナデナデ


ビートが自分に気を与え続けてくれたおかげで、体は特に異常もないようなのでベッドから起き上がる


そしてビートが風邪を引かないようベッドへと寝かせてあげた


ビート「…………」


トワ「…………」


ビートが自分を洗脳から解放してくれたときのことを思い出す


あの時の手のぬくもり…夢で感じたものと同じぬくもりだった


トワ「…やっぱり…あなただったのね…」


トワは寝ているビートの顔を見つめながら、自分の手を胸へと置き、問うようにしてあることを考え始めた


トワ「(…あなたにはずっと…この感情は抱か

ないって決めてた…)」


トワ「(私には決して許されるものではないし…それに…)」


トワ「(…死ぬのが怖くなるから…)」


トワ「(でも私は…もう自分にだけは嘘を付きたくない…)」


トワ「(仕方ない…そう思って自分に嘘を付き続ける…そんな生き方はもうしたくない…)」


トワ「(だから…)」


トワはベッドに近づくと寝ているビートの額にキスを落とした そして







トワ「…好きよ、ビート …おやすみなさい…」







静かにそう呟き、部屋を後にした




ガチャ  ―――バタン




ビート「…………」



ビート「…………」



ビート「…………」ムクッ



ビート「……トワ…」








トワ「………」スタスタ


トワ「…ここね」


ガチャ


時の界王神「待ってたわよ ビートは?」


トワ「…寝かせてあるわ」


時の界王神「そう…」


時の界王神「…どうしたの?顔が赤いわよ」


トワ「…気のせいよ」


ももちゃん「…………」


トワ「…そちらの女性は?」


時の界王神「そうそう、紹介しようと思ったの バトルナビゲーターのももちゃんよ」


ももちゃん「よ…よろしくお願いします」


ももちゃん「(話には聞いてたけど、すごい美人…!)」


時の界王神「そんなに固くならなくていいわよ」


トワ「そうよ…むしろ私のほうがそうすべきだわ」


トワ「お世話になるわ よろしくね」


ももちゃん「え…ええ、よろしく…」


時の界王神「彼女は背丈もあなたに近いし…とりあえず彼女の服を使ってもらおうと思ったの」


時の界王神「何着かあるから、とりあえず着てみて」


トワ「わかったわ」


ももちゃん「(こんな美人の人が私の服を着るの!?)」ドキドキ







ももちゃん「…どう?」


トワ「…丈やサイズは問題ないけれど…やっぱり胸がすこしきついわ…」


ももちゃん「そう…」


ももちゃん「(美人でスタイルもいいなんて反則よ…)」ズーン


時の界王神「もう、何なのその胸!水風船でも詰めてるの!?」


時の界王神「あなたばっかりずるいわよ!私だってもっとグラマーな美女になりたかったわよ!」


トワ「…あなたは7500万年経ってもほとんど変わらない若さがあるからいいでしょ…」


時の界王神「きーっ!何よそれ!」


ももちゃん「ま、まあまあ」


ももちゃん「仕方ないから胸のところは私が直しますよ」


トワ「そんなの悪いわ あなたの服なのに」


ももちゃん「いえ、これくらい任せてください」


トワ「…ありがとう」


時の界王神「ありがとね、ももちゃん」


時の界王神「あーあ、結界を張るのにエネルギーさえ取られなければ、私が服を作ってあげられるのになー」


トワ「…それは遠慮したいわね」


時の界王神「なによー」


トワ「…ふふ」


ももちゃん「(不思議な関係ね…この二人…)」









ビート「…好きって……」


ビート「(…トワが…オレのことを…?)」


ビート「……トワ…」



ガチャ



フローズ「よう」


カギュー「起きてたんですか、ビートくん」


ビート「フローズ、カギュー」


フローズ「どうやら体は大丈夫なようだな」


ビート「うん…」


フローズ「超サイヤ人ゴッドか…気は感じられなかったが、すごいパワーだった」


フローズ「オレたちも早くゴッドクラスアップできるよう修行しないとな」


ビート「ああ みんなでなって…世界を救うんだ」


ビート「世界を救うのはオレたち…」


フローズ「ドラゴンボールヒーローズ」


カギュー「…ですよね」


ビート「ああ…!」


ビート「早く強くなって、みんなで行こう …トキトキ都へ」









その後、ゴッドクラスアップカプセルの量産化に成功したソラたちは、タイムパトロール達の大幅な戦力増加に貢献した



修行を重ねたフローズたちも次々とゴッドクラスアップの力を手に入れることができ、実力を高めていった



一方時の界王神は来たるべきトキトキ都奪還に向けての準備を着々と進めていた



トキトキ都奪還が現実味を増してきたころ、ゲートを塞ぐことを期待されているビートはある特別な力を手に入れた






ソラ「…どうだ?ビート」


ビート「す…すごい威力だ…」


ソラ「そうだろ?だがこれはパワーを溜める分時間がかかる 素早く撃てるように修行を重ねるんだ」


ビート「うん、わかった」


ビート「よーし…もう一回だ」


ソラ「(まさかもうこの力を使えるようになるとはな…)」


ソラ「(まったくこいつの成長速度には驚かされるばっかりだな…)」








―――ミーティングルーム



時の界王神「そう…ビートはあの力をものにし始めたのね」


ソラ「ええ、彼らが修行を終えるのと我々の開発した機器の導入を含め、おそらく2週間ほどで準備が完了するでしょう」


時の界王神「迅速に動いてくれて助かるわ」


時の界王神「でも…トキトキ都で何が待ってるか…私にも想像がつかないわ」


ソラ「暗黒魔界が壊滅した今…おそらくシャメルたちではないでしょうか」


時の界王神「トワの話を聞く限り、彼らは暗黒魔界とは別勢力のようだから、そうかもしれないわね」


時の界王神「(あと気になるのは…ドミグラのこと…)」


時の界王神「(ドミグラがどこまで力を高めているのか…それによってこの戦いは大きく変わるわ…)」


時の界王神「(頼んだわよ…みんな…)」









―――精神と時の間




カギュー「一旦休憩にしましょうか」


ビート「ふぅ…」


フェン「はぁ…はぁ…」


ワイル「大丈夫?フェン」


フェン「…ようやくこの力を手に入れられたんだ これくらい平気さ」


ゼン「この力があれば勝てるでしょうか?」


フローズ「それはわからないが…オレたちに失敗は許されない」


フローズ「オレたちが負ければ…世界は終わりだ」


フローズ「だがそんなことは絶対にさせない それがオレたちタイムパトロールであり――」


フローズ「ドラゴンボールヒーローズだからな」


ゼン「ドラゴンボールヒーローズ…あの時もそうでしたね」


ゼン「私たちで…世界を救いましょう」


ワイル「ええ!」


フェン「必ず勝とう!」


ビート「みんな…」


フェン「そして…ドラゴンボールで殺された仲間を生き返らせるんだ」


ビート「…!」


フローズ「そうか…ドラゴンボールでノートたちやゼンたちの仲間を生き返らせるのか」


フェン「うん…ビートたちも元の世界に帰れるようになる」


ゼン「そのためにもこの戦い…負けるわけにはいきませんね!」


フローズ「ああ…その通りだ」


ビート「……………」








ビート「…………」スタスタ


ビート「(…ドラゴンボールで生き返らせられるのは一人だけ…)」


ビート「(とてもじゃないけど言えないよ…そんなこと…)」


ビート「(ノートのこと…生き返らせてあげたいけど…でも…)」



トワ「…ビート?」


ビート「…はぁ…」


トワ「ため息なんてついてどうしたの?」


ビート「トワ…」


トワ「修行の帰りでしょ?」


ビート「うん」


トワ「ゲートを塞ぐ作戦、うまくいってるってクロノアから聞いたわ」


ビート「うん…あともう少しで修行も終わるんだ 早くしないといつシャメルたちが攻めてくるかわからないからさ」


トワ「そう…」


トワ「その戦いに勝てたら…あなたの大切な人を生き返らせてあげられるわね」


トワ「ノートって子…生き返らせてあげたいんでしょ?」


ビート「…うん」


ビート「(なんだかトワと話すのが緊張する…)」


ビート「(好きって…言われたからかな…)」


ビート「(………………)」



トワ「…ずっとこっちを見てどうしたのよ?私の顔に何か付いてるの?」


ビート「…え? いや、なんでもないよ」


ビート「ちょっと疲れてるみたい」


トワ「…なら早く休んだほうがいいわ」


ビート「…そうするよ」


トワ「それじゃあ…おやすみなさい」


ビート「うん…おやすみ…」


ビート「……………」







―――ミーティングルーム



ソラ「あれからビートたちは無事修行を終えたようです」



時の界王神「そう、あなた達はどう?」



ソラ「我々バトルナビゲーターも準備は完了しています」



時の界王神「それじゃあ、今日で全ての準備が整ったわね」



時の界王神「トキトキ都奪還は明後日に決行するわ」



ソラ「わかりました」



時の界王神「今日は彼らをゆっくり休ませてあげてね」



ソラ「はい…」



ソラ「(…もしかしたらこれがビートたちの最後の想い出になるかもしれない…)」



ソラ「(せめて戦いの前くらい…年相応のことをさせてやらないとな…)」




―――夜



フェン「す…すごいごちそう…」


ビート「これ…ソラたちが作ったの?」


ソラ「ああそうだ、英気を養うには美味しいものを食うのが一番だろ?」


ももちゃん「今だけは戦いのことを忘れて楽しみましょう」


よしとくん「それじゃあトキトキ都奪還に向けて乾杯しようか!」


ツバサ「戦いのことを忘れろって言ったばかりだろ…」


よしとくん「あ…そっか」


ワイル「ふふっ…」


フェン「なんか…久しぶりだね こんなに楽しいの」


ワイル「トキトキ都を奪還できたら…またみんなで楽しく笑えるようになるの…?」


ゼン「…なれるよ」


ゼン「だから…必ず勝つんだ」


ゼン「あの時から始まったこの戦いに…」



カギュー「じゃあいただきましょうか」


ビート「そうだね」


フローズ「」パクッ


フローズ「…うまい」


ワイル「私も…」パクッ


ワイル「お、おいしい!」


フェン「とてもおいしいです」


ももちゃん「そう、よかったわ」


ソラ「いっぱいあるからな、どんどん食えよ!」





トワ「…みんな楽しそうね」


時の界王神「…あれが本来あるべき光景よ みんなまだ子供なのに…辛い経験をしてきたから…」


時の界王神「せめて今だけは…」


トワ「…そうね」


時の界王神「私たちも食べましょう おいしいのよ、ソラたちの料理」


トワ「ええ」






フェン「おいしいな、このたこ焼きって料理」モグモグ


ワイル「ゼン、これあなたが好きな料理じゃないの?」


ゼン「本当だ ありがとう、ワイル」


ビート「(好き…か…)」


ビート「(…オレは…どうすれば…)」


ビート「………」ジーッ


カギュー「…?」


カギュー「(ビートくん…何を見てるんだ…?)」チラッ


カギュー「(向こうにいるのは…時の界王神さまと…トワさん…?)」


カギュー「ビートくん?」


ビート「…え?」


カギュー「どうしたんです?ずっとあっちを見て」


ビート「いや、ちょっと考えごとしてただけだよ」


カギュー「…そうですか」


カギュー「もし…何かあるんでしたらいつでも言ってくださいね」


カギュー「私たちは大切な仲間ですから」


ビート「…ありがとう、カギュー」


カギュー「…いえ」


ビート「(…大切…か……)」


ゼン「うっ! これって…!?」


時の界王神「あ、それ私が作ったの! あなたの好物でしょ?」


ワイル「えっ!?これ界王神さまが作ったんですか?」


フェン「どんな好物でも時の界王神さまが作ったんじゃ…」


ゼン「う…うぷっ…」


ゼン「ちょっと外行ってくる…」ダッ


時の界王神「あ、ちょっと!」


フローズ「…あいつ、顔が真っ青だったぞ」


カギュー「…どういうことです?」


ワイル「時の界王神さまの作る料理は…その…」


カギュー「ああ…そういうことですか…」


ビート「よくわかんないな…どういうこと?」


フローズ「…察しろ」


フェン「邪悪龍より凶悪だ、と言っていた人もいたしね…」


ワイル「ゼン…大丈夫かな…」





時の界王神「ゼン、どうかしたのかな?」


トワ「…気付いてないの…?」


時の界王神「え、なにが?」


トワ「…なんでもないわ」





こうしてビートたちは、束の間の休息を楽しんでいた



2日後に決戦を控えてはいたが、この時ばかりは皆戦いのことを忘れ、それぞれが年相応の笑顔を見せていた



そして楽しんでいたが故に忘れていたのかもしれない



こうしてみんなで笑えるのが最後かもしれないということを…







時の界王神「じゃあ今日はこれでおしまい!夜更かしなんかしちゃだめよ」


ビート「ふぅ…お腹いっぱいだ」


フローズ「フェンたちはどこへ行った?」


カギュー「ゼンくんを部屋に連れていきましたよ …大分調子が悪いみたいです」


フローズ「…気の毒にな」


カギュー「ソラさんたちも戻ったみたいですし、私たちも部屋に戻りましょうか」


フローズ「そうするか じゃあ、また明日な」


カギュー「ええ、二人共おやすみなさい」


ビート「ああ、おやすみ」


ビート「…………」






ビート「…………」スタスタ


ビート「(トワのこと…よく考えたいけど…とりあえず今は奪還作戦に集中しないと…)」


ビート「(…ドラゴンボール…か…)」


ビート「(ノート…)」



トワ「…ビート?」


ビート「…トワ」


ビート「戻ってたんだ」


トワ「ええ 読みたい本があったから」


トワ「今終わったの?」


ビート「うん、部屋に戻って寝るところ」


トワ「そう…」


ビート「早く寝ろ、なんて言われちゃったけど緊張しちゃって寝れなくてさ」


トワ「…なら私の部屋に来る? 温かい飲み物でも淹れてあげるわ」


ビート「え?」


トワ「私も夜型だからこんなに早く寝るのは慣れてなくて…」


ビート「…じゃあ少し話そうよ 話してるうちにきっと眠くなるよ」


トワ「ええ…それがいいわね」






―――トワの部屋



トワ「お待たせ」


ビート「ありがとう…あちち」


トワ「熱いから気をつけて」


ビート「うん」


トワと向かい合わせで座りながら、火傷しないように飲み物を嗜む…その光景には見覚えがあった


ビート「…あの時みたいだね」


トワ「…そうね」


軽く笑顔を浮かべるトワ 対してビートはトワの気持ちを知ってしまったせいか、どことなく落ち着かない様子だった


ビート「(やっぱりあのこと…今聞くべきかな…)」


ビート「(いや…やめておこう さっき戦いに集中すると決めたばかりだ…こんな中途半端なタイミングで聞いていいものじゃない…)」


ビート「(今はそれよりも考えたいことが…)」


ビート「…………」


トワ「…何か悩み事?」


ビート「え…?」


トワ「そんな顔してたから…」


ビート「……トワ…」


ビート「聞きたいことがあるんだ」


トワ「…なに?」


ビート「あのさ…」









ビート「死ぬのって…怖い?」



トワ「………」カチャ


トワはティーカップを口元から膝の上の受け皿に戻すと、少しの間を挟み静かに口を開き始めた


トワ「そうね…怖くないって言ったら嘘になるかしら」


ビート「やっぱり…そうだよね…」


ビート「憎しみを持って戦ってたときは、死ぬことなんて怖くないって思ってた…」


ビート「でも今は違う…もう二度とあんなこと思いたくない」


トワ「…私もそうだったわ…」


トワ「いつだって…死ぬことなんて怖くなかった…」


トワ「それよりもお兄様に嫌われるほうがもっと怖かったわ…」


ビート「オレも…仲間が死ぬことのほうがずっと怖かった」


ビート「自分の死よりも…」


トワ「…憎しみを持った人の戦いは自棄を孕むようになるわ」


トワ「何かのためなら、自分ごときどうなってもいい、死んだって構わない…そう考えるようになるの」


トワ「憎しみを持つと…結局は自分のことしか考えられなくなるのね…」


ビート「…でも今は違う」


ビート「…死ぬことも怖いけど…死んだあとの仲間たちのことを考えるともっと怖いんだ」


ビート「悲しませたくないんだ…大切な仲間たちを…」


ビート「そう考えると…戦えなくなる気がして…」


トワ「…………」


トワ「…それでいいのかもしれないわね」


ビート「え…?」


トワ「死を意識してこそ、初めて生きている実感が湧くものじゃない?」


トワ「自分の死で大切な人を悲しませたくない…傷付けたくない…」


トワ「そうやって死を意識してこそ…初めて人に優しくなれるのよ」


ビート「生きている…実感…」


トワ「…私が読んでいる本にこんなことが書いてあったわ」


トワ「医学や技術が発達して死の実感が無くなったから、人は今日と言う日を一生懸命生きなくなった―――」


トワ「だから今日果たすべき約束も、簡単に先延ばしするようになった―――って…」


トワ「人の命なんて…本当は明日をも知れないものなのに…」


ビート「でも…期待しちゃうんだよ 何でもない日々がずっと変わらず続いていくって…信じてた」


ビート「人は…自分や自分の大切な人が突然死ぬなんて思ってないからさ…」


ビート「いつか…いつか…って約束してるうちに…ある日気が付いたら、一生取り返しのつかないことをしてしまってたんだ…」


ビート「仲間を守るって約束したのに…」


ビート「あの時誓ったのに…」


トワ「…ごめんなさい…私のせいで…」


ビート「ううん そんなダメなオレだから、憎しみに支配されてしまったのかもしれない」


ビート「…仲間のことも傷つけたのかもしれない」


ビート「でも果たしたいんだ ノートに出来なかった約束を」


ビート「ノートが生きてたら出来たかもしれない可能性の全て」


ビート「そんなオレだからこそ、もう二度と大切なものを失わないために…世界を救いたいんだ」


トワ「…でも…命は終わってしまったけど…その子の想いをあなたが受け継いであげた」


ビート「え…?」


トワ「その子の想いが、今あなたの中で生き続けてる」


トワ「その想いがあったから…あなたは憎しみを捨てることができたのよ」


ビート「それは…トワが助けてくれたから…」


トワ「…私は見守ってただけよ」


トワ「自分を救えるのは、自分自身だけ…変わろうと思わなければ何も変わらないわ」


トワ「あなたが変わりたいと思ったから…私の手をつかむ勇気を持ったから…」


トワ「あなたは…変わることができたのよ」


ビート「…でも約束は守れなかった…」


ビート「それでも生きていかなきゃいけないなんて…」


トワ「…たしかに生きていくのは、とても…とても苦しいものだわ」


トワ「…周囲とうまくいかなくて、孤立したり…」


トワ「…信じていた友情に裏切られたり…」


トワ「大切な人を…突然失うこともあるわ」


トワ「でも…大切な想いを胸に持って生きれば…何度でも立ち上がれるしやり直せるの」


トワ「愛される人間より、愛する人間の方が…想いは消えないのよ」


トワ「自分の家族を…友人を…大切な人を…夢を…とことん愛せば、その想いは心の中で生き続けるわ」


ビート「オレの心の中で…?」


トワ「そうよ…あなたが忘れない限り永遠に…ね…」


トワ「生きていくのに大切なことは…多分それだけなのよ」


ビート「…そっか」


トワ「…あなたの助けになれた?」


ビート「うん、話したら気持ちが楽になったよ」


トワ「そう…」


ビート「オレ、頑張るよ 自分のためにも…みんなのためにも」


トワ「私も…祈ってるわ」


トワ「…あと…」


トワ「何があっても…私はあなたの味方だから」


ビート「…ありがとう、トワ」


ビート「…じゃあオレは部屋に戻るよ ごちそうさま」


トワ「ゆっくり休むのよ」


ビート「うん、おやすみ」


トワ「…おやすみなさい」



ガチャ ―――バタン



トワ「…………」


トワ「(本当は…死なないほうがいいに決まってる…そう言いたかった…)」


トワ「(でも…優しいあなたならきっと…大切なことに気づけたはずだわ…)」


トワ「(みんなの想いを背負っているあなたなら…きっと大丈夫)」


トワ「(無事で帰ってきて…私の大切な人…)」


トワ「(…ビート)」





―――

――






―――時の広場



ビート「…おはよう、フローズ」


フローズ「よう…今日は早いんだな」


ビート「…そりゃそうだよ」


カギュー「よく眠れましたか?」


ビート「まぁまぁかな カギューは?」


カギュー「落ち着いてはいるんですけど…どこか緊張してしまって…」


ビート「オレと同じだ」


フローズ「…オレもだ」


カギュー「一緒ですね」


フローズ「…いよいよだな」


ビート「…ああ」


ゼン「おはようございます、みなさん」


フェン「…おはよう」


ワイル「私たちが最後みたいね」


ゼン「ビートくん、気分はどうです?」


ビート「大丈夫だよ、落ち着いてる …少し緊張してるけど」


ゼン「そうですか…頑張りましょう」


ビート「…ああ!」


時の界王神「…みんな揃ったようね」


時の界王神「ソラ、準備はできた?」


ソラ「抜かりなくできてます」


時の界王神「あなたたちも、準備はいい?」


ビートたち「はい!!」


時の界王神「じゃあみんな、行くわよ!」


時の界王神「トキトキ都へ!!」


みんな「おう!!!」




バ シ ュ ッ









―――トキトキ都



ヒュオオオオオ…



シャメル「…………」


モルネー「シャメル」


シャメル「…なんだ」


モルネー「タイムパトロールを迎え撃つ準備は完了したよ」


シャメル「そうか…」


モルネー「大丈夫、勝てるよ」


シャメル「…ああ」


シャメル「(決着をつけよう…)」


シャメル「(…ビート)」






―――それぞれの夢と未来を懸けて、トキトキ都での決戦が




―――今、始まる






To be continued...


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください