2018-01-16 22:37:35 更新

概要

美的感覚がおかしな世界で提督が頑張って生きる話+色々と小話(予定)


前書き

物書きド素人且つ遅筆です、ゆっくりしていってね!!
かなりのご都合主義で進行。

※稀に細かい部分や勘違いしていた部分を修正する場合があります。

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小話:提督、体臭を気にする(後編)

────提督、数分後、酒保



食堂の厨房から酒保へとやって来た我々だが、高雄が言うには酒保の店番は交代制であり、非番などで暇を持て余した艦娘がたまに手伝ったりもしている様だ。


酒保自体は鳳翔の居酒屋の一画を間借りして運営している、名前こそ酒保ではあるが実態としては鎮守府運営の施設内コンビニに近い。


施設内コンビニみたいな物とは言え、一般人が買いに来るという事は基地のイベントでもしない限り先ずは無いので、艦娘や憲兵、そして妖精さんくらいしか利用は無いそうだ。


本日の店番は…… 龍驤とグラーフか、酒保内は三日月と望月が仲良く菓子類を物色している。



提督「ここに来るのも随分と久しぶりだな、お邪魔するぞ」


龍驤「お~、司令官が来るなんて珍しいやん? 今日は何か買いに来たんか?」


グラーフ「いらっしゃいませアトミラール、今日も変わらず麗しき人だ」


提督「その誉め方は気恥ずかしいからやめてくれ、今日は酒保に用があるというより艦娘に用があって基地をうろついている」


提督「しかし珍しい組み合わせだな、グラーフはいつもビスマルク・金剛・榛名と一緒に居る印象がある」


グラーフ「コンゴウとハルナは姉妹なので一緒に居る事が多いし、ビスマルクにとって二人は教導艦でルームメイトだからな、そこに私が入ればそうなってしまうものだ」


グラーフ「それにビスマルクは同郷だからな、母国語で話し合える希少な仲でもあるし、彼女との会話は祖国を思い出させてくれる、決してこの国が悪いという事ではないが祖国はやはり特別な物なのだ」


龍驤「せやな、ウチもな、関東の地元にたまには帰って家族に会いたいもんや、軍人だからそうもいかんけどな」


長門「待て、龍驤、お前は関東育ちなのか? その訛りはどうしてそうなったんだ……」


龍驤「一般人だった頃は標準語やったんやで、『龍驤』の艤装に適合して艦娘になったらこぉんな言葉遣いになったんや、違和感無しに最初から喋れたのはちょお~っち不気味やったけどなぁ」


高雄「ところで龍驤さんとグラーフさんとは珍しいですね、あまり接点が無さそうな印象ありますが」


グラーフ「私はまだこの国と基地には不慣れな部分が多少あってな、訓練にも少し余裕が出てきたので酒保で日本式の接客を教わっていたのだ」


グラーフ「リュージョーは実に頼りになる艦娘だ、外見は駆逐艦の様だが経験はナガトやホウショウの様に豊富だ」


龍驤「ちっちゃいのは言うなや…… グラーフが大きすぎるだけや、と言いたいところなんやが他の空母はほとんど大きいからなぁ」


龍驤「んでぇ、提督達は酒保に何の用で来たん? 物を買いに来たって感じでは無さそうやけど」



長門がこれまで通りに簡潔に説明をする、それを聞いた二人、グラーフはその場で考え込み、龍驤は店内に居る三日月と望月に声をかけた。



龍驤「おぉ~い!!! そこのミカとモッチー!! ちょっと来いぃや!!」


望月「んぁ? えぇ~…… 休暇だからお菓子とジュース買ってダラダラしようと思ってたのに~、めんどくさ……」


三日月「ちょっとモッチー!! 今そちらへ行きます~!!!」



三日月が気だるそうな望月の腕を引っ張りながらこちらへと小走りで向かってきた、望月は戦では豪胆な部分があるので問題ないが、普段の素行は少し苦笑いしたくなる。



三日月「ごめんなさい龍驤さん、モッチーたらいつもこんな感じで……」


望月「んなこといったってねぇ、龍驤さんも別にそこまで気にしてないんじゃないの、んで何か用?」


三日月「司令官と高雄さんと長門さんもいらっしゃるんだから、しっかりとしなさい!!」


提督「三日月はアクの強い姉妹の中では良識人だな、俺としてはあまり気にしなくても良いと思っているが」


三日月「駄目です!! 司令官がよろしくても長門さんの様に生真面目な方には冗談では済まない事もあるんですよ!!」


提督「生真面目か……」


長門「もういいだろう…… その様な目で私をあまり見ないでもらおう……」


龍驤「まあまあ、そんくらいにしといてぇ、ミカとモッチーは司令官の体臭ってどう思うん? 司令官って自分は臭いんじゃないかって思ってるらしいんやけど」



三日月は顔を赤く染めて驚き、望月は少し思案してから全方位から俺に近づいて鼻に意識を集中して嗅いでいる。


流石は望月、面倒に考えるより嗅いだ方が早いと実行するか。



三日月「ああっ!? もうモッチーってばそんな失礼な事を!!」


望月「三日月はうるさいなぁ、百聞は一見に如かずって言うでしょ、嗅いだほうが早いって」


龍驤「なんともモッチーらしいというか」


グラーフ「これは実に驚きだな、流石に私ではこのような事は出来ない、羨ましくもあるな」


龍驤「キミはもうちっと言いたい事を包み隠したほうがええんちゃうん? 素直すぎるってのも厄介やな」


グラーフ「何を言うリュージョー、アトミラールには美徳として褒められたのだぞ、これ以上の名誉はそうそう無いだろう」


望月「ん~、匂いを嗅いだ感じとしては特に臭いって感じは無いよねぇ、無臭っていう感じ」


三日月「モッチーてば本当? し、司令官、失礼します!!」



次は三日月が全方位から俺の体臭を嗅ぎ始める、年端の行かない美少女に体臭嗅がれるとか、元居た世界だったら完全に事案じゃないか……



三日月「すごいです!! 無臭とは多分違うとは思いますが不快な臭いは全くありません!!」


グラーフ「なるほど、リュージョーは嗅がないのか? ミカヅキやモチヅキと似たような外見年齢だから大丈夫だろう?」


龍驤「キミはウチをからかっとるんか? まあ、そこまで言われたらやってやろうやないの、折角の機会やしな!!」



三日月と望月の感想に頷いていたら次は龍驤である、空母の中では年長組の龍驤ではあるが普段の振る舞いは実に可愛らしい、まるで駆逐艦の様だ。



龍驤「んっ? んん~っ? 不思議やな…… マジで不快な臭いがせぇへん、司令官の身体には奇跡でも詰まっとるんか?」


提督「何度も言うようだがただの人間だからな、妖精さんと会話が出来る普通の人間だ」


高雄「その時点で少し普通ではないというのは指摘したらアウトでしょうか」


長門「その点は言ってやるな、少し前だったら妖精さんとお話しできるなんて頭がお花畑扱いだからな」



それは少し言い過ぎなのではないか?とも思ったが、深海棲艦と艦娘が現れる以前だったら間違いなく危ないヤツ扱いなのは否定できない。



グラーフ「さて、皆もアトミラールの匂いが分かったところで、どのような答えを出すか、だな」


龍驤「グラーフは匂い確かめなくて良いんか?」


グラーフ「問題は無い、多少臭おうともアトミラールを否定する理由にはならない、それに体臭が臭くないのも既に知っている」


龍驤「その余裕は一体なんなんや…… あとほんのりドヤ顔するのやめぇや」


グラーフ「ほぅ、ドヤ顔とな、それはどういう顔なんだ?」


望月「それはあとで龍驤さんが説明するから、ちゃっちゃっと司令官の体臭について意見しません? 正直面倒くさい……」


三日月「本当にすいません、こんな態度の妹で……」


龍驤「まあ、モッチーの言う通りでもあるからミカは気にすんなや、ウチとしてはそうやなぁ…… んっ?」



何だ? ど、どうしたんだろうか、龍驤の動きが突然止まってしまった、心配なので声をかけてみようと思ってみたが……



提督「どうした? 身体の調子でも……」


龍驤「な、なんでもないんやで!? 司令官の体臭は、そ、そうやなぁ……」


提督「随分と顔が赤いな、身体の調子は大丈夫か?」


龍驤「ひゃあ!? きゅ、急に近寄らんといてや!! びっくりするやないかい!!」


提督「おおっと、すまない…… 望月と三日月は大丈夫か、調子は悪くないか?」


望月「ん、んあぁ? あっ、大丈夫大丈夫、だと思う、多分……」


三日月「ふぇっ!? す、すみません!! な、なんだか急に熱っぽくなってしまいまして…… 身体がふわふわします……」


長門「……堕ちたな」


高雄「……恐らくそうでしょう」



いつもは真面目なのに今日に限って二人とも頭のネジが抜けてるな…… 恐らく体臭がフェロモンとして作用してしまったのだろう。


つまりこの三人は少なくとも俺に好感を持ってくれているという事か、こんな知り方はしたくなかったがこれからも期待には応えないといかんな。


流石にこのまま見過ごすという訳にも行かず、理由をでっちあげて健常な長門とグラーフに三人を任せる事にした。



提督「三人とも疲労が溜まっているのかも知れないな、グラーフだけだと三人を寮へ連れ帰るのは大変そうだから長門も手伝ってあげてくれないか?」


長門「了解した、寮まで連れて行けばよいのだな? グラーフは龍驤を運んでくれ」


グラーフ「わかった、そちらはミカヅキとモチヅキを頼む、しかしアトミラール、店番はどうする?」


提督「グラーフが龍驤を寮まで送り届け、代理を見つかるまで臨時閉店して構わない、余暇がありそうな艦娘に頼んでみると良い」


龍驤「うーん…… ごめんなぁ司令官、なんか身体が浮ついてしもて…… 顔も熱くてかなわんなぁ」


提督「気にする事は無い、たまにはゆっくり休むんだ、教導艦と空母筆頭の二役で普段から大変だろうからな」


提督「三日月と望月も今日は休暇だが、遊ぶのは控えてしっかりと休むのを勧める」


望月「そ、そうだねぇ、司令官の言うとおりにするよ……」


三日月「ご迷惑をおかけします……」



三人は長門とグラーフに担がれて酒保を後にした、流石に一日休んでいれば問題は無いだろうと思いたい、常習犯の高雄達も普通に過ごしている様なので。


まさか調査の最中にKOしてしまうとはな、好感を持ってくれている異性にはやや問答無用で効果が出てしまうのは厄介だ。


次に猫吊るしに出会う機会があったら制御できるかどうかを確認しておかねばならない、今回は初めての意見無しという事になってしまった。



提督「今回は意見が聞けないというまさかの事態になってしまったな……」


高雄「強力なのは薄々と感じていましたがまさかここまでとは思いませんでしたわ」


提督「意見は聞けなかったが効果は良く分かったので、俺としては香水したほうが良いのではないかと」


高雄「駄目です」


提督「……そんな威圧的な笑顔で即答しなくても良いだろう」



さて次は何処へ行くとしよう、残るは娯楽施設とトレーニング施設くらいだろうか、両方ともよく行く施設ではあるから大体の面子は予想できる。


トレーニング施設は人間用しか使えないが身体が鈍らない様に定期的に通っている、らしくないと良く言われるがビデオゲームも子供の頃から好きなので、娯楽施設にもよく顔を出している。


おかげでブスな上にゲームヲタと蔑まされたこともあったな…… ゲーム自体に罪は無いしストレス解消に最適なので止める気はさらさらないが。



高雄「次の聞き込みは何処へ行くのでしょうか?」


提督「そうだな、トレーニング施設へ行こうか、高雄が鍛錬している姿を見たことは無いがちゃんと鍛えているか?」


高雄「ただでさえこんな容姿なのに、重量物を持ち上げて踏ん張っている顔を提督には見せられません」


提督「ふむ、君は実に淑女だからな、努力も水面下でするという事か、流石だな」


高雄「提督、いつもお褒めいただいてとても光栄ですが、もっと美人にお世辞は言うべきですわ」


提督「うむ…… そうか、善処する、ただ俺は君にお世辞を言っているつもりはないとだけは言っておこう」


高雄「提督はとてもお優しいですのね、私、勘違いしてしまいますわ」



高雄はそう言うと困った様に微笑んだ、美人はどんな顔しても美人だな、羨ましいものだ。


次はトレーニング施設と決まったので向かうとしよう、鍛錬好きの艦娘と来たら大体目星は付いている。



────提督、数分後、トレーニング施設



トレーニング施設は簡易トラックに隣接して建てられている、外では艦娘達が鍛錬の為にひたすら簡易トラックをぐるぐると走り続けている。


五十鈴と香取が厳しく指導と監視をしている中で、駆逐艦と潜水艦が力を振り絞って走る、この努力が彼女達の血肉になる事を願おう。


俺達が用事があるのは簡易トラックではなく、トレーニング機器が置いてあるトレーニング施設の方だ。


トレーニング施設には人間用の機器から、重機でも使わないと持ち上がらない様な艦娘用の機器が置いてある。


艦娘用のトレーニング機器には、不慮の事故を防ぐために必ず重巡洋艦以上の馬力を持つ艦娘の補助役を付ける様に義務付けをしている。


さて、今日此処に居る艦娘は長良、大鳳、浦風、浜風、磯風、谷風の6人か、浦風がいるのは珍しいな。



提督「やあ、今日も頑張ってるな、調子はどうだ? 怪我には気をつけて鍛錬するんだぞ」


長良「あっ、司令官!! こんにちは!! マシンのセッティングしましょうか?」


提督「いや、今日はトレーニングをしに来たわけではないからな、しなくても大丈夫だぞ」


長良「え~…… それはとても残念です、司令官とトレーニングするの楽しみなんですよ~」


大鳳「こんにちは提督、本日はどの様なご用向きでしょうか?」


提督「今日は色々と施設を巡って艦娘達の意見を聞いている、質問の内容は…… 高雄、頼む……」


高雄「承りましたわ、実はですね……」



今日だけでもう何度やっているんだろうか、このやり取り…… 執務を止めてまで聞くような事でも無い様な気がしてきたぞ……


説明をしている内に浦風達もやってきて次第に賑やかになっていく、女性というのは本当にお喋りに敏感だ、一部例外も居るが。



浦風「ほぉ~、提督さんはなして自分の匂い気にするけぇ?」


提督「それはプライバシーの問題でな、少々話しにくいので聞かないでおいてくれないか? しかし、君が此処に居るとは珍しいな」


浦風「いっつもはウチだけでやっとるんじゃ、この三人は元気すぎてトレーニングについていけんねぇ、女子らしさ足りんわぁ」


磯風「ふふん、浦風は艦娘として私達に負けているという事だな、我々艦娘に過剰な女らしさは要らないのだ」


浜風「貴女は少し度が超えているとは思いますが、本当に飾り気が無いですからね、磯風は」


谷風「谷風達が着飾ってもさぁ、正直微妙というか豚に真珠すぎてねぇ、そんなことしてる暇があったら戦いで役に立つ事したいねぇ」


浦風「連れはこんなんやし、みんな女子らしさっちゅうもんがわかっとらんねぇ、この子らってば部屋に居るとなぁ~んもせん」


浦風「磯風に食事をさすと食材を廃棄物に、浜風は食べるのだけは得意やし、谷風もちぃ~とも料理を覚えようとせんねぇ」


浦風「食事・洗濯・掃除・裁縫、なしてウチが全部やっとるん? 怒らんけ、言うてみぃ? ん? んん~?」


磯風「正直すまんかった」


浜風「浦風の家事力が高すぎるのがいけないのです、つい頼ってしまうのです」


谷風「浜風の言う通りなんだよねぇ、それに家事なんて谷風のガラじゃないねぇ」



何故この娘達はわざわざ煽る様な事をするのか、磯風はいつも以上のドヤ顔で誠意の無い謝罪をするかよ……


あ、やばいぞ、怒らないとか言ってたがあの顔は怒る寸前だぞ、このあたりで止めねば。



提督「浦風はとりあえずは冷静にな、この三人の生活力の無さは古鷹・飛鷹に、料理は間宮と鳳翔に相談する」


提督「了承を得られた場合は普段の訓練と合わせてみっちりとしごいて貰う事にする、みっちりとな」


浦風「流石は提督さんやねぇ!! 頼りになるけぇ!!」


浜風「そんな!! 横暴です!! プライベートに踏み込んでくるのは職権乱用と思います!!」


提督「浜風、君とタイプの似ている姉の不知火の生活態度は見事な物だぞ、それでいて陽炎を立てる事も忘れないし、黒潮ともお互いの苦手な部分を補い合っている」


谷風「かぁっ!? なんてこったい!! というか谷風がダメならモッチーとかも生活態度どうなってんのさ!!」


提督「望月はああ見えて後回しできない物を全て片づけてからダラダラしているぞ、三日月と一緒に家事もしている、だから問題はない」


磯風「この磯風に必要な物は戦いに必要な力だけだ、司令もそれはわかっているだろう? それに司令も家事全般は苦手であろう、全て高雄に任せているではないか」


提督「ドヤ顔で決めたつもりだろうが苦手分野をみっちりとしごかれて克服して来い、それに俺は下っ端時代に全部叩き込まれたから一通りできるぞ」


提督「高雄が明日から来なくなって代理の秘書艦が居なくとも、時間節約以外の問題は無い、かなりギリギリの業務進行になると思うが」



以前は一人で執務に加え家事の一部までやっていたと考えると、なんというか今の環境がとても恵まれていると再認識出来る。


本当に高雄だけでなく役割分担をしてくれている皆に感謝せざるを得ないな。



磯風「ぬうっ、この磯風、今回は退こう、なので鳳翔さん達による特訓は免除してほしい」


提督「だからドヤ顔で譲歩になっていない譲歩をやめないか、決まったことだからな、それとも陽炎に告げ口してほしいのか?」


磯風「っ!? そ、それは勘弁してもらいたい……」


谷風「磯風ったらもう逆らわない方がいいって、陽炎姉ちゃんに知られたらド偉い事になっちゃうよぉ」


浜風「そうです、ここは甘んじて受け入れるべきです」


提督「君達はそんな事を言えるような立場ではないのだがな、何故そんな強気で交渉するのかわからん……」



流石は曲者揃いの陽炎型、一筋縄ではいかない娘達ばかりである、これを統括している陽炎の心労も汲み取るべきだな……



長良「司令官って本当に何でも出来ますね、トレーニングマシンも一部が壊れた時に応急処置してました、器用ですよね!!」


提督「それなりに使っていると大体分かってくるものだ、応急処置したら流石にすぐに業者を呼ぶけれどな」


大鳳「文武両道・容姿端麗な上に家事全般まで出来る、やはり提督はすごいです」


提督「文武両道といえる程に学歴がある訳でもないけどな、出来る事はしっかりと、出来ぬ事と知らぬ事は正直に教えを乞う、そうして来ただけだ」


提督「見た目はまぁ、その、なんだ、君達がいつも褒めてくれるから嬉しいぞ、ありがとう」



実際こちらに来てかなり経つが、ようやく自分の容姿が褒められるのに慣れてきた、気分が前向きになれるのを実感している。


ハンサムには気前と性格の良い人間が多いというのも割と頷ける気がする。



浦風「ええっと、提督さんの話を脱線させてしもうてごめんね、この三人のお仕置きは決まったし、お話戻そうかぁ」


提督「気をつかってもらってすまないな、俺の体臭の話はあまり深く考えず正直な意見を出してくれれば助かる」


浦風「せやねぇ、ウチはわからんけぇ、いっつも清潔な格好しか見とらんし、近づいても臭い!!って思うた事はないけん」


提督「ふむ、浦風はそう思うか、長良はどうだ? 意見を聞きたい」


長良「えっ、私ですか!? 司令官ってとってもいい匂いしますよね!! 実は何だかよくわからないんですけど、司令官の近くでトレーニングするといつもより頑張れるんですよ!!」


長良「だから司令官が来てくれるのがとっても楽しみなんです!! 司令官って筋肉がセクシーで惚れ惚れします!!」


提督「おお、そうか、俺が居ると頑張れるって嬉しいな、筋肉については一応見栄えはそんなに考えて鍛えてはいないが褒めてくれるならうれしいぞ」


提督「匂いについては良い匂いなんだろうか? ここに居る時は汗だくの頻度高いと思うのだが……」


長良「不思議と司令官の汗って臭わないんです、汗も粘ついていないでさらっとしてますし、さらっとしている汗は臭くないそうですよ?」


提督「そうなのか? 自分ではあまり考えたことは無かったな、ありがとう、参考になった」



女の子から容姿だけでなく筋肉まで褒められるなど、絶対に人生で起こる事は無いと思っていただけに思わず涙一つこぼしそうになるが、上に立つ者としてぐっと堪えなければ……


そういう長良もこっちが心配になりそうなくらいにハードなトレーニングをするので女性としては見事な体格をしている、艦娘的にはあのくらいで丁度よいとの事だが。



大鳳(長良って純粋で羨ましいわ…… 私なんて提督の体臭と薄着姿と筋肉目当てでトレーニング施設に通う頻度を以前より上げたのは言えない……)


提督「大鳳は俺の体臭についてはどう思う?」


大鳳「あっ、えっ? わ、私ですか!? えっとですね、提督の体臭については良い匂いがすると思います」


大鳳「あとは大体長良と同じですね、元気になる匂いといいますか癒される匂いといいますか、それを消してしまうなんて勿体ないです」


提督「ふむ、そうか、大体の意見は纏まって来た感じがあるな」





磯風「司令の体臭についてならば、この磯風も言わせていただk」


提督「君達は意見以前の問題だ、先ずはしっかりと生活態度を改めてからにしてもらうぞ、要らぬ仕事と言う気は無いが苦労を増やさないでくれ……」


磯風「今日の司令はいつもより冷たい、だが私は挫けないぞ」


提督「だからドヤ顔をやめろと」


谷風「どうしてこうなっちゃったんだろうねぇ」


浜風「磯風が無駄に提督を煽るのがいけなかったのです」


谷風「浜風も大概にふてぶてしいと谷風は思うよ……」



トレーニング施設でも意見を聞けた、次の施設に向かう事にするか、次は確か娯楽施設だったか。


普段は雑談してもそこまで艦娘からの悩みや問題は出てこないものだから、今日は面食らってばかりだ。


リーダー格の艦娘や家事が良く出来る艦娘の悩みはよく聞いておいた方が良いかもしれん……


長良・大鳳・浦風達に別の施設へ行くと告げると元気よく見送りしてくれた、磯風・浜風・谷風はテンションが目に見えて下っているのが分かる。


ドアから高雄と一緒に廊下へと出ていく、次は鬼が出るか蛇が出るか……



────提督、数十分後、提督執務室



色々な施設を回り、廊下で出会った艦娘達の意見も含め、結論から言えば「匂いは気にならない、良い匂いがする、消すのは勿体ない」という意見が過半数を超えていた。


各施設の妖精さんも俺の匂いに関しては無臭で影響も特に無いとの事だ、妖精さんにとっては無害の様だ。



高雄「ふふっ、やはり提督のお身体の匂いを香水で消すのは無粋!! と言って差し上げますわ」


長門「高雄の言う通り!! 我らにとって大きな損失以外の何物でもない、皆も良く分かっている、提督も分かっていたはずだ、無駄な抵抗だったようだな!!」



まさか普段は精悍な顔立ちしか見せない長門がドヤ顔を見せる日が来るとはな…… 外見と性格も磯風に似ているから尚更嫌がらせに思えるぞ。


まあ、磯風とは違って生活態度も仕事も批評をする必要は無い位に完璧ではあるが…… 出撃前に俺の服の匂いを嗅いでいた事を除いてはだが。



提督「わかった、俺の負けだ、香水はつけない約束だったな、このままで居る事にする」


高雄「やりましたわ!! 長門さん、私達は勝利を手に入れましたわ!! 数少ない癒しを守ることが出来ました!!」


長門「そうだな高雄、だが私達だけの力ではない、艦娘皆の力があってこその勝利だ、道半ばで倒れた大淀も安らかに眠れるだろう」


提督「待ってくれ、大淀は別にまだあの世に召されていないからな、勝手に殺すな」


提督「そして匂いはこのままにするとは言ったが、俺の私物は出来る限りの物は全て私室へ移動させて鍵をかけるからな」


提督「全く、上着の着脱だけで無駄に手間がかかるようになってしまった、非常に困ったものだ」


提督「風紀の都合上、こういう事だけは絶対に譲れないのでな、二人だけでなく艦娘全員に理解してもらう必要がある、説明するのが大変だ……」


提督「今夜のフタマルサンマル、長時間遠征以外の艦娘達を全て食堂へ集合するように通達してくれ」


高雄「全館放送でもよろしいのでは?」


提督「妙な反応を示す艦娘もいるかも知れんからな、生の反応を見ておきたいというのもある」


長門「了解した、提督の上着を嗅げなくなるのは残念だが…… 最悪の事態は阻止できただけ戦術的勝利と言えよう」


提督「君は何を言っているんだ」



────提督、数時間後、食堂



あれから数度、全館放送を行いフタマルサンマルに食堂に集まるよう基地内に居る全艦娘へ通達。


現在は予定時間丁度になり遅刻した者は居らず艦娘達も無事に全員集まったようだ、普段は普通の女の子と変わらないが職務には忠実且つ素直で本当に助かっている。


しかしフェロモン的な効能があるとはいえ、俺の服の匂いを嗅がれるのは風紀上非常に困る、普段聞き分けの良い娘達を惑わす自分の体臭が以前とは違った意味で厄介だ。


艦娘達は緊急で呼び出された為、何事かとやや動揺を隠せずにいる、基地の存続に関わる程の事ではないが多数の艦娘が問題になっているので、皆の前で集会をするしかなかった。



陽炎「こんな時間に呼び出しだなんて司令ったらどうしたのかしら、まさかうちの妹が何か問題を……」


不知火「いえ、まだそのような話は基地内にも広がっていません、そして司令からも伺っていないので可能性は低いかと」


黒潮「姉妹の問題なら全艦娘を招集させるようなことはせんやろ、なんか大きな問題かもしれんね」


親潮「ど、どうしましょう姉さん達、この基地や皆さんに関わる事だったら……」


秋月「信じましょう提督を、そして問題があったら皆さんで力を合わせて困難に立ち向かいましょう!!」



前の方にいる陽炎達から雑談が微かに聞こえてきたが、そこそこ深刻に事態を捉えて居る事に申し訳無さが湧いてくる。


とりあえず説明を始めることにしよう、出来るだけ簡潔に済ませたいところだ、貴重な休み時間を削ってまで来させているのだから。


隣に居る長門に静かにさせる様に目配せをする。



長門「皆、静粛に!!! これから提督が現在起きている問題を話してくださる!!!」


提督「ありがとう長門、艦娘の皆、貴重な自由時間を削って呼び出した事を予め謝っておく、すまない」


提督「非常に言いにくい問題が起きた、風紀に関わる問題なのだが、その、な……」



艦娘の群衆から「風紀の問題って何?」「提督が躊躇うような事ってなんだろう」とも取れる空気が漂ってきた。


俺だってこんな情けない問題で皆を呼び出したくは無かったが、艦娘が関わってしまった以上は言うしかない。



提督「お、俺の体臭が染みついた衣服を嗅いでいる艦娘が居るという話を聞いた、ある程度の目星は付いている、だが犯人を明かすつもりは毛頭無い、だからプライバシーは安心してほしい」



艦娘達が一気にざわつき始める、微かに反応して身動きを止める者、大げさに騒ぐ者、突拍子な出来事過ぎて変な笑い方をする者。


大まかに分けるとこんな感じの反応だ、事の発端になった鈴谷に至っては身体を硬直させて青ざめて小刻みに震えていた。


長門は素知らぬ顔でスルー、高雄は微妙に視線が定まらず、回復して意識が戻った大淀は顔を赤くして汗をたらしている。


ざわつく艦娘達の中、俺に向け声と手を挙げている艦娘がいた、あれは加古だな。



加古「てぇ~とくぅ!! ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかい?」


提督「答えられる範囲ならば応じよう」


加古「犯人を明かせないのは分かるけど、どの時間帯とか何処で嗅いでたとかはOK?」



加古の隣に居る姉の古鷹が滅多に見せない焦燥と羞恥が混ざったような顔をしている。


古鷹も嗅いでいたには違いないが、こちらにも落ち度があるので明かさない方向で行こう。



提督「それについては申し訳ないが特定をされてしまう可能性がある、俺としては穏便に済ませたいのだ」


加古「提督がそう言うならしゃあないかぁ、突き止めて微妙な関係になるよりはずっといいかもね」


提督「理解してくれて何よりだ、皆も犯人を突き止めてやろうなどとは思わんようにな、頼むぞ」


提督「俺個人でどうにか解決するつもりだから詮索はしない様に、犯人の尊厳がかかっているからな」


提督「これは命令ではないが守らなかった者には相応の懲罰を与える事にする、くどい様だがくれぐれも犯人を探すような事はしてはならない」



動揺はやはり収まらないがある程度の納得はしてくれただろうか? そんな中で手を挙げた艦娘がまた一人。



鳥海「質問の許可をお願いします、提督」


提督「ああ、許可する、言ってくれ」


鳥海「許可ありがとうございます、提督としては犯人に対してどんなお気持ちでいらっしゃるのでしょうか?」


提督「俺としては怒ってもいないし、懲罰なども考えてはいない、ただこの場で言える事は風紀の都合上、今後は止めてほしいという事だけだ」


提督「ただ、対策を何もしないワケにはいかないので俺の私物は出来る限り私室へと保管して鍵をかけておくことになる」


提督「洗濯物も直接鳳翔に渡しに行くか、取りに来てもらう事になる」


鳥海「ご返答ありがとうございます、把握しました、鳳翔さんなら安心ですね」



実はその鳳翔も犯人だったりするのだが、反省もしている様だしもう一度信用してみようと思っている、家事のほとんども彼女が仕切っているのもあるしな……


自分なら安心と信用されている鳳翔は俯いて顔を真っ赤に染めている、これはつらい。


現状で言える事はこれだけと通達し、そして意見交換の間を設けるが艦娘達はザワつくだけで特に意見は無い様だ。


艦娘達に解散を宣言し解放する、少し経つと艦娘の皆は各々の目的地に行き、食堂には執務室によく居るいつもの4人になった。



提督「今回はまた違った意味で疲労感が強いな…… 今回の件の顛末、長門達も分かっているだろうな?」


長門「最悪の結果は免れたという結果だな、我々の勝利だ」


提督「いや、それはおかしいからな? 君達は執務室に居る頻度が高いから特に注意しないといかんな、全く……」


高雄「しかしながら、私達とて提督とは常に一緒にいられるワケではないですし、その隙を突かれたらどうしますか?」


提督「君までそんな事を言うのか…… 出来る限り一緒に居るしかあるまい、提督代理として外に出る事が多い長門はともかく、事務担当の高雄と大淀は常に気にかけないとイカンのか……」


大淀「えっ、それって嬉しい誤算ですね、提督と一緒に居られる時間がもっと増えるだなんて」


高雄「なるほど、それは確かに一理あるわね、確かに嬉しい誤算です」


大淀「いつも目を離さないで欲しいと公言している金剛さんが嫉妬しますね」



どうしてこうなった…… 此処に来た当初に比べ艦娘達も明るく逞しくなったと喜ぶべきなのか、なかなか複雑だ。


この基地や艦娘が以前から悩んでいた問題だけでなく、まさか問題を起こす気は毛頭なかった自分が問題の原因になってしまうとはな……


いつもの事ながら色々と考えさせられる騒動ではあった、人の上に立つという事の難しさを再確認した日だったな。



小話:体臭騒動鈴谷アフター

今日は僅かながらではあるが、どうにか確保をした空き時間を使って鈴谷を個人的に提督私室へと呼び出した。


あの厄介な俺の体臭騒ぎから数週間たったが、そろそろほとぼりも覚めたのではないかと感じつつあるので、鈴谷と話し合いをしようと考えた。


放送で呼び出すのは大事になってしまう為、高雄に四つ折りにしたメモ用紙を握らせ中身を読まず鈴谷に渡すように念を押して依頼した。


彼女は真面目だから中身を読むとは思えないが、やはり多少の不安が出てしまうのは仕方ない。


指定した時刻のフタサンマルマル間近になる、そろそろ来るだろうと思ったところでドアがノックされ、可愛らしく爽やかな声が聞こえてきた。



鈴谷「チーッス、提督ぅ、鈴谷に何か用? こんな時間に呼び出すなんてムフフな事かな? なんちゃって!!」


提督「良く来てくれた、そこの座布団に座ると良い、脚は崩して楽にしてくれ、飲み物は天然水でいいか?」


鈴谷「ミネラルウォーターで全然大丈夫だよ、ありがと~、提督私室って高雄さんくらいしか入っちゃいけないんじゃないの?」


提督「入ってはいけないという規則はないが、あまり入り浸るのは好ましくはないだろう、年頃の女性が男の部屋にほいほいと入るものではない」


鈴谷「やっぱ提督って優しいよねぇ、艦娘ってとにかくブスしかいないのに、ジェントルメンってヤツだよねぇ」


提督「褒めてくれるのは嬉しいが、俺はそれなりに俗っぽいぞ、少なくとも紳士や聖人君子ではないな」


鈴谷「またまたぁ、提督が紳士じゃなかったら世の中の男子はみんなダメンズになっちゃうよ」



いつも通り明るく振る舞ってはいるが、これから話す事を考えるとやはり気が重い。


だがここで足踏みしていても埒が明かない、一気に切り出すべきだ、やるしかない。



提督「鈴谷、今日は真面目な話をする為に私室に呼び出した、この部屋なら防音処理はしてあるし、定期的に専門の人間に盗聴・盗撮機具がないか掃除ををしてもらっているので、問題は無いだろう」


鈴谷「ええっ? ま、真面目な話って何それ…… ハッピーなネタだといいんだけどぉ……」


提督「残念だがそうではない、俺の衣服を嗅いでいる艦娘がいると少し前に騒ぎになっただろう?」


鈴谷「あっ、そ、そうだね、なったね、う、うん……」


提督「俺が調査始めた理由、それは鈴谷が俺の洗濯物を嗅いでいるという密告があったからだ」



鈴谷、顔真っ青にして口をヒクヒクさせ乾いた笑いが漏れ出している、真正面から行きすぎたか? これはちょっと不味かった……


どうにかして宥めなければ、鈴谷だけが悪いわけではない、色んな要素が複雑に交わった結果が現状なのだから。



鈴谷「は、ははは…… バ、バレちゃった…… タレコミしたのって誰だったの?」


提督「熊野だ、夜中に偶然ではあるが君を見つけたそうだ、洗濯室で俺の洗濯カゴを漁っt」


鈴谷「わああぁぁぁああぁぁ!!! 言わなくていいって!! 言わなくていいからぁ!!! そ、そっかぁ、熊野かぁ、しょ~がないよねぇ、あはは……」


鈴谷「ああ~…… そうかぁ…… 提督本人にバレちゃったんだ…… ホントどうしようこれ、もうどうしようもないんだけどさぁ……」



いかん、鈴谷がちゃぶ台を見つめながら虚ろな目でぶつぶつと呟き始めた、何をするのか予想が出来ん。


いきなり大暴れとかされたら、いくら鍛錬好きとは言え生身の人間の俺一人では止めるのは不可能だ、やはりもっとやんわりと切り出すべきだったか……



提督「す、鈴谷、ちょっといいk」


鈴谷「提督、今すぐじゃなくてもいいから艦娘って止める事出来るのかなぁ…… 鈴谷、自分の所為だってわかっているけど、提督と顔合わせて艦娘するの結構辛いかもしんない……」


提督「少し待て鈴谷、君は今、急な展開で思考と感情が追いついていないだけだ、落ち着くんだ」


鈴谷「この前の臨時集会で流石に懲りてさぁ、もう提督の匂い嗅ぐのやめようと思ってぴったりと止めたんだけど…… 一番最初にバレてたなんて思いもしなかったよね……」


鈴谷「それに提督も気持ち悪いと思ってるんじゃないの? 鈴谷ってお世辞にも可愛いなんて口が裂けても言えない見た目の女子だしさぁ……」


鈴谷「提督に気持ち悪いって思われるのはもう覚悟してるから、はっきりと言っちゃってもいいよ……」



鈴谷の目からは薄っすらと涙が滲み出てきていた、気持ち悪いなんて全く思ったことが無いのだが、今の鈴谷には迂闊な事は言えない。


一体どうしたものか、どうしたら鈴谷を落ち着かせることが出来るのか……



提督「鈴谷、落ち着いて聞いて欲しい、誰が洗濯物の匂いを嗅いだとかそういうことではないんだ、風紀上の問題であってな……」


鈴谷「提督だってさ、艦娘みたいな見たまんまブスよりは美人に匂い嗅いでもらいたいんじゃないの?」


提督「俺はこの騒動でそういう事を考えたことは無い、例え容姿に優劣があろうと風紀は守らなければならない、軍なら尚更だ」



色々と落ち着かせようとして見るも対女性の経験値が圧倒的に不足しているので、鈴谷の気持ちを静める事が出来ない。


本物の良い男ならば女性の気持ちを理解してあげられるのだろう、俺にはそれが無い、何とも歯痒いものだ。


いっその事、正直に切り出してしまうか? いや、正直に切り出した結果がこれだというのもあるのだが……


ぬうぅ…… 泥沼になってしまうよりはマシか? やるしかない!!



提督「鈴谷、君の気持ちを理解できなくてすまない、不甲斐無い上司ではあるが君の気持ちを知りたい、どうしたら君の気が済むのかを知りたい」


提督「俺はあまり異性との『まとも』な接し方というものを経験したことが無いんだ、だから女性の機微に疎いんだ、だから頼む」



思い切って真正面から謝る、女性に試したことはほとんど無いがこれで少し落ち着いてくれれば良いのだが……



鈴谷「そういう謝り方はずるいよ提督…… 提督はハンサムすぎて女の子と『まとも』なお付き合いした事はなさそうだけど、機会はメチャクチャ多かったんじゃないのかな」


鈴谷(提督って超イケメンの紳士だから、あんまり女の子怒らせたりしなさそう…… 普段もすんごい優しいし)


鈴谷「ああぁ…… ちょっと頭冷えたから気づいたけど、ただの逆ギレじゃんこれ……」


鈴谷「そ、そうだね…… もう気分が落ち着いたから大丈夫、大丈夫だからそんなに気を落とさないでよ、提督……」


提督「そうか、鈴谷がそういうなら良いのだが、本当に大丈夫なのか? こういうのはしこりがあるのは良くないと俺は考えている」


鈴谷「大丈夫大丈夫だって!! あ~、でもこんなチャンスあんまり無いしちょっとワガママ言っちゃおうかな?なんて…… ははは……」


提督「いいぞ、たまには言ってみるものだ、鈴谷が元気になるなら出来る事なら我が儘を聞こう」



これで鈴谷が負い目を感じてくれなくなるなら出来る限りの事は努力しよう、まだ若い女子なのに軍人なんていう難儀な職業に従事しているなだから。



鈴谷「……じゃあ、私にキスしてくれたら嬉しいかなぁ、鈴谷ってすごいブスだけどやっぱり憧れなんだよね」


鈴谷「普通の男の人に頼んだらこんな事は絶対にバカにされるし、ブスってやっぱりすんごいハンデだよ」


鈴谷「それに提督じゃなかったらお願いできないし、提督だからこんな事お願いできるんだと思うんだよね、流石に唇にキスしてほしいとは言えないけど」


鈴谷「どうかな? 出来そうかな? あ、無理だったら全然断ってくれてもいいからね!?」


提督「キス、魚の鱚ではないとは思うが、もしかして接吻のキスか!?」


鈴谷「提督ってばまだ若いんだからオヤジギャグを言うのは早いよ、当然唇でするキスのほうなんだけどさ」



いやいやいや、ギャルっぽいけどこんな美少女にキスしてほしいとか…… 慣れてきたとはいえまだその辺りの価値観は簡単には変わらん。


しかし鈴谷も勇気を出してチャンスを物にした、俺はその義務に答えるべきだろう、俺が同じ立場だったら出来るかどうかは怪しい。


ただ素肌にキスをするのは気が引ける、そういう関係でもないので唇は論外、おでこと頬は子供扱いしているようでどうにもな……


手の甲は気障な感じがして自分のキャラクターではない、海外では髪の毛にキスをするということある、これなら素肌ではないから大丈夫だろう。



提督「わかった、キスをしよう、ただ部位の指定はこちらでさせてもらおう、あくまでも俺と君は上司と部下なのだからな」


鈴谷「えっ!? 本気でキスするの!! 自分で言ってなんだけどさ、さすがに驚きだよぉ、うわぁ、すんごいドキドキする」


提督「目は閉じなくても良い、顔の部位にするわけではないからな、拍子抜けするかも知れんがそこは勘弁してくれ」


鈴谷「拍子抜けどころか理想の男性にキスしてもらえるんだよ!? そんなんするわけないじゃん!!!」



凄まじく期待しているだけにがっかりさせないで済むのか疑問になって来た…… 男らしくやれるだけの事はやろう、後悔の無いように。


鈴谷の髪の毛は…… ふむ、長いには長いが極めて長いというわけではないな、改めて観察すると腰部まで長いわけではない、背中止まりか。


跪いてからの髪の毛にキスは難しいな、あまり気障ったらしい事はしないでシンプルに行うか……



提督「鈴谷、後ろに失礼するぞ」


鈴谷「えっ、後ろ? 別にいいけど」



鈴谷の背後に回ると、彼女はやや緊張し身を硬くさせた、鈴谷の右側面から髪の毛を優しく一束纏め、掌へと乗せる。



提督「ふむ、艦娘になると髪色や質が変化する娘は多々いるが、実に綺麗な髪だ」


鈴谷「……えっ?へっ? ……な、なにっ?」


提督「緑色ではあるが竹林を思い出させる、髪の色としては派手ではあるが気分が落ち着く色だな、光沢も綺麗だし手触りも質の良い繊維を触っているかの様だ」


鈴谷「髪の毛を褒めてくれるのは嬉しいけど、目的が違くない?と思うんだけど……」


提督「いや、目的は合っているぞ、では、失礼する」


鈴谷「合ってるってどういう…… ッッッ!? あwせdrftgyふじこp!!!」



鈴谷の髪の毛の束に向かって5秒程キスをする、流石にべったりと口を付けるのは品が無いので軽く触れる程度にした。


僅かな時間ではあるがそれ以上の時間を感じられた、鼻の間近に鈴谷の髪の毛があるので都合上、甘い匂いが鼻腔をくすぐる。


やがて髪の毛から唇と鼻を離す、これで鈴谷は満足してくれただろうか? 髪の毛を静かに手から離し鈴谷の方へ視界を動かした。


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1: SS好きの名無しさん 2017-12-09 22:09:48 ID: w9Rsjwbx

part2ですか気分が高揚します。

2: SS好きの名無しさん 2017-12-09 22:20:56 ID: mw5k2hcr

待ってた
更新ありがとう!!

3: SS好きの名無しさん 2017-12-09 22:30:32 ID: BUUJ1EMy

気長に更新待ってます❗

4: SS好きの名無しさん 2017-12-10 08:41:47 ID: sCOL3LpK

おお!
part2待ってました!
更新楽しみにしてます!

5: SS好きの名無しさん 2017-12-16 01:12:41 ID: v7lStrwa

深く考えずにw楽しみにしてますので。

6: SS好きの名無しさん 2017-12-20 12:22:15 ID: RJE52nai

生活力は日々の生活のなかで磨かれるからね。代わりにしてくれる人が居ると延びんのよw

7: MPL 2017-12-26 21:39:12 ID: gibDwU0x

>>1 >>2 >>3 >>4 >>5
楽しんでいただけて幸いです、出来る限り更新していきたいと考えています

>>6
私も一時は一人暮らしでしたが、実家に戻ってからは母に任せっぱなしでぐうたら具合が元に戻ってしまいました、まさに家事能力が延びません

8: SS好きの名無しさん 2017-12-31 08:50:04 ID: Q06bMh8u

あかん!暴動が起きるぞ!
こういう匂いものは生き物のサガや!
子犬やぬこがゲームしてるとき足に絡み付いて昼寝するくらい自然なことだw

9: SS好きの名無しさん 2017-12-31 20:55:09 ID: eDaaObMa

待ってたぞ!
良いお年を!

10: 芝犬 2018-01-01 01:21:43 ID: HZSeWtsu

更新時間神かよw

11: SS好きの名無しさん 2018-01-05 11:06:12 ID: XKIGAO1_

更新時間狙った?

12: MPL 2018-01-06 21:13:05 ID: rzNDX6ZA

>>8
人間も動物の一種なのでやはり匂いは性的な魅力があるのでしょうか、男性が女性の匂いで性的な要素を感じるというのは良く聞きますが、逆はあんまり聞いたことは無いですね

>>9
あけましておめでとうございます、今年も閲覧ありがとうございます

>>10 >>11
更新時間(17時17分17秒)はただの偶然です、全く意識していませんでした(;´∀`)

13: SS好きの名無しさん 2018-01-07 11:39:53 ID: A1TtQpCY

遅くなりましたが
明けましておめでとう!
今年も宜しくお願いしますねw

14: SS好きの名無しさん 2018-01-13 08:22:07 ID: fI1K2ujt

頬か額にが妥当だけど空気読まずに手の甲の部分に口付けを!

15: 芝犬 2018-01-13 11:45:16 ID: -oVlrS_M

口にしようとしたら熊野が入ってきて...


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