2019-06-22 12:56:35 更新

概要

美的感覚がおかしな世界で提督が頑張って生きる話+色々と小話(予定)


前書き

物書きド素人且つ遅筆です、ゆっくりしていってね!!
かなりのご都合主義で進行。

※稀に細かい部分や勘違いしていた部分を修正する場合があります。

2018/1月中旬 1万PV達成、お気に入り8、しおり233、コメント15、オススメ0、評価25、応援19
2月頃 2万PV達成、記録失念
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二作目まで10万PV達成するとは思ってもいませんでした、本当に閲読ありがとうございます、完結が難しくなってはきましたが出来るところまでは書き続けようと考えています。


小話:提督、体臭を気にする(後編)

────提督、数分後、酒保



食堂の厨房から酒保へとやって来た我々だが、高雄が言うには酒保の店番は交代制であり、非番などで暇を持て余した艦娘がたまに手伝ったりもしている様だ。


酒保自体は鳳翔の居酒屋の一画を間借りして運営している、名前こそ酒保ではあるが実態としては鎮守府運営の施設内コンビニに近い。


施設内コンビニみたいな物とは言え、一般人が買いに来るという事は基地のイベントでもしない限り先ずは無いので、艦娘や憲兵、そして妖精さんくらいしか利用は無いそうだ。


本日の店番は…… 龍驤とグラーフか、酒保内は三日月と望月が仲良く菓子類を物色している。



提督「ここに来るのも随分と久しぶりだな、お邪魔するぞ」


龍驤「お~、司令官が来るなんて珍しいやん? 今日は何か買いに来たんか?」


グラーフ「いらっしゃいませアトミラール、今日も変わらず麗しき人だ」


提督「その誉め方は気恥ずかしいからやめてくれ、今日は酒保に用があるというより艦娘に用があって基地をうろついている」


提督「しかし珍しい組み合わせだな、グラーフはいつもビスマルク・金剛・榛名と一緒に居る印象がある」


グラーフ「コンゴウとハルナは姉妹なので一緒に居る事が多いし、ビスマルクにとって二人は教導艦でルームメイトだからな、そこに私が入ればそうなってしまうものだ」


グラーフ「それにビスマルクは同郷だからな、母国語で話し合える希少な仲でもあるし、彼女との会話は祖国を思い出させてくれる、決してこの国が悪いという事ではないが祖国はやはり特別な物なのだ」


龍驤「せやな、ウチもな、関東の地元にたまには帰って家族に会いたいもんや、軍人だからそうもいかんけどな」


長門「待て、龍驤、お前は関東育ちなのか? その訛りはどうしてそうなったんだ……」


龍驤「一般人だった頃は標準語やったんやで、『龍驤』の艤装に適合して艦娘になったらこぉんな言葉遣いになったんや、違和感無しに最初から喋れたのはちょお~っち不気味やったけどなぁ」


高雄「ところで龍驤とグラーフとは珍しいですね、あまり接点が無さそうな印象ありますが」


グラーフ「私はまだこの国と基地には不慣れな部分が多少あってな、訓練にも少し余裕が出てきたので酒保で極東式の接客を教わっていたのだ」


グラーフ「リュージョーは実に頼りになる艦娘だ、外見は駆逐艦の様だが経験はナガトやホウショウの様に豊富だ」


龍驤「ちっちゃいのは言うなや…… グラーフが大きすぎるだけや、と言いたいところなんやが他の空母はほとんど大きいからなぁ」


龍驤「んでぇ、提督達は酒保に何の用で来たん? 物を買いに来たって感じでは無さそうやけど」



長門がこれまで通りに簡潔に説明をする、それを聞いた二人、グラーフはその場で考え込み、龍驤は店内に居る三日月と望月に声をかけた。



龍驤「おぉ~い!!! そこのミカとモッチー!! ちょっと来いぃや!!」


望月「んぁ? えぇ~…… 休暇だからお菓子とジュース買ってダラダラしようと思ってたのに~、めんどくさ……」


三日月「ちょっとモッチー!! 今そちらへ行きます~!!!」



三日月が気だるそうな望月の腕を引っ張りながらこちらへと小走りで向かってきた、望月は戦では豪胆な部分があるので問題ないが、普段の素行は少し苦笑いしたくなる。



三日月「ごめんなさい龍驤さん、モッチーたらいつもこんな感じで……」


望月「んなこといったってねぇ、龍驤さんも別にそこまで気にしてないんじゃないの、んで何か用?」


三日月「司令官と高雄さんと長門さんもいらっしゃるんだから、しっかりとしなさい!!」


提督「三日月はアクの強い姉妹の中では良識人だな、俺としてはあまり気にしなくても良いと思っているが」


三日月「駄目です!! 司令官がよろしくても長門さんの様に生真面目な方には冗談では済まない事もあるんですよ!!」


提督「生真面目か……」


長門「もういいだろう…… その様な目で私をあまり見ないでもらおう……」


龍驤「まあまあ、そんくらいにしといてぇ、ミカとモッチーは司令官の体臭ってどう思うん? 司令官って自分は臭いんじゃないかって思ってるらしいんやけど」



三日月は顔を赤く染めて驚き、望月は少し思案してから全方位から俺に近づいて鼻に意識を集中して嗅いでいる。


流石は望月、面倒に考えるより嗅いだ方が早いと実行するか。



三日月「ああっ!? もうモッチーってばそんな失礼な事を!!」


望月「三日月はうるさいなぁ、百聞は一見に如かずって言うでしょ、嗅いだほうが早いって」


龍驤「なんともモッチーらしいというか」


グラーフ「これは実に驚きだな、流石に私ではこのような事は出来ない、羨ましくもあるな」


龍驤「キミはもうちっと言いたい事を包み隠したほうがええんちゃうん? 素直すぎるってのも厄介やな」


グラーフ「何を言うリュージョー、アトミラールには美徳として褒められたのだぞ、これ以上の名誉はそうそう無いだろう」


望月「ん~、匂いを嗅いだ感じとしては特に臭いって感じは無いよねぇ、無臭っていう感じ」


三日月「モッチーてば本当? し、司令官、失礼します!!」



次は三日月が全方位から俺の体臭を嗅ぎ始める、年端の行かない美少女に体臭嗅がれるとか、元居た世界だったら完全に事案じゃないか……



三日月「すごいです!! 無臭とは多分違うとは思いますが不快な臭いは全くありません!!」


グラーフ「なるほど、リュージョーは嗅がないのか? ミカヅキやモチヅキと似たような外見年齢だから大丈夫だろう?」


龍驤「キミはウチをからかっとるんか? まあ、そこまで言われたらやってやろうやないの、折角の機会やしな!!」



三日月と望月の感想に頷いていたら次は龍驤である、空母の中では年長組の龍驤ではあるが普段の振る舞いは実に可愛らしい、まるで駆逐艦の様だ。



龍驤「んっ? んん~っ? 不思議やな…… マジで不快な臭いがせぇへん、司令官の身体には奇跡でも詰まっとるんか?」


提督「何度も言うようだがただの人間だからな、妖精さんと会話が出来る普通の人間だ」


高雄「その時点で少し普通ではないというのは指摘したらアウトでしょうか」


長門「その点は言ってやるな、少し前だったら妖精さんとお話しできるなんて頭がお花畑扱いだからな」



それは少し言い過ぎなのではないか?とも思ったが、深海棲艦と艦娘が現れる以前だったら間違いなく危ないヤツ扱いなのは否定できない。



グラーフ「さて、皆もアトミラールの匂いが分かったところで、どのような答えを出すか、だな」


龍驤「グラーフは匂い確かめなくて良いんか?」


グラーフ「問題は無い、多少臭おうともアトミラールを否定する理由にはならない、それに体臭が臭くないのも既に知っている」


龍驤「その余裕は一体なんなんや…… あとほんのりドヤ顔するのやめぇや」


グラーフ「ほぅ、ドヤ顔とな、それはどういう顔なんだ?」


望月「それはあとで龍驤さんが説明するから、ちゃっちゃっと司令官の体臭について意見しません? 正直面倒くさい……」


三日月「本当にすいません、こんな態度の妹で……」


龍驤「まあ、モッチーの言う通りでもあるからミカは気にすんなや、ウチとしてはそうやなぁ…… んっ?」



何だ? ど、どうしたんだろうか、龍驤の動きが突然止まってしまった、心配なので声をかけてみようと思ってみたが……



提督「どうした? 身体の調子でも……」


龍驤「な、なんでもないんやで!? 司令官の体臭は、そ、そうやなぁ……」


提督「随分と顔が赤いな、身体の調子は大丈夫か?」


龍驤「ひゃあ!? きゅ、急に近寄らんといてや!! びっくりするやないかい!!」


提督「おおっと、すまない…… 望月と三日月は大丈夫か、調子は悪くないか?」


望月「ん、んあぁ? あっ、大丈夫大丈夫、だと思う、多分……」


三日月「ふぇっ!? す、すみません!! な、なんだか急に熱っぽくなってしまいまして…… 身体がふわふわします……」


長門「……堕ちたな」


高雄「……恐らくそうでしょう」



いつもは真面目なのに今日に限って二人とも頭のネジが抜けてるな…… 恐らく体臭がフェロモンとして作用してしまったのだろう。


つまりこの三人は少なくとも俺に好感を持ってくれているという事か、こんな知り方はしたくなかったがこれからも期待には応えないといかんな。


流石にこのまま見過ごすという訳にも行かず、理由をでっちあげて健常な長門とグラーフに三人を任せる事にした。



提督「三人とも疲労が溜まっているのかも知れないな、グラーフだけだと三人を寮へ連れ帰るのは大変そうだから長門も手伝ってあげてくれないか?」


長門「了解した、寮まで連れて行けばよいのだな? グラーフは龍驤を運んでくれ」


グラーフ「わかった、そちらはミカヅキとモチヅキを頼む、しかしアトミラール、店番はどうする?」


提督「グラーフが龍驤を寮まで送り届け、代理を見つかるまで臨時閉店して構わない、余暇がありそうな艦娘に頼んでみると良い」


龍驤「うーん…… ごめんなぁ司令官、なんか身体が浮ついてしもて…… 顔も熱くてかなわんなぁ」


提督「気にする事は無い、たまにはゆっくり休むんだ、教導艦と空母筆頭の二役で普段から大変だろうからな」


提督「三日月と望月も今日は休暇だが、遊ぶのは控えてしっかりと休むのを勧める」


望月「そ、そうだねぇ、司令官の言うとおりにするよ……」


三日月「ご迷惑をおかけします……」



三人は長門とグラーフに担がれて酒保を後にした、流石に一日休んでいれば問題は無いだろうと思いたい、常習犯の高雄達も普通に過ごしている様なので。


まさか調査の最中にKOしてしまうとはな、好感を持ってくれている異性にはやや問答無用で効果が出てしまうのは厄介だ。


次に猫吊るしに出会う機会があったら制御できるかどうかを確認しておかねばならない、今回は初めての意見無しという事になってしまった。



提督「今回は意見が聞けないというまさかの事態になってしまったな……」


高雄「強力なのは薄々と感じていましたがまさかここまでとは思いませんでしたわ」


提督「意見は聞けなかったが効果は良く分かったので、俺としては香水したほうが良いのではないかと」


高雄「駄目です」


提督「……そんな威圧的な笑顔で即答しなくても良いだろう」



さて次は何処へ行くとしよう、残るは娯楽施設とトレーニング施設くらいだろうか、両方ともよく行く施設ではあるから大体の面子は予想できる。


トレーニング施設は人間用しか使えないが身体が鈍らない様に定期的に通っている、らしくないと良く言われるがビデオゲームも子供の頃から好きなので、娯楽施設にもよく顔を出している。


おかげでブスな上にゲームヲタと蔑まされたこともあったな…… ゲーム自体に罪は無いしストレス解消に最適なので止める気はさらさらないが。



高雄「次の聞き込みは何処へ行くのでしょうか?」


提督「そうだな、トレーニング施設へ行こうか、高雄が鍛錬している姿を見たことは無いがちゃんと鍛えているか?」


高雄「ただでさえこんな容姿なのに、重量物を持ち上げて踏ん張っている顔を提督には見せられません」


提督「ふむ、君は実に淑女だからな、努力も水面下でするという事か、流石だな」


高雄「提督、いつもお褒めいただいてとても光栄ですが、もっと美人にお世辞は言うべきですわ」


提督「うむ…… そうか、善処する、ただ俺は君にお世辞を言っているつもりはないとだけは言っておこう」


高雄「提督はとてもお優しいですのね、私、勘違いしてしまいますわ」



高雄はそう言うと困った様に微笑んだ、美人はどんな顔しても美人だな、羨ましいものだ。


次はトレーニング施設と決まったので向かうとしよう、鍛錬好きの艦娘と来たら大体目星は付いている。



────提督、数分後、トレーニング施設



トレーニング施設は簡易トラックに隣接して建てられている、外では艦娘達が鍛錬の為にひたすら簡易トラックをぐるぐると走り続けている。


五十鈴と香取が厳しく指導と監視をしている中で、駆逐艦と潜水艦が力を振り絞って走る、この努力が彼女達の血肉になる事を願おう。


俺達が用事があるのは簡易トラックではなく、トレーニング機器が置いてあるトレーニング施設の方だ。


トレーニング施設には人間用の機器から、重機でも使わないと持ち上がらない様な艦娘用の機器が置いてある。


艦娘用のトレーニング機器には、不慮の事故を防ぐために必ず重巡洋艦以上の馬力を持つ艦娘の補助役を付ける様に義務付けをしている。


さて、今日此処に居る艦娘は長良、大鳳、浦風、浜風、磯風、谷風の6人か、浦風がいるのは珍しいな。



提督「やあ、今日も頑張ってるな、調子はどうだ? 怪我には気をつけて鍛錬するんだぞ」


長良「あっ、司令官!! こんにちは!! マシンのセッティングしましょうか?」


提督「いや、今日はトレーニングをしに来たわけではないからな、しなくても大丈夫だぞ」


長良「え~…… それはとても残念です、司令官とトレーニングするの楽しみなんですよ~」


大鳳「こんにちは提督、本日はどの様なご用向きでしょうか?」


提督「今日は色々と施設を巡って艦娘達の意見を聞いている、質問の内容は…… 高雄、頼む……」


高雄「承りましたわ、実はですね……」



今日だけでもう何度やっているんだろうか、このやり取り…… 執務を止めてまで聞くような事でも無い様な気がしてきたぞ……


説明をしている内に浦風達もやってきて次第に賑やかになっていく、女性というのは本当にお喋りに敏感だ、一部例外も居るが。



浦風「ほぉ~、提督さんはなして自分の匂い気にするけぇ?」


提督「それはプライバシーの問題でな、少々話しにくいので聞かないでおいてくれないか? しかし、君が此処に居るとは珍しいな」


浦風「いっつもはウチだけでやっとるんじゃ、この三人は元気すぎてトレーニングについていけんねぇ、女子らしさ足りんわぁ」


磯風「ふふん、浦風は艦娘として私達に負けているという事だな、我々艦娘に過剰な女らしさは要らないのだ」


浜風「貴女は少し度が超えているとは思いますが、本当に飾り気が無いですからね、磯風は」


谷風「谷風達が着飾ってもさぁ、正直微妙というか豚に真珠すぎてねぇ、そんなことしてる暇があったら戦いで役に立つ事したいねぇ」


浦風「連れはこんなんやし、みんな女子らしさっちゅうもんがわかっとらんねぇ、この子らってば部屋に居るとなぁ~んもせん」


浦風「磯風に料理をさすと食材を廃棄物に、浜風は食べるのだけは得意やし、谷風もちぃ~とも料理を覚えようとせんねぇ」


浦風「食事・洗濯・掃除・裁縫、なしてウチが全部やっとるん? 怒らんけ、言うてみぃ? ん? んん~?」


磯風「正直すまんかった」


浜風「浦風の家事力が高すぎるのがいけないのです、つい頼ってしまうのです」


谷風「浜風の言う通りなんだよねぇ、それに家事なんて谷風のガラじゃないねぇ」



何故この娘達はわざわざ煽る様な事をするのか、磯風はいつも以上のドヤ顔で誠意の無い謝罪をするかよ……


あ、やばいぞ、怒らないとか言ってたがあの顔は怒る寸前だぞ、このあたりで止めねば。



提督「浦風はとりあえずは冷静にな、この三人の生活力の無さは古鷹・飛鷹に、料理は間宮と鳳翔に相談する」


提督「了承を得られた場合は普段の訓練と合わせてみっちりとしごいて貰う事にする、みっちりとな」


浦風「流石は提督さんやねぇ!! 頼りになるけぇ!!」


浜風「そんな!! 横暴です!! プライベートに踏み込んでくるのは職権乱用と思います!!」


提督「浜風、君とタイプの似ている姉の不知火の生活態度は見事な物だぞ、それでいて陽炎を立てる事も忘れないし、黒潮ともお互いの苦手な部分を補い合っている」


谷風「かぁっ!? なんてこったい!! というか谷風がダメならモッチーとかも生活態度どうなってんのさ!!」


提督「望月はああ見えて後回しできない物を全て片づけてからダラダラしているぞ、三日月と一緒に家事もしている、だから問題はない」


磯風「この磯風に必要な物は戦いに必要な力だけだ、司令もそれはわかっているだろう? それに司令も家事全般は苦手であろう、全て高雄に任せているではないか」


提督「ドヤ顔で決めたつもりだろうが苦手分野をみっちりとしごかれて克服して来い、それに俺は下っ端時代に全部叩き込まれたから一通りできるぞ」


提督「高雄が明日から来なくなって代理の秘書艦が居なくとも、時間節約以外の問題は無い、かなりギリギリの業務進行になると思うが」



以前は一人で執務に加え家事の一部までやっていたと考えると、なんというか今の環境がとても恵まれていると再認識出来る。


本当に高雄だけでなく役割分担をしてくれている皆に感謝せざるを得ないな。



磯風「ぬうっ、この磯風、今回は退こう、なので鳳翔さん達による特訓は免除してほしい」


提督「だからドヤ顔で譲歩になっていない譲歩をやめないか、決まったことだからな、それとも陽炎に告げ口してほしいのか?」


磯風「っ!? そ、それは勘弁してもらいたい……」


谷風「磯風ったらもう逆らわない方がいいって、陽炎姉ちゃんに知られたらド偉い事になっちゃうよぉ」


浜風「そうです、ここは甘んじて受け入れるべきです」


提督「君達はそんな事を言えるような立場ではないのだがな、何故そんな強気で交渉するのかわからん……」



流石は曲者揃いの陽炎型、一筋縄ではいかない娘達ばかりである、これを統括している陽炎の心労も汲み取るべきだな……



長良「司令官って本当に何でも出来ますね、トレーニングマシンも一部が壊れた時に応急処置してました、器用ですよね!!」


提督「それなりに使っていると大体分かってくるものだ、応急処置したら流石にすぐに業者を呼ぶけれどな」


大鳳「文武両道・容姿端麗な上に家事全般まで出来る、やはり提督はすごいです」


提督「文武両道といえる程に学歴がある訳でもないけどな、出来る事はしっかりと、出来ぬ事と知らぬ事は正直に教えを乞う、そうして来ただけだ」


提督「見た目はまぁ、その、なんだ、君達がいつも褒めてくれるから嬉しいぞ、ありがとう」



実際こちらに来てかなり経つが、ようやく自分の容姿が褒められるのに慣れてきた、気分が前向きになれるのを実感している。


ハンサムには気前と性格の良い人間が多いというのも割と頷ける気がする。



浦風「ええっと、提督さんの話を脱線させてしもうてごめんね、この三人のお仕置きは決まったし、お話戻そうかぁ」


提督「気をつかってもらってすまないな、俺の体臭の話はあまり深く考えず正直な意見を出してくれれば助かる」


浦風「せやねぇ、ウチはわからんけぇ、いっつも清潔な格好しか見とらんし、近づいても臭い!!って思うた事はないけん」


提督「ふむ、浦風はそう思うか、長良はどうだ? 意見を聞きたい」


長良「えっ、私ですか!? 司令官ってとってもいい匂いしますよね!! 実は何だかよくわからないんですけど、司令官の近くでトレーニングするといつもより頑張れるんですよ!!」


長良「だから司令官が来てくれるのがとっても楽しみなんです!! 司令官って筋肉がセクシーで惚れ惚れします!!」


提督「おお、そうか、俺が居ると頑張れるって嬉しいな、筋肉については一応見栄えはそんなに考えて鍛えてはいないが褒めてくれるならうれしいぞ」


提督「匂いについては良い匂いなんだろうか? ここに居る時は汗だくの頻度高いと思うのだが……」


長良「不思議と司令官の汗って臭わないんです、汗も粘ついていないでさらっとしてますし、さらっとしている汗は臭くないそうですよ?」


提督「そうなのか? 自分ではあまり考えたことは無かったな、ありがとう、参考になった」



女の子から容姿だけでなく筋肉まで褒められるなど、絶対に人生で起こる事は無いと思っていただけに思わず涙一つこぼしそうになるが、上に立つ者としてぐっと堪えなければ……


そういう長良もこっちが心配になりそうなくらいにハードなトレーニングをするので女性としては見事な体格をしている、艦娘的にはあのくらいで丁度よいとの事だが。



大鳳(長良って純粋で羨ましいわ…… 私なんて提督の体臭と薄着姿と筋肉目当てでトレーニング施設に通う頻度を以前より上げたのは言えない……)


提督「大鳳は俺の体臭についてはどう思う?」


大鳳「あっ、えっ? わ、私ですか!? えっとですね、提督の体臭については良い匂いがすると思います」


大鳳「あとは大体長良と同じですね、元気になる匂いといいますか癒される匂いといいますか、それを消してしまうなんて勿体ないです」


提督「ふむ、そうか、大体の意見は纏まって来た感じがあるな」





磯風「司令の体臭についてならば、この磯風も言わせていただk」


提督「君達は意見以前の問題だ、先ずはしっかりと生活態度を改めてからにしてもらうぞ、要らぬ仕事と言う気は無いが苦労を増やさないでくれ……」


磯風「今日の司令はいつもより冷たい、だが私は挫けないぞ」


提督「だからドヤ顔をやめろと」


谷風「どうしてこうなっちゃったんだろうねぇ」


浜風「磯風が無駄に提督を煽るのがいけなかったのです」


谷風「浜風も大概にふてぶてしいと谷風は思うよ……」



トレーニング施設でも意見を聞けた、次の施設に向かう事にするか、次は確か娯楽施設だったか。


普段は雑談してもそこまで艦娘からの悩みや問題は出てこないものだから、今日は面食らってばかりだ。


リーダー格の艦娘や家事が良く出来る艦娘の悩みはよく聞いておいた方が良いかもしれん……


長良・大鳳・浦風達に別の施設へ行くと告げると元気よく見送りしてくれた、磯風・浜風・谷風はテンションが目に見えて下っているのが分かる。


ドアから高雄と一緒に廊下へと出ていく、次は鬼が出るか蛇が出るか……



────提督、数十分後、提督執務室



色々な施設を回り、廊下で出会った艦娘達の意見も含め、結論から言えば「匂いは気にならない、良い匂いがする、消すのは勿体ない」という意見が過半数を超えていた。


各施設の妖精さんも俺の匂いに関しては無臭で影響も特に無いとの事だ、妖精さんにとっては無害の様だ。



高雄「ふふっ、やはり提督のお身体の匂いを香水で消すのは無粋!! と言って差し上げますわ」


長門「高雄の言う通り!! 我らにとって大きな損失以外の何物でもない、皆も良く分かっている、提督も分かっていたはずだ、無駄な抵抗だったようだな!!」



まさか普段は精悍な顔立ちしか見せない長門がドヤ顔を見せる日が来るとはな…… 外見と性格も磯風に似ているから尚更嫌がらせに思えるぞ。


まあ、磯風とは違って生活態度も仕事も批評をする必要は無い位に完璧ではあるが…… 出撃前に俺の服の匂いを嗅いでいた事を除いてはだが。



提督「わかった、俺の負けだ、香水はつけない約束だったな、このままで居る事にする」


高雄「やりましたわ!! 長門、私達は勝利を手に入れましたわ!! 数少ない癒しを守ることが出来ました!!」


長門「そうだな高雄、だが私達だけの力ではない、艦娘皆の力があってこその勝利だ、道半ばで倒れた大淀も安らかに眠れるだろう」


提督「待ってくれ、大淀は別にまだあの世に召されていないからな、勝手に殺すな」


提督「そして匂いはこのままにするとは言ったが、俺の私物は出来る限りの物は全て私室へ移動させて鍵をかけるからな」


提督「全く、上着の着脱だけで無駄に手間がかかるようになってしまった、非常に困ったものだ」


提督「風紀の都合上、こういう事だけは絶対に譲れないのでな、二人だけでなく艦娘全員に理解してもらう必要がある、説明するのが大変だ……」


提督「今夜のフタマルサンマル、長時間遠征以外の艦娘達を全て食堂へ集合するように通達してくれ」


高雄「全館放送でもよろしいのでは?」


提督「妙な反応を示す艦娘もいるかも知れんからな、生の反応を見ておきたいというのもある」


長門「了解した、提督の上着を嗅げなくなるのは残念だが…… 最悪の事態は阻止できただけ戦術的勝利と言えよう」


提督「君は何を言っているんだ」



────提督、数時間後、食堂



あれから数度、全館放送を行いフタマルサンマルに食堂に集まるよう基地内に居る全艦娘へ通達。


現在は予定時間丁度になり遅刻した者は居らず艦娘達も無事に全員集まったようだ、普段は普通の女の子と変わらないが職務には忠実且つ素直で本当に助かっている。


しかしフェロモン的な効能があるとはいえ、俺の服の匂いを嗅がれるのは風紀上非常に困る、普段聞き分けの良い娘達を惑わす自分の体臭が以前とは違った意味で厄介だ。


艦娘達は緊急で呼び出された為、何事かとやや動揺を隠せずにいる、基地の存続に関わる程の事ではないが多数の艦娘が問題になっているので、皆の前で集会をするしかなかった。



陽炎「こんな時間に呼び出しだなんて司令ったらどうしたのかしら、まさかうちの妹が何か問題を……」


不知火「いえ、まだそのような話は基地内にも広がっていません、そして司令からも伺っていないので可能性は低いかと」


黒潮「姉妹の問題なら全艦娘を招集させるようなことはせんやろ、なんか大きな問題かもしれんね」


親潮「ど、どうしましょう姉さん達、この基地や皆さんに関わる事だったら……」


秋月「信じましょう提督を、そして問題があったら皆さんで力を合わせて困難に立ち向かいましょう!!」



前の方にいる陽炎達から雑談が微かに聞こえてきたが、そこそこ深刻に事態を捉えて居る事に申し訳無さが湧いてくる。


とりあえず説明を始めることにしよう、出来るだけ簡潔に済ませたいところだ、貴重な休み時間を削ってまで来させているのだから。


隣に居る長門に静かにさせる様に目配せをする。



長門「皆、静粛に!!! これから提督が現在起きている問題を話してくださる!!!」


提督「ありがとう長門、艦娘の皆、貴重な自由時間を削って呼び出した事を予め謝っておく、すまない」


提督「非常に言いにくい問題が起きた、風紀に関わる問題なのだが、その、な……」



艦娘の群衆から「風紀の問題って何?」「提督が躊躇うような事ってなんだろう」とも取れる空気が漂ってきた。


俺だってこんな情けない問題で皆を呼び出したくは無かったが、艦娘が関わってしまった以上は言うしかない。



提督「お、俺の体臭が染みついた衣服を嗅いでいる艦娘が居るという話を聞いた、ある程度の目星は付いている、だが犯人を明かすつもりは毛頭無い、だからプライバシーは安心してほしい」



艦娘達が一気にざわつき始める、微かに反応して身動きを止める者、大げさに騒ぐ者、突拍子な出来事過ぎて変な笑い方をする者。


大まかに分けるとこんな感じの反応だ、事の発端になった鈴谷に至っては身体を硬直させて青ざめて小刻みに震えていた。


長門は素知らぬ顔でスルー、高雄は微妙に視線が定まらず、回復して意識が戻った大淀は顔を赤くして汗をたらしている。


ざわつく艦娘達の中、俺に向け声と手を挙げている艦娘がいた、あれは加古だな。



加古「てぇ~とくぅ!! ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかい?」


提督「答えられる範囲ならば応じよう」


加古「犯人を明かせないのは分かるけど、どの時間帯とか何処で嗅いでたとかはOK?」



加古の隣に居る姉の古鷹が滅多に見せない焦燥と羞恥が混ざったような顔をしている。


古鷹も嗅いでいたには違いないが、こちらにも落ち度があるので明かさない方向で行こう。



提督「それについては申し訳ないが特定をされてしまう可能性がある、俺としては穏便に済ませたいのだ」


加古「提督がそう言うならしゃあないかぁ、突き止めて微妙な関係になるよりはずっといいかもね」


提督「理解してくれて何よりだ、皆も犯人を突き止めてやろうなどとは思わんようにな、頼むぞ」


提督「俺個人でどうにか解決するつもりだから詮索はしない様に、犯人の尊厳がかかっているからな」


提督「これは命令ではないが守らなかった者には相応の懲罰を与える事にする、くどい様だがくれぐれも犯人を探すような事はしてはならない」



動揺はやはり収まらないがある程度の納得はしてくれただろうか? そんな中で手を挙げた艦娘がまた一人。



鳥海「質問の許可をお願いします、提督」


提督「ああ、許可する、言ってくれ」


鳥海「許可ありがとうございます、提督としては犯人に対してどんなお気持ちでいらっしゃるのでしょうか?」


提督「俺としては怒ってもいないし、懲罰なども考えてはいない、ただこの場で言える事は風紀の都合上、今後は止めてほしいという事だけだ」


提督「ただ、対策を何もしないワケにはいかないので俺の私物は出来る限り私室へと保管して鍵をかけておくことになる」


提督「洗濯物も直接鳳翔に渡しに行くか、取りに来てもらう事になる」


鳥海「ご返答ありがとうございます、把握しました、鳳翔さんなら安心ですね」



実はその鳳翔も犯人だったりするのだが、反省もしている様だしもう一度信用してみようと思っている、家事のほとんども彼女が仕切っているのもあるしな……


自分なら安心と信用されている鳳翔は俯いて顔を真っ赤に染めている、これはつらい。


現状で言える事はこれだけと通達し、そして意見交換の間を設けるが艦娘達はザワつくだけで特に意見は無い様だ。


艦娘達に解散を宣言し解放する、少し経つと艦娘の皆は各々の目的地に行き、食堂には執務室によく居るいつもの4人になった。



提督「今回はまた違った意味で疲労感が強いな…… 今回の件の顛末、長門達も分かっているだろうな?」


長門「最悪の結果は免れたという結果だな、我々の勝利だ」


提督「いや、それはおかしいからな? 君達は執務室に居る頻度が高いから特に注意しないといかんな、全く……」


高雄「しかしながら、私達とて提督とは常に一緒にいられるワケではないですし、その隙を突かれたらどうしますか?」


提督「君までそんな事を言うのか…… 出来る限り一緒に居るしかあるまい、提督代理として外に出る事が多い長門はともかく、事務担当の高雄と大淀は常に気にかけないとイカンのか……」


大淀「えっ、それって嬉しい誤算ですね、提督と一緒に居られる時間がもっと増えるだなんて」


高雄「なるほど、それは確かに一理あるわね、確かに嬉しい誤算です」


大淀「いつも目を離さないで欲しいと公言している金剛さんが嫉妬しますね」



どうしてこうなった…… 此処に来た当初に比べ艦娘達も明るく逞しくなったと喜ぶべきなのか、なかなか複雑だ。


この基地や艦娘が以前から悩んでいた問題だけでなく、まさか問題を起こす気は毛頭なかった自分が問題の原因になってしまうとはな……


いつもの事ながら色々と考えさせられる騒動ではあった、人の上に立つという事の難しさを再確認した日だったな。



小話:体臭騒動鈴谷アフター

今日は僅かながらではあるが、どうにか確保をした空き時間を使って鈴谷を個人的に提督私室へと呼び出した。


あの厄介な俺の体臭騒ぎから数週間たったが、そろそろほとぼりも覚めたのではないかと感じつつあるので、鈴谷と話し合いをしようと考えた。


放送で呼び出すのは大事になってしまう為、高雄に四つ折りにしたメモ用紙を握らせ中身を読まず鈴谷に渡すように念を押して依頼した。


彼女は真面目だから中身を読むとは思えないが、やはり多少の不安が出てしまうのは仕方ない。


指定した時刻のフタサンマルマル間近になる、そろそろ来るだろうと思ったところでドアがノックされ、可愛らしく爽やかな声が聞こえてきた。



鈴谷「チーッス、提督ぅ、鈴谷に何か用? こんな時間に呼び出すなんてムフフな事かな? なんちゃって!!」


提督「良く来てくれた、そこの座布団に座ると良い、脚は崩して楽にしてくれ、飲み物は天然水でいいか?」


鈴谷「ミネラルウォーターで全然大丈夫だよ、ありがと~、提督私室って高雄さんくらいしか入っちゃいけないんじゃないの?」


提督「入ってはいけないという規則はないが、あまり入り浸るのは好ましくはないだろう、年頃の女性が男の部屋にほいほいと入るものではない」


鈴谷「やっぱ提督って優しいよねぇ、艦娘ってとにかくブスしかいないのに、ジェントルメンってヤツだよねぇ」


提督「褒めてくれるのは嬉しいが、俺はそれなりに俗っぽいぞ、少なくとも紳士や聖人君子ではないな」


鈴谷「またまたぁ、提督が紳士じゃなかったら世の中の男子はみんなダメンズになっちゃうよ」



いつも通り明るく振る舞ってはいるが、これから話す事を考えるとやはり気が重い。


だがここで足踏みしていても埒が明かない、一気に切り出すべきだ、やるしかない。



提督「鈴谷、今日は真面目な話をする為に私室に呼び出した、この部屋なら防音処理はしてあるし、定期的に専門の人間に盗聴・盗撮器具がないか掃除をしてもらっているので、問題は無いだろう」


鈴谷「ええっ? ま、真面目な話って何それ…… ハッピーなネタだといいんだけどぉ……」


提督「残念だがそうではない、俺の衣服を嗅いでいる艦娘がいると少し前に騒ぎになっただろう?」


鈴谷「あっ、そ、そうだね、なったね、う、うん……」


提督「俺が調査を始めた理由、それは鈴谷が俺の洗濯物を嗅いでいるという密告があったからだ」



鈴谷、顔真っ青にして口をヒクヒクさせ乾いた笑いが漏れ出している、真正面から行きすぎたか? これはちょっと不味かった……


どうにかして宥めなければ、鈴谷だけが悪いわけではない、色んな要素が複雑に交わった結果が現状なのだから。



鈴谷「は、ははは…… バ、バレちゃった…… タレコミしたのって誰だったの?」


提督「熊野だ、夜中に偶然ではあるが君を見つけたそうだ、洗濯室で俺の洗濯カゴを漁っt」


鈴谷「わああぁぁぁああぁぁ!!! 言わなくていいって!! 言わなくていいからぁ!!! そ、そっかぁ、熊野かぁ、しょ~がないよねぇ、あはは……」


鈴谷「ああ~…… そうかぁ…… 提督本人にバレちゃったんだ…… ホントどうしようこれ、もうどうしようもないんだけどさぁ……」



いかん、鈴谷がちゃぶ台を見つめながら虚ろな目でぶつぶつと呟き始めた、何をするのか予想が出来ん。


いきなり大暴れとかされたら、いくら鍛錬好きとは言え生身の人間の俺一人では止めるのは不可能だ、やはりもっとやんわりと切り出すべきだったか……



提督「す、鈴谷、ちょっといいk」


鈴谷「提督、今すぐじゃなくてもいいから艦娘って止める事出来るのかなぁ…… 鈴谷、自分の所為だってわかっているけど、提督と顔合わせて艦娘するの結構辛いかもしんない……」


提督「少し待て鈴谷、君は今、急な展開で思考と感情が追いついていないだけだ、落ち着くんだ」


鈴谷「この前の臨時集会で流石に懲りてさぁ、もう提督の匂い嗅ぐのやめようと思ってぴったりと止めたんだけど…… 一番最初にバレてたなんて思いもしなかったよね……」


鈴谷「それに提督も気持ち悪いと思ってるんじゃないの? 鈴谷ってお世辞にも可愛いなんて口が裂けても言えない見た目の女子だしさぁ……」


鈴谷「提督に気持ち悪いって思われるのはもう覚悟してるから、はっきりと言っちゃってもいいよ……」



鈴谷の目からは薄っすらと涙が滲み出てきていた、気持ち悪いなんて全く思ったことが無いのだが、今の鈴谷には迂闊な事は言えない。


一体どうしたものか、どうしたら鈴谷を落ち着かせることが出来るのか……



提督「鈴谷、落ち着いて聞いて欲しい、誰が洗濯物の匂いを嗅いだとかそういうことではないんだ、風紀上の問題であってな……」


鈴谷「提督だってさ、艦娘みたいな見たまんまブスよりは美人に匂い嗅いでもらいたいんじゃないの?」


提督「俺はこの騒動でそういう事を考えたことは無い、例え容姿に優劣があろうと風紀は守らなければならない、軍なら尚更だ」



色々と落ち着かせようとして見るも対女性の経験値が圧倒的に不足しているので、鈴谷の気持ちを静める事が出来ない。


本物の良い男ならば女性の気持ちを理解してあげられるのだろう、俺にはそれが無い、何とも歯痒いものだ。


いっその事、正直に切り出してしまうか? いや、正直に切り出した結果がこれだというのもあるのだが……


ぬうぅ…… 泥沼になってしまうよりはマシか? やるしかない!!



提督「鈴谷、君の気持ちを理解できなくてすまない、不甲斐無い上司ではあるが君の気持ちを知りたい、どうしたら君の気が済むのかを知りたい」


提督「俺はあまり異性との『まとも』な接し方というものを経験したことが無いんだ、だから女性の機微に疎いんだ、だから頼む」



思い切って真正面から謝る、女性に試したことはほとんど無いがこれで少し落ち着いてくれれば良いのだが……



鈴谷「そういう謝り方はずるいよ提督…… 提督はハンサムすぎて女の子と『まとも』なお付き合いした事はなさそうだけど、機会はメチャクチャ多かったんじゃないのかな」


鈴谷(提督って超イケメンの紳士だから、あんまり女の子怒らせたりしなさそう…… 普段もすんごい優しいし)


鈴谷「ああぁ…… ちょっと頭冷えたから気づいたけど、ただの逆ギレじゃんこれ……」


鈴谷「そ、そうだね…… もう気分が落ち着いたから大丈夫、大丈夫だからそんなに気を落とさないでよ、提督……」


提督「そうか、鈴谷がそういうなら良いのだが、本当に大丈夫なのか? こういうのはしこりがあるのは良くないと俺は考えている」


鈴谷「大丈夫大丈夫だって!! あ~、でもこんなチャンスあんまり無いしちょっとワガママ言っちゃおうかな?なんて…… ははは……」


提督「いいぞ、たまには言ってみるものだ、鈴谷が元気になるなら出来る事なら我が儘を聞こう」



これで鈴谷が負い目を感じてくれなくなるなら出来る限りの事は努力しよう、まだ若い女子なのに軍人なんていう難儀な職業に従事しているなだから。



鈴谷「……じゃあ、私にキスしてくれたら嬉しいかなぁ、鈴谷ってすごいブスだけどやっぱり憧れなんだよね」


鈴谷「普通の男の人に頼んだらこんな事は絶対にバカにされるし、ブスってやっぱりすんごいハンデだよ」


鈴谷「それに提督じゃなかったらお願いできないし、提督だからこんな事お願いできるんだと思うんだよね、流石に唇にキスしてほしいとは言えないけど」


鈴谷「どうかな? 出来そうかな? あ、無理だったら全然断ってくれてもいいからね!?」


提督「キス、魚の鱚ではないとは思うが、もしかして接吻のキスか!?」


鈴谷「提督ってばまだ若いんだからオヤジギャグを言うのは早いよ、当然唇でするキスのほうなんだけどさ」



いやいやいや、ギャルっぽいけどこんな美少女にキスしてほしいとか…… 慣れてきたとはいえまだその辺りの価値観は簡単には変わらん。


しかし鈴谷も勇気を出してチャンスを物にした、俺はその義務に答えるべきだろう、俺が同じ立場だったら出来るかどうかは怪しい。


ただ素肌にキスをするのは気が引ける、そういう関係でもないので唇は論外、おでこと頬は子供扱いしているようでどうにもな……


手の甲は気障な感じがして自分のキャラクターではない、海外では髪の毛にキスをするということある、これなら素肌ではないから大丈夫だろう。



提督「わかった、キスをしよう、ただ部位の指定はこちらでさせてもらおう、あくまでも俺と君は上司と部下なのだからな」


鈴谷「えっ!? 本気でキスするの!! 自分で言ってなんだけどさ、さすがに驚きだよぉ、うわぁ、すんごいドキドキする」


提督「目は閉じなくても良い、顔の部位にするわけではないからな、拍子抜けするかも知れんがそこは勘弁してくれ」


鈴谷「拍子抜けどころか理想の男性にキスしてもらえるんだよ!? そんなんするわけないじゃん!!!」



凄まじく期待しているだけにがっかりさせないで済むのか疑問になって来た…… 男らしくやれるだけの事はやろう、後悔の無いように。


鈴谷の髪の毛は…… ふむ、長いには長いが極めて長いというわけではないな、改めて観察すると腰部まで長いわけではない、背中止まりか。


跪いてからの髪の毛にキスは難しいな、あまり気障ったらしい事はしないでシンプルに行うか……



提督「鈴谷、後ろに失礼するぞ」


鈴谷「えっ、後ろ? 別にいいけど」



鈴谷の背後に回ると、彼女はやや緊張し身を硬くさせた、鈴谷の右側面から髪の毛を優しく一束纏め、掌へと乗せる。



提督「ふむ、艦娘になると髪色や質が変化する娘は多々いるが、実に綺麗な髪だ」


鈴谷「……えっ?へっ? ……な、なにっ?」


提督「緑色ではあるが竹林を思い出させる、髪の色としては派手ではあるが気分が落ち着く色だな、光沢も綺麗だし手触りも質の良い繊維を触っているかの様だ」


鈴谷「髪の毛を褒めてくれるのは嬉しいけど、目的が違くない?と思うんだけど……」


提督「いや、目的は合っているぞ、では、失礼する」


鈴谷「合ってるってどういう…… ッッッ!? あwせdrftgyふじこp!!!」



鈴谷の髪の毛の束に向かって5秒程キスをする、流石にべったりと口を付けるのは品が無いので軽く触れる程度にした。


僅かな時間ではあるがそれ以上の時間を感じられた、鼻の間近に鈴谷の髪の毛があるので都合上、甘い匂いが鼻腔をくすぐる。


やがて髪の毛から唇と鼻を離す、これで鈴谷は満足してくれただろうか? 髪の毛を静かに手から離し鈴谷の方へ視界を動かした。



鈴谷「あっ、あっ、なにこれぇ、髪の毛なのになんかえっちぃ…… くうぅっ」


提督「お、おい、大丈夫か? キスしたのはいいが何でこんな事に……」


鈴谷「ふぅ…… あぁ~、これちょっと、起き上がれそうにないかも…… ちょっと横になれば、大丈夫だから」



そう言うと鈴谷は畳に仰向けに身体を投げ出した、瞳が潤んで顔が全体的に紅潮している、このまま何事も無ければいいが。


呼吸も少しばかり荒くなっているが、本人が大丈夫と言っているならば問題ないだろう。



鈴谷「……私の顔見てもそんなにいいもんじゃないでしょ、今はちょっと恥ずかしいから見てほしくないのもあるけどさぁ」


提督「何を言う、良い顔ではないか、こんな職業に従事しているが表情が生き生きとしている」


鈴谷「……そういう意味で言ったんじゃないんだけど、私の顔がもう少しマシならなぁ」


提督「何を小声で呟いているんだ?」


鈴谷「ん…… 別に何でもないよ、提督には無縁の悩みだよ」


鈴谷「寝っ転がりながらでだらしないけどキスしてくれてありがとね、一生の思い出になったかも」


提督「今夜の出来事は他言は無用だぞ、風紀を気にしている上司が部下のご機嫌取りに、キスしているなんて知れたらド偉い事になってしまうからな……」


鈴谷「そこは大丈夫、私も上司に迫ってキスをしてほしいとお願いしたなんて、バレたらみんなからどんな事されるんだろうね……」


鈴谷「あっでも、こんなイケメンな男の人と秘密があるなんてすごい事なんじゃかなって思えてきた」



少しはご機嫌になってきてくれただろうか? 艦娘もなんだかんだで普段は年頃の娘とそう変わりはない一面もあると再認識した。


数分ほど雑談した後に鈴谷も気分が良くなってきたのか、体を起こし立ち上がる。



提督「気分はもう大丈夫なのか? あまり無理をするな」


鈴谷「うん、もう平気だよ」


提督「話が途中で脱線してしまったが、既に洗濯物の匂いを嗅ぐのは自主的に止めた様だし不問とする、それを言いたかった」


鈴谷「あぁ~…… そういえばそれで呼び出されたんだったっけ…… もうやらないからね!! 約束する!!」


提督「ああ、信じている、とりあえずそれだけだ、夜も更けてきたな、部屋まで送ろう」


鈴谷「ふぇっ!? 大丈夫大丈夫!! ちゃんと一人で帰れますよ~、ありがとね~」


提督「ふむ、そうか、明日からはいつも通りに過ごすんだぞ、おやすみ」


鈴谷「ははは…… 痛いところ突かれちゃった、それ言われるとちょっと何にも言えない、んじゃおやすみなさい~」



鈴谷はそう言うとドアを開けて退室した、一応ご機嫌は取れたと思っておこう、しかし女性の扱いというのは難しいな……


逆ギレされた時はどうしようかと思ったが、向こうに原因があるとは言え明らかに混乱していたし、本人も反省して止めていたようだから頭ごなしにも叱る事は出来なかった。


ましてや女性は気の強さは男の比ではない事が多いから、迂闊に刺激しなくて正解だったかもしれん……


とりあえず、この件については懸念はあるが解決はしたと思っても良いだろう、命の危険は少ないが提督の立場もなかなか難儀だな……



小話:提督について語る艦娘達

────長門、食堂にて



いつもの様に食堂で食事をする時間になり食堂へ向かったのだが、この基地に居る戦艦が全員集まっていた。


それだけでもなかなか珍しい事だが、今日は戦艦全てが同じテーブルに座って食事をしていたのだ。


私も定食を頼んで料理の乗ったトレイを持ち、座席を物色しようとするが金剛と伊勢が手を大きく振って私を催促してきた。


たまには戦艦だけで雑談するのも良かろう、私はそう思いながら戦艦が集まったテーブへの座席へと向かう。



長門「戦艦が全員集まるとはな、珍しいものだ」


伊勢「たまにはいいじゃない、戦艦同士で意見とかお話するのもさぁ」


金剛「私達3人はBattlecruiser、戦艦だけどちょっと違うネー」


伊勢「私と日向も航空戦艦だから運用は全然違うね、確かに」


長門「この基地、というか現在の鎮守府は純粋な戦艦は少な目だからな、ビスマルク級・ヴィットリア=ヴェネト級・リシュリュー級・アイオワ級全て巡洋戦艦かそれに近い性能だ、私自身はあまり特色が無いからな」


ビスマルク「それがヤーパンのケンソンってヤツかしら、ナガトみたいな屈強な人でもケンソンするのね」


長門「謙遜という物は自分に対しての戒めだと私は思っている、天狗にならない為のな、慢心と自信は違う物だ」


ビスマルク「グラーフが聞いたら感心しそうなお話ね、他に何か無いのかしら?」


日向「そういえば長門、この間、大本営への出張に護衛として高雄と一緒に提督に付いていっただろう、何か変わった事は無かったか?」



ふむ、変わった事か、あると言えばある、大本営への出張で提督が色んな派閥から言い寄られた話だ。


我らが提督は階級こそ提督の中では最も地位は低いが、この基地を訓練施設として立て直した事、そして艦娘の育成を再開させた手腕が評価されている。


元帥閣下とどの様に知りあって親交を深めたのかは不明瞭なところもあるが、提督も元帥閣下も艦娘の未来を憂う方達だ、そういう部分が引き寄せ合ったのかもしれない。


元帥閣下とのコネもあるようだし、戦果はまだ小さな物しかないが結果は地道に残している、そういう利用価値のある人間を自らの派閥に取り込む、出世欲が強すぎる人間は時には深海棲艦よりも厄介で質が悪い。



長門「そうだな、変わった事は確かにあったな」


金剛「oh!! どうして教えてくれなかったのデース!? テートクの事は色々と知りたいのにぃ!!」


長門「少しは静かにしないか、あまり大事にはならなかったのでな、提督が自ら解決なさったからだ」


日向「ほう、それなら尚更興味が湧くな、どんな事が起きたのか教えてくれ」



やはり「あの話」になるだろうか、昇進する上では深く関わってくるであろう派閥への参加だ。


提督は今まで地位も低く実績も無かった、そして基地の立て直しを元帥閣下から優先的に推し進めろと命令されていたので、小規模な会合には呼ばれることは無かった。


だが今回は話は別だ、地位こそ変わらないが実績と信頼を着実に積み上げ、そして大本営への出張は余程の事が無い限り提督の不参加は認められない。



長門「提督が色んな将官達から派閥に誘われた出来事だ、最後には提督自らが派閥を指名してそこにお世話になる事になったが」


伊勢「それって何気に一大事じゃない!? 提督ってば良く穏便に済ませたわね」


榛名「伊勢さんの言う通りです、派閥次第では私達の将来も左右されてしまう可能性もあります」


長門「安心すると良い、私達も良く知る将官の派閥に入る事になったからな、そう無茶な使い走りはさせられないとは思う」


日向「結果としてはその様になったが、それだけというワケでもないのだろう? 過程を全く話していないぞ」


長門「日向の言う通り過程が波乱が一つ起きてな、我らの提督は一番階級が低く防衛や奪還においての功績が少ないのは周知してると思う」


長門「ただ見目は極めて麗しく性格も温厚で任務に忠実である事から、多数の派閥から誘われる事になるのだがそのほとんどを断っていた」


長門「流石に面と向かって直接お断りするのは軋轢を生むのでな、考える時間を頂けないかと断っていた」



中にはかなりしつこく勧誘してくる派閥の輩もいたが、そこは私が提督を護衛しているので丁重にお帰り願った。


久しぶりに他所の提督から侮蔑と嫌悪の視線を受けたが、提督にはいつも紳士的な対応をしてもらっているので、その反動からか以前よりはっきりと見下されているのが良く分かる。



ビスマルク「ちょっと質問いい? 提督は何故そんなにお断りばかりしてたのかしら」


長門「その答えは極めてシンプルだ、出席者を事前に調査していたそうだが艦娘絡みの不祥事が多い輩ばかりだからだ」


ビスマルク「何処の国も不細工な女には容赦がない、ましてや艦娘となると酷い物ね、提督には感謝しかないわね」


長門「そんな輩の護衛に付いている艦娘は大概やつれていたり、目の色が死んでいたりする、かつては辛い事が有りすぎたが現在の提督に会えた我々は極めて運が良いのだろうな」



そんな私の言葉に皆は静かに頷いていた、此処は特に酷かったと記述にも残っているくらいの文字通り『醜女の墓場』だったからだ。


今の提督には足を向けて寝られないというくらいに皆は提督を信頼している、私も例外ではない。


ただ、悲運の轟沈をした艦娘達もこの基地は少なくは無い、もっと早く提督が来てくれれば…… と思ったことは何度もあるが提督には何の罪もないのだ、提督を責めるのはお門違いだ。



長門「会合も終わり元帥閣下との雑談も多少はしたところで、これから解散というところで提督は厄介な相手に目を付けられてしまったのだ」


長門「関東地方最大の鎮守府…… つまりはY鎮守府の女提督だ、S鎮提督同様に女でありながら見事な手腕で関東付近の防衛と南方の奪還を総括している提督だ」


榛名「Y鎮守府といえば我が国最大の鎮守府と聞いています、S鎮守府を超える規模を誇ると言われ、艦娘の練度は3軍レベルで一般の基地の1軍を担える程に強いと」


伊勢「あ~、聞いたことある、一応カテゴリ分けされてはいるんだけど層が厚過ぎて、練度に関してはもう1軍と3軍とでも大した差ではないというくらいに強いんだって」


日向「ふむ、確かに巨大な組織に絡まれると大概厄介なものだが、それだけではないのだろう?」


長門「ああ、日向の言う通りだな、皆もY鎮守府の提督の容姿は知っているだろう?」



私が容姿についての話題を挙げると、皆一様にとても美人だったという答えが返ってくる、中にはため息交じりに羨ましがる者も。


そしてY鎮守府の提督は良い男を見つけると品定めをした上で男漁りを始めると有名だ、実に手癖が悪い、流石に元帥閣下には出来なかったようだが。


階級は中将であり年齢も我らの提督に近い、所謂アラフォーというヤツだ、彼女の方が年上ではあるが、だが見た目は実に若々しく美貌を保っている。



長門「Y鎮提督は容姿の良い男に目が無くてな、俗に言う面食いというヤツだろう、我らが提督も御多分に洩れず彼女のお眼鏡にかかった」


金剛「美人なのは認めマース、ですが正直に言うととっても下品な趣味デース、10%で良いから美貌を分けてもらいたいデース」


伊勢「流石のウチの提督もY鎮提督にはころっと色気に負けちゃったのかしらね、私としては普段が艦娘に囲まれているから色気に負けても仕方ないとは思うけど」


榛名「そんな!! ああ、でも伊勢さんの言う通りかもしれません…… 榛名にも端整なお顔が付いていれば提督を癒して差し上げられるのに……」


日向「だが結論としては別の派閥へと参加したのだろう? つまり色気には負けなかったという事だ」


長門「そうだ、日向の言う通りなのだが、Y鎮提督と相対した時の我らが提督の態度が実に見事だったのだ」


長門「あれだけの美人をまるで歯牙にもかけなかった、極めて事務的な対応、そして軽くあしらわれたと理解した時のY鎮提督の屈辱的な表情」



大本営からの帰路を車で走っていた時も仰っていたな、こちらの容姿を露骨に品定めをし利用価値があるか、そういう目で見てくる相手がとても嫌いだと。


あれだけの美丈夫だ、今まで容姿を利用されそうになったことが数多くあったのだろう、我々とは対極な悩みで苦労なされたのが察せる。



伊勢「ええーっ!? それって本当なの!? Y鎮提督って女優やモデル並みの美人じゃない!! 軍人やっているのが謎なくらい綺麗だった気がするんだけど……」


長門「ああ、正直私も色目を使われたらアウトだろうと思っていた、それに私は護衛ではあるが余程の事が無い限り手を出すことは出来ない」


長門「だから提督がY鎮提督に絡まれた時は、今までの対応や思い出が偽りの物になってしまうのではないかと、気が気でなかった」


日向「男が美女に色目を使われて、素行や人生が狂ったりする話は昔から数多くある、長門の懸念は無理も無いな」


長門「だが提督は私の疑惑は杞憂に過ぎないと行動で示してくれた、色目を使われても眉一つ動かさなかった」


長門「立場を悪用されてボディタッチをされそうにもなったが『格闘技を嗜んでおりまして、親しい相手を除き不意に体に手を出されると反応してしまうので』と軽くあしらっておられた、執拗に何度やられても決して触らせなかった」


長門「勧誘もされたが『中将閣下の艦娘は待遇や尊厳は保証されているのでしょうか?』と仰った時には、私はこの命を提督に捧げても良いと思ったくらいだ」


金剛「oh... テートクはそれほどまでに私達の事を考えていたのネー…… 私、今までテートクにApproachをしてきましたが、実にclumsyでselfishだったデース…… もっとladylikeな振る舞いをしなくてはいけないデース」


榛名「提督は常に艦娘に対して真摯でおられましたが、榛名が考えている以上に徹底しておられるのですね…… まさか将官の方を相手にしても信念を曲げないなんて、榛名、感服いたしました!!!」



我々艦娘の事を最優先に考える熱意は賞賛すべきなのだが、提督自身は何故これ程までに艦娘に対して真摯で居られるのかは謎が深い。


艦娘に対しては極めて寛容なのだが、金剛と榛名には苦手意識を持っているという不可思議な部分もある、提督の過去に一体何があったのだろうか。


提督の過去は一先ず置いておく、話は戻るが提督が入った派閥は何処かと言うと……



長門「提督の信念の固さの話はこのあたりにしておく、肝心の所属した派閥なのだがS鎮提督の派閥だ」


日向「成程、それは確かに無茶な要求をされる事は少なそうだな、S鎮提督も艦娘に無茶な要求や運用を強要するという話は聞いたことは無い」


長門「ただ、S鎮提督は我らが提督を勧誘する気は全く無かったそうだ、理由は『私の派閥は小規模でメリットが薄い』、それともう一つ苦笑しながら『私自身がとんでもないブスで色気が全く無いから』とも仰っていた」



そう言うとなんとも言い難い微妙な反応をする、皆して割と納得という顔をしている、S鎮提督には悪いが彼女は我らに匹敵する醜女である事は否定できない……



長門「提督がS鎮提督の許に向かい、彼女に派閥の加入について検討を提案したら大層驚いていたな、無い無いだらけの派閥にとんでもない大物が釣れたと」


長門「提督が言うには『艦娘を蔑ろにせず、彼女達と意思疎通が出来る人がいるだけで入る価値がある』との事だ、あとは物理的にも精神的にも程好い距離感なのもあるそうだ」


伊勢「まともな理由だとは思うけど、S鎮提督の派閥を選ぶなんて提督もかなりの物好きだねぇ、提督ってもしかしてB専なんじゃない?」


ビスマルク「B専って確か不細工好きの事よね? もし提督がそうだとしたらかなりのHENTAIって事になるわね……」


金剛「oh!!! テートクをHENTAI呼ばわりなんて許せまセーン!!! でもB専ならB専で私達艦娘にも希望があるって事になりマース!!」


榛名「どうして変態の部分がそんなに英語訛りなのでしょうか…… ああ、でも提督にはB専の変態さんでいてもらいたい気持ちもあります、もしかすると榛名にもチャンスが……」


日向「君達は少し自重した方がいいのではないか? 提督の世間体や体裁を悪くさせるつもりかい?」



提督をお慕いするあまり暴走するのはよろしくは無い、私自身も提督の体臭の件でこってりと提督から叱られたから自重しなければな……


普段は雲の掴み所がない日向がまともな突っ込みをするとは思わなかった、あまり戦艦同士の付き合いが普段は無いので意外な発見だ。



長門「提督の派閥勧誘の話は大体の内容はこれくらいだな、改めて提督に協力したいと思った出来事だった」


金剛「長門の言う通りネ、艦娘にこんなにFriendlyでGentleな男性はそうそう見つからないネー!! しっかりとついていきマース!!」


榛名「榛名も微力ながら提督にお力添えしていく所存です!!」


ビスマルク「私も異論はないわね、まあ今のところまだまだ練度が足りなくて自分の事で手一杯だけど」


伊勢「お~、みんなやる気マンマンだねぇ、私も提督の事は尊敬しているからみんなと同じ気持ちだけどね」


日向「ふむ、日頃から慢心や怠りをしなければ自ずと提督の力になれるだろう、気負う必要もないさ」



改めて皆が提督への忠誠を示したところで、この話は終わり後は雑談をしながら食事を終えて解散となった。


謎が多いところもあるが提督自身は極めて善良な人間であると私は信じたい、艦娘穏健派の元帥閣下が推薦した人物であるから信用に値するが不安が無いとは言い切れない。


提督が何処へ向かって走っているのかは我々も憶測の域でしか語れないが、願わくば彼が我々艦娘もしくはこの国の敵にならない事を祈ろう。



提督、岐路に立つ

この基地に就任して1年以上が経つ、すっかり艦娘の皆ともある程度の親交を深めることが出来た、改めてルックスという要素の恐ろしさに気づく。


俺自身の性格はそう大きくは変わっていないのに、こんなにもあっさりと距離を縮めてしまうと何とも言えない気持ちになる。


この1年、以前の提督生活に比べたら遥かに色々な出来事があった、此処に来る前の数年間は嫌われるだけの提督生活だったな、指示に従ってくれるだけマシだったが、失敗した時の意見も必要以上に辛辣ではあった。


このまま順風満帆…… というわけには行かず、この基地最大の問題ともいえる出来事が起きてしまった、問題を記載した書類を一度しっかりと黙読し、二度目は再確認の為に音読していく。



提督「駆逐艦、皐月・水無月・文月、いずれも改へと改造済み、2か月前に南方のS泊地から脱走してきた、脱走の理由は提督による三人への脅迫・暴行」


提督「潜水艦、伊26・U-511、伊26は改へ、U-511は呂500へ改造済み、1か月前に南方のR基地から更迭、原因は練度と作戦理解度の不足」


提督「高速戦艦、ビスマルク、Zweiへと改造済み、3日前に祖国の湾岸基地から更迭、原因は上官侮辱罪」


提督「……すまない、数分でいい、休憩をもらえないだろうか」


長門「あ、ああ…… 一息ついてきて欲しい……」


高雄・大淀「提督……」



俺は3人に許可をもらい私室へと入る、絶句とは正にこの事を言うのだろうな、こんなに無感情になったのはかつて無い程だ。


皐月達が突然帰って来た日を思い出す、『帰って来た』と言うより最早『逃げて来た』という焦燥ぶりだった。


追手の艦娘達を振り切り、あらゆる地形や隠れ場所を利用して逃げて来たそうだ、受けた傷は追手から受けた物だと推測できる。


比較的損害が軽微だった皐月が中破した水無月を前に抱え、大破した文月は皐月の背中におぶられて息も絶えかけていた、明らかに有無を言わさずドック入りの容体だった。


皐月達が言うには異動先のS泊地の提督は攻略間近になると、無謀な運用を艦娘達に強いる提督だったようだ、海域深部の最も危険な艦隊に玉砕覚悟の作戦を艦娘達にさせるとの事だ。


普段は多少押しが強い程度の性格なのだが、戦果や栄誉がかかると豹変する非常に虚栄心が強い提督と皐月が供述していた、深部からの撤退の時は耳を塞ぎたくなる罵詈雑言と体罰を名目にした暴力を振るうらしい。



伊26と呂500の件については度重なる越権行為による更迭、何をしたのか冷静に問い詰めるも二人は『あまりにも杜撰な作戦立案だったので修正案を挙げただけ』と言っていた。


これに加えて『度重なる』と付いたあたりを考えると単純に二人が立場上疎ましくなって、こちらに難癖をつけて返してきたのだろう。


他の艦娘達は提案などどうしているのか?と二人に聞いたところ「提案などは何度もしたが良い返事は帰ってこない、案が採用された事は無い」という状態であり、司令塔としては機能不全に陥っているとしか思えない。


二人から詳しく話を聞き、その『杜撰な作戦』を参考に自ら戦術を考察してみるが、二人の言っている事は概ね間違いの無い修正案だった。


練習巡洋艦の香取、提督代理である長門にも話を持ち掛けてみるが、答えは俺が考えていたのとそう変わりは無かった。



何がいけなかった? 俺なのか? それとも彼女達か? 彼女達は辛い訓練にも耐え、家族に会えない寂しさを耐えて来た。


うら若き娘達に未知の技術を施して、命を危機に晒す大海原の戦場へと送り出し、艦娘適性の無い普通の人間である提督は比較的安全である湾岸で指示を出すだけだ。


そんな提督が艦娘に対して上官というだけで、容姿が醜いだけで何故そこまで傲慢になれるのだろうか、ますます理解が追い付かない。


冷蔵庫から冷たい麦茶をグラスに注ぎゆっくりと飲み干す、少し頭が冷えたところで高雄達を待たせない様、早急に執務室へと戻った。



高雄「提督、お気分が優れない様ならこのあたりで小休止でも如何でしょう?」


提督「気遣いさせてすまない、少しは頭が冷えたから問題無い、3か月前にウチで訓練を無事に終えた6人がまさか全員送り返されてくるとはな……」


大淀「提督の責任ではありません、練度は規定以上、S鎮守府での中規模作戦にも参加、完璧ではないとはいえ無事に活躍しS鎮提督からも太鼓判を戴いています」


長門「原因を聞いていると、戦闘や任務遂行以外の事ばかりで問題を起こしているな、しかも大体は『あちら』が攻撃的な態度を見せてきている」


提督「艦娘とて完璧な者は居ない、だがこの扱いはあまりにも横暴が過ぎる、これからビスマルクに事情を聴きに行くワケだが、彼女の様子はどうだ?」


長門「あ、ああ、それはもう凄かったぞ…… 貴方を侮辱されたのが相当頭に来ているのか、侮辱をした配属先の上官に手を上げ、こっちに帰って来るまでは大人しくはしていたそうだが……」


大淀「帰ってきたら勝手に抜錨して近海で大暴れ、燃料と弾薬が空になるまで深海棲艦相手に暴れまわって帰って来ました、すごい勢いで喚いてましたが母国の言葉だったので何を言ってるのかさっぱりで」


高雄「急いでグラーフを連れてきましたが『とても聞くに堪えない罵声、知らない方が良い』と仰ってました、提督が来るまでグラーフが宥めていらっしゃいました」



放送で呼ばれて急いで迎えに行ったが、長門・グラーフ・金剛がビスマルクを羽交い絞めにして抑えつけてるところに出くわすも、あの3人の拘束を弾き飛ばしそうな勢いだったな


幸い、俺の顔を見たら安堵やら何やら複雑な表情になって力が抜けた様に沈静したが……



提督「それで俺が来て顔を見た瞬間に抱き着かれたのだが、その後は大号泣であちらの言葉で何か言っていたが分かるはずも無く」


提督「後は部屋へ連れて行って金剛・榛名・グラーフに任せて現在に至ると、3人は様子を見て落ち着いたら報告すると言っていたが、つい先程漸く会話が出来る程度には落ち着いたそうだ」


提督「規律に厳しく比較的クールな女性なのかと思っていたが、とても感情豊かな女性だったのだな、正直驚いた」


長門「それだけ貴方が慕われているという事だ、私達相手には普段から提督の事を褒めていたのだがな、貴方相手には上官なので言えなかったようだが」


高雄「提督の前ではクールに振る舞っていたみたいですけど、普段はかなり感受性の高い方でしたよ、良い意味でプライドが高い人です、とても義理堅いですし」



プライドが高いのは見た目の通りなので異国の艦娘と交友出来るか不安な部分があったが、思っていたよりはずっと社交的で安心した。


俺の前ではクールに振る舞っていたが、普段は割とリラックスして生活しているようだな。


あの暴れぶりからかなり沈静化して落ち着いたようなので、これから顔を合わせて話す事になる。


今思えばビスマルク個人としてはじっくりと会話したことは記憶に無いので、良い機会でもある。


高雄達にビスマルクと面会すると告げて執務室を出る、彼女達が住んでいる寮へと歩を進める。


数分ほど歩き、金剛達が住んでいる部屋に到着した、部屋の前では金剛と榛名が待機していた、二人に状況を聴いておく。



提督「数日がかりで落ち着いたようだが状況は?」


金剛「大人しくはなったヨー、でもクールダウンしてから大暴れしたのは後悔してるみたいネー」


榛名「提督、ビスマルクさんは確かに上官の方に手をあげたり無断出撃で暴走してしまいました、でも提督を侮辱されてとても悔しかったと仰っていました」


提督「心配する事は無い、榛名の言いたい事はわかっている、懲罰を与える事には変わりはないがそう重くはしない、今は面会できそうか?」


金剛「OKネー、部屋の中にはグラーフがいるから、困ったらグラーフにヘルプするといいネー、私と榛名は廊下で待ってる事にシマス」



金剛の助言を聞きつつ部屋をノックしてビスマルクに入室許可を得ようとするが、聞こえてきたのはグラーフの声だった。


さて、どうしたものか…… と思いながら部屋のドアを開けて入室する、開けた先にはベッドに胡坐をかいて不貞腐れているビスマルクと傍らで腕組して立っているグラーフが居た。



グラーフ「良く来てくれたアトミラール、貴方が来ると聞いてからずっとこんな調子なのだ、気位が高いというのも考え物だな」


提督「ふむ、どうしたものか…… 何から話せば良いか」


ビスマルク「……何よ、私は間違った事をしたとは思ってはいないわ」


提督「その辺りを詳しく聞く必要がありそうだな」


ビスマルク「訓練を終えて祖国の防衛に力を尽くそうと思ったら、相変わらず艦娘蔑視が酷くて呆れ、それでも自分を抑えて任務に従事していたわ」


ビスマルク「私以外の艦娘がまともな訓練を受けられずに中規模作戦を遂行した事があった、そこで私が所属していた主力艦隊は敵の中枢部まで進軍出来ずに撤退」


ビスマルク「帰投した直後にあちらの提督に言われたのが…… 『戦力だけは期待していたのだが、極東での育成は無駄足だったか? 艦娘の本場とは言うがこんな役立たずを帰してくるとは』と」



ビスマルクがそう言い終えるとグラーフが歯を食いしばって堪えている様に見えた、彼女も祖国での艦娘の待遇に憂いを抱いているのだろうか。


欧州も大概に艦娘への蔑視が酷い様だ、欧米における容姿への偏見というものは俺にはわからないが本質はこの国と大差は無いように伺える。



ビスマルク「私の事を侮辱されるのはまだ我慢出来たわ、立場的には新兵とそう変わりはないもの、ただ艦娘にまともな訓練すら受けさせず自分の事を棚に上げて、貴方を侮辱されたと感じた時には……」


ビスマルク「私は抑えきれずにあの屑提督に何も考えず怒りに任せて…… そこからの記憶は無いわ、あちらの艦娘達に取り押さえられ鎮静剤を打たれたと同じ所属艦隊の子に聞いたわ」


提督「そうか、大まかな事情は分かった、後は適当な罰を受けて送り返されたというところか?」


ビスマルク「ええ、大体そんなところね、気が付いた時には懲罰室で数日過ごした後に極東へ送り返される事が決まっていたわ」


提督「ふむ…… ビスマルク、君の処分は決まり次第通達する、それまで寮で謹慎、金剛姉妹の生活をしっかりとサポートするように」


提督「俺としては必要以上に事を大きくしたくはないが、今回の騒動はそうも行かないだろう、国家間の問題でもあるからな」


ビスマルク「謹慎や罰は受けるけれど何度でも言うわ、私は悪い事をしたと思っていない」


提督「困った娘だな、『提督』としての俺が言えるのはここまでだ…… よく無事に帰って来てくれた、おかえり、ビスマルク」



そう言うとビスマルクは身体を僅かに震わせた、この基地はまだ彼女にとって『帰れる場所』である意味を込めて俺は『おかえり』と言った。


グラーフがビスマルクの傍に座りドイツ語で何かを語り掛けている、グラーフの言葉を聞き終えた彼女は立ち上がり覚束無い足取りで俺の身体に抱き着く。



ビスマルク「貴方が侮辱された時に私は自分の感情を抑えられなかった、この基地で過ごした日々を思い出すと艦娘として良い思い出ばかりだったわ、貴方がいつも大切に人として扱ってくれたから」


ビスマルク「いつの間にか私の中で貴方の存在が大きくなっていたのね…… おかえりと言ってくれてありがとう…… 私はまだ貴方の艦娘で居られるのかしら?」


提督「現実は厳しい、確約は出来ないが出来る限りの努力はしよう」


ビスマルク「何よそれ、そこは気前良く言ってほしかったわ…… こんな良い基地と提督の下に一度着任しちゃったら他所なんかに行けないわよ……」


提督「はは、仕方のない娘だな、今はゆっくり休むと良い」



そう言うとビスマルクは俺の胸板に顔を埋めて嗚咽を漏らし始めた、その様を見てグラーフは私に一礼をして部屋から退出をする。


俺は彼女の背中と頭を抱きしめたまま、身動きをせずに彼女の気が済むまでじっと待ち続けていた。


次第に気が済んだのか嗚咽も無くなり、俺の胸から顔を離すが何故か両手で顔を隠したまま、ベッドに横たわり布団を頭から被ってしまい俺は戸惑った。



提督「お、おい、急に布団に潜り込んでどうしたんだ?」


ビスマルク「い、今、泣き終わったばかりだから元々酷い顔がもっと酷くなってるの!! 顔は見せられないわ!!」


提督「そ、そうか、俺は別に気にしないんだがな」


ビスマルク「貴方はハンサムだから泣き顔も良いのだろうけど、私は違うの!! ……あと、言い忘れてた事が一つあるわ」


提督「ほう、何を言い忘れてたんだ? 聞こうじゃないか」


ビスマルク「……ただいまって言うの忘れてた、ただいま、提督」


提督「ああ、そうだったな、おかえり、ビスマルク」



ビスマルクから事情聴取は出来た、それに俺個人としては伝えたい事も言えた、執務に戻ると彼女に告げて部屋を後にする。


名残惜しそうに「わかった」と返事が返ってきたが、本当はもう少し慰めてあげたいが艦娘は彼女一人だけではないからな……


廊下に出ると金剛・榛名・グラーフの三人が憂慮の表情をしながら俺の様子を伺っていた。



提督「そう心配するな、ビスマルクはそこそこ立ち直ってくれた、まだ多少の時間は必要とは思うが」


金剛「流石はテートクデース!! 私は彼女に何もできなかったのが辛いデース…… 戦いで傷つく痛みは分かるのデスが……」


提督「気に病むことは無い、精神的なダメージというのは屈強な肉体の持ち主だとしても簡単には癒せないものだ」


榛名「提督は本当に強くお優しいのですね、榛名も見習わなければいけません」


提督「色んな要素が偶然に上手く噛み合っただけだ、最悪の事態は免れたと思いたい」


グラーフ「しかし私の知る限りでは基地が復興してからの艦娘移籍第一弾は3組全て失敗と聞いたが…… これからどうするのだ? アトミラールよ」



原因はそこにあるのだが、俺は未だに明確な解決手段はほとんど浮かんでいない、艦娘待遇そのものの現状が酷すぎるのだ。


このまま強引に育成と移籍を推し進めたとしても、恐らくは艦娘が不幸になるだろう、それは避けなくてはならない。


だが育成した艦娘を移籍させられなければ、この基地は存在する理由を失ってしまうだろう。


困難に歩みを止められるのはいつもながらの事だが、今回ばかりは自分の力が及ばない部分が大きすぎる、苦しい戦いになる事を覚悟しなくては……



提督「今はまだわからない、どうしたら良いのか、何を解決していくべきなのか、物事の原因からして俺の力ではどうにもならない」


提督「このまま黙って事態を静観する気は毛頭無いが、正直なところ解決への糸口が見つからない、提督である俺がこんな発言をしてはならないのだが……」


グラーフ「そ、そうか…… アトミラール、少し休んでほしい、貴方が気弱な態度を見せるなんてかなり疲れているのだろう、後ろ向きの気持ちでは普段の仕事にも支障が出てしまう」


榛名「そうです提督!! 提督は今まで自発的に休暇を削って執務を行っていらっしゃいました、何処かで休まないと倒れてしまいます!!」


金剛「榛名の言う通りネ!! テートクが倒れたら艦娘も妖精さんもとても悲しいデース!!」


グラーフ「アトミラールが休んでいる間は私達が貴方の仕事を終わらせておこう、みんなが少しずつ時間を出せば大丈夫だ、数日程休んでほしい、正直顔色も少し悪く見える」


提督「し、しかし俺は……」


グラーフ「コンゴウとハルナ、後は任せた、私はアトミラールをタカオ達のところへ連れて行き事情を話してくる」



グラーフがそう言うや否やの内に、俺はあっという間に彼女の肩に担がれてしまう、不意打ちを受けていともあっさりと。


不意打ちに反応出来なかったのは普段から彼女達にはかなり気を許しているので、いとも簡単に担がれてしまった。


最初は抵抗したがグラーフの馬力は艦娘トップクラスである、そんな彼女に人間である俺が敵う訳も無かった、諦めるしかない。


ささやかな抵抗も空しく高雄と大淀がいる執務室へ担がれたまま連行され、グラーフは俺を肩から降ろさずに二人に事情を説明。


高雄と大淀も止む無しと判断したのか許可を出すや否や、早急に提督私室まで運ばれゆっくりと降ろされる。


座布団の上に座らされたと思えば、グラーフは非常に手際よく押し入れから布団を取り出し畳の上へと敷いていった。



グラーフ「アトミラールよ、タカオとオーヨドからは許可は降りた、ここ最近は休みも少なかったと聞いている、ゆっくりと寝るが良い」


提督「君らしくない強引な行動に少し呆然としてしまった…… ここまでやらせてしまったからにはおとなしく休む事にしよう、感謝する」


グラーフ「アトミラールの身を案じてこその行動なのだ、許してほしい…… 疲れは一日だけでは抜けにくいから明日・明後日と二日程は休暇を取ってほしい」


グラーフ「これから着替えるのだろう? 私は出て行こう、良い睡眠を」


提督「要らぬ世話をかけさせてすまなかった、好意に甘える事にするよ」



一般企業の上司ならともかく、艦娘という国防を担う存在の上司がこんな事に気を使わせてしまうのは良くない事だな……


しかし、俺自身が問題を片づけられないというのも事実だ、問題解決の為の疲労回復とクールダウン休暇を態々くれたのだ、感謝しなければならない。


ここ最近は睡眠時間も少な目だったし、自分ではわからんが顔色も優れないと来たものだ、先ずは着替えて寝る事にしよう。



目を閉じて数分程、いつの間にか眠りに落ち、どっぷりと睡眠に浸かっていたようだ。


いつの間にか日も落ちて夜になっていた、かなり深く寝入ってしまった様だな、それだけ疲労が溜まっていたという事か。


皆は気を利かせてくれたのか誰も寝てる間に部屋には訪問してこなかったみたいだな、駆逐艦の娘すら来なかった。


布団を除けて上体を起こして背伸びをする、それと同時に腹の虫も控えめに自己主張をする、時刻はイチキュウマルマルに近い、空腹にもなる。


制服ではなく部屋着に着替え食堂へ向かう事にした、腹が減るというなら体調自体はそれ程酷くはないだろう、心労はそこそこ来ているとは思うが。


食堂はいつも通り大人数の艦娘で空間が埋まっていた、俺が食堂へ入ると多数の艦娘の視線が突き刺さるが、いつもとは違い今日は皆近寄って声をかけてこない。


誰かが俺の容体を周知して気を遣うように催促してくれたのだろうか、会話の声も控えめに粛々と食事をしている。


適当に注文をして座席に座り、料理を全部残さずに食べ食器を片づけようとするが、給仕当番の鳳翔に食器の片づけを取られてしまい、礼を言って食堂を後にした。


久方ぶりに静かな食事をした後は、のんびりと風呂に入る、風呂もここ最近は碌に湯船に入らず身体を洗うだけの作業になっていた。


湯がシャワーから放出され、滴り、床に落ち、流れる音を楽しみながらも心が落ち着くのを感じる、水の音はやはり良い。


じっくりと湯船に入り身体の芯まで温まることが出来た、ゆっくり入る風呂の心地良さを忘れていたようだ……


後は適当にインターネットやら読書やらで数時間かけ、就寝の時間になったので何も考えずに寝る事にした、信頼できる部下から仕事の事を忘れろと言われたのだから大人しく従おう。



────提督、3日後



休みを半ば押しつけられてようやく復帰の日が来た、強制休暇の朝は誰も起こしに来ず、昼頃まで惰眠を貪るというだらしなさを露呈してしまう。


目覚ましはせずにゆっくりと寝てほしいとまでお願いまでされてしまい、アラームのセットをしなかった結果がこれである。


いつも通りに制服を着用して執務室を覗きに行き、必要な仕事は無いかと催促するが、いつもの3人と助っ人で来ていたグラーフ・古鷹に執務室を追い出される……


仕事もせずに昼はのんびりと非番の艦娘達と過ごしたり、艦娘の護衛付きではあったが港湾施設へ行き何も考えず海の方角をただひたすら見つめたり、日光の気持ち良い所で昼寝をしたり……


昼間はトレーニング施設のトラックで駆逐艦と一緒に遊んだり、夕方から夜には皆でビデオゲームをしたり、普段はどうしても事務的になってしまう会話もいい具合に駄弁る事が出来た。


食事の方も実に有り難かった、いつもの食事を少々減らしてメニューには無い疲労に効く料理を一品追加してくれたのだ、流石の間宮としか言い様が無い。


本当に一日がゆったりと過ぎて行った、気を張る必要もなかったのでいつもより緩すぎる態度になっていたような気がする。


艦娘達に呆れられていないだろうか、皆も心身共に疲労が溜まっていると思うが気を遣わせてしまい申し訳ない気持ちばかりが募る。


そしてたった今、今日の朝からは職務に復帰だ、気分もそこそこ健常に戻ってきているし、体調も昼寝や転寝に加えしっかりと熟睡もしたのでかなり回復はした。


制服の身だしなみも問題は無い、いざ職務室へ向かう事にしよう、と思っていたらドアをノックする音が聞こえてきた。



高雄「提督、おはようございます、心身共にご壮健でなされますか?」


提督「ああ、おはよう、そうだな、かなりすっきりした、あんなに緩い休日を過ごしたのは随分久しぶりだ」


高雄「いつもはかなり態度に気を付けて勤務してらっしゃいますからね、あんなに無防備な提督は初めて見たと皆仰っていました」


提督「あまりにもだらしなく休暇を満喫してしまった、艦娘達は幻滅してはいないだろうか」


高雄「ふふっ、とんでもありません、皆さんは提督のお世話出来ると張り切っていましたよ、是非恩返しがしたいと」


提督「恩返しなんてまた大層な…… 提督として当たり前の勤務態度でいるだけだ」


高雄「それをしてくれる提督はこの基地には現れませんでした、貴方が来るまでは…… だから提督は皆の憧れなのです、私も含めて」



高雄と話しながら執務机の椅子へと座る、大淀もいつもの様に待機していた、2日ぶりとは言えあまりにも力の抜けた休暇の過ごし方をしていたので、随分久しぶりの執務に思える。



大淀「提督、おはようございます、本日の執務もよろしくお願い致します、今日も素敵でいらっしゃいます」


提督「いつも褒めてくれてありがとう、たった2日でやる事が大きく変わるとは思えんが、何か大きな出来事はあったか?」


大淀「昨日の話ですが、急な要件ではないですし提督もお休みでしたから報告は控えておりました、5日後に元帥閣下が指定の場所で面会をしたいと」


提督「元帥閣下からか!? 少し覚悟はしておかねばならないな、先日の会合以来だが上手くいっていない事を咎められるかも知れない」


提督「休みを貰って一人になった時には出来るだけ解決案を考えてはいたが、未だに思いついていないからな……」


高雄「提督、私は何があっても貴方の味方です、元帥閣下を敵に回すことになろうとも貴方をお守りします」


大淀「そうです!! 艦娘として返しきれない程の大恩があります、迷惑でなければあの世までお供します」


提督「俺は命をかけても良い様な男ではない、俺にも多少の下心や打算もある、君達は解体されて艦娘を辞め人間に戻る時も来るだろう、その時の為にしっかりと命は取っておくんだ」


高雄・大淀「提督に下心……」



下心があるのは間違いではないのがまたなんとも言えん…… そもそも不快害虫と同じ扱いされて辛いからこっちに逃げて来たからな。


二人とも腑に落ちないという顔で俺を見ている、どんな理由で腑に落ちないのかわからんが。



提督「さて、執務をしよう、俺にしか出来ない書類や要件を手早く消化しなければな、溜まっているのだろう?」


提督「その後に訓練を修めた艦娘達の待遇や派遣の問題について、皆の力を借りて取り掛かりたいと思っている」


大淀「はい、お任せください、要提督の案件はこちらに纏めておきました、こちらの消化からお願いします」


高雄「私には提督が集中して執務が出来る様に、雑務の担当をさせていただきますね」



一日かけて溜まっていた執務を終わらせ、翌日からは平常運転を再開させ、それに加え余った時間で育成済み艦娘の派遣について失敗の原因と解決策を高雄・大淀・長門と俺の四人で議論をした。


二日ほど時間を設けて議論した後に結局良い解決策や対策は思い浮かばず、長門が考えた「基地の艦娘総動員による集会で議論」も試してみたが、結論としては「現場がほぼ悪い」という結論に達した。


自分達に全く落ち度が無いと言う気は無いが、派遣先から逃亡したり更迭された艦娘達の話から察するにはその様な要素が強すぎるのだ。


そして無策のまま、元帥閣下との面談の日を迎えてしまった。



提督「では、出かけてくる、大淀、長門、留守番を頼む」


大淀「提督、あまり顔色が優れませんね、つい最近休まれたというのに……」


提督「大丈夫だ、体調は問題は無い、ただ流石に重圧はある、問題を抱えて無策のまま軍の頂点にいる人物と会うのだからな」


長門「すまなかった提督、力になれなかった事がとても歯痒い」


提督「あまり落ち込むな、現場におけるリーダーが暗い顔していたら部下達は不安になるぞ」


高雄「提督、そろそろ行きましょう、お時間も近いです、自動車の運転は私にお任せください」


提督「ああ、そうだな、よろしく頼む、頼りにしている」



高雄に自動車の後部座席へと案内され座席へと座る、K基地管轄の港湾施設ではなく別の管轄の港湾施設で元帥閣下と面談する事になっているので、いつもより少々遠く時間がかかる。


時間はかなり早めに出たのでさほど問題は無いと思われるが、秘書艦として同行する高雄はこちらの旗色が悪いだけに緊張の色を隠せずにいる様だ、とても顔が険しい。


下手すると俺よりも険しいのではなかろうか、それだけしっかりと基地の存続について考えてくれているのだろう、不甲斐無い提督で申し訳ないと思いつつも彼女の心遣いに感謝だ。


出発して凡そ1時間強と言ったところだろうか、施設の一部が見えてきた、近づくにつれ身体と表情が次第に強張っていくのが分かる、今後の立場が此処で決まる所為だろうか。


高雄に至っては訓練や演習の時より険しい顔をしている、俺より緊張し過ぎではないだろうか、車から降りたら少し固くなったのを解してやらないといかん……


港湾施設に入る前に何処か適当な場所に停車をさせる事にしよう、幸い軍事施設近辺なので人気もあまりない、高雄に道路の脇に停車させる様に指示をする。



高雄「どうかなさいましたか提督? 急に停車を指示されるなんて」


提督「とりあえず、車内から外へ出てほしい、話はそれからにしよう」



車の外に出る様に言い、出たのを確認してから俺も車の外へ出た、彼女の顔はを見るも緊張して険しさは取れないままだ。


さて、どうやって解してたら良いものか…… ちょっとしたセクハラになってしまう可能性もあるが、今までの経験からするとやってみる価値はある、覚悟を決めるか……



高雄「指示されたとおりに車外へと出ました、なんなりとお申し付けください」


提督「では遠慮せずに行くとしよう」



こうして彼女の顔を見ると本当に理想の造形をしている、顔のパーツ一つ一つの質が半端ではないので、険しい顔をしていてもとても上品に思える。


俺は無造作に彼女の頬を掌で痛くならない様にむにむにと捏ねくりまわした、もっちもちのすべすべである。



高雄「むごごっ!? て、ていほふぅ!?」


提督「責任者という訳でもないのに提督である俺より随分と険しい顔をし過ぎだ、顔の筋肉の緊張を和らげようと思ってな」


高雄「い、いへまふぇん!! やめふぇくひゃひゃい!!」


提督「普段の様に微笑でいいんだぞ、出来る秘書艦という感じで良いといつも思っている、どうだ? 直ったか?」


高雄「はぁ、とても驚きました、まさかあまりおふざけをしない提督がこんな事をなさるなんて……」


提督「まだ固い、というかぎこちないな、よし、これならどうだろう」



人目を確認して高雄の脇腹に指を素早く這わせくすぐりをしてみる、身悶えながらも逃げようとするが逃さずにくすぐり続ける。


完全にセクハラである、以前だったら強制猥褻の罪に問われて社会的に死んでたであろうと思われる所業だ。



高雄「ひゃうんっ!? あっ、あはっ、ははははっ!!! くすぐったい!! くすぐったいですからぁ!!!」



高雄の静止を受け流し、ひたすら脇腹を責める姿は見紛う事なき変態である、俺もこっちに来てから少しは女性への苦手意識は無くなってるものだな……


息も絶え絶えに高雄が俺に対して一睨みするも、やがて呆れかえって溜息を吐いた。



高雄「もうっ!! いくら私が緊張しすぎているからってこんな事はなさらないで下さいね? とても驚いたのですよ?」


提督「変な事でもやらないとな、緊張で固まった君の顔と態度を和らげることが出来そうにないと思ったのだ、どうだ? 少しはマシにはなったか?」


高雄「……そこは否定できませんわ、色々と驚きが強すぎて緊張がかなり和らぎました、まさか艦娘相手にこんなセクハラ紛いな事をする方がいるなんて思いもしませんでした」


提督「艦娘にセクハラしてはいけないという法律は無い、とでも言っておこうか」


高雄「セクハラ自体がかなりナンセンスなのです!! 馬鹿め!!と言って差し上げた方がよろしいですね……」


提督「まあ、そうなるな……」


高雄「日向の真似をしても誤魔化されませんからね?」



ふむ、この調子ならかなり緩和されたと思っても良いだろうか? 戦闘時より険しいのは流石に戴けないからな、少しでも頭が冷えたなら良いのだが。


再び車内へ入り、高雄に運転を再開するように命じる、時間はまだまだ余裕があるが早急に施設に向かった方が良いな。


数分足らずで施設入り口に到着、手続きと身分の証明を済ませ、特に問題も無く施設敷地内へと進入、案内に従い駐車施設へ。


車両を指定された場所に駐車し、スマホで時間を一つ確認した後、指定された部屋へ向かう、流石に目的地が近くなると平然とはしていられないな。


快適な室温に保たれている筈なのに頭の上の方から汗が一筋垂れる、面談する部屋の前へと到着した。



高雄「いよいよです、提督…… 私はある程度の覚悟は出来ました、提督は如何でしょうか?」


提督「ああ、問題は無い、俺も完璧では無いにしろ覚悟は出来ている、大丈夫か? では入るぞ」


高雄「ええ、お願いします」



俺は3度ほど扉を手の甲で軽く叩いた、少々の間の後にやや高めの若い女性の声が聞こえ、室内へ入るように促される。


高雄と無言で顔を見合わすも、退く事は今更できないので多少の疑問を持ちながらも扉を開けて部屋へと入った。


部屋の中で待っていたのは異様な長さのポニーテールが印象的で、高雄よりかなり、いや、下手をすると長門より多少背の高い艦娘だった。


適合者と艤装が希少且つ極めて少数の配備をされていると資料で拝見した記憶がある、外見の特徴からして恐らく大和型一番艦、大和に間違いないだろう。



大和「お待ちしておりました、○○少佐でよろしいですね? 元帥閣下は時間がまだ余っているとの事で基地内の視察をしていらっしゃいます」


提督「指摘の通り○○少佐であります、隣にいるのは私の秘書艦の高雄、貴女とは以前の会合ではお会いしなかったと記憶しています」


大和「それは間違いありません、以前の会合では代理の艦娘が元帥閣下の護衛として参加しました、私はその頃は演習行動中でした」


大和「お立ちになられたままでの会話はお疲れになるでしょう、お二方共に此方の席へお座りください」



俺と高雄は軽く会釈をしてからソファへと座った、それと同時に大和はプレートに給湯室と書かれた小部屋に入っていった。


しかし長門とはまた違った重厚な完成度を纏っている、勇ましさは長門の方が上に思えるが単純な強さならぱ恐らくは……



高雄「大和型はあまりお近づきになる機会は無いですが、いざ対峙すると圧倒的な威圧感と完成度を感じますね」


提督「艦の運用は繊細にやらねばならないが、大和型は特にリスクが高い、使う人間の資質と実績が問われる艦船だ、配備数も希少なだけあって性能は凄まじいの一言だそうだ」


提督「我が国の西方に於いて屈指の実力を誇るS鎮守府ですら保有が認められなかった程だからな、色々な意味でおいそれと手出しは出来ないと考えている」



高雄と小声で密談していたら大和が山路盆を持って給湯室から出てきた、盆の上には湯気が昇る二人分の湯呑みが載っていた。


そして俺達の前に優雅且つ手慣れた動作で湯呑み二つをテーブルに置いた、ありがたい、会話で喉が渇いたら戴こう。



大和「粗茶ですが……」


提督「お気遣いに感謝いたします」


大和「元帥閣下が戻ってくるまでお時間がかかりそうですね、そのお時間で○○少佐とお話したいのですがよろしいですか?」



俺に興味だと? これは完全に想定外だ、他所の艦娘から明確な興味を持って話しかけられるとは思わなかった、何せ他所の艦娘とはそこまで接点は無いからな……


横目で高雄をちらりと見やる、高雄は軽く頷き了承の意を表したので大和の提案に乗る事にする。



提督「大した話は出来ないと思いますが、それでもよろしいならば」


大和「ありがとうございます、貴方は余り知らない様ですが艦娘の間では話題になる程には知名度があるのです」


なりました

どういうことだ? 俺自身は他所の艦娘とはほとんど接点は無い、せいぜいS鎮守府くらいしか思い当る節が無い、あまり別の地方にも出張や遠征をすることは無いし、謎が多いな……



大和「最初は元帥閣下からK基地へ新任の提督を推薦し配属したというお話しか知りませんでした、元帥閣下に細かい事を聞こうにも民間からの適性試験を受けてのご就任という事くらいしか教えて戴けませんでした」



民間からの転職組という事になっているのか、一応間違いではないな、この世界においてはの話だが。



大和「それから暫くは○○少佐の話題は挙がりませんでしたが、基地は順調に復興しS鎮守府との合同演習のお話を会合でお会いしたS鎮提督と側近の艦娘からお聞きしました」


大和「今日、実際にお会いして改めて確認しました、お噂通りの見目麗しい素敵な殿方で…… 大和は予定を取り下げてまで此処に来たことに些かの後悔もありません」


提督「お褒めいただき光栄です、しかし見た目が良いだけの男では軍事は務まらないでしょう、この見た目も所詮は艦娘の為に交渉を有利に運ぶための手段に過ぎません」


大和「貴方にとって、その麗しささえも交渉の道具程度の扱いなのですか、何故そこまでして艦娘に良くしてくださるのですか?」



大和が俺を凝視してくる、この国屈指の完成度と大きさ、そして戦果を誇る戦艦にこうも見つめられるとまるで蛇に睨まれた蛙だ。


数多の深海鬼や深海姫を轟沈させてきた我が国のトップエース、俺に何を望むというのか。



提督「あまり問い詰めないでいただきたい、貴女ほどの戦艦に睨まれたら恐怖を感じてしまう」


大和「……私とした事がつい興奮をしてしまったようです、はしたない真似をしてしまい申し訳ありません」



大和はそういうと息を一つを吐き、威圧的な態度を収め座ったまま姿勢を正す、こういった動作ですらも洗練されているな……



大和「ただ、今でも信じられないだけなのです、この醜すぎる容姿のせいで数々のトラブルを引き起こしています、男性に、そして時には女性にも嫌悪される事もあります」


大和「○○少佐の艦娘への献身はK基地の復興ぶりから見ても見事な物だと思いますが、やはり裏があるのではないかと疑心暗鬼にもなってしまうのです」



ふむ、元帥閣下の様な人としての悪評が少ない素晴らしい軍人の元に居ても、他の艦娘の惨状を聞いているとこうも疑り深くなってしまうのか……



提督「お言葉ですが私は貴女が思う程の清廉な人間ではありません、艦娘への待遇改善についても多少の下心はあります、他の人間より少しだけマシというだけです」


提督「身の危険を冒しながら国防を担う艦娘に容姿が醜いというだけで、艦娘を見下し侮辱するという愚行は私には出来ません、ただそれだけです」


提督「それに艦娘達は私とある部分においては『同じ』なのです」


大和「『同じ』とは一体どういうことなのでしょうか……」



大和が私に問おうとしたところ、部屋のドアが静かに開き制服を着た壮年の男性が姿を現した、元帥閣下だ。



元帥「随分と話が盛り上がっていたようだが、邪魔をしてしまったようだね」


大和「邪魔だなんてとんでもありません!! おかえりなさいませ、元帥閣下、ご視察はどうでしたか?」


元帥「視察とは言ったが正直暇潰しの散歩だよ、皆真面目に働いているようだったが、それは私が此処に来ているからかもしれんがな」



そう言うと元帥閣下は顎を手で触りながら苦笑した、流石に組織のトップが来てサボったり無気力で労働しようと思う輩はなかなか居ないだろう。


元帥閣下は大和に促されソファへと座り、大和は再び給湯室へと向かっていった。



元帥「会合では顔合わせ程度はしているが、こうして面と向かって会話をするのは『あの時』以来かね」


提督「仰る通りです、お互いに立場という物があるので二人だけで会話というのは、なかなか機会が回ってこないと思います」


元帥「今回は建前を用意しての会談だ、誰の邪魔も入らないだろう、これを知っているのはウチの大和くらいなものだ」



茶を持って戻って来た大和が元帥閣下の前に茶を静かに置く、それを見るや元帥閣下は大和に視線を合わせ口を開いた。



元帥「大和よ、私は○○少佐と二人きりで話がしたい、この事は誰にも知られてはならない、無論お前にもだ、わかるかね?」


大和「提督のお望みならば私は従う事しかできません、速やかに退室いたします」


元帥「すまないな大和、そして…… そちらの高雄君もよろしいか? 一時ではあるが○○少佐を借りたい、決して悪い様にはしないと約束しよう」


提督「……高雄、ここは素直に元帥閣下の言う事を聞いて欲しい、頼む」


高雄「お二人がそう仰るのならば私に異論はありません、提督、良いお答えが見つかる様に願っています」



二人は立ち上がると一緒に部屋から退室していく、ドアの閉まる音と同時にこの部屋は俺と元帥閣下の二人だけになった。



元帥「さて、この部屋は使用する前日に諜報が得意な艦娘に綿密に調べて貰ったが、盗聴・盗撮の危険はないとの事だ」


元帥「ただ防音は出来ていない、遵って小声での会話になるだろう、注意してほしい…… 何が本題なのか、それとも…… どれもが本題なのか、そうだな、先ずは……」


元帥「あの日、君を拾って以来、私は君が『艦娘を救う存在』という以外は何も知らない、君の素性を教えてはくれないだろうか」


元帥「猫を抱えた女性のお告げ、あんな場所で倒れていた君、どんな突飛な話が出てくるかもわからん、だがしっかりと事実として受け止めよう」



「あの時は藁にも縋りたい気持ちで君を送り出してしまったからな」と自嘲する元帥閣下、実際非常識すぎる話なのだが理解してもらえるのだろうか……


俺が逡巡している様子を察したのか元帥閣下はまた顎を触りながら苦笑した。



元帥「あの出来事から一年も経過している、身辺整理もそれなりに出来ただろう? ○○少佐の本音を聞きたいのだよ、それに君の戸籍がこの国に無い時点である程度は察している、遠慮せず話すと良い」


提督「げ、元帥閣下、お言葉ですが実に荒唐無稽で摩訶不思議なお話になると思います、私が脳に支障をきたしている人間に思えるかもしれません」


元帥「構わぬ、深海棲艦・艦娘・妖精、そして君を拾ったあの日…… 不思議な事なぞ既に経験しておる」



本当に言っても良い物なのだろうか? 俺は元帥閣下の顔を見て考えた、今でこそK基地の半分以上が復興し基地機能はほぼ問題なく稼働している。


物資支給の優先順位は基地機能が回復してからは下がりつつあるが、元帥閣下はあの程度の口約束など素知らぬ顔で簡単に無かった事にできたはずだ。


しかし、しっかりと復興するまでは優先的に忘れずに物資を送ってくれていた、その点は先ず考慮しなければならない。


そして艦娘の待遇についても悩んでいた、というのも鵜呑みにするのは危険だが間違いではないと考えても良いだろう。


そうで無ければ胡散臭いお告げを夢で見ても、態々貴重な時間を潰してまで『艦娘を救う存在』と言われた俺を探しにまで来ない筈だ。


判断材料は少ない、それに自分は人を見る目はかなり怪しいが事情を知っていて協力してくれる人間は、恐らくは元帥閣下しか居ないだろう。


俺は辺りを軽く見まわしてから、唾液を深く飲み込み決意した。



提督「……簡潔に言いますと、私はこの国、いや『この世界』には本来存在しないはずの人間です、別の世界から来ました」


元帥「やはりそういう事だったか、いくら時間の許す限り素性を調べてみても尻尾一つ掴めぬ、それもその筈だ」



元帥閣下は漸く腑に落ちた、と言ったような表情している、憶測でしかなかったが労力を費やして俺の素性を調べていたか。



元帥「君は提督として数年程就任していたと言っていたはずだ、そちらの世界の海軍はどのような仕組みなのかね」


提督「仕組みはこちらと相違はほぼありません、提督・艦娘・妖精、そして戦いの相手は深海棲艦…… ただ私の世界では国防軍という扱いでした」


元帥「国防軍とな、国家防衛に限定された戦力と考えても良いのだろうか?」


提督「そうです、他国に攻め入る事は基本的には出来ません、国家に所属しない深海棲艦に対しても泊地や中枢を叩くのはかなり慎重に議論されていました」


提督「こちらは元居た世界の国防軍より、軍としての権力が強くて物事を進める手間や苦労はかなり抑えられていて驚きましたが」


元帥「ふむ、体制についてはそれなりには分かった、他に大きく違う特徴はあるだろうか?」


提督「はい、元居た世界と非常に違うと言える特徴があります、そ、それは…… それは簡潔に言えば艦娘が非常に見目麗しい存在という事です」



言った、ついに言ってしまった、顔は出来るだけ平静を装おうと努力はしているが、俺の心臓は任務で命の危機に直面した時の様に激しく鼓動している。



元帥「艦娘が見目麗しいとな…… それはどういう事なのかね?」


提督「私が『元居た世界』では艦娘は非常に美女揃いで、それこそ絶世の美女と言っても差し支えは無いほどです」


提督「元帥閣下が気になっているところは恐らく艦娘の容姿についてと思われますが『こちらの世界』の艦娘と体型や容姿の差異はありません」


提督「引き締まった肉付きの良い身体に長い腕と脚、大きな目に控えめで高い鼻に小さな顔、成熟した容姿の艦娘は乳房と臀部が大きく、それが性的な要素として大きく評価されています」


提督「艦娘を目当てに提督適性試験を受けるものが後を絶ちません、本気で国を守りたいという人間より艦娘と懇ろになりたいと考えている男子の方が明らかに多いでしょう」


元帥「……俄かに信じ難い価値観だ、久しく驚きを隠せなかったよ、女性の提督志望者は居るのかね?」


提督「女性の割合は男性に比べれば圧倒的に少ないです、私としては『こちらの世界』で女性提督の多さにかなり驚きましたが」



俺が発言を終えると元帥閣下は両手を組み少しの間思案に耽る、そして再び疑問を問いかけてくる。



元帥「『元居た世界』において艦娘が絶世の美女というならば『こちらの世界』において極めて眉目秀麗な男子である○○少佐は、どの様な評価を受けていたのだろうか?」


提督「……その質問については元帥閣下の憶測通りであると思います、私は『元居た世界』では『こちらの世界』の艦娘に匹敵する醜い容姿の男子です」


提督「私は『元居た世界』でも提督適性試験に合格し、尚且つ妖精さん達が見える事から好待遇で提督の地位に就任しました」


提督「ですが、私の容姿を見た艦娘達は武人肌の艦娘ですら落胆の色を隠す事はしませんでした、艦娘達も年頃の女性ですから無理もありません」


提督「多少の下心もありましたが国を守るために怪我や疾病を除いて、真面目に任務を全うしましたが容姿の悪さばかりが重視され『異性』としてだけでなく『上官』としての評価もかなり低く見られていました」


元帥「君が醜い男で性的魅力は全く無いとはな、君の体型についてはどの様な評価をされていたのか聞きたい」


提督「私の様な体系の男子ははっきり言って異性に好かれる要素はありません、背が高く、薄っすらと筋肉が付いている細身な身体に人気があります」


提督「女性に人気のある顔のタイプは…… そうですね、例えば『こちらの世界』での抱かれたくない男子著名人ランキングなどで、それにランクインしていれば『元居た世界』においては先ず間違いなく異性に人気があります」



俺の発言を聞いた元帥閣下は天を仰ぎ、溜め息を一つ漏らした、そして姿勢を正し話を続ける。



元帥「……○○少佐、君はウチの大和をどう思う? 異性としての魅力を正直に答えてくれて構わない」


提督「や、大和ですか? ……異性として考えるなら恐らく最適解の一つに近い女性だと思います、とても背が高すぎるのがマイナスだと考える人もいますが、私はむしろ好ましいかと」


元帥「そう考えるのか…… 我々とはまるで感性が違うのは事実の様だな、ではもう一つ聞こうか」


元帥「君は艦娘のほとんどが極めて魅力的に見える、という認識で良いのだろうか?」


提督「……はい、元帥閣下の仰る通りです、この一年以上、尋常ではない美女達に囲まれてる上に好意を全く隠さずに接してくるので、欲望を抑え込み真摯に振る舞う毎日がなかなか堪えます……」


元帥「ふむ、なるほどな、まさに『艦娘を救済する存在』に相応しい美的感覚ではある…… 君の秘密がそれなりにわかったのは収穫だった、」


元帥「無論、他人に話す事はしない、私自身の墓まで持っていくと約束しよう、そして引き続き○○少佐にK基地の復興を任せたいと考えている、よろしく頼む」


提督「信頼をしていただきありがとうございます、ですが現在、K基地では大きな問題を抱えているのです、私では解決が難しい問題が……」



元帥閣下に信頼をしてもらえるのは個人的にも軍人としても嬉しいのではあるが、K基地は今、育成施設としての存亡に直面している。



元帥「その話はこちらに送られてくる報告書で確認してある、書類の通りの内容ならば君に責任を問わねばならないが、君の意見を聞いてからでも遅くはないだろう」


提督「温情をかけていただきありがとうございます、部下の艦娘達の証言によりますと……」



俺は元帥閣下に包み隠さず証言した、自分の見通しの甘さ、そして現在の海軍に蔓延る艦娘軽視の実態を。


元帥閣下は顎に手を当て少しの間思案する、流石に艦娘の事になるとその表情は険しい、そしてまた一つ溜息を吐き口を開いた。



元帥「成程な、君の証言から察するに艦娘達が嘘を吐くメリットが余りにも少ない、しかし嘘を吐いていないとも言い切れない」


元帥「この件だけでは正当な判断は私の立場では難しい、本来なら証拠をデータ化する手段はあまり推奨されないが、場合によってはレコーダー等による録音・録画も許可しよう」


元帥「証拠となりうるデータをある程度集めたならば私に連絡をしたまえ、会談を開く為に予定を調整しよう、その機会に私にデータを直接提出するのだ」


元帥「お互いの予定がどうしても擦りあわない事もあるだろう、その場合は信任がおける配下の艦娘をK基地へと派遣する、その時に艦娘へ証拠データを提出したまえ」


元帥「時間はかかってしまうやも知れぬ、だが確実に私の下に届くのは間違いない、艦娘を軽んじている連中から妨害を避ける為には致し方あるまい」


元帥「あとは…… 被害を受けた艦娘は君の基地へと戻る事も許可しよう、幼稚なエゴで貴重な戦力を失う訳には行かぬ」


提督「これほどまでに艦娘の為に手間と時間をかけて戴き、恐悦至極に存じます」


元帥「取敢えずは複数の証拠を提示してくれたまえ、あまりにも悪質ならば私も対策、或いは強行策を取らねばならない」


元帥「よって此度は君の責任は不問とする、猶予が延びたと思ってくれて良い、理解してくれたかね?」


提督「は、はい、艦娘達の思いを汲んでいただきありがとうございます、私も力の限りを尽くします」


元帥「○○少佐を安易に罰するのは良い結果につながるとは思えぬだけよ、この現状ではな……」



どうにか元帥閣下からの許しを得ることが出来た、だが一歩後ろは崖という程の崖っぷちではないが、どちらにしろ自分の立場はまだ危ういという事には変わりはないだろう。


複数の証拠を提出となると、数回に分けて育成を終えた艦娘を派遣する事になるが、彼女達には不遇な扱いを受けて貰う事になるのか……


戦いは綺麗事だけでは片が付かないが、味方が傲慢で驕りがあるのはある意味最も性質が悪い。



元帥「ところで君の素性を調べ上げた結果、残念な知らせが一つある」


提督「残念な知らせ、ですか?」


元帥「そうだ、どうやら君はこの世界において天涯孤独の身である事が分かった、つまりは君のご両親や親族は存在していないという事だ」


元帥「別世界から来たのが○○少佐だけというならそういう事になる、戸籍こそ用意は出来たが…… 孤児という扱いで良いか?」



俺は元帥閣下に言われて、たった今、初めて自分の置かれている状況を認識した。


自分の事など後回しにして基地を復興し艦娘を救う事だけを考えて来た、改めて思い出せば此処に飛ばされたのは俺一人、至極当たり前の事だ。


自分の扱いの酷さに耐えきれず、両親や兄弟の事を考えずに安易な気持ちで『こちらの世界』へと来てしまった。


恐らくはもう二度と家族の顔は見れないだろう、それに家族も仲が良い方ではあったので、今更ながら会う事が出来ないという事実が重く圧し掛かってくる。



提督「は、はい、孤児という建前で生きて行こうかと思います」


元帥「声が震えている、流石に動揺を隠せぬか、無理もない」


提督「も、申し訳ありません…… 恐らく二度と会えないという点では死別とそう変わりはありませんから……」


元帥「そういう事になるか…… この話は終わりにしよう、他に何か問題はあるかね?」



かろうじて返事をする事が出来たが、正直なところ精神的なダメージが大きい、声の震えも隠せない程に。


家族の皆は捜索届も出しているだろうが、此方に来てから既に一年以上経過している、俺が死んだものとして諦めていても仕方は無いだろう……



提督「いえ、今のところは育成済み艦娘の移籍問題以外に大きな問題ありません」


元帥「そうか、月並みな言葉ではあるが早まるような真似はしないようにな」


提督「ご忠告感謝いたします」


元帥「解散としよう、異論はあるかね?」


提督「いえ、解散で問題はありません」


元帥「本日の会談はこれにて終了とする、君はこのまま部屋から出て基地へ帰投したまえ、ついでに大和に会談が終わった事も伝えてくれると助かる」


提督「承知しました、本日は貴重な時間を割いていただきありがとうございました」


元帥「構わぬ、艦娘を憂う同志として君を信用しているのだからな、遠くにはなるだろうが何れまた会おう、それでは解散とする」



俺は解散の合図を聞いてからソファから立ち上がり敬礼を一つした後に、部屋のドアを開け廊下へと出る。


部屋の入り口からやや離れた場所で高雄と大和が会話しているのが見える、近くへと歩み寄り手を挙げた。



高雄「提督、会談の方はどの様になりましたか?」


提督「ああ、今しがた終わったところだ、そして大和、会談も無事に終了したので元帥閣下から呼び戻すように伝言を預かっています」


大和「そうでしたか、ありがとうございます、では私はこれにて失礼します、また会える機会を楽しみにしていますね」



俺と高雄は軽く会釈をして大和を見送った、彼女には悪いがまた迫られるのが恐ろしいので遠慮願いたいところではある。


元兵士ではあるが、好き好んで無謀に危険や重圧を楽しむ趣味は無いのでな……



提督「元帥閣下と大和…… 自分達より明らかに格上の相手は心身ともに疲弊する、困ったものだ」


高雄「それは同意しますわ、大和と雑談の流れになりましたけれど戦闘・戦術の話になると、かなりのレベルの差を実感します」


提督「無理も無い、元帥閣下が指揮する第一艦隊所属だぞ、ウチの長門か金剛をぶつけても勝てるかは難しい」


提督「ところで雑談は何を話していたんだ? あまり突っ込んだ部分は答えたりはしていないか不安ではある、君自体はとても信用しているが相手が悪すぎる……」


高雄「大和と言えども提督の事はとても気になるみたいですが、最低限の情報を除いてはほとんどお教えしていません」


高雄「最前線にもなると男性の事なんて考える余裕も無くなるので、諦めに拍車がかかる艦娘がほとんどですが、流石に提督を目にしてしまったら話は違うようですね」


高雄「色々な事を質問攻めされましたけど、この高雄、必死で情報を漏らさない様に徹しました」


提督「気持ちはわからないでもないが、あまり迫るのはやめて貰いたいところではあるな……」


高雄「提督は強引な女性は好まないと答えたら、流石に大人しくはなりました、海では鬼や姫にも負けない大和も圧倒的ハンサムには勝てない様です」



そう言った後に軽く笑う高雄、とりあえずはそんなにネタが漏れたりはしていない様だ、実際にあらゆる意味で強引な女性は苦手ではあるが。


廊下で立ち話もあれだから、施設を出て帰る事にしようと高雄に提案する、彼女も俺の意見に肯定し、いつもの様に二人並んで駐車施設へと歩き出す。


予想外の衝撃的な事実もあったが、とりあえず猶予と証拠の提出を許可されたのは収穫だ、最悪罰せられるのも覚悟はしていた、正に無策だったからな……


基地に戻ったら高雄・大淀・長門に相談しながら対策を早急に纏め、元帥閣下が提示してくれた道を見失わないようにしなければならない。



────会談直後、応接室



大和「会談は如何でしたか? 大和にも聞かれたくない事とは珍しいですね」


元帥「既に気づいているのだろう? 私が彼の支援者である事を」


大和「はい、確証はありませんでしたがある程度の憶測はついていました」


元帥「そうか…… 大和よ、彼に対しての印象はどう思う?」


大和「艦娘の醜い姿については元帥閣下程の耐性がお有りの様です、顔一つ顰めないとはかなりのポーカーフェイスと思います」


大和「意図して少々威圧をしてみましたが、荒事はあまり好まない態度を見せました、防衛や奪還に関しての指揮能力は未知数と大和は考えています」


元帥「ふむ、いざ基地の方針を育成から一般的な運用に切り替えた場合の効果はなかなかリスクが高いと見える」


大和「そのような計画を考案中でしょうか?」


元帥「今思いついただけの戯言よ、それで他にはどのような印象を持った?」


大和「廊下に出た後は秘書艦と思われる高雄さんとも雑談をしましたが、彼女への態度や反応を見る限り、○○少佐は艦娘とは友好的と思えます」


大和「戦術や戦闘技術の話もしましたが秘書艦と言えども、高雄さんはごく一般的な重巡洋艦レベルと推察しています」


元帥「彼らと我らは役割が違う、練度の差は如何ともしがたいものだ、そして今は彼らの努力の結晶を拒み侮辱するものが居る、それが問題でもある」


大和「仰る通りです、大和は『大和』の艤装に適合できた事、そしてこんな醜い私にもお目をかけてくださる元帥閣下の艦隊に所属できたのが、艦娘としての生を受けて最大の幸運と考えています」


大和「ですが私の様な『正常な運用』をされている艦娘というのは稀です、だから私は元帥閣下のご思慮に深い感銘を受け賛同しました」


元帥「その事について常に感謝を忘れない様にしている、艦娘に頼らぬ限り我々には勝ち目は無いだろう、だからこそ○○少佐の様な若い力が必要になる」


元帥「だからこそ、これからも頼む、大和」


大和「仰せのままに、大和は家族と元帥閣下の為ならば艦娘として全てを以って戦いましょう」



────提督、数時間後、提督執務室



長門「とにかく無事に帰ってくれて良かった、それで会談の内容はどうだった?」


大淀「本当に提督がご無事で良かった…… かなり落ち着いていますが何か朗報があるのですか?」



K基地へ帰投し、司令部の玄関を開けたら大人数の艦娘達に出迎えられた、流石に全員はいなかったが。


帰って来た嬉しさで声を上げて泣いたりする艦娘も居て、改めて自分一人で生きているわけではないと認識した。


皆が落ち着いてそれぞれの持ち場や寮に戻った後、今はいつもの4人で執務室にいる。




提督「それについては俺から話そうか、簡潔に言えば猶予を頂いた、艦娘に対するハラスメント行為の証拠を提出する為の期間をな」


提督「元帥閣下から直々に証拠として侮辱や恫喝と言ったハラスメント行為を録音・録画する事を許可された、今後は育成を終え異動先が決まった艦娘にはこの事を漏れなく伝える」


提督「被害を受けた艦娘がK基地に戻る事も許可された、今度からはこの事も異動先の基地へ渡す書類に忘れずに書いて欲しい」


長門「証拠の提出をした後はどの様に処理をされるのだ? 上層部の誰かに揉み消されたりはしないだろうな?」


大淀「何処の組織も自らが気に入らない存在の排除と、保身しか考えていない者が居ますからね……」


提督「その点は元帥閣下自ら証拠を受け取るか、またはK基地に配下の艦娘を寄越してくれるとの事だ、時間はかかってしまうが元帥閣下に直接渡すにはこの方法を推奨された」


長門「なるほど、しかし提督は随分と元帥閣下に買われているな、コネとはまた違った物の様だが、なんとも不思議な関係だ」


提督「それだけ艦娘を保護しようという立場の人間が少ないのだろう、執務の量や大規模作戦に参加しないという事も考慮すると、俺に白羽の矢が立つのも当然だ」



流石に元帥閣下と俺の出会いに関しては、大っぴらには言えない事が多すぎるな…… 不快害虫扱いされなくなったのに、今度は妄想電波男扱いされてしまう、うまく誤魔化さなねばならない。



提督「他は、そうだな…… 元帥閣下直属の大和にも会ったぞ、予定をキャンセルしてまで俺に会いに来たそうだが」


長門「何っ!? 大和だと!? 大和まで提督を目当てに会いに来るとは、提督の魅力は凄まじいものだな」


提督「少し質問攻めされてな、威圧的ににじり寄って来た事もあったが正直なところ、あれと敵対するのは無理だな、命がいくつあっても足りない……」


長門「こうして無事に帰って来たから良いが、提督に何かあったら例え元帥閣下直属の大和だろうと許せんな」


提督「少し俺にカマをかけてみただけだろう、元一兵卒ではあるが戦闘はそんなに得意ではないし、あちらもその様に感じ取れただろうな」


高雄「私も少しだけ雑談をしましたが、戦闘の話になるとレベルが違い過ぎて話についていけませんでしたね」


大淀「育成施設のK基地と関東地方最大のY鎮守府では、訓練の質と戦いの場数は雲泥の差ですからね、大和型を持て余さずに戦わせる事が出来るので、規模すらも差が大きいです」


長門「私も大和ほどの燃費の酷さでは無い物の、此処に来てからはすっかり省エネで演習や近海での戦闘をしているよ、最高でも6-7割程度までしか艤装の出力を上げた事が無い」



その点に関しては申し訳が無いとは思っている、金剛や榛名ですらフルパワーでの艤装使用は滅多に許可していないのだから……


ウチでフルパワーが許可されている戦艦と言ったら、伊勢型の二人くらいではなかろうか、訓練艦娘だった頃にはビスマルクも訓練の為に許可していたが。



提督「その件については申し訳ないと思っている、だが資源についてはなかなか確保が難しいのだ、海外からの輸入でほぼ全てを賄っているし、優先順位もK基地はかなり下の方ではあるからな……」


高雄「我が国は価値のある資源はあまり出せないですし、燃料についてはほぼ絶望的ですからね…… それは私達のルーツになった軍艦が生まれた『あの世界大戦』の頃から変わっていませんわ」



『この世界』でも過去には世界大戦が起きている、ここに来たばかりの頃に歴史書数冊を読んでいたことが有り、それを切欠で知った。


『この世界』の歴史的な事件を見ていると、美醜感覚が逆転しているせいか俺から見たら珍事件がたくさん起こっている。


古代の芸術品から始まり有名な美女絵画まで、とにかく不細工だらけである、ファラオの仮面やギリシャ彫刻など、とてもエキゾチック不細工である。


世界大戦が起きた原因も『元居た世界』と比べれば僅かな差こそあれど、結局のところは資源不足・宗教と人種の優劣に尽きると言ったところだ。


現在も建前こそは『明確な敵相手に協力して戦う』と言ってはいるが、深海棲艦との戦いが終わった後の準備は虎視眈々としているに違いない。


実際にそういう不穏な動きも各国に見られたという報告も有り、人は過ちを繰り返すとはよく言ったものだ。



提督「話が逸れてはしまったが今後の活動として、次の訓練艦娘が卒業するまでは平常通りの任務遂行となる」


提督「訓練を終え正規の艦娘となり、他所の基地へ異動となった時が大事だ、制服・艤装や専属の妖精さんなどに付けられる小型のレコーダーを渡す」


提督「評判が著しく悪い基地へ配属される場合は盗聴器やGPSなども持たせることになるだろう、技術関連の問題なので明石と夕張にしっかり相談しておかねばならんな」


提督「今は大雑把な提案しか出来ないが、今後はこの問題に時間をある程度割くことにしよう、代わりに時間が減ってしまう執務等もあるが仕方あるまい」


高雄・大淀「了解しました」


長門「了解した」



特に他に意見も無いと見えたので、出迎えて貰った事を労い、各自持ち場へ戻らせた。


ある程度の評価はしてもらってはいるが、流石にこれ以上の失態は許されないだろう、提督としての踏ん張りどころではあるが、自分はただ基地の中で待つ事しかできない。


実際に被害を受けるのは艦娘達だ、こんな下らない腐敗が提督達に横行している、国難どころか人類興亡の瀬戸際と言うのに筆舌に尽くし難いとは正にこの事だな……


義憤に駆られるのも程々にしなくてはならない、自分の振る舞いも見直すべき部分が有るのかもしれぬのだから、人の振り見て我が振り直せというヤツだ。


色々と考えてはみたが、結局のところは次の訓練艦娘が修了をするまでは準備以外は何もできないという事だ。


基地を復興しながら艦娘との親睦を深めるというのも大概に難しい仕事だったが、今度は問題が外にあるから尚更難しい任務になりそうだ。


今日はとにかく精神的なプレッシャーが凄まじかった、大して身体を酷使していないのに体が重い、明日の執務に備えて身体を清潔にしてから早めに寝る事にしよう。



提督、指輪の扱いに悩む

元帥閣下からの会談を終えた後、すぐにいつもの三人と会議を数度に渡って行った。


被害に遭った艦娘も時には会議に参加してもらい要点や問題点などを書類に纏め、元帥閣下へと提出した。


直接提出するのは難しかったので、元帥閣下とのホットラインを使用、配下の艦娘を寄越してもらい、その子に書類を預ける方法になってしまったが。


そして元帥閣下との会談から二か月が経過した、今のところは訓練卒業生はまだ居らず、基地の完全な復興に向けて取り組んでいる。


暫くは平穏な日々が続くのかと考えていたが、我が基地にもついに扱いに困る物が大本営から送られてきたのだ。


大淀から渡されたダンボールの中に大量の書類の中に紛れて、一緒に包まれていた『それ』を誰にも見つからない様に私室へと運んだ、あの様子だと恐らく事務担当の大淀も気づいてはいないだろう。



提督「こっちの世界にも指輪は有るんだな、艦娘達に騒がれない内に内容を確認しておくか」


提督「ふむ…… 『限定解除特殊艤装』だと? なんとも色気の無い名前だ、むしろこっちの方が正しくはあるんだがな」



『元居た世界』では『ケッコンカッコカリ』と呼ばれ、提督と艦娘の信頼と練度の高さがあってこそ装備できるものだった。


形式上とは言え実際の婚姻に近い方法で装備される為、戦略上の有用性を無視して相手を選んでいる提督も居た。


提督に強い好意を抱いている艦娘は、提督から指輪を装備させて貰う為に奮起し、更に強くなる者もいる。


俺の場合は…… 大本営の通達で指輪が届いた際に候補者をある程度絞らなくてはならないのだが、とても殺気立っていたり侮蔑の目で睨まれたり、陰口も叩かれたりしたものだ……


『こちらの世界』でも効果も装備条件も同じ様だ、強い信頼と高い練度を持つ艦娘が装備出来ると書類に記述してある。


元帥閣下も既に指輪を大和に装備させているとも書いてある、暗に『組織の長が使っているのだから、しっかりと有効活用しろ』という事なのだろう。


この指輪については部下の艦娘達はどう思うのだろうか、俺の好意を受け止めてくれる艦娘は居るのだろうか、此処に来て一年以上だというのに未だに完全には不信感は拭えない。


かといって面と向かって聞くにはかなり自意識過剰な気がしてならない、俺としては使わない理由は無いのだが……


部下の艦娘達は皆、容姿端麗過ぎて俺の方が気後れしてるくらいだ、高雄にセクハラ紛いな事もしたが、あれは切羽詰まってたから出来たというのもある。


性格も良い娘が多いし、辛い訓練に耐えながらも周りにも気を配っているし、艦娘同士で衝突して問題を起こすこともあるがお互いが必要だと分かっている。


……考えれば考える程に、この指輪を使うべきなのか判らなくなってくるな、断られるのが怖いと言うのもあるが。


今日は『指輪』を議題の一つに挙げて、いつもの三人と話し合ってみるか……



────提督、提督執務室、数十分後



提督「つい先程、今日消化する執務書類の中身を確認したところ『限定解除特殊艤装』と、その書類が含まれていた」


提督「遵って執務を始める前に『限定解除特殊艤装』…… 以下、指輪と呼称する、これについて話し合いをしようと思う」



俺がいつもの様に議題を挙げると、三人は驚いた顔を見せ、そして溜め息を一つ吐き遠い目で何処かを見つめ出す。


ああ…… その反応をしたくなる気持ちは解らなくも無い、俺も以前はそうだったから……



長門「……ついに来てしまったのか、この基地にも」


高雄「艦娘にとっては悪夢のようなアイテムですわ」


大淀「そもそも使える人が極少数過ぎます、男性提督に至っては元帥閣下くらいしか使用できなかったという話ですし」


高雄「女性同士でも使えるのが不幸中の幸いと言ったところですね……」



いかん、完全にテンションがサゲサゲである、議論すらしたくもない空気が三人から滲み出てきている、どうにかしてここから話を発展させねば。



提督「使用できる人が少なすぎると言っていたが、それは何が原因なんだ?」


大淀「練度の高さを満たす艦娘はそこそこ居ますが、信頼においては提督と艦娘双方が強い信頼を結んでいないと使用できないのです」


高雄「一見、良好そうな提督と艦娘に見えますが、実は提督が…… というパターンが多いのです」


長門「職務上我慢はしているが、出来るだけ艦娘は視界に入れたくないと内心思っている提督が多いのだ」


提督「成程な、なかなかコメントしづらい答えではある」



俺は嘘がつけない、嘘が下手なタイプの人間だが、文字通り仮面を被ってるのではないだろうか?と思える程に外面を使い分ける人間はいるからな……


そうだ、名前についても聞いておきたい事があるから少しふっかけてみるか。



提督「しかしこんな婚姻指輪みたいなデザインなのに、何故こんな色気の無い名前なのだろうか」


高雄「噂話程度で申し訳ありませんが、指輪を完成させた妖精さんは『ケッコンカッコカリの指輪』と名付けたそうなのですが、男子提督達から猛反対を受けて大本営が名前を変えた、というのを聞いたことが有ります」


提督「そんな話があったとはな、ところで何故指輪が二つあるのだろうか?」


大淀「書類によると親機と子機みたいな関係だそうです、提督が親機の指輪を付けて、艦娘が子機の指輪を付けるという運用方法です」


大淀「我々艦娘は提督の信頼を糧にパワーアップする現象が判明しています、恐らく1組の指輪は増幅装置みたいな物なのでしょう」


提督「説明に感謝する」


長門「……それで、提督はその指輪は使うのか? 我々として聞くのが恐ろしいが早急に聞いておいた方がダメージも少ないだろう」


大淀「長門さんの言う通りではありますね、確かにずるずると聞かずに後回しよりは、今ここで聞いてしまった方が良いかもしれません」


高雄「ふ、二人とも、大胆なのね、私はまだ心の準備が……(多分、断られるとは思うけど)」



使用の可否は当然聞かれるとは思っていたが、俺としては使わない理由が全く無い、皆は俺に良くしてくれているし優しい艦娘達ばかりだ。


俺も皆の期待と労いに応える為に仕事をするのは苦を感じることは無い、だから指輪を嵌めるのに躊躇いはない。



提督「俺の答えは…… そうだな、見て貰った方が早いかもしれない」


長門「何?」


高雄・大淀「えっ?」



俺は指輪のケースを開き、左手の手袋を外し、何の躊躇も無く左手の薬指に指輪を嵌めた。


薬指に嵌めた瞬間、指輪は微かに光を帯び次の瞬間にはやや強く短く光り出した、やがて光は消え何事も無かったかの様に薬指に納まった。



提督「ふむ、まさか装着した瞬間にこんなに強い光を一瞬だが放つとはな、少し驚いたな」


長門「ばっ、バカな…… 指輪を嵌めた!? 何の動揺や躊躇いも無く!! 艦娘である私達の前で!!!」


高雄「強い光を発しましたがあれは一体…… それより提督が指輪を嵌めるなんて……」


提督「この強く眩い光は何なんだ? 説明を頼む、大淀」


大淀「あっ、す、すみません!!! えっと、資料のどのページかしら…… ここですね!!」


大淀「設計・製造した妖精さん曰く、艦娘に強い信頼を抱く者が装着をすると使用する条件を満たした時に、強い発光現象が起きるそうです」


大淀「それに艦娘程ではありませんが、指輪のパワーが体中を巡り、提督も限界を超えて身体能力が上がるそうです、妖精さんの技術は本当に謎ですね……」



指輪を嵌めて少し落ち着いた瞬間に、力が迸り身体中に走ったのはどうやら錯覚ではない様だ。


それに以前はこれ以上鍛えてもやや打ち止めだった身体の感覚が、簡潔に言えば許容量とか成長幅が延びたような気がする。



大淀「指輪は一度使用条件を満たすと持ち主を認証して、他の人間には使えない様になるそうです、あの眩い光は指輪が提督を認証したのかもしれません」


長門「指輪からも認められた、つまりは…… 提督が私達に強い信頼を置いているというのは嘘ではない、という事か」


提督「逆に指輪に認められなかったら何かあるのか?」


大淀「何にもありません、装着しても反応が全く無いそうです、なので外面だけ良い提督は指輪を嵌めた時に人間性がバレるとの事です」


大淀「嵌めれば艦娘が本当は嫌いだと判明する、嵌めるのを断固拒否したら疑いの余地がある、双方にとって不幸をもたらすアイテムとして認知されています」


大淀「過去に指輪に認められたのは男性提督は元帥閣下のみ、そして男性提督による指輪装着事例二人目は我らが○○提督ということになります、これは我が基地の艦娘にとっては本当に喜ばしい事なのです」


高雄「私は貴方の様な提督の秘書艦になる事が出来て、改めて誇りに思いますわ」


提督「男性提督達の情けない体たらくには心底呆れていたが、本当に何処までも傲慢ぶりに底が無いな…… 俺も人の振り見てなんとやらというヤツだな」



手を上にかざし薬指に嵌められた指輪を眺める、以前は全く嵌める余地や機会の無かったケッコンカッコカリ指輪。


良く観察すると装着している間は淡く光を放つ様だ、『こちらの世界』において俺の決意の証になり、力を与えてくれるとは思わなかったな……



提督「この事は基地の皆にも報告する事とにしよう、そうだな、夕食を終えた後に広間へ皆を招集させるように手配してくれ」


長門「承った」


高雄・大淀「了承しました」


大淀「恐らく今夜は大騒ぎになるでしょう、提督が来てから嬉しい事は多々ありましたが、一度は機能停止寸前まで落ちぶれたこの基地で艦娘にとって最も嬉しい事の一つが起きたのですから」


大淀「以前から長門さんは『今後数年艦娘を務めて進展が何もなかったら、解体処置を受けて民間人に戻る』と仰ってましたが、これで任期が延びましたね」


長門「ああ、正直期待はしてなかった、本当に嬉しい誤算であるし、何より品行方正なだけでもありがたい上に極めて端整な容姿の提督に仕える事が出来るのだからな、艦娘としてこんなに嬉しい事は無い」


提督「そんな決意をしていたのか、察してやれなくてすまなかったな……」


長門「無理も無い、それに苦しいのは私だけでは無かったし、辞めるというのも『長門』として戦えずに基地で腐っていくのが耐えられなかった、ただそれだけだ」


長門「ここにいる高雄と大淀、それに他の艦娘の皆も良く耐えてくれた、辞めたいと泣く艦娘を引き留める度に罪悪感すらあったくらいだ」


長門「だから提督、艦娘の皆の気持ちを裏切らないでくれ、それだけは分かってほしい」



長門はそう言うと俺の両手を手に取り、じっくりと力を込めて握った、苦渋の色が見える両目はしっかりと俺の顔を見つめている。


今まで経験してきた辛く理不尽な出来事を顧みているのだろうか、その表情はやや暗い。



提督「そうだな…… 改めて提督という立場の重さという物を再確認した、提督として任務に従事している間は尽力しよう」


提督「ただ、君達も覚悟はしておいてくれ、戦死は勿論だが何気無い日常の中でも致命的な事故はある、俺が死んだ後の事もしっかりと考えておくと良い」


長門「あまりその様な事を想像したくはないが、その点については後々に皆と集会を開いて考えるとしよう」


高雄「提督がお亡くなりになられたら、私の場合は戦争が終わる前に解体処置を受けて民間人に戻りそうですわ」


大淀「ああ、それは確かに納得です、提督ほど艦娘の事を考えて艦隊運営している方も簡単には見つからないですし、他の皆さんも大半はそうなさるのではないかと」


提督「何という事だ…… 立場の重さは覚悟していたが、俺が死んで艦娘達が大量に辞めたら海軍としてはかなりのダメージになるぞ、何が何でもこれは生きねばならんな」



此処が育成施設を担っているというのも大きい、俺が死んだら此処もまた元通りの機能停止不良施設になってしまう、育成を止めたら未来は無いというのはあらゆる業界で実証済みではあるからな。


とりあえず指輪の件は一度置いておくとして、本日の執務を終わらせるとしよう、夕食の時間までいつも通りしっかりと働かねば。



────提督、数時間後、提督執務室



黄昏時に差し掛かる頃、俺は再確認の為に指輪の仕様書に目を通していた、そして気づいた事が一つある。


指輪の仕様書には『極めて高い練度の艦娘が、提督と強固な信頼を築かなければ使用できない』と記述されている。


この基地は海上戦闘を行う上で必要な技術・知識を一定水準を目安として艦娘に習得させるのが目的の基地だ。


無事に戦う術を習得した艦娘達は、この基地から異動という名の卒業を迎えて出て行く事になる。


遵って高い練度を目指しながら居続ける事が出来るのは、訓練生以外の限られた艦娘になってしまう。


つまり、この基地で指輪を嵌める事が出来る艦娘はかなりの少数、この時点で既に公平性が無くなっているのだ。


自分で言うのは正直驕っている様で言いたくはないのだが、艦娘達との仲もかなり良好で皆も俺との距離が大分近くなったと思う。


もしかしたら俺とのケッコンカッコカリを希望している艦娘が居るかもしれない、しかしその艦娘が訓練生だとしたらその希望は叶わないのである。


時は既に遅し、いつもの三人は既に俺の手伝いを終えてそれぞれの担当任務へと行ってしまった、しかしあの三人に相談しても二人はまだ若いし、長門は恐らく俺と同じでそういう機微に疎いかもしれない。


夕食後の集会まで時間は3時間程度しかない、この手の問題に経験が豊富な相談相手はいないだろうか……


執務椅子にだらしなく体を預けながら天井を凝視して溜め息一つ吐いた、と同時に執務室のドアを叩く音が聞こえて来た。



鳳翔「提督、ただいまお時間よろしいでしょうか?」


提督「ああ、入っても構わない、良いぞ」


鳳翔「では、失礼します」



そういうと鳳翔は執務室へと入室し、静かにドアを閉めて俺が座している執務机の近くへと寄る。


いつ見ても一連の動きや作法に「そつ」や「瑕疵」と言ったものが無いな……



鳳翔「報告するべき事が一つ有りまして、厨房の大型コンロに不良箇所が出てしまいました、現在は間宮さんと妖精さんがガスを停止させた後に原因の追及を行っています」


提督「成程、貴女がこの部屋に来るのは珍しいと思っていたが、そのような件なら納得ではある」


提督「一か月毎の定期点検の報告書では特に不調の様子は見られないと書かれていたが、流石に内部をバラしてまでの点検は時間がかかる」


提督「大方、何処かの部品や部位がトラブルの原因になっているのだろう、処置は検査の結果が分かり次第だな、報告に感謝する、鳳翔」


鳳翔「応対していただきありがとうございます、間宮さんに報告を終えた事を伝え次第、本来の業務に戻ります、失礼しました」



俺は鳳翔に軽く返事を返して鳳翔の背中を見送った、ただの報告だと言うのに慎ましく淑やかな振る舞いだったな……


彼女の振る舞いに見惚れていたところに、ふと俺の身体に電撃が走る、解決策が見つからず靄がかっていた頭の中に一条の光が差し込んだ。


これだ!!! という天啓と共に俺はすぐに椅子から立ち上がり、恐らく廊下を淑やかに歩いているであろう鳳翔に向かって全力で走った。



────提督、提督執務室、十数分後



提督「皆、忙しい中、集まってくれてありがとう、此度は皆の知恵と知識を拝借したいと思い集まって貰った」


鳳翔「普段は物腰がゆったりしている提督が、すごい速さで走り寄られた時には正直驚きました……」


鳳翔(突然走って来られて、『君の様な人が必要だ!!』と言われた時には凄い勢いで胸が高鳴りましたが、私の恥ずかしい勘違いだった様です……)


間宮「あら、提督が走るなんてとても珍しいですね、提督はいつも余裕を以って行動していらしてますから」


香取「提督が走ったという珍しいお話にも興味はありますが、今は提督が抱えている問題を解決する事にしましょう」


香取「それで、私達三人が提督直々のご指名で執務室に呼ばれた理由、そして提督が抱えている問題がどのような物かをお聞きしてもよろしいでしょうか?」



俺は肯定の返事をした後に左手の手袋を外し、彼女達の前に指輪を付けた素手の掌を見せた、指輪は銀色の光を淡く放っている。


艦娘として経験豊富な鳳翔達もこれを見せただけではいくら何でも解らんだろうから説明しなくては、と思っていた矢先である。



香取「……これはもしかして、限定解除特殊艤装でしょうか?」


間宮・鳳翔(これが…… あの悪名高いと噂の限定解除特殊艤装……)


提督「流石は『香取先生』というところか、たったこれだけで解ったあたり教導艦の肩書は伊達ではないな」


香取「提督は既婚で妻帯者という話は資料に書かれていませんでしたからね、そして私達を呼び出してまで見せた、その指輪の正体は限られた物になるかと」


香取「そして、その淡い光を放っているという事は…… 提督は指輪に認められたという事ですね?」


提督「その通りだ、説明が必要かと思い口を開こうとしたが、香取に説明されてしまったな」


香取「ふふっ、普段はあまり提督に自分の能力を披露する機会がありませんから、数少ない機会だと思って少しはしゃいでしまいました」


提督「訓練生達の成績や態度を見ていれば君の功績は見事な物だ、評価はしているつもりだったんだがな」


提督「鳳翔と間宮は先程から静かだが、何かあったのか? それとも思うところでもあるのか?」


鳳翔「……あまりにも突然の事で考えが纏まらないのです」


間宮「私も鳳翔さんと同じです、提督なら先ず忌避感がある限定解除特殊艤装を私達に見せるなんて……」



どうやら俺が考えていた以上にこの指輪の存在は曲者だったようだ、俺としては艦娘の信頼を保証してくれるアイテムだと思っていた。


此処に来て一年以上経過しているし、艦娘との仲も深まったと思っていたが、過去の提督達が起こした問題の末路はまさに「覆水、盆に返らず」という事か。



提督「君達艦娘にとって、この指輪はどうやら俺が考えている以上に業が深い道具の様だ、その点は俺が軽率だった」


提督「だが俺はこの指輪は君達に俺の決意を証明できる道具だと思って着けた、指輪に認証されれば俺が艦娘に信頼を向けている事を明白にできる、そう考えたからだ」


鳳翔「提督は指輪を装着するにあたって躊躇いや忌避感は無かったのですか? 形式上とは言え、まるで結婚の様な儀式的な使い方に疑問は無かったのですか?」


提督「俺は指輪を着ける事に全く躊躇いは無い、むしろこれで君達の不信感が無くなるなら喜んで着けると思ったくらいだ、後で長門・高雄・大淀に聞いて見ると良い」


鳳翔「……!? 提督の決意を疑う様な、差し出がましい事を口に出してしまい申し訳ありませんでした……」


提督「鳳翔、貴女が言いたい事も全てでは無いにしろそれなりには理解できる、艦娘は長い間、味方でなくてはならなかった『提督』や『海軍』等に虐げられてきた」


提督「俺の行動に戸惑いを覚えるのも無理はない、だが俺は艦娘達を自らが出来る限り助けたいと思っている、それだけは信じてほしい」


鳳翔「て、提督……」



逡巡する鳳翔、そしてそれを見つめる俺、無言のまま時が過ぎて行く、と思っていたら『ぅおっほん!!!』とわざとらしい咳払いが一つ、執務室に大きく響いた。



香取「提督、鳳翔さんがいくら淑女だとしてもイチャつかないでください、問題の解決が先決ですよ?」


鳳翔「い、イチャつくなんてそんなとんでもありません!!」


提督「その様に見えてしまったのか…… しかしあまり君は驚いてはいないのだな」


香取「指輪の存在は知ってましたし、提督もいつかは決断に迫られる時が来るとは思っていましたが、あっさりと着けてしまったので驚きと拍子抜けが半々と言ったところです」


香取「ですが話の論点はそこではありません、提督は現在抱えている問題を提示して下さらないといつまでも解決できません」


提督「た、確かに香取の言う通りではある、君達の時間が無駄になってしまうからな……」



俺は現状における指輪の問題点を三人に包み隠さずに述べた、三人は問題点について何が問題となるのか、ある程度の察しはついたように見える。



香取「つまり提督は『指輪の装備条件について不平等な点がある』という事で私達に相談された、という事になりますね?」


提督「ああ、大雑把に言ってしまえばその答えで間違いでは無い」


香取「それで、相談者を私達三人に絞った理由を聞かせていただきたいのですが」


提督「……失礼に当たるかもしれないと思うが、君達が『艦娘の中では人生経験が豊富、尚且つ艦娘の纏め役や相談相手をしている』という点を重視した人選なのだ」


提督「俺は女性の気持ちや機微にかなり疎い男でな…… 艦娘と直接のやり取りをしている君達の力が必要なんだ」


間宮「なるほど、鳳翔さんは家事と航空部隊の総括、香取先生は訓練生の教育と訓練全般を、私は食事の管理や簡単なカウンセリングをしていますね」


鳳翔「それに私を含めた皆さんは年齢制限のある艤装に適合した艦娘達ですね、それならばこの人選は納得と言えます」



まだ20代半ばと思われる女性達に対して『亀の甲より年の劫』などとは流石に口外は出来ない……


流石にお小言の一つは覚悟をしていたがそれも無く、冷静に納得してくれただけでも実に有り難い。


ほぼ毎日、任務の中で多数の艦娘達と直接会話を行い、またはプライベートでも親交の多いこの三人ならば何かしらの打開策を授けてくれるだろうと考えた。


古鷹も相談相手には上がったのだが、彼女は優等生ではあるがまだ若さが目立つ部分もある、自分の事だけでも手一杯だろうから候補から外した。



提督「公私共に優秀であり、精神的な年齢も高く、多数の艦娘と親交のある貴女達からの意見を聞きたい、先ずは空母艦娘を総括する鳳翔からお願いしよう」


鳳翔「わかりました、私の考えとしては空母組の艦娘でこの事に強い不満を持つ娘がいるとするならば、グラーフさんが強い不満を抱くかと」



成程な、確かにグラーフは俺に必要以上に忠誠を誓っている、そこまで言うのは大袈裟ではあるが完全に懐いている節があるのは確かだ。


実際のところ、忠実な大型犬の様だ、艦娘は何故に犬系の娘が多いのだ…… 俺はグラーフを警戒する理由を鳳翔に述べて欲しいと促した。



鳳翔「提督はお気づきではありませんか? あの『騒動』で彼女は強く提督に想いを露わにしましたが、あれから日を追う毎に彼女の提督への慕情は増して来ています」


鳳翔「自らが提督から指輪を貰える条件から外れるとしたら、何かしらの行動を起こすかもしれません、彼女との話し合いを提案します」


鳳翔「提督から明確な拒否が無い限り、僅かな可能性に賭けているのだと思います」


鳳翔(以前にグラーフさんに指摘をされましたが、想いを抑えつけないという事、彼女と私の明確な違いはその部分にあります、その部分に妬みが無いと言ったら嘘になりますね……)


提督「まさかそんな大事になっているとは…… 普段の態度からでは想像が出来ないな、他の空母達についてはどう考えている?」


鳳翔「皆は提督に強い憧れは持ってはいますが、基地は修復され、待遇は見直され、これ以上の物を提督に求めたら負担になるのではないかと考えています」


鳳翔「遵って、空母訓練生の娘達については不満を募らせるという事は無いと思います、但しグラーフさんが提督に対して何も行動を起こさないという条件付きですが」



もしグラーフが俺に対して何らかの好意をぶつけてくることがあるならば、どうすれば良いのだろうか?


俺自身は艦娘の皆は非常に勇敢且つ逞しい娘達だと思っている、最前線ではないとはいえ深海棲艦とも遭遇し一戦交える事も稀に有り、命の危機に晒される事も少なくは無い。


それに比べ、提督である俺は余程の事が無い限りは現場に赴くという事は無い、基地で書類を淡々と始末していくだけの仕事がほとんどだ。


艦娘である彼女達の要望には出来る限り優遇を望んでいる、彼女達が俺に好意が有ると言うならば無碍にはしたくない。


俺は一息置いてから鳳翔に再び問いかけた。



提督「鳳翔、君が懸念を抱いているグラーフについて、どの様に対応をすべきだと思うのか聞きたい」


鳳翔「強い拒否を相手に示してください、話し合いとは言いましたが多少は有無を言わせない態度で出るのが望ましいかと」



柔和で淑やかな普段の彼女とはかけ離れた、実に厳然とした答えが返って来る、あまりの衝撃と違和感に思わず面食らってしまった。



鳳翔「提督は今までは基地の復興と艦娘の待遇改善に努めて来られました、ですが現在は艦娘の育成に力を入れ、未解決の問題もありますが艦娘の派遣まで漸く漕ぎつけました」


鳳翔「この基地は本来の任務に戻りつつあります、提督のお心遣いは艦娘としても個人としても幸甚の至り、ですが今まで通りの寛容な態度は出来るだけ控えてください」


鳳翔「私達は基盤こそは人間ですが本質は『兵器』です、大きく危険な力を持っています、統率無くして正しい艦隊運用は難しいでしょう」


鳳翔「そして『兵器』でありながら『兵士』でもあります、不用意に不和を起こす者がいるならば艦隊は本来の力を発揮できなくなります」


鳳翔「艦娘に対し強い権限を持つ提督が、艦娘としての有り方を示してください、私も出来る事であれば助力いたします」


提督「貴女がそこまで強く言うならば、俺も善処しようなどと悠長な事は言ってはいられないという事か……」


間宮(鳳翔さん、いつもと雰囲気が違うわ…… 私とは違って戦場をよく知っているから、敢えて厳しく指摘したのかも)


香取(かつて最前線に赴いた一航戦である鳳翔さんならば、些細な仲間の不和もやはり敏感になるのかも知れませんね)



鳳翔の意見は色々と考えさせられるな…… そう遠くは無い内に艦娘達の精神的なケアを行う時期は終わりつつあるという事なのだ。


倫理や道徳、そして規律に則り正しく接する事と甘やかすのでは全く意味が違う、この壁を打ち破らなければ俺は提督として更なる成長はできないだろう。



提督「鳳翔の進言を真摯に受け止め問題に向き合う事にする、今までの様に半端な対応は出来なくなってしまったか」


鳳翔「ありがとうございます、ですが早急に全てを厳しくしろと言うつもりではありません、問題になりつつある艦娘に毅然とした対応をお願いいたします」


提督「鳳翔、君からの意見はこれ限りかな? 他にあるなら遠慮せずに言って貰えるならありがたい」


鳳翔「ご配慮頂きありがとうございます、ですが今のところはグラーフさんのみが大きな問題だと私は考えています」


鳳翔「想いを抱えている人間というのは儚くも有り強くも有ります、毅然とした態度を崩さずに接してください」



俺は無言で頷く、鳳翔が此処まで念を推してまで俺に忠告をしているのだ、恐らくは並大抵の事では無いのだろう。


俺自身も淡い恋心程度ならば学生時代に持った事はある、だが自分の顔面偏差値を考慮に入れて考えるならば、そんな恋心もあっさりと絶望と諦めに変わったものだ。


誰かを「愛する」とか「強く想う」という事はとうに諦めてしまった、そういう点を考えるならばグラーフは俺より遥かに強い女性であると考えられるな。


俺は両目を瞑り深く息を吐いた、この年になって自分が見目麗しい女性から強く慕われる事になろうとは微塵も考えなかったな……



提督「……鳳翔からは以上だそうだ、次は間宮、君の意見を聞こうか」


間宮「わかりました、私としては何の問題も無いと言うつもりでした、ですが鳳翔さんの話を聞いて少し考えを改めまして……」


提督「ふむ、構わない、包み隠さずに言ってくれるならば助かる」


間宮「私からの意見としては鳳翔さんの言うとおりにグラーフさんの対応をしっかりと受け答えしてください、これを失敗したなら恐らくは……」


間宮「恐らくは『提督が寛容な対応をした為、自分にもチャンスがある』と思ってかなりの数の艦娘が提督にお願いをしてくるでしょう」


提督「いや、まさかな、そんな事は無い…… とは言い切れない気がするな……」


間宮「提督自身もお気づきの筈です、徹底して提督と艦娘、上官と部下としての関係を貴方は大事にしておられました」


間宮「提督が艦娘の慕情を汲み取ってくれた、その切欠がグラーフさん唯一人だとしても、人の噂というのは不思議と広まる物です」


間宮「そして提督は現在は指輪に認められ、極めて数の少ない正規の指輪装着者です、この事も噂と同時に基地内に広まったらかなりの混乱をもたらす事に」


間宮「慕情を捨てきれなかった艦娘が噂を聞きつけて提督へと殺到する、端正な容姿の提督ならば数日もかからないでしょう」



思わず絶句をしてしまう程の事実、非モテを長年拗らせ続けて来た顛末がこの有様である、女性の機微に疎すぎるとはいえ人の上に立つ者としてあまりにもその辺りが鈍感すぎた。


猫吊るしには艦娘と懇ろになり肉体関係を持ってしまえと推奨されてはいるが、艦娘の人権的な問題が酷すぎてそれどころでは無いのだ。



提督「そうか、そんな事になってしまうのか…… 未知の生物を相手に戦うという艦娘達を信じる、その様な信念を持って基地を運営してきたが」


提督「どうやらかなりの食い違いが起きているようだな…… 如何なる情も持つな、などと無茶振りを言う気は更々無い」


提督「『艦娘』としての使命は深海棲艦に勝利をする事だ、何を条件として勝利と定義するのかは未だ解らぬものではあるが」


提督「提督と艦娘の関係か、艦娘の使命を考えるならば一筋縄ではいかぬ問題にはなりそうだな……」


香取「提督、お気持ちは分かりますが、時間は提督を待ってはくれません、私からの意見も聞いてはいただけませんか?」



確かに時間は待ってはくれない上に感傷に浸っている場合でもない、俺は香取の提案に賛同し、彼女の意見を聞くことにした。



香取「私としても鳳翔さんの意見を聞くまでは、いますぐ対応すべき問題は無いと考えていました、ですが……」


香取「グラーフさんが行動を起こしたとしたら、普段から提督の近くにいる艦娘も行動を起こすのではないかと」


香取「それに提督は駆逐艦からも絶大な支持を受けているのですよ? 父とか兄とか年上の男性的な関係ではありますが、大人びた駆逐艦は恋愛対象として見ているかもしれませんね」


香取(目の前にいる鳳翔さん、間宮さんも大人の対応で表には出していませんが間違いなくお慕いしているでしょう、私も人の事はとやかく言えませんが)


提督「そ、そうなのか、慕ってくれるのはありがたい…… かなりの人数が俺を慕ってくれているのか、感無量ではあるな、今はそれが問題の火種ではあるが」


香取「かなり? 提督のお見積りは甘いと言わざるを得ません、妖精さんを含めて全員が慕っていると言えばお分かりになりますか?」


提督「ぜ、全員……」


香取「そうです、武闘派艦娘も、気難しい艦娘も、とても気まぐれな妖精さん達もすべて含めて全員が慕っているのです、むしろ提督の外面・内面・実績を全て考慮すれば当然とも言えます」


香取「提督の今までの負担を考えた結果、艦娘の皆は提督にあまり我儘を言わないようにと自粛していると、先ほど鳳翔さんが仰ってはいましたが」


香取「一人を許した結果、我も我もと提督の下へ殺到するのは想像には難くは無いかと」



普段ならば艦娘からの慕情は大喜びをすべきところではあるが、もはや問題の火種どころか火薬庫である、下手をすれば陸奥の第三砲塔である。



提督「その気持ちは分からないでもない、目の前に届きそうな餌があればそれに齧り付きたくなるのも無理はないな……」


提督「だからこそ毅然とした態度を取り、最悪の事態を避けろという事だな?」


香取「ご理解いただけた様で幸いです、私は色恋沙汰を否定する気は無いですし、恋愛に憧れもありますが……」


香取「少なくとも我々はその様な存在では無いですし、この基地はそういう場所でもない、ここまで復興した事を無駄にしたくは無いのです」



香取の意見に鳳翔や間宮も深く、そして静かに頷いた、彼女達が過去にどんな迫害を実際に受けたのかは書類や証言の上でしか知らない。


もう二度とあんな事が起きてはならない、その様な決意のようなものが三人からは感じられた。


恋愛については正直しても良いとは思うが、以前の俺を思い出すと迂闊なことを口に出せないので流石に黙らざるを得ない。


しなくても良い様な無駄すぎる苦労・偏見・迫害を彼女達は今も受けていると思うと、気楽にそんな事は言えないな……




提督「……香取の言いたい事は概ね鳳翔と同じと見ても良いのだな? ここまで念を押される事になるとはな」


香取「はい、それで問題は無いかと、ただ提督はご自身の評価について無頓着な上に過小評価されている傾向に思えまして」


提督「俺はそんなに大した事はしていない、防衛に必要な事と上層部からの命令に従っているだけだ、とは思ったもののあまりにも周りの提督が不甲斐無さすぎる……」


提督「俺の評価の事はともかく、意見や申し出は他にはまだあるのか?」


香取「いえ、私としては鳳翔さんの意見に念を押したかったものでして、意見はありません」


提督「わかった、自分が想定していたよりかなり厄介な事になっていたとはな、意見を聞いて正解だった」


提督「皆それぞれの任務と執務がある中、貴重な時間を割き相談に乗ってもらえて本当に感謝している、三人とも本当にありがとう」


鳳翔「とんでもありません!! 提督がこの基地の問題を解決する為に悩んでいらっしゃるならば、力になれる時になるのが私達の役目と考えています」


香取「むしろ提督に頼りにされる程度には信頼されていると分かり、私達としても嬉しい評価になりますわ」


間宮「香取さんの言う通りです、私はお二人と違って激しい戦闘には耐えられないから尚の事そう思います」



以前の待遇や立場とは違い、自分が決して独りでは無いというのを知る事が出来て思わず涙腺が緩みそうになる。


いかん、堪えねば…… 俺は提督だから簡単に涙は見せてはならない、艦娘を安易に不安にさせてならない立場なのだから。



提督「皆の気持ちは有難く受け取っておく事にする、それで意見の纏めとしては『基地運用の都合上、指輪の進呈は平等にする事は不可能と伝え、艦娘からの不評にも軍人として規律を盾に切り捨てる』という事になるな……」


香取「そのような事になります、今まで提督は出来る限り平等に配慮していただきましたが『全てを平等に』というのは無理な話なのです」


香取「そして鳳翔さんが申し上げたとおりに、多少の批判は威厳を以ってお断りして下さい、軍隊に厳しさは不可欠です」


鳳翔「提督自らが基地所属の艦娘に軍人として、そして上官として規律と威厳を示してください」


提督「……わかった、出来る限りの事はしよう、俺に威厳が有るかは怪しいところではあるが…… 皆も任務に戻ってくれ、手間と時間を取らせてすまなかった」



鳳翔・香取・間宮の三人は俺に対し帰任の報告をする、そしてそれぞれの持ち場へと戻っていった。


彼女達からの助力を得た以上は責任を以って迂闊な対応をせず『厳しい上官』としての姿を見せつけなければならない。


不安ではあるが相談を受ける前の無策よりは遥かにマシな気分にはなってきた、急拵えではあるが手段を手に入れることが出来たのだから。


予定の時間まで一時間足らず、30分前には告知を放送でしなければならない、大淀を見つけ皆を広間へ集めるように放送させねばならんな。



提督、指輪の扱いに悩む 後編

良いタイミングで執務室に戻ってきた大淀に、フタマルサンマルまでに遠征任務以外の全艦娘を広間へ集合させるように放送で通達させる。


食事を終えた長門と高雄も執務室に戻ってきた、あとは三人に集会の内容を話し、どの様に受け取られるか。



長門「私の見解としてはそれで構わないと思う、もし私が指輪を授けてもらえない立場だとしたら腑には落ちないところはあるが、軍人である以上は任務を優先しなくてはならない」


高雄「長門と同じ意見ですわ、私は生まれて此の方、女として強い絆や繋がりを求められた記憶はあまり無いのでいまいち想像しにくいところがありますが……」


大淀「言いたい事は先にお二方が言ってしまいました、私もそれで良いと思います」


提督「……そうか、わかった、この案で行くことにしよう」



三人の賛同が得られ、後は集会の時間を待つのみとなった、育成基地という役割が与えられた以上、この基地は艦娘の着任や異動の頻度は高くなる。


失敗したとは言え、数度は艦娘の育成を終え異動まで漕ぎつけた、今までは基地機能の回復が最優先任務だったがこれからは育成の方に切り替わり、かつての様に着任と異動が激しくなるだろう。


限定解除特殊艤装とかなり相性の悪い基地となってしまうが、それは現状のままでは避ける事の出来ない未来なのかもしれない。


指定した時間まで十数分、そろそろ広間へと向かわなくてはならない、三人に広間へ向かう事、そして必要あらばいつもの様に進行役もしてもらうとも告げた。


三人も準備を終えた様で肯定の返事をし、それを確認した俺は皆で執務室から廊下へ、そして広間へと向かう。



────提督、運営施設の広間



遠征任務遂行中を除く、ほぼ全ての艦娘が広間へと集まった、この場に来られない艦娘には申し訳ないが後から知ってもらう事になる。


いつもの手筈通りに長門が場の喧騒を静め、俺の声が広間に通るようにお膳立てをしてくれた、後はしっかりと俺から伝えなければ……



長門「提督、貴方から告知をお願いしたい」


提督「ああ、ありがとう、長門…… 艦娘の皆よ、本日の任務を終え、食事後の休憩中というリラックスができる時間に呼び出してすまない」


提督「本日、わが基地にも大本営から『限定解除特殊艤装』が届いた」



限定解除特殊偽装、その言葉を声として発した瞬間、広間の雰囲気が瞬く間に重苦しく変化した。


やはり相談に乗ってもらった6人以外の艦娘も、この装備に関して悪評は周知の事実として知られている様だ。


動揺を隠せない者、嫌悪感を表す者、諦念に至る者、鈍重且つネガティブな感情が広間を支配する、そんな空気をひしひしと身に受けながら俺は告知を続けた。



提督「君達がこの婚約指輪の形をした艤装に嫌悪感を持つのは無理もあるまい、秘書艦達にざっと話を聞いただけでも酷い話ばかりだったからな」


提督「だが俺はこれを皆との結束と士気をさらに高める機会だと考えた、そして俺が辿り着いた答えはこういう事だ」



ざわめく艦娘達に対して俺は左手の手袋を外してかざして見せた、薬指に装着された指輪が鈍く淡い光を放っている。


静寂の中、固唾を飲んで指輪の部分を凝視する艦娘達に、俺は声を上げた。



提督「この指輪が見えるだろうか、しっかりと見てほしい、この指輪が薄っすらと光を放っている事を、この指輪はただ装着しただけでは効果を発揮しない」


提督「この光は指輪の認識機能が働いている証拠だそうだ、つまり俺はこの指輪に『艦娘への信頼』を認められたという事になる」


提督「『持てる全てを以て最善を尽くす、俺に力を貸してくれる事を願っている』と、この基地に着任した時に俺は言った筈だ」


提督「俺は最善を尽くして来たと思う、指輪に認められたのはその集大成の一つだと考えている、皆に問おう、俺の決意は皆に伝わっただろうか?」



再び艦娘達が静寂を破りざわつき始めるが、今回はネガティブな重さは感じられない、何かを模索しているような雰囲気だ。



天龍「提督、ちょっと聞きてぇ事があるんだが良いか?」


提督「構わない、他の皆も聞きたい事があるなら天龍の問いに答えた後に受け付けよう」


天龍「ありがとよ提督、提督はその指輪を付けるのにどんな気分だったんだ? 躊躇いとかは無かったのか?」



鳳翔達にも同じ質問をされたが、やはり此処は気になる部分ではあるのだろう、しっかりと答えねば。



提督「戸惑いも躊躇いもほぼ無かった、すんなりと装着できたものだ、装着は長門・高雄・大淀の前で行った」


長門「我々の提督と言えども俄かに信じ難いと思うが、本当に迷いも無く左手の薬指に指輪を嵌めた、指輪に認識された瞬間もしっかりとこの目で見た」


長門「提督代理として、ビッグセブンの一隻として決して嘘ではないと誓おう」


天龍「おいおいおい、マジかよ…… 冗談でも嘘を言うタイプじゃあねぇ長門にここまで言わせるなんてよ……」


龍田「長門提督代理がそこまで言うのなら、信憑性は間違いなく高いわねぇ~、卯月ちゃんと違って悪戯に嘘や冗談ばかりつくような人ではないわ~」


天龍「それもそうだな、ありがとよ、とりあえずは二人の答えに納得しとくわ」



どうやら長門が問いに答えたおかげで、天龍もあっさりと納得はしてくれたようだ、俺一人だったらこうも簡単ではなかっただろう。


他にも質問を希望している艦娘が数人ほど挙手をしているのが見える、誰を指すべきかという優先順位は無いので軽く飛び跳ねてアピールしている陽炎を指す事にしよう。



陽炎「おっ? 私じゃないの、やったわ!! 私が聞きたい事は司令がその指輪を嵌めて認められたという事は、私達は指輪を貰えるチャンスがあるって事かしら!?」


提督「ああ、その通りだ、条件を満たした艦娘には望むとあれば指輪を進呈しよう、君達も恐らく知っていると思うが、この指輪は適切な運用をすれば装着した艦娘の能力と成長の限界を伸ばす事が出来るそうだ」


提督「効果を考えると後々に強制させられるかもしれない、今のところは強制させる物ではないが希望の有無はよく考えてから決めてほしい」



俺の答えに疑問を隠せない様だ、またしてもどよめく艦娘達、俺だって「元居た世界」で指輪を受け取ってくれる艦娘が居たら疑念が湧いていただろう、至極当然の事だ。


たった今、彼女達が感じている疑念は「容姿で迫害された自分に対して、美しい異性が好意をむき出しにしている」という事だろう。


この基地に着任して以来、艦娘の待遇改善と信頼を得る為に奔走し続けたが、最も根深い部分にある傷はまだまだ癒えていない様だ。


正直なところ、客観的に見たら何かしらの詐欺への布石だと考えられても仕方のない事だ、そこそこ彼女達の気持ちが分かるだけになんとも複雑だ……



陽炎「それって本当の本当に指輪くれるの? 任務とか提督の義務とか色々理由はあるけど本当にくれるの?」


提督「この指輪は戦力のアップが見込める道具なので、提督としての義務感で渡すのも考えの一つとして有りとは思っている」


提督「だが俺は、この指輪に認められたからには信頼の証として、この指輪を君達に渡したいと考えている、この答えでは不服だろうか?」


陽炎「っ!! 不服なんてとんでもないわ!! あまりにも私達にとって優遇な話だから疑っちゃいました、ごめんね司令……」


提督「何か裏がある、と警戒するのも無理はない、世の中そんなに美味しい話は無いからな、他に何か聞きたい事はあるか?」



俺は質問の機会を再び皆に促した、そうするといつも陽炎の傍に付き人の様に控えている不知火から挙手の動きが見える。


鋭くキレのある眼光と振る舞いをする艦娘ではあるが、意外と自己主張は控えめな不知火から質問とは珍しい。


物静かな艦娘が自ら主張をしているのだ、折角だから聞くべきと俺は不知火を指名した。



提督「不知火、君の質問を聞こう、許可する」


不知火「ありがとうございます司令、その限定解除特殊偽装には年齢制限はあるのでしょうか?」



今日は場の空気がよく変わる日だな、不知火が質問をした次の瞬間に『ピシッ!!』というひび割れたかの様な擬音が聞こえてきそうなくらいに緊張が走ったぞ……


動揺が見られるのは駆逐艦から軽巡洋艦の娘達ばかりだな、確か条件を満たしているならば、それ以外の制限は無かったはずだ。


『元居た世界』ではそのおかげでその筋の提督達に爆発的に指輪が普及して、生産が追い付かないのが多々有ったくらいだからな……



提督「結論としては恐らく無いだろう、じっくりと確認はしたが書類には年齢制限の記述は無かった」


提督「つまり婚姻に用いるような道具と言えど、年端もいかない外見の海防艦・駆逐艦から長門や金剛の様な成熟した成人女性の艦娘まで、全て条件次第で装着できる」


提督「大淀、済まないが再確認出来るだろうか?」


大淀「お任せください提督、少々お時間を」



「構わない」と一言すれば大淀は一礼をし、高雄・長門にも目配せをして書類を一緒に読み始めた、三人とも情報を軽く摺り合わせ後、大淀は口を開いた。



大淀「念の為に三人で年齢制限の確認を行いましたが、制限は見受けられず不問ではないかという結論になりました、明日にでも大本営に問い合わせも考えています」


提督「ありがとう、問い合わせは君の裁量に任せる、この答えで満足して頂けただろうか、不知火」


不知火「お手を煩わせてしまい申し訳ありません、お答えとしては満足です」


提督「望んだ答えが得られて幸いだ、次の質問を受け付けるが他に誰か質問希望者は?」



粗方、この場で思いつく事は聞けてしまったのか挙手をしている者は居ない、そろそろお開きにするか?と考えたその矢先。


何事にも寛容である鳳翔が最も警戒すべきと、そして決して甘い対応をしてはならないと釘を刺してきた空母艦娘がゆっくりと手を挙げた。


流石にスルーできる空気では無い、俺は覚悟を決めてその艦娘を指名する。



提督「……グラーフ、君の質問を許可しよう」


グラーフ「配慮に感謝する、二つ程不明瞭な点があるので質問をさせて頂きたい」



彼女としては威圧感など出している気は全く無いのだろうが、何しろ以前の出来事と言い、鳳翔曰く秘めたる想いはかなり強いとの事だ。


否が応にも緊張し心拍が高鳴る、質問次第では自らの提督としての資質を問われる事になるかもしれないのだから。



グラーフ「一つ目は指輪を貰うのに国籍は問われるのか、国籍が違うとなれば手続きは必然的に手順が増えるか、もしくは適用外になる可能性もある」


グラーフ「通常の人間の国際結婚であってもなかなか難しい、ましてや軍属でありまだまだ未知の存在である艦娘となると厳しいのではなかろうか、という答えが浮かんだのだ」


提督「なるほどな、グラーフの懸念は最もではある、だが安心してほしい、実際の婚姻と似てはいるが飽くまでも装備の一つに過ぎない」


提督「婚姻関係を結べるアイテムではないので、国籍も問わないし戸籍に影響が出るものではない、その点は安心してほしい」


グラーフ「……ふむ、そうか、見た目がペアリングだけに飽くまでも強化装備の一つだと言う事を忘れていた、それでも提督の信頼を受けられるのならば是が非でも欲しい物ではあるが」



慕ってくれるのは嬉しくはあるが、軍属というしがらみがあるからそう単純には喜べないな…… この状態でハーレムを築いていった『以前の世界』の提督達はタフすぎるだろう……



グラーフ「では、続けて二つ目の質問をさせて頂きたいのだが、よろしいか?」



許可する、と一言だけ伝え彼女の出だしを伺う、自身の心拍が先程よりうるさく聞こえるのは気のせいではないだろう、口内が乾いて唾を飲み込む音もはっきりと聞こえる程だ。



グラーフ「二つ目のは質問は…… 規定の練度に達したとしたら私はこの基地をいずれ出ていく立場にある、その様な訓練兵にもその指輪を受け取る権利はあるのだろうか?」



来た、恐れていた質問がこんなにも直球で飛んでくるとは…… 流れる汗がとても冷たく感じられる、相談に乗ってくれた三人はどんな様子だろうか、僅かに視線を動かし様子を伺う。


鳳翔と間宮は不安を隠せない様子、そして香取は決断を促す様な眼差しで俺を見ている、最早逃げ場はない、決断の時である。



提督「その質問は確かに重要ではあるな、基地に所属しているほとんどの艦娘は訓練兵なのだからな……」


提督「この質問だけに限った話ではないが、細かい詳細は明日の夕方までに書類として纏め、皆に配布する予定だった」


提督「そして、この質問の答えは…… 権利は無い、希望をしている訓練兵には指輪を受け取る権利は…… 無い……」


提督「訓練兵では指輪を装着出来る程の練度に達する事は先ず無いだろう、そして訓練兵は大本営に指定された基地へ異動しなくてはならない」



訓練艦娘達が血の気が引いた顔をしている、そして異動がほぼ無い教導艦達も困惑しているのがほとんどである。


『新兵を育成する為の基地』の提督として着任してしまったが故に、信頼と決意の証になるであろう指輪が思わぬ不和を生み出してしまった。


この重苦しい雰囲気では下手な慰めなぞしようものなら、余計に悪い方向へ刺激をしてしまいかねない。


打開策があったとしたならば、鳳翔達があのような厳しい意見を出す羽目にはならなかったのだから。



提督「答えは以上だ…… これでよろしいか、グラーフ」


グラーフ「…………」


提督「グラーフ?」



その瞬間、彼女の身体が重力に逆らう事無く崩れ落ちた、すぐ隣にいたビスマルクが地面に倒れる前に全身で抱え、事なきを得た。


ビスマルクが揺さぶりをかけるも反応が薄い、失神しかけた様にも見えるが意識はまだかろうじてある様に見える。



グラーフ「う、うぐっ、あぁ…… さ、さすがに…… 『それ』はつらい、も、ものが、あるな……」


ビスマルク「グラーフッッ!!! しっかりなさい!!! なんてこと……!!!」



ビスマルクの腕の中で次第に顔から生気が失われていく、常日頃から白く神秘的だった肌は血の気が失せ、汗もかなり吹き出ている。


やや呆気に取られていた二航戦の二人もすぐにグラーフの許へと駆け寄る、二人はグラーフの様子を数秒見て瞬時に判断、手早く早急にグラーフの介抱を始めた。


蒼龍がグラーフを抱え、飛龍は屈んだ姿勢になり蒼龍へ背中を見せる、そしてグラーフを飛龍の背中へと覆い被せておぶらせた。



飛龍「提督、規則の上とは言え貴方に拒絶をされてしまった事を受け止めるのが耐えられなかったみたい、介抱の為にこのまま空母寮へと戻りますね」


蒼龍「提督も立場の都合上、仕方なかったんだと思う…… 上手くは言えないけれど、どうしようもない事だったのかもしれませんね……」



俺は二航戦の二人に自室へ戻ることを許可する、飛龍と蒼龍はグラーフをおぶったまま空母寮の自室へと戻っていった。


グラーフの事はこの時点では二航戦の二人に任せる事しか出来ない、俺は集まってもらった艦娘達を放置する訳にはいかないのだから。


しかし、この重苦しい空気の中で続行をするというのは「気が引ける」以外の言葉がなかなか出てこない……



長門「お前達、この状況では集会どころでは無い、今日の臨時集会はこれにて終了だ!! 詳細は後日に書類として配布する、各自、部屋と持ち場へ戻る様に!!!」



突然の長門の大きな声に多少は驚いたが、長門の声に反応して艦娘達は「仕方のない状況」を理解したのか、静々と戻って行った。


ただ、事前に相談に乗って貰った鳳翔・間宮・香取の三人はこちらへゆっくりと向かってきた。



提督「長門、いつもすまない」


長門「気にする必要はない、貴方の様な人ですら完璧になる事は出来ない、貴方が出来ない事は私達艦娘が代わりに務めると心に決めているからな」


提督「ありがとう長門、そして鳳翔達か……」


香取「提督、お辛い結果になるという事は既にお覚悟なされていたと思います、私個人としては及第点の対応と考えています」


鳳翔「私も香取さんと同じ意見です、提督のお慈悲にいつも私達は救われています、ですが軍属としての現実も知っておくべきなのです」


提督「君達の言う事は恐らく正しい事なのだろう、だが今の俺には何が正しいのか分からない、理解する時間が必要なようだ、君達の理想と自らの理想を正しく理解する時間が……」


間宮「提督…… 心中お察しします、顔色も少し良くないですし汗も滴っています、執務室で少しお休みになられてはいかがでしょう」



噴き出した汗はなかなか止まろうとしない、心臓の鼓動は多少は収まりつつあるがやはり普段より高鳴っている。


顔色は自分ではわからんがどうやらよろしくは無いらしい、自分が恐れていたことが起きたのだ、無理も無い……


此処は大人しく普段からカウンセリングをしている間宮に従うべきだろう、好意を有難く受け取ることにした。



提督「そうする事にしよう、間宮、君の気遣いに感謝する、高雄達には片づけを任せても構わないか?」


大淀「お任せください、大した量の片づけではないと思いますので提督は執務室へお戻りください、高雄さんは提督のお付きをお願いします」


高雄「分かりましたわ、では提督、ご気分が優れぬようでしたら遠慮なく迅速にお申し付けください」


提督「ああ、ありがとう、では先に戻る……」


長門「提督の事を頼んだぞ、何かあったらすぐに駆け付ける」



────数分後、提督執務室



俺は高雄に付き添われながら廊下を歩き執務室へと戻ってきた、脱いだ上着を高雄に預け応接用のソファーに力無く体を預け、天を仰ぎながら両手で目を覆う。


そうして呆然としていると、液体と氷が入ったグラスを目前のテーブルに置く音が聞こえる、目から手を外して確認をすると麦茶が注がれたグラスが置いてあった。


俺は緊張で喉が渇いていた事も有り、喉を鳴らして麦茶を飲んだ、高雄の心遣いに感謝しながら。



提督「んぐっ、んぐっ、あ゛ぁ゛ぁぁ~…… 身体に染み渡っていくな、美味しかったよ、大分喉の渇きは無くなったからおかわりは大丈夫だ」


高雄「分かりましたわ提督、遅れてしまいましたが集会、お疲れさまでした」


提督「ありがとう、しかし…… 儘ならないものだな、この指輪が俺と艦娘に力を与えてくれる物と思っていたのだが、この基地にいる限りは指輪を貰えないという艦娘達が半数にも及ぶ……」


提督「彼女達に分け隔て無く希望を分け与えるどころか、指輪を貰うのに条件を満たさねばならない、皮肉とは正にこの事か」


高雄「私は秘書艦へ任命され、教導艦としての仕事は免除はされてはいますが、指輪を貰える権利がある故にこの問題には安易に踏み込めない所がありますね……」



高雄は以前は教導艦であり現在は秘書艦、つまり基地において重要な役割を担っているので異動するという事は現状に於いては無いだろう。


秘書艦は余程の不仲であったり何かしらの理由で業務に支障が出る程で無ければ、そのポジションは盤石の物となる、高雄以外に変わるという事はそうそう無いだろう。


大淀は事務の総括、長門は艦娘代表兼提督代理だ、この二人も異動は考えられない、こうして思案に耽っていたら高雄から意見を具申された。



高雄「提督、いつも問題が起き次第、迅速に取り掛かるのは提督の素晴らしいところと私は考えています、ですがこの件は新兵異動問題と同じだと私は考えています」


提督「ふむ、続けてくれ、意見を聞きたい」


高雄「時を待たなければ解決の糸口が掴みにくい、という問題なのではないかと私は考えています、少しは私達艦娘にも我慢をさせるべきかと」


提督「しかし…… 君達は命を懸けて護衛や防衛に携わっている、俺の怠慢が原因で君達に迷惑をかけたくはないのだ……」


高雄「提督、逆に考えてください、この程度なら艦娘達も多少は我慢してくれるだろうと、私は問題を解決するなとは言ってはいないのです」


高雄「私達は提督を信じて今日までやってきました、提督も私達を信じてください、貴方が着任する以前の環境や仕打ちに比べれば、事情により止むを得ない問題の先送りなど大した事はありません」


提督「……わかった、希望がありながら指輪を貰えない艦娘達、特に失神しかけたグラーフには申し訳ないが指輪の問題は保留としよう」


高雄「英断ですわ、暫くの間、指輪の件はあまり大事にさせない様に徹底させます、鳳翔さん達と相談して案を考え、その後に場を静めます、それでよろしいですか?」


提督「ああ、よろしく頼む」


高雄「承りましたわ、提督」



我ながらなんとも不甲斐無いものだ、大きな問題は新兵異動問題だけで十分だというのに、育成基地では指輪が不公平の原因になってしまうとは……


完全な公平というのはどんなに制度や技術が進歩したとしても難しいものだ、だが不必要な格差は避けねばならない。


そして、此度は俺自身が艦娘の皆を信頼出来ていない部分が露呈してしまった、必要以上に頼るのは良くないが艦娘達に対して過保護になり過ぎていたというのも否めない。


行き過ぎた過保護は独裁に近いものとなってしまう、艦娘の自主性を阻害し悪影響にもなりかねないだろう。


自らの能力が至らないばかりか、力が及ばない部分も多く実に歯痒い、自分への苛立ちばかりが募ってしまう。


ネガティブな感情ばかりが思考を支配している、このままでは執務にも弊害が出てしまう、夕食の時間も近い、それまで一度小休止を取り執務の続きに取り掛かるか。



提督「済まないが夕食まで休憩したいのだが構わないだろうか、考えが纏まらない状態で執務に取り掛かると碌な目に遭いそうでな」


高雄「あら、珍しいですね、提督から自主休憩を提案されるなんて」


提督「考えが定まらない時にはいつも君達から休憩の提案ばかりされてると、自分からたまには休憩した方が良いのではないか?と考えてしまってな、構わないだろうか?」


高雄「本日の執務も残り少ないですし、ご休憩なさってください、それにあんな事があった後ではリラックスも必要なのは確かです」


提督「済まないな、夕食を済ませたら戻ってくる、それまでは任せる事にするよ」


高雄「承りましたわ、ごゆるりと」



高雄の好意に甘える事にしたが、夕飯までまだ時間は多少ある、何処で心身共にクールダウンするか、なかなか悩ましいな……


ふと視界の中に入ってきた廊下の窓を見る、実に綺麗で鮮やかな色彩の夕焼けが始まりつつある、この瞬間に行くべき場所は決まった。


日が沈む瞬間を見に行こう、解決すべき問題も一時くらいは忘れて黄昏る事にしよう、母なる広大な海に思いを馳せるのも久しぶりだ、下っ端時代の遠洋航海訓練以来だろうか。


埠頭以外で海を眺めるのに最適な近場と言えば、普段から執務をしている基地運営施設の屋上が良いだろう。


だが、以前に一人で外出をして高雄に厳重注意された事もあったので、誰かしら手の空いている艦娘を護衛について貰わねばなるまい。



提督、襲撃を受ける

屋上に向かう道すがら、長良・五十鈴・名取の三人が向こうから歩いてくる、仲良く雑談している様だがこちらに気付き敬礼をした。


俺も敬礼を返し、彼女達に会話が出来る距離まで近づき寸暇があるかどうかを確認する事に。



長良「提督、集会お疲れさまでした、ショッキングな事がありましたがあまりお気を落とさずに頑張っていきましょう!!」


提督「長良、君の元気の良さと気遣いに感謝する、ところで君達はこれから用事や終わっていない任務等はあるのか?」


名取「いえ…… 私達は任務を終えて食堂で早めに席を確保しようと思いまして……」


提督「ふむ、そうか、用事があるならそちらを優先してくれて構わん、ゆっくりと食事を楽しんでくると良い」


五十鈴「何だか歯切れが悪いわね、優先してくれるのは有難いけれど、たまには私達を頼ったりしてくれても罰は当たらないと思うわよ?」


五十鈴「別に席の確保なんて私が居なくても出来るから、長良と名取で先に食堂に行っててもらって良いかしら? 私は提督の用事に付き合う事にするわ」


名取「五十鈴がそう言うなら先に食堂で待ってるね」


長良「そうだね、五十鈴はしっかりしているから五十鈴が居れば大体の事は大丈夫!! じゃあ提督の事は任せたよ」


五十鈴「任せなさい、それで提督は私に何をさせたいのかしら?」



長良と名取は五十鈴と俺に手を軽く振って、食堂の方へと再び雑談をしながら向かっていった、そして五十鈴は俺からの返事を少し気難しい顔で待っている。



提督「少しばかり頭を冷やすのに屋上へ行きたいのでな、外出の際には護衛を付ける様に強く言われているのだ」


五十鈴「ああ、聞いた事があるわね、提督を護衛出来て役得って話もたまに聞くわよ、そういう事なら五十鈴は大丈夫よ!!」


提督「君は軽巡の中では優秀で勇猛と聞いている、護衛に期待せざるを得ないな、役得かどうかはわからんが」


五十鈴「あら、女の子に勇猛なんて言葉を使うものではないわよ? 艦娘は不細工ばかりだけど女の子には変わりないんだから、長門さんならとても喜びそうだけどね」


提督「確かに年ごろの女性に勇猛などと言うものではないな、いくら艦娘と言えどもな、これは失言だった」


五十鈴「ふふっ、気を付けてね、さて、ずっと此処に居ても仕方ないし、屋上へと向かいましょう」


提督「ああ、そうだな、海上に行くわけではないから装備はそのままでいいのか?」


五十鈴「このままで構わないわ、手持ちの小口径砲と機銃だけで大丈夫よ、陸上や建物の上で艤装展開して戦闘なんてしたら地形が変わったり、建物が倒壊してとんでもない事になっちゃう」


提督「今まで護衛を受けて貰った艦娘達も、確かに艤装までは装備せず手持ちの武器だったな…… そんな理由があったのか……」



艦娘恐るべし、戦艦の主砲なぞ地面に着弾したらクレーターが出来上がる威力がありそうだ、人型サイズに従来の軍艦の装備の威力を詰め込んでいるから本当に妖精さん達のテクノロジーは謎すぎる。


五十鈴と屋上まで向かう途中、雑談していたのだが自分は護衛をしてもらうこと数回、まだガラの悪い輩や暴漢などにはまだ絡まれた事は無いので、ふと疑問に思ったことを五十鈴に聞いた。


流石に人間相手には手持ち武器と言えども艦娘の装備を使ったら挽肉になってしまう、どうやって無力化するのかと。


返って来た答えは「死なない程度にかなりの手加減をして殴る」だそうだ、分かりやすく言えば猫パンチ程度のじゃれつく様な行為でも攻撃する意思があれば、屈強な成人男性が数メートル浮き上がって吹っ飛ぶ様な威力が出るそうだ。


そういえば龍驤が新聞紙を両の掌で圧縮して、途轍もなく固い物質にした事があったな…… 艦娘が味方で心底良かったと思う。


雑談をしながら歩いている内に目的地へと続く階段が視界に入った、あまり人が寄らず節電の為に電灯はオフのままで薄暗い。


五十鈴が電灯にスイッチをオンに入れ足元を見やすくする、その行為に謝意を見せ階段を上り屋上への入り口のドアノブに手をかけ、そのまま捻りドアを開けた。



提督「良い夕日だ…… タイミングとしてはかなり上々か、黄昏るには絶好の状況だな」


五十鈴「黄昏るには提督はまだ若いじゃない、まだまだ伸びるわよ、実績も知識も経験もね」


提督「君達から見たらおっさんと呼ばれる歳ではあるが、流石にそっちの意味で黄昏る気はまだ無いぞ」


提督「それにしても美しく静かなものだ、海にこの平穏が恒久的に続けば良いのだがな」


五十鈴「そうね…… でも難しくはあるわね、本当に無益な争い、そして今までの常識が通用しないというのも困ったものだわ」


提督「人語を理解するが憎悪と怨念だけで戦争をけしかけてくる、人間とは戦闘能力が桁違いの生命体などなかなか理解が追い付かないからな……」


提督「人間のほとんどは利益や見返りを求めて開戦するものだが、純粋にネガティブな感情のみで破壊と殺戮に徹する相手とは和平など結べそうにも無い、恐らくな」


五十鈴「ちょっと、提督はリラックスする為に夕日を見に来たんだから、考え事はやめなさい」


提督「確かに、君の言う通りではあるな、今は何も考えずに夕焼けの美しさに見惚れる事にしよう」



屋上の頑丈に作られた柵に近付き、身体を軽く預けようとしたその瞬間、サッカーボール程の大きさの球体が何処からともなく現れた!!


護衛が居る事、そして気分を落ち着けようとした瞬間を狙われた事が災いし、まだ謎の球体との距離こそ遠いが完全に気配が分からなかった!!


なんて事だ!! 何処に潜伏していた!? 容易に姿を隠せる場所と言えば基地から少々離れた小さな山くらいしか無いが、今はその答えを考える時では無い。


せめて五十鈴の近くに戻るなり何処かに身を隠さなくては!! と考え体を動かした瞬間に視界内に入った謎の球体が機銃の攻撃を受け爆散した。



五十鈴「提督ッ!!! 早く私の近くへ!!! まだ2体ほど居るわ!! こんなにも近くに来るまで電探にも反応しなかった、どういうこと!?」


提督「五十鈴!! 君に命を預ける!! 君の判断で動けッ!!! 俺も君の指示で動く!!!」


五十鈴「了解よッッッ!!!」



五十鈴の動きは実に俊敏且つ的確だった、俺を護衛しながら戦うのはかなりやり辛い筈だが、経験をかなり積んでいる所為か敵の動きを読んでいる様に戦っている。


SF作品に出てくる遠隔操縦兵器の様な雰囲気を醸し出してはいるが、意外にも複雑な動きは出来ない、だが動き自体は艦娘の艦載機とほぼ遜色の無い動きをしている。


1機は手持ちの対空砲の攻撃を受け粉微塵に爆散したが、どうやらもう2機は五十鈴の動きと攻撃を警戒しつつ、かなり慎重な動きになりつつある。


俺は艦娘の戦い方はまだ理解出来ていない部分もあるが、牽制やフェイント、そして電子機器による電子戦をも駆使しているのだろう、次第に五十鈴も謎の球体も動きをが少なくなりつつある。


自らも多少は冷静になり敵に動きも少なくなって来た事で、敵の姿が資料や写真などで見た事のある姿と解ってきた、あの球体は浮遊要塞だ。


我々を挟み撃ち状態にしている浮遊要塞と膠着状態に入って十数秒、前に居た浮遊要塞が何かを射撃した!!



五十鈴「ッッッ!? 危ない!!!」


提督「うおぉっ!? いてぇ…… 五十鈴、大丈夫か!?」



五十鈴が俺を軽く突き飛ばし攻撃を身代わりになって受けてしまう、安否を気遣い彼女に声をかけるも多少顔は顰めているが問題はなさそうだ。



五十鈴「大丈夫よ、威嚇程度の機銃だったみたい…… 提督!! うしろのヤツは!?」


提督「後ろ!? ハッ!? い、いない、何処へ行った!!」



攻撃もせず回避に専念してずっと守勢だった浮遊要塞が、温存していたのかは解らんが突然の攻撃で面食らってしまった。


五十鈴はどうやら攻撃自体には大して驚いていない様だが、後ろに居たもう1体の浮遊要塞が消えた事、そして視界内に居る浮遊要塞がいつ攻撃を仕掛けてくるか気が気で無い様子が伺えた。


姿の確認できる浮遊要塞は五十鈴に任せれば良いだろう、しかし消えた浮遊要塞が何処から出てくるのかは全く以て解らない。


五十鈴から離れずに居るべきか? 銃声を聞いた仲間達が助けに来るのを待つべきか? いや、仲間達が来るかどうかは不確定な要素がある、自分から屋上から施設内へ逃げて仲間を呼ぶべきか?


いかん、実戦経験の無さが俺を不安に駆り立てる、どうにかしなくてはならないのに思考が纏まらない。



五十鈴「提督ッ!! 私は大丈夫よ!! 此処から施設の中に逃げてみんなに助けを求めて!!!」


五十鈴「敵が武器を持っている以上、暗殺の可能性も否定できないわ!! 偵察にしては基地内にまで侵入するなんて大胆すぎる!!!」


提督「……ぬうっ!! 分かった、全力で走り抜ける!! それまで絶対に持ちこたえてくれぇッ!!!」



五十鈴を見捨てて逃げるというのも非常に癪に障るが、指揮を執る者として一人を囮にしてでも皆に危機を伝えねばならない。


身体能力を出来得る限り活用して施設内へのドアへと駆ける、五十鈴が奮闘し敵を妨害している間に行かなくては!!


ドアノブに手をかけ捻った、その瞬間、ドア付近の柵の下から姿を隠していた浮遊要塞が急上昇して姿を現した!!


い、いかんッッッ!!! う、撃たれる!! 中に入るべきか!? それともドアを盾にしてやり過ごすか!? いや、どちらにしろもう間に合わん!!!


う、うおおおああぁぁぁっ!!! 痛みに耐える覚悟をするしかないッッッ!!! 反射的に腕を顔の前に交差させる前に浮遊要塞から光が放たれたる、間に合わないッ!!



パシャッ カシャッ カシャリッ……



えっ? な? なんだ? 痛みが…… 来ない? 何かを数度発光させた浮遊要塞は用事は済んだと言わんばかりにそそくさと速度を上げ、山の方へと撤退していった。


な、何だったんだ? あの発光と共に聞こえた音は? 呆然としている俺に駆け寄ってくる影があった。



五十鈴「て、提督!!! 何かされたけど怪我は無い!? あっ!? アイツ逃げていくわ!!」



すぐに五十鈴は対空機銃を構えるが既に姿が豆粒の様に小さくなっており、射程の外に居ると勘付いたのか彼女は機銃を下した。


そう言えば、もう1体の浮遊要塞はどうなったのか!? 五十鈴を軽く観察するも小破すらしている気配は無さそうだ、制服は多少擦り切れている程度ではあるが。



提督「大丈夫だ、怪我は無い、だが変な光を浴びせられてしまった、何だったのだ、あの光は…… 君が戦っていた浮遊要塞はどうなったんだ?」


五十鈴「それならあそこに転がっているわ、撃墜はしたけど爆散はしなかった、偶然に誘爆しなかったみたいね、それよりも貴方が浴びせられた光というのが気になるわね」


五十鈴「すぐにでもみんなに知らせて提督は明石や軍医の方に診察を受けた方が良いわ、両足で立っているから歩けるわよね?」


提督「あ、ああ、大丈夫だ、ちゃんと歩ける、しかしリラックスどころでは無くなってしまったな、屋上はもう俺は来れなくなりそうだ」


五十鈴「それは無理も無いわね、襲撃されたという実例を作ってしまったのだから、高雄さんの説教は覚悟しておきなさい」


提督「我ながら何とも提督として不甲斐無いな……」



これからはますます外出に制限が付くだろう、そして何より心配なのは「艦娘達が基地の敷地内にまで敵の侵入を許してしまった」ということだ。


俺自身の采配や方針も問われるだろうし、何より艦娘達も無能呼ばわりされる可能性もある、心を落ち着けるどころか問題を増やしてしまうとは、我ながら呆れて言葉も出ない。


ふと、転がっている破壊された浮遊要塞が視界に入る、こいつの処理はどうするのだろうか? ほぼ原形が残っているし動く気配も無い、サンプル扱いが妥当なところか?


深海棲艦の兵器がほぼ原形で海水にも浸されず残っているというのはかなり稀だ、明石と夕張、そして妖精さん達が喜ぶかもしれん。


五十鈴から執務室へ戻ろうと提案され、屋上から施設内へ入ろうとした瞬間、ドアが大げさに勢い良く開かれた。



天龍「おいっ!! こっちに怪しいヤツが飛んで行ったのを見たが大丈夫かぁ!?」


提督「天龍か、来てくれたのはありがたいが、謎の光を浴びせられてしまってな」


天龍「なんてこった、提督もいるなんてよ…… 五十鈴、お前が居ながらどうして!!」


提督「待て天龍、五十鈴は複数に囲まれ護衛対象が居るという悪条件でしっかりと仕事はしてくれた、それを責めてはいけない」


提督「むしろ、艦娘が居ない屋上に出てしまった俺の不用意さを責めるべきだ、違うか?」


五十鈴「連れて行った五十鈴にも責任はあるわ、少し軽率だった」


天龍「お、おめぇらがそういうんならよぉ…… しかしよぉ、謎の光って言ってたが体は大丈夫なのか?」


提督「ああ、今は大丈夫だ、今はな…… これからすぐに明石のチェックを受けて、近い内に軍医の世話になるだろう」



これからの予定を話すと天龍は多少腑に落ちない部分あるだろうが、納得はしてくれた様だ。


しかし天龍が此処に来たという事は、他の仲間達にも知らせてくれたのだろうか、俺は彼女に問う。



提督「天龍、君が敵襲に勘付いて此処に来たという事は、他の仲間達にも報告はしたのだろうか?」


天龍「ああ、龍田もいつも通り一緒に居たからよ、そっちは龍田に任せて俺は一足先に来たんだ、皆もその内に来るんじゃねぇか」


提督「そうか、全てが終わってしまった後だが、援軍の判断と此処まで来てくれた君に感謝する」


天龍「相変わらずバカ丁寧だなぁ、俺は提督を信頼しているからな、下らねぇ事でケガしてほしくはねぇんだ、死ぬなんて以ての外だぜ」


提督「そうか、ありがとう、その言葉には救われる……」



天龍がピンチに駆け付けて来てくれた事、そして信頼の言葉を聞かされて普段から真面目に仕事していて良かったと心から思った。


天龍の言葉を噛みしめ感傷に浸っていたその瞬間、再びドアが勢い良く開けられた。


ドアから出てきたのは手持ちの艤装を装備した高雄と龍田、そして夕張と明石だった。


高雄は明らかに動揺が見られ、龍田はいつも以上に表情が怖い、そして明石と夕張は俺の姿を見て一安心と言ったところだ。



高雄「提督!! ……ご無事でおられたなら私は言う事はありません、皆がいる施設の中へ戻りましょう」


提督「今度ばかりは言い訳は出来ないな、すまなかった高雄、軽率な行動は今後控える」


龍田「あらあらぁ~? 提督に近づくなんて事をした愚かな敵は、もう片付けてしまったのかしらぁ?」


提督「そう殺気立たないでくれ、一匹は目標を果たしたのか逃げられてしまった、俺に謎の光を浴びせたらすぐにな」


夕張「そんなものを浴びせられて大丈夫なんですか!? 見た感じ、何の異常も無さそうですけれど」


提督「ああ、この後は夕食のつもりだったが、すぐに君と明石に診察してもらうつもりだ、許可が下りれば軍医にもお世話になるだろう」


提督「夕張と明石にすぐに来てもらえたのは手間が省けて助かった、そこに浮遊要塞の残骸が綺麗なまま機能停止している、良いサンプルになるんじゃないか?」


明石「っ!? おっほぅ!! こんなに綺麗に残骸が残っているなんて貴重ですよ!! 私も夕張も技術者魂が燃えますねぇ!!」


夕張「深海棲艦の装備などを鹵獲できるなんてとても珍しいです、これは楽しみが一つ増えました!!」


提督「おいおい、その前に俺の診察を頼むぞ、二人とも、よし、戻ろうか、施設の中にな」



沈みかけつつある夕日を背に、俺達は屋上のドアを開き施設の中へと戻っていく。


頭と心をクールダウンさせるつもりが余計な問題を生み出してしまった、片付いていない大きな問題は複数あるというのに……


艦娘達にも要らぬ心配をさせてしまった、これからは自分の家に帰る回数も大幅に減らした方がいいかもしれん。


部屋の維持や掃除は余裕がある艦娘に任せる事にしよう、家にある物は最低限の家具と家電、そして少々の食料だけだ。


彼女達に見られて困るような物は無い、成年コミックや薄い本などとても嗜好が合わない物ばかりで全く買っていないからな。


兎に角、今は自分の身体の心配をしよう、浴びせられた謎の光が気になる、急いで工廠で検診を受けなくては。



────数時間後、K基地から1000km離れた付近



????「浮遊要塞、帰ッテ来タゾ、デモ一機シカイナイ、写真ハチャント写ッテイルカ?」


??「写真、撮レテイナイト困ル、次ノ機会ハモウ無イト思ッタ方ガイイ」


????「ソウネ、艦娘達モ警戒ヲ強化スルダロウ、資材ニモアマリ余裕ハ無イ」


?????「隠密専用ニ改造スルノモトテモ資材ト手間ガ掛カル、試験モ面倒クサイカラ二度トヤリタクハ無イ」


??「キヒィッ!! 私ハアマリ提督ニハ興味無イナ、ソンナ事ヨリモット強イ艦娘ト戦イタイ!!」


????「コノ子ノ言ウ事ハサテオキ、写真ノ確認ハ出来タノカシラ?」


?????「今、外部装甲ヲ外シテカメラカラフィルムヲ取リ出シテイル、資材ノ都合デカメラヲ組ミ込ムノハ苦労シタ、現像シテ来ルカラ少シ待ッテイロ」



────更に数時間後



?????「現像出来タゾ、現像ナンテ滅多ニシナイカラ手間取ッテシマッタ、見テ驚ケ」


??「ヲッ!? ナント美シク整ッタ顔立チ……」


????「驚イタ表情ヲシテイルガ、ソレデモハッキリト分カル、コノ人間ハ端正ナ顔ダ」


????「顔ダケジャナイワ、体格モトテモ美シク扇情的、是非トモオ会イシタイワネ、難シイデショウケド」


??「私ニハワカル、コノ提督ハキット人間トシテハカナリ強イ、一度戦ッテミタイ、顔モカッコイイ」


????「噂ハ本当ダッタ、艦娘ノ中ニ何カノ手違イナノカワカラナイガ、トテモ美シイ男ノ提督ガイルト」


????「コノ人間、会ッテミタイ、目ガ綺麗ダ」


??「ソレハ駄目ダ、姫ヨ、私達ハ率先シテ戦イコソシテハイナイガ、人間ノ敵デアル事ニハ変ワリハ無イ、危険ダ」


????「彼女ノ言ウトオリダ、シカシ会ウ事ハ出来ナイニシテモ、何トカシテ我々ハ無益ナ戦イハ好マナイトイウ事ヲ、知ラセル事ハ出来ナイダロウカ」


??「イヒッ、ソレハ難シイト思ウナァ、私達ダッテ上カラノ命令デコチラカラ仕掛ケタ事ハ何度モ有ルシ、艦娘ダッテ沈メテルンダ」


??「恨ミダケデ生キテイル様ナ連中ヨリハ全然沈メタ数ハ少ナイケドナァ、ソウイウ問題ジャナイト思ウヨォ?」


????「ソウネェ、生キル為トハ言エ人間ノ貨物船ダッテ襲ッテイルノヨォ、人間ハ殺サナイ様ニシテイルケレド間接的ニ殺シテイナイトハ言イ切レナイワ」


????「……後ニハ引ケナイト言ウ事カ、艦娘達ト真向カラ戦ウ日ハイツカハ来ルダロウ、ソノ日ヲ覚悟シテオク事シカ出来ナイ」


????「モシモ、生マレ変ワル事ガ出来ルナラ、次ハ戦イヤ怨恨トハ縁ノナイ生ヲ受ケタイ、ソウ思ウ……」



小話:提督、謎が多いと艦娘に言われる

グラーフが精神的なショックを受け、そして提督が深海棲艦の浮遊要塞から襲撃を受けて、あれから二週間ほど経過しました。


提督はすぐに明石の簡易検査と、後日に軍医の方が居る基地へ赴き検診をお受けになられ、結果として何も異常は無いとの事。


明石と夕張が原形を残して機能停止した浮遊要塞を分解したところ、カメラとおぼしき部品と最低限と言える威嚇用の武装のみを積載。


提督が浴びせられた光は彼の身体に異常が無い事から、カメラのフラッシュを浴びせられただけという可能性が最も高いと思われます。


外部装甲や内部のほとんどは隠密用の防音処理や電子戦対策が徹底的に施されており、提督はもとより臨戦態勢だった五十鈴ですら気付くのは難しいと明石と夕張はコメント。


あれから提督は表情に若干の翳りや諦念が見受けられ、もどかしさを感じられるような言動を稀にこぼす様に……



長門「執務室に提督は居られないという事は休暇か、最近はめっきり施設から出なくなってしまったな……」


大淀「ええ…… あの襲撃を境に自らを押し込めて執務なされています、発言や提案も控えめになられまして」


長門「仲間達も心配している、休暇くらいは提督の自由を保障したいがそれが出来ない、提督の命に何かが起こってからでは遅い、何とももどかしいものだ」


高雄「私達の誰かが励ましてあげられると良いのですが、はっきりいって逆効果に成りえますわ、この醜い容姿では……」


長門「励ます、か…… 提督は何を望み、何をすれば喜んでくれるのだろうか、お前達は何か知っているか?」


高雄「いえ、私はあまり提督の私的な事はあまり知らないですわ、大淀はどう?」


大淀「私も知らないですね、というか皆さんも提督がポピュラーな洋食が好きという程度の認識では?」



大淀の発言にハッとする私と長門、そういえば私達は提督の事をあまりにも知らない、執務をしているお姿、美味しそうに食堂で定食を食べている姿、そして小さい駆逐艦にせがまれて困りながらも楽しそうに遊ぶ提督くらいしか知りません。


いくら復興や訓練が忙しいとは言え、上司ばかりに気を使わせ、部下である私達は提督の事を何も知らない、あまりにも歪な関係ではないでしょうか……



長門「提督がK基地に着任し凡そ一年と半年程度、我々は何をしてきたのだろう、恩を受けてばかりで返せていないではないか」


大淀「恩を返さなくてはならないというのは同意します、ですが提督の本質を理解しなければ恩を返せないかと、先ずは提督の事を調べてみませんか?」


長門「具体的にはどうするか、何か良い案はあるのか?」


大淀「今日は休暇の艦娘が多いですし、提督はほとんどの時間を艦娘の管理と執務に費やしています、必然的に艦娘への聞き込みになるのではないかと」


高雄「我が基地には青葉みたいなゴシップ好きはいないですから、地道に聞くしかありませんね……」


長門「そうなるのか…… 高雄と大淀は提督から何か変わった事とか知らなかった一面を垣間見たとかは無いのか?」


大淀「私は無いですね、提督はいつも誠実で紳士でいらっしゃいますし、変な事をなさっている姿は見ていないです」


高雄「変わった事…… あっ……」


長門「な、なんだ、どうした?」


高雄「艦娘異動問題で元帥閣下に呼び出しをされた出来事がありましたよね?」


長門「ああ、あの時は提督が無事に帰ってきて本当に良かったと思ったよ、で、何かあったのか?」


高雄「私が運転をしながら状況打破の為の考えを巡らせていたら、急に提督から自動車を道路脇に止めてほしいと指示がありまして」


高雄「停車した後に外に出る様に指示をされまして従ったところ、私の両頬を両手でむにっと捏ね繰り回されましt」



私が言い終える寸前や否や、急に椅子から勢い良く立ち上がる長門と大淀、信じられないという顔をしています。


私も今でも少し信じられないという感じですし、提督から積極的にボディタッチをしてくるとは思いもしませんでした。



長門「なっ、な、なんだとぉ!? 提督が高雄の頬を捏ね繰り回すとは……!!!」


大淀「艦娘の身体なんて男性から絶対に触りたくないと拒否されるくらい醜悪と悪評なんですよ!? て、提督は本当に規格外ですね……」


高雄「私があまりにも顔が強張っていたので緊張をほぐす為に行ったそうです、当事者より険しい顔してるとは何事だと言われてしまいまして……」


高雄「それでも緊張が解けなかったものですから、次は脇腹を突かれたり揉みしだかれたり……」


長門「う、うらやまけしからん…… ち、違う、そうではない!! そんな際どいところを激しく触れるなどと……」


大淀「私でしたら興奮のあまり鼻血でも出してしまいそうな、なんとも衝撃的な出来事……!!」


長門「何故、今までそんな大事な事を言わなかったのだ!?」


高雄「じ、実は提督が無事に帰ってきた安堵とか、いろいろあってすっかり忘れていましたわ……」


長門「……腑に落ちないがお前がそう言うのなら仕方の無い事だ、何にせよ、指輪の件で提督が私達に持っている信頼は本物だという事は証明されている」


大淀「そうですね、まさか艦娘にボディタッチできる程の信頼をお持ちになられているとは…… ということは……」


大淀「私達も誠実に提督と向き合えば、いつかは提督に触ってもらえるかもしれませんね、可能性はあります」



大淀の言う事はあまりにも荒唐無稽な部分がありますが、以前の艦娘生活に比べれば夢や希望があると感じられます。


おバカな妄想を和気藹々と話せるような環境なんて今まで無かった、この様な環境にしてくれた提督に対して恩義は増すばかり。


何とかして提督の事を知り、恩を返さなくてはなりませんね。



高雄「あまりおバカな事を言っていないで、提督の事を知るべきなのでは?」


大淀「聞きましたか長門さん? これが提督にセクハラしてもらった勝者の余裕ってやつですよ? 酷いですよねぇ、薄情者ですよねぇ」


長門「嫉妬は見苦しいが、こればかりは嫉妬せざるを得ないな…… 我々と変わらぬ醜女が絶世の美男子にセクハラされたのだぞ」


高雄「ああ、もうっ!! これでは何を言っても逆効果ですね…… あまりふざけている様なら私一人で聞き込みに行きますけれど!?」


長門「冗談だ、半分くらいはな、どちらにしろお前一人で聞き込みに行かねばならないと思うぞ? 私は訓練を疎かにするわけにはいかないからな」


大淀「私もです、今日は数が多くは無いとはいえ事務艦としての義務は果たさないといけませんからね、高雄さんの担当書類も出来るところは処理しておきますので、聞き込みはお願いします」


高雄「え、えぇ~…… ついてくると思っていたのでちょっと肩透かしされたわ…… わかったわ、私一人で聞いてきます」



残った書類は夜に処理をするとして、二人に見送られながら執務室から廊下へと出る、さて、何処から向かう事にしようかしら?


休みとは言え、ほぼ確実に誰かが居る場所と言えば…… そうね、工廠かしら? 明石と夕張は任務・休暇問わずいつも仲良く二人でいるくらいですからね。


工廠はお世辞にも過ごしやすい場所ではないので、隅の一画に小型のプレハブを建てて休憩室にしてましたね、あの二人……


提督も「それで作業効率が上がり、ストレスが減るなら許可をする」と仰っていましたが、歴任の提督と比較したら考えられない程の器量ですわ……



────数分後、工廠



さて、工廠に着いたわね、二人は何をしているのかしら? ええっと…… 工廠はとても閑散としている、妖精さんも不在みたいだし、今日は休暇の様ね。


休憩室はどうかしら? 近寄って確認をしてみると窓から緑色と桃色の派手な頭髪が見える、あの二人に違いないわね。


プレハブの休憩室に近寄りドアをノックすると、二人の気の抜けた声が聞こえてきました、かなりリラックスしている模様。



夕張「ふぁ~い」


明石「開いてるから入っていいわよ~」



失礼します、と開けるとそこにはジャージ姿の明石と夕張の二人が居ました、ソファに身体を投げ出して向かい側のディスプレイを見つめています。


ディスプレイを見てすぐに察しました、二人でビデオゲームを楽しんでいた様です、楽しむのは良いですがもっときっちりとした姿勢で遊びべきだと思います。



高雄「そんな姿勢でゲームしていると身体に良くないわよ?」


明石「あれっ? 高雄秘書艦じゃないの、こんなところに来るなんて珍しいね、どうしたの?」


夕張「これは思わぬ珍客ね、提督は最近どう? 元気してる?」


高雄「提督は少し塞ぎ込んでいるわ、グラーフの件の後、すぐに深海棲艦から襲撃のような何かを受けたのも効いているみたい」


明石「提督本人はこれといった大きな原因ではないんだけどね、たまたま『提督』という役職についてしまったのがねぇ」


夕張「そうそう、提督が『提督』でなければ起こった問題ではないと思うのよね、何とかしてあげたいけれども……」



夕張が言いたい事は恐らく私と同じ事だと思う、可愛い又は美人の女性だったら提督も励まされて元気が湧くのだろうけど……


女の武器を使えない私達には別の方法で提督を励ますしか無い、それの手掛かりを探しに来たのだけれども。



高雄「ねえ、二人は普段の提督の様子って知らないかしら?」


明石「執務中以外の提督ねぇ、珍しい来客から珍しい質問をされる日ねぇ、今日は」


夕張「そんな事聞いてどうするの?」


高雄「私達は提督から御恩を受けてばかりで、何かしら返したことが有ったかしら? 提督が元気のない今こそ恩返しをするべき時が来たのではないかと考えたわ」


夕張「ああ~、確かにね…… こんなにいい艦娘生活させて貰ってるの初めてだし、開発予算も余程の事が無い限りしっかりと考えて寄越してくれるし」


明石「妖精さん達も機嫌を損ねずに働いてくれるの様になったのも、提督が来てからだよね、それまでは工廠なんてお荷物扱いだったわねぇ」


高雄「あら、工廠だけではないわよ? 過去の提督達はわざと艦娘用の施設の維持や修復をせずに、不信任を理由に解任された者ばかり」


高雄「この基地がこんなにも活気あふれる様になったのは全て提督のおかげ、といっても過言ではないわ、だからこそ提督に恩返しをしないといけないと思ったの」


明石「その考えには私も賛同するわ、艦娘に対して嫌悪感を露わにしない男性提督なんて、希少すぎて二度とお目にかかれないかもしれないし」


夕張「提督の様な方が居なくなったとしたら、打算的な考えだけど今後の艦娘の立場も以前と同じ戻ると思う、それを抜きにしても一人の男性として尊敬してるけど」


夕張「もちろん私も提督への恩返しは賛成するわ、でも提督の普段のお姿を教えろと言われても、あんまり普段と変わらない気がするんだけど……」



どうやら工廠コンビも普段とあまり変わりのない提督のお姿しか知らないみたい…… 執務室でも休憩中は飲み物で喉を潤して、新聞を見たり携帯端末で何かを確認する程度の様子しか見たことが無いわね。


今まで私達に善意と信頼を全面に押し出して接してくださった提督ですが、別の視点から見ると実にミステリアスな部分もあると気付いたわ。


『提督』としての意思表示や意見の具申はしてくださるのですが『個人』としての一面は見せるどころか率先して隠している、そんな節も思い返せば確かにある。



高雄「貴女達も提督については知っている事は私達とあまり変わらないみたいね」


明石「秘書艦やっていて最も提督に付き添っている艦娘No.1の高雄が知らないんだから、私達も当然知らないと思うんだけど」


夕張「そうそう、自力で掴んだポジションとは言え、私達から見たら羨望の的よ、一日中傾国の美男子と居られるんだから」


高雄「うふふ、私からしたらこのポジションは簡単に譲る気は無いわよ? それはともかく、本当に些細な事でも良いから何か提督について変わった話は無いのかしら」


明石「うーむ、変わった話、変わった話…… ああ!! あったあった、提督について変わった話!! 私、提督とビデオゲームやったことあるのよ」


夕張「あー、確かそんな事言ってたよね、もう1年くらい前の話なんじゃない? すっかり忘れてた」


高雄「それは…… かなり意外ね、私の印象からするとゲームのゲの字も無い様な人なのだけど、ゲームで遊んでいる姿を想像できない程に」



小休止しても数分で済ませすぐに執務へ戻り、休暇の時も基地の敷地内を巡回して様子を伺い、それが終わればトレーニング室で艦娘達と一緒に汗を流し、その後は駆逐艦達と遊ぶ。


休暇の時でさえ自己鍛錬と艦娘達との親交を欠かさず、常に『理想の提督』として振る舞う、そんな提督がビデオゲーム…… 全く予想外の出来事だわ……



明石「その日はあまり任務も少ない時期で、やらなくてはいけない事も全然無くてねぇ、実はサボッてゲームやってたのよ、このプレハブで」


明石「夕張も訓練で居なかったし、妖精さんもみんなで好き勝手やっててさ、私も夕張帰ってくるまで暇つぶししてようとゲームしてたのよ」


高雄「サボりは思うところはあるけれど、過ぎた事だから不問にするわ、私が現行犯で見つけたら指導するわよ」


明石「そう怖い顔しないでよ~、でさ、いきなりドアノックされて窓のカーテン閉めてたから誰だかわからないし、ドアには覗き穴なんてついていないから、何も考えないでドア開けたのよ」


明石「そしたら提督がいたのよ、ゲーム機とテレビは点けっぱなしだし、もうサボってたのバレバレな状態でさぁ、言い逃れは出来ない状態よ」


明石「『ある程度自由に休憩しては良いと言ったが、今は違うのではないか?』と聞かれた時はもう脂汗とか冷や汗とか、一気に変な汗出て私の艦娘生活終わったと思ったわ」


高雄「明石、貴女…… よく無事に切り抜けたわね、正直呆れているけど」


明石「いやぁ、絶望してたら『まあ、サボるのも極稀には悪くは無いだろう、気持ちは分かる』と提督が仰って、一瞬で我に返されたといいますか」


高雄「それも意外ね、艦娘には真摯に対応してくださるけれど任務や風紀などにはかなり厳格に考えていらっしゃいますし」



提督がかなり暇とはいえ任務をサボってゲームしているところを不問にするなんて、これも想像すら出来なかった。


意外とルーズで寛容な一面もあるのかしら? 普段がとても誠実で勤勉なだけにギャップがあるわね、そこもまた魅力的なのだけれども。



明石「そうそう、びっくりしたわよ、んで、どんなゲームが好きなのかと聞かれたから、私はシミュレーションやクラフト、夕張は格闘やアクションが好きですって答えたのよ」


明石「提督はどうやらシミュレーションも出来ないわけではないけれど、夕張と似たような嗜好らしくてねぇ」


明石「そんな事を話していたら提督が『たまには執務を中断して君達の事を深く知る為にゲームで交流も良いかもしれん』と仰って、ますます驚きよ」


明石「提督はおもむろにソファに座りコントローラーを握りまして、呆けてる私に座る様に催促して、格闘ゲームをプレイしていたので流れで対戦する事になったんだけどね……」


高雄「なんだか歯切れが悪いわね、何かあったの? 接待するどころかうっかりやらかしてしまったとか?」


明石「最初は動作を確認するかの様にプレイしていた提督なんだけど、勝負も2度ほど終えた後に『操作は大体理解した』と言った後がねぇ、もう凄まじかった」


明石「複雑な操作が必要なコンボやら、抜群のタイミングでの反撃やら、極めつけは駆け引きと読みあいの重厚な完成度、あれは数か月程度で身に付くようなゲームスキルじゃないわね」


明石「もっとゲームに慣れてしまえば夕張より絶対強いと思う、夕張にも勝つのがやっとだって言うのに最後の方は接待どころか、本気でやっても提督に勝てなかったし」


明石「今度はシミュレーションで対戦したいなぁ、あれから一年も経つけど難しそう…… 提督のお仕事もじわじわと増えてるし」


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このSSへのコメント

80件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-12-09 22:09:48 ID: w9Rsjwbx

part2ですか気分が高揚します。

2: SS好きの名無しさん 2017-12-09 22:20:56 ID: mw5k2hcr

待ってた
更新ありがとう!!

3: SS好きの名無しさん 2017-12-09 22:30:32 ID: BUUJ1EMy

気長に更新待ってます❗

4: SS好きの名無しさん 2017-12-10 08:41:47 ID: sCOL3LpK

おお!
part2待ってました!
更新楽しみにしてます!

5: SS好きの名無しさん 2017-12-16 01:12:41 ID: v7lStrwa

深く考えずにw楽しみにしてますので。

6: SS好きの名無しさん 2017-12-20 12:22:15 ID: RJE52nai

生活力は日々の生活のなかで磨かれるからね。代わりにしてくれる人が居ると延びんのよw

7: MPL 2017-12-26 21:39:12 ID: gibDwU0x

>>1 >>2 >>3 >>4 >>5
楽しんでいただけて幸いです、出来る限り更新していきたいと考えています

>>6
私も一時は一人暮らしでしたが、実家に戻ってからは母に任せっぱなしでぐうたら具合が元に戻ってしまいました、まさに家事能力が延びません

8: SS好きの名無しさん 2017-12-31 08:50:04 ID: Q06bMh8u

あかん!暴動が起きるぞ!
こういう匂いものは生き物のサガや!
子犬やぬこがゲームしてるとき足に絡み付いて昼寝するくらい自然なことだw

9: SS好きの名無しさん 2017-12-31 20:55:09 ID: eDaaObMa

待ってたぞ!
良いお年を!

10: 芝犬 2018-01-01 01:21:43 ID: HZSeWtsu

更新時間神かよw

11: SS好きの名無しさん 2018-01-05 11:06:12 ID: XKIGAO1_

更新時間狙った?

12: MPL 2018-01-06 21:13:05 ID: rzNDX6ZA

>>8
人間も動物の一種なのでやはり匂いは性的な魅力があるのでしょうか、男性が女性の匂いで性的な要素を感じるというのは良く聞きますが、逆はあんまり聞いたことは無いですね

>>9
あけましておめでとうございます、今年も閲覧ありがとうございます

>>10 >>11
更新時間(17時17分17秒)はただの偶然です、全く意識していませんでした(;´∀`)

13: SS好きの名無しさん 2018-01-07 11:39:53 ID: A1TtQpCY

遅くなりましたが
明けましておめでとう!
今年も宜しくお願いしますねw

14: SS好きの名無しさん 2018-01-13 08:22:07 ID: fI1K2ujt

頬か額にが妥当だけど空気読まずに手の甲の部分に口付けを!

15: 芝犬 2018-01-13 11:45:16 ID: -oVlrS_M

口にしようとしたら熊野が入ってきて...

16: SS好きの名無しさん 2018-01-17 13:01:26 ID: BCvBlkU_

髪とはまたw
マニアックというかw
その発想は無かった!
女性の命の髪にキスをする
即ち。求婚!遠回しなプロポーズですねw

17: MPL 2018-01-29 17:12:43 ID: v79YwIxF

>>13
今更になってしまいましたが、明けましておめでとうございます
今年もゆるく書いていくのでよろしくお願いします

>>14 >>15 >>16
いくら提督が慕われている美男子とは言え、特に関係も親しく深いわけではないので口は先ずは無いだろうと考えていました
額も手の甲も考えていましたがコメントの方で先に出されてしまったので、色々考えた結果、髪の毛にキスとなりました

18: SS好きの名無しさん 2018-01-29 21:52:17 ID: 4-G-_XyD

パート1こら一気に読みました!!
面白いです!!

19: SS好きの名無しさん 2018-02-01 00:23:31 ID: Quw9h3j_

この世界ってケッコンカッコカリってあるのかな?
みんな嫌悪してやらなさそうだしまず作られることもなさそうにも思える。
あったらケッコンカッコカリとはまた別の名前になってそうだしなぁ

20: SS好きの名無しさん 2018-02-01 23:04:29 ID: eF29VUBS

ケッコンカッコカリについては自分も気になりました。もしあるとすれば提督はどうするのでしょうねw

21: SS好きの名無しさん 2018-02-09 12:53:58 ID: klIYwECh

楽しみにして何度も読み返しています。
我が嫁艦、龍驤は胸も背丈もこの世界の美人っぽいけど、顔が駄目って扱いですかね?

22: MPL 2018-02-10 03:07:40 ID: U-nSDHzG

>>18
およそ10万字の怪文書を読んでいただきありがとうございます、楽しんで貰えたなら幸いです

>>19 >>20
ケッコンカッコカリについては最初に構想したきりで、実は指摘されるまで忘れてました(;´Д`)
その件についても後日に書く予定なので、書いてたらラッキー程度の気持ちでお待ちください

>>20
このSSの設定における龍驤の容姿については、顔は当然とても不細工扱いで、身体は小柄で平坦な胸部なので評価が高そうに思えますが
軍属で鍛錬が当たり前の生活を送っているので、全く贅肉がない引き締まったスレンダー体型、従って体型においても評価は低いです

23: SS好きの名無しさん 2018-03-15 20:40:40 ID: LYZOAUhF

とても楽しく読ませてもらっています!

この世界だと、深海棲艦はどういう評価になるんでしょうか?

24: MPL 2018-03-18 20:55:07 ID: AtZd_04L

>>23
Part1でも答えたような気がしますが、服飾や機械などの美醜感覚は現実と変わらないので艤装部分は異形に見えます
本体は逆に美醜感覚がおかしくなっているので艦娘と同じく、とても不細工に見えていると考えています

25: 芝犬 2018-04-12 20:57:57 ID: R9h5ZUdL

んほおぉぉぉおおおお!!

26: SS好きの名無しさん 2018-04-30 04:40:18 ID: 7kbJlQRu

俺もこの世界に行けば艦娘たちとワンチャンあるかもしれなんなww

27: SS好きの名無しさん 2018-05-08 19:35:55 ID: Ij7baP-K

毎度楽しく拝見させてもらっています
S鎮提督、外見の表現的には、グラーフの日本人版ってよりサラトガの日本人版って印象ですね

28: かむかむレモン 2018-05-08 19:52:24 ID: xFmOvQcY

こんな面白いSS書いちゃってさぁ、誇らしくないの?(賞賛)

もう待ちきれないよ!早く(続き)出してくれ!

29: MPL 2018-05-11 03:40:17 ID: XqPXQMS5

>>25
とりあえずおちけつ

>>26
私もワンチャン欲しいです(*´ω`)

>>27
前髪ぱっつんのロングヘアなので、私の中では飛鷹に近い外見です
顔立ちは黙っているとグラーフみたいにクールな美人ですが、本来の性格はアレなのでほんのり残念美人です

30: MPL 2018-05-11 03:42:38 ID: XqPXQMS5

>>28
申し訳ないが淫夢はNG
出来る限り暇と文章が湧いて来たら随時加筆していこうと思っていますので、気長にお待ちください

31: SS好きの名無しさん 2018-05-11 10:49:39 ID: f9X91LeU

いつも面白い話を提供してくださってありがとうございます!
これからの展開が気になります!

かむかむレモンさんがコメントしてて草
この人の作品(一作目)は面白いからオススメです
二作目(グロ要素だらけ)はちょっとオススメ出来ないです

32: 芝犬 2018-05-18 01:27:12 ID: vy7orJXe

最近更新多くて嬉しい('ω')....✌('ω')スッ

33: SS好きの名無しさん 2018-05-19 15:32:54 ID: f_iuou7L

楽しく拝見させて頂いてますm(_ _)m
これからも応援申し上げます(*≧∀≦*)
ちなみに質問があるのですが、この世界の駆逐艦好き[ロリk・・・]ゲフんゲフん
はどうなのでしょうか?
成人でもツルぺた童顔がポイント高いようですが、合法ロリ[RJ]も顔だけでモテて無いのでしょうか?

34: MPL 2018-05-30 15:48:45 ID: tF2_R5rU

>>31 >>32
応援ありがとうございます、気長に読んでくださって感謝です

>>33
龍驤みたいなタイプの娘は、細身ではありますが筋肉で引き締まっていて細いので、服を脱いだらがっかりされるタイプと考えています
その前に美醜感覚が反転している世界では顔でNGになると思います、顔の肉は程よくもちもちしてそうなので

35: SS好きの名無しさん 2018-06-02 03:49:54 ID: t4aqB8hJ

金剛の救済を…何卒、金剛の救済を…

36: 罪人 2018-06-02 04:14:11 ID: ExZcup_x

感情が昂った海外艦がつい祖国の言葉を使ってしまう描写が見ていてとてもグッときました!(称賛)
うちのアイオワを佐世保バーガーに連れて行ったら、バーガーを食った瞬間、目を輝かせて訛りの強いアメリカ語で喋られて、適当に頷いてたら財布が大破するまで食べられました・・・(´;ω;`)

つまり歴戦の艦娘になればなるほどマッチョになるんですね!?
素晴らしい・・・!!

37: SS好きの名無しさん 2018-06-09 16:45:04 ID: uWwC7U4E

この世界の指輪って……かなりの罰ゲーム扱いですか?

38: SS好きの名無しさん 2018-06-10 02:44:35 ID: A6Xyv229

気になったのですが、転移前の提督が所属していた鎮守府では、提督は失踪したことになってるんですかね?
突然失踪したら、前の鎮守府の艦娘たちはなんだかんだで喜んで代わりの提督を受け入れそうですね

39: MPL 2018-06-10 14:49:57 ID: pIxVYVc-

>>35
金剛と榛名は以前から救済案は色々と考えていますが、なかなか難しいです。
このまま放っておくのは進歩が無いので、救済できるように考えています。

>>36
そういう状況を実際に見た事がありまして、海外勢が多い艦これという作品のSSなので簡潔に取り入れてみました。

>>37
基本的に好んで使用する男性提督は圧倒的少数で、そもそも使用条件を満たしている提督が少ないです。
艦娘からの評判もすこぶる悪いです、それをネタに提督から侮辱されるという事も。

>>38
失踪、というより行方不明者扱いになっていると思います、とても蔑ろにはされていましたが提督自体は国防意識が高かったので。
以前の鎮守府の艦娘達は「行方不明になったのは後味がなんとなく悪いけど、特に有能でも無かったし、アレより顔の酷い提督は来ないだろう」という考えです。
提督が無能に見えるのは、艦娘がかなり非協力的だったので、能力の半分くらいしか発揮出来ていなかったというのもあります。

40: SS好きの名無しさん 2018-06-12 15:06:54 ID: 81cXZ5Sn

前の鎮守府の艦娘には自分達の提督への扱いや態度を反省してほしいですね。 提督がどうしても不憫に思えてしまって。                作品にかなり感情移入してしまって提督にはもっと報われて欲しいです。    

41: SS好きの名無しさん 2018-07-01 17:48:18 ID: EerIKljK

とうとう指輪が出てきましたか・・・
ますます目が離せませんね。


この世界で戦艦レ級とケッコンしたいのですが・・・・

42: SS好きの名無しさん 2018-07-24 15:24:41 ID: Q9fz4j3_

深海棲艦にもこの世界の法則が適用されているのだとするなら、提督が白粉を塗りたくって姫・鬼級と会えばイチコロで、戦争も早期終結のハッピーエンド!
・・・みたいにはさすがにならんかww

43: MPL 2018-07-28 02:58:36 ID: cSByMG2S

>>40
過去の話は無駄に長くなってしまうのであまり視野には入れていません。
前鎮守府の話を描くとしたら自己満足で長い話になってしまうので、極力触れないようにはしています。

>>41
読んでいただきありがとうございます、深海棲艦も基本的には獰猛なままなのでおすすめはできません(;゚Д゚)

>>42
このSSの舞台の深海棲艦も大半はネガティブな感情丸出しで敵意をむき出しなので、色仕掛けは多分通用しないと考えています。

44: SS好きの名無しさん 2018-07-28 07:13:46 ID: pt_jjMHS

40です。コメ返しわざわざありがとうございます。
差し出がましいことを書いてすみませんでした。この作品が面白くて感情移入してしまって、あくまで一個人の感想で要望ではありません。
これからも無理せず頑張って下さい!陰ながら応援しています!

45: SS好きの名無しさん 2018-07-29 13:12:03 ID: rXCX30yy

>>43
>深海棲艦も基本的には獰猛なままなので
ありがとうございます!!
レ級ちゃんがいつも通りで安心しました!!
この世界で求婚してきます!!!

46: SS好きの名無しさん 2018-08-24 12:31:34 ID: w92cpi0H

最近見つけたのですがPrat1から一気に読ませていただきました。    面白くてどんどん引き込まれました、月並みですが続きを楽しみにしていますね。

47: SS好きの名無しさん 2018-08-24 12:32:14 ID: w92cpi0H

最近見つけたのですがPrat1から一気に読ませていただきました。    面白くてどんどん引き込まれました、月並みですが続きを楽しみにしていますね。

48: SS好きの名無しさん 2018-09-06 02:33:19 ID: Az99cBQ6

いよいよエターか

49: SS好きの名無しさん 2018-09-09 16:11:54 ID: zWF47JwH

毎日の楽しみの一つでした・・・・
無理せず、でも復活希望です。

50: SS好きの名無しさん 2018-10-02 03:38:52 ID: m0MyFik-

昨日見つけて面白すぎて一気に読んでしまいました
好き

-: - 2018-11-03 23:58:44 ID: -

このコメントは削除されました

52: MPL 2018-11-11 01:44:02 ID: S:q1Wk4t

>>46 >>50
一番最初から最新ページまで読んでいただきありがとうございます
完結できるかどうかは怪しいところですが、出来るだけ続けていきます

>>49
面倒事が一つくらいならSS更新に優先度があるのですが、流石に複数の面倒事となると
そちらの方に労力をかけないと大変な事になるので、更新できない時期というのはどうしても出来てしまいます、すいません

53: SS好きの名無しさん 2018-11-17 11:25:54 ID: S:wPvUy2

更新ありがとうございます!

54: SS好きの名無しさん 2018-12-06 21:18:37 ID: S:JNs5LC

楽しみにしてるので、頑張ってください!

55: SS好きの名無しさん 2018-12-06 21:19:58 ID: S:17koQg

一回消されてるので、復活嬉しいです♪

56: SS好きの名無しさん 2018-12-07 05:33:17 ID: S:IYvLGE

更新ありがとうございます!嬉しいです!

57: MPL 2018-12-07 10:36:26 ID: S:ajkErg

>>53 >>54 >>56
閲読ありがとうございます、流石にペースが落ちてきてはいますが、読んで下さる方が居るのは嬉しい事です

>>55
このSSは抹消した事は無いですし、抹消された事も無かったような?

58: SS好きの名無しさん 2018-12-18 12:39:00 ID: S:wk8UXb

続きやったー!

59: SS好きの名無しさん 2018-12-28 05:07:27 ID: S:GU14uk

ありがとう

60: SS好きの名無しさん 2019-01-09 19:44:27 ID: S:8kOJFV

続きが読める・・・こんなに嬉しいことはない(´;ω;`)ブワッ





あ、レ級は私の嫁です。

61: SS好きの名無しさん 2019-01-13 03:42:37 ID: S:jW8Pfk

ついにグラーフが……!
続き気になります!

62: MPL 2019-01-18 22:35:28 ID: S:z-faER

>>58 >>59
こちらこそ閲覧ありがとうございます

>>60
いつぞやのレ級ちゃん求愛者の方ですかな、深海棲艦も出したいのですがいかんせん戦闘とは薄い基地という設定なものでなかなか……

>>61
グラーフかわいいよグラーフ、とても好きな艦なのですが出番のあるSSは少ないのでつらいです(;´∀`)

63: SS好きの名無しさん 2019-01-20 18:57:21 ID: S:aSIxx5

>>62
返信ありがとうございます。
いつぞやかのレ級求愛者です<(゜∀。)

休暇とかで提督と鎮守府外に(小旅行とか視察とか海外とかに)出て、民間人の艦娘への偏見とかを垣間見られる小話とかいかがでしょう?
以前、提督が休暇中に艦娘写真集を見つけたときのレビューを見る限りでは結構酷いような……

64: クリンスマン 2019-01-20 21:55:25 ID: S:FuU_95

やっぱり権利はないかぁ
致し方無し致し方無し

これからも楽しみにしています。

65: SS好きの名無しさん 2019-01-23 20:03:59 ID: S:0utDXc

なんて胃が痛い展開なんだ、、、

66: SS好きの名無しさん 2019-02-05 20:55:55 ID: S:LEIEEV

訓練兵には権利が無いが、深海棲艦には権利が無いとは言っていない。
つまり私がこの世界で<(゜∀。)とケッコンできる可能性が十二分に有る!

67: MPL 2019-02-08 23:13:19 ID: S:NdGl8H

>>64 >>65
いくら元帥の後ろ盾があるとは言え、順風満帆には行かないとは思うのです
元帥や提督の力がすぐには及ばない問題も何れは出さないといけないと思っていたので、この様な形になりました

>>66
顔文字だけで誰なのかわかってしまうくらい、ポーズやテンションに定評のあるレ級

68: SS好きの名無しさん 2019-02-16 22:46:59 ID: S:9cOB1P

とうとう深海からのアプローチが・・・((o(´∀`)o))ワクワク

69: SS好きの名無しさん 2019-03-05 18:23:54 ID: S:g9qTW3

とても面白いです
遂に穏健派深海棲艦まで魅了しはじめた提督の明日はどっちだ!?(笑)

70: クリンスマン 2019-03-08 23:33:56 ID: S:N7pBQb

深海棲艦から見てもイケメンなのですね。
これは人類に光明が見えたのでは!?

更新楽しみにしています!

71: SS好きの名無しさん 2019-03-14 13:21:52 ID: S:HZvLyJ

つまりこの世界に行けば私もまた美男子になれるのか!来世は決まったな。


あっ、作品は最高です。楽しみにしています

72: SS好きの名無しさん 2019-04-13 08:18:33 ID: S:Augrdw

更新待っていました!

73: MPL 2019-04-15 02:38:55 ID: S:EA8r0x

>>68 >>69
艦娘と同じで彼女達が居ないと成り立たない作品なので、ようやく出番を作れました

>>70
艦娘とは表裏一体の存在だと考えているので、美的感覚も変わらないのではないかと思い、このような展開となりました

>>71
私もこのSSの世界へ行きたい^q^
閲読ありがとうございます、評価して頂けて幸いです

>>72
閲読ありがとうございます、亀の歩み的なペースではありますが付き合っていただければ幸いです

74: SS好きの名無しさん 2019-04-28 20:33:05 ID: S:xo36U7

更新ありがとうございます!!
この世界では艦娘へのセクハラがご褒美になるのか……


( ゚д゚)ハッ! つまり<(゜∀。)にセクハラすれば…!!
とりあえずしっぽを撫でるところから逝こう。

75: SS好きの名無しさん 2019-06-23 08:39:00 ID: S:agf8ts

10万おめでとうございます!!

76: MPL 2019-06-28 19:18:05 ID: S:or7JGD

>>74
我々が美少女や美女にセクハラされるようなものなので、我々の業界ではご褒美というヤツですね
そして安定のレ級愛好である

>>75
ありがとうございます、開始当初からしたら更に更新がスローペースになってしまいましたが
閲読してくれる皆さんのおかげで続いています、最近は書きたい事の取捨選択が難しく、無駄に冗長としていて頭が痛いです(゚Д゚;)

77: SS好きの名無しさん 2019-10-07 22:44:31 ID: S:wt-sHg

もう飽きたの?
いつまでたっても更新されないし、このまま蒸発するの?

78: よう 2019-11-19 12:46:25 ID: S:IWUYmO

面白くて何度も読み返してます
大変かとは思いますが続きが来ると信じてのんびりお待ちしてますよ

79: SS好きの名無しさん 2019-12-26 19:07:33 ID: S:skaGcq

待ってます!

80: SS好きの名無しさん 2020-06-30 17:20:30 ID: S:qjVLrz

待ってます
凄く好きな作品なので、打ち切りかどうかだけでも連絡が欲しいです。


このSSへのオススメ

4件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2018-01-29 21:52:52 ID: 4-G-_XyD

こうくるか…!!
着眼点がすごい!!
面白い!!
ぜひ読んでみてください!!

2: SS好きの名無しさん 2018-04-02 01:56:47 ID: 17rjQBPp

面白いですよ!( •̀ω•́ )و

3: SS好きの名無しさん 2018-07-01 17:49:31 ID: EerIKljK

斬新な視点と発想、読みやすい文章と描写です。

-: - 2018-11-03 23:57:40 ID: -

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