2018-01-14 22:15:07 更新

概要

ドラゴンボールヒーローズ ビクトリーミッションX 06の続きです


―――時の界王神率いるタイムパトロールたちは、世界を救うためついにトキトキ都での決戦に臨んだ



―――トキトキ都にはシャメルとモルネー、そして復活した魔神ドミグラが待ち構えていた



―――魔神の力を覚醒させた3人により、タイムパトロールは壊滅寸前にまで追い込まれるも、ビートたちドラゴンボールヒーローズと、ゼンたちタイムパトロールの想いと力が勝り逆転することになる



―――シャメルと魔神ドミグラは、それぞれグレイビーとプティンの手により逃亡を許してしまったが、モルネーはビートとカギューによって倒された



―――その後ビートは暗黒魔界のゲートを塞ぎ、さらに暗黒魔界と他の世界との繋がりを永久に絶つよう、ドラゴンボールに願ったのであった



―――そしてついにビートたちは、元の世界に戻り、時の界王神により生き返った仲間たちとの平和な日々を取り戻したのであった






[Last mission︰オレの好きな人]







キーンコーンカーンコーン




ビート「よし、学校も終わったし行くか」ガタッ



ノート「ビートくん」



ビート「ノート、なに?」



ノート「今日も研究所に行くの?」



ビート「うん、そうだよ ノートは行くの?」



ノート「私は用事があるから行けないわ それにテストが近いし…大丈夫なの?」



ビート「いや…ちゃんと勉強してるよ」



ノート「…どうだか」



ビート「あははは… それじゃあね」タッタッタッ



ノート「まったくもう…」



ノート「…………」



ビートたちが元の世界に戻ったあと、戦士たちはそれぞれの日常に帰っていった



そしてビートは自分の目標である最強英雄を目指し、日々研究所で修練に励んでいた




ソラ「よし、今日はここまでだ」


ビート「今日はあんまり上がらなかったなあ…」


ソラ「友情レベルは地道に上げていくしかないんだ 仲間との絆だって一朝一夕で築けるもんじゃないだろ?」


ビート「そっか…うん、頑張るよ」


ビート「じゃあまた明日ね、ソラ」


ソラ「ああ、またな」


ソラ「あ、そうだ トワならいつものところにいるからな」


ビート「うん、ありがとう」


ソラ「テストが近いんだろ? ちゃんと勉強しろよ」


ビート「わかってるよ、ソラにまで言われるなんて…」




ビート「………」スタスタ



コンコン



「どうぞ」



ガチャ



トワ「あら、ビート 今日も来てたのね」


ビート「うん…それであの…今日もいい?」


トワ「別に構わないわよ 私は他にすることもないし」


ビート「ありがとう、トワ」


トワ「じゃあ昨日の続きから始めましょうか」




あれからトワはドラゴンボールヒーローズ研究所で、研究員の一人として働いていた


見慣れない顔立ちや生い立ちを隠すため、ビートやソラたち以外と顔を合わせることや、外出することはあまりなかった




そして最近ビートはトワに勉強を見てもらうようになった


規則正しい生活をするという母との約束を守るため、ビートはトワに個人教授を頼んだのだった


博識なだけでなく教え方も上手いトワの指導のおかげで、ビートの成績も少しずつ上がっていった




しかしビートには母との約束を守る以外に、もう一つトワに勉強を教わりたい理由があった


いや…そっちの方が本心だったのかもしれない




トワ「ここの覚え方はね…」


ビート「うん…」


ビート「…………」ジーッ





トワ『…好きよ、ビート …おやすみなさい…』





ビート「!!!」


トワ「…? どうしたの?」


ビート「い、いや!…なんでもないよ」


トワ「…じゃあ今日はもう遅いしここまでね」


ビート「あ、うん…ありがとう」


トワ「ちゃんと復習するのよ」


ビート「…うん」





そう…ビートにはどうしても確かめたいことがあった




…自分に対するトワの想いを…




「好き」という気持ちを知るために…






ビート「(でもあれからトワは普通なんだよなあ…)」


ビート「(普通に二人で話してる…あの時みたいに トワはそれだけで満足なのかな)」


ビート「(それとも、もうオレのことは何とも想ってないのかな…)」


ビート「(なんかオレばっかり変に意識してる気がするな…さっきもつい…)」



つい…そこまで出かかるも、その先にうまく言葉を繋げられなかった



たどたどしく言うとすれば…見惚れていた トワという女性に



しかし自分に脈がないとすっぱり思えるのなら、こんな風には思わなかったかもしれない 少し…いや、大分へこむと思うが



こうやってトワのところに足繁く通うのには、トワの自分に対する「好き」という気持ちに思い当たることがあるからだった




ビート「じゃあ…オレ帰るね」



トワ「…………」グイッ



ビート「…トワ?」



トワ「今日も…いい?」



ビート「ああ…えっと…」



ビート「い、いいよ」



トワ「…じゃあ…」ス…



ビート「…ん…む…」



トワ「…ん…」



トワ「ん…はぁ…」



トワ「…いつもいつも悪いわね」



ビート「…い、いや…別に…」



トワ「…………」



ビート「…!」



ビート「(…まただ)」




思い当たることというのがこれだった




トワは毎回帰り際にキスをしてくる




好きでもない相手とキスなんて普通はしないだろう




トワの自分に対する想いは存在し、そして本物なのだろうか




いつしかビートはそう考えるようになっていった




キスする理由については聞かなかった…いや聞けなかったという方が正しかった




トワはキスした後にいつも、哀しさと寂しさで満ちた顔を覗かせていた




まるで初めて会った時のように…




ビートにはその理由がわからなかった




そして…その顔見ると、ビートはたまらず胸が苦しく締め付けられた




この苦しみが、気持ちが何なのか




そして「好き」という感情が何なのかも




ビートにはまだわからなかった










―――数日後




ビート「ようやくテストが終わった…」ノビー


ビート「(ここのところ研究所にも行けてなかったし、久々に行こうかな)」


ビート「(…………)」


ビート「(……トワ…)」


ノート「ビートくん」


ビート「えっ!?」ビクッ


ノート「どうしたの?ボーッとして」


ビート「い、いや なんでもないよ」


ビート「それよりテストも終わったし、久々に研究所でバトルしない?」


ノート「今日はちょっと用事があるから…ごめんなさい」


ビート「あ、そうなの? じゃあ仕方ないね」


ノート「埋め合わせはまた今度するわ」


ビート「いいよ、そんな気にしなくて」


ビート「じゃあオレ研究所行ってくるよ、じゃあね」


ノート「うん」


ノート「…………」


ノート「(…ビートくん…)」





ビート「ふう…ようやく終わった…」


ソラ「ゴッドかめはめ波のレベルが最大まで上がったか やったなビート」


ビート「うん、でも次はそれに合わせたデッキを考えないと」


ソラ「そうだな…ん?もうこんな時間か トワと勉強するならそろそろいかないと遅くなるぞ」


ビート「もうそんな時間? うん、じゃあデッキはまた今度ね」


ビート「…ていうか、最近ソラしかいなくない?ももちゃんたちは?」


ソラ「ああ、よしとくんとツバサはエリア代表決定戦の準備で研究所を離れててな ももちゃんは…そういえば最近誰かと会ってるみたいだな」


ビート「そっかエリア代表決定戦か…」


ソラ「もちろん出るんだろ?」


ビート「当たり前だよ」


ソラ「そうか…じゃあもっと修行しないとな」


ビート「うん、じゃあまた今度ね」


ソラ「ああ、じゃあな」






コンコン



ビート「トワいる?入るよ」ガチャッ



トワ「…ビート?」



トワ「久しぶりね」



ビート「あ、うん…久しぶり」



ビート「テスト終わったよ 一応できたと思う」



トワ「本当に大丈夫なの?」



ビート「ちゃんと教えてもらったとおりにやったよ」ムス



トワ「…冗談よ」クスッ



ビート「」ドキッ



ビート「(な…なんだ今の…)」



ビート「だ、大丈夫だよ…っ…」



トワ「そう?ならよかったわね」



ビート「(だ、ダメだ…なんかトワの顔が見れないし…うまくしゃべれない…)」



ビート「(これって…この気持ちって…)」







トワ「…テストの見直しはこんな感じかしらね」


ビート「うん…ありがとう、トワ」


ビート「(結局ずっと上の空で話が入ってこなかったな…ごめんトワ)」


トワ「じゃあ今日はこれで終わりね」


トワ「……また…いい?」


ビート「…うん…」



トワ「………」ス…


ビート「んむ…」


トワ「…ん…」


ビート「ん…んむ…んむむ…!」


ビート「ぷはっ…!」


トワ「………ぁ……」


ビート「はぁ…はぁ…長いよ…トワ…」


トワ「あ…その…ごめんなさい…」


ビート「い、いや!別にいいよ」


ビート「(…また哀しそうな顔してる…)」


ビート「(やっぱり…トワはオレのこと…好きなのかな…)」


ビート「(…もしそうだったらオレは…どう向き合うべきなんだろう…)」


ビート「(…トワと)」


トワ「…………」


ビート「…じゃあね…トワ」


トワ「…気をつけて帰るのよ」



ガチャ―――バタン



トワ「……………」








―――翌日



ビート「(学校も終わったし…今日も研究所に行くか)」



ビート「(あの後自分で考えてみたけど…結局よくわからなかった…)」



ビート「(…とりあえず誰かに相談したいな…)」



ビート「(でもいったい誰に…)」



とりあえず頭の中に友人たちを思い浮かべてみることにした



まずエリトたち



彼らはそもそもトワのこともあの戦いのことも知らないのだから、あまりビートの悩みの度合いはわかってもらえないかもしれない



ではあの戦いのことを覚えている者だけで考えてみる



自分以外であの戦いのことを覚えているのは4人



まずフローズ



フローズは自分より年下の少年だから、相談というかたちは取りづらい



ソラはヒーローズのことならたしかに頼もしいが、こういうことには疎そうに見えた


…自分が言えたことではないのだが



ももちゃんは年上の女性で一番適任とも言えそうだったが、異性に相談するのはなんだか恥ずかしかった




ビート「(…どうしよう)」



どんどんと選択肢が無くなっていくことにやきもきしていると…不意に声をかけられた



カギュー「久しぶりですね、ビートくん」



ビート「!」



そうだ…あと一人残っていた



ビート「カギュー…」



ビート「(…カギューになら…)」



自分を何度も助けてくれたカギューになら、自然と相談できそうな気がした



自分よりも精神的に大人な彼なら何かアドバイスをもらえるかもしれない



少なくとも自分の悩みはわかってもらえそうだった



カギュー「こんなところで何してるんですか?」


ビート「ああ…研究所に行こうと思って」


カギュー「そうだったんですか」


ビート「…あのさ」


カギュー「? はい」


ビート「ちょっと相談に乗ってほしいことがあるんだけど…」


カギュー「ええ、構いませんけど…」


ビート「カギュー…ありがとう」


カギュー「…!」


カギュー「立ち話もなんですし、とりあえず研究所に行きましょうか」



カギューはいつもと様子が違うビートを見て、腰を据えて話を聞くことにした



いつだって相手と真摯に向き会おうとする姿勢



そこが彼のいいところなのだ






カギュー「…つまり話をまとめると、ビートくんはトワさんのことを考えると、胸が苦しくなったりうまく喋れなかったりする…」


カギュー「それでもトワさんのことをずっと考えてしまう…と、こんなところで合ってますか?」


ビート「うん…」


ビート「(冷静に分析して要約までしてくれるなんて…カギューに相談して正解だった)」


カギュー「(ビートくんに情緒が育まれている…友人としては嬉しい限りだけど…)」


ビート「………」


カギュー「(なんだかビートくんは思い詰めているように見えるな…)」


カギュー「…一つ確認なんですけど…」



カギュー「ビートくんはトワさんのことをどう思っているんですか?」



ビート「…!」



ビート「…それは…っ…」



カギュー「(…まずはビートくんがどう思っているのか…それがわからないと話が進まない)」



ビート「……っ…オレ…は…トワのこと…」



ビート「好き…だと思う…」



カギュー「やっぱりそうですか…」



ビート「うん…でなきゃこんな風に考えないと思うし…」



カギュー「…トワさんがビートくんのことをどう思っているかはわかりますか?」



ビート「いや…それは…その…」



ビート「実は…好きって言われたんだ」



カギュー「えっ!?直接ですか?」



ビート「いや、その…たまたま聞いちゃったっていうか…」



ビート「でもトワはあれから普通に接してくれるだけで、そんな素振りはほとんどないし…」



カギュー「ほとんど?」



ビート「あ、いや…それは…」カアアア



カギュー「あ…すいません…無理して言う必要は…」



ビート「い、いや…相談に乗ってもらってるんだし状況は全部言うよ」



ビート「オレ…最近トワに勉強を教えてもらってるんだけど…」



ビート「その帰り際にいつもトワから…その…キスされるんだ」



カギュー「えっ!?」



ビート「……っ」カアアア



目の前の少年は顔を真っ赤にしている それはそうだろう、キスされるなんて真顔で言えるわけない

さしものカギューもまさかそこまで進んでいるなんて夢にも思わなかった



カギュー「そ…それは大胆ですね…」



ビート「…だから余計にわからなくて…トワがどう思ってるのか…」



カギュー「(…でも話を聞く限りトワさんがビートくんに対してマイナスな感情を持っている様子はない)」



カギュー「(どうもビートくんは初めて経験することが多くて困惑しているように見えるな…)」



カギュー「(ならまずはその理解を深めることを優先させないと…)」



カギュー「今ビートくんのなかでトワさんが特別な存在になっている…そういう自覚はありますか?」



ビート「うん…あるよ」



ビート「…………」



カギュー「…どうしたんですか?」



ビート「実は…これが一番相談したかったことなんだけど…」



ビート「たしかにトワはオレのなかで特別な存在になってるよ 他の仲間とは違う独立した存在に」



ビート「でも…そういう存在になってる人がもう一人いるんだ」



カギュー「(…もしかして…)」



カギュー「…ノートさん…ですか?」



ビート「!」



ビート「すごいねカギュー お見通しだったんだ」



ビート「そうなんだ、ノートも…オレのなかで特別な存在になってる」



ビート「オレはみんなを大切に思ってるけど…その二人はそれとはまったく別なんだ」



ビート「うまくいえないけど…」



ビート「仲間よりも…もっと大切な存在…」



ビート「そういう人は…好き…ってことになるのかな」



カギュー「…………」



ビート「オレさ…好きって気持ちが何なのかわからなくて…」



ビート「好きっていうんなら…オレはみんなのことが好きだ…でも…トワとノートは違う」



ビート「もしかしたらトワの好きとオレの好きは違うかもしれないし…」



ビート「はは…自分でも何言ってるのかわかんないや」



カギュー「…多分、ビートくんやトワさんの好きというのは…仲間としてでもなく、家族としてでもない――」



カギュー「特別な感情なんですよ」



ビート「仲間とも…家族とも違う…?」



カギュー「ええ、それがこの場合の好きってことだと思いますよ」



ビート「…………」



ビート「(…もしそうなら…オレはどっちの方が本当に好きなんだ…?)」



ビート「(…わからないよ…二人とも大切だ…)」



ビート「(大切な…人なんだ…)」



カギュー「…とりあえず気持ちを整理することから始めてみたらどうですか?」



ビート「…整理?」



カギュー「例えば…どうして二人が特別な存在になったのか…とか」



ビート「!」



ビート「(そういえば…どうしてそうなったのか考えたことなかったな…今の状況ばかりに目がいってたから…)」



ビート「(ちゃんと考えてみるべきだよな…)」



ビート「…わかったよ、カギュー とりあえず理由を考えてみる」



カギュー「そうですか 気持ちの整理がついたら一緒に次のことを考えましょう」



ビート「うん、ありがとう」



ビート「…………」






ビート「…じゃあオレは帰るよ、またねカギュー」



カギュー「ええ、気をつけて」



カギュー「…………」クルッ



カギュー「(それにしても今日は驚いた…まさかビートくんがトワさんのことを好きなんて…てっきりノートさんのことが好きなのかと思ってた…)」スタスタ



カギュー「(でもそういう素振りはあったような気もするな…戦いが終わった今だからこそ気持ちが表に出てきているのかもしれない…)」スタスタ



カギュー「(…トワさん…か)」スタスタ



カギュー「あ…」ピタッ



トワ「…あら?あなたはたしか…」



トワ「カギュー…だったわね」



カギュー「ど、どうも…お久しぶりです」



トワ「何しに来たの?」



カギュー「ああ…えっと…」



トワ「もしかして…ビート?」



トワ「ビートなら今日は来てないみたいだけど…」



カギュー「ああ…いえ、ビートくんなら先程帰りましたよ たまたまお会いしまして」



カギュー「そのついでに久しぶりに研究所によってみたんです」



トワ「そう…」



カギュー「…!」



カギュー「(あの哀しそうな顔…まさか…)」



カギュー「(…ビートくんが来なくて哀しそうにする理由…そんなの一つしかない)」



カギュー「(やっぱりトワさんは…ビートくんのこと…)」



カギュー「あ、あの!」



トワ「え?」



カギュー「(…とりあえずそれとなく探ってみよう)」



カギュー「あ、いえ…こちらの世界での生活は慣れたかな、と思いまして」



トワ「そうね…読んだことのない本があるから楽しいわ」



カギュー「そうですか」



カギュー「どんな本を読むんですか?」



トワ「学術書は暗黒魔界と共通している内容が多いから…小説とかかしら」



カギュー「小説ですか…私もよく読みます」



カギュー「(よし…これで聞き出そう)」



カギュー「…恋愛小説とか読んだりします?」



トワ「恋愛小説…?読んだことは無いわね」



トワ「…興味もないし…」



カギュー「興味がないって…恋愛にですか?」



トワ「ええ」



カギュー「その…誰か好きな人はいたりしないんですか?」



トワ「……好きな人?」



カギュー「(…ちょっと露骨すぎたか…?)」



カギュー「(いやでも、いつかは聞き出そうと思ってたことだ それが早いか遅いかだけのこと…)」



トワ「…いないわね」



トワ「それに私は…人を好きになることはないわ」



カギュー「…え?」



トワ「興味がないもの…そんなことに」



カギュー「も、もしトワさんのことが好きな人がいたら…どうするんです?」



トワ「…そんな人いるわけないわ」



トワ「もしいたとしても…私はその気持ちには応えられない」



トワ「……応えられないわ…」



カギュー「(…そんな…)」



カギュー「(…いや…本当に本心だとしたらあんな顔するわけない)」



カギュー「(もし本当に好きな人がいなくても、ビートくんに対する気持ちは特別なものかもしれない)」



カギュー「(必要ないものだって…無理やり自分に言い聞かせてるだけなんじゃないのか…?)」



トワ「……少し話すぎたわね」



カギュー「あ、いえ…こちらこそすいません 余計なことを聞いてしまって…」



トワ「別に構わないわ」



カギュー「じゃあ…そろそろ失礼します」



トワ「ええ」



カギュー「(これは…ビートくんに伝えるべきか否か…)」スタスタ



トワ「…………」



トワ「…誰かを好きになるなんて…私には許されるはずない」



トワ「(そうよ…許されるはずないわ)」



トワ「…………」



トワ「…ビート…」





???「…………」



???「…トワ……」





―――夜



ビート「…………」



カギューと別れた後、すぐに自宅に帰ったビートは自室のベッドで体を横にしながら、カギューに言われた通り二人が特別な存在になった理由を考えていた



ビート「(まずは…ノート)」



ノート


最初に出来たライバルで仲間だった


自分に大会に出るように言ってくれたのもノートだった


ビート「(…そういえば果たし状をラブレターと勘違いしたこともあったっけ…)」


初めて出来た異性の友人だったこともあって、異性として意識することがなかったわけではなかった


厳しいことを言われることもあるが、その言葉の裏には相手のことを思いやる優しさが垣間見えていた


ビート「(なんだかんだいっても良い関係だった気がする…)」



しかしそれが「好き」と結びつくのだろうか



二人が自分の中で他の仲間とは違う特別な存在になっている…それはわかる



だが好きという気持ちがわからないから確かめがつかない…それが今の状況だ



ビート「(好き…好き…か)」



好きかと言われればもちろん好きだが、カギューの言っていたように異性として好きだという気持ち、それだけがわからないのだ



仲間とも、家族とも違う



特別な感情



ビート「(…頭痛くなってきた)」



それはとりあえず置いておき、トワのことを考えてみる



ビート「(トワか…初めて会ったときのことが忘れられないな…)」



ビート「(あの時哀しそうな顔をしてたのは、オレとトワの境遇が似てたからだと思ってたけど…)」



ビート「(今も時々哀しそうにするのは…なんでだろう…?)」



ビート「(あの顔を見ると…胸の辺りがモヤモヤする…よくわからないけど…)」



ビート「(トワのあの顔を…オレは見たくない)」



ビート「(あんな顔をしてほしくない)」



ビート「(最近頭の中がそればっかりだ…)」



敵である自分に自身の二の舞を踏ませぬよう優しい心で憎しみから解放してくれた女性



とても綺麗で優しいけれど、どこか哀しさが隠せないでいる女性



その女性のことを…自分はどう思っているのだろうか



哀しさと寂しさに満ちた彼女を本当に好きだとしたら…自分はどう向き合うべきなのか



彼女は自分のことを…どう思っているのだろうか



ビート「う〜ん…」ウトウト



ビートはますます頭を悩ませ、結局そのまま眠ってしまった



しかし無意識ではあるものの、好きという気持ちを確かめることに一歩近づけたのかもしれなかった






ちょうど同じ頃、カギューは帰路につきながらさっきのトワの発言について考えていた



カギュー「……」スタスタ



カギュー「(好きになることはない…か)」



カギュー「でもビートくんの話だと好きだと言われたって…」



カギュー「(トワさんが恋愛感情について理解や興味がないとはとても考えられない…だとしたらやっぱり…)」



…とそこまで考えたとき不意に誰かに声をかけられた



「ねぇ」



カギュー「えっ!?」ビクッ



時の界王神「何よ、そんなに驚くことないじゃない」



カギュー「えっ?えっ?ええっ!?」



カギュー「と…時の界王神さま!? え…何故ここに?」



時の界王神「私一人だったら世界間の移動くらいできるわよ 一応界王神なんだから」



時の界王神「そんなことより!…さっきの話、本当なの?」



カギュー「えっ、さっきの話というのは?」ギクッ



時の界王神「トワがビートのことを好きだっていう話」



カギュー「」






時の界王神「…そう…そんなことが…」



カギュー「あの…このことは…」



時の界王神「私ってそんなに口が軽そうに見える?」ジロッ



カギュー「あ、いえ…あははは…」



時の界王神「ったく…心外だわ …それにしても…」



時の界王神「ビートは好きという気持ちがわからなくて悩んでて…」



時の界王神「トワは誰も好きにならない…そう言ってるのね」



カギュー「ええ…そうなんですよ でも私には、トワさんが無理をしているようにしか見えないんです」



時の界王神「…トワはそういう子だもの」



時の界王神「自分の本心を決して他人には見せない…そのはずだったんだけど…」



カギュー「ビートくんと接しているうちに何かしらの変化が?」



時の界王神「…でしょうね」



時の界王神「多分トワは誰かを好きになることが、自分にはいけないものだって思ってるのよ、きっと」



カギュー「しかし…いったいどうしてそんなに拒むんでしょう?」



時の界王神「多分…罪の意識を感じてるのよ」



カギュー「歴史改変のことをですか?」



時の界王神「うん…それとノートって子や他の仲間たちを間接的に殺してしまったこととかでしょうね」



時の界王神「罪人の自分なんかに恋愛なんて許されるはずない…それが今のトワの心情よ」



カギュー「いったいどうしたら…」



時の界王神「ねぇ…私にも協力させてくれない?」



カギュー「えっ?時の界王神さまがですか?」



時の界王神「もしトワが本当にビートのことを好きなら…私はトワにその気持ちとちゃんと向き合ってほしいの」



時の界王神「確かに彼女の罪は許されるものじゃないけれど…」



時の界王神「でもそれのせいでつらい想いをし続けるのも違う気がするから…」



カギュー「界王神さま…」



時の界王神「トワのことは私に任せて 私がトワの気持ちを確かめてみるから」



カギュー「あ、ありがとうございます!」



カギュー「(これでトワさんのことは界王神さまが調べてくれる…あとは…)」



カギュー「(ビートくんの気持ちさえわかれば…)」






―――翌日・研究所



カギュー「…という状況でして」


翌日、研究所でカギューはビートに今までの経緯を伝えた

もっとも、トワの発言のことについてだけは抜かしておいたが…


ビート「そっか…時の界王神さまが…」


カギュー「ええ、トワさんのことをうまく聞き出してくれるようですよ」


ビート「…………」


カギュー「どうしたんです?」


ビート「昨日考えてみたんだけど…結局わからなくてさ」


ビート「二人がここまでしてくれてるのに、肝心のオレがこんなでなんか悪くて…」


カギュー「いえ、気にすることはありませんよ」


カギュー「…こういうことは誰だって悩むものなんです 人の心ほど複雑なものはありませんからね」


カギュー「私は結果がどうなれど、これがビートくんにとって、きっと成長に繋がるものになると信じてますから」


ビート「カギュー…」


ビート「…ありがとう」


カギュー「…いえ」


カギュー「(力はあれど孤独だった自分…そこから変われたのは自分を信じてくれる仲間がいたから…)」


カギュー「(私は自分を信じてくれた仲間に、恩返しがしたい…それだけですよ、ビートくん)」



ビート「(…カギューのためにも、界王神さまのためにも、早くオレ自身の気持ちを確かめないと…でも…)」


ビート「(ノートとトワ…二人だけが特別な存在…他の仲間とは違う…それだけがどうしても…)」


ビート「(…ん?)」


ビート「(二人だけが…違う…?)」


ビート「(二人…だけ…)」


ビート「…!」


カギュー「どうかしましたか?」


ビート「いや…ちょっと考えたいことがあって…」


ビート「今日はもう帰るよ ありがとねカギュー」


カギュー「そうですか、ではまた」


ビート「うん」



タタタッ



カギュー「(…ビートくん、何か思い付いたんだろうか?)」


カギュー「(…あとはトワさんのことが気がかりですね…)」


カギュー「(時の界王神さまの方は大丈夫でしょうか…)」スタスタ


カギュー「…?」ピタッ




人の気配を感じ、反射的に足を止めたカギューの視線の先にはももちゃんがいた


声を掛けようとしたその時、その後ろにいた人物を見てカギューはとっさに物陰に隠れた



カギュー「(あそこにいるのは…ノートさん?)」



ももちゃん「じゃあ私の部屋に来て」



ノート「…わかったわ」



カギュー「(なんだ…?あのノートさんの浮かない顔は…)」



ノートはどこか思いつめたような表情をしながらももちゃんの部屋に入っていった

ただ事ではないかもしれないだけにカギューは聞き耳をたてるかどうか迷っていた



カギュー「(…盗み聞きはあまり好きではないけど…少しだけ…)」コソッ


ドア越しに二人の会話が聞こえてくる



ももちゃん「それでどうだったの?」


ノート「…全然だめだったわ、私」


ノート「話そうと思うとどうしても意識しちゃって…前はこんなことなかったのに…」


ももちゃん「…じゃあやっぱり?」


ノート「…私…ビートくんのこと好き…だと思うわ」



カギュー「(ええっ!?)」



ももちゃん「そう…でもよかったじゃない 自分の気持ちに気付けたんだから」


ノート「…そういうものなの?」


ももちゃん「そうよ その気持ちをしっかりと認識することが大切なんだから」


ももちゃん「それで…どうするの?」


ノート「ど…どうするって言ったって…」


ももちゃん「いっそのこと想いを伝えてみたら?」


ノート「そ、そんなの無理よ! それにまだ早すぎるわよ…」


ももちゃん「でもビートくんは鈍感だから、想いを口にしないといつまでもわかってもらえないと思うわ」


ももちゃん「彼、時々自己評価低いときがあるから…」


ノート「………」


ももちゃん「どうしたの?」


ノート「ももちゃんって…結構ビートくんのこと知ってるのね」


ももちゃん「そ、そんなことないわよ 鈍感そうなのはあなたもわかるでしょ?」


ノート「そ…それはそうだけど…」


ももちゃん「(あぶなかったわ…ついあの時のことを…)」


ももちゃん「(でもビートくん、少なからずノートちゃんには想うところはあるみたいだから、まったく無理ってわけでもないのよね)」


ももちゃん「(ノートちゃんもなんだかんだいってビートくんのこと好きだし、うまくいけばお似合いのカップルね)」


ノート「わ、わかったわよ じゃあ伝えてみるわ」


ももちゃん「そう、じゃあ決まりね」


ノート「(なんだか上手くのせられたような気がするわね…)」


ももちゃん「ならまずはデートに誘ってムードを作ることね さすがのビートくんもいきなり言われたら驚くでしょうし」


ノート「当たり前よ…」


ノート「で、でもデートなんて…」


ももちゃん「別にデートなんて言う必要ないのよ 普通に一緒に出かけましょって言うだけでいいんだから」


ノート「でも変に意識しちゃって最近全然喋れてない…」ズーン


ももちゃん「も、もう!らしくないわね あなたらしくやってみればいいじゃない」


ノート「私らしく?」


ももちゃん「そう、変に意識するよりも自然体のままでいれば案外すんなりいくものよ」


ももちゃん「そして何より…自信を持つことよ」


ノート「自信…」


ももちゃん「ビートくんだって男の子なのよ?ちゃんとしてれば、あなたみたいな可愛い子、放っておくわけないわ」



ももちゃん「大丈夫、いつものように自信を持って」



ももちゃん「今のあなたなら、きっと想いを伝えられる」



ノート「ももちゃん…」



ノート「わかったわ、私やってみる!」



ももちゃん「決まりね!じゃあさっそくデートプランを…」ワクワク



ノート「(やっぱり楽しんでるのかしら…)」




カギュー「…」スクッ



カギュー「(…これは…思ったよりも複雑になりそうだな…)」






―――トワの部屋



トワ「………」ペラッ


コンコン


トワ「入っていいわよ」


ガチャ


時の界王神「やっほー! 元気にしてた?」


トワ「…クロノア!?」


時の界王神「久しぶりねトワ」


トワ「どうしてあなたがここに…」


時の界王神「ま、いろいろあってね」


トワ「…答えになってないわよ…あなたらしいけど」


トワ「何か飲む?」


時の界王神「悪いわね、急に押しかけちゃって」


トワ「別に…私も本を読むくらいしかすることがないもの」カチャカチャ


時の界王神「出かけたりとかはしないの?」


トワ「…たまに日用品を買いに外に出るくらいね」


時の界王神「じゃあ誰かと話したりとかはしないの?」


トワ「……ビートとはよく会うわ…」


トワ「最近はビートの勉強を見てあげてるの」


時の界王神「ふ〜ん、家庭教師みたいな感じ?」


トワ「…そう言っていいのか私にはわからないけど」


時の界王神「(…もう思い切って聞いちゃおう)」


時の界王神「ねぇ」


トワ「…なに?」



時の界王神「トワって…ビートのことどう思ってるの?」



トワ「…………」カチャン



トワ「……別に…」



トワ「なんとも思ってないわよ」



時の界王神「(…………)」



時の界王神「なんとも思ってないって?」



トワ「…言葉のとおりよ 普通の感情」



トワ「それ以上でもそれ以下でもないわ」



時の界王神「…それ本当?」



トワ「…私があなたに嘘を付く理由がある?」



時の界王神「たしかに私に嘘を付く理由はないわね だって…」



時の界王神「あなたが嘘を付いてる相手は自分だもの」



トワ「……!」



時の界王神「…本当はビートのこと好きなんでしょ?」



トワ「……やめて…」



時の界王神「あなたが幸せになっても、誰もそれを責めたりなんか…」



トワ「やめて!!!」



ガシャン



時の界王神「……トワ」



トワ「…いい加減にして」ハァ…ハァ…



トワ「私は…ビートのことも、あなたのことも、なんとも思ってない…」



トワ「私は暗く冷たい暗黒魔界の人間…温かな環境で育ったあなたたちとは違う」



時の界王神「…だからって、あなたが幸せになってはいけない理由にはならないでしょ?」



トワ「…時の界王神さまはずいぶん簡単に私の人生を否定するのね」



トワ「たくさん殺したのよ…ビートの仲間たちも…」



トワ「その罪と記憶は、もう私を幸せな場所へは戻さないわ」



時の界王神「…だからなんなの?」



時の界王神「そんなのどうなるかなんて、あなた次第でしょ!?」



時の界王神「私だって、ビートだって、何も悪いことをしてこなかったわけじゃない!」



時の界王神「大切なのは次にどうするか、考えることじゃないの?」



時の界王神「過去は変えられないのなら…変えられるのは未来しかないじゃない!」



時の界王神「それをビートに気付かせたのはあなたでしょ!?」



トワ「…………」



時の界王神「あなた今まで何を見てきたのよ!?」



時の界王神「あなたは変われたと思ってたのに…」



時の界王神「もうあなたなんて知らない!」



ガチャ―――バタンッ



トワ「…………」







ツカツカ


時の界王神「(なによ…憎しみから解放されてやっと自由になれたっていうのに…)」



時の界王神「(本当はビートのこと…好きなくせに…)」



時の界王神「(結局昔と同じように…自分に嘘を付き続ける方を選ぶなんて…)」



時の界王神「(…やっぱり…分かり合えるはずなかったんだわ…)」



時の界王神「(私はあなたとビートに…幸せになってもらいたかったのに…)」



時の界王神「…あ…」ピタッ



カギュー「…界王神さま?」



カギュー「…どうかされたんですか?」



時の界王神「べ、別にどうもしないわよっ」グスッ



カギュー「(泣いてるなんて…何かあったのか?)」



カギュー「と、とりあえず研究所を出ましょうか」



時の界王神「いい、私もう帰るから」



カギュー「えっ!?でも…」



時の界王神「…トワのことだったらあきらめたほうがいいわよ」



時の界王神「結局何にも変わってなかったわ」



カギュー「…えっ?」



時の界王神「…じゃあね」



シュン



カギュー「…あきらめたほうがいい?」



カギュー「…いったい何がどうなって…」






―――ビートの自宅



ビート「ただいま」


ビートの母「おかえり、ビート 手洗ってきなさい」


ビート「うん」


ビートの母「ビート、ちょっと待って 話があるの」


ビート「なに?」


ビートの母「ちょっと親戚の人の具合が悪いみたいだから、近いうちにお手伝いにいかないと行けないの」


ビートの母「結構長く向こうにいないといけないの、あなたも行くでしょ?」


ビート「…いや、オレは残るよ」


ビートの母「え?」


ビート「学校もあるし…オレ、今はここを離れたくないんだ」


ビートの母「…一人で大丈夫なの?」


ビート「うん、オレだってそれくらいできるよ」


ビートの母「そう、じゃあしっかりとお留守番してるのよ」


ビート「うん」




―――ビートの部屋



ビート「やっぱり今ここを離れるわけにはいなかいよな…」



ビート「(やっと…やっとわかったんだから)」



ビート「(…自分の気持ちに気付けたんだから)」









―――トキトキ都・時の巣



時の界王神「………」ツカツカ



ワイル「あ、おかえりなさい!時の界王神さま」



時の界王神「…………」ツカツカ



ワイル「? 界王神さま?」



フェン「どうしたの?ワイル」



ゼン「界王神さまがどうかしたのか?」



ワイル「ううん、でもなんかいつもと様子が違ったような…」




時の界王神「(もうトワなんて知らない…ずっと自分に嘘を付き続けてればいいんだわ…)」ツカツカ



ドン



時の界王神「いった!」



老界王神「あいてて…」



老界王神「ばかもーん! どこ見て歩いとるんじゃ!」



時の界王神「お、おじいちゃん!? 来てたの?」



老界王神「来てたの?じゃないわい、勝手に超ドラゴンボールを使いおってからに」



時の界王神「」ギクッ



老界王神「まあ、事情が事情なだけに今回だけはビルスさまもお許しくださったからよかったものの、まったくお前というやつは…」



時の界王神「だって…」



老界王神「この話はもういいわい、それよりどうしたんじゃ?仏頂面しながら歩いてきおって 可愛らしい顔が台無しじゃぞ」



時の界王神「おじいちゃん…それセクハラよ」



老界王神「な、なんじゃ!人がせっかく心配しておるというのに!」



時の界王神「…ちょっと色々あってね」



老界王神「ワシでよかったら話にのってやるぞ …おまえが泣くなんてよっぽどのことがあったんじゃろうしの」



時の界王神「な…泣いてなんか…!」



老界王神「わかったわかった、詳しい話はお前の部屋で聞かせてもらうわい」スタスタ



時の界王神「ちょ…ちょっと!おじいちゃん!」



時の界王神「……泣いてなんか…ないわよ…」





―――時の界王神の部屋



老界王神「…なるほどのう」


老界王神「お前の気持ちはそのトワという娘には届いてなかった…そういうことじゃな」


時の界王神「うん…私、彼女とは信じあえてると思ってたわ でも本当はそうじゃなかったの」


時の界王神「やっぱり…分かり合えるはずなかったのかな…って…」


時の界王神「たしかに私は自分の気持ちを押し付けてるだけなのかもしれなかったけど…」


時の界王神「少しは私の気持ちも…わかってほしかった…」


老界王神「ふむ…」


老界王神「…それで、お前はどうしたいんじゃ?」


時の界王神「え…?」


老界王神「その娘とはこのままでいいと思っておるのか?」


時の界王神「…それは…嫌だけど…」


老界王神「聞けば聞くほどそのトワという娘、昔のお前にそっくりじゃの」


時の界王神「トワが…私と似てる?」


老界王神「界王だったころのお前は、まあ今よりは神らしかったかもしれんが、あまり笑わなかったしのう」


老界王神「そんなお前が今はこんなに笑うようになって、界王神としての責務を立派に果たすようになった」



老界王神「クロノアよ…人はのう、そう簡単には変われるものじゃないわい」



老界王神「優しさを失わないことじゃ 信じる気持ちをのう」



老界王神「例えその気持ちが何百回裏切られても、相手を信じ続けることが大切なんじゃないのかの」



老界王神「その娘はずっと一人で生きてきたんじゃろ? ならお前が信じないで誰がその娘を信じるんじゃ?」



老界王神「なあに、少し喧嘩したくらいなら時が解決してくれるわい」



老界王神「そこからはお前の思う通りにすればいい きちんと向き合い続ければ、きっとお前の気持ちは届くはずじゃ」



老界王神「あきらめずに最後まで信じとおしてみるんじゃな」



時の界王神「おじいちゃん…」



時の界王神「…ありがと」



老界王神「お?たまには可愛らしいことを言うようになったのう」



時の界王神「う、うっさい!」



老界王神「な、なんじゃ!年寄りに向かってその口の聞き方は!」



時の界王神「ふん!」



老界王神「やっぱり可愛くないのう…」



老界王神「…一つ聞きたいんじゃが」



時の界王神「なによ、スリーサイズだったら答えないわよ」



老界王神「ば、ばかもん! そうじゃないわい」



老界王神「お前…ひょっとしてそのビートとという少年のこと…」



老界王神「好きなのかの?」



時の界王神「な、なによ! 急に!」



老界王神「いやお前がのう…やけに恋をすることが罪だとかそういうことに反応してたからのう」



老界王神「界王神が人間に恋なんて聞いたことがないしの…第一そんなことが許されるはずはないじゃろうし…」



老界王神「だから自分の代わりにその娘に自分の気持ちを重ねたんじゃろ?」



老界王神「自分の分まで幸せになってほしくて…とのう」



時の界王神「…おじいちゃんの思い過ごしよ」



時の界王神「そうよ、許されるはずないじゃない いくら私だってそれくらいわかるわ」



時の界王神「だからトワには、自分の気持ちにちゃんと向き合ってほしいの」



老界王神「…わしはそうは思わんがのう」



時の界王神「え…?」



老界王神「誰かを好きになることは素晴らしいことじゃ それだけ人生が豊かになる証拠だしの」



老界王神「そこに人も神も関係ないと、わしは思うがのう」



時の界王神「…………」



老界王神「まあとにかく、後悔することのないようにやってみることじゃな」



老界王神「それよりこんなところで油売ってていいのかの? お前を頼りにして待ってるもんがいるんじゃろう?」



時の界王神「…そうだ、ビート…カギュー…!」



時の界王神「」タタタッ



老界王神「やれやれ…らしくないことをさせおって…」



老界王神「トキトキ都から出ることがなくて一人きりだったあいつが…」



老界王神「気兼ねなく話ができる相手をつくり、恋までしておるとはのう…」



老界王神「万が一のことがあったら…わしからビルスさまに話すとするかの」テクテク



老界王神「…年をとるとどうも感傷的になっていかんわい」テクテク







―――研究所



カギュー「(時の界王神さま…トワさんと何かあったのか…?)」


カギュー「(ノートさんたちのことを報告しようと思ったのに…)」


カギュー「…困りましたね」



時の界王神「何が困ったの?」



カギュー「うわぁっ!」ビクッ



時の界王神「もう!そんなに何度も驚かないでよ!」



カギュー「(なら何度も後ろから出てこないでくださいよ…)」



カギュー「そんなことよりもお伝えしたいことが…」


時の界王神「私もよ、とりあえず研究所を出ましょうか」





―――公園



カギュー「…というわけでして…」


時の界王神「なるほどね…そのノートって子もビートのことが好きなのね」


カギュー「ええ、かなり複雑な状況でして…」


カギュー「そういえばトワさんの方はどうでしたか?」


時の界王神「やっぱりあの子、無理してるみたい ついカッとなって口論になっちゃった」


カギュー「もしかしてそれでさっき…」


時の界王神「な、泣いてなんかないからね つい興奮しちゃったから、汗が出ただけなんだから」


カギュー「(まだ何も聞いてませんよ)」


カギュー「それにしても…ノートさんもトワさんもビートくんのことが好きで…」


カギュー「ビートくんもどちらかのことを好いている…」


カギュー「ということは…少なくとも一人が…」


時の界王神「…そうね…失恋することになる」


カギュー「そうですね…」


時の界王神「…………」


時の界王神「ねぇ、カギュー…あなたもう手を引いたら?」


カギュー「…え?」


時の界王神「こうなってしまった以上、もう誰かが悲しい思いをするのは避けられないわ」


時の界王神「私も、ももちゃんも、それぞれの協力をしてる以上そういった覚悟はできてるけど…」


時の界王神「ノートちゃんはあなたにとって大切な仲間でしょ?」


時の界王神「かといってここまで相談にのったトワのことも他人事にはできない…責任感の強いあなたなら尚更だわ」


カギュー「…………」


時の界王神「…怖いのよ」


時の界王神「どんな結末を迎えても、あなたの心を傷つけそうで…」


カギュー「界王神さま…」


時の界王神「……………」


カギュー「……………」


カギュー「…私は」


カギュー「私は相手が誰であろうと協力は惜しまないつもりですけど…もし誰かの味方をするのなら…」



カギュー「私はビートくんの味方です」



時の界王神「…!」



カギュー「私はビートくんのことを信じてます…ビートくんが無責任ではないと」



カギュー「どういう結末を迎えても、ビートくんと、ビートくんが選んだ相手を私は心から祝福したい」



カギュー「ビートくんの相談にのったとき、私はそう誓ったんです」



時の界王神「…本当にいいの?」



時の界王神「一度口に出した言葉は消せないわよ」



カギュー「覚悟ならできています」



カギュー「だから…最後まで見届けさせてください」



時の界王神「カギュー…」



時の界王神「わかったわ、これからもよろしくね」



カギュー「はい!」




時の界王神「…じゃあとりあえず今後のことだけど…」



カギュー「ノートさんたちはビートくんをデートに誘って、そこで気持ちを伝えるみたいなんですが…」


時の界王神「そうなの?ずいぶんと急じゃない」


時の界王神「まあでも、これはチャンスかもしれないわね」


カギュー「え?」


時の界王神「もしビートがノートちゃんを好きなら、そこで二人は結ばれるわけでしょ」


時の界王神「ビートがトワのことを好きなら…ノートちゃんとももちゃんには悪いけど、トワとビートが結ばれる」



時の界王神「少なくとも何かしらのきっかけにはなるはずよ」



カギュー「…なるほど」



時の界王神「だから少なくともそのデートが終わるまでは、私たちはノータッチでいきましょう まあ尾行はさせてもらうけど…」



時の界王神「もしビートがトワのことを好きなら、それが終わった時点でビートにトワのことを話しましょう」



カギュー「わかりました」



時の界王神「あとはビートの気持ち次第だけど…そこのところはどうなの?」



カギュー「大丈夫です ビートくんならきっと答えを見つけていますよ」



カギュー「信じましょう、ビートくんを」



時の界王神「ふふ、そうね」



時の界王神「ビートなら…きっと大丈夫よね」



時の界王神「(私…またこの子たちから教わった…)」



時の界王神「(自分の気持ちを押し付けることでいっぱいいっぱいだった自分が恥ずかしい…)」



時の界王神「(カギューはこんなにもビートのことを信じているのに…)」



時の界王神「(私も信じなくちゃ、トワのこと)」



時の界王神「(彼女が幸せになるように…)」







―――翌日・研究所



ビート「いやあ、ノートの方から研究所に誘われるなんて思わなかったよ」


ノート「言ったじゃない 埋め合わせしとくって」


ビート「気にしなくてもよかったのに」


ノート「…………」


ももちゃん「(頑張って!)」コソッ


ノート「(もう…絶対楽しんでるわね…)」


ビート「次はどのデッキにしようかな…」


ノート「あ、あの…ぅ…」


ビート「うん? どうかした?」


ノート「そ、その…」


ノート「今度の休み!」


ビート「うわぁっ!」ビクッ


ノート「今度の休み…ビートくん空いてる?」


ビート「う、うん…特に予定はないけど…」


ノート「じゃ、じゃあちょっと買い物手伝ってほしいの 一人じゃ持てなくなりそうだから」


ビート「そんなに買い物するの? まあ別にいいよ」


ノート「そ、そう!よかった」


ノート「じゃあこの時間にこの場所で」


ビート「うん、わかったよ」


ノート「(緊張した…)」


ももちゃん「(やったわね!)」グッ


ノート「(あとは…ちゃんと自分の気持ちを伝えるだけ…)」


ノート「(ビートくん…)」




時の界王神「」コソッ


時の界王神「(予定通り、デートに誘われたみたいね)」


時の界王神「(あとは当日尾行して様子を見るだけね、カギューにも伝えておかなくちゃ)」


時の界王神「さてと、次は…」




―――トワの部屋



コンコン


トワ「…どうぞ」


ガチャ


時の界王神「………」


トワ「……何か用?」


時の界王神「…昨日のこと、謝ろうと思って…」


時の界王神「ついカッとなっちゃって、ごめんね」


トワ「…私も悪かったわ」


トワ「…でも、私は誰かを好きになることはないわよ」


時の界王神「…わかってるわ」


時の界王神「あなたの人生はあなたのものだもんね、本当は私が口出ししちゃいけなかった」


時の界王神「…でも、もう終わりにしたらどう?」



時の界王神「結局向き合うしかないのよ ビートと」



時の界王神「みんなと」




時の界王神「…自分自身と」




トワ「…………」



時の界王神「…それじゃあね」



ガチャ―――バタン



トワ「…………」










―――デート当日



ビート「いってきまーす!」



時の界王神「」コソッ


時の界王神「ほら!行くわよ」


カギュー「は、はい!」



カギュー「(心なしかビートくんの表情が明るい…もしかして、自分の気持ちに気付けたのか?)」



カギュー「(だとしたら…ビートくんが好きなのはいったい…)」



時の界王神「何してるの?置いてくわよ」



カギュー「い、いま行きます!」



カギュー「(いずれわかることか…今考えても仕方ない)」



カギュー「(それよりこのデートの様子をしっかりと見届けないと)」






ノート「」ソワソワ


ノート「あと5分…」ソワソワ


ノート「ビートくんのことだから遅刻とかしないか心配ね…」



ビート「おーい、ノート」



ノート「え? ビートくん?」



ビート「ふう、間に合った」



ノート「珍しいじゃない、時間にルーズなビートくんが時間通りに来るなんて」



ビート「約束だからね、ちゃんと守らないと」



ノート「…ビートくんらしいわね」



ビート「オレらしい?」



ノート「なんでもないわ さあ、行きましょう」



ビート「あ、待ってよ! ノート」




カギュー「」コソッ


時の界王神「」コソッ


時の界王神「よし、追うわよ」タタタッ


カギュー「は、はい」


カギュー「(…界王神さま…ひょっとして楽しんでる?)」




ノート「」スタスタ


ビート「………」スタスタ


ノート「? どうしたの?」


ビート「あ、いや、いつもと違う格好だから新鮮だなーって」


ノート「そ、そう?」


ビート「うん、似合ってるよその服」


ノート「あ、ありがとう」




カギュー「(鈍感なビートくんが服装を褒めるなんて!?)」


カギュー「(…やっぱりノートさんの方を…?)」


時の界王神「(あの二人は二人でお似合いよね でも…)」


時の界王神「(トワもあの子みたいに、少し勇気を出すだけでいいのに…)」


時の界王神「(このままビートがあなたのそばから離れても…あなたはそれで平気なの?)」


時の界王神「(トワ…)」


カギュー「…………」


時の界王神「…………」


カギュー「…いきましょうか」


時の界王神「…そうね」





ノート「ありがとう、荷物持ってもらって」


ビート「気にすることないよ、もともと荷物持ちだし」


ノート「(…そういうつもりで誘ったことになってるんだった…でもビートくん、やっぱり鈍感ね)」


ノート「ねぇ、荷物持ってもらったお礼に、お昼ご馳走してあげる」


ビート「え、本当に? やった!お腹ペコペコだったんだ」


ノート「朝ごはんは?食べてないの?」


ビート「ちょっと寝坊しちゃったから…あはは…」


ノート「ふふ、やっぱりルーズなのね」


ビート「それは言わないでよノート…」





―――レストラン・店内



ビート「へえー、学校の近くにこんなお店できたんだ」


ノート「ここのハンバーグがおいしいって、テレビでやってたの ビートくんもそうするでしょ?」


ビート「うん、そうするよ」



ノート「じゃあハンバーグ二つね、すいませーん」




カギュー「結構順調ですね…」


時の界王神「…そうね」




ビート「いやあ、ノートにご馳走してもらえるなんて思わなかったよ」


ノート「さっきも言ったけど手伝ってもらったお礼よ、気にすることないわ」


ビート「はは、ありがとう」


ノート「…………」


ビート「…ノート?」


ノート「…ねぇ、ビートくん」


ノート「私たちは邪悪龍を倒して、世界は平和になった…そうよね?」


ビート「…え? うん」


ノート「でもね…私、よく覚えてないの」


ノート「真っ白な空間で、あなたが作った元気玉をみんなで完成させた…そこからよく覚えてないの」


ノート「気がついたら…いつの間にか日常に戻ってたような気がして…」


ビート「…………」


ノート「ビートくんは何か心当たりはない?」


ビート「…いや…ないよ」


ビート「(…そうか…オレやフローズ、カギュー以外のみんなは、向こうでのことを覚えていないのか…)」


ビート「(暗黒魔界のことも…あの戦いのことも…)」


ビート「(…………)」


ノート「そう、なら私の思い過ごしなのかもしれないわね」


ノート「今は平和だし、これでいいのよね」


ビート「うん…そうだね」


ノート「…ただね」


ビート「?」


ノート「ううん、やっぱりなんでもない」


ビート「そっか」



店員「お待たせしました」



ノート「さあ、食べましょう」


ビート「うん」




カギュー「…そういえば、ノートさんたちを生き返らせたのって、界王神さまなんですか?」


時の界王神「そうよ」


カギュー「いったいどうやって…」


時の界王神「まあ簡単に言うと、私たちの世界のドラゴンボールを使ったの それであなたたちの仲間を全員生き返らせたのよ」


カギュー「そうですか」


カギュー「その…ビートくん、とても感謝していましたよ 界王神さまに」


時の界王神「私に?」


カギュー「はい、私からもお礼を言わせてください」


時の界王神「…別に感謝されることじゃないわよ、私のけじめとしてそうしただけ」


時の界王神「(…バカ…本当はそんな風に思ってないくせに…)」


時の界王神「(好きな人に喜んでほしかったからって…そう言えばいいのに…)」


時の界王神「(…私は…自分の気持ちに向き合ってるつもりだけど…)」


時の界王神「(…でも…)」


時の界王神「同じだわ…私も…」


カギュー「…え?」


時の界王神「なんでもない 独り言よ」



―――

――





ノート「…すっかり暗くなっちゃったわね」


ビート「そうだね、あっという間だったよ」


ノート「…………」


ビート「…ノート?」


ノート「…え?」


ビート「どうかしたの? 今日のノート、なんかいつもと違うよ」


ノート「ううん、なんでもない」


ノート「…あのね、ビートくん さっきの話の続きなんだけど…」


ビート「なに?」


ノート「私、最近夢を見るの」


ビート「…夢?」


ノート「うん」


ビート「…それってどんな?」



ノート「…私がビートくんを庇って、私は死んじゃうの」



ビート「!!!」



ノート「夢のビートくん、すごく泣いてたわ」



ノート「私に向かって、『死なないで』って」



ノート「それで私のこと…抱きしめてくれた」



ノート「それから私ね、ビートくんと話すと胸の辺りがドキドキして、少しだけ苦しくなるの」



ノート「でも…イヤな痛みじゃない すごくあたたかい気持ちになれるの」



ビート「ノート…」



ノート「…ビートくん」




カギュー「(…ようやくわかる…ビートくんがどちらを選んだのか…)」



時の界王神「(…ビート…)」





ノート「私…ビートくんのこと…好き」




ノート「ビートくんのまっすぐなところが、私は好きなの」




ノート「私はあなたのそばに…ずっといたい」




ノート「あなたと…歩いていきたいの」




ドクン…ドクン…ドクン…




ビート「……………」





カギュー「(…ビートくん…)」





ビート「……ノート…」





ノート「…………」





ビート「オレ―――」



















―――ノートの自宅前



ももちゃん「(…遅いわね)」




ノート「…………」スタスタ




ももちゃん「あっ…! ノートちゃん!」




ノート「…ももちゃん?」




ももちゃん「あ…ごめんね 急に」




ももちゃん「やっぱり居ても立っても居られなくなっちゃって…」




ノート「そう…」




ももちゃん「それで…どうだったの?」




ノート「うん…ももちゃん 私ね―――」














ノート「振られちゃった」ニコッ









ももちゃん「え…そんな…」



ももちゃん「ビートくん…なんて?」



ノート「好きな人がいるって」



ももちゃん「えっ! そ…そうだったの…」



ノート「うん…誰かまでは教えてもらえなかったけど…私の知らない人だって」



ももちゃん「そう…」



ノート「ももちゃん、相談にのってくれてありがとう」



ももちゃん「私は…結局あなたをけしかけただけだったのね…」



ノート「違うわ、ももちゃんは親身になって、私のために力になってくれた」



ノート「私はそれが嬉しかったわ」



ノート「だから…っ…」



ももちゃん「…!」



ノート「…やっぱりだめね、私 泣かないって…決めたはず…なのに…っ…」ポロポロ



ももちゃん「…ノートちゃん」







ビート『オレ―――好きな人がいるんだ』



ノート『…え…?』



ビート『ノートの気持ちはすごく嬉しいけど…ごめん…』



ノート『そう…』



ビート『本当にごめん…』



ノート『ううん、謝らないで』



ノート『ビートくんの気持ちが一番大切だもの なら私…ビートくんが幸せになる方を望むわ』




ビート『ノート…』




ビート『…ありがとう』




ノート『あと、できればこれからも普通に接してくれると嬉しいわ』



ビート『うん、オレもそれを望むよ』



ビート『ノートはオレの…大切な仲間だからさ』



ノート『…うん』







ノート「私…大切って言われてすごく嬉しかった…でも…」



ノート「私の望んだ答えじゃなかった…」



ノート「覚悟してたことだけど…やっぱり…私…っ…」




ももちゃん「…ノートちゃん」




ももちゃん「頑張ったわね」




ノート「うっ……あぁっ…」ポロポロ




ノート「うぁ…ああぁ…うああぁっ……っ…!」




ももちゃん「…………」ギュッ…




ももちゃん「(ノートちゃんの知らない人っていったら…その相手は一人しかいない…)」




ももちゃん「(でも…ビートくんならきっと…大丈夫よね)」




ももちゃん「(彼女のこと、幸せにしてあげてね)」




ももちゃん「(…ビートくん)」










ビート「…………」スタスタ



カギュー「ビートくん」



ビート「…カギュー?」



ビート「もしかして…」



カギュー「はい…全部見てました」



ビート「…そっか」



カギュー「…すいません」



ビート「ううん、どうせ伝えなくちゃいけないんだ」



カギュー「じゃあ…ビートくんが好きなのは…」



ビート「うん…オレは―――」





ビート「トワが好きだ」





カギュー「そうですか…」




ビート「ノートには…悲しい思いをさせちゃったな…」



カギュー「たしかにそうですけど…それでもノートさんは、ビートくんの幸せを願ったんです」



カギュー「本当にビートくんのことが好きだからですよ」



ビート「うん…だからオレは立ち止まるわけにはいかないんだ」



カギュー「…一つだけ聞いていいですか?」



ビート「なに?」



カギュー「どうやって自分の気持ちに気がついたんですか?」



ビート「…オレ、ずっと二人が他の仲間たちと違う存在だって…そればかり考え続けてたけど…」



ビート「トワとノートがそれぞれどう違うかは考えたことなかったんだ」



カギュー「(なるほど…そういうことか…)」



カギュー「(トワさんとノートさんをそれぞれ切り離して考えたことで、それぞれへの想いを認識できたのか…)」



ビート「そうやって考えたら…オレはトワのことが好きだって気がついたんだ」



カギュー「よかったですね、自分の気持ちに気づくことができて」



ビート「うん…」



ビート「オレも…早くこの気持ちをトワに伝えるよ」



カギュー「(トワさんのことは言う必要はないか…言ってもビートくんの決心を鈍らせるだけだ)」




カギュー「(時の界王神さまはタイムパトロールの仕事があるから、しばらくこっちの世界に来れないって言ってたけど、これなら心配はいらないな)」



カギュー「(あとはビートくんに任せよう)」



カギュー「(今のビートくんなら…きっと…)」





―――研究所・トワの部屋



トワ「………」スタスタ



ガチャ



トワ「…?」


時の界王神「やっほー」フリフリ


トワ「…また来てたの?」バタン


トワ「それで、今日は何の用なの?」


時の界王神「…わかってるくせに」


トワ「…何度言われたって、私の気持ちは変わらないわよ」


トワ「大体、私がビートのことを好きだっていうのは、あなたの妄想でしょ」


時の界王神「妄想?」


トワ「そうよ、それはあなたの妄想で願望でしかないのよ」


時の界王神「よくわかってるじゃない」


時の界王神「たしかに私は…自分が叶えられない希望を、あなたに押し付けてるだけかもしれない」



トワ「…………」



時の界王神「あなたはあの戦いが終わってから、吹っ切れたように晴れやかだった」


トワ「…そうよ、私は暗黒魔界から抜け出して、新しい世界で暮らすことを選んだ 私はそれで…それだけで幸せなのよ」


時の界王神「…だったらなんでそんな哀しそうな顔をしているの?」



トワ「……!」



時の界王神「あなたは最近そんな顔ばかりしてる それはあなたがつらい思いをしてる何よりの証拠でしょ?」



時の界王神「私は、あなたが本当に笑顔になれるのは…ビートと一緒にいるときだって、気づいたのよ」



時の界王神「だから…私はあなたとビートに…」



トワ「…おめでたいわね、あなたって」



トワ「大体ビートの想い人はノートって子でしょ? 私はビートの記憶を見たんだからわかるわ」



トワ「ビートがその子に特別な感情を持ってた…ってね」



時の界王神「……その子、今日ビートに告白したわ」



トワ「…………」



トワ「……そう…これで決まりね…」



時の界王神「でもビートはその子を選ばなかった」



トワ「…!!」



時の界王神「好きな人がいるからって」



時の界王神「その子の想いに応えることよりも、ビートは自分の好きな人を幸せにすることを選んだのよ」



時の界王神「その子がどれだけ悲しい思いをするかを承知でね」



トワ「…………」



時の界王神「…聡明なあなたならわかるでしょ?」



時の界王神「ビートがそこまでして幸せにしたい相手が、いったい誰なのか」



トワ「…………」



時の界王神「…伝えたかったことはそれだけよ じゃあね」




ガチャ―――バタン




トワ「…………」




…やっと気づいた…




どうしてこんなに胸が痛むのか




ビートとクロノアの…二人の自分に対する優しさが本物だって確信できるからだ




確信できるからこそ…つらいんだ…




私は…あの二人の想いには応えられない…




それは二人を悲しませることになる…




私はもうあの二人と…会うべきじゃない…










―――翌日・研究所



ビート「…よし」



コンコン



ビート「トワいる? 入るよ」ガチャ



シーン



ビート「…?」



ビート「(今日はいないのかな……)」








―――一週間後・学校




教師「…ということで、割合の計算にはそれぞれ3つの公式があります」



ビート「…………」カリカリカリ


ノート「…………」カリカリカリ



教師「この公式は割合、比べられる量、もとにする量の3つを組み合わせて使いますが…」



ビート「…………」カリカリ…



教師「では、割合を求める式はどうなるか ビートくん、答えてください」



ビート「………」


ノート「……?」



ノート「ビートくん、指されてるわよ」ヒソヒソ



教師「どうしました?ビートくん 早く答えなさい」



ビート「…………」


ノート「ビートくん!」ヒソヒソ



教師「ビートくん!答えなさい!」



ビート「! あ、はい…」ガタッ



ビート「……すいません…聞いていませんでした」



教師「もういい、座りなさい それでは…」



ビート「…………」


ノート「…どうしたの?ビートくん この前は答えられてたところじゃない」


ビート「うん…ちょっとね…」




―――さらに一週間後・研究所



バサーク「くらいやがれ! CAAゴッドかめはめ波!」



K.O!



ビート「…………」



バサーク「よっしゃあ!オレの勝ちだぜ、ビート」



ビート「……うん…そうだね」



バサーク「はぁ?」



バサーク「チッ、張り合いねーな」



バサーク「…お前、なんかあったのか?話してみろよ」



ビート「…いや、なんでもないよ」



バサーク「…そうかよ」



バサーク「おいキング 次はオレとバトルしてくれよ」



カギュー「え、ええ…」



カギュー「……………」




ツバサ「あいつ、どうしたんだ?」



よしとくん「最近、あまり調子よくないみたいだね」



ももちゃん「…………」






―――一ヶ月後・学校


ワイワイガヤガヤ


ノート「ビートくん、最近ずっと調子悪そうだけど…なにかあったの?」


ビート「うん…ちょっと寝不足気味なのかもしれない…でも心配するほどのことでもないよ」


ノート「でも一ヶ月以上前からずっと毎日研究所に行ってるわ たまには早く帰って休んだほうが…」


ビート「うん…じゃあ今日はそうしようかな…」





―――ビートの自宅



ビート「…ただいま」ガチャ



シーン



ビート「あ…そっか…親戚の人のところに行ってるんだっけ…」



ビート「…………」



ビート「散歩でもしてこようかな…」




―――街中


ワイワイガヤガヤ


ビート「………」スタスタ



ビート「(トワ…どこいったのかな…)」



ビート「(いや、よそう…やっぱり…オレの思ってたとおりだったんだ…)」



ビート「(それがトワの応えだったんだね…)」



ビート「(だったらオレは…トワの気持ちを尊重してあげなくちゃ)」



ビート「(だってオレは…トワのこと…)」ポロッ



ビート「…?」



ビート「あれ…?」



ビート「(なんでオレ…泣いてるんだ?)」



ビート「…っ…」



ビート「(あぁ…そうか、オレもノートと一緒だ)」



ビート「(やっぱりオレも、トワのことが本当に好きだったんだ)」



ビート「(好きだから悲しいんだ…つらいんだ…)」



ビート「(トワがオレから離れていったことが…)」



ビート「(…トワ…)」



ビート「(オレは…)」




「あ、危ない!!」




ビート「……え?」




キキィッ―――ドカァッ…





青年(運転手)「…やった…」



ガチャ



ビート「」



青年「…あ、あんたらも見たろ? この子の方から道に飛び出してきたんだぜ!?」



ザワザワザワ



青年「くそ…大変なことになっちまった…」




―――

――





カギュー「」ダダダッ



カギュー「ノートさん!」



ノート「カギューくん…」



カギュー「はぁ…はぁ…ビートくんは?」



ノート「うん…手術は成功したんだけど、まだ意識が戻ってないみたいなの」



ノート「目も怪我してて…治るまでは意識が回復しても何も見えないみたいなの」



カギュー「そんな…」



ノート「ビートくん、最近調子が悪いみたいだったの…だから体力が持つかどうか…」



ノート「意識が戻ったらすぐに詳しい検査をした方がいいから、みんなと交代でビートくんを見ることにしたの」



カギュー「そうですか…」



ノート「…もしかしたらビートくん…誰かに会いにいってたのかも」



カギュー「…誰か?」



ノート「ここ最近、毎日研究所に寄ってたみたいなの」



ノート「でも…どうして毎日行ってるのかは教えてくれなかったわ」



カギュー「…毎日」



カギュー「(…そうか…そういうことだったのか…)」












……あれ?



ここどこだろう…



そうだ…トラックに跳ねられたんだっけ



もしかしてオレ…死んじゃった?






時の界王神「そんなわけないでしょ!」ポカッ



ビート「いたっ!?」



ビート「えっ!?時の界王神さま?」



時の界王神「やっと向こうから戻ってこれたと思ったらなによこれ!?」



時の界王神「なんであなたがトラックに跳ねられてるわけ!?」



ビート「いや、自分でもよくわからなくて…ボーッとしてたら跳ねられちゃったんです」



時の界王神「まったくもう…危ないところだったんだからね、あなた」



ビート「…ここは?」



時の界王神「ここはあなたの精神の中よ」



時の界王神「あなたの肉体はまだ意識が戻ってないから、あなたと話すには精神の中でしかできないってわけ」



時の界王神「(トワの部屋に残ってた精神リンク装置がまさかこんな形で役に立つとはね…)」



ビート「そうなんですか…オレはまだ意識が…」



時の界王神「…カギューから全部聞いたわ」



時の界王神「トワが…あなたの前からいなくなった…って」



ビート「…………」



時の界王神「…あのね、トワのことであなたに言ってなかったことがあったんだけど…」



時の界王神「実はトワ…」



ビート「わかってますよ」



時の界王神「え…?」



ビート「トワ…誰かを好きになることなんかないって…そう言ってるんですよね?」



時の界王神「…わかってたの?」



ビート「はい…トワならきっとそう言うんじゃないかと思ってて…」



ビート「トワ…ずっと哀しそうな顔してました 明るく振る舞ってたけど…やっぱりどこか寂しそうだった…」



ビート「多分…自分のしてきたことに対して罪悪感を感じてるんだと思います」



ビート「哀しそうな顔をするのは多分…幸せを感じるたびに、自分のしてきたことを思い出すから……」



時の界王神「…そこまでわかってたのなら…どうしてトワのこと…」




ビート「…………」




ビート「オレは―――」









―――病室



ノート「………」



コンコン



ノート「…はい」



ガラッ



フォルテ「よう…ビートは?」



ノート「まだ…」



フォルテ「そうか…」



フォルテ「もう3時間も付きっきりだ、少しは休んだほうが…」



ノート「私は大丈夫だから、フォルテの方こそ休んでおいて」



フォルテ「ノート…」



ノート「…………」






「………ワ……」







ノート「……?」



フォルテ「どうした? ノート」



ノート「今…声が…」





「…………ワ……」




ノート「!!」



フォルテ「なんだこの声 うわごとみたいだけど…まさか、ビートが!?」




ノート「ビートくん? 聞こえる、ビートくん?」




「……ト………」




ノート「…!」ガタッ




フォルテ「ノート!? どこいくんだよ!ノート!」









―――少し前・街の上空




時の界王神「(トワを探し出すのは簡単なことだわ)」



時の界王神「(……………)」



時の界王神「(……けど…)」







トワ「………」スタスタ



「おい、お前ニュース見た?」


「見た見た、若いやつがガキを轢いちまったやつだろ?」


「どうも証言によると、子供の方から車道に飛び出してきたんだと」


「おっかねえ〜、運転手のやつはツイてねえな」


「本当だよな〜」



トワ「…………」



トワ「(……まさか…)」



時の界王神「ビートのことよ」



トワ「…!」



時の界王神「安心して、別に自殺とかそういうわけじゃないから」



時の界王神「ただ…やっぱりショックだったみたいよ あなたがいなくなったことが」



時の界王神「今回は運良く一命をとりとめたけど…また不注意で事故を起こしかねないわ」



時の界王神「そのうち取り返しがつかないことになるかもね」



トワ「…………」