2016-09-14 16:44:10 更新

概要

物静かな提督と加賀の話です

内容を微妙に変えました


前書き

 誤字脱字注意 読みにくいとは思いますが読んでいただけたらうれしいです



波の打ち寄せる音が聞こえる…時刻は04:30、季節は春…と言ってもまだ暗い、瑞鶴はその暗い海をじっと見つめていた


朝早く起きて鎮守府内を探検するのが彼女の密かな楽しみだ



瑞鶴「さて、今朝は…提督さんの所にでもいってみようかな…」



瑞鶴は提督と接点があまり無い、というかそもそも提督自ら秘書艦をつけることがない、秘書艦をつけずに一人で執務をこなすのが


提督のやり方だ、結果彼が艦娘と話すことはあまり無いのである…



ー執務室の前ー



??「…くれ」


瑞鶴「?提督さんの声が聞こえる」


提督「…だけは…殺さ…ない…で…くれ…」


瑞鶴「っちょっと提督さん!?」



思わず執務室の扉を開ける…まず目に飛び込んできたのが布団…提督はその上でうなされていた



提督「…頼む…もう…」


瑞鶴「提督さん!!」



提督の手を握ると、提督も安心したのか硬かった表情が和らぐ



提督「…か…が…」


瑞鶴「へっ?ちょっと待っ」



いきなり引っ張られ、とっさの出来事に反応することが出来ずにバランスを崩し、提督に抱きしめられる



提督「…ゴメンな…」


瑞鶴(…寝ぼけてる…)



ー05:00ー



提督「…朝か…ん?…なんだこれは…」



重い目を開けると何故か不機嫌そうな瑞鶴が腕の中にいた


 

瑞鶴「おはようございます提督さん」


提督「…おはよう、ところで俺は何故きみを抱きしめているんだい?」


瑞鶴「提督さんが寝ぼけて私を抱きしめたまま寝てしまったんじゃないですか!」


提督「そっそれはすまない事をした」


瑞鶴「いえ、別に気にしてないです」


提督「いや、しかし…ケガはないか?」


瑞鶴「?いえ別にケガはしていないですけど」


提督「そうか…ならいいんだ」


瑞鶴「………」


提督「どうしたんだい瑞鶴?、俺の顔になにかついているのかい?」


瑞鶴「いえ…提督さんに聞きたい事があるんです」


提督「なんだい?」


瑞鶴「何故私達を避けているのですか?」


提督「…唐突だな、それを聞いてどうするんだい?」


瑞鶴「別にどうもしないです、ただ知りたいんです」


提督「…あまり面白い話ではないが…」


瑞鶴「…それも承知の上です」


提督「…わかった…話そう…昔、俺が18の時、当時親友だと思っていた奴に両親を殺された…興味本位でな…」


提督「…当時俺には妹がいた、とにかく妹を幸せにするために俺は必死で働き…勉強した…そしてある日、妹も殺された…別な知り合いに

な…俺はもう人と関わるのが嫌になっちまった、もう生きることが嫌になっちまった…だから軍に入った…」


瑞鶴「…ごめんなさい…提督さん」


提督「いや、いいんだ俺が勝手に話したようなものだからな…寧ろキミを不安にさせた俺の方が謝るべきなんだ…」


瑞鶴「………」


提督「………」


加賀「提督おはようございます」


提督「おお、加賀かおはよう」



加賀の声が聞こえる、どうやら執務室の外にいるらしい



加賀「朝食をお持ちしました、扉の横に置いておきますので」


提督「ああ、ありがとう、いつもすまないな」


加賀「いえ、これくらい当然です…それでは」


瑞鶴「………」


提督「どうしたんだい瑞鶴?」


瑞鶴「いえなんでもないです…」


提督「ところで、キミも早く朝食をとりに行った方がいいんじゃないか?」


瑞鶴「あっ忘れてました、それでは提督さん、さよならっ」 


提督「…ああ、さようなら」



ー食堂ー



瑞鶴「おはようございます」


加賀「遅いわよ五抗戦、早く朝食食べなさい」


瑞鶴「はい、いただきます」



遅いと言っても普段早起きな瑞鶴がいつもより遅く来ただけで、瑞鶴と加賀以外の艦娘達はまだ寝ているらしく食堂には


瑞鶴と加賀の二人しかいない



瑞鶴「…加賀さん」


加賀「なにかしら?」


瑞鶴「提督さんって初めからあんな感じだったんですか?」


加賀「いいえ…昔はまだマシだったわ……秘書艦もいたし…」


瑞鶴「?それじゃあなんで今は秘書艦をつけないんですか?」


加賀「…私が轟沈したから」


瑞鶴「へっ?でも加賀さん生きて…」


加賀「ええ提督に助けられたからね」


瑞鶴「どういう事ですか?」


加賀「昔、そうね…ちょうどこんな季節だったかしらね…ある日提督は船で私達について来たの、なにか嫌な予感がするって言ってね…その

日の出撃海域にはそこまで強い敵もいなかったし、私達も心配しすぎだろうって思っていたの…」


加賀「確かに敵は強くなかった…ただ敵部隊を全滅させた後、轟沈寸前の敵が放った魚雷を見落としたの…そして魚雷を避けきれずに私は轟沈した…」


瑞鶴「………」


加賀「…私が轟沈したってわかった瞬間提督は海に飛び込んで私を助けようとしたの…」


加賀「幸い浅い海だったからね、私はすぐに引き上げられた…ただ私を船に引き上げた後に提督はサメに襲われてしまったの…」


瑞鶴「えっ…どうやって助かったんですか?」


加賀「赤城さんがサメをへし折ったのよ」


瑞鶴「…成る程…」


加賀「…提督は鎮守府に到着するまで私に応急処置をし続けた…自分のケガの手当てもしないでね…」


加賀「提督の適切な処置のおかげで、私は2日程で動けるようにはなったの…だけど提督は…出血多量で4日間生死の境をさまよった…」


加賀「意識が戻るとすぐに私に謝ってきたわ…悪いのは私の方なのに…提督は何度も謝ってきた」


加賀「…それから提督は私達と接しなくなった…人と関わるのが怖くなってしまったって言ってね…」


瑞鶴「…成る程…そんな事が…」


加賀「…食べ終わったなら早く身支度を整えなさい」


瑞鶴「はい了解です、ごちそうさまでした、美味しかったです」


加賀「フフッありがとう」



数週間がたった、その日は出撃もなく、翔鶴と一緒に部屋でゴロゴロしていると加賀が部屋に入ってきた



加賀「あなた達何か欲しい物はない?」


瑞鶴「何ですか突然?」


加賀「提督が普段から迷惑かけているからって」


翔鶴「私は特に…」


加賀「そう…瑞鶴、あなたは?」


瑞鶴「…そうですね、加賀さん一緒に提督さんのところに行きませんか?」


加賀「?別にいいけれど…」



ー廊下ー



瑞鶴「そういえば加賀さん提督さんになにかもらったことありますか?」


加賀「…一回だけ」


瑞鶴「なにをもらったのですか?」


加賀「…結婚カッコカリの指輪」


瑞鶴「あれ?」


加賀「…ええ頂いたその日に轟沈してしまったから…ね…」



そう言うと加賀は悲しそうに指輪のはまっていない自分の左手の薬指を見た



瑞鶴「…ごめんなさい」


加賀「気にしなくていいわよ…私が勝手に話したようなものだし…」



ー執務室前ー



加賀「提督入っても宜しいでしょうか」


提督「あっああ…どうぞ」


加賀、瑞鶴「「失礼します」」


提督「ああ瑞鶴、キミも一緒なのか」


瑞鶴「はい、提督さん、欲しい物があるんですけど…」


提督「ああなんだ?現金での支給になってしまうがな」


瑞鶴「私と加賀さんの頭を撫でて下さい」


提督「…へっ?」


加賀「瑞鶴、提督は…」


瑞鶴「人と関わるのが嫌なんですよね?」


加賀「えっええ」


瑞鶴「でもそれは本当では無いんです…ねっ?提督さん」


提督「…何故そう思うんだい?」


瑞鶴「…あの日提督さんの話を聞いた後、微かな違和感があったんです…人と関わるのが嫌な人が私を抱きしめますかね?

朝食を持ってきてくれた加賀さんの声を聞いて嬉しそうな顔をしますかね?」


加賀「えっ?」


提督「ちっ違うこれは俺が寝ぼけてて…彼女を抱き枕と間違えてしまったんだ…彼女には本当にすまない事をしたと思ってる…」


加賀「そう…ですか…」


瑞鶴「…不思議に思って加賀さんに同じように理由を尋ねてみました…見事なまでに食い違ってました」


瑞鶴「なぜでしょうね…まあ理由が理由ですからね…それに提督さんも加賀さんのせいにしたくはなかった…と思うんです…」


瑞鶴「もし私の仮説が正しければ、こうやって他人を大事にしようとする人間が他人と関わるのが嫌だとは考えにくいんです…」


提督「………」


瑞鶴「加賀さんに指輪を渡したその日、加賀さんは轟沈しました…」


瑞鶴「当時の提督さんは、自分と親しくなってしまった人間は全員不幸になるって思い込んでしまったのではないですか?」


提督「………」


瑞鶴「その顔は図星ですね」


提督「…実際に不幸になってしまったからな…」


加賀「私は不幸だと感じたことはありません」


提督「…そうなのか?」


加賀「はい」


瑞鶴「当たり前ですよ…死にかけていた自分を命がけで助けてもらって…それを不幸だと感じる人はいないと思いますよ」


提督「………」


瑞鶴「それに…現に加賀さんは今も生きています」


瑞鶴「…提督さんもすでに気づいているんでしょう?すべては偶然起こってしまった出来事だって、ただの思い込みだって」


提督「………」


瑞鶴「さあ提督さん、わかったら加賀さんの頭を撫でて下さい」


提督「…しかし…」


瑞鶴「…提督さん加賀さんを助けたんですよね?」


提督「ああ」


瑞鶴「応急処置したんですよね?」


提督「ああそれがどうかしたのか?」


瑞鶴「人工呼吸したんですよね?これってキスですよね?」


提督「…忘れてた…」


加賀「………」



加賀の顔が耳の先まで赤くなる、どうやら加賀もその事をいまさら気づいたようだ



瑞鶴「もはやすべてが手遅れなんですよ、観念して下さい」


提督「…わかったよ」



そう言うと提督はおそるおそる加賀の頭を撫で初める、加賀もそれに応じてゆっくりと目を閉じる



提督「………」


加賀「………」


提督「…なあ加賀、いつも美味しい食事ありがとうな…」


加賀「…いえ、当然の事をしたまでです…」


提督「………」


加賀「………」



会話は途切れる…がそこには重苦しい空気はない



提督「…さて」


加賀「…あっ…」



撫でる手を止め、今度は瑞鶴と向き合う



提督「瑞鶴、次はキミだったかな?」


瑞鶴「いえ、私はいいのでもう一度加賀さんを撫でて下さい」


提督「………」


瑞鶴「約束ですよね?」


提督「…わかったよ………キミはひどい奴だ…」


瑞鶴「何か言いました?」


提督「何でもないよ…」



そう言うと提督は加賀の頭に手をのせなおす



提督「………」


加賀「………」



会話が無い…妙な…くすぐったい空間が広がっていた



瑞鶴「幸せそうですね提督さん」


提督「…ああ人の頭を撫でるのは久しぶりだからな」


瑞鶴「これで提督さんも心置き無く皆と接する事が出来ますね」



提督の表情が一瞬暗くなる



提督「…ああ,その事なんだが………俺は…提督を辞める事になっているんだ…」


瑞鶴「えっ何故ですか?」


提督「キミ達の練度も十分高くなった…仮に俺よりも無能な奴がキミ達の提督になったとしても轟沈する事は無い筈だからな…」


瑞鶴「じゃあ、提督さんはこれからはどうするんですか?」


提督「これからは一人,山奥で暮らすかな」


瑞鶴「寂しいですね…」


提督「…仕方ないさ」


加賀「…やです」


提督「?どうした加賀…って何故泣いて…」


加賀「嫌です!!ダメです!!」



普段は感情表現が苦手な加賀が泣いているのを、瑞鶴はもちろんのこと、提督も見たことが無かった



提督「…加賀?」


加賀「私が轟沈したあの日、出撃前にあなたは私に結婚カッコカリの指輪をくれましたよね…あなたからの初めての贈り物だったから…

嬉しくて…浮かれてて…それで敵の最後に放った魚雷を見落としたのです…一航戦失格ですよね…」


加賀「…でも!!…そんな私を…あなたは命がけで救ってくれた…だから…私もあなたのために…あなたの幸せのために生きようって…

誓ったんです!!…」


加賀「…だけど…私のせいで…あなたは…自分が他人を不幸にしてるって信じてしまった…本当は人と触れ合いたいのに…

自分を押し殺して…人と関わるのが嫌になってしまったと私達に嘘をついた…」


加賀「…そして…私はあなたの嘘を信じてしまった…苦しそうにしているあなたを…助ける事が出来なかった!!…」


加賀「…やっと…あなたの求めているものがわかったに…やっと…あなたを幸せに出来ると思ったのに…こんなのって…」


提督「…加賀…」


加賀「…あなたを幸せにするために…私は…」


提督「………」



しゃくりあげながらしゃべる加賀の一言一言が、提督の心に深く突き刺さる…



提督「……瑞鶴…すまないが加賀と二人きりにしてくれないか…」


瑞鶴「…はい…失礼しました…」



瑞鶴がいなくなり提督と加賀の二人きりになる



提督「…なあ加賀…俺が提督を辞める事はもう決まった事なんだ…だから…」


加賀「……はい…」


提督「……ごめんな…」


加賀「…謝らないで…下さい…これは…仕方の無い事…ですから…」


提督「………」



ただ、加賀のすすり泣く声が、殺風景な執務室に響く



提督「…俺は、加賀と一緒にいるだけで…幸せだった」



ポツリ、とつぶやく、別に話したいわけではない…ただ、加賀には話さなければならない気がした…



提督「…でも、同時に思っていたんだ…この幸せもいつか終わってしまうんだなって…」


提督「…怖くなっちまったんだ…大切な人が…俺の前からいなくなったら…」


提督「…大切であればあるほど…それを失った特…胸が引き裂かれるような…そんな思いをするんだ…」



話ながら涙がこぼれる…提督は、その涙をぬぐおうとせずに話し続ける



提督「…もう…つらい思いはしたくなかった…目の前からいなくなるんだったら…いっそのこと…」


提督「…だから…加賀と離れようと思った…提督をやめて、誰とも関わらないような…そんな生き方をしようって思ったんだ…」


提督「…だけど…いざやめようってなると…足がすくむんだ…離れたくないって思ってしまうんだ…だから今日まで提督を続けた…」


提督「…瑞鶴の言っていた事は正しい…でも少しだけ違っていたんだ…」


加賀「…提督…」


提督「なあ加賀…今さら気づいたんだ…逃げてばかりでも…結局皆が不幸になるってな」


加賀「………」


提督「加賀」


加賀「…はい…」


提督「俺は逃げないことにした…だから…もし、嫌じゃなかったら…俺について来てくれないか?」


加賀「…よろしいの…ですか?」


提督「ああ…お前と会えなくなるのは…つらい…」


加賀「…提督…」


提督「…最低な男ですまない…お前の気持ちを考えずに…お前を苦しめてしまった…」


加賀「…いえ…そんな…」


提督「なあ加賀」


加賀「…はい?…」


提督「これからもよろしく頼む」


加賀「…はい…こちらこそ…」




         -完ー


後書き

読んでいただきありがとうございました


このSSへの評価

5件評価されています


SS好きの名無しさんから
2021-03-03 00:00:50

SS好きの名無しさんから
2016-09-23 07:36:48

SS好きの名無しさんから
2016-09-03 10:45:29

SS好きの名無しさんから
2016-09-12 22:41:07

SS好きの名無しさんから
2015-05-05 12:10:30

このSSへの応援

5件応援されています


SS好きの名無しさんから
2021-03-03 00:00:51

2016-09-14 17:29:24

SS好きの名無しさんから
2016-09-03 10:45:37

SS好きの名無しさんから
2016-08-15 21:12:56

SS好きの名無しさんから
2015-05-05 12:10:33

このSSへのコメント

5件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2016-08-15 21:12:42 ID: A_nbmwnK

提督ダメコンか

2: たぬポン 2016-08-16 12:09:19 ID: YmxnqXF7

確かにそうですね笑

3: SS好きの名無しさん 2016-09-12 22:38:41 ID: s_LTzZKz

加賀の「私が轟沈したあの日、」って台詞の最後で「一航戦失格ですよね」が「一抗戦失格ですよね」になってますよ。

4: SS好きの名無しさん 2016-09-12 22:41:44 ID: s_LTzZKz

加賀の「私が轟沈したあの日、~」って台詞の最後で「一航戦失格ですよね」が「一抗戦失格ですよね」になってますよ。

5: たぬポン 2016-09-14 16:43:06 ID: jYN1kP4k

コメント&オススメありがとうございます

確かに一抗戦になってますね(;´∀`)
修正させていただきます(*^_^*)
ご指摘ありがとうございました(#^^#)


このSSへのオススメ

2件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2015-04-21 23:43:56 ID: kbegRR6X

へて

2: SS好きの名無しさん 2016-09-12 22:40:44 ID: s_LTzZKz

加賀さんのファンにおすすめします!


オススメ度を★で指定してください