2018-01-15 10:45:15 更新

概要

ふと、ヤンデレものを書きたいと想い立ったので、試しに書いてみました。
その時の勢い、かつ初挑戦なのでヤンデレか?と言いたくなるくらい荒いです。
相変わらずの、R-18G相当です。


前書き

悠久の戦役とは違う世界線です。
亀更新です。
流血描写バリバリで書きます。






白色の空間に、赤い閃光がほとばしる。


 彼と私、二人で築いて来たその空間を穢す、赤い色彩。

 その色彩と重なった甲高いオンナの声は、これから始める裁定の狼煙と成るには何ともつまらないものだった。



 「吹雪・・・・・。あなた、なんてことを・・・・」


 吹雪。

 私をそう呼んだオンナは、傍らに転がる一つの肉塊を抱き締めながら私を哀怒の眼差しで見上げてきた。


 「 ―――――ちゃんがいけないんだよ?私の司令官をたぶらかすから・・・・」


 名前を呼んだ言の葉に、何故か雑音の様なフィルターがかかる。


 ―――――ちゃん。


 ―――――チャン。


 ―― ―― -ちゃん?


 誰のことだろう?


 ここで、私を睨み付けるオンナの名前だろうか。

 それとも、彼女の抱きしめるあの汚らしい肉塊の名前だろうか。

 それとも。

 ソレとも

 ソレトモ・・・・・・・。


 まあ良いか。別に、アレが何であろうと。このオンナが誰であろうと私には関係のない事だ。


 そう想い、私は、手にした主砲を眼の前のオンナに向ける。

 何故か、何時も持っている愛砲ではなく劣等艦(むつきがた)が使う単装砲を持っていて、その砲もやけに血みどろだったが、別に構わない。


 ―――――そう、このオンナを壊すことが出来るのなら。


 そう、彼をたぶらかすモノは全て壊さなければならないのだから。


 「や、やめて・・・・!」


 さっきまで睨み付けていたオンナの顔が、瞬時に凍り付く。

 丸腰だから?

 それとも、死ぬのが怖い?


 それにしても、その崩れ切った泣き顔、なんというか、ソソル・・・・・。


 「・・・・ふふふっふふふ」


 「ヒィ・・・・・っ!!?」


 「ふふふふふううういういいういう・・・・!」


 芽生えた悪戯心は、私の単装砲をそのオンナの口中に捩じりこませた。


 ガチガチと歯茎が砲身叩く音と、必死で押し戻そうと舌を砲口に押し付ける感触が、何とも生々しい。


 「・・・・ふぃぎゅうびうう”ぅ”う”ぅぅううぅっ!!?・・・・んぶき!は、はべてえええぇ得ええ!!?」


 「きいひいいひひhっは”っはあh”hしゃははぁ”亜ぁ”ぁああ”亜ぁぁ――――っ!!!!」


ねじ込んだ砲身を上下左右に動かすたびに、オンナは、家畜のように汚らしい声を挙げる。


 ――――良い。


 その崩れ切った顔、そのブタのような声、そのいろいろな感情が交じり合った表情。


 ――――好い。


 ―――実に良い!


 ――――最高に良い!!


 もっとこいつで楽しみたいが、何時までもここで油を売る訳にはいかない。

 私には、重大かつ火急の案件があるのだから。


 そう、彼に―司令官につき纏う愚か者を誅殺するという、重大な使命があるのだ。


 「バイバイ。――――-ちゃん。タノシカッタヨ・・・・」


 ドン


 乾いた砲撃音が、空間に木霊する。


 飛び散る鮮血と脳髄液が顔面を覆いつくし、肉片がおろしたての制服に鬱陶しくこびりついて来たとき、私は自分が白い空間ではなく、ちゃんとした誰かの部屋にいる事を思い出した。


 「そっか・・・・。ここ、【私の部屋】だったけ」


 一人部屋と呼ぶには身に覚えのない小物と寝台が五つあるが、何故だろう。


 「まあ・・・・。いいか、別に」


 そう納得し、私は汚くなった制服を忌々し気に眺める。

 【壊した】オンナの残骸は壊されたことを抗議するかのように、べったりと自分の血反吐を私の制服に塗りたくっており、此れでは、おちおち外にも出られない。


 「わぁ・・・・。きったないなぁ・・・・」 


 生乾きに成った血と脳髄は、肌触りのよかった制服と彼の為に磨き上げた柔肌を薄汚い赤で穢しまくっていた。


 ――――参ったなぁ、これじゃあ司令官がびっくりしちゃうよぉ。


 「着替えよっかな・・・・」


 そう想い、私は着替えようと制服の裾に手を掛ける。


 ところが。


 「あれ?なに、なんなの・・・・!?」


 飛び散った血反吐は、いい感じに制服と私とを接着してしまったらしく、中々脱ぐことが出来ない。 


「あゝん、もう!!?急いでるのにィィい」


 焦る気持ちが余計に、脱衣を困難にさせ、困難になればなる程にイライラが募っていく。


 面倒臭い。

 何とも面倒くさい。

 甚だ面倒くさい。


 急がないとあのオンナが司令官にナニをするか分からないというのに。このまま穢れた躰で司令官に会うのは罷り成らないというのに。


 (・・・でも、あのヒトなら許してくれるかな・・・・?)


 ふと、そんな考えが私の頭をよぎる。


 そうだ、今までもそうだったではないか。

 あのヒトなら、この程度の小事、笑って許してくれるに違いない。


 (そうよ。私の司令官なら、寧ろよくやったと褒めてくるかもしれない・・・・!!)


 そうだった。

 この姿は、司令官を惑わす全ての災厄から彼を護るために行ったことで出来たモノ。

 ならば、これは正義の証。

 誇るべき、勲章なのだ。


 それを脱ぎ捨てるなどと、私は、何と愚かな事をしようとしたのか。


 「―――――ちゃんには、感謝しないといけないね」


 感謝の証として私の初めての唇でもあげようかと思い立った時、私は、彼女の頭が無くなっていることに気付き再び頭を抱えてしまった。


 (・・・そっか。この娘のあたま、壊しちゃったんだっけ)


 さて、どうしようか。

 お礼だけでは、物足りないし。かといって、口も頬も無いのでは、口づけのしようがない。

 かといって、このまま礼の一つもなく立ち去るのは気が引ける。


 「・・・・・・・そぅだ」


 彼女を、私の寝台に埋葬してあげることにしよう。

 だが、それをするにはこの【よくわからない物体】を退けなければならない。


 「あゝん、もう!!?・・・・邪魔臭いな。このカタマリ」


 抱きかかえた得体のしれない物体を引き剥がし、部屋の隅へと投げ捨てる。


 まったく、こんな気持ちの悪いモノを大事に抱えていたなんて。この娘はいったいどれだけ変態だったのだろう。


 「・・・ええっと。ここを、こうして。あと、ここを・・・・こう」


 寝台へと丁重に寝かせ、乱れた制服整える。

 両手をお腹の上で交差させたら、寒くないように布団を優しく掛けてあげる。

 最後に、無くなった頭に白いハンカチを被せた後、部屋に飾ってあった花瓶の花を布団の上に載せたら、一歩下がり合掌をする。


 「ありがとう。―――――ちゃん」


 万感の謝意を込めて、私は彼女の名前を呼んだ。

 相変わらず、名を呼ぶときに不自然な雑音が頭を横切るが、自分はきちんと名を呼んでいる筈なので、今は良しとしよう。


 ――――まあ、私としては司令官の名前を呼べればそれでよいのだが。


 「じゃあ、行ってくるね」


 そう言って、私は、部屋を後にする。


 弔ったはずの彼女が寂しげにこちらを見つめて来た気がしたので、私は、精いっぱいの笑顔で扉を閉めたのだった。






 ――・〇・――


《産声》



 『あぁぁあぁぁ・・・・吹雪・・・・。よかった・・・・本当に、良かった・・・・・』



 それが、私が彼から送られた最初の言葉だった。


 数十年の時を経て、艦娘と言う名のヒトガタを以て此岸に出現した『吹雪』という名のナニモノか。

 現世の記憶など何一つ持っていない私を、この鎮守府(せかい)の主とも言うべき人物は、万感の想いで抱きしめた。


 「あ・・・あの・・・・」


 状況を理解できず、唯々抱擁されるままの私に、彼は殆ど号泣しながら「いいんだ・・・」と何度も繰り返す。

 そして、失った時間を取り戻すかのように私の体温を、私が打つ鼓動を、私の放つ【吹雪】の臭いを感じ続けた。


 (どうして・・・?)


 それが、私が最初に抱いた感情だった。


 喜怒でもなければ哀楽でもない。

 そう、私がこの世界で最初に抱いた感情。それは、【疑】だった。


 どうして、貴方は私の名前を知っているの? 

 どうして、死に別れたような感情を私に向けるの?

 どうして、彼はこんなにも哭いているの?



 私は、『吹雪』は、貴方とは初対面の筈なのに・・・・・・。




――・〇・――





 正午を過ぎた頃、空腹を覚えた私は、昼食を摂る為とある店へと足を運んでいた。


 「あ・・・・、吹雪ちゃん。いらっしゃい」


 店の入り口に差し掛かった時、ちょうど店の暖簾越しにアホ毛と大きな赤色のリボンが印象的な割烹着姿の女性と鉢合わせる。


 「あ・・・こんにちは。・・・・間宮さん」


 記憶の引き出しから該当する名前を取り出し、私は、目の前の女性をそう呼称した。


 彼女の名は、給糧艦間宮。


 この鎮守府で甘味処『間宮』―定食もやっているので所謂レストランに近い―を切り盛りしている艦娘の一人だったと記憶している。


「・・・・はい、こんにちは。とりあえず、空いてる席に座ってくれる?」


 そう言って、間宮さんはにこりと笑い私に入店を促してくる。柔らかく人当たりの良い笑顔だが、今日はその笑顔に妙なよそよそしさを感じる。


 ――――おかしい。制服は、新しいものに替えて来たはずだけど。


 (・・・・ふん、ふん。まだ少し臭う、かな・・・?)


 流石にあの格好で出歩けば騒ぎになる上に、最悪没収される可能性がある。なので、不本意だが制服は着替えて来たし、シャワーも浴びたので今は返り血一つ付いていないはずだ。


 ちなみにだが、あの制服は大切な勲章なので、真空パックをして大事に隠してある。


 となると、臭っているのは躰の方だろうか。


 確かに、あの血反吐は髪にも付いていたし結構頑固だった。

 取り合えず、司令官に不快な思いはさせたくないので念入りに洗って来たのだが、どうやら、まだ完全には取れていないと見える。


 (やだなぁ・・・。これからご飯なのに・・・・)


 鎮守府随一の料理上手である間宮が振舞う料理の品々は、どれだけ舌の肥えた艦娘であろうと唸らせるだけの美味を誇る。

 無論、私もその美味にやられた一人だったが、今日の食事はあのオンナのせいで美味しくなくなるかもしれない。


 まったく、いったいどういう教育を受けて来たのかは知らないが、制服の件といい漂う悪臭の事と言い、つくづくあのオンナは私をイライラさせる。


 今度、育ての親でも調べ上げて文句を言いに行ってやろうか


 そんな事を考えつつ、店の中へと入った私は、店内が妙に閑散としていることに気付いた。


 「あれ・・・?今日は随分とすいてる」


 甘味処間宮は、その美味故に何時も満席状態であり、昼食時ともなれば文字通り争奪戦と成る。

 ところが、今日のソレはもぬけの殻とまではいかないが随分と閑散としていた。


 (たしか、大規模作戦は少し前に終わったはずだけど。なんかあったけ・・・・?)


 間宮がこれだけ閑散としているのは、別に今日に限ったことでは無い。そう、例えば大本営からの勅命である深海棲艦に大規模攻勢を加えている時だ。


 この勅命は、鎮守府に存在する全戦力を以て事に当たる為、留守を預かる少数の艦娘以外は全て出払うことになる。

 そうなれば、当然間宮も自然と閑散とすることになるが、その作戦は、数日前に終えたばかりの筈だ。


 ――――それとも、何か火急の作戦でも発令されたのだろうか。


 だとしたら、どうして私の耳に入っていないのだろう。


 (まあ・・・。いいか)


 おかげで間宮の忙しなく食事が出来るのだから、いまは良しとしよう。

 後で、司令官にでも確認を取ればよい。


 そう判断し、私は適当に席を物色を始める。


 間宮の席は、六人掛けの席を複縦陣の様に配しており、よほどの幸運でもなければ基本は相席となる。

 そして、相席ともなれば必ずと言ってよほど雑談交じりの食事となるから、静かに食事をしたい私としては、この状況はまさに僥倖と呼ぶべきだろう。


 「・・・ここ、いいかな?」


 店の奥、入り口から最も遠い六人掛けの席を選び、私は先客に相席の許可を求める。

 特に注文もせず、出されたお冷をただぼんやりと眺めていたその少女は、私の声を聴くなりびくりと体を震わせた。


 「あ・・・ふぶ、き、・・・ちゃん・・・・?」


 三枚の花弁をあしらった髪飾りと李色の長髪。緑のセーラー服に紺のカーディガンを羽織った私と同い年くらいの少女は、顔を見るなりまるでお化けにでもあったかのような表情でこちらを見つめてきた。


 ――――なんかこの娘、すっごく失礼だな・・・・。


 別に私がこの娘に何かをした記憶もないのだが、いきなりそういう顔をされるのはなんとなく癪に障る。

 まあ、ひょっとしたらた他人の空似という事かもしれないし、気が向いたら雑談も兼ねてこの娘に聞いてみるとしよう。


 そう、判断しこの娘と斜向かいに座った所で、間宮さんがお冷を持ってきた。


 「えっと・・・。吹雪ちゃん?」


 「間宮さん。カレーライス一つ下さい!」


 お冷を持って来た間宮さんに、私は、思わず叩きつけるように注文してしまった。


 理由としては、斜向かいに座るこの娘の態度が妙に気に入らなかったからだった。


 先程から、まるで主人の折檻に怯える憐れな愛玩動物のように、小さく縮こまり、眼を此方に会わせる事無く俯いたまま口を真一文字に引き結んでいる。


 耳を済ませれば「にゃしい~」とでも聞こえてきそうなその出で立ちは、飼い猫としては及第点かもしれない。

 だが、私は食事をしに来たのであって、この愛玩動物(むすめ)と遊ぶ気は毛頭ないのだ。


 そう、この娘が私の逆鱗にこれ以上触れない限りは・・・・・・。


 「あ、あのね吹雪ちゃん。その――――」


 「・・・私は、構いません」


 気まずそうに言ってきた間宮さんの言葉を遮る様にして、向かいの娘はしゃあしゃあと言い放った。


 先ほどまで縮こまっていというのに、いまは随分と威勢が良い。


 ――――本当に、一々私に失礼な態度を取る娘だなぁ。


 娘の態度にイライラを募らせていた時、ふと胸元に光る黄色い三日月のバッジが映り込む。


 (あれは、睦月型を示すバッジだ・・・・)


 睦月型駆逐艦。


 吹雪型よりも前に建造された主力駆逐艦だが、その低能力さ故に専ら遠征や敵艦の威力偵察に使われている二軍の艦娘だ。


 だとすると、容姿的にこの娘は、二番艦の如月だろうか。


 確か、一番艦である睦月はショートヘアで、二番艦は変わった髪飾りをしていたと記憶しているから、恐らく目の前の娘がその二番艦だろう。


 なんにしても、私や間宮さんと言った目上の艦娘相手に随分と舐めた態度を取ってくれたものだ。


 ――――劣等艦のくせに。


 「こんにちは。ええっと・・・。どなただったかしら?」


 「は・・・?」


 おもむろに顔をあげ、向かいの娘はいきなりそう言い放った。

 先ほどの怯えた感じは成りを潜め、人差し指を口に当て挑発するように此方を見ている。


 「貴方のお名前。聞いても良いかしら?」


 なん、だって・・・・?


 さっき私の顔を見て『吹雪』と呼んだばかりだというのに、この娘はどこまで私をこけにする気なのか。


 「貴方、さっき私を――――――と呼んだばかりでしょう」


 突然、私の聴覚にあの時の雑音が響き渡る。

 そのせいか、私は自分の名前である筈の『吹雪』という言葉を聞くことが出来なかった。


 いいや、まって。私の名前、本当に吹雪だったけ?


 「・・・吹雪ちゃん?」


 如月と名乗った娘が不思議そうにこちらを見つめてくる。


 彼女は、私の事を『吹雪』と呼んだ。

 でも、私は今までこの娘に自分の名前を名乗ったことがあっただろうか。


 「・・・・ねえ。貴方、どうして私を吹雪と呼ぶの?」


 私の記憶している限り、私はこの娘に自分の名前を名乗ったことは無い。


 いいや、私はこれまで誰にも―それこそ司令官にだって名乗ったことは無いはずだ。

 なのに、どうして皆は私の事を『吹雪』と呼ぶのだろう。


 「え?・・・・だって、貴方は―――――」


 キョトンとした表情浮かべたの一瞬、如月と名乗った娘は私を沈痛な表情で見つめてくる。

 「しまった」とでも言いたげな顔つきだったが、見やられる私には最早その顔さえも映らなかった。


 ――――私は、だれ?


 そんな言の葉が私の頭を千回と駆け巡る。


 ――――いいや、違う。私は『吹雪』ではない。


 つぎは、否定の言の葉が万回と頭を駆け巡ったが、一刻の間をおかず今度は疑問の言の葉が頭を駆け巡った。


 だが、その疑問もすぐに否定の言の葉によって消されていく。


 私は吹雪?


 ――――違う。


 否定。


 私は吹雪?


 ――――違う、私は吹雪ではない。


 否定。


 私は吹雪?


 ――――ちがう、私は吹雪ではない。


 否定。


 吹雪ではない。


 おしえて―――――!


  吹雪ではない。

――――誰か!

  ふぶきではない。

―――――だれかおしえて!

  ふぶきデハナイ。

――――ダレカオシエテ!!

  フブキデハナイ。



 「・・・・ねえ、誰か教えて!!」


 頭の中で千万回と繰り広げられる問答に、私は思わず頭を掻き抱き声を荒げる。


 ――――誰だ。


 ――――私は、誰なんだ。


 「落ち着いて・・・!?貴方の名前は吹雪なのよ――――」


 「ちがうっ!私は吹雪じゃない!!?」


 応答してくれた如月という娘の言の葉を遮る様にして、私は更に声を荒げる。

 視覚がぐにゃりと狂い始め、頬を伝って来た滴の色が赤なのか白なのか、暖かいのか冷たいのかさえも、分からなくなっていく。


 だが、唯一つだけ、はっきりしている事があった。


 そうだ、私は吹雪ではない。

 だって、私は一度も貴方に艦名(なまえ)を名乗ったことなど無いのだ。

 なら、私は『吹雪』という名前では無い、はずだ。


 ―――――なら、私は一体誰だ。


 ――――誰なんだ。


 「私は、吹雪じゃない。私はふぶきじゃないわたしはフブキじゃないワタシハフブキジャナイ私ハふぶきじゃないわたしはフブキジャナイ私は吹雪ジャナイワタシハフブキジャナイ・・・・・・!!!!」


 最早、向かいの娘の声も怒声に反応した他の艦娘の声も顔も判らない程に、私は深淵へと墜ちて行く。


 私は、誰?

 私の、名前は何?

 私は、ナニモノで、何をする為にここに居るの?


 私は、わたしは、ワタシハ・・・・・・・。



 ――――ワタシハ、イッタイ、ダレナンダ・・・・・・?







――・〇・――


《狂愛》




 『愛しているよ、吹雪・・・・。僕が愛しているのは、君だけだ・・・・』



 ギシギシと軋む寝台の上で、彼は、この日何度目かの愛言を囁く。


 鎮守府の主たる彼の寵愛を受けてからすでに数週間。私は、唯々ひたすらに彼と連日連夜躰を重ねる日々を送った。


 彼と口づけを交わし。

 舌を絡め。

 足を開き。

 胸を揉み吸われ。

 彼が吐き出す性欲を、ひたすらに受け止める。


 彼とのまぐわいは一度や二度で終わることはなく、それこそ絶倫という言の葉が最適当と思えるくらいの性欲で、私は、昼夜所かまわず彼に抱かれ続けた。


 艦娘とは、提督という主の為に存在し、提督という主の為に生死するイキモノである。


 故に、その主たる彼とのまぐわいは承諾する以外の選択肢を、艦娘である私は知る事も無かった。

 知る必要も無かった。


 でも、唯一つ。たった一つだけ、私は彼に問いたいことがあった。



 ――――司令官。『吹雪(わたし)』は、何時になったら貴方に着任のご挨拶が出来るのでしょうか?




――・〇・――







後書き

誤字脱字は常時修正して行きます。
線で挟んであるサブタイトル付きの話は、吹雪がどうしてこう成ったのかを綴ったサイドストーリー的なものとなる予定です。


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2018-01-07 02:33:03

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