2018-01-14 04:00:07 更新

概要

前々作 : 提督「いつまで続くかな、この幸福は」
扶桑「何があっても、私がそばにいます!」

前作 : 提督「今度は3人で。な?」扶桑「3人?」 山城「わ、私もですか!?」

の続きとなります。

過去の雪辱を晴らした提督は、リンガ泊地の艦娘たちと平和な時間を過ごしていく。
時にはイチャイチャ、時にはざわざわ。時には平和に、時には戦い。時には裏での暗躍と、誰かの思惑とちょっぴりの幸福。時々不幸な出来事も。

そんなよくわからない日常です。


前書き

この物語は、艦隊これくしょん ー艦これー の二次創作であり、実在する団体、地名、組織とは一切関係ありません。

オリキャラ、拙い文章・表現、キャラ崩壊、性的描写あり



前作は下記URLを参照。


鳳翔「私たちは、傭兵かぶれのごろつきですから………」
http://sstokosokuho.com/ss/read/7124


提督「さあ、楽しい楽しい報復劇だ」
扶桑「終わらせましょう。私たちの過去を………」

http://sstokosokuho.com/ss/read/7916


提督「いつまで続くかな、この幸福は」
扶桑「何があっても、私がそばにいます!」

http://sstokosokuho.com/ss/read/8292

提督「今度は3人で。な?」扶桑「3人?」 山城「わ、私もですか!?」

http://sstokosokuho.com/ss/read/9113



・・・・・・



それから約2週間後。横須賀から複数の艦娘が着任となり、川内、陽炎、そして吹雪が彼女たちの教導役となっている。


川内は満潮と荒潮を。陽炎は黒潮と早霜を。吹雪は秋月と朝潮を受け持つことになった。


1番手がかかりそうな満潮は他の2人には厳しいだろうと考えた川内の判断だ。黒潮も姉である陽炎が付いた方が変に気負わなくても済む。


また担当を決める際には吹雪がそわそわと落ち着かなかったので、その中でも比較的真面目な朝潮、秋月を任せた方が良いだろうという2人なりの優しさだ。


そして当日。リンガ泊地の全艦娘が、新任の者たちを迎えようと軍港で待機していた。数日前にリンガ泊地を出港し、新任の者たちを迎えにいくように命じられてた川内、陽炎、吹雪の三名は、彼女たちを護衛するように航行し、ゆっくりと着港したのだ。



吹雪「司令官! ご命令通りにお連れしました!」


提督「ご苦労。では到着早々で悪いが、皆で執務室に向かってくれ。私も後で行く」




吹雪たちは提督の言葉に従い、全員を執務室へと案内する。新しく配属された秋月たちは、今までとは違った気候、施設に戸惑いを感じているようだ。


秋月「あの………」


吹雪「はい? どうかしましたか?」


秋月「あの………ここの司令は………」


吹雪「あー………うん、少し強面だけど、優しい人だから大丈夫ですよ」


秋月「いえ、そうじゃなくて………気のせいかもしれないんですけど、何処かで会ったことがあるような………?」


吹雪「そうなんですか? あー、もしかしたら元帥さんに似てるからじゃないですか?」


秋月「そうです!! なんか似てる気がするんですけどーー」


吹雪「あの2人は兄弟ですから。私も知ったのはほんの少し前でしたけど」


秋月「えっ!? そうなんですか!?」


川内「なんだ、知らなかったの?」



秋月だけでなく、それを聞いていた周りの艦娘も首を縦に振っていた。驚きを隠せない様子だった。



朝潮「朝潮も初耳です!」


荒潮「まあ〜、あの人のことだし〜? 何か知られたくないことでもあるのかもね〜? あとは恥ずかしがってるだけとか〜?」


黒潮「なんや、特別扱いされるのが嫌いなんやろか?」


早霜「ふふっ。随分と慎重な方なんですね、お二人とも。まるで私たちを信用しないみたい……」


満潮「ま、別に信用してもらわなくても構わないけど」


吹雪「あ、あはは………」 (うわぁ……大変そうだなぁ、今回の新人さん)


陽炎「黒潮。あまり変に探ると痛い目見るからやめておきなさいよー」


黒潮「もちろんやってー♪ お姉ちゃーん♪」


陽炎「お姉ちゃんはやめなさいよ!」


川内「ぶふっ。顔真っ赤にして照れてやんのー」ケラケラ


陽炎「何がおかしいわけ? アンタ」カチン


川内「何? やる気?」ニヤッ


吹雪「ちょっと待ってくださいよ2人とも!! こんなところで喧嘩はダメですよー!!」


陽炎「吹雪、先にみんな連れて執務室に行ってくれる? 無駄口の減らない夜戦馬鹿から取り柄無くして寝坊させてやらないといけないから」


川内「それじゃあ私もお願いするわ。ちょっと生意気な駆逐艦の口を塞いでからそっち行くからさ」


吹雪「あっ、ちょっと2人とも!! 」



2人はそのまま他の皆を置いて行ってしまい、仕方なく吹雪が皆を連れて行った。


暫くすると、道中で爆発音が外から聞こえたことから、どうやら艤装込みで本気の喧嘩に発展しているようだ。




秋月「あの………止めに行かなくてもいいんですか?」


吹雪「えっ!? あー………うん。まあ何時ものことだし………大丈夫ですよ………多分」


一同 (もしかして………面倒なとこに配属しちゃった?)



執務室に全員を通してから数分後、提督が扶桑と山城、翔鶴と瑞鶴を伴って執務室へとやって来た。


吹雪が気をつけの号令をとるが、提督は堅苦しいのは御免だと、それを制止する。



提督「皆、楽にしてくれて構わない。さて、遠路はるばるここリンガ泊地に配属になった君たちには、ここで生活していくのに様々なことを覚えて行かなくてはならない」


提督「そこで、君たちには2人組を作って貰う。そして作られた組に1人の教導役を付ける。既にそれはこちらで決めているから、ここで伝えさせてもらう」


提督「まず始めに、朝潮と秋月。お前たちは吹雪が付く。彼女の知識は豊富だ。色々と教わってみるといいだろう」


秋月・朝潮「はい! よろしくお願いします!!」


吹雪「えっ!? あ、はい。よろしくお願いします」


提督「そして満潮と荒潮。お前たちには川内を。黒潮と早霜には陽炎を付ける。それで………あの2人はどこ行った?」


吹雪「あ、あはは……それは……そのぉ………」


鳳翔「提督。外で暴れていたので取り押さえて来ました」


陽炎「痛い痛い痛いって鳳翔さん!! 耳ちぎれるから!!」


川内「お願いだから……マフラーを引っ張るのはやめてよ……首、閉まるから………」


提督「お前たちは………これから新人を教育する立場にありながら何勝手なことをやってんだ?」


陽炎・川内「こいつが手をだすのが悪いのよ!!」


鳳翔「黙りなさい!!」グイッ


陽炎「痛タタタタタ!!!!」


鳳翔「それでは、私は下がらせていただきますね」


提督「わかった。そのでかい荷物2つは置いて行ってくれ」


鳳翔「はい、わかりました」パッ


川内「ゲホッ!! ゲホッゲホッ!!! し、死ぬかとおもった………」ゼエゼエ


提督「瑞鶴ー、例のアレ持ってこい」


瑞鶴「はいはい」


提督「スロットだぞー!!」


瑞鶴「モチのロンで分かってるー!」




あぁ、またあれが始まるのか。ここにいる殆どが察した。新しく入って来た者たちは一様にポカンとしているが、緊張がほぐれて来ているのが分かる。



瑞鶴「ここでいい?」


提督「助かった。さて、ここリンガ泊地では大した決まりはない。仲間を裏切るような真似をしたりすれば解体や雷撃処分で済むが、日常的な問題はこれらで解決していく」


秋月「あの………これは?」


提督「おもちゃのスロットだよ。リンガ泊地は今では日本人街やらで発展しているが、昔は特に何もなかったのでな。罪を起こした奴に粛清を与えるためにこれで罰を決めていたんだ」


提督「要するに、今はそれほど必要はないが以前からの名残りという奴だ」



何とももうすぐ50に手の届く男から出る言葉ではないとだろうと秋月たちは思っているが、これは意外と艦娘たちの間でも人気なのだ。


やられた方としてはもはや公開処刑と変わりなく、心に傷を負うが、見ている方としてはそうでもない。むしろ他人の不幸な目にあっている姿は笑いの種だ。


つまり、娯楽の少ない彼らにとっては一種のバラエティ感覚なのだ。ドッキリ企画のような楽しみがある。



提督「試しにやってみようか。ここにボタンが2つあるな? 満潮と荒潮、一先ず好きなタイミングで止めてみろ」


満潮「はぁ!? そんなくだらないことを誰がーー」


提督「まあまあ、騙されたと思ってやってみな」


荒潮「いいじゃな〜い。軽いレクリエーションよ〜」ポチッ


満潮「………はい、これでいい?」ポチッ


提督「1と8だな。この数字を元に罰を決める。この紙に対応する数字を照らし合わせて、書いてある中身を実行してもらうことになる。因みに中身は月一で変更だ」


黒潮「それは強制なん?」


提督「無論。拒否した場合はその罪を更に重くさせることもあれば、まあ気分によっては連帯責任で他の姉妹たちを巻き込ませることもあるぞ?」


黒潮「うわ〜………えらいこっちやなぁ………」


扶桑「あら? 陽炎も受けるのだから、あなたも下手すれば巻き添えを食らうのよ?」


黒潮「…………えっ!?」


提督「川内の罰は………これだ!」





1と8


一日 の間 砂糖水を常備する






川内「あれ? 意外と楽そう?」


瑞鶴「じゃあはい。これが砂糖水ね。既に蟻が集って砂糖水に溺れているけど、まあ気にしたら負けだよ♪」


川内「はぁ!? なんでそんなすぐ作った砂糖水に蟻が群がるわけ!?」


満潮「えっ………普通にやばくないあれ?」


瑞鶴「あっ、手が滑った」ツルッ



バッシャ-ン



川内「うわあぁぁぁぁ!??!!!? かかったあぁぁ!!! 頭から砂糖水かかったんだけどぉぉぉぉ!!!!」


提督「うっ………匂いが………」


瑞鶴「頑張って1kg分を溶かしちゃった♪ てへっ☆」


川内「はあぁぁぁ!?! バッカじゃないのあんたぁぁぁぁ!!!!」




カサカサカサカサカサ………





川内「うわあぁ!! なんか背中這ってる!!! やめてやめてキモいキモいキモい!!!!」ジタバタ



提督 (蟻だな)


扶桑 (蟻ですね)


吹雪 (あれだけ集ってたから当たり前だけど、川内さん砂糖の塊みたいに甘い匂いが……)



川内「うわっ! 馬鹿こっち来んなあぁぁぁ!!!!」ダッ



そう言って逃げ回る川内の周りには、蝶が集まって来ている。かなり大型のものも飛んで来た。


早霜「川内さんが気の毒ね………。可哀想だけどなんか笑ってしまう………ふふっ」


満潮「常備って………そういうことなの………? ぷっ………くくく」フルフル




既に殆どの艦娘が川内の姿を面白がっている。静かだった早霜や、あれだけつっけんどんだった満潮も笑っている。


川内にとっては気の毒だが、場の雰囲気は明るくなっている。それは間違いない。



提督「とまぁ、恐ろしい罰が待っているからあまり問題を起こさないでくれ。やる方としても準備が面倒なんだ」


陽炎「面倒ならやめましょうよ! ねぇ! 話せばわかるでしょ? 止めようよこんなこと!」


川内「うわぁぁぁ!! ちょっと取ってよこれぇぇぇ!!」



提督「さて、次は陽炎の番だ。スロットを止めるのは早霜と黒潮だな」



秋月 (川内さんはスルーなんですね……)



早霜「陽炎さんには申し訳ないけれど………」ポチッ


黒潮「頼むから軽いやつにしたってやぁ………うちが巻き込まれませんように………」ポチッ



提督「9と9のゾロ目か!! これは珍しいな。運がいいぞ陽炎は!」


陽炎「嘘つくの止めてよ! 絶対悪いことが起きるに決まってるわ!!!」


提督「ゾロ目は扱いが別だからな。9のゾロ目はこれだ!!」







9のゾロ目


雷撃処分(仮)





提督「あー………これは川内か陽炎が執行役だったな……」


陽炎「よし、これで助かった」ボソッ


提督「後で北上にやらせておこう。新しい魚雷のテストを頼みたいといえば喜んで受けるだろう。実際新しい装備も入って来たからな」


陽炎「……………」


秋月「北上さんって、確か魚雷に関しては右に出る者がいないと聞いたことがありますけど………」


吹雪「実際のところ、ここにいる艦娘の中で魚雷にかけては北上さんには誰も勝てませんよ。以前深海棲艦と戦った時も、敵の周りをサイドキックで旋回して魚雷で囲んでましたから」


朝潮「何をどうすればそんな攻撃を思いつくんですか!?」



提督「まあお前にも後で装備させる。威力を自分の体でもって確かめられるなら良いだろう?」


陽炎「何よその「自分の作った薬品を自分に投薬する」みたいな!? 自分の研究成果を自分で試そうみたいな変な心構えは何なの!?」


朝潮「それって………普通じゃないですか?」


秋月「自身を被験体にするのはよくある事ですよね?」


提督「そうだな。一応は理にかなった考え方だ。まあ運が悪かったと諦めな」


陽炎「何よもぉー!! 踏んだり蹴ったりじゃない!!!」


川内「うわぁぁぁ!! 取ってよぉー!! 取ってよコレェー!!!」


瑞鶴「川内うるさい!!」


秋月 (元帥閣下からは歴戦の猛者揃いって聞いていたからどんな人たちかと思ったら………)


吹雪「幻滅しました?」


秋月「えっ!? あっ、その……」


吹雪「秋月ちゃん、考えが顔に出やすいみたいで。期待を裏切られたような顔をしていたから……」


秋月「ご、ごめんなさい。そう思いました………でも、そんな悪い意味じゃなくて、正直のところ厳しい人たちばかりだと思ってましたから………」


吹雪「厳しい………うーん。まあ時には厳しい時もありますけど、なんやかんやで楽しい集まりですよ」


北上「んじゃ、これ借りてもいいの?」


提督「もちろん。魚雷の数は沢山あるし、的も丈夫だ。思う存分使ってやってくれ」


満潮「はっ? いつの間に!?」


北上「んー、今さっき? じゃあ借りてくよ〜」


陽炎「ちょ、離してよ!! 離せって!! 離してえぇぇぇぇぇ…………」



一同「」ポカ-ン



提督「ああ見えても、川内と陽炎はここリンガ泊地では百戦錬磨の艦娘だ。2人には数多くのことを学ぶ機会があることだろう」


提督「君たちがここに来るまでにどのような過ごし方をしていたかについては、こちらは余り言及しない」


提督「ただ、話した方が気が楽になると言うのならこちらは黙って耳を傾ける。私でなくても川内や陽炎や吹雪。他の艦娘でも良い。口止めさせても構わない」


提督「………そのような話をこちらがするのは訳があるからだ。もともと私たちはろくでなしの集まりだった。誰もが凄惨な過去を送り、そういった者たちの集いだったからだ」


提督「そういった連中だらけの場所だ。せめて仲間内では気を楽にしたいだろう? ………っと、少し喋りすぎたか。吹雪、全員をそれぞれの部屋に送ってくれ」


吹雪「わかりました!」


提督「今日は伊良湖も停泊している。新人が来た時には決まって大盤振る舞いをするのがうちの決まりでね。今日は豪華にパーティを開かせてもらう。楽しみにしていてくれ」


一同「ありがとうございます!」


提督「では解散だ。吹雪、頼んだぞ」


吹雪「はい! みなさん、こっちです」




吹雪の先導でぞろぞろと部屋を出て行く新人たち。さっきまで騒いでいた川内が大人しくなったことに気づくと、ショックで床に倒れ込んでいたのだ。




翔鶴「川内さん? 大丈夫?」


川内「アァ-………モォ……イヤダ」 ピクピク


提督「川内、泡吹いてないで早く連中の所に行ってこい。瑞鶴、無理やりで良いから叩き起こせ。それで連中を追わせろ」


瑞鶴「人使いの荒いことで。ほら川内! さっさと追っかけて」ペシッ ペシッ


川内「はっ! なになに!? 敵襲!? 」


瑞鶴「新人さんのとこに向かって。吹雪がいま出てった所だから追いつける。ほら早く!!」


川内「あっ、提督! 後で覚えといてよね。絶対寝首掻いてやるから!」バタンッ



提督「わかった。楽しみに待ってるよ。さて、お前たちも下がって良いぞ。こっちも書類が片付いたら食堂でパーティの仕込みを済ませなくてはな。お前たちも16時までには食堂に来い。少しは手伝って貰うからな?」


扶桑「わかりました。それでは私も失礼します」



提督に一礼して部屋を出る一行。この4人が並んで歩いていることは珍しい光景だ。出撃準備か、或いは招集時の時だ。



翔鶴「扶桑さん。今回は?」


扶桑「そうねぇ………どうしようかしら?」



とりあえず、鳳翔と合流しようと考えた一行は彼女の部屋へと向かった。この中で、今月はルームメイトが居ないのは彼女だけだからだ。




鳳翔「お待ちしていました。どうぞ、入ってください」


扶桑「…………ここに来るまでに、2人から意見が出ました。2人とも、もう一度私たちにその意見を聞かせて?」


山城「はい、姉様。あくまで私個人の意見ですが、今回も招集をかけるべきかと。川内と陽炎がこちらに来れない以上、出来るだけ先手を打ったほうが良いと私は思います」


瑞鶴「私はそうは思わないわ。むしろ2人にも招集をかけて、川内と陽炎から話を聞いて対策をとるべきよ。新人の懐に入り込めるのはあの2人だけだからね」


鳳翔「なるほど。それで?」


扶桑「山城の考えにも一理あるわ。でもまだ早すぎる気もします。瑞鶴さんの意見も尤もですが、それでは………」


鳳翔「………そういうことですか。瑞鶴さんの考えだと、もう1人を呼ばないとならない。そうですね?」



扶桑は静かに首を縦に振る。その反応を見て、鳳翔は再び思案する。



鳳翔「前提として、今回も招集をかけることは既に決定済みなのですか?」


扶桑「………それすらも迷っています。海軍に所属すると提督が決めた以上、私たちのこの話し合いすら無用になるのではないかと」


翔鶴「確かにそうですね。以前と状況は変わって、私たちの敵となる存在もいません。………ただ、海軍の中には私たちを敵対視する勢力はまだ残っています。現に先日も………」


瑞鶴「確かにね。そんな連中が居たんじゃ、集めた方が良いんじゃない?この前だってかなり危なかったし。やっぱ今まで通りにするべきよ」


山城「私も、今まで通りにした方が良いと思います」


鳳翔「…………扶桑さん、貴女はどのように考えて?」


扶桑「………この際、また招集をかけるなら新しく誰かを加えても良いかもしれませんね。私たちの見えないところを見渡せる目を持つ誰かを」


鳳翔「その誰かというのは、皆さんの中では決まっていると捉えてよろしいですね?」


山城「………実際、何度もあの子に助けられました」


翔鶴「提督の命も救ってくれましたし」


扶桑「私たちの悲願も、彼女の助けがなければ果たせなかったかもしれません」


瑞鶴「問題は、誰が打ち明けるかってことよね? 私はパス。余り仲良くないし」


扶桑「それは問題ないわ。私が直接あの子に話します」


鳳翔「それでは………」


扶桑「ええ。あの子も私たちの仲間に加えましょう。そうするなら、皆の前で加えた方が良いでしょう?」


翔鶴「そうですね。異論はありません」


扶桑「みなさんも、それでよろしいですね?」



その言葉に全員が頷いた。全員が納得し、ひとまずこの場は開かれることとなった。




・・・・・




ところ変わって演習場。吹雪と秋月、朝潮の3人はこの場所で行われていた演習を見学することになった。



例の「雷撃処分 (仮)」 をなんとか逃れようと、あれから陽炎は提督に談判を繰り返したらしい。



それを提督が折れて「せっかくだから自分たちの演習風景を見てもらえ」と、今に至るのだ。



また、陽炎が談判をしたことを耳にした川内も提督に押しかけ、せめてシャワーを浴びるくらいは許可してもらおうとしたのだ。


そうして提督の計らいで、川内と陽炎で艦隊を組んで演習し、勝った方の言い分を聞くという取り決めがなされた。



見学は強制ではないとのことで、見学者は少ない。もっとも秋月ら新任の者達はここに早く馴染めるようにと集まって来ている。



またどういう気まぐれか、提督も扶桑と山城、鳳翔を連れて演習の見学をしている。



提督「それではこれより、川内率いる艦隊と陽炎率いる艦隊の対抗演習を開始する。各々、思い切り撃ち合え」


提督「なお本演習は、模擬戦を意識したものであり、弾薬は演習用のものに変えてある。勝敗は簡単だ。1時間以内に多く残っていた方が勝ちとする。準備は出来ているか!!」



一同「はい!!」


提督「それでは対抗演習、始め!!!」



川内が率いる第3艦隊は、北上と由良の軽巡3隻。瑞鳳と敷波、暁を含めたバランスの良い艦隊だ。


反対に陽炎匹いる第4艦隊は、夕立、Верный、山雲の駆逐艦4隻と、阿武隈、名取の軽巡2隻を加えた艦隊だ。




提督の合図と共に先手を打ったのは川内の艦隊だ。瑞鳳が艦載機を発艦させて、陽炎方に空爆を行う。


すると山雲が対空砲を用いて、艦載機を墜としていく。名取も続いて対空攻撃を行ったため、陽炎方に届いた瑞鳳の艦載機は僅か数機だ。そのため、空爆による攻撃は当たることはなかった。


次に仕掛けたのは北上と阿武隈だった。お互いが魚雷を発射して、両艦隊に損害を与えようと試みる。


手数では北上に劣る阿武隈だが、正確に敵方に当たるように発射された魚雷だ。川内ら一人一人の動きを予測して放たれた魚雷は、一直線に彼女たちに向かっていく。



すると、瑞鳳がすかさず艦載機を再び発艦させる。阿武隈が撃った魚雷を水面から機銃で爆破しようという魂胆だ。



丁字不利の形に艦載機を持って行き、左右に進んでいく魚雷を爆破しようとする。すると、水面に大きな水しぶきが2つほど上がった。



由良「阿武隈の魚雷は合計で6つ。2つ壊したから、あと4つですね」


瑞鳳「ごめーん! 私と由良さんのは何とか防げたけど、後の4つは自力でどうにかしてー!!」


北上「いや、普通自分は後で周りをどうにかするべきじゃ………」


川内「話は後! 艦隊、速度落として反転! 最大戦速で連中の土手っ腹に突っ込むよ!!」


敷波「りょーかい。って……うわぁぁぁ!!」


瑞鳳「敷波ちゃん!?」



突如、敷波の近くで爆発が起きた。阿武隈の魚雷が川内たちの想定より早く到達したのだ。瑞鳳が安否を確認しようと、敷波に近づいた。



川内「やばいね。思ったより厳しいよ……見捨てるわけにもいかないし………」


由良「みんな、急いで下がって! …………そこっ!!」ブンッ



すると、由良が先頭に出て水中に爆雷を投下した。直撃を受けるよりはマシだろうと、爆雷をデコイに使って魚雷を堕とそうという作戦だ。



投下した爆雷の1つが爆発し、大きな水しぶきをあげた。それに呼応するようにあちこちで爆発が起こる。


先ほど爆発した爆雷の誘爆で、全ての魚雷と爆雷が爆発した。先制雷撃で敷波が大破。由良が爆雷の誘爆を受けて小破という結果になった。



一方、陽炎方は北上の魚雷をどうにか避けようとする。駆逐艦と軽巡という比較的速力のあるもの達が集まった艦隊なので、速力頼みで避けようとする。


すると、最後尾に控えていた名取に魚雷が当たった。何とか中破止まりで済んだが、軽巡に当たったことで艦隊の火力が衰えてしまった。



提督「状況は?」


扶桑「川内さんの艦隊は、敷波さんが大破。由良さんが小破。陽炎さんの方は名取さんが中破です」


朝潮「す、すごい………!」


秋月「こんなに迫力ある戦いを見たのは久しぶりかもしれません!!」


鳳翔「お互いに加減が出来るほどの理性が残っていられればいいのですが………」


山城「多分無理でしょうね。満足するまでやりあうと思うわ」


吹雪「司令官………」


提督「なんだ? お前も参加したかったか?」


吹雪「いえ、そういうわけでは………。怪我人が出たりしないですよね?」


提督「それくらいはあいつらも分かっているだろう。多少の加減はするさ」




・・・・・・



いつの間にかお互いの距離が狭まり、少人数での乱戦が始まっていた。陽炎と川内、阿武隈と北上といった好敵手同士の戦いから、暁とВерный、名取と由良の姉妹同士の戦いも始まっている。


瑞鳳は艦載機の殆ど堕とされたので、敷波の援護に向かう。そこを夕立、山雲が狙い撃ちにしていく。



瑞鳳「ちょっと!! 後ろから撃ってくるなんて卑怯じゃないの!?」


山雲「それは心外ですね〜」ダンッ


夕立「近くで背中を向けてる方がわるいっぽい!!」ダァンッ



瑞鳳「まっ、危なっ! きゃあぁぁぁ!!!」


敷波「ちょっ、待てって! うわぁぁ!!」



苛烈な砲撃に対処する間も無く、瑞鳳も大破状態になる。更に近くにいた敷波も巻き込まれ、2人ともこれ以上の攻撃は不可能となった。



夕立「次行くっぽい!!」


山雲「悪く思わないでくださいね〜」


敷波「マジかよぉ………、おっかないなぁホントに」


瑞鳳「くぅぅ、やられた………もう、あの子たち怖すぎよぉ〜」




一方、陽炎方にも脱落者が出た。既に中破となっていた名取だ。由良と一対一で戦っており、いくら由良も傷を負っているとはいえ互角に渡り合ってた。



由良「っ………!! ちょっと不味いかも………」


名取「これで……立場は同じ、いきます!!」


由良 (左舷から魚雷っ!! これは……北上さんの!? …………よし!)



突如、由良は反転して全速力で名取と距離を取る。逃すわけにはいかないと名取も追いかけるが、次の瞬間、足元から大きな衝撃と水しぶきが上がった。


名取「ひゃあぁぁ!! ふぇぇ……やられたぁ………」


由良「ごめんね。北上さんの流れ弾を利用させてもらったの。正々堂々じゃないのは分かってる。でも、悪く思わないで、ね?」




・・・・・・




扶桑「第3艦隊、瑞鳳さん大破。敷波さん、瑞鳳さん戦闘続行不可能です。また第4艦隊では名取さんが戦闘不能、由良さんが中破に持ち込まれました」



瑞鳳「うぅ………酷い目にあったぁ………」


敷波「うわぁ………お互いに結構ひどくやられたもんだなぁ………」


名取「うぅ………」


提督「お疲れさん。演習が終わるまでここで見ているか? なんなら先に戻っていても構わないぞ?」


瑞鳳「いえ、見ていきます。どっちが勝つか興味あるし?」


敷波「うーん、あたしは戻るわ。ちょっと疲れた」


提督「わかった。大淀が既に補給の手はずを整えている。そのまま工廠に向かって補給を済ませてから戻ってくれ」


敷波「りょーかい」


名取「では、わたしもこれで………」


提督「わかったよ。必ず補給は済ませてから戻れよー!」


吹雪「ゆ、夕立ちゃんやりすぎじゃない…………?」


秋月「うわぁ…………」


朝潮「す、凄いですね…………」




演習とは名ばかりの乱戦に、もはや言葉を失ってしまう2人。敷波の砲口はひしゃげており、撃つことさえままならないだろう。


そもそも演習で使われる弾は出撃に使われるものより威力を抑えて作られたものだ。当たれば多少の痛みは感じるし、艤装も傷を負う。


だが艦砲が使えなくなるほどの威力を出すとなれば、相当な力を必要とする。並の駆逐艦ではこうはいかないが、夕立に於いては本人曰く、力の加減が出来ないとのことだ。


もともと好戦的で大きな力を秘めている夕立だが、勝負となると全力を持って相手を叩きのめそうとしてしまうのだ。


これも夕立が負ってきた過去の出来事が原因ではあるのだが、それは今ここで語られるべきものではない。



一方その頃、数で言えば優勢にある陽炎率いる第4艦隊。そこでまた脱落者が出た。



阿武隈「うぅ〜、やられたぁ〜」


北上「ふっふーん、これが軽巡と雷巡の違いってやつよ!」



小競り合いが始まってから、お互いに緊迫した戦闘が続いていたが、それも今さっき決着がついたところだ。



北上「まっ、魚雷の撃てる数が違うわけだし、手数の多さにゃ負けないからね〜」


阿武隈「もぉ〜! 本当に悔しいぃ〜!!」


北上「さーて、こっちも数が減ってるし、手薄なところに向かわないと。じゃーねー」



北上がその場を後にしようと後ろを向いた瞬間、Верныйが砲口を向けて立っていた。



Верный「お疲れ様。ついでに言うけど、"おつかれさま"」




北上は一歩引いて臨戦態勢を取ろうと試みるも間に合わず、Верныйの砲撃が直撃した。


艤装から煙がもくもくと立ち込めてくる。かなりの損傷だ。北上はВерныйを距離を取ろうとするが、満足に動かず、立ち込める煙で視界が遮られていた。


そしてその煙によって、自身はВерныйの姿を見失ってしまう。この煙は自身の視界を奪うだけでなく、敵に位置を知らせてしまう。まさに最悪な状態だ。



北上「くぅ〜、装甲は薄いって言ってるのにあんな近距離で撃ってくるかね普通!?」



そこで更に追撃を喰らった。見失ったВерныйと、合流した山雲が後方から砲撃を行ってきたのだ。



北上「うわっ!! ちょっと、待っ……!!」



そこにどこからともなく夕立が接近し、手に持った2本の魚雷を近距離で投げつけた。どちらも見事に命中し、大破に追い込まれた。



北上「ちょっと!! 今さっき阿武隈と闘ってたの知ってるでしょ!?」


夕立「近くにいるのが悪いっぽい!!」


北上「ちょ、これ以上食らったら沈むって!!」


夕立「演習弾だから沈むなんてあり得ない………っ!!」




後ろから魚雷の接近を探知した夕立は、すぐさま回避行動をとった。北上の横を通り過ぎた魚雷は、そのまま進み続けた。


魚雷を撃ってきたのは由良だ。夕立は由良に敵意を向けて、まるで威嚇するように睨みつけた。


夕立の気が逸れているうちに北上は戦線を離脱して、提督らの元に戻ってきた。そこに阿武隈も北上より少し遅れて戻って来たのだ。




北上「はぁ〜、駆逐艦ホントにウザい………だいたい阿武隈、駆逐艦とツルんで嵌めようなんて汚くない!?」


阿武隈「そんなことしてませんよー!! あの子たちの視界に偶然北上さんが入ったから悪いんじゃないですかー!」



提督「お前たち、喧嘩している暇があったら早いところ補給済ませてこい」


北上「だいたい、たかが駆逐艦一隻がこっちの三隻も落とすなんてレギュレーション違反でしょ!?」


阿武隈「そんなこと言ったら、たかが数発の魚雷で2隻に大損害与える方もどっこいどっこいですよ!!」


鳳翔「全くこの2人は……いい加減にしなさい!」グイッ


2人「痛い痛い痛い!! 」グググ


扶桑「これ以上喧嘩を続けるつもりなら命令違反として例の罰を受けて頂くか、沈めるかの処置を取らせていただきますが、どちらがお好みですか?」ニコッ


提督「扶桑、目が笑ってないぞ。私が見てもその表情は怖い」


扶桑「あら、ごめんなさい。あまりの苛立ちについ怒りを露わにしてしまって」


提督「はぁ………まあいい。お前たちはここに残るか?」


阿武隈「私は見ていきます」


北上「ん〜、私も見てくとしますかね〜。補給と修理を済ませてからだけど」


提督「わかった。なら艤装を工廠の明石に引き渡しておいてくれ。あとは向こうで整備班がやってくれる」


阿武隈・北上「はーい」




・・・・・・




川内率いる第3艦隊は、川内と由良を残すのみとなった。一方、陽炎が率いる第4艦隊は陽炎とВерный、山雲と夕立が残っており、川内方は不利な状況だ。



このような状況に置かれても、陽炎と川内は一騎打ちの状態で撃っては避け、撃っては避けの攻防が繰り広げられている。



川内「前より、腕あげたじゃない!」


陽炎「それは、こっちの台詞よ!!」




お互いに一歩も引かない激しい攻撃を拡げていく。その頃、2人から遠く離れた海上では、由良が駆逐艦3人を相手に奮闘している。



山雲「本当にしつこいですね〜」


夕立「いい加減に沈んで欲しいっぽい!!」


Верный「沈めるのはやり過ぎだよ。でも、私たちも色々と不満はあるからね。ここらで憂さ晴らしっていうのも粋じゃないかい?」


由良「私……何もしてないと思うけど……うわっ!」


夕立「理由なんていらないっぽい! とりあえず、目に付いた敵は沈める!!」


山雲「あらまあ怖〜い。私も同じ考えだけど〜」


Верный「やれやれ。言っても聞きそうにないし、それじゃあ私もやりますか」


由良「だから……私は夕立ちゃん達には何もしてないって………危ない!」


夕立「さっきからぽいぽいぽいぽい避け過ぎっぽい!!」ムッキ-!


山雲「避けるだけじゃ〜、いつまで経っても終わりませんよ〜!」


由良「確かに……このままだとこっちが保たない……かも……」



そう言って、由良は速度を落とした。まるで降参するかのような雰囲気を醸し出している。



Верный「…………」



由良「ねえ、『ヘッジホッグ』ていう武器を聞いたことがある?」


山雲「戦いの最中に〜、講義を開くなんて〜、随分と余裕ありますね〜」


由良「質問にはちゃんと答えなさい?」ニコッ



言葉の圧力と笑顔がどう見ても合っていない。それくらいの覇気を込めた声で語りかけた。



提督「あいつ………何をする気だ?」


吹雪「全く動きませんね………」


提督「…………扶桑、吹雪を連れてあいつらの近くに控えてくれ。万が一の事が起きては困るからな」


扶桑「わかりました。吹雪さん、行きますよ!」


吹雪「は、はい!!」



2人は大急ぎでドックへと向かい、艤装を身につけて由良達の元へと向かう。



扶桑「………吹雪さん、一度しか言わないからよく聞いて」


吹雪「はい、何ですか?」


扶桑「今日の夜、20:30に会議室の扉をノックして、周りに誰もいないことを確認してから、この言葉を言って下さい」



そういって、吹雪の耳元で小さい声でその言葉を伝える。それを聞いて、吹雪は小さく首を縦に振って理解したことを伝える。


そして由良の居る場所に近づく。すると、由良と夕立達の会話が聞こえてくる。



由良「ーーいま由良の手に持ってる爆雷。これに同じ原理が使われているって言ったら………どうする?」ニッ


Верный「っ!!」


夕立「何を言うかと思ったらハッタリ? そんな嘘にひっかかる夕立じゃないっぽい!」


山雲「でも〜、本物だったら大変ですよ〜? 由良さんだって巻き添えくらいますよ〜?」


由良「もともと由良たちは、捨て身の戦いをしてきたでしょ? それくらいは覚悟してるのよ?」


由良は日頃から冗談を口にするタイプではない。夕立たちを見る目は本気だ。


そして、手に持っていた一つを海面に落とすと、数十秒後には海の底から鈍く低い音が響いてくる。一つや二つではなく、何重にも重なって聞こえてくるのだ。



由良「わかったでしょ? 今からこれを真上に投げて空中で破壊するから。そうすると中の弾薬がここ一帯に降り注ぐことになるけれど、どうする?」


夕立「そ、そんなハッタリに引っ掛かるわけないっぽい」


由良「ならハッタリかどうか、見せてあげる。それっ!」



次の瞬間、由良は手に持っていた爆雷を空高く放り投げた。



Верный「っ!! 伏せて!!」バッ


夕立「わわっ!!」バッ


山雲「っ………。あら〜? 爆発しませーー」



由良を嘲笑うように発したその言葉を打ち消すかのように、周りで爆発が起きた。


その正体は、少し離れた位置で陽炎と接戦を繰り広げていた川内の放った魚雷だったのだ。




Верный「わっ……! 魚雷!?」


夕立「ぽっ、ぽい〜!!」


山雲「あ、あれ〜? みんな〜、やられちゃったの〜?」



辺りを見ると、優勢だった状態が一気にひっくり返った。惚けているように見える山雲だが、その実、打開策を見つけようと思考を巡らせている。




由良「少しだけ、ほんの少しだけで良かったの。3人の意識を少しでもこっちに向けられれば、ねっ」



常に周りを確認しながら陽炎と戦っていた川内は、どうにか由良を救い出し、こちらに加勢してもらおうと、駆逐艦3隻に向けて攻撃することを考えていた。


だが、どれだけ高い命中率を誇る射手と言えども、動く的を射止めるのはそう容易いことではない。


そこでそれを察知した由良は、少しの間だけでも3人の動きを止めようとしたのだ。


また、魚雷がこちらに向かっているということも悟られてはならない。下手をすれば、川内は陽炎だけで精一杯のところを手負いとはいえ、4隻の駆逐艦を相手にすると言う最悪な環境を作り出してしまうからだ。


それも踏まえて、由良はある考えを持って川内に有利な状況を作り出したのだ。


ハッタリをかますこと。ありもしないでっち上げで注意をこちらに向けようと画策したのだ。


間に合わせで作り出した嘘話と、即興で作り上げた仕掛けでまんまと3人を欺くことが出来たのだ。



由良「ヘッジホッグ? そんな大それたものを直ぐに作れるわけないじゃない? だから少し機転を利かせてあらゆる所に爆雷を投下しておいたの」


Верный「なるほど、予め沈めていた爆雷を爆発させていただけということか……」ケホッ


夕立「道理で爆発が遅かったっぽいもんね〜……」ガクッ



由良「由良だって嘘、得意ですからね? 嘘で塗り固めた嘘は本当か冗談か。本当を知ってるのは由良だけ……なんてね」



由良「そうじゃなかったら、傭兵の真似事なんて出来ないでしょ? ほら、あと5秒で魚雷が当たるよ? 4、3……」


山雲「うわ〜! 」ド-ン



避けようとしたのだが、既に魚雷は数センチしか離れていなかった。どちらにしても、間に合うことはなかっただろう。


由良「あー……目測間違えちゃったみたい……ごめんね?」



山雲「た、唯の天然さんなのか〜、本気なのか〜、分からな過ぎますよ〜……」バタンキュ-



由良「よし、これで後は川内さんのところにーー」



次の瞬間、目の前で爆発が起きた。陽炎の放った流れ弾によって、由良も夕立らと同じ道を辿ることとなったのだ。




山雲「あら〜………」


夕立「バチが当たったっぽい?」


Верный「当然の報いだね。まあ、策士策に溺れるってところかな」


由良「うぅ〜、悔しいなぁ……」



しばらくして、とぼとぼと皆のもとに帰って行った4人。どうにも由良の気分が余り優れないようだ。


あれだけの見栄を張って、早々に退場させられてはそうなるのも当たり前だ。提督は取り敢えず由良の機嫌を取り直そうと慰めの言葉を掛けていくが、どうにも良くはならなかった。


そのため、取り敢えず補給の手はずは整えてあることを伝えて、そっとしておこうという結論に至った。無理に詮索するよりかは、こちらの方がお互いにとって楽だろう。


すると、先ほど由良たちの動向を伺うために向かわせた吹雪が戻ってきた。扶桑はどうしたのかと提督が尋ねると、後の2人を止めに入ると言って、吹雪だけを先に戻らせたとのことだ。




・・・・・・





陽炎「さっさと……沈んでくれればいいのに………」ハァハァ


川内「バカじゃないの………演習弾で………沈むわけないでしょ……」ゼェゼェ



お互いに攻撃をかわし続けて一発も当たらないまま、燃料も切れかけ、疲労困憊となっているにもかかわらず、互いに一歩も引こうとしない。


そんな2人の姿を遠くで見守っていた扶桑だが、ついに痺れを切らして2人の前に出る。


川内「うわっ!! ちょっと! 前に出てこないでよ!」


陽炎「当たったらどうすんのよ!」



扶桑「今のところあなた達しか残っていないけれど、いつまで続けるつもりですか?」


川内「っ………」


扶桑「そもそも、あなた達がこうやって砲口を向け合う理由はなんだったかしら?」


陽炎「それは……司令が………」


扶桑「提督があなた達に罰を与えたのはどうしてかを聞いているのよ? まさか濡れ衣を着せられて罰を受けたなんて言わないわよね?」



扶桑の言葉に、2人は黙り込むしかなかった。思い返せば、お互いに煽り、罵り合いが発端だった。


それがここリンガ泊地の全体を巻き込んだ大事になったことを振り返ってみると、急に2人は恥ずかしくなった。


子供染みた意地と悪戯心で勝手に盛り上がり、覚めてみると何をしているのだろうと我に返る。



扶桑「………それで、どうしますか? まだ続けるつもりならば私が無理矢理にでも動けなくして、皆の所にあなた達を連れて帰りますが?」



川内「………わかったよ。私が悪かった。これでいいでしょ?」


陽炎「私も……やり過ぎた。ごめん………」


扶桑「はい、仲直りも出来たことですし、戻りましょう?」



扶桑が2人を連れて皆のところへ戻ると、全員が扶桑達の帰りを待っていた。それはまるで家族の帰りを待つようだった。



提督「少しは気が紛れたか?」


川内「その………ごめんなさい」


陽炎「私たちの意地で、皆に迷惑かけました」


提督「………結局、最後に残ったのは扶桑だ。後はお前に任せる。2人の処罰は好きにしろ」


扶桑「そうですね………。2人とも反省していますし、提督も本当に怒っているわけではないはずです。そうですよね?」


提督「………わかった。今回はもういい。だが、これからはしっかりと新人の世話に従事してもらう。これが破られれば、問答無用で罪に処す。いいな?」


陽炎・川内「すいませんでした」



そう言って2人は深々と頭を下げた。心底反省したような顔つきでおり、誠意を持って謝ったことで、周りの者も納得したような面持ちだ。




提督「よし、今日はこれで解散だ。18:00には歓迎会だ。それまでにしっかり体を休めておくんだぞ? せっかくのパーティに参加できなくては悔やんでも悔やみきれんからな」


後書き

ちょくちょく書いているので思い出した時にでもチラチラと見に来てみてください。おそらく月一か半年以内には更新されていると思うので。


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