2018-02-20 10:05:15 更新

概要

【演出】

子善島津

母子善



善子「ただいま〜」


善子母「はい、おかえり」


善子「はぁ…なんか疲れた〜」


善子母「お疲れ様、いい卒業式だったわね」


善子「…本当、そうだね」


善子母「善子」


善子「なに?」


善子母「貴方、最近アレやらないのね」


善子「…あれ?」


善子母「ほら、堕天使なんとかって奴」


善子「あぁ…」


善子「もう…大丈夫になったんだ」


善子母「どう言うこと?」


善子「…」



善子「お母さん」


善子母「なに?」


善子「私って、小さい頃から割とついてないのは知ってるよね?」


善子母「…そうねぇ」


善子母「出先で矢鱈と色んな目に遭ってたのはよく覚えてるわ」


善子母「それに貴方、突然訳わかんないこと言い出したりしてたもの」


善子「へ?」


善子母「覚えてないの?」


善子母「幼稚園の頃なんか毎日の様に言ってたわよ?」


……………………

……………




よしこ「私、本当は天使なの!」


よしこ「いつか羽が生えて天に帰るんだ!」


はなまる「ずらぁ〜っ!」



善子母「って」


善子「」


善子母「多分、花丸ちゃん辺りは覚えてるんじゃない?」


善子「〜っっ///」


善子母「哺乳瓶持ってくる?」


善子「う、うるさいうるさい!」


善子「なによ!人が真面目な話しようとしてるのにぃ!!」


善子母「あはは、ごめんなさい」


善子「もぅ〜っ」


善子母「それで?何を話してくれるの?」


善子「…はぁ」


善子「えっと、何処まで話したっけ?」


善子母「まだ取っ掛かりしか聞いてないわ」


善子「あぁ、それじゃあ…」


善子「あんまり不幸な出来事が続くもんだからさ?」


善子「ある日私はこう考える様になったの」


『私が不幸な目に遭うのは、きっと神様が私の事を嫌いだからなんだって』


善子「それから暫くは、よくいじけてたわ」


善子母「…」


善子「物にも当たったし、友達にも酷い事言ったりした」


善子「それから中学に入って、ふと思うようになったの」


善子「もしかしたら、私は私じゃないんじゃないかって」


善子「不幸な出来事を呼び寄せてしまう特別な何かなんじゃないかって」


善子「そうして思い付いたのが、ヨハネ」


善子母「…」


善子「高校に入ってもそれは変わらなかったわ」



……………………

……………




善子「私は堕天使ヨハネ!」


花丸「そんなのいないずら」


善子「いる!」


善子「堕天使はいるもん!」


花丸「善子ちゃんは善子ちゃんずら」


善子「そうだけど…でも私はヨハネなの!」


花丸「善子ちゃんは善子ちゃんで…ヨハネちゃんでもあるの?」


善子「そうよ!」


善子「私はヨハネ!」



善子「堕天使ヨハネなの!」




善子母「ふ〜ん」


善子「これまでの不運は、堕天使ヨハネに対する神様からの嫌がらせなんだって」


善子「きっとヨハネが可愛すぎるから、神様はヨハネに嫉妬しているんだって」


善子「そう考えれば、嫌な出来事もそんなに苦では無くなったの」


善子母「…でしょうね」


善子「そんな顔しないでよ!」


善子母「それで?」


善子「あ、うん」


善子「それからは割とルンルンだったわ」


善子母「ふるっ」


善子「うっさい!」


……………………

……………




バシャ


善子「うわぁ!?」


花丸「よ、善子ちゃん大丈夫!?」


善子「…」


善子「…クックック」


善子「これも堕天の影響なのね」


花丸「…」


善子「私の美を妬む天界の意思が、この様な形で我が容姿を穢そうとして来る…」


善子「しかし!これは私の美を更に確固たるものへと知らしめ…」


花丸「善子ちゃんは善子ちゃんずら」


善子「ヨハネっ!」


善子「私は堕天使ヨハネなの!」


花丸「そうなの?」


花丸「でも、善子ちゃんの方が可愛いずら」


善子「っ//」


善子「そ、それは当然よ!!」


花丸「なら、別にヨハネちゃんじゃなくてもいいんじゃない?」


善子「それとこれとは別よっ!」


花丸「?」


善子「私はヨハネ!」



善子「堕天使ヨハネなのっ!」




善子「ミカンが頭にぶつかったって、神様がヨハネを妬んでるからだって思った」


善子「ドブに嵌ったって、神様がヨハネの見た目を悪くしたいからだって」


善子母「…」


善子「そうしているうちに、いつの間にか私とヨハネの立場が逆転してしまってたの」


善子「気が緩むと、彼女は所構わず出て来るようになってた」


善子「極め付けは」



……………………

……………





善子「堕天使ヨハネと契約して、貴方もリトルデーモンに…」


善子「なってみない?」


『……』


善子「…」


善子「…ピーンチ!」



善子(やっちゃった…っ!やっちゃったわ!)


善子(何してんのよバカ!あんな厨二ワード全開で自己紹介とか馬鹿なんじゃないの!?)


善子(あんなとこまで出てこなくていいのよヨハネ!自分から不幸を呼び寄せてどうすんのよ!?)


善子(あぁもう…これじゃもう学校行けないよ〜っ!)


善子「くぅ…っ」


善子「そ、それでも私はヨハネ…」



善子「堕天使ヨハネなのよっ!!」




善子「こんな事も…ね」


善子母「だから貴方、暫く学校行かなかったのね」


善子「えへへ、すいません」


善子母「えへへじゃないわよ、もう…」


善子母「あの頃の貴方、部屋に篭っては変な格好してたものね」


善子「そ、その話はいいの!」


善子「…でもね?」


善子「そんな私とヨハネにも、ある転機が訪れたの」


善子母「…あぁ。Aqoursね」


善子「そう」


善子「その時は私も、何とかヨハネと決別してリア充になろうって思ってたから」


善子「Aqoursへのお誘いは願ったり叶ったりでもあったの」


善子「でも、結局変わらなかった」


善子「堕天使ヨハネの所為で、Aqoursのみんなに迷惑を掛けてる事に気付いたの」


善子「だから、その時はキッパリお誘いを断った」


善子「道具とか衣装も片付けたりなんかしたけど…」


善子「もしあのまま終わってたら、多分ヨハネとは一生付き合ってく事になったと思う」


善子母「…でも、他の子達は放っておかなかった」


善子「……うん」


善子母「嬉しそうに話してたものね」


善子「えへへ」



……………………

……………




千歌「堕天使ヨハネちゃん!」


千歌「スクールアイドルに入りませんか?」


千歌「ううん、入ってください」


千歌「Aqoursに!」


善子「ダメよ!」



善子(これ以上、この人達に迷惑を掛けたくない…っ)


善子(それに…私の不運に付き合わせる訳には)



千歌「良いんだよ、堕天使で!」


千歌「自分が好きならそれでいいんだよ!」



"だから善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ"


"自分が堕天使を好きな限りっ!"



善子「……」



(ヨハネでもいいんだ…)


(私の不幸を一身に引き受けたあの堕天使でも…)



善子(良いって言ってくれてる…)



善子「…変なこと言うわよ?」


曜「いいよ」


善子「時々儀式とかするかもよ?」


梨子「そのくらい我慢するわ」


善子「リトルデーモンになれって言うかも!!」


千歌「それは…あはは」


千歌「でも、嫌だったら嫌だって言う」



千歌「だから…ふふっ」サッ


善子「…」


善子(そうよ。やっぱり私はヨハネ)


善子(不幸な私と一心同体…それがっ)



善子「堕天使ヨハネよっ!!」




善子「私の事も、そしてヨハネの事も認めてくれたAqoursのみんな」


善子「あの時初めて、私は堕天使ヨハネの事をハッキリと好きになれた」


善子母「…」


善子「あの日からヨハネは、悲しい気持ちの代弁者ではなくなったの」


善子「みんなに認めて貰えて、私も変わり始めたんだ」


善子「その時から、少しづつヨハネも変わり始めたの」



……………………

……………




善子「天つ雲居の彼方から堕天したるこの私が魔都にて冥府より数多のリトルデーモンを召喚しましょう」


曜「…もの凄く注目されてるんですけど」


「くっくっくっ」


千歌「善子ちゃん。やってしまいましたねぇ」


善子「…っ」


花丸「善子ちゃんもすっかり堕天使ずら〜」


善子「〜っっ」


曜「みんな遅いよぉ〜」


ギラッ


善子「…善子じゃなくてぇ」


『ひぃっ!』



「ヨハネっ!!」




善子「気が付いたら、人前でヨハネになる事になんの抵抗も無くなってた」


善子母「あぁ…」


善子「前はヨハネになったあと激しく後悔してたのにさ」


善子母「そう言えば、大勢のお客さんの前で訳わかんないこと言ってた事もあったわね」


善子「あはは、懐かしいなぁ」


善子母「あの日は貴方が帰ってくる前にドアに鍵掛けようかと思ったわ」


善子「なんでよ!?」


善子「あそこは一世一代の見せ場だったじゃないの!」


善子母「貴方で末代になり兼ねない発言だったわよ」


善子「だってずーっとスタンバッてたんだよ!?」


善子「それでやっとスポットライトが当たったんだもん!そりゃ解放するわよ!」


善子母「その解放の仕方が問題なの」


善子「ぐぬ…っ」


善子「ま、まぁいいわ…」


善子「それからも、事あるごとにヨハネは降臨したわ」


善子母「知ってる」


善子「浦女が廃校になった後も、暫くその生活は続いた」


善子母「転校先でもアレやったの?」


善子「うん」


善子母「良い根性してるわ…」


善子「べ、別にいいでしょ!?」


善子母「んで?」


善子「っ…」


善子「…ある日気付いたの」


善子「いつもの不幸な出来事が起こったにも関わらず、私は私だった」


善子「ヨハネが降臨しなかったの」


善子母「へぇ」


善子「自分でも不思議だったわ」


善子「昔だったらそんな出来事に直面したら直ぐさま取って代わってたクセに」


善子「言葉が出て来なかったの。あんなの初めてだったわ」


善子「いつもは厨二ワード全開で捲し立てられたのにさ」


善子母「…」


善子「その時気付いたんだ」


善子「ヨハネとしての私は、もう随分薄く溶けて行ってたんだって」


善子「そして」



「今度こそ、ヨハネを辞めなくちゃいけないんだなって」



善子「最初は少し戸惑ったわ」


善子「堕天使ヨハネとして降臨出来なくなるだなんて、考えた事が無かったもの」


善子「それこそ、物心ついた時からヨハネであり続けたからね」


善子母「それもそれで複雑な気分だわ」


善子「18年だよ?その内の半分以上をヨハネと一緒に生きてきたんだよ?」


善子「そりゃ戸惑いたくもなるよ」


善子母「んん…分からないわ…」


善子「……」



善子「…ふふっ」



ガタッ


善子母「え?」


善子「スウゥゥッ…」



ピタッ



善子「母君よっ!!」バッ


善子母「っ!」



善子「堕天使ヨハネは、地獄の皇太子ルシファーの命により」


善子「今日この日を持って、深淵の彼方へと帰還します!」


善子母「…は?」


善子「術式展開、転移呪詛プロジェクト使用のため、これより魔力供給を開始」


善子母「よ、善子…?」


善子「いえ、私は堕天使ヨハネ。今日まで数多の災厄を一身に引き受けた道化」


善子「しかし今、精霊結界は破られた。これより天界の使徒達がここへ押し寄せるでしょう…」


善子「このまま私がこの世界に存在し続ければ、必ずや終末が訪れる事となる」


善子「よって、天界の使徒を深淵へと誘い、堕天使ヨハネ本来の姿を持って誅します」


善子母「……」


善子「…魔力5000万、供給が完了しました。これより次元転移を開始します」


善子母「……」ポカ-ン



ババッ!



善子「母君よっ!」


善子母「!?」



善子「今日まで我が忠実なるリトルデーモンであり続けた事、感謝します!」


善子母「…ぁ」




善子「さらばっ!!」バッ




善子「……ふぅ。」


善子母「…」



善子「……」


善子母「…あ、あの」


善子「……」


善子母「よ、善子?」


善子「…」


善子「これで、堕天使ヨハネの私とは」



善子「お別れしたよ」


善子母「…」



善子「ヨハネは、いつだって不幸な出来事から私を守ってくれた」


善子「どんなについてない日でも、ヨハネが降臨すれば、それは堕天による影響」


善子「そう考えれば、なんでも乗りきれた」


善子「ヨハネでいる時の私なら、なんでも出来るって思ってた」


善子母「…それじゃあ」


善子「ん?」


善子母「それじゃあ、今はもう不幸ではないの?」


善子「…」


善子「もちろん、これからも不幸な出来事は続くと思うわ」


善子「嫌というほど、理不尽な現象に付き合わされて行くと思う」


善子母「…」


善子「でもね、もう私は大丈夫なの」


善子「今日まで過ごして来た、Aqoursのメンバーでいた時間の…」


善子「言葉では表しきれないくらい様々な思い出が、それを証明してくれるんだ」


善子「この思い出と仲間がいる限り、もう私は私として強く生きていける」



善子母「…」


善子「…それにね」



善子「みんなにとっても、そして私にとっても、この私が唯一だから…」



善子「だからやっぱり」



善子「私は津島善子なんだよ」




「堕天使ではないんだ」


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