2018-04-19 21:47:33 更新

概要

【オススメ】
作中では、泊地の地理的な位置関係などを利用した作戦や策略が多々出る予定です。

なので、「艦これ 泊地」などで画像検索して泊地や基地の位置関係を見ながら読むと楽しいかもしれません。あ、楽しくなかったらすみません。


色々宣っておきながら、本作は史実に則した物語ではありません。

また史実では基地であった場所も本作では泊地として改変してるなど結構テキトーです。地名の知名度を優先しました(独断と偏見)。


前書き

この作品の元は「なんだか戦争に負けそうだが~」ってやつです。
故あって投稿しなおしました。
一部改変しております。

ガバガバ推敲故、おかしな文があるかもしれません。ごめんなのね。





??「遠征ご苦労さん」


??「燃料は1番、弾薬は2番倉庫だ」









「提督〜倉庫の扉が開かないってー」




??「はぁ?……ちょっと待ってろ」










ギギギ……






??「ぐぎぎ……えぇ……」





??「ふんっ……!開かない……っ!」ギギギ



埃だらけで扉を開けるこの男……


この男こそ、これより数年後……







海峡夜棲姫『トオサナイッ...テ...イッテルノニ......。

............。シニタイ...ノォッ! 』



提督『押し通る……!前だけ見て進めぇぇぇええ!!!』






そう、この若者こそ、

後に調略と策謀と陰謀とイカサマで敵を悉く打ち破り"天下のクソたぬき野郎"と謳われることとなる"提督"である。





だが今は__





提督「あぁぁぁぁああああああ指挟んだぁぁぁああ!!」イタイ!







ただ扉の前でもがくのみ。







提督「だいじょぶかなぁ……?ばい菌入ったりしてないかなぁ……?」ヒリヒリ






「もう!バカじゃないの!?しっかりしてくださいよ!!ほら、指見せて」




提督「ありがとう……」ズキズキ




??「ったく……本来は北上さん専用の薬箱なのに……」


??「そう言いつつも手当してあげるんだよね」


??「ほんと、何だかんだで提督に甘いわよねー」


??「あとで貴女たち魚雷撃つわね、特にメロン」


??「うぇ!?なんで!?」



??「あっ由良用事思い出した、あでゅー」ピュ-




??「えっちょっ待っ!置いてかないでよ〜〜!!」


??「あっこら!待ちなさい!!」









提督「いででででで!!!!指!!!千切れるからぁぁぁぁぁぁあ!!!」














phase01 抜錨











……



……



……





@大本営






『なんだこのザマは!!』


『MI作戦が成功しても、新たに築いたミッドウェー哨戒基地が壊滅しては、何の意味もないではないか!!』


『機動部隊は壊滅、若き鬼神と謳われたあの提督も、今は療養中だ』


『奴がしくじったのか』


『いやぁそもそもこれは、哨戒基地警備のための追加戦力を彼に与えなかった大本営、軍令部作戦課の落ち度であろう』


『そうだ!攻略後の疲弊した兵力でミッドウェー島の実効支配など……』


『どう責任を取るつもりだ!?』





元帥『まぁ落ち着け』


『『『…………!』』』




元帥『確かに手痛い損失だ。だが、機動部隊ならまだある』


元帥『残存兵力を集め機動部隊を再編するのだ』


元帥『指揮官の人選はそうだな……』





元帥『中将、君に任せる』


中将『……承知、いたしました』





【ナレーション】


2ヶ月前のMI作戦成功の報告を受けた大本営は、すぐさま攻略したミッドウェー島に哨戒基地を建設するよう命令。



大規模な作戦を終えたばかりの一航艦への十分な補給は間に合わず、疲労困憊なところへ今度はミッドウェー島奪取を目論む深海棲艦の猛攻撃に会う。



艦隊は高い練度と巧みな戦術を駆使し奮戦するもその戦力差は如何ともし難く、基地、艦隊は共に壊滅。



開戦以来未曾有の大敗北であった。










中将「というわけで、君を推薦しておいたから」


「…………は?」


「いやしかし私は、輸送艦隊の指揮しか……」


中将「お前が第五航空戦隊、いや、新編第一航空戦隊司令官、提督になるんだよ!」


「それは決定ですか?」


中将「おん」


「おんじゃねえ」


中将「何か言ったかね?」


「いえなにも」



中将「頼むよ提督?なーはっはっはっー」


「……」













「は?キレそう」














元帥『君を、第一航空戦隊司令官に任ずる』


提督『……全力を尽くします』










提督「ということで、異動になった」


由良「……ぇ」






由良「新編第一航空戦隊……?」


提督「ああ。中将が俺を司令官に推薦したらしい。着任は5日後」


由良「ぃぃ5日後!?」


提督「急過ぎだ。今入ってる輸送任務はどうするんだ……」


由良「……」















提督「由良?」



由良「ぁ……いえ」




由良「……すごいですね、一輸送部隊の指揮官が一航戦を任されるまでになるなんて」


提督「……そうだな」


提督「由良には長いこと世話になった」


由良「……」


提督「初めて部下に持った艦娘が由良で、ほんとによかったよ」肩ポン


由良「……嬉しい」ニコッ



由良(連れて行っては……もらえないか……)


由良(今まで……ずっと2人で……)






提督『君を預かることになった。よろしく。』




提督『あぁ!!しくじった!!急いで代えの部隊を用意せねば!!』




……

……

……





提督『輸送とは前線に荷物を届けるは勿論のこと、戦闘を避け無傷で生還することも任務のうち。輸送は一度きりの仕事ではない。輸送力の維持!これも立派な輸送艦隊の責務である!』




提督『由良、俺は次どうしたらいい?』






提督『鼠輸送は我らの専売特許。この仕事……誰にも譲りゃせん。』





由良(最初は2人で苦労の連続だったけど)


由良(提督さんは頑張って頑張って……)


由良(やばっ……涙が……)ウルッ





由良(やっぱり……)




由良(由良も……一緒に行きたいなぁ……)






「あ、あの!」





提督「ん??」


由良「あ、いや……由良は?」






提督「俺と一緒に移動に決まってるだろ」



由良「そうだよね、やっぱり……」









由良「……えっ?」


提督「第四水雷戦隊は俺が、いや、我らが皆で今日まで日々育て上げてきた精鋭部隊」


提督「機動部隊には、空母を守る護衛の艦がいる。これに是非我が四水戦をと、話はすでに通してある」


提督「まぁでも来るか来ぬかは、自分で決めるが良い」

由良「行く」


提督「早い」ハヤイ...


提督「まさに即断即決。俺でなければ見逃しちゃうね」








提督「それでは、早速用意を始めよう」


由良「……うん!」


提督「まずは引き継ぎからだ。資料用意せい」


由良「了解」




提督「おー……」




提督「さすが……手際がいいな」


由良「ずっと側にいたから」


提督「……そうだな。これからも頼むぞ」


由良「はいっ」










5日後



提督、新編一航戦司令官着任。



提督「おお……ここか。我らが新天地」


由良「……うん」





ボロっ





提督「一回り見てみたが、ボロっちいなあ……」


提督「もっと綺麗なとこだと思ってたぞ」


由良「…………由良も」


提督「まぁいずれ改築するだろう。しばらくの辛抱よ」


由良「え?そうなの?」


提督「いや知らん」スタスタ


由良「えぇ……」










提督「さて……と」



提督「由良、夕立、村雨……」


由良「はい」


村雨「はい」


夕立「ぽい」




提督「これからこの戦、主役は我ら……新編一航戦となる」


提督「立ちはだかる敵はコソコソ鼠輸送していた今までの比ではない」






「「「…………」」」






提督「…………」




村雨「……」ゴクリ




提督「…………」




夕立「……?」




提督「…………」




由良「……提督さん?」









提督「…………はぁ……嫌だなぁ」ボソボソ








村雨「ずこー」ズコ-


由良「提督さん……」






提督「すまん……」






コンコンコン




夕立「ぽい?」



提督「あ、おう、入れ」





ガチャ





翔鶴「新編第一航空戦隊旗艦、翔鶴。着任いたしました」


瑞鶴「同じく瑞鶴。よろしくお願いします」



提督「遠路遥々ご苦労でありました。一航戦長官となった提督だ。よろしく頼む」


提督「こちらは秘書艦の由良です。由良、これよりお2人を案内して差し上げろ」


由良「了解。よろしくお願いします」


翔鶴「お世話になります」




翔鶴「その前に提督、元帥閣下より一航戦への初任務が」つ資料


提督「……おぉ……もうか、わかった準備する。ひとまず2人は泊地を一回りしてくるといい」


翔鶴・瑞鶴「はい」


由良「……それでは、参りましょう」






ガチャ



バタン




提督「はぁ……」ペラ




提督「顔合わせは済んだな。お前たちも行っていいぞ」


村雨「はーい」


夕立「ぽーい」





ガチャ


バタン





提督「ふむ……随分早いな仕事をするにはまだ、準備が整っておらんのに」













指令書『ミッドウェー島を再度速やかに攻略すべし』













phase02 策謀






@執務室





提督「…………ミッドウェー?」


提督(無理だろ)









提督「…………」








提督「……いや無理だろ」










由良「提督さん?用って何?」




提督「……見ろ」つ指令書


由良「……?」ペラッ




提督「ミッドウェー島を再度攻略し、前線基地をつくれ」


提督「大本営はそう仰せだ」





由良「…………どうするの?」


提督「まぁ命令が出たからには、やらねばなるまいな」


由良「でも現状うちには、由良と翔鶴さん、瑞鶴さん、夕立ちゃん、村雨さんしかいないし……」


提督「……5隻じゃまともに戦えん」


由良「そうね……」







提督「仕方ない……」










提督「というわけで、直接大本営に掛け合う」


提督「少しの間留守にするがその間、この泊地のことは全て由良に任せてある。彼女の指示に従うように」




「「「「了解」」」」



瑞鶴「……でもさ、本当に援軍なんてくれるの?」


提督「ん?」


翔鶴「南方の戦況は劣勢と聞いています。こちらに戦力を回せるとは……」


提督「何を言う。ミッドウェーを手に入れるのは大本営の悲願。我らはそれを仰せつかっているのだ。必ず、かならず人員補充は認められる」


提督「心配ない。もし大本営が断るようなことがあってもこの俺が、必ず人員補充を認めさせてみせる。だから、お前たちは安心して励め」


由良「提督さん……」


翔鶴「……はい!」


瑞鶴「……うん」








翔鶴「どんと構えていて頼り甲斐がある人で良かったわね」


瑞鶴「えーそうかなぁー?ってかどこから来てるんだろあの自信……」


翔鶴「あら、瑞鶴は提督が嫌いなの?」


瑞鶴「いや、そんなことないけど……翔鶴姉は?」


翔鶴「悪い人じゃないと思うわ」


瑞鶴「うーん……」


















@大本営、会議室



【ナレーション】


大本営、軍の中枢である。

ミッドウェーでの大敗北をきっかけに、大本営の高級幕僚達は大きく二つの意見で対立していた。




一つはかねてより敵と戦力が拮抗していたが、最近やや押され気味の南方海域を重要視する「南方戦線重要論」を唱えるいわゆる南方派。


南方戦線を重要視するは、南方戦線が崩されると、当てにしている南方方面の資源地帯に危険が及ぶことを避けるためである。


資源地帯を失えばもはや継戦は不可能となるため、南方戦線最優先は当然という考えであった。




対するは、太平洋に睨みをきかせられる拠点としてミッドウェー島を手に入れることこそ最優先事項とする「ミッドウェー攻略優先論」を唱えるミッドウェー派。


敵にミッドウェーを押さえられると、太平洋の制海権が危うくなり、ひいては、本土への直接攻撃を受ける危険が増すことを危惧しての考えである。


故に資源地帯どうこうよりもまず先に本土の安全が第一という立場であった。




本土攻撃回避か、資源地帯優先か。決着はつかぬまま議論は平行線となっていた。





『南方の鎮圧を最優先にするべきだ!!』


『いや!南方は程々に、ミッドウェー攻略が最優先だ!』


『ふざけるな!!南方は現在もぎりぎりで戦っているのだ!ミッドウェーなぞに戦力を分散させるなど、言語道断!』


『ミッドウェーなぞとはなんだ!!あの島が取られ、そこを拠点に敵機動部隊が活動するようになれば、房総半島沖に敵の飛行場があるも同然なんだぞ!!わかっているのか!!』




元帥『…………中将はどう思う?』


中将『……はい、私はミッドウェーに戦力投入は必須と考えます』


『バカな!!ありえませんぞ中将!』


『無礼であろう!黙っておれ!!』


元帥『静かに』





しーーん




中将『南方は、仮に突破されてもまだ、本土から距離もあり、先に落とすべきこちらの拠点が多くございます』


中将『対してミッドウェーは押さえられるとこちらの太平洋での動きが制限され、最悪本土に攻撃が来る可能性があります』


中将『しかしながら、戦力の分散は悪手。ならばぐらついた南方戦線がミッドウェーの二の舞にならぬようにするのが優先かと』


『しかし中将、その間にミッドウェーに拠点ができ、本土が攻撃されるようなことがあれば如何するおつもりか!!』


『そうだ!!』


『やはりミッドウェーです閣下!』


『馬鹿者!南方が破られればそのまま我が軍は総崩れだぞ!!』


『資源はほぼ南方に頼っておるのだ!南方を守らねば戦争継続は不可能!!』





元帥『…………』ハァ...


元帥『休憩とする』







中将「おお、提督」


提督「お久しぶりです。」





中将「ミッドウェーのねぇ……」


提督「援軍がなければまずもって攻略は不可能です」





中将「んー」




中将「ムリダナ」



提督「そこをなんとか」



中将「旧一航戦が壊滅してから各地で劣勢になっている。追加戦力をやる余裕などない。わかっているだろ」



提督「……」


中将「そろそろ会議室に戻らねば、んじゃなー」









提督「はぁ……詰んだ」







提督「…………次の手を考えるか」










@泊地、提督執務室



由良「あ、おかえりなさい」



提督「うん」


由良「それで?どれくらいもらえることになったの?」


提督「ん?」


由良「いや……援軍のこと」



提督「……それより由良」


由良「……」



提督「……」





由良「……まさか提督さん」








提督「はぁ……援軍は断られた」






由良「えぇ……」




提督「何を驚いている。当然だろ、そんな余裕が今の我が軍にあるとでも?」シレッ


由良「いやいやいやいや」


提督「?」


由良「あんなに自信満々だったのに」


由良「必ず人員補充は認められるって……」


提督「……」








提督「……誰が言ったんだ?」


由良「あなたです」








提督「………………」


由良「コホン……『心配ない。もし大本営が断るようなことがあってもこの俺が、必ず人員補充を認めさせてみせる。だから、お前たちは安心して励め』」




由良「ケホッ……」


提督「声帯模写すんな」


提督「時間稼ぎだよ……無理に決まってるだろ援軍なんて」シレッ


由良「うわぁ……」








由良「で?どうするの?」


提督「まぁ落ち着け……」


由良「でも……」


提督「とりあえず……援軍は来るということにしておこう」


由良「えぇ……?」


提督「新参の翔鶴と瑞鶴の、俺に対する信頼が失われては困る」


提督「……言っておくが、これは決してあいつらを騙すのではないぞ?これは間違いなくな?」


由良「えぇ……」


提督「……なんだよ」


由良「はぁ……わかりました」














提督「大本営は我々に援軍を下さるそうだ」


翔鶴「本当ですか!?」


提督「嘘は言わんよ」


由良(うわぁ……)


提督「なぁ由良?」


由良「え?ぁ……うん、本当ですヨー」メソラシ-


瑞鶴「ふーん……で、どれくらい?」


提督「ん?」


瑞鶴「どれくらい来るの?艦種は?人数は?」






提督「…………」





瑞鶴「……?」






提督「ところで夕立!」


由良(うわぁ……)


瑞鶴「ちょ」


提督「夕立!お前の第二改装が決まったぞ!」


夕立「改装?」


提督「そうだ。来たる決戦に向けての備えよ」


夕立「それって、夕立もっと強くなれるっぽい?」


提督「おぉ強くなる強くなる。どうだ、受けるか?」


夕立「うん!やるっぽい!」


提督「決まりだな!」


由良「じゃあ夕立ちゃんは先に工廠に行ってて?明石さんがもう来てるから」


夕立「ぽーい!!」



ガチャ


バタン



提督「…………」


村雨「いいなぁ〜夕立、村雨も改二になりた〜い」


提督「まぁそう言うな、すぐ村雨にも来るさ」


提督「しかし……ずっと共にやってきたお前らが改装を受けるようにまでなるとは……嬉しいものだ……」





瑞鶴「ねぇちょっと?援軍の規模は?」


由良「……」


提督「あぁ……それはな」





提督「アレだよ」





提督「南方もギリギリ故、大本営もまだこちらに送る戦力を絞り出すのに苦労している様子。」


提督「規模等が明らかになるのはもう少し先だろう」


提督「ミッドウェー攻略がまた遠のいてしまうなぁ(他人事)」





瑞鶴「そんな悠長なこと言ってられないでしょ!?」


村雨「!?」ビクッ


由良「!」


翔鶴「瑞鶴!」


提督「…………」


瑞鶴「ただでさえ今南方が危ういっていうのに」


瑞鶴「それでミッドウェーにまた変な陸上型が居座って対本土用の拠点にでもされたら、もう終わりなんだよ!?」


村雨「ず、瑞鶴さん、まぁまぁその辺で……」


提督「…………」


翔鶴「すみません提督、ほら瑞鶴謝罪を……」


提督「いや、いい」


翔鶴「ですが……」


提督「いい……瑞鶴のいい通りだ……このままでは我らは負ける」


瑞鶴「だったら!」


提督「だからこそあえて今は、慎重に進めなければいかんのだ」


提督「急いては事を仕損じる……」


提督「心もとない戦力では士気も上がらん……士気が上がらなければ相手に強く出られん……強く出られなければ後手後手に回り、負ける」


提督「心を落ち着かせよ瑞鶴……今は来たる決戦に備え励むのだ……」






提督「俺はお前たちを期待している」


提督「誇り高き一航戦の名を受け継いだお前たちを」



瑞鶴「……!」


翔鶴「提督……」














提督「なんとか乗り切ったな」フッ


由良「随分弁がたつのね」


提督「……全てが偽りではない」


由良「ふぅん……そういうことにしておくね」


提督「はぁ……お前も疑り深いな」


由良「……!」


由良「……嫌いになった?」


提督「は?いや、そんなことは」


由良「ほっ……」






提督「瑞鶴の言うことは正鵠を射ている」


提督「そう、悠長になどしていられん。特に空母の2人、これからの戦を引っ張っていくには練度が足らなすぎる」


提督「翔鶴、瑞鶴にはより一層厳しい鍛錬を積ませるぞ」


由良「とかなんとか言って、ほんとは援軍のこと勘付かれないようにしたいだけでしょ」


提督「…………」








提督「チガウヨ」


由良「うわぁ……」









提督「いや、いつまでも五航戦でいられては困る!一航戦と胸張って言えるよう精進してほしいだけだ!嘘なんかじゃ、ないんだからねっ!」


由良「…………ふぅん?」







由良「ほんとに?」ジッ


提督「…………」










提督「それより由良……」


由良「ハァ……もういいです」プイッ











提督「あぁ!……も、もう次の手は打ってあるから!!……なぁ……そんな怒るなよ」すがりつく


由良「……!……ふ、ふふ……」ゾクゾク


由良「あははは……やだ提督さんったら……大丈夫……由良は提督さんのこと信じてますから……」なでなで


提督(良かった、チョロ可愛くて)


由良「ちょろいな」


提督「」ビクッ


由良「とか……思ってないよね?(低めの声)」


提督「」


提督「と、とんでもない」ビクビク


由良「…………」ゾクゾク


由良「……いいよ思ってても……由良、提督さんならなんでも許せちゃうから……」


提督「由良を悲しませるようなこと、この俺がするとお思いか?今回も何にも心配いらん。任せておけ」


由良「うん……信じてる」


提督(由良だけは怒らせてはいけない……古事記にもそう書いてある)


由良「ふふっ……」









後日





提督「…………」


由良「……」



提督「……ミッドウェー攻略は中止になった」


瑞鶴「え!?」


翔鶴「中止……ですか?」


提督「……そうだ」


夕立「じゃあ夕立たちはどうするの?」


提督「……単冠湾泊地の改築が終わったのでそちらへ移るようにと」


翔鶴「単冠湾ということは……大本営はミッドウェー攻略を諦めていないのですか?」


提督「……だろうな」


村雨「でも南方がピンチなんじゃないの?ミッドウェー攻略が中止になった原因が南方なら、南方戦線に送られるのが筋なんじゃ……」


瑞鶴「そもそもなんで中止なのよ!!ミッドウェーを押さえられてそこに敵泊地でも出来たらどうするの!?」


翔鶴「たしかにミッドウェーとハワイを押さえられたのでは、太平洋はもはや……」





机バン!!!!





「「「「!!!」」」」




提督「分かっている!!俺だってこの命令に納得など出来ておらんわ!!!」


提督「必死に集めた援軍も!お前たちの汗も涙も!全て何のためにあった!?!?」


提督「俺だって悔しいぞ!!」


提督「だがなぁ……命令なら従うのが我らが務め……」


提督「ここはひとつ、曲げて従ってもらいたい……ッ!!」







嚙み切らんばかりに唇を噛み無念の表情を浮かべる提督の様子に艦娘たちはそれ以上何も言うことはなかった……








@練習場





翔鶴「……ふう」



翔鶴「今日はここまでにしましょうか」


瑞鶴「……うん」







瑞鶴「私……提督さんのこと誤解してたかも……」


翔鶴「瑞鶴……」


瑞鶴「提督さん悔しがってた……出撃できないのを……」


瑞鶴「それもこれも、私たちが弱いからなんだよね」


瑞鶴「私たちが強ければ、援軍を待って機を逃したりしなかったのに」


翔鶴「…………」


ぎゅっ


瑞鶴「翔鶴姉?」


翔鶴「……強くなりましょう瑞鶴……提督のもとで……あの人たちみたいに……」


瑞鶴「うん……」


翔鶴「さぁ、部屋に戻って、荷物の整理始めましょう」


瑞鶴「うん、単冠湾ってやっぱり寒いのかな?」


翔鶴「楽しみね」


瑞鶴「うん……!」



瑞鶴(加賀さん……見ててね……)



瑞鶴(私は……誰よりも強くなる!)



瑞鶴(強くなって、みんなを守ってみせる!)













@執務室






提督「上手くいったな」


由良「猿芝居が妙にうまくてムカつく」


提督「ひどくね」


提督「ほらあれだよ敵を欺くには」


由良「まず味方から?」


提督「そうそう」





由良「南方にいる元隷下の艦娘に戦況を探らせ、ミッドウェー派が黙殺していた南方の窮状をリークさせる」


由良「さらにミッドウェー派の悪い噂を流して評価を下げ、ミッドウェー攻略を一時的とはいえ頓挫させるなんて……」


由良「ほんとゲスな手が好きだよね」


提督「古典的でいいだろ?」





提督「しかし効果覿面だったな」


由良「悪い噂、えげつない内容ばっかりだったけどほんとのことなの?」


提督「いやぁ知らんな、噂はあくまでも噂だから」シレッ


由良「うわぁ……」


由良「えげつないのはこの人だった」


提督「人聞きの悪いこと言うな」


提督「俺たちだけでミッドウェーをどうにかさせようとか考えてた奴らだぞ、どうせアホしかいないに違いない」


提督「事実俺の策に嵌り、ミッドウェーの計画は一時的に凍結した」


由良「異動先が南方ではないのは……」


提督「ミッドウェー派の悪あがきだろ。でもまぁ、俺はみんながみんな南ばかり見ていると北が心配になってきていた。だからいいんじゃないか?」


由良「まぁ……たしかに」


由良「でも、ミッドウェーがとられると危ないんじゃ……」


提督「敵に取られても危ないが、あれはどのみち俺たちが取っても扱いきれない島だ。」


由良「どういうこと?」


提督「仮に島を押さえても、それまでずっと敵の手に落ちていたのなら、周囲の海は奴らのものだ。どうせすぐまたボコボコにされて終わりだ」


提督「補給路も確保できない。支配が維持できるわけもないのに攻めてどうする」


由良「確かに……」


提督「……大本営の方々は兵站を軽視しておられる。補給路の安全が保証さらなければ戦には勝てん」


提督「どんなに強い艤装や装備があっても、動かす燃料、打ち出す弾薬、修復すら鋼材、飛行機のボーキサイト、食料、水……」


提督「それらが確実に確保できる状況でなければまともな戦はできない。偉い人にはそれが分からんらしい」


由良「輸送部隊出身の提督だからこその観点だね」


提督「そうかも」









由良「……ねえ」


提督「ん?」


由良「どうして由良にだけは本当のことを教えてくれるの?」


提督「……心苦しいか?あいつらを騙すのが」


由良「やっぱり騙してるって自覚あるんじゃない」


提督「ないわけないだろ」シレッ


由良「えぇー……」







提督「……はぁぁ……」


提督「俺は戦いは得意ではない」


提督「だから策略で相手を弱らせる」


提督「時にはえげつないことも平気でする」


提督「勝つため、そして何より生き残るためだ」


提督「……でも何故か、お前には口が滑ってしまう」


由良「…………」


提督「お前は……いつだって俺を許してくれる……」


提督「だから、話す……」


提督「俺は卑怯で……そして小心者よ……」





提督「本当は誰かに許しを請いたいのだ……」




由良「……由良はあなたを許します……例え世界中のすべての人があなたを許さなくても」


由良「由良だけは……ずっと、あなたを許し続けます」







提督「……そうか」


提督「本当に……俺は卑怯な男だ……」










phase03 再会と別離



【ナレーション】


ミッドウェー攻略を命令された新編一航戦。


現戦力では到底不可能と判断した提督はすぐに援軍を請うが、不首尾に終わる。


そこで提督は大本営でのミッドウェー派と南方派の対立に目を付ける。


ミッドウェー派を標的に裏工作を行い南方派を暗に支援。


ミッドウェー攻略の命令そのものを取り消させるという逆転の発想で、艦隊の窮地を凌いだ。


しかしこれが、ミッドウェーへの処置を遅らせることに繋がり、それが原因でひと騒動あるのだが、それはまだ先の話……







由良「単冠湾行きの準備が整いました」


提督「ああ」


提督「みんなを集めてくれ」





@執務室



提督「単冠湾への移動方法だが、ここから一度内地に戻り陸路で向かうことになった」


瑞鶴「海路の方が早く着くんじゃないの?」


提督「ミッドウェーを諦めた以上、太平洋の制海権はもはや我らのものではない」


提督「危険を避けるために内地経由にした。わかってくれ」


瑞鶴「そうなの?」


翔鶴「提督の言う通りよ瑞鶴」


瑞鶴「うーん……」


提督「瑞鶴はせっかちだな」


瑞鶴「だって!」


提督「分かっている、だけど言ったろ?こういう時こそ、急いてはならんのだ」


瑞鶴「……うん」


翔鶴「すみません提督……」


提督「何を謝る。瑞鶴の危機意識は正しいんだ。1人くらいそういうやつがいないと艦隊の空気が弛んでしまう」


提督「反論に口答え何でも上等!瑞鶴、これからも思ったことはどんどん言ってよろしい」


瑞鶴「提督さん……」





提督「それと、内地でこれから南方戦線に参戦する艦隊の激励会があるそうなので、俺はそこへ顔を出す」


村雨「村雨たちも行ってもいい?」


提督「行きたいの?」


夕立「行ってみたいっぽい!!」


提督「いいよ、全員で参加しよう」


瑞鶴「ええ!全員で!?」


提督「馴染みのやつがいるかもしれん、会ってやれ。次はないかもしれんのだから」


瑞鶴「……うん」











由良「それじゃ、行こっか」


提督「この泊地も……悪い所ではなかったな」


由良「……愛着湧くほど居なかったでしょ?」


提督「まぁな。次はもうちょっと綺麗な所がいいなぁ」


由良「単冠湾は改築したばっかりなんでしょ?」


提督「ああ、それなりに期待できると思うぞ。楽しみだ」


由良「そうだね」








@帝都、激励会会場




ザワザワ


村雨「結構人いるね〜」


夕立「はぐれたら一生会えないっぽい」


村雨「それはないかな」





提督「そうだ。あっちで食事が出来るから」


村雨「え!ほんと?」


夕立「村雨食べ物にだけ食いつきが違うっぽーい!」


村雨「うっ……//」チラッ


提督「……??」


夕立「……!」


夕立「ねえねえ提督さん、いっぱい食べる女の子っていいよね?」


村雨「ちょっ夕立!?」


提督「何急に」





ガシィッ!!


提督「ピギュ!」






夕立「可愛いよね?」グィィ





提督「……アッハイ」





提督「可愛いと……ア、ィィイダダダ……思う……」




村雨「…………!」


村雨「……//」


夕立(村雨が嬉しそうで何よりっぽい)グィィ










提督「ぐる"じぃ"い"い"……は……はな''じで……」







由良「あっ大井さん」


大井「……あら、由良じゃない」


由良「南方戦線に行くの?」


大井「ええ……とうとう来たのよ……」







大井「北上さんと同じ部隊に行くことになったの!!!!」カッ






由良「!?」ビクッ






大井「長かったわ……ここまで……」ウルッ


大井「あぁ……北上さん……ふふふ……じゅるり……むほー!!」







由良「……よ、良かったわね……」ヒキッ








大井「そういえば、夕張見なかった?」


由良「夕張?」


大井「あいつ来てるらしいんだけど、全然見つからないのよ」


大井「ったく……顔見せなさいよ……ほんとマイペースなんだから」


由良「夕張来てるの?由良、まだ全部回ってないから、いたら連れて来ようか?」


大井「ほんと?お願いするわ」





由良「ふふっ……でも意外」


大井「な、何がよ」


由良「大井さんが夕張に会いたがってるなんて」


大井「…………ふ、ふん!悪い?」


由良「夕張知ったらきっと喜ぶと思う」


大井「…………あっそ」


大井「それで……あの人は?」


由良「?誰のこと?」


大井「……もう!提督よ提督!」


由良「あぁ提督さん……来てるよ?呼んでこよっか?」




大井「…………」




大井「…………いや、いいわ」


由良「そう?」




大井「……元気にしてるの?」


由良「うん、元気よ」


大井「そう……ならいい」







大井「…………あなたにも、会えて良かったわ」


大井「貴女たちとは、結構長かったから」


大井「向こうへ行く前に顔が見れて、嬉しかったわ」


由良「…………!ふふっ……由良も!」


由良「じゃあ行くね」


大井「……ええ」フフッ





大井「あ!あと!」


由良「……?」







大井「い……」







大井「いつまで私だけさん付けで呼ぶつもり……?」








由良「……!」






由良「……ふふ、あははは」クスクス


大井「なっ!何がおかしいのよ!!」


由良「はいはい、じゃあねっ大井」ニコッ


大井「……ふん……早く行きなさい……ふふっ」










「おい!」



提督「……?おぉ!同期!お前が南方へ行くのか!」


同期「なーにが「お前がいくのか!」だよ。どーせ知ってたんだろ?」


提督「いやぁーはははは!流石だな」


提督「しかし、南方か……確かお前はミッドウェー攻略優先論を支持してるんじゃなかったっけ」


同期「まぁな……お前もそうだっただろうが」


提督「そうだっけ?」


同期「そうだっけ?じゃねえよ。中将もそれを見込んでお前を新編一航戦の司令官にしたんだ」



提督(やっべ。そういやそんなこと言ってたっけ)


同期「忘れたのか?今まで何度も意見を交わしただろうが」


提督「あっはっは!そうだったな」


同期「ったく……ところでそんなお前が」








同期「ミッドウェー派の面子ぶっ潰すとは……これはどういうわけだ?」ギロッ





提督「………………」






提督「……なんだ急に?ミッドウェー派の方々に何かあったのか?」


同期「何が原因か知らんが、雪だるま式に話が大きくなってミッドウェー攻略は一旦中止になったそうじゃないか」


提督「ああそのことか……いやぁ本当に残念だった」


提督「なぜあのタイミングで取りやめになったのか……大本営も腰抜けよ……」




同期「………………」




同期「……くさい芝居はよせ。俺の目を誤魔化せるとでも?」





提督「何のことだ?」


同期「とぼけるな」




提督「…………」




同期「…………」






提督「はぁ……どれくらいが気づいてる……」


同期「……ほとんど気づいてる奴はいない。今はそれどころじゃないのもあるだろうがな」


同期「だがまぁ逆にミッドウェー派がしばらくおとなしくなるお陰で、南方に行く俺たちゃ安心だ」


同期「大本営がちゃんと仕事してくれるからな」





提督「良かったな!もっと感謝してもいいのよ?」シレッ


同期「死ね」






提督「ほれほれ」つワイン


同期「おう……」つグラス





トクトクトク……





同期「ほらお前も」


提督「おお悪い……」つグラス





トクトクトク……






同期「ふっ……乾杯」


提督「……チンチン」フッ


カチン


同期「日本語で言えや」









提督「ほらほら呑んで呑んで」


同期「いやぁもう……十分ら……じゅうぶん……」ベロベロ


同期「……ぐう……」zzz


提督「ありゃもう潰れた」








提督「………………」スタスタスタ...








由良「あ、いたいた夕張」


夕張「あ、やっほー由良」


由良「やっほーじゃないわよ」


由良「ほら!行くよ?」


夕張「どこに?」


由良「大井のところよ」


夕張「来てるの?」


由良「来てるわよ。ほらはやく」ぐいぐい


夕張「あっちょっタンマタンマ!」







大井「あ、由良」


由良「連れてきたわよ」ぽいっ


夕張「ぐえー」


大井「ちょっと、酔いすぎじゃない?」


夕張「えーそんなことないわよー」


由良「酔ってるわね」


大井「ダウト」








提督「ふぅ……」


大和「あら?どちらへ?」


提督「おぉ……これは戦艦大和殿」


大和「敬称などいりませんよ」


提督「少し酔いが回ってきたので、廊下で涼もうかと」


大和「そうでしたか」




大和「…………」


提督「羨ましそうですな」


大和「……何がですか?」


提督「先程から南方へ行く方々をそんな目で見ておられる」





大和「…………あなた、エスパー?」


提督「心眼は鍛えているので」





大和「……私は最強の戦艦……」


大和「なのに私は未だ戦いに出たことがありません……」


大和「口だけと思われたくないのです」


提督「それでずっと端で縮こまってらしたのですか」


大和「戦場を果敢に行く彼女達に比べて私は……いつまでも大本営のお付きで大事にされるばかり……それがどうしても辛くて……」


提督「何を分からぬことをおっしゃる……貴女は我が帝国海軍が切り札」


提督「常に万全の状態で大本営の威光を守るという大事なお役目があるではないですか」


提督「そしてそれは他の者には出来ぬこと……貴女達姉妹にか出来ぬことなのです」


提督「だのにその大切なお役目も忘れ、気落ちしているとなると……これは困りますぞ」


大和「…………!」


提督「……失礼いたしました」


大和「いえ!顔を上げて下さい!……ありがとうございます」


大和「あなたのおかげで目が覚めました。私には私の役目、あなたにはあなたの役目があるもの……」


大和「お互い、この国のために力を尽くしましょう」ニッコリ


提督「……はい」


大和「私、戦地へ向かう皆様にお声掛けして参ります」


提督「それは良い。皆喜びますよ」


大和「では失礼します」








提督「………………」











@廊下




「報告は以上です」


提督「御苦労だった」


提督「…………」


「……提督?」


提督「……思ったよりミッドウェー派に肩入れしている様子だった」


提督「俺のこの見立てに間違いは?」


「はい、ありません」


「どうしますか?」


提督「そうだな……」


提督「とりあえずお前も一緒に南方戦線に行っていてくれ、内情と詳細な戦況が知りたい」


「承知しました」



提督「……頼んだ」










瑞鶴「これから戦地に行くってのに賑やかね」


翔鶴「戦地に行くからこそ、こうして皆さん楽しんでいるのよ」


翔鶴「次はいつになるかわからないから」


瑞鶴「…………」


翔鶴「それぞれ葛藤や不安を押し殺して、笑顔を見せているのよ」


翔鶴「ほら、貴女も笑って?」


瑞鶴「うん……」


「あーーー!!!五航戦だ!!!アーハッハッハーーー!!ヒャッハー!!」


瑞鶴「……?」


翔鶴「」


千歳「アハハハハハ!!やだもう千代田ったらー!!」


祥鳳「あ、あの……」


千代田「千歳お姉……私はこっちだよ……」


瑞鶴「うわぁ……」


翔鶴「…………」


隼鷹「一緒に呑もうぜーーー!!!ヒャッハー!!!」


千歳「ギャハハハハ!!」



モウノメナイ...


マダマダァ!!













提督「そろそろお開きのようだぞ」


同期「ぐがー……ぐがー……」zzz


提督「はぁ……」


イヤダァァァァァ


提督「…………ん?」







隼鷹「放せぇぇえええ!!あたしゃまだ飲み足りないよ!!!あぁぁぁ!!あたしの酒がぁぁぁぁああああ!!!」ジタバタ


飛鷹「誰かー!!1人じゃ抑えきれないの!!」


隼鷹「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」






提督「」






ハナシテクレェェエエエエエ








提督「…………なんだあれ」










提督「……おい、起きろバカ」


同期「むにゃむにゃ……」





「ぁ…………」





提督「……?…………!」






神通「………………」


提督「…………も……しかして、同期の部下の方ですか?」




神通「ぁ……はい。ここにいましたか」


神通「私の上官が、失礼を致しました」


提督「いやぁとんでもない。こいつとは同期でね。飲ませていたら潰れてしまった、申し訳ない」


提督「連れて帰って貰えるか?」


神通「はい、本当にお見苦しいところを……」


提督「ほら!部下の方が見えたぞ?はやく起きんか」


同期「んんー……」





神通「それでは失礼します」


提督「ああ」




神通「………………」チラッ


提督「………………」























【ナレーション】

激励会を終えた一航戦は、その足で軍用列車に乗り込み北を目指した。





@列車内



瑞鶴「…………」zzz


翔鶴「……ふふ……」ナデナデ





村雨「ふぁ〜……眠い……」


夕立「…………はっ!」ビクッ


夕立「今……ちょっと寝てた」


村雨「がっつり寝てたわよ」





夕立「んー……ちょっと寒いっぽい」


村雨「大分北上したからね〜」


夕立「村雨あったかいっぽい……」ぎゅーー


村雨「くっつかないの〜」


夕立「……なんか村雨、全体的に柔らかくない?」


村雨「…………」


べしっ


夕立「あうっ!」







由良「大井がいました、それと夕張も」


提督「……そうか」


由良「会わなくてよかったの?」


提督「…………会いたかった」


由良「……ぇ」


提督「なんだよ」


由良「ぁ、いや…………そ、そう……ふぅん……」


由良「…………む、向こうも会いたそうだったよ?」


提督「…………良かったな」


由良「え?」


提督「会いたい者がいるのに会わずにそのまま死ぬ馬鹿はおるまい」


由良「……そうだね」






【ナレーション】


ある者は南に、またある者は北に……


南方戦線起死回生の一手は果たして奏功するのか。


一世一代、大勝負の始まりである。







つづく







phase04 暗礁



【ナレーション】


南方戦線に派遣される援軍の激励パーティに参加した後、一航戦は拠点を北は単冠湾泊地に移した。




南方戦線に援軍が到着してからひと月。



戦力は拮抗し、南方戦線は再び膠着状態となった。




一航戦が新たに赴任した北方海域は南方海域に比べると深海棲艦の動きが鈍く、稀に小規模な戦闘が単発的に起こる程度であった。









提督「あぁ^〜……」


由良「もう……だらしないですよ?」


提督「いやぁ〜……平和な時間が続くとつい……」


由良「ふふっ……まぁ気持ちはわかりけどね」


提督「いい場所だなぁ単冠。もうずっとここがいたいものだ……」


由良「帝都より涼しくて快適だしね」





時節は8月。

ミッドウェーの大敗北から2カ月経っている。




提督「書類整理もないし、少し風に当たってくる」


由良「はーい」




ガチャ



バタン





由良「…………ふぅ……さてと……」




由良「………………」




由良「…………」チラッ







軍服の上着<コンニチハ






由良「………………//」




由良「…………」キョロキョロ



由良「…………周囲に人影なし」







由良「…………っ//……失礼します//」




ばさっ



ぎゅっ




由良「…………/////」スンスン





由良「〜〜っ♡」スリスリ




ガタッ



由良「!?」






しーん






由良「気のせい……かな……?」





由良「…………ね、念のため」スタスタ




ガチャ



由良「……」ヒョコッ



由良「……」キョロキョロ




バタン





由良「……誰も……いないよね?」











由良「…………よし」





由良「…………/////」つ軍服






由良「〜〜〜〜♡」ぎゅーー




すんすん

くんかくんか



由良「……/////」スリスリ








@泊地敷地内






提督「……静かだ……」


提督「……水の音しか聞こえん……」


ザパーン


提督「…………」




ジジジジジジジジジジ



ジジジジジ



提督「いや、存外虫もうるさいな」






提督「まぁこれも……単冠の夏の風物詩か……」


提督「いいものだ……」




提督「…………」




提督「…………」





瑞鶴「…………」







提督「…………」


瑞鶴「…………」ソロ-リソロ-リ








提督「…………」


瑞鶴「…………わっ!!」




提督「うわあああああああああ!!!!!!!」ビックゥ!!


瑞鶴「!?!?!?!?」ビックゥ!!






提督「な、なんだ瑞鶴か……驚いた……」


瑞鶴「」






提督「……おい?瑞鶴?」


瑞鶴「び……」







瑞鶴「びっくりした……」








瑞鶴「提督さんってさ、たまにだけどなんで夏なのに冬用軍服羽織ってるの?」


提督「こっちは朝たまに冷え込むだろ?」


瑞鶴「寒がり?」


提督「まぁ……うん」


瑞鶴「ふーん……」









提督「そういえば2人で話すの初めてだな」


瑞鶴「そ、そうかもね」


提督「何固くなってる?」


瑞鶴「そりゃ、上官の前だし……」


提督「そういうもんか」


瑞鶴「そうでしょ」


提督「…………そうか」








提督「今朝の発艦訓練良かったぞ、様になってきたな」


瑞鶴「当然!ずっと訓練してきたんだから!」


提督「ああ」


瑞鶴「……あのさ……えっと」


提督「?」


瑞鶴「いや……やっぱりなんでもない……」


提督「言ってみろ。言ったろ、何でも言えと」


瑞鶴「じ、じゃあ聞くけど……」


瑞鶴「提督さんって輸送部隊出身なんでしょ?」


提督「よく知ってるな、そうだ」


瑞鶴「機動部隊の指揮取れるの?」


提督「無理」


瑞鶴「へぇ〜そうなn……え?」


瑞鶴「ちょっ今!今なんて!?」


提督「なんだ、どうした急に大声出して」


瑞鶴「なんでそんな冷静なの!?!?」


提督「何が?」


瑞鶴「機動部隊」


提督「うん」


瑞鶴「指揮できるの?」


提督「うん」


瑞鶴「ほっ」


提督「いや無理」


瑞鶴「ってほらぁぁぁぁぁぁぁあ!!」




提督「なんだ大声出すな耳が割れる」


瑞鶴「いや!由々しき問題だよこれは!!」


提督「半人前なのはお前たちだけじゃないのだ」


提督「お前たちが訓練を重ねているように俺も必死に勉強している」


瑞鶴「えぇ……」




提督「なんだ信用出来んと申すか」


瑞鶴「いやそうは言わないけど……」




提督「そうまで心配と言うなら」


提督「勝負するか」


瑞鶴「……え?」





提督「俺が機動部隊をこの手で巧みに操る名将となるのが先か……それとも……お前が一人前の一航戦瑞鶴になるのが先か」


提督「どうだ、瑞鶴」




瑞鶴「へぇ……」




瑞鶴「いいよ、やる」




提督「よしよし……そうこなくっちゃ……」


提督「じゃあ勝った方が、そうだな……」





提督「その日の夕食奢るのでどうよ」


瑞鶴「っておいなんかちっさいな」


提督「いいんだよこれくらいで」




瑞鶴「まぁいいけどさ……」






瑞鶴「……ん?」






瑞鶴「え?勝った方が奢るの?」




提督「そらそうよ。勝者ってのは、そもそもそれくらいの器のデカさがなきゃ勝者にはなれんのよ」


瑞鶴「な、なるほど……」




提督「どうする?」


瑞鶴「わ、わかった」


提督「決まりだな」





提督「楽しみにしてるぞ、お前に夕食を奢ってやる日を」


瑞鶴「こっちこそ、一番高いメニュー奢ってあげるんだから」






提督「ふっ……」













提督「というわけで一回分夕食タダになるぞ、やったぜ」


由良「散歩に行って帰ってきたと思ったらこれだよこのド外道提督さんは」


提督「ひどい言い草だな」


由良「酷いのは貴方の根性よ……」


由良「部下から夕食代掠めとるなんて情けないよ?」


由良「お金ないなら、由良の使っていいから……ね?」


提督「うっ……あーもーわかったよ」


提督「冗談だよ冗談」


由良「もう……まぁそんなことだろうとは思ったけど」


提督「ほう?」


由良「提督さんはファッション外道だから」


提督「褒められてるのかねそれは」




由良「…………」


提督「…………」




提督「まぁ安心しろ。この第一航空戦隊司令長官、そこまで落ちぶれちゃいないさ」フッ


由良「えぇ……何言ってんのこの人……」


提督「いやぁそれにしても瑞鶴は面白い、瑞鶴面白いよ瑞鶴」


由良「……?」


提督「あれは真っ直ぐ俺の目を見て話す……気に入った」


由良「……ふぅん?」


提督「?どうした由良」


由良「なんでもないです」プイッ


提督「何怒ってるん?」


由良「べっつにー!」ペシッ


提督「おふっ……まぁせっかく勝負することにしたんだ。したからには勝たねば」


提督「俺は1日でも早く輸送部隊指揮官から」


提督「"一航戦司令長官"になってみせるよ」


由良「……うん」








@翔鶴型私室





瑞鶴「ってことになってね!勝負というからには、負けてられないわ」


翔鶴「ふふっ……」


瑞鶴「??翔鶴姉?」


翔鶴「良かったわね、仲良くできそうで」


瑞鶴「べ、別にそんなんじゃ……」


翔鶴「提督はあなたを気に入っているのよ」


瑞鶴「そうかなぁ……」


翔鶴「頑張って1日でも早く一航戦として胸を張れるように精進しましょう」


瑞鶴「……うん!」









ラジオ『南方戦線は攻勢。8月16日、軽巡神通が、旗艦空母ヲ級、戦艦ル級を撃破。』






提督「…………」


由良「提督さん、お茶を淹れました」


提督「おお……ありがとう」ズズッ


提督「しかし……夏とは思えんな」


由良「朝は少し寒いくらいね」フ-フ-


提督「そうだな……寒暖の差で体調を崩さないようにしないと」




ラジオ『雷巡大井が夜戦にて戦艦タ級を撃沈。これにより……』




由良「あっ大井がラジオで報道されてますよ」


提督「ほんとだ。かつての部下がこうして活躍するというのはやはり嬉しいな」


提督「……あれ、いつから呼び捨てに?」


由良「うふふ……仲良しですから」


提督「……そうか」


由良「何しみじみしてるんですか?」


提督「何でもない」


由良「……?」



一航戦の面々が単冠湾の生活に慣れてきた頃。


南方戦線の戦況をラジオで聴くのが、彼らの最近の日課となっていた。



由良「今日から図上演習ね」


提督「そう。戦に勝つのに必要なのは個々の練度だけではない。」


提督「戦は一対一ではないからな。俺は艦隊としての練度こそが最も重要と考えている。


提督「そしてその艦隊としての練度に直接的に影響するのが戦術理解力だ」


由良「戦術を深く理解出来ていれば僚艦同士の意思疎通もミスが起こりにくくなるからね」


提督「そうだ。気を引き締めていこう」


由良「はいっ」












提督「えぇっ!そんなことできんの!?」


提督「待った待った」


村雨「待ったなしよ?」


夕立「あーあ!やっちゃったぽい」


提督「…………」


瑞鶴「うわぁ……味方壊滅じゃん」


提督「言うなって!」


翔鶴「機動部隊同士の海戦では、先に見つけて先に叩いた方が勝ちですから……」


瑞鶴「なんで転進したの?」


提督「うぅ……すまん」


由良「水雷戦隊ならここは引く局面だったんです」


村雨「水平線に隠れて追跡しつつ隙を伺うのが定石だから……」


瑞鶴「やっぱりそういう思考の癖?って中々抜けないものなの?」


提督「うう……頭では分かっているんだが、感覚的にここで攻めるのはこわいんだよ」


提督「水雷戦隊や輸送艦隊は機動部隊に比べて脆いから、どうしても慎重になってしまう」


翔鶴「私たちが夜戦にもつれ込むのが嫌なのと似ているのかしら」


瑞鶴「あー……なんか分かった」


瑞鶴「そりゃたしかに怖いかも、うん」


提督「はぁ……これは思ったより苦戦しそうだな」


翔鶴「大丈夫ですよ提督。どんどんやりましょう。次のパターンは……」


提督「よっしゃ」








瑞鶴「全滅したけど」


提督「」


夕立「提督さん雑魚っぽ〜い」キャッキャキャッキャ


村雨「ちょっ夕立!?」


提督「ぐはっ」グッサァ


由良「あぁ……提督さん……」










翔鶴「今日はここまでにしましょうか」


提督「……はい」シュン






夕立「ぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽーーい」


由良「提督さんがあんなに間違えるなんて……びっくりしちゃった」


村雨「結構難しいんですね」


瑞鶴「提督さんって根は素直で真面目なんだね。すごく私たちの意見を興味深そうに聞いていたし」


翔鶴「懐が深くていい人よね……」


由良「!?」


村雨「!?」


瑞鶴「でも実際あそこまで慎重にならなきゃいけないの?輸送作戦って」


瑞鶴「……村雨?由良?どうしたの?」


村雨「え?あ、えーっと……輸送作戦は神経を使うのは間違いないです」


瑞鶴「ほーん……」






夕立「村雨〜!」ガバッ


村雨「きゃあっ!?」


瑞鶴「!?」



もみもみ




夕立「むはー村雨のおっぱい大っきいっぽい〜」フニフニ


翔鶴「あらあら……」


村雨「夕立!?///何やってるの!やーめーてー!!」グイグイ


由良「…………あーそういえば由良用事あるんだったー」ソソクサ





夕立「……」チラッ


翔鶴「……?どうしたの?」


夕立「翔鶴さんのも柔らかそう……」


瑞鶴「ちょ!夕立!?」


翔鶴「うふふ……後でお風呂で触ってみる?」


瑞鶴「え!?」


夕立「いいの!?」


翔鶴「ちょっとだけよ?」


夕立「わーい!!」






瑞鶴「…………」スッ



ガシィッ



瑞鶴「…………な、なにかな?」


夕立「逃がさないっぽい」




瑞鶴「わ、私用事を思い出して……」


ふにっ


瑞鶴「うっ……//」





夕立「……」


瑞鶴「…………」


夕立「物足りないっぽい」






夕立「いや、物足らんやり直し!!」ドドン






瑞鶴「」


村雨「えぇ……」


翔鶴「あら……」









瑞鶴「」チ-ン






村雨「……え、えーっと……」






村雨「大きいのってほら、不便、ですよね!?」




村雨「ね!?翔鶴さん!!」


翔鶴「……え?そうかしら?」


村雨(翔鶴さんんんんんんんん!!!)





村雨「ほ、ほら!走ったりすると痛いですし!」


翔鶴「あぁ〜分かるわ。肩も凝るのよね」


村雨「あ!それわかります!」


翔鶴「昔蒼龍さんによく効く肩揉みの仕方を教わったの、今度教えてあげるわね?」


村雨「えー!ありがとうございます!」







瑞鶴「えっと……あ……あの……」蚊帳の外




【ナレーション】

持たざる者は持つ者を妬み、

持つ者は持たざる者の気持ちが分からない。


世の習いである。







夕立「あれー?由良はー?」


村雨「あれ?そういえば……」


翔鶴「そうね、さっきまでいたのに」









由良「…………」ササッ






由良「……ふぅ……逃げ切ったわ」















図上演習台<オイオイ...ビビッテンノカ?



提督「ぐぬぬ……」


提督「……これでいいのか?いや……無謀なんじゃないのか……?」ブツブツ


提督「おっふ……」






ラジオ『南方戦線は攻勢を強め、戦線を前進させる模様。』



提督「……は?」



タッタッタッ




ぺらり



南方戦線勢力図<コンニチハ



提督「おいおい……大丈夫か……?」





単冠湾の束の間の平穏。

しかしその穏やかな日常も、終わりを迎えようとしていた。




続く







phase05 奇襲



【ナレーション】

単冠湾で、束の間の休息を営む一航戦。



それとは対照的に、南方戦線では連日のように大規模な海戦が起こっていた。


戦況は拮抗状態から徐々にこちらが優勢になり、戦線は前進。


ついには最前線拠点としてラバウルまでも海軍が手中に収めた。






@単冠湾泊地、提督執務室




提督「南方戦線は絶好調だな」


由良「ええ、ラバウルまで艦隊を進めて泊地を築いたようですね」


提督「随分遠くまで行ったもんだ、補給はどうするんだ?」


由良「さぁ……?」






提督「ふっふっふっ……」






由良「提督さん……?」


提督「そこで我らの出番なわけだよ」


由良「え?」


提督「見ろ」つ指令書


由良「一航戦は用意出来次第速やかに輸送艦隊を編成し、ラバウルへの物資補給に助力されたし……って」


提督「おうよ……久しぶりの輸送作戦……腕が鳴るのう……」


由良「……機動部隊で輸送作戦やるの?」









由良「…………」









由良「…………ハッ!」











由良「提督さん……大丈夫?熱でもあるんじゃ……」スッ...


提督「ちげーよ」








提督「輸送作戦って言っても、敵地に飛び込む鼠輸送じゃない」


提督「それよりも、俺たちが空母を引き連れて行くことに意味があるのだよ」


由良「どういうこと?」


提督「新一航戦が来ていると聞けば士気も上がるに違いない」


由良「そうなの?」


提督「いや知らん」






由良「うーん……」クラッ







由良「こっちが頭痛くなってきた……」


提督「せっかくの南方の奴らに恩を売るチャンスだ」


提督「行かない手はあるまい」


由良「それが本音ですか……」


提督「早速準備と行くかー!」


由良「おー……」










翔鶴「南方戦線へですか?」


提督「うん。艦隊行動の訓練も兼ねてね」


瑞鶴「ふーん……そういうことならいいんじゃない?」


由良「…………」











提督「みんなにも伝えたし、支度するぞ」


由良「艦隊行動訓練なんてやるの?」


提督「え?やらん。なんで南方まで行ってそんなことすんだよ」


由良「もうヤダこの人……」










2日後





提督「南方戦線は絶好調だ。味方が好調なうちに少しでも恩を売っゲフンゲフン……お味方に加勢する」


提督「それでは参ろうぞ!」


由良「おー……」


翔鶴「おー!」


瑞鶴「お、おー!」


村雨「おー」


夕立「ぽーい!」











単冠湾を発って3日後……



一航戦は、目的地のラバウルから西に大体5300キロに位置するリンガ泊地に到着した。



リンガ泊地は、マレー半島の先っちょの沖にあるリンガ島に築かれた我が軍の拠点である。





8月29日