2018-03-28 16:56:22 更新

概要

20XX年、10月17日。駆逐艦「不知火」は、大破擱座した駆逐艦「早霜」救助に向かい、撃沈される。
謎のエラー娘の手により、彼女が飛ばされた地は、宇宙世紀0083年、デラーズ・フリートによる星の屑作戦が今まさに行われている世界だった———


不知火「ん…味方機が…」

グリーンのゲルググMが、不知火の機体の肩に手を触れた。これは俗に「お肌の触れ合い回線」と呼ばれるもので、ミノフスキー粒子戦闘濃度、通信もまともに出来ないような状況下や、無線の内容を傍受されたくないような時に使われる方法だ。

海兵隊兵A「お前は何処の所属機だ?その機体に乗っているという事は海兵隊だろうが…シーマ艦隊の者では無いな?」

不知火「シーマ艦隊?志摩艦隊と名前が似ていますね。」

海兵隊兵A「志摩艦隊?何だ?そりゃ」

不知火「いえ、こちらの事です。お気になさらず。」

海兵隊兵A「その声…貴官、女か。」

そのトーンはやけに普通だった。よくある展開なら驚かれそうだったが、この兵士は戦場に女性がいるのが普通のような口ぶりだった。だが、女性だから、という理由で何か区別されるのを嫌う不知火にとって、それは悪くない、むしろ心地良ささえ覚えさせるものだった。だから、それに関して何か答えようとはしなかった。

不知火「所属…ですか。」

返答に困った。「第18駆逐隊」なんて答える訳にもいかないだろう。

海兵隊兵A「今時そいつに乗っている奴は久し振りに見た。同じ海兵のよしみだ。どうだ、共同作戦と手を打たないか?」

不知火「…分かりました。」

この機体に乗っていることを、不知火はこの時ばかりは「エラー娘」とやらに感謝した。

海兵隊兵A「戦力が増えるのはこちらにしても大歓迎でね。さぁ、遅れる訳にはいかん。敵はあの『ガンダム』だからな。」

ガンダム。その名前は聞いたことがあった。そう、提督が勤務時間外によく見ていたロボットのアニメだ。この世界は、その世界観なのだろうか?そんな荒唐無稽な事が起きるのか、一瞬疑問を抱いたが、沈んだはずの自分が蘇るくらいなのだから、もう何でもありなのだろうと割り切る事にした。

海兵隊兵A「目標はあの双胴のヤツだ。アレにガンダムが配備されていると聞いた。装備は何を持ち合わせている?」

不知火「マシンガンですね。対艦戦には些か不向き。私は艦載機を落とします。」

海兵隊兵A「判った。お互い墜とされないよう気張ろうじゃないか。」

不知火「そうですね。こんな所では死ねませんから。」

3回も死ぬなんて御免ですから。その言葉が不知火の口から発せられる事は無かった。


スラスターを吹かしながら、前方を駆ける、X字状にプロペラントタンクを装備したゲルググMに追随する。

シーマ「なんだい、一人増えてる…お仲間さんかい!?」

海兵隊兵B「シーマ様、同胞ですぜ!」

シーマ「勝手に付いてくるのは良いが、勝手に死ぬんじゃないよ。」

不知火「シーマ様…あの人が、シーマ艦隊の…」

しかし、艦隊司令自らが艦載機を駆って戦うだなんて、不知火は聞いた事が無かった。

シーマ「狙いはあの白い艦さね…直掩機に注意しな!」

海兵隊兵A「さぁ、俺たちも行くぞ。」

不知火の機体を含め、ゲルググMは4機。だが、シーマが巡洋艦を既に2隻沈めていた為、残るは白亜の双胴艦…「アルビオン」のみとなっていた。

不知火「ん…?」

モニターを凝視する。甲板上で何かが動き出したのが見えた。すかさずズームし、それがMSであることを認識した。

不知火「敵の艦載機が出てきました。」

シーマ「白い奴…私が行く!お前たちは艦をやれ!」

海兵隊兵A「了解!」

コウ「カタパルトは駄目だ…」

白亜のMS…ガンダム試作1号機「ゼフィランサス」は陸戦仕様だった。空間戦において、他のMSに劣るのは確実。その上、コウの独自構築した空間戦闘用OSには、重大な欠陥を抱えていた事に、彼は気付いていなかった。カタパルトのロックを外し、スラスターで甲板を離れたガンダムは、抵抗のない宇宙空間で「溺れて」いた。機体各部の姿勢制御バーニアで強引に姿勢を保ちながら、ビームライフルを放つが、ふらつく機体ではまともに照準を合わせる事さえ叶わなかった。

海兵隊兵B「何だァ…バランサーがいかれてるのか?」

乱射した光軸は、ことごとく外れた。至近弾もデブリに命中し、肝心の敵機に対しては威嚇以外の何の効果も見せていない。だが、その時だった。

海兵隊兵B「赤子同ぜ…何ッ!?」

まぐれか、運が良かったのか、一発の光軸がゲルググMの腹部を捉えた。コクピットの中はスパークに包まれ、機体はすぐに爆散した。

不知火「…ッ!」

人の死。仲間の死。あのパイロットの一瞬の慢心が、それを現実のものにした。

コウ「当たった…!」

コウは自分でも驚いていた。しかし、それはまぐれにしか過ぎなかったのだと痛感させられる。

シーマ「馬鹿め、大切な機体を…油断などしているから…!ん?」

依然、ふらつく躯体を安定させることの出来ないガンダム。シーマはそれを見逃しはしなかった。

シーマ「何だ…こんな奴に!?」

シーマ専用ゲルググM、通称「マリーネ・ライター」は、補給の絶たれたシーマ艦隊では唯一、ビームライフルを携行している機体だった。長銃身から放たれる高出力のメガ粒子の塊は、ルナ・チタニウム合金製のガンダムの装甲に、次々と傷を負わせていった。だが、いつになっても墜ちる気配は無い。左腕が破壊され、メインカメラが潰され、何発も何発もビームを受けても、機体に明確な致命傷を与えられているようには見えない。

ニナ「ああっ…さっき引き留めてさえいれば…」

シーマ「なんて装甲だい…しぶといねぇ!」

海兵隊兵A「シー…隊…、そ……ろ潮時…す!」

ノイズ交じりの無線がコクピット内に響く。

シーマ「墜ちないんだよォ!」

コンソールに表示される「Stromausfall」の文字。ビームライフルのエネルギーは尽き、シーマは咄嗟に武装を機関砲に切り替え、110mm徹甲弾を叩き込むが、横槍を入れるように、熱センサに新たな反応が現れる。

バニング「生きてるな、ウラキ少尉!」

海兵隊兵A「チッ、増援か…」

不知火「仕留めてから帰還しましょう。左翼をお願いします。」

海兵隊兵A「えらく手慣れてるな…了解だ。」

だが、手慣れているのはバニングも同様だった。接近した「海兵隊兵A」のゲルググの放った射弾をジム・カスタムはするりと躱すと、セフティを全て解除したジム・マシンガンが火を噴く。実弾と言えど、U.C0083年時においては最新鋭のMS用火器。ゲルググMの超硬スチールに次々と破孔を穿っていく。

不知火「やったな…!」

味方を二人も墜とされた不知火は、既に冷静さを欠いていた。普段は黙々と敵を撃破していた彼女であっても、次々と訪れる味方の死を落ち着いて受け流せるほどの余裕は持ち合わせてはいなかった。

不知火「沈め…!」

マシンガンを手放し虚空に放り投げると、両腕の機関砲で射撃する。威力と派手さはこちらの方が上。だが、バニングはその単調な射撃を見切り、舞うような回避機動でよけ切った。苛立つ不知火をよそに、シーマは撤退を決意した。

シーマ「やられた…癪だねぇ!けど今日の所は見逃してあげるよ!…お前も付いてきな!」

不知火「…分かりました。」

バニング「ほう…いい退き方だ。」

不知火「(何も、出来なかった。仲間がやられていくのを見ている事しか。こんな事では…不知火は…ッ!)」


~リリー・マルレーン近傍


シーマ「どうしたんだい、着艦だよ。後ろが閊えることは無いがさっさと済ませな。」

不知火「…良いのですか?私が。」

シーマは呆れたように返す。

シーマ「奴に感謝しな。その機体に乗ってなきゃ拾ってないね…」

不知火「……ありがとう、ございます。」

シーマ「…なんだい、調子が狂うねぇ…」






















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