2018-08-25 03:09:30 更新

概要

「あの怪物達は瞳から透明な血を流しているんだ――」雨村調査の最中、怪物に飲み込まれてゆく怪獣達の存在を知る。光が闇を帯び、闇が光輝く混沌の夜をアダルト?に往くわるさめちゃん&アブーの戦後日常編。


前書き

※キャラ崩壊&にわか注意です。

・ぷらずまさん 
被験者No.3、深海棲艦の壊-ギミックを強引にねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた電ちゃん。なお、この物語ではほとんどぷらずまさんと電ちゃんを足して割った電さん。

・わるさめちゃん
被験者No.2、深海棲艦の壊-ギミックを強引にねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた春雨ちゃん。

・瑞穂ちゃん
被験者No.1、深海棲艦の壊-ギミックをねじ込まれ、精神的にダークサイドに落ちた瑞穂さん。

・神風さん
提督が約束をすっぽかしたために剣鬼と化した神風ちゃん。今は提督の立派な秘書官目指して活動中。

・戦後復興妖精(悪い島風ちゃん)
島風ちゃんの姿をした戦後復興の役割を持った妖精さん。

・明石君
明石さんのお弟子。

・陽炎ちゃん
今の陽炎の前に陽炎やっていたお人。前世代の陽炎さん。

・元ヴェールヌイさん(北方提督)
今の響の前々世代に響やっていたお人。
北国の鎮守府の提督さん。

・海の傷痕
本編のほうで艦隊これくしょんの運営管理をしていた戦争妖精此方&当局の仮称。ラスボス。

・フレデリカ
かつての鎮守府で深海妖精を研究していた例の女提督であり、瑞穂、春雨、電をトランスタイプにしたC級戦犯。頭はめちゃ良いけど常に人形を持ち歩かないと気が触れる異常性癖の持ち主。

・雨村
戦後に設立された新省にやってきた男の人。電さんいわく、こいつからはフレデリカと同じ狂気を感じたとのことで鎮守府(闇)の一部からマークされている模様。

※やりたい放題なので海のような心をお持ちの方のみお進みください。ベースは艦これですが、上記の通りオリジナル要素が強いです。


【1ワ●:アブー&わるさめ+づほの調査探偵団】


漣「なぜ漣が飯の支度をー。早起きして疲れたー」


瑞穂「うるさいわね……官僚のやつらで人が増えたから厨房の人手不足なのよ。なんであいつらの分まで飯作らなきゃいけないとかわかんないけど」


北方提督「でも漣が作ったんだよね。料理出来たとは意外だ」


漣「うちの鎮守府でまともな飯作れたの私を覗いた7駆と球磨さんだけだったんですが、私もタメになるかなーとみんなと混ざってね」


漣「ちなみに家庭的な面が開花してさばの味噌煮が得意料理です!」


漣「花もはじらう16歳のつるぺたすってんとん!この上で鰆さばいたらハオチー! へいおまち!」


漣「お味噌ぬって豊乳摂取イソフラボンキュッボン! でも中学生から身長全然変わんない!」


龍驤「……」ゴバッ


わるさめ「止めろ漣その歌は龍驤に効く」


卯月「しっかし、明石君いなくなって少し寂しくなったなー。同僚の男一人いるからこその面白みが損なわれたぴょん」


阿武隈「卯月ちゃん、その座りかたははしたないので止めなさい。今日はスカートなんだから、足を大きく開いて座るのは」


卯月「お尻かゆいぴょん」


わるさめ「わるさめちゃんも男の目がないなら脱ぎ癖が止まらなくなるかもしれん。末期の女子高みたいになるぞ」


甲大将「恥かくのお前らだぞ」


阿武隈「本当ですよ」


甲大将「そういや鹿島達はもったいねえよな。明石のやつは良い男だと思うんだが、どこが気に食わなかったんだ?」


球磨「大将がそんな話を振るとは槍が降りかねないクマ」


甲大将「耳に入りゃ気に留める出来事だろ」


江風「どー考えても山風のために身を引いたんだろ」


山風「江風……お前……!」


山風「あ"?」


江風「こ、怖くねーぞ!」ガルル


木曾「山風はちゃんと告ったのか? 仲間だろ。隠し事なしで行こう。素直におめでとう、か、ドンマイの言葉を送るくらいしかできねえけど」


山風「……ほっといて」


瑞穂「くっだらない……あいつのどこが良いのか分からないわ。まだ悪魔提督のが賢い分マシよ。そういえば官僚の男増えたけど、誰か声かけられた? うざそうなやついたら教えてね。瑞穂ちゃん基本的に男嫌いだから」


阿武隈「あー、間宮さんのこと聞いてくる人は多かったかな。料理を食べたかったって人はもちろん、やっぱり間宮さんの印象的なものもあると思う」


漣「艦娘って誰が一番人気あるんだろー」


北方提督「客観的に考えて響だろう」


瑞穂「世の中ロリコン多すぎて引くから宇宙に行くわ」


わるさめ「でも第6駆は人気高いよねー……」


甲大将「やっぱ大和じゃねえかな」


丙少将「……」ガタッ


北方提督「シスコンその2は座っててくれ」


丙少将「お前ら兵士も大体シスコンだろうに」


北方提督「いわれてみれば……」


龍驤「一位は現役アイドルの那珂ちゃうの。それか最高艦兵士の電」


わるさめ「あれを電たんだと私は認めないゾ☆」


阿武隈「それいったらあなたを春雨さんだとは認められないんですけど!」


卯月「くだらねー。そんなの人気投票でもしないと答え出るはずねーぴょん。いいか、みんな気になるのは分かるけど心に傷を負いたくなきゃググるなぴょん」


北方提督「……そういえば今朝のニュース観たかい? 横須賀の研究部のバリメロンとDSSだったかな。想力商品の開発が行われていて、明石君も映ってたよ。商品の導入は早いから阿武隈と卯月は動向をチェックしとけば?」


卯月「なぜアブーとうーちゃん?」


北方提督「ゲームだからだよ。アーケードは試作導入で、家庭用もすでに視野に入ってるそうだ。なんとダイヴ型のシュミレーションゲームだってさ。まあ、内容は『艦これ』だそうだけどね。プレイヤーは提督で艦隊指揮するんだってさ」


阿武隈・卯月「……」キラキラ


龍驤「うちら兵士はリアルでやってたし、ダイヴ型も戦後復興妖精のやつでやったやろ……なにをそんなに楽しそうにしてるの」


木曾「提督の経験はないからじゃねえの。龍驤はあるけど」


阿武隈「それもありますが、ゲームですから全国のプレイヤーが参加するんですよ! あたし達はゲーマーなので血肉湧きます!」


卯月「問題は導入店と導入数だぴょん。朝一で並んでも下手したら1日潰れそうだぴょん」


龍驤「そうまでしてゲームやりたい気持ちが分からん……」


漣「もしも導入されたら大将もやってみたら? モノホン伝説提督勢と戦えるイベントとかプレイヤーの皆さん喜ぶんじゃないですかー?」


甲大将「嫌だよ……そういうゲームに興味ねえや。賭博周りのゲームは嫌いじゃねえんだけどな」


北方提督「そうそう、賭博で思い出したけど……」


…………………


…………………


瑞穂「それでわざわざ人気なくなってからの話ってなによ」


わるさめ「チューキちゃん達やフレデリカの名誉挽回って瑞穂ちゃん考えているよね。フレデリカはC級戦犯、チューキちゃん達も鹿島艦隊の悲劇とか人間の死体かき集めていたし、難しいよね……」


瑞穂「あの悪魔提督ですら叩かれたからね……」


わるさめ「今でもフレデリカのことは好きなんだよね?」


瑞穂「それが分からないあんたじゃないはずよ」


わるさめ「まあ、私自身もチューキちゃん達も咎人だからね。それでももちろん、好き。だから私達には資格交付が見送りされたんだよー……」


わるさめ「仮にフレデリカに似たやつがいたとしたら、瑞穂ちゃんってどんな感情を抱く?」


瑞穂「関わらないようにするし、相手にも釘。しつこかったらキレる」


スッ


わるさめ「どうよ、この写真に映ってるやつ」


瑞穂「ちょっとフレデリカさんと似たモノを感じるから言いたいことは分かるわ」


わるさめ「そう。ならもう一個……多分」


わるさめ「瑞穂ちゃん、こういう雰囲気のやつ好きだよね?」


瑞穂「……あのねー、わるさめ、私は男に婚約破棄されてなんやかんやで軍に来たの。私自体、箱入りだったからフレデリカさんみたいなぶきっちょに好感を持てただけでね。その結果、私はどういうやつか分かったわ」


わるさめ「そんな経緯が……昔にフレデリカの秘書やってた時からお嬢様感は出してたなって思ってたけど」


瑞穂「こいつがどんなやつかは知らないけど、電、阿武隈、卯月、鹿島、由良、天城、長月、菊月、弥生、間宮、昔の面子+神風か。こいつら複数がこの男にフレデリカさんのような雰囲気を感じたのなら……」


瑞穂「万が一があるから関わらないほうが無難よ。それで阿武隈、あんたもここにいるってことはこいつからヤバい気配を感じたのね? あの頃のフレデリカさんの狂気に気づかなかったあんたが気づくって露骨そう」


阿武隈「似ているからって危険とはあたしは思いませんけどね……ただ想力のこともありますし、万が一に備えて気に留めておかなければならない案件だとは認識していますよ。まだ除隊ではないのであたしは鎮守府の旗艦ですし」


瑞穂「特にちびどもにいっときなさいよ」


瑞穂「愛だけじゃ救えねえものもあんぞってね。そして愛じゃ救えねえもんはイカれてるって相場が決まってるのよ」


瑞穂「私より電と……神風か。その二人に釘刺しておきなさいよね。あの二人は悪魔提督周りで直情的すぎてすぐに沸点越すからハメやすいわ。周りから見たら利用しやすいタイプだから」


瑞穂「力欲しさにもがいていた神風はうちの鎮守府にいたら絶対に被験者No.4だったでしょ」


阿武隈・わるさめ「……」


阿武隈「こうやって瑞穂さんと話すのもお久しぶり……猫かぶりしていない瑞穂さんとは初めてですか。前はもっとおっとりしていてそんなドスきいた声じゃなかったのに。それに電さんよりも発狂癖があるイメージでしたけど、意外と」


瑞穂「心外ね……」


阿武隈「まあ、あたしはこれからちょっとこの写真の雨村さんについて調査します。一応、仕事の関係もある明石君にも昨日に事情を伝えたおいて、なにかあれば細かいことでも教えてください、と頼んでおきましたしね」


瑞穂「調査あ? 雷のやつに頼めば?」


阿武隈「すでに。ちょっと官僚の方とコンタクト取れたので、何気なく雨村さんについて聞けたらなって。あの人はどうも目立つ……優秀ですけど悪い意味でも角の立つ人のようです。こちら側にも積極的に話かけているようですし、何気なく話に持ってはいけそうですからね」


わるさめ「私達の間ではなにか目的があって想力省に来ているまでは確信してる」


瑞穂「大体のやつがそうでしょ……まあ、なにかそれが他の奴とは違ってヤバそうだって思ってそうだけど、想力なんだから大体のやつが革命思想持ってるはずよ」


わるさめ「とにかく瑞穂ちゃん、雨村ってやつになにかされたら私達に教えてよね。司令官やフレデリカ相手にキレても意味ないと思うから」


瑞穂「はいはい……ただの人間になった以上、自分からトラブル起こそうなんて思わないわよ。私が感情ストレートに出すのは鎮守府の連中だけだから安心しなさいな」


わるさめ・瑞穂「……」


わるさめ・瑞穂「がおー」


阿武隈(それって中枢棲姫勢力の間でどんな意味があるんでしょう……)


2


「まあ……皆、想力省に志願するくらいなので悪気はないと思います。あなた達と会話するのも仕事の一環と見ている節は否めませんね。情熱的なやつばかりですよ。ただ感情的なのも多いので、時にはデリカシーに欠けるのが傷です。こちらからも気を配ります」


わるさめ「あー、そうなんだよ……こほん、そうですか」


わるさめ(やば、一般人との喋り方忘れかけてたわ……)


わるさめ「面白い方がたくさんいますよね。ただ仰る通り、議論に熱があがってケンカに見える方もいますね。うちにもいますよー。明石君なんか直情的ですね。バリメロンとの仕事柄、想力省から派遣された雨村さんに失礼しないか心配です、はい」


「雨村かー……ちょっと失礼がないか心配ですね。あいつ変わってますから」


「同期ですから交友はあるんですよ。希望するキャリアも明確で官僚の仕事とは別方向の熱が露骨なため、ちょっと煙だがられているというか。悪いやつじゃないし、面白いという意味で個性的なので刺激にはなりますけども」


阿武隈「へえ、キャリア、ですか。なにか将来の夢が?」


「確か代議士ですね。官庁で経験を積んで国会議員に転身したいみたいです。想力省から転身した議員は絶対に出てくると思います。だから雨村は想力省に来たんですよ。多分、狙うポストは今の准将の倫理課ですかね……」


「今、政府は露骨に腐ってる……まあ、中枢がですね。政治をよく知らない国民にすら見抜かれるレベルですよ。一人のために質を下げるような真似をしてばかり。天下りなんかそれです。あなた達対深海棲艦海軍も一部そうですよ。内勤の上の役職に海の戦争に関して素人同然の年寄りが流れてます」


「疑惑の判定って有名でしょ? プロのあなた達から見て余りに露骨なのはその手のやつが関わってるケースも多いと思いますよ。私はそういうところ直したいがために人事改革案を提唱しているのですが、実現までの道のりは遠いですねー……」


阿武隈(なるほどー、疑惑の判定ってそういう裏事情も絡んでたんだ)


「今、身内で問題になってるのですが、艦娘……失礼、艦兵士の総合戦力ランキング見ました?」


わるさめ「へ? なんですかそれ?」


「戦後復興妖精とのいざこざ終わりまで、生還した最終世代の皆様に細かい評価をつけてランキング付けしたものです」


わるさめ「どういった理由で?」


「賞与ですよ。戦争終結ですからね。これで揉めてましてねー……」


阿武隈「あんまり興味ないですねー……ですが国家公務員の方ってなんかいつもパッシングされてますよね……」


わるさめ「私達、深海棲艦倒せば倒すほど稼げる歩合のところも大きかったから、アブーとかフレデリカのところにいた時から超稼いでたよねー……」


わるさめ(つか、ぷらずまのやつ公式記録だけでも深海棲艦万越え撃沈させてんのかよ……深海棲艦にとってもはや災害だな……)


わるさめ「ちなみに一位は?」


「艦兵士だと一位は駆逐艦電、二位は駆逐艦神風です」


阿武隈「へえー……神風さんは戦後復興妖精との?」


「ですね。戦後復興妖精の今がああなのは神風さんが彼女を倒したお陰だという見解が強くて。戦果勲章はないですけども、戦後復興妖精は海の傷痕レベルだと判断されましたから。妖精ということもあって海の傷痕と扱いはちがいますけどね」


わるさめ(世間話に流れちゃったなー……)


……………………


……………………


わるさめ「なんとなくて周りから変なやつだと思われているのは分かった」


阿武隈「多趣味ですね。なんか周りの目を全く気にしない人ってのはよく伝わりました。各レジャー施設、海外旅行、ボランティア、読書、ゲーム。人前でエロゲーとかメンタル強過ぎじゃないですかね……」


わるさめ「なにアブー、エロゲやったことあるの?」


阿武隈「ええ、男性向けの……(目反らし」


わるさめ「ゲーマーとしては雑食かー」


阿武隈「まあ……今や人気のアニメやゲームのケースもありますからね。その手のやつで原作知ろうと前年齢版が出る前にやったことはある程度ですが、恋愛系は男性向けも女性向けもハマりはしませんでしたね」


阿武隈「やっぱりあたしはアーケードのシューティング系が好きですね」


わるさめ「……雨村ってさ、提督の弟にしてはコミュニケーション力が高い印象だなー。開けっ広げで偏見はなさそうなイメージだし、話はしやすそう。ただ言葉はストレート気味な感じなのが反感買ってる風だ」


わるさめ「さて……私は雨村の家に忍び込んで来るゾ☆」


阿武隈「ちょ……それ許可取ってくださいよ!」


わるさめ「あー? 本人にちゃんと許可取るよ。多分、了承してくれると思うしなー」


わるさめ「ただ私はあんまり好きなタイプじゃねーから要らねーこといっちゃいそうだし、上手くやれる自信がねえからもう一人呼ぼっかな」


阿武隈「この件のメンバーは誰でしたっけ。電さんは明石君のほうの仕事や想力省のほうにも顔出さなきゃだし、神風さんや戦後復興妖精さんも忙しくて、雷さんは別で動いてくれていますし、他は……」


わるさめ「づほ。雷と行動共にしてて把握してるらしいよ」


阿武隈「鎮守府(闇)の常識人枠で安心」


わるさめ(づほはづほで意外と個性的だけどね……)




瑞鳳《ええ、はい。要は想力省所属メンバーの個人調査ですよね。私、そちら所属になるので資格は発行してもらってますよ。個人調査の場合、想力省に申請しなければならないので今日は難しいですが……》


わるさめ「申請……想力省管轄の警部のほうか」


瑞鳳《ですです。夕張さんが想力運用に乗り出してから世間に普及した時の想力専門のトラブルシューターみたいなもんです。まだ本格的な活動はまだですが、まあ、これ実質、陸がメインになって戦争が事件になるだけで、艦兵士とあまり変わりません》


阿武隈「あー……普及において全国規模で人手不足でしたねえ」


わるさめ「そんな一気に公務員増やせねえからって他のところからじゃんじゃん流れてくるけどまだ超人手不足のところだよね」


瑞鳳《またまたですです。まあ、こちらの正当性が認められたら申請はすぐ通りますよ。想力省のほうも想力を扱う人材において慎重に検討した人事ですが、当初の予定とは大きくズレたために随時対応の突貫的な面も発生したとのこと。もしも今の時期的に問題起きそうななにか発見したら迅速に教えて欲しいとのことのようですし、想力省の方達も志願した時の書類でサインしているそうです》


わるさめ「よろしく頼む!」


3


わるさめ「づほは有能だなー。どんな理由で家宅捜査許可出させたし」


瑞鳳「まあ、長くなるので内緒です。移動も含めて夜になっちゃいましたねー」


阿武隈「そのほうがいいです。許可あるとはいえ、住宅街。あたし達の今の知名度考えると下手に騒がれるのは色々と迷惑かかりますしね」


瑞鳳「雨村さんでしたか。こちらの個人データ閲覧禁止事項に触れていたようで、申請はすんなりと。上司の方が『あいつはいつかやると思ってた』って遠い目でいってましたよ……中々に変わり種のようですね」


わるさめ「……それでは」


瑞鳳「お、お化けとか出ないよね?」


阿武隈「出ても、り、リアル妖精さんだと思って乗り切りましょうよ」


わるさめ「事故物件のお化け屋敷だからねー」


瑞鳳「……そ、それでは参りますっ!」


阿武隈「お邪魔しますっ!」


わるさめ「さすがに肝は座ってんねー」




阿武隈・瑞鳳「(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブル」


わるさめ「雨村宅の中が私達のグッズで一杯だった件」


わるさめ「本棚や雑誌も私達関連で、壁や天井に艦娘のポスター張られまくってるなー。特になぜか鎮守府(闇)面子が多い」


わるさめ「駅のポスターとかの非売品もあるね」


わるさめ「あっ、あそこの壁にあるのフレデリカの部下だった頃に改二になって万歳して喜んでるアブーの写真じゃん。なっつい&可愛いー」


阿武隈「どこから流れたんですかあ!?」


わるさめ「それな……でも近海の観艦式の時に一般人と交友するだろ。その時にカメコに写真撮られたりするし、流出は避けられない身分よ。営業みたいに会社とコラボしてCM出たり商品やポスターになったり。歌とか出しちゃう人もいるっスー」


わるさめ「艦娘にはアイドル的人気もあるのだよ!」


わるさめ(しっかし、面白い展開でテンションあがるう!)


わるさめ「さて、各自バラけて家宅捜査にあたれい!」



* 家宅捜査官 阿武隈 1階居間


阿武隈「あっ、サイドボードにアルバムを発見……!」


パラパラ


阿武隈(家族の写真かな。この女の人と男の人が提督にひどい仕打ちした人達なんだろうけど穏やかな女性……男の人は外国人の方……とても爽やかな印象だ。人は見かけに寄らないですね)


阿武隈(雨村さんは提督とは違って健康的で笑った顔が爽やかなのは父親譲りかな。しっかし、顔が整っていてモテそうなオーラだなあ……)


阿武隈(……次の卒アル行こうかな)パラパラ


阿武隈(高校のこの制服は確か……都内の有名私立だったっけ。寮に行ってる。少し暗めなのは、例の事件の後だから、かな。写真も少なくなってるのはやっぱりご家族を亡くしてしまったから、だよね……)


阿武隈(……でも笑った顔も増えてる。これ、部活動、いや同好会か)


阿武隈(アニ研とオカ研! なるほど、趣味の合う仲間を見つけて、楽しそうだ。なんだかほっとする)


阿武隈(うーん、悪い人には見えないよね)


阿武隈(それどころか前向きに傷を治そうとしている感じがしますし、提督よりもこの頃の人間が出来ているような……)


パラパラ


阿武隈(この頃からアニメとかゲームのイベントに参加してる……この写真2ショット、彼女さんですかね。このおっとりしてほのぼのしたお姉さんの感じ、ちょっと気の抜けた由良さんに似てるかも)


阿武隈(あれ、高校の卒アルの寄せ書き)


阿武隈(妖精可視才は仕方ないよ。大学でもよろしくって、雨村さんもしかして対深海棲艦海軍に来たかったのかな?)


阿武隈(うーん……次です)パラパラ


阿武隈「艦娘の写真が一杯だ……陽炎ちゃんの兵士時代や瑞鶴さんの解体前の写真もある……」


阿武隈「あっ、これは電さんだ。フレデリカさんの頃にいて、この時期はトランスタイプだったことを隠して猫かぶりしてたんですよねえ……)


阿武隈(ほんと見破れなかったなあ。可愛いイメージしかなかったですし……)


阿武隈「うん? 次ページも電さんの写真に……文字?」


『可愛いは作れる』


阿武隈「」



* 家宅捜査官瑞鳳 一階その他


瑞鳳「龍驤さん仕様のまな板がある」


瑞鳳「これはひどいです」


瑞鳳「……キッチンにはこれといったモノはないですねえ」


……………


……………


瑞鳳「この部屋は物置、かな?」


瑞鳳(噂に聞いた提督の部屋のごとくモノに溢れてて足の踏み場が……)


コツッ


瑞鳳「おっとっと……! クローゼットの取っ手をつかんで~……!」


ガチャ


瑞鳳「あ、クローゼット開いちゃ………」



『瑞鳳改二乙 袴 大破ver ☆☆☆☆』


『長月 ストッキング 大破ver ☆☆』


『大鳳 スパッツ ☆☆☆』


『陽炎 スパッツ ☆☆』


『不知火 スパッツ 大破ver ☆☆』


『不知火 私服mode ストッキング ☆☆☆』


『阿武隈改二 スパッツ ☆☆☆☆』



瑞鳳「へ……」


瑞鳳「変態だ――――!」


タタタ


阿武隈「ど、どうしたんですかあ!」


阿武隈「!!?」


阿武隈「な、なんですかこれ……!」


瑞鳳「私達の服だよう!」


阿武隈「確かあたし達の服って……」


瑞鳳「損傷激しいからすぐに捨てますし、妖精さんと軍からの支給品だから、も、もしかして、着られなくなって廃棄した服とか……!?」


阿武隈「犯罪じゃないですかあ!?」


瑞鳳「だ、だよね。捨てたやつの所有権って自治体にあるもんね」


阿武隈「というかあたしと瑞鳳さんの服が☆4の最高評価なんですけど!? 完全にターゲットだ! それにスパッツ多過ぎなんですケドオ!」


瑞鳳「お、奥にだ、だんぼーるがあるよぅ……」


阿武隈「見なかったことにしません……?」


瑞鳳「い、いや、調査ですから行きましょう……ピリオドの向こうへ……」


ガサゴソ


瑞鳳「開けますよ……」パカッ


阿武隈・瑞鳳「……」


阿武隈「し――――」


阿武隈「今度は下着……」


瑞鳳「み、未使用だ……」


阿武隈「あたし達の支給品の簡素なやつにすごくよく似てますが……というか一緒な気がしますね……」


瑞鳳「た、ただの市販品で衣装の可能性もあるよね?」


コツコツ


わるさめ「どした……ん?」


わるさめ「キャハ☆」


阿武隈「キャハ☆ じゃないですよ! これはさすがにドン引きしましたよ! ねえ瑞鳳さん!」


瑞鳳「うーん」


阿武隈「ここは即答してくださいよ! なに腕組んで真剣に迷ってるんですかあ!?」


瑞鳳「提督ならケッコンカッコカリして筋を通せば、ま、まあ、見なかったことにして、所持を暗黙的に了承する、かな……?」


阿武隈「なんでそんな変な方向に思考を発展させてるんですかあ!」


瑞鳳「い、いや、男の人で周りは女の子ばかりだし……指輪まで渡されたらそこのとこ多少の理解と配慮はしてあげるべきかなあって……」


阿武隈「り、理解は分かりますが、配慮……?」


わるさめ「でもさ、アブーも司令官のこと大好きだろ?」


阿武隈「そ、それは……」


わるさめ「司令官がアブーから贈られたプレゼントを大切に持ってたり、アブーのスパッツ大事に隠し持ってたりしたら、ちょっと嬉しいだろ?」


阿武隈「隠し持ってるスパッツは普通に問い詰めるんですけど!?」


瑞鳳「こほん、とにかく艦兵士マニアってのは分かったけど、明石君のはないね。重要な目的関係のものについての情報はまだ見当たらないよね」


阿武隈「わるさめさんは二階調べてたんですよね? それは……?」


わるさめ「パソコンだよ。調べてみたけど、同じくアニメとか私達の画像ばっかりだった。深海棲艦もね。いくつかあって作成日付からして中学3年生からかな。私達の戦争に興味を持ったのは……」


わるさめ「本棚からしてもともと第二次世界大戦に興味持ってて、そこから海の戦いって流れかなあ」


わるさめ「あまり人に見せたくなさそうな妄想染みた論文で、妖精学、艤装の稼働論、深海棲艦の反転論だったけど、司令官の深海妖精論みたいにぶっ飛んだのはないっス。妖精学は最初期のもんかな。ほら私達も座学で習ったじゃん」


わるさめ「『深海棲艦は神が送った人類への神罰』とかなんとか。戦争した人類へのなんたらかんたら。海の傷痕が戦争起こした動機からして、あながち間違ってなかったよねー……」


阿武隈「そうですね……」


わるさめ「ただ1つわるさめちゃん的に気になったことはあるね」


阿武隈「な、なんですか……?」


わるさめ「づほとアブーの画像がやたら多かったゾ☆」


瑞鳳・阿武隈「!?」


わるさめ「冗談でーす」


瑞鳳・阿武隈「止めてくださいよ……」


わるさめ「お前ら容姿、キャラ、性能、どれ取っても人気あるからなー。恐らく雨村のタイプだと思われる。アブーは気をつけなよー。スカートの中の際どいのがいくつも流出してるみたいだからなー」


阿武隈「ああ……異性からの評価ってあまり気にしたことはなかったなあ。あたしって意外と異性人気がある……?」


わるさめ「『翔鶴』」


阿武隈「はい?」


わるさめ「翔鶴の画像がズバ抜けて多かったよ。時点でづほとずいずい」


瑞鳳「あのー、ストーカーとかじゃないですよね……?」


わるさめ「つーか私達の服とか出回ってるし、その衣装はそれだって見て分かるじゃん。深海棲艦や演習で傷ついた服って臭いすごいけど、それからはしないよね。モノホンのマニアならその臭い消すとも思えんし」


ガサゴソ


瑞鳳「あ、本当だ。メーカー名が書いてある……」


阿武隈「まさかのブリティッシュラフラビッツ……!」


わるさめ「くっそ、なにか臭うんだけどなー……夕立御姉様の鼻は物探し系か、この探偵調査の場合は止まない雨は姉を連れてくるべきだったかも」


瑞鳳「……、……」


阿武隈「どしました?」


瑞鳳「なんか露骨すぎません?」


阿武隈「それは自宅ですしぃ」


瑞鳳「想力省に志願した人ですよ。仕事柄、私達とも関係を持つため、本当に想力省でなにか目的があるのなら、こんな私達から反感買うようなものも自宅とはいえ放置したままにしますかね……?」


瑞鳳「これ場合によっちゃ志願動機不純で飛ばされますし」


瑞鳳「このような捜査も場合によっては行われるのは雨村さんも知っていたはずですし、そもそもこの捜査になったきっかけって、確か」


瑞鳳「電さんがフレデリカさんの狂気を感じたのと、雨村さんが私達の過去を調べたような発言をしたからですよね。それって」


瑞鳳「この展開も予想できない訳ではない、ですよね」


わるさめ「ねえねえ、時雨姉と繋いでいい?」


瑞鳳「構いませんが、事が事なので隠密です。提督に雨村さんが異父弟だというのはまだ私達の中でも内緒にってことですし、漏洩は徹底してくださいよ。そこら辺り時雨さんなら信用できますけど……」


4


わるさめ「そういうこと。お姉ちゃん、助けてー……?」


時雨《事情は分かったけど、僕かい……?》


わるさめ「鼻がきくからね。まあ、今回は探偵みたいなものだから夕立御姉様よりも時雨姉さんが適任かなって」


時雨《……要はその雨村さんに嫌な予感を覚えていて、それを拭うために調査するんだね? そして事情が事情だけに少人数で内密に調査したいと》


わるさめ「うん」


時雨《気は進まないけど、まあ、春雨のたまのワガママだと思って協力するよ》


わるさめ「わーい、時雨姉さん感謝するぜ!」


時雨《ちょっと待ってて。また連絡するから》


わるさめ「アブー、猟犬が出動してくれるってさ!」


阿武隈「時雨さんですか。心強い仲間ですねー」



【2ワ●:奇々怪々の狂恋事件簿】


時雨「バレないように出てきたし尾行にも気を使った。もう帰りは終電逃しそうだね」


わるさめ「帰りはタクシーなり始発までファミレスで時間潰すなり」


わるさめ「つか時雨姉、このグッズ量に驚かないんだね……」


時雨「別に。人の趣味なんて千差万別だし実害ある訳じゃないよね?」


わるさめ「時雨姉はドライだよねー……」


時雨「というか僕も気になる案件だ。准将の身内ではなく、電さんがフレデリカさんと似た狂気を感じた、という点と神風さんが警戒に値すると判断した点でね」


時雨「……」


わるさめ「どしたの?」


時雨「僕、霊感的なの高いからねー……家庭の事情で家賃二万の事故物件住んでいたけども、その時にもなんか視線常に感じてたというか」


時雨「よくこの家の中にいられるよね」


わるさめ「うん?」


時雨「『ヤバいのがいるよ』」


わるさめ「ちょ、そういうの要らないから!ガチの心中事件物件なんだから止めろ!」


時雨「言葉づかいは違うけど、そういうホラー苦手なところとか春雨の面影だよね」


時雨「ま、この家はなんかあると僕は思う」


わるさめ「……捜査状況は送った通りだよ。今はわるさめちゃん一階調べていて、づほとアブーは2階にいるー」


わるさめ「……それでどこか臭う?」


時雨「そのサイドボード」


わるさめ「アブーが既に調査済みだなあ。私はテレビ台の新聞の束調べてる。気になるなら調べてみてー」


時雨「遠慮なく……」パラパラ


時雨「……、……」


時雨「やけに2ショット写真があるけど彼女かな?」


わるさめ「あー、ちょっとアブーが由良さんと似てるっていってたけど、このおっとりした感じはどちらかというと翔鶴さんかなあ」


時雨「へえ、僕はまた違う印象だけど」


時雨「こっちの子は……?」


わるさめ「どれどれ……あれ、こっちは、ちょっとづほ……いや、ずいずいかな? 二人を混ぜた感じ?」


時雨「雨村さんともう一人のメガネかけた男の人、それと翔鶴さん似、瑞鶴さん似の女の人だね。これがオカ研&アニ研メンバー?」


わるさめ「そうじゃね」


時雨「日付的にこれ……」


わるさめ「あっ、心中事件の後か?」


時雨「だね。ちょっと調べ回ってくるね」


* 捜査官時雨


時雨「ここが例の衣服部屋か……」


ガサゴソ


時雨「本は雑誌と専門本か……この新書は」


時雨(ああ、どこぞの人が准将の深海妖精論から考えた深海棲艦論ね……)


パラパラ


時雨「次はサイドボードっと」


時雨「ノート……?」


『2××1年5月21日:共栄自立教団の人が来た。あの子の話をされたから追い返した。あの子供は不気味で嫌いだった。頭も悪いし、暗いし、私の育て方も悪かったけど、今度はそうはならない。子育てを間違えない』


時雨「次は一年後? 飛んでるなあ」


『2××2年5月21日:レオンは頭が良いし、明るい。あの子とは逆の子だ。小学校のテストも一番で、最寄りにある私立への受験を強く先生から勧められた。夫は海外に出張に行ってしまっているから、私ががんばらないと。あの子の希望で家庭教師をつけることにした。最近、あの子のお願いを断れなくなってきてるなあ。ゲームは1日、一時間までね、と約束させよう、うん』


時雨(なんだこの人……准将にあんな仕打ちしたのに)


時雨(普通に子供に愛情を向けられる人だったってのが……)


時雨(ムカつくね……あーダメだ。割とドライな僕だけどやっぱり軍の皆のことだと感情に流されてしまう)


『2××4年5月21日:レオンが友達を連れてきた。可愛らしい女の子二人だ。彼女かと思って期待したけど、そうじゃないみたい。姉妹らしいけど、あまり似てないね。姉のほうは穏やかだけど、妹は刺々しい感じ。でもレオンはその二人のことを大層気に入っているようだ』


時雨「……、……」


『2××5年2月10日:よく遊びに来る。レオンは周りに好かれるけど、いわゆる特別仲のいい親友がいなかったから、私も二人がレオンと友達でいてくれるよう、家族のように接して一年が経過した。ちょっと妙な姉妹だとは思う。世間話をしてもあまり口を開かない。笑ったり、むすっとしたり。言葉を喋っても端的だ。箱入りなのかな、と家のことを聞いたら、ここから最寄り駅の電車に乗って隣町から来ている、みたいなことをいった。同じ学校の子ではないらしいけど、高校はレオンと同じところに行きたいといってた』


『2××6年5月21日:レオンが高校にここから通わせていいか?ってお願いしてきた。それはさすがにどうかと思ったけど、この子達と仲もいいし、女の子も欲しかったし、すでに家族同然の子達だ。その日は雨に濡れてきていたからお風呂に入れてあげた。あらら、二人とも体重がその歳にしては異様に重いわね。見た目からは考えられないわ』


『2××6年12月21日:お母さん、と呼ばれた。あれ、私がこの子達を、産んだっけ?』


時雨「……!」


『2××7年1月3日:長期休暇で帰ってきた夫にその子達の話をしたら、通院を勧められた。レオンが、そんな子達は知らない、といった。なんで嘘をつくのかしら。その子達を呼んだけど、返事がなかった。どこかに消えてしまっている』


『2××8年4月18日:あの子達が久々に家に来た。招き入れて、和菓子を振る舞った。二人はその時にレオンのことが好きだって教えてくれた。あらら、どうしよう。そうだそうだ、彼女達のことを調べるとした』


『2××8年6月5日:私は精神がおかしいらしい。そうよね。どこかで心を壊してしまっていたんだ。だってあの子達、どこにもいないもの。調べても調べても、いない。最近、姿も見せない。私は頭がおかしいのかな』


時雨「ここまでか。しかし妙な日記だね」


時雨「この後の8月15日に一家心中事件は臭すぎる……この家庭になにが起きたのか」


時雨(ここまで情報がそろえば准将に相談すれば解決しそうな気がしないでもないけど、准将には今回内密だし、これ以上仲間を増やすのも……)


時雨「僕らだけで真実を導き出さないと」


時雨「うーん、ミステリーだ」


時雨「ええと、このクローゼットの中に……スパッツとかストッキングとかか……」


時雨(そういえば乙中将がよくストッキング履いてる女の子の脚を見てたっけ。よく分からない世界だけど、男のロマンってやつなのかなあ……)クンクン


時雨「っ! 女の人の匂いかなこれ」


時雨「……うん?(嗅覚作動」


時雨「このクローゼットの床板、少し浮いてる」


ギッ


時雨「床下から箱……?」


パカッ


時雨「金属の、破片」


3


瑞鳳「皆さんがまとめた情報をまとめておきましたよ。阿武隈さんがコンビニで印刷してくれたので、それをまとめましょうか。いくつか怪しい情報もありますよね」


時雨「いや、なんとなく謎は見えてきたよ」


わるさめ「マジかよ。時雨姉、それなに?」


時雨「衣装の入っていたクローゼットの床下にあった箱だ。多分、心中事件の時に警察が調べたと思う。雷さん経由で回してもらった捜査報告書にあるからね。中身は確認したけど、当初の捜査ではスルーされてもおかしくない」


時雨「金属の破片だ」


わるさめ「なんでそんなもんが?」


瑞鳳「それもしかして」


時雨「艦兵士か深海棲艦の艤装の破片かな?」


わるさめ「……はあ? あいつの家の中見たらそれがホンモノか疑うっス……正直、深海棲艦の引き揚げとか適当で一般のやつらが引き揚げたりもしてるから、その気になれば入手は可能だと思うけど」


時雨「……この日記をもう一度」


『2××1年5月21日:共栄自律教団の人が来た。あの子の話をされたから追い返した。あの子供は不気味で嫌いだった。頭も悪いし、暗いし、私の育て方も悪かったけど、今度はそうはならない。子育てを間違えない』


『2××2年5月21日:レオンは頭が良いし、明るい。あの子とは逆の子だ。小学校のテストも一番で、最寄りにある私立への受験を強く先生から勧められた。夫は海外に出張に行ってしまっているから、私ががんばらないと。あの子の希望で家庭教師をつけることにした。最近、あの子のお願いを断れなくなってきてるなあ。ゲームは1日、一時間までね、と約束させよう、うん』


『2××4年5月21日:レオンが友達を連れてきた。可愛らしい女の子二人だ。彼女かと思って期待したけど、そうじゃないみたい。姉妹らしいけど、あまり似てないね。姉のほうは穏やかだけど、妹は刺々しい感じ。でもレオンはその二人のことを大層気に入っているようだ』


『2××5年2月10日:よく遊びに来る。レオンは周りに好かれるけど、いわゆる特別仲のいい親友がいなかったから、私も二人がレオンと友達でいてくれるよう、家族のように接して一年が経過した。ちょっと妙な姉妹だとは思う。世間話をすると、どこかズレていた。箱入りなのかな、と家のことを聞いたら、ここから最寄り駅の電車に乗って隣町から来ているといった。同じ学校の子ではないらしいけど、高校はレオンと同じところに行きたいといってた』


『2××6年5月21日:レオンが高校にここから通わせていいか?ってお願いしてきた。それはさすがにどうかと思ったけど、この子達と仲もいいし、女の子も欲しかったし、すでに家族同然の子達だ。その日は雨に濡れてきていたからお風呂に入れてあげた。あらら、二人とも体重がその歳にしては異様に重いわね。見た目からは考えられないわ』


『2××6年12月21日:お母さん、と呼ばれた。あれ、私がこの子達を、産んだっけ?』


『2××7年1月3日:長期休暇で帰ってきた夫にその子達の話をしたら、通院を勧められた。レオンが、そんな子達は知らない、といった。なんで嘘をつくのかしら。その子達を呼んだけど、返事がなかった。どこかに消えてしまっている』


『2××8年4月18日:あの子達が久々に家に来た。招き入れて、和菓子を振る舞った。二人はその時にレオンのことが好きだって教えてくれた。あらら、どうしよう。そうだそうだ、彼女達のことを調べるとした』


『2××8年6月5日:私は精神がおかしいらしい。そうよね。どこかで心を壊してしまっていたんだ。だってあの子達、どこにもいないもの。調べても調べても、いない。最近、姿も見せない。私は頭がおかしいのかな』


わるさめ「気味が悪いよね……」


時雨「そしてこのアルバムだ。この女の人二人が写ってるのは高校の卒アルとは違うし、私服オンリーだ。多分、部活の仲間でも同じ学校に所属していたわけじゃないのかもね。そして心中事件の後から写真に写り始めてる」


瑞鳳「もしかしてその女の子二人が、この日記に出てくる雨村さんのお友達だという推理です?」


時雨「ああ、この二人の存在を記録し始めたのは、心中事件が落ち着いてからだしね。この女の子が関わっていると仮定して考えてみない? ごめん、僕の頭ではここで行き詰まったんだけど、すごく臭うところでさ」


わるさめ「……、……」


わるさめ「…………、…………」


わるさめ「待て待て待て……あり得ねえ妄想が……」


わるさめ「このアルバムの写真を撮ろう」パシャ


わるさめ「ちょっとスマホ弄ってるねー」


阿武隈「謎が謎を呼ぶミステリーですね……あたしもちょっと気になりますね。日記読んでいて怖くなるのは、この女の子達に関する部分ですし」


阿武隈「でも、時雨さんの推理は警察の人がして然りかと。一家心中の要素がてんこもりだから、この写真が撮られる頃にはもう警察はもう捜査から手を引いていたってこともあり得ますよね。お母様も精神の病でしたし……」


阿武隈「日記の信憑性は生き残りである雨村さんの証言を重視されて判断された可能性が高いと思います」


わるさめ「あああああああ……やっぱりだ! やっべえよこれえ!」


わるさめ「私達の間で抱え込むには問題がデカすぎる!」


瑞鳳「ど、どうしたんです?」


わるさめ「この二人、由良っちとか翔鶴とかづほとかずいずいとかと雰囲気ちょっと似てるよねって皆の間で意見出たじゃん! 共通点は艦娘ってところだったからさあ! それ考えたらこの二人にすっげえ既視感を覚えてアプリで加工して色を変えてみたんだよ」


わるさめ「おっとりしたほうの女、これ――――」


時雨・瑞鳳・阿武隈「……!」


わるさめ「『空母水鬼』だ」


阿武隈「確かにし、しっくり来ますが」


時雨「じ、じゃあまさか妹のほうも……」


わるさめ「ここまでたどり着けば芋づる式だ」


わるさめ「この妹のほうのむすっとしたずいずい風の面、絶対に『深海鶴棲姫』だろ! 空母水鬼はチューキちゃん達のところにいた時に会ったけど、こっちはまだ映像でしか見たことないっス……!」


瑞鳳「ああああ、深海棲艦の建造データ確認しました」


瑞鳳「空母水鬼の構成データ的には空母、翔鶴艤装も適応されるとあります。深海鶴棲姫は、私と瑞鶴さん、武蔵さんなんかの艤装のごちゃ混ぜで、かなり建造率の低いレア深海棲艦です……」


時雨「でも瑞鳳さんも瑞鶴さんも武蔵さんも長年軍にいて、海で戦ってきて損傷しているから、こいつの建造確率は決して0じゃない」


わるさめ「しかも構成データ的に私達が感じた面影メンバーと一致……」


瑞鳳「で、でも、さすがにあり得ないですよ」


瑞鳳「いくら姫や鬼だとしてもこんな風に陸で一般人と交友できるなんてあり得ないです。チューキさん達は例外ですよね。この子達の場合、日記の日付、写真の撮影時からして」


阿武隈「あたしのキスカ事件より時系列的に前になりますから、由良さんが海の傷痕と交戦する前です。由良さんが与えた一撃で海の傷痕が被弾して、その結果、思考機能付与能力の誤作動で産まれたのが中枢棲姫勢力ですから」


時雨「つまり、時系列的にはバグで思考機能付与能力が与えられた深海棲艦じゃない。此方さんからの証言的に把握しているのは、中枢棲姫勢力以外だと神風さんが戦ったという離島棲姫のみだ。空母水鬼や深海鶴棲姫だなんて大物の話は聞いたこともないよ」


瑞鳳「そもそも深海棲艦は基本的に反転建造で私達の艤装に積まれた想いを本能とした『生きたい=だから戦う』、『赦さない=だから倒す』、『会いたい=だから帰る』の殺戮生物で、このように器用に陸で活動できるはずがありませんし、この日記の記述や写真からして本体の艤装は見当たりませんよ?」


わるさめ「艤装は加工して本体は陸で活動出来るように調整可能だよ! 現に明石君と鹿島っちは過去に三越デパートでレッちゃん&ネッちゃんと会ったし!」


わるさめ「それに!」


わるさめ「雨村が海のこと調べ始めた時期はこの日記にある通り、『2××4年5月21日』っていう点は、こいつら深海棲艦に出会ったからと考えると筋は通るし!」


わるさめ「『2××5年2月10日』の日記! 『ちょっと妙な姉妹だとは思う。世間話をすると、どこかズレていた』ってこれも深海棲艦なら納得できる! チューキちゃんやレッちゃんなんか人間並みの理性持ってて活動してもずっとズレてたしさ!」


わるさめ「更に『2××6年5月21日:その日は雨に濡れてきていたからお風呂に入れてあげた。あらら、二人とも体重がその歳にしては異様に重いわね。見た目からは考えられないわ』っていう点も肉体に本体の艤装をコンパクトにして内臓していたら、見た目からは考えられないほど体重が重いことの説明もつくし!」


瑞鳳「……か、過去の天気予報のデータ、過去のブログを漁ったところ、そ、そのひっ、日、は、『雨』じゃありません……!」


わるさめ「海から来たから濡れていたとしたらそれも説明できるし!」


わるさめ「翔鶴やづほの画像が多かったのもなんか分かるし! これ全て偶然だと考えるのはいくらなんでもないじゃん!?」


わるさめ「海の傷痕の『艦隊これくしょん』の包囲網の外、システムから逸脱した深海棲艦がこの家に来ていたんだよ! バグでもねえ深海棲艦のくせに街に入って、人間の家庭に忍び込んで」


わるさめ「海の傷痕とも悪い島風ちゃんともチューキちゃん達とも違うケースの『異常』だよ!」


時雨「強めのとうっ!」チョップ


わるさめ「いったあああい!」


時雨「落ち着きなよ。春雨の推理は確定的な証拠がないだけで、真実味があり過ぎるから、そう決め込んで捜査する価値はあると思うし」


阿武隈・瑞鳳「ですね……」


阿武隈「まとめて、わるさめさんの推理が現時点の情報と照らし合わせて成立するかどうかを調査しましょう」


時雨「そうだね。そこで可となれば、大問題だ……」


4


阿武隈「急に消えたのは現海界、なら」


瑞鳳「陸活動も深海妖精の技術で」


時雨「確か欧州棲姫に思考機能付与能力与えていたし」


阿武隈「全て……人間が開発できる」


瑞鳳「想力工作補助施設の存在で」


時雨「説明は出来ちゃうね……」


阿武隈・瑞鳳・時雨「『雨村さんが佐久間さん並みの廃で、想力工作補助施設のような海の傷痕を出し抜く装備を少年時代に開発していたとしたら』」


阿武隈・瑞鳳・時雨「はは、まさか……」


わるさめ「雨村の想いがガチならあるいは……」


わるさめ「あの司令官と血の繋がった弟で……」


わるさめ「ここからならぷらずまのいった『フレデリカの狂気』に繋がる動機も考えられる……加えて感覚超人の神風のマークだ」


わるさめ「もう黒でいいと思うゾ☆」


阿武隈・瑞鳳・時雨「((((;゜Д゜)))ガクブル」


わるさめ「プロフェッショナルの悪い島風ちゃん呼ぼう……」


阿武隈「可能なら電さんもお願いします……」


5


電「……ほう、やはりあの男、なにかありましたか」


戦後復興妖精「わるさめちゃんから一生のお願いされたから来ましたけどー」


戦後復興妖精「お前ら艦兵士は毎日が楽しいねえ……」


阿武隈「戦争終わってからもトラブルだらけで楽しくないんですけどお!」


戦後復興妖精「そりゃパーパとマーマ、まあ、メインサーバー君の探知から逃れてたんだろうけど、確かに中枢棲姫勢力とは違うな。深海棲艦でもトランスタイプでも『繋がらないことが分かる』んだよ。想力工作補助施設で深海棲艦にそのケーブル回りをなにか細工してみろ。その瞬間をキャッチされるよ。深海棲艦は人間に危害を加えるから、そこは徹底してた」


わるさめ「でも、デカブリストは気付かれずに仕込めたよね?」


戦後復興妖精「ヴェル艤装はもともと探知できない仕組みの艤装だから、デカブリストを仕込めただけだからな。だからあれは海の傷痕特攻艦だったんだよ。ゆえにわるさめちゃん達の話が真実なら」


戦後復興妖精「運営陣とプレイヤーが気付いていなかった立派なバグだ」


戦後復興妖精「真実をこの面子で究明する必要はないよ。ここまで黒に近いグレーなら雨村をとっ捕まえて尋問すりゃいいからな。私も黒と判断。ここまで神風に報告しとけ。もはや准将に内密にー、とかそーいう次元の話じゃないかなあ」


戦後復興妖精(下手したらこいつら)


戦後復興妖精(海の傷痕とは別にロスト空間作っていたまである。そこは箱庭の鎮守府みてえなもんかね……)


電「……」


電「わるさめさん、雨村宅に行きますよ」


6


わるさめ「お、おい……」


電「ふうん……わるさめ」


わるさめ「なに?」


電「この方向から見たあそこの窓の向こうの部屋は調べましたか?」


わるさめ「ん? あそこは……」


わるさめ「え、どこだ? あんな窓とか部屋あったっけ? というか内装の部屋割り的にあんなところに部屋なんてない、はず?」


電「想力工作補助施設、それに準じた装備が使えるのなら基本的にやりたい放題なのです。性能は個々でまちまちだそうですが……」


電「恐らくあそこなのです。部屋の中からだとたどり着けなかったりするのですかね。いずれにしても、玄関からなのです」


わるさめ「そんな簡単に開発出来んの!?」


電「勉強不足なのです……想力工作補助施設は廃以上の今を生きる人間が想力と交わることで開発可能になる装備なのです」


電「私は戦争終わってからも想力まとってますし、今回は司令官さんの身に直接危害が及びかねない案件な上、司令官さんの頭の中でも完全にイレギュラーなことなので、この程度、造作もないのです」


わるさめ「司令官の狂信者も程々にしときなよ」


わるさめ「それと私、戦闘とかヤだよもう」


電「わるさめさん、戦争終結させましたが」


電「なぜ私達は戦ってばかりなのでしょうね」


電「……輪廻の蟻地獄みたいなのです」


わるさめ「そだね……」


電「フレデリカに唆された時から私とわるさめさんは」


電「きっともう――――」


電「……人間として幸せに生きることは出来なくなってたのかもです」


わるさめ「ああもう! そんな訳ないだろ! お前はこんな時に泣き虫の素を出すんじゃないやい!」



【3ワ●:フラワーベッドシー・メロドラマ】


玄関を開けると、汚い海が広がっていた。

暗闇の空に立ち込める硝煙や海の上でドロリとした血のような重油の臭みが風に運ばれて吹き付ける。星と月の明かりはなく、焼けるような戦場特有な空気圧が覆い被さってくる息苦しい海だった。


五感から憎悪の濁流がなだれ込んでくる。これはトランスタイプになった時の精神影響とよく似ている。その精神影響を風景化したような、黒く暗く赤く臭く醜い景色だった。


わるさめ「お花がいっぱいだけど、海だよね?」


電「お花畑の海ですね。死人花、幽霊花、曼珠沙華、天涯花、捨て子花、石蒜、つまり彼岸花の咲き誇る海、かな」


電「この世界の空気、これって違法建造された時の深海棲艦の憎悪の叫びと似通ったモノを感じます」


わるさめ「憎悪歌、沈メタル風景かー」


一人の女の子がお花畑の海に浮いている。深海鶴棲姫は初めて見るけど、あのむすっとした顔は瑞鶴さんとよく似ていた。ただ瑞鶴さんよりも一回り小柄だ。瑞鶴さんを瑞鳳さんに似せて、そこに威圧感を持たせたような感じだけど、私はあの子から深海棲艦特有の憎悪を感じない。


いや、深海棲艦とは思えない。肌の色も白くはなく、健康的だ。禍々しい艤装もないし、深海鶴棲姫によく似ている人間といった印象だった。瑞鶴さんや瑞鳳さんが深海鶴棲姫の衣装を着ているという表現がしっくり来る。


電「深海棲艦、なのですか……?」


深海鶴棲姫「……」


わるさめ「黙っていても景色が沈めたる沈めたるってうるせえぞー!」


深海鶴棲姫さんは片腕を上げます。服の袖にある太陰太極図を見せつけるようにした。意味が分からない。


電「単刀直入に聞きますね……」


電「雨村との関係を出会いから説明してください。今まで上手く隠れていたようですが、もう分かりますよね?」


深海鶴棲姫「……」


首を縦にでも振ってもらえればある程度の情報を有していると判断できたのですが、うんともすんともいわない。しかし、ただの深海鶴棲姫ではないのは明々白々だった。通常の姫ならばもうとっくに戦闘開始になって艦載機が飛んできている。


わるさめ「はあ、ならこういおう」


わるさめ「雨村レオン。もう言い逃れ出来ねえから、こいつが今後どうなるか分かるよね? 深海棲艦に与したのは重罪だぞ。懲役確定で10年ちょっとで済む終身刑より重く死刑より軽い。雨村の罪がいくつ加算されるかわかんねえけど、このまま黙りなら死刑もあるぞ?」


深海鶴棲姫「……」


わるさめ「ぷらずまー、こいつは喋れねえのかも……」


電「……言葉は伝わっている気がしますけどね」


わるさめ「待てよ。もしかして英語じゃないと伝わらないとか。チューキちゃんも最初、英語しか喋れなかったらしいよ?」


電「What's your name?」


深海鶴棲姫「……」


電「ダメなのです。中学生レベルの英語も分からねえダボなのです」


わるさめ「やーい、バーカ」


そういうと深海鶴棲姫がむっと頬を膨らました。その怒りの感情に呼応するように髪が、そこの海面に浮いている彼岸花のように空に向かって持ち上がる。

















深海鶴棲姫「ま、まい、ねえむ、いず、しんかいかくせーき」







電「めっちゃ英語苦手で、実は日本語バリいけるだろテメー」


わるさめ「話せるなら会話に応答してくれても」


深海鶴棲姫「大きいけど電だよね? 少し迷ってた」


電「あー……なのです」


深海鶴棲姫「つーかさー、春雨、わるさめか。お前に国家反逆だのなんだの言われたくないわよ。ランクSSSの中枢棲姫勢力に味方したうえ、丙少将准将暗殺試みたくせに」


電「そこはごもっとも……」


わるさめ「……ぅ」


深海鶴棲姫「あのさあ、察してくれないかな。私達がロスト空間作って穏やかに過ごしている理由が分からないかな。こっちからそうだなあ、ここに来たってことは海の全ては解明されたんでしょうに。また戦争したいわけ?」


わるさめ「放置しておけないのが分からないかな……つか、お前どうやってその理性を得たんだ。思考機能付与能力とは別の要因だろ。こっちは雨村が想力工作補助施設のような力を使用したと睨んでいるんだけど?」


わるさめ「そこらの話が終わったら帰るよ……」


深海鶴棲姫さんは、ため息をついた。


深海鶴棲姫「深海棲艦三大欲求、『生きたい=だから戦う』、『赦さない=だから倒す』、『会いたい=だから帰る』の三原則のうち、私は『会いたい=だから帰る』の本能しかなかったくらいに、前者2つが弱かった。まあ、主に降りかかる火の粉を払う程度だから、艦娘よりは深海棲艦を沈めたことのほうが多いかな」


わるさめ「おう。つまり穏健派なのは分かった。理性的なやつほど穏健派になる傾向があるのは身に染みて分かってんよ。だけどさ、思考機能付与能力でも与えられない限り、深海棲艦が人間と手を組めるはずがないだろ。私とぷらずまは嫌というほど知ってら」


深海鶴棲姫「私は空母水鬼と戦って同族討ちで死にかけた。その時だよ。なぜか海の底に雨村が堕ちてきた。あれは身投げだったみたいだけど。お兄さんのほうはその時は仕官妖精に見初められたんだっけ。弟のほうは水底で私達と出会った」


深海鶴棲姫「お前らなら姫鬼の深海棲艦が沈む時……」


深海鶴棲姫「悟ったように正気を取り戻しかけることが分かるでしょ?」


だから、なんだという。それが今の理性に繋がっただなんてあり得ない。そんなことでこんな異常が起きていたら、あの戦争は最初期でもう維持出来ずに破綻する。


深海鶴棲姫「目が覚めた時、ここにいた」


深海鶴棲姫「しばらくはあの男の子もいなかったんだけどね。とある時期に来た時に、私はあの子に向かって助けを求めたらしい」


深海鶴棲姫「あの男の子いわく『人の命を助けるのは人間として当然だ』と。何事よりも優先される事項だってさ。深海棲艦相手に頭イカれてるよ。普通、理解出来ないとは思うけど、恐らく雨村のその時の純度と私達がまとう想力で、なにか奇跡を起こしたんじゃないかな」


深海鶴棲姫「想いよ、届けってね。アッハハハ」


電「……」


信じがたいことですが、雨村のやつはロスト空間を形成してそこで深海棲艦を工作したわけだ。海の傷痕の母胎となったロスト空間とは別ならば、確かに探知から逃れられる。加えて死にかけていたというのなら、探知消失しても海の傷痕は気にも留めないだろう。毎日、膨大な死者の想がロスト空間へ誘われていくのだし、確認せずとも還ったと判断するのが妥当。いちいち流れ込んでくる想に検問をかけてはいないし。


わるさめ「兄と弟ともに自殺未遂者かよ。深海棲艦相手に人の命を助けるのは人間として当然? 深海棲艦だぞ。そこに自分は含まれていねえし、ネジ飛んでないか……」


深海鶴棲姫「深海棲艦かばう人間なんてまともな訳ないじゃん?」


深海鶴棲姫「それから私は人間になろうともがいたけど、結局、ここに身を潜めて生きてる。私は中枢棲姫勢力とは違って人間になりたいとか海の傷痕ぶち殺したいとか思わなかった。大いなる力に逆らわず、静かな海へと移る。賢い、でしょ」


深海鶴棲姫「ただ穏やかに生きたかっただけ」


深海鶴棲姫「私は私、深海棲艦であることも受け入れて、決して人間になろうだなんて思わなかった。だって、私は人間として産まれてない。深海棲艦だ。人間に馴染もうとしたけどダメだったね」


深海鶴棲姫「だから、ずっとそんな私が日の光を浴びられる日が来るのを待っているをだ。この暗く深い闇の中の鎮守府でね」


電・わるさめ「――――!」


電「雨村が想力省に来たのはあなた達が表の世界で自由に生きられるようにするため、ですか?」


深海鶴棲姫「詳しいことは知らないよ。ただあいつは優しいからね。私達が今まで生きてこられたのもあいつのお陰。あいつの読み通り早期に戦争は終結した。彼の示す進路に従って私達は耐えている。もう少しだ」


深海鶴棲姫「解体不可能の絶望から救ってもらえたお前のように」


そこで初めて、深海棲艦らしい冷たく燃える殺意の憎悪を放った。


深海鶴棲姫「待ってるよ」


深海鶴棲姫「提督をね」


過去のケースから、解決方法を考えてみるけど、なかった。

戦後復興妖精は生きた歴史に報いを求めた。

海の傷痕此方は人間の世界に居場所を望んだ。海の傷痕当局はその此方のための役割を持ってあの日からIFの戦争を存在意義とした。

一番、近いのは中枢棲姫勢力だろう。彼等は深海棲艦であることを受け入れて家族のために、海の傷痕を倒し、戦争終結を達成することで人として生きた証を望んだ。


でも、それとも違う。


こいつが願っているのは――――


わるさめ「『深海棲艦として一人の人間を好きになった』から、『深海棲艦というありのままの自分で、表の世界でその人と生きたい』ってことか?」


深海鶴棲姫「深海棲艦を家族と呼ぶだけはあるじゃん」


深海鶴棲姫「電、分かるよね。あなたが提示しようとしている『人間として産まれ変わる』という条件は飲めないよ」


電「ふざけたことを。深海棲艦がこっちの世界で生きたいというのなら、人間になる以外の方法はありません。私達が理解し合えるのに愛し合えない隣人にして、水と油、反転存在なのはご存知でしょう。その殺人衝動を消さない限り……」


深海鶴棲姫「此方は最初から人間を母として認識していたから、人間になることに抵抗はなかったんだろうね。スイキこと瑞穂もそうだ。そして私も理屈では電のいいたいことが現実的だと思うよ?」


電「なら、その歪な――――」


深海鶴棲姫「歪なのはどっちでしょうね。私はこういってるのよ」


深海鶴棲姫「産まれたことが罪だとは思わない」


深海鶴棲姫「人間の都合で、なぜ姿形を改造しなければならないわけ。私は深海棲艦という生命として産まれたの。お前ら人間の奴隷でも愛玩動物でもないし、そもそも私達は『人間を殺したことなんてない』わよ。そっちが勝手に深海棲艦だって理由で私達を迫害したんでしょ」


わるさめ「いや、それはワガママってやつだ」


わるさめ「深海棲艦なんだろ? 引きこもっていて知らないみたいだから教えてやるよ」


わるさめ「深海棲艦は戦争に敗北した」


深海鶴棲姫「だから?」


深海鶴棲姫「なんでお前らがわかんないかなあ……」


深海鶴棲姫「暁の水平線まで辿り着いた時、積んでた燃料は、船としての記憶だけか? 違う。人間としての心だ。過去をなぞるような航路で友の屍踏み越えて、仲間家族提督とともに歩んだ過去だろ?」


わるさめ「深海棲艦でなくなることがお前の否定になることくらい分かってんよ。だけど、雨村というお前の肩を持つ人間の存在――――」


深海鶴棲姫「あー、なるほどね。ごめんごめん」


深海鶴棲姫「私が雨村のやつ提督だとか、優しいやつだとかいったから誤解があったのね。私は別にお前らが准将を思うように、雨村のことを好いている訳じゃない」


深海鶴棲姫「奴は先見の明があるし、利用価値がある。もはや藁にもすがりたい身、生殺与奪の権利を委ねているだけでそこに美しい信頼関係はない」


深海鶴棲姫「トランスタイプのお前らなら分かる」


深海鶴棲姫「なあ電、深海棲艦の壊現象捩じ込まれたお前が描いた未来は死だろ。共存出来ず、破綻する事を理解していた。だが、人間サイドにいたから人間とつるむ他ない。優しいお前は自害を見据えたが、結末はともかく、過程は同じ」


深海鶴棲姫「だから『ビジネスライク』だろ?」


電「そんなの――――」


深海鶴棲姫「……心は、あるよ」


深海鶴棲姫「それでもなお」


深海鶴棲姫「こっちを深海棲艦と捉えて」


深海鶴棲姫「個を見てくれないわけ?」


電「――――!」


深海鶴棲姫「だからただ待っているのよ。提督が私達を表まで連れ出してくれる日を深海棲艦らしく冷たい水底のようなこの隔離施設でね。決して、お前らが使った戦争という方法などではない。一人の人間が頑張って勉強をして、国の中枢から、一人の人間としての信念を持ってあり方を変える正当で平和的な手段だ」


わるさめ「なるほどね……それが雨村の目的か」


深海鶴棲姫「あなた達はなぜかこそこそ嗅ぎ回ってる上、厄介なことに見つかるのは早いか遅いかだった。このおかしなレベルの歯車の噛み合い方、幸運値で偶然に干渉してるでしょ。だったらこうして会って話をしたほうがいいと思ったのよね」


深海鶴棲姫「この場は『見なかった』ことにして、私達に関わらないで」


深海鶴棲姫「後、深海棲艦とか深海鶴棲姫って呼び方は好きじゃないかなあ。それあなた達でいうと人間とか日本人って呼ばれているみたいじゃん」


ああ、これはどうしたらいいのだろう。中枢棲姫勢力とは戦争終結の目的一致で手を取り合えたけど、もしも私達は深海棲艦という種のまま家族として生きていくという未来を取っていたら、間違いなく、あの対中枢棲姫勢力決戦はどちらかが全滅するまで殺し合っていたに違いなかった。


わるさめ「今日はとりあえず鎮守府に帰ろ」


深海鶴棲姫「万が一を考えて最後に伝えておくよ」


深海鶴棲姫「『翔鶴』は私の前に連れて来るな」


わるさめ「あいあい」


わるさめ(どーしてレイテ沖海戦面子じゃなくて翔鶴……?)


わるさめ「もしかしてお前ずいずいの割合が高いのか? ずいずいの姉妹愛半端ないもんね。それが深海棲艦になったせいで反転してっから、翔鶴殺したくなるってとこ?」


深海鶴棲姫「……」


わるさめ「だんまりか。愛想のないやつだなー」


電「……、……」


いずれにしろ、答えは出てた。

殺人衝動を抱えたままで表の世界に生きるのは無理だ。出来たとしても、ここの暮らしと同じく部屋に監禁されるがままの人生になるだろう。つまり、基本的人権は得られない。もしもそれが出来るというのなら、私達は深海棲艦と戦争する以外の道があったということだ。いや、違うな。


存在したのだ。


少なくとも、雨村という深海提督の頭脳の中に。


わるさめ「それとさ、最後に1つ。空母水鬼もここにいるんだよね?」


深海鶴棲姫「さあね。そこらで虫の息じゃない」


2


雨村「このような寮舎の空き部屋に呼び出して何用でしょう? こっちの敷地は電さんの土地なので入るためにいちいち申請しなきゃならないんですよ」


神風「物置みたいな場所ですけどね」


雨村「明石君の仕事なら順調ですよ。夕張さん明石さんはお仕事出来ますねえ。ただ上の人が残業しまくるのは下が帰りづらくなりそうなので、個人的にはどうかと思いま、」


神風「『空母水鬼』、『深海鶴棲姫』」


雨村「はい?」


神風「ごまかしても無駄です。私、そういうの分かるんですよ。あなたもご存知でしょう。どうせ私の過去も調べて北方での訓練も戦後復興妖精のことも知っているかと」


雨村「勧善懲悪モノの時代劇を観るのが好きなんでしたっけ?」


雨村「……なにやつ」


神風「一かけ二かけ三かけて、仕掛けて殺して日が暮れて、橋の欄干腰おろし、はるか向こうを眺むれば、この世は辛いことばかり」


神風「片手に線香、花を持ち、何処行くの」


神風「私は必殺仕事人、雪降る北の鎮守府の」


神風「神風型の一番艦、神風と申しやす……」


雨村「声が可愛いのはともかくそれっぽい雰囲気が出過ぎですね……」


神風「まず全てを自白するチャンスを差し上げます。嘘発見器とは比較にならねえ精度なので嘘つく時は気をつけてくださいね」


雨村「黙秘権を行使する」


神風「黙秘権行使、それがもう嘘。黙秘するつもりないくせに。私は司令補佐のためなら前科も怖くないですが……」


雨村「対深海棲艦海軍系准将組の人こわすぎる」


雨村「多分、向こうでもう真実は暴いていると思いますから、そちらから聞けばいいと思います。まあ、お互いに『見なかった』ことにするのが一番、良いと思います。そちらに不利益はないです。バレなきゃ犯罪じゃないの思考があれば、ですが」


雨村「……分かりますよね。准将と私の関係、露呈したら」


神風「C級戦犯のフレデリカさんが想力工作補助施設を使えたらと思うとゾッとする。あなたのような危険人物が想力工作補助施設が使えるんです。これでもかなり温情をかけているつもりです」


雨村「私はこの力をあの子達を存命させるためにしか使用しておりません。信用に値する経歴のはずです。努力して私は国を変えようとしています。考え直してくださいよ。艦兵士と役人、その関係を維持したい」


神風「深海鶴棲姫という物的証拠は押さえているうえ、こっちは戦後復興妖精、此方も含めた対深海棲艦海軍ですよ」


神風「ゲロった後のこと頭で考えるための時間稼ぎは止めてください」


雨村「こうなることもまあ、分かってた。あなた達に隠し事が出来ないことも。だから、色々と隠蔽するのも止めて、彼女にこの場合のケースも話してある」


雨村「深海鶴棲姫……彼女はどうなるんですか?」


神風「世界共通の価値観その1・『深海棲艦は人類の敵』だ。与することは国家反逆罪に該当する。世界を救った中枢棲姫勢力ですらね。でも世界を救った中枢棲姫勢力と私達の関係は特別だ。あの人達はただの深海棲艦ではないですから」


神風「あなたは深海棲艦に与した罪人です」


雨村「……了解。1つこちらの希望を伝えておく。彼女には罪はない。最大限、そこを考慮して欲しい」


雨村「ああ、乗るか反るか」


神風「なんです? 手をグーとかチョキにして」


雨村「『軍艦じゃんけん』をしませんか」


雨村「あなたが勝てばそこまでお話します。僕が勝てば『准将の異父弟』というのは黙っていて欲しい。つまりこの一件、准将には内緒に、ということです。別にあなた達、なんでもかんでも准将に頼らないとなにも出来ない訳ではないはずです」


神風「機械乱数のない賭け事、ね」


神風「話が早く進みそうね。乗った」


雨村「じゃんけんですよ。テーブルゲームだと勝てる気がしません」


神風「ええ」


雨村「約束ですよ」


神風「しつこいわね……」


雨村「人間の認識速度は0.5秒でしたっけ。それ以下の時間で相手の手を認識して処理まで持っていけるのならば、後だしにはならないでしょうが、速度を意識してどの手の形にも持っていけることはなくして、手の形はグーからです。それならお互いに安心」


雨村「『公平』ですから」


神風(……やべ、しくじった。そんなあり得ないイカサマに釘さして来て、私の運の低さをついてくるだなんて、さすが司令補佐の弟なだけはあるわ……)


神風(まあ遊びに過ぎないから時間を稼げるのなら負けてもいいんだけどね……)


神風(瑞鳳、電、時雨、戦後復興妖精、阿武隈、わるさめが既に把握してるし、漏洩を防げるはずもないことはこいつもわかってるだろ。なにがしたいんだ……)


雨村「……特に意味はありませんよ。強いていうなら」


雨村「あなたの感覚、ちょっと興味があるだけです」


………………


………………


3


電「……以上、なのです。」


わるさめ「い、いや、司令官あのさ、雨村は……」


提督「………」


提督「外部からの干渉を遮断した疑似ロスト空間に」


提督「姫級の深海棲艦ですか」


わるさめ「え、そこ?」


提督「いえ、異父弟がいるのは教団の調査で知ってはいましたから。会うことはないと思っていましたので、このような巡り合わせとなるのはさすがに予想外です……」


瑞鳳・阿武隈・時雨「……」


提督「武蔵さんは……出払ってましたか。事実確認のために瑞鳳さんと瑞鶴さんをお呼びしますね」


………………


………………


瑞鶴「なにそれ……中枢棲姫勢力とは違うパターンの人間深海鶴棲姫?」


提督「まあ、詳しいことは置いといて質問にお答えください」


瑞鶴「ええっと……8年前は南方のほうにいて確か」


瑞鶴「まだ私が新人に毛が生えた程度で投入されたレイテ沖……」


瑞鳳「……私の記憶にあります」


瑞鳳「瑞鶴さんは南方の鎮守府の提督の作戦でレイテ沖へ出撃、防空埋護姫と対峙しました。押し返したものの撃破には至らず、乙中将がご就任なされてから扶桑さん山城さん時雨さんを中心にしたメンバーで防空埋護姫を撃破しましたね」


瑞鳳「しかし、それまでは特攻性質を持つ西村艦隊の艦種は時雨さん一人でしたので、その時のエンガノ岬沖までの補給線を5航戦を含んだメンバーでこじ開けたのですが、瑞鶴さんが大破しました。その穴埋めとして支援艦隊の私が前線に進撃しましたね。戦闘中、戦艦水鬼改の砲撃により小破しましたが、進撃命令がくだされ、最終的な損傷は大破の艦載機発艦不可、航行可です」


瑞鶴「……思い出した。武蔵さんもいたね。私は前日にあの海域の夢を見たから思うように体が動いてくれなくてル級の一撃で大破しちゃったんだ。隣に翔鶴姉がいてくれたから心は折れなかったけども」


提督「それなら資料に間違いはなさそうですね」


提督「艤装の損傷データからして、恐らく50%が瑞鶴艤装、30%が瑞鳳艤装、10%が武蔵艤装、10%がその他もろもろといった配分の深海鶴棲姫ですね」


提督「ありがとうございます。深海鶴棲姫の理性覚醒の大体の謎は解けました」


提督「雨村さんが当時、想力工作補助施設、それに準じる装備を開発したという点がいまいちですね。よくもまあそれだけの力で大事起こさなかったものです」


提督「見なかったことにしたいですが、見てしまった以上、対処しなければなりませんね」


コンコン


提督「どうぞ」


ガチャ


神風「あ、あの司令補佐……」


雨村「……お疲れ様です」


提督「よくぞおいでくださいました。事情は聞いておりますよ。そちらの意を汲んで事は可能な限り、内密に致しますし、こちらのメンバーにも箝口令を徹底します」


提督「神風さん、時雨さん、表で見張りをお願いしてもよろしいですかね。一時間経ったら交代させますので。例え甲大将が来ても准将の指示だといっていただければ」


神風・時雨「了解」


提督「それでは皆さん、長くなるのでお座りください」


提督「しかし、見てしまった以上、見なかったことにしてくれ、というのは無理な相談とご理解ください。その上でこちらが聞きたいのは3点です」


提督「『想力工作補助施設を開発したのか、イエスならそれをどう活用したのか。ノーの場合はどうやって疑似ロスト空間を使ったのか』」


提督「『あなたはどのような手段を用いて、どんな世界を開拓しようとしているのか』」


提督「そして最後に『その動機を踏まえて筋の通ったあなた自身の海の戦争に対しての意見』です」


雨村「了解です。順番にお答え致しますよ。まず一点目ですが」


雨村「イエス、あそこは疑似ロスト空間、というのですかね。私としてはただの別の空間程度の認識でした。ただそこにいると、安全だとは分かりました」


雨村「どうやって出会ったかは差して問題とは思えませんので」


提督「では、いい方を変えます……あなたが力を手に入れたのは、深海棲艦のまとう想力が原因でしょうか?」


雨村「そうですね。原因はそれ意外に思い付きません。すみません……1つつけ加えるのなら、その力であの箱庭に閉じ込めたことが始まりでした。意図して作ったものではありません。当時は私も混乱しました」


提督「……では問題というのは?」


雨村「学校でも習いますから、幼いこの身にも深海棲艦の基本的な知識はありました。でも彼女達は違ったんです。空母水鬼と深海鶴棲姫は私ではなく、その場所で自分自身やお互いにその攻撃性を向けておりました」


雨村「ああ、あの箱庭への行き来のパスは意思疏通ですね。こいつ」


阿武隈「想力工作補助施設……うすいクリーム色、象牙色でしたっけ」


雨村「ええ、ただ戦後復興妖精が使う完璧な想力工作補助施設ではありません。酷く用途が限定的でしたし、力にバラつきがあり過ぎました」


雨村「最初はその箱庭への行き来しか出来ませんでした。何度か行ったんですよ。理由は私自身でもよく覚えておりませんが、ただあそこの空間はなんだろう、とか、あそこにいた深海棲艦は今どうしてるんだろう、とかそんな興味だったと思います」


雨村「空母水鬼は虫の息になっておりました。やったのは深海鶴棲姫でした。その時は同じ箱の中に虫を二匹入れたらどちらかが死ぬまで殺し合う。そんな感じの末路程度にしか思いませんでしたよ。やはり深海棲艦は『害虫』だなって」


提督「……」


雨村「深海鶴棲姫は弱っていた。満身創痍で装備も使えない。あれは多分、燃料も弾薬もボーキもなかったんだと思います。今だと答えは簡単ですよね。海の傷痕という運営サイドとのパイプがなくなり、海色の想による深海棲艦の活動資源の供給が断たれていただけです」


雨村「彼女は私にこういったんですよ。深海棲艦らしく殺意に満ち溢れた顔で」


雨村「『誰カ助ケテ』と」


わるさめ・瑞鶴「――――!」


瑞鶴「それって、わるさめがうちに着任した時におちび、」


提督「瑞鶴さんそういうのは後でよろしく」


提督「……雨村さん、続きを」


雨村「深海棲艦の認識が変わりました。私はその時、なんとなく『沈んだ艦娘が深海棲艦になる』という学説が真実のように感じられました。あれは色々と穴がある説でしたが、もはや彼女の言葉と表情で方程式の答えの数字が提示されたに等しかったので」


雨村「最も私は深海妖精や海の傷痕には行き着きませんでしたね。そこまで真実を探求出来ず。ただ私が彼女にしたことはその深海棲艦の人類敵対本能を和らげることです。ここは此方さんの殺人衝動と同じです。彼女のスパンは此方さんよりも短いです」


雨村「此方さんは当局でしたが、彼女の場合は空母水鬼で抑えられました。深海棲艦特有の再生能力により、再生しては死にかけて。どうも彼女はその殺人衝動に矛盾して人間は最大限、殺さないよう抗っておりましたね。それが空母水鬼が絶命しなかった理由です。1年前までには2週間に1度のスパンにできました」


雨村「1年後、くらいですかね。私自身、彼女に情を持った。言い訳するつもりではありませんが、子供の時分ながら、その憐れな命を助けることは正義である、と。それを信じた時、この奇妙な腕が呼応しました」


雨村「あの箱庭の力以外に宿ったのは彼女の身体を工作する力ですね」


雨村「それからは彼女達を外に連れ出したこともあります。もちろん、工作して人間に更に似せましたよ。服の調達が最も苦労しましたね……衝動がクリアになっている間は外で問題を起こさず、活動できました」


雨村「分かったのは工作で本体の艤装を必要最低限に近づけることで人間らしくなってゆくということです。艤装を消せはしませんけれど、私は深海棲艦の肉体がある程度、工作可能だということを知りました」


雨村「……ほとんど、彼女達のお陰です。深海棲艦として比較的、理性の高い姫であったことと彼女達が本能に逆おうとする力を持っていたからでしょう」


雨村「この鎮守府が深海妖精を発覚、そして『深海妖精論』を知った時、海の秘密は解明されて行きましたよね。その時、私はその知識と目の前にある答えで、深海鶴棲姫を構成する要素までは突き止めました」


雨村「彼女達はあの輪廻の戦争の放棄を選択したのは確かです。私は深海棲艦が追い詰められていく海に恐怖を覚えておりました。この海の戦い、鎮守府の動向には一般の範囲ではありますが、常に情報を仕入れておりました」


雨村「海の傷痕や対深海棲艦海軍は私達に気がついていないことは分かりました。あの空間は神が形成した世界から上手く隔絶されている箱庭だと。唯一の懸念は、管理権が空白になったロスト空間と海の傷痕消滅により、こちらにどのような影響が出るのかという一点でしたが、ここも凌げました」


雨村「更に中枢棲姫勢力を『家族』だの『戦友』だのという認識も広まったおまけつきです。深海棲艦に対してあなた方を中心にただの殺戮生物ではない、という価値観が芽生えましたよね。予想以上に好都合な結末に転がりました」


雨村「……2点目の答えですが」


雨村「手段はまだ明確ではありません。彼女達の『生まれた種のまま』という希望を叶える手段が思い浮かびません。当局が此方さんを反転建造させて浄化解体で人間にしたという手段を取った。殺人衝動を持った生物が人間と共生して、幸せな未来を、というのが私の目的です。現時点ではちっとも光明が見えませんね」


提督「……まあ、現実問題、無理ですよ。定期的に殺人する存在を誰が好いてくれるのか。深海棲艦は社会に適応できる存在ではないので、戦争してたんですから。中枢棲姫さん達は目的の一致、消滅を覚悟してくれたから、という例外ですね。あなたの理想が達成されるのなら、最初から深海棲艦と争う必要はなかったということです」


提督「人間にならなくても、殺人衝動を消す。これが最低必要条件なのは分かってる風なので、あなたから説得してもらえませんかね……」


提督「なぜ深海棲艦にこだわる必要があるのか分かりません。生存願望があり、敵対意思もなく、こちら側で適応を望みながら一切の妥協はしない? 生きたいのなら、薬の大きな副作用を受け入れるために辛い苦しみにも耐えて然りとは思いません?」


提督「っと、すみません。目的のために手段を選ばないような言い方でしたね」


雨村「生きるために薬の副作用を受け入れるべきなのは私達、人間のほうかと。深海棲艦はあなた方が化けた反転存在であり、人間だと私は思いますから」


雨村「……そして3点目の応答です」


雨村「今なら深海棲艦が悲しい生き物だということは、艦む、艦兵士の皆様にはわかるはずです。私よりも隣人であり愛し合えないあなた達だからこそ理解は深い」


雨村「深海鶴棲姫は8年前に反転建造にて、構成は瑞鶴艤装50%、瑞鳳艤装30%、武蔵艤装が10%、その他もろもろ、小沢艦隊種、海外艦含め10%です」


雨村「空母水鬼は9年前に反転建造にて、80%が翔鶴艤装、その他もろもろが計20%です」


雨村「ハハ……エンガノ岬沖海戦、マリアナ沖海戦、史実効果により、突破口となると同時に、甚大な被害のリスクもつきまとう。大破してなお、入渠して出撃。人間の頭では深海棲艦反転建造システムを知らない限り、姫が産まれやすくなる環境の下地から抜け出せませんよね」


雨村「海の傷痕のシステムは美しく、残酷ですね。といっても主に思考するのがたった二人では例え天才だとしとも世界のシステムに穴が生じるのは必然です」


雨村「空母水鬼と深海鶴棲姫は最終世代の5航戦から産まれた深海棲艦といっても過言ではありません」


雨村「瑞鶴さん、あなたの艤装にあった一番の想いは」


雨村「翔鶴さんへの愛情です。姉妹艦効果が他よりも高いレベルで精神影響を与えていますよね。それが彼女が異質な原因の1つ、『会いたい=だから帰る』の本能が他を遥かに凌駕していた訳です」


雨村「空母水鬼を構成しているのは80%の翔鶴の想力です」


雨村「現存する翔鶴の70%の適性率よりも10%高いので、本能の感知、深海棲艦の第6感はご存知ですよね。それを便りに導かれたのは艦兵士の翔鶴ではなく、空母水鬼のもとだったのかと。そして空母水鬼もそう。深海鶴棲姫に惹かれた。彼女はアカデミー時代からともに過ごした瑞鳳さん、そして妹の瑞鶴さんの計80%です。このようなケースは稀でしょうが、深海棲艦がお互いを殺し合う1つの理由ではあるでしょう」


雨村「瑞鶴さん、あなたなら分かるはず」


雨村「翔鶴さんはあなたのためなら、その身を差し出すと」


雨村「それが空母水鬼が、当局の役割を果たした理由です」


雨村「そして姉を殺し続けることしか出来なかった深海鶴棲姫が『助ケテ』といった理由です」


雨村「深海棲艦としての本能を、その想いを持って押さえ込みにかかった理由です」


雨村「彼女達に手を差し伸ばしたことを間違いなどとは思いません」


雨村「あの箱庭の鎮守府にいる船は日の照る海に出たことはありません。暗い闇の中で錨を降ろしていただけです」


雨村「そう指揮した私は彼女達の提督ではあるのでしょう」


雨村「軍艦ではなく、船のよりしろとなった人間を指揮する提督なのでいつだって彼女達を生かす指揮を執ってきたつもりです」


雨村「電さんわるさめさんは彼女とお会いしましたよね。彼女達は彼女達の想いで、あそこまで温厚になりました。これが奇跡でなくとなんだというのでしょう。人間ベースであるあなた達でさえ、トランスタイプとして得た深海棲艦の想いで発狂しかけたはずです。それを深海棲艦である彼女達は自力で押さえ込んでいるのです」


雨村「……可能性が0だとは思いません」


雨村「誠勝手なお願いではございますが」


雨村「何卒、御慈悲を」


提督「妥協点は申し上げた通りです。一芝居打つか、あなたから説得してもらえれば、限りなく理想に近い幕引きが可能です。深海棲艦が深海棲艦である限り、駆逐しなければなりません。チューキさん達はそこを理解してくれていましたが……」


雨村「……もちろん、勧めましたよ。海の傷痕:此方が人間として復活したシステムは深海棲艦にも応用できますから。ダメでしたけどね。あなた方が説得出来るというのならそれが一番理想的ではありますね」


雨村「そうでなくともいつの日かあの本能は消えます」


提督「1世代で本能が? 愛の力で?」


提督「愛で救えるのに、愛で救えないモノに変えるのですか?」


雨村「ご助力を」


提督「恐らく自分が絶対に聞きたくない部分、まあ、自分達の母親が関連していそうですが、あなたはイカれてますって」


提督「『その時は同じ箱の中に虫を二匹入れたらどちらかが死ぬまで殺し合う。そんな感じの末路程度にしか思いませんでしたね。やはり『害虫』だなって』」


提督「この感想、異常です。島を消し飛ばす正規空母型の姫種、深海鶴棲姫の憎悪と戦闘力を目の当たりにした子供の感想が、害虫?」


雨村「……」


提督「それで現実問題、あなたはどうするんです?」


提督「時効はもうありませんよ。生きるのなら筋は通さねばなりません。あなた、今後どうなります? わるさめさんや瑞穂さんのケースとは違うのはお分かりですよね。もちろん死も覚悟してかばい続けていたんですよね?」


提督「それで少なくとも協力者として認識しているあなたが裁かれたことを知った深海棲艦である彼女達の反応は? 深海棲艦としての殺意全開で人間を襲うのでは?」


提督「善処しましょう。最大限、死亡撃沈をせずに彼女達との共生手段を模索致しますし、あなたの身柄も同じく最大限、取り計らいます。それは多分、彼女達の『現段階の完成度次第』で可能性はなくはないので」


提督「でもあなた達は上手く行かなかった時」


提督「最終的な外交手段に訴え出るのでは?」


提督「まずここを信用させてもらうために、無力化されてください」


提督「それから情状酌量の余地ですかね……まーた悶着起きますけど、会議でも取り計らいます。それには自分だけでなく、あなた達の誠意が必要不可欠なので」


提督「我々、対深海棲艦海軍が解散する前なので、ギリギリ間に合う『かも』といったところです。安易な保証は出来ませんし、誓約書に署名してもしょせん気持ちの上のことでしかありません」


提督「申し訳ないのですが、この場で決断を」


提督「和平か戦争か」


雨村「……紳士的な対応、痛み入ります」


雨村「1つ、電さんに質問があります」


提督「どうぞ」


雨村「今も沈める敵も救いたいと思いますか。それに彼女達は含まれますか」


電「思いますし、含まれます」


雨村「では信じさせて頂きたいと思います」


雨村「出来れば彼女達ともっと触れあって頂きたい。そのために協力は惜しみませんよ。彼女達、きっとあなた方が思うよりずっといい子達ですから」


雨村「今一度、相互理解を」


【4ワ●:この瑞鶴50%なら思ったより大丈夫かもしれない説】


電「はあ……」


わるさめ「乙中将、都内で女とデートしててとんぼ帰りだってよ」


わるさめ「(*≧∀≦*)キャハハ」


阿武隈「妖精ではなく、深海棲艦ですよ。笑いごとではないんですが……」


わるさめ「喋ってた感じ大丈夫だと思うゾ☆」


わるさめ「こっちが『失敗』しなければな。あの手の深海棲艦は深海棲艦なだけで、悪いやつじゃないと思うんだー。海の傷痕、悪い島風ちゃん、中枢棲姫勢力の誰とも違うタイプだけどね」


元帥「相変わらずわるさめちゃんは元気だねえ」


元帥「ちなみに瑞穂ちゃん、中枢棲姫勢力ではどうだったの?」


瑞穂「わるさめから聞いてないの?」


わるさめ「具体的に申し上げますと、わるさめちゃんのノリとテンションが発情期突入したレッちゃんをキレさせます」


わるさめ「私とレッちゃんがケンカすると、ネッちゃんが加わってきます」


わるさめ「私達がセンキ婆というおこワードをいったり、砲雷撃で潔癖気味のセンキ婆を汚したりしてセンキ婆がキレます」


わるさめ「すると、その騒々しさに瑞穂ちゃんが発狂します」


わるさめ「チューキちゃんが考えるのを放棄して武力行使に出ます」


わるさめ「そして見かねたリコリスママが仲裁という名の武力行使に入ります」


わるさめ「結果、やはり艦娘反応のあるわるさめちゃんが優先的に狙われて死にかけておりますが、なんとか全員生還で丸く収まります」


わるさめ「そして健気でがんばり屋の春雨ちゃんが顔を出して、隠れてこつこつ訓練します。強くなったといえばレッちゃんが実力を確認しに以下略」


元帥「うん、全く参考にならないね……」


電「だから深海芸人なのですよ……」


電「神風は営倉の雨村の監視に回されましたし、武力による衝突は避け、穏便に事を運び、今回この騒動に関与できる人員も……」


時雨「絶対に無理だよ。深海棲艦である限り、実験動物にするか沈めるか。まあ、すでに無力化自体は出来るから、良くても永久的な監禁ってところだね」


阿武隈「深海棲艦は私達にとって刺激になるのであまり多くの人員を動員出来ませんし。今回のこの一件、提督が総指揮からは外されたんですよね?」


提督「ええ」


元帥「雨村レオン君だっけか。弟だから適任とはいえねえわな」


戦後復興妖精「作戦面子から外された訳じゃねえじゃん」


戦後復興妖精「私はこっちに回されましたしー。いやー、長年人間に尽くしてきてよかったことその1、口が上手くなったこと。今回は元帥のじいさんが来るんですよね?」


提督「ええ。接触を許可されたのは、元中枢棲姫勢力幹部であり、トランスタイプのわるさめさん、瑞穂さん。それ+ぷらずまさん、戦後復興妖精さん」


提督「総メンバー提督は元帥と自分、艦兵士からは上記3名に加えて、阿武隈さん、瑞鳳さん、時雨さん、神風さん、瑞鶴さん、翔鶴さんの合計12名です。必要に応じて調整が入ると思いますが、スターティングメンバーは以上です」


元帥「ああ、後から決まったが、それ+青葉と雷ちゃんな。横の広がりが超広いから陸で自由で動くためにもちょっと別で動いてもらってる」


元帥「ここから更に各鎮守府2名まで選別して回す。コミュ力高い子」


元帥「それ以外は待機だが、事が事だけにな。甲乙丙で面倒を見させる」


戦後復興妖精「スターティングメンバー選定したのは誰?」


元帥「ここの大臣と対深海棲艦海軍とは別の海軍元帥」


戦後復興妖精「へえ、選抜面子的に中々有能な采配じゃないですか」


電「なぜ戦後復興妖精なのです? こいつ本来ならば」


元帥「死人が出る危険性が高いと判断したから。この国の最終世代の艦兵士は失う訳にゃいかんのよ。なので、ヤバい場合はわしか悪い島風ちゃんが一手に引き受ける」


戦後復興妖精「……私的にも此方は死なせられませんし」


電「……」


元帥「細かな情報だけは渡しておくね」


提督「時雨ちゃん、君が今回の副旗艦な。よろしく」


時雨「……優秀な旗艦の阿武隈さんがいるけど、僕でいいのかい?」


元帥「今回は戦闘をなるべく避ける方向で出来るだけ迅速な解決を。出来れば1日で。感情的な面子にこの役割は渡せねえから、メンバーは、阿武隈、瑞鳳、翔鶴、時雨に絞られたが、その中で時雨が最も客観的な判断が出来る素質と立場だと判断された」


元帥「翔鶴と瑞鳳は今回の相手を感情的にさせてしまう点が悪ィ。旗艦素質は艤装使って深海棲艦と戦うというのなら阿武隈だが今回のケースは時雨のほうが適任だし、最適に近いとわしも思うよ」


時雨「深海棲艦には超ドライですから、温情に欠けてしまうかもしれません」


元帥「……本来ならば練巡素質が生きるケースだが、香取は物事に対して准将に似ていて機械的かつ超容赦ねえ。鹿島は逆に優し過ぎるわ」


瑞穂「むしろ今回は情に流されない素質のほうが大事だと思うわ。旗艦には敵味方の意見を含めて立場に沿って客観的に判断できるやつが必要なんでしょ。わるさめと姉妹艦だし、ある程度は向こうの気持ちも分かるでしょうしね」


時雨「なんか瑞穂さんでもいい気が」


瑞穂「じゃあ殺す。深海棲艦を吠えるなら颯爽と葬るべきでしょ。私は認めないわよ。チューキ達が魂捧げて軍の捨て駒になったのに、ドロップアウトした引きこもりどもが私達以上の待遇を望むだなんて図々し過ぎて殺意が沸点越えそうなのよ」


瑞穂「甘ったれているとしか思えないわ」


時雨「……なるほど、引き受けます」


元帥「あいよ、頼むわ」


瑞鶴・翔鶴「……」


阿武隈「5航戦さんの意気消沈ぶりが……」


翔鶴「マリアナ。ええ、私の9年前のマリアナでの不覚がこのような因果をもたらして、皆さんに多大な迷惑をかけたことに申し訳が立ちません……」


阿武隈「大破とか兵士やってれば誰でも通る道ですから……」


瑞鶴「……」


瑞鳳「止めよ?」


瑞鶴「瑞鳳……」


瑞鳳「解体した今でも心にクるんだよね……瑞鶴さんのそういう顔は特に」


時雨「もうレイテの怨霊と対峙したくない気持ちはよく分かる……」


元帥「とにかく、とりあえず深海棲艦と和解を念頭に置かれた作戦だよ。それは世界では艦兵士が適任だろうさ。砲雷撃での争いを控えて、深海棲艦を一人の人間として接しながら、妥協点を模索し合う」


元帥「まー、全てが暴かれた今だからこそだな」


元帥「海の戦いとはまた違った意味で辛い面がある。とまあ……やはり最悪な展開を思い描くだろうが」


元帥「幸いなことに」


元帥「『最終世代の瑞鳳、翔鶴、瑞鶴』の比率が大きい。恐らく中枢棲姫勢力よりも遥かにこちら側に近いと思われる」


瑞鶴「なんでそう思うの?」


元帥「雨村という人間と好意的な関係を築けていると思われるためだ。実際、電と春雨の証言を聞いていて、かなりの理解を示す言動があったし。聞いた感じ闇墜ちした瑞鶴だから、とてもユニークな個性だとわしは思うけどな」


わるさめ「意外と大丈夫そうだった感じ」


わるさめ「翔鶴は会わないほうがいいかも」


わるさめ「ずいずいのヤンデレverだろうし。深海棲艦は憎悪で殺すけど、それ愛情とも受け取れるからね」


翔鶴「」


時雨「それで僕は副旗艦、要は艦兵士の皆のまとめ役というのは理解したけど、現場で僕より上の権限を持つ旗艦は他にいるんだよね」


元帥「旗艦准将」


提督「」


電「!!?」


元帥「こいつは想力工作補助施設が開発出来んからそこは期待するなよー」


電「ちょっと待つのですジジイ! 艦兵士ではない司令官さんを深海棲艦の射程に入る現場に立たせるとは耄碌したとしか思えねーのです! そういうことなら、提督勢の中では物怖じしない甲大将か、響の適任も併せ持って過去に軍人として海でも陸でもドンパチしてた北方のやつが適任だろーが!」


元帥「甲のやつは無理だよ。死なせられん。准将とわしはそういったしがらみとは唯一、無縁だ。まだ兵士として国のために死ねる」


阿武隈「いやいや、提督の立場は今やもうただの軍人の域を越えてますけど!」


元帥「乙中将と丙少将がいるから大丈夫。最悪、その二人でなんとか。それにこの作戦で電と春雨、瑞穂を扱うんだ。特に電ちゃんさ、ここぞという時の判断で准将以外の指示に従えなさそうな欠陥ちらついているだろ?」


電「……それは」


戦後復興妖精「雨村の兄貴だし、准将と接触した反応はチェックしとく価値はありますね」


元帥「北方は絶対に無理だ。あいつの主体的かつ自由な性格、考えりゃ分かるだろ。向こうはいわば、疑似ロスト空間で過ごしている。あいつの夢をなかば実現しかけているやつらだぞ。北方ちゃんは軍人だけど、国の為に命を捨てられるって柄じゃねえ」


元帥「北方のやつはガングートと一緒に雨村の見張りさせてる」


元帥「それに今回は想力工作補助施設の保持も許可されてる」


瑞鶴「ちなみに提督さん、軍学校の成績では……」


提督「腐っても軍人です」


提督「といいたいですが、教官からの評価は『お前より小学生のうちの息子のほうが強い』でした(目そらし」


一同「ですよねー」


提督「しかし、この海のことであり、会話ならば自信はあります。それに加えて戦争終結してから皆さんの日常に関わり、コミュニケーション力も向上を見せております」


わるさめ「まあ……そだね。今や長菊コンビとか第6駆とかカゲヌイ、主に駆逐艦からの評価はあがりっぱなしだぜ」


電「しかし司令官さん……相手は腐っても深海棲艦なのです。武力は最大限使用を控えるという作戦で」


提督「合同演習から始まり、トランスタイプ、キスカ、鹿島艦隊の悲劇、対中枢棲姫勢力、海の傷痕、フレデリカさん、最初期の皆さん、自分達が今まで学び得た力の本質は断じて蹂躙するのみの暴力ではありません。その成果を今こそ挙げる時です」


提督「早い話が、理解を深めて握手を交わすことです」


提督「鎮守府の皆ならきっと、出来ます」


戦後復興妖精「准将、私は前になにが起きるか分からないから気をつけろって忠告したけどさ、その意味を掘り下げておきますね。契約履行装置って使ったやつ、基本生きているうちにろくな目に遇わないんですよ。島風や少佐君もろくな死に方しなかったのは知ってますよね」


戦後復興妖精「名前の由来は詳しく私も知りませんが」


戦後復興妖精「名前は生死の苦海式契約履行装置なんです」


戦後復興妖精「生死の苦海は、輪廻転生の苦しみを海にたとえた語だ」


戦後復興妖精「契約したやつってろくな死にかたしていねえし、少なくとも地獄を味わう羽目になってる。なぜか契約を破棄しても破棄しなくても」


戦後復興妖精「そして大体、海関連の理由で死んでる」


戦後復興妖精「今回正にそれですからね」


戦後復興妖精「契約したやつは今回の件に関わるなとはいわんけど、優しさ出して忠告じゃなくて警告にしとくわ」


戦後復興妖精「今の流れは准将の因果を中心にして荒れてますよー」


提督「自分は戦争に魂を捧げた身です。終わってから今も、人生という性質の上、死も覚悟はしておりますよ」


提督「この鎮守府(仮)に来た時から今までの時間の中で得た航路の」


提督「終着点かもしれませんね」


提督「ぷらずまさん」


提督「自分は貴女という船と運命を共にする覚悟は出来ておりますよ」


電「――――」


電「了解なのです!」


阿武隈・瑞鶴・わるさめ・瑞鳳(なんかこの感じ、懐かしい)


戦後復興妖精(あほらし。警告無視されたし、責任は取らんとこ。まー、私は人を見る目あんまりないみたいだから気に留めとく程度にしとくか)


戦後復興妖精「それじゃ私はこれで」


元帥「どこ行くの?」


戦後復興妖精「深海棲艦は懲り懲りでしてね。深海棲艦と和解なんて柄じゃありまっせん。人間のほうが相手しやすいし、雨村のほうで主に協力します」


戦後復興妖精「所属は北方でよろしく。それじゃ」


元帥「まあ……いいか」


提督「……元帥、1つ策になりそうな考えがあるのです。このメンバーにはおりませんが、今回の作戦の性質上において強力な戦闘力を有した兵士が1名、存在します」


元帥「誰?」


提督「うちからは1名、間宮さんを」



* 修行中、間宮さん


間宮「師匠、いかがでしょうか……!」


大将「お願いだから客に出して?」


間宮「師匠を越えなければとてもこのお店の料理として出せませんよ……!」


客「大将、間宮さんの飯マダー?」


大将「聞いた? 常連の10割が間宮さんのファンだからね?」


間宮「納得できませんよ! 確かに電ちゃんのいう通り、ここのお店のらーめんは私より上でしたから! この味を越えて免許皆伝を頂かなければ私はお店を出せません!」


間宮「どうしても、というのなら師匠から学ぶためにこの近くにお店出します!」


大将「いやー……うちが潰れちゃうー……」


大将「とりあえず俺が運ぶから、どんどん料理してね」


間宮「いえ、その仕事は私がやりますから!」


大将「はいはい……じゃあお願い」


間宮「はい! 師匠、ところでこの料理の味は……!」


大将「」


プルプル


客「大将の携帯、鳴ってるぞー」


大将「うん? 誰だ?」


大将「お、もしもしー?」


わるさめ《よお、おっちゃん!》


大将「小春ちゃんかよ。そだそだ。魚、送ってくれてありがとうな。あれすげえ美味かったんだが、どこの海のやつなんだ?」


わるさめ《リアルの海では捕れないロスト空間という想力の海で生まれ育ったサンマだゾ☆》


大将「ご近所さんに配っちゃったんだが大丈夫なの!?」


わるさめ《大丈夫だよ。私達も食べたし、そこの間宮さんが料理して》


わるさめ《それで要件だけどさ! 間宮さんの携帯に繋がらなくて! ちょっと間宮さん、鎮守府に帰せないかな?》


大将「俺としては構わないんだが、間宮さん俺の味を越えるまでここを出ないって頑なよ。すでにうちのスープ使わせりゃ、俺より上等なもん作れるんだけども、どうもあの人の舌は自分が納得できないと満足できねえみたいで」


大将「まあ、代わるわ」


………………


………………


間宮「は、はあ……しんか!?」


わるさめ《ストップ!》


間宮「……は、はい」


わるさめ《司令官も最前線で仕事すっからさー》


大将「いっといで。またここで飯作りたいなら歓迎するからさ」


間宮「ありがとうございます! 絶対に来ます!」


間宮「電ちゃんはあなたには渡しませんから……!」


大将「ちょっと意味がわかんないかな」


わるさめ《おっちゃんありがとー! もうすぐそっちに行くから!》


大将「ああ、うん。電ちゃんや初霜ちゃんにもよろしくいっといてなー」


2


ガングート「かったりい。テロリストならさっさと拷問して情報吐かせて楽にさせちまえ。任せてくれたら絞首だの電気椅子だのより優しく殺してやれる自信はあるんだが」


北方提督「全くだ。上は私とガングートをなんだと思っているんだろうね。うら若き乙女達に誇り臭い営倉で男の見張りしろだなんてさ、どこの国のジョークだい。ウォッカなきゃやってられないよ」


神風「司令官もガングートさんもしっかり仕事してくださいよ! 私達がどれほど重要な任務を授かったのか理解するべきかと!」


ガングート「テロリストは嫌いなんだよ。それに見張りなんて私には向いてないぞ。銃殺したら、なんだ。私はまたシベリアへ行くのか?」


北方提督「強制送還だろうね。たまに遊びに行くよ」


ガングート「あいよ」


神風「会話がうら若き乙女からはかけ離れております。それに加えてあなた達二人、このようなほこり臭い場所が超絶似合ってますのでその点はご安心ください」


北方提督「全く、准将の秘書やり出してから神風は三日月と同じく悪い意味でクソ真面目になりつつあるよね。肩の力抜かないと三日月みたいに倒れてしまうよ」


神風「どの口でほざくの!? 三日月ちゃんが倒れたのはあなたが執務を丸投げしたからと聞いておりますが!?」


北方提督「雨村君がなんかしたら、まあ具体的にはいわないけど、容赦なくやるよ。それが最良だろうし、駆逐を立ち入り禁止にして私とガングートを指名したってことはそういうことだろう?」


神風「それはそうでしょうが」


ガングート「対象とは必要最低限の会話。目を離さない。怪しい言動には即対処。二人以上だ。ほうれんそう。以上を徹底すれば見張りでヘマなんかしないな」


北方提督「つまり酒は飲んでもいい」


神風「……ソ連の人の死因の1/4くらいがお酒関連って本当に思えてきた。あ、いや、ロシアでしたっけ?」


北方提督「ロシアって国は別にロシア人の故郷じゃないんだよ」


北方提督「ウォッカが置いてあるところがロシアなんだ」


ガングート「つまりここもロシアだ」


北方提督「ロシアはとっくに世界を制している」


ガングート・北方提督「ハハハ」


神風「ロシアジョークはよく分かんないのでツッコめませんが、そんな意味不明な言い分で飲酒は認めませんから」


コツコツ


戦後復興妖精「おっす」


神風「……」


戦後復興妖精「試合終わったらノーサイドの精神プリーズ」


戦後復興妖精「こっちにいることにしましたー」


北方提督「足音がしたけど、今回は実体持った?」


ガングート「推理小説ならここでトリックだ。本当に戦後復興妖精の足音か?」


神風「こいつの足音です。なお根拠は感覚」


戦後復興妖精「限りなく人間に近い妖精。原因、人の決めた細かいルールをかいくぐるため」


雨村「あの、助けてはもらえませんか」


神風「あん? 神風刀で例の装備、切り離したとはいえ、また開発されたらたまったもんじゃねえから、最大限、大人しくしているのをお勧めするわ」


雨村「いえ、万が一の場合に備えて今の状態だと思うので。私の首が刎ねる時はどう考えても、空母水鬼と深海鶴棲姫の後ですし」


北方提督「助けてって例の二人のことかい? 今、皆が助けようとしているけど?」


雨村「違います違います」


雨村「准将を、です」


神風「……聞いてあげるわ」


雨村「フレデリカさんって学生の頃から深海棲艦と艦娘について強く関係性を疑っておりましたよね? 恐らく仕官妖精は彼女のそこを知って深海妖精可視才を与えたのだと思いますが、知ってます?」


神風「C級の身内の恥を語るとかケンカ売っているので?」


ガングート「かーみーかぜー、いちいち感情逆立てんな」


雨村「『海へと沈み、我々が発見できなかった艦娘が深海棲艦化している』から『海へと沈み、我々が発見できなかった艦娘が深海棲艦化している』とのことで、『それがロスト現象内で起きている』ですが、その仮説は発見できなかった殉職者よりも遥かに多い深海棲艦の数についての矛盾が解決できず、とまあ、突き詰めていかれましたが」


雨村「この説の根本には様々な仮説を元にスタートしています」


雨村「准将は先代元帥と同じくこの戦いを1つの世界という視点から真実を掘り下げましたが、フレデリカさんはこの海の戦いを宗教的観点から真実を掘り下げました。彼女がアカデミー時代にいったそうですが、物的なモノには記録されておりません」


北方提督・ガングート・神風「……」


雨村「これが面白いんですよ。准将は真実を解明しましたが、どちらかといえば真実のその先にある本質を突いているのはフレデリカさんのほうだと思いました」


雨村「『見えない一本の糸がもしも誰か1人にでも見えたのなら私達は今すぐにでも真実にたどり着けますし、私はその糸の見えない点が、2つであることまで絞っておりますが、真に人類にとって重要なのはその糸の示す意味ですよ』と」


雨村「フレデリカさんはこれ以上は言わなかったらしいですが、恐らくその場では議論の価値なしと判断したのかもしれませんね。あまりに意味不明でしたから。あの人は天才的な頭脳があるのに、あまりに自己を伝えるのが下手すぎる。それは自分が異常だと分かっていたからでしょうが」


雨村「でも、非常に面白いですよ。きっと彼女は深海妖精を発見する前からある程度の真実を思い描けていたのだと思いますね」


雨村「今の情報からしてフレデリカさんはこう主張したかった」


雨村「要は『艦娘は深海棲艦と同じ存在で繋がった糸の塊。その糸の塊に私達が更に糸をつけると、深海棲艦となる際にその途切れた糸の先が1つ目の見えない部分』となりますが、『ただの見えない糸なので、その先はどこかに続いている』ということになりますね?」


雨村「『ロスト空間』です」


雨村「そして見えないもう1つの場所は、想力の透明なパイプ、『海の傷痕』に繋がっています。彼女は艦兵士も深海棲艦もマリオネットのような存在だと考えていたと」


雨村「そして私が面白いと思ったのは艦兵士と深海棲艦が1つの糸で構成されているという発想でした。艦兵士が損傷して身体や艤装の糸がほどける。そのほどけた糸で構成されたのが、深海棲艦です。だから、分離してもお互いに繋がったままです」


雨村「糸、まあ、ここは本能や役割といい変えます。それをたぐれば深海棲艦も艦娘も、お互いに引き寄せられる。その命の糸の因果は、運命の赤い糸と化します。准将は深海棲艦を艦兵士の艤装にたまった想いが反転建造にて人間をまとった艤装であるため、反転存在だとしましたが」


雨村「フレデリカさんの説だと、その糸さえ完全に切れたのなら、深海棲艦と艦兵士は運命から逃れられるということになります」


雨村「まあ、その糸の構成している1つが殺人衝動なので、この戦争が弾き出した問いは、深海棲艦からトランスタイプを介して人間へ戻ること。最後の海で反転建造によって産み落とされた此方さんが解そのものですが」


雨村「私が意図せずやっていたのは、その糸に新たでより強い別の糸を結びつけることでした。更に強い運命によって、艦兵士とは別のモノに引き寄せさせる。それが翔鶴艤装80%の空母水鬼と、瑞鶴艤装50%と瑞鳳艤装30%の深海鶴棲姫です」


雨村「きっかけは偶然が大きいですが、あの二人はお互いに適度に殺し合うことで、『艦隊これくしょん』の世界の枠外にいることが出来たのです」


雨村「解体された今、瑞鶴さんや翔鶴さん瑞鳳さんが前に現れたとしても、海の傷痕が用意した解体という慈悲の力で、殺人衝動もさほど誘発されないはずです」


雨村「准将が今回、思い描いている解決への切り込みはただ1つ。理性のある彼女達に思考させること」


雨村「具体的には『なにを以て深海棲艦なのか』です」


雨村「トランスタイプ、海の傷痕、中枢棲姫勢力、戦後復興妖精を引き合いに出して、そこを改めて思考させるはず」


雨村「そこさえ価値観を変化させたのなら、和解へと持ち込めます。そして彼女達も『殺人衝動があることが深海棲艦の定義』だとは絶対に考えておりません。あの時、私に助けて、といった深海鶴棲姫ですから」


雨村「准将が『彼女達の感情をどこまで心で理解できるか』が、そのまま成功作戦率に影響します。なぜなら、鎮守府(闇)は准将に盲目的で、准将が殺せ、といえば殺しにかかるからです。艦兵士だった彼女達は相手があくまで深海棲艦だとも認識しているから尚更です。ここまで行き着くと、この一件で」


雨村「確実に死ぬのは大罪者の私です」


神風「呆れた……自分を助けてってこと?」


雨村「ですから、准将です」


雨村「准将は、私を合法的に殺すのが目的です。私と准将の関係はご存知ですよね。さきほど話した時も准将が私を見る目は確かに冷酷無比でした。恐らく、准将は私の家庭を憎悪しているんだと思いますから」


雨村「そこを確かめてください」


雨村「もしもそうなら、止めてあげてください」


雨村「それは間違いだから」


神風・北方提督・ガングート・戦後復興妖精「………」


北方提督「みんな、どう?」














神風「10点かしら」


ガングート「30点はやる」


北方提督「20点かな」


戦後復興妖精「可哀想だろ。100点やるよ」


北方提督「400点満点中、160点だ」


神風「私は1000点満点中よ」


戦後復興妖精「ギャハハ。余裕で赤点ですねー。なるほど、レオン君は兄貴より口は上手そうですが、兄貴より頭は悪いんですね」


神風「ええとねえ、雨村さん」


神風「司令補佐はそんなことしたら、悲しむ人がいるって分かってるから絶対にしないわ。彼は本気で悪いところを治そうとしているの」


神風「その想いが」


神風「貴 様 風 情 の 存 在 に 負 け る と?」


神風「あんま調子乗ってっと死なない程度に首を刎ねっぞ」


北方提督「准将はもうそんなやつじゃないさ。この鎮守府に来て見ていたら私でも分かるくらいにね」


ガングート「お前が例の二人を本気で愛してねえからいえる台詞じゃねえの」


雨村「……、……」


戦後復興妖精「私からはそうですね、本気で殺しにかかるとしたら軍の連中にお前が危害を加えたら、です。敵に回るのは准将だけじゃないですけどねー」


戦後復興妖精「ヒントあげたんだからやり直し」


北方提督「中々面白い話だったよ」


ガングート「ラジオよりかは良いな」


戦後復興妖精「私を騙せたら100万円」


神風「憐れなり」


雨村「ええー……」


神風「ちなみに先の軍艦じゃんけん」


神風「私が見張りにつけられることを読んでいて、逃げ出すために感知の程度を試したのかもしれない、と司令補佐から教えてもらっております」


雨村(さすがに相手が悪いな、これ……)


戦後復興妖精「……雨村さん」コソコソ


戦後復興妖精「本気なら私も手伝いますよ」


戦後復興妖精「契約履行装置に願いを書き込んでください」


雨村(こっわ……)


雨村「……、……」


雨村「ハハ、いざという時は頼りにしています」


戦後復興妖精(へえ、0点だとはいわねえのか)


戦後復興妖精(お互いに出来るだけ穏便に、そして取り分を考えて、想力省の設立を読んでいたのなら、まあ、一般以上になにか超技術はあると見込んではいただろ。一家心中……絶対に過去でネジ飛ばしたパターンだとは思うが)


戦後復興妖精(……弟、ね。准将は今回こっちだと思うけどねえ)


戦後復興妖精(空母水鬼と深海鶴棲姫の理性覚醒が、基盤になった瑞鶴と翔鶴、瑞鳳武蔵艤装の運命の悪戯、海の傷痕が『知らなかった』想力工作補助施設だと?)


戦後復興妖精(パーパは知ってたぞ。私のツレはそれで戦いを挑んだんだからな。恐らく頭悪すぎてアホな戦い方して負けたんだろうけど)


戦後復興妖精(やっぱり隔絶された箱庭鎮守府のせいか。いずれにしろ、こいつの証言は筋が通るし、納得できる偶然だ。深海棲艦周りは向こうに任せるとしても)


戦後復興妖精(電の想力工作補助施設も、同じく用途が限定される。恐らく准将起点にしてっから、いや、准将はあっちに回して正解か?)


戦後復興妖精(……佐久間が意図して作った想力工作補助施設じゃねえ。だから、その力はかなり限定的ってところは納得できる。私が使ってたやつは『生死』を起点にして用途を広げたけど、あれと同等なのは狙って製作しなきゃ無理だ)


戦後復興妖精(想力工作補助施設の能力が箱庭形成、維持と出入り。深海棲艦の肉体改造の二点っていうのがうさんくせえ。箱庭形成が初期能力だとすると、こいつはその時なにに対して廃の領域に足をぶっ込んだのか)


戦後復興妖精(……想力ってのは自由度があり過ぎて、他になにか活用していてもおかしくない。例えば、こいつが)


戦後復興妖精(ステルスかけてなにかを装備している場合)


戦後復興妖精(だとしたらそれが恐らく……)


戦後復興妖精(切り札であり、思考機能付与能力も施されていない深海棲艦と関係を結べた理由? まあ、やっぱり今は青葉達の調査待ちかね……)


戦後復興妖精(破綻した推理だよなあ)


戦後復興妖精(……乙中将に唾かけに行くか)


【5ワ●:プレゼント・フォー・ユー】


わるさめ「届けてきたよ。設備もね」


時雨「お疲れ様。ビデオ時間は約20分、終わりと同時に出るよ」


電・わるさめ「了解」


瑞穂「あの内容、私ならキレるけどね……」


わるさめ「ずいずい翔鶴づほが『面白い!』と太鼓判を押したからきっとウケる」



*ビデオレター ~わるさめちゃんより愛を込めて~


深海鶴棲姫「……」ポチッ


わるさめ《司会&実況のわるさめちゃんだゾ☆》


わるさめ《和解へと向かうために》


わるさめ《空母水鬼、深海鶴棲姫のお二人とお友達になれそうな奴等を私達、対深海棲艦海軍の仲間から集めました!》


深海鶴棲姫「……」イラッ


わるさめ《まずは丙少将鎮守府からは1名、この人!》


わるさめ《名乗りを挙げたのは奇跡の異能艦! 艦歴はいわずもがな! 様々な死地を乗り越えて、適性者としても中枢棲姫勢力の幹部と初対面でお友達になったドラマをお持ち! 幸運女神のロマンティックあげ、》


深海鶴棲姫「……」ハヤオクリ


わるさめ《乙鎮守府からは意外にもこの人! 残念、大和撫子だと思った? 山城よ! コミュ力に定評のある元気一番姉を差し置いて推薦されたのは、西村艦隊、レイテ特攻性質を所持する航空戦艦山城! 姉とともに地味に戦艦としては最年少であります! 建造された当時は18歳、その理由はケンカ売ってきたヤンキーをシメるためという根っからの押忍番、かの跡地は山城伝説と地元のホラースポットと化していた!》


わるさめ《言葉は要らねえ、拳で語り、》


深海鶴棲姫「……」ハヤオクリ


わるさめ《キタ(゚∀゚)キタ!》


わるさめ《全ての鎮守府の中で最も苦労した秘書官》


わるさめ《三日月氏いわく――――》


わるさめ《彼女がいなければ私は精神をやられていた》


わるさめ《北方伝説の片割れ! 天から吹き付ける銀の風が迸るは凍える炎のツッコミ! 北方の自由の翼は私がもいできた! 一時期はお婆ちゃんの介護のため軍を離れておりましたが、なんと艦兵士歴は20年、ツンデレとしても20年の歴を誇る超ベテラン! 北方鎮守府一筋、我が艦兵士道は北方とともにあり!》


わるさめ《北方からは駆逐艦天津風ことあまつんが駆けつけてくれたぞ!》


わるさめ《そして北方からはもう1名》


わるさめ《――――特徴》


わるさめ《『なにを!』、『しても!』、『可愛い!』》


わるさめ《北の雪国で開花した笑顔の花は氷の心をも溶かし尽くす! 月夜の癒しと太陽の笑顔! 皆さんご存知、ホロ適性者の中でもレア中のレア、『ゆー&ろー』の素質を併せ持ったドイツが産んだ奇跡の個体!》


わるさめ《ドイツでのろーちゃんは横断歩道を渡るときに日本の癖で手を挙げてしまうという! ナチス時代の敬礼をしてしまうという失敗であります! しかしッ、誰も彼もが可愛いと笑顔で赦したという! 正しく可愛いは正義! 文化の垣根をも溶かしている模様です!》


わるさめ《おっと、ここで新情報が飛び込んで参りました》


わるさめ《……》


わるさめ《す、すみません。あまりの衝撃に言の葉を失っておりました》


わるさめ《バリメロンが開発中、『アーケード艦隊これくしょん ダイヴver』の開発において、ドイツのアトミラール直々に『U-511は初期艦として選べますか』と開発に圧力をかけてきたとのことです! 現場にドイツからの開発陣を送り込もうとしているとの情報です!》


わるさめ《これには全世界のゆー&ろーちゃんファンもにっこ、》


深海鶴棲姫「……」ハヤオクリ


わるさめ《キタ!(゚ ∀゚)キタ!》


わるさめ《南方からはこの人が駆けつけた! アメリカでは飛んでいるUFOを墜としたとの謎の逸話がある模様! 九州鹿児島西郷どんを故郷に北アメリカ、カルフォルニアで15年過ごした後に日本に帰国! 対深海棲艦海軍にスカウトされて南方に配属! その後すぐにヨーロッパに支援として向かった日本国籍のビリー・ザ・キッド! 防空ロデオガンマン艦・照月!》


わるさめ《休日の朝は起きたら牛乳を飲み、二度寝するのが至高の幸せな模様です! 今朝に突撃あなたのことを教えてくださいをしたところ、ベッドの上で寝ぼけ眼の女の子座り! 口の端から牛乳を滴らせ趣味は乗馬と答えた――――》


わるさめ《と ん で も ね え ド エ ロ 娘 だ ッ!》


わるさめ《なお姉の、》


深海鶴棲姫「……」ハヤオクリ


わるさめ《鎮守府(闇)からはッ!》


わるさめ《エンジェル&デーモン!》


わるさめ《『歴史最悪の怨霊船:海の傷痕此方&当局』を沈めた我らが最高艦兵士勲章所持者! 始まりの艤装の一角を担った駆逐艦! 日本が誇る天使代表艦であります!》


深海鶴棲姫「……」


わるさめ《その実、世界で最も深海棲艦を沈めた艦兵士のギネス記録保持者でもあります! なんと甲の球磨型姉妹にトリプルスコアをつけての撃沈深海棲艦数10520!》


わるさめ《西方に支援として出向いた時、その戦闘力は露呈した! 深海棲艦が戦うのを辞めるといわれる程の圧倒的殲滅力を持ち、沈めることこそ私の慈悲だと言わんばかりに敵の息の根を止め尽くす!》


わるさめ《『沈んだ敵も、出来れば助けたいのです!』、『戦争には勝ちたいけど、命は助けたいっておかしいですか?』」


わるさめ《こ い つ は 一 体 な に を い っ て い る の か ッ!》


深海鶴棲姫「……」ハヤオクリ


わるさめ《そして艦兵士ではありませんが特別参戦枠》


わるさめ《同じく鎮守府(闇)から》


わるさめ《我らが提督、青山開扉准将!》


深海鶴棲姫「……!」


わるさめ《デーモンに魅入られた提督はやはりデーモン!》


わるさめ《彼との会話に応答する! それすなわち敗北なり!》


わるさめ《世渡りが下手な彼を発掘したのは先代丁准将! 戦争終結に魂を捧げて、艦兵士はただの船のごとく扱い、妖精、深海棲艦に関しては誰もが認めるド変態! 当時の人間としての至らなさはあの間宮さんをぶちキレさせる程であります! 一時期鎮守府では『あの人はあたし達より深海棲艦のほうが好きなんだと思う』とドン引きされていたぞ!」


わるさめ《なお最近、名前の読みをヒラトに変えた模様ですが》


わるさめ《誰1人からもヒラトとは呼ばれない可哀想なオープンザドア君!》


わるさめ《戦争終結してからメキメキとあがるコミュ力(自称)で、今回の作戦に意気揚々と参戦だぞっ!》


深海鶴棲姫(くっそどうでもいい情報しか発信されてない……)


わるさめ《続いては死の霊柩母艦、キングオブザアンラッキー、瑞穂ちゃん!》


わるさめ《婚約者に式をすっぽかされた挙げ句に軍の人間にだまくらかされて海へとやって来たッ! 更にフレデリカという超絶変態と意気投合! トランスタイプに改造され、禁断の8種にされたことで生死曖昧などろっどろのスライム妖精になった後、丁准将に実験道具として寄贈され、そこから更に海の傷痕による反転建造で水母棲姫にされた!》


わるさめ《中枢棲姫勢力として活動する中、海の傷痕を倒し、幸せな気持ちで天に召されたかと思いきや》


わるさめ《先日、戦後復興妖精にキャッチされて瑞穂ちゃんとしてまたもや輪廻転生! 海域突破報酬商品として我が鎮守府へとご案内! もう嫌だもう嫌だ、と嘆く彼女は中枢棲姫勢力のネッちゃん、第1世代矢矧にボコられて沈められるという理不尽! 一体彼女がなにをしたのか! 本作戦もお偉い様からのご指名による強制参加だ!》


深海鶴棲姫「……」ホロリ


わるさめ《以上が今作戦、ファイナルファンタジーを描く光の戦士達!》


わるさめ《なお仲間達は深海鶴棲姫のために今朝から会議を行い、親交を深めるための呼び名を考えた模様!》


わるさめ《瑞鶴、瑞鳳、武蔵! その割合が濃いとの情報のもと一晩かけてチャーミングな名前を編み出した!》


わるさめ《名前は瑞鶴、瑞鳳、武蔵から一文字ずつ! そして苗字には故郷の海と思われるエンガノ岬からストレートに起用! 発表します!》


わるさめ《じゅずっ、》


わるさめ《失礼、噛みまみた》


わるさめ《ずじゅっ、》


わるさめ《こほん。すみません、一発撮りでして》


わるさめ《ズズム・エンガーニョ!》


深海鶴棲姫「……」ブチッ


2

 

瑞穂(機材ぶっ壊されてるし絶対おこだわ)


時雨「やあ、初めまして、だね」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


わるさめ「止めてズズムちゃ、」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


電「はあ、わるさめさんは平手で済んで良、」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


瑞穂「ごめんなさいね……あれはキレて当た、」


深海鶴棲姫「 ( ゚д゚)、ペッ」


ビチャッ


瑞穂「まあ、我慢してあげ……」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


瑞鶴・瑞鳳(喋んなってことかな……)


深海鶴棲姫「お母様方? 私の前に来るだなんてさすがに肝は座ってるわね。タイミング悪かったら殺し合いだぞ」


瑞鶴「だからタイミング見計らって今に、」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


瑞鶴「」


瑞鳳(確かに深海棲艦特有の憎悪は薄いかな。雰囲気は人間に近い……血色もいいし、乱暴だけど、これ加減をしてくれている……つまり交渉自体は可)


わるさめ「……」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


わるさめ「なんでえ!?」


深海鶴棲姫「お前は雰囲気がうるさい。定期的に行く」


深海鶴棲姫「残り7日だ。私がこんな優しい態度でいられるのは」


深海鶴棲姫「よく言葉を吟味して全て端的に発言しろ。理解する頭はある」


時雨「代表して僕が。これ、こちらが用意した服だ。二人分」


深海鶴棲姫「……」


深海鶴棲姫「?」


瑞穂(理解する頭ないし…こいつの相手絶対に疲れるわ)


時雨「僕らとともに外に出よう。手筈は整えてある」


深海鶴棲姫「交友を深めることに意味はないし、お互いに上っ面の情しか芽生えない」


時雨「なぜ断言できるの? 僕は深海棲艦と交友を持ったことはない。中枢棲姫勢力ともあまり個人的な関わりはなかった。君は艦兵士と交友を深めたことがあるのかい?」


時雨「僕自身は別に君達と友達になりたい訳じゃない」


時雨「お互いの目的のためにこちらは君を測る必要があるだけだ」


深海鶴棲姫「……、……」


深海鶴棲姫「だってさ、お姉ちゃん」


時雨(……いつの間に背後に。気づかなかった)


空母水鬼「あなたは他者を無差別に警戒し過ぎです。付き合う価値はあると思いますよ。だって皆さん、とても雰囲気がお優しいですから。きっと本気で私達に配慮した未来を思い描いてくださっております」


電・わるさめ・瑞穂(こいつ……)


瑞鳳(これは困る、かな。提督さーん助けてえー……)


瑞鶴(これが空母水鬼とか冗談きついって……姿も雰囲気もその言葉から伝わる性格もなにもかも翔鶴姉そのままじゃんか……違いは二点、深海棲艦であることと、声か)


深海鶴棲姫「……見えていないから」


深海鶴棲姫「お姉ちゃん、視力がないんだ」


深海鶴棲姫「私も戦ってる時に気をつけてはいるけど、私達は中枢棲姫勢力とは違って人間の肉体を資材にしてない。失った部分の再生に個体差があるのは知ってるはずだ。お姉ちゃんの場合、視力の回復が殺し合いのスパンに追い付かない」


時雨「了解。最大限、配慮させてもらう」


空母水鬼「ありがとうございます」ニコ


瑞穂(うっわ、空母水鬼って大体ポンコツとツッコミで個性別れるけど、この感じは初めてだわ。リコリス並の違和感、慣れるには時間かかりそう)


空母水鬼「ところで准将殿がこの場にいないのは、やはり警戒なされているのでしょうか?」


時雨「答えは用意してあります」


時雨「『願掛けです。あなた達とは陸で出会いたい』とのこと」


空母水鬼「それは素敵な発想ですね」


深海鶴棲姫(意外とキザなやつなのか……?)


深海鶴棲姫(あいつの兄貴だし、そういう意図はないか?)


深海鶴棲姫(……地か)


深海鶴棲姫(外はあまり気が進まないな……)


深海鶴棲姫「……」ムスッ


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


わるさめ「いったあああい! なんでわるさめちゃんは理性覚醒した深海棲艦からすぐに暴力振るわれるのお!?」


瑞穂「あんた深海棲艦的にケンカ売りやすいのよ」


瑞穂「悪い意味じゃないわ。要は甘えられているの、」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


空母水鬼「こら、暴力は止めなさい」


深海鶴棲姫「だってムカつくんだもん」


瑞穂(だもん、じゃねえぞオイコラお子様ボディ)


瑞穂(妹のほう……ガン飛ばしは武蔵並の威圧感あって、基本イライラ状態の瑞鶴の性格に瑞鳳の子供っぽい性格がプラスされてる感じが私の発狂の琴線に触れてくる。こっちが下手に出てりゃ調子乗りやがって)


時雨(……7日ね。この様子だと、深海鶴棲姫に空母水鬼との殺し合いを阻止する解決策を編み出して実行すれば、『貸し』の認識に持っていけないかな)


電(なぜだろう……私、今なぜか海の傷痕……)


電(の時より……怖、がってる……?)


瑞鳳(まあ、想定以上に意思疎通は可能ですね。希望もある)


瑞鳳(……よね?)


深海鶴棲姫「本当に武装はないみたいだけど正気か?」


時雨「生殺与奪は君達に委ねる」


電・わるさめ「……」


深海鶴棲姫「なに?」


わるさめ「私達はもう絶対に艤装で誰かを沈めたりしない」


電「今回において司令官も含めてお友達の皆と交わした誓いだ」


空母水鬼(本気の顔、ですね)


深海鶴棲姫(きっつ……頭はお花畑か)


空母水鬼「時雨さん、1つお願いがあります」


時雨「なんでしょう?」


空母水鬼「一人、お会いしてお話したい人がおります」


時雨「准将ならば予定で」


空母水鬼「間宮さんです」


深海鶴棲姫「後、つるむ面子はこっちに選ばせて」



【6ワ●:臭う事件】


情報収集部隊 青葉班 ~雨村宅~


青葉「このパソコンが例の? もう一度、見ておきますね」


阿武隈「わるさめさんいわく、このパソコンのパスワードはレオンですが、なんか単純過ぎてそのパソコンにはなにも重要な情報はないかもですが、わるさめさんの調べなので適当な可能性が否めないのも確かですね」


青葉「棚にある映画はB級が多いですね。それにスポーツに格闘技、お笑い、アーティストのライヴに、流行りのアニメと、勉強のための資料映像系ですかね。雑食な人ですねえ」


金剛「B級モノはホラーとかサスペンスが多いデース」


阿武隈「あ」


金剛「どうかした?」


阿武隈「この映画、フレデリカさんが持っていましたねえ。観たことあります。傀儡師の女の人が事件起こして、最後は自分をも人形になるみたいな?」


青葉「へえー。奇遇ですね。後、その棚って違和感がありません?」


金剛「よいしょっと。別に棚の裏の壁にはなにもありまセーン……」


青葉「……いや、そうじゃなくて棚に並んでいるモノに」


青葉「……、……」


阿武隈「あっ、DVDやブルーレイがあるのにこの部屋にテレビがない?」


青葉「それはパソコンあるから別に違和感ありません」


阿武隈「……言われてみれば」


阿武隈「それぞれジャンルに複数のシリーズがありますが」


阿武隈「アニメだけは一種類だけですね」


青葉「それだ。でも、疑問視するほどでもありませんかね」


青葉「北斗じゃないですか」


阿武隈「そういえばこれゲーセンのスロットに並んでましたねえ……っと、このスロットのDVDにあるやつです。雨村さんの趣味なんですかね」


阿武隈「もしかして深海棲艦のほうの趣味とか?」


金剛「強そうデース……お手合わせ願いたくなりマース!」


青葉「洒落にならないですって……」


金剛「ああ、ビデオは一階にもありましたケド、軍事関連のモノだったネー。あ、例のスパッツルームのところデース」


金剛「暁と響がまだ捜索してくれてるネー」


青葉「下着含めて色々な服がありましたし、あそこは多分、ズムム・エンガーニョちゃんとトビー・マリアナちゃんのためのクローゼットでしょうね」


阿武隈「まあ、サイズ的にはそうかもしれませんが、あの☆の意味は」


青葉「青葉的には深く考えたくないところですねえ」


金剛「……私は電ちゃん達のことが心配デース」


青葉「でも、提督も元帥も中枢棲姫勢力よりも人間に近くて、大丈夫そうな深海棲艦だと」


阿武隈「あたし的には親交を深める方向の作戦の性質上、あたし達にそういわざるを得なかっただけの可能性が高いと思います。だって提督が彼女達を深海棲艦と断言したら、あたし達は深海棲艦に対しての悪い感情で先入観が生じますから」


金剛「……なおさら心配デース」


青葉「甘い考えは捨てたほうがいいですねえ。相手は深海棲艦、平和的解決といえば聞こえはいいものの、相手を無力化することを最優先にその情報収集に兵士の私達が動員されていますので」


青葉「やってることは戦争と大して変わんないですよ」


青葉「海か陸かの違いだけで」


阿武隈「……ともかく、本命の雷班のほうからの情報が欲しいところですね」


金剛「ああもう、陸の上ってのは大変ですネ。海で深海棲艦と戦っていれば相手を沈める、逃げる、の単純で気が楽までありマース……」


阿武隈「……まあ、深海棲艦相手だと存在が有罪判定でこんな風に証拠探す必要もないですからね」


青葉「……私と大淀さん、陸奥さんはこんなことばかりやらされていましたから慣れてますけどねえ。軍内部の思惑、マウント取るための交渉、取引、情報収集、フレームアップのためのメディアリーク等々。解体しちゃったから、ストレスで禿げるまでありますねー」


阿武隈「頭があがりませんけど、ストレスで髪抜けるのはさすがに嫌ですね……」


青葉「青葉だってハッピーな情報収集じゃないと嫌なんですけどねえ……歴代の青葉適性者もこんなことばっかりですし。青葉適性者の偏見はんたーい」


2 情報収集部隊 雷班


雷「ごめんなさいね。職務に影響が出るようなことさせちゃって」


「あなたは変わらないねえ。構わないよ。上に話も通ってるみたいだし。先日にマークしてた空き巣も捕まえたところだしねー」


「それでどう? 指示された範囲でこの町周辺で起きた事件の資料だ。とりあえずいわれた通り、人死にが出たやつから上にしてありますが」


雷「交通事故のほうが半端ないわね……」


「不名誉なことに交通事故の大手ですから。新東名高速、東名高速、中央道が交わる自動車産業の国よ。車保有率も高いし、まあ、難しい問題です」


雷「ねえねえ、悪いんだけど、条件を『人死にが出た事件で、動機がよく分からない、突発的』なのに絞れない? 出来れば刑事の感で臭いやつ」


「へい。ドラマみたいにはかっこよく行かないと思いますが、要は俺の鼻で腑に落ちないやつですね。その隣の裸の書類がそれですよっと」


雷「仕事が出来る! その有能さを見習いたいわ!」


雷「それと刑事部屋なのに、タバコ臭くないのね」


「お嬢、それいつの時代の話ですか。最近の刑事ドラマは観てない? 喫煙者の形見が狭くなってる時代、ここも例外ではありませんよっと」


榛名・陽炎・不知火「……」パラパラ


「見目麗しいお嬢さん方がいるのも例外だけど」


乙中将「いや、申し訳ありませんね……なるべく迅速に致しますので」


「いえいえ、あなたのお噂はかねがね、良い鼻をお持ちだと」


乙中将「期待されるとよく外れます。それに推理はあまり得意分野とはいえないんですけどね……」


乙中将「卯月ママから紹介された女の子とのデートからとんぼ帰りしたんだから、それより幸せな時間であることを祈るばかりですよ」


榛名「乙中将! そろそろ口じゃなくて手も動かしてください!」


乙中将「榛名さんに叱られるとかへこむ」


陽炎「そーそー。展開によっては女の子とデートするより、心臓の鼓動が高鳴るかもしれないし、そこは期待してもいいと思うわよ?」


不知火「それなら向こうへ混ざったらどうですか? 胸が高鳴り過ぎて死ぬオチがあり得るほど刺激的な女の子とデート中ですから」


乙中将「元帥さんの指示通り、こっちでお願いします」キリッ


乙中将「執務で書類の早読みは得意だしね」


「想力って人間が出来ることはなんでもやっちまえる力なんでしょ? あなた達の海の戦いはそれを使って、戦争をあの形にしたわけだ。今度はどんな形なのか見当はついているのか? 人間が出来る全ての可能性を有した相手の証拠押さえるっつう話なら」


「その凶器を使わせた時点で迷宮入り濃厚だと思いますがねえ」


「そもそも法整備されたのも最近で」


陽炎「まあ、想力だからね。例えるのなら、ここに燃料があります。彼はこれを使ってなにをしたでしょう。そんな感じに広い可能性から突き詰めていけ、という途方もなく馬鹿げた作業」


雷「大丈夫。乙中将は超能力者だから」


乙中将「……僕からはこの20の事件を時雨と夕立、それと雪風ちゃん、それに青ちゃんの4人でランク付けさせて更に絞ってくれるようお願いできない? その上から10の事件を調べてみたいんだけども」


「……小さな事件もありますね。それと、これ以上の詳細な資料は漏洩問題もありますので別庁の資料室に足を運んで頂けなければお見せできない決まりです」


榛名「ちょうど提督達に頼んだので、結果が出るまで時間があります。その間に移動しましょう」


陽炎「刑事のおっちゃん、ありがとねー」


「お礼なんていいのよー(裏声」


陽炎「」


3


榛名「文化会館での政治家のシンポジウムの映像ですよね?」


乙中将「そだね。これは僕も週刊誌で見たことあるし、ネットでも話題になった事件だよ」


《ではどなたか質問はおありでしょうか。あ、そこの少年の方、ですね》


《はい!》


一同「……」


《私も将来は政治家になりたいと思って勉強やボランティアに精を出しています》


《先程、施策したアイデアが上手く行ったのは運の要素も大きいとおっしゃられましたが、やっぱり運ってなにかを成すために重要ですよね》


《あなたの人生の中で》


《最も運が良かったことはなんですか?》


《そうだなあ》














《車で人を轢き殺して捕まってないことかな》














雷・陽炎「は!?」


榛名・不知火「乙中将」


乙中将「少年がまとう想力は視えているよ。本当にギリギリね。発見された当局の残骸以上に幽質だなあ。深海妖精とはまた違うから、人間サイドで視えるのは僕だけな可能性があるレベルにうっすい」


陽炎「乙中将の可視才と意思疎通力は提督トップだったわねー……」


榛名「さすがです。裏は取れそうですね」


乙中将「詳しく調べる価値はありそうだ。情報収集班に報告して」


乙中将「次に行こう。映像記録や音声があるやつ」



【7ワ●:隠し持っていた力】


ガングート「お前、喋る気はないの?」


雨村「ありますよ。もう喋ろうかと。隠し持っている装備もです。相手の心の底を覗くような力ですけどね。罪悪感を掘り返すような」


ガングート「……ふうん。ちょっとやってみてくれ」


雨村「そういえばガングートさんってガングートの適性が出るまではもともと修道女をやっていたとか。なぜそんな人が深海棲艦に留まらず陸で人間相手にしたのか。ロシアでは艦兵士の強さを多方面に利用してましたよね。日本では考えられません」


雨村「……子供を殺した事はありますか?」


ガングート「……」


雨村「雰囲気がちょっと変わりました。少なくとも人間を殺したことはありそうですね。でもお強い精神力を尊敬致します。私ならとても出来そうにありません。相手が深海棲艦ならまだしも敵対しているという理由だけで人間は殺せません」


雨村「罪悪感は残り続けるでしょう」


雨村「ちょ、ちょっとナイフとかチラつかせないでくださいよ。北方って人殺しも許容するほど自由なんですか。あなたがやると洒落にならないんですって」


雨村「……、……」


ガングート(気味が悪ィ……)


雨村「あの、罪悪感で死にたくなったことはあります?」


ガングート「ある」


2


神風《はあ!? 見張りは二人でしょ!? なに席を離れているの!?》


北方提督「離れてるけど、サボってる訳じゃないよ。監視カメラで映像記録しながら観察してる。妖精、もとい想力は映像で視えるだろう。見張りを一人にしておいて、ちょっと情報与えもした。尻尾を出してくれないかなって」


北方提督「それに現場には10秒で駆けつけられるし、私は銃と改造スタンガン持ってるよ」


神風《逐一ほうれんそうです! ここにいる司令官は全員あなたより階級上なんですから、北方鎮守府にいる時のように独断で勝手しないでくださいよ!》


北方提督「ガングートに話しかけてるけど、ガン無視されて……」


北方提督(今ガングートの口が動いたか? 応答した?)


北方提督「……、……」


北方提督「!?」


ダッ


3


北方提督「改造スタンガンだ。運が悪くなければ死なないよ」


ガングート「……いっ!?」


北方提督「さて雨村君、この銃が見えるね?」


雨村「……は、はい」


北方提督「なにをしたか答える気はあるかい?」


北方提督「3秒数える」


北方提督「早くガングートを運ばなければならないからね」


北方提督「3」


雨村「ご、誤解ですって! 観念して隠していたモノを自白したところ、試してみろ、というから試してみただけですって! 本当、今回の件はあなた達をどうこうしようとするのは無理と判断しまして」


北方提督「1」


雨村「『本心を聞き出す力』と『その本心を実行させる力』です!」


雨村「私が得た箱庭形成の次の力はこれ! 防衛省で戦争復興妖精が契約利口装置で『自分の声を肯定的に受け取らせる力』を与えたって話ありましたよね! それと似たような力です!」


北方提督「了解、ようやく納得した。ガングートの罪の意識をほじくり返したんだね。ガングートのことだから、自身の中の罪悪感の程が気になったってところか」


雨村「……そうだと思います。詳しくは彼女が目覚めてから聞いてください」


北方提督「私にはガングートがナイフを自らの胸に突き立てようとしたように見えていた。その寸前で軌道を曲げて、右脚にナイフを突き立てた。刺したこの箇所、痛いんだよね。あえて痛みの大きい場所を自ら刺したように思えたけど、納得できる」


北方提督「悪趣味な力だ……」


雨村「次の改造周りの力でトランスタイプにしましたから、想力工作補助施設がなくとも別の装備枠に入れておけば可能です……」


雨村「ほんとにこれで全部です」


4


神風「……ッ!」


北方提督「見張り交代の時間だね。私はガングートを運ぶからよろしく」


甲大将「……」


雨村「話しますから睨まないでくださいよ……」


……………


……………


甲大将「私にやってみてくれ」


神風「甲大将!?」


甲大将「神風いるなら止められるだろ。ちょっと私情あるけども」


雨村「大丈夫だと思います。内容は死なせてしまった『前世代秋月』ですね?」


甲大将「よろしく」


雨村「ではその件について思考を巡らせてください。終われば合図ください」


甲大将「……、……」


甲大将「どうぞ」


雨村「前世代秋月を沈めてしまったこと、あなたに非があると考えておられますか?」


甲大将「考えている」


甲大将(へえ、マジだな。言葉が口から勝手に出た)


雨村「今、どうしたいですか?」


ドガッ


甲大将「……痛え」


神風「自分で自分を殴り飛ばしましたね……」


甲大将「ああ……」


甲大将「なるほどね。凶器を持っていれば危ねえな」


神風「人の心の傷につけこんで自害させるなんて」


神風「胸くそ悪い……!」


雨村「本心のほうの力で罪悪感なりなんなりほじくり返して死にたいと思わせられたのなら、後は実行のほうの一声で大体は死んでしまいます」ニコニコ


神風「……唖然としたわ」


神風「なにが面白くて笑ってるの……?」


雨村「失礼」


雨村「私の家庭の心中事件はこれが暴発したからです。あの時に発現しました。母は病んでいたし、タイミングが色々と悪かったです。私は親の前で兄のことについて問い詰めたんです。あの人達が私の兄にした仕打ちは人としてあり得ない行為です」


神風「確かにその力なら心中で処理されてもおかしくないわね」


甲大将「で、なにがしたいの? どこに逃げようとも、どうあがこうとも、どうとでも出来るっての分からないか? ちょっと考えりゃ分かるだろ?」


雨村「……想力ですか。私はそのような力があることは確信しておりました。恐らく准将よりも早くに。妖精もその力で構成されていることもね。生憎と私は深海妖精にはたどり着けず、海の傷痕までは分かりませんでしたが……」


雨村「いや、そこは万全を期して思考停止しておりました。あの子達は人並みとはいえ、人間の中だと賢いとはいえない知能の深海棲艦です。たった一言のうっかりな発言で、海に出兵してしまう危険もありましたから。いや、そうなると……」


雨村「当局にバレる」


甲大将「でも外に出してたらしいじゃねえか。メインサーバーのバスターが三時間周期でかかることを知っていただろ?」


雨村「……ええ、過去にあの子達を外に出したのに発見されませんでしたからね。その時間から安全な時間を導き出しました。彼女達を外に出して人間と触れさせないといつまで経っても深海棲艦のままです。本当は私に妖精可視才があれば良かったのですが」


甲大将「なくて良かったよ。あいつらはぷらずま、わるさめとは違うから、モルモットのち処分だ。あいつらは戦いを放棄したんだから中枢棲姫勢力とも違う。居場所は中枢棲姫勢力か。まあ、あいつらの目的からして」


雨村「……チューキさんですね。彼女は准将と似ていましたね。恐らく空母水鬼と深海鶴棲姫を海の傷痕を誘き寄せるための餌にしたことでしょう」


雨村「予想外だった。戦後復興妖精の存在がです。『Welcome my home』の能力は要は私の力と同じで、ロスト空間にアクセスする力です。恐らくこの箱庭のステルス原理も把握されておりますし、『生死の苦海式契約履行装置』に神風さんが書き込んだ願いが私に王手をかけていたことに気付いたのは、つい最近でした」


雨村「准将周りでしょう。彼女と会話し、あなたの存在を調べて、少しこちらを疑わせたらたったの3日で追い詰められた。レールを走るがごとしの偶然力ですね」


雨村「……もはや曼陀羅だ」


雨村「私は准将のトラウマを克服する道具として舞台に誘われたとしか」


雨村「私は罪人が罰を受けないのが嫌いです。よくあるでしょ。人をたくさん殺しといて、報いが用意されている登場人物です。軍人なんか正しくそれだ」


甲大将「理想論か。誰かがやらなきゃならねえからやるのよ」


雨村「でも、例えば、敵対する組織の人間殺しまくっている主人公を見て、かっこいいとかそういった感情が出るんですよ。それはそういう風に作られているからこそですが、私はそんな風に掌で踊らされていることに吐き気がした。一人の命が役割を持たされ、海に導かれる。ただの舞台装置のように扱われるお話の……」


雨村「『艦隊これくしょん』とかね」


甲大将「……私の質問には答えてくれないのか?」


雨村「失礼」


雨村「彼女達が表の世界で生きていくのは難しい。電や春雨、瑞穂はもともと人間ですからね。でも彼女達は深海棲艦ですので」


甲大将「諸悪の根源の此方は保護されたぞ?」


甲大将「そっちの深海棲艦が妥協するなら、手厚く生を保証するって軍の慈悲が分からねえの?」


雨村「我が身可愛さではなく、空母水鬼は私を」


甲大将「だったら、大人しくしておくべきだっただろ。もう少し動機練ってこい。あの深海棲艦二人とは別に目的があることは分かった」


甲大将「目的を話せ」


甲大将「その下手な話で丸め込もうとしているのが気に喰わねえし、これは私からの最後の慈悲だぜ。お前は艦兵士に危害を加えたんだろうがよ」


甲大将「だが、敵に回るであろうやつの中で本当に怖いのは提督とか艦兵士とかじゃねえよ。怒らせたら、ヤベエのは」


甲大将「此方と戦後復興妖精だぞ」


甲大将「内容によっては私からも慈悲を検討してもいい」


雨村「……天罰」


甲大将「罪には罰を、の正義感?本来、裁かれるべき存在に裁きを、とか? 要はお前は世の中のことよく知らなくて、それが世界のためになると信じてその実、世界と自分を滅ぼしちゃう落とし穴に落ちるパターンじゃねえか」


甲大将「そこにあの二人とお前の居場所はねえだろ。なに、お前らだけは例外?」


雨村「誤解を招きましたか。あの二人が人間になって本能を消したところで、無駄です」


雨村「居場所なんてもとよりあの箱庭以外には一つしかないんですよ。中枢棲姫さん達がなぜあなた達との戦いの最中、人間として復活するのを頑なに拒んだのか」


雨村「瑞穂さんもわるさめさんも、理解は曖昧なのでしょうが」


雨村「深海棲艦が人間になっても人間として活動するのは不可能だ。きっとあなた達には理解出来ない部分でしょうから、その内分かるとここでは答えておきますね」


甲大将「あくまで大戦時の怨霊船だから、その時の憎悪は覚えているわな。人間からもまあ、良くは見られねえ。深海棲艦とか世界で一番、迫害される『人種』だ。理解とかそういう話じゃねえ。ゴキブリ見て嫌悪感抱くのと似たようなもんだ」


甲大将「保護なしでは生きていけねえ」


甲大将「でも、お前との間柄がある。だからこそ可能性があるんだろう。電と准将の関係は知ってるよな。なぜそっちに傾かねえんだ。回す羅針盤の針先にびびってんの? お前の言葉1つで」


雨村「母親と父親は私が想力で殺したようなものです。その他諸々の罪もバレるのは時間の問題です。気付くのが遅すぎた。もはや私に人間としての未来はありません」


甲大将「……そだな」


雨村「……混ざるべきだったと戦争終結してから気づきました。でも、まだ間に合います。死んでない。始めるのに遅いなんてことはないんですから」


雨村「戦争の中なら私達は敗けない限り、存在を維持出来ますし、あの子達は深海棲艦だから相手を倒すことも、私との信頼関係があれば可能です。鎮守府で提督と艦兵士が過ごすような日々を送ることが出来ます」


雨村「厄介な海の傷痕はいなくなった。そして想力の情報を出揃った。対等です。どちらかの陣営が即座に相手を殲滅するような真似は出来ません」


雨村「深海棲艦が出てきた以上、どちらかが水底に沈むまで殺し合うのが偶然の行き着き先、つまり避けられようがない必然です」


雨村「あの子達の希望を叶えるには」


雨村「もはや我々には」


雨村「居場所なんてもとよりあの箱庭以外には一つしかなかったんです。あるとしたら」


雨村「深海棲艦と艦兵士が共存していた海です」


雨村「戦争で勝ち取り、外の世界の敷地を維持する以外にないんです」


雨村「なので『艦隊これくしょん』の再開を」


神風「……!」


甲大将「……」


雨村「とも頭の片隅で考えておりましたが、それも無理ですね。戦力差があり過ぎて賢くはない。なにより今いない戦後復興妖精が何をしているかも気付きましたし。あの箱庭の鎮守府から彼女達を連れ出してあの擬似ロスト空間の管理権限を確保」


雨村「……本丸を奪われたので、敗けです。勝ち目がない。だからこそ、准将や元帥にも最大限、協力すると申し上げました。彼女達に慈悲を、と」


雨村「……それと私を彼女達に合わせないほうがいいです」


神風「そりゃそうよ。あなた何するか分からないし」


雨村「私と空母水鬼は特に仲がいい。あなた達艦兵士と提督の触れ合いのように和やかな場になります。あなた達は最悪の場合、彼女達を殺すのでしょう?」


雨村「その時に躊躇いが出ます。鬼と姫を相手にその躊躇いが命取りになるのは私よりあなた達のほうがよくご存知かと」


【8ワ●:フラワーベッドシー・メロドラマ 2】


雪風「な、なんか建物から邪気を感じますよ……」


照月「ほんとだよ……相手は鬼と姫でしょう?」


間宮「修行中に呼び出されたと思えばまた最前線……」


間宮「というか電ちゃんホントに大人の姿になってます。可愛いさは変わってはおりませんし、雰囲気で分かりますけど」


雪風「雪風は街ですれ違っても気づかないかもしれません……」


電「こほん。経過情報を説明致します。向こうから指名されたのは私とわるさめさん、瑞穂さん、そして間宮さん、照月さん、ろーちゃん、そして天津風さん、雪風さんです。そして場所は『海が見えない場所』、『閉鎖された場所、なるべく狭いほうが望ましい』とのことです」


電「急遽、鎮守府の対策本部が逐一、エリアの根回しがありますので」


ろー「それがここ? ろーは初めて来る場所だなあ」


照月「確かに海が見えないし、閉鎖された場所で、狭いかもしれないけど」


照月「きっびしいかなー……」


雪風「ゆ、雪風も空母水鬼と深海鶴棲姫はちょっと……」


電「やるのです」


照月「そうじゃなくて!」


照月「ここどう観てもカラオケボックスだよね!? ついこの前まで殺しあいしてた連中とカラオケでワイワイやれる訳がないよねって!」


天津風「照月さんのいう通りよ! 向こうだってそのはず! 私達を殺しにかかってこない保証はあるの!?」


電「ねえのです」


ろー「逆に考えるのなら、こっちとの遊びに応じてくれる深海棲艦だから、照月ちゃんが思うほどではないと思うよ!」


天津風「確認しておきたいけど殺意はないのね?」


電「接触隊は唾吐かれてビンタされた程度なのです。威力的にかなり手加減をしてくれたと思いますのでコミュは取れますし、実際に取れました。こればっかりは会ってみれば分かります。特に空母水鬼はリコリス並に優しい……と私は思いました」


雪風「深海鶴棲姫は?」


電「お転婆ツンデレかと。こいつは感情のぶれが激しいので、ストレートな意味の危険度が高いのはこいつのほうなのです」


天津風「なるほどね……じゃあ、元トランスタイプがヤバいほうの深海鶴棲姫を相手よね。私達は温厚な空母水鬼と交友を深めて仲良くなるってことか」


電「私と照月さん間宮さん雪風さんは空母水鬼のほう。天津風さんとろーちゃんは深海鶴棲姫のほうです」


天津風「嫌! 私は5航戦なら翔鶴さん派よ!」


電「深海鶴棲姫のほうが平和で当たりかと」


天津風「……どこが平和?」


電「ぽんこつ空母と翔鶴さんキレたらどっちが怖いかお分かりだと思うのです。翔鶴さんタイプがキレるのはさすがの私も怖いですから」


天津風「それは確かに……深海棲艦なら尚更よね」


電「……後に准将も合流します」


天津風「……」


電「天津風さん、ろーちゃん。今回の作戦ですが、笑い話で終わるか笑えない話で終わるか、恐らくこっちに左右される部分が大きいのです。こちらの都合で無理させて向こうに付き合ってもらっているという状態なので」


電「平和的な解決策のためにちょっと身体張ってください」


一同「……了解」


4


電「2階です。それでは私達は3階なので、お別れなのです。ああ、いった通り貸し切りなのです。時雨さん、瑞鶴さん瑞鳳さんが監視カメラの前にいるので、そちらの状況は把握しています。抜け出して報告はせず楽しんでください」


間宮・照月「武運を祈ります……」


ろー「そっちもね! さあ、天津風ちゃん行こう!」


天津風「……ええ」


天津風「ろーちゃん、このフロアなんだろう。瘴気で満たされているわ。陸の娯楽施設なのに大規模作戦の海にいるようなおぞけが……」


ろー「姫種だからねー。ろーはアカデミーの頃に姫を見てしまって卒倒しました」


ろー「でも聞いていた感じ大丈夫だよ! カラオケボックスにいる深海棲艦がエンガノ岬沖にいる深海鶴棲姫と同じな訳がないからねっ!」


天津風「そ、そうよね……瑞穂さんとわるさめさんもいるし、後から准将も来るくらいだから、ある程度の安全は保証されているに違いないわ。きっとわいわいやれるっ」


天津風「海で姫と戦う時とは違う、うん」


天津風「さて、この部屋よね……」


ガチャッ













深海鶴棲姫「嵐ノ海ヲ越エテ行ケルノ 沈メ! 沈メ!」













天津風「あっるぇッ! このボックス殺意たっかいッ!」


わるさめ「深海鶴棲姫ちゃんが歌ってくれてるんだぞ!」


瑞穂「彼女の無念がよく伝わって他人事じゃないわよね」


ろー「そうだね……感動ソング」


わるさめ・瑞穂・ろー「泣ける……」


天津風「感性働かせる方向が違うわ! 伝わる殺意のメッセージと仲良くする気が微塵も感じられない選曲な点になぜ誰もツッコまないのかしら!?」


ろー「そんなメッセージは感じないよ!」


天津風「お願いだから耳から直で入る情報を正確に処理して! 沈め沈めいってるわよ!」


深海鶴棲姫「沈メ沈メ!」


天津風「ほらほらほら!」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


天津風「痛いっ! なにするのよ!」


深海鶴棲姫「ツッコミうざいし、うるさい」


天津風「一番うるさいのはあなたでしょお!?」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


天津風(なにこれ。絶対にツッコんじゃいけないカラオケボックス……)


天津風「苦痛すぎる……」


ろー「あの、初めまして。ろーといいま、」


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


天津風「ろーちゃんに手を出すなんて」


天津風「北方を敵に回す行為よ……?」


ろー「天津風ちゃん」


天津風「……なに?」


ろー「相手は深海棲艦だからね」


ろー「ろーは、これが深海棲艦ズズムちゃんの挨拶と見ました!」


ろー「ダンケ! 私はろーといいます!」ニパー


わるさめ(あ、この子ガチの天使だ……)


深海鶴棲姫「……」イラッ


深海鶴棲姫「( ' ^'c彡☆))Д´) パーン」


ろー「……」ニパー


深海鶴棲姫「……上等」


瑞穂「あ、キレた顔が5航戦妹に似てる」


…………………


…………………


深海鶴棲姫「……」ハアハア


ろー「……」ニパー


わるさめ「さすがディスって☆ろーちゃんと呼ばれるだけの耐久はあるな……」


ろー「目標があると痛いことも耐えられるんだよ!」


天津風「ズズムちゃん、あなたもう止めておきなさい。伊58を抑えてのクルージング一位のプロをなめてはいけないわ……」


深海鶴棲姫「ごめん……よろ、しく!」


ろー「はい、よろしくお願いしますって!」


3


空母水鬼「♪」


電・照月・間宮・雪風(あ、普通に歌が上手い……)


間宮(でも深海棲艦? 翔鶴さんそっくりで反応に困りますね……)


照月(良かった良かった。こっちは当たりだあ……!)


照月(幸運の女神な雪風ちゃん効果かな!)




空母水鬼「ところで間宮さんと電さんは大層に准将がお好きだと、聞きましたが」


間宮「は、はあ……そんなことまで……」


電「なのです。間違いなく私が世界で一番の理解者です」


電(……大体、司令官さんが聞きたそうなことも分かりますしね)


電「トビーさんにも想像出来ませんか。 あなたが深海棲艦である以上、未来を想像しても絶望しかなかったと思うのです。そんな闇の中からどこまでも続く光の差す世界へ連れていってもらえたら、その司令官さんに対してどんな感情を抱くのか」


空母水鬼「……本当に愛しておられるのですか?」


電「もちろんなのです」


空母水鬼「ではお聞きしたいのですが、准将の趣味、好きな映画や歌、休日はなにして過ごすのか。どんな話題で笑うのか、好きな異性のタイプは?」


空母水鬼「戦争が終わってからです。戦争終わっても、深海棲艦の本とか読んでいるような人なら話は別なのですが……」


電「……、……」


電(戦争終わってから? あの人は戦争への知識や思考が趣味だし、映画や歌はあまり観ない……休日は本ばかり読んでいるか鎮守府でも外でも仕事してたし、どんな話題で笑うっけ。好きな異性のタイプだなんてよく分からない……)


電「人間的な嗜好性はあまりない人で特別好きなことは……」


空母水鬼「……彼は戦争中と何も変わっていないのですか?」


電「い、いや、そんなことはないと思うのですが」


空母水鬼「それは本当に愛しているといえるのですか?」


空母水鬼「私は直接、会ったことはないですが、彼の話はたくさん聞きました。映像でも、音声でも」


空母水鬼「なぜ彼はいつも敬語でお話をするんだろうって不思議に思っていて。あなた達の話を聞けば尚更です。まるで自分の中にあるナニカに触られないため、いつも敬語で話して距離や壁を作っているかのようで、どうも戦争終結してからも変わらない」


空母水鬼「特に電さん、あなたは支離滅裂ですから」


空母水鬼「合同演習時に、戦争においての美しさはあってはならないという信念がもはやない。あなたの周りには戦争で得た美しいお花がたくさん咲いています」


電「……」


空母水鬼「なんだかあなたの准将への愛は宗教みたいです……」


照月・雪風(それは間違いないです)


間宮「……」


空母水鬼「間宮さんは」


間宮「いいえ、提督さんのことはよく知りませんね」


間宮「愛は理屈じゃないんだぜ」


電「間宮さんが修行行ってからなんか変に……」


………………


………………


提督「……、……」


瑞鶴「どうよ提督さん?」


提督「空母水鬼のほうは……面倒ですねこれ」


提督「深海鶴棲姫のほうはあなたの性格に瑞鳳さんの子供っぽい面と武蔵さんが混じることでとにかく手が早そうな上、ツンデレと来た。暴力系ヒロインですね」


瑞鳳「……私、子供っぽいですかね?」


提督「あなた適性率高い割にデータと違って卵や九九艦爆の足がとか、個性あまり出してきませんでしたよね。鹿島さんが来た辺りから観察していましたが、オフの時は意外と。良い意味で故に貴重な常識人枠」


瑞鳳「子供っぽい自覚はないですけどね……」


提督「空母水鬼のほう、自分が到着する前、雨村さんや間宮さんについてなにか?」


瑞鳳「いや、歌があってそこまでは音は拾えません。さっきの会話は歌がなかったので拾えていましたね」


時雨「僕は耳が良いからなんとか。電さん間宮さんとトビーさんが話していたけど、鎮守府(仮)であなたが着任してからのことだ。多分、准将周りのことだね……」


瑞鶴「あー、なるほど。間宮さんが挙動不審なの分かった」


瑞鳳「間宮さんの恋愛の話かな?」


瑞鶴「それで提督さん、間宮さんとはどうよ?」


提督「どうもなにも……間宮さんはやっぱり部下ですかね」


提督「あなた達にとって自分が提督のようにそれと同じです。自分が瑞鶴さんや瑞鳳さんに交際申し込んでも、あなた達にとっての自分は永久に提督でしょう?」


瑞鶴「それはそうだけども」


瑞鳳「提督って悲惨な人生送ってきたからか、人間的に強いですよね。悪い意味で」


提督「悪い意味で、ですか……」


瑞鳳「私が提督さんの歳の時は恋人欲しかったけどなあ。色々とこの先のこと考えたら、一人だと寂しいかなって。やっぱり特別な人がいると違うじゃないですか」


提督「たくさんの仲間に囲まれていて寂しいというのは分かりませんねえ」


瑞鶴「それとこれとは違うんだよね」


瑞鳳「そうそう。仲間はあくまでも仲間です」


時雨「准将、これ平和的に解決できそうかい?」


提督「まだなんとも。ですが、今までの情報を照らし合わせるとなんとなく見当はつきました。空母水鬼のほう、こっちが厄介そうですね。恐らく雨村さんに恋愛的な意味で惚れている可能性が高いと考えます。間宮さんを指名したのは艦兵士と提督との色恋について興味があるんでしょう。翔鶴艤装にはない想だったでしょうし」


提督「深海棲艦に性欲はないので、そこが欠けた愛ですね」


提督「深海鶴棲姫は恐らく雨村さんより姉のほう。姉妹愛です」


提督「なので雨村さんに手荒な真似をすれば、空母水鬼とは亀裂が入ります。そこから深海鶴棲姫のほうも、と流れでしょうか。深海鶴棲姫のほうは交渉次第でこっちの味方に引き込めそうです」


時雨「……なぜ?」


提督「雨村さんは絶対に頭おかしいから。彼の言動を分析すれば、残念なことに昔の自分とよく似ていますね。恐らく……あくまで目的を見据えた上で彼女達を保護したと思われます。自分が戦争終結のためにあなた達に良くしていた理由と同じかと」


提督「そして空母水鬼は恐らくそれを含めての好き、なのが厄介です。深海鶴棲姫の言動的に、彼女はそれに気づいております。なので、深海鶴棲姫が雨村さんをかばう理由として大きいのは彼がいなくなることによる姉への精神影響かと」


提督「要は雨村さんに危害を加えたらヤバいです。姉は当然、妹のほうも姉の味方につくでしょうから。ですので、作戦のほうは」


提督「まず妹のほうに条件を提示。姉のほうにもそうです。雨村さんへの想いが報われる提案をし、それに妹のほうに協力を取り付ける」


提督「ですが、これ二点ほど大きな障害があります」


提督「『性欲という本能を介さない恋愛感情が良く分からないので皆さんの力が必要不可欠で自分からは指揮を執れない点』と『雨村さんの目的がまだ不明瞭なため、そこを絶対に阻止の方向で強硬手段に出る恐れがある』こと」


時雨「……物言い的に雨村さんの目的に見当はついている?」


提督「いいえ」


提督「ただ生命が産まれることに罪はないけど、度を越えて調和の取れない行動を取る倫理道徳の欠けた輩を嫌う人だとは思いました」


提督「そして自分自身だけは例外。何故ならば人間として最低な人間を裁くことは現行法では満足に出来ないから、誰かがやらなければいけないと考えるため」


提督「デスノート持ったら容赦なく名前書き込みそうなタイプ」


提督「……その『デスノート』のような未知のナニカで、あの家庭をぶっ壊したんでしょうねえ。あの母親は上手く仮面を被っていたそうですが、時期的にいえば教団が訪れた後ですから、恐らく彼は自分の存在を知り、自分の両親が異父兄になにをしたか知った。まあ、行動に筋は通る動機にもなりますし……」


提督「現時点での推理です」


時雨「デスノートで例えると異常だけど、不幸な人だよね。そんなものを持ってしまったばかりに道を踏み外してしまったという」


提督「解釈次第ですね。問題はデスノート、彼の想力工作補助施設は奪いましたが、切れ端をトランスタイプのロスト現象を利用して隠し持っていることがほぼ確定事項であることです。能力次第によって危険度は大きく変わります」


提督「想力工作補助施設だとトランスタイプの解体は出来なくはありませんが、時間はかかるとのこと。作業行程を効率化してある妖精工作施設を作って解体、または隠し場所である箱庭を消失させて浄化解体という流れのほうが時間的には早く済みます」


提督「……まあ、ここらは保険的な意味合いが強いので、皆さんは当初の予定通りに彼女達と交友を深めてください。きっと平和的解決は可能ですから」


提督「時雨さん、電さんと照月さんに空母水鬼が妹と雨村さんをどう思っているのか探るようにお願いします。そこらアドリブは刺激してしまう不安があるので、出来れば探り方のアドバイスも。深海鶴棲姫のほうには自分が行ってきますので」


時雨「了解」


提督「では」


瑞鳳「提督、てっきり忘れていたことを思い返していて」


瑞鶴「それ、USB?」


瑞鳳「雷ちゃんに持っててっていわれたきり、ちょっとそのまま忘れてました……」


提督「……それは?」


瑞鳳「神風ちゃんが願い事を書き込んだ時点で排出されたメモリーです。提督周りのことかなって電さんと雷ちゃんの三人で隠し持っていたんです。提督さんの過去はあまり良くないものだろうから皆にバレないようにです。実際、提督さんの過去でした」


提督「ああ……それであの時、自分を縛って拘束いたんですか。その間に観てたんですね」