2018-07-07 16:02:32 更新

概要

軍事連合「アズールレーン」に敵陣営「レッドアクシズ」所属の「赤城」が投降。アズールレーンに属する指揮官と彼の唯一無二のパートナー「エンタープライズ」の3人による物語。


前書き

指揮官を愛したい赤城と、それを良しとしないエンタープライズのお話です。ちょっと過激な表現が出てくるかもしれないので苦手な方はご注意を。

Twitterの会話で偶然生まれた産物なので行き当たりばったりの作品です。多分途中で躓くと思うよ (未来予知)

なるべく全年齢対象にしたいけど、出来なかったごめんなさい。

この作品はアズールレーンの2次創作です。実際の地名や団体とは一切関係ありません。また、キャラ崩壊の可能性もあるので、苦手な方はご注意下さい。



・・・・・・



海から突如現れた謎の存在「セイレーン」。それと対するために人類が作り上げた存在。それらを艦船少女と呼んだ。


彼女たちはそれぞれ違った道を歩みつつも、今はとある1人の指揮官の元に属している。


これはその指揮官と、一部の艦船少女達が起こした美しくも醜く、悲劇でもあり喜劇とも呼べる1つの物語である。



・・・・・・




この鎮守府では毎日のように艦船少女が出入りをしている。出撃を行なったり、遠くに出向いて委託を遂行するためだ。


そして今日、とある海域に出撃していた艦隊が戻ってきた。その艦隊の旗艦を務める彼女は、ここの古参であり、多くの戦闘を経験してきた優秀な船だ。


彼女の名はエンタープライズ。美しい白銀の髪を持ち、凛とした佇まいは多くの者を惹き付ける。畏怖の念を抱かせるというのが適切だろうか。





エンタープライズ「指揮官、艦隊が帰投した。次に私は何をしたらいいだろうか?」


指揮官「そうだな………取り敢えず軽く報告してくれるかい?」


エンタープライズ「了解した。艦隊の被害は大したことはない。それと、新しい船と邂逅したのだが…………」


指揮官「新しい船? セイレーン側ということかい?」


エンタープライズ「そうではない……が、一度会ってもらった方が早いかもしれないな。入って来てくれ」



すると、執務室の扉が開く。黒を基調とした和風の装いに、狐のような耳を持ち、黒い九尾は禍々しさを持ちながらも何故か他者を惹きつける美しさを持っている。



赤城「大日本帝国の栄えある第1航空戦隊の1人。赤城と申します。自慢の艦載機で、指揮官様のお役に立って見せますわ」



軍事国家として名高い「鉄血」並びに君主による統制が為された「重桜」は、人類が対セイレーンによって立ち上げた軍事連合「アズールレーン」を離れ、独自の組織形態「レッドアクシズ」を設立し、これまで幾度となく連合の前に立ち塞がってきた。


勿論、指揮官はアズールレーンに属する軍人である。腐っても敵方の船がそう易々とこちら側に降るだろうか。


そこで指揮官は隠し立てなく、真っ向から赤城に尋ねる。



指揮官「お前たちレッドアクシズは、我々アズールレーンとは敵対関係にあるはずだ。何故、敵に降るような真似をする?」


特に表情を変えることもなく、取ってつけた笑顔で淡々と答える。


赤城「私が指揮官様と共に居たいから。それだけでは足りませんか?」



突然何を言い出すのか。出会って数分も経たずに、まるで以前から自分のことを知っているかのような口振り。彼は早々に話の通じる相手ではないと割り切ったようだ。



指揮官「要領を得ないな。しかし、お前が我々の前に敵としてでなく現れた事は、上層部に報告する必要がある。上からの指示が来るまでは監視をつけて、みっちりと話を聞かせてもらうとしようか」


赤城「もぅ、指揮官様ったらいけずですわ〜。そんなことをしなくても、赤城は指揮官様のお側から離れることは致しませんのに」



心底うんざりしたような顔で、赤城に出て行くよう伝えるが、話を逸らして出て行こうとしないので、しびれを切らしたエンタープライズが力ずくで追い出した。



この鎮守府に在籍する船の数は多くない。かといって、ここまで話の通じない者は居ない。規律を重んじる彼女にとっては赤城の態度が気に食わなかったのだろう。誰の目から見ても怒りを露わにしていた。


しかし、少し間を置いてから、我に返ったように指揮官に頭を下げた。何事かと尋ねると、彼女からゆっくりと言葉が出てきた。



エンタープライズ「私がここに来る前に、あいつにしっかりと話をしておくべきだった。すまない、私のミスだ」



自分の監督不行き届きだと頭を下げたのだ。それを聞いた指揮官は、思わず吹き出してしまい、高笑いをした。


てっきり叱られると思っていたエンタープライズは、間の抜けた顔で彼を見た。



エンタープライズ「なっ、何が可笑しいのだ指揮官! 私はてっきり叱責を食らうものかと………」


指揮官「あっはは! いや………、何を言い出すのかと思えば、予想外の答えだったもので思わず…………」



彼女の真面目さは良いところであるが、こうも頑なに譲らないのは彼女らしさと言うか何というか。それが皆を惹き付ける力なのだろう。



指揮官「確かに赤城の態度には不快に感じる面もあるが、それを君のせいだとは微塵も思っていないよ。寧ろ、奴から何か聞き出せればそれだけで十分な功績になる。連れて来た事を後悔する必要も無いよ」



彼の笑顔を見ると、何故か安らかな気持ちになる。そして彼女は気付いていた。その笑顔を見せるのは、自分だけなのだと。そしてそれが、彼女を奮い立たせる源となっている事を彼女は知っていた。


しかし、その気持ちを彼にだけは気付かれたくない。それに気付かれてしまうと、自分が自分じゃなくなってしまう。そんな気がしてならない。


彼女は緩んだ気持ちを引き締めて、彼の目を見てしっかりと答えた。


エンタープライズ「………そうか。指揮官の役に立てたなら、私はそれで十分さ」



そして、口角を上げてニコッと笑うのだ。彼もまた、彼女がこの笑いを見せるのは自分にだけだと気付いている。辛い事がありながらも、彼女の笑顔はそれを吹き飛ばしてくれる。そう思ってしまうのだ。


そして、彼もまたそれを彼女にだけは知られたくなかった。上司と部下。この関係だけは守っていきたい。いや、この関係がなくなれば、彼女とともには居られない。そう考えてしまうのだ。



そんな2人の姿を部屋の外からこっそり見つめて居た赤城。静かに、ゆっくりと笑顔になるのだ。


しかしそれは指揮官の前で見せた笑顔ではない。愛情と恨めしさ、庇護欲と独占欲。真逆の様な、似た様な。そんな歪んだ感情を含めている。


赤城「ふふっ、ふふふ、そう、そうなのねぇ〜。あの子が指揮官様を誘惑する悪魔。赤城の命を奪うだけでなく、赤城の指揮官様まで奪うなんて………欲の深い悪魔ですこと………」


赤城「でも、あの子が居なくなれば真っ先に疑われるのは私ね。取り敢えず、今は静観しているのが得策かしら?」




鎮守府の廊下には、狂気を無理やり抑え込んだような歪な笑いが囁いていた。




・・・・・・




次の日、指揮官の立ち会いのもと、赤城への尋問が行われた。何故、鉄血と重桜は人類を裏切ったのか。セイレーンの技術を持ちいたのか。それを聞き出すためだ。


本来であれば、エンタープライズがやるべき事なのだが、「指揮官様以外には割る口もない」と言い放ったことが、彼も同席する理由だ。



指揮官「ご指名頂けて感謝するよ。それじゃあ、とことん口を割ってもらおうか?」


赤城「まぁ、赤城のお願いを聞いて下さるなんて。やっぱり指揮官様はお優しい方。けど、そのオジャマムシを連れて歩くのは感心いたしませんわ〜」




明らかにエンタープライズを煽っている。しかし、決して流されることはない。普段と変わらない態度で立ち尽くすだけだ。



指揮官「あんたの願いを聞き入れてやったんだ。だったらこっちからも1つくらいは条件を付けるくらいは構わないだろう?」


赤城「それがその子を側に置いておくことですか? ………分かりましたわ〜。指揮官様立ってのお願いであるならば "仕方なく" 納得して差し上げますわ〜」



何となく感じる「こちらを見下した」雰囲気に、しびれを切らしたエンタープライズが、赤城に向かって言い放った。


エンタープライズ「1つだけお前に言わせて欲しいことがーー」


赤城「私はいま、指揮官様とお話しているのが見えないのかしら?」



それを遮るかのように声を張り上げた赤城。しかしそれを凌ぐ迫力で、赤城の言葉を塞いだ。



エンタープライズ「いま、お前に話しているのは指揮官ではなく私だ。お前が口を挟む権利はない」



まるで態度を変えようとはしない赤城だが、エンタープライズの言葉に渋々納得したようで、すぐに済ませるならと話を聞くことにした。



エンタープライズ「お前はいま、私たちに拿捕されているも同然だ。囚われの身になったお前は、私たちに注文を付けられる立場ではない。それだけは覚えておくことだ」



赤城「…………えぇ、指揮官様の "ペット" の言うことですもの。一応は覚えておいて差し上げますわ〜」



今まで相手にしたことのないタイプなので、どう扱っていいか分からない。2人は既に赤城にペースを握られてしまっているのだ。


案の定、あまりの暴言に耐えかねたエンタープライズは怒りを露わにしないものの、この場では一切口を利かなくなってしまった。


指揮官は呆れたような態度で赤城に尋問を続ける。一応聞いたことには答えるものの、まともな返し方はしない。その姿は、人を惑わす九尾の狐そのものだ。



それでも必要な情報を得ることは出来たので、一先ず終わらせることにした。


部屋を出る直前、今まで口を閉じていたエンタープライズが去り際に赤城に話しかけた。



エンタープライズ「イギリスでは狐を狩るスポーツがある。アメリカにもそれを嗜む者はいる。せいぜい、気をつけておくといい。いつか狩られないようにな」


赤城「あら、でしたら肝に命じておきますわ〜。あぁ、そうそう。重桜に伝わる九尾の狐。それは妖怪、もののけの一つと言われていますの。彼女の子供は有名な陰陽師。陰陽師とは天文地理を司り、本来の責務とは別に、悪霊や魑魅魍魎を鎮めることもできますわ」


赤城「あなたも気をつけておくべきよ。彼の母親 (九尾の狐) ならばグレイ "ゴースト" の1匹や2匹は軽くあしらえてしまいますから」



ニコニコと笑みを浮かべて2人を見送った赤城。扉が閉まると同時に、彼女は下を向いた。


彼女の顔を見ることは出来ないが、わなわなと肩を震わせていた。笑いを押し殺した声を漏らしながら。



赤城「先ずはキッカケが出来ました。このまま仲違いしてくれるなら、その隙を見計らって赤城が指揮官様に付け入る。そうすればきっと………うふふ………」



赤城「指揮官様は私のもの。あの日始めて見た時からずっと……ずっと………ずっと…………」



そう言って、ケタケタ笑いながら、ゆっくりと立ち上がり、ヒタヒタと足音が廊下を歩き続けた。



執務室に戻った指揮官は困ったような顔をしていた。そんな中、エンタープライズは赤城の態度が煮え切らないようで未だに腹を立てていた。




エンタープライズ「指揮官、私は指揮官の考えや作戦に不満を思ったことは一度も無い」


指揮官「どうしたんだ急に?」


エンタープライズ「寧ろ、指揮官の元に仕えられてこの上ない喜びだと思っている。しかし、今回ばかりは不満を言わせてもらいたい」


指揮官「………赤城のことかい?」


エンタープライズ「そうだ。確かに有益な情報は得られるかも知れないが、ここに属した以上は働いてもらう必要があるだろう」


指揮官「確かに、いつまでも客として扱うわけにはいかないね。いずれは我々と共に行動を共にして貰わなければならない」


エンタープライズ「ああいった存在と共にするのは苦手………いや、断らせてもらいたい。例え指揮官の命でも認めるわけにはいかない」


指揮官「………そうか。一応、気には留めておくよ」


エンタープライズ「・・・済まない、少し失礼する」



そう言って、執務室の外へと出て行った。彼女のあのような姿は今まで見たことがない。規律に厳しく、厳格な彼女にとっては上官の命令に背くことなど許せるわけもない。


そんな彼女がそこまでして赤城を拒む事に驚きを隠せない。確かに2人は水と油のような存在だ。しかし、そこまで拒む程ではないと思うのだ。


2人は先の大戦で被害者、加害者の関係であった。赤城がエンタープライズを嫌うのは分かるが、逆である事に違和感を感じるのだ。



そんな事を考えていると、廊下を走る音が聞こえた。バタバタと忙しない音が広がってくる。そしてバタンと大きく扉が開き、赤城が笑顔で指揮官の元に擦り寄る。




赤城「あぁ〜、指揮官様ぁ〜。赤城は2人きりになれずにやきもきしておりましたわぁ〜」



そう言って、動物のように指揮官にじゃれつく。腕に頬を擦り付けたり、背中に手を回して見たりと、かなり過激なスキンシップだ。



赤城「指揮官様ぁ〜、指揮官様ぁ〜♡ 赤城は寂しさのあまりどうにかなってしまいますわぁ〜。今のうちに、指揮官様に甘えさせて頂きますの〜♡」


急な出来事に対処できなかった彼は、ただ狼狽えるしかなかった。そして暫くの間、されるがままであったが、我を取り戻したように赤城を引き剥がす。




指揮官「赤城! 離せって…………」


赤城「うふふ♡ 赤城は全然気にしてなどおりませんのに、指揮官様ったら恥ずかしがっておいでですの〜? 」



側から見ると、まるで飼い主にじゃれつくペットの様だ。仲良く騒いでいる様にも見えるだろう。


赤城を引き剥がそうとしていると、扉の前から小さな物音が聞こえた。





・・・・・・




指揮官と別れたエンタープライズは、1人で寮舎へと向かっていた。本日は特に強化することもないため、ただ休憩するためにここへ来たのだ。



エンタープライズ「私は…………」



誠実に生きるのが願い。そう言い続けて来た。指揮官と共にあるならば、例え死地へ踏み入れるとも厭わない。そんな覚悟を持って今まで生きてきた。


だが今日の私はどうだ。そりの合わない相手に辛い態度であたり、自分から歩み寄ろうとしなかった。誠実に接してみなければ、相手のことなど分かるはずがない。



エンタープライズ「…………戻ろう。ここに居てもなんの解決にもならない」



あんな態度をとってどう顔向けするべきだろうか。そんな事を考える必要はない指揮官なら分かってくれるはずだ。私のことを一番理解してくれる指揮官ならば。


そんな期待を向けて、執務室へと向かった。指揮官に謝ろうと部屋に入ろうとしたその時、部屋の中から奇妙な声が聞こえたのだ。



赤城『あぁ〜、指揮官様ぁ〜。赤城は2人きりになれずにやきもきしておりましたわぁ〜』



聞くに耐えられない声を目の当たりにしたようで、エンタープライズは顔をしかめた。彼女にとっては耳障りな声といっても差し支えないだろう。



赤城『指揮官様ぁ〜、指揮官様ぁ〜♡ 赤城は寂しさのあまりどうにかなってしまいますわぁ〜。今のうちに、指揮官様に甘えさせて頂きますの〜♡』



何を言ってるんだ。たかだか数日前に来た新参者が何を言う。文句を言ってやろうという気持ちと、何をしようとしているのかが気になる好奇心が湧いてくる。


しかし、指揮官にあんな態度をとって前に現れるのも図々しい話だ。そこで、ゆっくりと扉を開けて中をのぞいてみることにした。





指揮官「赤城! 離せって…………」


赤城『うふふ♡ 赤城は全然気にしてなどおりませんのに、指揮官様ったら恥ずかしがっておいでですの〜? 』



扉を開けると、2人が抱き合ってお互いの頭を近づけていたのだ。しっかりと顔を見ることはできなかったが、まるで楽しんでいるような、2人だけの空間に入り浸っているようだった。


すると、彼女の中で何かが壊れていくのを感じた。その "何か" が何なのかは分からないが、彼女の中にある様々な感情が混濁して、自分でも訳が分からなくなっているのだ。


この場に居たくない。何故かそんな気持ちになる、あの2人を見ていると、何故か心苦しくなる。


エンタープライズは、扉を閉めてその場を離れてしまった。


それから彼女は走った。走り続けた。少しでも早く、少しでも遠くあの2人から離れたかったから。


自分でもどうしてこんな気持ちになるかわからない。でもあの2人を見て、何故か胸の奥が締め付けられる思いがする。


とても苦しくて、とても悲しくて、とても辛い。どうして? どうしてこんなにも辛いのだろうか。



エンタープライズ「指揮官………教えてくれ…………」





エンタープライズ「私は………どうしてしまったのだ………?」





・・・・・・






一方、執務室で赤城からの一方的な愛? を受けていた指揮官は、廊下から聞こえた物音を確認するために赤城を引き離そうとする。



赤城「指揮官様がご心配なさることではありませんわ。どうせ鼠やらの生き物が這っている音ですから」


指揮官「例えそうだとしても、何かあったのなら確認するべきだ。問題が起きてからでは遅いだろう?」


赤城「…………そうやって赤城からの愛を跳ね除けるのね。そうまでして私から離れたいと仰りますの!?」


指揮官「誰もそんな事は言っていない。誰かが怪我をしたりでもしていたら大変だと言ってるんだ!」


赤城「………何を仰いますの? この赤城さえ居れば指揮官様は困らないし、苦しまない。ここにいる平凡な娘に比べれば赤城は決して劣らないというのにーー」




赤城が言葉を終える前に、指揮官は赤城に詰め寄る。そして壁に押しつけるようにして、更に行く手を阻もうと片手を壁につく。


赤城の言葉が彼の怒りを買ったようで、憤りが見て取れる。指揮官の方が若干背が高いため、僅かながら上から見下ろす形となっている。



指揮官「二度は言わないから今のうちによく覚えておけ。私自身を悪く言うものを責める気は無いが、ここの仲間を侮辱すれば決して許しはしない」


赤城「もちろん、分かっておりますの。赤城が指揮官様にこの感情を抱いたのも、それが一つですもの」


指揮官「分かっていたなら、なぜ私の口から言わせた?」


赤城「指揮官様がわたしをどう思っているのかを探るためですわ。でも、私の期待通りではなくて少し残念ですわ」


指揮官「人に真意を探らせず、お前はのうのうと人の中を覗き見るというのか。随分と都合のいい話だな」


赤城「私の本心? それなら既に話しましたわ〜。指揮官様と一緒に居たいから。それ以外に何の他意もありませんの」


指揮官「そんな話を信じられると思うか? もし私が逆の立場だとして、お前はそれを信用できるのか?」


赤城「勿論、信用しますわ。だって、私が愛する指揮官様ですもの」



全くもっておかしな話だ。この問答を何度繰り返したことか、段々と怒りが沸いて来た。



指揮官「一つだけ伝えておいてやろう。お前がよく知っている航空母艦、加賀は我々が拿捕している。正確には、奴の方からこちらにやって来た」



指揮官「敵である我々に接触し、こちら側にいるという事は、彼女の処遇も我々が定めることが出来るというわけだ」



指揮官「いま一度、機会を与えてやる。その態度を改めなければ彼女の処遇も変わってくるぞ?」



無論、そんなつもりは毛頭ない。ハッタリだ。彼女の性格が少しでも変わるならと思っていたのだが。




赤城「他人に仲間を侮辱されれば癇に障るのに、自身が仲間を手をかけることには何の感情も抱かないのね」



指揮官「ならはっきり言わせてもらおう。私は未だにお前を仲間だと見ることは出来ない。その態度を改めぬ限りはな」


赤城「・・・指揮官様がそうおっしゃるなら、赤城も反省しますわ~。赤城もしっかりと、指揮官様のお役にたって見せますの」



指揮官「・・・なに? 」


赤城「大したことではございません。ただ、秘書艦としてお側に置いていただくだけで構いませんわ~」


指揮官「秘書艦として? なぜだ?」


赤城「一つはこの場に慣れるため。客人として扱うつもりがないと仰いましたけど、私に艦隊行動をさせるつもりなら、秘書艦として側に置けば手っ取り早いと思いますわ」


赤城「二つ目は指揮官様や他の娘に私の身の潔白を知らしめるため。これは言わずもがなですわ」


指揮官「・・・確かに、利にかなっているが、秘書艦として使うには少し問題がある。お前を秘書艦にすれば、いくら一時的なものとはいえエンタープライズが黙っていないだろう」


赤城「そういったところを御するのが指揮官様の役目では有りませんこと? 寧ろ私の性格を一番気に入らないのは彼女のはず。私がそれを直すと言っているのなら彼女も大喜びですわ」


指揮官「・・・そこまで言われるとどうしようもない。では、お前がここに慣れるまでの1ヶ月間に秘書艦を任せる。エンタープライズには私から話を通す」




その後、彼自らがエンタープライズに掛け合った。事のあらましを告げて、何とか納得してもらうように頼み込んだ。


彼女からの返答はとてもあっさりとしたものだった。




エンタープライズ「指揮官がそう言うなら私に異論はない。指揮官が決めたならばそうすればいいさ」


指揮官「・・・随分とすんなり受け入れるんだな。何というかもう少し、反発するものだと」


エンタープライズ「そうか? 別に大したことではないだろう?」


指揮官「いや、そう言って貰えると助かるよ。代わりといってはなんだが、当分の間休暇を与えるよ。思う存分羽休めしてくれ」


エンタープライズ「・・・だったら、ありがたく受け取らせてもらおう」




彼女の言葉を聞いて、指揮官は満足した顔で戻っていった。赤城をどう運用していくか思案しているようだ。


部屋に1人残ったエンタープライズは、部屋のドアを閉じてベッドへと向かった。そして吊り糸を切られた操り人形の様に力なくベッドに倒れこんだ。




エンタープライズ「指揮官・・・私は、邪魔者なのか? 奴と、赤城と関係を持つ為に・・・」



エンタープライズ「・・・いや、指揮官はそんなにことはしない。女性と容易く関係を持つようなことはしないはずだ」



頭のなかでは何度もそう言い聞かせている。だが、執務室で見たあの光景が、何度も何度も思い起こされる。


指揮官を慕っているのは自分なのに。指揮官に思いを寄せているのは自分なのに。内で何か大きな物が燃えるような感覚だ。




エンタープライズ「・・・しないはずだ」





・・・・・





翌日から赤城が秘書艦として指揮官に付き従うようになった。この鎮守府には艦船少女の数は多くない。それ故に、赤城が着任したこと、その後の奇行も噂程度ではあるものの、ほぼ全ての艦船少女が聞き及んでいた。


始めは赤城を奇妙な対象として皆は見ていた。だが、必要な技術や知識をみるみると吸収していき、わずか2日でほぼ全ての業務をこなせるようになっていた。


その姿に他の者たちの赤城に対する見方が変わっていった。奇妙な対象から、艦隊の中心人物へと認めるようになったのだ。


それを見ていた指揮官は、始めはあまりいい顔をしなかった。出会ったときからの奇妙な振る舞いが定着しているのか、裏で圧をかけているのではないかと疑って掛かっていたためだ。


しかし、話を聞いて回るとそうではなかったようだ。ほぼ全ての艦船少女が口を揃えて言ったのは「思いの外、面倒見が良い」 ということだ。


いつの日だったか、建物の廊下ですれ違った綾波などの駆逐艦たちと話をした。赤城についてはどう思うかと訪ねると、やはり「思いの外、面倒見が良い」とのことだった。




綾波「あと、特に駆逐艦に優しいような気がする・・・です」


指揮官「駆逐艦にか? 意外だな・・・」


ジャベリン「なんて言うか、お母さん見たいです。怒るときは怒ってくれたり、誉めるときは誉めてくれたり」


シグニット「うちもこの前、大破しちゃって作戦失敗させた事があったけど、赤城さん、笑って励ましてくれた」


指揮官「そうか・・・」




更にすれ違った者たちに聞いても同じような返答だった。



プリンツ「赤城? あぁ、あの変わった奴ね」


指揮官「単刀直入に訪ねるが、彼女についてどう思う?」


プリンツ「あら、本人の居ない所で影口? そう言うのはか・ん・し・ん・しないわよ?」


指揮官「茶化すな。真面目な話だ」


プリンツ「・・・ふーん。まぁ、そこそこ

使えるんじゃない? 対空にも攻撃にも抜かりないし、特に足を引っ張られてる感じはしないわね」


指揮官「珍しいな。他人を誉めるなんて」


プリンツ「ま、客観的評価を踏まえての話よ。私に対して面倒事を持ちかけなければ、他人とは普通に接するわよ」


指揮官「ほう、なら私を茶化したりするのは面倒事を押し付けられる相手と見られているということか?」


プリンツ「正解。まぁ、別に指揮官のことを悪く思ったりはしてないわ。それだけは確かよ」


指揮官「・・・そうかい」



何はともあれ、艦隊からの赤城の評価は概ね良い傾向だ。そういえば、赤城を秘書艦に変えてから1週間ほどたったが、エンタープライズの姿を見ていない。


休暇を与えたわけだから、どこか遠くへ羽を伸ばしているのだろうと考えたが、流石に1週間も顔を会わせないと心配になる。


エンタープライズを探そうと部屋へ向かう途中、ヨークタウンと出会った。姉である彼女ならば何か知っているだろう。



指揮官「ヨークタウン、少しだけ良いか?」


ヨークタウン「指揮官様? ごきげんよう。どうかなさいましたか?」


指揮官「あぁ、実はエンタープライズの事なんだが、秘書艦を赤城に変えてから、姿を見ないと思ってね」


ヨークタウン「羽を伸ばしてこいと指揮官様から仰せつかったそうで、本人からもその様に聞き及んでいますが・・・?」


指揮官「それは問題ないさ。けど、外出するにしても行き先くらいは教えて欲しいものだと思って、彼女を探しているんだけど」


ヨークタウン「そうですね・・・。もしかすると街へ出ているのでは? あの子の性格ですと、普段から街に入り浸ることはありませんから」


指揮官「確かに、真面目な彼女なら街へ出掛けたりはするだろうな。それに、羽を伸ばして来いとは言ったものの、期限を取り決めた記憶がないな・・・」



それはこの母港を統治する側の発言としては如何なものかと少し苦い顔をしたヨークタウンだが。彼はそれに気がつかない。



指揮官「てっきり、彼女のことだ。復帰する気があれば何か言ってくるだろうと待っていたんだが、一度会って話をするべきだろうな」


ヨークタウン「それでしたら、電話や文通などでよろしいのでは?」


指揮官「いや、こういった内容は腹を割って話すべきだ。こちらが迷惑をかけたのだからな」


ヨークタウン「それもそうですね。あの子、携帯電話の電源を切ってるみたいで・・・。取り敢えず、あの子が行きそうな場所をお伝えしますね。もしかしたらそこにいるかもしれないので」


指揮官「助かるよ。それじゃあ後の事なんだが、君と赤城に任せていいかい?」


ヨークタウン「承りました」




・・・・・




その頃、エンタープライズは街へと出掛けていた。といってもどこか行く宛があるわけでもなく、ただ気の向くままブラブラと歩いているだけだ。


そもそも街に出るということ自体、経験が少ないのだ。艦として生きていく彼女たちにとっては、気軽に買い物などをするつもりもない。


そんな中、以前ヨークタウンらと行ったきりになっていたカフェを偶然見つた。そこで休憩を取ろうと考えた。


椅子に座って、ぼーっと一点を見続ける。



エンタープライズ「指揮官……」



何を考えても、何をしていても、先日の光景しか浮かんでこない。それと同時に、なんとも言えない感情が中で渦巻いているのだ。


考えても考えても考えても、この感情を理解できない。そもそも、なぜ苦しんでいるのかすら分からなくなってきている。



エンタープライズ「私は……どうしたらいいんだ? 指揮官に……いや、あんな態度をとったのだ。許してもらえるはずなど……」



あぁ、目の前が暗くなっていく。まだ昼間なのに、もう何も見えなくなる。道行く人も、賑わいも、何もかもが見聞きしたくなくなる。



「いっそこのまま、消えてなくなってしまいたい」













…………ズ



……………か? おーい





エンタープライズ!





自分に語りかける声に気がついた彼女は、ゆっくりと顔をあげる。




エンタープライズ「し…き……かん?」



指揮官「久し振りだな。なに、ちょっとした休息だ。たまには外に出てみようと思っていたら、偶然君を見つけてね。少しだけでもいいから構わないか?」


エンタープライズ「………指揮官が良ければ構わない」




「そうか」と返した指揮官は彼女の前の席に対面するように腰かけた。




指揮官「どうだった? 久々の休暇は」



エンタープライズ「……悪くはないさ。たまには、な」



指揮官「それは良かった。しかし、君もこんな店に来るものなのだな。少し意外だ」


エンタープライズ「ん……変か?」


指揮官「いや。戦い一筋のような所があったから、意外に思っただけだ。女の子らしいと思うよ」


エンタープライズ「なっ………!」


指揮官「なんて口に出来るような男でもないけどね」


エンタープライズ「……そんなことはないさ。ふふっ」




不思議だ。指揮官と話しているだけで、さっきまでの感情が嘘のように晴れていく。とりとめのない会話なのに、それだけで嬉しくなる。


あぁ、そうか。やっぱり私は指揮官が好きなのだな。そのためには、あいつは邪魔以外の何者でもない。指揮官を弄ぶような奴に、指揮官を奪われるものか。








「指揮官は、私のモノ」










赤城「ふふっ、指揮官様ったら仕事を放り出すだけでなく他の子と逢い引きだなんて、赤城の心はどうにかなってしまいますわぁ~」



赤城「アイツだけでもどうにかしないと、私と指揮官様は幸せに慣れない。あぁ、何もかもが妬ましい、恨めしい……」



赤城「指揮官様は私のモノ。指揮官様が聴く声も指揮官様が見る女も指揮官様が触れる髪も指揮官様が話しかけるのも指揮官様が見せる感情も指揮官様が心配するのも指揮官様が信頼するのも指揮官様が側に置くのも指揮官様が愛を与えるのも指揮官様が嫉妬するのも指揮官様が殺意を抱くのも指揮官様が猜疑心を抱くのも指揮官様が心を病むのも全てこの赤城でなければならないの」


赤城「指揮官様の全ては赤城のもの。赤城の全ては指揮官様のもの。何にも、誰にも渡さないわ」





「指揮官様は、私のモノ」






・・・・・


後書き

あくまで思い付きの作品なのであまり期待しないでください。

もう書いてて何が何だか分からなくなってきたよ。


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2018-05-15 11:31:11

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2018-03-27 06:16:26

たぬポンさんから
2018-03-26 23:33:47

このSSへのコメント

1件コメントされています

1: たぬポン 2018-04-02 12:40:50 ID: 7ytnhbx6

ドロドロした関係が見れそうですねぇ( ^ω^ )

しゅき


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