2018-12-11 00:57:52 更新

概要

いわゆるヤンこれです。国語力皆無&誤字脱字あり。それでも良い方はどうぞ。
あとタイトルの通り再投稿です。理由は活動報告を見てください。
ちなみに内容は前より少しだけ追加します。


 


 ……最近みんなの様子がおかしい気がする。

 例えば話していたら、急に下を向いて黙ってずっと動かない。

 動いたと思ったら急に逃げ出す始末。もしかして俺嫌われてるのかな?

 何故か執務室と俺の部屋にはこっそり盗撮カメラと盗聴器しかけてあるし……この量は流石に一般人でも気付くだろう。

 流石にずっと見られるのは嫌だから一回だけそれら全て取り除いた事があるが、結果としては取ったとしても次の日にはまた仕掛けてあるしもうなんというか……諦めた。

 犯人探しを本来するべきなのだろうが、その後の後処理が面倒だからぶっちゃけやりたくない。こういう時の処分とかどうすれば良いのか知らないしね。



 しかし、だからといって、放っておくのも問題がある。

 もしこの問題の原因を放っておいて、いつの間にか俺の信用度がガタ落ちしていて艦娘達が言う事聞かなくなりました……なんていう事が起きてみろ。その後の俺の人生が最悪な事になるのは嫌でも想像できる。

 これらの原因は間違いなく俺なのだが、特に俺は何か大きな事をした覚えがない。

 ベストな解決策はやはり根本的な原因を改善するしかないが、一体俺の何処が何がいけないんだろうか。

 か、顔とか?性格とか?それだったらもう既に詰んでるよな……。



 三回コンコン、と扉を叩く音が聞こえたので姿勢を整える。



提督「入っていいよ」



赤城「失礼します。鎮守府内演習の報告をしに来ました」



提督「え~と……確か赤城グループ対瑞鶴グループだったな。どうだった、結果は?」



赤城「こちらがギリギリA勝利、といった所です。詳細は報告書にまとめておきました。こちらが報告書です」



 報告書を受け取り内容を見てみるが特に何も問題なさそうだったので、ひとまず報告書を置いて赤城の方へ向く。



提督「なあ、赤城は今回の演習について何か感じた事や思った事ってあったか?」



赤城「えっと、そうですね……私が言うのもあれなんですが、今回は相手グループの山城さんの動きがとても良かったです。彼女がもし最後にあの砲撃を当ててきていたら恐らく結果はかなり変わったと思います」



提督「そうか……瑞鶴はどうだった?」



赤城「瑞鶴さんは、あともう少しで私達一航戦と張り合えるくらいにまでには成長してきていますね。今回はかなり苦戦しました」



提督「苦戦したってお前……空母はお前だけに対して相手は瑞鶴と千代田がいたんだぞ。逆によくやったほうだろ」



赤城「それでもやはり苦戦は苦戦です。戦場では言い訳出来ませんから」



提督「確かにそうかもしれないな……。まあなんというか……自分に厳しいのは良いが、たまには優しくするのも良いと思うぞ」



 喋って改めて思ったのが、やはりこいつはかなり真面目だ。

 真面目なのは、まあ確かに大変良い事だと思う。だがそういう奴に限って、ストレス発散の仕方が下手くそなことが多い気がする。

 そうは言ってもこいつは全部飯でストレス発散出来てるか、流石に。だっていつも幸せそうにすごい量のご飯食べてるもん。



 という事でいっぱい食べる君が好き♡ランキングどうどう一位おめでとう赤城。加賀は基本的に無表情なのでランキング外。ちなみに二位は阿賀野で。食べる量はまだ人間の範疇なので奢ってあげたい。

 え? 大和や武蔵はって? ちょっと知らない子ですね……。



赤城「……なら少し、少しだけ……提督に甘えてもよろしいですか?」



 いつものハッキリとした声ではなく、驚くほど控えめな声が聞こえてきた。



提督「ああ、別にいいが……何するんだ?」



赤城「その、引くかもしれませんよ?」



提督「? とりあえず言ってみろ」



赤城「あの……提督の血を飲ませてくれませんか?」



提督「ちょっと待て」



 こいつマジでヤバいやつじゃん……いわゆるサイコパスってやつなのではないか?

 赤城がこれでは今度艦娘全員に心理テストしたほうがいいかもしれない。あ、大井ひっかかるの確定やん。



赤城「やっぱ、頭おかしいですよねこんな事言うの……」シュン



提督「いや、そんな事はないぞ。ほら、血くらいならいくらでもやるぞ」キリッ



赤城「ほ、本当ですか!?」



提督「う、うん」



やべぇよ……やべぇよ……。

思わず肯定して了承してしまった。あの顔は反則だって。女性って顔の表情でも操れるのか?

 女性ってやっぱりどこか怖いよね。表面上では女同士仲良しに見えるけど、裏では悪口を言いあってるとか聞いた事あるけどちょっとそれは怖すぎない? 闇が深すぎるだろ。



赤城「では、早速……」



提督「待ってくれ。どうやって血を飲もうとしてるんだ?」



赤城「そりゃあ首をガブッと」



提督「ガブッ?」



赤城「そう、ガブッと……」



提督「やっぱりやめよう。お前のその言い方は嫌な予感しかしない」



赤城「安心してください。甘噛みにしますから」



提督「噛む時点で怖いんだよ。血くらいなら適当に手とかを切れば良いだろ」



赤城「え〜。それじゃあやだ〜!!」



提督「お前キャラ崩壊してないか?」



  こいつやっぱどこか抜けてると思うんだよなぁ。明石に修理してもらうべきか?



赤城「すみません。お願いします……!」



提督「えぇ……。本当に甘噛みなの?」



赤城「勿論甘噛みですよ。怪我はさせません!」



提督「じゃあせめて肩ら辺にしろ」



赤城「……分かりました」



 少し残念そうな顔を見て、本当に首が良かったのかと困惑してしまう。



ああ……でもこういう事を許可している辺り、なんだかんだやっぱり俺ってちょろいのかもしれない。漫画でたまに見る男なんてちょろい生き物だから〜とかいうセリフは確かに否定はしきれないと実感するわ。でも男としてはやっぱなんか否定したい。したくない?



赤城「ん……では改めて……」



提督「……」



 痛いが不思議と不快な感じはそこまでしなかった。なんというか、猫に噛まれているような感覚。

 しかしこの行為って衛生的に大丈夫なのか? ゾンビ映画では噛まれてよく感染しているけど、もしかしてこれヤバいんじゃないか? う~ん、分からないしどうでもいいや。



 始めてからだいぶ経ち、そろそろ終わりごろかと思って声をかける。



提督「……なあ、そろそろ終わりにしないか?」



赤城「……」



提督「え? ここにきて無視なのか?」



 赤城に話しかけてみたものの、本人は未だに軽く噛んでは舐めての繰り返していた。

 どうすれば良いのか悩んでいるとまたドアをノックする音が聞こえた。



加賀『提督、少し相談があるんだけど……入って良いかしら?』



提督「え゛、ちょ、ちょっとだけ待ってて」



加賀「? 分かったわ」



 まずいな。どうやら加賀が来たみたいだ。

 この光景を見られたらめんどくさくなりそうだな……。早く赤城を引き離さなければいけない。



提督「おい、流石にもうやめろって。加賀も来てるぞ」



赤城「……」



提督「まだ無視するのか? こうなったら力ずくで……!」



 無理やり引き剥がそうとしたものの、俺の背中に赤城の手がまわっていて中々剥がせない。



 こいつどっからこんな力だしてんだよ。艦娘ってやっぱ不思議だよな。少しだけ艦娘について研究してみたいねいつか。あんな事やこんな事を……うへへへ。

 なーんてそんな事考えている場合じゃないんだよ! 早く離せよこいつ!!



加賀『ねえ、まだ入っちゃ駄目なのかしら?』



提督「もう少し! もう少しだけ待ってろ!」



加賀『……?』



 ああ、駄目だ。こりゃ無理だわ。力ずくじゃなくて他のアプローチでいこう。

 加賀は怪しんでるし、もう時間がないから急ごう。



提督「赤城、もう良いだろ? また今度やってもいいから今日はやめにしよう、な?」



赤城「……」



 痛い痛い痛い!!こいつ更に噛むのを強めてきてる!!

 俺なんかしたかな? ただ、たまには自分に優しくするのもいいかもしれないって言っただけだよ? 別に悪い事言ってないじゃん!!



加賀「提督? もういい加減に入るわよ?」ガチャ



提督「あっ」



加賀「……赤城さんに何やってるのかしら」



 ジロリと睨まれ、明らかに勘違いされている事を理解する。



提督「どうみても逆じゃないか? 俺、被害者だからな? 理由は後で説明するから今はとりあえず助けてくれ」



加賀「助ける代わりに間宮券を要求するわ」



提督「お前この状況分かってんの? 分かったからはよ助けてっていてえええええ!?」




◆◆◆




 大変痛い目にあいました。あともう少しでお葬式頼むところだった。

 あの後赤城をなんとか引き離せたので、即行で赤城を加賀に明石の所に連れて行ってもらった。本当に大丈夫かな赤城……。

 ああ、ちなみに俺の手当は大淀がやってくれた。大淀ってなんでも出来るんだなって褒めたら殴られた。大淀ってもしかしてツンデレなのかな?



時雨「提督、大丈夫かい!?」バン



 突然扉を壊す勢いで入って来る時雨に少しビックリしたがらも返答する。



提督「ちゃんとノックくらいしてくれ、時雨……」



時雨「それで大丈夫なのかい!? 赤城さんが提督に怪我をさせたって聞いたけど!!」



提督「ああ、大丈夫だ。怪我っていっても本当に軽い怪我だしな」



時雨「良かった……良かったよ、無事で本当に。それでどうするんだい? 赤城さんの処分は」



提督「え?」



時雨「え?」



 処分……処分か。そういえば考えてなかったなあ。

 今まで特になんかされたわけじゃないし、別に今回は事故扱いでいいかな?正直今は赤城の方が心配だから処分の事とかどうでもいいし。



提督「今回は事故扱いで無しって感じだな……」



時雨「そう……提督がそう言うんだったら僕もそれに従うよ」



 どこか悲しそうな顔をするのでフォローをいれる。



提督「まあ……時雨が俺の事心配してくれたの嬉しいから結局プラマイゼロだ。むしろプラスかも?」



時雨「そ、そうかい? そういってくれると僕とっても嬉しいよ……。あ、そうそう。遠征の結果を提出しにきたんだ」



提督「ん、結果はどうだった?」



時雨「今日も大成功さ。報告書はここに置いとくね」



提督「相変わらず凄いな。ご褒美に人数分の間宮券あげるから、それを使って疲れを癒してくれ」



時雨「ありがとう提督♪ よかったら、提督も一緒に食べに行かないかい? みんなもきっと喜ぶよ」



提督「俺はさっきの件でまだやる事沢山残っているからちょっと無理だな……」



 時雨は目線を下げて熟考し、再び顔を俺の方に向ける。



時雨「提督、どうして秘書官をつけないんだい? 付けた方が仕事の負担量が減るのに。それに防犯にもなるよ?」



提督「あー、まあつけても良いんだけど俺誰もいない部屋で一人で黙々と作業するのが好きなんだよね。」



時雨「……なるほど、わかったよ提督。でももし困ったら僕に相談してね? いつでも相談に乗るから」ニッコリ



 可愛い。可愛い(語彙力欠如)

 相変わらず天使時雨やなあ。

 見た目も改二にしてから元々良かったのが、更にスタイル良くなったし、悪いところが一つも見つからない。

 ……いやたまに『雨は、いつかやむさ』とかいう謎の痛いポエムを言うのが玉に瑕だな。



 それはともかくとして、ならあの問題について時雨に相談するべきだろうか? ちょっとそろそろ本格的に考えるべきだろう。

 時雨は見た目は幼いながらも、艦娘の中では頭が切れる方だ。

 そして何より、これは勘だが、今でも俺の事を心から信頼してくれている気がする。

 それならば、俺も時雨の事を信頼して勇気をだして相談するべきではないだろうか。



提督「あ~……じゃあお言葉に甘えて少し相談事があるんだがいいか?」



時雨「……! うん、もちろんだよ! いったいどうしたんだい?」



 俺は先ほどのみんなの態度について話した。



提督「……という事なんだけどみんな大丈夫なのか? 体調不良とかなら急いで治した方がいいし、もし俺の事嫌ってるのなr「それは違うよ。絶対に」お、おう。なんかありがとな。時雨はこの事についてどう思う? 赤城も、もしかしたらこの問題に分類されると思うし」



時雨「……実はなんでそんな事起きているのか、僕知ってるよ」



提督「それマジ? 教えてくれないか?」



時雨「うーん……。実はそれみんなのある『症状』だから教える事は出来ないんだよね。ああでも提督が思っているような大事ではないから大丈夫だよ」



提督「症状? それは俺には教える事が出来ないのか?」



時雨「そういう事だよ。ああ、でもヒントくらいはあげてもいいよ? まあもちろんただじゃないけどね」クスッ


 

 あらやだ何かいけないこと考えてる顔もかわいい。

 どうやらそんな重大な問題じゃなくて良かった。でもそんな『症状』を度々起きたら俺のメンタルが先にぶっ壊れるんだよなぁ……。

 ここは相手の賭けに乗るべきだ。



提督「……分かった。その賭けに乗ろう」



時雨「本当かい!? まさか嘘じゃないよね?」



提督「男に二言はない。だから教えてくれないか?」



時雨「分かった。その言葉、信じるよ? じゃあヒントを教えるね。ヒントは『みんな匂いに弱い』だよ」

 


提督「……?」



 な~にそれ。まるで俺が臭いみたいな感じじゃないか。後で一応この前友達から貰った香水かけとこうかな……。

 さて、ヒントは貰えたし時雨の要求聞いてみるか。



提督「よく分からんから後で考えてみる。じゃあ時雨、君の要求はなんだ?」



時雨「まあこれは単純に考えればすぐわかる事さ。さて僕の要求だけど……今週の日曜日に『二人きり』で町にデートしに行かないかい?」



 二人きり……? そこは重要なのだろか。



提督「デートって言い方はちょっとあれだが……まあいいよ、うん」



時雨「やった! なら鎮守府の前十時に集合だよ。遅れないでね?」



提督「分かった。遅れないようにするよ。どこいくかは決めてあるのか?」



時雨「うん! 決めてあるから楽しみにしててね? じゃあそろそろいい時間だしそろそろ失礼するよ……また、明日ね?」



提督「ああ、また明日な」



 時雨はニコニコと笑みを浮かべ、機嫌よく執務室を出て行った。



 最初から最後まで可愛かったなあいつ。学校にあんな子がいたら絶対に殆どの生徒が惚れるだろうな。

 けど時雨が『二人だけ』を強調した時の雰囲気が、少し怖かった。俺はその日に暗殺でもされるのだろうか?



 それにしても時雨からのデートのお誘いが来るとは驚いたなあ。女の子とのデートは実は人生の中で何回かあるが、艦娘とデートは初めてだ。

 だが、まあまず付き合ってないのにデートっていうのもあれだと思うが、あまり気にしないでおこう。

 時雨も女の子なんだし、そういうの気になるんでしょ。



 とりあえずこの問題は今は後回しにして、切り替えて執務をしていこう!

 という事で久々のRTAはーじめーるよーー。競技人口? 俺しかいねえよ。君もやるか?

 目標タイムはだいたい三時間くらい。ペンを持ってから計測開始です。

 はい、よーいスタート(棒読み)




◆◆◆




 ここでタイマーストップです。タイムは三時間二十七分でした。

 目標タイムより遅れてんじゃん。駄目じゃん!!

 とりあえず今ちょうどいい頃だし、晩御飯食べに行こう。出来る限り艦娘に会いたくないな、うん。今日も一人でご飯食べたい。



加賀『提督、先ほどの件について報告しに来ました』



 執務室の扉から加賀の声がしたので、受け答える。



提督「入って良いよ」



加賀「失礼します」ガチャ



提督「で、それでどうだった? 赤城大丈夫だったか?」



加賀「ええ、検査して特になんともなかったけど本人曰くその時の記憶が曖昧だとかなんとかって」



提督「それ大丈夫なのか? なんか心の病気とかなんじゃないのか?」



加賀「でも、赤城さんは別に何か悩みとかはないって言ってたのよ。私には何がなんだかよく分からなかったけど、明石が何かを察したみたいな顔をしてたから裏で問いただしてみたの。そしたら『加賀さんもいつか分かりますよ。そう遠くないうちにね』って言われたわ……」



提督「うーん? とりあえず最低限明石はもう既に何が起きてるのか分かってるのか。その言葉の意味考えると時間が解決してくれるみたいだけど」



加賀「……ごめんなさい。何も力になれなくて」



提督「なんで加賀が謝るんだ? とりあえず赤城がなんともなくて良かったよ」



加賀「赤城さんの処分、どうしますか?」



提督「それ時雨にも言われたが、別に何かするつもりはない。ちょっと軍の規律としては甘いかもしれないけど、まあその分色々頑張ってもらってるしね」



加賀「……そう、優しいのね」



提督「今更気付いたのか?」



加賀「調子に乗らないで」



提督「アッハイ」



 軍にしてはうちの鎮守府の規則はだいぶ甘いが、実は演習や座学、そしてもう一つ他と違って講義があるので普通に大変だ。講義というのは、高校までの範囲で授業単位を最低三つとるというシステムで行っている。大学の規模を少し小さくしたみたいなイメージをしてくれれば分かりやすいかもしれない。出来る子は大学の範囲までやっている。素直に凄いと思う。

 何故そんな事をしているかというと単純にいろんな事を考えて欲しいし、また騙されないためだ。



 皆は何故勉強しなければいけないのか? という疑問は持った事はないだろうか。色々な回答があると思うが、俺は頭が良い奴が何やっているか分かるために勉強をしていた。一応他にも理由は勿論あるが……。

 酷い時は頭が悪いと何をされているかさえ分からないという事がある。事実そういう理由で被害にあう艦娘達も多数いるみたいだ。

 まあ結局俺の目標は艦娘達全員が一人でやっていける事と、また論理的思考能力を身に着けていく事だ。めんどくさいよね、勉強って。でも今の時代は昔と違い頭良い奴がマウントとれる時代だから仕方ない。



 ちなみに余談だが、生きていく上で論理的思考能力は正直いらない。何故かというと、単純に世の中が論理的に構成されてないからだ。

 世の中理不尽! 世知辛いのじゃ~!!



加賀「ねぇ、そういえばなんであんな事になったのかしら。普通あんな事起きないでしょう」



提督「あー……赤城って自分に何かと厳しいだろ? だからたまには自分に優しくしてみるのもありなんじゃないかって言ったら、なら少し甘えてもいいですかって言われて了承したら、ああなった」



加賀「少し説明不足な気もするけど、なんとなく分かったわ。でも、赤城さんがそんな事言うなんて珍しいわね……」



提督「それなー。大体俺に甘えるとか選ぶ人間違えてるだろ。せめて鳳翔さんあたりを選べばいいのに」



加賀「……それは絶対に間違えてないわ。あなた、心が温かいもの……」



提督「え?」



加賀「……もう、二度目も言わせないで」



 加賀の顔を見てみると少し頬が赤く染まっているのに気付いた。



 ……ああ、こいつ照れてんのか。意味がわからない。どういう理由で照れてんだこいつ。まあこういう時はやる事一つだよな。



提督「なんだ、加賀も俺に甘えてみたいのか?」



加賀「いえ、その、なんというか……」オドオド



提督「ほら、なにして欲しい? 何でも聞くぞ。今ならボーキサイト無料や飯奢りも受け入れちゃうぞ」



加賀「あなたが私の事どう思っているのかよく分かったわ……。そうね、ハグを要求するわ」



提督「あー、残念だが今日エイプリルフールじゃないぞ。しかも午後だし」



加賀「なんでこの流れで嘘って捉えるのかしら……せっかく勇気だして言ったのに……」



提督「なんかたまに加賀をいじりたくなるんだよね。反応が可愛いし」



加賀「か、可愛い……? 私が……?」カァァ



 照れて顔を隠している間に加賀に近づく。


提督「はい、ハグしますよ~」ギュ



加賀「」



 あ~、猫みたいで可愛いなあ。加賀って無表情だけど、一番感性が豊かな気がする。

 ちなみに妖精とよく一緒にいるあの猫は可愛くないな。あいつ毎回俺の事引っ掻くもん。でもなんだかんだそんな所も好きだよ。

 少し聞きたいけど、皆は犬派?猫派?ちなみに調査によると犬派が六割で、猫が四割らしいよ。犬もかわいいもんね。ずっと遊んであげたい。



 そんなどうでもいい事を考えていたら、加賀が俺の匂いを嗅いでいるのに気付いた。



提督「なあ、俺の匂いってちょっと臭いか?」



加賀「いえ、寧ろ良い匂いだわ。ずっと嗅いでいたいくらい……」



提督「ふぅん……?」



 よ、良かった。加齢臭とか体臭がヤバいのかと思ってたけど違ってて嬉しい。

 でも流石にこれ以上嗅がれるのも嫌だな。離そう、うん。



提督「加賀、もう離してくれ。誰か、特にどっかのAさんに見られるとまずいし」



加賀「……」



提督「……? なあ、聞いているのか? 離せって」



加賀「……」



 駄目だこりゃ。また無視されてるよ。最近こんなのばっかだよ泣きたい。

 今考えれば誰かにもう盗撮カメラでこれ見られてんじゃ? Aなる者だったら遠慮なく宿題追加で。



加賀「……提督、ごめんなさい」



 突然そう言われたと同時に、加賀に押し倒される。



 な、なにこれ?何が起きてるんだ?急展開すぎる!!



提督「か、加賀? なんで押し倒したんだ? あと顔近いから」



加賀「……」



 こ、怖い。ここにきて無表情は怖いって!

 どうしたらこんな無表情になれるんだ?



加賀「提督」



提督「ちょ、耳元でそんなねっとり囁くなよ。気持ち悪いって」



加賀「提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督」



提督「」



 ひぇ……。怖すぎて一瞬フリーズしちゃったわ。

 耳元でこんな事ずっと言われたら誰でもおかしくなるぞ。催眠術か何かか?



提督「や、やめてくれ。おかしくなる」



加賀「」



提督「あああああああああああ!?」



 駄目。本当に頭おかしくなる。この感覚マジで不快だ。脳がむずむずする。

 頑張って抵抗しているけど、やっぱり無理。艦娘には勝てなかったよ……。



加賀「提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督」



提督「……」



 あ、もう駄目。意識が朦朧としてきた。誰か助けて……。



鈴谷『熊野~、もう疲れたよ~』



熊野『提督に書類渡してから休みましょうか。もう目の前ですし、ね?』



鈴谷『んもぅ~、渡すの明日でも良いって提督いってたじゃ~ん』



熊野『もう書いちゃったんですから、なんなら今渡した方がよろしいですわ』



鈴谷『全く偉いねぇ~、熊野は』



熊野『私はレディなんですから。これくらい普通ですわ」



鈴谷『流石レディ(笑)』



熊野『それ馬鹿にしてますの?』



 廊下から鈴谷と熊野の会話が聞こえ、加賀が耳元で囁くのをやめ正気に戻った風に見えた。



加賀「あ、ああ。ち、ちがう。こんなの私じゃない……!」



提督「か、加賀? 大丈夫か?」



加賀「ごめんなさい。もう部屋に戻るわ……」



提督「え、あ、うん」



 な、なにが起きてたんだ? さっぱり分からない……。



鈴谷『提督、入っていいかな?』



提督「あ、ああ……入っていいぞ」



 とりあえず立ち上がって鈴谷達から報告書を受け取ろう。

 本当ここ最近、悩みが増えてく一方だな……。




◆◆◆




 ぽいっす。

 どうも皆さん、提督です。

 今現在艦娘に見つからずに鎮守府から出ようとしている最中です。

 見つかったら大抵艦娘達が俺を強制的に間宮食堂に連れて行かせるんだよね。なんでだろうね。俺にもよく分からない。

 まあ別に行ってもいいけど、周りが女性しかいないとなんか食べ辛い。食べ辛くない?

 え? お前がただ単にコミュ障なだけだって? はは、今度余計なことを言うと口を縫い合わすぞ。



川内『今日こそ提督に夜戦頼もうよ〜!』



那珂『那珂ちゃんはもう疲れたからそこまでしたくないよー。それに今日本来なら休みなのに無理言って演習参加させてもらえたんだし、あまり提督に迷惑かけないほうがいいんじゃないかなー。神通姉さんはどう思う?』



神通『……』



那珂『神通姉さん?』



神通『あっ……ご、ごめんなさい! 少しボーッとしてました』



那珂『もォ〜、最近そういうの多いよー? 大丈夫なの?』



神通『も、もちろん大丈夫ですよ……?』



那珂『疑問で返されても説得力ないよ……』



 俺がいる廊下の次の左の角から、そのような声が聞こえてきた。



 うわあ……夜戦忍者川内じゃん。

 コイツまだ夜戦を諦めてないのかよ。この前夜戦夜戦うるさいから、仕方なく潜水艦の子達と夜戦演習させてあげたのに。いい加減心折れて欲しい。少しくらいゆっくり寝させろよ……。

 あとそれに川内が夜戦夜戦騒いでるとキレるやつがたまにいるんだよ。

 例えば大井や春風とかだな。大井は大抵北上を出せばなんとかなるけど、問題は春風だよ。あの子、キレたら仕込み刀使おうとするしなんか凄い威圧感出してるし本当に怖い。

 確かその時は春風と二人っきりで雑談してたから、多分それを邪魔されたことに対してキレたんだろうなあ。春風が川内に対して刀を向ける前に『今度一緒に静かな所でゆっくりしよう。だから今回は許してやってあげてくれないか?』って言ったからなんとかなったけどさあ……。もうあんな悪夢みたいな時間は二度と味わいたくない。



 さて、本題に入るがどうやって見つからずに鎮守府から出ようか。

 う〜ん。本来だったら隠れてやり過ごせたけど、相手が川内達だもんなあ。もしやり過ごせたとしても、いきなり背後から話しかけられそう。そしてなんで隠れてたの? って問い詰められていくオチが見える見える……。

 ならここは普通に横を通り過ぎるのが一番だろう。本当は見つからないのがベストなのだが、まあ今回は相手が悪い。

 話しかけられる可能性が高いが、神通と那珂ちゃんがいるし大丈夫だろう。常識人が二人いればとりあえず川内はなんとかなると思う。あとはなんとかして早くここから離れるかだな。これが一番の問題だけど、まあなんとかなるっしょ(適当)



 意を決して次の廊下を曲がる。


川内「あ、提督だ〜!今日は夜戦ある? ある?」



 案の定川内たちがいたものの、焦らず返答する。



提督「今日も無いから諦めろ」



川内「え〜なんでよ〜」



提督「そんなにやりたいなら潜水艦達に頼んでおくからやっていいぞ」



川内「またそれやるの? 流石に勘弁してよ〜」



 ここまではなんとなく予想出来た。だが、問題はここからだ。

 いかにどうやって自然に離れようか。いきなり『あ、俺今忙しいからじゃあね』はなんか怪しいな……。

 単純にあともう少し会話して『じゃあ、また』で会話を区切るのが一番かな? うん、それにしよう。



提督「あ、今日の演習の手ごたえはどうだった? 手ごたえあったか?」



川内「うん、良かったよ! ちょっとずつ皆実力あげて来てるからやりごたえがあるよ本当に」



提督「それは良かった……まあ今回で得れたものがあるんだったら、それを次に活かして頑張れよ。じゃあ、ここで俺は失礼する」



川内「うん! またね~!」



 気持ちが先走りになりつつも、出来る限り落ち着いて川内達から離れる。



 ふぅ……ここまで上手くいくなんて思わなかったな……。

 もしかして、俺がただの自意識過剰なだけだったのか? これが男子特有の思い込みってやつか。

 でも結構な頻度で間宮食堂に無理やり連れて行かれてたよ? ここ最近は早めに自室で済ませていたからあまり言われなかったけどさ。そこら辺はみんな常識人なんだよね何故か……出来れば無理やり連れて行くという事をしないというのも常識にして欲しい。



川内「じ、神通? なんか顔色悪いけど大丈夫?」



那珂「本当だ。神通姉さん大丈夫? 今から医務室に行く?」



神通「……」



川内「て、提督! ちょっと待って!」



提督「え、えっ? なんだ?」



 ああん。離れられると思ったら急に呼び止められたよ。

 一体何が起きたんだ?



川内「神通の顔色が悪いんだけど、ちょっと見てくれないかな?」



提督「うん? まあいいけど……神通、ちょっといいかな?」



神通「……ふぇ」



提督「? ごめん、もう一回言ってくれないか?」



神通「うぇぇぇぇぇぇぇん」ポロポロ



提督川内那珂「「「」」」



 な、なにこれ。何が起きてるんだよ本当に。

 今日ちょっと内容が濃すぎないか? これならずっと自室で籠っているんだった。俺も泣きたい。



提督「せ、川内。なんで神通が泣いているか分かるか?」



川内「わ、私にも分からないよ! 那珂なら分かるかも!」



那珂「那珂ちゃんも何がなんだか分からないよー! あ、でも提督が来てから顔色悪くなったんだから、提督が原因なんじゃないかなぁ?」



提督「ま、マジで? ちょっとそこで自殺してくるわ……」



那珂「じょ、冗談だよ! でもそれくらいしか那珂ちゃんには思いつかないよ!」



提督「……とりあえず一旦落ち着こう。川内はお姉ちゃんとして、神通の事落ち着かせてあげてくれないか? 俺は那珂ちゃんと話すから」



川内「わ、分かった! これはお姉ちゃんの役目だよね! 頑張るよ!」



提督「ありがとう。じゃあ那珂、ちょっとこっち来てくれないか?」



 那珂は特に何も返事をせず、黙ってこっちに来てくれた。



 もし本当に俺が原因だったら、多分あの事だろうな……。



提督「那珂、神通はさっきも具合悪そうだったか?」



那珂「ううん、そんな事なかったよ。でもなんか最近ボーっとする事が多いんだよね、神通姉さん。さっきもボーっとしてたんだ」



提督「ちなみにそれはいつくらいから?」



那珂「う~んと、三週間まえくらいかなー? あ、丁度提督が足を怪我した時くらいかも!」



提督「そうか……原因は風邪とかではないか?」



那珂「いや、多分悩み事とかじゃないかなー。それに風邪なら泣く理由にならないと思うし」



提督「確かにそれもそうだなあ……」



 あかん。本格的に俺が原因な気がしてきた。というより、それしかこの状況を説明できないか。



那珂「やっぱり提督が原因じゃないかなー?」



提督「だよなあ……俺しかいないよねぇ……」



那珂「そ、そんなに落ち込まないで! あくまでも推測だから!」



提督「えぇ~? 俺が来て突然泣いたっていうこの状況は明らかに原因俺しかいないじゃないか」



那珂「提督は何か心当たりとかないの? 神通姉さんと何かあったりとか」



提督「まあ、実はあるんだけどな」



那珂「結局あるんだ……」



提督「でも、それが原因で泣いたとは限らないじゃん?」



那珂「じゃあ他に何にもあるの?」



提督「ない」



那珂「ならそれじゃん……」



 あれれ、なんかすごい呆れられている気がする。



那珂「那珂ちゃんは一応その事についてはあまり聞かないから、とりあえず神通姉さんとその事について話合ってきたら良いんじゃないかなー? それ以外原因見つからないわけなんだから」



提督「やっぱりそうだよな。神通と話し合ってくるか」



 那珂との会話をやめ、神通の所へ向かう。



川内「あ、提督! 神通全然泣き止まないよ」オロオロ



提督「俺がなんとかするから、とりあえず神通と二人っきりにしてくれないか?]



川内「……任せるよ、神通の事」 



提督「ん、分かった」



 そう言ったら、川内は大人しくここから離れてくれた。

 さて、ここからどうしましょうか。とりあえず話しかけてみるか。



提督「神通、下ばかり見てないで俺の事を見てくれないか?」



神通「……」



提督「ん、ありがとう。少し泣きすぎちゃったんじゃないか? 少し目が腫れている気がするけど」



神通「……」



 今日何回目の無視だろうか。さっさと飯食って寝たい。辛いの極み。

 でも俺は諦めない。ここはもう言葉じゃなくて、目を見つめて相手が喋るのを待とう。



神通「……すみません。また迷惑をかけてしまって……」グスッ



提督「また……? ああ、うん。やっぱりあの事について悩んでいたのか」



 ずっと言っている『あの事』についていい加減説名しておこう。

 あれは確か大規模作戦が終わった後の事だったか。いつもだったら本当はすぐ終わるのだが大規模作戦で軽いけがを負ってしまいしばらく動けなかったので、期限ギリギリから執務開始でとても忙しかった。それくらい大目に見ろよな大本営。

 その日の予定の執務は夜遅くに終わり、もう寝ようかなと思っていた時に神通からの訪問を受けた。

 確かこんな会話だったかな……



提督『どうした?こんな夜遅くに』



神通『あの、少し相談したい事がありまして……』



提督『相談? こんな時間に?』



神通『すみません……提督が今まで忙しそうだったので、邪魔しちゃ悪いと思いまして』



提督『そうか……それはすまん。それで、どういう事を相談したいんだ?』



神通『えっと、最近提督と一緒にいると頭の中が真っ白になるんです。でも、提督が側に居なかったら居なかったで、胸が苦しくて……よくため息が出てしまうんです』



提督『そ、それは重症だな……』



神通『最初は提督以外の人に相談しようとしていたんですが、その……提督以外に相談出来る人がいませんでした』



提督『まあ、神通は一人で解決しがちだもんな……。分かった、一緒にその事について考えてみようか。といっても今日はもうだいぶ遅い時間だし、明日にしないか? 神通も流石にこの時間は眠たいだろ?』



神通『……』



提督『神通? お〜い!』



神通『あっ……す、すみません! 少し放心してました』



提督『そうか……近くに俺がいるもんな。今日はもう夜遅いし寝よう。ほら、部屋まで送って行くから』



神通『すみません。こんな夜遅くに来てしまって……』



提督『いや、まあ、うん。久しぶりに神通の声も聞けたし別にいいよ』



神通『提督にそう言っていただけて非常に嬉しいです……』



 と、まあここまではごく普通の流れだった。でも部屋に送っている途中で神通がおかしな事をし始めたんだよ。



神通『提督、何か香水でもつけましたか?』



提督『香水? つけてないが……あれ、もしかして今俺臭い?』



神通『いえ、良い匂いなんですが……』スンスン



提督『ちょ、くすぐったいって神通。歩きながらこれは危ないだろ?』



神通『……』



提督『ねぇ、ちょ、まっ、倒れるって……!』ドンッ



神通『……あっ』



提督『いったぁ……』



神通『す、すみません! 今どきますから!』



提督『ああ、うん。ありがとう』



神通『だ、大丈夫ですか?』



提督『大丈夫大丈夫。ほら、部屋に戻ろうか』



神通『は、はい……』



 このあと無事に神通を部屋に送り自分の部屋に戻った時に、足首に激痛を感じてその部位を確認したらものすごく腫れていた。

 まあでも自分でこれくらい治せるか、と思い包帯巻いて放置してたらまさかの青葉にバレて即行で明石行きになった。

 その後青葉に原因は何かって聞かれたから、転んだからじゃないかなって言ったらそれがまさかの記事になるっていうね。

 その結果その内容が神通に行きわたってしまい気まずくなってしまった……って感じだ。

 俺はちゃんと神通と話し合ってみようと頑張ってたんだけど、まさかの避けられてて神通を見かける事さえ出来なかった。

 しっかしこれだと泣く理由にはいまいち足りない気がするんよなあ。他にもあると思うんだが……。



提督「神通、あの事も今回の事も別に迷惑なんて思ってないぞ?」



神通「でも、青葉さんが……」



提督「青葉? なんでここで青葉なんて出るんだ?」



神通「青葉さんに私が提督を傷つけたのバレてしまって……それで、提督に嫌われてるかもしれないって言われて……!」



提督「うん……」



 アオバワレェ!

 あいつなんで犯人を特定できてるんだよ。もっと違う事にいかせよそれ。

 そしてわざわざなんで神通の事煽ってるんだよ。確かにその可能性も否定出来ないだろうけどさぁ! もっと違う声のかけ方あるじゃん!



神通「それで、出来るだけ提督に会わない方がいいと言われて……だからここ最近提督の事避けていたのですが……その、さっき会った時に……」



提督「……ああ、うん。耐えきれなかったのね。でも別に俺は神通の事嫌ってない。いつも色々と助かっているからな。まあ、なんというか……一応仲直りでもしとこうか。ごめんな、神通の気持ち気付けなくて」



神通「いえ、こちらこそすみませんでした……私がいけないのに……」



提督「まあまあ。これでこの事はおしまいでいいだろ? あ、そういえばあの悩みは解決出来たの?」



神通「はい。自己解決出来ました」



提督「それは良かった。まあまた何か困ったら俺じゃなくてもいいから誰かに相談しろよ? そのための仲間だからな」



神通「そうですよね……了解しました」



 つ、疲れた……。青葉よくもやらかしてくれたなあ!?今度会ったら叱ろう、絶対に。 

 もうお腹すいた! さっさと飯食いに行きたい!



提督「さて、結構時間経ったわけだしそろそろ行っていいかな?」



神通「? 何処にいくんですか?」



提督「え゛……えっと、トイレ行こうとしてた」



神通「あ、そ、そうだったんですね。止めてすみません」カァァ



提督「ごめんね。じゃあ、行くから」



 神通天然なのか?普通トイレのためにこんな所来ないだろ。

 さて、お楽しみの一人外食タイムのお時間です!!



















提督「」



北上「あ、提督じゃーん。私服に着替えてるってことはいまから何処にいくの?」



大井「北上さん! こんなやつほっといてさっさと食堂行きましょう!」



北上「大井っち。流石にこんなやつ扱いは酷いよ」



 鎮守府の出口に向かっていたら、北上と大井に会ってしまった。

 くっそぉぉぉ!!まさかここで見つかるとは思わなかったよ!!あともう少しだったのにぃぃぃ!!



 実はこのペアは色々とヤバい。

 詳しく言えば北上は大丈夫だけど、ヤバいのは大井の方だ。何がヤバいかって?

 この大井という人物、北上にありえないくらいに依存している。ドン引きレベルで

 北上に何かしたら、酸素魚雷を誰でも問答無用で撃ってくるくらいだ。普通に頭おかしい。

 このように頭のネジが所々ぶっとんでいるので、提督たちから裏でクレイジーサイコレズとも言われている。十割くらい合ってるから面白い。

 ちなみに俺も何回か酸素魚雷をくらわされそうになった事があるが、いつも瑞鶴の爆撃と重なるから助かっている。

 一度瑞鶴になんでいつも駆けつけられるのか聞いたら『たまたまだよ、提督さん!』と言われた。

 嘘をつくのが下手くそな奴ってマジでいるんだなってこの時思ったけど、別に気にしない。気にしてら負けだと思っている。

 とりあえずそういう事からここからいち早く離れることが身のためだ。あまり関わりたくない。



提督「あー、えっと、まあ少し用事がね。それより今丁度食堂が混む時間だしご飯を食べるなら、早く向かった方がいいぞ?」



北上「ん~? 用事なのに私服なの? 何の用事なの?」



提督「まあ、ある人と飯食いに行くんだよ。少し急いでいるからもういいか?」



大井「……提督? 嘘は良くないですよ?」



提督「エッ」



大井「だってアイコンタクトの頻度が少しずつ減ってますよ? それに喋り方に少し違和感を感じますし……」



提督「ははは。大井も面白い冗談を言うようになったな。どうせハッタリだろ?」



大井「なら目を合わせてもう一度言ってくれませんか?」



提督「……同じことを何度も繰り返させないでくれよ。俺はある人と飯を食いに行くんだ」



大井「ふふ、提督もおかしい事を言いますね」



提督「な、何がおかしいんだ?」



大井「いえ、失礼しました。でも提督、明らかに息遣いも荒いし汗もすごいですよ?」



 ……やっぱりこいつはヤバい。というか何故バレたし。

 ちゃんと呼吸も意識したからそこまで息遣いは荒くないはずだぞ。

 それに汗。背中は確かにかいたがどうやって見抜いた?どんだけ視力いいんだよ。祖先はどっかの部族なのかな?

 あとその顔怖いからやめて欲しい。顔は笑ってるのに目が明らかに笑ってないぞ。

 もうこれは唯一の頼みだ北上。俺を救ってくれ!!



北上「……提督、なら私たちも少しだけ付いて行っていいかな? この時間帯の食堂はどうせゆっくり食べれないし私たちも外で食べる事にするよ」



大井「それはいい案ですね北上さん! 二人でゆっくり食事でもしましょう!」



 oh……唯一の神(北上)からも俺は捨てられたみたいだ。

 ここは負けと認めよう。このまま嘘をつき続けても墓穴を掘りそうだし。



提督「……分かった、俺の負けだよ。本当は一人でゆっくりと食事しようとしていた。ほらこれでいいだろ?」



北上「ふふん♪ 提督、私たちを連れてってもいいんだよ? 別に嫌なら断ってもいいけど、その時は大声で叫んじゃうけどね~。『え!? 提督もしかして今から彼女に会いにいくの!?』って。青葉に知られたら大変だろうな~」



提督「連れていくから、そんなめんどくさいことやめてくれ。あと大井、お前はその酸素魚雷をしまってくれ」



大井「嘘をついた罰ですよ? 提督、私に嘘をつくなんてどういうことかわからs『大井っち!』……北上さん。」



北上「大井っち、提督の性格を考えればこんな嘘なんて想像できるし最後にちゃんと嘘って認めてくれたんだから、今回は大目に見よう?」


 

大井「……分かりました、北上さん。提督、今回だけですよ大目にみるのは。次私に嘘をついたら許さないんだから……」



提督「わ、分かった。今度から気を付ける。お詫びにおごるからさ。ほら私服に着替えてきな。鎮守府前で待っているから」



北上「やった~♪ ほら大井っち、一回部屋に戻ろ?」



大井「わかりました北上さん。では提督、また後ほど」



 ふふ……怒った大井マジで怖かった。

 北上がいなかったら俺マジで死んでた気がする。北上に我命救助感謝~。

 いつからあんな目をするようになったんだ大井。大体昔はもうちょっと大人しいというか……俺の事興味なさげな態度だったやん。今度から大井の前では嘘をつかないでおこう。

 さて、さっさと鎮守府前に向かおう。俺まだ死にたくないからな。

 一人でご飯食べたかった……。




 ――一方そのころ――



北上「大井っち。 流石にあれはやりすぎだよ?」



大井「ごめんなさい北上さん。嘘をつけられたのが許せなくてつい……。でも安心してください北上さん。よっぽどの事がない限りあんな事やらないですよ?」



北上「提督の事好きすぎるのは良いけど、提督怖がってたよ? というかもし間違えちゃって死んだらどうするの?」



大井「その時は心中しますよ。提督と北上さんのどちらかが欠けた世界にいても無駄ですから」



北上「くぅぅ、相変わらず狂ってるね~。とりあえず提督との食事の時間が減っちゃうからはやくいこうかー」



大井「はい、分かりました」




◆◆◆


 


 めっちゃ疲れた……。こいつら食べる時もいちゃいちゃしてるとかもう結婚したほうがいいんじゃない?

 それを言ったら大井が『流石に私でも結婚は男性としたいですよ? ああでも愛人なら北上さんを選びますけどね!』とか言ってた。

 クレイジーサイコレズでも男を好きになるのは意外だな。あいつが好きになる男とか一度見てみたいよ。



 ということで現在鎮守府に戻っている最中なんだが一つ問題が発生した。

 それはこいつらが酒飲みすぎてめちゃくちゃ酔ってるという事だ。おかげさまで諭吉さんが二枚飛びました……。日本酒を普通あんなぐびぐび飲めるもんなのか? あんなに呑めるところ流石艦娘だと思う。

 今思えば艦娘って未だに謎多いよな……。一体どこからあんなに食欲がわくのか知りたい。あいつらに限界あるのか? 今度一航戦と大和型をバイキングに連れて行こう。割と出禁くらう可能性高いけど、やってみるしかない。好奇心は猫を殺すとか言うが、別に殺されてもいいや。



 おっと、話が逸れてしまった。

 とりあえずこいつらをどうにかしなきゃいけないんだよ。北上は比較的大丈夫そうだが、大井はかなり酷い。こいつろくに前に歩けてないんだが。

 タクシーなんてここ通ってないしどうしようか。肩貸しても良いけど嫌がりそうだし、困ったもんだな……。



 どうしようかずっと悩んでたら、大井がいきなり後ろから抱き着いてきた。



提督「大井、急にどうしたんだ……?」



大井「……」



提督「大井? 体調でも悪いのか?」



大井「提督、おんぶしてください~。もう歩きたくないです~」



提督「えぇ……まぁいいけど珍しいな、大井がそんな事言ってくるなんて。酒のせいか?」



大井「私でも甘えた時はあるんです~。ほらはやくはやく!」



 大井をおんぶしてみたら、まさかの胸が密着した。



 や、やっぱりこいつデカい……! やはり俺の予想は外れてなかったという事か。

 昔から俺の数少ない特技、人の胸の大きさを服越しに当てるはまだ衰えてないな。こんなのが数少ない特技なんて俺惨めだな……。だから女子に嫌われるんだよ。俺がもし心の声を一つでも漏らしたらセクハラで即憲兵行きだよ。



 ちなみにここだけの話だが、隠れ巨乳といえば比叡が特にやばい。

 大きいのは分かってたけど制服と私服じゃ全然大きさが違った。さらしどんだけきつくしてんだよ。

 まあでも姉妹の中ではやっぱり金剛が一番デカい。といっても一番年とってるから当たりまえd……寒気がしたからこの話題はもうやめよう。

 ああ、でもよくよく考えたら年は関係ないよな。だって幼いのに大きい子いるもん。誰とは言わないけどさ。最近も成長した感じがするし、はたしてあの子に限界はあるのかな?



 ……あれ?下半身に少し違和感を感じるような気が……。

 ちょ、あ、あかん! これはあかんって! バレたら死ぬ運命しかみえないぞ! あんな事考えなければ良かった……。

 個人的にはこのままの方が良いが離れさせよう。生きるのが優先だ。誰だよ殺されても良いとか言ったやつ。カッコつけるな。



提督「大井、少しだけ背中から離れてくれ」



大井「……」



提督「大井?」



 あちゃ~呑気に寝ちゃってるよこいつ……。俺の下半身がヤバいの察しろよ!!

 とりあえず困ったときの北上だな。

 かみエモ~ン。この状況を打開する案をだしてよぉ~。



提督「北k……!?」



 俺は北上に話しかけようとしたが、北上が怖いくらい真顔で到底話しかけられるような勇気は俺になかった。



 もぉ~!! なんでこいつもこんな怖い顔してるんだろうか。大井と同じくらい怖い気がする。俺もしかして今日が命日なのか?最後の晩餐がこれとか勘弁してくれよ。

 しかしこのまま放っておくにもそれはそれでまずい気がする。下半身の事情が……なんて言ってる場合じゃないな。俺の積み重ねてきたコミュ力が試されるぞこれは……。



提督「北上、どうかしたのか?」



北上「……あーごめん提督。ボーっとしてたよ。それで何かな?」



提督「いや、北上の様子が少し変だったからさ。体調不良なら言ってくれよ? 応急処置くらいなら出来るから」



北上「ありがと~提督。でもスーパー北上様はこんなのへっちゃらだよー」



提督「そうか。なら良いけど、お酒を飲む量はしっかり考えろよ? 二日酔いになったら大変だからな」



北上「ふふん♪ 艦娘はそうそう病気にかからないから大丈夫だよ」



 北上のドヤ顔かわいいなおい。

 ふう……。なんとかこの場を乗り越えたな。あんな怖い顔二度と見たくないよ。

 ここまで怖い顔をするのは大井くらいだと思っていたがそんな事はなかった。



 怖いと言ったらここ最近もみんな――特に駆逐艦が多いけど、能面のような顔をする子が多くなってきている。

 発動条件は、俺と話しているとき……だと思う。残念ながら断言は出来ない。もしかしたら他の時でも起きてる可能性があるしな。

 これは時雨の言う『症状』と関連性はあるのだろうか。いやその前にこの『症状』は何の病気の症状だ?

 答えは単純らしいが、本当に分からない。深く考えすぎなのだろうか。

 ……丁度いい感じに北上がいるし頼るか。考えれば考えるほど溝にはまってく感じがするしな。



提督「北上、一つ聞きたい事があるんだが良いか?」



北上「うん? 別に良いけど、どうしたの?」



 俺は最近のみんなの態度について北上について話した。



提督「……という事なんだ。これって何が起きてるんだ? 時雨曰く大丈夫らしいが、北上何か知ってるか?」



北上「まあ、うん。知ってるけど答えは言えないかな~」



提督「そうか……。まあそれなら自分で考えるとするよ」ショボン



北上「あ~今ならお酒のせいでヒントくらいなら言っちゃうかもな~」



 ちょろい。発動すれば感情を持ってるやつなら大抵落ちてくれる技だと思う。顔とか性格によるけど落ち込んだ姿みせれば相手は保護欲が出る。顔と性格次第だけどな!!

 山風がいい例だ。一生世話してあげたい。お父さんって呼ばれたい。娘にしたい艦娘ランキング(全俺調べ)で堂々の一位や。ちなみに二位は夕立かな。元気な所とか犬っぽい所とかそこらへん大好きだよ。三位は望月かな〜。理由はあの謎の雰囲気が好きなんだ。分かって。



提督「本当か? なら教えてくれないか?」



北上「いいよ~。ヒントは『不安定』だよ。これはもう半分答えだね~」



 どう考えても女の子の日じゃないか……。



??『君には失望したよ』



 ……え? なんか変なのが聞こえたが、気のせいだろう。失礼かもしれないが、俺はこれくらいしか思いつかない。

 だけど艦娘にそんなのあるのだろうか。そんなの聞いた事ないんだが……調べてみる価値があるかもしれない。

 もしこれが違ったらまた振り出しに戻るしどうしようかな。でも結局どの答え踏んでも対処方法がない気がする。一応接し方だけでも意識しておこう。

 そろそろ鎮守府につくから考えるのも自分の部屋に戻った時にする。今日はもう疲れた。



北上「そうそう提督」



提督「ん……? どうした?」



北上「その香水やめた方がいいよ~。なんというか甘い匂いが…。臭いって程じゃないけどさー」



提督「何故分かった……ちょっと苦手だったか?」



北上「うん。多分みんなその匂い苦手だと思う」



提督「みんな甘い食べ物は好きなのに匂いはダメなのか……分かった、もうつけるのやめとく」



北上「頼むよ~、提督」



 香水臭いのかよ。凹む。

 俺そこまで付けてないのによくわかったなこいつ。夕立並みに鼻がいいんじゃないか?とりあえずしばらくはつけない方がいいか。

 よし。ここまで来たしついでに部屋まで北上達を送ろう。大井の珍しいとこ見れたからまあ楽しかったかも?




◆◆◆




 はぁ~……。

 今さっき北上達を部屋に送り終わって自分の部屋の前に立っているんですが、また問題が起きてしまいました。

 それは俺の部屋の電気がついてる事。ドアが開けっ放しで光がもれてるのに先程気付いた。

 俺鍵をかけた記憶しかないんだが……。まさか盗撮カメラとかの犯人か?俺そこまで犯人知りたくないんだけど。

 しかし、どうやって俺の部屋に入ったんだろうか。マスターキーを出すためには俺の指紋とパスワードが必要なんだぞ。悩みをこれ以上増やすな。

 とりあえずぐずぐずしてるのもあれだから、勇気をだして入っちゃおう。もし本当に犯人だったらどうしようか迷うな……。まあ適当に叱ればいいか。



 俺はこっそりと部屋を開けた。そしてそこには――鳳翔さんが立っていた。



提督「鳳翔さん? なんで俺の部屋にいるんですか?」



鳳翔「……」



提督「……? 鳳翔さん?」



鳳翔「……」



 怖い。怖いよ。怖すぎるよ。

 真顔で俺の事見ないでほしい。大井とはまた違った怖さだ。しかも気のせいかここだけ寒い気がする。下手なホラー映画より怖い。



 これ絶対に怒ってるよな……。だって人を殺すような雰囲気だもん。この人だけは怒らしちゃいけないって着任した時から決めてたのに、なにしてんだ俺!

 謝った方が良いのだろうか?いやでも何したか分からないのに、適当に謝ったところで逆にもっと怒らせてしまう可能性があるしやめておくべきか?

 ああ考えろ俺! 今日俺は鳳翔さんに一体なにをした? まず今日会ってないな……というかここ一か月あまり会話してないから、まず何かをした自体がないか。俺は朝から夕方まで忙しいし鳳翔さんは居酒屋で夜忙しいしこればっかしはしょうがない。

 あかん。何も思い当たらない。土下座すれば許してくれるだろうか?何もしないよりかは幾分マシだろうが、さっき言った通り逆に怒らせてしまうかもしれないしな……。



鳳翔「……提督」



提督「ハイ、ナンデショウカ」



鳳翔「今日の夜は何処にいってのですか? あと口調はいつも通りで大丈夫ですよ?」



 ああ、やっぱり鳳翔さん怒ってるよ。

 一度だけ一航戦が怒られているところをみた事あるが、ここまで怒ってはいなかった。

 つまり俺は一航戦よりヤバい事をやらかしてしまったようだ。あいつらよりヤバい事したとか本当に死にたい。

 ここは本当の事を言っておくのがベストだ。俺はまだ生きていたい。



提督「町の居酒屋です」



鳳翔「誰かと一緒に行きましたか?」



提督「北上と大井と俺三人だけです」



鳳翔「……そうですか。では何故町の居酒屋に行ったのですか?」



提督「食堂が丁度混んでる時間帯で、どうせだし一緒に食べに行こうかって感じで」



鳳翔「いえ、少し質問が悪かったですね。正確に言えば、何故『私の』居酒屋に来なかったんでしょうか?」



提督「……皆がせっかく疲れを癒すところに上司がいるとやりづらいかなと思ったからです。北上と大井は俺がいてもお構いなしなので別ですけど」



鳳翔「ふふっ、優しいですね。しかし一応言っておきますがここの皆は提督が来た方が嬉しいと思いますよ? それより提督、私が怒っている理由は分かりましたでしょうか?」



 うーん。どうやら今の会話にヒントがあるらしい。

 昔大学受験の時国語が必須科目なので国語を勉強していたとき、ある国語の先生が『会話文の後にすぐ傍線の問題があったら、直前か直後の会話文が解答の一要素となる。なので選択肢から会話文の要素が入っていれば、それが答えになる』と教えられた。

 今思えばあの先生のおかげで第一志望受かった気がする。あの人には感謝せねばならない。

 まあ受かってもそんなたたない内に俺のところに軍のお偉いさんが来て『君には提督の適正がある! 軍に入ってもらえないだろうか?』とか言いながら、まさかの強制的に退学させられた。

 あれはマジでたまったもんじゃない。今までの努力が無に還るなんて発狂もんだ。

 努力した事がある人なら恐らく一回くらいはこのような体験はした事あるんじゃないだろうか。というより無いとそれはそれでまずいと思う。



 話は長くなったが答えを言おう。恐らく答えの一要素に『鳳翔さんのお店に行かなかった事』を入れれば正解なはず。まあ誰でもこう答えるか。



提督「……鳳翔さんのお店に行かないで、町の居酒屋に行った事でしょうか?」



鳳翔「流石ですね、提督。ですがそんな単純な理由では私は怒りませんよ?」



 得点としては五分五分って感じか。先生、俺第一志望受かったの良いけど、命は落としちゃったみたいです。

 くぅーん。少し自信あったから流石に気分が塞ぎます。

 もう分からんし、どうやら俺の命はここまでみたいだ。最後くらいは妹に会いたかったなあ……。



 もう諦めるしかないなと思っていた矢先、鳳翔さんが口を開いた。



鳳翔「どうやら分からないみたいですね…。裏切られて私悲しいです……」



提督「(裏切られた? 俺なんか約束を……)アッ」



鳳翔「ふふっ……どうやら思い出したみたいですね」



 あああああ‼︎

 やらかした。普通に忘れてた。

 今日鳳翔さんのところに食べに行く約束していた気がする。しかも鳳翔さんと一緒に呑むことも。

 約束したのがだいぶ前だから……いや、これは言い訳だな。言うのは惨めだからやめておこう。

 完全に俺悪いですやん。鳳翔さんがここまで怒るとはよっぽど楽しみにしていたんだろう。

 解決策はあるだろうか……。『また今度』はダメだな。約束を破られたのに『また今度』なんて言ったところで信じる人はまずいない。

 それどころかより怒らせてしまう可能性もある。これ以上怒らせたら、死ぬ運命しか見えない。マジでどうしよう……。



鳳翔「……何故忘れてたんでしょうか? 何故、私を置いて北上さんと大井さんとお食事なんて行ったんでしょうか? 私の何処かがいけなかったんでしょうか? 私はただ提督、あなたと一緒に過ごしたかっただけですよ? もしかして提督にとって私は『その程度』なのでしょうか? ……いえ、提督は優しいのでそんなあからさまな態度はやりませんね。なら他に……ああっ! なんだ簡単なことじゃないですか! “覚えていたけど”あの人たちに無理やり連れて行かれて、行けなかった事をわざわざ嘘をついて言わなかった。いえ、言えなかった。この方が自然な考え方ですね。提督、少しここで待っていてください。私たちの約束を邪魔した事を後悔させてきます……!」



提督「ちょ、ま、待ってください!」



 北上達の部屋にいこうとするのでとっさに鳳翔さんの腕を握ってしまった。



鳳翔「離してください、提督!!」



提督「離しません! とりあえず俺の話を聞いてから判断しましょう。ね?」



鳳翔「……そうですね。分かりました」



 あああどうしましょうどうしましょう!!

 考えていたら状況が悪化しました!!

 ここまで捻くれた考えを聞いたのは初めてだよ。鳳翔さんがこんな事言うなんて信じられないけど、俺の事を信じてくれてると思うと少し嬉しい。えへへへへへ。

 ってこんな所で喜んでるんじゃない俺!!鳳翔さんどうみても命を刈り取るような顔してるんだぞ!!

 ドラマとか映画ならここでイケメンが女性を抱きしめてそうだけど、ここは無難にちゃんと説明して謝ろう。ここはリアルなのだから、そんな上手くいくはずがない。



 あーあ、俺も横須賀鎮守府のあのイケメン君みたいになりたかったなあ。あれはもはやチートだ。俺でさえ惚れそうになったもん。運動、頭脳、顔、地位、性格……とりあえず全部完璧だ。出来ればここの艦娘全員を横須賀鎮守府に移動させてあげたい。そっちに居た方が艦娘として、そして女性としても幸せだと思うよ俺は。可哀想だもん俺のところにいても。あ、これ以上考えると鬱になるから考えないでおこう。



提督「先に謝っときます。すみませんでした! 普通に忘れてました! 先程も言いましたが、北上と大井と呑みに行ったのは俺が誘ったからであいつらは今回関係ありません!」



鳳翔「…………ふぅ。提督、頭を上げてください。取り乱してすみません。ありえない考えでしたね。事情は分かりました。しかし良かったです。私嫌われたかと思いましたよ?」



提督「俺が鳳翔さんの事嫌うわけないじゃないですか! 大体俺が人の事嫌うなんて特殊な理由じゃない限り嫌いませんよ?」



鳳翔「ふふっ、それなら良いんです……そう、それなら。それにしても提督が嫌う人なんて想像つきませんね……」



提督「まあ誰でもいるもんですよそりゃ。……まだ時間は余ってますね。どうですか? 少しお酒でも呑みながら雑談でも。実は丁度三日前に良いお酒をこっそり買ったんですよ。あ、これ大淀には秘密ですよ?」



 自分で言うのもあれだがよくここまで話を繋げれたな俺。あとよくあの数秒で全てを理解したな鳳翔さん。

 ……ふにゃああああ。心の中で思わず変な声が出たよ。提督人生詰んだかと思ってた。それくらい鳳翔さんの顔が怖かったよマジで。今日1日の内容濃すぎて辛い。

 この事を戒めに二度と約束事を忘れないようにしよう、うん。



 ちなみに何故お酒買ったのが秘密かというと、大淀に四日前に禁酒命令が俺には出されているからだ。だからさっき行った居酒屋ではあまり呑んでない。

 理由はこの前お酒を嗜むいつものメンバー、隼鷹、那智、足柄、千歳で俺の部屋で夜呑んでたらいつの間にか次の日の昼だった。

 起きたときに隣に大淀がいたから『時の流れって早いもんなんですねぇ!』って大淀に冗談で言ったら殴られた。そのついでに禁酒命令もでた。

 あいつらは三時間くらい怒られたらしい。普通にドンマイ……。



 とりあえずお酒の事言っちゃんたんだから出来れば鳳翔さんには『yes』か『はい』を選んでもらいたいな。

 どうだろうか……?



鳳翔「提督。いつもだったら駄目と言いますが、今回は見逃します。私は今日提督が言われた禁酒命令を破る事を黙認する前提でいましたし、それに提督のいう『良いお酒』も気になります」



 どうやら良いみたい。

 少しだけ夜更かしさせていただきます。




◆◆◆




 今日何回目か分からないけど、また同じような問題が起きた。

 鳳翔さんが酔って凄い事になってる。かくいう俺も酔っていてあまり人の事言えない。

 もう寝かせよう。俺寝たいよ。



提督「鳳翔さん? もう寝ましょう。明日も早いですから」



鳳翔「……これから鳳翔と呼んでください。それに寝たくないです」



提督「ほらそんな子供っぽい事言わないでください! 寝なきゃ明日大変ですって」



鳳翔「これから鳳翔と呼んでください。そして敬語もやめてください。そうしてくれなきゃ一生ここから動きません!」



提督「……鳳翔。早く部屋に戻って寝ようか」



鳳翔「んふふー♪ ずばり答えはノーです!」



 ウォォォオァァアーーッ‼可愛すぎやろー!!!!!!

 鳳翔さんこんなキャラじゃないでしょう。俺の中のイメージが壊れていく……まあ良い意味だけど。

 明日これ記憶に残っていたらなんとも言えない恥ずかしさが来るでしょうな……。まあ俺にとってはお得だからいいんですけどね!



鳳翔「大体ずるいんですよー。何私の事忘れて他の子たちとご飯食べに行ってるんですか! 普通嫌われたと勘違いしますよ! もし本当に嫌っていたら、私何するかわかりませんでしたよ?」



提督「いや本当にすみませんでした……。だから怖い事言わないでくだs「敬語」……言わないでくれ」



鳳翔「もう良いんです……。でも本当に次は気を付けて下さいね? ただでさえ私でも提督に嫌われたらと考えたら頭の中真っ黒に染まるんですから。もしかしたら他の艦娘はもっと……」



提督「……もっと?」



鳳翔「いえ、何でもないです。ええ、本当に……」



提督「? よく分からないのでスルーしときm……しとこう。とりあえず早く部屋に戻ろうか。ほら肩貸すから」



鳳翔「お姫様抱っこしてください。それ以外は受け付けませんよ!」



提督「……分かった。はい、身体を俺に預けて。 少しだけ揺れますよっと」



鳳翔「顔が近い……少し恥ずかしいですね、この格好は」



提督「……」



 自分の顔が赤くなっていくのを感じる。言われると意識しちゃってなんか恥ずかしい。リンゴくらいに赤くなっていなきゃいいんだけど。



鳳翔「ふふっ、提督もかわいい所ありますね……。ん?提督、香水つけてますね?」



提督「あーそうだけど、やっぱ臭いか? 北上にもそれ言われたんだが」



鳳翔「いえ、臭くはないですけど……提督はやっぱり提督の匂いが一番ですから」



提督「ん……? よく分からないけど分かった」



 途中鳳翔さんが顔を近づけてくるので恥ずかしすぎて急ぎ足になってしまったが無事に部屋に返す事に成功した。

 とりあえず自分の部屋に戻って落ち着いてから寝よう。明日は調べる事多いしな……。

 みんなおやすみ‼︎




◆◆◆




―――ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ……。



 いつもの聞きなれてしまった音が、いやというほど耳を刺激してくる。

 ……どうやら朝みたいだ。二度寝したい気分だが、そんな事したら大淀に怒られるからやらない。

 よ〜し!頑張って起きよう!



提督「ん゛~!!」



 朝伸びをしたら思わず大声が出てしまった。ちょっと恥ずかしい。

 ……あ、昨日お風呂入ってないな。入った後にいつもの朝飯を買いにコンビニでも行こう。

 


 今日も一日、頑張るぞい!




 ――鎮守府内廊下――




 改めまして、おはようございます皆さん。

 今現在朝飯の為にコンビニに行くため鎮守府の入り口を向かってます。

 別に朝飯を食堂で食べるのもありなのだが朝は混みそうだから行かないようにしている。朝くらいはゆっくりしたいよね。

 まあでも今度皆との関係が良くなってたら食べに行こうかな。ただでさえ今ある程度の艦娘に避けられてるのだから、俺が食堂に行くと食堂自体が嫌な雰囲気になる可能性があるのでそれは出来れば避けたい。まあ少し気にしすぎかもしれないが、念には念をいれとこう。



 そんな事を考えていたら、前に少しフラフラと歩いている島風が見えた。

 大丈夫だろうか?少し話かけてみよう。



提督「おはよう島風。足取りがおぼついてないが、何処か体調でも悪いのか?」



島風「……」



提督「? 大丈夫か島風」



島風「……」



 ……ああ、そういや島風にも避けられていたんだ。

 別に嫌われもいいから、とりあえず明石のところに連れて行こう。もしもの事があったら大変だ。



提督「島風? 体調不良なら明石のところに連れていくがどうする?」



 膝をかがめて島風の顔をみたが少し青白かった。

 貧血だろうか?朝は貧血気味になる人はなると聞くが艦娘はどうなのだろう。

 島風の様子を少し見よう。



島風「……提督。提督なんだよね?」



提督「ああ、勿論提督だけど」



島風「……提督!」



提督「うわ!?」



 島風はいきなり俺に抱き着いてきた。あぁ^~良い匂いなんじゃぁ^~。

 すごく密着している。もういろんな所が。朝から良いオカズできました。夜に食べようかと思います。



 まあそんなことはどうでもよくて、何故いきなり抱き着いてきたんだ? てっきり嫌われたと思ってたんだが。

 最後に島風とあったのは大体二週間前の訓練の時だったかな? あの時でもう様子が変だったから、それより前にもうかかっていたのだろう。

 ならこの二週間の間に何かがあった……んだと思う。



 少し考えてたら島風が俺の匂いを嗅いでるのに気づいた。



島風「て~とく~♡」



提督「島風? 急にどうしたんだ?」



島風「なんか急に提督の匂いを嗅ぎたくなっちゃって。それよりてーとく、おはようございまーっす!」



提督「ああ、おはよう。それより体調はどうだ? さっきまで顔が青かったけど」



島風「ん~、大丈夫ですよ。提督の匂いかげて元気になれました!」



提督「え? そんなに元気になれるような匂いなのか?」



島風「元気になるっていうより、落ち着く?ですかね。正確に言えば」



 俺の匂いを嗅げば落ち着くとか、麻薬か何かか?

 出来れば汗の匂いとかあるし嗅がれたくないんだよなあ。まあさっきお風呂入ったから今は大丈夫だろうけどさあ〜。

 あ、そういえば時雨は『匂いに弱い』って言っていたな。ならこれも、もしかしたら関連性あるんじゃなかろうか。も、もちろん忘れてなかったよ?

 ……あれ、今思ったけどもしかして昨日会った人の半分くらいが『症状』に関する可能性ないかこれ。情報不足すぎてまだなんとも言えないけど。き、気のせいと思いたい。



提督「それって喜んでいいのか? まあ元気になったのならそれはそれでいいんだけどさ」



島風「……今までごめんなさい、提督」



提督「?」



島風「提督の事、ここ最近まで避けてました」



提督「うん、知ってたよ。原因はやっぱり俺か?」



島風「ち、違います。ただ私が悩んでいただけなんです」



提督「悩んでた? 一応内容は聞かないでおくが、その悩み事は解決したのか?」



島風「うん! 時間はかかったけど、自分の中で何が起きているか分かった瞬間すぐ解決したんです! でも同時にまた一つ悩み事が出来ちゃったの」



提督「また一つ? それはなんかすごいな」



島風「そうですね。まあそれは単純にここの皆と『競争』みたいなものですから、しまかぜはそれに関しては負けませんよ?」



提督「そうか。まあ確かに島風は速いもんな。競争なら負けないだろう」



島風「……でも今回は速いだけじゃダメなの。でも頑張っちゃうんだから! そういえば提督は今から何処にいくの?」



提督「俺は今から朝飯買いにコンビニ行こうとしてたけど」



島風「だから私服なんですね。……よかったら今から一緒に食堂いきませんか?」



提督「あー……どうしようかn「提督? そこで何しているんですか?」……え?」



 突然後ろから誰かに話しかけられ後ろを振り向くと、何処から来たのか分からないが、大井がいた。



提督「ああ、なんだ大井か。おはよう。あんだけ酔ってたのによく寝坊しなかったな」



島風「おはようございます。どれだけ酔おうが普段から習慣づけておけば生活リズムはそうそう狂いませんよ。それより、そこで何していた

んですか?」



提督「さっきコンビニで朝飯買いに行こうとしていたら、ここで島風に偶然会って雑談をしていたって感じかな。丁度壁とかで死角になって見えなかったか? ほらここにいるぞ」



島風「……おはようございます」



大井「やだ、全然気付きませんでした。おはよう島風ちゃん。今日は提督と一緒に居れられるなんて珍しいわね。別に無理して提督といなくても良いのよ?」



提督「大井、お前それ俺がいるの分かって言ってるの? 流石に俺でも傷つくよ?」



島風「別に無理なんかしてないですよ。それに大井さんも私と同じような時期はあったはずですよ?」



大井「確かにありましたが、提督を避けるというそんな子供じみた行為なんてする訳ないでしょう」



提督「いや、俺にいつも悪口言ってたんだから充分お前もこどm「提督は少し黙っててくれませんか?」アッハイ」



 こいつは俺が提督だと分かっていて、こんな言い方なのか?

 確かに今の発言は空気を読んでないが、もうちょっと良い言い方あるだろ。

 あーあ、大井がツンデレだったら可愛かったのになあ!?



島風「少し提督に対しての態度を見直したらどうなんですか? しかもそればかりではなく、魚雷を提督に向けるなんてもはや解体レベルだと思いますよ」



大井「他の鎮守府だったらそうかもしれませんが、ここは違うでしょ? 提督自身がここは自由にしていいとおっしゃったんですから。それに普段持っている酸素魚雷なんて偽物よ」



 あー、確かにここは基本的自由だから自己表現も自由だよな。

 ぼのたんや霞ママ、みっちゃんなんて物凄くあたりが強いから最初なんだコイツと思っていたが、あれどう考えてもツンデレだよな。大井もちゃんと見習って?

 まあでも今ではそのツンデレ達にも避けられているんだけどね。ちょっと悲しい。つ、強がってないんだからぁ! あ、キモいですかそうですか。

 つーか普段身につけている酸素魚雷が偽物なのは薄々気付いてたけど、昨日キレた時はどうみても本物だったじゃん。一体どこから取り出したの?身体を隅々まで調べちゃうよ?



島風「でも! ……でも見ていてあまり気持ちがいいものじゃありません」



大井「あら、それはごめんなさいね。でも島風ちゃんが提督の事避けていた時、私もあまり良い気分じゃなかったわ。だからさっきあんな事言ったのよ」



島風「……その事についてはすみませんでした」



大井「ならこの話はおしまい! お互いさまってことにしましょ?」



島風「……分かりました」



 ほえ~、まるで大井がお姉さんみたいだあ。意外な一面もあるもんやなあ。

 てっきり頭の中は北上しかいないと思ってたわ。



大井「……何ですか、その顔。なんかムカつきますね。酸素魚雷でもくらいますか?」



提督「いや、大井もお姉さんみたいな一面もあったんだなあって。あともう魚雷の脅しは効かないからな」



大井「あら、偽物だけじゃなくて本物も持ってますよ? 今はしまってありますけど」



提督「すみませんでした」



大井「提督なのになんでそんなすぐ頭下げるのか疑問ですよ本当に……。ああ、あとちょっと提督と二人で話したい事あるから島風ちゃん、

少しだけ外していい?」



島風「分かりました」



大井「ありがとう。では提督こちらへ」



提督「ん~? 分かった」



 一体話したい事ってなんだろう。昨日のことかな?



大井「……ふう。ここら辺でいいですかね」



提督「それで話とはなんだ、大井」



大井「島風の事です。まあ気付いているかと思いますけど今さっきまで少し様子が変でしたよね。いきなり抱き着いたりとか匂い嗅いだりして」



提督「ああ確かにそうだが……それがどうかしたのか?」



大井「私の予想だと恐らく今後あのような子が増えると思います。駆逐艦中心に」



提督「What the f○ck!?」



大井「信じられないからって英語で表現しないでください。提督もなんとなく今後の予想をしていたのでは?」



提督「まあそりゃあなんとなくしたけどな。どうにかならないんすか大井先輩」



大井「急に先輩とかつけて姿勢を低くしないでください。あと私にも無理です」



提督「え~でも大井っち、ぜかましに私にもそういう時期があったって言ってたじゃん」



大井「そんなの話を合わせるためですよ。あと大井っちと呼んでいいのは北上さんだけです。魚雷撃ちますよ? いいですね?」



提督「ごめんって冗談だって。しかしなんで急にそんな事話にきたんだ?」



大井「一応ですよ。い ち お う! 急にあんな子が増えたら普通戸惑うじゃないですか誰でも」



提督「意外と優しいな大井って。昨日の酒でもまだ残ってるんじゃないか?」



大井「何が意外ですか! 私だってちゃんとした面もあるんですから!」



 あっ、やっぱりちょっとヤバい所あるって自覚していたのね。

 しっかし本当に変わったな大井。半年前までは俺の事をゴミクズのように見ていたの俺は覚えているぞ。

 やっぱり艦娘も成長するんすね。あとはこのままデレを見せてくれれば完璧だ。大井って何だかんだしっかりしてるから、クレイジーなところと口が悪いところを抜かせば完璧なんだよね、抜かせばだけど。変な男には捕まるなよ大井っち。



提督「まあまあ、そう怒るなって。じゃあ話はこれで終わりか? 一応まだあの時島風と話している途中だったし、コンビニにも行きたいから早く戻りたいのだが」



大井「一つあるとしたら、態度にはとことん気を付けてください。変に刺激しちゃ駄目ですよ? これで話は以上です」



提督「ん、分かった。じゃあまた何かあったら話しかけてくれ」



大井「はいっ、分かりました!」



 さっさと島風のところに戻ろう。

 コンビニ行く時間あるか微妙だなあ……。




 ――――――――




大井「ハァ……。もう出てきて良いんじゃないですか? 北上さん」



北上「お疲れ様~大井っち♪ どうだった? 朝から沢山提督と話せて」



大井「今なら単艦でサブ島沖海域を攻略出来る気がします」



北上「あはは……凄く気分が良いんだね、大井っち。あ〜、でもこれであの駆逐艦も仲間入りか〜。あまり嬉しいものではないね~」



大井「そうですね。でもまあ最終的に提督が私の傍にいれば、なんでも良いんですけどね」



北上「大井っちはまだ良い方だね。私だったら一人で独占したいと思っちゃうよ?」



大井「まあ言われてみればそれもしてみたいですけど、それだと私が一方的じゃないですか。それならじっくり依存させていって、共依存の形にした方がいいですよ。そうすれば必ず最後には私のところに来てくれますから」



北上「前言撤回。大井っち、だいぶ落ちてんじゃん。本当何時からそんな子になったの?」



大井「そんなの覚えてないですよ。それより何でこんなめんどくさい事しなきゃいけないんですか? 提督と島風ちゃんが話しているのを見てイライラしてしまって、提督の前なのに間違えて島風ちゃんに当たっちゃいましたよ。まあ提督を見たら落ち着きましたけどね」



北上「気のせいか冷たくない? まあ良いけどさ~。あとなんかそれはねー、この状況を気付かせられたら、もしかしたらあの計画が上手くいくかもしれないんだって。大井っちも知ってるでしょ? 提督がまた一般人に戻るのに半年も無い事を」



大井「ええ、それは知っていますが……。でもそれとこれは関係あるんですか? こんな事気付かせた所でずっとここに居させる事なんて出来るとは到底出来ないと思うんですけど……」



北上「まあまあ少し聞いて? 確かにそれは提督がずっとここに居させる事には繋がらないだろうね。でも絶対に提督に身体的、精神的にも影響はでるからそれを利用するの。まあ正直ちょっと気がひけるよね……」



大井「それ本当に成功するんですか? 聞いてるだけじゃどう考えても失敗に終わりそうですけど」



北上「そればっかしは私でも分からないなー。でもなんか結局成功する雰囲気はある感じはするけどねー。ほら、私たち艦娘だし?」



大井「成功したら成功したで、他の鎮守府から白い眼で見られるのは確定ですけどね……」



北上「ま、そんな当分先の事は置いといてさ。朝ごはん食べよ? もうお腹ペコペコだよ」



大井「それなら今日は私が作りますね!」



北上「間違っても変なの入れないでよ?」



大井「何言ってるんですか北上さん? 私がそんな事やるわけないじゃないですか!」



北上「……それなら良いけどさー。ならとりあえず早く部屋に戻ろうか。お姉ちゃんたちもそろそろ起きている頃だろうしね」



大井「ええ、では行きましょうか」




◆◆◆




 あれれ~?おかしいぞ~?

 島風と話していたさっきの場所に戻ったんだがまさかの島風がいない。

 ここは待つ一択だな。意外と大井と話した場所は遠かったから少し戻るのに時間がかかちゃったけど、置いていったなんて事は流石にないはず。

 


 ……ん?走る音が後ろからすr



提督「ぐっふう……!!」



 振り返えった時にはもう遅かった。

 俺に突進してきた子――どう考えても島風しかいないけど――は予想以上に速かったが、なんとか耐えきった。

 そのかわり足首がお陀仏かもしれません。この一ヶ月で何回怪我すれば良いんだよ。



提督「……島風、廊下で走っちゃいけないだろ? 今回は俺が受け止めたから良いけど、転んだら大怪我する可能性もあるんだぞ」



島風「提督!! あいつに何かされた!?」



提督「あいつって……ああ、大井か。特に何もされてないけど」 



島風「提督の事心配して探しに行ってたんだけど……そっか。良かった。何もされてなくて」



提督「あれ? 大井が言ってたこと聞いてなかったのか?」



島風「ううん。聞いてたよ」



提督「じゃあ尚更何で俺の事を探したんだ?」



島風「……」



提督「……?」



島風「それは……それ、は」グスッ



提督「あー落ち着ついてからで良いから。ほら、胸貸すぞ?」



島風「うん……」



 何が起きてんのかさっぱりわっかんねえべ。

 この数分間で島風に何か起きたようだけど、当の本人はこれだしなあ。

 泣くほどショックだった事が起きたのか、それとも俺にあえてホッとして泣いたのか、コレガワカラナイ。

 とりあえず落ち着かせるために島風の頭を撫でよう。べ、別に変な下心は持ってないぞ?

 あぁ^~髪の毛サラサラなんじゃ^~



島風「もう大丈夫です。ありがとうございます」



提督「ん、そうか。しかし一体何が起きたんだ?」



島風「……大井さんに騙されたと思ったんです」



提督「騙された? すまない。よく分からないから一から話してくれないか?」



島風「分かりました。今さっき私と大井さんで話していたじゃないですか。その時最初大井さんの目つきが異様に怖かったんです、いつもよ

り」



提督「……続けてくれ」



島風「でも、途中から急に目つきが優しくなったんです。そしてその後提督と話すことがあると言って提督達が何処かに行ったからここで待ってた時、安心していた束の間、ふとある疑問が頭の中に浮かんだんです。なんで急に優しくなったんだって。大井さんからあんな風に話しかけてきたのに、なんで急に話を切ろうとしたんだろって。……もしかして騙されたんじゃないか。話すというのは嘘で、本当は提督を私から奪うのが目的だったんじゃないかって一瞬考えてしまいました。たった一瞬、されど一瞬。そこから今まで感じた事ない感情が一気に沸きました。不安や焦り、恐怖等がごちゃ混ぜになったような……そんな感じです。自分でもその感情が怖くなって抑えるために、急いで提督を追いかけに提督達が行った方向に向かいました。でも見つかりませんでした。ああ、やっぱり速いだけじゃ駄目なんだ……って半ば諦めかけてたんですが、さっきの所に戻っているかもしれないと思って戻ったら、提督がここに居て今に至るって感じです」



 ……パニック障害か何かか?

 これは流石にヤバいんじゃないか。パニック障害って確か最終的にうつ病になるんだったっけ。うつ病……実は一回だけ俺はある事情によりなってしまったことがある。周りに助けてもらったからなんとか治ったけど、またいつか再発しそうだよなあ……。この人生がんばって楽しんでいこ。

 とりあえず一応島風の周りの艦娘に最近の島風の様子について聞いておこう。明らかにまずそうだったらすぐに艦娘博士の明石に相談だよな。



提督「……そうか、それは大変だったな。とりあえず今はもう大丈夫なのか?」



島風「はい! もう大丈夫です! 提督はこんなの聞いて気持ち悪がらないの?」



提督「気持ち悪いってのは流石に思わないな。まあ、あまり仲良くない奴だったらコイツと関わるの避けようかな?ってなるけどさ。でも島風とは仲良いからな」



島風「えー? でも大井さんの言う通り一時期私は提督の事避けたっていう酷い事したんだよ?」



提督「確かにそうかもしれないが、それは過去の事であって今の事じゃないだろ? あまり過去の事は気にするな。もう終わったことなんだし」



島風「……提督は私たち艦娘に対して優しいよね」



提督「いや、普通優しくするだろ。深海棲艦と戦える事を除けばそこら辺にいる女の子だしな」



島風「でも前の提督さんは……いや、これは言っちゃ駄目だよね」



提督「ん~? 前の提督がどういう方針でいたのか知らないけど、俺は俺のやり方でやらさせてもらう。さて、話していたらあまり時間もなくなってきたし一緒に食堂へ行こう。ああ、でも俺は制服着なきゃいけないから一度部屋戻らなきゃいけないな」



島風「ごめんなさい……提督の私服汚しちゃって。それに、元々はコンビニ行こうとしてたんでしょ?」



提督「私服は洗えばどうにかなるし、コンビニは別に行っても行かなくてもどっちでも良かったから大丈夫だ」



 そう。そんなの問題じゃない。

 むしろ問題なのは、食堂行くことだ。俺が行って雰囲気悪くなるのが予想出来る。

 朝飯食わないという手段もあるが、やっぱり朝飯食べなきゃ書類を効率的に処理出来ない。朝飯割とマジで大事よ?



島風「ねえ、提督。最後に質問していいかな?」



提督「ん? 良いけどなんだ?」



島風「提督はずっと……ずっと、ずっとここに居てくれる?」



提督「ずっと……は流石に無理かな。まあ何か起きない限りはここにいるさ」



島風「本当? その言葉信じても良いの?」



提督「信じてくれ。それしか言いようがない」



島風「なら提督、指切りげんまんしよ?」



 そういいながら島風は俺に小指を差し出してきた。



提督「分かった。ほら、やろう」



島風「ゆーびきりげーんまん、嘘ついたら針千本のーます、指切った……死んだらごめん!」



提督「死んだらごめん? どういう意味なんだ?」



島風「えへへ、死んでも約束を果たしてねって意味だよ!」



 oh……こいつ怖い事知ってるな。

 何処で一体そんな知識を覚えてきたんだ? 教えられたなら教えた奴を一時間くらい叱りたい。こんな幼い子に何教えてんだか……。

 というかさらっと信じてくれとかカッコいい言ってるけど、普通に辞める気満々なんだが。ハハ、死ぬの確定だわ。

 誰かお葬式予約しといてクレメンス。



提督「死んだら元も子もないだろ……そんな事より、さっき言った通り俺は一回自分の部屋に戻ってから食堂行くが島風はどうする? 俺に付いてくるか?」



島風「先に食堂行って、席取っておくよ! 絶対に来てね?」



提督「分かった。絶対に行くよ。じゃあ先行っててくれ」



島風「うん! じゃあまた後でね!」



 島風も行ったことだし俺もさっさと着替えて食堂に向かおう。

 なんか今日も濃い一日になりそうだな……。




 ――食堂内――



 ん~、食堂に来たけど相変わらずここ混んでるなあ。

 とりあえず島風を見つけよう。席を取っておくって言っていたから、きっと何処かの席に座っているはずだ。



足柄「あら? 提督がここに来るなんて珍しいじゃない」



那智「貴様、ここで何やっている?」



提督「……足柄と那智か、おはよう。島風を探してるんだが見なかったか?」



足柄「おはようございます、提督。それならさっきあっちの席に居たわよ」



提督「ありがとう足柄。そっち向かえばいいのね」



那智「ちょっと待て貴様。昨日酒を飲んだか? 少し貴様からアルコールの匂いがするぞ」



提督「それマジ? 結構臭う感じ?」



足柄「いや、私はそうは感じなかったけど……。那智姉さんがただアルコールの匂いに敏感なだけじゃ?」



那智「私はそこまでアルコール好きじゃないぞ」



足柄「え?」



那智「え?」



提督「……あー、話の途中ですまないが、とりあえず大淀には飲んだこと内緒にしといてくれないか? 説教だけはくらいたくない」



足柄「ええ、別に私たちは大丈夫だけど妙高姉さんが黙ってくれるかどうか微妙じゃない?」



提督「え? お前たちが言わない限り妙高にもばれないだろ」



那智「……貴様、後ろを振り返ってみろ」



提督「え? なあ、嘘だろ? 嘘と言ってくれよ」



 言われた通り後ろを振り返ってみると、いつの間にか妙高がいた。



 これはまずいぞ。非常にまずい。

 これなら大淀に説教食らった方がマシかもしれない。それくらいに妙高には説教されたくない。

 何故なら妙高は恐らく艦娘一説教が長いからだ。足柄と初風曰く怒らせたらいけない艦娘ランキングでトップ3に入るらしい。

 実際に足柄の体験談を聞いてみた所、足柄は一度だけ間違えて約束を忘れてすっぽかしてしまったらしく、その時は妙高に二時間以上怒られたと聞く。

 初風は何故か話してくれなかったけど多分史実に関係している。ごめんな、あの時配慮に欠けた発言しちゃって……。



 そういう訳で、妙高だけには説教はくらいたくない。出来れば大淀にも説教をくらいたくない。

 今日は大淀と妙高のダブル説教か?そうなったら多分俺は泣く。どうにかして言い訳を探さなければ……。



提督「……おはよう、妙高」



妙高「おはようございます。それより昨日夜にお酒飲んだらしいじゃないですか」



 ……ん? なんで夜に飲んだって知っているんだ?

 確かに飲む時間帯なんて夜しかないけど、今足柄達と話している時に『夜』なんていうキーワードは一回もだしてないぞ。なんか怪しいな……。



提督「妙高、なんで夜に飲んだなんて知っているんだ?」



妙高「提督が飲める時間帯なんて夜しかないでしょう。それより今は禁酒命令が出ているんじゃないんですか?」



提督「確かにそうだが……昨日は大切な人と飲んだんだ。その、許してくれないか?」



妙高「そうですか……大切な人ですか……!」ギリッ



 あ、あれ? なんかマズいことになっちゃったよ。

 でも、多分これはチャンスだ。頑張って話を逸らしてみよう。結果的に俺が怒られなければ良いんだからな。ゴミクズかよ俺。



提督「なんだ? 大切な人が知りたいのか?」



妙高「いえ、結構です。聞きたくないです」



提督「怒っているのか、妙高。どうしてそんなに怒っているんだ?」



妙高「怒ってませんから! もう何処かいってください!」



提督「……落ち着いたらあとで執務室に来い。そこで話し合おう。今は朝ごはんを食べる時間だからな。足柄、那智、ごめんな空気悪くして」



足柄「良いわよ別に。でも今度その代わりに私も提督の部屋に飲みに行くからね?」



那智「ずるいぞ足柄。私も飲みに行っていいか?」



提督「分かった。今度飲みに来ていいぞ。おいしい酒用意しておくから。とりあえずこの場は頼んだ」



 そう言って、島風がいる席の方向を目指す。

 どうやら今日は朝から妙高お姉さんに怒らせちゃったみたいです。二日連続女性を怒らせるとか、俺は馬鹿なのか? 変な噂たたなきゃ良いけど。

 もし噂になったらとりあえず執務室か自室に引きこもろう。いや、その時はもう提督をやめよう。どうせもうこの契約も、もうそろそろだし少し早くても大丈夫だろう。流石に元帥さんに怒られるかなぁ?



 少し歩き、足柄の言った方向の場所に来てみると、席に座っている島風がいた。そして島風は俺に気付いてたのか、俺に向かって走ってきた。



島風「提督、おっそーい! 女の子を待たせるってどういう事なの?」



提督「確かにその通りだ。ごめんな島風。待たせちゃった代わりに、あとで間宮のアイスの券あげるから許してくれないか?」



島風「本当!? 提督も一緒に食べに行こうよ!」



提督「うーん、執務が終わってたらな。ほら、とりあえず食券を買って渡しにいこう」



島風「私はもう買って待ってる状態だから、提督買いに行ってきて良いよ! 私はここで待ってるから」



提督「分かった。度々待たせてごめんな。じゃあ行ってくる」



 俺は島風を身体から離し、自動券売機がある方向へと歩きだした。

 うーん、朝はパンを食べたいけどメニューにあるかな?多分和食がしかないだろうなあ。

 ちなみに皆は朝ご飯はなに派だろうか。ちなみに朝ご飯でパンを食べる人の割合は69%、ご飯は52%くらいらしい。

 合わせたら100%超えてんじゃん!って? 多分男性と女性を合わせたんじゃないかな。俺もそこら辺はよく分からない。誰か分かったら教えてね。



 そんな事を考えていると自動券売機の前にたどり着く。

 ああ、やっぱりメニューにパンは無いのか。今日は仕方なく魚を食べよう。秋刀魚を久しぶりに食べたい気もする。



 俺は秋刀魚定食と書いてある食券を買い、渡すために間宮さんが居る方向へ向かっている途中に羽黒が歩いているのを見つけた。



 羽黒……ああ、そういや妙高達と一緒にいなかったな。久しぶりに羽黒を見た気がする。

 というよりここ最近本当に忙しくて、ほとんどの艦娘が久しぶりかもしれない。どうせだし話しかけよう。まさかこんなんでセクハラとかにはならないよな? 最近そういうの五月蝿いからなあ……。



提督「羽黒~、おはよう」



羽黒「し、司令官さん……おはようございます」



提督「随分と久しぶりに会った気がするよ。だいたい二週間くらいか?」



羽黒「正確には16日と15時間32分43秒です」



提督「ハハッ。羽黒が冗談を言うとか今日はどうしたんだ?」



羽黒「……」



提督「え? マジなの?」



羽黒「……」



 し、下を向いて動かなくなっちゃった……。

 昨日今日見てなかったから忘れてたけど、最近こういう風に急に動かなくなるんだんよ。

 俺のメンタルがボロボロになっちゃうから、これは本当にやめてほしい。普通、初見は嫌われたかと思っちゃうよ。もしかしたら本当に嫌われてるのかもね。

 とにかく、この状況をどうにかしよう。いつも通りならみんなすぐ俺から離れるけど……。



提督「羽黒? 下を向いてどうかしたのか?」



羽黒「ご、ごめんなさい!」



 羽黒は俺に小さく頭を下げて、何処かに行ってしまった。

 恐らく妙高達の所に行ったのだろう。こうなると分かっていたものの、やはりなにか精神的に来るものがある。き、気にしないで頑張っていこう!

 とりあえず改めて間宮さんの所に向かおう。



 食堂の受付に行ってみた所、案の定間宮さんが受付をしていた。



間宮「あ、提督。おはようございます」



提督「おはようございます、間宮さん。今日は秋刀魚定食でお願いできますか?」



間宮「分かりました。お時間は十分くらいかかりますので、十分後にまたここに来てください」



提督「いつもありがとうございます……ん? 目の下にクマがありますけど、昨日夜更かしでもしたんですか?」



 間宮は『へっ!?』と声をあげる

 俺がその事に気付いたのが意外だったみたいだ。



間宮「やっぱり少しありますか? 昨日少しパソコンで動画を見ていたら、いつの間にか時間が経っていたんですよね~」



提督「あるあるですね〜。一度見るとついつい色んな物を見たくなっちゃいますよね。あ、でも体調管理にはちゃんと気をつけてくださいよ?」



間宮「ふふっ♪ 体調管理はしっかりしているので大丈夫ですよ。それにもし体調不良で倒れても提督が助けてくれるでしょう?」



提督「まあ確かにそうすると思いますけど、出来ればそこまで頑張らないでくださいね? 疲れた状態で仕事なんてどう考えても効率が悪いですし、倒れたら元も子もないですよ」



間宮「提督は相変わらず優しいですね~。だから艦娘達からモテるんですよ」



 北上や鈴谷とかに言われたら皮肉とか煽りで受け取っていたかもしれないが、間宮さんならそう感じない。不思議だなあ……。



提督「どっちかっていうと、モテてるというより遊ばれてる感じですけどね」



間宮「……鈍感も相変わらずですね」ボソッ



提督「えっ……何か言いましたか?」



 何か重要な事を聞き漏らした気がする。

 そしてすごく気になる!!



間宮「いえ、何でもないですよ。では秋刀魚定食お作りしますので、少しお時間頂きますね」



提督「あ、はい。分かりました。また後で来ます」



 間宮さんいつも通り可愛かった。出来れば結婚したい。あの母性と可愛さの前では男はみな無力でしょ。

 他にも母性を持った艦娘はいるかもしれないけど、基本的に駄目な容姿をしているのでアウトだ。大体あまりずっと一緒にいると俺の性癖が狂っちゃうかもしれない。え、鳳翔さん? あれはなんかまた違う雰囲気あるじゃん……。



 そういえば噂だと艦娘と結婚出来るシステムがあるらしいけど、軍としては元一般人の俺にそんな事させたくないよなあ。大体そろそろ辞めちゃうから意味ないけどさ。くぅーん、寂しいねなんか。



 そんなくだらない事を考えてながら歩いていると、いつの間にか目の前に島風がいた。



島風「提督、私は朝ごはん取ってくるからあそこの席で待ってて。すぐ取ってくるから!」



提督「分かったが、走って転ぶんじゃないぞ?」



島風「うん、分かったよ! それじゃあ待っててね!」



 島風に指定された席の隅っこに座りうつむいて少しボーっとしてたら、急に前から声をかけられ意識を取り戻した。



阿賀野「提督さん、前の席に座ってもいい?」



提督「ん〜、阿賀野か。良いよー座って座って」



榛名「提督、私はここに座っても良いですか?」



提督「うん? ああ、榛名も座っていいよー」



 なんだこれ……。すごく珍しいメンツだな。榛名と阿賀野は姉妹達と一緒にいるのをよく見るがどうしたんだろう?



提督「なあ、今日はそれぞれ姉妹達はどうしたんだ? 俺的にはよく一緒にいるイメージがあるんだが」



阿賀野「ん~、阿賀野は今日朝起きたら妹達がぐっすり寝ててねー、今日は出撃の予定ないし起こしたら悪いかと思ってここに来ちゃった」



提督「へ~。矢矧は特にそういうとこしっかりしていたかと思ってたんだけど、寝坊なんて意外だな」



阿賀野「実は昨日妹達がぱそこん?とにらめっこしてたから、多分夜更かしをしちゃったんじゃないかな?」



提督「逆に阿賀野は夜更かしをしなかったのか。またまた意外だな」



阿賀野「基本的提督日誌書いたらすぐ寝るし、それにパソコンについてよく分からないからね。少しくらい妹達が何をやってるのか見ればよかったかも?」



 ああ、そういえばコイツ重度の機械音痴だったな。

 一応艦娘の型別に一つ一つパソコンを提供しているけど、矢矧曰く阿賀野が触った瞬間見た事ないエラーが出たらしく明石が頑張って修理したらしいが、結局丸一日かかったみたいだ。

 明石でも苦戦するって何事だよまったく。これだから機械音痴はヤバイんだよ。

 しかし、提督日誌については初耳だ。少し気になるな。



提督「提督日誌ってのは一体いつもどんな事書いてるんだ?」



阿賀野「それは、乙女の秘密だよ☆ ああ、でも名前の通り少なくとも提督の事についてだよ」



提督「ふーん? なんか怖いなそれ」



阿賀野「大丈夫だよ提督さん! 天地神明に誓って提督さんの悪口なんて書いてないから!」



提督「お、おう。それなら別に良いけど。榛名はなんで今日一人なんだ?」



榛名「榛名も同じで昨日お姉さま達と霧島が夜遅くまでパソコンを見てたらしく、今日案の定寝坊したみたいです……。それで先に食べに行ってて良いと言われて、一人でここに来たんです」



 なんか、違和感を感じるな……。


提督「ん~? 間宮さんも昨日パソコンで何か見ていたらしいんだよね。もしかして同じの見てたのかな?」



榛名「榛名の勘だと同じだと思います」



阿賀野「阿賀野も同じだと思う」



提督「やっぱそうか……ちなみに榛名は何しているか見たのか?」



榛名「えっと……あまりここでは言えない事なので……」



提督「あ、もしかしてそういうヤバい系なやつなの?」



榛名「いえ、提督が想像しているのと多分違うと思います。ただ個人的に見ていてあまり良い気分じゃないものだったので……」



提督「えっと……なんかごめん……。もうあまりそれについては深く探らないで置くよ」



 やらかしたぁぁぁー!!

 発言には気をつけろってさっき言われてたじゃん。猿でも学習出来るのに俺ときたら……。やっぱ俺って提督向いてないわ、うん。はよ辞めたい。



島風「提督! 朝ごはん取ってきた……よ……?」



提督「おー、島風か。意外と早かったな」



島風「……提督? なんでこの席に榛名さん達が居るの?」



提督「いやなんでって……なんでだろうなあ? 成り行きって感じが一番しっくりくるかな。とりあえずそろそろ時間だし俺も取ってくる

わ〜」



島風「う、うん。わかった」




――――




島風「なんでここにいるんですか? せっかく提督と二人きりでいれると思ったのに……!」



榛名「それは提督が食堂にいるからですよ。要するにたまたまです。ああ、でもどちらにせよ今日あなたに伝えたい事があるんでした」



島風「ならそれを言って早くここから離れてくれませんか?」



榛名「……あまり調子に乗らないでください。榛名だって提督と二人きりでいたいんですから……!!」



阿賀野「まあまあ二人とも落ち着いて。喧嘩している所を提督さんに見られたら、提督さんきっと悲しむと思うよ。ここは仲良くしよう? ね?」



榛名「……それもそうですね。ここは仲良くしましょう」



島風「……分かりました」



阿賀野「じゃあやるべき事やっとかなきゃね。そこら辺は榛名さんよろしく!」



榛名「はい。島風ちゃん、あなたはここ数週間で色々な事に気付いたと思いますが、ここで残念ながらあまり良くないニュースがあります」



島風「……それは?」



榛名「それは……提督があともう少しで辞めてしまう事です」



島風「え、えぇ? そ、それって本当なんですか!? あの言葉は嘘だったの……?」



榛名「? 何か提督と約束事あったみたいですが、残念ながらこれは本当です。しかし私はこれだけを伝えに来たのかっていったらそうではなく、ここから本題なのです」



島風「ま、まだ何かあるんですか?」



榛名「提督がここ辞めるのを阻止する、またはここに縛りつける計画を私たちは密かに練っていましたが、あまり理に適っているような内容ではありませんでした。しかしここ数か月で嬉しい事に……いえ、榛名にとっては嬉しい事ではないですけど、島風ちゃんみたいになった子が増えてくれたおかげで人手も増えて計画もようやく無理のない形になりましたが、まだ何か足りないんですよ」



島風「つまり、どういう事なんですか?」



榛名「つまり島風ちゃんもこちら側になって、計画に参加してくれませんか?と言いたかったんです。勿論参加してくれますよね?」



島風「それは……勿論参加しますよ。提督がここを辞めちゃうなんて嫌ですから」



榛名「そういってくれると思いました。早速今日の夜に会議があるので、場所は後程伝えますね」



阿賀野「そういえば時雨ちゃんが明日提督とデートだから今日出席しないって言ってたよ。羨ましいよね~本当に……」



榛名「それは昨日お聞きました。本当に、全くもって、羨ましいですよ……」ギリッ



島風「ち、ちなみに誰が計画に参加しているんですか?」



阿賀野「うぅーん、名前挙げるとキリがないけど最近だと参加してくれたのは山城さんだね」



島風「あ、それってもしかしてあの大規模作戦の時に……?」



阿賀野「うん、そうだよ。まあ、あんな風に助けられたら誰でも惚れちゃうよね。……あの時に黙って解体しておけば良かった。そうすれば提督を馬鹿にする奴は一人消えるし、資材は増えて潤うから提督さんに褒めてもらえるしで一石二鳥だったのに……!!」



島風「……」




――――



提督「……?」



 秋刀魚定食を間宮さんから受け取り、席に戻ろうと歩いている時に誰かがこちらを見つめているのにふと気付いた。



 ふむ、いったい誰なんだろうか。感覚的に左斜め後ろだと思うけど、勘違いだったら恥ずかしいな。



羽黒「ッ……!?」



 俺が振り向いた事により動揺したのは、羽黒だった。



 何故動揺したのかは知らない。俺の予想では『うわっ、提督キモッ!』とか思いながら見ていたのだと思う。

 うん、やっぱり自分で言うとなんかくるもんがあるな。龍驤はいつもこんな思いをしていたのだろうか。ごめんな龍驤、もういじるの少しだけ止めるよ。

 とりあえず立ち止まるのもあれだし、歩くのを再開しよう。




 ……ん〜? 遠くから見てるから気のせいかもしれないけど、島風が凄く気まずそうな顔をしているような気がする。まあ珍しいメンツだし仕方ないかもな。

 皆も一回くらいはこんな経験をした事はないだろうか。誰かがいればその人と話す事は出来るけど、いざ二人きりになったら会話が途切れ途切れになっちゃう事。まあこういうのは大抵コミュ障が原因なんだけどさ。

 でも島風はコミュ障というより、どっちかと言えば話かける勇気というのが足りないんだろうな。まあそれは本人が一番分かってる事だし、天津風曰く直そうと努力もしているらしい。島風がんばれ♡ がんばれ♡



島風「て、提督!」



提督「みんなごめんな、度々待たせちゃって。ほら、早速いただきますしようか」



島風「うん!」



「「「「いただきます」」」」



 さて、今日の朝食はいつもと違ってまさかの秋刀魚定食になりました。

 時期的に少し遅いと思うんだけど、まあそんなのいちいち気にしたら負けだよな。漁師さん取ってきてくれてあざっす!!



 あ~美味すぎる。嫌な事あっても飯と酒で忘れられる時代で良かった。まあ一応今は戦時中だが食料危機まで陥るような悲惨な状態じゃないし、今の所こちらが優勢だからな。

 まあ俺が着任した時は丁度AL/MI作戦中で、まさかのこちら側が劣勢で負けそうだったんだけどさ。あれ負けていたら多分俺は今ここに居なかったと思う。それらを含めて艦娘たちには本当に感謝しなければならない。謝謝茄子^~。



阿賀野「提督さんって、相変わらず幸せそうにご飯食べるよね。すごく幸せオーラ出てるよ」



提督「いや〜、美味しいもの食べると実際幸せな気分にならないか? まあ流石に個人によるか」



阿賀野「ううん、阿賀野も美味しいもの食べると幸せな気分になるよ。特に甘いもの食べる時とかね!」



 どこか嬉しそうに語る阿賀野。



提督「なんか阿賀野がだらしなく口元にクリーム付けてるのが想像出来るな……」



阿賀野「ちょ、それどういう事なの提督さん」



提督「だらし姉ぇって事だよ」



阿賀野「な、なんでその言葉を知ってるの!?」



提督「なんでもなにも、結構有名だぞそれ」



阿賀野「そ、そんな~。他の人にも知られていたなんて……」



 だらしないと言われている阿賀野だが、決して無能ではない。

 一応阿賀野の名誉の為に言っておくが、与えた任務は完璧にこなしてくれるし本人曰く書類作業も得意らしい。ただ少しだらしない所が目立ってるだけだ。そう信じたい。



島風「て、提督」



提督「うん? どうした島風」



島風「はい、あーん♡」



 そういって、島風が笑顔で俺に鮭を差し出してきた。



 どうやら島風が選んだのは鮭定食みたいだ。

 間接キスになると思うけど、まあ大丈夫だろう。本人が差し出してきたんだし、大丈夫っていうサインだろう、多分恐らくきっと。

 ちょっと思ったけど、この状況ってなんか犯罪チックがある感じがしないか。これがあの見た目が幼い子が多いと有名な朝潮型だったら尚更だっただろう。提督の間で朝潮型はガチと言われる理由がなんとなく分かったよ……。



提督「ん……」



島風「どう? 美味しい?」



提督「美味しいよ。ありがとな、くれて」



島風「提督のもちょうだい!」



提督「ああ、いいぞ。ほら、あーん」



 うーん、この感じはまるで親子だな。島風の服がまともだったら第三者からでも微笑ましい図だっただろうに。

 ここで一つ疑問なのだが、一体誰が艦娘の制服を決めているんだろうか。国?軍?それとも艦娘本人?

 まあ流石に艦娘本人はないだろう。だって島風が自分からこのヤバい制服を選んでるとするのならば、島風痴女説が提唱出来てしまう。それは色々とアカンってマジで……。



提督「どうだ? 美味しいか?」



島風「うん! とっても美味しいよ!」



提督「そうか~。それは良かったな~!」



 うぉぉ……これは何かに目覚めそうだ……!

 やっぱ可愛いは正義なんやなって改めて実感したわ。艦娘達が美少女だからこの仕事やっていけたと思う。これがもし男ばっかりだったら辛かったな。一体何を糧にして働けというのだろうか。



島風「えへへ、これじゃあまるで恋人同士みたいだね!」



 島風は頬を赤く染めてその言葉を発した瞬間に、ガチャンとガラスの割れる音が食堂内に響く。



島風「オゥッ!?」



提督「うぇ?」



 音がした方向を思わず向いてみると、榛名がどうやらコップを割ってしまったみたいだ。



提督「榛名……? 大丈夫か?」



榛名「榛名は大丈夫です!」



提督「でも手から血が出てるぞ?」



榛名「榛名は大丈夫です!」



提督「えっと、大丈夫なのは分かったから少し手を見せて」



 榛名の手のひらを見てみると、想像以上に深く傷付いていた。

 これもしかして力を入れすぎて割ってしまった感じなのか。なんで割ってしまったのかの理由は後で聞くとして、とりあえず阿賀野の方も見ておこう。



提督「榛名、このまま放置するのはまずいからすぐに医務室へ行こう。阿賀野、お前は怪我はないか?」



阿賀野「……」



提督「阿賀野? 聞いてるのか?」



阿賀野「……はい、あーん♡」



提督「あ、阿賀野?」



阿賀野「はい、あーん♡」



 ニコニコ微笑みながら阿賀野は俺に卵焼きを向けてきて、思わず戸惑ってしまった。

 阿賀野ってこんな空気読めない子だったか? いや、多分今日は阿賀野型全員が調子悪いのだろう。そうじゃなきゃ矢矧も能代も寝坊しないだろうし。そんな日もあるよな、仕方ない仕方ない。



提督「阿賀野、疲れているのか? お前らしくないぞ」



阿賀野「はい、あーん♡」



 ど、どうしよう。素直に受け取るべきか?阿賀野の声音が暗くてすっごく怖いんだけど。

 俺の推測だが榛名がコップを割った理由って恐らくさっきの島風の行動と発言だろうし、というよりまず俺にはそれしか思いつかない。とりあえず消去法で行動を選択しよう。

 この状況、阿賀野の卵焼きを受け取ったらまず榛名が恐らくヤバくなる。かといって受け取らなかったら阿賀野が取る次のアクションが全く予想がつかない。あれ?取るべき行動少なすぎない?



 う〜ん。ここでベストな解決策は一体なんだろうか……。『俺実は卵焼き嫌いなんだよね』は確実にアウトだ。理由は瑞鳳。じゃあもう一つの解決策は……



提督「阿賀野……」



阿賀野「食べてくれる、よね?」



提督「うっ……。そ、その……俺は阿賀野の手作りご飯であーんされたい、な」



 これだ。これしか思いつかなかった。

 この短時間でよく思いついた俺を褒めてほしい。これは智将だよ。島風はどうなのって?ちょっと良く分からないですね……。



阿賀野「うん……うん! 今度阿賀野が提督さんのためだけにご飯作ってあげるね♪」



提督「是非そうしてくれ。じゃあ榛名、医務室に……榛名?」



 榛名の方に向いてみると榛名は目を黒く濁らせながら、俺を見つめていた。



提督「榛名? 一緒に医務室に行かないか?」



榛名「……ええ、そうですね。一緒に行きましょうか」ニコッ



提督「え? そ、そうだな。島風、頼むが俺のやつ片づけてくれないか? 間宮さんにはあとで俺が謝っとくから」



島風「わ、分かった!」



提督「ありがとな島風。じゃあ榛名、行こうか」



 やっべえ。これ選択ミスったかも……。




◆◆◆




提督「明石、いるかー?」



 医務室に入って明石を呼んでみたが明石がいる様子はなく、どうやら俺が榛名の治療をしなければいけないみたいだ。



提督「あー、明石いないみたいだし俺が手当するから傷口を水で軽く洗ってそこの椅子に座ってて」



榛名「……はい」



 どこに応急セットがあるのか分からず棚の前に行き何があるか開けてみると、そこにはちゃんと医務室らしく色々の衛生材料があった。



 ガラスで傷付けたから、一応ピンセットと消毒液、あとはガーゼと包帯、適当な布をを持っていけばいいか。

 こういう怪我って入渠とか高速修復材使って治すべきなのかなあ。そこら辺は明石に任せっきりだからよく分かんない。あいつにはよく迷惑かけられているけど、同時によく助けられていたのを実感するね。でも迷惑の影響が大きすぎて感謝する気にはならないけどな!



 榛名が座っている椅子の前に行き、俺も椅子に座る。



提督「はい、手を出してくれないか?」



 そっと榛名は手を出してくれたので、傷口を見てみる。



 うーん。ガラスは刺さってないけど、少し傷が深い気がする。これはもう入渠した方が良いかもしれないな。そっちの方が早いし確実だしね。



提督「榛名、これは入渠してk「嫌です」……えっ?」



榛名「嫌です。提督が治してください」



提督「でもこれ入渠した方が早いやつだが……?」



榛名「それでもです」



 なんだなんだ……?

 榛名は反抗期にでも入ったのか?


提督「……じゃあ止血するから、その後ちゃんとすぐに入渠しなよ」



 既に榛名の手は水で洗われているので、患部を布で強く圧迫し、出血が少なくなったら包帯で固定する。

 確かこれで合ってる気がする。保健の授業で直接圧迫止血法や緊縛止血法とか習ったよね。すごく懐かしい。



提督「はい、これで終わりかな。じゃあ俺は執務室に戻るから、榛名はあとでちゃんと入渠しろよ?」



 ふげぇ〜。朝から疲れたなあ。

 結局全然朝ごはん食べれなかったのは痛い……これは痛い。昼まで集中出来るかなあ。

 でもどっかの番組で聞いた話によると、お腹すいた方が集中出来るって科学的に証明されてるらしいね。最近の科学はすごいね。



榛名「……提督」



提督「ん? どうかしたか?」



榛名「少しの間お話しでもしませんか?」



提督「お話し? 勿論、全然良いぞ」



榛名「ありがとうございます。少し長話になりそうなので、あそこで話しませんか?」



 榛名が指し示した方向はまさかのベッドの上だった。



提督「ベッドの上? なんであそこなんだ?」



榛名「そこに座った方が、ふかふかな素材で楽じゃないですか?」



提督「いやまあ、別にどこでもいいんだけどさ……じゃあそこで話し合おっか」



 そういって窓側のベッドの上に座る。



提督「それで、話って何?」



榛名「……提督はあのような、小さな子が好きなのですか?」



提督「あのような子……ああ、島風のことか?」



榛名「そうです。提督はああいう系が好きなのですか?」



提督「いや、そんな事はない。絶対にそんなことないからな!」



 ちょ、マジで危なかったああああ!!

 あともう少しでロリコン認定される所だったよ!! ロリコンは長門だけで充分ってそれ一番言われてるから。

 あーあ、そういや俺の所にも長門来て欲しいなあ。長門めっちゃカッコよくない? 初めて会った時は一目惚れしそうになったよ。資材は結構余裕あるから今日一回くらい建造しちゃおっかな?



榛名「なら、提督の女性好みはなんですか?」



提督「女性の好み? そうだなあ……」



 こういう時はどう答えればいいんだ……?

 素直に俺の好み言っちゃうか?でもそれを言ったら引かれそうだもんな……。ちなみに俺の好みは巨乳系とお姉さん系かな。よって間宮さんは神。

 陸奥も正直好みなんだけど実はうちの鎮守府にはいないんだよね。うん、今日絶対に建造しよ。大淀に怒られるかな?まあ大丈夫でしょ。いけるいける。



榛名「提督?」



提督「ごめんごめん。ちょっと悩んでた」



 何故か榛名は少し怒ってるから早く質問に答えねば。

 う〜ん。こういう時は適当に内面重視アピールにしておこうかな。外見がいくら良くても中身が悪かったら嫌だからね。でも結局は外見が物凄く悪かったらもう中身を見る気さえ起きないんだけどさ。みんなも身だしなみくらいはしっかり整えようね!



提督「そうだな……素直に感謝と謝罪を言える子とかかな?」



榛名「……では、今の榛名に欠けているところはなんですか?」



提督「欠けているところ? 俺としては別にないと思うけど」



 榛名に限った話ではなく、ここの艦娘全員が殆ど完璧だと思う。少しおかしな事をするのは確かにあるかと思うが、それは個性として受け止められるレベルだしな。

 『艦娘は人か兵器か』という論争があるが、ここまでくるともはや人の枠に入れる方が失礼な気がして来た。結局どちらが正解なんだろうねぇ。

 まあ、でもまずそういうのは俺たち人間が決めるんじゃなくて、本人達が決めるべきなんじゃないかな。だいたい、艦娘本人達の意思を無視して論争するのはちょっとおかしい。おかしくない?



榛名「……られる……!」



提督「へ?」



榛名「この榛名、提督のためだったらなんでもしますよ!? 身長が低いのがお好みなら骨を削りますし、胸が小さいのがお好みなら胸を切

り取ってもいいんですよ!?」



提督「は、榛名? 急にどうしたんだ……? とりあえず落ち着くんだ」



榛名「そんなの無理に決まってるじゃないですか……!」



 震えた声で榛名はそう言って、俺の事を押し倒し馬乗りになった

 さっきの嫌な予感、的中しちゃったかもしれない……!



榛名「天津風だって、時雨だって、島風だって、みんなずるいですよ……」



提督「あの、榛名しゃん……?」



榛名「えへへ……そうですよね。どうせ捨てられるなら、今ここで何しても変わりませんよね。すみません、提督。最後まで迷惑をかけてしまって」



 そう言って、榛名は静かに俺の首を軽く絞めてきた。



提督「ちょ、ちょっと待て! 捨てられる? 俺は榛名の事を捨てようとは一度も考えた事ないんだが」



榛名「なら、なんで榛名の事を無視したのでしょうか……?」



 無視、捨てられる……? 

 ……あ、もしかしたら、ようやく話が見えてきたかもしれない。

 とりあえずこの状況を整理しよう。まずこの一ヶ月榛名と碌に話してない事。そして今日食堂で榛名とたまたま会うがあまり話してない事。しかも榛名の前で島風とあんな事をしちゃったもんなあ。だから無視されてると勘違いして俺の好みとか聞いてきたのか。

 確かにそうすれば全部話が合いそうだ。勘違いした理由は予想だけど、俺が『榛名には欠点がないよ』って言った事を榛名は『榛名に欠点があろうがなかろうが、もう興味がない』という意味で受け取ったのかな?極端かもしれないけど、ニュアンスはこんな感じだと思う。

 本当は何故そう勘違いしたか聞きたいけど、ちょっとそれは怖いから無理。だって今ちょうど首に手置かれてるんだもん。絶対にヤバイってこれ。死ぬところだった……俺何もしてないのに。

 そういえば阿賀野ともそこまで話してない気がするんだけど……あ、だから榛名がコップを割った時に様子がおかしかったのか。後で会いに行って謝っておこう。



提督「別に無視をしていたわけじゃないんだ……勘違いさせてごめん」



榛名「ほ、本当ですか? 榛名の事捨てませんか?」



提督「大丈夫、本当に捨てない」



榛名「……そうですか。すみません、勘違いしてしまって」



 榛名は俺の首から手を離し、そしてまさかの俺に被さってきた。



 なにこれぇぇぇ!しゅごいぃぃぃ!!匂いも胸の柔らかさもしゅごいのぉぉぉぉ!

 やっべえ。これヤバイって。すごいって。幸せでしんじゃうのぉぉぉ!



榛名「提督……。す、少しだけ強く抱きしめてくれませんか……?」



提督「分かった」キリッ



 しょ、正気に戻れ俺……! どう考えてもここで人生を終わらせちゃダメだろ……!



 他の事をすれば気が紛れるかと思い、とりあえず時計を見たらまさかの五分しか経っていなかった。

 これがまさしく運命の五分間ってやつじゃないかな?使用方法あってるか知らないけど。



 ……え?なんでこんな所で変な視線を感じるんだ?



 何処から見られているのか探してみたら、窓の外から神通が濁った瞳でこちらを凝視しているのに気付いた。



 ふぇぇ……怖いよぉ〜。

 もう色んな事が同時に起きすぎてテンションおかしくなるわ!! あえず榛名を退かせなきゃ。



提督「榛名、ちょっと今日はここまでにしよう」



 呼びかけても反応はなく、むしろ変な返答が帰ってきた。



榛名「もう少し……お願い出来ますか?」



提督「仕方ないなあ!」



 何が仕方ないだよ!!馬鹿だろ俺!!どうすんだよこの状況!!



 俺が迷っている間に神通は艤装を展開し、窓を割って医務室に侵入してきた。



神通「今すぐ提督から離れろ!!」



 あ、終わったわ。



提督「神通……これは誤解だ」



神通「大丈夫ですよ、提督。全部分かっていますから」



提督「ほ、本当か? なら艤装をしまって欲しいんだが」



神通「提督……残念ながら私では艤装なしで艦娘を殺すのは難しいです。力不足ですみません……」



提督「全然分かってないじゃん!! 別に神通が思ってるような事はないから。とりあえず艤装を解除して待ってて」



神通「……了解しました」



 なんでこんな漫才みたいな事やらなきゃいけないんだよ。漫才にしては内容はすごくグロいけどさ。榛名を殺すとかどういう勘違いをすればそんな発言出来るんだ?ツッコミどころがありすぎる。

 それより肝心の本人、榛名がさっきから何も反応がないのがものすごく怖い。これ、大丈夫なの?大丈夫な榛名なの?



提督「榛名」



榛名「ふぁぁ……♡ はっ!? ど、どうしましたか?」



 良かった。反応してくれたし、これは大丈夫な榛名だな。



提督「神通がいるから、離れて。完全に誤解されてるよ」



榛名「別に誤解されても榛名は大丈夫ですよ?」



提督「え?」



榛名「私は提督……あなたが誰であっても、受け入れる覚悟があります。提督は嫌……ですか?」



提督「榛名……」



 えっ、何この雰囲気。

 ただ俺から離れて欲しいだけなんだけど。



神通「……榛名さん。そんなのどうでも良いので、いい加減提督から離れてください。提督が困っているでしょう」



 そう言われた瞬間、榛名は乙女な顔から怖い顔になり、俺から離れて神通の方に近づく。

 俺は嫌な予感がしたので起き上がり榛名達を止めに入る。



榛名「今、『そんなのどうでも良いので』と言いましたよね。どういう意味でそう言ったのでしょうか?」



提督「お前らやめろって」



神通「そのままの意味です。そんなつまらない事で提督を困らせるなんて、提督が可哀想ですよ?」



提督「ねえ、聞いてる?」



榛名「つまらない事、ですか……」



神通「ええ、つまらない事です」



提督「おーい」



榛名「……」



神通「……」



提督「えぇ……」



 お互い、キッと殺気を孕んだ視線で睨み続けあう。それによりここの部屋が張り詰めた空気になるのを感じる。



提督「……」



榛名「……」



神通「……」



 能面のような表情でお互いを見合って沈黙する二人。



 これ、どうすればええの?

 神通は何か勘違いしてるし、榛名は煽られて怒ってるし……俺が原因なのは明白だよなあ。俺いい加減に死ねよって感じ。

 俺ができる事……止めに入ったけど無視られたし、逆に攻めちゃう?こうなったらもう仕方ないよね。喧嘩なんてみたくないもん。しかも女性同士が喧嘩するとね……ちょっとめんどくさいよね。



提督「おい」



 敢えて怒気を孕んだ声を挙げる。神通と榛名がピクリと肩をあげ、俺の方に目を向ける。



提督「お前ら俺が言っている意味がわからなかったのか? やめろ、そう言ったはずだぞ」



 間髪いれず,気分を害したという体裁を装い,毒が潜む言葉を吐く。



提督「お前ら分かって無視していただろ。最悪の気分だ。不愉快だよ本当に」



 神通は何が起きたのか分からない顔をし、榛名は苦笑いしていた。



 火に油を注ぐような発言だが、彼女たちの反応を見てみれば大丈夫のはずだ。



神通「ち、違います……私、そんなつもりでは『黙れ。言い訳なんて聞きたくない』……」



 ごめん神通……これくらい怒らなきゃ提督として駄目なんだよ。



提督「あの、提督『榛名、お前もだ。喋るな。これ以上不快にさせるつもりか?』……」



 俺もこれが少し理不尽なのは分かってるけど軍だから仕方ないよね……中学とか高校で理不尽に怒られる理由ってそういうしっかりとした人格をつける為とかだと思うよ。知らんけど。

 まあマジで意味分からない理由で怒られたら少しくらい反抗していいと思うよ。正確に物事を判断する……つまり客観的に見る能力も重要だと思う。



神通「て、提督……?」



提督「なんだ、もしかして俺に反抗するつもりなのか神通」



神通「そんなわけでは……私はただ提督を助けようとしただけです……」



 今にも泣きそうな表情になる神通。


 ざ、罪悪感が……。



提督「それで榛名を煽って良い理由になるのか? もう少し考えてから発言するべきだ。だいたい俺は最初、待ってろって言ったよな? 待つことさえ出来ないのか」



神通「……その通りです。すみません……」



 俯き,軽く握った手の指先をあてどなく触れ合わせる神通。

 それに対し榛名は口を空けたまま、焦点を失ったような空虚の眼差しをこちらに向けている



 さ、流石にやりすぎたかな?ここまで暗い雰囲気になるとは思わなかったんだけど。今すぐこの雰囲気を変えなきゃ。



提督「まあ、その、なんだ……二人とも人の話をしっかり聞くべきだ。個人的な反省としては、神通は勘違いしたのはまあ仕方ないとしても、榛名を煽るのは駄目な行動だ。榛名も煽られてすぐ怒るんじゃなく、状況を考えて神通を冷静に対処するべきだった。そうじゃないか?」



神通「はい……」



榛名「……」



提督「……俺も少し言いすぎた。すまなかったな、神通、榛名」



神通「……」



榛名「……」



 明らかにやりすぎたわ……。マジでどうしよう……。

 榛名は正直どうにか出来そうだけど、神通がな……まあなんとかなるか。大丈夫大丈夫。



提督「……榛名」



 呆然としている榛名を引き寄せ、強く抱きしめる。そして右手でサラサラの髪の毛を梳う。


 こっちは多分さっきの続きで許してくれる、はず。



榛名「……!」