2018-04-27 07:38:24 更新

概要

とある訳ありの提督。そして彼の初期艦である叢雲。2人が鎮守府にて織りなす、ちょっと心悲しい物語。

オリジナル設定ありの若干シリアス目なSSです。
(また、若干、叢雲の性格が変わっています。)


前書き

とある訳ありの男。彼が妖精を見る事が出来る数少ない人間である事が判明した途端、彼の人生は全く別の物へと変わってしまった。

彼は【提督】という役割を与えられ、初期艦の叢雲ら艦娘達を率いて、深海棲艦へと立ち向かう事となった。
しかし、彼には深い闇の過去があった・・・。




ーーー 1 ーーー



憲兵「さぁ、今日からここが、貴様の仕事場だ」


俺「・・・お務先ね・・・」


憲兵「けっ、何でてめーが【提督】になったんだが知らねーがよ、ま、精々頑張るんだな」


俺「・・・」




俺は、小舟を降りると、憲兵に左右を固められた状態で、とある小島の港に隣接した、とある施設の入口前に立った。


その施設は、分厚いコンクリートの高い塀で囲まれ、また頑丈な鉄の扉で閉ざされていた。


また、その小島は、対岸の港からは優に10kmはあり、船無しでは、当然この島から出る事は出来ず、また、この島へ来る事も出来ない。


ヘリがあれば、もしかしたら行き来する事が可能なのかもしれないが、この島はほとんどが山のようで、どう見てもヘリの発着可能な平地は見当たらない。


そして、憲兵の1人に、入れとばかりに顎をしゃくられた。


俺「こほっ、こほっ・・・っと、あんたらは、この先には入らないのか?」


憲兵「ん? 風邪か?・・・まぁいい、その施設には【提督】となった人間しか入れないんだとよ」


憲兵「それに、俺たちの任務は、貴様をここまで連れてくるってだけだからな。これで俺たちは帰るぜ。因みに、この島にはボートも含め、船の類は無いからな。逃げようにも、逃げられないぜ。まぁ、泳いで渡れない事も無いだろうが、フカの餌にでもなるのが落ちだろうよ」


俺をここまで連れてきた憲兵達は、俺にそう言い残すと、乗ってきた小舟で、対岸へと戻って行った。



ーーーーー



俺はため息をつくと、その施設の扉を叩いた。


コンコンという金属の音が響くと、扉はギギギという軋み音を立てて、開いた。


開いた先には、誰も居ない。しかし、足元を見ると、1人の小さな人の形をした何か・・・妖精・・・が、こちらに向かってVサインをしていた。


俺→提督「よぉ、来てやったぜ」


妖精「」ニコニコ


提督「それじゃ、案内してくれよ」


妖精「」テマネキ


こうして、俺はその施設・・・鎮守府・・・へと足を踏み入れた。




しばらく妖精に先導されて、鬱蒼とした木々の中を縫うようにして続いている細い小径を歩いて行くと、一転、蒼い海が広がる港へと出た。どうやらここは、小島の反対側、丁度、陸側からは見えない位置にあるようだった。


提督「おいおい、こっちにも港があるのかよ。だったら、こっちに小舟を着けてくれりゃ良かったのに」


俺がそう愚痴ると、妖精はブンブンと首を振り、更にあっちと指を差した。


妖精が指差す方向には、レンガ造りの2階建ての建造物があり、またその奥には更に何棟かの建物があるようだった。


提督「ん? そのレンガ造りの建物へ行けと?」


妖精「」ウンウン


俺の質問に、妖精は首を縦に振ると、そのまま建物へと向かった。




そして、妖精に連れられて、レンガ造りの建物、その2階へと上がると、妖精は1つの部屋を指した。


提督「この部屋か?」


妖精「」ウンウン


妖精が指した部屋には、【執務室】というプレートが掲げてあり、どうやらこの部屋が、俺の新しい仕事場のようだった。


コンコンと軽く扉をノックし、ガチャという音と共に扉を開けた。


その部屋の中央奥には、どっしりとした執務机と頑丈な椅子があり、壁沿いには天井までの本棚がいくつも設置されていた。


部屋は全体的に古びており、調度類も古いものばかりだった。しかし、そのほとんどが、相当良いものだったのか、何十年と経った今でも、まだ十分使えそうな物ばかりだった。


そして、その執務机の脇には、20歳前後と思われる、眼鏡を掛けたストレートロングの女性が立っていた。


???「お待ちしておりました、【提督】」


その女性は、入って来た俺に、そう言って来た。


提督「??? あんたは誰だ?」


大淀「失礼しました。私は大本営直属の大淀と申します。提督に、現状の説明をする為に、こちらに参りました」


提督「あっ、そっ」


俺はそう言うと、大淀とかいう女性の脇を抜け、部屋の奥にあった椅子へと座った。


流石に、クッションの類は新しいものに変えられていたが、木製の椅子そのものは、かなりの物のようだ。装飾はほとんど無いが、とてつもなく頑丈で、相当高級な木材を使用しているようだった。


提督「こっ・・・う、うん。 で? どうすりゃいいんだ?」


俺の乱暴な言葉遣いにも関わらず、その大淀という娘は、俺に丁寧に説明した。


ここが、海軍の旧士官学校であった事、これから戦う深海棲艦とはどういう存在なのか(まぁ、これについては、大淀もほとんど知らないらしかったが)、その深海棲艦と戦う艦娘について、提督の役割等々。


大淀「そして最後に、提督の最初の秘書艦を紹介します。叢雲、入って来て下さい」


大淀がそう言うと、執務室の扉をノックする音と、それに続いて1人の少女が入って来た。


14~5歳位に見えるその少女は、腰まである毛先の切りそろえられたモイストシルバーの長髪に、赤の強いオレンジ色の瞳。胸元には腰くらいまでの長さがある赤いネクタイを着けた、ワンピース風にアレンジされた紺と白のセーラー服を着用していた。


叢雲「あんたが司令官? 私は叢雲。ま、せいぜい頑張りなさい!」


俺は、その少女を無視して、大淀に尋ねた。


提督「おい、大淀。あんたが秘書艦とかをやるんじゃないのか?」


叢雲「ちょっと! 私を無視しないでくれる?」


大淀「私は大本営所属ですので、こちらの鎮守府の運営には携わりません。この叢雲を秘書艦として、この鎮守府を運営して下さい。それでは、私はこれで失礼します」


大淀はそう言うと、執務室を出て行った。そして執務室には、俺と叢雲という少女の2人のみとなった。


叢雲「ねぇ、いつまで立たせておく気?」


提督「んぁ? んなら、その辺の適当な椅子なりソファーなりに座ればいいだろうが」


叢雲「あ、そ。それじゃ」


俺の素っ気ない言葉に、叢雲は部屋のソファーに足を組んでゆったりと座った。


提督「で、ガキが何の用だ?」


俺が机の上に頬をついて聞くと、その少女はおもむろに立ち上がった。


叢雲「さっきの大淀さんの話を聞いていなかったの? 私は駆逐艦の艦娘であんたの秘書艦よ」


提督「何が秘書艦だ。お前みたいなガキに、そんな事が出来るのかよ」


叢雲「あんた、大淀さんからきちんと【艦娘】の話を聞いていなかったの? 私は駆逐艦よ。イ級くらいなら簡単に倒せるんだから」


イ級か。確かニュースでよく見る深海棲艦の1つだな。しかし俺には、とてもそうは見えなかったので、


提督「んじゃ、その【駆逐艦】としての力を、俺に見せてみろよ」


と、叢雲に言ってみた。すると、


叢雲「いいわよ。丁度、この近辺でイ級を見かけたって話を聞いたところだし、そいつを沈めてくれば納得するかしら?」


と返してきた。こうなってしまっては、売り言葉に買い言葉。


提督「なら、やってみて貰おうか」


と、つい言ってしまった。言ってから、しまったと思ったが、もう遅い。


叢雲「いいわよ。叢雲、出撃します」


叢雲はそう言うと、執務室を出て行った。



そして・・・



叢雲「見つけたわよ。やっぱりイ級ね。行くわよ、沈みなさい!」


執務机にある無線機からは、叢雲の威勢の良い声が聞こえて来た。


暫くして、


「・・・イ級は沈んだわよ。ま、当然の結果よね。なに、不満なの?」


という、叢雲の声が。しかし、俺は気の無い返事しかしなかった。


提督「・・・ふぅん」


どうやら、これには叢雲を癪に障ったらしく、


叢雲「何、これじゃ不満っていうの? なら、見ていなさい。このまま進軍するわよ」


と言って来た。これはどうやら、相当痛い目に遭わないと駄目らしい、そう思った俺は、


提督「あ、そ。なら行けば?」


と、好きにさせた。


叢雲「むっかーっ、ならやってやるわよ!」


と、無線機越しに叢雲は怒鳴ると、そのまま進軍していった・・・自身が中破状態であったにも拘わらず・・・。


そして・・・。


叢雲「見つけた・・・って、ホ級、ハ級、ロ級、ロ級!? 何でこんなところまで!?」


と、焦った叢雲の無線を聞いて、ようやく俺も事態の深刻さに気が付いた。


提督「おい、お前、何やってるんだ! しかも中破してるだと?」


叢雲「きゃあっ! や、やだ・・・ありえない・・・っ!」


無線機から聞こえてくる叢雲の悲鳴から、相当深刻な状態である事を俺の勘が告げていた。しかし、戦闘が終わるまでは、何も出来ない。


・・・どれくらい経過しただろう、数分だっただろうか、数十分だろうか・・・。


叢雲「何とか、ロ級1隻だけは撃沈させたわ。けれど、他は逃してしまったわ・・・」


俺は、自分の迂闊さを呪いつつ、叢雲へと命令した。


提督「何やってるんだ、さっさと戻ってこい!」


叢雲「分かりました・・・」


執務室に戻ってきた叢雲と言えば、全身ボロボロ、今にも倒れる寸前といった状態だった。そして、叢雲は、1人の少女を連れてきていた。


叢雲「艦隊が帰投したわ。それから、仲間を1人見つけて来たわよ」


曙「特型駆逐艦「曙」よ。って、こっち見んな!この糞提督!」


ケっ、またガキかよ。俺はそう思いつつ、つまらなそうに、叢雲に言った。


提督「叢雲だっけか? 入渠?で怪我が治るんだったか? ならさっさと行ってこい」


しかし、その突き放した言い方に、曙の方が堪に触ったらしい。


曙「な、何て言い方するのよ、この糞提督! 叢雲にそんな言い方は無いでしょう!」


そこで俺は、改めて2人に言った。


提督「いいか、先に言っておく。俺は好きで提督になった訳では無い。ただ【妖精】が見えるってだけで、【提督】なんて仕事を押し付けられただけだ。だから、ここの運営だの何だのってのは全く興味が無ければ、やる気も無い」


提督「それからな、曙だっけか? お前、俺の事を糞提督って言ったよな? いいか、俺の方もお前らの様な糞ガキは大嫌いだ。だから、さっさとこの部屋から出ていけっ!」


俺は2人にそう言うと、椅子を180°回転させ、煙草を吹かしつつ窓の外の景色を見た。





ーーー 2 ーーー



俺がこの鎮守府に着任して3カ月。着々と戦果を挙げてきていた。


他の鎮守府が南西諸島海域にてこずっている間、この鎮守府では既に西方海域のカレー洋まで進出していた。因みに、北方海域については、今の所他の鎮守府に任せるというスタンスを取っていた。


また、戦力としても、一航戦の赤城・加賀、五航戦の翔鶴・瑞鶴、戦艦は金剛4姉妹、重巡は摩耶に鳥海他、軽巡は天龍・龍田、長良型6姉妹に川内型3姉妹、駆逐艦も、六駆、十一駆他多数と、それなりに大所帯になりつつある。因みに、あの大淀とかいうのも実は艦娘だったらしく、現在この鎮守府所属の軽巡となっていた。しかも、気まぐれで行った大型建造で、装甲空母大鳳まで着任していた。


その為、大本営にしろ他の提督達にしろ、俺に一目置いているようだった。


しかしその間、実は俺は殆ど何もしていない。していたのは、提督の判が必要な書類に判を押す事と、羅針盤を回す事だけだった。


他の仕事は、全て叢雲が行っていた。


初期艦&秘書艦だけあって、叢雲は優秀だった。俺に何もする気が無いと理解した途端、これは自分がやるしかないと発奮したのか、次々と艦隊編成・遠征・演習・海域攻略と行って来た。


しかし、叢雲にも出来ない事があった。それが、提督の決裁が必要な書類の判押しと、羅針盤回しである。


まぁ、判押しなんかは叢雲にやらせても良かったのだが、これについては、叢雲の頑張りに負けて、俺がするという決まりになっていた。


また、進軍・撤退なんかの判断も、特別な理由が無い限り、全て叢雲の判断に任せていた。尤もこれは、叢雲には言ってはいなかったが、現場の状況は現場が一番良く分かっており、後方で色々と口を挟むような事をしても、却って効率が悪くなる場合がある事を俺は知っていたので、現場で最善と思われる判断をさせるのが一番だという俺の考えから来ていたものだった。


しかし、『羅針盤』、これは出撃した艦娘達が、海上で進路を決める為に使われるものであり、実際には妖精たちが回すものだが、これを回すよう命令する事が出来るのは、妖精たちと意思疎通が出来る提督だけだった。


つまり、これこそが、提督の提督たる所以である。


(しっかし、まじで失敗したよなぁ。あん時、妖精の話さえしなけりゃ、今頃はこんな所に居なかったのになぁ・・・。)




ある時、俺はとある部屋へと呼び出された。


その部屋は高級仕官・・・それも相当上の・・・の執務室だったようで、調度品類もかなり凝ったものが設えてあった。


そして、部屋の中央奥、執務机の上で、俺に向かって敬礼している妖精を見て、ついポロっと「何だ? そこの小さいの」と口にしてしまったのが、運の尽きだった。


そのたった一言のせいで、俺には【提督】の資格があるとかで、人生が180°変わってしまい、結局、あれよあれよという内に、今に至っているという訳だ。


しかし、俺の『予定』では、こういう風になるとは、全くの予想外の話だった。だから、俺にはまるでやる気は無い。よって、文字通り自分から何かをするという事は、一切無かった。


そして、どう言う理由かはともかく、それを直ぐに察した叢雲が、自ら率先して鎮守府の運営を行ない出したという訳だ。


しかも、俺の目論見では、全く成果の出ない鎮守府と言うことで、早々に『首』になるつもりだったのだが、叢雲の頑張りによって全く逆の状況になってしまっていた・・・。




本来の俺の『予定』からすれば、叢雲の行動は邪魔以外の何物でも無い。よって、早々に秘書艦から外すべきだった。


けれど俺は、敢えて叢雲の好きにさせていた。こう言っては何だが、流石にあの頑張りを見せつけられては、それに水を差す気にもならなかったのだ。


それに、俺が仕事をしない事については、いつも文句ばかり言うのだが、不思議と『何故』仕事をしないのかという点については、何も聞いてこなかった。



そうして、今に至るという訳だ。




叢雲「はい、これ。ここに判を押しなさい」


提督「(無言で判を押す)」


叢雲「それから、こっちの書類は、今度の演習の計画ね。まぁ、あんたの事だから、書類を見ることも無いでしょうけれど」


提督「・・・」


叢雲「それにしても、本当に自分からは何もしないのね」


提督「・・・前にも言ったが、俺は好きでここに居る訳じゃない。寧ろ出て行きたい位だ。いいか、叢雲。俺としては、こんな戦果など全く必要無かったんだ。寧ろこの戦果は、俺の本来の予定からすると、邪魔以外の何物でもない。そういう意味では、お前に好き勝手させているだけでも、ありがたく思うんだな」


俺のこの態度に、叢雲は一瞬たじろいだようだったが、


叢雲「・・・あっ、そう。なら、ありがたく思いつつ、好き勝手にやらせて貰うわ」


こんなやり取りが、週に3~4回はいつもある。


何故、毎日では無いかと言うと、俺は朝の9時に執務室に入り、夕方の5時にはさっさと私室へ引き上げてしまうので、叢雲が忙しく仕事をしている時には、この様なやり取りをしている余裕が叢雲の方に無いのだ。


そして俺のこの態度が、鎮守府全体の雰囲気にも影響している。


この俺の態度によって、俺は他の艦娘達からはほとんど嫌われており、特に何人かの艦娘は、しばしば執務室に怒鳴りこんで来たりもする。




???「おい、てめえ、提督だったら、叢雲に全部仕事を押し付けないで、仕事しろっ!」


提督「・・・俺は、叢雲に、ああしろとかこうしろとか、一切命令してないぜ。叢雲が勝手にやっているだけだ、叢雲だって、別に嫌ならやらなきゃいいんだ」


叢雲「・・・いいのよ。本当に、私が好きにやっているだけだから」


提督「・・・何なら、お前が手伝えばいいじゃないか。俺は特に禁止しないぞ」


???「・・・ちっ。叢雲、もし何か手伝う事があったら、遠慮なく言えよな」


叢雲「大丈夫よ。何とかなっているし。それに、もし手伝いが必要になったら、声を掛けるから」




叢雲「・・・」


叢雲「・・・ねぇ、もう少しくらい、愛想良くしてもいいんじゃない?」


提督「冗談じゃない。俺はこうして嫌われている方がいいね。不要な接触をしなくて済む」


叢雲「・・・まったく」


提督「それに、俺が今言った通り、他の奴に手伝いを頼んだっていいんだぞ。俺は特に禁止したりしないぞ」


叢雲「ふんっ、これは秘書艦である『私の』仕事よ。他の艦娘に手伝いなんか頼んだら、秘書艦の恥でしか無いわ。それよりも、そもそもあんたが仕事をすりゃいいだけじゃない」


提督「・・・俺は、仕事はしないと決めているんだ・・・」


叢雲「あんたも、強情よね」


提督「お前もな」


叢雲「・・・ふんっ」



そんな状況ではあったものの、ある1点の為に、他の艦娘達から完全に嫌われる事が回避されていた。


それは、出撃時に、叢雲に絶対に無茶をさせなかった事だ。


戦闘において、叢雲が進軍か撤退かの判断に迷った時、俺が出す命令は常に『撤退』だった。


現場の状況は、現場が一番良く分かっている。しかし、大局から見た場合、現場ではどう判断すべきか分からないという状況が、多々発生する。


そして、叢雲は流石に鎮守府立ち上げの時からの秘書艦であり、そういった所を嗅ぎ付けるのが上手い。しかもそうやって迷う時に限って、その先には大抵、更なる危険が待ち受けていた。


しかし、実際の所、そこから先の判断・・・進軍か撤退か・・・は、逆に後方から戦闘の全体を見ている俺にしかどうしても出来ない事で、こればかりは俺もやらないとは『言えなかった』。いや、正確には、これについては、俺は敢えてやらないとは『言わなかった』。


そして、大抵は叢雲の勘の通り、その先には大軍による迎撃艦隊が待ち構えていたとか、潜水艦部隊による奇襲が待ち構えていたとか、とにかく、今出撃している艦隊の編成では対処出来ないような危険が待っており、その嗅覚には、俺でさえも舌を巻くしか無かった。


よって、叢雲が指示を仰いで来た時は、俺の命令には『撤退』の2文字しか無かった。


また、これにより、艦隊の他のメンバー・・・大抵は戦艦か正規空母の連中・・・が『進軍』を望んでいたとしても、俺・・・提督・・・の命令が絶対である以上、艦隊の損害が小破以下だったとしても帰投するしか無かった。


そして、その不満は当然俺の所へ来る訳だが、俺はそれを完全に無視。


文句を言って来た艦娘達からすれば暖簾に腕押し状態で、更に不満たらたらとなるのだが、こればかりはどうしようもない。


かと言って、文字通り鎮守府の立ち上げの頃から、俺のこのスタンスが変わっていない事が鎮守府全体に知れ渡っており、叢雲に文句を入れても意味が無い・・・そもそも秘書艦である叢雲の文句すら聞かない・・・というのも理解しているため、最終的には諦めるしかないという状況だった。


尤も、叢雲からしても、単に危険な気がするというだけで、艦隊に撤退命令を出すのは難しい場合がある。特に、いくら秘書艦であるとは言え、叢雲自身は駆逐艦でしかなく、戦艦や正規空母へ強く言えないというのもある。


だから、そういう場合は、敢えて俺に指示を乞うのだ。それにより、進軍・撤退の判断の責任を、全て俺に押し付ける事になるのだが、勿論、俺はそれを承知の上で指示を出している。


別に叢雲を助けるという訳では無いのだが、流石に「帰投したいけれど、それが言えないから、何とかして欲しい」と、暗にお願いしてきている事くらい理解出来るし、せめてそれくらいは聞いてやっても罰は当たるまい。という事で、叢雲から指示を仰いで来た時は、『撤退』以外無かった。


そしてもう1つ。普段は何もしない俺だが、やると決めた時は、何が何でもやるという事も知られていた。つまり、


提督「俺の命令にぐちゃぐちゃ文句を言っている奴は誰だ? 叢雲、お前、酸素魚雷持っていたよな? その文句を言っている奴に、残っている魚雷、ゼロ距離で全弾発射して大破させろ。あぁ、流石に轟沈だけはさせるなよ。で、さっさと戻って来た上で、そいつを風呂にぶちこみ、暫くそこから出すな。そうだな、通常の入渠時間の5倍位でいいか」


である。


こういった内容を無線機越しに、艦隊全員に聞こえるよう大声で怒鳴るのだ。流石にここまで言われては、艦隊の全員が諦めて帰投するしかない。


いや、過去に一度だけどうしても言う事を聞かない戦艦・・・敢えて誰とは言わない・・・が居た。そこで、提督の強権発動。文字通り轟沈寸前までボロボロにさせた上で、丸3日風呂から出させなかった・・・しかも、湯船から。流石にこれには当人も参ったようで、それ以降、俺の命令に背くような艦娘は居なくなった・・・。


そうしてその結果、この鎮守府においては、艦娘達の『轟沈』という言葉は、存在しえなかった。


他の鎮守府では、しばしば仲間が失われるという事態が発生しているにも拘わらず、この鎮守府ではそれが無い。


しかしその1点が、今までその『轟沈』が発生しなかったからこそ、ここまで鎮守府を運営出来ていた訳で、叢雲にとって、その1点が最大の悩みでもあったのだ。


その為、叢雲は常に誰かが『轟沈』したらという未来に怯えているのが、俺には分かっていた。


だから、そこを俺が肩代わりする事によって、叢雲に、精神的な最後の1線を超えさせないようにしていたのだ。


そして、この『轟沈』がこの鎮守府では発生していないという事実が、辛うじてここの崩壊を防いでおり、また俺が完全に嫌われない理由でもあった・・・。




・・・但しその結果、海域の攻略速度が、どんどん遅くなっていってしまう事に繋がるのだった・・・。





ーーー 3 ーーー



それから更に3カ月。


カレー洋攻略までは順調に行っていたが、そこから先で攻略に躓いてしまっていた。


これはこの鎮守府だけでは無く、他の鎮守府も似たり寄ったりであった。


同じく西方海域を担当している鎮守府も、やはりリランカ島を抜く事が出来ず、北方方面を担当している鎮守府も、 アルフォンシーノ方面で足止めを食らっている状態だった。


つまり、今まではこちらを甘く見ていた深海棲艦側も、本腰を入れてきたという事なのであろう。


この鎮守府も、叢雲の作戦の元、主力艦隊が何度も出撃をしては大破撤退を繰り返しており、その一方で、防衛線の網を抜けた深海棲艦の艦隊が逆侵攻してくるため、その迎撃も行わねばならず、まさに一進一退を繰り返していた。


これには大本営も流石に黙ってはいられなかったようで、何度も督戦命令が届いてきた。


しかし、俺は完全にそれを無視していたし、命令書の中身そのものを叢雲へ見せる事もしなかった。


俺は叢雲に、好きに鎮守府を運営しろと言った。だからという訳では無いが、鎮守府の外からの命令に従わせる気にもならなかった。


何故かは、自分自身も分からなかったが、とにかく大本営からのそういった命令は、叢雲には渡さず、完全に俺の所で握りつぶしていた。




叢雲「・・・大本営から、あんた宛に命令書が届いているわよ」


提督「・・・取り敢えず、それをよこせ」


叢雲「・・・ふんっ、どうぞ」


提督「(・・・また何時ものか。大本営の奴らめ、お前ら好き勝手言ってるんじゃねぇ・・・)」


叢雲「・・・ねぇ、それに何が書いてあるの?」


提督「あ? 何時もの下らない命令だよ。大した事なんか書いてねぇ。俺にああしろこうしろと書いてあるだけで、お前が気にする程の物じゃねぇよ」


叢雲「・・・そう」


そうして、俺は命令書をぐじゃぐじゃと握り潰すと、執務机の脇に置いてあるごみ箱へと投げ捨て、叢雲が昼の休憩なんかで席を外す時に、ライターで燃やして灰皿を掃除する際、まとめて処分するのであった。


別に叢雲の為にやっている訳では無い。単に俺が、ムカつくのでやっているだけである。まぁ、それをどう見るかは、余所様の話であって、俺の話では無いのだが。



しかしある時、その握りつぶした命令書を見られてしまった。ゴミ箱に投げ捨てたのはいいが、ちょっと席を外したタイミングで、叢雲にそれを取られてしまったのだ。



叢雲「・・・ちょっと、何よこの命令書はっ!」


提督「・・・それがどうした?」


叢雲「大本営からこんな督戦の命令書が来ていたなんて。あんた、何考えているのよ?」


提督「・・・ふんっ。大本営の馬鹿どもなんぞ、知ったこっちゃねぇ」


叢雲「でもだからと言って・・・」



そうやって、俺の事を心配するのはいいが、こっちはいい迷惑である。そこで、俺は今まで黙っていたが、この際、はっきりという事にした。


提督「いいか、叢雲。今まで黙っていたがな。俺は【妖精】が見えるというだけで、【提督】になったんだ。もし見えなかったのであれば、俺は絞首台に行って、今頃はあの世に行ってただろう人間だぜ」


そう、俺は世間一般で言うところの、大悪人という奴だったのだ。


提督「俺は元々孤児でな、とある養護施設で育っていたんだが、15歳の時に、気に入らない施設の職員を何人か包丁でぶっ殺して施設を抜け、その後、それこそ色々な事をやってきたぜ」


叢雲「・・・何よそれ」


提督「何だよ、折角だから話しているんだ。よぉく聞いておけ。いいか、殺人・強盗なんぞ、数えきれないくらいやった。それから、詐欺・誘拐・銃や薬やらの密売、テロリストの真似事、とにかくやれる物は何でもやったけな」


いきなりの俺の告白を聞いて、叢雲は顔を真っ青にしていったが、俺は気にも留めず、そのまま話を続けた。


提督「殺人って言っても、色々あってよ。単純に刃物で心臓をぶっ刺すだけじゃねぇ、背後から襲って首の頸動脈を切ったり、鉄道のホームでそっとホーム下へ落としてそのままぐしゃりとか。それからダンプで突っ込んで単純に圧死させたり、ぶつけた勢いで、橋の上から車ごと川へ落としてやったりとかもしたっけな。そうそう、狙撃銃での暗殺ってのは、結構楽しかったぜ」


叢雲「・・・」


提督「薬の売人をやっていた時なんかはよ、テキトーに女子高生とか女子大生なんかをナンパしてな、食事の中にそっと薬を混ぜたりして、気分の良くなった所を犯してやり、更に気持ちのイイ事をしてやるぜ、なんて囁けば結構いい顧客になったりしたもんだ」


叢雲「・・・」


提督「そんなこんなで10年ちょい、散々やりたい事をやって、最後にドジを踏まなきゃ、未だに世間で何かしらやっていただろうよ」


叢雲「・・・さ、最後のドジって、な、何よ?」


こんな話を聞いて、まだ平静でいられるのか、艦娘ってのは。俺はそう半ば感心しつつ、折角なので話してやった。


提督「何、ちょっとした強盗をやった時に、ちぃとばかり殺しそびれた人間がいてな。その所為で警察に捕まり、そのまま刑務所にぶち込まれたって訳よ。もし深海棲艦なんてのがいなけりゃ、とっくに俺は死んでたよ」


叢雲「・・・な、なら、何でここに?」


提督「ん? 聞いていなかったのか? さっきも言った通り、俺が刑務所にぶちこまれて1カ月位経った頃に深海棲艦がやってきて、それから約1カ月で人間から海を取り上げられたものだから、その間、俺の死刑執行が伸び伸びになってしまってな。で、【妖精】が見える人間なら誰でもいいから【提督】に仕立て上げ、深海棲艦と戦わせようって話になった訳だ」


叢雲「・・・」


提督「・・・でもって、どうせこれから死ぬ人間なら、捨て駒にしても問題無いから、取り敢えず【妖精】が見えるか確認してみるかと俺が選ばれ、実際に見えてしまったものだから、今こうしている訳よ」


叢雲「・・・」


提督「しかも、そのおかげで死刑執行が取りやめになるわ、英雄だか何だか知らないが、えらく持ち上げられるわ、ともかくこの状況だ。俺からすれば、大本営なぞ、くそったれ以外の何物でもねぇ」


叢雲「・・・」


提督「だから、そんな命令なんぞとことん無視してやるし、それで気に入らないなら、さっさと俺を辞めさせりゃいいんだ。そして改めて死刑執行すれば、それで綺麗さっぱり終わりと」


叢雲「・・・ねぇ、そんなに簡単に死ぬなんて事言うもんじゃないわよ」


提督「そうかい? まぁ、余所様が何をどう考えているかなんて、俺にはどうでもいい話だからな。そういう事で、俺は何もしないと決めたんだ。まぁ、提督としてしか出来ない最低限の事はしてやるが、それ以上の事を俺にさせようなんて考えるんじゃねぇぞ」


叢雲「・・・ねぇ、だけど、何でまたそんな話をしたの?」


提督「・・・さぁな、俺にもよく分からん。寧ろ、俺の方が聞きたいくらいだよ。何でお前に、俺の下らない昔話を聞かせなきゃならなかったんだってな」


叢雲「・・・例え何があったとしても、自分の事を下らないなんて言うべきじゃないと思うけれど」


提督「けっ、お前のようなガキの姿の奴に言われたくないね」


叢雲「なっ、何がガキよ。全く、何て男・・・」



まぁともかく、これなら叢雲も愛想を尽かすだろうと思ったのだが、ここでもまた俺の思惑が外れ、結局、相変わらず秘書艦から外れる事も無く、提督の執務室で仕事を続け、俺はただそれを見てるだけ、という今までと全く変わらない状況が続いたのだった・・・。


・・・別に、秘書艦を叢雲から別の艦娘に変える事も出来たが、他にも色々と言う奴が出て来られても五月蠅いだけであるし、何より他の艦娘達との交流なんかしたくも無かったので、結局そのままだったというのもあった・・・。





ーーー 4 ーーー



そうして、海域攻略が難航している中、今度は深海棲艦側による、一大反抗作戦が開始された。


深海棲艦側は、今までとは比較にならない位の数で押し寄せ、文字通り物量作戦で押してきたのだった。


その数は、人間側の艦娘の人数ではとても太刀打ち出来ない程だった。


実際、他の鎮守府では、何人もの艦娘が轟沈しており、一部の小規模の鎮守府では壊滅してしまった所もある。


幸いにも、この鎮守府においては、今の所、轟沈した艦娘は居なかったが、それは大破撤退を繰り返していた為で、このままでは時間の問題かと思われた。


普段は何もしていない俺だったが、叢雲を始めとする鎮守府の艦娘達に動揺が走っている事位は、流石に知っていた。


叢雲「あんた、いい加減にしなさいよ。こんな状態になっても、何もしない気?」


提督「あぁ、する気は無いね。もうなるようにしかならんだろう」


叢雲「もう、皆頑張ってるんだから、あんたも何か考える位してよ」


提督「だから、なるようにしかならないって。場合によっては、ここを放棄したって構わないんだぜ」


叢雲「嫌よ、絶対、最後まで諦めない!」


そんな言い合いをしつつも、戦局は悪い方向へと向かいつつあった。


それでも俺は、何もしない・・・何もしない・・・何もしない・・・つもりではあった。


だが、『それ』を見つけてしまった俺は、何もしない訳にはいかなくなった。


こんな俺だが、ほんのちっぽけな物だが、1つだけ、譲れないプライドがあった。




提督「・・・叢雲、お前、奴らの魂胆が分かっているのか!?」


叢雲「・・・え? どういう事?」


提督「・・・奴らは、お前らを『甚振っている(いたぶっている)』のさ。つまり、馬鹿にしてるんだよっ!」


叢雲「・・・どういう事よ」


提督「どの戦闘でも、お前らの損害の規模は、1回目は必ず『大破』止まりだろうが。そして、そのまま進軍したら、次は『轟沈』だ」


叢雲「・・・」


提督「つまり、奴らはお前たちを『大破』させて、わざと撤退させているんだよ。少しでも長くお前らを甚振る為にな。そして、じわじわと真綿で首を絞めるような感じで、俺たちをなぶり殺しにしようとしているんだよっ!」


叢雲「な、なら、どうすればいいのよ?」


提督「なら、やる事は決まっている。直ぐに主だった連中を集めろ。それと、明石に夕張、大淀もだ」




俺のちっぽけなプライド。それは、『俺を馬鹿にした相手には、徹底的にやり返し、ボコボコにし、俺を馬鹿にした事を後悔させる』という物であった。


本当に小さな、大した事は無いプライドである事位、俺自身分かっている。しかし、これだけは、どうしても譲れなかった。


そして今回、奴らは艦娘を、鎮守府を通して、この俺を馬鹿にしたのだ。そのツケは払ってもらおう。俺は、やると決めたら、とことん、それこそ気が済むまでやるのだ。奴らにはそれを痛いほど分からせてやろうじゃないか。




こうして、この鎮守府で、初めて俺主導の作戦が開始された。




まずは次の3つの艦隊を編成する。12人からなる主力艦隊と、6人からの支援艦隊を2つである。


そして、鎮守府を出港した3艦隊は、初戦は本体である主力艦隊を囮にして、支援艦隊によって敵艦隊を攻略し、主力艦隊を温存する。


次にある程度進軍した所で、今度は逆に支援艦隊を全面に出して、これを主力艦隊の盾とし、敵撃破を主力艦隊で行う。なお、この時、支援艦隊は守りに徹し、攻撃には参加させない。これは、攻撃に注意が行ってしまい、敵による攻撃の回避に失敗して轟沈する事を避ける為でもある。


それでも、やはり何人もの艦娘が大破状態になる。そこで、敵司令部の最終防衛ラインと思われる所で、支援艦隊を撤退、主力艦隊のみで突入を行わせる。


しかし、最終防衛ラインだけあって、やはり敵の防御は半端ではなかった。


何とか防衛ラインに穴を開け、突入する隙間を作る事が出来たが、何人もの大破は発生した。


何時もなら、ここで『撤退』を行なう事で轟沈を避けるのだが、そうやって再度出撃してくる間にその開けた穴は塞がれ、また同じ状況になるという繰り返しであったのだ。


そこで俺は、敢えて『進軍』を命じた。


提督の命令により、12人の艦娘はそのまま進撃、いよいよ敵司令部本体との戦闘へと突入した・・・。




俺は、無線機、いや、12人の艦娘越しに、敵がニヤニヤとこちらを笑っているのが手に取るように分かった。


馬鹿な奴らだ、『大破』したまま『進軍』してきた。こういう馬鹿は、ここで沈めてしまえ。そしてそれを命じて来た『提督』やらを恨むんだな・・・と。


しかし、馬鹿なのは、お前らだ。俺が無策で進軍させる訳無いだろうが。




そして、案の定、大破したうちの1人が、まともに攻撃を食らい、『轟沈』し・・・なかった。


いや、それだけではない。大破していたはずのその艦娘の損害が完全に修復され、かつ、燃料・弾薬共に完全に補給されているでは無いか。


そしてそれは、他の大破艦、いや、12人全員がそうであった。





・・・応急修理女神・・・





これが、俺の隠し玉であった。


明石と夕張に、今回出撃する24人全員の擬装に補強増設を行わせ、大淀に同じく24人全員分の応急修理女神を用意させた。


多少時間と金が掛ったが、何とかこれを成し遂げ、今回の出撃を行ったのだ。



提督「(くっくっく、馬鹿なのはそっちの方だ。ここの鎮守府を、そしてこの俺を馬鹿にしたツケは、お前らの轟沈によって支払って貰おうじゃないか)」



・・・結果、敵司令部は壊滅。それまで怒涛の如く進撃してきた敵深海棲艦は、いきなり指令系統を失い混乱。残っていた各鎮守府の艦娘達により、それぞれの海域で各個撃破されていった。


それは当然、この鎮守府でも同じで、今まで確保していた海域を隈なく索敵、見つけ次第全て撃沈させた。


尤も、深海棲艦側の戦力が完全には分かっていない以上、これで全て終わったという訳では無かったが、とにかく俺のプライドは守れられ、取り敢えず暫くは各海域も静かになるであろう。




そしてもう1つ、この鎮守府で変化が起きていた。


それまでは、殆どの艦娘が俺の事を毛嫌いしていたのだが、とてつもなく入手が困難な『応急修理女神』をあれだけ集めて、『轟沈』させないようにしたという事で、殆どの艦娘が態度を改めた、もしくは嫌いは嫌いとしても、少なくとも俺の事を信頼する位にはなったという事であった。


俺としては、敵司令部との戦闘において、奴らを完全に叩き潰すための最善と思われる方法を取ったに過ぎないのだが、結果的にそうなってしまったらしい。


そういった好意は、俺からすれば面倒この上ないのだが、結果を出してしまった以上、どうする事も出来ず、結局、それはそのままにしておくしか無かった。




叢雲「・・・何か、微妙にむしゃくしゃするんだけれど」


提督「・・・叢雲、何かあったのか?」


叢雲「・・・別に。それよりも、何でまた元に戻っちゃったわけ?」


提督「元に戻るも何も、何もしないというのが、本来の俺だぜ」


叢雲「折角やる気になったのだから、そのままやる気モードでいれば良かったのに」


提督「あの時、俺は奴らのやり口に頭にきたから、ああしたんであって、ここの運営なんぞやる気が無い事に全く変わりはないぞ」


叢雲「はいはい、そうですか」



こうして、敵深海棲艦側の反抗作戦の阻止に成功する事が出来たのであった。


そしてまた、海域攻略に戻る鎮守府。




しかし、俺の中では、それも終わろうとしていた・・・。






ーーー 5 ーーー



提督「・・・こほっ、こほっ・・・」


叢雲「??? あんた、最近、咳が多いわね?」


提督「・・・気のせいだ」


いや、それは大嘘だった。最近、咳が酷くなってきており、微量ながら血が混じっている時があった。


叢雲「それに、食欲も減って来ていない? 食べる量が少ない気がするんだけれど」


叢雲の奴、よく見ているな。俺はそう思ったが、それを口にはしなかった。


提督「お前の見間違いだろう。俺は普通に食事をとっているぞ」


叢雲「・・・そう、ならいいけれど」


ここ最近は、そんな会話が多くなってきた。


叢雲も、どこか不安を感じているのか、時々心配そうな顔をするのだが、俺は敢えて知らないふりをしていた。


提督「(しかし、思いの外、時間がかかったな。結局、こっちの方が先になってしまうようか・・・)」




叢雲「・・・あんた、最近、まともに寝ている? 目の下にくまが出来ているわよ」


提督「・・・そうか、気が付かなかった」


叢雲「・・・それに、最近は、その椅子で寝ているわよね? きちんとベッドで寝ないからそうなるのよ。それよりも、何かあるの?」


流石は叢雲、俺の事をよく見ていて、こういう所に気が付くのが早い。


実際の所、ここ最近はベッドで横になれず、こうして椅子に座って仮眠しているのと同じような状態が続いているのだ。


しかし、


提督「何でそう思うんだ? お前の方こそ、何かあるのか?」


叢雲「・・・別に、特に何かというのは無いけれど・・・」





しかし、そうやって誤魔化しているのにも限度があり、到頭『ソレ』が来てしまった。





ある時、たまたま俺が椅子から立ち上がったのだが、そのままふらついてしまい、床へと倒れてしまった。


ただ床に倒れただけなら、色々と誤魔化しが効いたのだが、その時に、げほっ、げほっ、という咳と共に、血を吐いてしまったのだ。


しかも、叢雲の目の前で、血を吐く瞬間そのものを。


提督「(どうやら、俺もここまでらしい・・・)」


そして俺は、そのまま気を失っていた・・・。






気が付くと、俺は私室のベッドの上で上半身を斜めにして寝ていた。


口には酸素マスクが付けられ、腕には点滴が打たれていた。


ベッドの脇には、軍医・・・大本営から送られて来たのであろう・・・と、今にも泣きそうな叢雲の姿が見えた。


軍医「提督、よくもまぁ、ここまで隠し通してきましたね」


提督「まぁな。それにそっちだって、ろくに調べもしなかっただろうが」


軍医「まぁ、それはそうですが」


叢雲「ねぇ、これはどういう事なの?」


提督「・・・まぁ、いいか。叢雲、俺はガキの頃から心臓に病気を抱えていてな、この鎮守府に来た頃には既に秒読みに入っていたのさ」


叢雲「何でそれを言わないのよ?」


提督「俺の病気はな、所謂不治の病って奴でよ、治す?には、心臓移植しか方法が無いんだよ。で、深海棲艦によって制海権が奪われている以上、そのドナーを見つける事も不可能になってな。もう俺には、選択肢は残されていなかったのさ。俺に選べるとしたら、戦果を挙げられない無能な提督という事で、当初の予定通り『死刑』になるか、この心臓病で死ぬか、そのどちらかくらいだったって訳だ」


叢雲「・・・もしかして、鎮守府の皆から嫌われるような態度を取っていたのって・・・」


提督「・・・流石は叢雲だな。最初期から一緒に居ただけはあったか。まぁ、そんな所かな。情が移っては、死んでも死にきれないしな」


叢雲「先生、何とかならないのですか?」


軍医「提督が今話されたように、提督の心臓病は治療不可能な病でして。我々ではどうしようも無いのですよ」


提督「そういう訳で、叢雲、書類の整理なんかをしておいてくれ。後任の提督の為にな」


叢雲「・・・嫌よ。そんな簡単に諦められないわよ」


提督「無駄だ。止めておいた方がいい」


叢雲「・・・それは提督としての命令?」


提督「・・・いや、俺個人の感想だ。提督としての命令、というのであれば、今さっき言った書類整理くらいだろう」


叢雲「・・・分かったわ」


叢雲はそう言い残すと、俺の私室を出て行った。


提督「・・・先生、実際の所、俺は後どれくらいですかね?」


軍医「・・・もう末期状態ですから、いつ心臓が停止してもおかしくは無いですね。正直、神のみぞ知るといったところですか」


提督「・・・因みに先生は、そろそろ帰られますか?」


軍医「・・・それは、私に直ぐにでも大本営に戻れという意味ですかな?」


提督「・・・いや、単なる質問ですよ。俺は別に気にしない」


軍医「・・・そういう意味でしたら、恐らく提督が亡くなられるまではこちらに居る事になるかと」


提督「・・・そうですか。では叢雲に言って、しかるべき部屋を用意させて下さい」


軍医「・・・分かりました」






それから、事情を知った鎮守府の艦娘達の何人もが、俺の私室へ見舞いに来ようとしてきたが、俺はそれら全てを許可しなかった。


本来なら、誰とも会いたくは無かったのだが、軍医と秘書艦の叢雲だけは、状況からしてそういう訳にもいかず、1日に1回、十数分程度、状況報告を聞くだけはした。


実際の所、叢雲の能力からすれば報告の必要など無い筈なのだが、叢雲が頑として譲らなかったので、しぶしぶではあるが、相手をしていた。




叢雲「ねぇ、そう言えば、何で養護施設を抜け出したの? もしかして、病気に関係があるんじゃないの?」


状況報告という事で、話を聞いていた時、ふと、叢雲が俺にそう聞いてきた。


まぁ、どうせだしという事で、俺は酸素マスク越しに答えてやった。酸素マスク越しなんで、きっと叢雲は聞き取りにくかっただろう。


俺としては、その頃にはもう酸素マスク無しでは呼吸する事が困難になっていたので、いっその事マスクなど取ってさっさとおさらばしたかったのだが、軍医と叢雲がどうしてもそれを許さなかったのだ。


それにしても、全く、叢雲の勘の良さには脱帽するしかない。


提督「まぁな。あの時、施設の連中が話しているのをたまたま聞いちまってよ。「あのガキの心臓はどうせ後数年しか保たないんだし、適当に『遊んで』やりゃいいんだよ」ってな。因みに奴らの『遊ぶ』ってのは、俺たち孤児どもを『甚振る』って事さ。だから、いつもそうやって逆らう事が出来ない俺らを甚振って、憂さ晴らしをしていた職員連中をぶっ殺して出てきたのよ」


叢雲「・・・もう1ついい? 最後のドジってどうしたの?」


本当、よく覚えていたな。


提督「何、ちょっとばかし強盗で押し入った家があったんだが、そこに13~4歳くらいの女の子がいてよ。あの子の両親を殺したら、あの子も養護施設に入れられ、俺と同じように甚振られるのかも、何て考えてしまってよ。そのままその家族を殺すのを躊躇っている内に、警察に捕まっちまったって訳よ。あの時、あの子に情が移ったのが、俺の終わりだったってとこか」


叢雲「・・・本当に、どうしようも無い人生だったのね」


提督「・・・どのみち、孤児だった俺には心臓移植なんて金は無いし、そもそもドナーが見つかるまで生きていられるかも分からねぇ。そして、一度殺しをやっちまった以上、もう後には引けねぇ。何しろ俺には時間が無かったからな。だから、次の日に死んでも悔いが無いよう、好き勝手やってきたのよ。まぁ、ともかく、ここまでにしとこうや」


叢雲「・・・あんたって、本当に最低な男ね」


提督「・・・そうだな、その通りだな」





それから数日後・・・。


俺は、軍医と叢雲、それからいつの間にか居た、明石、夕張、大淀の見守る中、ひっそりと息を引き取った・・・。


















ーーー 6 ーーー



提督「・・・ここはどこだ?」


俺は、見知らぬ場所に横たわっていた。少なくとも、私室のベッドでは無い。


明石・夕張「あ、提督が目を覚ましたみたい。やった、実験は成功したわよっ」


大淀「しかもこれは・・・もうこの鎮守府は安泰ですね」


叢雲「・・・良かったぁ」


軍医「いやぁ、皆さまにはよくやって頂きました」


と、直ぐ傍で大はしゃぎの明石・夕張コンビと大淀、涙声の叢雲、そしてあの軍医のホッとした声が聞こえてきた。


俺はむくっと起き上がり、周りを見渡す。


ここは、あまり記憶は無いが、それでも今までに何度か渋々足を運んだ場所、鎮守府の工廠であった。


そして、俺が寝ていたのは、開発ドックの1つ。


シルバーのセミロングに、褐色の肌。度の入っていない眼鏡を掛け、大きな2つの胸を白いサラシで覆い、これまた短い赤にスカートを穿いた姿。そして体のあちこちに様々な装備・・・擬装・・・が装備されていた。


明石・夕張「いやぁ、大変でしたよ。提督の心臓が停止して、脳死するまでの僅かな時間で、提督の魂を取り出して、何とか形にするのを、どうやって行うか。で、試しに何とか魂を取り出して、そのまま大急ぎで建造ドックに資材と一緒に入れて建造させたら、無事『艦娘として』生き返りましたよ。『武蔵提督』」


・・・おい、魂って、形になるのかよ・・・。


とか思いつつ、起き上がると同時に、俺の頭の中に、擬装の使い方やら何やらと、かの『戦艦武蔵』の記憶が入って来た。


特に、最後の最後まで諦めなかった武蔵の思いが、何故か俺と共感していた。自分でも分からないが、その武蔵の魂が俺の魂の何かを揺さぶったのであろう。恐らくそれが、武蔵建造へと繋がったのかもしれない・・・。


武蔵提督「・・・それにしても、俺が艦娘になるなって、どうなってるんだ?」


叢雲「・・・そんな細かいことなんか、どうでもいいじゃない。あんたはこうして生きている、それ以上何があるっていうの?」


武蔵提督「叢雲、随分と簡単に言ってくれるな?」


俺がそう睨むと、


叢雲「え・・・あっ・・・あのぉ・・・そっ、そんな、に、睨んだって・・・こ、怖く・・・無いんだから・・・」


と、今までと違い、逆に俺が戦艦になった分、寧ろ、しどろもどろになっていた。


軍医「いやぁ、どうなったかはともかく、結果として提督は生存、この鎮守府は今まで通りと、私も安心して大本営に戻れますよ」


武蔵提督「???」


軍医「いやぁ、提督の能力はこの前の深海棲艦撃退で証明されておりますし、提督の過去の悪名も相当なものであったのが判明しまして。大本営としては、何としてでも提督に生きていて貰いたかったとの事で」


武蔵提督「・・・」


妖精「」イヨウ ヨカッタジャネェカ シカモ イママデドオリ オレタチニ シジ デキルゼ


そうやって、俺が唖然としていると、


大淀「提督、先程私からも大本営に報告をしておきました。提督は今まで通り任務を遂行出来ますと。それと、初の大和型戦艦の着任も報告しておきました。長門型は他の鎮守府でも数名居るのですが、大和型は今までどの鎮守府でも成功しませんでしたので」


武蔵提督「あ、大淀。お前、もう大本営に連絡して、既成事実化したな?」


大淀「因みに、大和型の建造は、あくまでも偶然という事になっておりますので、提督ご自身が言わない限り、大丈夫かと」


武蔵提督「・・・何が大丈夫なものか。大和型戦艦の着任となったら、その性能やら何やらって話になるって事だろう? つまり俺に海域攻略に行けって事じゃないかよ」


叢雲「良く分かってるじゃない。今までサボっていた分、今度は前線で返して貰いますからね」


妖精「」オマエモ ガンバレヨ


そんな訳で、俺は初の『艦娘提督』という、とてつもなく怪しい提督として、この鎮守府に居る事になった。





叢雲「取り敢えず、まずは私と一緒に近海を周ってみるわよ」


武蔵提督「ハイハイ」


叢雲「・・・あ、丁度いい所でイ級を見つけたわ。あんた、ちょっと砲撃してみなさいよ」


と、叢雲が言うものだから、取り敢えず装備している46cm砲を構えた。


叢雲「・・・って、え、この距離から撃てるの? 金剛さん達でも、もう少し近づかないといけないのに・・・」


武蔵提督「俺の主砲なら、問題無いようだぞ」


そして・・・


叢雲「嘘、この距離から命中・・・しかもイ級、木っ端みじんじゃないのよ」ガクブル


武蔵提督「んー、そのようだな」


叢雲「・・・じゃ、じゃぁ、もう少し、先まで行ってみましょう」


武蔵提督「そうだな、ん? あれが軽巡か?」


叢雲「そうだけれど・・・あ、あっち4隻か。ちょっと厳しいかな?」


武蔵提督「まぁ、やって見ればいいんじゃないか? 取り敢えず、あの先頭のを撃ってみるか・・・」


・・・ホ級軽巡轟沈。そして・・・


叢雲「あ、こっちに気が付いたわね。来るわよ」


そして、ハ級駆逐艦の攻撃・・・


武蔵提督「ガンッ!? 何か当たったかな?」


と、よく見ると、擬装にちょっとした凹みが。


叢雲「・・・これが大和型・・・」


武蔵提督「おい、叢雲。まだあちらさん残ってるぞ」


そして、あっさりと敵を殲滅。


叢雲「うわぁ、あれだけ攻撃受けて、損傷殆ど無いじゃないのよ」


武蔵提督「そのようだな」


しかし、鎮守府に戻って叢雲を戦慄させたのは・・・


叢雲「・・・消費資材、二次改装してる金剛さんの2倍、赤城さん・加賀さんの3倍って・・・」


武蔵提督「・・・ふぅん、なら俺の出番は無さそうだ・・・」


叢雲「これは、遠征部隊に頑張って貰うようね」


武蔵提督「・・・」




こうして俺は、実質的な提督である叢雲以下、一丸となった鎮守府の艦娘らによって俺を演習・海域攻略へと引っ張り出され、こき使われる事となった。


そしてその代わりと言っては何だが、私室はこれまで通りだったものの、入渠やら食事やらは他の艦娘達と一緒にならざるを得ず、今まで離れていた距離が一気に縮まった事であろうか。


こうして、静かだった環境が一転して騒がしいまでのそれに替わっただが、まぁ、これはこれで良しとする事にした。


そして今度こそ、鎮守府の艦娘達を指揮して海域攻略を行うという、本来の提督の仕事をやる事になった。



・・・但し、指揮する場所が、鎮守府の執務室では無く、現場である海域でという違いがあるのだが・・・。




終わり。











ーーー 6-2 ーーー



提督「・・・ここはどこだ?」


気が付くと、俺はバカでかい何かのところに座っていた。


と、


妖精「」イヨウ


と、近くの高台から、馴染みの妖精が俺に声を掛けて来た。


・・・ん? おかしい・・・俺の見間違えか・・・妖精の大きさが違う・・・と言うか、俺と同じくらい・・・。


妖精「」マ コレラカラモ ヨロシクナ


叢雲「・・・やっと気が付いたわね。あんた、こっちがどれだけ心配したと思っているの」


・・・んむ、確かにこれは叢雲の声だ・・・しかし・・・何でそんなにでかいんだ・・・?


叢雲「・・・全く。明石さんと夕張さんに魂を抜き出して貰ったんだから、少しは感謝しなさいよ」


と、叢雲の手で、俺の体は『摘ままれ』、広いどこかへと置かれた。


・・・周りを見回すと、とんでもない大きいサイズの書類が山になっている・・・これは、どう見たって、俺の執務机だ。となると、さっき気が付いたのは、俺の椅子だったという事か。


妖精「」マ ツヅケテ テイトク ガンバレヨ


提督「・・・」


提督「お前ら、これはどういう事だ?」


明石・夕張「いやぁ、方々から色々と命令されまして」


軍医「私も大本営から、何とするようにとの命令でこちらに来たものですから、提督が亡くなられたままでは、帰れなくて・・・」


叢雲「明石さんと、夕張さんとで相談して、あんたを何とか出来ないかって、相談してたのよ」


提督「・・・で、これかよ・・・」


明石・夕張「いやぁ、大変でしたよ。提督の心臓が停止して、脳死するまでの僅かな時間で、提督の魂を取り出して、何とか形にするのを、どうやって行うか。で、取り敢えず魂を取り出す所だけ何とかして、その後どうしようかって話をしていたら、まぁ、勝手に妖精になってくれたので、助かりました」


提督「・・・をい・・・」


軍医「私もこれで首が繋がりましたので、大助かりですよ。何しろ、提督の能力はこの前の深海棲艦撃退で証明されておりますし、提督の過去の悪名も相当なものであったのが判明しまして。大本営としては、何としてでも提督に生きていて貰いたかったとの事で」


叢雲「ともかく、あんたはこれからも『妖精提督』として、ここで指揮を執りなさい」


妖精提督「・・・こんな小さくなって、俺にどうしろと・・・」


叢雲「あんた、今までだって判押しと羅針盤回ししかしてなかったじゃないの。良かったわね。これからは、羅針盤回しにのみ徹すればいいんだから。あ、そういやあんた、妖精になったんだし、そもそも他の妖精にやらせないで、自分で回せるんじゃない」


妖精提督「・・・そこまでして、俺にここで提督をやらせたいのかよ」


軍医「えぇ、只でさえ提督が少ないのに、この前の深海棲艦の反抗作戦で、更に提督が居なくなってしまいましたので、この際、誰でもいいから提督になれる人間なら、提督をやらせろというのが、今の大本営の方針でして」


妖精提督「」オレハ ニンゲン ジャナイゾ


叢雲「何言ってるのよ。そんな妖精言葉で誤魔化したって駄目だからね」


妖精提督「」チッ




そうして俺は、世にも珍しい『妖精提督』として、こき使われる事になった。


相変わらず、鎮守府の運営は叢雲がやっている。しかも、提督の判押しまでやっている。今の俺には、あんなでかい判なんか、持てる訳無いからだ。


しかも・・・


艦娘達「うわぁ、これが、あの提督? ちょー可愛いじゃん」


と、今までは寄り付きもしなかった艦娘達が、入れ替わり立ち替わり執務室に遊びに来るようになった。そして、今までは常にピリピリとした緊張感に包まれていた鎮守府の雰囲気が、一転して和やかムードに様変わりしていた。


・・・俺はお前らのマスコットじゃねぇ。




その上・・・


他の妖精達「」オマエモ ヨウセイニ ナッタンダカラ スコシハ コッチモ テツダエ


妖精提督「俺は何もしないって言ってただろうが」


叢雲「今までさぼっていた分、きっちり返しなさいよね」


他の妖精達「」ソウダソウダ オマエモ シゴトシロ


妖精提督「・・・お前ら、寄ってたかって、俺に仕事させようとするんじゃねぇ」


と、工廠にて開発・建造の手伝いをやらされる始末。


叢雲「・・・もう、あいつ、どこ行ったのよ?」


他の妖精達「」テイトクヲ タイホ レンコウシテ キマシタ


叢雲「よくやったわね。そのまま工廠にて開発っ!」


他の妖精達「」イエス マム


妖精提督「・・・」


・・・酷い話である。





こうして、この鎮守府は相変わらず、最前線にていつ終わるとも知れない深海棲艦と戦っている。


そして、


妖精提督「俺はこんな事を望んではいなかったぞ・・・」


という俺の虚しい叫びは、海の彼方へと消え去るのであった・・・。




終わり。




後書き

艦これSS2作目です。

1作目の方は、ギャグ満載で書いている途中ですので、こちらは、ちょっとシリアス目の短編という事で。
取り敢えず、思いつくまま一気に書き上げましたので、誤字・脱字・矛盾点があるかと思われます。
また、話としても短いですので、もうちょっと書き足したいかなと、思わなくも無いかなという所です。


まぁ、大して面白くも無いSSかと思いますので、サラッと一読して貰えれば、それだけで嬉しい限りです。

※因みに、転生先の艦娘は、特に誰とは決めていなかったのですが、丁度数日前に、武蔵改二が当鎮守府に無事着任しましたので、その記念という事で。

※時々、ちまちまと誤字脱字の修正とかしてますので、更新されていても、それが理由の場合があります。


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3件評価されています


SS好きの名無しさんから
2018-04-22 03:46:51

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2018-04-21 16:46:05

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2018-04-21 10:12:48

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2018-04-22 03:46:53

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2018-04-21 10:12:42

このSSへのコメント

1件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2018-04-22 07:13:15 ID: 6Ksx1KUX

ピクミンのゲームオーバーの時みたいに提督が死んだ後で提督にそっくりな顔をした妖精が誕生する説w

提督「・・・ここはどこだ?」
妖精「あなたもこちら側に来てしまったようですね
歓迎しよう・・・盛大にな!」


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