2018-05-20 09:55:38 更新

概要

2035年。
深海棲艦の進行を許した艦娘の大部隊は死亡し、最後に残った一人の艦娘が世界を変えようとするお話。


前書き

本文とかんけー無いけど、このssを読む暇があるならこっちのssをお勧めするよ~

志希「フレちゃんがうつになりまして。」↓
http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51946662.html

ただのダイマだね~。
果てしなくリアルっぽいから本当おすすめ!


 斬りつけるたび、血によく似た生臭い液体が飛び散る。

 母なる海は二酸化炭素も吸収するが、果たしてこれは吸収しきれるのだろうか?


「ゴオアアアアアアアアァァァァ!!!!!」

「! ッーー」


 危なかった。何とか浮上した意識で、反射に近い動きで攻撃してきたイ級を切り落とす。

 再び、イ級の体から生臭い液体が辺りに飛び散るが、先程のような思考の海に溺れることを初雪はしなかった。


「マズイ、かも」


 そう呟く初雪の手はいつもの主砲――ではなく、龍田の槍を握っていた。

 初雪の体も大きく変化しており、女子高生ほどには成長していた。


 肩で息を吐き出す初雪は、自らの疲労が溜まっていることを一人、認めた。

 だが、洗練された動きは劣れを知らないのか、近づいてくる駆逐軽巡は槍を一振りして容赦なく殺す。


「……」

「戦艦は、めん、どう!」


 叫びながらぶん投げたのは、沈黙した敵艦載機だった。

 一瞬にして敵戦艦の顔面にぶつかり、爆発を起こす。

 爆炎が上がると同時に、初雪は戦艦との距離を詰めてトドメを刺す。


 しかし、ここで不測の事態が起こる。


「っ、槍が……」


 ある意味、必然的に折れてしまった槍を最後に殺した戦艦ル級に突き刺す。

 龍田の形見ともいえる槍を、初雪は若干惜しみながら帯刀していた天竜の剣を抜く。


 ――眼前に、新たな深海棲艦が浮上する。


 舌打ちだか、歯ぎしりだか分からない音が少しの間漏れる。


「……がんばる」


 ――私は


「最後、まで」


 ――私はどこまで


「……はぁぁぁあああああああああ!!!!!」


 頑張れば、良いんだろう?






***






「……知ってる、天井」


 軋まない、果てしない疲労を感じない体で、私は目を覚ました。

 それと同時に、震えあがる。


(弱い……この体は……!)


 何が起きているかは分からなかったが、戦闘は何処かで行われているであろう。

 弱く小さく、昔のような体に戻ったとしても、私は戦わなくてはならない。


「早く」


 私は上手く反応しない体を動かして、武器庫へ向かった。


「……初雪ちゃん?」


 後ろから見られていることに、気づかぬまま。






***






「よしっ……」


 小さくなった初雪の積載量は少なくなってしまったが、基地自体の資材量が底を着きそうだったので問題ないと考えていた。

 しかし、何故か資材は大量にあり小さくなってしまった体を憎んだ。


「……けど、これくらいあれば」

「そこに居るのは誰かしら!!」


 二週間は保つ、と続けようとした言葉は唐突に現れた人物に防がれた。

 そして、初雪はその声を聴いて大きく目を見開いた。

 ゆっくりと声のした方向に首を向ける。


「……大和、さん?」

「……初雪ちゃん? どうして……武器を下ろしなさい」


 冷静な初雪だったのであれば、直ぐに武器を下ろしただろう。

 しかし、度重なる予想外の事態。

 トドメと言わんばかりに、沈んだはずの大和がそこに居れば混乱してしまうだろう。


「……そうか」

「っ!?」


 駆逐艦とは思えない負のオーラ。

 明確な殺意を携えたそれを向けられた大和は砲塔を向ける。


 直後だった。


「きゃ!?」


 大和の砲塔が爆発した。

 煙が晴れると、何かが爆発したような跡があった。

 そうして、大和は初雪から視線をそらしてしまった。


「練度一程度のネームドが、舐めすぎ」

「え、がはぁ!?」


 よそ見をした大和に向って走り出し、中型主砲を突きつける。

 柔らかい体に主砲は刺さり、初雪は容赦なく追撃を――


「初雪ちゃん……?」

「!? ……しらゆき」


 白雪の姿を見た初雪は、全部の武装に圧し潰されながら倒れた。

 負傷した大和に、武器に圧し潰されて気絶している初雪を見て、白雪は一人困惑するしかなかった。






***






「……なんて、やっぱ、夢だよね」


 酷くリアルな血の匂いで目が覚めた。

 武器は全て損耗し、握る拳からは血がしたたり落ちていた。

 赤く、そして痛むことからこれが自分の血液だと初雪は本能で理解する。


 そして、今の状況。


「ゴロロォォォォォォ!!!!」

「……ははっ」


 多種多様に光る駆逐艦に噛まれていた。

 殴り飛ばそうにも、腕を振るおうとするたびに、新しい駆逐艦に噛まれる。


 ――詰み


 そんな言葉が脳裏をよぎる。


「まだ、行けるかな……?」


 そう呟き、拳を再び握りしめる。

 あの日、あの時、あの瞬間。

 毎日を怠惰に過ごした――罰。

 それなのに、生にしがみ付いた――罪。


 ならば振るおう。

 全てが動かなくなるまで。


 ならば答えよう。

 自らの為に沈んでいった、仲間の為に。


 そして――こんな私を助けるために命を捨てた姉に胸を張るために。


 <……き、ちゃ……は……雪……>


 脳裏に言葉が過りにながら、初雪は拳を振るい続けた。

 意識が飛んでも、なお。






***






 深夜。

 川内旗艦の夜戦艦隊の帰投を待ちながら書類仕事を行っているときに、彼女は来た。


「提督! 大変です!」

「……どうした?」


 執務室の扉を若干破壊しながら飛び込んできたのは、大和だった。

 本来であれば、夜間に大声、扉の破壊、上官に対するマナーなどの説教をするが、大和の只ならぬ雰囲気を察し、そこら辺は無視をした。


「はい、何時ものように夜間の見回りを行っていたのですが、出撃港で初雪と会いました」

「初雪と……?」


 思わず驚きの声が漏れる。

 彼女は姉、両名とも違い、異常なまでに訓練をしない。

 そんな彼女が急に出撃など、卯月辺りが言ったのであれば一笑していただろう。


「ええ……投降の勧告をしたのですが、戦闘になり……負け、ました」

「……何」

「驚くほど、急な動きでした。それこそ、あの時の川内さんの動きを超えるほどには」


 それを聞いて、耳を疑った。

 大和は最近着任したが、それでも本来のポテンシャルで現在は夜間の見回りを任せるほどだ。

 更に、川内を超えるというと、あの大和を瞬殺したようなものだ。

 俺は大和と川内の過去の模擬戦を思い返しながらそんなことを思った。


「殺られる、と思ったのですが……突然崩れ落ちて、気絶したんです」

「気絶?」

「はい。呆然としていたら、白雪ちゃんが駆け寄ってきて」

「なるほど……」


 恐らく、初雪の視界に白雪が映り、止まった。と考えるのが妥当だろう。

 しかし、それでは解せない点も出てくる。

 俺はペンを置き、大和に近づき、頭に手を乗せた。


「えっ!?」

「感謝するぞ、大和」


 背後からぼしゅう、という音を聞きながら、俺の足は医務室に向っていた。






***






「初雪ちゃん! もう止めて!」

「……」

「無理よ。彼女、まだ気絶してるから」

「そんな……」


 明石は顔を顰めながら初雪の相手をしていた。

 別に、無差別に攻撃をしていないだけマシと考えるか、それとも一対一でボコボコにされていることを嘆けば良いのか、明石はそんなどうでもいいことを考えていた。


「全く……こんな力あるなら引き籠らないで戦闘しろって思うんだけど……」

「……」

「ダンマリ、ていうより喋れないみたいね。気絶しながら戦闘できるなんて、羨ましい限り、ねっ!」


 明石はハイキックを繰り出すが、絡めとられるように止められ、カウンターと言わんばかりに足の骨を初雪が折る。

 声にならない悲鳴を上げ、汗が噴き出るが、その瞬間を利用してもう片方の足で初雪に接近する。

 上段からの殺意の籠ったパンチ。

 しかし、それも軽々躱されて、投げ技のように体を叩きつけられる。


「グァッ!!」

「明石さん!」

「やっばい、みたい……クソ、工作艦なんかにすんじゃ無かった」


 初雪からの追撃は何とか転がって回避し、体勢を立て直す。

 しかし、片足の負傷。これ以上の戦闘は危険と悟った。


「白雪ちゃん!」

「はっはい!」

「初雪を後ろから抱きしめて! 敵意が無い感じで!」

「えっ!? 私が!?」


 初雪は、依然と明石のみに注意を払い、白雪に関してはノーマーク、どころか守っているような雰囲気さえ感じられた。


(投げられたりしてんのに、一向に白雪ちゃんの方に投げないものね)


 投げやすい方向を考え、飛び込んだりもしたが、絶対に白雪に被害がいかない所に投げている。

 それを考えると、恐らくは大丈夫だと思う。


「は、初雪ちゃん……もう、止めて……」

「……」

「……これで、大丈夫かしら?」


 明石の予想を上回り、白雪が初雪を抱きしめると、殺気というレベルにまで引き上げられた敵意が綺麗さっぱり消えていた。


(てっきり、止まるだけだと思ってたけど、嬉しい誤算ってやつね。……まあ、殴りたかったけどさ)


 明石は壁に背を付け、脱力する。

 床と当たる面積が広くなったからか、此方に近づいてくる振動が把握できた。


 ようやくか……と内心ため息を吐き出しながら、開け放たれる扉を見た。


「……遅いわよ、提督」

「明石、さん? どうしてそんなに……」

「まあ、良いから、彼女の意識が回復するまでに話し終えるから」


 そう言って、明石は棒立ちしている初雪と、涙を流しながら抱き着いている白雪を見た。

 そして、散らかってしまった自分の部屋を見ない振りをして。






***






後書き

過去に書いたてーとくさんの話も混ざっちった☆
まあ、過去編って位置づけでいいよね☆


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