2018-04-26 10:00:37 更新

概要

ほのかな予感の続きになります。穂乃果とはいったい何なのかを穂乃果の葛藤とともに自分なりに書いてみました。


何かがおかしい。あの日からまるでそこにいるのは違う誰かのように感じます。



いつものように注意しただけのはずですが、



明らかに今までとは様子が違うことに



違和感を通り越して、恐怖すら感じ始めてしまいました。



なぜなのか考えてもやはり答えは出ませんね。



だったらまずは話してみないといけないでしょう。



夏も本格的な暑さを引き連れ、毎日のように私たちの前に姿を見せます。



学校は夏休みを迎え、それぞれの進路に向けて日々学業に励んでいます。



私たちも例外ではなく、暇を見つけては3人で集まり勉強会をしています。



ことり「今日も暑いねー」



海未「そうですね、こう毎日だとさすがにダレてきてしまいます」



穂乃果「海未ちゃんでもそんなことがあるんだねぇ」



勉強の合間に行われる会話には何の変化もありません。



集中し学業に励む。学生の本分とも言えるもので私もそれを望んでいたはずです。



ただ、いざその状態を迎えるとどうしても違和感が拭えないのです。



穂乃果「海未ちゃん、ここの問題間違ってるよ?」



海未「えっ?あっ、本当ですね。ご指摘ありがとうございます」



穂乃果「穂乃果に教えられるなんて、海未ちゃんもっと集中しないとダメだよ」



海未「そうですね、最近は私のほうが弛んでいるのかもしれません」



私たち3人の関係は変わりません。今までもこれからも何にも代えがたい大切な存在です。



変わったのは多分、穂乃果なのかもしれません。



いえ、穂乃果が変わったという表現は語弊があるかもしれません。



ですが現実にあの日を境に穂乃果は、今までの穂乃果とは違った様子を見せ始めました。



確かにそこにいるのは穂乃果なのですが、



どことなく違った雰囲気を私は感じていました。



ことり「穂乃果ちゃんやる気満々ですごいね。ことりも負けないように頑張らなくちゃ!」



ことりはいつもの様子ですが、今の穂乃果をどう思っているのでしょう。



私よりも穂乃果と長い付き合いのことりのことです。きっと何か考えがあるのでしょうが・・・



穂乃果「海未ちゃん、ここの問題教えてー」



海未「はい、それはですね・・・」



傍から見れば、ただの勉強風景です。幼馴染み3人が仲良くしているようにしか見えないはずです。



そう見えないはずというより、そうでしかありえないはずです。



私はそういった思考にばかり気が向いてしまい、全く集中できていませんでした。



穂乃果「2人ともまた明日ねー」



海未「はい、明日は私の家で勉強しましょう」



ことり「穂乃果ちゃん、バイバイ。また明日ね」



今日は穂乃果の家で勉強していたため、帰り道はことりと2人きりです。



私もことりも最近色々とありましたが、そのおかげもあって以前よりもよりお互いを大事にできていると思います。



だからこそ、今の状態のままではいけないと感じ始めていました。



ことりに聞いてみましょう。今の穂乃果をどう思うか。



ことり「海未ちゃん、あのね」



私が話始めようとしたその時、言葉を先に発したのはことりのほうでした。



ことり「海未ちゃんは気づいているよね。穂乃果ちゃんが何か変なことに」



やはりことりも気づいているようですね。



海未「ええ、そのことでお話しようと思っていたところです」



ことり「やっぱり海未ちゃんも思ってたんだね」



海未「はい、ただ今の状態に違和感を感じているだけで、悪いことにも思えないのです。」



そうだ、違和感こそあれど今の穂乃果は真面目に勉学に励むことが出来ている。



これの何が悪いことだと言えるのでしょう。



ことり「私もそう思うよ。でもね、今の穂乃果ちゃんはたぶん私たちの知ってる穂乃果ちゃんじゃないよ」



知らない穂乃果。ことりにとって自分がまだ知らないこと。それは私たちのことにおいても、良い面や悪い面を含めてまだまだ知らないことがある。



そう穂乃果に教えてもらっていた。一部だけではなく、それら知らないことも含めてその人だということ。



それを知ったうえでことりは発言している。今の穂乃果は私たちの知っている穂乃果ではないということ。



私はその意味を一度考えたうえで



海未「考えたくはありませんが、今の穂乃果は穂乃果の姿をした何かにしか見えないのが正直なところです」



ことり「私もそれを考えたよ。でもそんなことってありえるのかな?」



その通りだ。穂乃果が穂乃果とは別の存在である。そんなことはあり得ない。だけど



海未「私は穂乃果がどうなってしまったのか知りたいのです。あくまでも私たちが心配しすぎている前提で話は進めますが」



ことり「だよね。私も穂乃果ちゃんのこともっと知りたい。穂乃果ちゃんが何を考えているのか知りたい」



海未「はい、私たちにはそれを知る必要があるはずです」



ことりとの帰り道はあっという間で、それでも明日から動き出すための決意を与えてくれるのには十分なものでした。



同時刻 高坂家 穂乃果自室



穂乃果「穂乃果は穂乃果だよね。今までも穂乃果は穂乃果だった。ここにいるのも穂乃果」



穂乃果「スクールアイドルをして、学校の廃校をなくして、生徒会長になって、海未ちゃんとことりちゃんの幼馴染み」



穂乃果「それが穂乃果なの?今までしてきた全てが穂乃果が自分でしたことなの?」



穂乃果「あれ?やっぱり穂乃果ってなんだろう。私は何なのだろう」



次の日



今日は昨日ことりと話した通り、穂乃果の様子について探りを入れてみましょう。



そうすればどこから話を進めるべきでしょうか。単刀直入に聞いてもおかしいですし、まずは穂乃果の様子を見てみないと。



穂乃果「海未ちゃん、おはよー」



海未「おはようございます。穂乃果、今日も遅れずに来れましたね」



穂乃果「最近は毎日遅れてないのに、その都度言わなくてもいいよぉ」



穂乃果の遅刻は確かに無くなりました。それどころか



ことり「ごめーん、2人とも待った?」



海未「いいえ、穂乃果も今来たところですよ」



ことりよりも早く来ることも多いくらいです。



ことりも5分以上早く来ているので、穂乃果も前と比べると相当早いのです。



穂乃果「さあ、今日も元気に学校へ行こう!」



海未「穂乃果はいつも元気で何よりです」



言葉とは裏腹に、私はいつもと同じ違和感を感じていました。



まだなんと表現していいか分からないこの違和感は何なのでしょうか・・・



朝から帰宅する夕方まで穂乃果を見ていましたが



違和感こそあれで、穂乃果にこれといった変化はありません。



クラスメイトなどに穂乃果の様子を聞いてみましたが、



最近は前よりも勉強するようになっただとか



大人になっただとか



そんな話しか聞こえてきません。



やはり私の勘違いなのでしょうか?



これでは何も前には進みそうにありませんね。



同日夜 穂乃果自室



穂乃果「海未ちゃんがいつもにまして穂乃果を見ていた」



穂乃果「穂乃果の何を見ようとしているんだろう」



穂乃果「穂乃果は穂乃果でしかないというのに」



穂乃果「ねぇ、そうだよね。・・・・・・か」



次の日 教室



ことり「私、直接聞いてみるよ」



ことりの唐突な言葉が響く。



海未「直接といっても、どのように聞くのですか?穂乃果にあなたは穂乃果なのですかとは聞けませんよ?」



ことり「任せて。私なりに作戦があるから大丈夫」



海未「ならいいのですが・・・無理に聞き出してはダメですよ」



忠告はしたものの少し心配です。無理をしないといいのですが。



ことり「ほーのーかちゃん!」



穂乃果「わっ!どうしたの、ことりちゃん」



ことり「穂乃果ちゃんに聞きたいことがあって来ました」



穂乃果「穂乃果に?」



ことり「うん、あのね」



私はその様子を少し離れて見ています。ですので2人の会話が聞こえることはありません。



ことり「穂乃果ちゃんは、どうして急に勉強し始めたの?」



穂乃果「どうしてって・・・海未ちゃんにもいつも言われていたし、もう高校生活も終わっちゃうから、最後くらい勉強しておこうかなって思って」



ことり「そっかー。穂乃果ちゃんはやっぱりしっかりしてるね」



穂乃果「そうなんだよー、穂乃果はやれば出来る子なんだよ!!」



ことり「うん、そうだよね。穂乃果ちゃんは何か目標だったり、やりたいことがあるとそこに向かって一直線だもんね」



穂乃果「やりたいこと・・・?」



ことり「そうだよ?小さいころからいっぱい色んなことを穂乃果ちゃんはしてきたの。私と海未ちゃんはついていくので精一杯な時もあったけど、穂乃果ちゃんについて行って後悔したことは一度もないよ」



穂乃果「ことりちゃん・・・」



ことり「穂乃果ちゃんについて行って、私たちは知らない景色を沢山見て感じられた。穂乃果ちゃんはいつも私たちを連れて行ってくれた。そんな穂乃果ちゃんが私は大好きだよ。考えなしに行動しちゃうけど、大切なことはしっかり心の中に持っている。だから・・・」



ことり「今の穂乃果ちゃんは何をしたいのか私には分からないんだ。分からなくて、どうしたらいいかも思いつかないの。」



穂乃果の表情が私から見ても暗くなっていくのが分かります。ことりは一体どんな言葉をかけているのでしょう。いいえ、そんなことを考えるよりもやはり私も行くべきですね。



そう思い歩みだしたその時



穂乃果「ことりちゃんが求める穂乃果はそういう穂乃果なんだね。今の私ではダメなんだね」



ことり「ううん、私の知らない穂乃果ちゃんをもっと知りたいから、穂乃果ちゃんが私を否定してくれたみたいに私ももっと穂乃果ちゃんを知りたいの。そのために今の穂乃果ちゃんを放ってはおけない。ことりは分かるよ」



穂乃果「何が分かるの!!!」



穂乃果が叫んだ。教室の視線は一点に穂乃果を見つめる。



穂乃果「穂乃果だって分からないことを何でことりちゃんが分かるの!?」



ことり「穂乃果ちゃんが今何を悩んで、どうしてそうなってしまったかは私は分からない。私が分かるのは穂乃果ちゃんが何かに苦しんでいることだけ。私にはそれだけで十分なの。それだけで穂乃果ちゃんを放っておけない理由になるの」



ことりの言葉の後、少しの沈黙を経て



穂乃果「やっぱり何も分からないんだよね。そうだよ、誰も分からないんだよ」



そういって穂乃果は教室を飛び出していった。



海未「ことり、いったいどうゆう話をしたのですか!?」



ことり「上手くはいかなかったかもしれないね。でも、今の穂乃果ちゃんは自分を見失っている。穂乃果ちゃんが別人になったのではなくて、今まで見せていなかった穂乃果ちゃんの気持ちに穂乃果ちゃん自身が混乱して、分からなくなってしまっているのだと思う」



海未「だとしたら穂乃果に私たちはどうすべきなのでしょうか?」



ことり「私たちの時とは少し違う問題かもしれないよ。自分の気持ちに後ろめたさを感じて悩んでいた私たちは、それが自分の考えだって分かっていたから」



海未「穂乃果は今ある気持ちが自分の気持ちなのか分かっていないということですか?」



ことり「私にもそこまでは分からないよ。でも分からないからこそ何かでそれを紛らわそうとしている。その何かはきっと今までやってこなかったものに現れてるんだと思う」



海未「!!!。まさかそれが学業であったり、普段の生活態度に出て・・・」



ことり「これはあくまでことりの想像だから、本当のことはまだ分からない。でも、やっぱり私は穂乃果ちゃんを今の状態のまま黙ってみていることは出来ないよ」



やはりことりは凄いです。私たちのことを誰よりも考え心配してくれる。



穂乃果、そんなことりが今もあなたを心配しています。



それが分からない穂乃果ではないでしょう。だったら



海未「ことり、私に協力してくれますか?」



ことり「ふふ、海未ちゃん、私の返事分かって聞いてるでしょ?」



海未「そうかもしれませんね」



穂乃果待っていてください。今度は私たちがあなたを。


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください