2018-04-30 03:16:03 更新

人間の世界で、vtuberが流行り始めた頃。

地球の裏側の、そのまた裏側にあるエルフの森で、エルフのえるは元気いっぱいに、珍しいピーマンと挨拶していました。


「おはよう、ワロタピーマン」


紳士なワロタピーマンは、カラカラとマラカスを振って、挨拶を返します。

エルフの森には沢山の珍しい生き物がいます。

えるは、そんな珍しい生き物と会話するのが大好きな、280才のエルフの女の子です。


「キリトカナーwwwキリトカナ―www」


どこからか、イキリガラスの鳴く声が聞こえます。


「じゃあ、イキリガラスが鳴いたから帰るね」


えるは、ピーマンにバイバイ、と手を振ると、お家の方へと走って行きました。


~~~


えるのお家は、森の真ん中にあります。

おおきな切り株みたいな可愛らしいお家です。


「おかあさんただいまー!!」


お家から、えるのお母さんがでてきました。


「える、獲物は手に入れたの?」


えるは首を振ってこたえます。


「じゃあお家には入れてあげられないわね」


えるは悲しい顔をしました。

その昔、エルフ民族は弓矢で動物を狩って生活していました。

いわゆる狩猟民族です。

由緒正しいエルフの血を継ぐえるは、狩猟民族としての生活を強いられているのです。


「鳥をつかまえてこないとおうちに入れませんからね!」


そう言うと、ドアを閉めて、えるを締め出してしまいます。

今日も、おうちに入れてもらえなかったえるは、肩をガックリと落として、とぼとぼとブランコに向かいました。

えるの記憶が正しければ、もう202年はおうちに入れて貰えていません。


「はぁ…ガスも電気もあるのに、いまだに狩猟に頼った生活なんて…」


中途半端にインフラの整った生活ほど、面倒なものはありません。

えるはブランコを漕ぎながら、夕日を見つめます。

紅く染まった西の空を、イキリガラスが群れになって、飛んでゆくのがみえました。


「生きるってなんだろう」


えるは、なんだか悲しくなってしまいました。

そんなえるの様子を、見守る一人の女の子の姿がありました。

でろーんちゃんです。

えるの友達のでろーんちゃんは、えるのそんな生活を、何とかしてあげたいと思いました。


「よし、うちが、えるちゃんの生活水準をあげたるわ!」


そう言うと、でろーんちゃんは、ガソリンスタンドに走っていきました。


~~~


やがて、夕日も沈み、お月様が森を照らし始めました。

えるは、ブランコを漕いだ疲れで、そのまま寝てしまっています。

半袖Tシャツのえるには、夜の森はとても寒いです。

このままだと風邪をひいてしまいます。

森のお友達も、心配そうに遠くからえるを見守ります。

そんなお友達の背後から、パチパチと音が聞こえ始めました。

その音はやがて大きくなり、悲鳴も混じるようになります。

すやすやと寝ていたえるも、周りの声にぱちりと目をさましました。

辺りは悲鳴と叫び声で一杯です。

真っ赤な炎に包まれ、辺りには焦げ臭いにおいが漂っています。


「キャンプファイヤーだ」


寝ぼけたえるは、そんな事をぼんやりと言いましたが、はたと我に返ります。


「森のお友達が!」


えるは慌てて辺りを見回します。

炎に包まれた森の中で、一本のお友達が真っ白に燃えていました。。

ワロタピーマンです。

ピーマンはマラカスを振りながら燃えています。

その炎は一向に消える気配がありません。

よく見ると、燃えた先からエレメンタルパワーによって再生され、そして炎で焼かれていっているのです。


「ああああああああ!」


ワロタピーマンの苦しそうな叫び声が響き渡ります。

再生した先から燃やし尽くされる生き地獄。


「ピーマン…」


そんなピーマンに、えるには何もできません。


「ごめんね」


えるはワロタピーマンに謝ると、慌ててお家の方へと走り出しました。

ワロタピーマンは見送るようにマラカスをしゃかしゃか振りました。


~~~


お家は真っ赤に燃えていました。

可愛らしいお家だったのに、今では炎に包まれ、まるで一本の炎の柱のようにも見えます。

お母さんたちは、そんなお家を、ただ茫然と眺めていました。

そんな時でした。


「おーい、えるちゃん」


えるを呼ぶ声がします。

聞き覚えのある声に、えるは振り向きました。


「でろーんちゃん!」


お友達のでろーんちゃんが、手を振りながら走ってきました。

左脇には赤いタンクを抱えています。


「えるちゃん!早く避難しよう!ここから逃げないと焼け死んじゃうよ!」


でろーんちゃんは、えるの手を引っ張って言いました。


「え、でもどこに避難すればいいの?」


エルフの世界には避難訓練はありません。

エレメンタルパワーで全てが解決するので、そもそも避難と言う概念が無いのです。


「人間の世界だよ」


でろーんちゃんの言葉に、えるは驚きました。


「人間の世界に行けるの?」


お母さんは怒りました。


「ダメです、エルフは高貴な生き物、人間の様な下等な世界に連れて行くなんて…」


でろーんちゃんは、お母さんの言葉を遮るように重そうなタンクを持ち上げました。

赤いタンクからは、ちゃぷちゃぷと音がします。


「このタンクをお家にぶち込んだらどうなるかなぁ」


そんな事をしてしまったら大爆発を起こしてしまいます。

爆発で跡形もなくなってしまったら、エレメンタルパワーは働きません。

何故なら、形状が一割以上残っていなければその効果が発揮されないからです。

そうなると、新しいお家を立てなければなりません。

多くのお金がかかってしまいます。

火災保険料もかかります。

おかあさんは、ニッコリ笑いました。


「行ってらっしゃい、える、貴方はもう一人で生きていく時期なのよ」


えるは驚きました。


「え?本当?お母さん」


お母さんはええ、と頷きました。

かくして、エルフのえるは、人間の世界で生活することになりましたとさ


めでたしめでたし


ー完ー


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