2018-06-07 13:51:24 更新

概要

「翔鶴姉と高校生活!」喜んでいたのも束の間、そこは力こそ正義の想力学園都市だった。人型のトンボを探せ。春季合同演習で優勝し、桜トロフィーを入手せよ。艦娘学園青春劇な翔鶴&瑞鶴&瑞鳳の戦後任務編。


前書き

↓注意事項をご確認ください。

・シロートの拙い台本形式、一人称、三人称、複数視点、お話ごとに変わって読者の混乱を招くと思われます。

・相変わらずの誤字脱字。気を付けますが、前以て。

・誤字脱字修正の更新多し。

・顔文字や絵文字の使用を不愉快に思う方。

・本編の更新に間が空くのを嫌う方。

相変わらずやりたい放題なので穏やかな海のように広い心をお持ちの方のみお進みください。





【1ワ●:撃てば鶴のコチョウラン】



           ➶



ちょっと長くなるけど、昔話をしよう。


ブレイド・ハッカー事件。

アブーのキスカ事件よりもずっと前で、私が対深海棲艦海軍に入ることになった切っかけの事件なんだけども、簡単にいえば、対深海棲艦海軍のドローンのネットワークがサイバーテロを受けて、民間人に被害が及んだ事件のことだ。


艦兵士の数に対して保守海域が広すぎる。だから、海軍は保守のために当時は軍事衛星で安全海域を見張り、その情報を軍部がキャッチ、そして一部の海域においては哨戒船から小型無人航空機(ドローン)を飛ばして使っていた。軍人を載せた哨戒船で定期的にぐるり、と海域を周ってなにか異常があれば、鎮守府に通達、私達が抜錨する。


ブレイドというのはダークウェブで暗躍していたフリーのlTエンジニアの異名だ。モンゴル人の凄腕ハッカーでネットの海を自由に泳ぎ、漫喫とファミレスを渡り歩く野郎である。体内にチップやアンテナを埋め込んで、歩くWIFIスポットみたいな野郎だったんだよね。背中からブレイドみたいな鋭い金属片を生やしたセルフ人造人間よ。


ダークウェブで脱法ハーブを売買、その一人に海軍からのお客様が現れたことで起きた事件だ。詳しい事情は長くなるけど省略するけども、要は脱法ハーブ関連の取引で、ハイになった軍人がそのドローンのメモリー情報から内部システムアクセスの機密を漏らしたらしい。


ブレイドはドローンの認識情報とカメラワークに一時的な細工をした。ブレイドにとっては海外からの密輸船を日本に着港させる目的のデカいヤマだったらしい。面倒臭えことにこいつは海外からハックしており、ネットワークをいくつもの国境のサーバーを通していたらしく、捕まえるのにいくつもの国を通す必要があって時間がかかった。


けども、内閣が本気出して対処に当たって(沖縄の米軍基地の責任も問われたから、米国との共同捜査になった)、指名手配されたブレイドは無事にひっ捕らえた。


あの日、ブレイドのやつがドローンのカメラワークに細工したせいで、軍は安全海域哨戒で深海棲艦の発見と対処が遅れた。


衛星情報とドローンの情報が噛み合わないとのことで、異変対処は20分のロスが生じてしまった。鹿児島と沖縄間の海域に空母ヲ級改flagship(ブルーアイズ)の侵入を許し、私が乗っていたお嬢様学校の船が襲われたというね。


当時の空母は

龍驤、赤城、加賀、瑞鳳、翔鶴、隼鷹。


アカデミーには飛龍、蒼龍、そしておちびとかの第6駆がいたらしい。これから後に今の最終世代が続々とやってくる黄金期が到来する。ちなみに、この事件がきっかけで米国からサラトガさんが日本に駐屯することとなった。


全員が基本的な実力はあるものの、空母は総入れ替えになった時期があり、まだ全員の経験が薄かった。航空力が不足していたのだ。当時、彼女達はバラバラに配置されており、北方においては空母において、完全にロシアに頼っていた。


あの時、南方にいたのは翔鶴姉と、瑞鳳だ。龍驤は私と入れ違いで解体申請してた。


鎮守府(闇)では私が一番の後輩であるけども、空母勢はけっこう仲が良い。私の建造理由はみんな語らずとも知っている。龍驤はあの事件の時には会わなかったし、鎮守府で一緒になってからしか知らなかったけどね。その事件の後、私がアカデミーにいた頃に解体申請した後に提督学校のほうに行ってたみたい。


私の友達と、翔鶴姉と、瑞鶴になる前の可愛げのないガキ。


1羽の鶴が飛び方を覚えた日の話だ。



2



知多半島の常滑だったかな。私は東京の葛飾区に住んでたけど、親が勤属だったから、中学の頃から転々としていてさ、それも2、3年のペースだ。


転校とか嫌だったね。友達は転校した後も連絡をくれるけど、少しずつ疎遠になっていって、また新しい居場所で友達作ってって、その繰り返しだ。私が人生でつけた足跡は少しの間は残るけど、すぐになくなってしまう。波打ち際を歩くみたいにね。


だから、もう私のほうから新しい場所に馴染むよう努力するのも止めていた。どうせまたすぐに関係が事切れるのに、その度に辛い思いをするのは勘弁だったからね。そんな風に考えていたからか、顔に出やすい私は目付きが悪かった。深海鶴棲姫並みにね。愛想もなく、特別仲の良い友達はいない。


その時は修学旅行で東京から京都へと新幹線で向かっていた。その途中で寄り道も許されていたから私の班は名古屋の百貨店にあるブランドのベーカリーに寄る予定だ。そこからセントレア空港で沖縄に飛ぶ。


私は新幹線の中では適当に入った班で相槌を打っていたくらいだ。へえ、そうなんだ。ふうんって感じ。


そんな私は綺麗なお嬢様学校の制服に身を包んでる。公立が良いって進路希望出したけど、ちょっと親の意向でね。


東京も大阪も名古屋の都市部も住んで電車で学校通っていたけどさ、都市部って息苦しくて嫌いだ。お昼になると、そこらのビルから人がぞろぞろと巣から蟻のように出てくるあの感じを窓から見下ろしながら、私は電車を乗り換えて港のほうに向かった。


ちょうど海に対深海棲艦海軍の輸送護衛任務の到着時点で、高い空に豆粒みたいなのが飛び回っていた。隣でハゼ釣り上げてたおっちゃんの隣で、スタバのコーヒーを片手にその場に座り込んで、空を見上げてた。


「つまんね」


腰を上げて、空を見上げながら港の船着き場をなんとなく歩いた。上を向いていたせいで、ドボン、と海に落ちた。申し訳ない。友達に手伝ってもらって、海から脱出して腰まで長くしていた黒髪を雑巾みたいに絞る。


ズブ濡れなのを心配されて、友達が着替えを持ってきてくれた。3時間くらいの余裕があったので、喋りながら時間を過ごした。対深海棲艦海軍の話に流れた。中部地区にある適性検査施設の前をちょうど通った時に、後輩がここで適性を受けて、適性があれば艦娘というのになれる、と教えてくれた。それがきっかけ。


適性検査施設。

検査を受けに来た人はもともと適性率があった場合を考慮されていたため、結果が出る前から、勧誘文句ばかりだった。戦争のイメージよりも、現在の艦娘(当時は男性適性者の明石君がいなかったから艦娘が公式名称)の日常を話されていた。それは明るく楽しい鎮守府での日々だ。ほとんどの鎮守府で仲間や家族と呼べる人が出来る、とか、軍規は鎮守府によって差異があり、お堅い軍隊のイメージとはかけはなれているとか。個性的な人は多いけど、不思議なことに良い人しかいないとか。


「軍艦のことは知らない、ですよね。興味ない子が知っていそうなのは大和かな。昔は日本の軍艦といえば長門と陸奥だったんだけども」


「「ああ、宇宙戦艦ヤマト」」

友達と声が重なった。


「ふふ、そうそう。それのせいかもね。その宇宙戦艦ヤマトの名前の由来が軍艦大和なんですよ。ああ、艦娘は宇宙には行きませんからご心配なさらずに」


良くあるやり取りなのか、こなれていた風だ。


当日は大騒ぎになった。

現存する艤装と照合して、私と後輩のどちらも80%近い正規空母の適性率を叩き出したからだ。


私が瑞鶴適性。

後輩が葛城適性。


勧誘が半端じゃなかったな。

高校生の身分だったし、戦地なんてところに飛び込む勇気もなく、その場では適当にごまかして10分くらいで帰った。「無理、うん私は無理ですよ」と後輩は苦笑いした。後輩は妖精可視才もあることが判明したせいで、勧誘は常軌を逸していたけど、ハッキリとお断りしていた。ちなみに正規空母+妖精可視才は軍では最上位のブランドだ。世界で10人しかいないらしい。


私は興味あったんだよね。


自由な空、どこまでも広がる海。

都会のような息苦しさはない。海全てが私の活動拠点になると思ったらスケールがでかすぎて、大阪や名古屋、東京に移ろう度にため息吐いていた自分が小さく見えてさ、私のなかでは居場所の問題だったのだ。


「お試し建造してみます? すぐに解体出来ますし、書類にサインしていただければ」


「私達、修学旅行中でこれから沖縄に行くのよ」


「奇遇ですね。沖縄の保管庫に瑞鳳と葛城の艤装があるんですよ。時間があるのなら、沖縄の海を足で滑ってみてはいかがです。面白いですよ。連絡は入れておきますのでよろしければご検討ください」


後から知った話、この時の艤装は横須賀にあって、わざわざ私達のスカウトのために大至急輸送したらしい。とんでもない熱烈なスカウトだった。


それから沖縄行って、そこでダラダラ過ごして翌日にその話をして、那覇の適性検査施設に顔を出してみるとした。後輩は興味なさそうだから、私一人でね。本当に瑞鶴艤装があった。建造効果の書類を読んで夢見や精神影響の項目が気になったけども、怖いもの知らずで勝ち気な性格をしていたから、そのままお試し建造をした。


「適性率が高いので初期の精神影響は心配ないとは思いますが、気分は大丈夫ですか」


真珠湾攻撃、マリアナ、エンガノ岬。

空母機動部隊の始まりから終わりまで。


「なんだこりゃ……日本海軍ザッコ」


当時、生意気な高校生女子に過ぎなかった私の感想。


それで南方鎮守府の場所を教えてもらって、職員と一緒に歩いた。海には哨戒を終えた艦娘がいた。翔鶴と瑞鳳、龍驤がいた。それぞれ教えてもらって、遠くからあの夢見の負け犬どもが雁首そろえている風景を眺めていた。


しばらく海のほうを見ていると、艦載機が舞った。

艦載機は空を飛び回って、やがてポニーの白髪の女の腕にある飛行甲板に着艦して、矢の姿に戻る。初めて見たその異様な光景に目を奪われた。ねえ、と大きく声をあげて、その白髪の子に手を振った。その人はあごに人差し指を添えて、唸るようなポーズを決めて、しばらくすると、こちらのほうに進んで来た。瑞鳳もだ。龍驤は、用事があるとかでどこかへ行ってしまった。


「今なにやってたの?」


翔鶴「偵察ですね。待機中は定期的に飛ばします」


「へえ、そのラジコンみたいなので戦うのか」


今、思えば大変に失礼な立ち振舞いだったな。

仕事中なのに、喋りかけまくってたし。


瑞鳳「この子が例の……?」


翔鶴「はい? 知っているんですか?」


翔鶴「せ、正規空母の瑞鶴ですか?」


「そんな感じの名前だったかな」


翔鶴「私――――翔鶴である私の妹です!」


子供っぽい顔で笑っていた。


「妹って、ああ、職員の人がいってた姉妹艦効果とかいうやつね」


翔鶴「すみません。興奮してしまいました。すみません、書くものをお持ちですか。もしも……もしもその気があるのなら」


翔鶴「私に連絡をください。疑問があればお答えしますので」


瑞鳳「翔鶴さんの妹だからねえ」


「だからなによ。温いわね。夢見は経験したけど、そんなんだから負けたんじゃないの。大戦時の負け犬空母が雁首揃えて馴れ合いしてる風に見えるけど? 今も手一杯で余裕ないんでしょ? なんでそんなにへらへらしてんの?」


「ええと、その、この子は適性していない20%の個性と考えて頂ければ」


瑞鳳「気持ちは分かるかなあ。でも私達、別にあの時の軍艦じゃないからね。あくまでモチーフに過ぎず、です。あなた、軍に来る気はあります?」


「ないかな。あんたはなぜ艦兵士に?」


瑞鳳「多分、あなたがこうやってここに来た理由と同じかな。ああ、私は神主の娘なんだけども、やっぱりこの職は必要不可欠で選ばれた人がやるしかないんだよね」


瑞鳳「ちなみにさっきいた龍驤さんはやりがいがあるからって建造理由だね。かなり実力のある人だよ」


「サラトガにボコられてたイメージしかないかな。それで白いのは」


この人は立ち振舞いから毛並みの良さが伝わる翔鶴だった。わざわざ出兵するような動機が気になったのだ。親族だって反対しただろう。調べた限り、殉職も現実的にある職業だ。それに生活に困っているようにはとても見えない人だった。


「あんた、育ちは良いよね。建造して成長止めたのはいつ」


翔鶴「ええと、建造したのは20歳の誕生日です」


翔鶴「ええそれはもう反対されましたよ……ですけど、その歳になれば強引に行けたので、書類申請して、軍に入りまして、あ、家は――――」


お家柄に目玉飛び出しそうになったわ。


「な、なんで? そんなに戦争に出たかったの? 望めば何者にでもなれるのに」


翔鶴「カッコいいですよね」


「過去の鉄屑の依り代がカッコいいって」


「オタクってやつか」


翔鶴「本来、私には手に入らないものを手に入れられる場所がここだったんです」


ちょっと納得した。兵隊は家柄的に揉めたことだろう。翔鶴姉の親とは赤城さんと元帥さんが密約を交わしていたらしい。理解のない親ではなく、彼女が翔鶴となることの影響力には理解を示してくれたらしい。死なせるな。この約束でなんとか軍に籍を置いているけど、あまり危険な作戦には出してもらえていないことが嫌だとさ。


ほら、南方第2、私のいた鎮守府で陽炎、ああ、前世代の陽炎ちゃんね。そいつと同期の不知火と、もう一人、殉職した海域があって、その事件もあって翔鶴姉の親が連れ戻しに来たらしい。引き留められたんだけども、翔鶴姉が栄光の元帥艦隊に異動した理由である。


翔鶴「飛行する瑞兆動物の名前、素敵ですよね。私もそんな風になれたらいいなって思いまして。知らなかったんですよね。飛び方」


気恥ずかしそうなのは詩的な表現を日常会話で使ったからかな。


なんとなく意味は分かる。親の都合に振り回されてきたから、私も知らん。


いつか飛び立つ時のために、その身体の羽を綺麗に繕って、美しくなる。そのままでは綺麗な鳥で、その翼は本懐を全うしない。本来の機能の使い方を忘れかけていたのだろう。


「バッカじゃないの」

当時の私はこんなやつだ。

しょせん箱入り。わざわざリスクの高い選択をした。


翔鶴「ええ、そう思いますね」

困ったように笑った。


やってみっか。その時の私はそんな風に考えていた。調べた限り、誰かがやらねばならない仕事なのだ。さもなくば深海棲艦とかいう奴等に私達は殺されてしまうからね。


その程度の知識は義務教育時代に学んだけれど、痛感したのは今しがただ。誰にでもやれる訳でもないのなら、単純だが、やりがいもあるだろう。


汚れるのも別にいい。私はもともと品がない。基本的にいつも目付きが悪く、不機嫌そうといわれるやつで、控え目に言ってもこのお上品な制服は似合ってない。


「でも終わりがない戦いなんだよね。老いない身体、永遠に耐えられる身体、壊れるまで戦う覚悟が要るんじゃないの。それこそ、あんた達の艤装モデルの軍艦みたいにさ」


翔鶴「ですね。普通の精神では持ちません。私達の精神的に個人差はありますが、続けられて半世紀ほどといわれています。どうして戦意をなくしてしまうのか、本当のところは私達にはまだ理解できませんね……体の時が止まり、時代から取り残されるゆえなのでしょうか」


瑞鳳「運命があるんだよ、運命が」


「はあ? 運命?」


瑞鳳「そうそう。私達は自由に見えて、全て収束的な選択肢を選び続けているってこと。あなたが瑞鶴となれたのなら、それもそういうこと。人間には神様から与えられた役割があるんだよ。こうなればこうなるって感じが宇宙の真理だと思うなあ」


この幼児体型女は不思議ちゃんなのか、それとも変な宗教でもやっているのか。少なくともふざけていったようには見えなかったから、引いた。


瑞鳳「終わりは必ずあるよ、うん」


瑞鳳「出会った記念に五芒星あげるよ」


瑞鳳「ふふ、幸運のお守りにね。私と瑞鶴は運の良い空母仲間だし」


「運がいい……とんだ皮肉だよね」


胸のポケットに、五芒星の金属を入れられた。闇で一緒になった時にづほに聞いたけど、本人いわくあげたことを忘れていたようだ。加えていえば、闇で一緒になるまで、この日のことも忘れていたという。「あー……ああ! ブレイド・ハッカー事件の前の日の」といってたしさ。もらったこの五芒星は、すぐに壊してしまったんだよね。


「あほらし……」


私の修学旅行は海のことばっか考えて、あんまり楽しめなかったという。先生にも相談してみて、色々と調べもした。


正規空母。その役割の大きさに尻込みした。責任があまりにも大きすぎたのだ。私のミス1つで、大勢の命が危険にさらされる。逆に私の活躍1つで大勢の命が救われる。そしてその日の夜に職員に電話した。


「解体はどうするの?」


「すみません、もう適性検査施設はしまっておりまして。明日の朝、都合が悪ければお住まいのご近くの適性施設に出向いてもらえれば対応出来ますので」


じゃあ明日は、班行動があるから、明後日の地元でいいか。夢見はうっとおしいけども、その旨を伝えた。そして布団に潜り込んだ。友達が話しかけてきた。


「私、葛城適性あったよね。調べたけども、私の生い立ちにそっくり。葛城の山の近くだし、家がヤタガラス信仰してたし、おじいちゃんから葛城の話を聞いたことがあるんだよね。おじいちゃんのおじいちゃんが海軍にいた時の話」


「へえ……私は特にないなあ。葛城にならないんだっけ?」


「無理無理。お父さんが絶対に許さないよ」


まあ、この学校に子供を通わせているような親は大方、認めないだろう。


この翌日に乗った船で、私達はブレイド・ハッカー事件に巻き込まれたのだ。



3



島のほうから警報が急に鳴り響いて、船の操縦士さんが無線機に大声出したもんだからさ、驚いた。遠くの空に小さい浮遊物体が見えた。ヲ級改の艦載機のタコ焼きである。青い空に白い雲を引くような群れが、ケタケタと笑い声をあげるかのように突撃してた。あれはなんだろう、と空を見上げていたら、背後の窓がパリン、と割れた。


船はすぐさま陸地に引き返した。狙いを定められていたから、その船は途中で操縦士さんが救命具を私達に着させた。私の頬を弾丸が掠めて、右頬が切り裂かれ、焼かれるような痛みに襲われた。リアルな死を突きつけられて私はもうこの時はくっそびびって、友達と肩を寄せ合って運命を天に委ねていた。


私の胸に強い衝撃が迸る。建造状態でも死んでもおかしくない致命的な場所、心臓付近に機銃弾が当たったのだ。それでも生きていたのは、胸に入れたままだった金属の五芒星のお守りのお陰だった。


しかし、九死に一緒を得ても、ただ怯えることしか出来ない。


流れ星のような飛行機がすうっと空を飛んでいった。空を奪うため、戦闘を開始していた。私が初めて見た艦娘と深海棲艦の戦いだ。頭では分かっていたが、現場を見ると、正気を保つことすら難しい。こんな死と隣り合わせの戦闘を毎日やるだなんて冗談ではない。船の右の300メートルくらい先に昨日の翔鶴がいた。


《こちら南方第1鎮守府所属の翔鶴ですが、このまま避難してください》


移動し、艦載機を放ち、深海棲艦の意識が艦娘に向けられてゆく。このような事態に備え、明らかに訓練を積んで洗練された動きだった。


しかし、だ。明らかに味方の艦載機は負けている。この時の翔鶴姉の練度は35だったらしい。ヲ級改2体では分が悪い。続いて瑞鳳もやってきて、南方第1鎮守府の千歳と千代田も到着し、制空権を奪い返し、安全海域内での殲滅作戦が開始される。


艦載機をほとんど失った翔鶴姉と瑞鳳は、この船の護衛についてくれた。お陰で無事に命からがら生き延びたといえよう。瑞鳳は提督の指示で途中で護衛を離脱して、艦載機の補充に撤退してから、再び戦線に戻っていった。


船から降りてみなが町の避難所へと向かうために、待機していた軍用車に乗り込んでいた。私は右腕から血を流していた翔鶴にいった。


「こんな馬鹿げた戦いに身を投げるだなんて、しょ、正気とは思えないんだけど!?」


翔鶴「やりがいがあるでしょう」


今度は微笑んだ。


その後に凛々しい表情でいった。


翔鶴「私からしたら、あなたのその判断こそ、正気であっても正常ではないです」


翔鶴「この仕事をやる人がいなければ、人はみな死んでしまうのですよ。代わりに誰かがやってくれる。誰かに押し付けたらいい。そのような精神、またはそれを正当化して賢く振る舞う人間を、私は軽蔑します」


時代と逆流した精神性だった。リスクを回避するために、普通、誰もが良いというものを選んでいく。ガツン、と頭を殴られた気分だ。この海は最初期から、そうだったのだろう。徴兵でなくなった今でも、人類の存亡に直接、関わる仕事だ。


価値観が変わると、世界の景色が甲殻を脱ぐように一新した。

その日は避難し、翌日に家に帰った。オヤジと住んでいる社宅だ。


やる。私は軍に行くために親を説得しようとした。

避難所で後輩にその旨は伝えてあったから応援の声が届いた。


『がんばってくださいね! 瑞鶴先輩!』


おう。葛城を装った後輩からのメッセージだ。

瑞鶴は歴史で二人目らしい。ちなみに翔鶴も二人目。葛城はなんと0人だ。親に猛反対されたけど、誰かがやらねばならないこと、それがなければ、国が滅んでしまうこと。最初期からの海の歴史、その仕事は徴兵ではなくなったから大変だ。子供は親に養われているのだからいうことを聞いていう通りにしろ。その理屈では納得しなかった。ちゃんと稼ぎはあるし、私が国民の命を守る側になるわけだからね。


「そもそも今まで私、文句1ついわずに従って来たけど、もうすぐ18歳だ」


適性検査施設の人にも協力を仰いだ。

よくある仕事だ、と快諾してくれた。


最初期の話をしていた。苛烈過ぎて私は親がますます烈火のごとく反対する理由を与えたとしか思えなかった。そして職員の人は3年前の話を切り出した。


こういう子がいました。とても面倒見がよく、姉妹艦の多い艦種の長女です。


それがなにか。


殉職致しました。その海戦の敗因は空母が足りていなかったということです。


言い訳ですか。


詳細な資料を取り出した。それはもう見事な説得力だった。この齢14歳の子が死んでしまったことから戦争のリアルで事を真剣に受け止めさせた後に、艦兵士が海を警備することによる世界経済への影響力、誰かがやらなければならないのに、誰でも出来る役割ではないこと。そして正規空母瑞鶴の史実、姉妹艦効果を語り、転校の多いお子さんにとって、生涯の仲間が出来ることも訴えていた。後で聞いたけど、この手の親御さんに金銭面の待遇で勝負に出るのはダメらしい。塩を撒かれた経験があるとか。


その日から親はちょこちょこ海のことを調べるようになっていた。

史実のことや、軍の現状、戦法のことまでだ。


スカウトの説得は一週間、続いた。最終的には首を縦に振らせることが出来た。全く、適性検査の人は大変だね。提督さんも所属していたらしいけど、あの提督さんに、あそこに戻るくらいから軍から除籍処分されたほうがマシ、といわせるだけはある。


オヤジはがんこなところがあって、季節は冬に流れた。もう少しで押し切れそうなところまで漕ぎ着けていた。


クリスマスの日、オヤジに神妙な顔でいわれたのよ。



――――お前に役割が務まるのか。




――――瑞鶴っていうのは、素人目から見ても


――――とんでもなく立派な船だぞ。



「やる。話は終わりね」


オヤジとの冷戦もやっと終わった。


その夜、もらった連絡先を使って、翔鶴とまた落ち合う約束をした。翔鶴型の正規空母に直接、話を聞きたくなったのだ。


その日の夜に連絡を入れた。

都合の良い時間に融通を利かせてもらって、栃木のローカル路線の駅で会うことになった。


私はその日ぽかやらかして乗る路線を間違えた。特急で、ちょっと別のほうへと行きすぎた。おまけにその日は豪雪になってた。待ち合わせしていたのが夜だったこともあって、連絡を入れたけども、返事はなかった。


なので帰る頃には電車なくなるけれど、その駅に行ったのだ。遅延して、夜の11時くらいだったかな。予定の時間から6時間もズレてしまった。


古びた駅の校内で石油ストーブの近くにその人はいた。眠りこけていた。後から知ったことだけど、翔鶴姉は南方所属でこの日は提督さんに相談してわざわざ沖縄から来てくれていたらしい。なんてこった。謝った。


「ごめん」


翔鶴「気にしませんよ」


困ったように笑った。嫌み1つ言われなかったことになんか違和感だ。私なら怒るけどね。


「よろしく。親は説得したから」


「私、瑞鶴になるよ」


そういうと、手を叩き合わせて笑顔になった。


翔鶴「あの時は大層怯えておりましたが、大丈夫、ですか」


任せとけ。

物怖じする性格じゃないしね。


「よろしく」


「翔鶴……」


「……姉」


翔鶴「ふふ、無理しなくてもいいですよ」


100%のうち20%くらい不機嫌で目付きが悪い。おまけにびびりだ。けれども、なにが出来るかなんてやってみなくちゃ分からない。


「……あの日は助けてくれてありがとう」


「あの時の翔鶴姉の覚悟が私にも身に付く時が来るまで、戦いの苦を分け合えて、背中を任せてもらえるよう、終わるかもしれない、その時が来るまで」


「永遠に、側にいるよ」


その日に私は、

お上品で窮屈な服を脱ぎ捨てて、

瑞鶴の服をまとって、翼を広げる。


楽な戦いなんて1つもねえ。

おかげさまで腹は決まった。

艦兵士はみんな通る道だ。

だからこそ、私達はお互いを支え合える。


下手くそ。クソみたいに素質がなかった。艦載機を発艦成功させるだけで1年もかかってしまったという。講師の他にも、翔鶴姉が仕事の合間に休みを利用して手取り足取り教えてくれた。「才能はあります」と翔鶴姉はいった。翔鶴姉だから、嫌味ではないよ。


翔鶴姉は私がやることなすことに、一喜一憂する人だった。お姉ちゃんだけど、辛い時に励ましてくれるような感じではなく、ともに落ち込んだり、ともに喜んだりする人だった。


それからの私の全ての時間に、私を思い遣る姉の存在がいた。


一時期、軍法会議で解体処分されて、姉妹艦効果がなくなっても関係は途切れなかった。あのキャンパスの空で見た彗星の幻影は、私があの海を愛していたせいだろう。海辺の砂浜を歩いて、足跡がさらわれるような学生時代を送っていた私が手に入れた居場所だと気づく。


もう初めて翔鶴姉に素直なお礼いえた日のことはなぜか覚えてない。建造してからの私の翔鶴姉に向ける愛はずっとインフレしていて日常的に愛の台詞抜かしていたからね。


出会った時の私はどこか素直になれなくて、

言葉ではどうしても伝えることが出来なかった気持ちも、今ではなんてことないかな。


そんは風に

綺麗な絵空事の物語に、私は生きた。


居場所を季節みたいに移ろうあの時、

欲しかった生涯の仲間もたくさん手に入れた。


今もなお笑える。

しかし、だ。

そんなこともあったね、と心から笑える日は決して

来ないだろう。 私達が共に歩んだのは、血塗られた戦争の歴史なのだから。


だからこそ、でもある。

腐るほど夜を越えて、強さとか優しさとかそういう意味もちゃんと分かる頭になった。


それでも、まあ。

私はアカデミーの頃から変わらないのよね。

私のエンジンというか、飛び方。


この人が喜ぶ顔を見るのが好き。













さて、お楽しみターイム。

夢にまで見た翔鶴姉とのJK生活やってくるわ。






【2ワ●:戦後任務編 翔鶴&瑞鶴&瑞鳳】




後書き




お待ちを。本当にお待ちを。


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SS好きの名無しさんから
2018-05-30 05:16:03

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2018-05-30 05:16:03

このSSへのコメント

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1: SS好きの名無しさん 2018-05-30 15:29:42 ID: vkhAD-Kp

いつも楽しみにしております。いつまでもお待ちしております!あまり無理のないようにしてくださいね!

2: SS好きの名無しさん 2018-06-01 23:37:55 ID: yvgbUIhK

真夜中の石油ストーブ...
秒速5センチメートルの小山駅を思い出した

3: 西日 2018-06-02 03:26:11 ID: 90oUFRwb

<1

ありがとうございます。しばしお待ちください。まだ何も進んでおりません。忘れないよう少しずつ設定を書き留めてる……

<2

ダルマストーブにするか迷いましたが、場面書きながらその映画を思い出したので、有名なだけに想像しやすい方も多そうですし、そのままでゴーしました(色々反省


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