2018-05-27 23:04:14 更新

概要

海未ちゃんから受けた相談について、答えを出すために希は絵里にそれを尋ねる。自分たちの出会いの意味、それは当たり前のことだったのか、そうではないのか。絵里の返事に希は答えを見つけられるのか。


海未ちゃんからの相談事、穂乃果ちゃんとことりちゃんとの関係について。



偶然ではない何か縁を感じるその関係に、穂乃果ちゃんが疑問をもったみたい。



言葉では説明しにくい話をウチに聞いてくるあたり、



海未ちゃんもウチっていう人間が分かっているような、分かっていないような。



その答えについては自分なりに持っているつもりだけど、



ちょっと確かめたいこともある・・・



あのポンコツさんならなんて言ってくれるかな。



---- 希の部屋 ----



夏もだんだんと終わりに近づいているけれど、まだまだ暑い。



日が落ちるのも遅いから、普段なら夕焼けが見えるこの時間にも、



明るい日差しが照り付けている。



約束の時間まではまだもう少しあるけれど、



きっと絵里ちのことだから、結構早めに来ると思う。



今までがそうだったからじゃなくて、ウチが話があるときは、



いつでもすぐに駆けつけてくれた。



だからきっと、今日も。



絵里「希、来たわよ」



玄関のインターホンも押さずに最近では部屋に入ってくるようになった。



最初は少しびっくりもしたけれど、インターホンを鳴らさずに入ってくるってことは、



ウチの家を少しだけ自分の家のように感じてくれてるのかなって最近は思う。



だって、自分の家に入るのにインターホンは押さないやん?



なーんて、最近は思ってる。



絵里「希、何黙ってこっち見てるのよ」



希「ふふ、絵里ちが来るの楽しみにしてたからやかなぁ?」ニコ



絵里「な、なに言ってるのよ////」



照れた顔、その仕草、見慣れたようでそうじゃない。



絵里ちの行動1つひとつが、ウチの色んな感情を生み出してくれる。



絵里「それで話ってのは何なのかしら?」



希「まあ来たばっかりやし、ちょっとお茶でも出すから座って待ってて」



絵里ちにお茶を出すのは何回目だろう。



全部を覚えているわけではないけど、



鮮明に覚えている時がある。



ウチに友達が出来た日。



ううん、正確にはウチが友達だと認識したときかな。



あの時は真姫ちゃんもいたっけ。



希「なぁ絵里ち。ちょっと変なこと聞いてもいい?」



絵里「変なこともなにも、私は希の話を聞きに来たのだから、何でも話していいのよ?」



希「ありがと。あのね、絵里ち。絵里ちはウチが話しかけなかったら今の関係はなかったと思う?」



絵里「1年生の時の話?前にも言わなかったかしら、希が話しかけてくれたから今の私があるって」



希「うん、だからこそあの時ウチが話しかけなかったらウチと絵里ちは全く別の道に進んで、今みたいな関係じゃなかったのかなって」



絵里「もしかしたらそうかもしれないわね。あの時の私は自分の事で精いっぱいで誰かにかまっている余裕はなかった。希の事も気にしていなかったと思う」



希「そうやね、ウチなんかが絵里ちに気にしてもらえるわけないやんね」



絵里「希?」



希「ウチな今ちょっとしたことを考えていて、上手く答えが出せるか分かんない状態なんよ。ウチ自身もそのことについて考えたことはあったし、ちょっとだけ憧れてたりもしたんや」



絵里「その考えに私たちの関係も関わっているの?」



希「うーん、どうやろ」



絵里「なんだか、もやもやするわね。今の段階では希が言いたいことがまだ分からないけど・・・」



絵里「私は希との今の関係はなるべくしてなったというよりは、今の関係にしたというのが正しいと思うわ」



絵里「さっきも言った通り、同じ状況が何度続いたとしても、私から希に話しかける余裕はなかった。だから私が今の道へ進むためのことをすることは出来なかったと思う」



絵里「そういった意味で私は希によって今ここにいるようなものなのよ」



絵里「希が話しかけてくれたことが今の道へと進むためのキーだったってわけ」



希「じゃあ、ウチと絵里ちは別々だった可能性もあるわけや」



絵里「もちろんそうよ。あの時こうしていればなんてことはいくらでもあるでしょう?」



絵里「でもね、私と希があの時あの場所にいたのは誰の力でもないわ」



絵里「それが運命なのか、必然なのかは分からない。だけど、私と希は同じ学年で、同じ高校で、同じクラスで、同じ時間を共有できる、そんな場所に一緒にいたのは事実よ」



絵里「希との出会いが運命だなんて言ったらカッコイイのかもしれない。でも、希が生まれてきてくれて、私の傍に来てくれたこと。それを運命とは言いたくない。だってそうしたら私たちの間に誰かがいるみたいじゃない?」



絵里「私たちの知らないところで誰かが意図したこと。初めから決まっていたなんてそんなふうには思いたくない。希が話しかけてくれた、希が助けてくれた、希が傍にいてくれたあの時間は運命なんかじゃなくて希がもたらしてくれたものなの」



絵里「人によってはそれ自体が運命っていう人もいうかもしれない。それも間違いじゃない。でも、私にとっての正解ではないわ」



絵里「希の傍にいる絢瀬絵里は運命の出会いをしたわけじゃない。希自身が引き寄せた人、希は私に引き寄せられた人」



絵里「人の想いは人それぞれ。運命って言葉を使うのであれば、その人の想いが運命となって私たちをめぐり合わせた」



絵里「それだったら運命ってものを信じてもいい気がする。だってそれなら出会うまでの自分の想いが、いつか出会うそんな大切な誰かを連れてきてくれたって思えるじゃない」



絵里「希と出会えたのは運命。ただしそれは、私が希と今のようになりたい、まだ見ぬそんな誰かを想って生きてきた証」



絵里「私はそう思いたい。私がいて、希がいて、知らない間に自分の中で想っていた」



絵里「私は希とそういう関係だったら、とても嬉しいな」



運命によって決められたわけじゃなくて、自分たちの想いが運命となって私たちは今こうして一緒にいる。



なんかおとぎ話みたいな話。



でも、そうだったらいいなって思う自分がそこにいた。



希「絵里ち、ウチな。さっき言ってたちょっとした憧れって穂乃果ちゃんたちのことなんよ」



絵里「穂乃果達?」



希「そう。穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん。あの3人はどうして一緒にいられたんだろうって」



希「ただ単に仲がいいだけじゃない。友達以上の何か、そんな結びつきをずっと感じてた。穂乃果ちゃん達が入学してきた時からね」



希「それが気になって穂乃果ちゃん達の事をよく見るようになった。そしたらふと思ったんや。3人でいるのに何の違和感もないってこと」



希「違和感っていうか、普通って言い方が会ってるかは分からないけど、意味とかじゃなくて3人が一緒にいることが3人の想いなんだなって」



希「それに気が付いて、ちょっと羨ましくなった。ウチにはそんな気持ちになれる人はいなかったんだなぁって」



希「でもね、本当はいなかったんじゃなくて、ウチがそう思うことをしていなかっただけやった」



希「結局ウチはそのまま3年生になった。絵里ちと一緒に」



希「そして花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃんが入ってきた」



希「前にもここで話したこと。穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん、花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん、にこっち、絵里ち」



希「色んな想いをもっている子たちに出会って、穂乃果ちゃんがそれを導いてくれた」



希「穂乃果ちゃんの傍には、当たり前のように海未ちゃんとことりちゃんがいて、やっぱりウチは3人みたいな関係に憧れてたんだって改めて思った」



希「憧れはあくまで憧れで、あの時のウチは9人でいて、歌って踊ってそれだけで十分だって本気で思ってた」



希「奇跡って言葉で気持ちを抑え込んで、そこで満足してたんや」



希「でもさっきの絵里ちの話を聞いて思った」



希「奇跡なのかもしれないけど、その一部でもウチ自身がしてきたことが関係あるのだとすれば、ウチの想いは無駄やなかったんやって」



希「皆と友達になりたいって想って良かったって」



希「ウチが9人目になれて良かったって思えた」



希「だからね、絵里ち」



希「ウチと出会ってくれてありがとう」



絵里「こちらこそ、私と出会ってくれてありがとう」



みんながいてくれたから今のウチがある。



それは間違いないんやけど、



絵里ち。



ウチにとっては、



あなたと一緒にいられたことが、



一番の奇跡。



希「あっ!?」



絵里「どうしたの?」



希「ううん、なんでもない」



絵里「変な希」ニコ



憧れていた3人の関係。



その関係の中には、自分が相手をどう想っているか、どう想ってもらいたいか。



結局はそれが基みたいなもの。



奇跡なのかもしれない出会い。



出会いから今までの出来事。



それは不思議な力というよりも、



自分の中に最初からあったものなのかもしれない。



だからあの3人は、もしかすると最初からそうだったのかも。



あくまでこれは仮説。



あの3人と一緒に考えることにしようかな。


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