2018-05-28 01:29:30 更新

概要

ツライさん


前書き

#君はもう少し勉強するべきだ



それはまるで、この世の終わりを告げる天使の囁きのようだった__________とある艦隊司令部付軽巡の決済報告書より


「ヴァー、やる気でねー」

工廠の主、機械修理80%の明石が呟く。それもそのはず。今は大規模作戦も終わり、各々が後処理、そして休暇を満喫しているのに対し工廠では派手にぶっ放した艤装の点検、修理をしなければならないのである。周りが和気藹々としてる中孤独に一人だけ仕事するのは誰だろうと苦痛だろう。

「というか私、大規模作戦中も入渠ドッグとか出撃ドッグとか、挙げ句の果てには応急修理までしてたんですけどー。私に休みはないんですかー」

咳をしても一人。なんとも哀しいものだと思いつつも、仕方なく作業を進める。

夕張?なんかよみずいで楽しんでくるって休暇届けを出して逃げた。

こんなことになるなら大淀みたいな使えなくもないパシリを雇っておくべきだと軽く後悔した。

ほんとはもっと専門的な知識がある人がいいけれど、そんな人はこの鎮守府にはいない。

ん?

あれれ?

この鎮守府の工廠のすべての権限は私が持っている。

そして大規模作戦も終わり、資材に余裕がある。

ならば

私 を 増 産 す れ ば 良 い じ ゃ な い


その日工廠からは、絶えることなく機械駆動音が鳴り響いた。


翌日

「さーて、昨日は散々遊んだことだし、昨日の分までがんばろっと」

シャッターの隣にある人用の出入り口をくぐる。いつ来ても無くならないオイルの匂いが出迎え、途端にやる気が失せる。

物が散らかり、足の踏み場もないコンクリートの床を慎重に進むと人影が見えた。

きっと昨日から徹夜で作業している明石だろうと思い、労いも込めて彼女を呼ぶ。

「ねぇ明石。作業の方は順調?っていっても逃げた私が悪いんだけど………」

影が振り返る。確かにぱっと見カラーリングは明石そのものだ。しかし決定的に何かが違った。

「アア、ユウバリサンデスカ。ソコノサンバントッテクダサイ。イマテガハナセナクテ……」

無機質な声、動くたびガシャガシャとなる関節。極め付けは顔に書かれたへのへのもへじ。

明石じゃない………そう脳が認知した時にはもう遅かった。

「(私今回全く関係ないから処罰ないと良いなぁ)」


艦隊が帰投しました。その声で我に帰る。だれも入ってこないと思って好き放題したのが災いした。どう誤魔化そうか考える暇もなく彼女らはズカズカと入ってくる。

「いやー、疲れたクマー。早く休んで間宮の特性三式パフェを食べにいくクマー!明石―、艤装お願いするクマ!」

無論彼女が渡した相手はロボットの私。それも他人の休みに妬み恨みを募らせまくった私念の産物。そこに最大級の休暇報告が合わされば………

「マミヤ、イイナァ。ワタシモヤスミタイノニ………ヤスミタイノニ、ヤスミタイノニ、ヤスミタイ、ヤスミタイヤスミタイヤスミタイ………ナラ、ホカノスベテノヤスミヲコワシテシマエバイイ!!!!!」

破壊衝動の活性化と共に球磨型軽巡の彼女は、鎮守府の遥か彼方まで吹き飛ばされた。

流石にこれ以上怪我人を増やせば軍法会議どころか一発解体も余裕に有り得る。そうなる前に多少強引にでも止めないと………

ちびロボ明石の前に私は立ちはだかる。

「流石に自分で作ったとはいえ、自分を処分するのは心が痛みます。艤装展開。」

…………何も起きない。どれだけ念じても恋が実らないように全くと言って良いほど手応えがない。

「ナニヲシテイルノデス、ワタシ。ナンノタメニワタシタチガコウシテイルカワカッテルノデスカ?ソレトモ………コノゼンケンゲンヲモッタワタシタチヲトメラレルナドカンガエテルノデスカ?」

そうだ。私に不自由がないようにすべての権限を複製して搭載したんだった。

つまり、この鎮守府にあるすべての機器は彼女らの思うままになってしまったのだ。

軽巡が吹き飛ぶ姿を目の当たりにしてしまった駆逐艦ズが固まったままこちらを見ている。非常に気まずい。

「………にげてええぇぇぇ!!」

小さな彼女たちは大声で泣き叫びながら、鎮守府きっての大災害の火蓋を切った。


私は泣き腫らし助けを乞うかのじょたちから、只ならぬ事情を知った。

背後から迫り来る何百の影を遮り、作戦を練る。

「つまり艤装が使えない状態であの数を相手にしないといけないわけですか。はぁ。」

頭痛が痛い。また何時ものことだと割り切れない以上、本腰をあげないといけないのが辛いところだ。

「どうしますか提督。艤装が使えないとなると手は限られますが………」

高級なデスクで腕組みをしていた男の決断は意外にも早く動いた。

「筋肉が全てを解決する!」

………危なかった。もう少し理性が失われていればクリップボードで頭をはたき落とすところだった。あとその足元に積んであるキン肉マンをさっさとしまえ。

「で、どのように動くおつもりですか?」

尋ねるように催促する。痺れを切らしてしまっている私が一瞬、ほんの一瞬だけ情けなく感じてしまった。

「これは訓練ではない。長門、霧島、武蔵、北上に長良、そして夕立。以上6名、艤装を使用せず己の肉体のみで現在敷地内に蔓延る反乱勢力を打ち砕け。繰り返す!これは訓練ではない」

納得した。この人は純粋な力のみで穿つつもりなのだと。そしてそこに作戦と言われるものは何一つないのだと。

私は、これが終わったら休暇届を提出することに決めた。


私は心の底からこの日に感謝した。自分の肉体で人を、仲間を、世界を守れるのだ。そう、筋肉こそ正義であり筋肉こそが最強ということを証明できるのだ。これ以上に喜ばしいことなんてない。

「かかってこい!千を超す飴細工どもよ!魅せてやろう!これが我が秘宝にして全ての筋肉だ!!」



決済報告

1. 問題となった事物

明石無限増殖による鎮守府内クーデター

2. 発生した要因

工作艦 明石の労働時間の過度な増加、またそれに伴う休暇申請の受託拒否

3. 問題解決方法

鎮守府所属の筋肉自慢の艦娘による包囲殲滅

4. 発生した損害

工廠内設備:壊滅

居住区エリア:窓ガラス数枚

共用グラウンドとその周辺:土の七割損失

球磨型軽巡洋艦一番艦:全身打撲

夕張型軽巡洋艦:打撲、疲労によるストレス

資材:九割五分損失

5. 待遇

工作艦明石:二ヶ月の長期休養、給料三ヶ月分天引き

軽巡洋艦夕張:二ヶ月の工廠勤務、資材運搬

鎮守府指揮官:給料半年分を鎮守府環境改善費用として移行


作成者:大淀

一言:危機管理の向上に努める


みんなも働き過ぎには注意しようね!by提督


後書き

フィクションであってほしい


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