2018-07-10 14:38:16 更新

概要

この作品は、『ポンコツ提督が鎮守府に着任するようです。』の番外編となります。人間として完全に狂っているある男と深海棲艦達が織り成す日常的で非日常。それをお楽しみ下さい。


前書き

注意:本文閲覧前にお読みください。
・この作品ではグロテスク要素、サイコパス要素が含まれております。苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・勘違いされそうですが、作者は一般人です!サイコパスとかじゃないです!
・深海棲艦の性格などは勝手な私のイメージですのでキャラ崩壊に注意です。
上記のことを許容してくれる方は、この作品をお楽しみください。また、本編である『ポンコツ提督が鎮守府に着任するようです。』の方も是非よろしくお願いします。


生きているのが、退屈だった。与えられた人生、与えられた生き方。くだらない


ある日、人が死ぬのを見た。車に轢かれて死ぬのを。赤い鮮血、絶望に満ち溢れた表情。


僕はそれが美しいと感じてしまった。日常にそぐわないワンシーン、自分が今常識や日常からかけ離れたところにいるという愉悦。


僕はその特別感に酔いしれた。思えば僕はその時からとっくに狂っていたのだろう。


しかし、その一件以降は何も無かった。残酷なほどに日常は日常でしか無かった。


そんなある日のことだ、深海棲艦が現れたのは。


深海棲艦と呼ばれる侵略者はひたすら人類を蹂躙した。僕はそのニュースを見る度興奮が収まらなかった。神がついに人間という生物に裁きを与えに来たんだと。


その姿はまさに非日常、現実離れしたもの、僕が求めていたものまさにそれだった。


それから僕はひたすらに深海棲艦の情報を集めた。多少裏の世界にも手を出し、やっと手に入れることが出来たのは五枚の写真だけだった。


大半の写真にはクジラのようなワニのようなものが映っている。しかし、一枚だけ女性の姿をした深海棲艦を収めている写真があった。


頭に大きな帽子のようなものを被り、マントを羽織っている。手には杖だろうか、そういった何かを持っているように見える。


恐ろしいほど白い四肢に蒼く怪しげに光る瞳。まるで、『死』の一文字を擬人化したかのような姿。


僕は彼女に一目惚れしてしまっていた。


そんなある日、人間が深海棲艦に挑もうとしていることを知った。


人間とはどれほど愚かな生物なのだろうか、神の使いからの美しき制裁による死すらも受け入れようとしないとは。


これは、後に知った話だが、人類は深海棲艦に傷一つつけられなかったらしい。


僕はその噂を聞いた時、疑念が確信に変わった。やはり、深海棲艦とは人間に制裁を加えに来た神の使いなのだと。


しかし、それからすぐに艦娘という忌々しい存在が現れた。


それは、深海棲艦と対等に戦えるばかりか殺すことが出来るという。


僕は激怒した。あんなにも美しい深海棲艦に傷をつける?頭がおかしいんじゃないだろうか。


艦娘の勝利をメディアで知る度に一時の感情で鎮守府にテロ行為を行おうと思ったが、それでは人間に殺されてしまうと思い留まった。


それだけは絶対に嫌だった。死ぬのなら深海棲艦に殺される。それは僕にとって絶対だった。


それが、僕が中学生の時の出来事である。


時は流れ、二十年後。僕はもう三十過ぎのおっさんになっていた。あれから幾度も深海棲艦に殺されようと海岸を転々としたが、艦娘に阻まれ続けた。


とはいえ、それで引き下がる僕ではない。僕はある鎮守府から情報を抜き出していた。何かと苦労したが、深海棲艦のためならなんともない。


そして今、僕はボートに乗っている。


海軍の警戒が薄いルートを使い、無人島に向かう。


僕の目的は一つだ。今日の午後、ここの付近の海域に海軍が掃討作戦を行う。僕はそれを知ってここに来た。


深海棲艦に知能があるのは知っているが、どれほどかはわからない。ここからは賭けだ。


いや、賭けと言っても負けたところで目的の八割は達成されるのだが。


僕は無人島で持ってきた打ち上げ花火を打ち上げる。これで、深海棲艦に僕の存在は気付いてもらえただろう。


案の定、深海棲艦の偵察機がこちらに飛んでくる。僕はそれに白旗を降る。


別にここで殺されても構わない。というか目的の八割はそれなのだから。


しかし、偵察機は僕を確認し来たルートを戻っていく。


しばらくして、僕が恋焦がれていた姿の深海棲艦がやってきた。空母ヲ級、それが彼女の名前だ。


なんて美しい響きだろうか。名前を呼ぶだけで幸せになれる。


恐らく、彼女は僕を罠か何かと判断したのだろう。後ろには隠れるようにして近づいてくる深海棲艦が見える。


彼女はこちらを睨みつけながら近づいてくる。そして、無人島の近くまでやってきた。


その時、僕と彼女の目が合った。青く揺らめく瞳。僕は身近に死を感じる。僕はそれに興奮を覚える。


しかし、彼女は攻撃をするどころかこちらに更に近づいてきた。僕はその姿に見惚れてしまっている。


写真なんかとは違う。その姿から漂う死の匂い。どうしようも無く美しい白い肌。僕はとっくに彼女に溺れている。


ヲ級「オ前ハ何者ダ?」


彼女は僕に話しかけてくる。会話は出来るようだ、なら僕の目的の二割も果たせるかもしれないと思い直ぐに口を開く。


僕「僕はあなたに魅入られたものです!あなたがたに危険を知らせに参りました!」


彼女は少し不気味なものを見る目で僕を見る。そんな怪訝そうな表情さえ、僕には美しく見える。


僕「本日、午後に付近の鎮守府がここの掃討作戦を画策しております。そしてこれが、その作戦内容をまとめたものです。」


そう言いながら僕は鎮守府から密かに手に入れた作戦内容をまとめた紙を差し出す。


ヲ級はそれを受け取り興味深そうに見たあと口を開く。


ヲ級「オ前ハ同族ヲ裏切ルノカ?ナゼ?」


僕「それはあなたに一目惚れしたからです。ヲ級さん。」


ヲ級は僕のセリフを聞き、少し頬を色づかせる。


僕はあまりそういった動作に可愛いなどと感じるたちでは無いのだが、これが恋の力だろうか不思議と魅力的に感じた。


ヲ級「マ、マァ信ジルワケデハ無イガ警戒シテ損スルコトハ無イダロウ。受ケッテオク。」


完璧だ。これで僕は目的の二割を完遂した。後は殺してもらえれば全てクリアだ。


そう、僕のこの行動は憧れである深海棲艦の役に少しでも立ちたいと思い決行したものだ。


そして、今ここで深海棲艦に危害を加えようとすれば中学生の頃からの夢である、深海棲艦に殺されるという欲も果たされる。


しかし、その時僕の中にさらなる欲が産まれてしまった。そう、出来るのならばもっと彼女を見ていたい。


その腕を瞳を脚を体を耳を口をミテイタイ。


傍で愛したい。愛されたいなどとは言わない。ただ、アイシテイタイ。


僕「それで、お願いなのですが。その情報が役立った暁には、私をあなた方の仲間にしては頂けないでしょうか…?」


僕は懇願するように彼女に言う。彼女は少し考えるようにした後、僕の目を見る。


ヲ級「人間ナノニ深海棲艦ノ仲間ニナリタイノカ?」


僕はその問いに頷く。


ヲ級「イイダロウ。シカシ情報ガ役ニ立ッタラダ。嘘ダッタナラ…ワカッテイルナ?」


彼女はそう言い、偵察機を残し去っていった。


僕は股間の辺りに熱を覚える。僕は興奮しているのだ。二十年憧れ続けた、愛し続けた存在との邂逅。


とはいえ、ここで一人で興奮を収めるわけには行かない、偵察機が見ているのだ。


僕は彼女の声の余韻に浸りながらその場にうつ伏せに倒れる。


おかしな話だ。ずっと死を望んで生きてきたはずなのに彼女に会った途端、死より望むことが出来た。


僕「ははは…」


僕は自嘲するように乾いた声で笑う。


そのまま横になっていると突然、強い眠気に襲われた。そういえば、ここ数日情報を集めるためにほぼ寝ていないのだった。


僕は眠気に抵抗しきれず、その場で意識を失った。



ー第2節ー


?「オイ、起キロ人間。」


僕は誰かに声をかけられる。まだ意識がはっきりしない。


顔を左右に振り意識を覚醒させる、目の前には彼女がいた。どうやら、僕は眠ってしまっていたらしい。


ヲ級「オ前ノ情報ハ確カニ役立ッタ。助ケテモラッタヨウナモノダカラナ礼ヲ言ウ。」


ヲ級「相手ノ作戦ヲ把握シテイナケレバ間違イナク私タチハ全滅シテイタダロウ。」


僕「光栄です。お役に立てたのでしたら本当に良かった。」


ヲ級「ソコデ約束ドウリお前ヲ深海棲艦ノ仲間トスル着イテキテクレ。」


彼女は僕が乗ってきたボートを見ながら言う。


僕は言われたとうり、ボートに乗って彼女の後を追った。


しばらくして着いたのは、先程より大きな無人島だった。ヲ級は島を歩いていく。


深海棲艦が陸を歩けることに僕は疑問を抱いた。僕は彼女にそれを口にする。


僕「あなた方は陸を歩けるのに何故本土に進軍しないのですか?」


ヲ級「マダ、オ前ニ多クノ情報ヲ与エルコトハ出来ナイ。」


しかし、彼女はその疑問に答えてはくれなかった。まだ、完璧に信用してくれた訳では無いらしい。


しばらく歩くと、鎮守府のような建物に着いた。深海棲艦もこのような施設を利用するのだろうか?


ヲ級は施設の中に入っていく。僕もそれに続いた。


ヲ級「ココダ。」


彼女がそういった場所は広間のような場所だった。そしてその中には数人の深海棲艦がいる。


海軍が発表している情報が正しい名称であればレ級とリ級、そして軽巡棲姫だ。


リ級「ヲ級、ソイツガサッキ言ッテタヤツカ?」


ヲ級「ソウ、人間ナノニ深海棲艦ニ味方スルッテ言ッテル。」


リ級「殺サレカケタカラ生キ延ビルタメニ嘘ヲ吐イタトカデハナイノカ?」


ヲ級「イヤ、最初カラソノツモリダッタヨウダ。」


レ級「テカ、ココニ人間ヲ連レテ来テヨカッタノカ!?」


軽巡棲姫「人間一人程度、何カシタラ殺セバイイノデスヨ。」


レ級「確カニソウダナー。」


深海棲艦達が会話している。僕はその光景を見れたことに心から喜びを覚えた。


こんな光景海軍でも見た事ないだろう。僕は今、誰よりも深海棲艦に近い人間になったのだ。


ヲ級「トコロデリ級、コイツヲ試スト言ッテイタガ何ヲスルンダ?」


リ級「ソウダッタナ、レ級連レテキテクレ。」


レ級「アイアイサー!」


深海棲艦は僕になにかさせるようだ。試さなくともここで死ねと言われれば舌を噛み切ってでも死ぬというのに。


少しして、レ級が何かを連れてくる。それは、人間の女性だった。彼女は僕を見るなり声を上げる。


女性「助けてください!お願いします!なんでもしますから!」


レ級「ナンカ急ニ五月蝿クナッタケド連レテキタゾー。」


レ級は女性を僕の近くに投げ捨てる。ぐえっなんて声が響く。


リ級「アリガトウレ級、トコロデソコノ人間。」


リ級は僕を見ながらそう言う。


僕「はい、なんでしょうか?」


リ級「オ前ハヲ級タチノ危機ヲ救ッテクレタヨウダガ人間ヲソウ簡単ニハ信用出来ナイ。」


リ級「モシ、オ前ガ本当ニ人間ノ敵ダトイウノナラココデコノ女ヲ殺シテ見セロ。」


女性「へ…?」


女性が不意に声を漏らすその顔は絶望に溢れていた。いい顔だ、犯したくなる。


軽巡棲姫「セッカク捕獲シタノニ実験ハイイノデスカ?」


軽巡棲姫がリ級に問う。


リ級「実験ハソノ男デ代用スレバイイ。ソウスレバコノ女ハ用済ミダ。」


女性「用済み…?」


軽巡棲姫「ナルホド、納得シマシタ。」


そう言い、軽巡棲姫は身を引く。実験がなにかはわからないが、この体はまだ彼女たちの役に立てるらしい。なんて光栄なことだろう。


リ級「ソレデ、デキルカ?人間。」


リ級がそう言うと同時に深海棲艦達の視線が僕に向く。そして、僕は女性に近づく。


女性「…嘘ですよね?なんで、殺すなんて…へぐっ」


僕は無言で彼女の首を締め上げる。苦しそうな顔。あぁ、いい顔だ。キスしたくなる。


女性「なんで…なんでこんな…」


女性が掠れた声で僕に問う。


僕「さっきなんでもするって言ったじゃないですか。だから、死という救いをあげるので僕の生贄になってくださいよ。」


女性「あなた…狂って……


突然、彼女が何も発しなくなる。これが人を殺すという感覚。思ったより気持ちが悪くなる。


とはいえ、僕は女性に死という救いを与えたのだ。その死を少しくらい利用させてもらっても罰は当たらないだろう。


僕「どうでしょうか?僕は合格でしょうか?」


僕はただの肉塊となった彼女から手を離し、後ろのリ級に尋ねる。


リ級「正直、予想以上ダ人間。ソレデ早速ダガ、私タチノ提督ニナッテハモラエナイカ?」


これが僕と彼女達の美しい破滅へのプロローグだった。




(カタカナ表記は読みにくいのでここから下はカタカナ表記を辞めております。)


その後、リ級から聞いた話によるとこういうことらしい。


ここの施設はもともと鎮守府だったらしいが。深海棲艦に襲撃を受けた際に放棄されたらしい。


しかし、施設自体は使える状態だったらしく入渠などが出来ないか調査したらしいのだが、出来なかったのだという。


艦娘たちが入渠する場合、提督に許可が無いと入れないと知り、人間つまり先ほどの女性を捕まえたらしい。


結果は失敗、そこで今僕を提督とした状態で試そうとしているわけだ。


僕も最初は深海棲艦の提督になんて恐れ多いと断ったのだが、お願いだなんて言われたら断れるわけがない。


狂提督「リ級さん、入渠していいですよ。」


僕はそうリ級さんに言う。リ級さんは前に試したときは見えない壁に阻まれたらしい。


しかし、今回はスムーズに入ることができた。


リ級「まさか、こんなに簡単に行くとはな。では、実際に傷を癒してみよう。」


リ級はそう言って奥に行ってしまった。


レ級「それにしても人間、お前同族をあんな風に殺すなんてやべぇな。罪悪感とかねぇの?」


レ級が僕に話しかけてくる。罪悪感?僕は彼女を救ったのに何を言ってるんだろうか。彼女の救いを利用したことについてだろうか。


狂提督「罪悪感は多少ありますけど、信じてもらうには仕方なかったですからね。」


レ級「ほーん、なんで人間の癖に私たちの味方をすんのさ。」


提督「それは、ヲ級さんが好きだからですよ。」


ヲ級「!?」


僕のセリフにヲ級が反応する。レ級はほほーんと言いながらヲ級に問う。


レ級「ヲ級さん、あんなこと言ってらっしゃいますけどヲ級さんはどうなんですぅ?」


ヲ級は顔を赤らめながら困ったようにしている。そんなヲ級に助け舟を出したのは軽巡棲姫だった。


軽巡棲姫「こらこらレ級、あまりヲ級さんを虐めてはいけませんよ。」


レ級「ちぇー、ノリが悪いなぁ。まぁ、いいや。私は散歩でもしてくるよ。」


レ級はそう言ってその場を後にする。


ヲ級「ありがとう、軽巡棲姫。助かった。」


軽巡棲姫「いえいえ、気にしないでください。ところでそちらの人間さん?」


軽巡棲姫は僕を見て言う。


軽巡棲姫「好きとは好意を抱いてるということですか?」


提督「はい、彼女を愛しています。」


僕のセリフにヲ級が両手で顔を覆ってしまう。あぁ、愛しくて仕方がない。


軽巡棲姫「それじゃぁ、あなたは彼女になら殺されてもいいと思いますか?」


提督「勿論、僕の四肢から体のなにもかもまで差し出せますよ。」


軽巡棲姫「ふふふ、予想どうり。あなたみたいな狂ってるモノ私とても好きよ。どうですか?ヲ級さんではなく私じゃダメかしら?」


軽巡棲姫は俺の耳元でそんなことを言ってくる。酷く魅力的ではあるが、二十年の恋は伊達では無いのだ。


提督「駄目ですね。軽巡棲姫さんも美しいですけど、僕はヲ級さんがいいんです。」


軽巡棲姫「あらあら、振られてしまったわ。こんなに愛される誰かは羨ましいわね。」


軽巡棲姫はヲ級を見ながら言う。ヲ級はそんな軽巡棲姫をあなたもかといった顔で見ている。


その後、しばらく情報交換などをしているとリ級が出てきた。


リ級「入渠というのは素晴らしいものだな、傷が治るどころか力が湧き出てくるようだ。」


提督「それは良かったです。お役に立てて本当に良かった。」


リ級「堅苦しいのはやめてくれ、お前はもう私たちの提督になったのだからな。人間の鎮守府ではそっちのが上司なんだろう?」


提督「そんな、とんでもありません。僕なんかが深海棲艦の上司だなんて。」


リ級「まぁ、そう言うな。私は対等な関係を望んでいる。すくなくとも信頼は出来るらしいしな。」


提督「そう言うのでしたら…いや、そういうことならわかった。」


リ級「あぁ、その方がよっぽど提督らしい。お前もそう思わないか?軽巡棲姫」


軽巡棲姫「えぇ、そうですね。」


リ級は軽巡棲姫に同意を求め、軽巡棲姫もそれに同意する。


リ級「ところで私はこの有り余る力をどこかで発散して来ようと思うのだが、お前たちもどうだ?」


リ級はヲ級と軽巡棲姫に問う。


軽巡棲姫「いいですね。私も最近何もしていなかったですし。入渠もしてみたいですしね。」


ヲ級「私も先ほどからイライラが溜まってるから行く。」


提督「そういうことなら、いい情報があるので聞いていかないか?」


僕は不吉な笑みをしながら提案するのだった。





それからしばらくして、僕は抜錨する彼女たちを見送る。


僕が提案したのは、ある鎮守府への直接攻撃だ。


といっても、何も考えずに彼女たちを特攻させたりはしない、ある情報があったからだ。


この情報は、海軍の掃討作戦の情報収集時に偶然手に入れたものだった。


内容は艦娘と他の鎮守府の提督のメールでのやり取りである。


簡単に言うと、ある鎮守府の提督が誕生日なのでパーティーを開くので、その際の海域の護衛を頼むというものだった。


それに対して、他の鎮守府の提督は三時間だけ出撃などの都合上空きが出来てしまうというものだった。


それがちょうど今だった。


僕がこのことを話すと、彼女たちはある程度進行してみて敵に見つかったら帰港すると言い出て行った。


ちなみにこれは彼女たちには話していないが、そのパーティー。誕生日の提督の妻子まで来るという。


あぁ、想像するだけでも胸が躍る。


誕生日に妻子ごと殺される人間はどんな顔をするのだろうか。直に見たいものだが今は想像で我慢しよう。


それから約二時間後、彼女たちが帰ってきた。


リ級「帰港したぞ、大勝利だ。反撃されるどころか艦娘の一人も出てこなかった。」


ヲ級「ここまで簡単に鎮守府を潰せるなんてな。」


軽巡棲姫「でも、そのせいで入渠する必要も無いですね。」


軽巡棲姫は少し悲しそうに言う。


提督「まぁ、いつか機会もあるでしょうし。それを待ちましょう。」


軽巡棲姫「そうですね。敬語戻ってますよ?」


提督「おっと、失礼。」


僕は軽巡棲姫を元気づけよと思ったのだが逆に敬語を指摘されてしまった。


リ級「なにはともあれ、こんな情報を流すくらいだからな。信用に足ると判断しよう。よろしくな提督。」


提督「あぁ、こちらこそ。」


こうして、世界で初めての深海棲艦の提督が生まれたのだった。







あれから一か月、様々なことがあったがこの環境にも慣れ始めた。


この鎮守府の噂を聞きつけ、戦艦棲姫と深海鶴棲姫もここに仲間を連れてやってきたため中々賑やかになった。


あの鎮守府襲撃事件は提督を殺し切れていなかったことが後に発覚したが、人間の一人程度気にするのも阿保らしいだろう。


ちなみに、その直後レ級がなんで僕を呼ばなかったのさ!なんて拗ねていたのを思い出す。


そして今はリ級さんに戦術などを教えてもらっている。提督なのだからそれくらい覚えたいと僕がお願いしたのだ。


リ級「お前は随分と呑み込みが早い。教えがいがあるというものだ。」


提督「いや、リ級の教え方がうまいだけさ。ありがとう。」


リ級「そう素直に礼を言われるのは慣れないな、今日はここまでにするか。」


提督「なぁ、一つだけ聞いていいか?」


リ級「ん?なんだ?」


提督「お前たちはなんで人間を襲うんだ?」


僕は昔からの疑問を口にする。リ級は少し考えるようにした後、口を開いた。


リ級「お前は何故、生きている?」


提督「深海棲艦を愛するため。」


リ級「ははは、お前にこの質問では意味なかったな。簡単に言うならしたいからだ。」


リ級は呆れたように笑い、語る。しかし、僕には少し意味が分からなかったので考える。


リ級「お前は、眠くなったりお腹が減るのに違和感を持ったことはあるか?」


提督「いや、無いな。」


リ級「それと同じだ。ただ殺したいから、襲いたいからその衝動のままそれをやっている。まぁ、本音を言うと自分でもよくわからないのさ。」


リ級は最後にすまないなきちんと返せずに。と言って執務室を出て行った。


予想どうりだ。彼女たちは神からの使者なんだ。人間への制裁を下しに来たんだ。


僕は思わず顔がにやける。僕はそんな高貴な存在と今一緒にいるんだ。僕は気分がいいまま執務室を後にした。


鶴棲姫「あら、提督さんじゃん何してんのさ。」


不意に後ろから声をかけられる。


提督「鶴棲姫かただ散歩していただけだよ。」


鶴棲姫「へー、私も暇だし一緒に散歩しようよ。」


提督「あぁ、構わないぞ。」


僕は彼女の誘いに乗り、二人で歩く。話した内容は思い出せないような適当なものだった。


僕は会話の切れ目にリ級にしたことと同じ質問をしてみる。


提督「なぁ、鶴棲姫。お前はなんで人間や艦娘を殺すんだ?」


鶴棲姫「なんでかぁ…んームカつくから?」


提督「ムカつく?」


鶴棲姫「うん、なんか人間を見ているとイライラするんだよね。後は寂しさを紛らわすためかな。」


提督「寂しいか…それはここにいても消えないのか?」


鶴棲姫「うーん、なんつうかここは楽しくて好きだよ?提督さんのこと最初は警戒してたけどそんなの無意味そうだしね。」


鶴棲姫「でも、そういうのじゃないんだ。トラウマって言うか消えないんだ寂しさが…ずっと。」


鶴棲姫は悲しそうな顔で言う。


提督「なら一緒にたくさん人と艦娘を殺そう。僕も今作戦指揮とかについてリ級に教えてもらっているんだ。完璧に覚えていつか僕も役立てるようになるよ。」


鶴棲姫「本当に提督は人間なのに私たちに優しいよね。ありがと、期待してる。」


提督「期待にこたえられるように頑張るよ。」


僕は鶴棲姫に笑顔でそう言った。







ーヲ級視点ー


ヲ級「また鶴棲姫と喋ってる…」


戦艦棲姫「どうしたの?ヲ級ちゃん。」


不意に近くにいた戦艦棲姫さんに独り言を聞かれてしまった。


ヲ級「戦艦棲姫さん、その、提督は私を好きって言ってたのに…ずっと鶴棲姫さんと話してるから…」


戦艦棲姫「ふふふ、つまりやきもちを焼いてるんですね?」


ヲ級「なっ!?その、そういうわけじゃ…」


戦艦棲姫さんに図星を突かれて言い返せなくなってしまった。


戦艦棲姫「ヲ級さんは彼をどう思ってるんですか?」


戦艦棲姫さんは優しい笑顔で聞いてくる。


ヲ級「…愛してるって言われて…嬉しかった。だから、お返ししようと…」


戦艦棲姫「ヲ級ちゃんは乙女ですね。でも、彼を好きというわけでは無いんですか?」


戦艦棲姫さんは質問攻めにしてくる。自分でも整理がついてないのに…


ヲ級「その…好きとかわからない。でも、好いてくれるのは嬉しい。」


戦艦棲姫「なら、話しかけてみたらどうです?そうすれば自分の中でも色々わかるかもしれませんよ?」


実は私は戦艦棲姫さんは苦手だ。いっつもほほ笑んでいて何を考えているかわからない。嫌いというわけではないのだが。


そのタイミングで鶴棲姫さんと提督が別れるのが見えた。


戦艦棲姫「ほら、チャンスですよ。」


戦艦棲姫さんはそう言って私を物陰から押し出した。仕方ない、私も少し勇気を出そう。


戦艦棲姫「ふふふ、青春ですね。空もあんなに青いですし。」


戦艦棲姫はヲ級の背を見送りながら快晴の下、一人呟いていた。




ヲ級「提督…こんにちは。」


提督「ヲ級か、こんにちは。」


私の挨拶に彼も笑顔で返してくれる。そんな彼の顔を見つめる。私は人間の笑顔を知らなかった。


私が襲う人たちは皆泣いたり絶望していた。その表情が私は嫌いだった。でも、殺さないといけない。そんなナニカが私を戦場へと赴かせた。


そのナニカはきっといつまでも消えることは無いのだろう。


提督「どうしたんだ?」


そんなことを考えていると、不意に提督に声をかけられる。


ヲ級「ふぇ!?な、なんでもない…」


私は驚いて変な声を出してしまった。それを誤魔化すように質問をする。


ヲ級「提督は、私を好きなのか?」


提督「あぁ、好きだよ。」


即答された。頬が熱くなる。好きというのはこうやって相手にぶつけるものなのだろうか。


ヲ級「あまり直球で言わないで…その…恥ずかしい。」


提督「あ、そうか…すまない。」


彼は少し悲しそうな顔をする。別に言われたくないわけでは無いのだ。でも、何て言えばいいのか…


ヲ級「そ、その、好いてくれるのは嬉しんだけど…私は好きとかわからないから…」


私の台詞を聞いて彼は少し不思議そうな顔をしていたがすぐに口を開く。


提督「別に無理はしなくていいんだ。嫌ったっていい。ヲ級はヲ級のしたいことをすればいいさ、僕はそんな君が好きなんだから。」


私は好きというセリフに何度も言うなと怒ろうかと思ったが、彼の笑顔を見て胸のあたりが苦しくなる。


ヲ級「馬鹿…」


私は思わずそう言ってその場を後にしてしまった。







ー提督視点ー


なにかやらかしてしまっただろうか。僕は走り去るヲ級の背を見ながら考える。


僕は真実しか言っていない。これで彼女が僕を嫌うようならそれは仕方が無しだろう。それでも迷惑と思われないように僕は彼女を愛し続ける。そしてその愛が色あせる前に深海棲艦に殺されるのが一番だろう。


レ級「おーい、女たらし提督~」


そんなことを考えているとレ級が走り寄ってくる。


提督「別に俺は女たらしじゃないぞレ級。」


レ級「正面切って好きとか言えるやつのどこが女たらしじゃないんだかねぇ。」


提督「確かにそうだが、俺がそれを言うのはヲ級にだけだ。」


レ級「あーはいはい、爆発しとけリア充~」


レ級とはかなり仲良くなれた。彼女はラフな感じで話しかけてくれるので僕も喋っていて楽なのだ。


提督「それで?何か用か?」


レ級「あぁ、そうそう。ちょっと暇だし海でも散歩しようと思ってさ許可取りに来たんだよ。」


現状、ここの最高責任者は僕ということになっている。そのため出撃や補給の際は僕に許可を取る必要があることになったのだ。


提督「別に構わないけどお前は海軍だと結構危険視されているようだから艤装をつけて気を付けていくんだぞ?」


レ級「わーってるって、ついでに適当な艦娘でも沈めてきてやんよ!」


レ級はそう言って走り出した。ちなみにその後、レ級ははぐれていた白髪の空母を沈めたぜ!と言いながら帰港したのだった。










後書き

この作品は歪んだ愛をテーマに書いてるのですが。中々難しいものです(;´・ω・)
次回の更新では、中々過激な内容になると思いますので、苦手な方はご注意ください。


このSSへの評価

3件評価されています


黄鼬狐さんから
2018-07-10 14:56:30

ばんせーさんから
2018-07-08 19:05:50

SS好きの名無しさんから
2018-07-01 18:23:34

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ドリブル名人さんから
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黄鼬狐さんから
2018-07-10 14:56:35

ばんせーさんから
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SS好きの名無しさんから
2018-07-01 18:23:37

このSSへのコメント

6件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2018-07-01 18:26:35 ID: PQW4zEsg

良いね 面白いよ!
本編の裏の作品大好きだ!!
アンチも出てくるだろうけど、頑張って下さい(^^)b

2: 狸蟹 2018-07-01 18:32:18 ID: 2y0edYLZ

1コメ様、コメントありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです!
自分の書きたいものを自分なりの表現で書き続けていこうと思います。

3: SS好きの名無しさん 2018-07-04 11:30:55 ID: mMRgfuxI

ファ!?なんだこれはたまげたなあ...(尊敬
更新まってるゾ

4: 狸蟹 2018-07-06 14:53:10 ID: A0KEcpFb

3コメ様、コメントありがとうございます。じゃけん、更新しましょうね~頑張らしてもらうゾ

5: ばんせー 2018-07-08 19:07:52 ID: zCqBBEhN

まさか連携してるとは思わなかったぞい素直にすごいと思った
続き待っとるぞー

6: 狸蟹 2018-07-08 21:18:28 ID: moG5ACya

ばんせー様、度々コメントありがとうございます。
本編との関係上中々更新できませんが少しづつ関わりを深めていこうと思います。サイコパスになりきるの難しいんですよね…(遠い目)


このSSへのオススメ

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1: ばんせー 2018-07-18 04:00:20 ID: MBw6pVaE

連携がすごい
俺にはできないわ


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