2018-09-25 02:02:15 更新

概要

傷ついた提督と艦娘達、彼等は出会い何を思い何を感じ行くのだろうか——。



————憎い。憎い憎い憎い憎い憎い!!

信じた俺が馬鹿だったんだ!

こんな、こんな屑を!!

なんで!どうして!!なんで、俺は信じてしまったんだ!!!!


————————————殺す。

殺してやる。

四肢をもぎ取って、一片の希望も残さず、じわじわと嬲り殺す!!


殺してやる!殺してやる!殺してやる!

いや、殺さなければ


「アイツ」の、為に———————————



—————————————————————



廃れた港町に静かに佇む「ソレ」は外観こそ鎮守府だったものの

その傍目から見ても分かる活気のなさは建物の迫力との差から何処か不思議な空間が広がっており

最早、廃墟といっても差し支えのないものであった


そこは、所謂ブラック鎮守府であった


疲労状態での出撃など当たり前

ご飯や睡眠は最低限

入渠は禁止

大破艦は敵の盾として認識され

どんな戦果を挙げても返って来るのは暴言や暴力など他にも沢山の非人道的な行為が日常的に行われていた


しかし、海軍側はこれを黙認

戦果を挙げていたこともあるし

第一、海軍自体


「艦娘とは人ならざるもの」


という認識が一般となっていた

国民からバッシングを受け表向きは辞職するものの

その考えの根本が変わる訳では無かった


そして、艦娘達は徐々に生気を、正気を、希望を失っていった


そして、また新しい提督が着任した



その提督、名を新井隼人という

彼は心に大きな、そして多くの傷を負っている



提督になるには「適性」が必要だった

だが、その適性を持つ者は数少なく

かつ深海棲艦との戦いでその数は著しく減少している


つまり、世界は劣勢に立たされていた


その事態を重く見た日本政府は日本全国民に適正調査を実施

そして、適性有りと判断された者を強制的に 「提督」とした


そして、彼、新井隼人は提督になった


彼は裏切られ、利用された


永劫の友情を誓い合った友は金を対価に彼を差し出し


一緒に暮らしてきた家族は自分達の身の安全を条件に我が子を戦地へ送り出す


そんな中でも、手を差し伸べてくれる人はいた

でも、それすらも、奴等は壊していった



本当に、憎い。


殺してやりたいほど

だが、それだけでは足りないのだ

「アイツ」を、「アイツ」を殺した奴等にそんな事だけでは足りない



俺が、あんな奴等を信じてしまったから


「アイツ」は死んだんだ


俺のせいだ


だからもう————



——俺はもう人を、信じては、いけないんだ



提督が着任しました。これより、艦隊の指揮に入ります。


—————————————————————



「ハァ...また新しい提督ですか...」


陰鬱げに嘆く彼女の名は軽巡洋艦「大淀」


主に提督の執務の補佐や任務の管理

そして新しく着任する提督の案内なども行なっている


つまり、これまで行われてきた非道な行為の一端を常日頃から一番近くで見ていた


「まぁ、どうせまた国民からの信頼問題云々で三ヶ月もしない内に居なくなるでしょうけど」


正門に移動しながら一人ごちる彼女の目は暗く「濁って」いた


それもそのはず、彼女は非道な行為を一番近くで見ていると同時に


その非道な行為を一番受けていた


元提督の奴等は全員屑だ

屑が密室で見目麗しい女性と二人きり

何があったかなどいう必要もなかろう


屈辱だった筈だ

苦しかった筈だ

殺したい程にも憎かった筈だ


だが、彼女は耐えた

証拠の一つでもあればこの状況が変わると、そう思っていたから


だが、そんな事は無かった


ある日彼女の必死の呼びかけが応えたのか大本営から調査員が派遣された


調査は一週間にも及んだ

最初こそ取り繕っていた元提督であったが2日もすればいつも通りだ


調査員の目の前で仲間達に理不尽な暴力を振るい、暴言を吐いてもいた

その一週間の間に汚されたりもした

普段より声を上げ

わざと気付かれるように仕向けたりもした

録音もしていたから決定的な証拠も抑えた


そして調査の結果



次の日から、その提督は居なくなった



単純に嬉しかった!

嬉しくて嬉しくてたまらなかった!!



そして——



———————次の提督が着任した



悲劇は、繰り返した



彼女は知った

人の心の、否、この世の醜さを


そして、彼女は諦めた

絶えず行われる暴力にも目を背け

毎日聞こえてくる暴言を聞き流し

汚されたとて、最早何とも思わなくなった


変えられない

逆らってはいけないのだ

逆らっても、何一つ変わりはしない

いつだって、世の中は理不尽で

弱者がなにを叫んでも

強者には何も届かない


だから、諦めるしか、できないんだ


こうして、彼女は壊れた


「あ、もう居る」


正門の前には一人の男が佇んで居た



「こんにちは、私は軽巡洋艦大淀です。新しい提督の方で...ッ!?」


「あぁそうだ、新井隼人だ宜しく頼む」


彼の顔を見た彼女は驚愕した



彼の目は死んでいた



光が灯っておらず、希望や生気、

その他の「生きている」と思わせるような要素が一つとして感じられないその目は死んでいると言って相違のないものだった


整った顔立ちがその目の違和感を増大させ

より不気味なものへと変えていく


普通に見れば、ただ少し体調が悪そうという程度だ


だが、彼女は違った


この目を知っていたからだ


見たくなくても、目を背けても、瞼を閉じても、脳裏に刻まれ離れなかった



あの艦娘達《仲間達》の目だ——



—————瞬間気付いた


あぁ、彼もまた

私達と同じ様に

人に、傷つけられたのだろうと


そして直感的に思った


もしかしたら、彼ならば

人に傷つけられる痛みを、知っているのであれば

この鎮守府を、私達を、仲間達を、

救えるのではないか————と。



捨てた筈の、祈りにも似たほんの僅かな希望を彼女は抱いたのであった———



—————————————————————



鎮守府、集会場


名前の通り集会をするための場所であるそこは

広々とした、殺風景なところだった


木造の床に壁、鉄の天井に取り付けられたちょっと大きめのライト、それ以外にはちょっとした舞台とがあるだけだった


簡単に言えば、体育館、とでも言えば良いだろうか


ただ一つ違うのは、

直立し舞台上の俺を見上げる艦娘達がいる事であろうか


「新しく到着した提督による挨拶」だ、そうだ


鎮守府に入ってすぐ大淀から

「提督着任の挨拶があるので集会場に来て下さい」

と言われ、今に至る


改めて今の状況を確認していると

隣にいた大淀からマイクを渡された



——さぁ、俺の復讐劇の第一歩だ。



「あー、新しく着任した新井隼人だ。よろしく頼む。えーと、まぁ初めに一つだけ言っておく俺もお前等と一緒だ。人に傷付けられた。」


「やっぱり...」


集会場が少し騒めく


なんか隣からも聞こえたけど構わず進める


「まぁ、別にだからどうって訳じゃないけどな。お前等の問題を解決してやれる程、俺は力が無いからな。」


「でも」


軽く息を吸い、先の言葉より力を込めて、言い放つ


「でも、今も、そいつの事が憎いなら。そいつに罰を与えたいなら、俺はお前等と同じ立場の人間として、それに協力する事位は出来る。」


また、少しどよめきが走る


「信じられないだろ?俺だって誰かにこんな事言われても信じられねぇ、でもな!これだけは覚えといてくれ!!」


「俺は、仲間を裏切らない」



嘲笑するべき言葉だ

最も信じられない言葉だ

何度も裏切られ、希望を打ち砕かれ、いつしか諦めもしていた


だが、彼の言葉は、何故か心に響いたのだ


同じ境遇にあったからか?他の奴等と違ったからか?


分からない。

でも、直感的に分かった


彼は本気だ


嬉しくもある。

初めて私達を理解してくれる人ができたから


だが、不安もある

また裏切られるのではないかと、

信じるのを、踏み出すのを、躊躇ってしまう


「まぁ、急にこんな事言われても信じられないだろうから・・・うーん、そうだなぁ。あ、じゃあ証拠を見せてやるよ。ついてきな。」


俺自身も、何故ここまでの事をしたか少し分からない


贖罪なら、復讐なら、「アイツ」との約束を果たすためなら、別に彼女達の為にここまでしなくても良い筈だ


少し考えると何となく、自分でも実感が湧いてきた


多分、俺はこの眼前の彼女達と自分とを重ねてしまい、彼女達を裏切った奴に


「怒っている」のだろう


そして、

彼、否、提督は不敵に笑ったのだった


—————————————————————



商店や住宅が立ち並ぶ栄えた街の一角に聳える、一際は大きな人の目を惹く建物


それは紛れもなく鎮守府だった


世界各地にある鎮守府の中でも内陸部に位置するこの鎮守府は

他の鎮守府の支援や周辺鎮守府の提督合同会議、勲章の授与なども行われる比較的重要な場所であった


そして、そこに今、俺と艦娘達は向かっていた


別段遠い訳ではないが、不安や興奮が入り混じり

誰も声を発さない、重苦しい雰囲気が立ち込め、疲れた様なそんな印象を受けた


そんな雰囲気を打ち壊したのは、凛とした、小声ながらもしっかりとした声だった


「何故あの鎮守府に向かっているのですか?何があちらにあるのですか?」


大淀の問いかけに後ろの艦娘にも聞こえるように応える


「確かあそこに...前任の前任...くらいだかが居た筈だ」


「だからちょっと、暑中見舞いにな」


「前任」という単語を聞くたびに、後ろからついて来る艦娘達の肩や目線が少し揺れる


まぁ無理もないだろう、それだけの仕打ちをされたんだ


あぁ、本当に腹が立つ


腹の底から名状しがたい黒々とした感情が沸き上がってくるのが分かる


その屑と「アイツ」を殺した奴らとが重なり、頭が何も考えられないほどその感情一色になる


無意識の内に握っていた左手についた傷を見て、その思いが文字通り倍増される


要は、俺は今その野郎が勤めている鎮守府に来ている訳だ


整った作り笑顔に自分の黒々とした感情を隠し、適当な嘘で鎮守府へ入る許可を取る


中々のガバセキュリティに多少困惑しながらその野郎が居る執務室に向かう


重要施設というだけあり頑丈で耐久性や耐火性などに特化した様な質素な廊下を抜け一番奥まで進む


その数分の間でさえ他の鎮守府の提督が艦娘を連れて来ることについて陰口を言われ

そのたびに艦娘達は顔を伏せ黙りこくっていた


もう限界かもしれない


「さて、ここか」


他の部屋と違い絢爛豪華な扉を発見し、迷いなくそれを———



————蹴破った



「「「「はっ?」」」」


四方から聞こえる声は誰のものやら、もしかしたら俺が以外の全員だったのかもしれない


「失礼しまーす」


部屋に入ると眼前には勲章やら賞状などが一面に飾られた壁


それ一つだけでいくらになるか予想もできないシャンデリアの照明


その照明の光を浴び白く輝く大理石と思われる建材を使った傷一つない床


上に置いてあるもの一つ一つですら高級品に見えるほど豪華な机


そしてそこに座るは素っ頓狂な声を上げながら目を丸くする中年オヤジ


どう見ても釣り合ってない

お前はバランスというものを知らんのか


「な、なんだ貴様は!?お、俺が誰か心得てるのか!!」


おぉ、顔も悪けりゃ性格も最悪、おまけに冷静さにも欠いていると来たもんだ


つーか



—————1人目、見つけた




思い出されるはあの日の事


俺はアイツと共に友人の家で隠れていた


日本軍は貴重な提督の素質がある人間を逃さず遂に実力行使に乗り出した


何万もの人員を配備し、俺を確保しようとしていた


信用できる友人の家に匿ってもらい、命からがら逃げ延びていた


付いて来なくて良いと言っても

「心配だから」

と、付いてきてくれる彼女《アイツ》も


何も言っていなくても

「お前が困ってるんなら」

と、自分の家に匿ってくれる友人も


本当に有り難くて仕方がない


涙が出てくる


だが、その涙は————



———決して感動からくるものでは無かった



7畳もない狭い友人の自室にスーツ姿の十数人の大人達が流れ込んでくる


「なんだ!?」


「・・・ようやくかよ」


「ようやくって・・・どう言う事!?」


混沌とした状況の中、友人の呟きを問い詰める「アイツ」の声が嫌に耳に残った


「どうもこうも、コイツ等俺が呼んだんだよ」


・・・何を言っているか分からない


時間にすれば一瞬だったが俺にとれば永久にも似た長過ぎる時間だった


手のひらに落ちた自分の涙でようやく正気に戻り

動いていない脳を必死に動かし考える


何の為にこんな事をしたか、とか

俺達、友達だっただろ?とか


言いたいことも


聞きたいことも


山ほどあるのに、どれも全て出てこない


きっと俺は怖いのだ帰ってくる言葉が


だが、彼女は違う


「何で!!何でこんな事するの!!」


「政府の奴等がそこのバカ捕まえるの手伝ってくれたら9桁は出すって言うからな」


「そんな事でッ!」


悲しいとか、悔しいとか


そんな言葉では到底今の気持ちは表せない


涙も枯れ果て


瞬きをすることすら忘れ


呼吸も忘れていたのかもしれない



ただ、あの友人の顔だけは忘れられない



奇妙なまでに吊り上がった口角


騙された俺に対する嘲笑を含んだ笑い声


そして、心底楽しそうに開かれた目


俺は最後の涙が地面に落ちるとともに


心の内にある希望と共に、静かに地面に倒れこんだ———




気づけば目の前に3人の男が立っていた


全員が海軍服を着ていて


1人は眼鏡を掛けた冷たい目をした男


1人は常に温厚な笑顔を浮かべる男


もう1人は



—————今現在、目の前にいる男だ



世界は狭いとは良く言ったものだ


艦娘達の心を開かせる為に生贄にでもしようと思った奴は



どうやら、俺の復讐相手の1人だったらしい



コイツは俺を裏切った野郎に交渉を持ちかけた張本人だ


裏切った畜生もそうだが、それを手引きしたコイツには殺意が湧く


そんな畜生を信じて、アイツを死なせた自分にも


腹の底から煮えたぎった黒い感情が湧き出て来るのが分かる


抑えようとして拳を握ればまたあの忌々しい傷が目に入る


捕まって抵抗した時、憤怒したこの屑が撃った弾が掠った傷だ


殺してやる


俺の友人を悪魔に変えたコイツを


俺を、アイツを傷つけたコイツを


殺してやる


アイツへの、せめてもの贖罪として


「貴様!新井か!?またあの小娘の事か!!」


小娘、か十中八九アイツの事だろう


ふざけんな


「テメェみてぇな奴が!」


アイツの、事を


「口に出すんじゃ」


「ねぇ!!!」


「グハ・・・ッ!」


気がつけば俺は、眼前の屑の腹を蹴り飛ばしていた


勢いに任せて振り出した右足は鳩尾に入り


厚過ぎる脂肪を、細い肋骨を、無いに等しい腹筋を貫き


内臓を潰す


その衝撃は酷い顔をした屑の体を揺らし、飛ばす


足が地面から離れ、顔に痛みが浮かび、口から唾液が飛び出す


・・・ちょっと掛かったじゃねぇか、汚ぇなぁ


重力の影響を受け、唾液製造機が地面に叩きつけられる


「グアァッ!」


ひとしきり呻り、転げ回ったと思うとおもむろに立ち上がり


「き、貴様ァ!ふざけるなよ!また、あの時のように撃たれたいのか!!」


と所々荒い呼吸を挟みつつ叫び、胸ぐらを掴んでくる


何だか笑いがこみ上げてくる


だって禿げてんだもん

眉毛超濃いんだもん


加勢しようとした艦娘達を手で静止させる


これは俺の喧嘩だ、艦娘達を巻き込むわけにはいかない


「だからお前がその話を」


軽く息を吸い、こちらも胸ぐらを掴み、足に力を入れ、踏ん張る


「するんじゃねぇよ!!!」


胸ぐらを掴んだ手に思い切り力を入れ、その手を基軸にして頭を持ってくる


反動で逝きそうな首を気合いで持ち堪えるそして胸ぐらの手を離す


物凄い速度で迫る頭を回避できるはずも無く、鈍い音をたて頭と頭がぶつかる


要は頭突きだ


俺も痛いが、頭部装甲を持たないコイツの方が余程痛いだろう


頭が俺から離れていき、それにつられて体も吹っ飛ぶ


足もだんだんと離れていき、最後に胸ぐらを掴んだ手が離れていく


少し空中を漂うと唾液製造機が鼻血製造機に早変わり


着陸の瞬間を見ずに艦娘達に振り返る


「このように、俺は仕返しの手助けができます。因みにソレはもうどうでもいいんで、皆さん日頃の鬱憤を晴らして下さい」


驚愕の表情で見開かれた死んだ目に、光が灯る


やっぱり女の子は死んだ目よりそっちの方がいい


そんな性に合わない事を思いつつ


俺は無意識の内に笑みをこぼすのだった


その笑みは先刻までの不敵な笑みにあらず

おおよそ普通の、『人間らしい』笑みであった


その顔はとても綺麗であり、艦娘達が目を奪われるのも、そう無理のない事であった


———————————————————



「おい!大丈夫か!」


「大丈夫だって、大袈裟だから!」


「だってお前、右手が・・・俺のせいで・・・」


「だから大丈夫!・・・それに、あの手術、成功すればこの手も治るって!」


「あの手術って・・・艦娘改造手術か・・・?でも、成功率は20%も無」


「だーいじょーぶ!それに私って、」


「結構、運良いんだよ?」


「・・・そっか」


「うん!私、空母の適性あるんだって!」


「確か、名前は——」



———————————————————



懐かしい夢だ


まだ、俺が軍に捕まってすぐの時の事


まだ、俺を庇ったアイツが怪我をして軍の病院にいた時の事


まだ、アイツが生きていた時の事


熱いものが目尻から流れ、頰を伝い、右手に落ちる


俺は泣いていた


少し前なら入れ替わっていたが、それはもう2年前の話


俺は御神木のほど近くで口噛み酒を飲まずに済んだらしい


いや、アイツのならちょっと飲みた・・・


そんな邪過ぎる考えは軽快なノックの音によって遮られた


「白露、はいりま〜す」


「お〜白露か、どうした〜?」


「白露が秘書艦だから起こしにきたの!ほら!起きて!」


秘書官


あの一件から、艦娘達は少しづつではあるものの元気になっていった


まぁ、元通りというには些か活気が足りないのではあるが


そんな中、1人だけ元通りになったのが白露だった


本人曰く


『元気になるのは白露がいっちばーん』


との事であった


・・・ちょっと何言ってるか分からないけど


なんにせよ元気なのはいい事なので素直に喜ぶべきだろう


ちょっと何言ってるか分からないけど


そんな艦娘達に普通の鎮守府への第一歩として提案したのがこの秘書官である


正直仕事が多過ぎたから手伝って欲しいのが本音の為

眼前の少女の眩しい笑顔を直視できそうにない


・・・まぁでも、こんな風に笑ってくれるならやって良かったかもしれない


「あと、5ヶ月だけ・・・」


「長っ!どんだけ寝るの!?ほら起きる!そんなんじゃ一番になれないよ〜」


「2位じゃ駄目なんですか!つー訳で俺は寝る」


「もう!提督ぅ!もうちょっと頑張ろうよ!」


少し不満そうな笑みを浮かべ

俺の掛け布団を可愛い力で(本人にとっては精一杯)引っ張ってくる白露


細くしなやかで美しい指でその見た目相応のか弱い攻撃が繰り出される


長い髪の色より明るいその橙色の瞳は邪気や悪意を全く感じさせず


性格と一致したその明るい声音と柔らかな笑みに抱かれ

名状し難い程の幸福を覚えつつ


俺は二度寝という名の海の底に沈んでいったのであった



「なんでこの状態から寝るの!?ねぇ提督ぅ〜、起きて!」



———————————————————



無駄なものが一切無い綺麗に整えられた部屋


まだ午前中だというのに7割以上が判を押された書類


艦娘の疲労の事を考えられた遠征表


しっかりと着込まれた皺一つない軍服


目線と手だけを動かし休みなく働く提督



つまるところ、彼は真面目なのだ



確かに、女の子の前だからという邪な思考も無い訳でない


だが、そんなものは4割程度だ


そう、4割。


・・・・・4割。


半数以下なら・・・まぁ・・・いい、のか?


話を戻そう、格好良く言えば閑話休題


彼は真面目であり優秀だ


不本意とはいえ、軍人の端くれ


それに元を辿れば自分の過去も提督の適性が、

もっと言えば

深海棲艦なんて奴らが居たからであり

完全に当てつけではあるが、復讐という名目もある


それに、アイツの海を守る為にも


なんて自分の過去も相まって彼は提督として、かなり真面目で優秀なのだ


「提督、入電です」


「ありがとう。次は・・・これと、この任務を受注しておいて」


「了解しました」


もう何度目になるかも分からない会話を大淀とし、また眼前の書類を見やる


すると、退屈そうに体を机に突っ伏していた退屈そうな顔の白露が声を掛けてきた


「ねぇ、提督って何でその手袋?つけてるの?」


提督の右手につけられた茶色のゆがけを力無く指差す


ゆがけとしては薄過ぎるソレは最早忘れ得ることなどないまごう事なきアイツの物


アイツを深海棲艦の攻撃から助けようと手を伸ばしアイツの代わりに掴んだ物


俺のせいで、俺の前で散った、アイツの形見の物


何気の無いその質問でも、俺の心を沈ませるには十分な重さだった


「?どうかしたの?」


首をコテンと傾げ心配気に聞いてくる白露


「これは・・・」


話してしまおうか


一瞬そんな考えが浮かんだ


話せば楽になるかもしれない

少しは軽くなるかもしれない

もう悩まず済むかもしれない


俺の想いを、過去を、ありのまま話してしまおうか、と


だが、その考えは直ぐ自分によって打ち砕かれた


違うだろ


これは俺の事情だ

彼女達を巻き込む訳にはいかない

そんな事は、許されない


いや、多分それも違うのだろう


俺は怖いんだ


また裏切られるのが


それを理解する事からすら逃げて、色々な理由をつけて誤魔化して目を背けて


だから———


「これは別に何となく付けてるだけだよ」


————こうやって、誤魔化す事しか出来ない。


「へぇー?」


理解したのか否か、よく分からない返事を受け、逃げる様に書類に目を向ける


小難しく書かれた文を要約すると


『はよ深海棲艦全滅せぇホゲ!」


と、書いてあった


ある書類は漁業の経済的損害の資料と共に


ある書類は避難所生活の苦労を綴った手紙と共に


またある書類は日本の軍事予算と、それを大きく上回る実費の表と共に


立場も職業も全く別の彼等がここまで息ピッタリならば

にほんのみらいはあかるいとおもいましたまる


どうしろってんだ


イライラしたので最後の書類を破きながら考える


何が漁業の損害だよ、てめーらイ級とか活け造りにしてんだろうが


最初こそ漁に出れないとか言ってたけど1人の阿保が食べ始めてから皆食ってんだろ


今では刺身でスーパー置いてあんだろうが


何が『大物!ツ級解体ショー』だよ!

思わず見に行っちゃたじゃねぇか!


この後避難所で美味しく頂かれたそうじゃねぇか!


こっちなんかいつ来るか分からない敵にいつでも迎撃可能にする為に

即席レーションだぞ!ふざけんな!!

俺もツ級食いたい!!!


と、馬鹿な事を考えつつありきたりな事を書いて次の書類を拝見する


正直面倒臭い


さて、そろそろ出撃任務でもこなすとしよう


・・・白露がかなり暇そうだし


書類を殆ど片付けファイルやら棚やらに保管し

コーヒーを飲んで一休みする


本当はこんな事をして居る暇など無いのだが

眼前に広がる光景の尊さを前には、そんな感情は水平線の彼方であった


書類仕事が無くなったので出撃任務の一つでもして白露に退屈を凌いで貰おうと思ったのだが


「すぅ・・・んっ!・・・んにゃ・・・」


秘書艦用の椅子に座り机に自身の白く細く優雅な両手を枕代わりにしうつ伏せになり

幸せそうに眠る少女を叩き起こし


「オイ、(敵と)戦わねぇか」


と言う訳にもいかずこの様にコーヒーブレークと洒落込んでいる訳だ


暫く寝顔を凝視していると段々と目が覚めていく


「んあっ?提督?・・・あぁっ!ごめん!」


「いや謝らなくて良いよ。今は休憩時間だから」


勝手な偏見かも知れないが、彼女の性格から考えるとあまり朝が早い方ではないと思う


だが今朝俺を起こしたのもまた彼女


時間的に姉妹が起こしたとも考え難い


多分、頑張って自分で起きたんだろう


そりゃ寝たくもなる筈だ


「え・・・でも・・・」


それだけ楽しみにしていたもので寝てしまったのだ


不安そうな顔をするのも当たり前だろう


自分が作った制度のせいでこうなっているので罪悪感で胸が痛い


だから俺はなるべく優しい声音で


「コーヒー、飲むか?」


と聞いてみる事にした



この鎮守府は最前線に位置している


と言っても水上や小島の鎮守府などとうの昔に深海棲艦の手に堕ちた為に


最前線などこの鎮守府が深海棲艦の基地と思われる場所に若干近い

という位だ


だが曲がりなりにも最前線基地に変わりわない


「白露、ここに戦艦っているのか?」


「えーと・・・扶桑さんと金剛さんと陸奥さんの3人!」


戦艦


それは普通任務消化に使う様な艦ではない


こうでもしなければ何が起こるか分からないのだ


それが例え鎮守府の近海だったとて


深海棲艦は艦娘の減少に反比例する様に勢力を増していき


近頃は南西諸島で姫級、鬼級なども確認されている


そんな中でここだけ狙われないとは思えない


そこで戦艦を使わざるを得ないのだ


「ありがとう。今、手が空いてるのは・・・金剛だけか」


「白露、適当に暇な人探して誘って来ていいぞ」


「いいのっ!?」


「おう」


「やったー!」


言うや否や廊下に飛び出して行く少女の後ろ姿を微笑みを持って見送り


鎮守府内には白露の走り回る音と金剛に執務室に来る様にという旨の放送の音が響いた



———————————————————



再度言おう、この世界は劣勢に立たされている


提督の数だけでなく、艦娘の数も足りず

その深海棲艦との行為を戦争と呼ぶにしては、あまりにも損害が大きかった


事実、小さな島国が深海棲艦に占領されたりもしている


こう他人事の様に話してはいるが、日本もかなり危険な状況に置かれている


そこで政府は提督の適性を持つ者、そして艦娘の適性を持つ者も探し始めた


もっとも艦娘の適性は若い女性ならほぼ誰でも持っている為

探すというその事自体は簡単だった


問題はその先にあった


深海棲艦という謎の生物


人型、魚型、ようわからん型、その姿は多岐にわたる


が、全てにおいて共通している事がある


それは

人間に対し敵対関係にある事


しかも一体でも軍艦一隻分の攻撃力、にも関わらず何度も何度も湧いてくる


銃撃、砲撃、雷撃、爆撃、これらを用いてようやく足止め出来る相手に対し唯一太刀打ち出来る存在、それが艦娘


艦娘は、人々の希望であると共に


恐怖の対象でもあった


深海棲艦が化け物であるなら、それを凌駕出来る艦娘もまた化け物


そんな化け物に、誰が望んでなりたいと思うのか


そんな化け物と、誰が戦いたいと思うのか


答えは火を見るよりも明らかであった


結局艦娘になったのは


売られた者

捨てられた者

諦めた者


そして


人一倍、正義感が強かった者


それだけであった


数にして数百人、多い様に感じるかもしれないが政府の予定人数の十数分の一と言えばその少なさが伝わるだろうか


そして殆どが心に傷を負った子供

とてもこの先の戦いを生き残れるとは思えなかった


そんな中、ずっと元気に笑顔を振りまく子が一人

しかも戦艦の適性アリ、大人達が彼女を贔屓するのは当たり前だった


彼女はいじめられた


彼女が大人達から贔屓されていたから

彼女が戦艦の適性を持っていたから

彼女がいじめられて尚、笑っていたから


大人達は彼女を庇った


その次の日には、いじめていた子達は謝ってきて仲直りした

彼女は、楽しそうに笑った



彼女は偏見をいだかれ罵倒されていた


出撃を終え、帰投した港町で陰口を叩かれていた


深海棲艦を倒し、自分が守った場所で罵倒されていた


大人達は何も言わなかった

彼女は、瞳を潤ませながらも笑った



彼女は出撃で怪我をした


フラフラしながら歩くその姿に港町の人々も流石に心配した


彼女は笑いながら支給された高速修復材を傷口にかけ、安心させようとした


みるみる縮まっていく傷口に反して、彼女と町人の距離は離れていくばかりであった


「気味が悪い」とだけ言い残して


大人達も気味悪がっていた


彼女は、笑えなかった



その日から、彼女は笑えなくなった



その笑えない彼女は今、執務室へと向かって歩いている


提督に呼び出されたからだ


以前なら無視していただろうが、やはりあの提督をもう少し見てみたいのだと思う


静かな廊下に、自分の足音だけが反響する

少し歩いて辿り着いた扉をノックする


しばらくして入って良いという旨の間延びした返事が聞こえてくる


そして扉を開け、精一杯の少し引き攣った不恰好な作り笑顔をしながら


「失礼シマース、金剛デース!提督ぅ、私に何の用デスカー!」


死んだ目の提督に挨拶するのだった



—————————————————————



鎮守府内に響く騒音とも取れる声や足音が止み、その余韻さえも消えた去った後


執務室に帰って来たその騒音の原因たる白露の傍には

黒髪の少女と金色や黄色にも似た髪の少女が佇んでいた


比較的落ち着いた、知性的な印象を受けるその黒髪の少女だが少し緊張しているのか

部屋に入り俺を見るや否や

敬礼をし、堅苦しくも少し拙く挨拶をする


「ぼk・・・私は白露型駆逐艦二番艦、時雨です。よ、よろしくお願いします」


「・・・ほら、夕立も」


そう言ってその夕立と呼んだ右横に立つ少女を肘でつつく


「あっ、えっと・・・夕立です。・・・よろしくっぽ・・・お願いします・・・」


時雨のは僕だったとして夕立のぽって何だ?

少し気になるし、好奇心の為にも敬語はやめて頂こう、そうしよう


「あー、いや無理に敬語とか使わなくて大丈夫だ気楽にしてくれ」


「いや、でm、しかし」


「提督は『人間』ですから・・・」


・・・成る程


艦娘は人間と違うと教え込まされている訳か何とも馬鹿らしい浅ましく矮小で汚い考えだ


そんな奴等が居るから、アイツは・・・


・・・ふざけんな。


「時雨、だっけか」


「は、はい」


「それ、誰が言ってた?」


「え・・・ッ!」


「て、提督ッ!?」


「提督さ、んッ!」



狂気という物は、彼、提督の為にあるのだろう



そんな風に思わせる光景がそこにあった


流石にそれは誇張し過ぎと思うだろうが


それを完全に否定するには、彼の顔は余りに美しく、恐ろし過ぎた


笑筋により吊り上げられた口元は整った顔立ちと相まり、ただひたすらに美しかった


そう、あの死んだ目を除いて


眼瞼挙筋を用い、薄く、ただ薄く開けられたその瞳は決して笑ってなどおらず


瞼に遮られ少ししか見えなくとも分かる、確かな憎悪と殺意がそこにあった


一見笑っているのに分かる何とも名状しがたいその違和感は、美しい顔に何処かよく似合い



狂気という言葉が表すに相応しいものだった



誰も声を出さない、否、出せない


ただ眼前の光景に目を見開いて驚愕する事しか出来ない


それは扉の外から執務室の中を覗く黒い髪の女性も同じ事で


幾多の戦場を越え、数々の恐ろしき敵の数々と相見えてきた彼女達でさえ


この状況を打破する術を知らなかった


「んーと・・・あー、ごめん。カッとなっちゃって・・・えっと、まぁ、ごめん」


彼女達の表情を見て何となく事情を察し、直ぐに申し訳なさ気な表情になり

些かボキャブラリーに欠けた謝罪をする


「まぁさっき言った通り敬語なんて使わなくて大丈夫だからさ、普段通りでいいよ」


そう、敬われる様な人間じゃないんだから


「えっと・・・分かったよ、提督」


「分かったっぽい!」


ぽい!?まさかぽいだったとは・・・ぽい・・・ぽい?ん?ぽいって何だ?


まぁ少しは心を開いてくれた、のか?


やはり、良い娘達なんだと実感する

普通、あんな屑共の元で働いていたら精神なんて軽く病んでしまうだろうが、彼女達は笑っているのだ


きっと、そんな屑共への希望を捨てずに諦めないで戦ったんだろう


良い娘達だ、俺とは違って



・・・本当に、こんな良い娘達を騙すなんて気が引ける



執務室での一波乱もなんとか収束し

その中で唯一提督だけが気付いていたこちらを覗く扉の外の女性も去った後

こちらに近付いてくる足音が一つ


「・・・来たか」


段々と近づく足音につられるが如く口からそんな呟きが飛び出す


またその呟きにつられるように眼前に佇む少女達も口を開く


「来たって・・・誰の事だい?」


目をキョトンとさせ首を傾げながら俺の顔を見ようと少し上を見て聞く時雨


そんな彼女に同意する旨の意見が彼女の右、夕立からも挙がる


別に隠す必要もないので素直に答える


「ん・・・あぁ、金剛の事だよ」


「え・・・金剛さんが?」


「?どうかしたのか?」


余りに奇異な返答に思わず聞き返す


「いつも金剛さんは呼ばれても絶対来ないっぽい、めいれいいはん?っぽい」


すると、時雨の代わりに心がぽいぽいしそうな声音で夕立が少し自慢げに語る


・・・まぁ、普通は行かないわな


普通罵倒されると、殴られると、死ぬかもしれないと知りつつ喜んで戦場へ赴く奴はいない


それは至って当たり前の常識的な考え方だ


しかし何故だ


ただ怖かったというだけなら鎮守府から逃げてしまえばいいのに


いくら軍といえどこの広大な海、もう少し言えば制海権を殆ど失った海から少女を一人見つけるなど容易ではないはず


上層部も面倒だから轟沈扱いするだろう

だが、彼女はまだここに居る


何故だ


心が折れて塞ぎこんだのか?自己保身か?それとももっと別の何かか


でも何となく、俺に似てる気がする


そう思うと、俺は自分でも奇妙な程に彼女に対して興味が湧いていた


「なぁ、何で命令違反なんかしていたんだ?」


純粋な興味で好奇心の赴くままに、眼前の少女達に尋ねる


「それは多分・・・」


少し思案した様な表情で話し出した時雨の言葉は


「本人に聞いた方が早いっぽい!」


夕立によって遮られ


リハーサルでもしたかの様に部屋にノックの音が響き渡る


「はーい、どうぞー」


好奇心、探究心、興味、共感、様々な事を思い、そして押さえ込み扉の向こうの存在に入室を促す


どんな娘なのか、月並ながらそんな事を考える自分を自身でも気持ち悪く思いつつ


そして



「失礼シマース、金剛デース!提督ぅ、私に何の用デスカー!」



俺は、考えるのをやめた



———————————————————



高らかに自己をアピールし存在感や積極性を遺憾無く発揮する


少女、否、女性はその長く、だが手入れの行き届いた茶髪をたなびかせ此方に歩く


何処からか香るその芳醇な香りをまるで衣服の如く身に纏い周りに散らしつつ一歩、また一歩と段々と距離を詰めていく


初対面は第一印象が大事とか言うが、そんな短時間で人に印象を残す事が出来るのかと疑問に思う事もあった


だが現に現実として現れた答えを前に、そんな疑問など彼女の姿に意を唱えると同義


無粋で劣悪で興ざめのする行為であり、とても人に出来る行為ではないだろう


その姿は小さな頃読んだギリシア神話のアフロディーテや三美神を思わず連想させる


そんな彼女は俺を見るなり、邪気の全く孕まぬ少し不恰好な笑顔を浮かべて



「バーニングゥ・・・ラァァブ!!」



こんごう は じゅもん を となえた!


多分唱えた呪文はメダパニだな


「こっ!ここここ、金剛さん!?」


「お、落ち着くっぽい!お、落ち着いて水素の数を数えるっぽぽぽいぃ!!」


なんだ?ニンジャでも居たか?


焦りやら驚きやらを一片も隠そうとしない悲鳴にも似た声が上がる


あと夕立、空虚を指差して水素を数えるんじゃ無い、怖いぞ


こんな風に呪文耐性のない夕立と白露が掛かった、こうかはばつぐんだ


恐らくだが、少なくとも金剛の性格は彼女等の前では大人しく優しい、いわばレディや淑女と呼ばれる人のそれだったのだろう


それが今急変し、そのショックでこうなったのか?


だがそれ以上に混乱した事が一つ


金剛はメダパ・・・呪文を唱えると同時に俺に抱きついてきた


普通なら喜ぶべきかもしれないが、1年余の逃亡生活の中でこういった事


とどのつまりハニートラップの様な事は何度か体験しており、その体験が幸いか災いしてか喜ぶ感情など一切なく


何処とも無く、いわば本能の様な、存在意識下から湧き出てくる恐怖や畏怖の念が思考を駆け巡る


そう、だから女の子特有の匂いのか全然気にならない、うん、全然・・・大丈夫


「えっと・・・とりあえず離れてくんない?」


「嫌デース!提督はそんなに私の事が嫌いデスカ?」


「初対面だから何とも、でも人の話を聞かない奴はあんまり好ましく無い、とだけ」


「じゃあ離れマース」


「素直でよろしい」


我が事ながら誠に遺憾であるが何処の次元の、世界の、星の、国の、地域の物かすら分からない


お約束、と言うそれらしきやり取りというものを途轍も無い羞恥と大切な何かとを生贄に捧げ行い


ふわりと柔らかくしなだれかかる様に、だが重く無い様に此方に重心は預けない事を徹底していた彼女を


名残惜しそうにではあるが、彼女を我が身体から引き離すことに成功した


・・・別に残念じゃないですし、はい


こういった場合、勿論だがと言う表現はおかしいかも知れないが

勿論、俺は我が両目に映りし頬を膨らませ


「中々手強いデース・・・」


とか呟いている彼女の事など知り得ない


会った事どころか、見た事も聞いた事も無い


今までで分かっている事は

挨拶と同時にハグをする女性(要注意)

それだけだ


ただ、白露と夕立の混乱状態を見る限りは挨拶やスキンシップの一環としてハグという行為に出る性格とは考えにくい


それに不思議なのはあの言葉遣いだ、あの喋り、所謂片言な喋りで話すのが素だとは到底思え無いが・・・


まぁ、素直に聞くのが手っ取り早いか


「なぁ、金剛。その言葉遣いって」


たった一瞬、瞬きより短い刹那の事


その言葉を俺が口からこの大気に放ち、空気を伝わり、鼓膜を振動させ、脳が言葉とし捉えたその瞬間、彼女の顔に影が出来た


ほんの些細な、彼より長い間彼女を見ていたであろう時雨さえ気付かぬ変化だった


だが、些細だがしっかりと感情の伴った表情の変化に俺の言葉は続きを失った


彼にも、悲しげな表情の彼女に冷淡に言葉を言い放つ事など到底できるものでは無い


「いや、すま」


「いいんデス」


「・・・いつか、必ずお話シマース」


すまん、と


咄嗟に出た謝罪はただの空を掠め、金剛の言葉に断ち切られる


その顔には先程の様な悲しさはなく、決意めいた物が含まれていた


可愛くも、だが力強いその声に、何処とも無い美しさを感じる


前言撤回


彼女は、全く俺なんかに似ていない



———————————————————



「・・・何なのかしら、あの目は・・・」


「私も余り人の事を言えないけど・・・」


「何というか、作り物の目に無理矢理感情を入れたような・・・」


「怖い・・・」


「しかも一瞬だけど、確実に此方を見ていた・・・?」


「でも何故?」


「動いても、音を立ててもなかったはず・・・」


「しかも、何か既視感がある」


「・・・!!」


「あの時・・・!」


「少し、嫌な胸騒ぎがするわね・・・」



———————————————————


後書き

書きたい話がどんどん出てくる→その話までの話(前置き)が粗末になる→書き直し→話が進まない→書きたい話がry
最近はこれの繰り返しです
そして何人気作家ぶってんだろって自分で自分に精神的ダメージを与えてふて寝するまでがテンプレ


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24件コメントされています

1: ゔぇるなーと 2018-07-14 21:47:19 ID: 7QZQHAMx

多分自分でシリアスに耐えられなくなってちょっとコメディっぽくなると思われます

2: SS好きの名無しさん 2018-07-15 06:31:02 ID: KmSCzDRB

それで良いです。
ただ悲惨なストーリーは
読みづらいですから。
頑張って下さい!

3: SS好きの名無しさん 2018-07-15 07:05:48 ID: UWWN8km8

続きが楽しみです!
頑張って下さい(^^)

4: ゔぇるなーと 2018-07-16 15:23:14 ID: F4ZHdnJf

ありがとうございます!
早く投稿しますんで何卒よろしくお願いします!

5: ゔぇるなーと 2018-07-24 14:06:00 ID: ha0QdVRL

早く投稿とは一体・・・
物語は一時少しばかりのコメディへ
平安な日常を過ごすにつれ彼の過去が明らかになっていく・・・

6: SS好きの名無しさん 2018-07-27 00:19:29 ID: 9oZNMwmB

ここの提督はATフィールド使わないのか……

7: ゔぇるなーと 2018-07-27 00:49:29 ID: CS41WM8J

普通の人間は使えない・・・はず・・・

8: SS好きの名無しさん 2018-07-29 02:33:11 ID: 6KdWM815

分かるかな?3です。そう、愉快なコメントの人です。
シリアスの中のコメディがちょうど良いタイミングで投下されていて読みやすいです。
中年オヤジは禿げ。はっきりわかんだね。
うちのパパは…はっきりわかんだね☆

9: ゔぇるなーと 2018-07-29 02:46:04 ID: 8VI5xTZz

はっきり分かりたくないよぉ・・・
あとありがとうございますぅ

10: SS好きの名無しさん 2018-07-29 06:19:14 ID: aIjOwFKO

このまま白露がヒロインになれば良いのに(クソザコ白露嫁提督並感)

11: ゔぇるなーと 2018-07-29 06:48:57 ID: 8VI5xTZz

世に白露のあらん事を(同じくクソザコ白露嫁提督ry)因みにヒロインになるかは自分でも分かりません

12: ゔぇるなーと 2018-08-04 02:47:18 ID: Z79fUNpj

何故か何千文字か逝かれました
とっとと復刻させるのでほんのちょっと待ってて下さい

13: SS好きの名無しさん 2018-08-06 22:21:31 ID: F1_Ii9Uv

地下帝国1050年行きぃ~
友達から教えてもらったネタ。
後悔はない(嘘です。調子乗ってすいませんでした)

14: ゔぇるなーと 2018-08-06 22:36:56 ID: 57zu8VTm

あっちのssもこのssでも俺は死ぬ運命にあるのか・・・

15: SS好きの名無しさん 2018-08-07 12:15:49 ID: BGaLMozt

イ級食ってみてぇw

16: SS好きの名無しさん 2018-08-07 13:18:20 ID: vYWxfoQn

イ級の活け作りなんていう神室町の住人レベルの逞しさにドン引き
すればいいのか、白露はやっぱりかわ゛い゛い゛な゛ぁ゛と
癒やされればいいのか判断ができない(動揺)

17: ゔぇるなーと 2018-08-23 01:48:58 ID: 2cGFAm6W

イ級は最寄りのスーパー、又はセブンイレブン系列のコンビニやお店にて販売しています。近くて便利、セブンイレブンです。

18: ゔぇるなーと 2018-08-23 01:50:23 ID: 2cGFAm6W

間をとってイ級に癒されてはどうでしょう(名案)

19: SS好きの名無しさん 2018-08-30 06:03:17 ID: crvutg2W

そういえば、金剛お姉様と白露嬢は改二でいいのかな?
あと白露とイ級可愛い(病気)

20: ゔぇるなーと 2018-08-30 08:02:27 ID: Zv4ryl6j

あ、説明して無くて申し訳ない
白露と金剛は共に改二って事でお願いします
そしてようこそイ級の世界へ

21: SS好きの名無しさん 2018-09-03 23:01:49 ID: IfVG2kjC

出撃していない?逆に考えるんだジョジョ。もういっそ
この子達に商店街辺りで艦娘音頭を踊らせれば良いさ、と(宣伝活動)

22: ゔぇるなーと 2018-09-08 23:08:50 ID: 9zwmbbgf

きさまここにコメントを書き慣れているなッ!(ごめんなさい)

23: SS好きの名無しさん 2018-09-16 08:01:58 ID: YUqb9aAO

答える義務は  っ!?
リアル下痢中なので初投稿ならぬ初撤退です(ホモは腹痛以外嘘つき)

24: ゔぇるなーと 2018-09-23 19:37:57 ID: H83eZRec

ふっ・・・やれやれだぜ


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1: SS好きの名無しさん 2018-07-24 16:33:31 ID: ha0QdVRL

ええんじゃない?


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