2019-04-23 01:20:09 更新

概要

傷ついた提督と艦娘達、彼等は出会い何を思い何を感じ行くのだろうか——。




————憎い。憎い憎い憎い憎い憎い!!

信じた俺が馬鹿だったんだ!

こんな、こんな屑を!!

なんで!どうして!!なんで、俺は信じてしまったんだ!!!!


————————————殺す。

殺してやる。

四肢をもぎ取って、一片の希望も残さず、じわじわと嬲り殺す!!


殺してやる!殺してやる!殺してやる!

いや、殺さなければ


「アイツ」の、為に———————————



—————————————————————



廃れた港町に静かに佇む「ソレ」は外観こそ鎮守府だったものの

その傍目から見ても分かる活気のなさは建物の迫力との差から何処か不思議な空間が広がっており

最早、廃墟といっても差し支えのないものであった


そこは、所謂ブラック鎮守府であった


疲労状態での出撃など当たり前

ご飯や睡眠は最低限

入渠は禁止

大破艦は敵の盾として認識され

どんな戦果を挙げても返って来るのは暴言や暴力など他にも沢山の非人道的な行為が日常的に行われていた


しかし、海軍側はこれを黙認

戦果を挙げていたこともあるし

第一、海軍自体


「艦娘とは人ならざるもの」


という認識が一般となっていた

国民からバッシングを受け表向きは辞職するものの

その考えの根本が変わる訳では無かった


そして、艦娘達は徐々に生気を、正気を、希望を失っていった


そして、また新しい提督が着任した



その提督、名を新井隼人という

彼は心に大きな、そして多くの傷を負っている



提督になるには「適性」が必要だった

だが、その適性を持つ者は数少なく

かつ深海棲艦との戦いでその数は著しく減少している


つまり、世界は劣勢に立たされていた


その事態を重く見た日本政府は国民に半強制的に適正調査を実施

そして、適性有りと判断された者を強制的に 「提督」とした


そして、彼、新井隼人は提督になった


彼は裏切られ、利用された


永劫の友情を誓い合った友は金を対価に彼を差し出し


一緒に暮らしてきた家族は自分達の身の安全を条件に我が子を戦地へ送り出す


そんな中でも、手を差し伸べてくれる人はいた

でも、それすらも、奴等は壊していった



本当に、憎い。


殺してやりたいほど

だが、それだけでは足りないのだ

「アイツ」を、「アイツ」を殺した奴等にそんな事だけでは足りない



俺が、あんな奴等を信じてしまったから


「アイツ」は死んだんだ


俺のせいだ


だからもう————



——俺はもう人を信じては、いけないんだ



提督が着任しました。これより、艦隊の指揮に入ります。


—————————————————————



「ハァ...また新しい提督ですか...」


陰鬱げに嘆く彼女の名は軽巡洋艦「大淀」


主に提督の執務の補佐や任務の管理

そして新しく着任する提督の案内なども行なっている


つまり、これまで行われてきた非道な行為の一端を常日頃から一番近くで見ていた


「まぁ、どうせまた国民からの信頼問題云々で三ヶ月もしない内に居なくなるでしょうけど」


正門に移動しながら一人ごちる彼女の目は暗く「濁って」いた


それもそのはず、彼女は非道な行為を一番近くで見ていると同時に


その非道な行為を一番受けていた


元提督の奴等は全員屑だ

屑が密室で見目麗しい女性と二人きり

何があったかなどいう必要もなかろう


屈辱だった筈だ

苦しかった筈だ

殺したい程にも憎かった筈だ


だが、彼女は耐えた

証拠の一つでもあればこの状況が変わると、そう思っていたから


だが、そんな事は無かった


ある日彼女の必死の呼びかけが応えたのか大本営から調査員が派遣された


調査は一週間にも及んだ

最初こそ取り繕っていた屑野郎であったが2日もすればいつも通りだ


調査員の目の前で仲間達に理不尽な暴力を振るい、暴言を吐いてもいた

その一週間の間に汚されたりもした

普段より声を上げ

わざと気付かれるように仕向けたりもした

録音もしていたから決定的な証拠も抑えた


そして調査の結果



次の日から、その提督は居なくなった



単純に嬉しかった!

嬉しくて嬉しくてたまらなかった!!



そして——



———————次の提督が着任した



悲劇は、繰り返した



彼女は知った

人の心の、否、この世の醜さを


そして、彼女は諦めた

絶えず行われる暴力にも目を背け

毎日聞こえてくる暴言を聞き流し

汚されたとて、最早何とも思わなくなった


変えられない

逆らってはいけないのだ

逆らっても、何一つ変わりはしない

いつだって、世の中は理不尽で

弱者がなにを叫んでも

強者には何も届かない


だから、諦めるしか、できないんだ


こうして、彼女は壊れた


「あ、もう居る」


正門の前には一人の男が佇んで居た



「こんにちは、私は軽巡洋艦大淀です。新しい提督の方で...ッ!?」


「あぁそうだ、新井隼人だ宜しく頼む」


彼の顔を見た彼女は驚愕した



彼の目は死んでいた



光が灯っておらず、希望や生気、

その他の「生きている」と思わせるような要素が一つとして感じられないその目は死んでいると言って相違のないものだった


整った顔立ちがその目の違和感を増大させ

より不気味なものへと変えていく


普通に見れば、ただ少し体調が悪そうという程度だ


だが、彼女は違った


この目を知っていたからだ


見たくなくても、目を背けても、瞼を閉じても、脳裏に刻まれ離れなかった



あの艦娘達《仲間達》の目だ——



—————瞬間気付いた


あぁ、彼もまた

私達と同じ様に

人に、傷つけられたのだろうと


そして直感的に思った


もしかしたら、彼ならば

人に傷つけられる痛みを、知っているのであれば

この鎮守府を、私達を、仲間達を、

救えるのではないか————と。



捨てた筈の、祈りにも似たほんの僅かな希望を彼女は抱いたのであった———



—————————————————————



鎮守府、集会場


名前の通り集会をするための場所であるそこは

広々とした、殺風景なところだった


木造の床に壁、鉄の天井に取り付けられたちょっと大きめのライト、それ以外にはちょっとした舞台とがあるだけだった


簡単に言えば、体育館、とでも言えば良いだろうか


ただ一つ違うのは、

直立し舞台上の俺を見上げる艦娘達がいる事であろうか


「新しく到着した提督による挨拶」だ、そうだ


鎮守府に入ってすぐ大淀から

「提督着任の挨拶があるので集会場に来て下さい」

と言われ、今に至る


改めて今の状況を確認していると

隣にいた大淀からマイクを渡された



——さぁ、俺の復讐劇の第一歩だ。



「あー、新しく着任した新井隼人だ。よろしく頼む。えーと、まぁ初めに一つだけ言っておく俺もお前等と一緒だ。人に傷付けられた」


「やっぱり...」


集会場が少し騒めく


なんか隣からも聞こえたけど構わず進める


「まぁ、別にだからどうって訳じゃないけどな。お前等の問題を解決してやれる程、俺は力が無いからな」


「でも」


軽く息を吸い、先の言葉より力を込めて、言い放つ


「でも、今も、そいつの事が憎いなら。そいつに罰を与えたいなら、俺はお前等と同じ立場の人間として、それに協力する事位は出来る」


また、少しどよめきが走る


「信じられないだろ?俺だって誰かにこんな事言われても信じられねぇ。でもな!これだけは覚えといてくれ!!」


「俺は、仲間を裏切らない」



嘲笑するべき言葉だ

最も信じられない言葉だ

何度も裏切られ、希望を打ち砕かれ、いつしか諦めもしていた


だが、彼の言葉は、何故か心に響いたのだ


同じ境遇にあったからか?他の奴等と違ったからか?


分からない。

でも、直感的に分かった


彼は本気だ


嬉しくもある。

初めて私達を理解してくれる人ができたから


だが、不安もある

また裏切られるのではないかと、

信じるのを、踏み出すのを、躊躇ってしまう


「まぁ、急にこんな事言われても信じられないだろうから・・・うーん、そうだな・・・じゃあ証拠を見せよう。ついてきてくれ」


俺自身も、何故ここまでの事をしたか少し分からない


贖罪なら、復讐なら、「アイツ」との約束を果たすためなら、別に彼女達の為にここまでしなくても良い筈だ


少し考えると何となく、自分でも実感が湧いてきた


多分、俺はこの眼前の彼女達と自分とを重ねてしまい、彼女達を裏切った奴に


「怒っている」のだろう


そして、

彼、否、提督は不敵に笑ったのだった


—————————————————————



商店や住宅が立ち並ぶ栄えた街の一角に聳える、一際は大きな人の目を惹く建物


それは紛れもなく鎮守府だった


世界各地にある鎮守府の中でも内陸部に位置するこの鎮守府は

他の鎮守府の支援や周辺鎮守府の提督合同会議、勲章の授与なども行われる比較的重要な場所であった


そして、そこに今、俺と艦娘達は向かっていた


別段遠い訳ではないが、不安や興奮が入り混じり

誰も声を発さない、重苦しい雰囲気が立ち込め、疲れた様なそんな印象を受けた


そんな雰囲気を打ち壊したのは、凛とした、小声ながらもしっかりとした声だった


「何故あの鎮守府に向かっているのですか?何があちらにあるのですか?」


大淀の問いかけに後ろの艦娘にも聞こえるように応える


「確かあそこに...前任の野郎...だかが居た筈だ」


「だからちょっと、暑中見舞いにな」


「前任」という単語を聞くたびに、後ろからついて来る艦娘達の肩や目線が少し揺れる


まぁ無理もないだろう、それだけの仕打ちをされたんだ


あぁ、本当に腹が立つ


腹の底から名状しがたい黒々とした感情が沸き上がってくるのが分かる


その屑と「アイツ」を殺した奴らとが重なり、頭が何も考えられないほどその感情一色になる


無意識の内に握っていた左手についた傷を見て、その思いが文字通り倍増される


要は、俺は今その野郎が勤めている鎮守府に来ている訳だ


整った作り笑顔に自分の黒々とした感情を隠し、適当な嘘で鎮守府へ入る許可を取る


中々のガバセキュリティに多少困惑しながらその野郎が居る執務室に向かう


重要施設というだけあり頑丈で耐久性や耐火性などに特化した様な質素な廊下を抜け一番奥まで進む


その数分の間でさえ他の鎮守府の提督が艦娘を連れて来ることについて陰口を言われ

そのたびに艦娘達は顔を伏せ黙りこくっていた


もう限界かもしれない


「さて、ここか」


他の部屋と違い絢爛豪華な扉を発見し、迷いなくそれを———



————蹴破った



「「「「はっ?」」」」


四方から聞こえる声は誰のものやら、もしかしたら俺以外の全員だったのかもしれない


「失礼しまーす」


部屋に入ると眼前には勲章やら賞状などが一面に飾られた壁


それ一つだけでいくらになるか予想もできないシャンデリアの照明


その照明の光を浴び白く輝く大理石と思われる建材を使った傷一つない床


上に置いてあるもの一つ一つですら高級品に見えるほど豪華な机


そしてそこに座るは素っ頓狂な声を上げながら目を丸くする中年オヤジ


お前はどう見ても釣り合ってない

バランスというものを知らんのか


「な、なんだ貴様は!?お、俺が誰か心得てるのか!!」


おぉ、顔も悪けりゃ性格も最悪、おまけに冷静さにも欠いていると来たもんだ


つーか



—————1人目、見つけた




思い出されるはあの日の事


俺はアイツと共に友人の家で隠れていた


日本軍は貴重な提督の素質がある人間を逃さず遂に実力行使に乗り出した


何万もの人員を配備し、俺を確保しようとしていた


信用できる友人の家に匿ってもらい、命からがら逃げ延びていた


付いて来なくて良いと言っても

「心配だから」

と、付いてきてくれる彼女《アイツ》も


何も言っていなくても

「お前が困ってるんなら」

と、自分の家に匿ってくれる友人も


本当に有り難くて仕方がない


涙が出てくる


だが、その涙は————



———決して感動からくるものでは無かった



7畳もない狭い友人の自室にスーツ姿の十数人の大人達が流れ込んでくる


「なんだ!?」


「・・・ようやくかよ」


「ようやくって・・・どう言う事!?」


混沌とした状況の中、友人の呟きを問い詰める「アイツ」の声が嫌に耳に残った


「どうもこうも、コイツ等俺が呼んだんだよ」


・・・何を言っているか分からない


時間にすれば一瞬だったが俺にとれば永久にも似た長過ぎる時間だった


手のひらに落ちた自分の涙でようやく正気に戻り

動いていない脳を必死に動かし考える


何の為にこんな事をしたか、とか

俺達を騙したのかとか


言いたいことも


聞きたいことも


山ほどあるのに、どれも全て出てこない


きっと俺は怖いのだ帰ってくる言葉が


だが、彼女は違う


「何で!!何でこんな事するの!!」


「政府の奴等がそこのバカ捕まえるの手伝ってくれたら9桁は出すって言うからな」


「そんな事でッ!」


悲しいとか、悔しいとか


そんな言葉では到底今の気持ちは表せない


涙も枯れ果て


瞬きをすることすら忘れ


呼吸も忘れていたのかもしれない



ただ、あの友人の顔だけは忘れられない



奇妙なまでに吊り上がった口角


騙された俺に対する嘲笑を含んだ笑い声


そして、心底楽しそうに開かれた目


俺は最後の涙が地面に落ちるとともに


心の内にある希望と共に、静かに地面に倒れこんだ———




気づけば目の前に3人の男が立っていた


全員が海軍服を着ていて


1人は眼鏡を掛けた冷たい目をした男


1人は常に温厚な笑顔を浮かべる男


もう1人は



—————今現在、目の前にいる男だ



世界は狭いとは良く言ったものだ


艦娘達の心を開かせる為に生贄という名のサンドバッグにでもしようと思った奴は



どうやら、俺の復讐相手の1人だったらしい



コイツは俺を裏切った野郎に交渉を持ちかけた張本人だ


裏切った畜生もそうだが、それを手引きしたコイツには殺意が湧く


そんな畜生を信じて、アイツを死なせた自分にも


腹の底から煮えたぎった黒い感情が湧き出て来るのが分かる


抑えようとして拳を握ればまたあの忌々しい傷が目に入る


捕まって抵抗した時、憤怒したこの屑が撃った弾が掠った傷だ


殺してやる


俺の友人を悪魔に変えたコイツを


俺を、アイツを傷つけたコイツを


殺してやる


アイツへの、せめてもの贖罪として


「貴様!新井か!?またあの小娘の事か!!」


小娘、か十中八九アイツの事だろう


ふざけんな


「テメェみてぇな奴が!」


アイツの、事を


「口に出すんじゃ」


「ねぇ!!!」


「グハ・・・ッ!」


気がつけば俺は、眼前の屑の腹を蹴り飛ばしていた


勢いに任せて振り出した右足は鳩尾に入り


厚過ぎる脂肪を、細い肋骨を、無いに等しい腹筋を貫き


内臓を潰す


その衝撃は酷い顔をした屑の体を揺らし、飛ばす


足が地面から離れ、顔に痛みが浮かび、口から唾液が飛び出す


・・・ちょっと掛かったじゃねぇか、汚ぇなぁ


重力の影響を受け、唾液製造機が地面に叩きつけられる


「グアァッ!」


ひとしきり呻り、転げ回ったと思うとおもむろに立ち上がり


「き、貴様ァ!ふざけるなよ!また、あの時のように撃たれたいのか!!」


と所々荒い呼吸を挟みつつ叫び、胸ぐらを掴んでくる


何だか笑いがこみ上げてくる


だって禿げてんだもん

なのに眉毛超濃いんだもん


加勢しようとした艦娘達を手で静止させる


これは俺の喧嘩だ、艦娘達を巻き込むわけにはいかない


「だからお前がその話を」


軽く息を吸い、こちらも胸ぐらを掴み、足に力を入れ、踏ん張る


「するんじゃねぇよ!!!」


胸ぐらを掴んだ手に思い切り力を入れ、その手を基軸にして頭を持ってくる


反動で逝きそうな首を気合いで持ち堪えるそして胸ぐらの手を離す


物凄い速度で迫る頭を回避できるはずも無く、鈍い音をたて頭と頭がぶつかる


要は頭突きだ


俺も痛いが、頭部装甲を持たないコイツの方が余程痛いだろう


頭が俺から離れていき、それにつられて体も吹っ飛ぶ


足もだんだんと離れていき、最後に胸ぐらを掴んだ手が離れていく


少し空中を漂うと唾液製造機が鼻血製造機に早変わり


着陸の瞬間を見ずに艦娘達に振り返る


「このように、俺は仕返しの手助けができます。因みにソレはもうどうでもいいんで、皆さん日頃の鬱憤を晴らして下さい」


驚愕の表情で見開かれた死んだ目に、光が灯る


やっぱり女の子は死んだ目よりそっちの方がいい


そんな性に合わない事を思いつつ


俺は無意識の内に笑みをこぼすのだった


その笑みは先刻までの不敵な笑みにあらず

おおよそ普通の、『人間らしい』笑みであった


その顔はとても綺麗であり、艦娘達が目を奪われるのも、そう無理のない事であった


———————————————————



「おい!大丈夫か!」


「大丈夫だって、大袈裟だから!」


「だってお前、右手が・・・俺のせいで・・・」


「だから大丈夫!・・・それに、あの手術、成功すればこの手も治るって!」


「あの手術って・・・艦娘改造手術か・・・?でも、成功率は20%も無」


「だーいじょーぶ!それに私って、」


「結構、運良いんだよ?」


「・・・そっか」


「うん!私、空母の適性あるんだって!」


「確か、艦名は——」



———————————————————



懐かしい夢だ


まだ、俺が軍に捕まってすぐの時の事


まだ、俺を庇ったアイツが怪我をして軍の病院にいた時の事


まだ、アイツが生きていた時の事


熱いものが目尻から流れ、頰を伝い、右手に落ちる


俺は泣いていた


少し前なら入れ替わっていたが、それはもう2年前の話


俺は御神木のほど近くで口噛み酒を飲まずに済んだらしい


いや、アイツのならちょっと飲みた・・・


そんな邪過ぎる考えは軽快なノックの音によって遮られた


「白露、はいりま〜す」


「お〜白露か、どうした〜?」


「白露が秘書艦だから起こしにきたの!ほら!起きて!」


秘書官


あの一件から、艦娘達は少しづつではあるものの元気になっていった


まぁ、元通りというには些か活気が足りないのではあるが


そんな中、1人だけ元通りになったのが白露だった


本人曰く


『元気になるのは白露がいっちばーん』


との事であった


・・・ちょっと何言ってるか分からないけど


なんにせよ元気なのはいい事なので素直に喜ぶべきだろう


ちょっと何言ってるか分からないけど


そんな艦娘達に普通の鎮守府への第一歩として提案したのがこの秘書官である


正直仕事が多過ぎたから手伝って欲しいのが本音の為

眼前の少女の眩しい笑顔を直視できそうにない


・・・まぁでも、こんな風に笑ってくれるならやって良かったかもしれない


「あと、5ヶ月だけ・・・」


「長っ!どんだけ寝るの!?ほら起きる!そんなんじゃ一番になれないよ〜」


「2位じゃ駄目なんですか!つー訳で俺は寝る」


「もう!提督ぅ!もうちょっと頑張ろうよ!」


少し不満そうな笑みを浮かべ

俺の掛け布団を可愛い力で(本人にとっては精一杯)引っ張ってくる白露


細くしなやかで美しい指でその見た目相応のか弱い攻撃が繰り出される


長い髪の色より明るいその橙色の瞳は邪気や悪意を全く感じさせず


性格と一致したその明るい声音と柔らかな笑みに抱かれ

名状し難い程の幸福を覚えつつ


俺は二度寝という名の海の底に沈んでいったのであった



「なんでこの状態から寝るの!?ねぇ提督ぅ〜、起きて!」



———————————————————



無駄なものが一切無い綺麗に整えられた部屋


まだ午前中だというのに7割以上が判を押された書類


艦娘の疲労の事を考えられた遠征表


しっかりと着込まれた皺一つない軍服


目線と手だけを動かし休みなく働く提督



つまるところ、彼は真面目なのだ



確かに、女の子の前だからという邪な思考も無い訳でない


だが、そんなものは4割程度だ


そう、4割。


・・・・・4割。


半数以下なら・・・まぁ・・・いい、のか?


話を戻そう、格好良く言えば閑話休題


彼は真面目であり優秀だ


不本意とはいえ、軍人の端くれ


それに元を辿れば自分の過去も提督の適性が、

もっと言えば

深海棲艦なんて奴らが居たからであり

完全に当てつけではあるが、復讐という名目もある


それに、アイツの海を守る為にも


なんて自分の過去も相まって彼は提督として、かなり真面目で優秀なのだ


「提督、入電です」


「ありがとう。次は・・・これと、この任務を受注しておいて」


「了解しました」


もう何度目になるかも分からない会話を大淀とし、また眼前の書類を見やる


すると、退屈そうに体を机に突っ伏していた退屈そうな顔の白露が声を掛けてきた


「ねぇ、提督って何でその手袋?つけてるの?」


提督の右手につけられた茶色のゆがけを力無く指差す


ゆがけとしては薄過ぎるソレは最早忘れ得ることなどないまごう事なきアイツの物


アイツを深海棲艦の攻撃から助けようと手を伸ばしアイツの代わりに掴んだ物


俺のせいで、俺の前で散った、アイツの形見の物


何気の無いその質問でも、俺の心を沈ませるには十分な重さだった


「?どうかしたの?」


首をコテンと傾げ心配気に聞いてくる白露


「これは・・・」


話してしまおうか


一瞬そんな考えが浮かんだ


話せば楽になるかもしれない

少しは軽くなるかもしれない

もう悩まず済むかもしれない


俺の想いを、過去を、ありのまま話してしまおうか、と


だが、その考えは直ぐ自分によって打ち砕かれた


違うだろ


これは俺の事情だ

彼女達を巻き込む訳にはいかない

そんな事は、許されない


いや、多分それも違うのだろう


俺は怖いんだ


また裏切られるのが


それを理解する事からすら逃げて、色々な理由をつけて誤魔化して目を背けて


だから———


「これは別に何となく付けてるだけだよ」


————こうやって、誤魔化す事しか出来ない。


「へぇー?」


理解したのか否か、よく分からない返事を受け、逃げる様に書類に目を向ける


小難しく書かれた文を要約すると


『はよ深海棲艦全滅せぇボケェ!」


と、書いてあった


ある書類は漁業の経済的損害の資料と共に


ある書類は避難所生活の苦労を綴った手紙と共に


またある書類は日本の軍事予算と、それを大きく上回る実費の表と共に


立場も職業も全く別の彼等がここまで息ピッタリならば

にほんのみらいはあかるいとおもいましたまる


どうしろってんだ


イライラしたので最後の書類を破きながら考える


何が漁業の損害だよ、てめーらイ級とか活け造りにしてんだろうが


最初こそ漁に出れないとか言ってたけど1人の阿保が食べ始めてから皆食ってんだろ


今では刺身でスーパー置いてあんだろうが


何が『大物!ツ級解体ショー』だよ!

思わず見に行っちゃたじゃねぇか!


この後避難所で美味しく頂かれたそうじゃねぇか!


ふざけんな!!

俺もツ級食いたい!!!


と、馬鹿な事を考えつつありきたりな事を書いて次の書類を拝見する


正直面倒臭い


さて、そろそろ出撃任務でもこなすとしよう


・・・白露がかなり暇そうだし



書類を殆ど片付けファイルやら棚やらに保管し

コーヒーを飲んで一休みする


本当はこんな事をして居る暇など無いのだが

眼前に広がる光景の尊さを前には、そんな感情は水平線の彼方であった


書類仕事が無くなったので出撃任務の一つでもして白露に退屈を凌いで貰おうと思ったのだが


「すぅ・・・んっ!・・・んにゃ・・・」


秘書艦用の椅子に座り机に自身の白く細く優雅な両手を枕代わりにしうつ伏せになり

幸せそうに眠る少女を叩き起こし


「オイ、(敵と)戦わねぇか」


と言う訳にもいかずこの様にコーヒーブレークと洒落込んでいる訳だ


暫く寝顔を凝視していると白露の意識が段々と覚めていく


「んぅ?提督?・・・あぁっ!ごめん!」


「いや謝らなくて良いよ。今は休憩時間だから」


勝手な偏見だが知れないが、彼女の性格から考えるとあまり朝が早い方ではないと思う


だが今朝俺を起こしたのもまた彼女


時間的に姉妹が起こしたとも考え難い


多分、頑張って自分で起きたんだろう


そりゃ寝たくもなる筈だ


「え・・・でも・・・」


それだけ楽しみにしていたもので寝てしまったのだ


不安そうな顔をするのも当たり前だろう


自分が作った制度のせいでこうなっているので罪悪感で胸が痛い


だから俺はなるべく優しい声音で


「コーヒー、飲むか?」


と聞いてみる事にした



この鎮守府は最前線に位置している


と言っても水上や小島の鎮守府などとうの昔に深海棲艦の手に堕ちた為に


最前線などこの鎮守府が深海棲艦の基地と思われる場所に若干近い

という位だ


だが曲がりなりにも最前線基地に変わりわない


「白露、ここに戦艦っているのか?」


「えーと・・・扶桑さんと金剛さんと陸奥さんの3人!」


戦艦


それは普通任務消化に使う様な艦ではない


こうでもしなければ何が起こるか分からないのだ


それが例え鎮守府の近海だったとて


深海棲艦は艦娘の数に反比例する様に勢力を増していき


近頃は南西諸島で姫級、鬼級なども確認されているそうだ


そんな中で最前線基地であるここだけ狙われないとは思えない


そこで戦艦を使わざるを得ないのだ


「ありがとう。今、手が空いてるのは・・・金剛だけか」


短く感謝の言葉を返し口に手を当て一人呟く


すると会話が無く暇なのか白露がコテンと首を傾げる


その姿を見て少し微笑み話しかける


「白露、適当に暇な人探して誘って来ていいぞ」


「いいのっ!?」


「おう」


「やったー!」


言うや否や廊下に飛び出して行く少女の後ろ姿を微笑みを持って見送り


鎮守府内には白露の走り回る音と金剛に執務室に来る様にという旨の放送の音が響いた



———————————————————



「あれは・・・白露?」


「あんなにはしゃいで・・・」


「もう皆前任の事を忘れたのかしら・・・?」


「どうせ今の提督だってきっと・・・」


「それに、少し違和感がある・・・」


「流石に今の提督に対して皆友好的過ぎる」


「・・・まぁ、なんにせよ」


「もう二度と、仲間をあんな目に遭わせたりしない」


「その為に・・・」


「しばらく、監視させてもらいますね」


「提督」



———————————————————



再度言おう、この世界は劣勢に立たされている


提督の数だけでなく、艦娘の数も足りず

その深海棲艦との行為を戦争と呼ぶにしては、あまりにも損害が大きかった


事実、小さな島国が深海棲艦に占領されたりもしている


こう他人事の様に話してはいるが、日本もかなり危険な状況に置かれている


そこで政府は提督の適性を持つ者、そして艦娘の適性を持つ者も探し始めた


もっとも艦娘の適性は若い女性ならほぼ誰でも持っている為

探すというその事自体は簡単だった


問題はその先にあった


深海棲艦という謎の生物


人型、魚型、ようわからん型、その姿は多岐にわたる


が、全てにおいて共通している事がある


それは

人間に対し敵対関係にある事


しかも一体でも軍艦一隻分の攻撃力、にも関わらず何度も何度も湧いてくる


銃撃、砲撃、雷撃、爆撃、これらを用いてようやく足止め出来る相手に対し唯一太刀打ち出来る存在、それが艦娘


艦娘は、人々の希望であると共に


恐怖の対象でもあった


深海棲艦が化け物であるなら、それを凌駕出来る艦娘もまた化け物


そんな化け物に、誰が望んでなりたいと思うのか


そんな化け物と、誰が戦いたいと思うのか


答えは火を見るよりも明らかであった


結局艦娘になったのは


売られた者

捨てられた者

騙された者

諦めた者


そして


人一倍、正義感が強かった者


それだけであった


数にして数百人、多い様に感じるかもしれないが政府の予定人数の十数分の一と言えばその少なさが伝わるだろうか


そして殆どが心に傷を負った子供

とてもこの先の戦いを生き残れるとは思えなかった


そんな中、ずっと元気に笑顔を振りまく子が一人

しかも戦艦の適性アリ、大人達が彼女を贔屓するのは当たり前だった


彼女はいじめられた


彼女が大人達から贔屓されていたから

彼女が戦艦の適性を持っていたから

彼女がいじめられて尚、笑っていたから


大人達は彼女を庇った


その次の日には、いじめていた子達は謝ってきて仲直りした

彼女は、楽しそうに笑った



彼女は偏見を抱かれ罵倒されていた


出撃を終え、帰投した港町で陰口を叩かれていた


深海棲艦を倒し、自分が守った場所で罵倒されていた


大人達は何も言わなかった

彼女は、瞳を潤ませながらも笑った



彼女は出撃で怪我をした


フラフラしながら歩くその姿に港町の人々も流石に心配した


彼女は笑いながら支給された高速修復材を傷口にかけ、安心させようとした


みるみる縮まっていく傷口に反して、彼女と町人の距離は離れていくばかりであった


「気味が悪い」とだけ言い残して


大人達も気味悪がっていた


彼女は、笑えなかった



その日から、彼女は笑えなくなった



その笑えない彼女は今、執務室へと向かって歩いている


提督に呼び出されたからだ


以前なら無視していただろうが、やはりあの提督をもう少し見てみたいのだと思う


静かな廊下に、自分の足音だけが反響する

少し歩いて辿り着いた扉をノックする


しばらくして入って良いという旨の間延びした返事が聞こえてくる


そして扉を開け、精一杯の少し引き攣った不恰好な作り笑顔をしながら


「失礼シマース、金剛デース!提督ぅ、私に何の用デスカー!」


死んだ目の提督に挨拶するのだった



—————————————————————



鎮守府内に響く騒音とも取れる声や足音が止み、その余韻さえも消えた去った後


執務室に帰って来たその騒音の原因たる白露の傍には

黒髪の少女と金色や黄色にも似た髪の少女が佇んでいた


比較的落ち着いた、知性的な印象を受けるその黒髪の少女だが少し緊張しているのか

部屋に入り俺を見るや否や

敬礼をし、堅苦しくも少し拙く挨拶をする


「ぼ・・・私は白露型駆逐艦二番艦、時雨です。よ、よろしくお願いします」


「・・・ほら、夕立も」


そう言ってその夕立と呼んだ右横に立つ少女を肘でつつく


「あっ、えっと・・・夕立です。・・・よろしくっぽ・・・お願いします・・・」


時雨のは僕だったとして夕立のぽって何だ?

少し気になるし、好奇心の為にも敬語はやめて頂こう、そうしよう


「あー、いや無理に敬語とか使わなくて大丈夫だ気楽にしてくれ」


「いや、でm、しかし」


「提督は『人間』ですから・・・」


・・・成る程


艦娘は人間と違うと徹底的に教え込まされている訳か

その無駄教育の時間を一割でも毛根の育成に使っておけば良かったのに


そんな奴等が居るから、アイツは・・・


・・・ふざけんな。


「時雨、だっけか」


「は、はい」


「それさ、誰が言ってた?」


「え・・・ッ!」


「て、提督ッ!?」


「提督さ、んッ!」



狂気という物は、彼、提督の為にあるのだろう



そんな風に思わせる光景がそこにあった


流石にそれは誇張し過ぎと思うだろうが


それを完全に否定するには、彼の顔は余りに美しく、恐ろし過ぎた


笑筋により吊り上げられた口元は整った顔立ちと相まり、ただひたすらに美しかった


そう、あの死んだ目を除いて


眼瞼挙筋を用い、薄く、ただ薄く開けられたその瞳は決して笑ってなどおらず


瞼に遮られ少ししか見えなくとも分かる、確かな憎悪と殺意がそこにあった


一見笑っているのに分かる何とも名状しがたいその違和感は、美しい顔に何処かよく似合い



狂気という言葉が表すに相応しいものだった



誰も声を出さない、否、出せない


ただ眼前の光景に目を見開いて驚愕する事しか出来ない


それは扉の外から執務室の中を覗く黒い髪の女性も同じ事で


幾多の戦場を越え、数々の恐ろしき敵の数々と相見えてきた彼女達でさえ


この状況を打破する術を知らなかった


「んーと・・・あー、ごめん。カッとなっちゃって・・・えっと、まぁ、ごめん」


彼女達の表情を見て何となく事情を察し、直ぐに申し訳なさ気な表情になり

些かボキャブラリーに欠けた謝罪をする


「まぁさっき言った通り敬語なんて使わなくて大丈夫だからさ、普段通りでいいよ」


そう、敬われる様な人間じゃないんだから


「えっと・・・分かったよ、提督」


「分かったっぽい!」


ぽい!?まさかぽいだったとは・・・ぽい・・・ぽい?ん?ぽいって何だ?


まぁ少しは心を開いてくれた、のか?


やはり、良い娘達なんだと実感する

普通、あんな屑共の元で働いていたら精神なんて軽く病んでしまうだろうが、彼女達は笑っているのだ


きっと、そんな屑共への希望を捨てずに諦めないで戦ったんだろう


良い娘達だ、俺とは違って



・・・本当に、こんな良い娘達を利用するなんて気が引ける



執務室での一波乱もなんとか収束し

その中で唯一提督だけが気付いていたこちらを覗く扉の外の女性も去った後

こちらに近付いてくる足音が一つ


「・・・来たか」


段々と近づく足音につられるが如く口からそんな呟きが飛び出す


またその呟きにつられるように眼前に佇む少女達も口を開く


「来たって・・・誰の事だい?」


目をキョトンとさせ首を傾げながら俺の顔を見ようと少し上を見て聞く時雨


そんな彼女に同意する旨の意見が彼女の右、夕立からも挙がる


別に隠す必要もないので素直に答える


「ん・・・あぁ、金剛の事だよ」


「え・・・金剛さんが?」


「?どうかしたのか?」


余りに奇異な返答に思わず聞き返す


「いつも金剛さんは呼ばれても絶対来ないっぽい、めいれいいはん?っぽい」


すると、時雨の代わりに心がぽいぽいしそうな声音で夕立が少し自慢げに語る


・・・まぁ、普通は行かないわな


普通罵倒されると、殴られると、死ぬかもしれないと知りつつ喜んで戦場へ赴く奴はいない


それは至って当たり前の常識的な考え方だ


しかし何故だ


ただ怖かったというだけなら鎮守府から逃げてしまえばいいのに


いくら軍といえどこの広大な海、もう少し言えば制海権を殆ど失った海から少女を一人見つけるなど容易ではないはず


上層部も面倒だから轟沈扱いするだろう

だが、彼女はまだここに居る


何故だ


心が折れて塞ぎこんだのか?自己保身か?それとももっと別の何かか


でも何となく、俺に似てる気がする


そう思うと、俺は自分でも奇妙な程に彼女に対して興味が湧いていた


「なぁ、何で命令違反なんかしていたんだ?」


「それは多分・・・」


少し思案した様な表情で話し出した時雨の言葉は


「本人に聞いた方が早いっぽい!」


夕立によって遮られ


リハーサルでもしたかの様に部屋にノックの音が響き渡る


「はーい、どうぞー」


好奇心、探究心、興味、共感、様々な事を思い、そして押さえ込み扉の向こうの存在に入室を促す


どんな娘なのか、月並ながらそんな事を考える自分を自身でも気持ち悪く思いつつ


そして



「失礼シマース、金剛デース!提督ぅ、私に何の用デスカー!」



俺は、考えるのをやめた



———————————————————



高らかに自己をアピールし存在感や積極性を遺憾無く発揮する


少女、否、女性はその長く、だが手入れの行き届いた茶髪をたなびかせ此方に歩く


何処からか香るその芳醇な香りをまるで衣服の如く身に纏い周りに散らしつつ一歩、また一歩と段々と距離を詰めていく


初対面は第一印象が大事とか言うが、そんな短時間で人に印象を残す事が出来るのかと疑問に思う事もあった


だが現に現実として現れた答えを前に、そんな疑問など彼女の姿に意を唱えると同義


無粋で劣悪で興ざめのする行為であり、とても人に出来る行為ではないだろう


その姿は小さな頃読んだギリシア神話のアフロディーテや三美神を思わず連想させる


そんな彼女は俺を見るなり、邪気の全く孕まぬ少し不恰好な笑顔を浮かべて



「バーニングゥ・・・ラァァブ!!」



こんごう は じゅもん を となえた!


多分唱えた呪文はメダパニだな


「こっ!ここここ、金剛さん!?」


「お、落ち着くっぽい!お、落ち着いて水素の数を数えるっぽぽぽいぃ!!」


なんだ?ニンジャでも居たか?


焦りやら驚きやらを一片も隠そうとしない悲鳴にも似た声が上がる


あと夕立、空虚を指差して水素を数えるんじゃ無い、怖いぞ


こんな風に呪文耐性のない夕立と白露が掛かった、こうかはばつぐんだ


恐らくだが、少なくとも金剛の性格は彼女等の前では大人しく優しい、いわばレディや淑女と呼ばれる人のそれだったのだろう


それが今急変し、そのショックでこうなったのか?


だがそれ以上に混乱した事が一つ


金剛はメダパ・・・呪文を唱えると同時に俺に抱きついてきた


普通なら喜ぶべきかもしれないが、1年余の逃亡生活の中でこういった事


とどのつまりハニートラップの様な事は何度か体験しており、その体験が幸いか災いしてか喜ぶ感情など一切なく


何処とも無く、いわば本能の様な、存在意識下から湧き出てくる恐怖や畏怖の念が思考を駆け巡る


そう、だから女の子特有の匂いのか全然気にならない、うん、全然・・・大丈夫


「えっと・・・とりあえず離れてくんない?」


「嫌デース!提督はそんなに私の事が嫌いデスカ?」


「初対面だから何とも、でも人の話を聞かない奴はあんまり好ましく無い、とだけ」


「じゃあ離れマース」


「素直でよろしい」


ふわりと柔らかくしなだれかかる様に、だが重く無い様に此方に重心は預けない事を徹底していた彼女を


名残惜しそうにではあるが、彼女を我が身体から引き離すことに成功した


・・・別に残念じゃないですし、はい


勿論だが、俺は我が両目に映りし頬を膨らませ


「中々手強いデース・・・」


とか呟いている彼女の事など知らない


会った事どころか、見た事も聞いた事も無い


今までで分かっている事は


挨挨拶と、

ハグをする女性

要注意


という具合だ、因みにモノローグでいきなり一句詠む人も要注意だヨ!


そして不思議なのはあの言葉遣いだ、所謂片言な喋りで話すのが素だとは到底思え無いが・・・


それに勢い良く抱きついた割に、妙にあっさり引き下がったのも気がかりだ


まぁ、素直に聞くのが手っ取り早いか


「なぁ、金剛。その言葉遣いって」


たった一瞬、瞬きより短い刹那の事


その言葉を俺が口からこの大気に放ち、空気を伝わり、鼓膜を振動させ、脳が言葉とし捉えたその瞬間、彼女の顔に影が出来た


ほんの些細な、彼より長い間彼女を見ていたであろう時雨さえ気付かぬ変化だった


だが、些細だがしっかりと感情の伴った表情の変化に俺の言葉は続きを失った


「?どうしまシタ?」


「いや、何でもないんだ」


咄嗟に出たその言葉に素直に返すその姿を見る限りは精神を病んだ者とは到底思えない


何か、彼女に事情があるのはこの場に居た誰もが知った事だった


それを経て尚、不自然ながらも彼女は笑っているのだろう


俺には、到底出来ないんだろうな


「では、鎮守府近海の哨戒行動に行ってくれ」


「はーい!」


「うん、頑張るよ」


「了解っぽい!」


「了解デース!沢山の戦果、期待しててネ!」


「・・・一応もう一回言っとくけど、哨戒行動だからな?」


虚しくも、一人残された提督にその一言と勢いよく扉が閉まる音だけが反響していた


前言撤回だ、彼女は俺なんかと似ていない


———————————————————



「・・・何なのかしら、あの目は・・・」


「私も余り人の事を言えないけど・・・」


「何というか、作り物の目に無理矢理感情を入れたような・・・」


「怖い・・・」


「しかも一瞬だけど、確実に此方を見ていた・・・?」


「でも何故?」


「動いても、音を立ててもなかったはず・・・」


「しかも、何か既視感があった・・・?」


「・・・!!」


「あの時・・・!」


「少し、嫌な胸騒ぎがするわね・・・」



———————————————————



太陽が燦々と照りつけ、それを澄んだ海が反射するとても戦場とは見えない場所


皮肉にも深海棲艦の影響で人が立ち入れなくなったここはゴミも無く

前任御用達のダイビングスポットでもある


そんな広大なる海原の輝きに勝る輝きを放つ少女が3人女性が1人


「ぽーい!久しぶりの出撃っぽい!」


満面の笑みで話すその姿はとても愛らしく可愛い、と言う言葉がよく似合う夕立


「いーぃ、時雨?お姉ちゃんの活躍、見てなさい!」


少しドヤ顔で顔の横で人差し指を立て自慢げに話す姉、白露


「ふふっ、分かったよ白露」


そんな光景を見て心底楽しそうに天使の如く微笑む妹、時雨


「みんながこうやって笑えるのも、テートクのお陰ですネー」


目の前のやり取りに和みつつ、誰ともなく呟く様に話す金剛


「うん、そうだね」


「ぽい!しかも提督さん、結構格好良いっぽい!」


「ふふっ・・・。優しい提督だったね」


「今まででいっちばん良い提督だよ!」


「あの提督に、なら・・・」


誰にも気付かれない様な小さな声で発した言葉には、はっきりとした決意が込められ


その言葉を真似るが如く、背後から近づく静かな魚雷の音に金剛は気付かなかった


「ッ!金剛さん!!」


いち早く気付いた時雨の声も


その後に気付いた夕立の悲鳴も


目を見開き驚いた白露の表情も


薄く、ただ確かに微笑んで見えた金剛も


周囲の波を、風をもを巻き込む巨大な水柱に消え


その数十秒間、彼女達の生死を、存在を、確認する術はなく


ただ、その轟音と名状しがたい程の衝撃と共にしかとその両目に映った


否、映ってしまったそのどうしようもない事実を眼前にして


この圧倒的不条理への疑問など、最早そこには無かった


海面が彼女達の血で紅に染まりゆくその姿を嘲笑うかの如く


煌々と太陽の光が波に反射し、その光景を照らしだしていた



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提督執務室を入り右手の赤いカーテンの窓、その小さな枠に切り取られた青空が


まるで優しい日常という物を無理矢理具現化するが如く穏やかな日差しを降り注ぐ


だが往々にして、そんな穏やかな日々が続く事が有り得ないという事も


瞬間、その陰った太陽が知らしめていくる


時間は正午を少し過ぎたところ、と言ったところだろうか


「・・・そろそろだな」


フッと、ただ小さく呟く提督には先刻、白露や金剛達が居た時の軽い微笑みはない


ただその社会を、世界を、諦観するが如く濁った目で、彼女達が征った海原を睨む


仕方のない事だといくら割り振ろうと罪悪感は消えはしない


それどころか何倍にも膨れ上がり、俺を押し潰してくる


「・・・昼でも食うか・・・」


ろくすっぽ空いてもいない腹を満たす為に食堂へ歩く


ただ一つ、無表情で機械の如く歩く彼がつい先刻海に出た彼女達と笑い合った彼と同一人物だとは思えなかった



場所は変わり食堂


2階端にある執務室と対になる様に位置する食堂は


基本的にそこ以外では食事を摂ることのできない艦娘達にとって

比喩などではなく唯一の憩いの場であった


そんな所に、1匹の野生の提督が侵入した


だが皆には提督の姿は見えず、人はこれを「思春期症候群」と呼んで


・・・くれれば良かったのだが残念ながら提督はバニーガールでもお留守番妹でも、ましてやハツコイ少女でもない


まぁ、ある意味胸に、というか心に傷を負ったものなら居るのだが


今日は平日、しかもピークの時間を過ぎている為、かなり空いている食堂を行く


食堂といってもどちらかと言えば定食屋なんかに近いと言った方がいいだろうか


好奇や奇異、吟味するかの如く視線を感じつつも何とかカウンターに辿り着く


本当に、それこそ定食屋の如く

カウンターには適当な大きさの紙がいくつも貼られ


『本日のオススメ!』


何て興味をそそられるテロップが踊っている


この辺りは本当に只の定食屋だ

まだ提督でもなかった頃、実家近くにもこんな店があった気がする


本当に、そんな田舎の素朴な定食屋というか良くも悪くもシンプルと言った感じだ


本当にここがあんな社会の底辺みたいな労働環境が敷かれていた場所なのかと

一つ疑問を持てば、俺は彼女等の事を何も知らないんだと改めて実感する


文字だけで、食欲を増進させる文字列を一瞥し、隣の彩り鮮やかな写真を眺める


さして空いてもいなかった腹が態々空きを作る為か、腹から唸るような音が聞こえる


その音に呼ばれるが如く厨房から割烹着姿の頭がひょっこりと現れる

わぁ、恥ずかしい


早く逃げたい一心でラーメン店の常連客よろしく流れる様に注文を済ませる


するとその店員の髪がぴょこりと揺れ、落ち着いた雰囲気の整った顔が此方に向かう


「あ!貴方が新しい提督の!」


その店員、もといその女性は此方を見上げ華やげに笑う


左胸に付けられたネームプレートを見る限り「間宮」と言う名前らしい


落ち着いた印象を受ける彼女が笑うと綺麗でもあるが

同時に少女の様な可愛さまで感じる


胸ないし腰くらいまで伸びた長い茶色がかった髪に頭の後ろの大きなリボンが映える


ただの地味な割烹着でさえどこか着こなしてしまう優しそうな彼女が


ちょっと背の高い俺を見上げ、少し首を傾け口に手を当て屈託無く微笑む


最早わざとやってるんじゃないかと疑ってしまうその愛らしき店員は楽し気に話す


「提督のお陰で、皆さん笑顔が増えてここも活気が出てきたんですよ」


「本当に、ありがとうございます。提督」


真っ直ぐに、純粋に感謝の意を伝えてくる彼女は何だか眩しく感じる


だが、彼女の目を直視できないのは多分違う理由からだ


少し出来てしまった奇妙な間を埋める為に照れた様な小芝居をし、何とか言葉を捻り出す


「そんな大層な事は・・・笑顔が増えたのは間宮さんの料理のおかげですよ」


執務室の時と同じ、軽い笑顔を貼り付けなるべく優し気な声で話す


だがその言葉は本心だ、実際此処に来るまでに見たどの艦娘より此処の艦娘の方がどこか楽しそうだ


「うふふ、お上手ですね。じゃあ良ければ一つ、お願い事しても良いですか?」


世辞と軽く流したつもりだろうが頰が少し紅潮している


赤く染まる頰のまま笑うその彼女、最早その笑顔だけで一生隣でお願い事叶えちゃうまである


だけどそんなにお金持ってきたかしらんと財布の中身を確認していると

そのお願い事の内容が聞こえてきた


「間宮さん、じゃなくて間宮、って呼んでください。敬語も結構ですから」


そしてにっこりと華の様な笑顔を向ける


不思議な事に、この言葉への返しはすぐに出て来た


やっぱり、一回言われた事あったからかな


「分かりま・・・分かった。他でも無い間宮の頼みだからな」


白々しく演技までして答える俺を自分自身で嘲笑うように作り物の笑顔を貼り付ける


自分でも知らぬ間に首は下を向き、頰は自嘲気味の笑みを浮かべていた


するとカウンターの上に置かれたカレーの匂いに意識が吸い寄せられる


だが目を開いたそこには写真の物より幾らか豪華なカレーがあった


顔を上げ間宮に目を向けると


「私からの感謝の気持ちです。お願い事を聞いてもらったお礼も兼ねて、ね?」


と、さも当たり前だと言い張り、笑みを浮かべる


瞬間、墨で塗り潰したような暗い空から眩い光を放つ太陽が気まぐれに顔を出す


食堂の両脇無駄に大きな窓から差し込むスポットライトは眼前の彼女を照らす


暗がりで大人しくお淑やかな彼女が一転、

包み込む様な慈愛の笑みは

聖女や女神のそれと相違ないものだった


厨房より流れ出でる光は俺に向かい瞳を閉じ両手は祈るように胸の前に握りし

彼女の後光のように光り、輝く


絵画のような完璧で美しく眩しく、ただ俺の為だけに向けられた笑み


このまま残していたくなる光景、だが写真を撮ることも憚られる神聖なその姿は


ただひたすらに美しかった


数秒間、どちらも言葉を発さなくただ奇妙なまでの沈黙がその場を支配していた


流石に恥ずかしくなったのか


「これからも食堂間宮、どうぞご贔屓によろしくお願いします」


意外と商売上手な彼女の言葉に短く肯定の言葉を返す


彼女の背に遮られたその光は、いつか俺の元に届くのだろうか

と、一人自嘲気味に微笑みながら


踵を返し歩きつつ食堂内を一望して人の、いや、艦娘の居ない席を探す


あまり艦娘が居ないといえ、というか居ないからこそ広々と席を使っている為

これが案外難しかったりする


暫くカウンターから四歩ほど歩いた所で目を凝らし、ようやく周りに艦娘が適当な席を見つける


小さな板に鉄パイプをくっ付けただけの、要は某学生御用達ファストフード店の様な二人がけ用の席に座る


一人がけの席は軒並み埋まっていたし、そもそもそこまで数もない


カウンターという手もあったが厨房からの間み・・・謎の視線が気になり結局ここに落ち着いた


やっぱり、モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由でなんというか救われていなきゃあダメなんだ


と、一人で、否、独りでモノローグを入れつつ只一心にカレーを頬張る


うおォん俺はまるで人間カレー発電所だ!


・・・うん、まぁとても美味しい


決して甘くない筈のルーがこうもあっさり口に入るのは

多分じっくり煮込んだ野菜から出る甘味や旨味が強いからだろう


先程から人参や玉ねぎなんかの主要な野菜が目視できないのも溶け込んでいるからと思われる


多分野菜から出る水分だけで調理したであろうトロッとしたルーは


少し厚めに切られ、適切な下茹で柔らかくなった牛スジと良く絡む


まるで修理後の姫路城が如く純白に輝く白米が提督専用と銘打つ無駄に豪華なカトラリーボックスから出てきた


スターリングシルバーと思われるスプーンの上でルーと邂逅を果たせば


白と茶の交わる境界がただ一線に生まれ


天井の照明を適当な事抜かすなと俺の眼球に直接反射してくる白銀の匙


そんな昼飯やランチというにしては少々豪華すぎる光景が広がる


不味いな・・・何が不味いってこれ毎日食べてたら確実に太る


まぁ正直に言ってそこまで肥えた舌を持っていない為作ってもらった間宮には申し訳ない限りではあるが


次々とスプーンを進め、温まった体と思考を冷却させる為軍服と帽子を椅子に掛ける

お冷を煽り一息つくと体は幸福感に満たされていた


ただ、暗雲立ち込める曇天が示す様に、平穏やら平和やらは

ともすれば眼前のいつの間にか空になっていたカレー皿の様に儚く散りゆく運命にある


「あ、提督じゃん。そこ座っていいー?」


我が事とし、誠に遺憾ながら聞き慣れてしまった声にただ顔をしかめて溜め息をつき

どうしたものかと思案する


が、数秒後にはもうその問いがどう答えようとも無駄な事に気付き、あぁとだけ嘆きにも似た肯定の返事を返す


我が物顔で対の席に座る彼女、北上に向かって


「何さその顔は、アタシじゃなくて大井っちの方が良かったっての?」


机にぐてんと伏せ、顔だけを此方に向け恰も不貞腐れているかのような様子を見せる


揺れる綺麗な三つ編みの黒髪は彼女自身が口にした大井によるものか


たったそれだけで絵になるのだから困る


力無い口調にHPを奪われつつ先方に対抗し加藤恵をイメージしてフラットに話す


「いやいやそんな事はー、北上様と食事が出来て光栄の至りです」


焦る事もせず煽る事もしないで、

嘲る事も健やかなる時も病める時もこれを愛し・・・っと間違えた


要はフラットに言う時は冷静に平常心でねって話、そうじゃないとかなりウザいから


そうでもしないと心を許してしまうから


北上さんはいつもけだるげ、だが本領発揮すればかなり優秀だ


実際彼女は戦闘面においては天才的で一度だけお目にかかった事があるが


気迫や殺気、一挙手一投足、呼吸に関してまで全て尋常ならざるものだった


本人曰く、能ある鷹は爪を隠す様に、能ある重雷装巡洋艦は魚雷を隠すそうだ


隠すどころかぶっ放していた気がするが


小さくまぁいいやと呟いて北上はまた変わらぬ様子で


「凄いじゃん、金剛を任務に就かせるなんて、いつ振りだろ」


「・・・知ってるのか?金剛が命令違反なんかした理由」


何気無く聞いたその言葉に珍しく彼女が困った様に口の端を少し引きつらせ

あははと乾いた笑いをあげる


何か尋常ならざる事なのだろうと直ぐに勘付いた

まぁ、勘付いただけで何ができる訳でもないが


数十秒間たっぷり考えた後一度小さな息を吐き、声のトーンを落として話し始める


「・・・艦娘の好感度調整システム、って知ってる?」


「・・・まぁ、座学で教えられる位は」


心臓が冷水をぶっかけた様にスッと冷たくなるのを感じた、なんとも嫌な気分だ


好感度調整システム、名前はギャルゲーのTrue endに必要な裏ステの様ではあるが


だが初めてその詳細を聞いた時、俺は本当に吐き気以外の気が起こらなかった


艦娘というのは大まかに人体、及び人体に酷似した構造、成分をした部分と

兵装含めた艤装という二つの部分に分けられる


志願して艦娘になる場合、人体と艤装を繋ぐ作業があるのだが、その艤装にどんな人格、精神かを設定するのだ


それこそ、ギャルゲーのヒロインの様に


それが、好感度調整システム


民間人説明用の資料だと艤装連結システムの一部に数えられるんだったか

無論真意は全て包み隠してだが


「しかも、金剛はLove勢ってゆー、提督への好感度が絶対に高くなるのだから」


「・・・あぁ、成る程」


朝の奇行がフラッシュバックしてくる

恐らくだが、あれもその影響の一環だろう


艤装が人の脳に与える影響はかなり大きい

実際手足を動かす様に兵装を動かさないといけない艦娘にとって、それは至極当然ではあるのだが


だが、その糞システムが他の鑑より艤装が大きな種類である戦艦なら?


そんなもの、他の鑑より影響が大きいのは火を見るよりも明らかだ


艤装が脳へ与える影響が大きい様に負担も大きい

ただでさえ大きな負担に馬鹿なシステムが加わると考えると嫌でも眉間に皺が寄る


それはどれほどの苦痛なのだろうか


不意に、そんな疑問が頭をよぎる

物理的な、脳へのダメージもゼロとは言えないだろう


実際、艤装を動かす感覚に慣れない頃は耐え難い吐き気を催すものだ


数ヶ月もすれば艤装も体の一部の様なものだがそれまではせいぜい体にくっ付いた異物


いきなり付けられた異物を動かすというのはかなりの精神力が必要だし

元の体とのギャップで慢性的に車に酔った様な感覚に陥ることも多い


だが、問題は精神的な方だ


提督と定められれば嫌でも好きになり

それを自我で止めることも叶わない

まず自我が存在しているかどうかもわからない、それならば

本当に、それこそただの道具に・・・


そこまで考え、また成る程と納得し、小さな溜め息共に思考を打ち切る


「何とか、そこだけ取り除いたりは出来ないのか?」


未だ浮かない表情をした北上に対し質問を投げかける


答えなど、正直分かりきってはいるがすがりつく様に回答を待つ


「・・・まぁ、大方想像通り、難しいだろうねぇ」


一言一言、重苦しく語られたその言葉には確かな否定の意思が感じられた


だが、やはり誠に遺憾だが、こと北上の事においてはよく分かるし知っている


案外大事な事ははっきりと言う北上が言葉を濁す、それが意味する所はつまり・・・


「・・・可能性はある、って事か」


「まぁ、ね」


少し緩んだ頰がまた引き締められ真剣な表情になる


「って言っても、私達じゃ無理。前ウチにいた明石って工作艦の子になら出来たかもしれないけど」


工作艦、明石

ゆっくりと、口の中でその言葉を反響させる


「何でその、明石が居た時に対処しなかったんだ」


素朴な疑問を何の装飾もせずにストレートで北上に投げつける


「いやー、金剛が来たのと明石が本営に行ったのが丁度同じ時期でねー」


「しかもその時の提督は私達が勝手に行動したりするのを許さない人だったから」


つまるところ入れ違いになり、例え時期があっていても不可能、と


しかも本営に行ったとなると貴重な工作艦という艦種から引き戻すのは絶望的、正直明石の修理は望めない、か


「つまり・・・」


「詰み、だねぇ」



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自分を中心に、無尽蔵に広がっていく赤色をただ薄く瞼を開けて眺める


だが瞬間、鋭い痛みが全身に走る

左腕が酷く痙攣しているのが分かった

足には裂傷と酷い火傷があり傷穴に波が押し寄せるたび耐え難い痛みが迸る


段々と覚醒していく意識の中、自分の半身が水中にあると知ったのは数分後の事だ

広がる血が自分のものであると知ったのも


立ち上がることさえ許されない程の激痛が足に宿っている


被害状況は大破、いやそれ以上と言ったところだろうか


何とか生き残っていた艤装のお陰で海面に浮いてはいるものの戦闘能力は皆無


数海里しか離れていない筈の鎮守府に帰港する事が出来ないのは明らかで


最早生きていて良かったねという次元だ

全く幸運艦が聞いて呆れる


前任の提督から言われた

『海に浮かぶ鉄屑』

と言う言葉をこれ程心底共感した事はない


自嘲気味の笑みを浮かべそれでも足に力を入れて海面に立つ


足が今まで感じた事の無い程の激痛を訴えているが知った事じゃ無い


もう二度と、鉄屑なんて言わせない


今まで見るだけで怖気の走ったあの顔が今では思い出すと力をくれるエネルギーだ


燃料の方がずっと燃費が良いけれど


それもこれも、あの提督のお陰だ


だから!

もう一度会って、話して、聞かなきゃいけない事があるから

一言、違うって言葉が聞きたいから


帰らなくちゃいけない

絶対に・・・!


無理矢理力を込めた足が痙攣し、視界が霞み、意識が朦朧とした、呼吸もおかしい


数秒海面に立つだけで気力なんて何処にもなくなり、自嘲気味の微笑みすら消えた


それでもなんとか生き残っていた電探で周囲の索敵を行う・・・反応アリ


爆音で気付かれたのか、近海に元々居たのかは知る由も無いが非常に不味い

しかもかなり近い


戦闘能力は皆無、主砲どころかジャブも打てないこの体で一体何処まで持つだろう


瞬間宿った恐怖を振り払うように大袈裟に頭を振り周囲を確認する


電探が指し示す位置には


「Oh・・・服がボロボロデース」


大破し、気を失っている白露と夕立を抱えた金剛が居た



———————————————————



徐々に高くなる室温が凍った体を解凍していく

だがその中で心だけはドライアイスのように周りに冷気を漂わせるばかりに冷たい

前髪を撫でる暖房の熱は鬱陶しい程なのに


理由は分かっている、でも後悔するには遅すぎるし引き返せないのも分かっていた


多分、その事がより一層俺をこんな風にしている事も


俺は彼女達、白露や時雨、夕立、それに金剛を巻き込まないために


いや、本当は彼女達の為なんかじゃあ無くこれもアイツの・・・違う、アイツの為と思い込んでいる俺の為なのかも知れない


俺は彼女達が傷つく様に差し向けた


彼女達を俺から、鎮守府から距離をとらせるにはそれが一番効率的だったから


この辺は比較的鎮守府が多い、陸に鎮守府があるのもこの辺一帯を仕切る為だ


ちょっと遠いが他の鎮守府だって哨戒も出撃もする、中ないしは大破

大方気絶状態であろう彼女達を見つけるのはそう難しい事じゃあない


曳航して入渠させれば口も聞けるし、数が多いといってもこの狭い範囲にしては

という程度で近隣の鎮守府に確認すれば直ぐに此処の艦娘と分かるだろう


此処に「貴鎮守府の艦娘を保護している」という旨の連絡が入り

肯定次第面倒事は御免とばかりに速達で送り届けて来るのは明らかだ


ではそこで、こう言ってみたらどうだろう

「我が艦隊に、哨戒程度の任務もまともにこなせない艦は居ない」と


さすればこれ又面倒事になった彼女達は本営に送られてめでたく我が鎮守府から除名される訳だ


要は自分の作った罠に嵌めさせて戦力外通告する糞提督大作戦だ


しかも本営は解体、除名などの処分を受けた艦娘を手厚くフォローしている

是が非でもこれ以上戦力を失う訳にはいかないらしい


しかもこれは艦隊には隠す、いきなり仲間が居なくなったら普通原因を探るだろう


他の鎮守府との演習という艦娘同士の繋がりが設けられている以上艦娘達は俺のした事を近いうちに知る


そうすれば俺に近づく者は無くなり思う存分俺は動ける


回りくどい様だが、少なくとも表面上は正式な理由が欲しかったのだ


本営や他の鎮守府の目を騙す意味をあったし、何より

艦娘達に不自然に思われない様にする為が大きい


不自然に思った艦娘が俺の真意に気づく事がない様に

俺なんかともう二度と関わる事の無い様に


稚拙に幼稚に、考え込んでいるとは思えない行動を


ただ前任達を思い出せば、一概にあり得ないとも言い切れないそんな自然な屑野郎を


生憎そういう奴等とは此処の艦娘と引けを足らないくらい会ってきたつもりだ


自分でやってて虫唾が走るし罪悪感も大き過ぎるがやるしかないんだ



全ては、アイツの魂の安らぎの為に



何事にも邪魔されてはならない

止める事は許されない

覚悟はとっくに出来ている


それでも震える下唇を噛んで無理矢理押さえつけ首を捻って窓の外を見る


未だ黒い雲が空を覆っていたが、活気のない港町の一切を超えた山向こうには

太陽の光が燦々と降り注いでいた


「・・・」


北上が机に突っ伏し、だが視線はじっとこちらを見据えている


互いに硝子越しでも相手の真意が見えてしまう


だから


「・・・ねぇ」


いつもより低く冷たい声音の北上が放った言葉を遮って


「頼む」


それだけぶっきら棒に言い残して

椅子に掛けていた軍服と帽子をひっ摑み


「ちょっと、トイレ行ってくるわー」


最後は適当にお道化て食堂から立ち去る


痕跡は残した、後は時間が経つのを待つだけだ


かくして俺は、照明煌めきたつ食堂から闇深まりし廊下に又戻ってきた


するとそれを歓迎するかの如くけたたましいサイレンの次に慌てた声が聞こえる


確か、大淀、だったか


「緊急連絡!緊急連絡!哨戒中の第一艦隊からの救難信号を受信、提督は直ちに司令部施設にお越し下さいっ!!」


そんな声を聞き顔を顰めてあと数メートル程の司令部施設の扉へゆっくりと歩みを進めた



———————————————————



未だに轟々と音を立てる暖房が今では私だけ、いや私達だけになった食堂の温度を丁度いいものに保っている


さっきまで居た彼女はもう行ってしまった


大方提督を危険視して監視でもしていたんだろうけど

それに気付かないほど提督は鈍く無い、それどころか罠まで張って去って行った


いや、先ずこうやって監視なんてしている時点で提督の罠に嵌まっているんだろう


瞬間もの凄い徒労感が襲ってきた、抵抗するも虚しく四肢に力が入らなくなり

完全に授業中に寝る学生スタイルになる


するとあの硝子が嫌でも目に入り、気怠そうな自分の顔が映っていた


眠気で細められた目には何処と無く悲しそうな印象を受ける


そんな他人事めいた光景が広がっていた


「北上さん・・・」


「あ、大井っち」


其処に、いつもより暗い大井っちが現れた


「・・・ごめん、駄目だった」


何も隠さず、ありのままを伝える

あんな事言われたら止めるなんて出来ない


「・・・じゃあ、やっぱり」


「・・・うん」


「あの時と、同じ・・・」


「・・・」


呟かれた言葉に少し視線を落とす


言葉は必要無かった、想定していた事だし何より提督の事は良く知ってる


硝子越しでも、意思が伝わるくらいには


「・・・ご丁寧に罠まで張って行ったんですか」


少し視線を彷徨わせるとちょっと怒った様な声で私の目の前を見ながら話す


そこには食べ終えたカレーの皿とスプーンがあった


なのに軍服と帽子は持ち去られいる

でも提督は確かにトイレに行くと言った


トイレに行くだけで軍服は必要ない筈だ

仮にそのまま帰るつもりだったとしたら何故皿とスプーンを片付け無いのか


しかも何より提督は食堂を出た


食堂を入ってすぐの場所に、トイレがあるにも関わらず


しかも多分、死角が多いこの席を選んだのさえ・・・


違和感を持って仕舞えばもう既に提督の手中、少し多めにヒントを出しているのは

彼女以外にも注意すべき人物が居るかの確認と言ったところか


いや、自分の悪い噂を流す諜報員の採用試験の方が正しいかも知れない


要は作戦は計画通り進行中という訳だ


何の障害もなく、それどころか正義感や仲間意識という感情の下無償で働く労働力さえ確保している


掌の上で踊らされるどころか、掌にすら辿り着けていない

その辺の公園でリンボーダンスさせられている様な物だ


操られている事すら気付かせず利用する、それはどれ程に邪悪な事で、どれ程の罪悪感を伴う事なのか


そこまで考えて溜息一つと瞬き一つで思考を停止させる

そして眼前の光景にまた溜息を零して


「これアタシが片付けんのかなぁ・・・」



提督として現れた自分の『義弟』に想いを馳せたのだった



直後、耳を劈くサイレンの轟音が鳴り響いたのは言うまでも無い



———————————————————



「あの食堂での行動、少し妙ね」


「やっぱり何かある・・・」


「行動を起こす前に食い止めないと・・・」


「!!サイレン!?」


「緊急信号って・・・!そんな!!」


「もしかしてもう・・・っ!」


「・・・あの時の目は」


「自己紹介の時と、同じ目だった」


「おかしいと思っていた、皆何故あんなに友好的なのか・・・」


「もし、そんな単純な事じゃないとしたら」


「もし、皆が提督に抱いているのが、好意なんかじゃなくて・・・」


「脅威だったとしたら・・・」


「存在意識下に、直接語り掛けてくる様な・・・」


「抗えない、絶対的な恐れの感情に」


「ただ、踊らされているだけだとしたら・・・」


「やっぱり、やらないと・・・」



「殺さないと」



「・・・二日で辞めた提督は、初めてでしたか」


歩みを進める廊下の壁に、規則的に設けられた窓に目を向ければ

煌く刃物を片手に携える

口角だけが吊り上がった黒髪の、何故か諦めた様な目の女が写っていた



———————————————————



他の鎮守府でなく艦娘からの救難信号、それは俺から艦娘への直接の通告を意味する


まだ鎮守府を介した方が良かった

もう二度と彼女達の声を聞かずに済むから


扉までの数歩が妙に遠い

あと一歩、せめてもう半歩と距離を詰める


ドアノブに手を掛けると使われていなかったのかその抵抗が少し大きく感じた


すると差し出ていた右腕ごと扉が部屋の中に引き込まれ、連絡設備や平面座標指示画面の様な機器類が視界を埋め尽くす


グロテスクなまでの機器類犇くその様に呆気にとられると眼下の甲高い


「きゃあ!!」


という声に視線を下げると目を見開いた大淀がその綺麗な黒髪をたなびかせ

地球の万有引力に従い頭から地に落ちようとしていた


すんでのところで伸ばしていた右手で左腕を掴み、左足を踏み出し左手を使って背中から身体を支える


近づいた二人の顔がこれまた何とも言えない沈黙を作り出す


「怪我はないか?」


「は、はい」


大淀の焦って青ざめていた顔が赤く染まっていくのが分かる距離


焦りの為か荒い呼吸に上気した頰、乱れた前髪、腕の中に収まる華奢な体


綺麗な黒髪が数本その少し汗ばんだ頰に付いたその顔


執務中の凛とした姿とのギャップが更に魅力を引き立たせる


思わず見入ってしまう自分がいた


「・・・っと、立てるか?」


「あっ・・・はい」


肯定を返す為か確認させる様に少し大袈裟に地面を踏みしめてみせる


「で、何があった?」


俺が声を発した途端、あの何時もの凛とした表情に変わる


「はい、放送でもお伝えした通り哨戒中の第一艦隊よりの救難信号が確認されました」


「救難・・・詳細は?通信なんかは出来ないのか?」


「それが・・・提督に直接お話しするとしか・・・」


「俺に直接?・・・一体何故?」


流石に気付かれたのか?幾ら高性能と言えど昨日行ったとこのお古だからなぁ


「まぁ、取り敢えずその辺についても聞いてみるしかないか」


「では、お繋ぎしますね」


「あぁ、あと大淀。さっき何で部屋から出ようとしてたんだ?」


部屋に入る俺と正面衝突出来るのは部屋から出ようとする奴だけだ


動きがピタリと止まり、何とか逡巡していた様だった大淀が観念した様に言葉を紡ぎ始める


「・・・今迄の提督の方は、艦隊司令部施設に立ち入る事すら、稀で・・・」


「じゃあ今迄指揮は・・・」


「全てガンガンいこうぜ、ですかね・・・」


「oh...」


せめて、次くらいは良い提督に出会えます様に・・・


心からの祈りは喧しい通信機の音にかき消された



———————————————————




青い空は灰色に染まり、光が透き通るダイビングスポットは只の地獄と化した


金剛さんから貰ったこの燃料があればもしかしたら鎮守府まで行けるかもしれない


Winding road並に曲がりくねった〜この主砲でコノシュホウデ-敵を追い払いながら

全力の三分の一も出せないこの足で白露と夕立を抱えながら走れるならだけど


残念ながら浮いているのも精一杯のこの艤装ではそれが出来ないのは明らかだった


白露達程じゃ無いけど自分もかなりの怪我だ今は祈るしか無い

奇跡的に生き残ってた通信機に


水温十五度も無い海水で半身浴していたのに、まるで幸運艦を小馬鹿にした自分を見返すかの様に生きていた通信機に


艤装の大半に付けられている中でも駆逐艦の為簡易的なものだったのが功を奏し、重さで水面に沈む事も無かった様だ


というか、海で戦うのに防水機能が皆無って何なんだろう


焦る指先を、震える体を、痙攣する脚を、逸る気持ちを、軽い憤りを無理矢理押さえ込む


・・・別段、沈むのが、死ぬのが怖い訳じゃない


艦娘として生を受けた時点でそれは逃れられない宿命みたいなもので


いつか、多分それ程遠くない未来に自分は死ぬと今でも思って止まない


死ぬのが恐くて震えている訳じゃない


もう、裏切られるのは嫌なんだ


あの時の、金剛さんに当たった魚雷は艦娘や深海棲艦の物では無かった


・・・大きさが、違い過ぎる


深海棲艦や艦娘の装備は小さい、当然だ

深海棲艦の武器を基にこの手の主砲が出来ているのだから


でもあれは間違いなく人が作った兵器だった

深海との戦争初期の頃より小型化は進んでいるものの艦娘の装備には程遠い


数ヶ月前に見た時より威力が幾らか高い様に感じるけれど


多分、深海棲艦牽制用の無人操作できる施設のものだろう


戦時中で大したセキュリティも取れない為に案外誰でも不正利用できるし


その上少なくとも人型の深海棲艦に対してホームアローンのケビン程の役にも立たない


まぁ意味がない上に深海に喧嘩を売れば死期が近づくだけなので誰もやらないけど


じゃあ誰がそんな事したのか


また同じ顔が頭に浮かび、頭を振ってその考えを追い出す


でも幾らやっても何処からか湧いてきたその思考で頭は一杯になる


やはり何度頭を振ろうとも、浮かぶのは執務室を出た後戸の間に見えた

笑顔が消え、何処までも深淵が続く様な黒く暗い目をした提督だった


どこか悲しそうな、あの提督だった



———————————————————



はぁと小さい溜息に良心やら何やらを乗せて吐き出すと

嫌に落ち着いた心臓だけが身体にある様な錯覚すら憶える


簡易的で錆びれた印象を受ける通信機に手を掛けると

不意に数十分前海に出た彼女達の顔が脳裏に浮かんできた


今から俺が告げる事は、彼女達にとって何になるのだろうか

只、それが最悪であり、これからはそんな事が起こらない様に


誰か神にでも言い訳する様にそんな心にもない事を祈る


照度を確保する為だけに作られた窓からはただ果てしない灰色が続くだけで


情弱な日光は敷地内に聳える大木の木の葉に遮られ、室内はただ

無機質な冷たい光を放ち続ける蛍光灯が薄ぼんやり明らしめるだけだった


まるで薄ら寒い自分の行為を見透かされた様で落ち着かず

士官校でアホ程習った通信機を素早く用いて少女、時雨との通信を開始した



通信が始まり数秒、緊張した様な息遣いと波の音が代わる代わる聴こえる

会話は無い、二、三度会話を促してみても結果は変わらなかった


「提督は・・・」


不意に遠慮がちな言葉が小さく、ともすれば波の音にかき消されてしまう程か細く聞こえる


「・・・」


間は長く、静かに心に深々と降り積もる雪の様に不安を募らせる


押し潰されそうな程の感覚を振り払う為かぶりを振ると短いノイズに時雨の声が続いた


「提督は・・・僕達を裏切るのかい?」


その声に、先刻までのか細さは無かった


遠慮こそあれど消えゆく様な声とは程遠く

喧しい波を劈き、凍らせる程の冷たさを感じて思わず身震いする


何かあったのかは聞かずと知る

その原因たるが俺にあるだろうという事も


ただ妙だった、異質だった

何故いきなりこんな声をする様になったのか不思議でならない


名状しがたい感情だったただ考えれば考えるほど深みにはまり

只静寂だけがその場に流れた


「・・・いや、それは無い。それだけは・・・」


気圧されたというには落ち着きがあり、懺悔というには些か仄暗い思考からの言葉


いつもの嘘だ

虚言に変わりなく

何百回と吐いた単語の只の一回に過ぎない

色彩の無い、掠れた灰色の言葉だ


「なら、信じるよ」


「・・・で、何があったんだ?」


多分、俺の愚策は通らず、何らかの不備が起こった事は察した


なら何があったか位聞いておくべきだろう

状況さえ掴めれば対応も楽になる


どうせ失敗したのだ、今何したって損にはならない筈だ


「・・・いや、提督は裏切らない、んだよね」


独り言の様に、実際独り言だったのだろう

小さく呟かれた言葉には自分を落ち着かせようとする声音を感じた


奇妙な沈黙が流れた、しかし今度はそう長く続かなかった


「哨戒中、いきなり魚雷が直撃して白露と夕立は意識がなくて」


「金剛さんも中破、僕も大破してて・・・」


「ちょっと待ってくれ、魚雷?潜水艦か?」


「いや、一瞬見えたけどあれは、人間の物・・・だったよ」


「人間の・・・他に怪我はないか?」


「うん、大丈夫」


どういう事だ


計画が進まないのは事故か何かだと踏んでたんだが・・・

人間の・・・つまり俺と同じく防衛システムを利用した攻撃と見るべきか


偶然だ何て楽観視はできない、俺が使おうとしたのはあくまで———



—————機雷、だ



元々近海に設置されている機雷の電源を入れ、艦の接近に反応して炸裂する手筈だ


複合観応機雷だ、しかも複数ある、どれ一つとて反応しない何て有り得ない


誰にも悟られてはいない筈だ、少なくとも何をするかまでは確実に


北上や隠れてた大井もあの様子、何も掴んでいないだろう


・・・いや待て、何故白露達が被弾する?


ソイツの目的が俺を止める事なら機雷の設定を少し弄れば良いだけだ


何故わざわざ魚雷を放つ?


いや、先ず目的が俺ではなく白露達の方であるなら・・・!


だが一体誰がそんな事を?


艦娘達は先ず外出もままならない、防衛システムまで行く事すら困難だ


一般人でも無い、セキュリティはガバでもこの辺一帯危険区域の為先ず一般人が入る事すら出来ない


軍の禿げ共だって俺のことなんぞ眼中にないだろう、まぁそれはそれでイラつくけど


目を伏せ、しばらく思考を巡らすが結論どころか仮説にすら達せず

ノイズの音で正気に戻る


「提督・・・?どうかしたのかい?」


「いや・・・すまん、直ぐ迎えに行く」


まさか、だ

いや、だが可能性が捨てきれない以上今白露達を切り捨てれば確実に・・・


「うん・・・!」


短い言葉には安堵や安心や少しばかりの不安など数多の感情が犇いて聞こえた


完全に通信が途断え、部屋には沈黙が流れ、空気が数倍重く感じた


「救助の艦隊はどうしましょう」


通信時の口振りから大方の事情を察したらしい大淀が沈黙を引き裂く


「そうだな・・・いや、俺が直接助けに行く」


「提督自ら!?危険です!」


余程動揺したらしく裏返った甲高い声で叫ぶ様に大淀が言い放つ


「大丈夫、俺が行くのが一番安全だと思うから」


要領を得ていないのは大淀の顔を見れば一目瞭然だったが構わず進んで部屋を出る


無駄の無い動作からは、空気の重さなど一片も感じなく


目には気色と名状しがたい仄暗い感情が入り乱れていた


多分俺が行くのが安全だ、狙いは俺を『生け捕り』にする事にある

俺が行けば下手に手出しはできないだろう


艦娘でも一般人でも毛狩り隊みたいな軍の奴らでも無い、じゃあ誰か


ノイズの音で憶い出した、そういや軍にも禿げてねぇのが居たよなって


通信機の前で目を伏せる彼の姿はもう無かった、瞬きより開かれた目はしかと正面を捉え

己が進行を妨げる物を、忌むべき者を睨むが如く爛々と輝いていた


手を掛けた戸は甲高い音と共に軽いながら抵抗をして開くだけで


色の無い世界に、可燃物も無く燃え盛る己が身を焦がす炎の色だけが揺らめいていた



———————————————————



「まだ存在したのね、司令部施設」


「誰も使ってないし、もう倉庫にでもなっているのかと思っていたけど・・・」


「どうやらもう中に居るみたいね」


「ここから出てきた瞬間に・・・!」


「何?会話が漏れて・・・」


『そうだな・・・いや、俺が直接助けに行く』


「・・・嘘をついた様子はなかった、でも何故直接・・・?」


「・・・はぁ、ここで考えても仕方ないわね」


「何にしろあっちがどんな行動をするか、ね」


「・・・」


「一度だけよ、提督」


「ところで、この包丁どうやって返そうかしら」



———————————————————



遠方での指揮、艦娘輸送用の小型護衛艦を適当に拝借してい〜ざ征け大海ば・ら・に


と、野を超え山越え猫も超え羅針盤にも打ち勝ち鎮守府正面ぶらり旅と興じる


行き先どころか方向感覚さえ失いかねない海と空の境界つかぬ海原

その不明瞭な視界の果てに人影を見つけた


深海棲艦などでは無い、荒波の中、そこだけ輝いてる様な錯覚すら憶えるあの美麗なる髪は・・・


「金剛!」


高波が一気に止まった気がした

吹き荒ぶ向かい風は風向きを変え

俺を彼女の方へ向かわせる


此方に気づいた彼女はそれはそれは嬉しそうに笑い、言い放った


「待ってマシタ、提督。きっと、来てくれるって信じてましたカラ」


眼前の金剛が目を閉じ、心から笑った


それはあの不恰好な笑みでも、朝抱きついてきた時の感情のない表情でもなかった


吹き抜けた一陣の汐風は亜麻色の長髪を優雅に揺すり抜け


崩れかかった前髪を右手で軽く押さえる動作はそれだけで何処か優雅で


それでも決して絶やさない笑みには懐かしい既視感を覚えた


「っぁ・・・」


アイツが笑った時も、こんな感じだったっけか


既視感の謎を追っていた思考が一つの結論に辿り着くと声ともならない声が口からこぼれ落ちた


何で俺は、今まで忘れていたんだ


アイツの笑顔を


頭が動かなかった

思考ができず、体に力も入らない


呆然と立ち尽くす姿はどれ程滑稽だったのだろうか動かない脳では想像もつかない


思考しようとも出来ないのに、何故か心地良い感覚だった


刹那たる幻の様な夢から醒めると、俺は暖かい感覚に包まれていた


それは紛れもなく人肌で

機械でも

兵器でも

鉄屑でもなく


人間の暖かみだった


意識が完全に醒めた時、薄々分かってはいたが金剛に抱き締められている事を知った


だが朝の様にすぐ引き剥がす気分にもなれない


きっと頭が正常に動いていないせいだ、だから、きっと、あと少し位は抱きつかれたままになるだろう


艤装という巨大な強制がありながらも

少しでも拒絶されれば直ぐ離せるようになってる腕とか

身体を預けているのに掛けてこない体重だとか

一挙手一投足に本来の金剛の性格が現れている様な気がした


数分後、どちらとも無く離れた俺達は無事時雨と合流し

白露と夕立も目を覚まし、皆船に乗り込み帰路についた


鎮守府に帰るまでの数十分ほど全員寝ており、特段会話も無い


鎮守府近海、本来逸れ敵駆逐艦の縄張りとなりつつあるこの航路、以上ナシ


つまり俺の予感は正しかったのだ


全く迅速な事だ、それだけの力があるなら俺くらい今すぐにでも殺せるだろうに


にしても此処ら一帯の深海共を根絶やしにしたのか

だとしたら中々のVIP待遇だな、俺は大山椒魚か何かだろうか

まぁ奴等にとっちゃあ天然記念物以上か


思案するのを諦め、背中を艦橋に預けると明らかに甲高過ぎる音がカンと鳴った


背中に触れ、音の正体を拝見してみるとそれは小型の発信機であった


そっと両手で二つに折り、念入りに海水に漬け込んでから甲板にぶん投げ踏みつける


金剛が利用されている、抱きついた時に付けられたのだろう

今はまだ遊びのレベルだ

だが時が経てばそれは利用何て生易しいもんじゃあなくなる


俺は知っている、身をもって


甲板に居座る粉々になり折れた基盤が嘲るかの如く此方を据える発信機だったものは

無言でコイツ等との別れを訴えてくる


ただ、頑なに隠れていた太陽が今になって顔を出して

陽を浴びせ、艦首に当たった光は俺が向かうべき鎮守府への帰路を照らしていた



———————————————————



抱きつくのは二度目のはずだった


でも一度目の時より鼓動が早くなって、顔も赤くなってるのを感じる


その分恥ずかしくなって、船に乗り込んだ瞬間から寝たフリをしてやり過ごしている


こんな体だ、もう人じゃない


なぜ鼓動が早いんだろう

なぜ顔が赤いんだろう


なぜ、こんなに胸が暖かいんだろう


深く思考を巡らせることもなく

薄く閉じた瞼を少し上げて目に入ったその人、提督をボーッと眺める


多分そうなんだろう

根拠は自然に緩んでしまった頰だ



私は提督が、スキ、なんだ



ふふっと溢れてしまった笑いにどうしたとばかりに提督が振り向く


なんでもないデースと小さく笑いながら今まで嫌っていたおかしな喋り方で返す


でも今はそんなに嫌いじゃないかもしれない

むしろ感謝してる

素の自分じゃ、恥ずかしくて会話どころじゃなかっただろうから


また緩んだ頰に首を傾げる提督を見て

三度目の笑みをこぼした



———————————————————



「まさか本当に無事帰ってくるなんて・・・」


「・・・」


「今度こそ・・・今度こそ信じられる、かしら・・・」


「赤城さん・・・」


「私は、決めました」


「今度こそ、あの人と・・・」


「貴女の海を、仲間を」


「守って、見せますから」


見上げた空は抜けんばかりの遮るものなど何もない晴天で

放った言葉は底なしの青に消えていった



———————————————————



東館と西館を繋ぐ渡り廊下は老朽化の一途を辿り

何故これが中に浮いているのかを説明できる者は今のところ誰もいない


強いて言えば輝く海原の光景の良さと無駄な程の窓の多さが

ここに居た提督等の良い喫煙所になっている事が艦娘達に知れ渡り

誰一人として近寄らない為かもしれない


そんな老朽と蒼穹が表裏一体となっている場に、二つの影が存在していた


言わずもがなそれは提督と金剛のもので

伏せられた顔には反射した波の光が瞬いていた


眩むような光は否が応にも金剛の視線を前に向かせ、青空は窓を伝い風となり背を押す


今しか無い


何度唱えたか判らない言葉を口の中で反芻する


しかし結果は変わらない


声帯は小さな痙攣を起こすだけで、心の内を伝えるには至らなかった


言葉を発するために残していた空気が薄くなっていき、次に決心がついた時には身体が咳にも似た音と共に空気を求めた


息が苦しい

胸が熱い

鼓動が激しい


今迄の、艤装で無理矢理動かされていたような心臓の動きではなかった


そんな単純で生易しいものではない、苦しいのにどこか嬉しく思う自分もいた


不思議だが恐怖はなく、ともすればその無記名の感情に押し潰されそうでもあった


言えなかった言葉と共に勢い良く飲み込んだ空気はすぐに尽き

酸素を求め体は喘ぎ、伏せ閉じた唇から声にならない音が漏れた


静まり返った通路には、距離があるはずの波の音さえ聞こえんばかりの静けさで


明鏡たる陽は伏せた顔に影を作り

浮かんだ言葉はその影に溶けゆく


あぁ、所詮私なんて

艤装の補助がなければこんなもので

表情筋一つまともに動かせはしなくて

滲んだ涙で霞んだ視界には

目の前の、提督の影すら写りはしない


弱った心で、これ以上艤装じゃない素の自分でいられそうにはなかった


艤装をつけている以上、つまり一生逃れられないもう一つの自我に少しずつ溶け込んでゆく


でも


それじゃきっと私の思いじゃないから


いつまでも

このままじゃいられないから!


「提督」


吸い込んだ息は喘ぐ全身に巡る事すら許されず刹那の時も許さずに声となって吐き出される


息をしていないせいか身体の感覚があまり無かったが、胸は、心は、心臓だけは、普段は考えられないほどその存在を主張している


艤装をつけようと外そうと、私は私のままだから


仕方ないから、大嫌いなあの言葉を借りて


「好き、です。ば、バーニングラブ・・・!」


もう一人の自分を押し殺して、放った


「すまん金剛。俺が君を好きになる事はない」


自分自身の、本音、を



———————————————————



「好き、です。ば、バーニングラブ・・・!」


顔を伏せていた金剛が涙ぐみつつも顔を上げ、上目遣いで顔を見せる


耳まで顔を真っ赤に染め上げ、荒い呼吸から途方も無い緊張が感じられた


少々やけ気味に吐かれた言葉はほぼ想定した通りのもの


答えを出すのに時間はいらなかった

当たり前だ、北上に話を聞いた時から考えてたんだから


腹はとっくに括ってある


「すまん金剛。俺が君を好きになる事はない」


罪悪感からか、贖罪のつもりか、すまんなんていらない台詞と共に

しかし不変で揺るぎない心の内の事実を伝えた


眼前の金剛は少し目を見開いたが、ゆっくりと顔と共に瞼が伏せられてゆく


薄々、望んだ答えが返ってこない事をわかっていたのだろう


これで十分だろうか

そんなはずは無い


金剛は今後の俺に必要ない

切っておかなければ

完全に、二度とないように


「もういいんだ、金剛」


言葉の意味が解らないと言った具合に、目尻に涙を溜めながら金剛の視界が俺を捉える


「それって、どういう」


「艤装の所為だろうと、一人の女の子にこんな事をさせてしまって」


「エ?な、何言って!」


「大丈夫だ、もう苦しまなくていいんだ、俺たち軍人がこんな物を作ったせいで・・・」


それは拒絶である

一人の感情というものを踏み躙り、壁を作り断絶した


最低だ

こんな言葉ならスラスラ出てくるのだ


巻き込まないのが金剛のため、だから暴言如き仕方ないなんて言わない


これは俺のためだ、これからの道に足枷になるものを足ごと切り落としているのだ


「俺なんかに、こんな・・・」


「提督?ワタシは艤装とかじゃなくテ!本心で話してマスヨ・・・?」


「この気持ちは、嘘なんかじゃありまセン!本当なんデス!本当の、気持ち・・・なんです」


遂に金剛の目尻から水滴が溢れ頰に一筋の跡を残した


「大丈夫、大丈夫だよ、金剛。それは艤装の、機械による勘違いだから」


「今まで辛かったろう?俺は分かってあげられるから」


「俺だけは、理解してあげるから」


「だカラッ!今!この気持ちは!ワタシ自身の、本当の気持」


「なぁ、金剛。なんで本当なんて分かるんだ」



「もう、人間じゃないくせに」



眼前の彼女は泣く事は無かった、ただ大きく見開かれた目の奥はどこか暗い淀み

そして黒過ぎる瞳は底無しに乾いていた


後書き

☆誰得!作成秘話のコーナー☆
〜今追加分編③〜

本編が暗い為急遽開設した謎コーナー第六弾!

おはこんばんちわ!ゔぇるなーとです!
今回も今回とて遅くなり大変申し訳ありません!
今追加分はやはり告白シーンでしょうか
本当はもっと長くて描写が細かくて鬱っぽかったんですよね〜、ちぃと薄めすぎたかなぁ
まぁでもあんまり鬱になってもそこから持ち上げる話とか書くとしたら大変になるだけなんでこれでいいとしよう・・・これでええんや!
応援、評価、オススメ、コメント、いつもニマニマしながら見ています、ありがとうございます


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2018-12-05 16:17:39

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2018-12-02 09:19:49

SS好きの名無しさんから
2018-09-18 02:00:34

SS好きの名無しさんから
2018-09-10 02:15:22

SS好きの名無しさんから
2018-08-30 12:51:26

SS好きの名無しさんから
2018-08-23 06:31:01

SS好きの名無しさんから
2018-08-23 06:08:02

SS好きの名無しさんから
2018-07-27 00:18:30

羽藤けいさんから
2018-07-24 00:07:26

SS好きの名無しさんから
2018-07-18 19:06:25

SS好きの名無しさんから
2018-07-15 07:04:54

SS好きの名無しさんから
2018-07-15 02:33:45

SS好きの名無しさんから
2018-07-11 21:24:42

SS好きの名無しさんから
2018-07-09 20:54:57

SS好きの名無しさんから
2018-07-09 20:19:46

SS好きの名無しさんから
2018-07-08 02:28:13

にっしーさんから
2018-07-07 12:50:49

テンロータさんから
2018-07-07 05:42:49

SS好きの名無しさんから
2018-07-07 02:31:13

SS好きの名無しさんから
2018-07-07 00:42:18

このSSへのコメント

34件コメントされています

1: ゔぇるなーと 2018-07-14 21:47:19 ID: 7QZQHAMx

多分自分でシリアスに耐えられなくなってちょっとコメディっぽくなると思われます

2: SS好きの名無しさん 2018-07-15 06:31:02 ID: KmSCzDRB

それで良いです。
ただ悲惨なストーリーは
読みづらいですから。
頑張って下さい!

3: SS好きの名無しさん 2018-07-15 07:05:48 ID: UWWN8km8

続きが楽しみです!
頑張って下さい(^^)

4: ゔぇるなーと 2018-07-16 15:23:14 ID: F4ZHdnJf

ありがとうございます!
早く投稿しますんで何卒よろしくお願いします!

5: ゔぇるなーと 2018-07-24 14:06:00 ID: ha0QdVRL

早く投稿とは一体・・・
物語は一時少しばかりのコメディへ
平安な日常を過ごすにつれ彼の過去が明らかになっていく・・・

6: SS好きの名無しさん 2018-07-27 00:19:29 ID: 9oZNMwmB

ここの提督はATフィールド使わないのか……

7: ゔぇるなーと 2018-07-27 00:49:29 ID: CS41WM8J

普通の人間は使えない・・・はず・・・

8: SS好きの名無しさん 2018-07-29 02:33:11 ID: 6KdWM815

分かるかな?3です。そう、愉快なコメントの人です。
シリアスの中のコメディがちょうど良いタイミングで投下されていて読みやすいです。
中年オヤジは禿げ。はっきりわかんだね。
うちのパパは…はっきりわかんだね☆

9: ゔぇるなーと 2018-07-29 02:46:04 ID: 8VI5xTZz

はっきり分かりたくないよぉ・・・
あとありがとうございますぅ

10: SS好きの名無しさん 2018-07-29 06:19:14 ID: aIjOwFKO

このまま白露がヒロインになれば良いのに(クソザコ白露嫁提督並感)

11: ゔぇるなーと 2018-07-29 06:48:57 ID: 8VI5xTZz

世に白露のあらん事を(同じくクソザコ白露嫁提督ry)因みにヒロインになるかは自分でも分かりません

12: ゔぇるなーと 2018-08-04 02:47:18 ID: Z79fUNpj

何故か何千文字か逝かれました
とっとと復刻させるのでほんのちょっと待ってて下さい

13: SS好きの名無しさん 2018-08-06 22:21:31 ID: F1_Ii9Uv

地下帝国1050年行きぃ~
友達から教えてもらったネタ。
後悔はない(嘘です。調子乗ってすいませんでした)

14: ゔぇるなーと 2018-08-06 22:36:56 ID: 57zu8VTm

あっちのssもこのssでも俺は死ぬ運命にあるのか・・・

15: SS好きの名無しさん 2018-08-07 12:15:49 ID: BGaLMozt

イ級食ってみてぇw

16: SS好きの名無しさん 2018-08-07 13:18:20 ID: vYWxfoQn

イ級の活け作りなんていう神室町の住人レベルの逞しさにドン引き
すればいいのか、白露はやっぱりかわ゛い゛い゛な゛ぁ゛と
癒やされればいいのか判断ができない(動揺)

17: ゔぇるなーと 2018-08-23 01:48:58 ID: 2cGFAm6W

イ級は最寄りのスーパー、又はセブンイレブン系列のコンビニやお店にて販売しています。近くて便利、セブンイレブンです。

18: ゔぇるなーと 2018-08-23 01:50:23 ID: 2cGFAm6W

間をとってイ級に癒されてはどうでしょう(名案)

19: SS好きの名無しさん 2018-08-30 06:03:17 ID: crvutg2W

そういえば、金剛お姉様と白露嬢は改二でいいのかな?
あと白露とイ級可愛い(病気)

20: ゔぇるなーと 2018-08-30 08:02:27 ID: Zv4ryl6j

あ、説明して無くて申し訳ない
白露と金剛は共に改二って事でお願いします
そしてようこそイ級の世界へ

21: SS好きの名無しさん 2018-09-03 23:01:49 ID: IfVG2kjC

出撃していない?逆に考えるんだジョジョ。もういっそ
この子達に商店街辺りで艦娘音頭を踊らせれば良いさ、と(宣伝活動)

22: ゔぇるなーと 2018-09-08 23:08:50 ID: 9zwmbbgf

きさまここにコメントを書き慣れているなッ!(ごめんなさい)

23: SS好きの名無しさん 2018-09-16 08:01:58 ID: YUqb9aAO

答える義務は  っ!?
リアル下痢中なので初投稿ならぬ初撤退です(ホモは腹痛以外嘘つき)

24: ゔぇるなーと 2018-09-23 19:37:57 ID: H83eZRec

ふっ・・・やれやれだぜ

25: クリンスマン 2018-12-05 16:18:24 ID: S:dZX9gM

表現力に驚きました。
これからも頑張って下さい。(* ̄∇ ̄)ノ

26: ゔぇるなーと 2018-12-06 16:33:23 ID: S:ERrwXs

はわわ・・・ありがとうございます
あといつも艦娘の力お借りします!楽しく読ませて貰ってますぅ

27: クリンスマン 2018-12-10 18:36:54 ID: S:1a3Trc

なんと!(°Д°)
ありがとうございます。今週から更新再開しますのでまた、よろしくお願いしますm(._.)m

28: ゔぇるなーと 2018-12-11 01:02:51 ID: S:Wlyj4m

また一つ生き甲斐が増えてしまった・・・
こちらこそ宜しくお願いします

29: あっぷりこっと 2018-12-15 12:13:12 ID: S:f8xdck

はえーすっごい表現力……
応援してます、頑張ってください

30: ゔぇるなーと 2018-12-16 16:36:04 ID: S:JtjfpV

そんな事無いです自分でも意味を知らない難しそうな言葉を並べてるだけで・・・
それはそうと有難う御座います此方こそ応援してます、頑張って下さい

31: クリンスマン 2018-12-19 07:01:11 ID: S:jwp5py

少しのコメディ要素で更におもしろくなりそうですね。
応援してますよー

32: ゔぇるなーと 2018-12-19 21:29:11 ID: S:axlWno

でも真面目な所はしっかり書きたいっていうのとどうしたら笑ってくれるか考えたら結局尻込みしてしまう・・・
あとコメント本当に励みになります有難う御座います

33: クリンスマン 2019-01-02 20:08:28 ID: S:gQJdVJ

新井隼人ですって・・・?
知らない子ですね・・・(´Д`)

34: ゔぇるなーと 2019-01-08 04:10:02 ID: S:mVOWfM

文章上書かなければならなかった不遇のお名前、ある週刊誌の調べによると作者からもあんまり気に入られていない模様だとか


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1: SS好きの名無しさん 2018-07-24 16:33:31 ID: ha0QdVRL

ええんじゃない?


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