2019-07-10 19:36:38 更新

概要

深海棲艦との最終決戦に勝利した人類に平和が訪れようとしていた。
しかしその平和に忍び寄る黒い影。
窮地に陥る艦娘達の前に一人の艦娘が現れて・・・?

*19/7/10 少し内容更新しました。


前書き

初めまして皆様
このssは艦これとウルトラマンオーブのフュージョン設定を使用しています。
苦手な方はブラウザバックです。m(._.)m
読んでてイラッとしたらブラウザバックすると治ります。
基本書き直ししながら更新予定です。

※1000PVありがとうございました‼
( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆




艦娘


それは、在りし日の戦船の魂を宿した娘。


深海棲艦という海の驚異に敢然と、そして勇敢に立ち向かい戦う戦士達。


深海棲艦との戦いは熾烈を極め、多くの犠牲を払いつつも彼女達の力で、戦いは一旦終結を迎える。


終戦により、深海棲艦の残党排除の為に決戦後もしばらく各地に点在していた鎮守府も、次第に解体され多くの艦娘達は引退。

永らく皆が望んだ平和と平穏が訪れつつあった。


戦いの中で艦娘として再起不能の傷を負い戦場を去り、社会に還った者。


退役後に鎮守府、海軍で艦娘としてではなく、人として貢献する者。


戦いの中で散り慰霊碑に名を刻んだ者。


それぞれがそれぞれの道を歩み出した。


しかし、訪れかけた平和はまた崩れようとしていた。


そんな街に一人の旅人が訪れようとしていた


沿岸沿いを一台のトラックが走っている。


運転手「よーし、時間通りに着けそうだな」


ガタガタガタッ


届け先の指定時間を気にしながら走っていると荷台から物音がする。


運転手「ん?おかしいな・・・積荷が動いてしまったか?」


運転手「仕方ない・・・一旦止めて確認するか。」


運転手は積荷を確認するためにトラックを止める


冷凍品を積んでいる為荷台を開けるのはあまりよくないが仕方が無い。


運転手「よっこらせっ」ガチャン


???「こんにちは。」


運転手が荷台を開けたその瞬間、荷台から一人の女性が降りてきた。


運転手「おわっ!!あ、あんた何してんだ!?」


???「いやぁ、助かりました。」


運転手「き、昨日の夜から5時間走って来たんだぞ?」


運転手「-10℃に5時間も入っていたのか!?あんた、体大丈夫か!?」


???「ええ。頑丈なので。」


運転手「い、いやそういう問題じゃ・・・」


???「安心してください。積荷を汚したりはしていませんので。」


運転手「本当かよ・・・」


運転手は積荷を確認する為荷台を覗いた


???「では、私はこれで」


運転手「え!?おい・・・って、あれ!?何処いったんだ?」


すぐに振り返ったがその人物は既にどこにもいなかった。




================================




紅(くれない)鎮守府。


深海棲艦の排除、駆逐を任務とする最後の鎮守府である。


ここには戦争中程ではないが、現役の艦娘が在籍し日々深海棲艦の残党排除にあたっている。


とはいえ終戦から月日が経ち、既に残党らしき深海棲艦も最近は小規模なものばかりになっていた。


そんな静かな海に3人の艦娘がいつものように偵察にあたっていた。


雪風「今日もこの海域は平和ですね」


青葉「そうですねぇ。最後にこの辺りで深海棲艦が現れたのは3週間程前でしたっけ?」


明石「そうね。と言うかなんで工作艦のあたしが偵察しなきゃいけないの?私の役割じゃないよね?」


青葉「まぁまぁ、仕方ありませんよ。うちの鎮守府もかなりの人達が退役しましたし、今は本当に必要最低限の戦力しか残さないという本部の方針です。それにここ以外にもう鎮守府はありませんし、遠方に残党が出現したらそちらにも出撃しないと行けませんから。」


少なくなったとはいえ、深海棲艦の出現は時に遠方になる事もある。


予めある程度出現が予測出来ていた昔とは違い、その点においては後手にまわっているのが現状である。


三日前にも遠方で数ヶ所出現報告があり、数名が遠征出撃しているので鎮守府にいる艦娘は少ない。


明石「それは、そうだけど…。でも工舎で機械弄りしたい!発明が私を呼んでいる!」


雪風「そう言って前回の偵察から帰ってきてすぐに工舎に籠って今日まで出て来なかったじゃないですか。酒保は妖精さんに任せっぱなしで。」


明石「ぐっ。事実だから言い返せない…」


雪風「しれぇもそんな明石さんの状態を見かねて無理矢理に編成してるんじゃないでしょうか?」


青葉「でしょうね。引きこもってばかり居ては駄目ですよ?」


明石「青葉まで! でもちゃんと仕事はこなしてるし!」


青葉「それで前回出来たのがあのポンコツレーダーですよね?」


明石「ポンコツ言うな!深海棲艦がどこにいるか分かるレーダーよ!?凄くない?」


雪風「でも”方角が分かる”だけで距離も水深も分かりませんでした。」


青葉「明石さんの発明は一部凄いんですけど、いつも何処か抜けているんですよねぇ」


明石「ぐう・・・、分かったわよ!絶対あっと驚くびっくりドッキリメカを発明してやるんだから!!」ムキーッ!!


そんな話をしていると鎮守府が見えてきた。


青葉「さて。今日も何事もなく任務完了ですね。」


雪風「お疲れ様でした!」


明石「聞けよ!人の話!私の決意に対するリアクションは!?」


雪風「あ、しれぇだ。」ブンブンブン


提督を見つけた雪風が手を振る


青葉「あ、本当。」


明石「提督も昔よりは随分暇になったんだってね。」


雪風「確実に暇でしょうね。出迎えてくれるのは今も昔も相変わらずですけど。」


提督に近付き三人は敬礼をする。


青葉「提督いつも出迎え恐縮です。」ビシッ


提督も敬礼をし、開口一番


提督「お疲れ!そこのかまいたち、いやお前達。」ビシッ


敬礼をしつついつもの挨拶で出迎える


雪風「それもう何回も聞きました。無理矢理感が凄いです。」


青葉「青葉、聞き飽きちゃいました。」


明石「最初聞いた時から面白くなかったです。」


提督「ひでぇ!ま、そんなことより偵察ご苦労さん。どうだった?」


青葉「本日も異常はありませんでした。(そんなことなんだ…)」


雪風「深海棲艦は影も形もありませんでした。」


明石「退屈の極みでした。」


提督「それは良かった。じゃあ補給と休養を命じる。報告書は後で俺に直接持ってくるように。」


三人「わかりました。」


そうして3人は鎮守府に戻って行った。


その場に残った提督の表情は優しさと不安が入り交じっていた。


提督「いつも通り無事で良かった良かった。今日はなんか変な感じがしてたんだが…。思い過ごしか。」


提督の見つめる水平線には真っ黒な雲が広がりつつあった。


提督「こりゃ嵐になりそうだな。」


そうして提督も鎮守府に戻って行った。


小さな胸騒ぎを思い過ごしと納得させて。


=====================




夜になると提督の予想通り、嵐のような大雨となった。


窓から外を見ても先は全く見えない程の雷雨であった。


ピシャーンッ!


執務室にて執務をこなしていた提督は、雷鳴に反応して外をみる。


提督「こりゃ酷い雨だな。明日の海の状態が気になるな」


コンコン


提督「ん?どうぞ。」


青葉「失礼します。提督、来客なのですが…。」


提督「来客?こんな時間にどちらさん?」


時計の針は既にフタフタマルマルを過ぎている。


青葉「それが、提督に直接お話したいとの事でして、今正面入口の前にいらっしゃいます。」


提督「…わかった。直ぐに行こう。」


青葉「恐縮です。」


提督と青葉は玄関に向かった。


いったい誰だろうか?


近くに街はあるが軍事施設なので近付く物は関係者以外ではほとんどいない。


こんな時間に、それもこんな嵐の日に。


提督は考えながら正面玄関に向かった


提督「お待たせしました。私がこの鎮守府の提督です。なにかご用でしょうか?」


その人物はレインコートを羽織ってはいたが全身ずぶ濡れなのが見てとれた。


この嵐だ。


雨具が役に立たなかったのだろう。


そんな事を思っていた時その人物は口を開いた。


???「夜分遅くに申し訳ありません。この近くを旅しているものでして、急な嵐に見舞われて途方にくれていた所こちらの建物を見つけ、どうか一晩で良いのでこちらに泊めて頂けないかと思いお願いに参りました。」


こちらの姿を見た時から直ぐに頭を下げて喋っているので顔は見えなかったが、女性なのは声でわかった。


提督「それは大変でしたね。しかし申し訳ありません。ここは海軍所属の軍事施設です。一般の方は立ち入りも禁止しています。なのでこちらに泊める事は…」グイグイ「ん?」


提督が話していると誰かが手を引っ張った。


響「司令官、可哀想だよ。こんな日に女性を追い返すなんて。」


いつの間にか響が横にいた。


先程のやり取りを聞いていたようだ。


提督「ひ、響…。しかしだな…」


青葉も響と同意見のようであり


青葉「そうですよ。ここではなく宿舎なら問題無いじゃないですか。」


提督「いや、だが…」


響「ダメなのかい?」ジトッ


その目はズルいし痛い。


青葉「大丈夫ですよ。宿舎には機密情報なんてありませんし私が責任もってそれとなく監視しときますので」コソコソ


響「司令官がそんな人だとは思わなかったよ」グズッ


提督「な、泣くなよ響!わかった、わかったからな!?」


響&青葉「やりました」


提督「それ違う娘のセリフな」


青葉(まぁそもそも私達自体が機密なんですが…)


???「あ、あのー」オイテケボリ


三人のやり取りに置いてけぼりをくらっていた客人が声をかける。


その声に提督は反応し、話を再開する。


提督「失礼。それでは本日のみですが特別にこちらにお泊まり下さい。部屋へはこの青葉がご案内致しますので。」


それを聞いた旅人は


???「ありがとうございます!助かります!」


おそらく断られて当然と思っていたのだろう。


むしろ提督は断るつもりだったのだ。


青葉「ではでは、案内の前にこの鎮守府に来た記念で一枚撮らせて下さい!」


???「写真…ですか?」


提督「トツゼン写真って客人に失礼だろう?」



???「いえ、私はかまいません」


青葉「ほら、お客さんもこう言ってくれていますから!では、是非お願いします!」


提督「まったく」


青葉がそう言うと旅人はレインコートのフードを取った。


提督「!」


その客人はかつての大戦で共に戦った艦娘と顔は違えど纏う雰囲気がそっくりだったのだ。


提督「あ……」


響「ん?どうしたんだい提督?」


???「あ、申し遅れました。私は白瀬(しらせ)と申します。どうぞ、よろしくお願い致します。」


提督「……」


青葉「司令官?」


提督「あ、ああ。すまない。それでは白瀬さん、こちらこそよろしくお願い致します。紅鎮守府はあなたを歓迎致します。」


響(追い返すつもりだったのにかい?)


提督(っ、直接脳内に!?)


こうして白瀬は宿を得た。


青葉「さあさあ、こちらです白瀬さん。体が冷えてるみたいなので、お部屋に案内した後すぐにお風呂にもご案内致しますね。」


白瀬「ありがとうございます。」


青葉達に連れられ、宿舎に向かう白瀬を見て提督は思った。


提督「…世の中には似てる人がが3人はいるとか言うしな。思い過ごしだろう。」


独り言を呟き彼は執務室に戻って行った。






翌日


アータラーシイアーサガキタ キボウn(ガンッ!


明石特製目覚まし時計(シーン)


提督「明石に目覚まし造ってなんて言った俺がバカだったか。だいたいなんで毎回毎回設定したわけでもないのにアラーム音がイラつく音なんだ?」ムクリ


大淀「明石曰く毎回違う音が聞こえたら何事かと起きやすいじゃない、だそうです。あとあんまり強く叩くと壊れちゃいますよ?」


提督「壊れたのは俺の拳だ。」プルプル


大淀「えぇ…」


提督「お陰で目が覚めたよ。泣」ジンジン


大淀「おはようございます。司令官。」


提督「うん。おはよう。なんで俺の私室にいるの?」


大淀「大本営での業務が思いの外遅れてしまいました。加えて昨日は嵐もあったので向こうで泊まりました。

今朝がた戻った所で提督の起床を確認しに来ました。」


提督「それはわざわざどうも。あと絶賛盗撮中のカメラは没収な。」


青葉「Σ(゜Д゜) 」


提督「さて、みんなもう起きてるのか?」


青葉「はい。白瀬さんも含めて皆さん食堂に揃っていますよ。」


提督「わかった。俺も直ぐに向かうよ」


大淀「了解しました。」


そう言って青葉と大淀は私室から出ていった。

提督は窓から外をみる。

昨日の嵐が嘘のような快晴の空だ。


提督「夜の間に納まったか。今日も頑張ろう。」


食堂に着くと既に皆が座って待っていた。


調理場では間宮が朝食を用意していた。


間宮は既に艦娘を退役しているが食堂と甘味所の責任者として鎮守府に貢献している。


間宮「おはようございます。提督さん。」


北上「おはよー、提督」


響「おはよう」


提督「ああ、おはよう、皆。」


艦娘達と挨拶を交わしていると白瀬も挨拶をしてきた。


白瀬「おはようございます。提督さん。昨日は本当にありがとうございました。」


昨晩はレインコートだったのでよくわからなかったが、白瀬は女性としては長身でスタイルはかなり良かった。


ポニーテールにした長い髪は銀色に近い白に見える


雰囲気だけだが似ている。


一晩明け、改めて見てもやはり似ているのだ。


かつての仲間の彼女に。


提督「いえ、昨日はよく眠れましたか?」


白瀬「はい!それはもうぐっすりと。皆さん本当に親切な方ばかりなのですね。」


提督「えぇ、皆いい子達ばかりです。今は外出中の娘達も含めて」


白瀬「そうなんですね。所でご相談なのですが。」


提督「なんでしょうか?」


白瀬「泊めて頂いて、食事まで頂いてしまって本当にありがとうございます。ですので、何か御礼をさせて頂きたいのです。何でもします!」


青葉「ん?今なんでm」ガシッ


提督より先にそのワードに反応した青葉の顔を提督はアイアンクローする


提督「お気になさらず。御礼をしてもらう程の事ではございませんので。」グググ


青葉「提督!痛い痛い!」ジタバタ


響「そうだよ。提督は最初断るつもりだったんだし。」


白瀬「しかし、それでは私の気が治まりません!」


提督「んー、ですが………」


提督が返答に困っているその時だった。


ドガァァァン!!


突然、轟音と震動が鎮守府を襲った。


提督「おわっ!?な、なんだ?!何事だ!」


ウーウーウーッ‼


雪風「え?この警報って」


響「敵襲警報…だよね?」


青葉「深海棲艦でしょうか!?」


状況が飲み込めない鎮守府のメンバーがあわてていると、大淀が食堂に入ってくる


大淀「提督!いらっしゃいますか?!」


提督「大淀!いったい何が起こった!」


大淀「警報の通りです!鎮守府正面海域に深海棲艦が出現しました!」


提督「なんだって!?別の海域にならまだしもこの正面海域だと!?」ドォォォン!


なおも砲撃は続いている。


提督「くっ、総員!出撃用意!!」


艦娘s「了解!」


艦娘達は提督の号令にすぐさま反応し出撃ドックへと走っていった。


残された白瀬に提督は避難を促す


提督「白瀬さんは昨日の宿舎に避難しててください。宿舎なら安全です。」


白瀬「………」


反応が鈍い。


こんな時だと言うのに白瀬の意識は別のことに向いているようだった。


提督「白瀬さん!」


白瀬「あ、はい!わかりました。」


提督「私は行かねばなりません。どうかお早い行動をお願いします。明石、いるか?!」


明石「はい!」


提督「俺は司令室にいく。白瀬さんと間宮さんを避難させたのち、修理と入渠の用意を!」


明石「わかりました。白瀬さん間宮さん、こっちです!」


間宮「ええ。行きましょう。白瀬さん」


白瀬「はい!」


明石は白瀬と間宮を連れて宿舎方面へ向かった。


提督「俺も急がないと。行くぞ大淀!」


大淀「はい!」


命令を受けた艦娘達は5分と掛からず出撃準備を終えていた。


激戦を生き抜いた艦娘達だ。


ひとつひとつの動作もお手の物だった。


出撃は雪風、響、青葉、北上の四人。


他のメンバーは別任務で鎮守府を離れている。


現状用意できる戦力はこの四人だけだった。


だが彼女達は歴戦の艦娘。


錬度も戦闘経験も十分なのだ。


敵からの砲撃が続くなか提督からの放送が入る。


提督「こちら提督。四人共準備はいいか!?

こちらの被害状況は妖精さん曰く、最初の一発以外施設へは当たっていない。

相手はおそらくこちらが出てくるのを待って挑発している。

今から鎮守府正面海域に突如出現した敵と交戦する!


現在、こちらから確認出来るのはイ級6体のみだが、鎮守府への砲撃はこいつらとは別だ。


恐らく重巡、戦艦クラスがいる可能性が高い。


砲撃を繰り返している深海棲艦の特定、排除を最優先にする。


お前達ならやれるはずだ、だが無理はしないように!」


四人「了解!」


提督「よし、総員!出撃用意!」


雪風「駆逐艦 雪風、出撃します!」


響「響、出撃する。」


青葉「出撃です!」


北上「やっちゃいましょー。」


出撃を司令室モニターから見送った提督は不安に駆られていた。


提督「…どういう事なんだ。」


大淀「敵の出現がおかしい事ですか?」


提督「ああ。他の海域に出現するならまだわかる。だが出現したのはこの正面海域、しかも突然だ。砲撃されるまで全く気付けないなんて今までなかった。それに、昨日も偵察、哨戒して異常が無いかも確認している。」


大淀「…確かに不自然ですね。」


提督「しかし、今はこいつらを殲滅するのが先…だな。」


ピーッピー


大淀「提督!駆逐艦、雪風より通信。我、駆逐艦 イ級と回敵。これより戦闘を開始する!との事です」


提督「よぉし。こちら渋川!砲雷撃戦用意!初弾から当てていけ!」


四人「了解!」


提督の号令と共に回敵したイ級に攻撃を開始する。


相手は数は自分達より上だが、たかがイ級。


歴戦の艦娘達の相手にはならなかった。


みるみる内に数が減り、


北上「これで最後だね。」


そう言って北上は魚雷を発射する。


なす術なくイ級は直撃を受け沈んでいった。


響「まだ居るよね」


青葉「鎮守府を砲撃していた本命がいるはずです。索敵を密にしましょう!」


雪風「でもさっき戦闘を開始してから砲撃がピタリと止みました。もしかして敵は撤退したのでしょうか?」


響「確かに、ちょうど私たちが戦闘を開始した位から撃って来なくなったね」


北上「ね、ねぇ皆。あれなんだろ…」


青葉「えっ?」


雪風「な、なんでしょうか…」


響「こいつは一体?」


北上が指差した方角には海に浮かぶ影のような黒い物体。


明らかに異質な存在である。


青葉「敵…でしょうか?」


北上「どっちにしろ近寄らない方がよくない?」


雪風「しれぇ!聞こえますか?」


提督「ああ、聞こえる。どうした?」


雪風「現在敵味方、正体不明の黒い物体と遭遇しています!指示をお願いします!」


提督「なんだ?深海棲艦ではないのか?」


雪風「わかりません。私達と同じように海に浮かんで時折姿がぐにゃぐにゃと変わります!」


雪風達が手をこまねいていると後ろからか声がした。


???「さあ、始まりだ…。」


四人「!?」クルッ


青葉「だ、誰?!」


響「私たちと同じように浮かんでいる!?」


北上「次から次へとめんどくさいなぁ」


提督「どうした?応答せよ!」


???「お前は少し黙ってろ。」パチンッ


提督「な、なんだt」ガガッ


謎の人物が指を鳴らした瞬間 無線が使用不可能となった。


雪風「しれぇ!?通信が・・・」


ガーピーッブツッ


響「嫌な予感がする…」


青葉「皆さん!一時退却です!提督と連絡もつかず、相手は未知の敵…。不確定要素が多すぎます!」


北上「ほーい。」


雪風「わかりました。」


響「…了解」


???「折角来たのにもう帰るのか?もう少し遊んで行けよ。その方が・・・楽しい。」スッ


謎の人物の手が正体不明の物体に触れると、今まで不規則に動いていた全体がハッキリと形を帯びていく。


次第に”それ”は自分達が良く知る深海棲艦の特徴を持ち始めた。


しかしその深海棲艦は今まで見たことのない姿だった。


響「な、なんだい?あの深海棲艦は」


青葉「姫級…なんでしょうか…。私も見たことがありません。」


北上「なんかヤバイかも…」


雪風「とにかく、こんな所で沈む訳にはいきません!」


???「火力と機動力を併せ持つ禍駆逐災姫だ。せいぜい楽しんでくれ。」スゥ


そう言って謎の人物が姿を消した。


次の瞬間、禍駆逐災姫は四人に襲いかかった。


通常ではあり得ない程のスピードと機動で青葉と響に一撃を喰らわせた。


青葉「な、速いっ きゃぁぁ!」中破


響「くっ…」小破


北上「マジか!。でも、そう簡単に!」


雪風「青葉さん!響ちゃん!」


青葉「だ、大丈夫です。」


響「不死鳥の名は伊達じゃない…」


北上は魚雷を放つがことごとく回避、迎撃される。


次第に北上は相手の機動力に振り回されてしまう。


北上「あんな機動力…。ついて行けない…!」


ヒュンッ


雪風「北上さん!後ろ!」


北上「えっ?ヤバッ」


ドォォォン


北上「ぐ、うぅ…」大破


雪風「北上さぁん!このぉ!」


三人は主砲を放つが掠りもしない。


それどころか発射後の隙を狙われている。


状況は悪化する一方


謎の人物が言った言葉が過ぎる。


そう、自分達はこの敵に遊ばれているのだ。


青葉「ダメだ、このままじゃ皆…」


ドォォォン


響「ぐあ!」大破


雪風「きゃぁぁ!」中破


青葉「無線は使えない…。相手は島風さん以上の速力と戦艦の火力を持つ未知の深海棲艦…。

何とかして提督に伝えないと…。こうなったら…!」


四人とももはや回避するのがやっとだ。


むしろ敵は笑みを浮かべながら自分達を弄んでいる。


雪風も大破よりの中破。


ここで皆を沈めるわけにはいかない。


青葉は覚悟を決める。


青葉「はぁ!」ドォォォン


主砲を放ちながら前に出て雪風を呼ぶ。


青葉「雪風さん!二人を連れて撤退を!ここは私が抑えますから!」


雪風「そ、そんなこと出来ません!力を合わせれば絶対に負けません!」


青葉「だめです!無線が使えない今、一刻も早く提督にこの事を伝えないといけません!対策も作戦も無しに太刀打ちできる相手ではっ」


禍駆逐災姫「ヨソ見ヲスル余裕ガアルノカ、ナメルナヨ?」


ドォォォンx3


話ながら太刀打ちできる相手ではなかった。


容赦なく放たれる主砲は三人に直撃する。


響「……う」大破航行不能


北上「………」ガクッ大破航行不能



青葉「ぐ、あ」大破


雪風「無茶です!青葉さ」ドォォォンドォォォン!


雪風「きゃぁぁ!」大破ガシッ


着弾とほぼ同時に間合いを詰められてしまった雪風は捕まってしまう。


禍駆逐災姫「ツカマエタ」ジャキ


敵の主砲は自分の顔を狙っている。


雪風「う……がっ。」ジタバタ


抵抗する。


だが抜けられるハズもない


禍駆逐災姫「ソレナリニ楽シメタヨ。今、楽ニシテヤル」グググッ


雪風(しれぇ、ごめんなさい…。約束果たせそうにありません…。)


青葉「ゆ、雪風さ…ん」ガクッ


禍駆逐災姫「サヨウナラ」ガチャンッ


その時だった。


水平線の彼方から誰かが猛スピードでこちらに向かってくる。


完全に油断していた禍駆逐災姫は顔面に拳を喰らった。


???「はぁぁぁぁぁっっ!」ドゴォ


禍駆逐災姫「ガアッ!ナ、ナンダ貴様ハ!?」


堪らず禍駆逐災姫は手を離す。


雪風「ゲホッゲホッ」(な、何が起こったんでしょう…。もう、意識が…)ガクッ


白瀬「遅くなってごめんなさい…。もう大丈夫ですから。」ガシッ


駆けつけたのは、白瀬だった。


白瀬(良かった。皆さんの艤装、まだ浮上機能を失っていない。)


意識を失った雪風を抱えて禍駆逐災姫から離れる。


禍駆逐災姫「チッ!艦娘カ?武器モモタズニナンノ真似ダ!?吹キ飛ベッ!」ドォォォン!


白瀬「!」スッ


白瀬は禍駆逐災姫の攻撃に対しアイテムを取り出す。


白瀬「はっ!」ピュィィン


掛け声と共にリング状の形をしたアイテムから光が発生し、禍駆逐災姫の放った弾丸が弾ける。


禍駆逐災姫「ナ、ナンダト!?」


白瀬は自分の後に四人がいるのを確認した後、腰のホルスターからカードを取りだし名前を呼ぶ。


白瀬「吹雪さん!」スッ


白瀬はリングにカードを通す。


リングに通されたカードは粒子状になり、粒子が再び形を成した時オーラを纏った吹雪が姿を表す。


吹雪(はい!)


白瀬は次のカードを取りだし名前を呼ぶ。


白瀬「暁さん!」


同じく粒子状になったカードから暁が現れる。


暁(わかったわ!)


暁(私の妹に何するのよっ!)


禍駆逐災姫「艦娘ヲヨンダダト!?ダガソノ程度ノ駆逐艦ナドイクライテモ同ジダ!」


白瀬「数で戦うんじゃない。2つの力を1つにっ!」ググッ


禍駆逐災姫「ナニ?」


白瀬は左手のアイテムを高く掲げながら叫ぶ。


白瀬「特型駆逐艦の力!御借りします!!」ギュイン


〔フュージョンアップ!〕


吹雪、暁(はっ!)


声と共に吹雪と暁の体が白瀬の体に重なる。


体が重なると同時に白瀬は光に包まれた。


そして、


〔特型駆逐艦 白瀬 ブリザード フラッシュ〕


白瀬の姿は先程と違い艤装を展開し艦娘としての戦闘力を感じさせた。


禍駆逐災姫「ナンナンダ貴様ハ…一体…。」


白瀬「私の名は白瀬。闇を切り開く夜明となる!」


禍駆逐災姫「調子二、ノルナァァ!」


禍駆逐災姫は白瀬に向けて砲撃を開始する。


ヒュッン


だが連続して放たれる砲撃を白瀬はことごとくかわす。


逆に白瀬の放つ砲撃は正確に相手を捉えている


禍駆逐災姫「グッ… ナ、ナゼアタラナイ!」


白瀬「分かりやすい砲撃だからよ」


禍駆逐災姫「!? 戯レ言ヲッ!コレナラドウダ!」バシュッ


禍駆逐災姫は先程よりスピードを上げ撹乱しつつ白瀬へ魚雷を発射する。


発射された魚雷は6。


白瀬「魚雷か。やはり持っていたのね。」ドンドンドン


発射された魚雷を撃ち抜いて無力化して行く。


2発は白瀬の近くで爆発し海水で視界が一瞬無くなった。


禍駆逐災姫「ソコダ!」ドォォォン!


白瀬「っ!」ドンドン!


一瞬の隙をついて死角から現れた禍駆逐災姫が主砲を放つ。


回避が間に合わないと判断した白瀬は反転して主砲を撃ち返す。


弾と弾がぶつかる。


しかし口径も威力も明らかに禍駆逐災姫の主砲の方が上。


白瀬の弾は力負けし弾き飛ぶ。


白瀬「ぐっ」


撃ち合いにより弾道が少しズレたため直撃は免れるが至近距離で着弾し、爆風を受ける。


禍駆逐災姫「終ワリダッ!」ガシッ


先程雪風を捕まえたように白瀬の首をつかみ、ゼロ距離発射の体勢に入る。


白瀬「ふふっ」


禍駆逐災姫「…ナンダ?ナゼ笑ッテイル…。鬱陶シイヤツダ。オ前ハスグニ消シテヤル!」ジャキッ


白瀬「こんなにも近付いたのが、貴女の敗因」


禍駆逐災姫「ナニヲ言ッ…」ピカッ


白瀬の言葉と同時に閃光が二人を包む。


禍駆逐災姫「ッ!?」


白瀬の左肩に装備されていた探照灯が光ったのだ。


禍駆逐災姫「クッ、目ガ…見エナイ…」


白瀬「はあっ!」ドゴッ


白瀬は脱出し、蹴りを喰らわせる


白瀬「暫く眼は見えない!」ガシャッ


白瀬はよろめいている禍駆逐災姫に向かって魚雷を発射する


禍駆逐災姫「目ハ見エナクトモッ…!」


魚雷の発射を感知した禍駆逐災姫は回避行動をとりつつ距離をとろうとする。


視界が無くなっているにも関わらず禍駆逐災姫は全ての魚雷を回避した。


だが


白瀬「そう避けるのも、分かっている!」ガシッ


白瀬は発射と同時に先回りし、回避された魚雷の一つを素手で掴み再び禍駆逐災姫に向かって放り投げる。


白瀬「だっ!」ブン


思いもよらない方向からの雷撃に禍駆逐災姫は直撃を受ける


禍駆逐災姫「ガァァァァ!ア、アァッ」ドガァァァン


白瀬(やるなら今!)スッ


白瀬はその場で力を溜める


両手を十字に動かし交差した軌道の中心に光が集まって行く


白瀬「はぁぁぁ!」シュゥゥゥ


先程放った実弾とは明らかに違う光の弾丸となった


白瀬「はっ!」バシュ


掛声と共に主砲から光弾が放たれる。


ドガァァァン


禍駆逐災姫「アァァァァッ…」


白瀬「弱ってもいない相手を捕まえたって意味ないわよ?それに、相手の装備はよく見ることね。最も探照灯は本来あんな使い方しないけれど。」


光弾が致命傷となった禍駆逐災姫は既に沈み始めていた。


禍駆逐災姫「マタ、沈ムノカ… 私ハ……」


そう言い残し禍駆逐災姫は海へと沈んで行った。


数秒後、海中で禍駆逐災姫は爆発、跡形も無くなった。


敵の気配が消え白瀬はフュージョンを解除し、二人に礼を言った。


白瀬「ふぅ。ちょっともらっちゃったな…。吹雪さん、暁さん、ありがとうございました。」ペコッ


吹雪(どういたしまして)


暁(また、呼んでも良いのよ?レディーに任せなさい!)


白瀬「はい、またお願いします。」


吹雪(皆さんをお願いしますね)スゥ


先に吹雪は姿を消した。


暁(皆を・・・、響をお願い!)


白瀬「もちろんです。必ず鎮守府に連れて行きます。」


暁は頷き、響きを見ながら姿を消した。


二人が消えた直後、禍駆逐災姫の沈んだ場所から光が現れる。


白瀬「!」スッ


白瀬はリングを光に向ける。


すると光がリングに吸収され、中央から一枚のカードが現れた。


そのカードは《駆逐艦 夕立》だった。


白瀬「これは…。夕立さん。」


(これから貴方の力になるっぽい!)


白瀬「ありがとうございます。悪夢の力、お借りします。」ニコッ


白瀬はカードをベルトに掛けているホルスターに入れる。


白瀬「さて、皆さんを何とかして運ばないと。」


四人とも大破状態で気を失っている。


幸いにも艤装はその機能を失わず、四人とも浮かんでいた。


白瀬「とにかく鎮守府まで運ばないと・・・。」


離れていた四人を一ヶ所に集める。


白瀬「後は響さんね。」


響を抱えたとき、響は目を開いた。


響「……やっぱり白瀬さんだったんだ。」


白瀬「うぇぇっ!」ビクッ


響「ありがとう…助けてくれたんだよね。」ボロボロ


白瀬「ひ、響さん。大丈夫ですか?」


響「不死鳥の名は伊達じゃない。傷は痛むけど何とか立てそうだよ。それよりも白瀬さん、聞きたい事が」スッ


そう言うと響は立ちあがり白瀬の目を見る


白瀬「えぇっと、どこから見てました…?」


響「白瀬さんの周りに現れた吹雪さんと、暁が合体した所からかな。」


白瀬「ほぼ初めからじゃないですか!あぁ…、見られてしまうなんて・・・」アタマカカエ


響「・・・話せない事なんだね?なら、聞かないから大丈夫さ。それよりも皆ひどい怪我だ。早く鎮守府まで運ばないと。」


白瀬「ありがとうございます。でも響さんもですから無理しないで下さい。私が皆さんを運びますから響さんも乗ってください。」


響「そうしたいのだけれど、四人も同時に運べるのかい?」


白瀬「二人を抱えて、一人は肩に乗ってもらって、もう一人は艤装のあった背中に座ってもらえれば。」


響「力持ちなんだね。でも、それで鎮守府に戻ると白瀬さんの正体がバレてしまうよ?」


白瀬「・・・今は、一刻を争う状況です。それを理由に皆さんを見捨てるような真似はしたくありません」


響「ありがとう。でも隠す理由があるんだろう?

ほら、無線が復活しているから司令官に迎えに来て貰うよ。」


白瀬「ですが・・・」


ピピッ


その時響の無線が鳴った。


提督「…!お…よ!応答せよ!」


響「やぁ、司令官。」


提督「その声は響か!?皆無事なのか!?」


響「皆酷くやられてしまったけど大丈夫だよ。」


提督「そうか・・・、本当に良かった・・・・」


響「所で司令官。皆気を失っているから自力で戻れないんだ。艤装は機能しているから大丈夫なんだけど、迎えに来て貰いたい。」


提督「わかった、すぐに向かう。もう少し耐えてくれ。」


響「了解。待ってるよ」ピピッ


無線を切ると白瀬に向かって


響「という事だから私達は大丈夫。幸いここは鎮守府正面海域だから、5分位で来てくれるさ。」


白瀬「・・・わかりました。しかし敵がいつ来るかわかりません。ギリギリまでそばに居させて下さい。」


響「わかったよ。提督?聞こえるかい?」


提督「どうした?今明石と大淀が先に向かわした。俺も今出航する所だ。」


響「それは助かるよ。明石さん達はどれくらいで着きそうかな?」


提督「皆の位置がわかっているからな。後3分も掛からないはずだ。」


響「ありがとう。待ってるね。」ピピッ


無線を聞いていた白瀬は雪風をみる。


白瀬「もう少しですよ・・・」ナデナデ


響「白瀬さん。答えられるならで良いんだけど、あの敵はこれからも出現するのかい?」


白瀬「・・・おそらく」


響「そう・・・。あ、明石さんと大淀さんが見えたよ。」


白瀬「すみません。それでは、私は一足先に鎮守府に戻ります。」


響「白瀬さんも気を付けてね。」


白瀬「はい。」


白瀬は四人を残し、心配そうに鎮守府に戻っていった。


反対側からはこちらを発見した明石達が呼び掛けている。


明石「おぉーい!皆さーん!」


大淀「響ちゃん!」


皆の状態を見た二人は驚く。


大破とは聞いていた。


自分の想像を遥かに超える損傷。


大淀「酷い・・・・、明石!早く皆を見てあげて。」


明石「任っせなさい!」


響「ありがとう。二人とも。」


明石は四人に出来る限りの応急処置を施し、大淀は辺りの警戒にあたっていた


響以外の三人とも意識は回復しないが処置のおかげで沈む心配は無くなった。


処置が終わるとほぼ同時に提督の船が到着した。


提督「皆、大丈夫か!すぐに鎮守府に連れていってやるからな。二人とも皆を上に!」


明石、大淀「はい!」


船に引き上げた四人を見て提督は謝る。


提督「すまない、皆・・・。」


響「提督が謝ることではないよ?」


大淀「響ちゃんの言う通りです。」


提督「だが・・・。」


響が言葉を遮る。


響「あんな事は想定出来ないよ。それに、今回の出撃に対して誰も提督を責めないさ。私もね。」


提督「わかった。だが次からは想定出来るように努めるとしよう。」


響「うん、それでこそ私達の司令…官…だ……ょ……」ガクッ


提督「響!?おい!しっかりしろ!」ガシッ


提督は響を受け止め声をかけるが、明石がそれを止める。


明石「しーっ。静かに。眠っただけですよ。自分しか意識を保てていなかったからずっと緊張していたんでしょうね」ナデナデ


響「スゥ…スゥ」zzz


提督「良かった…。しかしこの四人をここまで追い詰めるとは・・・何者だったんだ。」


四人は経験、練度共に豊富な艦娘であり今まで苦戦は有ったものの航行不能まで追い詰められたのは初めてだった。


一歩間違えば轟沈も十分ありえた・・・


提督「俺達の知らない所で何かが起き始めているのかもしれないな。」


明石「相手が何なのかも分からないんですよね?今になって新種の深海棲艦とは・・・。」


大淀「いろいろと忙しくなりそうですね。」


話をしていると鎮守府のドックに着いた


入渠施設は隣接する建物にあり、すぐ近くだ


提督「とにかく皆の回復が最優先だ。明日には長門達も帰還する。分析はそれからでも良い。さぁ、皆を運ぶぞ!」


明石&大淀「了解しました。」


二人にはああ言ったものの提督は焦りを感じていた。


自分が感じた不安が現実になろうとしている。


未知の相手に対しての戦略も考えなければいけない。


提督(大本営へも報告しないとな。支援が必要になるかもしれん。)


提督(だが、守ってみせる。平和も、この娘達も)


不安も焦燥も振り払い提督は決意を新たにした。


先に鎮守府に戻った白瀬は灯台の近くから海を見ていた。


しばらくして全員を乗せた提督の船が無事に帰還したのが見えた。


白瀬「良かった・・・。」


心配していたが大丈夫だったようだ。


だがその矢先、白瀬を頭痛が襲う


白瀬「痛っ・・・。な、何?頭が」


痛みはすぐに治まったが脳内ではある光景がフラッシュバックしていた。





=====================


自分が戦っている。


空、海上、海中。


空爆、砲撃、魚雷。


ありとあらゆる全ての攻撃が自分を襲う。


圧倒的不利な戦況。


だがそんな事は関係ない。


自分が勝てば皆が助かる。


自分ならそれが出来るかもしれない。


この時の為の力


振り払う、凪ぎ払う、突き進む。


只ひたすら撃ち続けた、そして撃たれ続けた。








どれだけの時間が経っただろうか。


白瀬?「はぁっはぁっ、まだまだぁ!」


次第に追い込まれていく。


皆は無事だろうか……


今までただひたすらに敵に向いていた意識は、追い込まれていく中仲間達の安否に向く。


だがそれは一瞬の隙を産み、精彩を欠いた隙に敵の攻撃が直撃した。


白瀬?「がはぁっ!」


たった一発。


そこからは早かった。


白瀬?「がっ、ぐっ」


足が止まってしまえばただの的。


次々と容赦なく撃ち込まれる弾丸。


最後の抵抗とばかりに撃ち返す。


だが次第に自分の体が沈んでいく。


敵からトドメの一撃。


爆発と共に一瞬で体が海中に落とされた。


白瀬?(あ、あぁ・・・そんな、私は・・・私は!)


先程まで自分がいた場所に手を伸ばす。


届かない、届くはずがない。


白瀬?(うぁぁぁぁぁぁぁ!みんな!みんな・・・)


何処までも沈んでいく。


深い闇が自分を包んだ。




=====================


間宮「白瀬さーん!どこですかー!」



白瀬「っ」ハッ


遠くから間宮の声がする。


こっそり抜け出してきた白瀬をずっと探していたようだった。


自分が持っている記憶の違和感。


自分の事なのにまるで別人のような感覚。


白瀬(この記憶は本当に私の記憶なの…?)スッ


白瀬は首から下げたネックレスを手のひらに乗せ、それを見つめながら呟く。


白瀬「ごめんなさい、皆さん・・・。もう少し皆さんの力、御借りします。」


その手には2つの指輪が光っていた。



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-次回予告-



セーカイジュウガー♪ キミヲマーッテイルー♪


街の水源になっているダムで異変発生!


この影響で街中の水が臭くなってしまった!


このままでは入渠も食事も出来ない。


負傷して動けない皆さんに代わって私が行くしかないようですね!


次回 《脅威水域》


紅に、燃える!


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後書き

読んで頂き、ありがとうございました。

ここからは配役説明です。

配役に吹雪と暁を選んだ理由ですが

アニメ主人公という事もあり、吹雪をファーストチョイス。

吹雪を選んだ以上、相方も特型駆逐艦ネームシップにしたいと考え最初は、綾波を選びました

ですが綾波は他の配役を思い付き暁に変更しました。

吹雪=ブリザードはすぐ思い付きましたが、暁をどう表現しようかと悩みました。

結局改二画像を見て肩からみえる探照灯が印象的だったのでフラッシュとしました。

ブリザードフラッシュ=スペシウムゼペリオンと思ってもらえればいいかな・・・?
(そうとも限らない)

ちなみに白瀬は既に艦娘カードを数枚所持している設定です。

活動報告にも記載していますが、現在5話にあわせてストーリーと誤字脱字修正しています。
(まだ間違っている部分があるかも・・・。あったら教えてもらえると嬉しいです。)

更新をもうしばらくお待ちください!


このSSへの評価

7件評価されています


SS好きの名無しさんから
2019-03-21 12:02:47

2019-01-05 08:35:28

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2018-12-08 00:58:24

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このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2018-08-23 11:36:18 ID: SorwPiKe

速く更新してください

2: クリンスマン 2018-08-24 10:07:54 ID: XJRI5S9U

遅くてすいません。f(^ー^;
明日か明後日には2話として投稿予定です。


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