2018-08-07 20:49:54 更新

概要

提督を慕っていたはずの皆が何故か提督を嫌うようになる、提督の妻である村雨も・・・提督の元部下であった
海風や翔鶴やサラトガでさえも・・・一体何があったのか? 


前書き

結末はグッド? になるのかな~? どうして皆が嫌うのかは中間に分かります。

暴言吐くだけで、キャラ崩壊をしないように書いて行きます。

キャラが多いため、今回も 提督「」 村雨「」と書きます~。


追記:後半に”未来”と言うオリジナル艦娘が出ます。


提督「おはよう、早いな。」


提督が目を覚ますと、村雨が既に仕込みをしていて、


提督「代わろうか? 村雨はカウンターで接客を・・・」


村雨「うるさいんですけど、静かにしてくれませんか?」


提督「ああ・・・ごめん。」


村雨「ごめん? 人に謝る時は”ごめんなさい”じゃないですか?」


提督「・・・うん、そうだね。 ”ごめんなさい”。」


村雨「・・・ふん。」


村雨はそっぽを向いて部屋に戻る。


・・・・・・


提督「今日は買い物でも行こうかな。」


気分転換に買い物に行こうとする提督。


提督「・・・・・・」



いつからこんなことになったのか・・・


提督を慕っているはずの皆が突然変貌、提督を邪険に扱うようになった。


元部下である翔鶴やサラトガ、挙句に妻である村雨すらも提督を避け、暴言を吐くようになった。


それでも、提督は何故かいつもと同じように振る舞っている。



道中で白露達に会う。


提督「おはよう、皆で駄菓子屋にでも行くのかな?」


提督の質問に、


白露「行こう、変質者の相手をしても仕方ないよ!」


時雨「白露に同意、誰かは知らないけど気安く話しかけないでよ!」


夕立「お兄さんは変態? それともバカっぽい~?」


白露たちはそう言って、去って行く。


提督「ははは・・・やっぱりバカに見えるのかなぁ~。」


提督は苦笑いをする。



提督「・・・・・・」


駄菓子屋に立ち寄って見たが、白露たちの姿はない・・・どうやら別の用事だったようだ。


提督「おや?」


提督が見ると、そこには江風と海風がいた。


提督「江風と海風じゃないか、どうした? お菓子でも買うのか?」


江風「・・・・・・」


海風「・・・・・・」


提督「オレが奢るよ、ほら1000円・・」


提督が財布からお札を出そうとしたところで、


江風「いらねぇよ、このロリコン!」


江風が叫び、


海風「行きましょう! こんな変な人間と関わるといい事はありません!」


江風たちはそそくさと逃げていく。


提督「ははは・・・逃げて行っちゃった。」


提督はまた歩き始める。



提督「早く買い物して早く帰ろう・・・村雨を待たせると後が怖いからな。」


そう言って、デパートに入って行く提督。


提督「これなんかどうだろう? 村雨はこの服が似合いそうだなぁ~。」


早く帰るつもりが服を物色、村雨のために似合いそうな服を探していた。


提督「おっ? 翔鶴とサラトガ、2人も買い物かな?」


偶然にも服コーナーで2人と会う。


翔鶴「・・・・・・」


サラトガ「うわぁ~、今日は何て災難な日。」


サラトガが本音を呟く。


提督「これどうかな? 村雨に似合うだろうか?」


提督が服を見せると、


翔鶴「そうですね、あなたが選んだ以外の服なら似合うと思いますよ。」


サラトガ「確かに! あなたってはっきり言って場違いな人間ですもんねぇ~」


2人は不機嫌になり、提督の前から立ち去る。


提督「ははは・・・何か嫌われているのかなぁ。」


明らかに嫌っているはずだが、当の提督は全く気にしていない。


・・・・・・


提督「ただいま~。」


提督が買い物から帰ってくる。


村雨「こんな時間までどこをほっつき歩いていたんですか? いい身分ですね。」


提督「ちょっと村雨に合いそうな服を見つけてさぁ、買って来たんだけど・・・どうかな?」


提督は村雨に見せるが、


村雨「そうですね、確かにいいと思います・・・あなたが買って来たことを除けば。」


提督「・・・・・・」


村雨「洗濯しますので洗濯機に入れて置いてください・・・汚れたままでは着ることも出来ませんので!」


提督「・・・うん、分かった。」


提督は立ち上がって、裏にある洗濯機に買って来たばかりの服を入れた。



提督「おやすみ。」


村雨「・・・・・・」


提督「今日も一緒に寝てくれないの? 最近1人で寝てるからオレとしては、寂しいかなぁ。」


村雨「あ、そう。 私は1人で問題ないですので。」


提督「・・・・・・」


村雨「そんな顔で見ないでください、反吐が出るので。」


提督「そうか、ごめん・・・おやすみ。」


提督は諦めて1人で床に着く。



・・・毎日がこんな状態である。



翌朝、


提督「・・・・・・」


提督が何やら腕を押さえている・・・痛むのだろうか?


提督「・・・・・・」


村雨「こんなところで何をやっているの? 腕なんか押さえていないでさっさと仕事してよね!」


提督「あっ、ごめんね。 すぐ仕込みに入るから。」


提督は裏口に入って行く。



村雨「私は用があるので出かけます、サボらず仕事をしてください。」


そう言って、村雨は店から出て行く。


提督「分かってるよ・・・今日の仕込みは~と。」


明らかに皆から邪険に扱われているのだが、当の提督は普段通りの生活をしている。


・・・・・・


村雨が向かった先は・・・工廠場?


村雨「明石さん、いますか?」


工廠場に着くなり、明石を呼ぶ村雨。


明石「村雨さん、どうかしましたか?」


何かの作業をしていたようで、酷く疲れていた。


村雨「あの・・・その様子ではまだですね?」


村雨は事前に何かを依頼していたようだ。


明石「・・・・・・」


明石の表情を見る限り、未完成のようで、


村雨「ごめんなさい、私の我儘で頼んでもらったのに急かしてしまって・・・」


明石「いいんです、事は急を要する事態ですから・・・焦るのも無理はありません。」


村雨「・・・・・・」


明石「もう少し時間をください、必ず完成して見せますから!」


村雨「ありがとうございます、明石さん!」


村雨は礼を言って工廠場から去る。



提督「あっ、おかえり村雨。」


村雨が帰宅、提督は今日の仕事結果を報告する。


提督「何とかここまで出来たよ。」


村雨「出来るのが当たり前! 何を自慢気に語っているのよ?」


提督「・・・・・・」


村雨「その程度で仕事したって、どれだけ役立たずなのよ。」


提督「・・・ごめんなさい。」


村雨「全く・・・あなたの仕事率は毎日の3食分にもならないわ!」


村雨からのキツイ暴言の連発・・・それでも提督は、


提督「すいません・・・頑張ります。」


素直に謝り、疲れた様子で部屋へと入って行く。


村雨「・・・提督。」


村雨は手を震わせて何かを堪えていた。



翌朝、


提督「ちょっと買い物に行って来る。」


村雨「必要な物だけ買ってすぐに帰って来て下さい・・・寄り道したら食事抜きですよ!」


提督「うん、分かった・・・肝に銘じます。」


そう言って、提督は買い物籠を持って外に出る。



提督「おはよう皆、今日は揃ってどこか行くの?」


提督はいつものように挨拶をする・・・どんなに貶されようが邪険に扱われようが・・・


海風「気安く話しかけないでください。」


白露「あんまりしつこいと憲兵に通報するよ?」


相変わらず白露たちの暴言が絶えない。


提督「ごめんごめん、じゃあオレは買い物に行くから。」


素直に謝ってその場を後にする提督。



提督「これを買って・・・それからこれとこれも・・・」


村雨から貰ったメモに書いてある通りの食材を籠に入れて行く。


大鳳「無様ですね、元提督さん。」


買い物に来ていたであろう、大鳳が提督と鉢合わせになる。


大鳳「昔は皆を束ねる上官だったのが、今では奥さんの言いなりで買い物をするただのおじさん・・・


    本当に上官だったかのすら疑う程ですよ。」


提督「・・・・・・」


蒼龍「大鳳、ここにいたの~? 結構探したんだよ!」


蒼龍が汗をかきながら走って来た。


蒼龍「おやおや、どこかで見たことがあるかと思えば・・・落ちぶれ提督ではないですか~。


    今日は買い物ですか? それとも個人的な用事です?」


提督「・・・・・・」


蒼龍「何ですか、そんなに睨んで? もしかして気に障ったのかしら、申し訳ありません。


    あまりにも提督の姿が鬱陶しかったので~♪」


大鳳「蒼龍さん、早くこの場から離れましょう!」


蒼龍「同意、じゃあ失礼します・・・元提督さん♪」


大鳳たちが去って行き、


提督「・・・ふぅ~。」


ようやく静かになった事で安堵の息を漏らした。


提督「ははは・・・「おじさん」か、ははは~。」


大鳳に「おじさん」と言われて根に持ったのか、


提督「まぁ仕方ない・・・人の基準と言うのは全員違うんだからね。」


艦娘達から貶されている提督、それでも彼は「仕方がない」と割り切っていた。



帰り道、


提督「おや?」


足元にボールが転がって来て、拾う提督。


春雨「あっ、司令官。」


ボールの主は春雨のようだ、提督はすぐに返してあげる。


春雨「あ、ありがとうございます。」


提督「どういたしまして。」


そう言って、再び歩を進めようとしたところで、


春雨「あの、司令官!!」


春雨が叫ぶ、


提督「? どうした春雨?」


春雨「あの・・・」


春雨が言いかけたところで、


夕立「春雨~、こんな所にいたっぽい~!」


探していたのか、春雨の側に寄る夕立。


夕立「春雨駄目っぽい~! こんな悪い人と話しちゃ駄目っぽい~!」


そう言って、春雨を連れて帰ろうとした。


春雨「で、でも・・・」


春雨は何か言いたそうだが、


夕立「帰るっぽい~! 白露たちが心配してるっぽい~!!」


春雨の言い分などお構いなしで、鎮守府に帰って行く2人。


提督「・・・さて、帰るか。」


提督は店へと戻った。


・・・・・・


当然のことながら、帰りが遅かったことにより食事抜き・・・までは行かないが、お粥のみ食べることを許された。


提督「うむ・・・美味い。」


提督は村雨が作ったお粥を美味しそうに食べて行く。


村雨「・・・・・・」


提督をよそに親子丼を食べている村雨。


提督「まだある? 少し物足りないかなぁ~。」


村雨「勝手にどうぞ、そこの鍋に入れてありますから。」


提督「ありがとう・・・しかし、今日のお粥は食べた中で一番美味しいな♪」


鍋の蓋を開けて茶碗に盛る提督、


村雨「・・・・・・」


村雨は提督をじっと見つめていた。


・・・・・・


翌朝、


提督「ゴホゴホッ! ・・・風邪でも引いたかな?」



朝から咳が止まらない・・・体調でも崩したのか?



提督「・・・・・・」


口から手を離すと・・・


提督「そうか、オレはもう・・・」


提督は静かに何かを悟る。


・・・・・・


提督「・・・・・・」


今日もいつもと同じ、村雨にメモを渡されて買い物に向かう提督。


提督「・・・・・・」


白露たちがいる鎮守府をいつものように通過しようとして、


春雨「司令官!!」


春雨が門の前で叫んでいた。


提督「? 春雨、どうしたんだ? 誰かを待っているのか?」


提督は春雨に近づく、


春雨「・・・・・・」


何故か春雨は悲しい表情で提督を見つめる。


提督「どうした? 何故そんなに悲しい顔をするんだ?」


提督の言葉に、


春雨「・・・ご・・ご。」


提督「?」


春雨「ごめんなさい!! ごめんなさい、司令官!!」


急に泣き叫んで提督にしがみつく春雨。


春雨「ごめんなさい!! 春雨のせいで・・・ごめんなさい!!」


提督「・・・・・・」


提督は無言のままだ。


白露「春雨、どこに行ったの・・・って何してるの、春雨!?」


白露が探していたようで、春雨に近づく。


白露「一体何があったの!? どうして提督にしがみついてるの!?」


白露は目の前の状況が分かっていない。


白露「春雨、何があったの! ねぇ春雨ってば!!」


白露が叫んで、


春雨「ごめんなさぁい・・・春雨のせいで・・・ごめんなさぁい。」


白露「!?」


白露は急に大人しくなる。


春雨「グスッ、ごめんなさい・・・本当に・・・ひっく、ごめんなさぁい。」


春雨は何度も何度も提督に泣きながら謝る。


白露「春雨、駄目だよ・・・もう謝っちゃ駄目だって。」


白露は春雨を引き離そうとする。


春雨「司令官・・・司令官・・・グスッ。」


白露「春雨・・・駄目。 お願いだからもう謝らないで。」


次第に白露の表情も悲しくなっていき、


白露「ううっ・・・春雨、もうお願いだから・・・」


白露まで泣いてしまった。


提督「・・・ごめん、オレはもう行くね。」


そう言って、春雨をゆっくり離すとその場から去る。



村雨「どうしたの、何があったの?」


急遽、呼ばれた村雨は白露の部屋に入って行く。


村雨「春雨? 白露に時雨と夕立も・・・」


部屋には4人がいて春雨は悲しい表情をしており、白露たちは下を向いて顔を合わせようとしない。


春雨「村雨姉さん・・・」


春雨は力無く口を開く。


村雨「どうしたの? 一体何があったのか話して。」


村雨の言葉に、


白露「もう無理・・・無理だよぉ。」


白露が口を開き、


白露「もうこんな事やったって意味無いじゃん。 あたしにはもう無理だよ!」


白露はまた泣き始める。


時雨「白露・・・」


夕立「ぽい~・・・」


何も答えられず、白露たちを見つめる時雨と夕立。


・・・・・・

・・・



事の発端は約1か月前の事、


提督「白露・時雨・夕立と春雨! 所定位置に着いたか?」


提督が応援のため、鎮守府に出張しに来ていた時の事。


白露「準備出来たよ提督!」


時雨「僕も、いつでも戦闘可能だよ!」


提督「よし、それでは他の鎮守府との演習を開始する・・・始め!!」


提督の号令と共に、白露たちと他の艦娘達との演習が開始された。


・・・・・・


白露「いやぁ~、流石に相手側も練度が高いだけに手強かった~!」


夕立「でも、あまり被弾せずに勝てたっぽい~♪」


時雨「うん、これも提督の作戦計画のおかげだね。」


結果は白露たちの勝利で、白露たちも気分が高揚していた。


提督「おめでとう、約束通り勝ったから何か奢ってやるよ。」


時雨「本当に? じゃあ僕はアイスを。」


夕立「夕立は褒めて欲しいっぽい~♪」


提督「ははは・・・分かった分かった。」


提督は白露たちと一緒に酒保へと向かう。


春雨「あっ、皆。 待ってください。」


春雨が皆について行こうと走り始めた所で、



ドカァァァァーーンン!!!!



突然、何かの爆発音がして地面が揺れる。


白露「!? 一体何が起きたの!?」


時雨「分からない、とにかく皆伏せて!!」


時雨の言葉に白露たちが地面に伏せる。


提督「・・・演習の際に外した砲撃が何かに引火したのか・・・」



演習は別の編成で再開していた・・・一部の砲撃が演習範囲外のどこかへ逸れたのを見た気がするが・・・



提督「この爆発音・・・まさか燃料庫に被弾した?」


提督の読みは当たり、次々と爆発音が発生。 演習は中止し艦娘達が避難する。


提督「落ち着いてゆっくり行動しろ! 慌てず避難場所まで行くんだ。」


提督の的確な指示により、艦娘達は徐々に避難場所へと移動する。


提督「白露、時雨たちと一緒に早く行くんだ!」


残すは白露たち、安全を確認しながら避難所へと進んでいく白露たち、


提督「!? また爆発音だ!」


先ほどと比べて遥かに大きい爆発音・・・宙をドラム缶が舞う光景が見えて、


提督「!? 春雨! 逃げろ!!」


春雨の頭上に爆発で吹き飛んだドラム缶が落ちて来る。


春雨「きゃああああっ!!!!」


春雨は目を閉じた。


春雨「・・・? し、司令官!!」


そこには提督が代わりにドラム缶の直撃を受けた姿が・・・


提督「大丈夫か、春雨?」


春雨「あ、ああ・・・し、司令官・・」


提督は春雨を抱きかかえると、そのまま避難所へと向かう。


・・・・・・


どうやら鎮守府で遠征で手に入れた燃料を移し替えている時に、運悪く逸れた砲撃がドラム缶に直撃し大爆発を起こしたとの事。


幸いにも燃料庫は無事だったが、もしも引火をしていたら無事では済まなかっただろう・・・



春雨の代わりに被弾した提督はすぐに治療を受けるが、


明石「腕から胸にかけて大火傷を負っています・・・すぐに治療をしないと!」


そう言って、明石は提督を工廠場へと連れて行く。


春雨「司令官・・・」


春雨は提督の無事を祈った。


・・・・・・


提督は無事に店へと戻った・・・しかし、それは完治したわけではない。


村雨「えっ、明石さん・・・今何と言いました?」


村雨は明石が言った事を理解できていなかった。


明石「申し訳ありません、最善を尽くしたのですが・・・」


村雨「・・・・・・」


明石「提督の傷は手の施しようがありません・・・持って1か月でしょう。」


明石から聞かされた残酷な一言。


村雨「・・・・・・」


村雨はただ呆然とする他なかった。



村雨「提督、食事を持ってきました。」


部屋で1人静かに休養する提督。


提督「・・・・・・」


提督は損傷した腕をじっと見つめていて、


村雨「何かあればすぐに呼んでください。」


その場に居づらかったのか、すぐに部屋から出て行く村雨。


・・・・・・


その後も、提督の症状は悪化を辿り日に日に弱くなっていくのが分かる・・・それでも提督は、


提督「よし、今日も1日頑張るか!」


店のカウンターに立って接客を進んで行っていた。


提督「いらっしゃい! 今日はこのメニューがお勧めだよ!」


客から見れば、提督が余命1か月なんて気づかない、それほど提督は元気に見えた。



明石「どうです? 提督の体調は?」


村雨「はい、店で普段と同じように働いていますが・・・夜になると、苦しいのか腕を押さえている姿を見て・・・」


そう言って、涙を流す村雨。


明石「・・・・・・」


村雨「・・・ごめんなさい、見苦しい所を見せてしまって。」


明石「いえ、構いません。 でも、今から言う事は更に辛い事でしょうけど・・・しっかりと聞いてください。」


そう言って、明石は話し始める。



提督「おかえり、夕食の準備をしておいたぞ。」


提督が既に食卓に料理を並べていて、


村雨「ありがとうございます・・・では、いただきましょう。」


2人で「いただきます。」と言って夕食を摂る2人。


村雨「・・・・・・」


明石に言われた言葉を思い出す。


明石「負傷した傷を見てください、黒いシミのようなものがあればもうその部分は「体が壊死している」状態です。」


村雨「体が壊死・・・」


明石「しかも、壊死した部分から毒素が出てそれらが周りの正常な部位を蝕むんです。」


村雨「・・・・・・」


明石「もし、提督の体の大半が黒いシミで覆われていたら・・・もうあと僅かです。」


村雨「・・・・・・」


あと僅かと言うのは・・・「死ぬ」って事だろう。



村雨「・・・・・・」


提督「どうした、そんな難しい顔をして?」


村雨「えっ!? いや、何でもありません!」


提督「ははは・・・今日の村雨はいつもと変だなぁ~。」


笑いながら食事をする提督。


村雨「・・・・・・」


村雨はただ提督を見つめていた。


・・・・・・


ある日の事、


提督「村雨、頼みがある・・・白露たちとサラトガや翔鶴・・・オレと長く生活していた皆をこの店に呼んで欲しい。」


提督が普段と違う頼みをしてきて、


村雨「分かりました・・・すぐに召集を掛けます。」


村雨は白露たちに連絡して店に来るように連絡を入れる。



提督「皆、わざわざ集まってくれてありがとう。」


サラトガ「いいえ、構いません・・・それより提督、お体の具合はどうですか?」


翔鶴「私たちに出来る事があれば何でも言ってください。」


提督「そうか、では皆にまずは伝えなければ行けないことがある。」


そう言って、提督は思っている事を皆に打ち明けた。


提督「もうオレは長くないだろう。」


江風「えっ? 提督、今何て?」


提督「皆はオレに気を遣っているようだけど、自分の体の状態は自分が一番よく分かっているからさ、


    もう長くは生きられないことぐらいは分かっている。」


海風「提督・・・」


提督「だからそれを踏まえて皆に頼みたいことがあるんだ。」


提督は皆にあるお願いをする。


白露「えっ? 「提督を無視しろ」・・・一体どう言う事?」


白露たちは提督が何を言っているかが分かっていない。


提督「言葉の通りだよ、明日から・・・いや、今日からオレを無視したり邪険に扱って欲しい。」


大鳳「何故です?」


提督「オレが死んだことで皆に悲しんで欲しくないからだ。」


蒼龍「・・・・・・」


提督「悲しむ事で、この先の任務や業務に支障をきたしてしまう事はとても申し訳ない・・・


    それならいっそのこと今からオレを貶して、上官でも友人でもないただの「赤の他人」として扱って欲しい。」


村雨「・・・・・・」


提督「オレが皆に頼む最後の望みだ・・・オレの事を本当に慕ってくれているのなら、オレの頼みを聞いてくれ。」


皆「・・・・・・」


しばしの沈黙・・・やがて、


村雨「分かりました、提督の命令に従います。」


村雨に続いて、


白露「分かったよ、提督を貶せばいいんだよね?」


サラトガ「提督の心境、お察しします・・・サラは提督の最後の頼みに応じます・・・」


夕立「そんな事やりたくないっぽい~! ・・・でも、皆同じ気持ち、だよね?」


大鳳「提督、まだ諦めないでください。 私たちが治す術を必ず見つけます・・・それまでは「赤の他人」として扱います!」


提督「・・・ありがとう、皆。」


提督は腕を押さえつつ、笑顔で振る舞った。


・・・・・・

・・・



そう・・・


提督は”皆から貶されていた”のではない・・・”自分を貶すように仕向けていた”のだ。


いつ自分が死ぬかもわからない、そのせいで皆に悲しんで欲しくなかったし、それが原因で


今後の任務や職務に影響を与えたくないと言う、提督の気遣いだった。



提督の指示通り、皆は提督を罵倒し、貶していたが・・・正直誰1人気乗りしなかった。



白露たちも、


白露「行こう、変質者の相手をしても仕方ないよ!」


時雨「白露に同意、誰かは知らないけど気安く話しかけないでよ!」


提督を貶してすぐに立ち去るも、


白露「あれで・・・いいんだよね?」


時雨「うん、提督を突き放した言い方でいいと、思う。」


夕立「ううっ、夕立本当は言いたくないっぽい~・・・」



翔鶴たちも、


翔鶴「そうですね、あなたが選んだ以外の服なら似合うと思いますよ。」


サラトガ「確かに! あなたってはっきり言って場違いな人間ですもんねぇ~」


そう言って、不機嫌になってその場から立ち去るが、


翔鶴「申し訳ありません、提督・・・」


サラトガ「提督、すいません・・・これで、いいんですよね?」



大鳳たちだって、


大鳳「昔は皆を束ねる上官だったのが、今では奥さんの言いなりで買い物をするただのおじさん・・・


    本当に上官だったかのすら疑う程ですよ。」


蒼龍「何ですか、そんなに睨んで? もしかして気に障ったのかしら、申し訳ありません。


    あまりにも提督の姿が鬱陶しかったので~♪」


大鳳「蒼龍さん、早くこの場から離れましょう!」


そう言って、提督の前から姿を消し、


大鳳「提督・・・腕を押さえて歩いていましたよね? とても苦しそうでした。」


蒼龍「見ていて苦しそうだったのが痛いほど分かる・・・それなのに私たちは提督のために何1つしてあげられないなんて・・・」



でも、一番辛かったのは村雨である。


提督が腕を押さえていた時も、


村雨「大丈夫ですか・・・! ううん気を遣っちゃ駄目、提督を邪険に扱わないと。」


買い物が遅くなった時も、


村雨「体中が痛くて歩きづらいんだ・・・でも、それでも命令には従わないと・・・」


提督の食事をお粥のみにした時も、


村雨「提督はほとんど何も口に出来ない・・・せめて消化の良いお粥でも食べさせないと。」



・・・・・・

・・・



村雨「・・・・・・」


店に帰る間の村雨の足取りは重い、


村雨「・・・・・・」


白露たちとの会話後、工廠場に寄り明石を訪ねた村雨。


しかし、頼んでいた提督の治療薬は・・・出来なかったそうだ。


村雨「・・・早く帰ろう、提督もずっと部屋に籠っているはずです。」


そう思い、早足で店に戻る村雨。



村雨「提督、いますよね? ・・・提督?」


提督の部屋の扉を開けると、


村雨「!? これって・・・血!!?」



床には大量の血・・・朝、提督が咳き込んでいたのは実は吐血だった。



村雨「提督・・・提督!! どこに行ったのですか!?」


村雨は店内をひたすら探す、


村雨「提督! 提督! どこにいるんですか、提督!!」


村雨は落ち着いて考える、


村雨「そうだ、提督は今日買い物に・・・じゃあ途中で倒れているのでは!?」


そう思った瞬間、店から飛び出した村雨。


村雨「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


心当たりの場所をくまなく探す村雨、


村雨「提督・・・提督・・・」


途中で白露たちと会い一緒に探し始めるが、


村雨「見つからない・・・提督、どこに行ったのですか。」


いくら探しても見つからない、


村雨「提督・・・提督・・・」


何も出来ない無力感、村雨は地面に腰を下ろして自身の無力を悔やんだ。


・・・それからしばらくの後、鎮守府の皆との大捜索が行われつつも、提督を見つけることが出来なかった。


・・・・・・


提督が失踪して、3ヵ月が経ち、


村雨たちは普段通りの生活に戻った。


何の問題も無く任務や業務作業をしているはずなのだが・・・


江風「・・・・・・」


休日で外出中の江風が駄菓子屋で座り込んだままだ。


海風「? どうしたの、ずっと座って?」


江風「いや、いつもなら待っていると提督がやって来て「お菓子買うのか? 奢ってやろう。」って言ってお駄賃くれるじゃん?」


海風「・・・・・・」


江風「その習慣って・・・中々抜けないもんだね。」


そう言いながら、ずっと座り続ける江風。




蒼龍「今日もお疲れ様~!」


出撃任務から無事帰還した蒼龍と大鳳、


蒼龍「間宮さんの所に行ってスイーツでも食べよ♪」


大鳳「今日は臨時休業でしたよ。」


蒼龍「そうだったっけ? 残念!・・・じゃあ村雨ちゃんの店に行こう! あそこのスイーツも絶品で・・・」


大鳳「・・・・・・」


蒼龍「そっか、提督はいないんだった・・・私ったら、何言ってるんだろう・・・」




白露「・・・雨・・・村雨ったら!!」


村雨「!? あら、白露・・・どうしたの?」


白露「何ぼ~っとしてんの、あたしたち遊びに来たよ。」


よく見ると、後ろに時雨や夕立・春雨もいて、


白露「今日は村雨の店でお茶会だったでしょ?」


村雨「ああ、そうだったわね・・・すぐに用意するから。」


そう言って、準備を始める村雨。


白露「それでさぁ~昨日なんか霧島さんとぶつかって大変だったよ~。」


白露が会話を始めて盛り上がるが、


村雨「・・・・・・」


白露「村雨・・・村雨ったら!」


村雨「!? 何、どうかした?」


白露「さっきからずっと放心状態だよ、大丈夫? 体調が悪いの?」


村雨「いいえ、別に気分が悪いわけじゃあ・・・顔を洗って来るわ。」


洗面台に向かう村雨。


白露「・・・・・・」


村雨の様子がおかしいのは皆知っている、普段通りに生活している白露たちも時々、


白露「お小遣い頂戴~! 今日の出費が激しくってさぁ~w」


夕立「今日は頑張ったっぽい~、提督さんに褒めて欲しいっぽい~♪」


と、提督がまだいるかのように話す事がある。




何と言うか・・・皆、心にぽっかり穴が開いた状態で、普段通りの生活を続けている。


それ程、皆にとって提督の存在は大きかったようだ。



・・・・・・


ある日の事、


村雨「いらっしゃいませ・・・席にご案内します。」


来店した客は初めての女性で、容姿は長身の鳥海のようで、メガネのクイッとした動作は霧島に似ている、


そんな特徴の女性だった。


村雨「ご注文はお決まりですか?」


?「そうですね・・・この生姜焼き定食をお願いします。」


村雨「かしこまりました・・・少しお待ちください。」


村雨はカウンターで調理を始める。



村雨「お待たせいたしました~。」


笑顔で接客するが表情はどこか悲しいように見える。



?「ご馳走様です、お代はここに置いておきますね。」


そう言って、女性は店から出て行く。



・・・それ以降、この女性は毎日この店に来るようになる。


・・・・・・


村雨「いらっしゃいませ~。 あら、おはようございます。」


ほぼ毎日来るので、村雨もすぐに挨拶や会話をする仲となり、女性の方も会話が好きなようで村雨とよく話す光景が見られた。


会話をして行く内に、彼女の名前やプライベートな事を知ることが出来た村雨。



彼女の名前は”未来”、艦娘なのだがどの鎮守府にも所属していないらしい。


「その内着任する予定です。」と言っており、もしかしたら白露たちのいる鎮守府に行くかもしれないとの事。



他にも知りたいことはたくさんあったが、所詮は女将と客の関係、「余計な事を聞くものではない」と言い聞かせ、


それ以降、未来と言う女性の詮索をしないことにしたが・・・



彼女が村雨の店に来てから不思議な事件が起こるようになった。


それは村雨が店で珍しく多忙な時の事・・・


村雨「いらっしゃいませ~、あら未来さん。」


いつものように未来が来店した時の事、


村雨「申し訳ありません、他のお客さんの対応に追われていて・・・少しお待ちください。」


と、村雨が申し訳なさそうに言っていると、


未来「いいえ、構いません。 開いている席に座ればいいですよね?」


そう言って、案内を待たず自ら席へと座る未来。


村雨「あっ、すいません。」


本当なら席に案内しなければならない身として、申し訳ないと思いつつ彼女の気遣いに感謝をする。



未来が自分から席に着き、後は注文を待つだけなのだが、


村雨「どうしよう・・・材料が足りない。」


調理の過程で材料不足に気付く村雨、しかし客の対応に忙しく補充が出来ず途方に暮れている中、


未来「私が買い出しに行って来ましょうか?」


村雨「えっ!?」


驚きの一言だった。


未来「材料が足りないんですよね? 私も今日は忙しいわけでもありませんので私で良ければ買い物に行って来ますよ。」


村雨「で、ですが・・・」


未来「女将さんは早く海風さんやサラトガさんを呼んで他の方たちの対応に集中してください。」


村雨「・・・・・・」


悩んだ末に、


村雨「すいません、ではお願い致します。」


そう言って、村雨は買い物籠を渡す。


未来「すぐに戻って来ます! 村雨さんは早く応援を呼んでください!」


未来は店から出る、


村雨「あっ、未来さん! メモを・・・行っちゃった。」


買ってきて欲しい材料を書いたメモを持たずに行ってしまった未来。


・・・・・・


数分後、


未来「ただいま戻りました!」


未来が戻ってくる、


村雨「あっ、すいません。 助かりました・・・」


海風とサラトガを応援に呼んだことで、対応が楽になっていた村雨。


未来「では、私は席に戻ってますので。」


そう言って、席に座り自分の番が来るのを待ち続ける未来。


村雨「・・・・・・」


メモを渡せず「彼女に無駄な買い物をさせてしまったなぁ」と後悔する村雨だが・・・


村雨「!? えっ、何で・・・どうして!?」


村雨は買い物籠に入っている材料を見て驚く。



そこにはメモに書いてあった物と同じ材料と欲しい個数分、しかもあの時冷蔵庫を開けたのかは定かではないけど、


不足だった材料の補充分までも買ってきてくれていた。



村雨「・・・・・・」


その時は余計な詮索をせず単純に「未来さんのおかげで助かった」と思ったが、その後も不思議な事件が起きる。


・・・・・・


村雨「いらっしゃいませ・・・」


白露「村雨~! お小遣い頂戴♪」


白露がやって来て、いつもように小遣いをねだる始末。


村雨「お断りします、 提督がいないから今度は私ってわけ? 私は提督と違って甘くはありませーん。」


白露「そんなこと言わずにさぁ、ちょっとでいいから~。」


そんな2人の姿を見て、既に来店していた未来が2人の側に寄り、


未来「こらこら白露さん、相変わらず出費の激しいお姉さんですね。」


未来は財布を出して、


未来「妹にねだるのはどうかと思いますよ、はい1000円。 あまり無駄遣いしないようにね♪」


白露「ほえっ!? あ、ありがとうございます。」


白露はきょとんとしながらお札を受け取った。


白露「・・・あの人誰?」


村雨「毎日店に来てくれる常連さんよ。」



そう、毎日店に来る「常連客」と言う言葉だけで済むはずだが、 



白露「・・・何であたしの名前知ってるの? それにあたしが「姉」だってことも言ってないよね?」


村雨「・・・・・・」



そう、村雨は白露が来店した時点でまだ「白露」と言っていないし、「姉」とも言っていない・・・何故彼女は知っていたのか?


・・・・・・


他にも不思議な事件が続き、


「いらっしゃいませ・・・あら、江風? 珍しいわね。」


江風が珍しく店に来たが、


村雨「・・・見知らぬお姉さんからお金を貰った?」


江風「うん、いつものように海風の姉貴と駄菓子屋に行ってたら、知らないお姉さんが話しかけてきて・・・」


村雨「・・・・・・」


江風「「お姉さんとお菓子でも買いに来たの? じゃあ私が奢るわ♪」って言って1000円貰った。」


村雨「・・・・・・」


江風「流石に知らない人から貰って抵抗あったから使わなかったけど・・・


    何で「姉貴」と来ている事知ってたんだろう?」


村雨「・・・そのお姉さんってもしかして。」


村雨は毎日店に来る未来の特徴を江風に言うと、


江風「うん! その人だった!」


村雨「・・・・・・」


江風「でも、それがまた不思議で初対面のはずなのに、何故か気軽に話せたんだよね・・・」


村雨「・・・・・・」



未来さんは白露だけでなく、江風や海風の事も知っていた・・・


・・・・・・


村雨は考えていた・・・もちろん、未来のことである。


村雨「・・・・・・」



村雨にはある仮説が頭をよぎっていたが、あくまで仮説・・・確信とまでには至らなかったが、



村雨「でも・・・やっぱりそれしか考えられないわ。」


何度考えても、同じ結論に至ってしまう。


・・・・・・


村雨「未来さんはもしかして・・・”提督の生まれ変わり”では?」



村雨が出した結論・・・もちろんあり得ないのだが、これまでの数々の不思議な現象を振り返ると、


その結論で全ての謎が1つに繋がるのだ。



最初から”白露たちの事を知っていた”とすれば全てのつじつまが合う・・・でも、そこには1つの壁が立ちはだかる。


提督は未だ「失踪」と言う形で見つかっていない、


「失踪」は生きているのか死んでいるのかが分からない状況、つまり「死亡」しているわけではない。


実際に死体が見つかったわけでもない・・・その状況では村雨の結論に信憑性がない。


それに、未来本人が「人違いですよ。」と言われればそこで話が終わる、


村雨は結局、本人に確かめることも出来ずに時間だけが過ぎて行った。


・・・そんな時、


村雨「いらっしゃいませ~・・・あら、未来さん。」


いつもなら朝か昼に来店するはずだが、今日は珍しく店を閉める直前に来店してきた未来。


未来「こんばんは・・・今日は女将さんに話したいことがあって。」


村雨「?」



村雨「この街を離れる・・・ですか?」


未来「はい、あれから鎮守府に何度も着任依頼を申し出たのですが・・・」


未来によると、周辺の鎮守府は全て満員で着任拒否をされてしまい、働き口を探すためにこの街から離れると言う。


未来「この店が周辺の鎮守府から近かったので利用していたのですが・・・」


村雨「・・・・・・」


街から離れるという事は・・・もうこの店にも来れない、という事になる。


未来「それで、今日は女将さんにお礼が言いたくて。」


そう言って、未来は深々と礼をして、


未来「今まで親切にしてくれてありがとうございました、女将さんの事はこれからも決して忘れません。」


それだけ言うと、


未来「では失礼します、夜分遅く失礼しました。」


未来は店から出ようとする。


村雨「あ、あの!」


村雨は引き止める、


未来「?」


未来は首を傾げる、


村雨「・・・・・・」



村雨は思った・・・ここで確かめるべきか、それとも思い留まるべきか・・・


村雨「・・・・・・」


いや、それ以上に”この人と離れ離れになりたくない”と言う気持ちの方が強かった。


それは、本人か別人かを確かめたい気持ち以外に「未来さんがいると安心する」と言う気持ちがあったから、


実際に白露や夕立も最初は抵抗があったものの、「あの人と話していると、楽しい」と言っており、白露たちも彼女に懐いていた。


ならばどうすれば、引き止められるか? 「提督(本人)ですか?」と聞けばいい? 


いや、「違います」と言われればそれで終わり、彼女は遠くへ行ってしまう。


じゃあ、何て言えばいいのか? 質問とかじゃなくもっと単純で、彼女が納得してくれそうな言葉を・・・



村雨「・・・・・・」


考えた末に、村雨は口を開く。


村雨「未来さんは、働き口を探しているんですよね?」


未来「? はい。」


村雨「でしたら・・・この店で働きませんか?」


未来「・・・・・・」


村雨「いいえ、間違えました・・・この店で働いてくれませんか?」


未来「・・・・・・」


村雨「もちろん、鎮守府で貰える給料と比べればこんな小さな料亭で渡せる給料は微々たるものです。」


未来「・・・・・・」


村雨「でも、未来さんがこの店に来てくれた時から、店内が明るくなった気がするんです。」


未来「・・・・・・」


村雨「私の姉妹や仲間たちも皆、未来さんの事を気に入っています。」


未来「・・・・・・」


村雨「ですから、失礼と思いつつもう一度お聞きします・・・この店で働いてくれませんか?」


村雨は必死で願う。


未来「・・・・・・」


しばしの沈黙・・・そして彼女が出した答えは、


・・・・・・

・・・



数日後、


村雨「いらっしゃいませ~、あら白露じゃない。」


白露「聞いたよ、未来さんがここに就職したんだって~!」


まだ数日しか経っていないのに、白露の耳には既に情報が入っていた。


白露「それで、未来さんはどこどこ?」


村雨「あそこで掃除をしているわ・・・あまり邪魔をしちゃ駄目よ。」


白露「分かってるって~♪」


そう言って、白露は掃除中の未来の前に立ち、


白露「おはようございます、未来さん!」


未来「おはようございます、白露ちゃん♪」


2人は会話をし始めた。


村雨「もう、白露ったら・・・あれじゃあ未来さんが掃除できないじゃない。」


村雨は呆れつつ、


村雨「いらっしゃいませ~、あらサラトガさん。」


サラトガ「おはようございます、村雨ちゃん♪」


前と同じように元気よく挨拶するサラトガ、


村雨「お好きな席へどうぞ~♪」


村雨も自然に明るく笑顔になる・・・それもやはり彼女がいる影響だろう。


村雨「・・・・・・」


結局、村雨は未来に聞かなかった。


単純に一緒にいると楽しいと、心から思っていたから。


村雨「・・・・・・」



もちろん、提督が今どうしているのかずっと気がかりだけど、



でも・・・提督の事だからいつもみたいに何事も無かったかのように店に帰ってくるような気がする。



急にいなくなったかと思えばいつの間にか帰って来たりと、そんな人だから・・・



だから村雨はいつでも、提督の帰りを・・・待っています。





そう胸に思い留め、これからも頑張って行こうと心に誓う村雨だった。









「提督が何故か皆に嫌われる」 終・・・






























未来が働きに来て1か月が経過、


村雨「いらっしゃいませ~、あらサラトガさんに翔鶴さん♪」


村雨は2人を席に案内する、


サラトガ「いつものスイーツをお願いします♪」


翔鶴「私はこの抹茶尽くしのスイーツをお願いします。」


村雨「かしこまりましたぁ~、未来さん、お願いします!」


未来「分かりました、すぐに作ります。」


カウンターで未来が2人のスイーツを作り始める。


サラトガ「未来さんが来てから本当に店内が明るくなりましたね~♪」


翔鶴「確かに、まるで提督のように見ていて落ち着きますよね。」


村雨「・・・・・・」


仲間の一部も村雨と同じような考えを持っている・・・しかも、


サラトガが好きなスイーツと翔鶴が気に入っている抹茶スイーツ・・・提督が作るオリジナルスイーツの一部で、


レシピはない、つまり提督にしか作れない。


それを提督に聞いたわけでもない、レシピを見たわけでもない・・・何故、未来は作れるのか?


村雨「・・・・・・」



やはり未来さんは提督の・・・



そこまで言いかけ、いつも止まってしまう。


村雨「余計な詮索はしない、未来さんは未来さん! 提督は提督! 偶然の一致だってあり得るわよ。」


そう言い聞かせ、今日も未来と一緒に店を切り盛りする村雨。


・・・・・・


村雨「未来さん、大分落ち着いたから休憩に行ってください。」


未来「分かりました、それでは休憩に入ります。」


未来は休憩のために部屋に向かおうとする。


白露「ちょっと! あたしはまだ未来さんと話しているんだけど!」


夕立「休憩に行くっぽい~? もう少しだけ話したいっぽい~!」


白露と夕立が不満そうに呟いて、


村雨「わがまま言わない! 2人ともこの後遠征でしょ? 時間は大丈夫なの?」


白露「あっ!? やばいやばい! 早く帰るよ夕立!」


夕立「ぽい~! また遅れて怒られるっぽい~!」


2人は清算して店から出て行く。


村雨「全く2人は・・・ふふっ。」


村雨は笑みを漏らす。



未来「・・・・・・」


扉の隙間から村雨たちを見ていた未来、


未来「相変わらずね、皆は・・・」


未来は村雨たちを見て安心する。


未来「心配で戻って来たけど、村雨たちは乗り越えたようね。」


未来の言い方が変わる・・・それには聞き覚えが、



未来「あの時・・・」



・・・・・・

・・・



提督「明石、いるか?」


深夜、工廠場に提督が立ち寄り、


明石「提督、どうなさいました?」


提督「・・・・・・」


提督が腕を押さえていて、


明石「!? 大丈夫ですか!? すぐに痛み止めを!」


明石は工廠場奥に行こうとするが、


提督「いや、もう手遅れだ。 朝に吐血をした・・・もう持たないだろう。」


明石「そんな・・・」


明石は言葉を掛けられず下を向く、


提督「最後に、明石に頼みたいことがある。」


明石「?」


明石が顔を上げる、


提督「オレを”あの実験台”にしてくれ。」


明石「あの実験台? ・・・まさか?」


明石は驚くが、


提督「どうせオレは助からない、なら生きている内にこの命、実験台として使われていいと思ってる。」


明石「・・・・・・」


提督「頼むよ、明石。」


提督の願いに、


明石「・・・分かりました、こちらへどうぞ。」


明石は提督とある場所へと向かう。



明石たちが向かった場所・・・鎮守府地下、の更に地下深くの秘密地下。 知っているのは明石と提督だけだ。


明石「懐かしいですね、覚えていますか?」


明石は様々な実験器具やカプセルを眺めて口を開く。


明石「昔、提督らが規律を破って建造をして艦娘を大量に建造した事件を・・・」



昔は、まだ安全に関しての知識が無かった為か、大破進軍など当たり前でたくさんの艦娘たちが轟沈、沈んだ過去がある。



明石「本来なら禁止されていた建造を、轟沈等の汚名を隠蔽するために一部の提督達が大量建造しました。」



この世界では同じ艦娘が2人以上いる場合、原則2人目以降を解体するのだが、 轟沈した艦娘の穴埋めのために


一部の提督が2人目以降の艦娘を特別施設へと冷凍保存、轟沈後同じ艦娘を投入と、証拠隠滅を計っていた。



明石「サラトガさんもビスマルクさんも・・・まぁそれは言わない約束ですね。 その後、建造施設は一部の艦娘たちからの


    強い要望で全ての鎮守府の建造施設が破壊されました。」



建造施設の破壊後、2人目以降は未だ存在しているが、彼女たちもこの世界に生を受けた艦娘たち・・・軍の特別措置で


1人目と二度と会わないことを条件に存在を許可されている。



明石「そして・・・今まで明かされなかった異例の艦娘・・・それが彼女です。」


明石が密閉された特別な容器にその艦娘がいた。


明石「大型建造で突然変異なのか異形なのか、この世に生まれてしまった艦娘・・・


    もちろん誕生した瞬間から彼女の意識は無かったですが。」


提督「・・・この子のどこが突然変異なんだ? 見たところ普通の女性だけど?」


提督の言う通り、見た目は普通の女性・・・体に異変など見当たらないが、


明石「艤装です、彼女の装着する艤装が特別なんです。」


提督「? 艤装ねぇ。」


2人はしばらく会話した後、


明石「この艦娘をすぐに処分しようとしましたが、軍内に情報が洩れる事を恐れ私がこの地下に封印していたのです。」


提督「そうか・・・明石は本当に律儀で立派だな。」


明石「・・・・・・」


提督「オレと同じで死ぬ運命だったか・・・よし、この子に決めた。 頼むよ明石。」


明石「・・・分かりました。 では、提督の精神をこの子の体に移動させます!!」



明石「準備はいいですか?」


提督「いつでも。」


明石「先に言っておきます、これは本当に賭けです! 失敗するかもしれません、提督の精神が戻らず


    最悪提督も死んでしまうかもしれません!」


提督「構わないよ、「オレを実験台にしてくれ」と言っただろう? はなから死ぬことは計画済み、


    死んだらオレはその程度の人間だっただけの事。」


明石「・・・・・・」


提督「じゃあ、頼むよ明石。」


明石「分かりました・・・それでは行きます、実験開始!!」


明石がスイッチを押し、提督と素体の周りを無数のエネルギーが舞う。


・・・・・・

・・・



明石「・・・く。」



明石「て・・とく。」



明石「てい・とく  提督? 提督!!」



提督「う、う~ん・・・あ、明石?」


明石「提督! 目が覚めましたか!?」


提督「・・・・・・」


明石「良かった! 実験は無事成功しました!」


提督「・・・・・・」


明石「新しい体をご覧になります? どうぞ、鏡です。」


明石から鏡を渡され、提督は自分を見る。


提督「・・・・・・」



映っていたのは提督の隣で眠っていた艦娘の素顔、目を閉じていて気付かなかったが・・・宝石のように美しい瞳をしている。



提督「そうか・・・オレは・・・? あれ? 何か自分の声が高いんだけど?」


明石「女性なんですから声は高いです。」


提督「・・・・・・」


考えてみれば当然なのだが・・・


明石「さてと、ではそのまま歩き回られても困りますので、予備の服を渡して置きます!」


そう言って、明石から女性用の服を貰う。


提督「・・・・・・」


着ている途中で、何かに気付く。


提督「・・・あまり意識していなかったけど、これが胸ってやつかぁ。」


提督は自分の胸を揉み揉みしてみる。


明石「艦娘ですから・・・」


提督「・・・おっ!? 股間にあれがない!」


明石「・・・女性ですからね(呆)」


提督の行動に呆れつつも明石は次の準備に取り掛かる。



明石「それにしても・・・」


明石は提督の体を眺め、


明石「腕は完全に細胞が壊死、レントゲンで見ると・・・片方の肺は毒素で蝕まれ、心臓も半分機能不全・・・


    普通の人間ならとっくに死んでいるはずなのに!」


提督の身体機能に驚かされる明石。


提督「いや、村雨たちを置いて死ねないと思ってたら、痛くても我慢できたからさ。」


明石「・・・・・・」


「彼は最早人間の域を超えていた?」と思いつつ、


明石「後は艤装です、渡して置きます。」


明石は準備していた艤装を提督に見せる。


提督「? 何だこれ? ここに飛行甲板があって・・・ここには主砲があるけど?」



出撃の際に村雨たちの艤装を何度も見ているから分かる・・・この艤装は、明らかに特殊だ。


まるで複数の艦種の艤装がまとめて付いているようだ。



明石「今まで稼働したわけではないので推測ですが・・・彼女は”複数の艦種を持つ艦娘”だと思われます。」


提督「・・・複数の艦種を持っている?」


明石「ええ、状況によって空母から戦艦・戦艦から潜水艦等に形態を変えられるのではと。」


提督「へぇ~・・・それは凄いな。」


提督は納得する。


明石「・・・貴方の事を言っているんですけどね。」


提督「? ああ、ごめん。 まだ自覚が無くてさ~。」



素直に謝る提督・・・しかし、どう見ても女性が恥ずかしそうにしている光景にしか見えないが・・・



・・・・・・


提督「ありがとう明石、この姿でもう一度頑張って見るよ!」


明石「はい・・・提督、その姿で一体何をするつもりですか?」


明石の質問に、


提督「決まっているだろ、村雨たちを側で見守るんだ! 昔は机の上で無事を祈っているだけだったが、今は艦娘。


    今度は同じ海上で一緒に戦う・・・それだけだよ。」


明石「そうですか・・・本当に村雨さんたちのことが好きなんですね。」


明石も安心して、最後に一言。


明石「名前はどうしますか?」


提督「うん、名前?」


明石「はい、この姿になったのですから「提督」とは言いにくいですよね?」


提督「あ~・・・そうだなぁ。」


提督は少し考えて、


提督「村雨たちとこれからの未来を担う希望の艦娘になると決めて、「未来」って名前にするよ!」


明石「未来・・・いい名前ですね。 分かりました、それでは未来さん、これからリハビリに移ります。」


未来「うん、分かった。」


明石「・・・後、女性口調でお願いします!」


未来「ああ・・・コホンッ。 よろしくお願いします!!」


未来はリハビリを行うため、明石について行く。


・・・・・・

・・・



未来「3カ月の間に体の訓練と女性口調の練習と・・・深夜の出撃を実施。 うん、無事に終わりました。」


それから艤装については、


未来「これまでの出撃で未来の艤装は空母と戦艦・潜水母艦に形態を変えられる事が分かりました。」


3つの艦種に変わるのは確かに突然変異と言えるかもしれない。


未来「でも、良く言えば幅広く村雨たちをフォローできるって意味にもなりますね♪」


未来はとてもポジティブである。


村雨「未来さ~ん、休憩中申し訳ありません。 少し手伝ってもらいたいのですが!」


店内から村雨の声がして、


未来「分かりました、今すぐに!」


準備をして店内へと入る未来。



村雨には機会を見て打ち明けようと思う、いや・・・既に気づいているかもね。


白露たちと会話をしていると、「未来さんって提督みたいだね」と、言われて焦ることも。


その通り、今は未来だけど中身は提督のまま。 上官ではないけど村雨たちと同じ艦娘。


今度は机で祈るのではなく、同じ海上で共に戦う・・・それが私の願いだから!










「提督が何故か皆に嫌われる」 終(今度こそ)












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1: SS好きの名無しさん 2018-08-02 23:52:35 ID: Gt3PLQxF

続きが気になるよん

2: SS好きの名無しさん 2018-08-04 05:53:34 ID: _zgjS94M

続きかいてほしいっす

3: SS好きの名無しさん 2018-08-04 20:13:33 ID: cVyaH-7X

続き気になる( ;∀;)

4: SS好きの名無しさん 2018-08-05 00:48:00 ID: 17DNKLXN

最初投稿された時は「は?なんやねんこれ??」本当にキリンちゃん様か?と思いました。前書きなかったら今見てないと思います。
更新されていて見てみたら「ああ、キリンちゃん様だ」てなりました。
後々いいssだなと思う所流石キリンちゃん様だなと思いました。
語彙力無いのに長文コメ失礼しました。続き待ってます♪

5: SS好きの名無しさん 2018-08-05 22:42:22 ID: uYo9d71Y

この提督身勝手過ぎない?
大事な人相手に酷い態度取っても嫌いになれるわけないじゃん
これで提督死んだら普通は後悔と苦痛しか残んないよ

他のssにもクズ提督ってたまに出るけどここのは別ベクトルのクズ提督だわ

6: SS好きの名無しさん 2018-08-25 00:22:32 ID: -j1LTyE4

なにこれ?
ほんまアホらしぃ…


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