2018-12-06 23:02:51 更新

概要

「×ucking!:ブチ○してやる!」戦争脅威により英国の大自然は変化した。風吹く丘陵地で悠久の時を過ごしてきた少女はなぜ海に出たのか。山羊と羊に囲まれ育ったイングランドファーマーの娘、ジャーヴィスの記憶。


前書き

↓注意事項をご確認ください。

・シロートの拙い台本形式、一人称、三人称、複数視点、お話ごとに変わって読者の混乱を招くと思われます。

・相変わらずの誤字脱字。気を付けますが、前以て。

・誤字脱字修正の更新多し。

・顔文字や絵文字の使用を不愉快に思う方。

・本編の更新に間が空くのを嫌う方。

・ウォースパイトさんやジャーヴィスのキャラ崩壊

相変わらずやりたい放題なので穏やかな海のように広い心をお持ちの方のみお進みください。


【1ワ●:羊飼いのジャーヴィス 2】



ろー「ガク((゚□゚;))ブル」


北方提督「知り合いか。まあ、イギリスって確か長年ドイツと同盟組んでたし、イギリス周りの海戦にはユーボート隊がよく参加してたんだっけ?」


ろー「は、はい。ドイツにいた新人さんの頃です」


ろー「あのジャーヴィスは、よく勝手にアトミラルに許可をもらわずに実弾訓練を始めて、ゆーぼーとの皆に爆雷を投下してきたんですって……」


ろー「ゆーはよくターゲットにされてました。その頃のゆーは泣いてばかりいて、いつもウォースパイトさんが、助けてくれましたって……!」


ろー「やんちゃ、いじめっこ、あの近くの人はみんな、あの超問題児のジャーヴィスを知ってます!」


ろー「農牧民の産まれで小さな頃から羊さんと育ってます。軍に入る前までろくにフォークやナイフの扱い方も知らず、プディングをいつも素手で食べていたとかいう野生児です……! 宣教師に、ヤギの頭を剥いで血抜きしただけの臭いバフォメットを被せたり、ホルマリン漬けのカエルを引き出しに入れたり」


ろー「学校にやってきた牧師や新任さんの教師をどれだけ早く学校から追い出せるか、だなんて遊びをしていたというボス」


ろー「『羊飼いのジャーヴィス』!」


ろー「疲れて港に帰って来たゆーを待ち伏せして、奇襲して、爆雷を上手く当てたら、『あっはははは!』って楽しそうに笑いますって……!」


ろー「ガク((゚□゚;))ブル」


北方提督「イギリスのイメージひっくり返るレベルでやんちゃ過ぎる!」


提督「そっか。イギリス海軍にもジャーヴィスさんの情報を大至急、開示申請を出しているのですが、あの頃、海外艦の皆さんにも繋がりあってもおかしくないですね……」


北方提督「ビスマルク、ポーラ、リシュリュー、グラーフさん、プリンツさんかな」


提督「その時なら照月さんも関わっていたかも」



2



ろー「……」


ビスマルク「あー……羊飼いのジャーヴィス。よくゆーを虐めてたやつね」


ビスマルク「私はレーベとマックスから聞いたわ。一度だけど、あのジャーヴィスをシメに行ったことあるわよ。確かにやんちゃだったわね。うっとうしいガキだったから模擬弾をぶちこんで大破させてやったわ」


プリンツ「その後、ジャーヴィスさんがガチ泣きしたことでアークさんとウォースさんがキレてビスマルクお姉様とバトルしました。上から大層に怒られましたよね……」


提督「ビスマルクさんとかウォースパイトさんとかアークさんレベルの重要戦力な人達がそれやると、普通に国際問題に発展しかねないんですが(震声」


ビスマルク「……そういえばあなた、喋ってなかったっけ?」


プリンツ「ああ、はい。私はジャーヴィスちゃんにFuMO25レーダーちょうだい!ってせがまれました。ジャーヴィスちゃんにはつけられないよー、っていったんですが……そしたら」


プリンツ「『じゃあ壊すー!』って」


北方提督「クソガキじゃないか!」


提督「グラーフさんはなにか知っておりますか?」


グラーフ「悪いが、ウォースとアークとは親交があったが、駆逐艦とは関わりを個人的にあまり持たなかった。ジャーヴィスの話は知っていたからイギリスの駆逐はあまり好きではなかったんだ。私は子供のあやしなぞ苦手だからな」


プリンツ「超無愛想のせいで向かい合うだけで赤ちゃん泣かせますしね」


グラーフ「ほっとけ。しばくぞ」


プリンツ「やーん、怖いですー」


グラーフ「……だが、羊飼いのジャーヴィスの話は二人からよく聞いた。アークのほうがケリーの教育担当で、ウォースのほうがジャーヴィスの教育担当だった、と」


グラーフ「……ジャーヴィスにも一度だけ会ったことはあるが」


グラーフ「開口一番に人体実験の話をせがんできた」


提督「恐ろしい……」


北方提督「だけど、妙に運動神経よかったのと、元気過ぎる性格なのも分かったね。フィリピンへ派遣されてからちょっとは大人しくなったのかな。メモリーの中ではいい子だったよね」


提督「ですね。ウォースパイトさんの教育が実ったのかなー……」


提督「照月さんはなにか知ってますか。あなたは正式にドイツに駐屯する前に、一回、海外には派遣されましたよね。その時の戦果もあってドイツはあなたに熱い支援要請をした、と聞いておりますけども」


照月「ええ、まあ、ジャーヴィスちゃんは日本、というか、アジアに興味があったみたいで、よく私に話を聞きにきてました。でも、そうですね、皆さんのいう通りすっごくやんちゃでした」


照月「確か、早朝に私が港から出た時」


照月「『レッツ! ライドオンターイム!』」


ろー「( ゚д゚)ビクッ」


照月「って、疲れて帰って来てたゆーぼーとに攻撃してましたね……『きゃああああ!』って悲鳴が遠くまでよく聞こえましたし(遠い目」


ろー「それ、ろーちゃんですって……!」


ろー「ガク((゚□゚;))ブル」


照月「あのゆーぼーとがまさかろーちゃんだったなんて……!」


北方提督「リシュリューは?」


リシュリュー「……はあ、リシュリューもよくEU連合で活動していたからイギリス海軍との繋がりはあるけど、ジャーヴィスちゃんに関してはほとんどドイツの皆さんと同じで、やんちゃ、なイメージね」


リシュリュー「他だと、マスタードの味が強いパンプディングが嫌いって聞いたことあるくらい」


リシュリュー「ポーラ、あなたは?」


ポーラ「逸話なら一つ。この鎮守府に1408号室の映画あったじゃないですかあ?」


提督「ああ、ありましたね」


ポーラ「同じくスティーブン・キングの原作に『ゴールデンボーイ』っていうのがあってですね、ナチス時代の軍人だったおじいさんを見つけた少年が通報するって脅しをかけて、ナチスの軍服を着させて行進させたりするんですけど、それを真似、して……」


ポーラ「レーベ君、に……」


ポーラ「……(メソラシ」


提督・北方提督「」


ろー「羊飼いのジャーヴィスなら、や、やりかねませんって……!」


グラーフ「……ウォースのほうは本当に苦労していたそうだぞ」


提督「超がつくくらいお転婆な子ってことは分かりました……」


リシュリュー「でもあの子、兵士としてかなり優秀な子だったみたいだけどね。爆雷と機銃はかなりの腕前で戦果もあげてたはずよ。ほら、エンガノ岬沖海戦、准将のところの瑞鶴ちゃん大破して深海鶴棲姫が産まれた戦い。あれでも駆逐艦じゃ時雨の次に戦果をあげてたはず」


照月「そうだね。海外派遣希望してたのって、世界で一番強くなってイギリスに帰って来たいからだって。東の太平洋、まあ、日本とアメリカには名だたる人達がたくさんいるから」


北方提督「へえ、そういえばガングートは?」


リシュリュー「呼べないでしょ、さすがに……」


北方提督「北方でそれを気にしてるのガングートだけだよね。ま、あまりしたくない話ではあるか」


ろー「ろーは知りませんでした……」


北方提督「あ、そういえば誰をやっちゃったのかまでは教えなかったっけ」


提督「ガングートさんとは前にサシで話したので大丈夫ですよ」


ビスマルク「……ジャーヴィスってけっこう前に黒海で死んだんでしょ? 今さらなんで?」


提督「単純に雨村ご一行と深い関わりがあったからですよ。こういうところ、意外と馬鹿にならない情報ですので。例えば本官さんと明石君秋月さんが血筋だったとか、此方さんの初恋の人だったとか。そういう情報、動機に繋がりかねないので知っておいて損はないゆえです」


提督「……反転鏡面彼岸界、および深海鶴棲姫の想力工作補助施設の情報が足りなさすぎるのもありますが、とにかく少しでも情報を集めたいんです」


提督「とのことで此方さん」


此方「……はい」


提督「追加ですみませんが、海の傷痕時代に戦死したジャーヴィスの想を回収しましたよね」


此方「もう10年以上も前だよ。あの子、重でも廃でもないし、とっくに私の中に消えてる。まあ、でも、記憶は見たから、私の中から抽出は出来ると思うけども、あまり期待しないで欲しいなあ」


此方「最終決戦時のは、みんなまだ私の中にあるけども。ほら准将は戦後復興妖精に頼んで、鎮守府(闇)の兵士の想を抜き出したじゃない? あんな風には上手く行かないよ?」


提督「構わないのでなんとか」


此方「ではお話しましょうか。それじゃ30分後にシアターに来てねー」


コツコツ


グラーフ「准将、少しいいか。周りを代表して質問だ」


提督「どうぞ」


グラーフ「……今回の一件、私も知ったのはつい昨日のことだ。大事なのは分かるんだが、別に負けやしないのだろう。こちらの戦力と向こうの戦力、負けはないのではないか」


グラーフ「例え電、わるさめ、神風が不覚を取ろうとも、全戦力投入で終わる。じゃなければ鎮守府にいた皆のゆるい雰囲気の説明がつかん。勝った後のことを悩んでいるのだろうか?」


提督「仰る通り、叩き潰すだけなら難易度は劇的に下がります」


提督「今回、勝利条件は『生ある限り戦う相手を降伏させること』なんです。納得してもらうために、トビー&ズズムさんもこちら側で暮らせるような案を提示しましたし、雨村さんにも形はどうあれ、生を保証する、といいましたが……」


提督「ワガママというか、理想を狙いに来ているというか」


提督「こちらも上に雨村レオンの想力工作補助施設に目をつけています。あの空間形成能力、上手く加工して使えば第2の海の傷痕を誕生させない仕組みとして維持できます」


提督「とのことなので、今回の騒ぎ、上層部もやり方は任せてくれているとのこともありまして」


提督「とにかく、相手の心を折る必要があるんです。幸い、重~廃連中なので、そのために一度くらい殺しますが、海の傷痕戦とは別の意味で難しい……」


ビスマルク「政治利用のせいで複雑なのは分かった」


リシュリュー・ポーラ「……じゃあ、准将」


リシュリュー「罪と罰で考えるのやめたらどうです?」


ポーラ「あ、ポーラも同じこといおうとしましたあ……」


ビスマルク「そうね。その通りよ。ちょっと准将にしては考え方がまとも過ぎない?」


提督「……といいますと」


ビスマルク「悪いことしたから罰を受けるべきって正しいけど、子供っぽいのよ。上が雨村レオンを必要としているのなら、あいつが何人殺していようが、公に罰を与える必要はないってこと」


ポーラ「抜け道があるんじゃないですかあ」


提督「提督勢の会議で出はしたんですけども」


提督「雨村レオンを別人にする。これは要は雨村レオンを全身整形しようってことです。理屈つけて強引に雨村レオンが死んだことに工作することは可能。後はこちらの皆さんが墓まで持っていけば、雨村レオン君は人間として生きていけますよ……って案ですね」


ビスマルク「納得はしなさそうね」


北方提督「私は反対したよ」


提督「同じく」


北方提督「それはあいつが『改心』して初めて提示できる条件だ。あいつ、いつ反旗を翻すか分からないんだよ。だから、当初の予定は『雨村レオンを妖精化して機能を制限、私達に逆らえないようにする』んだ。そのほうが都合はいい。上もこれを選んでる」


ポーラ「あー……なるほどですぅ」


ビスマルク「……人権は?」


提督「妖精にはありません。かといっても機械の扱いではないです。犬や猫と同じ」


プリンツ「だから、戦いは避けられないと。そして勝利条件がややこしい、と……」


ろー「……そもそも、本当にズズムちゃん達に勝てるんです?」


提督「やってみなきゃ分からないって次元の話なら、勝てるとは断言できません。反転鏡面彼岸界のギミックも不透明ですからね」


提督「今は自分の部下から先見部隊を派遣しております。ブレイド界の嵐さんや戦後復興妖精がおともしているので、危険はないはず……」


ピポパポ


リシュリュー「お電話失礼、これで全員に聞こえるわね。はい准将、繋げたわ」


提督「はい?」


リシュリュー「ジャーヴィスの教育担当してたウォースとは私も仲良かったから」


リシュリュー「淑女だけど待たせると怖いわよ?」


提督「」



3



提督「ええと、ハロー……いや、日本語か。その……ウォースパイトさんですか、確か6年前に解体して、ええとその、私、対深海棲艦日本海軍の青山開扉と申します。階級は准将です」


ウォースパイト《初めまして、アジアの大英雄さん♪》


提督「……初めまして。本当に突然で重ねて申し訳ありませんが、最終世代ジャーヴィスについて教えてもらえないかな、と。そちらの海軍から資料は頂けたのですが」


ウォースパイト《ああ、私、もう解体していますので、ちょっと適性データとは性格違います。淑女とかそういうのとは少し違うかも?》


グビグビ


ウォースパイト《……ぷはあっ》


北方提督「え? お酒ラッパ飲みしてない? 本当にウォースパイトさんなのこれ。番号間違って酔っぱらいのおっさんにかけたんじゃないの?」


リシュリュー「そんなはずないわ」


ウォースパイト《リシュリューから聞いてます。そうですね。資料からは分からないことというと、ジャーヴィスの詳細な建造理由でしょうか》


提督「ええ、資料には『身体能力の強化に魅力を感じて、両親や学校の先生から艦兵士としての職を強く押されて、私も興味を持ったから』とありますが……」


ウォースパイト《建造理由の詳細はですね、ジャーヴィスの地域は本当に血気盛んな子供達の集まりでした》


ウォースパイト《山羊と真正面から頭突きをし合う子がいたとか》


ビスマルク「山羊とか羊の頭突きの怖さ知ってるわよね罰ゲームというかデスゲームでしょそれ。紳士淑女が聞いて呆れるんだけど英国どうなってんの(震声」


ウォースパイト《シャラップ。フッドさん呼ぶわよ》


ビスマルク「ケンカ売ってるわね? ちょっと遠くにいるからって調子に乗ってるんじゃないわよ?」


ろー「ビスマルクさーん、大人の対応してくださいって」


ウォースパイト《フラワー級のコルベットちゃんも呼びます》


ろー「( ゚д゚)ビクッ」


北方提督「天敵は止めてあげて……」


ウォースパイト《ジョークよ。子供のやんちゃはどこでも珍しいことじゃないし》


ウォースパイト《それでええと》


提督「頭突き……」


ウォースパイト《ああ、ジャーヴィス、この子は羊飼いの家の生まれで》


ウォースパイト《ある日、ジャーヴィスのファームの有力家、アーリス家というのですが、そのやんちゃ少年グループのボス、ジャック君というのですが》


ウォースパイト《ジャック君の家に山羊を売りました。愛玩として売るのは初めてだったようで、それ関連でジャーヴィスがお世話の仕方や習性を教えて、しばらくジャック君の家に通ってその山羊の様子を見に行く役目を担ったそうですよ》


ウォースパイト《ジャック君に不幸が訪れます。町のゴロツキに命じられてその山羊と頭突きを強制されて怪我をしました……》


ビスマルク「いわんこっちゃない……」


ウォースパイト《ゴロツキが『ジャーヴィスの山羊が人間を傷つけた』って言いふらされたくなければ、村外れの教会までお金持ってこいと。ジャーヴィスは牧場の皆に迷惑かかる上、父とアーリス家から渡された使命を果たさなければ羊飼いとして失望されてしまう。そんな理由でジャーヴィスは呼び出しに応じます》


ウォースパイト《実はジャーヴィスったらその山羊の値段交渉を担当していて、アーリス家から言い渡された値段で売りさばくことに成功し、その差分をもらえたそうなんです。ゴロツキはジャーヴィスに臨時収入があったのを知っていて、それをたかろうとしたみたいですね》


ウォースパイト《まあ、人を殺した山羊がなんたらかんたらですが、ジャーヴィスの地域や町の決まりが細かく関係しているのは確かです。人を殺した山羊は悪魔の使いだから殺処分が認められていたようで、ジャーヴィスはそれを阻止して丸く収めたかったみたいです》


ウォースパイト《ジャーヴィスのお金は母が管理してなくて、けっこうな額でしたから、持っていけなかったんです。持っていったのは手持ちの少額です。ゴロツキはじゃあ差分を払え、といいました》


ウォースパイト《ジャーヴィスはジャック君の家でゴロツキにこういっていたみたいなんです。『タイジュがいたらお前なんかやっつけてくれるのに。山羊と頭突きして勝った女性なんだから』って》


ウォースパイト《タイジュ、というのはよく分かりません。ジャーヴィスも話してくれませんでしたし》


ウォースパイト《ゴロツキが『嘘じゃないなら勝ってみろよ。勝ったら差分の支払いにしてやる』といい、ジャーヴィスは山羊と頭突きをすることになりました》


ウォースパイト《ジャーヴィスは山羊の頭突きを受けて、顔が潰れまして》


ウォースパイト《病院に運ばれました。ジャーヴィスは担架の上で大層泣き叫んでいたそうです》


ポーラ「さぞ痛かったでしょうねえ……可哀想に……」


北方提督「英国の天使代表艦といっても過言ではないジャーヴィスちゃんだからね」


グラーフ「建造前だしな。そのようなイジメを受けて幼い彼女の心も傷ついたであろうことは容易に想像できる」


照月「痛いよ痛いよう! って、泣き叫んでたんですね……」


プリンツ「想像するだけで涙が……」



















ウォースパイト《『f×cking!!:ブチ◯してやる!!』って》









一同「ん"ん"っ?(阿武隈並感」



ウォースパイト《一命は取り留めまして、まあ、病院での適性検査を受けてジャーヴィスに55%の適性が出たので医療として建造致しました》


ウォースパイト《それが惨劇の幕開けでした》


ウォースパイト《身体能力が向上したジャーヴィスは病院を抜け出し、その山羊を捕まえてのゴロツキの家にカチコミです》


ウォースパイト《そのゴロツキの前で再度、羊と頭突きあいをしてジャーヴィスはその山羊の頭部をかち割って殺しました》


ウォースパイト《その後、ジャーヴィスはゴロツキに頭突きをかまします》


ウォースパイト《ゴロツキの顔は潰れたマフィンみたいになってしまいました……》


ウォースパイト《そのゴロツキの両親にもジャーヴィスは危害を加えて》


提督「あの、殺した訳ではないですよね? なんか惨殺してもおかしくないテンションなんですけども……」


提督「まあ、一家惨殺事件なんか起こしてなかったか。さすがに揉み消せる案件じゃないですし」


ウォースパイト《貴重な適性者です。あなたの国と同じくイングランドも海に囲まれておりますし、深海棲艦の脅威が大きいのですよ。ですので、揉み消したんです》


提督「嘘でしょ……家族を全員、殺したんですか?」


ウォースパイト《……ジャーヴィスは全員をやっつけた後、バリカンでゴロツキ一家の髪を全剃りして逃亡しました》


ウォースパイト《一家惨髪事件です》


提督「ちょっとリシュリューさん、この人ちょくちょく愉快なんですけど本当にあのウォースパイトさんなんですよね……?」


リシュリュー「間違いないわ……多分」


提督「多分か……」


ウォースパイト《我が名はQueen Elizabeth class Battleship Warspite! Admiral、よろしく、頼むわね》


ウォースパイト《あー……寒いわ。ここ、ネズミもいますし》


グビグビ


提督「酒飲んでますよね……玉座艤装に優雅に座るあなたをイメージさせてくださいよ。どこかの路地のゴミの上に座って飲んでいる薄汚いイメージしか湧かないんですけども……」


ウォースパイト《失礼ですね。まあ、その後、ジャーヴィスを捕まえましてアカデミー送りにしました》


ウォースパイト《私はアトミラルから教育係に指名されましたが、大変でした。こちらの軍のアカデミーは日曜日の一回だけです。その他は中学校を卒業するまでは通常の学校に通います》


ウォースパイト《ジャーヴィスは学校のボスとして君臨し、やりたい放題です。ここらはグラーフさんに話したから聞けば早いですね。本当に苦労しました》


ウォースパイト《怒ると四つ足で『メエエエエエ!』って鳴きながら、ロケットのような頭突きをしてきますし、フォークやナイフも使わず、モノを手掴みで食べますし》


ウォースパイト《山羊捕まえて乗り物代わりにして走り回りますし……》


ウォースパイト《羊飼いな彼女ですが、学校ではやんちゃな子供達のボスです》


ウォースパイト《とにかく問題児でしたね。でも、艦兵士として『一番強い兵士』になりたいという夢と、海外駐屯の志がありましたので、そこからなんとか教育に繋げておりました》


ウォースパイト《なんとか淑女、といえるところまでは成長しましたが、大体可愛い時猫被ってます。上層部の人達には天使の笑顔を浮かべて、ちゃんとスカートの端をつまんで挨拶しますからね。私にはしたことないのに……》


ウォースパイト《後はかっこいい男性の前でもそうですね。イギリスにいた時のアトミラルは嫌いだったみたいで一度もdarlingとは呼びませんでしたね》


ウォースパイト《本人がアトミラルにいってました。『かっこいい運命の男の子に出会った時、その子にだけそう呼ぶから、お前なんかはそんな風に呼ばない』って。アトミラル、陰でこっそり泣いてましたね……》


北方提督「それは悲しい……」


提督「……」


ウォースパイト《そうしてフィリピンに行きましたね。ズイカクさん……深海鶴棲姫が産まれるきっかけになったレイテ沖海海で、海峡夜棲姫の作戦に参加したかと》


ウォースパイト《この程度、ですね》


提督「ありがとうございました」


リシュリュー「あ、そうだ。あなた明後日から予定ある?」


ウォースパイト《ないですが、why?》


リシュリュー「軍のみんなで旅行行くのだけれど、来ないかしらってね」


ウォースパイト《良ければご一緒させてくださいまし》


ポーラ「今イギリスですか~?」


ウォースパイト《事情があって日本に来てます!》


北方提督「だよね。国内回線だもんね……」


グラーフ「奇遇だな……」


ツーツー……


北方提督「面白い人だね……」


ろー「ですって!」




提督「……、……」



4



ウォースパイト《……なんです?》


提督「すみません。ちらっとジャーヴィスさんの資料を見たところ対艦演習の記録」


提督「100戦100敗100勝ってなんです?」


提督「……ジャーヴィスさんとどのような訓練をしておりましたか。そしてなにか秀でた素質はありましたか。その最強の兵士になるという目的に対しての姿勢はどのようなものでしたでしょうか」


ウォースパイト《訓練はそちらと変わりませんが、性格が性格だったので、私も手荒くやりました。私達の衣装、ホワイトが強いですが、あれが真っ赤に染まりきることも珍しくなかったので。昔、最初期の英国海軍のやり方に近いですし、教えはそのまま》


提督「『敵前逃亡が恥となるのは、数ある戦い方の1つも行わなかった場合だ。臆病への敗北は国家の誇りを汚すからである』でしたか。こちらでいうと『死ぬくらいなら逃げろ。無理なら戦え。そして、ただでは死ぬな』の意味合いですね?》


ウォースパイト《yes、適性データだと優雅な私達だと誤解を受けておりますが、極限まで追い詰められた私達はあなた達、日の丸の精神に近いモノを取り入れました》


提督「……こちらの印象だと、神風特攻、ですか?」


ウォースパイト《語弊があります……まあ、日本の諺でいうと、船を沈め釜を破る、の精神ですかね》


ウォースパイト《北方の伝説のシマカゼ、レイテを終えた後ですね。彼女が太平洋横断の旅で編み出した対深海棲艦陣形を取り入れるためです》


ウォースパイト《ジャーヴィスは的当てや遠征……精度、航行術、知識。そういった素質能力値は平凡を出ません。旗艦性能は高いですが、これは今置いておきまして》


ウォースパイト《『敵対』ですね。この要素が混じると、常人の域を凌駕します。先ほど話した事件でお察しかとは思いますが、彼女は誰かに勝つということに対しての執着が異常でした》


提督「……敵対、といいますと」


ウォースパイト《2パターンありますね。まず対人、艦兵士同士の演習です。私はジャーヴィスを大破損傷、模擬弾ですけど、彼女を力で何度も叩き潰しました。力で思い知らせるのが、あの子のお転婆の療法かと思いましたし》


ウォースパイト《ですが……》


ウォースパイト《あのジャーヴィスは相手に勝つか、自身が死ぬまで止めようとしません。舌が千切れようが、眼球飛び出そうが、頭かち割れて、身体が千切れようが、動けるなら襲いかかってきますので……》


提督「……大した兵士ですね」


ウォースパイト《ええ。なので、気を失うパターンが大きかったですね。でも、目覚めたら私に襲いかかってくるんですよ》


ウォースパイト《拳銃、毒、刃物、艤装以外の手段も殺すような勢いで。本当にそれが恐ろしかったです。不意討ち騙し討ち、実際、そういったことも判定に含めると》


ウォースパイト《私はあの子に一度も勝ったことはありません。こちらが負けましたっていうと終わりますから、とりあえずそれで収めます》


ウォースパイト《准将が閲覧したその記録は、公式的なものではないはずですけど、まあ、その通り最後には私やアーク、その他の子も含めて参ったをします》


ウォースパイト「日本語だとニュアンスが難しいですが」


ウォースパイト「執念家? 身内に対してとにかく勝とうとするんです」


ウォースパイト《そして深海棲艦に対しては違いますね。なぜか実戦だと老獪かつ飄々というか、死ぬくらいなら逃げ出します。ジャーヴィスの適性者の一面、旗艦の性能はありました。彼女は『栄光を手にするためには生き残ることが重要』と》


提督「矛盾してません? 対艦兵士だと死ぬ損傷でも襲いかかってくるんですよね」


ウォースパイト《ええ、本人いわく『最強の艦兵士になるのが夢』だから、です》


ウォースパイト《『最高の艦兵士』になったあなたの初期官さんはなぜ最高なのかは世界を救ったこと、深海棲艦を最も多く殲滅し、最も多くの人間を救ったからです》


提督「深海棲艦相手ではなく、艦兵士と戦って誰にも負けない。つまり身内の単艦演習で最強になるのが目標だったから、ですか》


ウォースパイト《ええ、あの子、幼少の頃から羊の群れに混じって育ったせいか、言動には獣性、そして考え方に動物的なところがありまして》


ウォースパイト《あの子にとっては『群れの中で一番になることの価値が私達が思う以上に大きい』みたいなんです。その群れは、人間、です》


提督「なるほどー……」


提督(……だから、あの子はトビー&ズズムの情報を黙ったのかな。あの子にとって深海棲艦の存在は必要。いなくなったら艤装なんか身につけることもなくなるし、最強だとかなんとか夢は叶わなくなるし)


提督(イングランドの羊と山羊と育った女の子が、ジャーヴィスの適性か。彼女は深海棲艦の見方が独創的なのかな……)


提督(超自己中そう)


提督「天使の笑みを浮かべて、腹の底で中指立ててる感じですね。ウォースパイトさんの苦労がよく分かりました」


ウォースパイト《分かってくれるのですか……》


提督「ええ、心から……」


提督(勝利に対する執着や猫かぶり、ぷらずまさんと重なる面も多い。タイプトランスではないぷらずまさんみたいな印象だし……)


提督(見抜けなかった。雨村レオンが容姿に優れた男子だからなのか、ジャーヴィスさん猫かぶってたっぽいなー……)


提督「すみません。最後に。雨村レオンという名前に聞き覚えは?」


ウォースパイト《……》


ウォースパイト《ありません》


提督「……ではフィリピンから帰ってきた後になにか男の子に関してのことは?」


ウォースパイト《ああ、ありましたね。深くは聞きませんでしたが、とても優しくてかっこいい男の子と会った、と。『日本に行くからー!』って、珍しく自主的に淑女の作法を聞いてきたので》


ウォースパイト《あの獣人族の子にも思春期がやっと来てくれたんだって》


ウォースパイト《私、アークの胸の中で一晩中泣きましたから……》


提督「そうですか……」


ウォースパイト《あの子は獰猛で勇敢な兵士でした。適性率55%ですが、たまにジャーヴィスの適性者らしい無邪気で可愛らしい一面も見せておりましたよ》


提督「分かりました。ありがとうございました。後日に」


ウォースパイト《もう鎮守府(闇)の近くです!》


提督「そうですか……それでは自分が門まで」


ウォースパイト《ミス・コンゴウを発見しました!》


提督「了解。では鎮守府の案内を、といいたいのですが、よろしければ金剛さんとともにシアター施設に来てくださいませんか。そこでジャーヴィスさんについてのお囃がありますので」


提督「恐らくあなたも知らないジャーヴィスさんの情報があるはずです」


ウォースパイト《……分かりました》



…………


…………



提督(……そういえば)


提督(金剛さんの祖母が、イングランドのファーマーの家に嫁いでいらしたような気が)


パラパラ


提督(性がアーリスじゃないか……!)


提督(タイジュ。大寿、か。なるほど)


提督(山羊と頭突きをして勝った)


提督「金剛さんなら大いにあり得る。あのBLT(バーニングラブタックル)の瞬発力はイギリスの丘陵地で育まれたのかな……!」


提督(……だとしたら時系列的に金剛さんが高校三年生……夏休みにイギリスに行ったのかな。金剛さんは高校卒業と同時に金剛として建造されたから……)


提督「建造前から超人かよ(震声」



【2ワ●:羊飼いのジャーヴィス 3】



金剛「イエース、目と鼻の先に鎮守府デース。霧島、榛名と比叡のことよろしくネー。明後日には鎮守府に帰ってこなきゃダメですからネー?」


霧島《ええ、お任せください》


金剛(ふう……)


「……鎮守府(闇)の金剛さん、ですよね?」


金剛「金剛デース!(条件反射」


金剛「どなたデース? なんか見覚えが……」


「グッドナイト♪」


金剛「あっ! もしかしてウォースパイト!?」


ウォースパイト「初めまして」


金剛「英国人のあなたが私の鎮守府に何か用デスカー?」


ウォースパイト「1週間前から日本に滞在はしていました。先ほどオープンザドア様からお電話を頂けたので」


金剛「テートクのお客人デスカ! 呼んできマース! ワンモーメントプリーズ!」


ウォースパイト「暇なので伝説の鎮守府の観光に来たついでにジャパンの可愛い駆逐の皆さんを抱き締めに来たのデース!」


金剛「……県警デスカー? 酔っぱらいの女が駆逐艦にセクハラを……」


金剛「『憲兵いないからって長門さんのことで警察に電話かけてくるの止めてください』? 違いマース!」


ウォースパイト「ストオップ! 我が名はQueen Elizabeth class Battleship Warspite! Admiral、よろしく、頼むわね」キリッ


金剛「ハーイ、分かりました。テートクがウェルカムって」


ウォースパイト「なんだ……警察にかけたのではなかったのですね」ホッ


コツコツ


響「金剛さん、夜中に騒いでどうしたんだい?」


金剛「あ、響」


響「……うん? もしかしてウォースパイトさんかな?」


ウォースパイト「イエス。響さんですね。初めまして」


響「ああ、初めまして。ウォースパイトさん、ウォースパイトさんか……」


ウォースパイト「?」


響「お願いがあるんだ」


ウォースパイト「お願い、ですか?」


響「暁という姉がいるんだけど、会ってあげてくれないかい?」


ウォースパイト「アカツキ……ああ、暁型の一番艦、レディー! が口癖の子ですね。もちろん構いませんよ」


響「うん。暁は英国淑女にとても興味があって、ウォースパイトさんのことを大層なレディーとして見ている。英国淑女の心得を聞きたがっているんだ」


金剛「英国淑女ならミーがいるネー!」


響「金剛さんはなんだろう」


響「……」


響「そうだね、プロテインだね」


金剛「!?」



2



ウォースパイト「グラーフ、あなた無愛想だけど、なにか機嫌が悪くって?」


グラーフ「私はこういう顔だ」


ウォースパイト「……そうだったわね。でも、リシュリューも」


リシュリュー「ちょっとジャーヴィスちゃんのことで色々と」


ウォースパイト「……それにしても驚きましたね。まさか鎮守府の中にシアターがあるだなんて……でもスクリーンの前に座布団と机、椅子……」


ウォースパイト「落語とかで使う、めくり、というやつですか?」


グラーフ「そうだな。お題が読めるか?」


ウォースパイト「『想題:羊飼いのジャーヴィス』」


金剛「……私もよく分かりマセーン」


ビスマルク「雨村レオンのメモリーにジャーヴィスが出てきたのよ。そのジャーヴィスが気になるからって准将が色々と調べているの」


ウォースパイト「その雨村という方は、ジャーヴィスのことをよく知っているんですか?」


ビスマルク「雨村レオンは今から私達が捕まえに行くテロリストね」


ウォースパイト「!?」


金剛「テートクはジャーヴィスのメモリーをどこで?」


リシュリュー「戦死した故人の想を記憶している人がいるわよね?」


金剛「あー……なるほどデース。私は色々とお話聞きたいので、電ちゃんの隣に行ってきマース」


コツコツ


ウォースパイト「今どういう状況です?」


電「もうすぐ開演なので静かにするのです」クルッ


ウォースパイト「Oh! 最高艦兵士のイナズマさん!」


電「あなた……ウォースパイトさんなのです? 今は静かにしてください。あ、電気が消えましたし、お座りください」


タタタ


暁「ウォースパイトさんだあ!」キラキラ


ウォースパイト「暁さん! 可愛いでちゅねー!」


スリスリ


暁「!?」


暁「えっと、あっ、ねえプリンツさん。この人、本当にウォースパイトさんなの……?」


プリンツ「もちろん。ウォースパイトさん、なんとか暁ちゃんの英国淑女のイメージを壊さない方向でお願いできませんか?」


ウォースパイト「イメージ?」


グラーフ「暁が英国に持つロイヤル感、適性データ100%のウォースパイト感だ」


ウォースパイト「分かりました」


ウォースパイト「我が名はQueen Elizabeth class Battleship Warspite! 暁、よろしく頼むわね」キリッ


暁「ウォースパイトさんだあ!」キラキラ


暁「これがイギリスのレディー、エレガントだわ!」


ビスマルク「……こほん」


ビスマルク「Guten Tag.私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。よく覚えておくのよ」キリマルク


暁「ドイツのレディーはクールだわ!」キラキラ


リシュリュー「Je suis vraiment ravie de vous rencontrer amiral.戦艦Richelieu、参ります」キリッ


暁「フランスのレディーはお洒落ね!」キラキラ


ポーラ「Buon Giornov~。ザラ級重巡の三番艦~、ポーラです~。何にでも挑戦したいお年頃。頑張ります~」


暁「イタリアレディー酒臭っ……」


ポーラ「唯一のイタリア艦として乗ってみましたが、イタリアさんやローマさんの代わりがポーラに務まらないことは知ってました」


プリンツ「各国を代表するレディーの集まりですね!」


暁「国境を越えたレディーの集まりね!」


ウォースパイト「ジャパ↑ァン↓を代表するレディーは暁ね」


暁「わ、私が日本代表のレディー?」


暁「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね」キリッ


グラーフ・ポーラ・プリンツ「ヒューヒュー!」


電「だからさっきからEU勢はうるせーのですよ!? 暁お姉ちゃんもアメリカ人みたいに映画館で騒ぐんじゃねーのです!」


暁「電もこっち来なさい! 暁型の一員としてレディー国際連合軍に加入するのよ!」


電「死ぬほど興味ないのです!」


グラーフ「すまない。私からいっておくから追い出さないでくれ」


コツコツ


提督「……セーフ。まだ始まっていませんね!」


提督「ウォースパイトさんいらっしゃい。先ほどはありがとうございました」


ウォースパイト「いえいえ、とにかく話は後にしたほうが良さそうですね。ラクーゴが始まるのでしょう?」


提督「ええ、まあ、ジャーヴィスさんのメモリー(語り)が始まります」


ウォースパイト「私がよく知らないアジアでのジャーヴィスのお話ですか?」


提督「う、うーん……どうでしょう……」


金剛「テートクウ! こっちに来てくだサーイ!」


電「なのです!」


提督「了解です」


提督「というか電さん、訓練に行ったのでは?」


電「ええ、まあ。艤装を用意してもらって装備したところ、目的に対して訓練が数分で終わったのです。なんというか、さすがもう一人の自分ですね」


提督「あー……まあ、馴染んだのならなによりです」


ウォースパイト「o(*゚∀゚*)oワクワク」


コツコツ


ウォースパイト「あ、着物姿の可愛い女の子が出てきました。キュート! あんな小さな子がラクーゴ家!」


ウォースパイト「ジャパンで有名な子役者ですか?」


グラーフ「世界的に有名だ。海の傷痕だぞ」


ウォースパイト「はい? スカー・オブ・シー? ぱ、パードゥン?」














「よくお集まりくださりました。今宵の枕はなし」



「海ノ傷痕亭此方」


「『御題目:羊飼いのジャーヴィス』」


「お噺させて頂きます」








ウォースパイト「What's happening!?」




【3ワ●:想題:羊飼いのジャーヴィス】



一番高い丘に向かって羊がのぼっていく。

西にある遠くの岩肌にはパズルのピースの一つみたいに山羊がくぼみにポツポツと佇んでいる。薄い草原の緑と、森林地帯の濃い緑、無骨に舗装された土の道をぞろぞろと羊の群れが行進中だ。


この自然景観の中、私の一族は200年、農牧民をしている。ここは社会とは隔絶されたエンド&スタートのない場所で、川のように毎日がゆるやかに過ぎて、春夏秋冬、間違い探しすら難しい代り映えのない時間が流れてゆく。


ここの人達はなにも求めない。ただ変わらない今を送ることが全てなのだ。価値観の違いというのかな。外を知らなかった私達は、完成されているから、なにも求めない。


私のひいおじいちゃんの時代の話だけどね。


深海棲艦、欧州棲姫が出現してから、その脅威にさらされ、イングランドは船や飛行機を出すのが難しくなり、自然とみんなは国内にある娯楽を求めるようになった。私の地域に変化が訪れる。近代化から取り残されたこの変わらない町は、多くの人々を虜にする自然や文化の魅力が溢れていたのだ。


欧州棲姫がどこかに行ってしまった後も、それが尾を引いて、海を越えてくる観光客が年々増してゆく。毎日のように新しい顔を見るようになると、あの小山の向こうにレンガの町が出来た。父が「経済」とか言い出したのはこの頃だ。


お金がたくさん必要になってゆくのだ。


観光業の経済効果とやらが年間、5億ポンド(90億円)になった頃、人工物が多くなって、地価が高騰化し、多くの農牧民が住処を追われてしまった。私達だけの力ではこの時代の大波を阻止できない。人工物の波が押し寄せ、私達はまるでそれぞれが一匹の羊のようにあるべき姿を誘導されて、居場所を狭くされ、四方八方を町で塞がれてしまった。檻の中に閉じ込められるように保存されてしまった。


幸い、私の一族は環境変化に素早く対応し、観光業を副業とすることで、この居場所で羊を飼い続けている。


他の羊飼いも新しい顔が増えている。日本でいうと脱サラだね。ただし、羊飼い専業では余裕のある生活は難しいから、お金をたくさん持っている人がこの土地で家畜を飼う。他には町のほうで食品業や繊維業をしているという会社が、ブランドを立ち上げるため原材料を手作りしよう、といった理由だった。


「ジョン、アウェーイ!」


朝の放牧に向けてのお手伝いが終わると、足元で座っている牧羊犬のジョンに指示を出した。放羊している一匹の雄の追い立てを命じて、近くまで適当に群れを連れてくる。投げ捨てておいたバッグのひもを肩にかけて、身体が大きい羊、そしてまだ角処理がされていない羊の背に乗っかった。ジョンは父が認めるほど、優秀は牧羊犬だ。小さな動作で羊をコントロールしてみせる。私はまたがった羊の上でバッグのチャックを開けて、ランチのチーズとレタスのサンドイッチが入っているか、確認する。


目的地はゆるやかな緩急の続く平原を進んだ先にある学校だ。


2


ひび割れた校舎の前で羊から飛び降りる。ジョンに命令して、羊を草原のほうへとともに帰ってもらう。バスからクラスメイト達が下りてくる。馬鹿な犬よりもカン高い声を散らしている集団が、一人の女の子に寄ってたかって、からかっていた。


最上級生のジャックだ。この学校という群れの中のボスである。ジャックの父親は対深海棲艦海軍の少々階級のアトミラルであり、父のことを自慢しては気に入ったクラスメイトを家に招待して勲章や賞状を見せびらかしている。最近、欧州棲姫を沈めた戦果も挙げたことでジャックはご機嫌な様子だ。


ジャック「レイチェル、本物の勲章を観たことがあるか」


授業が終わると、家に招待された。


「いいえ、映画や写真でしか観たことはないわ」


私はそんな物とは無縁の世界で生きている。見たいと思ったこともない。軍人が国を守っていることには感謝もしているが、国にある程度の損害はあっても、恵みがあった。海に囲まれたイングランドは深海棲艦の脅威の影響が大きく、物資の輸入が制限されることもたびたびあり、そのため、国内生産が重視され、家畜飼いの価値が高騰するからだ。


「興味ないの」


そもそも、ジャックは好きじゃなかった。私の席はジャックの後ろで自由時間になって私が席を離れると、そこに取り巻きが座って、マジックで落書きをしたり、カッター・ナイフで掘ったりする。ノートで文字を書く時、よくインクが伸びてしまう。


ジャックは血気盛ん。棒があれば騎士の真似事するし、牧師なんかが来た日には処理したバフォメット(変異で生まれた角が渦巻いたヤギ)の頭部を血抜きして、教壇の上に置いたり、ホルマリン漬けしたカエルを机の引き出しにしまっておいたり。どれだけ短時間で教師や宣教師を追い出すか、だなんて遊びをしているくらいのやつだ。


「美味しいケーキと紅茶もありますよ」


教室に入ってきたソフィがいう。ジャックのガールフレンドで、私達の共同管理している牧場の娘だった。私がオレンジのサロペットの作業着で鍬で草を掃いているのを、よく思っていない。はしたない。この言葉、聞き飽きた。私は気になんてしなかった。私はひいおじいちゃんの話を聞いて、生まれ育ったあの居場所が好きで、羊と過ごすことはもっと大好きだからね。確かに、泥や土だらけの私とは対照的に、ソフィは白いスカートを履いて、客人が来ると、貴族の娘のように、スカートの橋をつまんで、あいさつをする。アトミラルの息子であるジャックと付き合ってから更に鼻にかかる。


「いい。今日は帰ってからお父さんのお手伝いもあるからね、誘ってくれてありがとう。でも私はチーズのほうが好きだし、紅茶より牛乳のほうが好きなんだ」


牛乳をごくごくと飲む。


ソフィ「レイチェル、はしたないわ」の子が上品にしゃべりかけてくる。「まさかあなた女のくせに農場を継ぐ気なのかしら。あんな下級階級のお仕事、将来がないでしょうに」


いらっとした。


「はしたないのはマフィン食べ過ぎなあなたよ。そのお召し物のウエスト、キツそうね、おほほ」と私は舌を出した。父娘そろってお菓子を食べ過ぎ。寝る前にこいつのお父さんにキスされたらきっと髭がチクチク肌に刺さってパン粕がつくという二重苦でしょうね。


ソフィ「ひどいわ、レイチェル」


ジャックが、眉を潜めた。


こちらをじいっと見つめていた男の教師が、そそくさと出ていく。あの男の教師は一度、ジャックの悪戯を止めようとして、ジャックとその取り巻きにぼこぼこにされた。その時にお気に入りのオリヴァーピープルの眼鏡を踏み壊されて泣いてしまったのだ。ジャックも大層に怒られたのだが、その教師はそれからジャックの悪行を無視するようになった。


なによ、一度やられたくらいで情けないったらありゃしないわ。


バッグを奪われて、窓から放り投げられた、チャックを開けたままだったので、教科書や着替えがグラウンドに散乱した。私はジャックの鼻っ面に頭突きをかました。ちょうどクラスにジャックの取り巻きが入ってきた。私は窓枠に足をかけて二階から飛び降りる。


グラウンドのバッグを広い、中に教科書を押し込んで逃げる。ジャックとその仲間の野人達から逃げる。まるで蠅の王の映画にでも飛び込んだような気分だ。門を飛び出た時に、通行人にぶつかって、尻もちをついた。ああ、これは捕まって服が破かれてしまう。


髪をつかまれて、顔がお空を向く。足を払われて、また尻もちをついた。なんとかして逃げないと。明日からは夏の休みでしばらくジャック達とも会わなくなる。だけど、さすがに最上級生の男の子達の力には抗えなかった。その時だった。


「ストップ。男の子がよってたかって女の子を……」


ばったばったと男の子達が吹き飛んでいく。ぶつかってしまったお姉さんが、やったのだ。なにをしているかもよく分からなかった。私のひざ裏と腰に手を回された。お姉さんに抱えられた。私を抱えているのに、お姉さんはジョンのように足が速い。


「助けてくれてありがとう。あなたはどなたですか?」


「日本の高校生、名前は大寿です!」


アジア人、なのだろう。風で長い髪は、なめらかでさらさらとしていて美しい。端正な顔だちで、目がくりくりとしている。そして元気な雰囲気で、笑顔がとても似合う。


「私はレイチェル。レイチェル・エッガー! こっちは農牧区画だけど、もしかしてあなた私達の地域の観光客かしら。それならお礼に私が案内してあげる!」


ジャック達はもう追ってきていない。大寿は歩き始めた。私も腕の中から降りる。


帰り道で大寿のことを教えてもらった。高校三年生の夏休み、大きな休みをもらえたので祖母に会いに日本からイギリスに来たという。祖母の苗字はアーリス。その家は家畜飼育の共同権利を持つ農牧民たちのリーダーの家だった。そういえば、アーリスのおじさんの妻はアジア人だった。


「日本人の女性って強いんですね!」


大寿「大和撫子ですから」


「ヤマト、ナデシコ?」


大寿「強く凛々しくたくましい。そんな素敵な日本人女性のことを大和撫子というのです。私は英国淑女でもありますけどね」


日本で知っていることといえば、前にテレビで見たサムライくらいだ。サッカーのワールドカップでイギリスと戦って、その時にサムライブルーという単語が紹介された。イギリスでいう騎士みたいなものかな、という印象だ。ただサムライを支える日本の女性は、こんな風に強くてたくましくて綺麗なんだ。私は大寿のいる日本にとても興味が湧いた。


変化を望まず生きてきた農牧民の私に、革命が起きた日だった。






*客席


此方「喋り疲れました。一旦、休憩ください」


ウォースパイト「ジャーヴィス、そんなにやんちゃじゃないですね」


グラーフ「十分やんちゃだが」


ウォースパイト「私が知ってるジャーヴィスならば、ジャックとかいう子と取り巻き、少なくとも彼女は命と引き換えにしてでもヴァルハラ送りにしているはずです」


ビスマルク「こわっ……」


ウォースパイト「……」


リシュリュー「怖い顔してどうしたの?」


ウォースパイト「ジャーヴィスをそういう風にした原因があるはずです。その原因がもしも特定の人間ならば」


ウォースパイト「決闘モノですよ!」


暁「あ、あれ、やっぱりこの人」


ウォースパイト「我が名はQueen Elizabeth class Battleship Warspite! 暁、よろしく頼むわね」キリッ


暁「響ぃ~、やっぱりアークロイヤルさんのほうが……」


ポーラ「疑われてますよ~、もうそれ通用しないみたいです~」


響「ウォースパイトさん、カップだよ。紅茶だ」


ウォースパイト「ありがとう。頂くわ(淑女的に飲む」チラッ


暁「このロイヤル感溢れる一枚絵、やっぱりウォースパイトさんね!」キラキラ



…………


…………


金剛「ねえテートク、ウォースパイトのやつどうかしたのカナー……?」


提督「ジャーヴィスさんは大層なお転婆でして、演習して負けた時はその後に毒殺や刺殺、様々な手段を使って相手を殺そうとしたそうです。ウォースパイトさんはそんな半獣人のジャーヴィスさんの教育係でありまして」


電「ほう。ぷらずま時代ならお友達として鎮守府に迎え入れてやったのです」


提督「あなたかジャーヴィスさんのどちらかが死ぬまで続く殺し合いになりそうなんですけど……」


金剛「ジャーヴィス……」


提督「ウォースパイトさんは、何回も半殺しの目に合ってとても苦労なされたようですよ」


提督「天使の笑顔の裏で狼と蛇を飼い慣らしております。タイプトランスではないぷらずまさんといえば分かりやすいですかね……」


金剛「……」


電「どうかしたのです?」





















電「小金丸大寿さん♪」










金剛「ちがっ、金剛デース!!」



提督「本当、色々なところでご縁があるんですねえ……」



3



大寿の祖母は山羊を飼っている。アーリス家は羊と山羊の両方を飼っている。習性が違うこの二つの動物を自由に飼えるのはリーダーの家の特権だ。羊だけでも羊飼いは精一杯いなので、それは同時にアーリス家が優秀なファーマーであることを示している。


大寿「ケンカが強くなりたい?」


私は大寿にそういった。休みが明けてまたジャックに因縁をつけられた時、大寿みたいにかっこよくばたばたとやっつけたいのだ。その時、発情期を迎えているのか、山羊が荒々しく走ってこっちに向かってきた。頭突きをしてきそうな、勢いだ。


羊や山羊の頭突きは怖い。羊や山羊飼いにとって、頭突きで吹き飛ばされて怪我をするのは誰もが通る道、といわれるほどによくあることだ。発情期や雄同士の争いのそばにいる時、気性が荒くなる。山羊が大寿に向かって突進してきた。


「大寿、危ない!」


山羊が猛スピードで通り過ぎてゆく。山羊の足の速さといったら世界で金メダル取れちゃうくらいだ。大寿はひらり、とかわした。すごい、カップのコーヒーが零れてすらいない余裕の動きだった。山羊はターンして止まる。助走をして、だんだんと速度をあげてまた突進しようとしていた。大寿は地面にカップを置いた。


大寿「ふん!」


真正面から受け止めた!


「嘘でしょ!」


あろうことか、頭突きで受け止めたのだ。角を握って勢いを少し殺していたとはいえ、そんな恐ろしい真似は誰もしない。下手したら、首の骨が折れたり、頭が割れて死んでしまう。山羊が「メエエエエ!」と鳴いて頭を押し込んでいる。「メエエエ!」と大寿は負けじと泣いた。山羊が後ずさり、頭を振って、止まる。


頭の押し付け合いで大寿が勝った。


大寿「大和撫子ならこのくらいは朝飯前です!」


「すごい……!」


日本人女性、なんて素敵なんだろう。山羊が今度は私を狙ってきた。腰を落としてその突進を受け止める。「あう!」吹き飛ばされて尻餅をついた。こんなの、とても受け止めきれないよ。でも、と起き上がる。闘志をもやす私に山羊は勝利を認めなかったのか、また頭突きをかまそうとしてくる。何十回、やっても倒れてしまう。


「うう、大寿みたいに勝てないわ……」


土塗れになって、頬にすり傷が出来たところで、大寿がその山羊を追い払った。


大寿「大和撫子の道は険しいですからね。でも、ナイスガッツ。ご褒美に日本食のお弁当をあげましょう」と大寿がバッグから弁当箱を取り出した。そこに入っていたのは三角形の食べ物だ。「握り飯、といいます。中には梅が入っています。あ、その前に」


ペットボトルを取り出して、その中の水で手を洗う。ナプキンで手を噴いて、その握り飯を手づかみで口に運んだ。同じ真似をして、握り飯を食べる。「っ!」おえっと吐いてしまった。とても刺激的な味がした。「酸っぱい。舌が……!」


大寿「梅の握り飯くらい食べれないと大和撫子にはなれないですよ?」


がんばって食べた。もう一つ、食べる。今度は鼻がつーんとした。


大寿「アッハッハ! わさびを引きましたか!」


「わ、さ……び?」


さっきの梅干しより、きつかった。


大寿「わさびくらい例え山盛りでもぺろりと平らげるのが大和撫子です」


食べきるのに30分もかかってしまった。その後、大樹は山例の崖地帯に行って、クライミングを始めた。すごい。山羊よりも早くすいすいとのぼってゆく。同じく真似をした。のぼるのは得意なほうだけど、大寿のように早くはなかった。途中のくぼみで休む。


大寿から訓練をつけてもらった。このメニューをこなせば、ケンカに勝てるくらい強くなれる、といった。「本当?」と聞いたら、「誓います」といったので信じることにした。その日から私のトレーニングが始まった。大きなプディングもナイフで切らずにてづかみで食べて、シチューはスプーンですくわず、皿に口をつけて飲むようにした。大和撫子。


山羊「メエエエ」


「メエエエエエエエエ!」


山羊にはより大きな声で鳴いて威嚇するようにした。突進されても、受け止めきれずに転んでしまうけど、大寿はいったのだ。体で負けても、ハートで負けてはならない。何度も、心が折れなければ地べたに這いつくばってばかりでも、最期には必ず勝てる、と。




* 客席





ウォースパイト「ファ――×ク!!!」





ウォースパイト「アアッ!!!」




ウォースパイト「大寿ッ! ファ×キンッッ!!!」



グラーフ「ウォースパイト……」


ウォースパイト「あいつのせいでジャーヴィスはあんな獣人族になってしまったのね!」


リシュリュー「暁、日本代表のレディーとして大和撫子というものを教えてあげて」


暁「大和撫子はあんなんじゃないわよっ! あの大寿って人、どう見ても化物じゃない! 日本のレディーがあんな風に山羊と頭突きして勝って当然とか、ワサビ山盛り平らげるとか、男の子達をのすとか!」


暁「ああいう人がよその国で母国のダメなイメージつけて帰ってくるのね!」


暁「ぷんすか!」


…………


…………


電「お前、日本では英国淑女ぶって英国では大和撫子ぶってたのです? 採点してやりますが、どっちも不合格なのですよ?」


金剛「私もびっくりデース! だ、だってレイチェルがジャーヴィスになるの、私が帰った後のはず! あの夏休み以降、レイチェルとも兵士のジャーヴィスとも会ったことなかったですカラ!」


金剛「そもそも私自体が建造前デース! まだ榛名とも出会ってないネ!」


電「あなた普通の人間の時からあんな超人だったのです!?」


金剛「ええ、はい……」


金剛「レイチェルとのことはよく覚えていマース。私の記憶が正しければこの後はジャックの父親の登場デース!」



3


アーリス家の山羊を一匹売ってくれ、とジャックが父親を連れてやってきた。山羊の売り出しを行う市場が開催されるのはまだ一つ先の季節だ。夏の前の季節は羊や山羊を放牧させて、それぞれの子供を育てさせるために秋がやってくるまで羊を飼い放す。その間に売りに出す羊や山羊を選定し、価格を吟味する。秋に向けての準備の季節だ。


明日また来てくれ、とアーリス家の主人はいった。アーリス家の主人としてはちと時期が早いが、特別に売ってもいい、という結論だった。家主のひいおじいちゃんが、アジアに出兵した時、原住民に襲われた時に助けてもらったのが、ジャックの父親の先祖だという。要はジャックの父親のファンだったのだ。しかし、祖母が反対した。愛玩動物として欲しがったからだ。通常、家畜を一般家庭のペットとして売る習慣がなく、ジャックが欲しがったのは、一番頭が悪いけど、体が大きい山羊だった。私と大寿に体当たりしてきた山羊である。他の山羊とは違って悪魔のような角を生やしていた。


カミソリの刃。大寿と私はあの山羊をそう呼んでいる。大寿があの山羊に勝てたら、絶対にジャック達にも負けなくなる、といったからだ。あの山羊を倒すことで私の運命は変わる。カミソリの刃は英語で運命の分かれ目、という意味もあるのだ。


アーリス家の妻は主人に抗議した。扱い方を知らない一般人にあの山羊を売るのはやめたほうがいい、といった。なにか問題が起きたら、アーリス家の評判が下がる。高名なお家柄なら尚更だと。対して、夫はいう。我々の交友関係は狭い。レイチェルの家なんか上手く観光客とやって、たくさんのお得意を増やしている。アトミラルと良い関係を築くことはこの牧場にとってもいいことになるんだ、と。日本人の妻が保守的でファーマーらしい考えを持ち、古い地域住民の夫のほうは挑戦的で、らしくなかった。


「レイチェルはまだ家畜を売ったことがないね。あの山羊の値段交渉をしてみないか?」


確かになかった。私のお父さんは直接的な取引において私には手を出させない。他の羊飼いの家の子は私と同じ歳でも、市場にやってきた家畜と値段交渉をする役目を与えられている。予想よりも高く売って褒められたことを自慢していた。私はそれが羨ましかった。


なぜ私なのかも大体、分かった。


父の印象のせいだろう。環境の変化を上手く取り入れて、財産を築いた狡猾な人だと見る人も少なくないのだ。実際、私も父のことをそう思っている。景気がよくなり、外界の波が押し寄せた時、周りの家はこぞって息子や娘に綺麗な服を着せた。貴族階級の娘のような教育をし始めたのだけれど、私だけは違った。


お父さん、私もああいう服を着なきゃダメなの?


レイチェル、お前は普段通りにいろ。普段を強く意識してな。臭ければ臭いほど良い。


とだけいった。


それが正解だった。この土地にやってくる人は、幻想的な風景や農牧民の暮らしを観に来ている。貴族『もどき』を観に来たわけではないのだ。私達の歴史の美しさは貴族階級に支配されていた市民としての価値にある。特に詩人や作家は綺麗な服の娘よりも、泥に塗れた私に多く接触してきた。写真家に頼まれ、たくさん写真も撮られた。そういう鋭さを父は持っていて、羊飼いとしてよりも商人としての腕をアーリス家にも認められている。父が持つ才能があると私を信じて、成長の機会をくれようという計らいだ。


400ポンドで売ってくれ。


なんですって!


どれだけ賢くて大きい山羊でも今年の相場は精々が300ポンドを上回らない程だ。私の家の最上位の羊の値段なんか300ポンドに設定されている。しかもこれは客からの値切りを想定されて、実際は250ポンドに見積もった値段だ。


つまり、アーリス家の主人は私にこういったのだ。


ぼったくってこい。


最後にこうもいった。


400ポンド以上で売ったらその取り分はレイチェルのお小遣いだよ。


4


どうしよう。その日は父にその事を話した。すると、父はご機嫌に鼻歌混じりにいった、「良かったじゃないか。しかし、アーリスのジイサンは家畜の扱いが上手くても、商売が下手なもんだ。家畜を飼うといっている素人に時間を与えるもんじゃあない。準備の出来ていない相手にはその時にばったくるのが一番なんだ」


今更どうしようもないアドバイスだ。


バカね。相手はジャックの父親なのよ。


ぼったくったことがバレたら私はきっとジャックにひどいことされてしまうわ。だからといって相場で売ってしまえば、アーリス家から能力のない娘だと思われて羊飼いとしての未来が暗くなってしまう。夢と良心の呵責が、戦う。


そして寝る前に父が私に毛布をかぶせて、キスしようとしたけど、毛布をあげて、阻止したわ。口にオニオンスープのオニオンがついていたからね。父はいった。


「レイチェルは天使のようで、世界で一番可愛いよ」


明かりを消そうとした母がいった。


「確か昨日まで世界で一番可愛いのは私じゃなかったかしら」


「もちろんだよ。どっちも満点なんだ」


父が取り繕うようにいって、母が笑う。ろうそくの明かりが吹き消され、真っ暗闇になる。部屋のフレンチドアを閉める時に、父がこういった。


「でもね、レイチェル、可愛いだけじゃ羊飼いは務まらない。天使の笑みの裏で狼と蛇を飼い慣らすんだ。それがエッガー家の羊飼いに求められるものさ」


なかなか寝付けなかった。母が寝ているか確認に来た時に、寝られないから、歌を歌ってよ、とねだった。母はいつもの歌を歌った。スコットランドの羊飼いの歌は私の大好きな歌だった。古い歌ではない。むしろ町の男の子が歌うような流行りのバラードだ。羊飼いの家に生まれたスコットランドの少年が、家を継がずにギターを手に取った。



I want friends from all over the world.This sky is small,it feel stiff.Don't cry .Sorry,l'm lied.Cry when you want to.But Never give up.If you never give up the goal where you are going will be come out for sure.Scared,but more excited about it.l want to change the world with my friends.The day will come when you feel your courege to live have been rewarded.l'm take this voice and use it,let's do new world.Cry when you want to.But Never give up.Nevere,never,never,never,never,give up.




私のフェイバリットソング。


曲名はブレイブリー。バンドの名前はシェパーズだ。


語源のシェパードは羊飼いという意味。そこに仲間達の意味を込めて、作った言葉が、シェパーズだ。羊飼い達という意味が込められているらしい。


私にはこの曲に込められた気持ち がとってもよく分かる。目の前にある自然が全てで、そのほかはなにも必要なかった。彼はそんな私達、イギリスの農牧民の価値観を脱したかったのだ。広大な幻想の土地に近代化が迫ってきて、とっても広く感じていた自然が、狭く感じるようにもなった。そうして色々な人と出会って、様々な世界を観て回りたくなったのだろう。私は大寿と出会って良い意味で理解できた。


明日、がんばろう。良い日になりますように。


5


太陽が水平線の向こうに顔を出す直前に起きた。顔を洗って、パジャマからいつものシャツの上からオレンジのサロペットを着て、草原に出る。羊飼いの朝は早く、この頃になるとどこかの頭の悪い牧羊犬の鳴き声が聞こえ始める。私はエッガー家が大事にしている角笛を吹いた。ボオオオ、と雄羊のバケモノみたいな音が鳴って羊が反応し、同時に愛犬のジョンが草原を駆け回って羊を追い立てる。ジョンは本当に優秀な牧羊犬だ。


私は、父から与えられた猟銃を手に取った。


ウインダミアの湖のほうにジョンは走っていく。湖水のほうに集まっているようで、丘の向こうからぞろぞろと羊が寄ってくる。羊の群れを見て、彼らの状態を見る。最近、手回しの報告版に家畜に悪戯をされるという事件が起きたことが記してあった。町からやってきた犬だろう。よくあることだ。


ジョンが止まった。一頭の雌羊の前で止まる。駆け寄って確かめると、足から血を出している。怪我で起き上がれないようだった。


「噛まれたわね……」


スコットランドのほうでは、ネシ湖の近くの荒涼地帯で馬を殺した犯人が捕まったというニュースを一昨日に観たばかりだった。犯人はいっていた。人を殺す度胸がなかったから、馬を狙ったんだ。本当はあの屋敷の使用人を殺したかった、と。そいつはアガサ・クリスティーの小説に出てくるマープル夫人の言葉を引用してこういった。殺人に興味のない人間なんていない。意味が分からない。私は全く興味ない。ルイス・キャロルのアリスシリーズもそうだけど、小説家の人の頭の中ってどうなっているのかしら。


ジョンが岩陰に向かって吠えた。ジョンが威嚇するように吠えるのは、珍しい。すると、岩陰の隙間から犬が飛び出てきた。乾燥した風に乗って血の匂いがした。あの犬が私の家の羊を襲ったのね。私は小型の猟銃を構えた。


「ジョン、そのままあの犬を留めておいてね。また岩陰に行かれたら狙えないわ」


私が父から与えてもらった仕事の一つだった。羊を襲う犬は撃て。これは農家に様々な施行が成された中、国から与えてもらった正当な権利だった。家畜を襲う犬は、その家畜の主が殺処分してもいい。羊飼いにとっての羊は神からのギフトなのだ。


待ってくれ!


制止の声が聞こえた。遠くから体格の良い男の人が駆け寄ってくる。「あ!」私は思わず指を差した。その男性が、ジャックの父親だったからだ。近くまで来ると、犬が男性のもとへ走っていく。私がその犬が羊を傷つけた、といったら、申し訳ない、と頭を下げて平謝りだった。どうやらリードを離してしまった拍子に走り去ってしまったらしい。


「羊を傷つけた時点で、殺処分対象です」


勘弁してくれ、とお願いされた。まあ、お父さんには私がミスして、羊が岩陰のくぼみに堕ちてしまった、ということにしよう。そのためには傷口を見せないことだ。幸い、傷は浅い。包帯を巻かなきゃね、傷口を父が観たら確実に犬の仕業だと見抜く。


治療を終えると、家に犬を戻してきたジャックの父親が、私のところへやってくる。


「ところでミス・エッガー、あの山羊はいくらで売ってくれそうなんだい?」


そういえば羊の怪我の件でそのことを忘れていた。昨日、眠る前までたくさん考えた。父の言葉を思い出した。天使の笑みの裏で、狼と蛇を飼い慣らせ。それがエッガー家の羊飼いに必要な素質だと。その意味を考えた。狡猾に騙せ、ということだろう。


「本当は400、ポンド、ですが……」ぼったくることへの良心の呵責を殺して、神の言葉も無視する。「私の羊を傷つけたことの口止め料を含めて、500ポンド」


いった。いってやったわ。もちろん、私は天使の笑みを浮かべているわ。


「分かったよ」ジャックの父親は右の手のひらを広げた。「500だね?」


やっぱり素人だ。普通なら、あり得ない、とヒステリックに怒り狂うだろう。私をバカにしているのかってね。その半分の値段にしても、どこかにケチをつけて、値切りを始めるのがふつうだ。親戚の親戚の誕生日なの、と訳の分からない理屈を持ち出す人もいる。やっぱり軍人の少将ともなると、値切りなんてしないのかしら。


「そういえばジャックが君に悪戯をしてしまったと聞いた」


「そうね。あいつ、私のバッグを投げ捨てたの」


「ごめんね。昨日に叱っておいた。二度とするなってね」


「本当かしら」


ジャックの父親は左手の指も広げた。


「ごめんよ。そのことのお詫びも兼ねて、1000ポンドで買わせてもらえないかな」


私はあふれ出る喜びを発散するため、勝利の角笛を力いっぱいに吹き鳴らした。


羊たちが反応してしまった。向こうの丘から人が走ってくる。「おはようございまーす!」大寿だ。こんな朝早くから元気が良いわね。この報告をしなきゃね。私は大寿に「カミソリの刃が1000ポンドで売れたわ!」と叫んで伝える。


大寿「すごいじゃないですか! さすがレイチェル!」あの山羊と同じように、いえそれ以上の勢いで突進してくる。



大寿「バーニングラアアアアブ!」










金剛「ストップ此方ちゃああああああん!」


此方「うん? 分かりました。後半に入る前に一旦休憩入りますか」


金剛「そうじゃないデース!」













ウォースパイト「ファ――×ク!」





ウォースパイト「コンゴオオオオオ!!」



金剛「落ち着いてくだサーイ! なんで私にキレるネー! ミーは全く知りまセーン!」


ウォースパイト「大寿あなたシラ切ってんじゃないわよ! バーニングラーブ! って突進する民族なんか世界中探しても金剛族以外にいないだろうが!」


金剛「っく、バレたのなら仕方ないデース! 私はこの時すでに金剛としてのスカウトを高校卒業と同時に受けようとしたいたのデース!」


金剛「こうなったらどっちが本物の淑女なのかナックルで思い知らせてやりマース!」


ウォースパイト「上等だわ!」


プリンツ「ウォースパイトさん、落ち着いてください!」


プリンツ「クールダウン! 暁ちゃんが見てます!」


暁「……」ジーッ


ウォースパイト「……はあ」


プリンツ「ダンケダンケ!」


ウォースパイト「ファイアファイア!」


バキッ


プリンツ「きゃああああああ!」


ビスマルク「淑女同盟、ウォースパイトを止めるわよ!」


リシュリュー・ポーラ・暁「イエス・マム!」


ウォースパイト「く、四人がかりではさすがに」


ドオン!


一同「……え」


グラーフ「今、私の頭上を砲弾が通過したような気がするが、私は戦争後遺症なのだろうか?」


プリンツ「少なくとも気のせいではないですね。グラーフさんの上の席に誰か座っていたら、きっと死んでいたかと思います……!」


コツコツ


電「テメーらが騒ぐから余計な修理費がかさむ羽目になったじゃないですか?」


電「電の顔も三度までなのです……」


ビスマルク「ちょっと、なんで艤装……!」


ポーラ「ま、まだ三度目ですよね~……?」


電「はい。なので私は許しますが」


ぷらずま「●ワ●」ナノデス♪


電「こいつが許すかな?」


響「絶対許さないだろうね……」


リシュリュー「ちょ、トランスタイプ!」


響「君は明石えもん界の電亜種じゃないか」


暁「電、艤装に目玉つけて発声機能つけないでくれる!? 怖すぎよ!」


電「ウォースパイトさん」


ウォースパイト「電? これが電ちゃん、なのですか? リアリ?」


ぷらずま「次騒ぐなら、決めておくといいのです。10センチから41センチまで。テメーの股間にブチ込んで子宮に直で放ってやりますから」


ウォースパイト「」


金剛「それにウォースパイト! 確かに私はレイチェルに淑女となるためにたくましさを教えましたが、この後の此方ちゃんの話を聞いて欲しいデース!」


金剛「むしろレイチェルに姉のような温かい躾をしたネ!」


此方「はーい、そろそろ次に行きますよー」




6



ところが完璧に良い話ではなかった。二週間の『お試しの時間』をくれないか、とお願いしてきたのだ。それが何なのか分からなくて聞いたところ、山羊を飼うのは初めてだから、もしも手に負えなかった場合、返したいとのことだ。


もちろん世話の仕方は教えるつもりだったけども、返品は厳しいな。その山羊が新しい環境でどんな変化があるか分からない以上、私達にとっては余計な仕事が増えるだけだ。ただ彼は「500ポンドは払う。気に入ったら残りの半分を払う」といった。


お試しで売るだなんて習慣はなく、斬新なアイデアではあった。前金、という発想は私達になくて、他の地域でもやっているところはなかったはずだ。この面白いアイデアを気に入ったアーリス家は彼に山羊を売ることにした。


そして彼の山羊の様子を見に行ってくれないか、とアーリス家の主人と、父から頼まれた。「イヤ」私は断った。ジャックの家に行くだなんてとんでもないわよ。断ったけれど「私も行きますよ」と大寿が申し出た。大寿同行の許可が下りたので、大寿がいるなら、と私は渋々折れた。


7


大寿「レイチェル、よそへ行く時は淑女の振る舞いを心がけること」


ジャックの家に山羊を連れて行く時、大寿から念を押された。今朝に父からもいわれたことだった。父は取引がまだ完全に終わっていない相手だから、という意味合いだったが、大寿は「作法がなっていないと、レイチェル自身も、パパとママも悲しい思いをする」といのことだ。父とは違う意味だ。なんだか大寿のほうが優しくて素敵ね。


大寿「ワオ、大きい家ですね」


横に伸びたお家ね。その家の倍くらいの庭があって、造りも凝っている。フラワー級の駆逐艦がすっぽり収まるくらいに大きい家だってジャックが自慢していたのを聞いたことがあるわね。


「来た!」


ジャックが目を輝かせて庭から飛び出してきた。


私はジャックの父親に、山羊の飼い方をまとめたノートを渡して、口頭でも説明をした。


まず頭突きについて。山羊は羊よりもずっと雄々しく、敵と認識した相手をいつまでも覚えている。だから敵とみなされてしまうと、なつかせることは難しい。


次に群れのリーダーであると、認識させないこと。リーダーだと思うと、その群れを守ろうと相手を選ばず頭突きをする。でも、ここの辺りは指示した躾の仕方を守ればクリアできることだ。


問題はこの家で飼っている犬だった。


ケンカは絶対にする。どちらかの立場が決まる時まで、荒々しい闘争が起きることもあるだろう。これが山羊ではなく、大人しい羊なら、のんびりとなされるがままで、すぐに犬のほうがリーダーとなるが、山羊の場合はそうじゃない。家畜として育った羊も山羊も犬には逆らわないよう調教がされているけど、それを新環境で守る保証はない。


犬に山羊をイジメさせないことも伝えておいた。ストレスを感じると動かなくなる。私がジョンに追わせた山羊も羊がストレスで疲れ果てて、その場に座り込み、動かなくなってしまったことがある。こうなった時、飼い犬を追い払うこと。そうなった羊や山羊は耳や鼻を食い千切られようが、なされるがままになる。大人しく死を待つだけだ。


そして発情期について。ザーネン種のポピュラーな家畜山羊種ではあるものの、この子は元気が良くて優秀な雄なので発情期には多い時は100頭の雌山羊と交配する。その時に気性が荒くなることをアーリス家の日誌の情報から伝えた。


「最初は鎖に繋いだほうがいいのかな」という答えにはノーだ。


アーリス家が山羊を売った理由としてはここの家の庭が広くて、柵がしっかりしていることも理由の一つだ。豊かな丘陵で育った山羊なので、窮屈はストレスを感じる。むしろ最初は放し飼いを勧める。ただ山羊は犬みたいにトイレを覚えない。歩きながら糞尿をまき散らすのだ。本能に従っている部分だということを伝えた。


意外にペットとして飼うのは大変なのだ。皆はあの景色を綺麗だ憧れるけど、半日も歩いていれば絶対に糞がブーツの底につくところよ。


最後に病気の兆候だ。

一言でいえば、ぐったりしていて元気がない。専門的な病気を伝えても分からないだろうと思い、表面上のことを簡潔に伝えておいた。病気を疑ったら、私達のところに連れていくか、町で有名な獣医を住所を教えておいた。餌は干し草でいい。そこまで聞くと、想定外に大変だと悟ったのか、苦笑いを浮かべた。ただジャックが大層にその山羊を気に入った様子で、やっぱりいい、なんて返事は出てこなかった。


私がジャックに初めて感謝した日ね。


家の中でお茶菓子と紅茶を振る舞ってもらった。ジャックの父親はファーマーの暮らしを根ほり葉ほり聞いてきた。春夏秋冬の一連の私の暮らしを説明した。


興味を持っていたのは競りと今の季節の子羊を育てる放牧だった。放牧している夏の季節の羊たちは丘陵地帯を北に超えて、山麗地帯で季節を過ごす。私は去年に起きたキツネによる羊の襲撃、そのキツネとジョンの追走劇を放すと、ジャックの父親は顔をほころばせて喜んだ。ちなみにジョンの負けだ。キツネは辺りに糞尿を撒き散らし、ジョンの鼻から逃げ切ってみせたのだ。今年にまた現れたら今度は逃がさない。


「私も海軍人の話を聞きたいわ。湖ならともかく、海なんて見ないもの」


面白い話なんてないよ、とジョンの父親はいった。


私がせがむと、サイドボードの棚からアルバムを取り出した。その中に写っていたのは綺麗なドレスに身を包んだ女性だった。私の艦隊の主力の戦力だ、といった。ステファニーと呼んだほうが、ウォースバイト、ジネヴラと呼んだのが、アークロイヤルという船の名を与えられたという。


欧州棲姫も見せてもらったのだけど、あんまり怖くないわね。深海棲艦って思ったよりも人間じゃないの。海の悪魔っていわれるくらいだから、もっと異形だと思ったわ。


「怖いかい?」


「いいえ。なぜ争うのかしら?」切実な疑問だったが、しまった、と思った。こんな常識外れのことマナー違反になるんじゃないかしら。深海棲艦は人類共通の敵だものね。


「ほう。ミス・エッガーは、なんで争う必要がないと思うんだい」


ジャックの父親はそういった。


「羊と山羊が、私達と深海棲艦みたいに思えます」


羊と山羊は品種によってはとってもよく似ているし、草食動物としての本能は基本的に同じだ。もちろん時にはケンカをする。ほとんど山羊が一方的に羊にケンカを売るんだけどね。私がもっと小さな頃、気性の荒くて頭突きばかりする雄山羊と雄羊を対峙させてみたことがある。すると、その二匹はケンカをしなかった。父に聞いたら、「そういうこともある。山羊と羊はケンカの仕方が違うからね。ほら、両方戸惑ってうろうろしている」って。


「習性の違いで、衝突しているに過ぎないんじゃないのかしら。ほら、見て。この欧州棲姫は、こんなにも私達と似ているところがあるわ。きっと争うっていうことが、間違いなのよ。話せば理解することができるんじゃない?」


「話し合いが出来ない低い知能だからね。我々を見つけたら殺しにくるハンターだ」


「それぞれの群れは別に過ごして生きられるはずよ。どこかの誰かの深海棲艦飼いが、悪いやつに違いないわ。そいつがその低い知能の彼らを飼い慣らして指示しているのよ」


ジャックが取り巻きに命令して人をイジメるみたいにね。


「ところで大寿は日本だったわよね。イングランドと同じく島国よね?」


「ミス大寿は日本人だったのか」ジャックの父親は眉を持ちあげた。「素晴らしい国に産まれたね」


「ええ、日本は良き国……ですね」


「我々、対深海棲艦海軍であの国を特別視しないやつはいない。打ち明けると、アジアに良い印象はないのだけど、日本だけは別だ。最初期の北方鎮守府の伝説がある」


「島風と天津風ですか。私もよく知っている訳ではないのですが……」


「人類を救った勇者だ。入渠、高速修復材、高速建造材、その発見は間違いなく人類を救ったといっても過言ではなく、それだけにとどまらずシマカゼとジタロウが編み出した対深海棲艦の陣形、軍艦の基本陣形を艦娘用に落とし込んだ戦術は画期的だ。日本の偉業は海を越えて伝わっているよ。あれがなければ我々はもっと被害を受けていた」


ジャックの父は世界地図を持ち出して、日本の北海道という場所を指さした。海路を指でなぞってマリアナの海域、ハワイ島、そしてレイテの海までを指でなぞって、シマカゼの伝説を語り始めた。深海棲艦なんてどうでもよかったけれど、私と同じくらいの歳の子がこんな風に世界を横断していることに、シェパーズの歌詞を重ねた。


この子は世界を変えて、お友達をたくさん作ったのでしょうね。


海の話をひとしきり、聞いたものの、私にとっての深海棲艦は『どうでも良い存在』にしかならなかった。羊飼いとして生まれ育った私にとって、遠くの海の他の群れなんて気に留める必要もなかったのだ。私の民族の歴史からして、同じ群れにいる人間のほうがよほど脅威だった。


私は途中で眠くなって、頬杖をついて、うとうとと睡魔と戦った。


ジャックの父と大寿がお話を始める。大寿はさすがね。仕草や言葉遣いが丁寧で柔らかな完璧な淑女だった。英語の発音は独特だけれど、きっと私が日本語を喋るのと似たようなものなんでしょうね。そう思うと大寿は学もある。


窓外を眺めると、ジャックと見覚えのある上級生が庭先で喋っていた。


うげ、あいつは三つ上のダグネスじゃないの。


ダグラスは大層なゴロツキで、学校の男の子の仲間に葡萄酒の味を覚えさせたり、タバコを吸わせたりしていたし、街中で人差し指と中指を使ったスリの仕方を教えていたのを見かけたことがある。ジャックがあんな風になったのも、昔にあいつと仲良くし始めてからだ。ダグネスは逆らうやつには容赦しないし、縄張り意識が強い。その辺で小便するし、ちょっと肩が当たっただけで怒る。


群れの山羊の長みたいな習性を持ったやつよ。


8


一週間の時間が流れた。


あのカミソリの刃も問題を起こすことなく、元気にジャックの家で暮らしているらしい。不安だった犬ともケンカこそ何回かしても、今ではお互い近くにいても知らんぷりらしい。ただあの山羊が寝ている犬の上に乗っかろうとしてよくケンカになるみたい。上にのぼろうとするのは、山羊の修正の一つだ。岩肌近くで櫃の群れが毛玉みたいに固まっていて、その上にピラミッドみたいに山羊が乗っているだなんてのも、よく見た風景だった。羊は怒らないのよね。私ならもちろん怒るわ。


「大寿、切断作業よろしく!」


羊角の調整作業をする。私は雄の羊を全身を使って、肘でお尻を抑え込んで、首元に膝を押し付けて壁に押し込んだ。元気がいいやつなので力一杯に抑え込まないと大人しくしてくれない。この押さえつけるほうの作業が、大寿は苦手だった。力の加減が下手くそで、羊が痛みに鳴いて暴れてしまう。


なので私が抑え込んで、大寿がノコギリを持って角を削る作業を担当する。


今日の予定は二匹。群れの中で、角のカールが危険な方向に伸びていたのを発見した。すぐに調整しなければ頭突きをした時に、相手の皮膚を貫通したり、菅井や頸椎を粉砕したり、伸びた角が皮膚に当たって万力のように締め付けたりして、危険なのだ。


ギコギコギコ……

大寿が貝殻の渦巻きみたいな角を切り落とす。


大寿「うー、あそこの死体の子達のもですかー?」


「そうだね!」


死んでしまった羊も角は切り落とす。父が角や蹄を加工し、模様をつけて牧羊杖として観光客用の商品としてちょっと高めで売りつけている。観光客には私達が手作りで作ったものをよく欲しがってよく売れる。どこで買っても手作りなんだけどね。とにかく、最大限に命の恵みを無駄にしないことは羊飼いの常識だった。角を裏の作業場にいる父に持っていく。台の上の万力にかけて角を方向を調整していた。


「今日の作業はもう終わりでいいよ。大寿ちゃんも手伝ってくれてありがとうね」


簡易の柵で囲まれた株の机と椅子に座って、お昼にサンドイッチを食べる。


大寿「羊飼いの秋の季節はなにするんです?」


「市場が開かれるからそれの準備かな」


大寿「そういえば一昨年の秋に来た時、羊をおめかししていましたねえ」


秋の季節が稼ぎ時だからね。羊を売りに出す季節なのだ。夏の終わりになると、ファーマーは少しでも家畜を高く売ろうと、家畜達の汚れを綺麗にしたり、毛を櫛で整えたり、綺麗に身体を拭いてあげたり。アーリス家はそれを徹底していて、目玉の一頭の山羊に半日以上も時間をかけていたという。今年の品評会はどこの家が一番の栄光に輝くのかしら。私が秋の作業を思い浮かべていると、大寿がこんなことをいった。


大寿「レイチェルはおめかしに興味ないの?」


興味が全くないといえばウソになるけど、あるかないかでいえばなかった。ソフィなんかは綺麗な白のスカートを履いたり、リボンをつけたりしているけれど、私は興味を持ったことはなかった。動きやすい服装のほうが好き。スカートで農作業はできないし。


大寿「町にお出かけしましょうか」


「いいわね」


アーリス家の山羊を高値で売ったことで、父からお小遣いももらえた。今はちょっと裕福で普段なら買えないモノがたくさん買えるのだ。


「大寿、それとお願いがあるの」


大寿「なんです?」


「日本語を教えてもらえないかしら」


「もちろん」大寿はそういったけど、不思議そうだった、「でも、不思議ですね。おばあちゃんがレイチェルは伝統的な考えを持った子で、外の世界に興味を持たないって」


「そうね」


外に出ていく気はないけれど、大寿の国に興味を持ったわ。


9


買い物を終えて、フィッシュアンドチップスのお店で休憩する。町の本屋さんで日本語の教材を買ったので、それを広げると、大寿が日本語の発音の仕方を質問した。五十音というのをアルファベットと比較しながら、教えてもらった。


「これだけの文字を使いこなせば日本語を覚えられるの?」


大寿「まだ濁音もありますよ。読みなら漢字も」


わをん、までの発音を繰り返す。その語に濁音も教えてもらったところで頭がパンクして教材を閉じた。大寿がバッグから一冊の本を取り出した。『100万回死んだ猫』というらしい。「ザキャットザットライブドアミリオンタイムズです。日本語訳の本ですが、さっき教えたひらがなで書いてあります」大寿はペンで日本語の文字の隣に英語を書いてくれたので、内容は理解できた。


「変な物語ね。性格の悪い猫が100万回分の人生を経験して、101回目はなんで生き返ることをしなかったのかしら」


大寿「この手の解釈はどれが正解っていうのもないですからね」


不思議な国のアリスみたいに、解釈に頭をひねる必要があるのかしら。この本は私にとって意味不明だった。私なら絶対に101万回目の転生をするだろう。だって何度でも蘇るのなら、なんだって出来るわ。変わらない毎日を過ごすことだって、その気になれば、王様にだってなれるのではないかしら。愛する人を失った痛みで、生きることに飽きたのかな。気持ちは分かるわ。でも私だったら何回も転生してまた新たな愛を見つける。


大寿の意見はこうだ。


「私も漠然としているのですが、この猫は100万回目で、ようやく人生に勝ったんじゃないかなあ」


「100万回も負けたの? それに死ぬのが勝つってどういうこと?」


大寿「レイチェルは何のために生きているのでしょう?」


「う、うーん、私は立派な羊飼いになりたいわ」


もしかしてこの猫のその生きる理由が、その愛する白猫で、その夢を叶えたけど、白猫がその夢が存在しなくなってしまかったから、もう生きる理由を失くしてしまったのだろうか。もしもこの世界から羊がいなくなってしまっても、私は羊を作る方法を探すから、やっぱり101万回目の転生をするだろう。やはり、この猫の心は読み解けない。


大寿「私はこの猫の死に方は素敵だと思います」


「それはどうして?」


大寿「あくまで私の解釈ですけど、人はしっかり死んでいくために生きているからだと思うからですね。それはとっても難しいことです」


「大寿のいっていることが難しいわ。難しいの上に難しいを重ねられたら困っちゃう」


大寿「変わらないモノなんて思い出の中にしかありません。あなたは変わらない日常を求めているけど、それはきっと幸せの中にいる人達みながそうなんです。その幸福を手に入れることは難しいです。レイチェルも立派な羊飼いを目指しているなら分かりますね」


「うん」


大寿「この猫の死と転生はワンセットで、負け、としましょうか。100万回の人生の中で、その転生した数の分だけ負け続けたんですよ。この猫の場合は幸せに気づくことができなかったのでしょうね。でも、最後に幸せを知った。人生に勝った。だから、101万回目の転生をしなかった。まあ、人生という長い時の流れ」


大寿「幸せになるのは難しいんでしょうねえ」


大寿は腕を組んで、うんうん、と首を大きく縦に振った。


確かに幸せになるのは難しい。私も一人前の羊飼いを目指しているけど、道は険しいからこそよく分かる。途中に挫折も何度もあった。負けは死なのか。死は負けなのか。やっぱり難しい。ただこの猫のお話から私が共感できた教訓は一つだった。


何回も負けなければ、最後に勝つことはできない。


何回も死ななければ、最後に幸せになることはできない。


その日、お店を出た後も大寿とたくさんお話をした。大寿はイギリスのことに私よりも色々と詳しかったから、私は日本での暮らしのことを聞いた。日本のいいところを聞いたら「トイレと食べ物」と答えた。トイレは聞いても、よく良さが分からないけど、食べ物が美味しいのはいいことよね。そして大寿が夢を持っていることも知った。


夢を見つけること、だって。大寿はこれといった目標もなくて、情熱を注げるなにかを探し求めているといった。私は猛烈にイギリスでアーリス家のファームを継ぐのを勧めたけど、乗り気ではなかった。場所は好きだけど、山羊飼いは難しいって。残念だ。


「あー、そういえばレイチェル」と家の前まで来た時に、大寿がいった。明日、私は日本に帰るみたいだ。寂しいけど、明日は見送りしなきゃね。


その日は大寿になにか見送りのためのプレゼントを考えて、あ、なにかプレゼントでも、と思ったけれど、その時にはすでに町のお店は締まっていたし、夜に町に出かけると、父と母が怒るのでどうしようもなかった。


日本語の教材を広げた。


翌日、アーリス家に行って、お見送りの際に大寿のために歌を歌った。拙い日本語だけど、シェパーズのブレイブリーを日本語に訳して歌ってみたのだ。




僕は世界中に友達が欲しいんだ。世界は狭くて、窮屈に感じるんだ。


でも、泣いちゃダメだ。ごめん、嘘ついた。泣きたい時に泣けばいいよ、


でも諦めないで。諦めなければ、君はゴールへと辿り着けるよ。


怖いけどさ、ワクワクする気持ちのほうが強いんだ。僕は世界を変えたいんだ、君と一緒にね。その日は必ずやってくるよ、君の生きる勇気が報われる日がね。


この声を君に届けるよ、新しい世界へ行ってみよう。


泣きたい時に泣けばいいよ、


でも諦めないで。決して、決して、決して、決して、決して、


諦めないで。



大寿は喜んでくれた。お別れのハグをして大寿とお別れした。


大寿「レイチェル。立派な女性になるのですよ。大切なモノを守れる子に、ね」


最後に大寿は私の頭を優しく撫でた。とっても温かくて穏やかな笑顔を浮かべていたわ。



10


私は帰りにバギーでアーリスの主人と一緒に帰るのを断って、学校へと向かった。昨日に日本語のお勉強をした時に、お気に入りのペンを学校に置きっ放しだったことに気が付いたのだ。ジャックと一悶着あったせいね。


その時にジャックの家の近くを通った。ジャックが頭を押さえて庭を転げまわっており、ダグネスが腹を抱え、指を差して笑い転げている。そしてソフィがおろおろとしていた。


その傍にはカミソリの刃がいた。一目で興奮していることが分かった。ジャック達がなにをしたかもね。山羊と頭突きをしあったのだ。私はすぐにダグラスを注意したけど、聞く耳を持ってくれなかった。


ダグネス「軍人様は基地に戻ったぜ。のママはネシ湖に行って明後日まで帰ってこない。ジャックが山羊を観に来たところ、山羊が興奮して襲い掛かったって訳だ」


そんな馬鹿な話はない。ジャックにもしっかり山羊のことを教えたはずだ。大寿が特別なだけでふつう、山羊と頭突き合いなんてしたら、痛いに決まっている。ジャックが自らそんなことをするとは思えなかった。ダグネスがそうさせたのだ。


「ダグネス、それはなに?」


後ろのポケットから注射器が見えていた。


「ソフィ、ダグネスが山羊になにかしたのね?」


ソフィは困ったような顔をしている。肩は震えたまま、なにもいわなかった。ダグネスが怖くて、真実をいえないのだろう、今はとにかく落ち着いて状況に対処する。「ソフィ、救急車を呼んで」そう指示した。興奮した山羊が辺りを散歩している。


ソフィに向かって突進してきた。私は慌てて間に入る。お腹に頭突きを喰らって、庭をごろん、と後ろ向きに一回転した。うう、さすが群れのボスだっただけはあって雄々しい山羊ね。いつもより過剰に興奮しているのはダグラスが変な薬を打ったからに違いない。


「ジョン、アウェイ!」


私はジョンに命令して、山羊のコントロールを始める。ただ山羊は興奮しているので、ジョンの行動も手荒くなった。指示を聞かずに暴れまわる耳や足に噛みついていた。私はすぐに走って、鎖のほうに走った。万が一、手に負えないほど暴れ始めた時、鎖に繋いで、と伝えてある。高速用の鎖と首輪があるのだ。とぐろを巻いていた鎖をジャラジャラと引っ張って、ジョンが隅に追い詰めているカミソリの刃の首に素早く首輪を繋ぐ。


なんとかなった、と一息ついた時、ダグネスがこういった。


ダグネス「人を傷つけた山羊は悪魔の使いだ」


人を傷つけた山羊は悪魔の使いだ。それは新しく出来た町が決めた決まりの一つだ。家畜飼いはテリトリーに無断で侵入した飼い犬を殺してもいい、とあるけど、家畜飼いの山羊が人を傷つけた場合、同じく殺処分の対象となるのだ。


ジャック「お、俺が転んだだけだ。大丈夫だよ」ジャックが起き上がっていう。「レイチェル、ソフィ、そういうことにしてくれ。父さんもこの山羊を気に入っている」


ダグネス「でも、俺はジャックに体当たりしたところを見たぞ」


ソフィ「それを広めたら、ダグラスもただじゃすまないわ」


薬を打って暴れさせたのだから、ダグネスも怒られるだろう。でも、だからといって人を傷つけた山羊が赦される訳でもないのは確かだった。それにジャックは平気そうに振る舞っているけど、頭を強打したのだから、念のために病院に行かなければならない。


きっと、アーリス家に悪評がついてしまうわ。絶対、ダグネスがいいふらすもの。


「大寿がいれば、ダグネスなんかやっつけてくれるのに」


ダグネス「タイジュって誰だ?」


「あなたなんかけちょんけちょんにしてくれる女性よ。その山羊と頭突き合いして負かすくらいの人だからね。ダグネスなんか大寿に比べたら全く怖くないわ」


ダグネス「ウソをつくなよ。そんな女、見たことも聞いたこともない」


「ヤマトナデシコ。日本の女性は強くて凛々しくてたくましいわ」


私も今でもちょっと大寿の身体能力は信じられないけれど、素敵な女性なのは確かだ。ダグネスはこんなことをいった。「黙ってやってもいい」と。だけど、それは見逃すという意味じゃなかった。こいつは自分に火の粉が降りかかっても、構わないのだ。


ダグネス「時にレイチェル、牧場継ぎたいらしいな。止めといたほうがいいんじゃないのか。お前、服も臭うし髪もボサボサだ。せっかく田舎とはいえ、マシな町になってきたんだから、もっといい職種を目指せば?」ダグネスは自身のロングヘアを触っていう。「俺の家族は髪が綺麗だろ? 自慢なんだ」


「ゴロツキの言葉なんか聞かないわ」


ダグネス「とにかく、そうだな。金を持ってこい。お前、この山羊を売った差分をもらったんだろ。夜の九時に俺の家の近くの教会に金を持って来たらこの件は黙っておいてやる」


わざわざそのために悪さしたのか。

本当に最悪なやつね!


11


ソフィ「行ってはダメよ、レイチェル」


牧場に帰って私はソフィと会議をした。寝ている羊に背中を預けて、木のコップに入った牛乳、そしてハンカチの上に砂糖の味が濃いクッキーが五枚だけある。ソフィの行きつけのお店のクッキーみたいだ。宝石みたいにオシャレな装飾がされている。


ソフィ「毎日、ケンカして、お酒を飲んで、とっかえひっかえセックスしているような連中だし、絶対にろくな目に遭わないわ。約束だって守るかどうか分からない」


それでも、私は行かなければならないのだ。だってアーリス家にあの山羊のことを任されたのは私だもの。一番のファーマーの仕事を上手く出来なかったら、父は私を後継者にしてくれないかもしれない。きっと私の夫となる人に継がせるわ。なにより大寿が悲しむだろう。ダグネスとはしっかり話をつける。この件を丸く片付けなくてはならないのだ。


「ソフィはついてこなくていいわ。ボーイフレンドの傍にいてあげなさいよ」


ただのゴロツキにしては賢そうだ。少なくとも私とソフィは優秀な羊飼いに操られる羊のようにいうがまま、従うしかなかった。後ろの羊はもこもことしていて、すやすやと寝たままだ。羊はこんな風に、穏やかに生きて、死にそうな目にあっても、こんな風に座り込んでいるだけだ。だけど、私は羊とは違って。こんな風に寝てはいられないわ。


夜の九時、ダグネスのところに行こう。


12


ダグネスの家は学校の裏手の近くだった。そこの近くにぼろっちい教会があって、最近、不良の溜まり場となっているから行かないように、と先生からいわれている場所だった。といっても明るいうちはファーマーがここにやってくることもある。地域住民の古い歴史の本が新しい教会に移されず。この教会にこっそりと保管されたままなのだ。


教会の扉を開けて中に入る。葡萄酒の臭いが鼻腔を刺激した。荒廃した教会の十字架の前でダグネスは飲酒していた。他に仲間は見当たらなかったけど、山羊を連れ込んでいた。カミソリの刃だ。興奮は収まったのか、その場で座って大人しくしている。


ダグネス「600ポンド持ってきたのか? この山羊を売った取り分が600ポンドだったんだろう。ちゃんときっちりその額でこの件から手を引くし、お前らに手は出さない」


そんなお金、私が持たされている訳ないじゃない。ちょっとお小遣いをもらって後は母が管理している。そんな大金、持ってこようとしたら母に問い詰められてしまうわ。


「ダグネス、あなた馬鹿だから教えてあげる。山羊に何の薬を打ったか知らないけど、私達はそんなのすぐに見抜くわ。それがバレたらあなただってタダじゃすまない。アーリス家にも悪評も流れるし、私だって怒られてしまうわ。いいえ、ファーマー皆に迷惑がかかる。けどね、それでも仕方のないことってあるのよ」


ダグネス「ふうん。俺はただの暇潰しだ。儲けたみたいだから、たかろうとした」


「だったら話は終わりね。この話はお互いに穏便にすませば平和よ」私はポケットから紙幣を取り出した。父からもらった取り分とお小遣いを持ってきた、「これが全て」


ダグネス「足りないなあ」酒を煽りながら、愉快気にしている。「あ、そうだ。お前は嘘をついたよな。女がこの山羊と頭突き合いをして負かしたって」


「嘘なんかじゃないわ!」


ダグネス「じゃあ、勝ってみろよ、勝てたらそれで差分はチャラにしてやる」


「確かに羊飼いの私が山羊とケンカしても、その山羊の処分はアーリス家に委ねられるけど、わ、私には出来ないわ。頭が割れちゃう」


ダグネス「じゃあ、交渉決裂だ。何なら夜遊びでもいいんだぜ、先輩のいるところに連れて行けば気の触れたやつがいるからチビのお前でも一晩で差分を稼げるさ」


「わ、分かったわ。勝てばいいんでしょ」


さすがにダグネスの取り巻きが集まる酒場に連れていかれたくなかった。ダグネスは注射器を取り出して、山羊に薬を打った。なんてことするの。それってまさかジャックを怪我させた時の薬じゃないでしょうね。山羊が針を嫌がり、身体をゆする。ダグラスは力で抑えつけて、最後まで打ち切った。山羊が辺りをうろつきながら荒々しい鼻息を噴いた。


私に向かってタックルしてきたので、とっさに避けた。


何回かカミソリの刃と戦って、転んだ痛い記憶が蘇ったのだ、


教会の木製の長椅子を山羊の角が粉砕した。とんでもない威力ね。大寿って本当にこのバケモノと戦って勝ったのか。私は私の記憶を疑ったわ。でも、何度思い返しても、勝利の真実だけがそこにある。大寿がやっていたことを思い出す。そう。確か、角を持って勢いを殺したうえで頭をぶつけていた。覚悟を決めて、私は同じことをしてみた。


角をつかもうとした腕が、すかっと空ぶった。


同時に鼻っ面に頭突きがあたる。痛い、ではなくて、死んだ、と思った。次の瞬間、景色がひっくり帰って首から上にかけて凄まじい痛みが駆け巡った。


「ああ、痛いッ、痛いいいい!」


激しい痛みにのたうちまわる。どこかに力を入れるだけで、凄まじい痛みが起きる、顔を押さえた手は真っ赤に濡れた。動けない。とても起き上がるどころじゃなかった。死にそうだ。ただ激痛に耐えながら、羊のようにその場にいることしか出来ない。


ワン、とジョンの鳴き声がした。


開け放したままの扉からジョンが入ってきたのだ。私の後をついてきていたようだ。私の悲鳴に駆けつけたジョンがなにしたかもわからない。体を起こせないし、首を曲げられないのだ。ダグネスの荒っぽい声と、酒瓶が割れる音がして、ジョンの弱気な鳴き声が聞こえた。その次に男の声が聞こえた。


ジャック「ダグネス! やめろ!」


何人かの足音が私を通り過ぎてゆく。


13


かろうじて、身体を起こすことが出来たのは、辺りが静かになってからだった。ふらふらと立ち上がる。その場に立っているのはジャックとカミソリの刃の二つだけだった。ダグネスはケンカがとても強かったようでジャックと取り巻き達はのされてしまっていた。


ダグネス「この山羊、怖いな」ダグネスは神の彫像の上に載ってウォッカを煽っている。


ジョンがいる。半開きの口から、長い舌をべろんと出していた。ほとんど私に考える頭はなかった。ただジョンの横腹に、カミソリの刃の角が刺さっていた。山羊はひっかかったジョンを角から外そうと首を垂れて頭を左右に振っていた。


ジョンが角から落ちると、近くの入り口から外へと逃げ出した。


ダグネス「いいかお前ら、全部あの悪魔の山羊がやったんだ」


ダグネスは威嚇するような声でいう。俺に迷惑かけるようなことは止めてくれ、上手くごまかせ。もしもチクりやがったら、怖い先輩たちを連れてお前らみんなさらっちまうからな。俺はまだ優しいほうだけど、上の人は本当に怖えから、迷惑かけんなよ。


そんなことをいって、出口に向かって歩いてゆく。肩にポンっと手を置かれた。


ダグネス「悪かった。ここまでやるつもりはなかった。救急車は呼ぶから、頼むぞ」


無力だ。映画でこういう時に神に祈るやつは大体、死ぬのがパターンだ。なんとなくそんなことを思って、私はダグネスにせめてもの抵抗としてその言葉になにも反応しなかった。静かになって、サイレンが鳴った頃、再び頭が割れるように痛んだ。


大人に囲まれると、急にすべてが吹っ切れて、憎しみが湧いてきた。


汚い言葉を意識が途切れるまで喚き散らした。


You fucking!


14


ここはどこだろう。意識はあるけど、真っ暗闇だった。明かりがつかない。ひたすらに暗かった。


まるで注水されるように色が流れ込んできた。どこかも分からない海、太い大砲のようなもの、腕章をつけた海兵、吹きあがる黒煙、火薬の臭い、炎上する部屋、放ったなにかが向こうの大きな船を爆発させる風景、首から先が吹き飛ぶ光景、訳の分からない記憶が、途切れ途切れにフラッシュバックのように流れてくる。


その中の『私』は何度、壊れても、体をすぐに直して、また海へと出てゆく。何度も、傷を負って、何回、イジメられても、再び戦いといえる場所へと向かう。勇敢で愚直な私は最後、スクラップになった。


15


目覚めた時は真っ暗闇だ。母が「レイチェル!」と抱き着いて泣いていた。どうやらここは病院のようだ。父はすぐになにがあったか聞いてきた。ダグネスがやった、と正直に答えると、「あのゴロツキども!」と父は大層、怒った。家の猟銃でも取ってきそうな勢いだった。私はまずさっきのおかしな夢と、痛みも傷もない体の不思議を聞いた。


建造。その手段を使った、と父は答えた。後でジャックの父親が来て詳しい話をしてくれる、と。建造、ジャックの家で聞いた話を思い出した。「どの船なの?」と聞いた。


J級1番艦駆逐艦ジャーヴィス。


聞いたこともないけど、ならきっとあの記憶はジャーヴィスの記憶なのね、と状況を理解した。私はこの通り大丈夫だよ、とベッドの上に立ってみせる。


「お母さん、これは運命だと思う?」


母は、いいえ、といった。私は運命だと思う。自然の恵みにも神にも感謝はしてきたけど、別に信仰という信仰はしていなかった。神に祈っても御神託なんて聞いた夜もなければ、宣教師はうさんくさいと思っていたしね。


でも私は豊かな丘陵地帯で育ち、恵まれた足腰の粘りを手に入れた。頭も良くないし、淑女の作法も上手くないけれど、身体だけは丈夫だった。思えば、私は優秀な羊だったのだ。そして適性が出た以上、神から祝福を受けたという証だった。


群れの上に立つ優秀な素質を私は手に入れたのだ。さきほど夢見に現れ、艦隊を指揮していたジャーヴィスと同じだった。常人が死にうる一撃に耐えるこの身体こそ、私の唯一の神様からのギフトなのだ。


トイレ、と病室から抜け出した。海を守る兵士の身体、深海棲艦と戦うために与えられた超人の能力。傷を負うその度に体を治して再び、戦場へと向かう。


ジャーヴィスの使命とレイチェルである私の意思が重なった。


ならば、私のやることは一つだった。


戦争だ。ジョンの仇をまとめて取ってやる。


正直怖い。私は百万回生きた猫のお話を思い出したわ。船乗りや王様のペットになりながら、百万回も生きた猫だ。


何回も負けなければ、最後に勝つことはできない。

さっき負けたわ。優秀な牧羊犬のジョンを家畜に殺されるというこれ以上ない屈辱をね。


何回も死ななければ、最後に幸せになることはできない。

さっき死んだわ。生きていられたのは人間を辞めたからだ。


勇敢な歌をくちずさみ、恐怖を吹き飛ばした。


「Never! Never! Never! Never!」

絶対! 絶対! 絶対! 絶対!


「Give up!」

諦めるな!



16


どんがらがっしゃーん!

ダグネスの父が経営する酒場の扉が吹き飛んだ。


私が中に放り投げたのは山羊だった。カミソリの刃はあろうことか、自らが住んでいた場所に戻って何事もなかったかのように、すやすや眠っていた。もうこの山羊は確実に殺処分だろう。私だってジョンを殺したこの山羊を赦しちゃおけない。


ダグネス「レイチェル……?」


ダグネスが酒で赤くした顔を、強張らせた。


「ヴェエエエ」


カミソリの刃は本当にたくましい雄だ、のそのそと起き上がってきた。怖気ついている様子もなかった。私は四肢をついて、雄山羊がケンカを始める時の動作を真似して、荒々しく喉を唸らせる。「ヴェエエエエ」のそのそと近づいた。


カミソリの刃が反応する。


私は羊のように走る。今度は大寿みたいな真似をせず、勢いを殺すどころか、自ら勢いをつけて、直線に突進した。脳天に衝撃を感じる。今度はあの痛みは襲ってこなかった。カミソリの刃の体が酒場の床を横に滑る。


まだ負けを認めていないのか、起き上がってくる。私は下がって距離を取ると、また勢いをつけて、頭突きをかました。カミソリの刃の横面が壁と私の頭にサンドイッチになって、頭蓋が粉砕されたのか、辺りに血が飛び散った。


この山羊の命の終わりは、私の羊飼いとしての夢の終わりを意味していた。家畜を殺処分するにしても、こんな風に惨殺してしまえば、恵みを愛する羊飼いとして生きてはいけない。それに加えて優秀な牧羊犬であるジョンを死なせてしまったこと、更にいえば、アーリス家とエッガー家から授けられた大命を果たせなかったこと、私の望む夢は今ここで潰えたといえた。


「ほらねダグネス、山羊に頭突きで勝つ女性はいたでしょう?」


ダグネスはなにがなんだか分からないといった顔だ。くるりと背を向けた。まるでジョンに睨まれた羊みたいね。羊と同じく仲間のもとへと群れるのだろう。もちろん私は逃がさない。ダグネスの首根っこをつかんで、山羊と同じようにブン投げた。壁にたたきつけられたダグネスはぐったりとしている。


ダグネス「悪かった、悪かったよ」


やっぱり怖いのは人間のほうだ。深海棲艦がどんな生物か知らないけど、敵は群れの中にこそいるの。ダグネスみたいに悪さする羊がいたら、羊飼い達は徹底的にその羊を矯正を試みて、最悪、生死を問わずにさっさと売り物にしてしまう。そんな羊が矯正もされずに群れの中でリーダーをしているだなんて、とても恐ろしいもの。


「メエエエエエ!」


私は助走をつけて走ると、同じようにダグネスに頭突きをかました。こいつも、ジョンの仇だ。生死を問わずの一撃だった。ダグネスは口周りを血でダラダラにして、痛みにのたうちまわっていた。そこでようやく騒ぎに気づいた酒場の主人が2階から降りてきた。髭を剃っていたのか、白い泡だらけで、手にはバリカンを持っていた。


「ドントムーブ!」


電話を手に取ったので、私は阻止すべくダグネスの足をつかんで、そいつに向かって放り投げた。主人にヒットした。二人は後ろの酒棚に倒れた。ドミノみたいに酒が倒れて割れて、妻が悲鳴をあげる。


「メエエエエ!」


私が威嚇してやると、妻は失神してしまった。


これだけやって私の燃えるような憎悪もようやく少しだけ収まった。


不意にダグネスが、髪が綺麗なことを自慢していたのを思い出した。ちょうど主人が手から落としたバリカンがタイルの上にあったから、私はダグネス家の主人、妻、息子の三人の頭を、毛刈りを終えた羊みたいにしてやった。


「あっはっは! 囚人みたいでお似合いよ!」


その店で、唯一ガラスの中に入っていた酒瓶を手に取った。ここまでやったらもうどうしようもない。良い子にしていたって、どうせもう羊飼いとして大成できないだろう。仮に羊飼いになったって一生この日のことを噂されて後ろ指を差されてしまう。


ああ、道標を失ってしまったわ。今日この日から私も海でゴロツキ家業を始めるのね。ジャーヴィスとかいう兵士になって、欲しくもない勲章のために身を削り、故郷を切り取った国のために魂を捧げて働け、といわれるのだ。


軍。

嫌なイメージしかないわ。ジャックやダグネス以上の悪がいる場所としか思えない。いいえ、その程度なら可愛いまであるわね。


カランカラン。

私が酒場から出ると、出入り口の鐘が鳴る。冷たい夏の夜の空気に触れた。


ワインのコルクを指の力だけで引っこ抜く。夜の澄んだ空のお星様を肴に、人生初の酒を煽った。アルコールは私の憎悪のように熱くて、夢のように景色をぐにゃりと歪める。


最悪に素敵な夜ですこと。





* 客席


暁「」


電「暁お姉ちゃんが……」


提督「ジョンの不幸で失神しちゃいましたかね……」


電「もう……まだ苺みるくさんのこと引きずっているのですか。司令官さん、私は暁お姉ちゃんを部屋に連れていくのです」


提督「了解。よろしくお願いします」


プリンツ「……」


プリンツ「最悪に素敵な夜ですこと♪」


プリンツ「じゃないですよ! ダグネスさん死んでないですよね!?」


グラーフ「ダグネスに同情の余地はない」


提督「これが一家散髪事件ですか……」


金剛「……」


響「金剛さん、最終審判だけど、その英国淑女の席はあなたでもウォースパイトさんの席でもなく、アークロイヤルさんの席だ」


ポーラ「ですね~……」


ウォースパイト「ふふ、響さんあなたアークになにか幻想抱いてますね?」


響「マジか……」


金剛「まさか私が帰国した後すぐにそんなことになってただなんて……」


ビスマルク「いや、これ金剛が悪い訳じゃないでしょ……全く非がないといえば嘘になるけど……」


リシュリュー「金剛あなた、あれからジャーヴィスちゃんと連絡は?」


金剛「手紙を出したけど、返ってこなかったネ……そして私は春が来て建造したからあまりイギリスにも顔を出してなくて、おばあちゃんのほうが数年に一度だけ日本に来ました。その時にレイチェルの話を聞いたんですけど、町を出た、としか……」


ウォースパイト「……」


此方「ハッキリどうぞ」


ウォースパイト「失礼ですが、もとはといえば、と」


此方「大丈夫大丈夫。私はろくな死に方しないだろうからね……まあ、私もせっかく今を生きているのだから、殺されるというのなら、そいつの」


此方「国ごと潰してやる所存ではありますが……」


ウォースパイト「今は歴史最悪のゴロツキですよね……」


ビスマルク「はっ、そもそもただの人間になったあなたにそんな力があるのかしら? ケンカしても私一人で勝てるくらいの普通の女の子じゃない」


電「司令官さん、雑魚マルクがあんなこといってますが」


ビスマルク「ザコマルク!?」


響「どっちかというと無知マルクかな」


ビスマルク「ムチマルク!?」


電「此方さんの価値を把握してないようなので、あえて恐怖方面でお教えしますが」


電「此方さんは2世紀も人の想をロスト空間で見ているのです。加えて150年分の艤装の想を吸収してます。アメリカ、ドイツ、イタリア、イギリス、フランス、日本、艤装を使っていた全ての国の歴史を知っているのです」


電「真実の歴史を知っている。もちろん、私達は正義の名のもととはいえ、人間ですから色々と過ちを犯していたわけで、世の中には世間に露出してない情報も……」


電「戦後復興妖精とも共有しているので」


電「いいですか。私や司令官さんも全て把握してはいませんが、電が知っている部分だけでも口に出すのも躊躇う相当なものなのです……」


電「あなた達、絶対に槍玉に挙げられて無事では済まないのですよ。その覚悟を背負ってケンカは売ったほうがいいです。此方さんは優しいので、今のクソビチマルクの発言くらい笑って許してくれますが」


ビスマルク「しょ、証拠にはならないわ……」


電「はあ……バカマルクお前、海の傷痕当局が大本営襲撃した時に死人にくちなしの時代終わったっていったこと知らないのです?」


電「想力の解明とともに想力の証拠力は今を生きる私達の証言より信憑性持てますが? 戦後復興妖精は例外中の例外ですが、私達のサイドにいた想の塊である妖精が嘘ついて欺いたことあります?」


ビスマルク「……」


ビスマルク「はっ、勘違いしないでちょうだい。ドイツは此方様の味方よ。今のはイタリアの言葉だからね。こいつら爵位だのなんだのと市民階級を見下してばっかの連中だったから、ただの女の子になった此方様をなめているのよ」


ビスマルク「四六時中お酒飲んで仕事してる時点でお察しよ」


ポーラ「ちょ、ポーラを売りましたねえ!?」


此方「ビスマルクってかなり強い能力値に設定しましたが」


此方「栄光のドイツ戦艦の誇りを売りましたね……」


















此方「おこだよ」



ビスマルク「」


グラーフ「おい、ダメマルクを地下の拷問室に連れていけ! 戦争も終結したし、こいつにもはや戦艦としての価値はない!」


ビスマルク「さすがに酷くない!?」


此方「冗談だよ。怖がれるほうが傷つくかな」


ビスマルク「今日から親友ね!」


電「北方勢は本当に……」


リシュリュー「うちでガチなシリアスできるのは、三日月ちゃんと天津風ちゃんの秘書官真面目奮闘物語くらいね」


電「それもギャグじゃ……」


リシュリュー「とんでもない……」


響「ふむ……私も驚いたのだけど」


響「ウォースパイトさん、イギリスの対深海棲艦海軍の提督って大きな家や高いペットを買ったりしていたけど裕福なのかい? 私の司令官の階級は准将だけど、いつもお金回りに苦労しているのだけど……」


提督「あまり聞きたくない部分なんですが」


ウォースパイト「へ? あの方は少将ですし、裕福ですよ。といっても、そこまでのものを想像されても違いますけどね。ほら、私達って作戦成功率で上下しますし、日本も同じでしょう?」


響「ぶっちゃけトーク」


ウォースパイト「円換算で1000~2000かと……」


提督「……」


ポーラ「准将さあん、ぶっちゃけて~」


提督「その最低ラインの3分の1もないです」


ビスマルク「世界の大英雄様(笑」


電「お前この人が金で動いていたとでも?」


電「そんなやつなら、私が消し炭にしておりますが……?」


グラーフ「ビスマルクいい加減にしてくれないか」


バキッ


ビスマルク「」


グラーフ「この通りだ。勘弁してくれ」


ウォースパイト「それはそれで驚きました……」


ウォースパイト「日本国の対深海棲艦海軍においては歴史上、1、2位を常に争う戦果を毎年のように挙げておられますのに……」


ポーラ「ま~、問題起こしてヘイト集めまくった上、制裁くらいまくってますし~、したっぱと上にそんなに差がないんですよね、日本って」


リシュリュー「それにこの人、特例中の特例じゃない」


響「?」


リシュリュー「日本って昇級しても経済面で反映されるの一律で春でしょ? この鎮守府に着任した時は……中佐、まあ、鎮守府持てる提督の中で下で、そこから一年も経たない内に特殊な事情で准将、すぐに戦争終結させたから」


響「……む」


ポーラ「少なくとも、この鎮守府は~、雨村さんの官僚編メモリー見たら分かるように、そんな図々しいこといってられないくらい周りを振り回してましたしね~」


プリンツ「准将さん後一年くらい世界救うの止めとけば良かったのに」


提督「まさか身内からそんなこといわれるとは思わなかった……!」


グラーフ「刻むだろッ……!」


ビスマルク「普通ッ……!」


リシュリュー「もっと……ッ!」


ウォースパイト「段階をッ……!」


提督「ヨーロッパ勢めっちゃ仲いいですね」


金剛「……うーん、此方ちゃん、この後の軍に正式加入まで知ってる?」


此方「話せるけども、ここからはウォースパイトさんアークロイヤルさんとかの想からの情報も統合してのお話ね。提督さんと出会って祝福を受けるまでなら即興でも」


ウォースパイト「すごい能力ですね……これが想解釈というものですか?」


提督「ええ。此方さんの想解釈は戦後復興妖精の太鼓判付きの才能です」


此方「だけどウォースパイトさんから聞いたほうがいいんじゃないかなあ。ここから崎の彼女は知っているでしょう?」


ウォースパイト「……ええ、まあ」


響「ロシアと同じく建造した兵士は牧師から祝福を受けるのかい?」


ウォースパイト「そうですね。イギリスの場合、艦兵士は戦果を上げると貴族階級もらえますから、基本なにに関してもまず祝福を受けるのです。入軍時の式もそうです」


此方「ウォースパイトさん、私とチェンジしよ。この座布団へどうぞ」


ウォースパイト「どーも」



*祝福時の悲劇。ウォースパイトさん語り。


ウォースパイト「どうもジャーヴィスの父と母は軍への加入に反対はしなかったそうです。名誉なことだと喜んでいたそうです。まあ、以前話した通りゴロツキとのいざこざは国政介入で丸く収めましたよ」


ウォースパイト「……ジャーヴィスの入軍が条件でありましたが」


ウォースパイト「まず基地で入隊式がありまして、英国の対深海棲艦海軍、適性者のアトミラルになる人が短剣を贈呈します。その後、選任の牧師とともに艤装と適性者に祝福の儀を執り行いますね。浸水式のように見世物の面もありますので観衆の中です」


ウォースパイト「広い平面をすうっと真っ赤な絨毯が敷かれて、左右には海軍人が整列し、演奏曲を奏でております。祝福のロードをジャーヴィスは真っ直ぐ歩いてくるのです」


ウォースパイト「私はその時、アトミラルの秘書官、そしてジャーヴィスの担当ということでアトミラルの隣に控えておりました。新しい仲間、しかもジャーヴィスです。日本でいえば雪風の適性者が来たようなもので、期待は大きく」


ウォースパイト「そしてなによりも」


ウォースパイト「男性の方のテンションが異様に高かったのを覚えております。適性データでジャーヴィスを見た人達の反応でしょうね。彼女をイメージ通りのエンジェルだと思われていたのかと」


ウォースパイト「もちろん私自身、純100%のウォースパイトさんではないので、齟齬があることは覚悟していましたが、ある程度は適性データの通りなのだろうとも」


ウォースパイト「ジャーヴィスが馬車から降りて、父に手を引かれ、ロードを歩いてきます。彼女はええ、適性データ通りの此方さんデザインの可愛らしいスカートの水兵服に身をまとっておりました」


ウォースパイト「ええ、それはもう元気の波動が伝わってきました。可愛らしい笑顔を浮かべています。海軍の野郎達は声を揃えていいます」


ウォースパイト「天使が空から舞い降りてきたかのようだ」


ウォースパイト「スカートをつまんであいさつをした時、強い風が吹いて彼女の帽子が飛ばされてしまいまして、彼女は慌てて帽子を拾い上げてかぶると、えへへ、とはにかみながら謝ります。海軍の野郎達が声をそろえていいます」


ウォースパイト「俺に向かって笑ったぞ」


ウォースパイト「父の手から離れ、ジャーヴィスはアトミラルのもとまで歩きます。二人は顔見知りだというのは事前に聞いておりました。ジャーヴィスのアトミラルはジャックの父親でしたからね」


ウォースパイト「そしてジャーヴィスは短剣を受け取り、牧師から祝福を受けます。軍からの言葉と、ジャーヴィスの宣誓が終わり、祝砲が撃たれます」


ウォースパイト「無事に式が終わるとジャーヴィスは次に鎮守府へと移動します。私が連れていく予定でしたし、担当となる子を愛車に乗せました。仲を深めるためにお話しておくといい、とアトミラルからのお心遣いでした」


ウォースパイト「前日にルートを勉強しましたね。私、道を覚えるのが苦手でしたけど、新規着任の兵士の送迎も立派な任務の一つなのです」


ウォースパイト「私が運転しているとジャーヴィスのほうから話題を投げてきます。『提督は別の群れとして、あなたが私の行くところで一番強い羊かしら?』と」


ウォースパイト「出身は知っていましたので、なんとなく意味も察しました。成績的にはその時、アークよりも私のほうが良かったので、まあ、教え子に自慢したい気持ちもありまして、イエス、と。ジャーヴィスは根掘り葉掘り仲間のことを聞いてきます」


ウォースパイト「そして人気のない山岳近くの場所でジャーヴィスがお手洗いに行きたいといったので、近くにあったスタンドに寄りました。トイレが長かったので、私はノックしましたが、返事はありません。扉を開けるとそこにジャーヴィスはいません」


ウォースパイト「こっち、こっち! とジャーヴィスは車の中にいました。なぜかは分かりませんけど、ジャーヴィスは窓から抜け出て車内に戻っておりました」


ウォースパイト「この時に私が気がつけば良かったのですが……」


ウォースパイト「私は運転再開です。どうして窓から抜けたのか、と聞けば、ジャーヴィスは外にツバメがいたから追いかけてしまいました、と答えました。無邪気な子だなあ、と微笑ましく思ったものです」


ウォースパイト「ジャーヴィスがバッグから水筒を取り出しました。可愛らしいお花の模様がついたものです。ジャーヴィスは自分の地域で絞ったミルクだと」


ウォースパイト「あ、そうだ、ウォースにもあげる、とスキットルの器を取り出しました。皆にあげようと思って持ってきたから飲んでみて、と。身体にいいよって」


ウォースパイト「なんか苦かったですが、身体にいいとそういうものもあるのかなあ、と私は笑顔でお礼をいって返しました」


ウォースパイト「ジャーヴィスが帽子を下げて、口元でなんか邪悪な笑みを浮かべておりました」


ウォースパイト「そしてですね、検問所を通った時に、私に事件が起きました。免許証がないのです。そんな。私は確かに財布ごとバッグの中にしまったはずです」


ウォースパイト「ジャーヴィスにも聞いたけど、知らないよ、と」


ウォースパイト「ええ、任務失敗ですよ。私はもう半泣きでアークに連絡をかけました。近くまで来ているから迎えに来てくれ、と」


ウォースパイト「アークが連れてきた馬に乗って私達は鎮守府に到着しました」


ウォースパイト「アトミラルに挨拶しに執務室に行きます」


ウォースパイト「二人は知り合いで、ジャーヴィスはフランクに接してました。というかこの時にジャーヴィスの本性を知りましたね」


ウォースパイト「アトミラルがお仕事のお話を始めるとジャーヴィスは、中指を立てました。場が凍りつきましたよ。私はやめなさい、と中指の間接を曲げますが、私の腕を振り払ってまた中指を突き立てます」


ウォースパイト「『従わないわ。ジャックを見ていたら分かる。お前みたいに息子の教育も出来ないやつから教わることなんてなんにもないもの!』ってね」


ウォースパイト「アトミラル、打たれ弱いのでこの時点で半泣きです」


ウォースパイト「私はジャーヴィスを部屋に案内し、荷ほどきを命じて、アトミラルのもとへと戻ります。女の子のああいうところはよく分からないから、作法はよろしく頼む。仕事に関しては私もある程度は厳しく行くから、とのことです」


ウォースパイト「そしてジャーヴィスの部屋に戻ったのですよ」


ウォースパイト「ジャーヴィスは指で、まるでゴロツキのようにお札を弾いていました」


ウォースパイト「ええ、ええ、悟りましたよ。ジャーヴィス、スタンドで窓から抜け出して私より先に車内に戻り、私の財布を盗んでいたのです……」


ウォースパイト「とんだ猫かぶり娘だと私は確信しました。まさか盗みを働くだなんて……! 私は初日から先を思いやられましたね」


ウォースパイト「ま、この辺りまでですかね」








プリンツ「とんでもない子ですね……」


ビスマルク「まあ、そういう経緯なら問題児にもなるわよね……」


響「だね……」


グラーフ「駆逐の苦労はどこにでもあるのかもな」


リシュリュー「そうねえ、うちだと神風とか」チラッ


提督「マジスミマセン」


ポーラ「今は神風ちゃん幸せそうだし、モウマンタイですよ~」


此方「あのさ……いや、やっぱりいいや」


ウォースパイト「なんです?」


此方「ええと、差し出されたスキットルの器になにが入ってたの? 私、そこ知らないんだよね。苦いだけじゃ特定難しいし」


ビスマルク「確かに。お酒? 飲酒運転させようとしたとか?」


ウォースパイト「薄められた」





















ウォースパイト「雄羊の精子」





一同「▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂うわああ!」



プリンツ「初日からめっちゃ理不尽にケンカ売られてるじゃないですか……! 高速修復材使って綺麗にしました!?」


ウォースパイト「もちろん……それをジャーヴィスから知らされた時、アークも飲まされていたようで、2日間ショックのあまり砲精度が劇的に落ちましたね。そんな私達をはために、『ジャーヴィスが一番活躍した! 二人は調子悪いみたい!』」


ウォースパイト「だなんてあの子はああああッ!」


響「クールダウンクールダウン」



【4ワ●:彼岸花のバラード】



雨村「戦後復興妖精が出てくるまでは本当に上手くいっていたんだ」


空母水鬼「意気消沈してますねー……」


雨村「そりゃそうだ。これは悔しいというよりも、憎悪だ」


雨村「逆恨み。単純にムカつくんだよ」


空母水鬼・深海鶴棲姫「……」


雨村「……幼稚すぎる戦う理由しかない」


空母水鬼「さすが深海提督。私達と似てきましたねー」


空母水鬼「社会的に何の大義もないけども、ぶっ潰す」


雨村「もはや深海棲艦だよね」


空母水鬼「愛する人のために正義や正論をぶっ潰します。だなんて理由がある分マシですけどね。勝たなきゃ今の形は保てないです」


空母水鬼「家族が殺されそうになってるから社会のルールとかどうでもいいですし」


深海鶴棲姫「レオン、お前はザコだな。兄貴ならそんな風に落ち込むどころか、策を考えるぞ。海の傷痕戦で電が殺されてからも折れずに頑張っていた」


空母水鬼「乗り越えたその全てに凄まじい執念を感じますよね。レオンのお兄様なだけはありますー……」


雨村「あんな変態と一緒にしないでくれ」


深海鶴棲姫「はっ、周りから見たらお前のほうが異常だろ」


雨村「……君達、海で表の世界の艦兵士と本気で戦うの始めてだろ。深海棲艦のくせに艦娘を殺したこともなく、本気で沈めようとしたこともない」


空母水鬼「ですねー……」


深海鶴棲姫「勝てば、レオン、お前は助かるぞ?」


深海鶴棲姫「表の世界には二度と出られないけどな」


雨村「ハハ、君達とまるで同じだね……」


空母水鬼「まあ、私達と親しくなるってことは、私達が人間のほうに近寄くのではなくて、深海のほうにあなたから近寄ってきた訳ですし」


空母水鬼「向こうから仲間外れにされることは必然です」


雨村「僕のほうから深海にねえ……まるで自殺だな」


深海鶴棲姫「そうだな。自殺志願者だ。最初、電達にもレオンのことをそう伝えたが、理解してはもらえなかったみたいだ。私の言葉足らずだったかもな」


空母水鬼「妹は特に初対面の相手にはホント意思疎通へったくそですよねー……」


雨村「最初から誰かに助けを求められる道じゃないよね」


雨村「それを分かってて、始めた訳だし」


空母水鬼・深海鶴棲姫「……」


深海鶴棲姫「お前、高校生になってから物事を小難しく考えるようになったよな。後のことは忘れろ。今は兄貴をぶっ潰すことだけを考えろ」


深海鶴棲姫「兵士の質は決して劣ってないぞ」


深海鶴棲姫「まだ負けてない」


空母水鬼「勝ってもいません」


空母水鬼・深海鶴棲姫「戦うしかない」


雨村「負けられないし、勝ち続けなきゃならないのは分かる」


雨村「二人は後悔してないのか?」


空母水鬼・深海鶴棲姫「ちっとも」


空母水鬼「いやー、そもそもレオンと出会う前は後悔できるような人生ですらなかったですからねー。あれ以上の底辺はなかったので……」


雨村「なんとなく君がいつも愉快だった理由が分かった」


空母水鬼「p(`ε´q)ブーブー」


深海鶴棲姫「全くだ。そもそも純粋な深海棲艦時代のことなんてほとんど覚えてないしな」


雨村「……フレデリカの研究から深海棲艦の艤装は人間にも身に付けられるって導き出してから、僕が船渠棲姫の艤装を使えるようにしただろ」


雨村「……あの時、僕は気が気じゃなかったのに、君達、観光気分で3つの世界を超エンジョイしてたとかな……」


雨村「……作戦はある」


空母水鬼「へえー……」


雨村「それと一つだけ教えておく」


雨村「性能とかそういうのはこの海の戦いではほんの一つの有利でしかない。誤差といってもいい」


雨村「向こうの戦力ランキングの上から3人は知ってるよね?」


深海鶴棲姫「電、神風、春雨」


雨村「性能不遇のザコだらけだ」


雨村「トランスタイプだから、じゃないよ。そんなこと考えてたら勝てない。こいつらが強い理由こそが、君達と艦兵士の戦いで勝つために必要なものだったんだと思う」


空母水鬼「まあ、いわんとしていることは分かります。今さらですねー」


深海鶴棲姫「……まあ、そのなんだ」


深海鶴棲姫「ありがとう」


雨村「急になんだよ」


空母水鬼「こほん」


空母水鬼「レオンがいなくて、あの子と過ごした5日間」


空母水鬼「ジャーヴィスちゃんにこんなこといわれました」


空母水鬼「『生きてて良かった!』、『産まれて良かった!』、『ありがとう!』、『愛してるよ!』、『君を守る!』、『必ず帰る』!」


空母水鬼「『これを心からいえたら私達と同じでーす!』」


空母水鬼「って。まあ、分からないでもないです」


雨村「場面が鮮明に思い浮かぶよ……」


深海鶴棲姫「いわれたっけ。いわれたような?」


空母水鬼「マジかー……」


深海鶴棲姫「覚えてるのは、スリーピングドラゴン」


空母水鬼「(((*≧艸≦)ププッ」


雨村「なんなんだよ」


空母水鬼「ガールズ・メモリー」


雨村「はあ?」


空母水鬼「沖縄に生息してた眠れる龍が、ホームレスのおじさんに悪さをしていたのでジャーヴィスちゃんと一緒に成敗しました。そして目覚めたドラゴンに襲われたおじさんは、無事に娘と再会しましたとさ。めでたしめでたし」


雨村「意味不明すぎる……!」


深海鶴棲姫「その時にジャーヴィスとケンカしたんだよな。負けたけど」


空母水鬼「今だからいいますけど、あの子レオンの前では猫被ってましたよねー……」


雨村「まあ、お転婆なのは知ってるけども……」


深海鶴棲姫「……まあ、とにかくだ」


深海鶴棲姫「私達は今幸せではあるんだ」


深海鶴棲姫「紛れもなく、お前のお陰」


空母水鬼「私達のために人生を捧げてくれてありがとうー」


深海鶴棲姫「……1つ言えたな」


空母水鬼「だねー。残りをいうために」



「「勝って帰ってきますか」」



2









I want friends from all over the world.This sky is small,it feel stiff.Don't cry.Sorry,l'm lied.Cry when you want to.but Never give uo.If you never give up the goal where you are going will be come out for sure.Scared,but more excited about it.l want to change the world with my friends.The day will come when you feel your courege to live have been rewarded.l'm take this voice and use it.Let's do new world.Cry when you want to.But never give up.Watch your thoughts, for they become words. Watch your words, for they become actions. Watch your actions, for they become habits. Watch your habits, for they become character. Watch your character, for it becomes your destiny♪




Nevere never never never never,



give up.









――Start to battle♪






瑞鳳「これは……!」


瑞鶴「も――――! これだから今回は乗り気しなかったんだってば! 沈メタルじゃなくてなんか陽気な勇気に溢れるバラード調だったんだけど……!」


瑞鳳「今の英語が分かった人!」


瑞鶴「無理」


伊58「無理」


翔鶴「聞き取り辛かったですね……」


嵐「俺は全くわかんない」


戦後復興妖精「私が聞いたから大丈夫。准将にも報告しとく」


戦後復興妖精「気にしなくていいよ」


戦後復興妖精(多分、これトビー&ズズムじゃねえ。擬似ロスト空間だし、なんかの彼岸花想のノイズかね……)


戦後復興妖精(この独特の英語の発音……)


戦後復興妖精(アメリカかイギリスのどっかの田舎の出か?)



3



瑞鶴《とにかく鬼ヶマス直に到着! ゴーヤが潜って深海調べてるー!》


龍驤「了解。反転鏡面彼岸界、綺麗やね」


瑞鳳《夜だけども、海の下に光があって、海に浮かぶ彼岸花がライトアップされてる》


翔鶴《艦載機、戻りました。この明かりなら艦載機も昼戦と同じように飛ばしても大丈夫そうです》


龍驤「了解。攻撃受けたら大破する前に撤退して戻るんやで。戦後復興妖精のフォローあるっていっても斥候部隊やからな」


龍驤《艦載機、飛ばしてみ》


龍驤《恐らくそれで反転鏡面彼岸界のギミックは分かるはずや。うちも艦載機、そっちに飛ばしてみんな守れるようオール艦戦》


瑞鳳「了解。飛ばしたよ。向こうも飛ばしてきました」


瑞鳳「空母水鬼と深海鶴棲姫の数値からして私達では制空権は獲れません。予定通り、ダメコン試みながら被弾しますが……」


瑞鶴「……あの深海鶴棲姫」


龍驤《ん? どした?》


瑞鶴「あ、いや、別に大したことじゃない」


龍驤《気になるんやけどー》


瑞鶴「私の陣羽織着てるー」












瑞鶴「深海鶴棲姫・決戦仕様mode」



龍驤《○る気満々やないか(震声》


龍驤《伊58、ちょっと》


龍驤《ゴーヤー……》


龍驤《はい、戦後復興妖精!》


戦後復興妖精《だっり。いい忘れてたけど、下手に彼岸花想に触るな。メモリーが流れ込んで来て、脳に不可かかって気絶あり得るからな》


龍驤《そういうのは、はよいってくれへんかな……》



3


伊58《ごめんごめん。気絶してたでち》


伊58《彼岸花想は妖精可視才なくても触れるし、見えるでち。それと攻撃したら消えるから艤装の攻撃は有効かな。でもけっこう耐久値がある。彼岸花想の耐久値、100はあるんじゃないかなあ》


龍驤《へえ……不思議な花やね》


瑞鶴「しまったなー。遅刻しそうだったからって寝巻きのジャージで最終海域くるんじゃなかった」


瑞鳳「瑞鶴ちゃんやる気なさすぎだよね……」


戦後復興妖精「死ぬぞお前ら。ダメ食らってから分かると思うけど」


嵐「わざと一発被弾するんだろ? その後の艦載機は対処するけどダメコンしろよな」


瑞鶴(あ、これ無理だわ……姫や鬼相手なら改二甲の私でも一撃大破は珍しくないけども)


瑞鶴(カスダメだろ? 私の装甲、耐久、性能、この損傷数値……これ、ダメコンしてもあんまり意味ないや……)


嵐「……おらよっと!」


伊58「おお、暴風で艦載機が墜ちてくでち……」


瑞鶴「ちょおおお!」


瑞鳳「そんな風速の暴風起こさないでよお! 転覆しちゃう……!」


伊58「ゴーヤと戦後復興妖精いるから死亡撃沈じゃなきゃ大丈夫でち」


瑞鳳「なるほどですー……こっちが世界を滅ぼす悪役な訳だね」


翔鶴「三……いや、五。最悪ですね……!」


瑞鳳「提督が計算式復習させた意味はこれかあ」


龍驤《ダメコンしても損傷がやけにデカいな。瑞鳳、それ反転鏡面のギミック?》


瑞鳳「正確ではないですけど、少なくとも……」


瑞鳳「『被ダメージ×1.5倍の史実効果』ですかね」


瑞鳳「私達全員に被特効性質かかってますー」




【5ワ●:此方と戦後復興妖精の反転鏡面彼岸界雑談】



戦後復興妖精「疲れた……明石えもん世界でひみつ道具調べてきて、とか、反転鏡面彼岸界のお守り行けとか、准将には大先輩をいたわる気持ちってのがないのかねえ」


戦後復興妖精「で」


戦後復興妖精「海を見てるのか? それとも慰霊碑か? おー、あの犬の名前もいつの間にか彫られてら。あいつら英霊の慰霊碑に犬っころの名前彫ってんのかよ」


此方「お前っころの名前も北方鎮守府の慰霊碑に彫られてるどころか像まであるじゃん」


戦後復興妖精「生まれ落ちて初日から早速の人間地獄界の親睦旅行で私がどれだけ踏ん張ったと。当然だろ。あれは今思えば介入しす過ぎた感はある。まあ、どうでもいいけど」


戦後復興妖精「ただの思い出に過ぎないからな。そこに私はいませーん。あ、別に千の風になった訳じゃないですよ?」


此方「当局なら今回のいざこざはくだらないっていいそうだけど」


戦後復興妖精「まあ、あんたにとってはそうじゃないだろうな。あんたはそれを得たいがために戦争を起こした訳で、私も1世紀半を経て理解したしな。マーマにも大本営でいったろ。あんたが欲しがってたもんは戦争起こすだけの価値があるって」


戦後復興妖精「どう? けっこう仲良くしてるみたいだけど輪に入れそう?」


此方「……」


戦後復興妖精「じゃあ枕はなしで本題だ」


戦後復興妖精「なんで向こうの肩を持ってんの?」


此方「それはあなたもじゃん。私は聞かれたことは話したよ」


戦後復興妖精「私が教えねえのは、准将に漏らしたら根掘り葉掘り聞かれてしゃべんのだるいからっつう理由と、最悪、私が佐久間式を装備して抜錨すりゃ終わるからだよ」


戦後復興妖精「向こうが勝っても、その後に私がボコるぞ。あいつらの輪の中での勝ち負け、つまり電、わるさめちゃん、神風with初霜vsトビー&ズズム、レオン君の勝負だけは対等にさせたいわけだろ?」


此方「違うかな……今回の勝利条件的に向こうが燃え尽きるまでの全力出してもらわないとハッピーエンドはないかなって。勝利を確信できても、圧勝っていうのは後に引く。だからみんなも私達に詰め寄ってこない訳だし」


戦後復興妖精「ふーん、同情してんのかと思ったわ……けど、よくよく考えりゃあんたが同情なんかする訳ないわな。腐るほどロスト空間で人の不幸を眺めて来たんだから、あの程度じゃ甘えんなってレベルだろ」


此方「ノーコメントで」


戦後復興妖精「元凶だもんなあ。なにいっても叩かれるわな。黙ってんのが一番なのは同意だけども……まあ、ここらはいいや」


戦後復興妖精「ところでまだあんたが拉致されて尋問されていた時の供述書に書いてねえことがあった。想力周りは全て抜かれてたみたいだけども」


戦後復興妖精「私も知らねえんだよな。製作秘話か」


此方「ん? 何のこと?」


戦後復興妖精「リコリス棲姫といい」


戦後復興妖精「深海鶴棲姫といい」


戦後復興妖精「なんで彼岸花?」


戦後復興妖精「再会、あきらめ、転生 悲しい思い出、また会う日を楽しみに。こんな花言葉だし、深海棲艦的に考えてすげえそれっぽいんだが」


戦後復興妖精「深海棲艦担当したの当局だろ? あいつがそんな乙女でロマンチストみたいな花言葉添えて彼岸花のイメージにする訳ねえよな。ごめ、パーパが花言葉込めましたとか、いっててゲロ吐きそう……キモすぎる」


オエエエ


此方「きたなっ……」


此方「ああ……私も当局から聞いた訳ではないよ。いくら当局が私の分身存在といっても知ってる通り、本官さんの出会いを境にそれぞれ別の個性にわかれたから」


戦後復興妖精「でも解釈は信憑性が高い。製作メンバーの一人だからな。瑞鶴や武蔵、瑞鳳、海外だとイントレピッドやホークビルか。そいつらの史実、そしてリコリスのほうは完全基地型だろ? 色々と考えたんだが……」


此方「考えて答えてみたまえ」


戦後復興妖精「……考えるから待て」


戦後復興妖精「……、……」


戦後復興妖精「蜘蛛? 蜘蛛の糸? あいつら理性覚醒してねえやつ馬鹿みたいに思い入れのある場所にいるよな。まるで蜘蛛とか、蜘蛛の糸に絡め取られた虫みてえに」


此方「お、頭が柔軟だね」


戦後復興妖精「パーパの思考に沿ってみただけだ」


戦後復興妖精「蜘蛛はスパイダーで、彼岸花は英語表記だと」


戦後復興妖精「Spider lilyだ。蜘蛛の百合」


戦後復興妖精「スパイダーの語源がスピナーで」


戦後復興妖精「スピナーの意味は紡ぐ人だっけ?」


戦後復興妖精「考え過ぎ? どこで思考止めればいいわけ?」


此方「正解は特にありませーん」


戦後復興妖精「なんだそれ……」


此方「分かる訳ないんだけどね。彼岸花は蜘蛛の百合。当局はその蜘蛛の百合からも派生した細かな意味をつけたもの」


此方「そうだなあ……深海鶴棲姫とリコリス棲姫はかなり強い能力値に設定した艦載機メインの種だから、当局のイメージでは蜘蛛の子を散らすって言葉から始まって」


此方「結局、彼岸花に収まった」


戦後復興妖精「重要なとこ飛ばしてるんですけどー」


此方「私が蜘蛛とか嫌だったから当局にやめさせた」


戦後復興妖精「超納得できた」


此方「彼岸花に差し替えたよ。だって別に蜘蛛じゃなくて彼岸花でいいじゃんよ。だって当局はリコリスとか深海鶴棲姫を蜘蛛好きにして蜘蛛を集めるように想設定しようとしたからねえ……」


戦後復興妖精「リコリスが顔面に蜘蛛つけたり、深海鶴棲姫の髪が蜘蛛の足になってる絵面を想像して笑うから止めてくれ(笑」


戦後復興妖精「妖怪みたいだ」


此方「蜘蛛は妖怪っていわれてましたし、百合だって霊的なお花ですしー」


此方「それに人間って深海棲艦の存在をよく分かってなかったから、彼岸花の意味を考えるでしょ? 大体の人は花言葉に繋げて思考するから、さっきあなたがいった通り、転生とか思い出とかそれっぽいじゃん?」


此方「トビーさんにもいったけど艦隊これくしょんには解釈が色々とあるんだって」


此方「強いていうなら皆が一番納得したので決めれば的な」


戦後復興妖精「閑話休題」


此方「向こうの切り札さ、ズズムちゃんの想力工作補助施設って反転鏡面彼岸界の管理運営で、彼岸花想の資材で想の魔改造じゃん。戦力としては反転鏡面彼岸界で海の傷痕と同等程度だろうけど」


此方「深海核棲姫だっけ。壊-ギミック利用して艤装と肉体と、彼岸花想。その3つを溶け込ませたものでしょ」


此方「雨村レオン君もよく考えたね。消されてた辺りはそこらかなって思ってる」


戦後復興妖精「想力漏れた時点で軍艦の枠をはみ出すのは当然だろ。あんな超技術あって、艤装やら何やらの形にすんの、海の傷痕だけだわ」


戦後復興妖精「とまあ、そこ置いといて。私も同見解。あそこのもん使って最強作るとしたら1つしかねえよ。まあ、准将なら報告聞けば分かる。最悪、戦いの途中に気づくだろ。ブレイドのやつが兵器開発に参加してたらこっちの連中も知ることで来たのにな」


此方「だったら、ブレイドさんも明石えもんと同じく消されてるかと」


戦後復興妖精「まーたオープンザドア君があんたと戦った時みたいに、戦争しながら死ぬ気で謎解きする戦いになるじゃん。かわいそ」


戦後復興妖精「まあ、それを踏まえても佐久間式で勝てるけどな」


此方「そうだね。佐久間式は本当に心から驚いたよ。最後の電ちゃん並に驚いた。ちなみに私が驚いたのは2世紀で4回くらい」


戦後復興妖精「これからはもっと驚いていこうな? そんなガキのナリで200歳相当にすかしてっと周りから浮くだけだぞ?」


此方「心は少女だと確信したから問題はない」


戦後復興妖精「あっそ……変わってるの範疇で収めとけよ。下手なことばっかいってると、あんた世界で雷越えの信仰対象になるぞ」


此方「閑話休題」


此方「……多分だけどさ、ズズムちゃんは想力工作補助施設の使い方がめちゃくちゃ下手くそ。電ちゃんと同じくらいね。私やあなた、初霜ちゃんみたいには使いこなせない」


戦後復興妖精「だろうな……雨村君も同じだな。あいつらロスト空間の管理がくっそ下手くそ。もっと初期からあの能力を極めとけば良かったんだ。メモリーの通り、レオン君は正攻法を目指すのに時間かけて」


戦後復興妖精「結果、自分の首締めた感じか」


此方「あなたの存在でそうなったように見えたけども」


戦後復興妖精「神風が契約履行装置に書き込んだ願いのせいだろ。あいつらに関しちゃ自業自得だしな」


此方「反転鏡面彼岸界、か。あなたがつけたんだよね」


此方「深海鶴棲姫のほうの想力工作補助施設の能力そのままでさ、サーバー名にもしたらこんがらがるじゃん?」


戦後復興妖精「むしろ分かりやすいだろ。間違ってもねえはずだ。被特攻性質なんて箱庭への侵略を毛嫌いした深海鶴棲姫の精神が影響した環境作用の一つに過ぎねえ。あそこの醍醐味はあのツンデレ深海鶴棲姫の本音を現実にするギミックだろうが」


戦後復興妖精「キマイラといざこざしてる間に、私はガチで調べて結論出したから、今余裕こいてんだが? 間違ってんの?」


此方「『被特攻性質なんて箱庭への侵略を毛嫌いした深海鶴棲姫の精神が影響した環境作用の一つに過ぎねえ』っていったよね」


此方「なるほどなるほど」


此方「私は違うと思う」


戦後復興妖精「……あ?」


此方「まず雨村レオンと深海鶴棲姫は想力工作補助施設の使い方が下手くそなのは同感だけども、恐らく雨村レオンは深海鶴棲姫の想力工作補助施設、つまり反転鏡面彼岸界に干渉できないんだよ。反転鏡面彼岸界の管理権限が深海鶴棲姫にあるから」


此方「だからあなたのように『被特攻性質なんて箱庭への侵略を毛嫌いした深海鶴棲姫の精神が影響した環境作用の一つに過ぎねえ』って思っても仕方ないかなー。実際、深海鶴棲姫もそうだろうし、勘違いしやすい点だ」


此方「『×1.5倍の被特攻性質』、これは深海鶴棲姫の能力ではないかもね」


戦後復興妖精「じゃあなんだ」


戦後復興妖精「……そういや」


戦後復興妖精「デスメタル風ではない英語の歌が聞こえた」


此方「報告した?」


戦後復興妖精「ああ。その歌詞を調べてた」


戦後復興妖精「北アイルランド出身のシェパーズっていう5年前に解散したバンドのブレイブリーっていう歌の歌詞っぽい」


戦後復興妖精「……まさか」


此方「多分、深海鶴棲姫自身も含めて、まだだーれも気がついていないと思う」


此方「准将が気づいたか、気づいてないかは知らない。気づいてない場合、戦闘中に准将が気づくか、神風ちゃんの感覚探知が先かってところ」


戦後復興妖精「大丈夫なのか?」


此方「大丈夫だよ。あそこにあるもので出来る最強の武器は私もあなたと同じモノだし、それを踏まえても総合力ではこっちのほうが上だ」


此方「私の感覚探知に過ぎないけどね?」


此方「あの反転鏡面彼岸界には」


此方「……」


戦後復興妖精「……」


此方「……」


戦後復興妖精「なんだよ!?」


此方「雨村レオン、空母水鬼、深海鶴棲姫の3名のはずだけど」


此方「あの反転鏡面彼岸界には」



此方「想力工作補助施設」
















此方「4つあったよ」





【7ワ●:作戦】



電・わるさめ・神風「はい」


提督「ようこそ」


電「それで司令官さんはこの人に用事があるんでしょう? 私達は、この場で聞いていてもいいのです?」チラッ


提督「はい。お待ちください」


冬場「あー……すみませんね。柚……瑞鶴さんから話は受けましたし、人事のほうにも話は通っていて、後は適性検査を見た倫理課の判断だけみたいなんですが」


提督「わざわざご足労頂きありがとうございます。砕けた場なので、どうぞごゆるりと座ってください。皆も楽にしてくれて構いません」


冬場「……失礼します」


神風「あ、みなさんお茶です」


わるさめ「ありがと。秘書が板についてきたねー」


神風「まあ……覚えることクソ多くて難しいですが、人間関係だけは良いので居心地は悪くないですよ」


わるさめ「へえー」


電「立場考えてクソとかいう言葉は使わないほうがいいのです。お前、司令官さんの顔に泥塗ることだけは避けろ。公的立場で責任があるってことは批判されやすいのですから」


わるさめ「社会とか悪にする人多いけど、その場合司令官は火が飛ぶ立場だからなー」


神風「……そうですね、気を付けます」


神風「……というか、倫理課長、私は冬場さんについての話を把握してませんが、書類関係はどうなって」


提督「ごめんなさい。後回しにしました」


提督「広報情報処理課というところ作るんですが」


提督「どうです? お力を貸して頂けると助かります」


電・わるさめ・神風「ヘッドハンティング……」


冬場「詳しく話をお聞かせ願いますわ」


提督「想力省の広報情報を管理する仕事です。機密の関係上、外部委託は出来ないんです。ざっくばらんにいうと想力省の全部署におけるウェブ作成および情報管理の仕事」


提督「身内の個人情報も含めて」


冬場「俺、ドローンをハックして被害出した犯罪者なんですが、そこら辺は?」


提督「ぶっちゃけるとあなたの犯罪行為に人死には出てないので許容範囲です」


提督「別にそういうのはうち、気にしません。ぶっちゃけると、ですよ? 今の政治家や官僚だって何人か前科持ちいますよ。政界っていうのはやっぱりはめたはめられたのややこしさもありますからね……」


提督「要は『これからが全て』だと思って頂ければ間違いありません」


冬場「俺、国家資格持ってませんよ」


提督「その部署は要りません。あったほうがいいのですが、そういうのは追々で構いませんよ」


冬場「まあ、すげえ全うな仕事でやりがいもあるんでしょうねえ……」


提督「そうですね。やりがいっていうのは大事ですよね」


冬場「……そうですね。なにか1つでもあれば大体のことは耐えられもするような気もします。エリートコース歩んできた俺が犯罪者になったこと考えれば、尚更です。まあ、銀行員なんて俺の性に合ってなかったんでしょうねえ……」


提督「ブレイド・ハッカー事件……銀行辞めてからハッカーとして歩んだ人生は、どうでしたか」


冬場「まあ、数年間でお上に捕まっちまいましたが、少なくともミスにびびって周りの顔を伺ってばかりの日々よりは楽しかったですよ。お宅の柚樹ちゃんが瑞鶴として建造した時ですから、あれからもう10年以上経ちましたかね……」


冬場「気づけば俺も40歳ですかね」


提督「まあ、アジアの貧困国から日本に不法入国させてね……それでもなんとかやれる手段があるっていうのは裏社会の業の深さというか、辟易です」


冬場「ただの意見ですが、悪いことは誰かのためにもなるし、良いことは誰かのためにならないこともあるんですよねえ。色々なやつがいますし、様々なもんが見えてきました。楽になりてえなあって思いながら生き続ける日々ですわ」


冬場「一種の悟りを開きかけたと思うくらい」


冬場「あなたはもっと悟り開いてそうですよね。若えのに幸か不幸か、世界規模で色々なもんを見ちまって、そこに座ってる訳ですから。英雄、だなんてちと違うかもですが」


提督「ただの若造です。正直、自分は働きたくないし、がんばりたくないし、ひっそりと晴耕雨読の日々でも送りたい程です」


提督「夜になって灯りが消えるとほっとして、晴れて外から人々の声が聞こえるのが嫌いで、雨の日のほうが好きで、雨音がなぜか心地よいです」


提督「人にあれこれ命令するのも嫌いだし、人にあれこれ命令されるのも嫌い。ただ自分は海にいる理由だけがあっただけです」


提督「そんなやつが世界救っちゃった訳です」


わるさめ「茶より酒のほうがいいんじゃね……」


神風「出す訳ないでしょ……」


提督「冬場さん、せっかくですからこれからの人生は全うに正しく、胸張って生きましょうよ。人並みの幸せって憧れますよねえ。自分は男らしくないので、嫁とか子供が出来てこそ男は強くなるっていいますが」


提督「かったるい」


冬場「弟と全く似てないですね……」


提督「まあ」


提督「……返事は後日で構いませんよ。出来れば1ヶ月以内に」


冬場「いや、この場で首を縦に振りますよ」


提督「そうですか。なら、専用の動画サイト作ってください。そこに」


冬場「……これは何のチップですかね?」


提督「メモリーカードです。想力の情報はもちろん、電さんの建造から、この鎮守府の歴史、戦争終結を辿りまして、そこから戦後編、最初期の記録から、我々と戦後復興妖精の対決、そして」


提督「これからのことも。雨村レオンのことは聞きましたよね」


冬場「少し……」


提督「そのことも、です」


電・わるさめ・神風「……」


提督「個人情報に触れるところは各々から許可を取ってあります」


提督「我々、対深海棲艦日本海軍の歴史の全てです」


提督「膨大なデータ量ですが、要請もありましたから世界に情報開示し、判断は各々に任せます。勝手に結論出すと色々なところから反感買いますし、これからの国民の生活にも多大に関わって来るものです」


冬場「分かりました」


コンコン


提督「どうぞ」


瑞鶴「失礼……あ、冬場さん来たのか」


冬場「柚樹ちゃん、軍ぶっ潰す仕事ってこれのことか?」


瑞鶴「戸籍名で呼ぶな……ってもういいか。下の名前で呼ばないでもらえますかー?」


瑞鶴「まあ、どうせ解散するからね。正直、あんたである必要もないけど、私はもうあの事件のことなんとも思ってないし、やる気があるのならやれば?」


冬場「……防衛面に期待されてますよね?」


提督「話が早い。主に期待してるのはそこです。あなたのハッカーとしての腕です。うち、すでに海外のハッカー達から攻撃受けてまして、なんか予告とかも動画であがってますしね。全く心当たりのないことを吹聴されてもいます」


冬場「まあ、表の世界から探すのは苦労しますよね。ハッキングの腕においてどうしても犯罪行為に触れてるやつのほうが強いですし。表に出ていてかつ犯罪歴のない人間の実力あるやつは大体、国が合法化させて育てたやつだし。大体は俺みてえな無法者を抱え込みますわ。そっちの時和のお嬢ちゃんは裏でも名は聞こえました。あれでも……」


冬場「……やめておきますか」


提督「グレーなことはしておりますね……彼女はスカウト失敗しましたし」


提督「まあ、データは後日お渡ししますので、人事のほうに戻って頂ければ細かい話を聞けるはずです。こちらからは自分の連絡先を渡して、終わりです」


冬場「承知しました。それでは失礼します」



2



神風「……大丈夫なんですか?」


提督「多分。彼、日本で一番の腕ですからそこのほうが大事です。この国、機関のネット周りが弱いんですよね。これまた政治的問題により導入している海外システムのせいですが、まあ置いておきまして」


ガチャ


ウォースパイト「グッナイ♪」


提督「こんばんわ。他の観戦希望者は?」


ウォースパイト「私が知ってるのは、ろーちゃんとガングートさんくらいですね。後でって」


瑞鶴「うちからは翔鶴姉とづほ、後はアッシーと雷ママと響か。他の皆は来ないって」


わるさめ「マジかよ……みんな興味失せたのか……」


瑞鶴「みんな大事なことがあるのよ。明日……まだ明後日か。みんな門を出たらお別れだからね。私や翔鶴姉やづほはトビー&ズズムのほうの親ではあるから一応」


電「まあ、見ていて楽しいものでもないですしね」


神風「良いことです。みんな心配してない」


わるさめ「これは信用の裏返しではあるのかなあ」


提督「ですね。そろそろ出撃しますか」


提督「多分、朝には戻ってこられるでしょう」


ウォースパイト「そういえば准将」


提督「はい」


ウォースパイト「お見合いの件、聞いてます?」


提督「ありましたね、そんなの」


ウォースパイト「その内の一人が私です」


電・神風・瑞鶴「!?」


ウォースパイト「実はですね、その件で日本に来ました」


提督「申し訳ありませんが、お断りします。あなた程の方なら他にもっと良い人いますよ。あなたの今後の幸せを願っております」


ウォースパイト「」


わるさめ「さすがとしか」


提督「では作戦会議です」


提督「今回は時間がなかったので文書として用意してはいないので口頭で説明します。分からないことがあれば質問どうぞ」


電「わるさめさん、お前メモ取るのです」


わるさめ「……そんな専門的?」


提督「別にそこまで」


提督「今回話すのは」


提督「敵の手の内の見当ですが」


提督「当たっていると捉えてくれて結構です」



3



提督「まあいくつか予想外もありましたが……」


提督「向こうの切り札も起こり得る理不尽も今回は確信は持てましたので」


提督「試合には勝てます。勝負にも恐らく勝てます。こんな感じです」


提督「それで反転鏡面彼岸界、雨村レオンの想力工作補助施設を加味してあそこで最強の装備を作るなら、明石えもんが目をつけた点」


提督「深海棲艦は艤装が本体であるから、肉体は融通が利く。ここらの分離は初霜型等に用いられている浮遊ギミックですかね」


提督「彼岸花想というエネルギーの形を利用して、使い捨ての肉体を器に」


提督「『ロスト空間を深海鶴棲姫の肉体の内側に作ろう』です」


提督「想力原子炉内臓。移動する世界最強の要塞」


提督「現状で考え得る限り、最強の生物兵器です」


提督「まあ、明石えもんとやらの発明、そしてブレイドさん、ピーターズの世界でも開発されていなかった兵装ですね。可愛くいえば」


提督「『四次元ポケット』」


わるさめ「それがシリアス戦争に出たらヤバすぎ」


提督「もう想力の流れは反転鏡面彼岸界に行かないように塞き止めていますから、これ以上のエネルギーは補給できないから、敵の資源は無限じゃないです。あの人達の今を生きる力次第ですけど、想力工作補助施設を開発してしまったってことは」


提督「限界が見えたってことです」


提督「なんでもできる、から、特定の分野に制限されちまった」


提督「はっつんさんを見たら分かりますけど、それでも十分脅威ではあります」


提督「全艦種の適性持ち……海色の適性持ちの適性が狭まっていく、という認識で合ってます」


提督「さてわるさめさん聞いておりますね?」


わるさめ「切り札は体の内側にロスト空間作った想力原子炉内臓」


提督「はい。では続いて」


提督「トビー&ズズムの手の内について、です」


提督「トビーさんの構成成分は」


提督「翔鶴艤装80%、由良艤装10%、長門艤装5%、雪風艤装5%」


提督「まともに機能するのは空母水鬼艤装と翔鶴艤装」


提督「+想力工作補助施設。超再生力」


提督「+鬼の金棒。ピーターズの秘宝です。軽いし、欠けない、そんな武器」


提督「後は神風さん対策になにか身体に仕込んでいると思ってください。身体能力も高く、ここは翔鶴さんだと認識して頂ければ」


提督「さて、ズズムさんですが」


提督「瑞鶴艤装50%、瑞鳳艤装30%、武蔵艤装10%、イントレピッド5%、ホークビル5%」


神風「……」


わるさめ「ホークビルってアメリカの潜水艦だったっけ?」


電「なのです」


ウォースパイト「確か神風さんと因縁のある相手ですよね」


神風「史実の軍艦のほうのね。船団護衛の最中にケンカ売られて痛み分けってところかしら」


提督「深海鶴棲姫にはその5つの艤装が混じって建造されます」


提督「深海鶴棲姫の艤装は魚のようなモノがありますよね。それが潜水艦成分です」


提督「そして深海棲艦は本体が艤装ですので、理性覚醒した深海鶴棲姫は、潜水性能を得ていると考えてください」


提督「+擬似ロスト空間なので、神風さん、擬似史実砲にお気をつけください。史実効果再現はあり得ますから」


神風「了解……別にホークビルに沈められた訳じゃないけど、警戒には値する」


提督「雨村レオンは船渠棲姫。あれはブレイドの世界から持ってきたジャーヴィス艤装をカスタマイズしたもので、微再生能力とジャーヴィスの初期装備以外ないです」


提督「まあ、お三方は雨村レオンは気にしなくてもいいです。ここは随時こちらから指示を出します」


電・わるさめ・神風「了解」


提督「さて」


提督「今回、起きうる理不尽について」


提督「絶対に頭には入れておいてください」


提督「想定外の理不尽はジャーヴィス」


電・わるさめ・神風「……」


提督「長くなります」



4



ウォースパイト「なぜあの子の名前が?」


提督「あの子は雨村レオン達と関係あるからです。ウォースパイトさんとイギリス海軍から情報を開示してもらいました」


提督「ガングートさんからの証言や、イギリス海軍の資料で『最終世代ジャーヴィス』の情報は得ました。彼女は勇敢で活発な性格、イギリスでは日本でいう『丙の鎮守府』に回されておりました。過去、参加した作戦の情報、戦果も踏まえて」


提督「本人も色々な国に行きたいと希望を出して、海外駐屯組に回されていました。日本でいう丙の鎮守府に所属していた通り、敵の撃沈よりも自分の命を優先する兵士でした。ウォースパイトさん、そうですよね」


ウォースパイト「はい、間違いありません」


提督「そしてフィリピン駐屯時に日本軍と協力して、エンガノ岬沖海戦に参加しています。瑞鶴さん達が海峡夜棲姫勢力に大破した翌日です」


提督「その時のジャーヴィスさんの戦い方は」


神風「鬼ヶマス到着で、海峡夜棲姫と交戦、大破撃沈して艤装全損傷、孤立した瞬間に彼女は泳いで逃げました。扶桑さんを旗艦とした乙中将の艦隊によって、海峡夜棲姫は撃沈しております」


提督「ジャーヴィスさん、海軍の教育通り、死ぬくらいなら逃げてます」


提督「艦兵士の中での天辺を目指していたようです」


神風「……待ってください」


提督「はい」


神風「そんな性格の彼女はどうして、最後の黒海の欧州棲姫に対して自ら死ぬような真似をしたの? 確か艤装壊れて徒手空拳で戦い、ガングートさんの砲撃で欧州棲姫とともに沈み、死亡撃沈した、と」


神風「それこそガングートさんがいたんだから、ガングートさんに任せて泳いで逃げたのなら生き延びられた、かもですよね?」


ウォースパイト「……」


わるさめ「最後、死んだ黒海の戦いだけ矛盾した行動を取ったってことか。確かに疑問ではあるけど、あるあるだよ。熱くなったり使命感に駆られたりさあ」


提督「もしくは」


提督「『死んでもいい、または死んでもなんとかなる』と思わないと取れない行動ですよ。まあ、わるさめさんのいうように、その時たまたま感情的に……もあり得ますが、疑問ですよね」


提督「ジャーヴィス、こいつ海軍の情報やみんなの証言からも、国のために命を捧げて自ら死ぬのをよしとするやつじゃないです」


ウォースパイト「間違いない」


提督「でも間違いなくジャーヴィスはこっちで死んだわけです」


提督「ここです」


電「……、……」


電「そうじゃなかったとしたら」


電「雨村レオン抜きで過ごした最初の5日間、そこでなにかしたのです?」


わるさめ「確か、トビー&ズズムと各世界を探検してたんだっけか」


わるさめ「……そういえば雨村が5日間が過ぎて帰って来た時、彼女達、ロビーにいたな?」


わるさめ「雨村の想力工作補助施設の力なしでどうやって各サーバーからロビーに戻ったんだ?」


神風「……雨村の記憶が、一部不自然に消えていたのは、戦力が丸裸になるためそこをひみつ道具かなにかで消したまでは確定。そして明石を消したのは、その戦力に手を加えた張本人であるため、情報漏洩の処置も、まあ、外れてはいないはず」


提督「なら、ジャーヴィスに関しては?」


提督「雨村レオンや空母水鬼のメモリーにはなかった。同じように消したのか? いや、消したのは空母水鬼のメモリーからして自分達がブレイド世界に行った時の前後だから、今ジャーヴィスに疑問を生じさせる箇所も消してるはず」


提督「……だとしたら」


提督「あいつらも『知らない』し、『気がついていない』のかも?」


提督「羊飼いのジャーヴィスとかいうお転婆娘からすっげえ嫌な予感してきたんですよ……」


提督「ここから理不尽の見当です」


提督「その5日間でジャーヴィスの身に起きたこと。空母水鬼を捉えてメモリーを抜いた時に、分かったことなのですが」


提督「初日に明石えもんの世界でジャーヴィスさんと映画鑑賞した後に、公園のホームレスグループと暴走族との問題に首を突っ込み、それを解決した後、事の成り行きでとある人の結婚式の二次会場に行ったのですが」


神風「展開が謎過ぎる……」


提督「その二次会出席者の顔ぶれの中に『明石』と思われる人物がいました。そのパーティーを終えた後、空母水鬼の記憶から15分ほどジャーヴィスが消えて、その後の応答に不自然な点が見受けられました」


ウォースパイト「ちょ、ちょっと待ってください」


ウォースパイト「ジャーヴィスは」


ウォースパイト「……死んだ、のですよね」


提督「はい。『一人は確実に死にました』」


ウォースパイト「……」


提督「さて明石えもん界のひみつ道具ですが、禁忌とされた道具が5つあります」


提督「『明石えもん印の折り畳み式ハウス』と『明石えもん印のどこでもドア』と『明石えもん印の分身ハンマー』と『明石えもん印のタイムコピー』と『明石えもん印の魔法辞典』です」


提督「『明石えもん印の折り畳み式ハウス』は分かりやすくいうなら、空間を折り畳んで持ち運び可能、そして時間の流れが外の世界よりも速い。いうならば超広い精神と時の部屋です。特訓場所ですね」


提督「『明石えもん印のどこでもドア』は本人が行ったことのある場所へ空間を繋ぐ扉です。恐らくこれで雨村レオンなしでオフィスの世界へ戻ってきました」


提督「そして『明石えもん印の分身ハンマー』は叩いた相手と同じ存在を作り出す。明石えもん世界のぷらずまさんにお聞きしたと思いますが、彼女から聴取を取るために分身作って拷問かけていたそうですね」


提督「そして『明石えもん印のタイムコピー』、これは『タイムテレビ』を応用した発明品です。現在と過去のモノを複製できます」


提督「『分身ハンマー』と『タイムコピー』で同じ人間を作り出せます」


神風「(;-ω-)ノタンマ」


神風「それでジャーヴィスをコピーしたにしても……」


提督「一番ヤバいのが『明石えもん印の魔法辞典』です」


提督「これは戦後復興妖精さんが持っていた『ご都合主義☆偶然力』+『生死の苦海式契約履行装置』の究極版です」


提督「辞典に願い事を書いて、その願い事を叶えるための呪文も書きます」


提督「その呪文を唱えると、願い事が叶う」


神風「ヤバすぎ……」


提督「ジャーヴィスが明石えもんと接触したとして、まあ、世界の常識に疎い彼女を明石えもんは疑問に思ったかもしれませんね。そしてそれを証明するひみつ道具もいくつかある」


電「ジャーヴィスは分身を作って、本体のほうは明石えもんの世界に居座ったと?」


わるさめ「まあ、魔法辞典があるならごまかしは効くかな?」


提督「効きますね。自分の予想ですが、あの世界を体験したジャーヴィスさんが艤装にその想を蓄えないとは思えません。なので此方さんが回収出来てないのを疑問に思い出しましたが、例えばその『魔法辞典』で」