2019-08-15 03:18:17 更新

「ふぅ…疲れたぁ…」

日も傾いた頃、路地を一人の少女が歩いている。

「和服の着方教えてもらえてよかったなぁ…夏祭りで恥かかなくて済みそう」

少女、近衛榛名はつい先ほどまで薙刀のお稽古をして、ついでに和服の着方も教わっていたのだ。

榛名「帰ったらとりあえず寝るかなぁ…」

あくびを噛み殺しつつ家路を急ぐ。


駅のホームに着き電車が来るまでまだ時間があったので、ベンチに座って休む事にした。

榛名「ふぁ…眠い…」

なんだかここ最近すごい眠い。

次第に荷物を抱えたままだんだん船を漕いできてしまう。

榛名「…」

ものの数分で意識が朧げになってきていつの間にか眠ってしまっていた。


『貴女の愛を頂戴』

誰かもわからない女の声が夢の中で聞こえた。

少なくとも友達でも親族でも有名人でもない。

ただ、惹かれる様な声。


榛名「…はっ」

いきなり誰かもわからぬ声を聞いたので目が覚める。

榛名「今のなんだったんだろう…」

意識が徐々に覚醒してくる。

ふと、周りを見渡すと自分の荷物が消えていて見知らぬところに座り込んでいる。

榛名「不気味なところ…まだ夢の中なのかしら…」

いきなりの事すぎて、何も確認することができない。

とりあえず自分の頬をつねってみたが、確かな痛みがある。

榛名「痛い…てことは現実…。えぇ…早く帰らなきゃ…」

とりあえず立ち上がって土を払う。

榛名「なんか…貧民街みたい。晴れてるのにこんなに暗いのね」

暗くてそこまで広くない路地を、どこか大通りに出るために歩く。


榛名「出口ないなんてないよね」

かすかな不安が心をよぎるが、迷ってても意味がないと思ってとにかく歩く。

歩く。歩く。

数分歩いたが大きい通りも人っ子一人も見ない。

榛名「誰もいない…見つかったら見つかったで大変そうだけど…」

いかにも治安が悪そうではある。


ごろつきA「おいそこの嬢ちゃん」

榛名「はい?」

ごろつきA「そこで何してんだ??」

榛名「えぇっと…その…」

後ろのごろつきたちが何やらこそこそ話している。

ごろつきB「久しぶりに上玉じゃねえ?ヤっちまおうぜ」

榛名「っ…!」

その言葉を聞いて後ずさる。流石に榛名にも男の言った意味が分かった。身の毛がよだつ。

しかし後ろからも数人のごろつきが来る。

榛名(やばい…)

ごろつきたちがじりじりと近づいてくる。

榛名「嫌っ…」

ごろつきの一人に腕をつかまれる。

榛名「離して!」

腕を離そうと抵抗する。

しかし相手の力も強い。

ごろつき「あんま暴れるとケガするぜ」

榛名「いいから離しなさい…!」

思いっきりごろつきをはたく。

ごろつき「このアマ…!」

片手で首をつかんで壁に思いっきり叩きつける。

榛名「かはっ…」

ごろつきがつかんだ腕を離して両手で首を絞めにかかる。

榛名「やめ…あっ…」

抵抗するがだんだん意識が遠のいてくる。

ごろつきc「殺すなよ~」

ごろつき「わーってるよ」

榛名「嫌ぁ…」

全身から力が抜けて目の前が真っ暗になる。


次に目を覚ました時に最初に目に入ったのは知らない薄暗い天井だ。

榛名「ここは…」

意識が鮮明になると同時に、腹部に鈍い痛みが感じられる。

ごろつき「やっと起きたか」

榛名「あなた…何を…」

ごろつき「自分の体見てみろや」

榛名が目を下に向けると、服が剥かれていて白く透き通るような肌が惜しげもなくさらされている。

榛名「なっ…!?」

手で隠そうとするが、腕が鎖に結ばれていて動かせない。

榛名「服返して!」

ごろつき「立場が分かってねえみたいだなぁ」

後ろから3人ほど全裸の男が入ってくる。

榛名「来ないで…!」

ごろつき「そいつは無理な相談だ」

体に触ってくる。

榛名「嫌ぁ…」


ほかのごろつき達も執拗に体を触ってきて暫くして行為に及んでくる。

しなやかで美しい体の隅々までが犯されていく。

感じたことのない痛み、仲までえぐられるような痛み。

もはや絶望しか感じない。

始めては優しく、好きな人に捧げたかった。

榛名は三、四回目には意識が闇の中に落ちていた。


『あらら…死んじゃったみたいだね』


『まぁ君は戻るんだから別にいいけど…』


『ふむ…君のものが欲しくなった。代わりにいいものあげるから許してね』

榛名がこの声を聞いたと思ったら次の瞬間最初の路地で目が覚めた。


榛名「え…?さっきまで…え?」

軽く混乱しているが、目の前は事実は変わらない。

いつの間にか戻っているという事実。

しかし、今度はすぐに行動した。

榛名「よくわかんないけど…さっきと同じなら早く逃げなきゃ」

最初と反対の方向に駆け出す。

榛名「体が軽い…?」

さっきの数倍以上速く走れていて戸惑いを見せる。


ドンッ

榛名「痛っ…」

ごろつき「痛ってえなぁ…」

榛名「あっ…ごめんなさ…っ!?」

顔を上げるとそこには先ほど襲ってきたごろつき達がいた。

ごろつき「あぁ?」

榛名「逃げなきゃ…」

後ろから出てきたごろつきの仲間たちは先ほどと違って武器を持っている。

榛名「嘘…」

ごろつき「抵抗しないで捕まるならこいつは使わねえが…」

榛名(さっきみたいに走れるなら逃げ切れる…はず)

ごろつきが榛名の腕をつかむが榛名が逃げようとする。

ごろつき「手足の一本折ればおとなしくなるか」

榛名「離してっ!」

腕を振り払おうとしたところ、思わぬ力が出た。

ごろつき「うおっ!?意外に力強ぇ」

ごろつきが囲んできて、手に持つ武器で切りつけようとしてくる。

榛名「やめてっ!」

ごろつきのつかむ腕を振りほどく。

振りほどかれたごろつきが尻もちをつく。

ごろつき「痛ぇ…やりやがったな…やっちまえ!」

ごろつきが手にした武器を構えて襲ってくる。

榛名「ひっ…?!」

一瞬驚いて体が硬直してしまう。

その隙を見逃さず剣やハンマーで攻撃してくる。

榛名「ぐっ…がはっ…」

吹き飛んで、壁にたたきつけられて血を吐く。

さらにお腹にメイスがたたきつけられる。

榛名「ぁ…っ」

意識が遠のいていくが、気力を振り絞って立ち上がり逃げ出す。

榛名「はぁ…はぁ…出口は…」

後ろから弩や弓が飛んできて何発か背中に刺さってバランスを崩すが何とか耐える。

ごろつき「なんであれだけやって死なねえんだ…」

地面に滴ってる血を追ってごろつきもやってくる。


暫く逃げ続けると、先に明るい通りが見えてくる。

榛名「あそこまで…いければ…」

ごろつき「テメエ!待ちやがれ!」

飛び道具が後ろから絶え間なく飛んでくる。

榛名「あと…ちょっと…はぁ…はぁ…」

あと明るい通りまで二メートルというとこで、ごろつきの一人が放った弩が足に、もう一人の放った弓が背中に刺さって榛名を転ばせる。

ほかの者が放った矢は通路のほうに飛んで行った。

がその場で気にする者はいなかった。


榛名「嘘…」

ごろつき「手間かけさせやがって…」

寄ってきて髪を掴んで顔を強引に上げさせる。

榛名「そんな…」

ごろつき「楽には死なせてやらねえ」

ごろつきが榛名の足めがけて斧を叩きつけるため振りかぶる。

榛名(嘘…また死ぬ…?)


目をぎゅっとつぶる。

しかし、いつまでたっても斧が振り下ろされない。

不思議に思って恐る恐る上を向いてみると、ごろつきの手首から先がなくなっている。


「何をやっている」

ごろつき「て…テメエは…」

路地の出口に、緑色の髪の凛々しい女の人が立っている。

榛名「た…助けて…」

男が硬直しているうちに這って女の方へ向かう。

「その言葉受け取った」

ごろつき達が逃げようとするが女が腕を振るだけで足が切れて転ぶ。

女の後ろから猫耳の女の子が出てくる。

「にゃにゃ?大丈夫かにゃ?」

榛名「助けて…」

緑髪の女が目配せして猫耳の娘が治療を始める。

その間に緑髪の女がごろつきを拘束する。

暫くして猫耳の娘が治療を終えて一息つく。

ほぼ同じタイミングで安心感によって榛名が気を失ってしまう。

「ありゃりゃ。どうしましょ?クルシュ様」

「ふむ…とりあえずはこやつらを引っ張っていかなきゃいけないからな…。事情も聴きたいし手ごろな宿屋にでも連れて行っておいて診ておいてくれ」

「了解しました~」

抱っこして猫耳の娘が宿屋へ連れて行く。


榛名が目を開けるとそこは清潔感のある高級そうな部屋だった。

「あ、目を覚ました?」

榛名「は…はい…」

「とりあえず、外傷は全部直したからね。ただ、抜けた血は戻せないから激しい運動はしないでね」

榛名「ありがとうございます…なんとお礼をしたらいいのか…」

「お礼…ねぇ…。じゃあお話し聞かせてくれないかにゃ?」

榛名「…?わかりました。何でも話します」

「ん。いい返事。まず気になったのがね?あんだけ出血してたのに生きてたね」

榛名「それは…奇跡としか…」

ガチャ

扉を開けて、助けてくれた緑の髪の女が入ってくる。

「おお。目を覚ましていたか」

榛名「おかげで助かりました…ありがとうございました」

「いや、助けたのはフェリスだ。礼はフェリスに言うといい」

榛名「フェリス…さん。改めてありがとうございます」

フェリス「いいっていいって~」

榛名「そういえば、名乗ってませんでした。私、近衛榛名と申します」

名乗りと同時にベッドの上で深々と礼。

フェリス「ハルナちゃんか~いい名前だね」

クルシュ「私はカルステン家のクルシュだ。よろしく頼む」

榛名「クルシュさん…よろしくお願いします」


クルシュ「話は変わるが…よくハルナは生きていたな」

榛名「いえ…助けて頂いたおかげで…」

フェリス「いやいや。普通の女の子が矢やら弩やら刺さっててあんなにお腹えぐれてたら死んでるよ?」

クルシュ「あやつらの中にはメイスを持っているものもいたからな。よく死ななかった」

榛名「そう…ですか」

フェリス「うんうん」


クルシュ「さて。ハルナはどこ出身だ?というか君の家まで送り届けようと思うのだが」

榛名「えぇっと…」

恐らく多分ここは前いた世界とは異なる場所だと考えている榛名は答えに詰まってしまう。

榛名「とっても東…から来ました」

クルシュ「東?」

フェリス「それってほんと?」

榛名「はい」

榛名の応答を聞いてクルシュ達は顔を見合わせる。


フェリス「ここよりずーっと東って言うと大瀑布しかないよ?」

榛名「大瀑布…そんな呼び方なんですね…」

なんとなく、答えられない事情なのだろうと二人とも察しこの話題を打ち切る。


フェリス「ふーん…。そういえばなんであんなとこにいたのかにゃ?」

榛名「それが…いつの間にかあそこにいて…」

フェリス「いつの間にか?」

榛名「はい…どう来たのかすら覚えてないんです」

フェリス「それは…なんというか…大変だったネ」


クルシュ「ということは誰かと一緒に来てはぐれた、ということでもないしこれからのあてもない…ということか?」

榛名「はい…」

クルシュがそこで少し考え込む。

フェリス「とりあえず…暫く面倒見てあげてもいいんじゃないですか?クルシュ様」

榛名に聞こえないくらいの声でこそこそ話しかける。


榛名(というか荷物も全部なくなっちゃったのかなぁ…困った)

フェリス「そういえば、治療のために服脱がせてもらったけどお手紙が入ってたよ?」

榛名「お手紙?」

フェリス「はいこれ」

そこまで厚くない白い手紙を手渡される。

榛名「これ…いつの間に…」

フェリス「まぁ読んでみたら?」

榛名がこくりと頷いて封を切る。


仲には一枚の地図が入っている。

榛名「地図…印が一つだけついてますね」

フェリス「地図?ちょっと見せてー?」

榛名「どうぞ」

フェリス「んー…?これってここらへんだネ」

榛名「そうなんですか?」

フェリス「うん。でも商店ばっかだよ?何があるんだろ…」


クルシュ「よし。決めた。ハルナよ。我が館に暫くいるといい」

榛名「いいんですか…?」

クルシュ「構わん。どっちにしろこれからのあてもないのだろう?」

榛名「はい…ありがとうございます」

フェリス「やっぱりクルシュ様素敵すぎ…」

うっとりとフェリスがつぶやいている。


フェリス「そうだクルシュ様。この地図のところちょっと見てから行きません?」

クルシュ「この地図は?」

フェリス「ハルナちゃんの懐から出てきた謎の手紙ですよ」

クルシュ「まぁ、構わないぞ」

フェリス「だってサ」

榛名「何から何まで…ありがとうございます」


次の日

フェリス「立てる??」

榛名「はい…何とか大丈夫ですフェリスさん」

フェリス「さん付けなんて堅いにゃあ…フェリちゃんでいいよ?」

榛名「じゃ…じゃあ…フェリちゃん」

フェリス「よろしいっ」


宿屋の玄関前でクルシュが待っている。

榛名「お待たせしました!クルシュさん」

クルシュ「そこまで待っていないから心配しなくて良いぞ」


宿屋を離れて、地図に記されているところに向かう。


榛名「賑やかなとこですね…」

フェリス「まぁ商人いっぱいいるしね〜」

榛名「なんか魅力的なものが多くて目移りしちゃいそうです…」


フェリス「この細道入って右手にお店あるみたいだネ」

榛名「細道ですか…」

クルシュ「今回は卿一人ではないのだから安心するといい」

フェリス「そうそう!クルシュ様がいればだーれも襲ってなんかこないこない!」

榛名「えへへ…ですね!」

3人が細道へ入り、例の店に入る。


店主「いらっしゃい」

少し顔の厳つい体つきのガッチリした店主が迎えてくれた。

榛名「あ…あの…。この地図がいつの間にかあって…ここに印がつけてあったんですけど…」

店主「ん…?もしかして、あんたがハルナ…?さんかい?」

榛名「あ…そうです」

店主「ちょっと待ってくんな!」

店の奥に引っ込んでから大きい木箱を持ってくる。

店主「うちは荷物を仲介するのもやってんだけどな?数日前にこれをあんたに渡しといてくれってやつが来てさ」

榛名「これは…開けてもいいですか…?」

店主「おうとも。そっちの台使っていいからそこで開けてくれ」

と言いつつ店主が木箱を台まで持っていく。

榛名「ありがとうございます」


フェリス「なあに?この木箱」

榛名「さぁ…開けて見ますね」

榛名がギギギっと木箱を開く。

中には、ここにくる前持っていた和服やその他の日用品の入ったバッグとともに

本物の薙刀が入っていた。

榛名「これ…薙刀…うちに飾ってあった奴…」

フェリス「なにこれ?」

榛名「そっちは…私の服とかが入ってますね」

フェリス「へぇ…あんま見ない感じだネ」

榛名「あとでしっかりお見せしますね」

フェリス「この反ってる剣?みたいなのもハルナちゃんの?」

榛名「ここにあるってことは…多分」

フェリス「へぇ…」

榛名「とりあえず…全部持って行ってもいいですか…?」

クルシュが無言で頷く。

榛名「ありがとうございます…!」


店主「毎度ー」

いったん全部の荷物を回収して店を出て、竜車の元へ向かう。

榛名「ほぁぁ…これが…竜?ですか」

フェリス「ハルナちゃん竜車乗ったことないのかにゃ?」

榛名「はい…初めてです」

フェリス「ま、いいや。乗って乗って!」

クルシュ達と竜車に乗る。

榛名「中は結構広いんですね…」


暫くして竜車が出発し、速度も乗り始めた頃。

クルシュ「さて」

榛名は改めて背筋を伸ばしてクルシュに向き合う。

クルシュ「質問をいくつかいいだろうか?」

榛名「はい…!」

クルシュ「まず一つ。卿はなぜあのようなところにいたのだ?」

榛名「えぇっと…わからないんです…」

クルシュ「ふむ…」

少し榛名を見つめた後次の質問に移る。

クルシュ「では次の質問。卿は加護を持っているのか?」

榛名「加護…?」

フェリス「まさかしらにゃい…?」

驚いたように聞き返す。

榛名「ごめんなさい…わからないです」


フェリス「えーっとね?加護っていうのは生まれた時から備わってる能力みたいなものにゃんだけどね…?」

榛名「生まれた時から…誰にでもあるんですか?」

クルシュ「加護を持っている者のほうが圧倒的に少ない…と言われている」

榛名「そうなんですか…私には備わってるんでしょうか…」

クルシュ「フェリスが言ったように生まれたときから備わっているから、もしあるなら何か無意識にでも自覚があるはずだが…」

榛名「自覚…確かに体が軽くなって身体能力が上がったような…上がってないような…」

フェリス「結構曖昧だネ…」

榛名「ごめんなさい…」

フェリス「責めてるんじゃにゃいんだから謝らなくてもいいよ」


クルシュ「まぁ…質問はこのくらいでいいだろう。また卿に聞きたいことがあればそのとき聞かせてもらうが…大丈夫だろうか」

榛名「もちろんです!」


そこで質問はいったん終わりになり、屋敷に着くまで他愛のない会話をして過ごした。


榛名(かっこいい人だなぁ…クルシュさん)


屋敷についたので、竜車の扉が開く。

クルシュ「もう降りても大丈夫だぞ」

榛名「あ…ありがとうございます!全然揺れませんでしたね…竜車って」

フェリス「この竜には加護が付いてるからネ」

榛名「へぇ…竜にも加護が…」


竜車から降りると目の前に豪華で大きな屋敷が現れた。

榛名「おっきい…ですね。圧倒されちゃいます…」

クルシュ達は先に屋敷の中に入っていく。

フェリス「早くおいでー!!」

榛名「はーい!」

足早に追いかけていく。


大きい正面扉を開くと、そこには数人のメイドが主の帰りを待っていた。

メイド衆「おかえりなさいませ」

クルシュ「ただいま。留守中何かなかったか?」

メイド「これと言ってとくには」

クルシュ「そうか」


榛名(すご…生でメイド見たの初めてかも)

メイド「時にクルシュ様。そちらの見慣れない御仁はどなたでしょうか」

クルシュ「ああ。ちょっとした事情があったのでしばらくこの屋敷に泊めることにした。部屋は余っていたな?」

メイド「はい。今すぐにでもご用意いたします」

クルシュ「では案内してやってくれ。旅の疲れもあるだろうしな」

メイド「かしこまりました」


そういうと、メイドが榛名の元へ来る。

メイド「ではお客様。こちらになります」

榛名「あ、ありがとうございます!」

メイド「申し訳ありませんが、お手持ちの武器はそちらのメイドにお預けくださいませ」

こくりと頷いて武器をメイドに預ける。

メイド「以上でよろしいでしょうか?」

榛名「はい」


メイドに連れられ大きい扉のある客室に案内される。

榛名「広い…」

メイド「ご用件ございましたらお気軽にお呼びくださいませ」

榛名「はい!」


メイドが部屋から出て行ったところでベッドにダイブして天井を見上げる。

榛名「すごいとこに来ちゃったなぁ…」

そのまま天井を見上げてるうちに睡魔に耐え切れなくなって眠ってしまった。


クルシュ達は同じ頃、執務室にフェリスと入って何事か話していた。

クルシュ「フェリス。率直に聞こう」

フェリス「にゃんでしょうか?」

クルシュ「ハルナのことについてだ。フェリスはあの娘をどう思う?」

フェリス「ハルナちゃん…。フェリちゃん的にはしっかりとした教育は受けてるそれなりの身分の娘にゃんだと思うんですけど…」

クルシュ「常識がなさすぎる…か?」

フェリス「はい…誰でも知ってる事知らないとかってあの言葉遣いの丁寧さから考えられるんでしょうかにゃあ…」

クルシュ「やはりそう思うか」

フェリス「あと、多分にゃんですけど…クルシュ様みたいに加護持ってるんじゃないかにゃあって思います」

クルシュ「どのようなものだと思う?」

フェリス「ハルナちゃんが亜人だとは考えにくいので…普通にゃらあの傷で生きてられるとは思えにゃいので身体強化…もしくは身体保護…とかでしょうかネ」

クルシュ「自覚は曖昧だがあるようだし…見極めが必要だな」

フェリス「ですネ」


翌日

榛名の体を誰かが揺すっている。

榛名「ん…ぁ」

メイド「ハルナ様。起きてくださいませ」

榛名「メイドさん…?」

メイド「朝になりましたわ。朝ごはんのご用意もできております」

榛名「朝…」

寝ぼけ眼を擦りながら体を起こす。

メイド「おはようございます。ハルナ様」

丁寧にお辞儀をして挨拶をする。

榛名「おはよう…ございます…」

ぼーっとしつつもメイドに連れられて朝ごはんを食べるため大部屋に向かう。


大扉がぎぎっと音を立てながら開けられると、既に中にはクルシュ達がいた。

フェリス「ハルナちゃん朝弱いのかにゃ?おはよ~」

榛名「おはようございます…フェリスさん…クルシュさん」

クルシュ「おはよう」

メイドに席まで案内されて、夢現ながら椅子に座る。

座ったところで朝ごはんが運ばれてくる。

メイド「どうぞ」

榛名「ありがとう…ございます…」

榛名「いただきまーす」


榛名「おいしい…!」

クルシュ「それはよかった。作った者も喜んでいるだろう」

榛名「こんなご飯食べれて幸せです…」

蕩ける様な笑顔を周りに振りまいている。

フェリス「幸せそうだにゃぁ」


食べ終わる頃になってクルシュがまた話しかけてきた。

クルシュ「ハルナよ。卿は今日何するつもりだ?」

榛名「うーん…このお屋敷見て回りたいです。あと…大丈夫だったらなんですけど…薙刀に触らせてもらってもいいですか…?」

クルシュ「ナギナタ…あぁ卿が持っていたあの武器か」

榛名「無理なら全然いいんですけど…」

クルシュ「ふむ…少々待ってもらってもいいだろうか」

榛名「はい!わかりました!」


朝ごはんを食べ終わってから、部屋に戻って備え付けてあった本を読もうとする。

榛名「こっちの本はどんな感じなんだろう…」

ぺらぺらと数ページめくってみる。が…

榛名「何この文字…読めない…」

少なくとも英語や日本語ではない文字がつらつらと書き連ねてある。

榛名「後で聞いてみよう…」

読むのを諦めて本を閉じて元の場所に戻す。

榛名「ちょっと暇…だなぁ」

ぼーっと天井を見つめながら今までにあった出来事を思い出す。


数時間たったところで部屋の扉がノックされる。

榛名「はーい」

メイド「失礼いたします」

榛名「どうされました?」

メイドが榛名の薙刀を持って入ってくる。

メイドの後ろには初老の執事のような人が立っている。

榛名「えっと…初めましてです…」

ヴィルヘルム「お初にお目にかかります。ヴィルヘルムと申します。この館で雇われております」

榛名「近衛榛名と言います…よろしくお願いします」

メイド「自己紹介が終わったところで…本題に移らせていただきます」

榛名「はい」

メイド「ハルナ様に薙刀を渡すことをクルシュ様は条件付きで認可されました」

榛名「条件?」

メイド「はい。ヴィルヘルム様と私の監視の元、という条件です」

榛名「なるほど…了解です!」


そういうと、足早に庭に向かう。

榛名「空気がおいしい!!」

ヴィルヘルム「生き生きしておいでですな」

榛名「はいっ!久しぶりにゆったり外に出れたので!」

そういうと薙刀を少し離れたところで振り出す。

榛名(やっぱ振るスピード早くなってるし力も入ってる。なんか変わったなぁ…慣れなきゃ)

メイド「…すごい迫力ですね」

ヴィルヘルム「…」

何事か考えながらじっと榛名を見つめている。


榛名「はぁっ!」

気合いを込めて横一閃。

榛名「ふぅ…今日はこんな感じで終わりにしましょう…」

メイド「お疲れ様です」

そういうと汗を拭くタオルを持ってきてくれる。

榛名「あ…ありがとうございます!」

メイド「武器、お預かりします」

榛名「あ、はい」

両手でメイドに薙刀を渡す。

メイド「確かに」


汗を拭き終わって少し経った頃三人そろって屋敷に戻る。

ヴィルヘルムはクルシュの執務室へ向かい、メイドは榛名と一緒に部屋に戻った。

メイド「お疲れ様でした。ハルナ様」

榛名「ありがとうございます」

メイド「夕ご飯の時間にまたお呼びいたしますね」

榛名「わかりました」

メイド「では」

退出しようとしたところを榛名が呼び止める。

メイド「どうされました?」

榛名「あの…この本って何が書いてあるんですか…?」

メイドに先ほど読むのを諦めた本を見せる。

メイド「こちらですか…。お仕事終わった後にまた来てもよろしいでしょうか?」

榛名「はい!わかりました!」

メイド「では」

深々とお辞儀をして退出する。


数刻後にメイドが呼びに来て、クルシュ達と晩御飯を食べ始めた。

今回は初めて、ヴィルヘルムが後ろに立っている。


食べ終わった頃にクルシュが榛名に話しかけてくる。

クルシュ「ハルナ。卿に質問していいだろうか」

榛名「はい。大丈夫です」

クルシュ「卿は…これからのことは考えているか?」

榛名「これから…?ですか。ごめんなさい…特に何もまだ考えては…」

クルシュ「そうか。まだ考えていないのなら…こちらから一つ提案をしたい」

榛名「提案…?」

クルシュ「この屋敷で、私に仕えないか?」

榛名「お仕え…?!」

クルシュ「もちろんまだ来たばかりだからすぐにとはいかないが、いくつかの試験のようなものを行って…と考えている」

榛名「私なんかがいいのですか…?」

クルシュ「冗談でこんなことは言わないぞ。どうやらハルナは腕も立つようだし、フェリスのいない間に護衛として。もありだと考えている」

フェリス「フェリちゃんとしてはできるだけ離れたくはにゃいんだけどね」

クルシュ「しかし、フェリスはフェリスで忙しいからな」

榛名「そうですか…。腕が立つっていうのは…」

クルシュ「ヴィルヘルムの見立てだ。信用できる」

榛名「あの一回だけで…ですか?」

ヴィルヘルム「少し体が追いついてないように見えますが、十分な実力はあるかと」

榛名「そうですか…」

クルシュ「で。ハルナとしてはどうだろうか」

榛名「喜んでお受けします!ほかに当てもないですし」

クルシュ「わかった」

榛名「よろしくお願いします!」

榛名(何とかなりそうなめどがついた…)

クルシュ「では先ほど試験といったが…私がつきっきりで見るわけにはいかんからな…ハルナにはメイドをつける」

榛名「メイドさんを…その方が試験を?」

クルシュ「うむ。そのメイドにハルナは信用に足るか、実力は十分かなどを見てもらうつもりだ」

榛名「なるほど…わかりました」

クルシュ「そして…早速だがハルナに頼みたいことがある」

榛名「頼みたいこと…?」

クルシュ「試験もかねて、ということになるが王都に手紙を届けてほしい」

榛名「なるほど…わかりました!」

クルシュ「竜車を一台とメイドを二人つける。ついでに王都を案内してもらうのもいいだろう」

榛名「ありがとうございます!」


少し話をつづけた後榛名が退出する。

榛名「王都かぁ…」

メイド「心配ですか?」

榛名「少しだけ…」

メイド「ご安心ください。私達がついております」

榛名「ありがとうございます…。心強いです」

少しぎこちなく微笑む。


榛名「そういえば…メイドさんのお名前を教えていただけませんか?」

メイド「敬語はおやめください。私の名はメイと申します」

榛名「メイ…さん。改めてよろしくお願いします」

メイ「敬語はおやめください。よろしくお願いいたします」

念を押しつつ深々とお辞儀をする。


翌日

出発の準備がまだ済んでいないので、庭でヴィルヘルムと模擬戦のようなものを行っている。

榛名「たぁぁっ!」

十分な気迫で一閃。

しかしヴィルヘルムの剣がうまく力を反らして上に跳ね上げる。

ヴィルヘルム「まだまだですな」

跳ね上げられた薙刀に引っ張られて榛名が尻もちをついてしまう。

榛名「いたたたたた…」

ヴィルヘルム「まずは体をしっかり慣れさせることが肝要…」

榛名「慣れさせる…」

ヴィルヘルム「あとは…ハルナ殿。貴女は優しすぎる」

榛名「優しい…?」

ヴィルヘルム「急所には当たらないように攻撃しておられる。これでは貴女がいざという時守りたいものが護れない」

榛名「でも…相手をケガさせたら…」

ヴィルヘルム「もちろん、優しいのが悪いとは言いません。が、いざという時には相手を倒す、殺さなければならないこともあるのです」

榛名「殺す…」

ヴィルヘルム「ですがまぁ、そこらの有象無象には遅れは取らないでしょう」

榛名「有象無象…」

ヴィルヘルム「王都まで行く途中に何に襲われるかわかりませんからな。十分気をつけるのです」

榛名「わかりました…!」

ヴィルヘルム「ハルナ殿が試験に合格するのを期待しています」

榛名「ありがとうございます…!」


メイドと合流して部屋に戻り、大浴場へ向かう。

榛名「メイさん。一緒に行くほかのメイドさんは誰なんですか?」

メイ「後でご紹介します」

背中を流しながら言う。

榛名「楽しみです」


お風呂を上がって部屋に戻って数刻経った頃に扉がノックされる。

榛名「どうぞー」

メイ「失礼いたします。同行するメイドを連れてまいりました」

榛名「合計四人で行くのですね」

メイの後ろには二人、身長の高い娘とメイと同じくらいの娘が控えている。

メイ「はい。左から、マリ、ミレーナと申します」

マリ、ミレーナ「よろしくお願いいたします」

榛名「よろしくお願いします」

メイ「ミレーナはメイド…でもありますが主に護衛役も兼ねております」

榛名「なるほど。ありがとうございます」

メイ「もちろん、ハルナ様にもいざとなれば戦っていただきますが…」

榛名「承知しています」

メイ「それではお休みなさいませ。ハルナ様」

榛名「おやすみなさい」


翌日。出発には素晴らしくいい澄み渡るほどの晴天。

榛名「いい天気…」

誰かがドアをノックする。

榛名「メイさんですかー?」

メイ「はい。ハルナ様。入ってもよろしいでしょうか?」

榛名「もちろんです!」

メイ「…失礼します。おはようございますハルナ様」

外出用の動きやすそうなメイド服に着替えていて新鮮に見える。

榛名「おはようございます」

メイ「お荷物お預かりします」

榛名「あ、ありがとうございます」

着替えなどが入ったバッグをメイに渡す。

マリ「忘れ物はございませんか?」

榛名「多分…大丈夫だと思う。持ってる物あれでほぼ全部だし…」


荷物を積み終わって出発する直前に見送りに、クルシュ達がやってくる。

榛名「クルシュ様!おはようございます!」

クルシュ「おはよう。もう出発するのだな」

榛名「はい!手紙もきちんと持ちました!しっかり任務を果たしてきます」

クルシュ「卿の働きに期待しているぞ」

フェリス「無事にケガなく帰ってくるんにゃよ?」

榛名「はい!」

ヴィルヘルムは静かにそばで立っている。

その後クルシュはメイドたちに声をかけて、出発の時間になる。

メイ「では、出発いたします」

榛名「行ってきます!クルシュ様!フェリスさん!ヴィルヘルムさん!」

三人が手を振って見送る。

そして、竜車がだんだんと動き出す。


榛名「やっぱ竜車はやいですね」

メイ「途中で町に寄りますがよろしいですか?」

榛名「あ、大丈夫ですよ」

メイ「それなりに大きい街なのでいい宿も見つかると思います」


榛名「道中何もないといいなぁ…」

メイ「山賊とかには気をつけなきゃいけないですが…」

榛名「山賊…」

メイ「もしもの時にはミレーナと一緒にお願いいたします」

榛名「は、はい!」


日も傾き始めた頃に町に着いた。

榛名「おおお…初めての町…」

メイ「宿を取って参ります。ここでお待ちください」

榛名「わかりました」

マリが竜車を預けて戻ってくる。

榛名「お疲れ様です」

マリ「ありがとうございます」


榛名「ミレーナさんって背が高くてかっこいいですね…」

ミレーナ「あら、ありがとうございます。あまりいいことばかりでもないのですけれどね」

榛名「そうなのですか?」

ミレーナ「ええ…」

榛名「なるほど…」


半刻もしないうちにメイが戻ってくる。

メイ「宿のご用意ができました」

榛名「じゃあ行きましょう!!」

メイ「こちらです」

メイを先頭に宿へ向けて歩く。

しばらく進んで右手側に綺麗で大きな建物が見えてくる。

宮殿とまではいかないがそれなりに金のかかっていそうな建物。

メイ「この宿になります」

榛名「大きいですね…」

大扉を開けて宿の中に入る。

店員「おかえりなさいませお客様」

榛名「すごい…」

内装が白を基調とした洋風の高級感あふれるものだった。

程よい明るさの光で美しく見えてくる。

榛名「きれいです…」

メイが店員から鍵を受け取って戻ってくる。

メイ「お部屋は三階になります」

榛名「楽しみです」


メイがカギを開けて部屋に案内する。

榛名「なんというか…豪華ですね…」

メイ「お荷物お預かりします」

榛名「あ、お願いします」


榛名「たーっ!」

ベッドにダイブして感触を確かめる。

榛名「ふかふか…ぐっすり寝れそう」

メイ「お疲れですか?」

榛名「ちょっとベッドのふかふか度を確かめたくて…」

メイ「そうでしたか」

榛名「そういえばなんでいまだに敬語を使ってるんですか?」

メイ「なんで…と言われましても。ハルナ様はいまだお仕えの身ではなくお客様扱いになっております」

榛名「なるほど…うーん…。せめて普通の時は呼び捨てにしいていただけませんか?」

メイ「ですが…」

榛名「お願いします」

メイ「…善処いたします」


榛名「このあとの予定はなんかありますか?」

メイ「いえ」

榛名「じゃあゆっくりしますか…」

メイ「承知いたしました」


日が沈んで窓の外が真っ暗になってくる。

元の世界と同じような漆黒の空が広がっている。

榛名(空模様は変わらないのですね…)

メイ「どうかされましたか?ハルナ様」

榛名「いえ…少し昔を思い出して…」

メイ「昔…ですか」

榛名「空の模様はどこでも変わらないなって…」


翌日

メイがカーテンを開けて日光を取り入れる。

メイ「ハルナ様。起きてくださいませ」

メイが榛名の体をゆすりながら布団を剥がす。

榛名「ん…ぁ…」

メイ「ハルナ様」

榛名「メイ…さん…」

メイ「はい。メイでございますよ」

榛名「おはよう…ございます…」

メイ「おはようございます」

眠そうに、目を擦りながら体を起こす。

メイ「顔洗いに行きますか?」

榛名は眠そうだがこくりと頷く。

メイ「では行きましょう」

榛名の手を引いて顔を洗いに行く。


顔を洗いに行ったあと、宿で出された朝食を食べる。

榛名「おいしい…!」

メイ「この宿にして正解でした」

榛名「前いたところとあんまり変わらない味で安心します」

メイ「なるほど」


朝食を終えて、部屋を出る前に皆で集まって今日の予定を確認する。

このとき、榛名は持ってきていた着物に着替えていた。

それなりの地位の方に会うので正装に近い恰好をしなければならないからだ。

メイ「では、昼には王都に入って所定の手続きをした後お手紙を届けていただきます」

榛名「わかりました」

メイ「お手紙はしっかり持たれましたか?」

榛名「しっかり持ってます」

そういってバッグの中から取り出す。

メイ「では、参りましょうか」


メイを先頭に宿を出て、竜車の元へ向かう。

マリが竜車にすでに乗っていていつでも出発できるように準備していた。

榛名「マリさん。お疲れ様です」

マリ「いえ。ありがとうございます」


榛名「じゃあ行きましょう!」

その言葉を合図にマリが竜車を発車させる。


榛名(王都かぁ…皆様いるから心配ではないけど少し怖い…)

メイ「どうかされましたか?」

思案顔の榛名を見てメイが質問をしてくる。

榛名「あ、いえ。少し王都の想像をしてて…」

メイ「なるほど。そうですね…お手紙届け終わったら城下町を案内しましょうか?」

榛名「いいんですか!?ぜひお願いしたいです」

メイ「もちろんです。クルシュ様もゆっくりして来い、と仰せでしたから」


王都でやることも着々と決まり、期待に胸を膨らませているうちに王都まであっという間についてしまった。

メイ「ハルナ様。王都へ着きました」

榛名「もう着いたんですね…」

メイ「クルシュ様の王都にあるお屋敷まで一旦行くのでもう少々お待ちくださいませ」


王都の街並みを眺めながら、半刻ほどでクルシュの屋敷に着く。

メイ「長旅お疲れ様でした、ハルナ様」

榛名「お疲れ様でした」


メイ「ハルナ様。すぐに出発されますか?」

疲れていないかを間接的に榛名に聞く。

榛名「大丈夫です。行きましょう!」

特に疲れを見せていない顔で王都に行こうとする。

メイ「畏まりました」


すぐに支度をして出発する。

榛名「行きましょう!」

メイ「はい。ハルナ様」

王都の中は大きい通りを通っていれば危険はないので、メイだけが一緒についてきた。


榛名「改めて見ると大きいですね…」

メイ「王都ですからね」

和服とメイド服の組み合わせはとても目立っていたが、二人とも特に気にしてはいなかった。

榛名「日も出ててあったかい…」


暫く歩くとクルシュの館より豪華絢爛な建物が見えてくる。

榛名「あそこにお手紙を届けるのですよね?」

メイ「はい。あそこです」

榛名「なんか…すごい目立ちますね」

メイ「この国の重鎮とも言える方ですからね」

榛名「そうなんですか…」


大きくて派手な門の前に着くと、メイが守衛に話しかける。

榛名が守衛に身分証のようなものを見せて暫くして照合された後敷地に入るのを許される。

榛名「外から見ても大きいですけど中も大きいですね…」

メイ(どこに行ってもそれなりにしっかりされてますね…)

榛名「お庭もきれい…」

メイ「しっかり整備されているようですね」


門から長い長い道を通って建物に着く。

榛名「緊張する…」

気を落ち着かせるために深呼吸を二、三回する。

メイ「大丈夫ですか…?」

榛名「…はい。大丈夫です!」

大扉を屋敷の使用人が開けて中に入ると、たくさんのメイドが出迎える。

メイド「ようこそおいでくださいました。我が主の館へ」

榛名「手紙をお届けに参りました」

メイド「主のお部屋までご案内します」

大人びたメイドが榛名の前に出てきて丁寧にお辞儀をする。

榛名「お願いします」


メイはメイドなので別の部屋で待機するように言われ客室で待っている。

小一時間したところで榛名がメイドに連れられて客室に入ってくる。

榛名「メイさん。お手紙ちゃんと渡せました!」

メイ「それはよかったです。クルシュ様もお喜びになられるでしょう」

榛名「でもすっごい緊張しました…」

メイ「お疲れ様です。町に出て何かお食べになりますか?」

榛名「食べましょう!」

緊張してたのも何のその目を輝かせてそう言う。

メイ「では行きましょうか」


館からでて人々の往来が多い通りに来る。

榛名「あの果物は…」

メイ「リンガですね。お食べになりますか?」

榛名「へぇ…りんごはそんな呼ばれ方を…食べます!」

メイ「では買ってまいります。お待ちください」

榛名「はい」

メイが買ってくるのを待つために壁に寄りかかって待つ。


通り一面にいろんなものが売っていて見ていて飽きない。

榛名(あのペンダントいいなぁ…)

メイ「買ってまいりました」

5,6個を紙袋に入れて持ってくる。

榛名「今食べてもいいですか?」

メイ「ええ。どうぞ」

中から一つ取り出して榛名に渡す。

榛名「いただきまーす」

歯切れのいい音を出しつつりんごを食べる。

榛名「ん~!甘酸っぱくておいしい!」

メイ「それはよかったです」


りんごを二人で食べていると、遠くがざわつく。

榛名「何かやっているのでしょうかね?」

メイ「さぁ…わかりませんね」

榛名「後で行ってみましょうか」

メイ「畏まりました」


暫くして二人とも食べ終わって先ほどの騒がしいところに行こうかと思ったところいきなり声をかけられた。

??「そこの嬢ちゃん!」

榛名「?」

??「そこの和服来てる嬢ちゃん!」

榛名「…私ですか?」

声のした方向に振り向くと


そこには鉄仮面を被った山賊風スタイルの男がいた。


榛名「…メイさん下がって。不審者がいます」

メイ「衛兵に通報しなきゃですね…」

薙刀をメイをかばうようにして構える。


??「ちょっと待った!怪しいもんじゃないから薙刀おろしてくれ!」

榛名「その見た目でそれを言いますか…?」

??「まいったな…」

榛名「弁明がないなら通報します」

??「ちょっと待った!!落ちつけるとこでしっかり話そう!ちゃんと説明すっから!」

榛名「…怪しすぎるのですが、ついていくと思いますか…?」

??「だよなぁ…。じゃあ薙刀持ったまたでいいからついてきてくれないか?」

榛名「どうします…?メイさん」

メイ「ハルナ様にお任せします」

榛名「…嫌です。怪しすぎます」

??「それはそうなんだが…。そうだ!俺の話聞いてみれば日本に戻れるヒントが得られるかもしれないぜ」

榛名「…ですが…」

??「話だけでもいいからよ。頼むぜ嬢ちゃん!」


暫く考え込んだところで、答えを出す。

榛名「…わかりました。貴方について行ってみます」

??「ありがてぇ」

榛名「危ないと思ったらすぐ帰りますからね!」

??「はいよ」


榛名「そういえば、あなたの名前は?」

??「アルって呼んでくれ」

榛名「アルさん…そうですか。私は近衛榛名です。お好きにお呼びを」

メイ「メイと申します」


暫くアルについていくと先ほどいた貴族のお屋敷の方へ向かっている。

榛名「アルさん貴族…なんですか?」

アル「いやいや。俺は違うよ」

榛名「その割にはここお屋敷のいっぱいあるとこでは…」


ものの数分たったところで群を抜いて豪華なお屋敷が見えてくる。

榛名「さっき行ったとこより大きい…」

アル「まぁ入ってくれ」

門を開けて中に榛名たちをいれる。

榛名「そんな簡単に…いいんですか」

アル「大丈夫大丈夫。今日晴れてるしなぁ」

少し訝しみつつ屋敷に入る。


アル「とりあえず一応姫さんに会って挨拶したほういいかもなぁ」

榛名「姫さん…?」

アル「この屋敷の主」

榛名「へぇ…女性なんですか」

アル「この世界じゃ珍しくないけどな」

榛名「この世界…」


屋敷の中でも一際に大きくきれいな装飾の施された扉の前に着く。

榛名「ここが…?」

アルがひとつ頷き、扉をノックする。

アル「姫さーん!同郷の奴見かけたからちょっと連れてきたんで挨拶大丈夫かー?」

暫くして部屋の中から若い女性の声が聞こえてくる。

姫さん「許す。入るが好い」


アルが手で入るように促す。

メイが扉を重い音を立てながら押し開ける。

扉を開けると広い部屋の奥に明るい髪で二十歳くらいの娘が悠然と座っている。

姫さんの前まで行ってから丁寧にお辞儀をする。


榛名「初めまして、私は近衛榛名と申します」

姫さん「ふむ…聞かぬ名前じゃな」

榛名「よく言われます」

頬をかきつつつぶやく。

榛名「あの…えっと…お名前は…」

姫さん「アルめ…言っておらんのか。よかろう。妾はプリシラ。プリシラ・バーリエルである」

榛名「プリシラ様…」

プリシラ「お主。近こう寄れ」

榛名「は…はい」

プリシラの隣まで寄る。


プリシラ「ほぅ…見ない装束じゃの…何という」

榛名「和服…と言います」

プリシラ「ワフク…とな」

榛名「どうでしょうか…?」

プリシラ「美しいのう…。アル!」

大声でアルを呼びつける。

アル「どーした姫さん」

扉を開けて部屋に入ってくる。


プリシラ「この服をもう一つ作れ。妾に似合うようにな」

アル「あー…王都ならうまくいくか…。でも裁縫とかできねえんだよなぁ…。すまん嬢ちゃん」

榛名「…はい?」

少し嫌な予感がしつつ応答する。

アル「すまねえがその和服かしてくんねえか?」

榛名「えっ…それは…」

プリシラ「お主替えの服を持っていないのか」

榛名「今は…」

プリシラ「そうか。…妾は今気分がいい。アル!妾のほかのドレスをやれ。もちろん代わりも作ってな」

アル「あいよ」


榛名「…ありがとうございます。プリシラ様」

プリシラ「よい。妾のなるようになる」


数刻して、アルではない人がプリシラの服を持ってくる。

「こちらになります」

榛名「ありがたくいただきます」

プリシラ「この部屋で着替えるがいい」

榛名「…いいのですか…?」

プリシラが鷹揚に頷く。


帯を解いて和服を脱いで、もらった服に手を通す。

プリシラ「不思議な作りじゃな」

榛名「そうですか…?んしょ」

プリシラ「ふむ…?上の下着はつけぬのか」

榛名「はい…形崩れちゃうので…」


脱いだ服をアルに渡す。

榛名「これ…どうぞ」

アル「あんがとさん」

アルが仕立ててもらいに王都の方へ降りていく。

榛名「すごい…派手ですね」

自分の来ている服を見てぽつりとつぶやく。

プリシラ「ふむ。妾に似て良い体をしておる」

榛名「そう…ですか?プリシラ様の方が美しいです」

プリシラ「それは当たり前じゃろ。この世の摂理じゃな」

榛名「あはは…」


榛名「プリシラ様…はここの領主様なのですか?」

プリシラのことを知るために質問をしてみる。

プリシラ「元は違ったがな。妾の元に来れば繁栄も何もかも思うが儘じゃ」

榛名「へぇ…すごい繁栄してるんですね」

プリシラ「貴様も妾の下にくれば繁栄をくれてやるぞ?」

榛名「お誘いは嬉しいんですけど…ごめんなさい」

プリシラ「構わん。戯れじゃ」

榛名「戯れでしたか…」


プリシラ「貴様のその漆黒の髪。なかなかに映えるの」

榛名「そうですか…?ありがとうございます」

無言で榛名の髪を触って梳く。

榛名「少しくすぐったいですね…」

プリシラ「我慢せい」

榛名「はーい」


プリシラ「時に貴様。その面妖な武器はなんじゃ」

榛名の持っていた薙刀を指さす。

榛名「あ、これは」

プリシラ「見たところ槍に似ているような感じもするが…」

榛名「これは薙刀、でございます」

プリシラ「ナギナタとな?」

榛名「はい。私が一番得意な武器です」

プリシラ「ほう…一番得意と」

榛名「はい!プリシラ様の武器は…」

プリシラ「妾の武器か?」

榛名「身に着けてはないようですので…」

プリシラ「そうじゃのう…天気も良いし見せても良いが…」

榛名「お願いします」


プリシラ「ふむ…よかろう。特別じゃぞ?」

榛名「ありがとうございます!」


プリシラに連れられて庭へ行く。

榛名「すごい…きれいな庭…」

プリシラ「当然じゃろう。妾の庭じゃぞ?」

榛名「あはは…」

ちょっと唖然として苦笑いをこぼす。

プリシラ「ほれ。そこで見ておるがよい」

庭の一番日の当たるところでプリシラがこちらへ振り返り言う。

プリシラ「ではゆくぞ」

榛名「はいっ」


一瞬プリシラが光ったように見えたと思うとその手に剣が握られている。

榛名「すご…い」

プリシラ「こんなものじゃな」

榛名「すごいです!かっこいい…」

プリシラ「じゃろう?当然の事じゃがもっと称えるがよい」

榛名「プリシラ様みたいに凛々しくなりたい…」

プリシラ「妾のような生き方をするが好い」

榛名「プリシラ様のような…」


プリシラ「ふむ…そうじゃな…。興味が湧いた。お主ナギナタを持て」

榛名「え…?薙刀を…?」

プリシラ「何も殺し合いをしたいのではない。貴様のその珍妙な武器と打ち合ってみたいのじゃ」

榛名「は…はぁ…。プリシラ様がそうおっしゃるのなら…」

おいてきた薙刀を取ってプリシラの下に戻ってくる。

榛名「持って参りました」

プリシラ「ふむ…では少し手合わせしてみるか」

榛名「頑張ります!」


プリシラ「さぁ構えよ」

プリシラが陽剣の切っ先を榛名に向ける。

榛名もそれを受けて薙刀を構える。


プリシラ「先手は貴様で良いぞ?」

榛名「では…行きます!」


薙刀を下に一度振ってから力をためて一気にプリシラへ突っ込む。

プリシラはいきなりの速度に少し驚きつつも弾こうと剣を構える。

榛名「たぁぁぁ!」

下から切り上げるように薙刀を振る。

しかしプリシラは弾かずに後ろへ避け、榛名が薙刀を振り切ったタイミングでプリシラが上段から斬りつけてくる。

榛名もその意図に気付いてとっさに飛び退く。

プリシラ「ほう…?なかなか動きはよいようじゃ…な!」

それを追うようにしてすぐにプリシラが距離を詰めて連続で斬りつけに行く。

榛名もなんとか攻撃をガードしつつ反撃の隙を伺う。

が、プリシラの連撃の速度がどんどん上がっていって榛名の目が追いつかなくなってくる。


しだいに焦りが生まれてきて、強引に薙刀を押し出してプリシラを吹き飛ばす。

榛名「たぁ…っ!!」

プリシラ「馬鹿力ぢゃな…」

榛名「はぁ…はぁ…」

プリシラ「もう息が上がってきたか?」

榛名「まだ…まだぁ!」


息が上がってきたが、力をためてプリシラの剣を弾きに薙刀を一閃。

プリシラ「甘い!」

すっと力を受け流されて返す刃で薙刀を思いっきり剣で叩かれる。

榛名「わぁっ!?」

庭の端っこ、茂みの目の前に薙刀が突き刺さる。


プリシラが榛名に剣の切っ先を向けて決着となる。

プリシラ「どうじゃ?」

榛名「お強いです…プリシラ様」

プリシラ「じゃろう?」

陽剣をしまって身をひるがえして屋敷の方へ向かう。

プリシラ「さっさと戻るぞ~」

榛名「は、はい!!」

刺さった薙刀を拾って急いで追いかけていく。


榛名「このいただいたお洋服動きやすいですね」

プリシラ「妾がそう作らせておるからな」

榛名「すごいです…ありがたい…」


プリシラ「貴様のナギナタなかなかによかった」

榛名「本当ですか?!ありがとうございます!」

プリシラ「またいつか手合わせしてやろう。精進するのじゃぞ」

榛名「はい!」


プリシラがまた本を読み始めたので、榛名もプリシラの近くに座っていると細い色白の腕が伸びてきて頭を撫で始めた。

榛名「プリシラ様!?」

プリシラは無言で頭をまで続ける。

榛名「あの…」

なおも無言で撫で続ける。

段々と頬や顎も撫で始めてくる。

榛名「気持ちいいです…」

プリシラが暫くして本を読み終わりこちらを向く。

榛名はすっかり目を細めて気持ちよさそうにしている。


プリシラ「気持ちよさそうじゃの」

榛名「すっごい気持ちいいです…手も温かくて最高です…!」

プリシラ「道理じゃな。妾に触れられるなどそうあることではないからな?ありがたく思うが好い」

榛名「ありがとうございます!」

プリシラ「愛い奴じゃな」


プリシラが肩を触ってくる。

榛名「どうですか…?」

プリシラ「まぁまぁじゃな」

榛名「ありがとうございます…!」

傍から見たら完全に顔が蕩けている。

榛名(なんでこんなに気持ちいいんでしょう…)

プリシラ「肌の手入れは丁寧にな」

榛名「あ、はい!焼けないように気をつけます」

プリシラ「うむ。肌焼けは気をつけねばな」


暫く撫でられてると、従者が飲み物を持ってくる。

プリシラ「そこへ置いておくがよい」

従者がこくりと頷いてプリシラの近くに置く。

プリシラ「榛名よ、貴様の分もあるぞ」

榛名「ほんとですか!?ありがとうございます!」


お盆からお茶を取ってひと口飲んでみる。

榛名「おいしい…」

プリシラ「うむ。よい茶葉じゃ」


榛名「はぁ…最高です」

頬を若干紅潮させてつぶやく。

プリシラ「ふふっ。もっと寛ぐがよい。妾は寛大じゃからな」

榛名「ありがとうございます…」


プリシラ「甘えん坊な妹ができたみたいじゃな…」

ぼそりとつぶやく。

榛名「?」

ふっと顔を上げる。

プリシラ「なんでもない」

榛名「そうですか」

不思議に思いつつもまたくつろぐ。


外から二人を見ると、一枚の絵画作品にしてもいいくらい整っている。

つややかな黒髪と情熱的な橙色の髪が対照的だ。

二人とも肌が透き通るほどに白い。

画家がいたら喜んで描いただろう。


榛名「プリシラ様…少し肌触らせていただけませんか?」

プリシラ「ふむ?許す。存分に触るが好い」

榛名「ありがとうございます」

そう言うとプリシラの腕を触り始める。

榛名「すごい…すべすべ…やわらかい…」

プリシラ「どうじゃ?当然のことだが至福じゃろう?」

榛名「はいっ…!」


イチャイチャしてるうちに、だんだんと日が暮れてきた。

榛名「もう夕暮れですね…」

プリシラ「ふむ…貴様夕ご飯はどうするつもりだ?」

榛名「えーっと…町で食べようかと…」

プリシラ「そうか、ならここで食べていけ。ついでに今日は泊まっていけ」

榛名「えっ!?いいんですか?」

プリシラ「妾がいいと言った」

榛名「じゃあ…お言葉に甘えます。私の連れも一緒でいいですか?」

プリシラ「構わぬ。部屋はいくらでもある」

榛名「ありがとうございます。プリシラ様」


一緒に来たメイ達に事情を話して、屋敷に来てもらった。

メイ「なかなかすごいことになっていますね…」

榛名「あはは…」

ミレーナとマリも驚きを隠せない様子だ。

榛名「というわけで今日はここで休みましょう」

メイ「畏まりました」

ミレーナとマリも礼で応じる。


プリシラ「もう夜か…風呂に行こうかの」

榛名「お風呂ですか」

プリシラ「貴様も来るか?」

榛名「是非!」

プリシラ「ならばついてこい」

そういうと椅子から立って浴場の方へ向かう。


プリシラが浴場の前の脱衣所で従者に服を脱がせ、タオルを体に巻き付ける。

プリシラ「貴様も早くせい」

榛名は少し脱ぐのに手間取っている。

榛名「えーっと…これが…こうで…」

メイが脱ぐのを手伝って、何とか脱ぐ。

榛名「お待たせしました…!」


浴場の扉をプリシラの従者が開けてその中へすたすたとプリシラが入っていく。

プリシラ「まずはここで軽く体を流すがよい」

榛名「なるほど…」

おいてある桶にお湯を入れて体にかける。

温かいお湯が体を伝っていく。

榛名「あったかい…」

プリシラ「貴様も従者にお湯掛けさせればよいものを」

榛名「あはは…性分で…」


プリシラの張りのある美しい肌にも雫が滴っている。

プリシラ「さぁ。湯船に行くぞ」

榛名「はいっ!」

プリシラの後ろをついていく。


バスタオルを取ってちゃぷんと足から湯につかっていく。

プリシラ「貴様も早く入れ」

榛名も続いて入る。

榛名「あったかい…」

プリシラ「誰かと入るのは初めてじゃな…」

榛名「そうなんですか??」

プリシラ「妾がいいと思うものがいなかったからな」


榛名がプリシラの肌を見てため息をこぼす。

榛名「肌きれい…」

プリシラ「触ってみるか?」

榛名「いいのですか?」

プリシラ「構わぬ」

榛名が恐る恐るプリシラの方に手を伸ばす。

ふにっ

ふにっ

榛名「ほぁ…もちもちです…」

プリシラ「はは。であろ?」

榛名「おっぱいも大きくて張りがありますね…美しいです…」

プリシラ「触ってみるか?」

意地悪な笑みを浮かべてそう尋ねる。

榛名「えっ…?!」

一瞬呆気にとられる。

その隙にプリシラが榛名の手を掴んで自分の胸に当てる。

榛名「ほぁぁ…!?」

柔らかさ、張り、もちもち具合が完璧なおっぱいがある。

榛名「やわら…か…」

プリシラが得意顔で微笑んでいる。

プリシラ「さすが妾じゃな」

榛名「心臓の鼓動してる音が感じられます…」

少し手を動かして揉んでみる。

プリシラ「んっ…どうじゃ?妾の肢体は」

榛名「すごいです…」

若干放心している。


プリシラ「じゃあ貴様のも触らせるがよい」

榛名の手を放して後ろに回り、榛名の胸をぐわっとわしづかみにする。

榛名「ほぁああ!?」

プリシラ「なかなかの質量じゃな。妾にも劣らぬ」

榛名「く…くすぐったいです!」

プリシラ「やわらかさもなかなか…感度も良好…」

榛名の胸の先をぴんっと弾く。

榛名「ぷ…プリシラ様!?」

顔を真っ赤にする。


プリシラ「またあとで楽しませてもらうぞ」

そう言ってホールドを解く。

榛名「あとで…?」

プリシラ「そうじゃ」

榛名「わかりました…!」


暫くしたところで髪を流しに一度湯を上がる。

プリシラ「髪を流すぞ」

榛名「はいっ!」


プリシラの従者がいつの間にか来て、プリシラの髪を洗い始める。

それを傍目に見ながら自分の髪を洗う。

榛名(シャンプー…とは違うよねこれ)

元の場所との違いに少し戸惑いつつも何とか髪の毛を洗い終わる。

プリシラ「ようやく終わったか」

既に髪を洗い終わって隣でプリシラが待っていた。

榛名「あっ…お待たせしてごめんなさい…」

プリシラ「…まぁよい。詫びに妾の体を洗え」

そういうと従者が石鹸のようなものと体洗う用のタオルのようなものを榛名に差し出す。

プリシラ「手でやるがよい」

榛名「いいんですか…?」

プリシラ「何度も言わせるな。妾がよいと言ってるのじゃ」

榛名「は、はい」


石鹸を泡立てて手に乗せて、真っ白な肌にぴとっと触れる。

そのまま上下に動かして背中を洗っていく。


榛名「すべすべです…」

プリシラ「もっとしっかり洗うのじゃ」

榛名「は、はい!」

しっかり力を入れて洗い始める。

プリシラ「その調子じゃ」

榛名「はい…っ!」

ごしごしと洗っていく。


榛名「そろそろ…流しますね」

プリシラ「うむ」

お湯を桶に入れてそっと背中に流す。

少し手で泡を落としながら全部流し終える。

榛名「ふぅ…どうでしょうか」

プリシラ「うむ。じゃあ前じゃ」

榛名「前…?」

プリシラがこちらを振り向いて

プリシラ「そうじゃ。一生懸命洗うが好い」

ふふんと胸を張って言う。

と同時に豊かな果実がぷるんと揺れる。

榛名「わ…わかりました」


もう一度泡を手に乗せて洗い始める。

まず肩に触れる。

そのまま胸に手を当てる。

榛名「やわらか…」

胸をぐわっと鷲掴みにしてみる。

榛名「手が沈んでいく…」

プリシラ「貴様のも同じようなものじゃろう」

若干頬を赤くしつつそういう。

もみもみと揉みながら丁寧に洗っていく。

プリシラ「ん…」

榛名「気持ちいいです…」

胸の先端の色づいた部分も丁寧にくりくりっとつまむ。

若干喘ぎ声を押し殺したような声が聞こえてくるが気にせず洗う。


お湯で洗い流した後二人とも頬が上気していた。

榛名「お…おわりました」

プリシラ「うむ。ではもう一度浴槽へ向かうぞ」

榛名「は、はい!」

プリシラの後ろについていく。


ちゃぷん

榛名「ふぅ…」

手を組んで思い切り伸びをする。

榛名(やっぱり疲れが吹き飛ぶなぁ)

プリシラ「思えば誰かと風呂に入るなど久方ぶりじゃな…」

榛名「そうなのですか?」

プリシラ「うむ。普段は誰もおらんからな」

榛名「そうなんですか…寂しくなったりはしないんですか?」

プリシラ「寂しい…いや。あんまりならん」

榛名「…。じゃあまたプリシラ様とお風呂入ってもいいでしょうか?」

プリシラ「構わぬ。また妾の体を洗う栄誉をやろう」

榛名「嬉しいです!」


半刻ほどして風呂からあがってまた、プリシラの部屋に戻る。

榛名「ほかほかです…」

プリシラがベッドの上に腰掛ける。

そして、ベッドをぽんぽんと叩いてこちらに来るように促す。

榛名「お…お邪魔します…」

隣にポンと座る。

プリシラ「のう貴様」

榛名「はい…?」

プリシラ「大瀑布の彼方の話を聞かせろ」

榛名「大瀑布の彼方ですか…」

プリシラ「そうじゃ」

榛名(あの世界のことを話せばいいのよね…)

榛名「わかりました」


榛名「まず…私がいた世界は…」

いきなり目の前が真っ暗になる。


『ダメだよ。しゃべっちゃ』


頭の中に女の声が響いてくる。


榛名(えっ…)


そのまま意識が薄れていく。



プリシラ「む・・?」

いきなり榛名がプリシラに寄りかかるように倒れてくる。

プリシラ「なんじゃ?」

しかし、意識を失っているのか何も答えない。

プリシラ「ふむ…気を失っておるのか」

優しくベッドに横にする。

プリシラ「しょうがない奴じゃな…また聞かせるがよい」

ぼそりとつぶやいて自分も隣で寝始める。




榛名「ん…」

身動きが取れない。

そして甘い香りが鼻の中に広がる。

微かな温かみ、柔らかい感触。


プリシラに抱き枕にされていた。

榛名(プリシラ様あったかい…)

段々瞼が重くなってきて、また眠りに落ちてしまった。


一刻後


プリシラ「…ん?朝…か」

プリシラの腕の中ですぅすぅと寝息を立てながら榛名が眠っている。

プリシラ「妹みたいじゃな…」


プリシラ「起きよ」

腕の中から榛名を開放して声をかける。


榛名「…おはようございます。プリシラ様…」

目をごしごししながら起き上がる。

プリシラはもう目をしっかり覚まして朝日を浴びている。

榛名「このベッドふかふかだった…」


プリシラ「当然じゃ」


プリシラ「さて、朝食を食べるぞ」

榛名「はーい…」

寝ぼけ眼でプリシラについて、朝食の用意してある部屋へ向かう。



既に大部屋には料理が用意してある。

アルもその部屋で先に待機していた。

アル「姫さんに嬢ちゃんか」

プリシラ「妾より先にいるとは殊勝じゃな」


プリシラと榛名が席について朝ごはんを食べ始める。

榛名「いただきます」


榛名「なんか私まで一緒に…ありがとうございます。プリシラ様」

プリシラ「よい」


アル「そういえば嬢ちゃんは今日どうするんだ?」

榛名「昼前にはお屋敷に戻ろうかなぁと」

アル「なるほどな。あ、あと着物は返しておくぞ」

榛名「わかりました」



ご飯を食べ終わって少し休んでから、プリシラの下へ挨拶へ向かう。

プリシラ「なんじゃ?」

榛名「いったん帰るので、ご挨拶をと…」

プリシラ「ふむ。まぁまた会うこともあるじゃろう。妾と会えないからと言って気落ちするでないぞ」

榛名「は、はいっ。またプリシラ様とお会いしたいです。ご飯も食べたいしお風呂も入りたいです」

プリシラ「うむ。また来るがよい。歓迎しよう」


榛名が微笑んでぺこりとお辞儀をする。

プリシラが手をひらひらと振って見送る。



プリシラの館の門の前でアルが見送りに来ていた。

アル「いやぁ今回はあんま話せなかったから次の機会だな」

榛名「ですね」

アル「達者でな。嬢ちゃん。また来るんだろ?」

榛名「はい!」


そうして、二人に挨拶を済ませて帰路につく。

メイ「どうでしたか?王都は」

榛名「とっても楽しかったです。知り合いを増やすこともできましたし、お土産までいただいてしまいました」

メイ「よかったですね。ハルナ様」


道中商隊と一緒に峠を越えることになった。

榛名「大所帯ですね…」

メイ「まぁこっちの方が安心ですしね」


峠を超えたところで前方に集団が立ちはだかる。


榛名「誰でしょうか…」


集団の目の前十メル程のところで止まる。

ミレーナ「あれは…見る限り山賊ですね」

榛名「山賊…」

ミレーナ「武器を構えてください…ハルナ様」

榛名「わかりました…」


集団の中から一人の武装した男が前に進み出てくる。

「積み荷と私有物を全部置いて一か所に集まれ!」

と叫ぶ。

「少しでも違うそぶりを見せれば…どうなるかわかるな!」


ミレーナ「先手を取りましょう。ハルナ様、よろしいですか?」

榛名「わかりました」

武器を持って竜車から降りる。


「なんだ…?武器を下ろせ!」

榛名「ふぅ…」

呼吸を整える。

ミレーナ「落ち着いてくださいませ」

榛名が小さく頷いて答える。


武器を構えて一歩目を踏み出し、一気に加速する。

叫んでいる男の傍を一気に走り抜け、集団の先頭の男を横薙ぎ一閃。脳漿がぶちまけられる。

榛名「っ…」

人の肉を斬る感触。

ほとばしる鮮血。

むわりと漂う死臭。

普通の女子高生だったものが耐えられるようなものではなかった。

優しすぎるが故にここで次の者を斬るのか、躊躇が生まれてしまった。

その一瞬が致命的な隙になった。


横から腹に鈍い衝撃を受ける。

ミレーナ「ハルナ様!」

ミレーナの前で叫んでいる男の首を飛ばしてこちらへ駆けてくる。

榛名「えっ…」

続いて背中から刺される感触。


ばたっ


榛名「嘘…」

血が流れて行ってるのがわかる。

ミレーナ「ハルナ様!!」

榛名の周りの賊を切り裂いていく。

榛名(痛い痛い痛い…死んじゃう…?)

段々意識が遠のいていく。瞼が落ちてくる。

ミレーナが自分の名前を呼んでいる。

段々聞こえなくなっていく。


そして


目を覚ますと出発前の竜車に乗るところだった。

メイ「ハルナ様?どうかされましたか?」

榛名「あ…なんでもないです」

メイ「?」

少し変な感じに見られているが、気にしないで竜車に乗り込む。


さっきと同じように商隊と一緒に行動している。

榛名(さっきと同じ…)

ミレーナ「どうかされましたか?そんなに考え込まれて」

榛名「いえ…少し既視感を感じて…」

ミレーナ「既視感、ですか?」

榛名「ええ…」

ミレーナ「あまり考え込まない方がいいかもしれませんよ」

榛名「…ですね」


そして、また同じように走り出す。

ミレーナの解説もそのままだ。

榛名(このままだとまた戦うことに…)


暫くすると前方に集団が見えてくる。


榛名「あれは…」

ミレーナ「山賊ですね…厄介です」

榛名「山賊…」

ミレーナ「ハルナ様、準備してくださいませ」

榛名「わかりました…」

薙刀を構える。


「積み荷と私有物を全部置いて一か所に集まれ!」


ミレーナ「支援いたします。ハルナ様」

榛名「わかりました…。行きます」


榛名が少し加減して右足で踏み込んで山賊に近づいて顔を横薙ぎにする。

榛名「たあっ!」


ぐあっ


血しぶきが迸る。

榛名「うっ…」

吐き気をこらえて二人目を斬る。

ミレーナも追いついて後ろからの敵を殺していく。


榛名「このままいけば…」

そう思った瞬間、頭と胸に何かが刺さる。

榛名「えっ…」

ドサッ


ミレーナ「ハルナ様!?」

榛名が倒れたのを見て驚いて動きが止まってしまう。

その隙にミレーナの頭に矢が刺さる。

榛名(弓…嘘…)

意識が真っ黒になった。



また、次の瞬間には先ほどと同じところに戻っていた。

榛名「また…」

ミレーナ「ハルナ様?どうされました?」

榛名「あ、いえ…何でもないですよ」

微笑んでごまかす。

メイ「出発しますよ、ハルナ様。ご準備よろしいですか」

榛名「あ、はい」

竜車に乗り込む。


榛名(今度は死にたくない…ミレーナさんも生き残らせなきゃ…)

榛名の思いつめた顔をみてメイが不安にそうにする。


また、峠に差し掛かる。

榛名「あれは…」

ミレーナ「あれは…多分山賊ですね」

榛名「山賊…」

ミレーナ「ハルナ様。準備を」

榛名「わかりました…」


「積み荷と私有物を全部置いて一か所に集まれ!」


榛名「行きます…」

先頭にいる盗賊を抜けて次の盗賊を真っ二つにする。

その勢いで次々と切り殺していく。

榛名「はぁ…はぁ…」

矢を警戒して動き続ける。

今度こそ繰り返さないために。


一発の矢がミレーナに飛んできたが、榛名がミレーナを押し倒す。

榛名「誰も…死なせません」

ミレーナ「ハルナ様…」


ミレーナを守りつつ立ち上がってまた斬りに行く。

さらに四人ほど斬ったところで榛名もボロボロになっている。

ミレーナ「ハルナ様!いったん下がりましょう!」

榛名「でも…」

ミレーナ「まだ味方はおります!」

ミレーナの後ろから同行していた商隊の雇った傭兵たちが遅れてやってくる。

榛名「…わかりました」

ミレーナに手を引かれながら少し後方に下がる。

榛名「私達…生き残りましたか…?」

ミレーナ「ええ。ハルナ様。傭兵の皆さんが残りを片付けてくれそうですわ」

榛名「よかった…」


ミレーナが竜車で榛名を手当てする。

ミレーナ「いっぱい傷ついてしまいましたね…」

榛名「いいんですよ…皆さんを守りたかったんですもん」

ミレーナ「ハルナ様…」

榛名「はぁ…はぁ…少し休んでもいいですか…?」

頬を赤くしながらミレーナに伝える。

ミレーナ「構いませんが…大丈夫ですか?熱があるように見えますが…」

榛名「大丈夫…ですよ…ちょっと寒いですけど…」

段々呼吸が荒くなってくる。

ミレーナ「ハルナ様…?」

榛名「少し…意識が…」

ミレーナ「ハルナ様!?」

榛名のおでこを触るととんでもない熱が出ている。


急いで毛布に横にして水を与える。

榛名「ぅ…」

意識を失ってしまう。

ミレーナ「ハルナ様…」

外ではすでに戦闘が終わっている。


ミレーナがメイ達にも連絡して、榛名の様子を見る。

メイ「…病気というわけでは…なさそうですね」

ミレーナ「そうなの?」

メイ「さっきまであれだけ戦っていたのに今この状況になるって、病気だったならかなり無理をしていたことに…」

ミレーナ「むむむ…」

メイ「毒…と言う手もありますね」

ミレーナ「とにかく…ここからならお屋敷に戻ってフェリス様に治療していただくのがよいでしょう」

メイ「ですね…私達には手に負えません。急ぎましょう」


隊商の者たちに別れを告げて一気に屋敷まで戻る。

メイ「急がなければ…」

ミレーナ「ここなら今日中には帰れるはず」


周りの人が驚くほど急いでクルシュの屋敷に戻る。


クルシュ「む?帰ってきたのか」

フェリス「みたいですね。クルシュ様」

屋敷の窓から見ると、竜車が急いで帰ってきたのが見えた。


ヴィルヘルム「ミレーナ、メイ、マリ、よくぞ無事で戻りました」

ミレーナ「ヴィルヘルム様…ただいま戻りました」

ヴィルヘルム「して、ハルナ様はいずこに?」

メイ「それが…」

事情を説明して急いでフェリスを呼んでもらう。


フェリス「ふむふむ…手がかかる娘だにゃあ」

メイ「治りますか…?」

フェリス「フェリちゃんを誰だと思ってるの。絶対に直せるにゃよ」

メイ「よかった…」


フェリスが応急処置をした後榛名の部屋に運んで本格的に治療する。

メイ達は荷物を運び入れて竜車を片付けていた。


クルシュ「メイ、ご苦労だったな」

メイ「クルシュ様…いえ、ハルナ様を無事お屋敷に運ぶことができず…」

クルシュ「現に榛名は生きてるだろう。感謝するぞ」


フェリス「よし。これで大丈夫のはず」


数時間ほどしてから榛名が目覚める。

榛名「ん…ここは…」

フェリス「おはよっ」

榛名「フェリスさん…?」

フェリス「そうだよ~フェリちゃんだよ」

榛名「てことは…お屋敷に帰ってきたんですね」

フェリス「そそ」

榛名「帰ってこれた…」

どっと安心感がきた。

フェリス「じゃあクルシュ様呼んでくるね」

フェリスが部屋を出ていく。


それと入れ替わるようにメイが入ってくる。

榛名「メイさん…」

メイ「ハルナ様…申し訳ありません」

榛名「なんで謝るんですか…?」

メイ「ハルナ様を無事にお屋敷まで送ることができなかったので…」

榛名「謝らないでください…。私も悪いんですから」

メイ「ハルナ様…」

榛名「お相子に…しましょう?明るい雰囲気にしたいですし…」

メイ「わかりました…」

榛名「そうだ。もらったお洋服は…」

メイ「あ、既にしっかりとしまってあります。いつでも着れますよ」

榛名「私の和服は…」

メイ「そちらもしっかりと」

榛名「よかった…」


クルシュ「ハルナよ。大丈夫だったか?」

扉を開けてこちらを見つめながら訪ねる。

榛名「クルシュ様…はい。大丈夫です。少しへましちゃいましたけど」

クルシュ「大丈夫ならいい。王都はどうだった?」

榛名「王都…いろいろ見ることもできましたし…新しい出会いもできました…」

クルシュ「そうか。新しい出会いがあったのだな」

榛名「はい。プリシラ様と一緒に過ごしてました」

クルシュ「ほほう?あのプリシラ殿と…」

榛名「はい。贈り物もいただきましたし」

クルシュ「なるほど。よき出会いだったようだな。送り出して正解だった」

榛名「ありがとうございました…!」

ベッドから起き上がって礼をする。

クルシュ「大丈夫だ」


榛名「ふぅ…帰ってこれたんだ」

クルシュが部屋から出て一人になったところでつぶやく。


メイ「ハルナ様」

扉を開けて、食事を持ってくる。

榛名「あ、メイさん…ご飯持ってきてくれたんですね」

メイ「ええ。冷めないうちに召しあがってください」

榛名「いただきます」

榛名の目の前にお盆が置かれてすぐ、食べ始めた。


榛名「ん…。おいしい!」

メイ「よかった…」

榛名「とってもおいしいです。ありがとうございます…!」

メイ「いえ、早く良くなってくださいね」

榛名「はいっ」


メイ「では、失礼いたします」

榛名「はーい」


メイが去ったところでふぅ…と一息つく。

榛名「早く良くなってクルシュ様のお役に立たなきゃ…」


その日はすぐに横になって早く治るようにした。


数日後

フェリス「うん。これならもう動いても大丈夫だネ」

榛名「治療ありがとうございました!」

フェリス「いいってことさ~!早く元気になってもらってクルシュ様の心配の種を減らしたいしネ」

榛名「これからいっぱいがんばります!」

フェリス「その意気にゃよ」


榛名「しばらくは鍛錬を続けよう」

フェリスが部屋を出た後今後の方針を決めていた。


榛名「あ…武器のお手入れしなきゃ…」

ベッドの脇に置かれていた自分の武器を手に取って刃を出す。

榛名「あれ…?綺麗…」

戦闘をしたとは思えないほど普通に綺麗になっている。

榛名「誰かに…やり方は教えてないはずだけど…」

榛名(あとでメイさんか誰かに聞いてみよう)


ベッドから起き上がって普段着に着替えて、武器を持ち部屋を出て庭に出る。

榛名「今日もいい天気…少し眩しい…」

ヴィルヘルム「おや。ハルナ殿。お久しぶりですな」

榛名「あ、ヴィルヘルムさん。お久しぶりです…!」

ヴィルヘルム「もう体調はよろしいのですか?」

榛名「はい!いつまでも寝ていられません!しっかり鍛錬しなきゃです」

ヴィルヘルム「なるほど。よい心がけです。よろしければあとで一手お手合わせ願えますかな?」

榛名「もちろんです!」

ヴィルヘルムが建物の方に消えて、榛名一人で庭に残される。

榛名「よし…ヴィルヘルムさんが来る前に少しウォーミングアップしておこう」


一人で訓練しているとメイが屋敷からタオルと飲み物をもってやってくる。

榛名「ふっ…!」

メイ「ハルナ様~!」

榛名「あ、メイさん。どうかされましたか?」

メイ「ハルナ様が訓練されているのを見ていたので差し入れをと思いまして…」

榛名「ありがとうございます…!」

メイ「では汗をお拭きいたしますね」

日陰に移動して榛名に飲み物を渡し、メイが榛名の汗を拭いていく。

榛名「ありがとうございます…」

飲み物を飲みながら一息つく。

メイ「いえいえ。これもお仕事ですので」

榛名「少し味付いてるんですね…この水」

メイ「はい。少し果実と塩で味をつけました」

榛名「おいしいです…♪」

メイ「それはよかったです」

汗を拭き終わって軽く肩もみをする。

榛名「あ、気持ちい…ありがとうございます」

メイは軽く微笑んで肩をもむ。

榛名「そうだ、あとでヴィルヘルムさんに稽古付けてもらうから…よかったら見ていきません…?」

メイ「いいのですか?じゃあ是非に!」


榛名「よしっ!マッサージしてもらって元気出ました!」

メイ「頑張ってください!」


しばらくしてヴィルヘルムが戻ってくる。

ヴィルヘルム「お待たせしました、ハルナ殿」

榛名「大丈夫ですよ!」

ヴィルヘルム「もう準備はよろしいですかな?」

榛名「はいっ!」

ヴィルヘルム「では、始めましょうか」


榛名「行きます!」

薙刀を構えてヴィルヘルムの方向に踏み込む。

榛名「やあっ!」

下から低い姿勢で切り上げる。

ヴィルヘルムもそれを見切って思いっきり剣でたたきつける。

榛名「っ…!」

ヴィルヘルム「ふんっ!」

その流れで榛名を弾き飛ばす。


榛名も体大勢立て直したところで構えなおして力をためて一気に接近する。

榛名「たぁぁぁっ!」

横薙ぎ一閃。

ヴィルヘルムは余裕をもって剣で受け止める。

榛名「っ…」

ヴィルヘルムに弾かれて後ずさる。

ヴィルヘルム「まだまだ。ですが前よりはよくなっておりますな。迷いなく急所を狙おうとしている」

榛名「ありがとうございます…!」

その言葉の後にヴィルヘルムの方から剣をたたきつけてくる。

榛名もあわてて薙刀で受け止める。

榛名「きゃぁ!?」

体勢を崩して吹き飛んでしまう。


ヴィルヘルムに剣の切っ先を向けられる。

榛名「負けました…」


ヴィルヘルム「上々ですぞ」

榛名「そうでしたか…?」

土を払いながら立ち上がる。

ヴィルヘルム「ええ。もうここまで戦えるとは、素晴らしい成長です。旅でよほど鍛えられたのでしょうな」

榛名「あー…」

ヴィルヘルム「思い当たる節があるのですな?」

榛名「実戦があったもので…」

ヴィルヘルム「なるほど…よくぞ生きて帰ってきましたな」

榛名「いえ…ミレーナさん達がいたおかげで…」

ヴィルヘルム「ミレーナからはハルナ殿の獅子奮迅の活躍によって生きて帰ってこれたと聞いております。あなたのおかげでもあるのですよ」」

榛名「ミレーナさんが…」

ヴィルヘルム「自身過剰は毒ですが…貴女はもっと自信を持った方がよいと思いますぞ」

榛名「自信を持った方が…?」

ヴィルヘルム「そうですぞ。自身をもっと持てば、心も強くなれるはずです」

榛名「心も…。頑張ります!」

ヴィルヘルム「ええ。その向上心を応援していますぞ」


榛名「やっぱり強い人と戦うのは糧になります」

メイ「お疲れさまでした。ハルナ様!」

榛名「メイさん!」

メイがタオルと飲み物を差し出す。

メイ「お飲み物です。どうぞ」

榛名「ありがとうございます!」


メイ「ヴィルヘルム様との訓練を拝見させていただきましたが、すごいですね…」

榛名「私はまだまだですけどね…」

メイ「もっと自信をお持ちください。ハルナ様」

榛名「でも…」

メイ「ハルナ様は私にとっては尊敬できるお方なのです。 皆もそう思っております」

榛名「そんな…私何にもしてないですよ…?」

メイ「いえ。私たちの命を救ってくれましたよ」

微笑みつつそう言う。

榛名「そういえば…そんなことも…」

メイ「私たちが保証いたします。ハルナ様は自信を持ってください」

榛名「は…はい」

メイ「では、お風呂へまいりましょう?」

こくりと榛名が頷いて仲良くお風呂へ向かう。


お風呂へ向かっている途中でクルシュに鉢合わせる。

クルシュ「おや?ハルナにメイか」

榛名「あ、クルシュ様!」

メイと同時にぺこりと礼をする。

クルシュ「どうしたのだ?こんなところで」

榛名「あ、ヴィルヘルムさんと少し手合わせをしていただいて…」

クルシュ「なるほどな。どうだった?」

榛名「やっぱりまだまだだなぁって…頑張りますね!」

クルシュ「うむ。いつか私もハルナと手合わせしてみるか」

榛名「いいんですか!?」

クルシュ「ああ。いつか必ず。な」

榛名「楽しみにしてます!」


クルシュと別れてからメイが榛名に話しかける。

メイ「ハルナ様。よかったですね。クルシュ様とお手合わせできることになって」

榛名「本当にうれしいです!」

メイ「ハルナ様もっと頑張って強くなりましょうね!」

榛名「ええ!いつかクルシュ様に勝てるように!」


次なる目標をもって気分よくお風呂へ行く。


『ナツキ・スバルが来る一年前』



季節が巡って半年ほど前。


「王選のことをハルナにも話した方がよいだろうか」

「ですねですね。ハルナちゃんにも協力してもらった方がいいと思いますよ」

「となるとハルナには少しいろいろなところへ行ってもらわないとならないな…苦労をかける」

「大丈夫ですよクルシュ様!フェリちゃんもしっかりお手伝いしてあげますし、ハルナちゃんも強くなってますし」

「それもそうだな。よし、後で説明しておこう」

「フェリちゃん用意してきますね」


「プリシラ様からもらったこのドレスいつまでも綺麗…」

「おそらく何か特別な素材を使っているのではないのでしょうか」

「なるほど…でもこれからも大切に着なきゃですね」


扉がノックされる。

「はーい?」

「フェリちゃんだよ~!」

榛名がフェリスだということを確認して扉を開ける。

「どうされました?」

「ハルナちゃんにとーっても大事なお話があるから後でクルシュ様のお部屋に来てネ?」

「大事な…わかりました!」

「じゃあ、またあとでネ」

それだけを言って部屋を去る。


「大事なお話…」

「なんでしょうね」

「また任務でしょうか…?」

「また皆でお出かけですか…楽しみですね」



数刻後、少しおめかししてからクルシュの部屋に向かう。

もちろんメイも一緒に来ている。

「クルシュ様ー!」

大扉をノックする。

「入っていいぞ」

その声を聞いて丁寧に扉を開ける。

「失礼します」

メイと一緒にぺこりと一礼してから部屋の中に入る。


「まぁ、まずは座ってくれ」

手で席に座るように促される。

「失礼します」

メイは榛名の後ろで立っている。

「では早速だが本題に入ろうと思う」

別のメイドに持ってこさせた飲み物を一口飲んでからクルシュが切り出す。

「ハルナよ、王選というものを知っているか?」

「王選…?いえ」

「そうか。では説明からだな。これから王選というものが始まるのだ」

「実は現在の王族たちが…流行り病でお隠れになってしまってな…。その次の王を決めるのだ。竜の巫女の素質を持つ者によって」

「竜の巫女…」

「この徽章がその証だ」

懐から徽章を出す。

「これが…」

「そして竜の巫女の素質を持つ者が複数人いてな。その者たちと争うことになる。だから…力を貸してもらえるか?」

「もちろんです!」

即決する。

「ありがとう」

微笑んで礼を言う。

「クルシュ様のためなら頑張ります!なんでもお申し付けください!」


「といっても、特に何かするというわけではなく今まで通りにやっていくのだが…まずハルナには怪獣駆除に行ってもらいたいのだ」

「害獣ですか…?」

「ああ、どうやらけが人も増えてきているそうだ」

「かしこまりました。すぐに出立しますね!」

「頼む」


地図で場所を教えてもらって、その間ミレーナとマリに竜車を用意してもらう。

「では、行ってきます!」

「行ってらっしゃい。気を付けてな」

「はいっ!」


メイと一緒に竜車のもとまで行ってすぐに出発する。


「害獣駆除…害獣ってどのくらい強いんでしょうね」

「私は戦闘をあまりしたことはないのでわかりませんが…兎の場合はお気を付けを」

「兎…?」

「はい。伝え聞くところに言うと魔女の作ったもので何もかもを食らいつくすそうです」

「何もかも…」

「その場合は逃げるか食われる前に殺してください。ご主人様は百人一太刀で掃討なされたようですが…」

「百人一太刀…流石クルシュ様…」

「ええ、流石です。ハルナ様も…どうか頑張ってくださいね」

「会わないことを祈りましょう」


大きい道なりにずっと馬車を走らせると小さい村が見えてくる。

「メイさん、ここらへんでいったん休憩しましょうか」

「ですね、だんだん被害の中心は近づいてきていますし」

「ここらへんでお話聞けるといいですね」


小さい村は一見特に何も被害がなく、平和そのものの感じだが家の一部が修復されていたり畑の柵が一部壊れている。


このSSへの評価

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エリーさんから
2018-10-24 23:09:00

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2018-09-27 00:53:33

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2018-10-17 08:48:15

このSSへのコメント

6件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2018-09-07 21:20:45 ID: TZFGveCi

ほんの少し、とても少し、かなり少し、気になるのは事実ですねw
表現の仕方はなかなかだと思いますが、キャラの口調とかまだ掴みきれてない気がします。

2: こけこっこ 2018-09-07 23:59:08 ID: eIpj8sqS

コメントありがとうございます!
ごめんなさい…まだ10巻までを1周+Zeropediaしかしてないので…もっと読み込んで口調つかんでいきます!

それまではどうかご容赦を…

3: SS好きの名無しさん 2018-09-09 02:25:18 ID: QYOH32rf

↑の者ですw
そうだったんですか、でしたら「Re:ゼロから始める異世界生活Ex 獅子王の見た夢」を読んでみてはいかがでしょう? あれでしたら、クルシュやフェリスのこともよく知れると思いますよ(^-^)

4: こけこっこ 2018-09-09 08:58:15 ID: JnbRyloc

コメントありがとうございます!
獅子王の見た夢読んでみました!

何回か読み返して深めてきます!

5: SS好きの名無しさん 2018-09-09 11:01:41 ID: QYOH32rf

お、そうですかw
頑張ってください!

-: - 2018-09-14 01:45:08 ID: -

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