2018-09-08 14:12:20 更新

概要

青葉と司令官と、ときどき衣笠さんのおはなしです。
長編を予定しておりますが、更新自体は不定期になると思います。
少しシリアスで基本的にコメディチックな感じに進行していければ幸いです。

筆者はss速報vipのほうで提督「私と艦娘が険悪な関係だと?」という安価・コンマスレの>>1ですが、まったく関係の無い場所でのお話となっておりますので単体でお読みいただけます。

最後に地の文・キャラクター崩壊にご注意ください。


前書き

このたびは拙作に御アクセス頂きありがとうございます。
普段はss速報vipのほうに投稿しているのですがそちらが落ちているので、こちらに投稿させていただきます。。
エタだけはしないようにがんばっていく所存です。

以下は拙作の提督「私と艦娘が険悪な関係だと?」を読んでくださっている方へのご連絡となります。
常日頃から拙作のお読みいただきありがとうございます。鯖クラッシュとのことですので、スレの復帰自体が無理かと思ったので四隻目の埋めネタ投下するとしたらばの生存版ではご報告いたしましたが、復帰の可能性もあるのでこちらでは別のお話を投稿することにしました。
またこの度の対応のためにツイッターを『険悪提督』のアカウント名で始めましたので、今後の更新・移転などについてはそちらでご報告していきます。
最後になりましたが今後ともお付き合いいただければ幸いです。


夢と手の中にある炎



 燃える。

 宵闇の帳を滅さんばかりにごうごうと荒れ狂う。


「な、なんで! ワレ、アオ――ぐっ!」


 喉の奥から絞り出した言葉は言い切る前に轟音にかき消された。


 ワレ、アオバ。ワレ、アオバ。


 頭が混戦する。

 目の前の乱戦に絶望する。

 鳴り響く無線に自分の失敗を気づかされる。


「そんな、馬鹿な……馬鹿な……」


 遠くで誰かの叫びが聞こえた。

 







「わっ!!」


「ちょ!? あ、青葉、どうしたの?」


「へ? い、いや、ちょっと夢が悪かったというか……あはは……」


「ふーん……」


「そ。それよりも着替えないと!」


 どこかいぶかしむように私を見るガサから逃げるようにして鏡台の前に腰かけた。

 我ながらひどいありさまだった。

 寝汗で濡れそぼった髪はピタリと額に張り付き、目の下にはうっすらと隈ができていた。

 こんな顔で司令のまえに行けば、いらぬ心配を招くことは百も承知であった。

 鏡台の墨に置かれた真新しい化粧品へと手を伸ばした。

 最初、熊野さんに勧められたときには自分に必要ないものだと思いできるだけ安いものを付き合いで買ってしまったが、これでなかなか重宝している。原稿を徹夜であげて顔色が悪いときなどはこれがあるだけでだいぶ違う。


「えっと……これがふぁんでーしょんで、えっと口紅はどこにやっちゃったかなぁ」


「はい」


「ども、ども」


「……」


「いやぁ、なんていうかお化粧なんて慣れてないから変だったら教えてね。あはは……」


「別にそれはいいけどさぁ。姉妹艦なんだし、ほかにもなにかあるなら言ってね」


「う、うん」


 つい反射的にガサの言葉にうなづいてしまった。

 しかし、それとほぼ同時に彼女へ自分の胸のうちを打ち明けることはこれかもきっと無いのであろうとおもうと胸の奥がチクリと痛かった。

 出来ることならこの痛みも含めてすべてを吐き出してしまいたかったけれど、残念なことにそれは決して許されないことなのだろう。

 そんなこちらの胸中を察しているのか衣笠もそれ以上に何かを言い募ることも無く、どこかよそよそしい沈黙がだけが私たちの間に横たわっていた。

 かちり、かちりと時計の針が動く音が白々しいほどに響く。


「あの、それじゃあ、青葉、取材にいってきます!」


「え? あ、うん」


 化粧もそこそこに沈黙を打ち破る大音声をひとつ。

 呆気にとられたのか、ガサの返事は冴えないものだった。

 それも今の私からすると朝から陰鬱な空気を振りまいてしまった自分への批判のように感じてしまい、あわてて部屋から飛び出した。

 







「すぅ……ども、おはようございます!」


「ん、ああ。おはよう」


 先ほどまでの重い空気を入れ替えようと深呼吸を一つしてから、底抜けに明るい『いつも』の私を演じる。

 ノックの一つも無くあけられた扉の先にいた司令官はいつものようにちらりと書類から目を上げて、挨拶を返してくれたが、その双眸はすぐに彼の戦場たる紙面へともどっていった。

 

「司令官」


「整理しておいてほしい書類は青葉の机においておいたからお願いするよ」


「恐縮です! すぐにやっちゃいますね」


 名前を呼ばれただけで、こちらの意を察したのか司令官は左手で私の机を指差した。


「よっこいしょっと――えっと、これは長門さんへの確認してもらう書類で、こっちは……」


「……」


 書類を整理しながらちらりと司令官のほうを伺う。

 ただ黙々と書類をこなす彼は改めて見ても特徴の無い人だった。

 中肉中背の年齢相応の顔立ち。優しいところはあるけれど、底抜けのお人よしというわけでもない。

 武勲も大戦果をあげたことがあるわけではないらしいので、事務仕事と実直な勤務態度を何年と続けてきた結果が今の戦隊司令官という地位なのだろうというのが私たち艦娘たちの共通認識だった。

 

 でも、そんな彼をみているのを私は好きだった。

 勿論おおきく派手な動きがあるわけでもないが、司令官の所作の一つ一つは落ち着いていて咳払い一つとっても実に様になっているのだ。

 しかし、なによりも私が好きだったのは彼の手をみることだ。

 女の人のようなといえば言いすぎだろうが、彼のそれはほかの戦隊司令官と比べると細く長くて華奢だった。だというのに中指の第一関節部分にぷっくらと大きなペンだこがあるのだ。

 軍人というよりも記者や作家のようなその手が青葉は好きだった。


「……先ほどからこっちをみてどうかしたのか?」


「え? あ、す、すみません」


「別に謝ることはないよ。ただ、なにか用があれば呼んでほしい」


「恐縮です」


「うん」


 益体もないことを考えすぎたのかもしれない。司令官を眺めているのを彼自身に気取られるなんて初めてのことだった。

 気恥ずかしくなってあわてて書類に目を落とすと、司令官もそれ以上はなにも言わず執務へと戻った。

 しばらくすると黙々と整理に当たっていた甲斐もあってか、私の元にあった書類の山もだいぶなくなっきていた。

 

 どうしよう。


 司令官を見てみれば少し顔を赤らめて書類をじっと見ている。

 ああいうときは難敵を相手にしていると相場が決まっている。声を掛けては邪魔をしてしまうかもしれないなと思うのと同時に今ならじっと彼の手を見ていてもばれないのではないかという思いがむくむくと首をもたげてきた。

 ごくりと喉が鳴る。

 そっと自分の手のひらを見てみると、ささくれ立ったあまり女のものと思いたくないようなごつごつとしたものがそこにはあった。

 ……砲戦が悪いのだ、あれさえなければ私の指だってもっときれいだったはずだ。

 考えてみれば酷い話だ。手に主砲を持たない戦艦の人たちはともかく私たち重巡洋艦や駆逐艦はどうしてもこういう風になってしまう。

 再び司令官に目を向けてみれば、彼は先ほどよりも顔を赤くして人差し指で机をトントンとたたいていた。

 

 ……別に青葉は戦いたくて戦ってるわけじゃない。彼が命令するから仕方なく深海棲艦と戦っているのだ。

 だから、これぐらいは許してくれますよね?

 

 

 ね? 司令官。


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