2018-09-24 10:21:07 更新

概要

人類で初めて艦娘に邂逅した現元帥さんと、その養子として育てられ、元帥の思惑にって元ブラックな鎮守府に配属されてしまう仕事だけは出来るボケっとした提督さん。彼らがシリアスな展開や忘れ去りたかった過去と直面して艦娘と打ち解けつつ最後には…最後にはほのぼのに…なる…のか?
初投稿シリーズな上、こんな続ける気なかったんで伏線ガバガバですけどお許しいただけると幸いです。


前書き

こちらは『ぽんこつ提督が鎮守府に着任するようです。Part4』の続きとなっております。もしそちら又はPart1を呼んでいなかった場合は本ページ下部にある作者の別の作品から順番に読んでいただけると幸いです。
ぶっちゃけ、やっつけで書いているPart5…皆様に楽しんでいただけるか不安ですが、張り切っていきましょう。



ー前回までのあらすじー


メイド服に癒されて、瑞鶴に猛烈なアピールを喰らい、ダークホースが現れて、プールに行った。以上。


真面目にやります☆


義父である元帥に元ブラック鎮守府に着任させられてしまった本作の主人公こと『提督』


彼はそこに属する艦娘たちと触れ合いながら意味深な関…ゲフンゲフン、様々な関係を築いていく。


そんな中、彼は様々な出来事を通して己の過去と向き合うことになっていく、昔愛した人との再会や両親の死の真相と。


また突如現れた兄はどのように物語に関わってくるのか!そしてなにより提督はどの艦娘を選ぶのか!


Part2で終わるはずだったせいで色々ガバガバの本作ですが、Part5も張り切っていきましょう!








ー提督視点ー


それは、約十六年前。細かいことは覚えていないが、俺の日常は突如崩壊した。


一瞬の出来事だった、兄さんと俺が一緒に散歩をしていた時に町は火に包まれた。


普段見ていた日常が火に包まれる光景。それは強烈に脳裏に焼き付いている。


でも、それはもう過ぎたことだ。物心ついて間もなかった俺は何もわからないまま兄に避難所に預けられ、元帥に拾われ今に至る。


ちなみに今はプールに来た皆から少し距離を取って兄と話している。


兄貴「まさかこんなところで再開するとはな。生きていてくれて本当に良かった。」


提督「兄さんこそね、こんなところで会うなんて。」


提督「ところで兄さん、なんであの時俺と一緒に避難所に来なかったんだ?」


兄貴「避難所もかつかつだったらしくてな。俺かお前だけしか面倒を見れないって言われたんだ。それで俺は別の避難所にな。」


兄と俺は十歳ほどの差がある。といってもこれくらいの年齢差の兄弟なら今日日珍しくないだろう。


そのため、昔から俺はかなり兄さんに面倒を見てもらっていた。兄さんは両親が死んだときでさえ、俺を優先させてくれたというわけだ。


提督「そうだったんだ。」


てっきり、俺は兄さんにまで捨てられたものだと思っていた。


兄貴「ところでお前、今は提督をしてるって本当か?」


提督「え、うん。ここの近くの鎮守府で提督をしてる。海軍関係の人に義父になってもらってさ、だから俺もなったって感じ。」


兄貴「今すぐに辞めるべきだ。」


提督「え?なんで…?」


兄貴「そんなの危険に決まってるからだろう。深海棲艦なんて得体のしれないもんと戦う上に艦娘だって安全かわからないんだろう?」


提督「確かに危険があるのはわかってるけど、艦娘は人間のために戦ってくれてるんだからその言い方は…」


兄貴「…すまない、失言だった。許してくれ。とはいえ、深海棲艦が危険なのはわかっているだろう?」


提督「そりゃ、わかってるけれど誰かがやらなきゃ…」


兄貴「その誰かがお前である必要は無いだろう。」


兄さんは一切引く気が無いといったように俺を問い詰めてくる。とはいえ、これが俺を思っての発言だと思うと一喝するのも少し気が引ける。


しかし、どこか久しぶりの兄弟の再会にしては少し違和感を覚えるのは何故だろうか。まるで兄さんが俺に提督を辞めろというためだけに再開したかのような…いや、気のせいか。


提督「でも、俺は一度引き受けた仕事を途中で放り出すのは嫌だよ。」


仕方ないので適当な理由をつけて説得してみるが、表情を見るに納得はしていないようだ。


兄貴「わかった、お前の義父に会わせてくれ。仮とはいえ息子を危険な仕事に就けるような親の顔が見てみたい。」


提督「…わかったよ、ただ俺の義父は元帥なんだよ兄さん。」


兄貴「な!?元帥?それって海軍で一番偉い人じゃ…」


提督「そうだよ、でもまぁ怖い人ではないから心配しないで。とりあえず連絡先だけ交換して決まったら詳細を送るよ。」


兄貴「あぁ、わかった。」


提督「ところで、兄さんは今どうしてるの?」


兄貴「ん?俺か?俺は普通に仕事して一人暮らししてるさ。今日は知り合いの女の子をプールに連れてきてたってわけさ。」


提督「そうなんだ、でも兄さんが無事でよかった。」


兄貴「提督こそな。」


そうして、俺は兄貴と別れるのであった。










帰り道は特に問題もなく鎮守府に戻れた。帰ってすぐ俺は親父に電話をかける。


元帥「はい、こちらお父さんです。」


提督「おう、親父さ今日偶然兄貴と会ってさ親父に会いたいって言ってるんだけど一般人と会ったりって出来るの?」


元帥「別に会うことは可能だが、本当にお前の兄なのか?」


提督「ん?さすがに実の兄を見間違えたりはしないって。」


元帥「そうか、なら予定は早い方がいいだろう。明日の午後四時に大本営で待ってるぜ。」


提督「そんな簡単に話を進めていいのか?」


元帥「お前の身内が会いたいってんなら、俺は会わなければならない責任があるからな。」


提督「そんなもんなのかね。」


元帥「そんなんもんだ、お前の兄に提督は渡さないッとか言ってみたいしな。」


提督「あんまり、話をこじらせないでくれよな。んじゃ、明日車よろしく。」


そこまで話して電話を切る。すると執務室の扉がノックされる。


提督「どうぞー」


扉を開けて入ってきたのは瑞鶴だった。お前出てきすぎ!いや、最近会って無かった気もするけど!


提督「急にどうしたんだ?なんか問題でもあったか?」


瑞鶴「私を置いてプールに行った提督さんに嫌がらせしに来ただけですよーだ。」


瑞鶴は頬を膨らませながらいかにも不貞腐れているといった体でソファに寝そべる。仮にも上司なんだけどなぁ俺。


でもまぁ、丁度暇を持て余しているので少し話すかね。


提督「なぁ、瑞鶴。俺がもし提督辞めて普通のサラリーマンになるって言ったらどうする?」


瑞鶴「え…」


驚いたような声を出した後、瑞鶴は少し考えるようにする。


瑞鶴「私は提督さんに着いてく。」


提督「いやいやいや、ナチュラルに着いてくんなよ。艦娘なんだからそれは無理だろう?」


なにこの子、脳内で半強制で逃避行でもするの前提になっちゃってるのかな?浪漫飛行かな?トランク一つじゃ生きてけない!


瑞鶴「そりゃそうだけど…提督さんが傍にいてくれないと私なにするかわからないよ?なんちゃって。」


そんなことを言いながら瑞鶴は俺の背中にくっついてくる。無い胸が当たるくらいくっついてきてる!ヘルプ!股間がアカン!なんか語呂いいな。


なんか、こいつ例の祭りから余裕が出来たというかなんというか、とっても質が悪い!


俺が苦笑いを浮かべている、その時にもう一人の来訪者はやってきた。


鈴谷「提督ー!鈴谷が甘えに来た…って、なにしてんの?」


うわぁ!一番会って欲しくない二人が俺の目のまえで邂逅したぞ!俺はどうする。逃げる←逃げる 逃げる


勿論逃げるを選択!逃げられない!あぁ、素早さが足りない!なにより鈴谷の目が怖いです!病んこれだこれ!


瑞鶴「なにって提督さんとスキンシップをしてるだけですよ?文句でもあるんですか?」


瑞鶴の挑発!鈴谷のヘイトがぐーんと溜まった!俺は逃げるを選択。逃げられない!


鈴谷「スキンシップ?鈴谷には一方的なセクハラに見えるけどなぁ?提督は鈴谷とスキンシップしたいでしょ?」


少し谷間を強調するようにして、鈴谷は俺に向かってそんなことを言う。やめて!巻き込まないで!


鈴谷の誘惑!俺の股間に一億のダメージ!火力馬鹿高くね!?もちろん俺は逃げるを選択。逃げられない!


瑞鶴「な!?なによ、提督さんは貧乳のツインテが好きなんだからそんなことしたって無駄ですよ。」


瑞鶴は特殊スキル性癖暴露を発動!絶対それ俺の部屋で見つけたエロ本情報だよね。返してもらって無いなそういえば。


鈴谷「提督…じゃあ、鈴谷のこと好きって言ってくれたのは嘘だったの?」


提督「ちげぇよ、性癖は確かに瑞鶴の言ったとおりだけどお前のことが好きだったさ。」


瑞鶴「へ…?」


あ、そっか瑞鶴って俺と鈴谷の関係を知らないじゃん。え、んじゃなんで今戦ってたの!?女の勘ってやつ!?




とりあえず、瑞鶴に状況説明。俺が鈴谷を好きなのが過去の話と聞いて落ち着いたようだ。


これで一件落…


鈴谷「というわけで、提督は今から鈴谷と二人でイチャイチャしよ!」


瑞鶴「なによ、昔の女ってだけで正妻面しちゃって今は私が提督さんと話してたんだから!」


一件落着するわけもなく、俺の上をティッシュの箱や万年筆が飛んでおります。目に刺さったら危ないからやめろ!


まぁ、実際今どっちが好きかと問われればこんな戦闘民族どっちも嫌いだって言ってやりたいんですけどね。ははは。


鈴谷「話してたって胸押し付けて誘惑してたじゃない!」


瑞鶴「な!?そんなこと言ったらあなただってさっき谷間を見せて誘惑してたじゃん!」


提督「落ち着けってお前ら、頼むから執務室で暴れないでくれ。」


とりあえず止めないと不味いのはわかる。超危険。いつか艤装展開しそうだもん。まじやばでじゃけぱない。


瑞鶴「じゃあ、提督さんが選んでよ!どっちとイチャイチャするか!」


鈴谷「鈴谷もそれに賛成!提督が決めれば文句は無いでしょう?」


なんでどっちも自分が選ばれるの前提なんですかねぇ…もうやだ、鹿島助けて。


鹿島「失礼します…って、なんですかこの惨状は…?」


提督「鹿島、俺とイチャイチャしようぜ。」


俺は全く意味の分からん台詞を決め顔で言ったのだった。




鹿島「状況は理解しました。大変だったんですね…」


最初こそ俺にイチャイチャしようと言われ挙動不審になっていた鹿島だったが、二人を退室させてから状況を説明したら部屋の片付けを手伝ってくれた。


不機嫌そうな二人を退室させた後、初めてなので優しくお願いします…なんて鹿島が言ったときは普通に夜戦するか悩んだ。最低だな俺。


いや、違う。全人類が思うはずだから俺は決して最低では無い。QED証明完了。


提督「まぁな、さっきは本当にごめんな。紛らわしい言い方して。」


鹿島「い、いえ、私こそ、その…はしたない女と思わないでいただけると…」


アカン、美人で巨乳なお姉さんが照れてる姿って男にはダメージがデカすぎる。


提督「そんなこと思わないですよ。悪いのは俺ですしね。」


最早ボーナスです、こんないいことがあったらもう明日から悪いことしか起きないんじゃないかって思うくらい!


提督「あ、そうだ鹿島は俺がもし提督辞めるって言ったらどうする?」


鹿島「お辞めになられるんですか…?」


提督「いや、実は兄に提督は危険だからやめろ見たいに言われててさ。もしかしたら~みたいな?」


鹿島「うーん、そうですねぇ。わがままを言っていいのなら、私はあなたに提督でいて欲しいですよ。トラブルこそ良く起きますが、提督が着任してからは皆とても楽しそうに笑えていますから。」


提督「そっか、ありがとな。」


鹿島「いえ、本心を言っただけですから礼を言われるようなことは何もしていませんよ。」


そうして、失礼します。なんて言って執務室を後にした。


再度一人になった執務室で俺は適当に音楽を流して暇を持て余すのであった。ちなみに聞いてたのはSKY‐HIです。かっこいいんでみんな聞こうね。







翌日早朝、俺は鎮守府近くを一人で歩いていた。


たった三か月しかここでは過ごしていない。でも、どこか俺にはここが自分のいるべき場所だと思っていた。


今日まで色々な経験をしてきた、死にかけて死にかけて死にかけて…


ん?死にかけてるだけじゃね?まぁ、いっか。


とはいえ、少しは俺がここに着任した意味はあっただろう。鹿島さんの台詞が頭を過ぎる。


ただ、いつも思うことがある。


俺より誰かならうまくやったんじゃないか。あの子を救えたんじゃないか…と。


たった刹那の仲。されど俺はあの子を知ってしまった。笑顔を寝顔を苦しむ表情を。


一つのミスが、まるでウイルスのように俺を蝕む。


鳳翔「こんな時間にどうされたんですか?」


そんなことを考えつつ海を見ていると、不意に後ろから声をかけられる。


提督「少し日の出でも見ようと思いまして、鳳翔さんこそどうされたんですか?」


鳳翔「私は倉庫に食材の確認に行くところですよ。でも、時間に余裕もありますしご一緒に日の出を見てもよろしいですか?」


提督「ええ、鳳翔さんのような美人とご一緒できるなら大歓迎ですよ。」


鳳翔「ふふふ、提督ったらお世辞がお上手ですね。」


難しいことを考えていたせいか、思いのほかそんな臭い台詞が自然と出る。いや、心にふざけている余裕が無いというのが正しいか。


鳳翔さんはそっと、俺の横に腰かける。


鳳翔「なにか悩み事ですか?」


少しの沈黙の後、鳳翔さんが何の前触れもなく俺に聞いてくる。


提督「悩みなんて大それたもんじゃないですよ。ただ、俺はしっかり提督としてやれてるのかなと思って。」


俺は細かいことを言うのは暗くなると思い、少し濁して言う。


鳳翔「私は提督はきちんと仕事をこなせてると思いますよ。」


提督「ありがとうございます。でも、どうしても考えちゃうんですよね、俺じゃない誰かならもっと上手くやったんじゃないかって。」


俺の台詞を聞いた鳳翔さんが少し考えるようにする。前方では日が昇り始めている。境界線に上る日はとても綺麗だ。


鳳翔「そのとおりだと思います。きっと提督よりうまく物事をこなす人なんて世の中に山ほどいるんでしょうね。」


わかりきっていたことだ。でも、そう改めて言われると少し胸が苦しい。


鳳翔「でも、実際に私たちを救ってくれたのはあなたなんですよ?暗い先の見えない絶望の中にいた私たちに笑顔をくれたのはあなたなんです。」


鳳翔「だから、これだけは忘れないでください。私たちにとっての『ひーろー』はあなたしかいないんですよ。」


鳳翔さんはそう言って俺を笑顔で見る。俺は艦娘をヒーローだと思っている。その彼女たちのヒーローが俺。ははは、もう意味わかんねぇな。


ただ、たったこれだけの会話で俺の中の靄が晴れた気がした。そう、俺よりうまくできるやつがいたとしてもやったのは俺だ。


他の誰でもない、失敗が俺の責任であるのと同時に成功も俺の責任であるのだ。


提督「ありがとうございます、鳳翔さん。お陰ですっきりしました。」


鳳翔「いえいえ、お役に立てたなら光栄です。」


俺は朝日を背に受けながら、お陰ですっきりするってなんかエロいなとか考えてるのだった。







そして、同日午後車内にて俺は決意を固め親父のもとに向かう。


だいたい、朝の俺はアホだ。提督辞めたら皆の胸部装甲が拝めないじゃないか。生き甲斐の八割が消えるわ。


兄さんは別の車で向かっているらしい。心配してくれる兄さんには申し訳ないが俺だってもう子供じゃないのだ。


提督「ありがとうございます。」


俺は運転手さんにお礼を言って建物に入る。そして、指定された部屋に向かった。


この時の俺は、今までで一番のトラブルに巻き込まれることになるなんて少しも思っていなかった。






ー?視点ー


冷たい音が響く、薬莢の落ちる音が次いで響く。


ようやくだ、ここまで長かったものだ。いや、まだここからと言うべきだろうか。


安心しろ、お前は絶対に俺が守ってやる。あの狂った男からも守れたんだきっと大丈夫。


人間だろうが艦娘だろうが深海棲艦だろうがあいつを傷つけさせてなるものか。


あの事件の真相を知ってからはや十年。様々なことがあった。


少し話をしようか、君たちはどちらのほうがより悪だと思う?


ん?悪にランク付けも何もない。等しく悪は悪だって?おいおい、つまらない話は辞めろよ。


君たちは人殺しと未成年の夜間徘徊に同じ刑罰を与えるのか?


話を戻そうか、今回出てくる悪の種類はこの二つだ。


無意識に人を殺したいと突き動かされるモノの殺人と。


自分の欲望や願望を満たすために利用するための殺人。


わかりやすくしようか、殺すことが仕事な人の殺人と、人を殺すと仕事が楽になる人の殺人。


俺は後者の方がより悪だと判断する。だって、殺す必要は無いのだから。


そう、だから俺は…人間を辞めたのだ。


いるかもわからないこの世界の傍観者に話しかけていると、部屋の扉が開いたのだった。







ー提督視点ー


俺はどこかから聞こえた銃声に少し嫌な予感が走り、目的地まで走る。


すると、扉を開けている大和さんが見えた。しかし次の瞬間大和さんの体が後ろに吹き飛ぶ。撃たれたのか?一体誰に?


提督「大丈夫ですか!大和さん。」


俺は大和さんに声をかけながら扉と大和さんの間に飛び込む。


大和「私は大丈夫です…提督君は…すぐに…逃げなさい…」


提督「そんな状態で大丈夫なわけないでしょうに、って…兄さん…………なにやってんだよ。」


俺は思わず目の前で銃を握っていた男性に目を見開く。少し長い髪に俺と同じか少し大きい背丈に特徴的な頬の傷。


そこに立っていたのは兄さんだったのだ、よく見ると奥に親父が倒れている。


兄貴「どいてくれ提督、その女は今のうちに殺しておきたい。」


提督「なに言ってんだよ兄さん、銃を下ろしてくれ。じゃないと俺はここからどくわけにはいかない。」


後ろで大和さんが逃げてなんて言っているが、聞いていられない。俺は銃を取り出し兄さんに向ける。


兄貴「俺に銃を向けるのか、いやお前は俺の計画を知らないんだもんな、仕方が無いか。」


提督「なに言ってんだよ兄さん、いいから銃を下ろしてくれ。じゃないと俺も撃たなくちゃいけなくなる。」


兄貴「撃ちたいなら撃てばいいさ、今回は第一目標を達成したし俺は帰るとするよ。またな提督。」


俺は歩いて行く兄さんに照準を合わせたまま警戒を続ける。しかし、撃つことは…出来なかった。


兄貴「お前はやっぱり提督なんて向いてない、提督をするには優しすぎるよ。」


去り際に兄さんの放った言葉が俺の胸に深く突き刺さるのだった。











そして、現在憲兵に事情を説明し大和さんと親父を病院に運んでもらい俺は聴取するとかで大本営で待機している。


二人は命に別状は無いらしい、とはいえ重体なのは確かだ。


特に親父は二発撃たれていて、数分病院に運ばれるのが遅かったら危なかったらしい。


状況に理解が追い付かない、親父と大和さんを兄さんが撃った?なんのために?


俺を海軍から遠ざけるため?そんな理由で人を撃てるのか?


いや、待てよ。今のうちに殺しておきたいと兄さんは言った。ならまだなにかをするつもりなのか?


隊長「おい、おい、提督。聞こえるか?」


提督「あ、隊長さん。すいません少し考え事をしてました。」


隊長「そうか、悪いがなにが起きたのか教えてもらっていいか?」


俺は隊長さんのそのセリフに対して細かく先程の状況を説明する。兄さんがそんなことをするとは思えない。


提督「二人は…結婚直後だっていうのにこんな…」


隊長に事情を話し終えた後、俺は思わず口からそんなことを漏らす。


隊長「気にすんな、あいつらもあの立場に座る以上覚悟していただろうさ。それでお前が自分を責める必要は無い。」


提督「ですが…やったのは俺の兄さんですし。」


隊長「考えすぎんなっての、とりあえずだがお前にはここ。つまり元帥の鎮守府の指揮も当分持ってもらうことになった。」


提督「え…俺より適任がいるのでは?」


隊長「いーや、大和のやつの意志だ。俺も賛同だよ、お前なら安心して任せられるしな。」


提督「……わかりました。」


隊長「助かるよ、お前さんとこの艦娘は全員ここの鎮守府に移動してもらう。ここ周辺は他の提督にカバーしてもらうとしよう。」


提督「しかし、深海棲艦の進行は今落ち着いているのでは?」


隊長「まぁな、でも嫌な予感がするんだよ。」


隊長さんはそこまで話して忙しそうにどこかに行ってしまった。


二つの鎮守府分の艦娘をまとめるとはいえ、どちらも顔見知りである以上そこまで難しくないだろう。


しかし、俺も隊長さんと同じで嫌な予感がする。あれが兄さんのなりすましだろうとなかろうとここでは終わら無いという確信がある。


大淀『全職員に連絡、鎮守府正面海域にて敵深海棲艦の接近を確認。艦娘は作戦指示どおり迎撃作戦を行ってください。』


その予感は即座に現実となった。放送を聞いてとりあえず俺は執務室に走る。


提督「大淀さん、敵はどれくらいですか?」


執務室に入るなり、大淀さんに声をかける。


大淀「良かった、提督。艦娘への作戦指揮を任せてもよろしいでしょうか?」


提督「最初からそのつもりですよ。あるだけの情報を寄越してください。」


大淀「わかりました、データを元帥のPCに転送します。」


俺は即座に執務机に陣取り、パスワードに『吹雪』と入れてPCを立ち上げる。


情報によると敵深海棲艦は十ニ隻。ここ最近では全然見かけない複数の艦隊だ。タイミングが最高じゃねぇか畜生。


とりあえず情報を大雑把に見てマイクを握る。脳内では兄さんが深海棲艦と…なんてことを思ってしまうがそんな暇はないぜ俺。


提督『元帥が意識不明のため臨時で指揮を任された提督だ。現在敵深海棲艦がここ向かって進行している。』


提督『敵戦力は空母三隻、戦艦三隻、駆逐艦五隻、姫級が一隻とのことだ。』


提督『こちらも総力を持ってこれを迎撃する。作戦指揮は俺が随時行うこととする、些細な戦場の変化も逐一俺に報告するように。』


提督『艦隊は…』


そうして、若手が元帥代理を務める異例の防衛作戦が始まったのだった。






伊勢『こちら第一艦隊、艦載機により敵艦隊を捕捉。情報通りみたいだね、でも姫級が小さい?』


提督「小さい?どういうことです?」


伊勢『んー、なんていうか小さい。普段目にする姫級より弱そうというか。って、吹雪ちゃん…?』


提督「は?吹雪さん?伊勢さんどうしたんですか、応答してください伊勢さん!」


吹雪さん?なんでこんな時に吹雪さんの名前が?


提督「第二艦隊、青葉!聞こえるか?」


青葉『そんな大声出さなくても聞こえてますよ。』


提督「良かった、そこから深海棲艦は見えるか?」


青葉『いいえ、まだ見えないですね。どうしたんですか?そんなに慌てて。』


提督「伊勢さんとの通信が途絶えたんだ。様子を見に行ってもらってもいいか?」


青葉『青葉了解です。皆さ~ん少し作戦変更ですよ~』


とりあえず、第三艦隊までを出撃させ様子を見ているのが現状だ。親父は演習などをきちんとする人なので皆かなりの力を秘めている。


とはいえ、指揮官が俺ではそれを生かしてあげることができないかもしれない。なにもかもを警戒しといたほうがいい。


なにはともあれ伊勢さんたちだ。通信ができないうえに吹雪さんというのが気になる。


提督「畜生、全員無事で帰って来いよ…」


俺は思わず、小声でそんなことを漏らすのだった。









ー伊勢視点ー


駆逐棲姫「オ久シブリデス。伊勢サン。」


目の前の駆逐棲姫が私に声をかけてくる。その姿は駆逐艦吹雪の生き写しのようだった。


私の知る吹雪は一人しかいない。元帥の初恋の人で想いが通じる寸前で沈んだ艦娘。


そう、私の知っている吹雪は沈んでいるのだ。ならこの深海棲艦は一体。


駆逐棲姫「無言なんてひどいじゃないですか、普通にしゃべるのは中々難しいですね。」


伊勢「貴方は、私の知る吹雪ちゃんなの?」


あまりにも普通に話しかけてくるので私も少し話してみることにした。


駆逐棲姫「はい!吹雪です!忘れちゃったんですか?伊勢さん。」


声や仕草は吹雪そのものだが、あまりにも禍々しい。だって、見た目は吹雪ちゃんでも肌の色や艤装が深海棲艦そのものなのだから。


その時だった。


綾波「吹雪ちゃん…」


亡き吹雪の姉妹艦である綾波ちゃんが、吹雪ちゃんのような深海棲艦に近づく。


私は止めるべきかわからなくなってしまった。綾波ちゃんが涙を堪えながら吹雪ちゃんに似た深海棲艦に近づく。


この時、私は止めるべきだった。感動の再開のようなシーンに水を差していいものかなんて考えるべきじゃなかった。


それからの展開は感動の再開とは程遠いものだったのだから。


駆逐棲姫「久しぶりだね、綾波ちゃん。それじゃ沈んでね。」


吹雪の台詞の直後、正面に大きな水しぶきが上がる。あの小さな体からとは思えないほどの火力。


伊勢「綾波ちゃんッ!」


私はその水しぶきが、吹雪に似た深海棲艦による攻撃と理解し、直撃した綾波ちゃんに駆け寄る。


伊勢「大丈夫?綾波ちゃん。」


綾波「私は…大丈夫…」


綾波ちゃんはそこまで言って意識を失ってしまった。どうやら大破しているようだ。大丈夫なわけ無いじゃないか。


伊勢「吹雪ちゃんッなんてことしてるのさッ」


私は目の前にいる吹雪ちゃ…深海棲艦に向けて声を荒げる。


駆逐棲姫「なに言ってるんですか?伊勢さん。目の前に敵がいたら撃つのは当たり前でしょ?」


私はそのセリフに思わず唇をかみしめる。状況を完全に理解したとは言えない、でも一つだけわかった。


伊勢「そう、あなたにとっては私たちは敵ということなんだね。折角元帥に良い報告ができると思ったんだけど仕方ないか。」


伊勢「第一艦隊、砲雷撃戦用意ッ」


そして、目の前の深海棲艦との戦闘を開始した。




日向「伊勢、このままでは不味いぞ。」


伊勢「わかってるってッ」


私は深海棲艦の攻撃を回避しながら日向と会話する。


日向「実際あの深海棲艦が吹雪となにか関係があるかはわからないが、駆逐艦の動きが悪すぎる。」


伊勢「そりゃまぁ、昔の仲間と同じ見た目の敵なんて戦いにくいに決まってるよね。」


青葉「どもども~、第二艦隊支援に参りました。って…これは趣味の悪い敵ですね。」


先程、提督からの通信を切ったため様子を見に来たのであろう第二艦隊が合流する。


駆逐棲姫「あれ?もう増援ですか?元帥がいないはずだからもっと指揮系統が乱れてると思ったんだけどなぁ。今回は引くとしますかね。そうだ、伊勢さん元帥によろしくね。」


こちらが合流すると同時に、吹雪に似た深海棲艦は少数のイ級を殿にして引いて行った。


衣笠「伊勢さん、今のって…」


伊勢「違うよガッサちゃん。あれは深海棲艦。深海棲艦なの…」


衣笠「………」


私は自分に言い聞かせるように言う。先ほどは旗艦としてすぐに敵だと割り切ったが、こうして考える余裕ができると正直わからなくなってしまう。


青葉「まぁ、とりあえず伊勢さん提督が激おこなんで早く通信繋いだほうがいいですよ。」


伊勢「あ、そういえば繋ぎなおしてなかったか。おいしょっと、聞こえるー?提督。」


提督『聞こえる?じゃないですよ馬鹿ッどんだけ心配させんですかこのアホッ』


伊勢「あはは、ごめんごめん。そこまで心配してくれるとはね。私に惚れでもしたのかな?」


提督『茶化さないでください。伊勢さんは俺にとって姉のようなものなんですからそりゃ心配しますよ。』


伊勢「へ?提督ってそんなに私のこと好きだったんだ。へ~」


少しうれしいような恥ずかしいような、これからはイジメるの控えてあげることにしよっかな。


提督『好きなんて言ってないでしょうが!久々で話したくもありますけど今はそっちの被害状況の報告をお願いします。』


伊勢「了解、第一艦隊は綾波ちゃんが大破。他は全員小破以下で戦闘続行可能よ。」


提督『わかりました、綾波の駆逐艦を向かわせます。空いた穴は改修に向かう際に愛宕さんに向かってもらいます。』


伊勢「了解。」


そこまで話して通信を切る。姉か…いい響きだねこれは。


日向「吹雪のことは報告しなくていいのか?」


伊勢「今それを言ったところでどうしようもないし、提督も急な指揮で混乱してるだろうし後で報告することにしただけだよ。」


日向「そうか、わかった。」


報告したところでどうにかできるのだろうか。そんなことを考えながら予め指定されていたポイントに向かうのだった。







ー提督視点ー


どうにもおかしい、深海棲艦の動き方が統率されている。またあの男が?


いや、あの男は俺の目のまえで死んだはずだ。なら、誰かほかの人間が?誰が?いったい何のために?


一人思いつく人物がいるが、強引に脳内からデリートする。その予想を信じたくなかった。


今はそんなことはどうでもいいのだ。指揮に集中しなければ、とはいえ統率されているのになぜか深海棲艦は本気でここを襲うつもりがあるように思えない。


なんというか、とても引き気味で逆にこの鎮守府に被害を出すのを恐れてるかのような…


愛宕『愛宕・高雄、ともに第一艦隊に合流完了しました~』


提督「了解、先ほど伝えたとおり深海棲艦の迎撃に努めてくれ。」


深海棲艦の目的はなんだ?ここを襲撃するつもりが無いというのなら一体…


そんなことを考えている時だった。


大淀「大変です提督!提督の鎮守府が襲撃されているとの報告が!」


その報告を聞いて俺はすべてを理解した。ここにいる深海棲艦の目的は『俺の足止め』だと。


逆に考えれば、それは俺がここにいることを知っていないとできない芸当だ。俺がここにいることを知っていて深海棲艦に内通していそうな人物…俺は考えるのを辞める。


提督「状況はどうなってるんですか…?」


大淀「長門さんが臨時で指揮をしているようですが、厳しい状況だそうです。」


提督「俺が行くってわけには…行かないですよね…」


大淀「元帥と大和さんがいない今、ここの防衛をこなせるのは…提督しか…」


俺は思い切り机をブッ叩く。どうする?どうする?どうする?


ここで俺が長門たちのもとに走ったところでなにも出来ないのはわかっている。でも、足は今にも走ろうと疼く。


それに、優先度だってこっちのが上だ。素人の鎮守府と元帥の鎮守府では襲撃されたときの世間への海軍のイメージ変化が違いすぎる。


全ての状況が俺にここに残れと言っている。なのに体は今にも動き出しそうだ。


不意に俺の鎮守府のメンバーが頭によぎる。助けに行きたい、立場なんて捨てて、責任なんてすべて捨ててしまいたい。


伊勢『敵深海棲艦が進行の停止を解除、再度責めて来てる。提督、指示を!』


そんな時に通信が入る。理解はしている、俺がここに必要なことなんてとっくに理解している…でも…


提督「畜生がッ」


俺は吐き捨てるように叫び、指示を再開した。









ー瑞鶴視点ー


よりによって、なんで提督さんのいないときにこんな大部隊が…


艦載機を放ちながらそんなことを考える。でも、これは好都合だったのかもしれない。


目のまえの敵の大軍を見て再度考え直す。この数を相手に鎮守府を守れそうにない。なら、もし提督さんがここにいたら殺されていたかもしれない。


そうだ、ポジティブに考えれば好都合じゃないか。


翔鶴「これは…流石にきつそうね、瑞鶴。」


横で艦載機を準備する翔鶴姉がそんなことを言ってくる。


瑞鶴「そうだね、翔鶴姉。でも、唾つけるくらいはやってやらなくちゃね。」


周囲では鎮守府の艦娘が総員で深海棲艦を迎撃している。


別に姫級や、強敵がいるというわけでは無い。ただ単に多いのだ。深海棲艦の数が。


扶桑「きゃあっ」


その時、扶桑さんが被弾する。それを見た山城さんがまるで修羅の如く敵に突っ込む。


山城「姉さまに手を出したやつはどこだッ邪魔するなッきゃあっ」


翔鶴「山城さん孤立しては…きゃっ」


瑞鶴「翔鶴姉ッ!くっそ、くたばれぇッ」


次々とみんなが被弾していく中、私は一人叫びながら弓を弾くのだった。










ー提督視点ー


提督「第一艦隊が…全員捕縛された…?」


長門「すまない…私の指揮が無能だったせいだ。」


目のまえで血が滲みそうなくらい唇をかみしめた長門の報告に思わず言葉を失う。


ここは俺の鎮守府、なんとか元帥の鎮守府を死守に成功し急いで帰ってきてすぐの報告がこれだ。


提督「いや、誰も轟沈していないのは間違いなく長門のお陰だ。そう落ち込むなって、捕縛ってことはまだ生きてるんだろう?」


俺はそんなことを言ってみるが、全く感情が入っていないのが自分でもわかる。


長門「しかし、捕縛とは沈むのよりも…いや、なんでもない。」


そんなことは言わないでもわかっている、といった風に目で伝える。


提督「とりあえず、皆を取り戻さないとな。まずは場所探しからか。」


俺は落ち着いてるのだろうか…不思議と涙は流れない。いや、違うこれは…怒りか。狡猾な罠にはめた相手への。


捕まったのは本防衛作戦の第一艦隊、瑞鶴・翔鶴・扶桑・山城・曙・潮の六人だ。


加賀「提督…大丈夫かしら?」


近くにいた加賀が俺を心配してか、そんなことを言ってくる。


提督「大丈夫さ、心配すんな。なにか六人の居場所について少しでも情報を持っているやつはいるか?」


朝潮「それなら、深海…」


朝潮が俺の台詞に反応し、なにかを言おうとしたのを霞が止める。


提督「朝潮、なにか知ってるなら教えてくれるか?」


俺は少し朝潮に詰め寄る、しかしそれを阻むように間に霞が入ってくる。


提督「どうした霞、朝潮に最後まで喋らせてやってくれないか?」


霞「駄目よ。」


提督「なんでだよ。」


自分でも怒りを抑えることが限界に近いことがわかる。表情が歪むのがわかる。


霞「今のあなたは話を聞いたら一人で行動するでしょう?それは危険すぎるわ。」


提督「大丈夫さ、今までだってだいたい俺がどうにかしてきただろ?」


そうだ、だいたいどうにかなる。俺には死神でもついてるんだろう。今回だって結局うまく行くんだろう。死んだとしても俺はそれ以上苦しまないし別に構わない。


霞「あんたは冷静じゃない、一回頭を冷やしなさんな。」


提督「俺なら大丈夫だ、心配すんな。朝潮続きを聞かせてくれ。」


確かに霞の言うとおりだ、俺は冷静じゃない。でも今はそんなことどうでもいい。


霞「そうは見えないわよ、お願いだから一回落ち…」


提督「うるせぇ、速く聞かせろってんだよッ」


俺は叫んでから気づく、俺はなにをした?俺は今なんて叫…


瞬間、頬に痛みが走る。ピシッという音が沈黙に響く。俺の目のまえには赤城がいた。


赤城「しっかりしてくださいッ」


そう、赤城が俺をはたいたのだ。そして俺に向かって強く言う。そして俺は奥で怯える二人を見て気づく。


あぁ、そうか。俺はあんな小さな子たちに怒りをぶつけたのか。さっきまでは全く気づかなかったが周囲の皆もとても不安そうな顔をしている。


なにやってんだ俺は。情けないったらありゃしない。しっかりしろクソ提督。お前がしゃんとしないでどうするってんだ。


そこまで考えて、俺は思い切り自分の顔をぶん殴る。


提督「いってぇ!」


痛い!まじか!?自分で殴っても結構痛いんですね!?勉強になりました!もう二度としねぇわ!


赤城「提督!?」


俺の行為を見て皆が更に不安そうな顔をする。落ち着け俺は性常だ。正常な?


提督「ありがとう赤城、俺がおかしかった。実は全然大丈夫じゃない!というか助けに行きたくて今から一人で泳いで探しに行きたいくらいにはおかしくなってる!」


提督「朝潮に霞、怖い思いさせて悪かったな今度誘拐された六人と一緒に遊園地連れてってやるから許してくれ!」


俺はいつもみたいに喋る。今話したとおり余裕もないし、正直メンタルきつすぎる。でもまぁ、あれだ…今回はまだ終わってない。


提督「だから、皆俺に力を貸してくれ。そして俺が無理をしないように見張っといてくれ。頼めるか?」


俺は決め顔でそう言った。それに対し皆が首を縦に振ってくれる。さてとっとと助けて遊園地のプランを考えないとな。


まぁ、なにはともあれまずは鹿島を見てエネルギーチャージからですかね!






顔を洗い、執務室にて。


あまり大勢いても混乱するだけだと判断し、ここにいる艦娘以外の皆には自室で待機してもらっている。


提督「二人ともさっきは本当にごめんな。」


朝潮「いえ!そんな!もとはと言えば私が口を滑らせたのが原因ですからお気になさらないでください!」


霞「別にあの程度気にしないわよ。」


さっき怯えてた癖にあからさまに強がりを言ってる子がいるけど今はスルー。


提督「それじゃ、さっき言いかけてたことを教えてもらってもいいか?」


朝潮「はい、実は深海棲艦が去り際にあの鎮守府の名前を言っていたんです。」


提督「あの鎮守府?」


霞「あんたが誘拐されてたあの鎮守府よ。」


例の事件、あの名前も知らない男の鎮守府。あそこはなにか俺に因縁でもあるんですかね?運命の赤い糸的な?繋がってるのなら鹿島がいいです。


提督「他にはなにか言ってなかったか?」


朝潮「提督をお待ちしています…と言っていました。」


霞「私たちだけじゃなくて、何人かが聞いてたんだけれど、今のあんたがこれを聞いたら飛び出しかねないって思って言わないことにしようって決めてたのよ。」


俺の信用無いなぁ~。まぁ、実際さっきまでなら飛び出してたんだろうから反論の余地ありませんけどね☆


提督「なるほどな、罠ってわかってても行くしかないんだろうな。ありがとう、今日は自室で休んでてくれ。」


朝潮「わかりました。その…司令官無理はなさらないで下さいね?」


提督「わかってるよ。ありがとうな朝潮。」


二人は執務室から出ていく。去り際に霞が扉から顔を出す。


霞「あんたを心配してる人も少ないってことだけ忘れんじゃないわよ。」


そんなことを言って、二人は退室していった。痛いところを突かれたもんですよ。


提督「そういうことだ。明日にでも早速乗りこむつもりなわけだが。護衛は任せてもいいか?」


赤城「勿論です。」


加賀「鎧袖一触よ。問題ないわ。」


長門「ビッグセブンとして汚名は返上せねばなるまい。」


陸奥「やられっぱなしってのは少し気分が悪いわよね。」


龍田「うふふ、楽しませてもらえるかしらぁ。」


朧「姉妹をさらわれて黙ってるほど可愛くないよ。」


俺は頼もしすぎる仲間たちからの返事を聞いて、作戦を考えるのだった。












ー瑞鶴視点ー


全くおかしな話だ。前に彼がさらわれた場所に今度は私たちがさらわれるだなんて。


私は一人独房のような場所でそんなことを考える。翔鶴姉やほかの皆は無事だろうか、なにより彼は無事だろうか。


その時、誰かが独房にやってきた。深海棲艦のようだ。


駆逐棲姫「こんにちは。瑞鶴さんでしたっけ?」


私はその言葉を聞かなかったふりをする。ここで下手に話したら情報を漏らしかねないからだ。


駆逐棲姫「無視するなんて感じ悪いですね。いいこと教えてあげようと思ったんですけど。」


私は無視を続ける。本当は捕まった他の皆の安否を確認したいのだがこいつが真実を話すとは思えない。


駆逐棲姫「まだ無視するんですか。まぁいいです。これは独り言なんですけどね。」


駆逐棲姫「あなたの大好きな提督は死にましたよ。」


瑞鶴「嘘…」


私は口から言葉が漏れたことに気づく。落ち着け瑞鶴、これは罠だ。私に喋らせるための罠に違いない。


頭ではそう考えても、心が落ち着かない。


駆逐棲姫「彼は最後まで艦娘を守ろうとしていましたよ。人間のほうが貧弱だというのに。」


その言葉はとても嘘には思えなかった。彼ならきっとそうするから、彼はきっと最後まで誰かを守るだろうから。


瑞鶴「…あなたたちが殺したの?」


駆逐棲姫「全部嘘ですよ。彼は生きてますからね。」


私の恐る恐ると言った質問を馬鹿にするように嘲笑しながら深海棲艦は言う。怒りで頭が埋め尽くされる。


私にとって一番大切なもので心を弄ばれたことに怒りが増幅する。


駆逐棲姫「いい表情です。とてもいい表情ですよ瑞鶴さん。」


そんな私の怒りを知らないといったように深海棲艦は言う。そしてゆっくりと口を開く。


駆逐棲姫「あなたが目のまえで死んだら提督はどんな顔を見せてくれるんでしょうかね?」


深海棲艦は酷く不気味な顔でそう言った。










ー提督視点ー


昨日、霞や赤城に説教を喰らったおかげか。思いのほか安眠出来た。


夢の中で杏仁豆腐に追いかけられていた気がしたがまぁどうでもいいか。


いや、杏仁豆腐に追いかけられるってなんだ…


とりあえず起き上がって服を着替える。思えば色々あったもんだ、だいたい俺死にかけてるだけだけど。


でも、一つだけわかることがある。俺はあのたくさんの胸部装甲ゲフンゲフン…艦娘に囲まれた生活が好きだ。


だから、守りたいって思える。対象は多いがこれも愛のようなものなのだろうか。


個人を愛せないのに集団なら愛せるとかもうこれハーレム作るしかないっすね!若干出来てるとか言わなくていいですよ。


着替えや支度を済まし、自室を出る。そして執務室に入る。


提督「それじゃ、世話のかかる部下たちを助けに行きますかね。」


俺はカッコつけるように一人呟くのだった。




一度自室に戻り、俺は拳銃やナイフなどといった様々なものを準備しておく。


一体何が起きるかわからないから、準備しておいて損は無いだろう。


その時、部屋に誰かがやってきた。


鈴谷「提督、私も連れてって。」


来訪者は鈴谷だった。いかにも着いてくる気満々と言ったようにしている。


提督「駄目だ、メンバーは昨日決めたからな。それにお前はまだ病み上がりだろ?」


鈴谷「そんなことないよ!鈴谷練度は上がってるし足手まといにはならないから!」


提督「いや、駄目だ。今回は昨日の放送で発表したメンバーで行く。」


鈴谷「提督が危険なところに飛び込むのに鈴谷は待ってるだけなんて…


提督「駄目なもんは駄目だ、ここの最高責任者としての命令だ。」


俺の返しに鈴谷は辛そうな表情を見せる。何故俺はこんなに鈴谷が着いてくることを拒絶するのだろうか。


いや、理由は分かっている。でも、言えるわけないだろう。


『お前をもう一度失うのが怖いから』なんてのは。


別に、他の皆なら失っていいなんてわけじゃない。単純に俺は一度鈴谷から目を離し、そして失った。


それが俺の中でトラウマになっているのだ。なにが最高責任者としてだ、笑えてくる。


鈴谷「……わかった。でも、絶対生きて帰ってきてね?」


提督「あぁ、俺は寿命以外では死ねねぇからな。約束するよ。」


俺は自身の問題から目を逸らし、そんな風に返すのだった。






赤城「提督、本当にそのような乗り物で良かったのですか?」


提督「こっちのほうが動きやすいからな。防御力は皆無だからやばくなったらすぐに離れるわ。」


俺はジェットスキーに乗っている。皆は俺を輪形陣で囲むようにして移動してくれている。簡単に言うと、作戦を考えたが正面突破以外思いつかなかったというわけだ!


どうでもいいけど、ジェットスキーって風が気持ちいい…なんて次元じゃねぇわ。ボワァアみたいな感じ。


通学路でこれくらいの風吹かないかね?スカート捲れまくりパーティーだと思うんだけど。まあ、全員髪型サ〇ヤ人みたいになりそうだけどね。


龍田「もう少しで到着よぉ、盛大なお出迎えは無いみたいねぇ。」


そして、特に戦闘もなく目的地に着く。すると深海棲艦が顔を出した。


リ級「オ待チシテオリマシタ。提督様ノミ着イテキテクダサイ。」


それはリ級だった。しかし、あの時のリ級とは別個体のようだ、それはそうかあのリ級は死んだのだから。


特に艤装などをつけてるわけでもなく、ただ着いて来いという。人質がいる以上従うしかないだろう。服従ってなんかエロくない?


提督「わかった。皆は警戒しつつ待機しててもらっていいか?」


加賀「孤立するのは危険かと。その深海棲艦だって信用出来ないわ、一人になったあなたを殺すつもりかもしれないわ。」


提督「んなこと言っても、ここで言うこと聞かなければ瑞鶴たちを助けられねぇからなぁ。まぁ、俺を信じろって加賀。無理はしないさ。」


加賀「…死なないで。」


提督「俺だって死にたくは無いさ。」


その場の全員の思いを代弁したような台詞に適当に返し俺はリ級についていくのだった。






リ級に連れてこられた先にいたのは、瑞鶴だった。


提督「良かった無事だったんだな。」


俺はそんな風に声をかけるが、瑞鶴は何も言わない。なにか思いつめたかのように下を向いたままだ。


また、なにか変なこと考えてるんかねぇ。こいつが暗い顔をしている時って大体ろくなことがねぇ気がする。


不意にリ級が俺と瑞鶴の間に銃を投げる。ロシアンルーレットでもするんですかね?


リ級「コレカラ2人ニ殺シ合イヲシテイタダキマス。銃弾ハ1発シカ装填サレテイナイノデゴ注意クダサイ。」


リ級「追加ルールトシテ、ドチラカガ自殺。マタハ提督ガ死亡シタ場合ハ人質ヲ爆弾デ皆殺シニシマス。」


リ級「瑞鶴ガ死ンダ場合ハ、捕虜含メ全員ノ無事ヲ保障シマス。制限時間ハアリマセン。ソレデハ始メテクダサイ。」


片言で説明されたルールはとても単純で明快だった。要は瑞鶴を俺に殺せということだ。それが最善だということだ。


趣味が悪いにも程がある。こんなんゲームである必要性が無いじゃないか。


いや、ゲームと言う形式にすることで楽しむ主催者側の都合か。


瑞鶴「提督さん…私を殺して。」


とても弱弱しい声で瑞鶴が俺に言う。その表情は笑顔だった。気持ちの悪い笑顔。


瑞鶴「今の解説でわかったでしょ?それしか手は無いんだよ。」


俺が?瑞鶴を?殺す?あんな必死で守ったのに?却下だ却下。そんな選択肢は無い。ばーか。


提督「冗談だろ?なんだ?お前好きな人に殺されたいとかみたいな異常性癖だったりするのか?」


瑞鶴「ふざけないでッ、私は本気で言ってるの。私が死ねば皆無事に帰れるんだから。それが一番じゃん。」


俺は真面目な顔で瑞鶴を見る。ふざけてんのはどっちだ、お前が逆の立場なら撃てんのかよ畜生。撃てるのかな?ちょっと撃たれそうで怖い。


よく考えたら、俺散々あいつにナイフで切られたんですよね。復讐に今度セクハラしてやろう。


いや、今度ってなんだ。俺はこの状況を乗り越えられると思っているらしい。思い上がりなんてレベルじゃねぇぞこれ。


瑞鶴「なんで笑ってるの…?」


提督「ん?俺笑ってたか?いやな、今度前にナイフで切られた復讐にお前の胸でも揉んでやろうなんて考えてただけだよ。」


瑞鶴「今度なんて無いのよ、ここで私は死んで終わりなのッ。提督さんは翔鶴姉とくっつけばいいじゃん!」


瑞鶴は怒るように言う。揉む胸が無いもんね☆あーやべぇ打開策が思いつかない。それに今回ばかりは助けも来そうにないしなぁ。


鹿島の胸見てればいい作戦思いつきそうなんだけどね。陸奥さんでも可。


最近どうもいまいち調子が出なかったが、こういうピンチになると俺って脳内がアホになるのかもしれない。


いっそ、俺の腕とか犠牲にブルー〇イズホワイトドラゴンでも呼べれば楽なんですけどね。俺の髪が金色になってスーパー〇イヤ人になるのもいいな。


とりあえず目標としては瑞鶴含めた捕虜と俺含めた救出部隊全員の生還。難易度ハードなんてもんじゃねぇ!これナイトメアとかカオスみたいなやつやん!


あのホラゲーで選択しちゃうとほぼ積む難易度。


まずは時間稼ぎだな。制限時間無くてよかったよぉ…


提督「なぁ、瑞鶴。お前本当にここで死んでいいのか?」


瑞鶴「いいもなにも、私が死ぬ以外に手なんて無いじゃん。だったら仕方な…」


提督「散々俺に自分も大事にしろみたいに言ってたくせに自分はしないのな。」


瑞鶴「それは…」


提督「そんな苦しそうな顔すんなっての。お前顔はいいんだから。これが終わったら二人きりでどっか行こうぜ。デートってやつだデート。」


二人っきりでデートとかコミュ障の俺にはきついな…なんて言ってから気づく。どうしよう、ここで死んどこうかな?駄目だろあほか。


瑞鶴「やめてよ…ここから二人とも生きのこれるわけないじゃん…」


瑞鶴はそう言いながら泣き出してしまうのだった。誰だよ泣かせたの!最低だな!俺だよ!











ー駆逐棲姫ー


あぁ、なんて面白い光景なんだろうか。好きな相手に殺して欲しいと望む少女。とてもいい顔をしている。


翔鶴「今すぐやめさせなさい!私が代わりに死にますから!」


横の牢獄内で映像を見ている翔鶴が私に向かって叫ぶ。とても素敵な表情で。


他の四人も私に向けて素敵な表情を向けている。もっとその表情を見せてくれ…それこそが生物の本質。愛や優しさなど飾り物に過ぎない。


私の記憶がそれを物語っている。


提督も瑞鶴を殺すだろう。自分を想っていることを知りながら、殺すのだ。それが正しい選択なのだから。


周囲は深海棲艦で警備を固めているので助けも来ない。提督の護衛艦隊は常に見張りをつけている。


翔鶴「こんなの酷すぎます…こんなの…こんなの…」


扶桑「落ち着いてください、翔鶴さん。きっと提督がどうにかしてくれます。」


山城「そのとおりです。あの男は極限状態でのみ役に立ちますから。」


お笑い話だ。どうにかしてくれる?この状況から?出来るものなら見せて欲しいものだ。


私の中の記憶が愛なんて所詮嘘だと物語っている、証明している。私の中にいる彼女は好きな相手に騙されて沈んだ。


私に彼女の気持ちはわからない。でもきっと絶望したはずだ、安全だと言われて送り出された地で包囲され沈むときにあの男を恨んだはずだ。


断片的な記憶しか私は持っていないが、それだけはわかる。だから私があなたの代わりにあの男に絶望を味わわせてあげる。


自分に意識が無いうちに大切なものをすべてを失わせてやる。きっと私の中のあなたもそれを望んでいるのでしょう?


そんなことを考えていると不意に、画面から銃声が響いた。








ー提督視点ー


俺天才かもしれない。これがゲームの裏をかくってやつですよ。ドヤ顔かましますぜ。


瑞鶴は驚いたように俺を見ている。そりゃ驚きますよね。当たり前です。


そう、俺はリ級を撃ったのだ。


流石に撃つのに少し抵抗はあったが、艦娘に殺せと命令を出している立場で敵を殺せないなんてお笑い話だろう。


とはいえ、自分が生を奪ったという実感は思いのほか重かった。畜生。


少しして、何者かが姿を現した。俺が目を疑ったのはそれが親父に見せてもらった写真の吹雪さんにそっくりだったからだ。


駆逐棲姫「実際に会うのは初めてですね。提督。」


提督「実際もなにも完全に初見な気がするんですが、どこかで縁がありましたっけ?」


駆逐棲姫「お話くらいは聞いてるんじゃないですか?私は吹雪ですよ。あなたのお義父さんの元秘書官の。」


提督「そうは思えませんね。話に聞いた吹雪さんはこんな性格の悪いゲームを企画するような素敵な方では無かったと思うんですが?」


目のまえの恐らく駆逐棲姫は手にスイッチのようなものを持っている。そして、貧乳だ。なにをチェックしてるねん俺は。


駆逐棲姫「転生したときに少し歪んだんですよ。とりあえず、提督は何故リ級を撃ったのですか?考えなしというわけでは無いのでしょう?」


提督「簡単な話ですよ。二人に殺し合いをしてもらうと言われたがどの二人かとは言われてなかったのでね。俺は俺とリ級だと解釈しただけですよ。」


駆逐棲姫「屁理屈ですね。」


提督「ルール違反ではないでしょう?」


さぁ、どうする?あのスイッチは恐らく人質を殺す爆弾のためのものだろう。


ここであのボタンを押されたら終わりだ。とはいえ、押されなかったとしてもそう簡単に解放なんてことは…


駆逐棲姫「ここでボタンを押すのもやぶさかではないですが、もう少し楽しませてもらいましょうか。」


駆逐棲姫「先程のゲームを瑞鶴と提督で行ってください。凶器はこちらのナイフをご使用ください。」


駆逐棲姫「そうだ、追加ルールで他の捕虜を犠牲に二人が生き残る選択肢も追加しましょう。更に自殺も許可しますよ。」


そのセリフを聞いた瞬間、駆逐棲姫が俺たちの間に放り投げたナイフを瑞鶴が拾う。俺に自殺をさせないためだろう。


もう屁理屈で乗り越えることはできない。不味いって!どうすんだよ畜生!ど☆う☆し☆よ☆う


ゲームに制限時間こそないが、しびれを切らした瑞鶴が自殺したらって…あいつ自殺しようとしてるじゃん!!!展開早いなおいおい!?


俺は瑞鶴に飛び掛かる。それを見て瑞鶴が思い切りナイフを自分に刺そうとする。しかし、一瞬躊躇してくれたお陰で俺は間に合った。


てか、躊躇するってことは死にたくないってことじゃねぇか。畜生。もう俺死ぬか!それしかない気がしてきた!


ごめんな皆!俺の物語はここで終わりだ。楽しかったよ!童貞だけど!


瑞鶴「止めないでよ…私が死ねば皆助かるんだから…」


瑞鶴は泣きながら言う。てか、俺が押し倒してる状態で泣いてるせいでやばいことしてるみたいになってるなこれ。元気になんな俺の下半身。


とりあえず、それっぽいこと言って説得をしてみようかね。


提督「なあ、瑞鶴。お前にとっての皆にお前は入って無いのか?」


瑞鶴「へ…」


提督「俺にとっての皆ってのはさ、確かに扶桑や山城がいて曙も潮も翔鶴もいてさ。お前もいてこそだと思うんだよ。」


瑞鶴は俺から目を逸らす。自己犠牲は逃げだ、死んでしまえばそれ以上心は痛まないから。俺に良く効くぞこの理論。


提督「少なくともな俺はお前がいない皆の中で笑って過ごせる自信が無いよ。」


それっぽいことと言ったが、これは本心だ。もしあの鎮守府に穴が開いてしまったら…失ってしまったら俺はその喪失感から逃れられなくなるだろう。


それは、鈴谷の時のように、少年の時のように俺の心を蝕み続けるだろう。そこで笑う自信なんて一ミリもない。


考えろ、考えろ、考エロ…どうにかしてこの状況を打開するにはどうすればいい?


瑞鶴「それじゃあ、どうしろって言うのよッ!」


提督「知らねぇよッ、でもな俺は好きって言ってくれた女を見殺しにするほどカッコつかねぇ男にはなりたくねぇんだよッ」


俺は瑞鶴に吠える。瑞鶴はそのセリフを聞いて大泣きしてしまっている。ちょっとカッコつけすぎたかな?


駆逐棲姫「気持ち悪い、愛なんてくだらないってことを理解できないなんて。まぁいいですよ。爆弾を起爆しますね。」


提督「おい、待て。まだゲームは終わって無…」


駆逐棲姫「私がゲームマスターですからね。さぁ、悲痛に満ちた顔で私の気分を良くしてください。」


ピッ…


瑞鶴「翔鶴姉…翔鶴姉…いやあああああああああああああ」


小さな機械音の後、爆発が起きる。やっちまった、俺はなんてことを…また守れなかった。


なにも変わっちゃいない、昔から俺はなにも守れない。肝心なところでミスをする。いい気になっていた、たった数回の成功で俺はなにかをなせると思い込んでいた。


誰かを守る力もないのに守ろうとして、から回ってただ苦しみを増やす。その苦しみで何度後悔してきたことか。


俺は瑞鶴まで巻き込んでしまった。俺は俺は俺は…


提督「こんのクソ野郎がッ」


俺は叫びながら駆逐棲姫に殴りかかる。しかし、俺は思わずその表情を見て正気を取り戻す。


駆逐棲姫は笑うどころか、俺の後方を見て驚きに満ちた顔をしていたのだった。




?「いい表情ですね、駆逐棲姫。それとお久しぶりです提督さん。」


後方から聞こえた声に俺は振り向く。そこにいたのは軽巡棲姫だった。


軽巡棲姫「提督さんも瑞鶴さん…でよろしいでしょうか?もご安心ください。人質の皆さんは私が解放しましたのでこのとおりご無事です。」


翔鶴「瑞鶴ッ」


瑞鶴「翔鶴姉…?生きてるの…翔鶴姉ッ」


二人がお互いの安否を確認し抱き合う。っていうかこの軽巡棲姫誰ぞ?なんで助けてくれるの?俺に軽巡棲姫の知り合いなんて…


あ、一人だけいるわ。


軽巡棲姫「思い出していただけたようですね。ここに提督さんを誘拐したものです。」


駆逐棲姫「貴様ッ、何故邪魔を…うあっ…」


立ちあがった駆逐棲姫を軽巡棲姫が銃で膝を撃つことで行動を抑制する。


軽巡棲姫「やられたことをやり返したまでですよ。あなた達の邪魔が無ければヲ級ちゃんも私たちの提督も死なずに済んだのですから。」


提督「どういうことだ?」


軽巡棲姫「私たちと提督さん達が戦っているとき、私たちは深海棲艦から攻撃を受けました。その犯人が彼女たちだったというわけです。」


軽巡棲姫「わかりやすく言うのならば。将棋中に突然盤面を第三者がかき乱したとでも言いましょうか。」


そこまで聞いて俺は理解する。あの場にいなかった軽巡棲姫はリ級があの男を殺したのを知らないのだ。


駆逐棲姫「ふざけるな…私がこんなところで…終わってたまるか…」


軽巡棲姫「いいえ、終わりです。その傷では入渠しない限りじきに死ぬでしょう。」


提督「ありがとう、軽巡棲姫。前は敵だったとはいえ今は素直に感謝するよ。」


軽巡棲姫「いえ、これはただの私の私怨ですのでお礼はいりませんよ。それに今から私があなたを殺す可能性などもあるんですよ?」


え、マジで?待って、それは予想外すぎる。どうしよう、動揺したら不味いよね?落ち着け俺。あー鹿島しゅき。


提督「それはもうお手上げだな。殺さないでくれると嬉しいです。」


軽巡棲姫「最初からそのつもりはありませんよ。戦って負けたのですから鶴棲姫や戦艦棲姫の死は仕方のないもです。」


両手をあげる俺に少し笑いながら軽巡棲姫が返す。そしてふと少し悲しそうな顔になる。


軽巡棲姫「でもこれで私は人間と深海棲艦どちらも敵になってしまいましたね。寂しいものです。」


提督「んじゃ、俺のとこ来るか?」


軽巡棲姫「へ?」


山城「は?なに言ってんですか提督。」


思わず寂しいって言われたから条件反射で言っちまったなんて言えない☆でも、もしかしたらこれは深海棲艦と和解するのの第一歩目になるかもしれないじゃん!


いや、まあ完全に後付けなんですけどね?うるせーしらねーふぁいなるふぁんたじー


そんなことを考えていると、翔鶴が笑いだす。


翔鶴「すいません、提督らしいと思ってしまったらつい…様々な問題はあると思いますが、私はいいと思いますよ。」


曙「まぁ、私たちの上司はクソ提督なんだし好きにすれば?」


山城「え?本気で言ってるんですか?」


若干一名動揺しているが、皆は俺を肯定してくれているみたいだ。


提督「皆もOKらしいし、どうだ?人は殺させられないし隠れながらの生活で良ければだけれども。」


俺はそう言って、軽巡棲姫に手を差し出す。


軽巡棲姫「私…敵なんですよ?あなたをさらった張本人なんですよ?」


提督「加賀ってやつがそれに関してなにか言ってくるかもだけど護衛するから安心してくれ。」


軽巡棲姫「いえ、そういう意味では無く…」


提督「それ以外になんの問題が?」


軽巡棲姫「ふふふ…あははは、本当におかしな方なんですね。皆さんが好きになる理由がわかりました。」


俺の決め顔での台詞に、笑いながら軽巡棲姫が俺の手を取ろうとする。そして、新たに一人の仲間を連れて俺たちは家に帰るのだった。


いや、正しくは帰れなかったのだが。



俺と軽巡棲姫の手が触れかけた瞬間、銃声が響く。俺は即座に駆逐棲姫を見るが特に変化はない。


周囲を見渡すと、そこにいたのは…兄さんだった。


俺の目のまえで軽巡棲姫が倒れる。まるで時がスローモーションになったかのように彼女が倒れるのまでが長く感じた。


撃たれたのは軽巡棲姫だった。


提督「おい、大丈夫か!?」


軽巡棲姫「やはり、人間と深海棲艦は合い入れないのですかね…でも、最後に夢を見れて…良か…


そこまで言って、軽巡棲姫は動かなくなった。


提督「兄さん…」


俺は様々な感情を含んだ声で兄を呼ぶ。


兄貴「全員動くな。動いたら提督を撃つ。」


よくわかってらっしゃる、ここで俺を撃つと言えば誰も動かないだろう。


提督「兄さんは本当にそっち側なんだね。」


俺は駆逐棲姫を回収する兄さんを見て言う。信じたくなかった、ずっと頭の中で否定していた。でも、この光景を前に否定するのはもう不可能だ。


兄貴「俺は別に深海棲艦の味方ってわけじゃない。ただ人間の敵というだけさ。」


提督「なんで元帥を撃ったんだよ。」


兄貴「そうだな、この際教えといてやろう。親父とお袋を殺したのは海軍だぞ。提督。」


提督「は?なにを言って…」


兄貴「お前の父親に聞けばいい。あの男はすべてを知っているはずだ。死ぬんじゃねぇぞ提督。」


それだけ言って兄さんは森の中に消えていった。両親を殺したのが軍…?それはどういう…


扶桑「今の方は…一体…?」


提督「俺の兄だよ、そして…新しい敵というのが正しいかな。」


俺は歯を食いしばり、兄さんを『敵』と口にするのだった。







その後、俺たちは長門や加賀と合流し鎮守府に戻ってきていた。


そして、今はあることをするために瑞鶴を執務室に呼び出しております。


提督「ということで、瑞鶴さん。」


瑞鶴「な、なによ。私は謝ったりしないからね、あの時は私が死ぬのが得策だったわけだし…」


こいつなに言ってんだ?どうやら勘違いしているようだが、まぁいいとしましょう。


提督「ええ、今から俺は宣言通りお前にセクハラします。」


瑞鶴「なに言われたって謝ら…へ?」


そして、俺は手をワキワキさせながら瑞鶴に近づく。ワキワキってどんな動きかって?そりゃワキワキした動きだよ。


瑞鶴「へ!?なに!?え!?提督さん!?」


瑞鶴はそんなことを言いながら挙動不審になっている。なにこいつ可愛い。違う!可愛くない!


そして俺は目をつむっている瑞鶴の頭を撫でてやる。それに対して意外そうな顔を瑞鶴がするが、これも十分セクハラなんです。


いやまぁ、本来の目的を言うのが恥ずかしかったから濁しただけなんですけどね。


提督「怖い思いさせて悪かったな。もう大丈夫だから、安心していいぜ。」


そう言ってただ優しく瑞鶴を撫でる。これは俺が昔してもらっていたことだ。


辛いことや苦しいことがあった時、大和さんや親父が俺をこうして撫でてくれた。不思議とそれだけでも心が安らぐのは俺が一番知っている。


瑞鶴「…提督さんの馬鹿…ずるいよ、そんなの…」


瑞鶴はそう言うと、子供のように泣きながら俺に抱き着いてきた。どうしようこれでセクハラする権利無くなったかな?


人生で一度は貧乳を好き勝手に弄んで…ゲフンゲフン、ウオッホン。


そして俺は瑞鶴を抱きしめてやりながら少しさっきの出来事を思い出す。兄さんのことを。


一つ分かってしまったのは兄さんは深海棲艦側の存在だということだ。そして、あの吹雪さんそっくりな駆逐棲姫。


そしてなにより兄さんの去り際に放ったあのセリフ…どういう意味なのだろうか。


そんなことを考えていると、瑞鶴が泣き止んだようだ。


提督「落ち着いたか?」


瑞鶴「うん、ありがとね提督さん。」


提督「俺はお前の上司だからな、メンタル管理の手伝いもするさ。」


瑞鶴「そこは普通に提督さん自身としてが良かったかな…」


提督「なんか言ったか?」


瑞鶴「うんうん、なんでもない。それより提督さんさ…あの時にいたお兄さんって…」


提督「実の兄だよ。そして多分次に俺が戦わないといけない敵。」


瑞鶴「っ…」


俺の台詞を聞いた瑞鶴が辛そうな顔をする。兄弟で敵なんてのは良く聞くフレーズではあるが自分がその境遇になると辛いものだ。


兄さんがなにを考えているかはわからない、でも一つだけわかるのは兄さんを止めるのは…きっと俺にしか出来ないのだろう。


運命のいたずらってやつだろうか。


瑞鶴「大丈夫?提督さん、その、えっと…おっぱい揉む…?」


提督「大丈夫だよ、それに揉むほどねぇだろ。」


俺は笑顔でそう返して、飛んでくるさまざまなものを回避するのであった。







さて、状況を整理しようか。


俺はベッドから身を起こし近日中の出来事を振り返る。


親父と大和さんは命に別状はないものの入院中。親父に関してはまだ意識が戻っていないらしい。


俺は無傷だが正直心労が半端ないので重症としておきます。


昨日電話で大淀さんと電話でやり取りした結果、最初の手はず通り俺は親父の鎮守府にて俺の鎮守府と親父の鎮守府のメンバーを指揮することになった。


やったね☆ハーレム。新人に元帥の代わりが勤まるはずが無いといった意見が出るのを予測し表面上は親父の仲のいい大将が親父の代わりをしていることになっている。


今日のうちに全員で親父の鎮守府に移動するとしよう。もぬけの殻になった鎮守府を襲撃する深海棲艦はいないだろう。いないよね…?


仕事に関しては大淀さんのカバーがあれば大して問題ないだろう。ずっと見てきたしね。


次に、兄さんに関してだが…いい加減目を逸らすのは辞めよう。あの人は敵だ、深海棲艦サイドだ。


吹雪さんにそっくりな深海棲艦に関しては俺はなんとも言えないが…前に親父と話した艦娘が深海棲艦になるというのが事実ならば…


そう考えると、親父に意識が無いのは好都合なのかもしれない。


そしてなにより兄さんの言動が不可解すぎる。敵なのに俺に死ぬな?なにを考えているんだ。


それにあの最後の台詞がどうしても気になってしまう。親父が意識不明の状態では答え合わせも出来ないわけだが。この点に関しては不都合だな。


よく考えたら、何故あの状況下で親父は生き残れたのだろうか。俺と大和さんが駆け付けるまでには時間はかなりあったはずだ。


兄さんが本気で親父を殺す気だったなら殺すのは容易だったのではないだろうか。なら、なんで…


謎が多すぎる、もう嫌だ。俺翔鶴連れて海外逃亡するもん。はい、嘘です。


いずれにせよ、俺はこれから親父の代わりにここと皆を守らなければいけない。


そう思って執務室でネクタイを締め直した時に扉が突然開く。


警察「提督さんですね。男児殺害の容疑で逮捕します。」


悲報、提督さん頑張ろうと思ったら逮捕される。


そして、突然手錠をかけられ牢屋に放り込まれるのであった。って、えええええええええ!







ー隊長視点ー


やっちまった、完全にやっちまった。


俺は大淀さんから提督が逮捕されたとの一報を聞いて警察に連絡を取ってすべてを理解する。


あいつが逮捕された理由は男児の殺害容疑だ。そう、少将の息子の件だ。


あれの真相を一人で追っていた少将の奥さん、つまり男児の母親が通報したらしい。


この早期段階で逮捕に踏み切ったのは憲兵に抑えられるのを避けたかったからだろう。


最近は警察の仕事まで憲兵が出しゃばることが少なくないので、このような事例は少なくない。


要は警察の側が手柄を横取りされたくないのだ。もしかしたら憲兵側が海軍の問題をうやむやにするのを避けようとした。という可能性もなくは無いがこの際どちらでもいいだろう。


民間人の混乱を避けるために深海棲艦側に人間がつくという事例を公表するのを控えたため、母親に事件の詳細を喋らなかったのが仇となった。


とはいえ、いくらなんでも情報不十分だ。提督が罪に問われることは無いだろう。


俺のどうにかしないといけない問題はこっちだな。


俺は元帥のやつの鎮守府のメンツと提督の鎮守府のメンツをどうやって落ち着けるか考えながらため息を漏らすのだった。




瑞鶴「どういうことなんですか!」


とりあえず執務室に提督に近しいと思われる艦娘を集める。状況説明する暇もなく問いただされれてるのが現状だ。


隊長「準を追って説明するから落ち着いてくれ。すくなくとも死刑とかにはならないだろうから。」


長門「それはそうだろうが、提督は特に悪事をしていたようには思えないのだが。」


隊長「そのとおりです。彼はなにもしていない、彼が逮捕されたのは男児、つまり少将の息子殺害容疑でですからね。」


加賀「それは、犯人がはっきりしているのでは?」


隊長「はい、そのとおりなんですが。海軍側としては人間が深海棲艦に与するという事柄をまだ世間に発表できていないのです。」


赤城「なるほど、でもそこで提督が容疑者になるのは密告が無い限り有り得ないのではないでしょうか?」


隊長「それが誤算でした、少将が残したデータを頼りに軍と関係の無い少将の奥さんが警察に話したようです。」


隊長「データが断片的にしか残っていなかったらしく、提督が事件に関与している。程度までしかわかっていないらしいのですがね。」


翔鶴「それで、提督を助けだす算段などは立っているのでしょうか?」


隊長「流石にまだ立てては無いのですが、少なくとも元帥が意識を取り戻せばすぐに対処できるはずです。」


その時、執務室の扉が乱暴に開き誰かが入ってくる。


秋月「大変です!テレビを見てみてください!」


青葉「そんなに慌ててどうしたんです?えっと、テレビテレビ…」


秋月さんの台詞を聞いて青葉さんが執務室のテレビをつける。そこには顔にモザイク処理が施された写真が写っていた。


深海棲艦と会話する男性の写真。周囲にはまだ何人かいるようだ。場所は森の中?いや、これは…あの島だ。


それを見てなんか専門家のような男性が人間が深海棲艦に与するなんて話している。あの写真はなんだ?合成か?


瑞鶴「あれって…」


隊長「なにか心当たりがあるんですか?」


瑞鶴「はい、つい先日私たちがさらわれた時に深海棲艦が一人手を貸してくれたんです。その時の写真に間違いありません。」


隊長「おいおいおい、ってことはこれに写ってるのって…」


瑞鶴「提督です…」


俺は全身から冷汗が噴き出るのを感じるのだった。









ー提督視点ー


警察「この写真はなんだかわかるか?」


尋問室の中でそう言って俺の前に差し出されたのは、俺と軽巡棲姫が会話している写真だった。


提督「いいえ、全く身に覚えがありません。」


とりあえず今は時間を稼ぐべきだろう。下手にここで俺が喋るのは愚策だ。ワタクシワッカリマセーン


警察「とぼけても無駄だぞ。どう見てもここに写ってるのはお前だろ?深海棲艦に内通してんだろう?」


このわからずやがぁ!知らねぇってんだよ!畜生めぇ!とは言えないので大人しく首を横に振る。絶対に頷かないもんね~


警察「まぁ、せいぜい否定し続ければいいさ。でも証拠が揃えばお前は間違いなく死刑だろうな。牢屋に案内してやるよ着いて来い。」


俺は警察に案内されて、いや、連行されて牢屋に連れていかれる。どうやら相部屋がいるらしい。


警察「下手なことは考えるなよ、大人しくしておくんだな。」


俺は乱暴に牢屋に入れられる。もーまだ私童貞なんだからもっと低調に扱って欲しいわね!はい、正直混乱しすぎてテンションおかしいです。落ち着きます。


?「相部屋なんて初めてだよ。お互い罪を犯した身、仲良くしようじゃないか。」


提督「えっと、こちらこそよろしくお願いします。…なんてお呼びすれば?」


?「あぁ、すまない。名前を教えるとお互い詮索しちまうからな俺は囚人番号08858836。ハチとでも呼んでくれ。」


提督「なるほどです、わかりました。俺は09665497なので…えっと、クロとでも呼んでください。」


ハチ「あぁ、わかったよ。こんなおっさんでよければ仲良くしてくれなクロ。」


提督「いえいえ、俺も若造ですし多分あまり長いはしませんがこちらこそですよハチさん。」


ハチさんは親父よりもさらに少し上くらいの年に見える、牢内といっても髭や髪が伸びきっているなんてことは無く普通に身だしなみはしっかりしている。


こんなところにいるくらいなのだから、罪人に違いないのだろうが不思議と怖いといったような感情は無かった。


出会って早々こんな風に警戒を弱めるのは良くないのだろうが…いや、やはりとても悪い人には見えないのだ。


とりあえずそれは置いといて、名前を出さないというのは納得だ。名前を言ってしまうとニュースなどから相手の罪を知ってしまうかもしれない。


そうなってしまえば、罪の度合いによっては相部屋は中々にきついものがあるだろう。


そして俺はハチさんと短い期間共に過ごすことになったのだった。








ー元帥視点ー


悪夢を見た、俺が助けられなかった彼女の夢を。


彼女は俺を恨んでいるだろうか、それとも許してくれるだろうか。許して欲しいなんてのは身勝手な話か。


俺のこの立場は復讐の副産物でしか無い。後悔なんて今更していない、あの男を殺したことに後悔なんて無い。


お前もきっと間違ってないって言ってくれるよな。吹雪…


隊長「目が覚めたか!」


不意に横からそんな声をかけられる、俺はなんでこんなところで寝ているんだっけか。


そうだ、俺は提督の兄を名乗る男に撃たれて…


元帥「おい、提督と大和は!ほかの皆も無事なのか!?痛ッ」


急に体を起こしたからだろうか、下腹部が痛む。


隊長「急に動くなって、お前はまだ安静にしていないといけないんだから。」


元帥「俺のことはどうでもいい、あいつらは無事なのか!?」


隊長「大丈夫だ、少し厄介なことになってはいるが提督のお陰で全員無事だよ。」


その台詞を聞いて俺はやっと落ち着く、また借りが増えてしまったようだ。提督には本当に頭が上がらない。


元帥「それで、厄介ってのはどうしたんだ?」


隊長「それがな、提督が警察に捕まっちまったんだよ。男児殺害と深海棲艦との関与の疑いをかけられてな。」


元帥「あいつがそんなことをするわけ…」


隊長「んなことは俺もわかってる。ただ、落ち着いてきてくれよ?このままだと提督は死刑に処される。」


元帥「なっ…」


隊長「今回の件の裏には艦娘否定派のやつらが絡んでいるみたいでな、覚えてるか?今回の件の首謀者は杉山悟志。あの会見の時、提督に論破されていた男だよ。」


元帥「完全に私怨じゃねぇか…」


隊長「あぁ、勿論提督を殺させはしない。俺も出来ることはするつもりだ、それでお前はどうする?」


元帥「んなの決まってんだろ。息子殺そうとしたやつは根絶やしにするさ。」


隊長「頼もしいようなイキリのような、まぁ俺も単独で動く。協力してほしいときは呼び出してくれ。」


元帥「わかった、ありがとな。」


隊長「気にすんな、昔からお前に頼られんのは慣れてるよ。一応最後に警察上層部も絡んでるらしいから気をつけろよ。」


元帥「肝に命じとくが、この体じゃどうせ大したことは出来ねぇよ。」


片手をひらひらさせながら立ち去る友を見送り、俺は思考を巡らせるのだった。







ー提督視点ー


ハチ「…ってなことがあってな。全く笑うしか無かったなあん時は。誰も思わないだろ?急に川に飛び込むなんて。」


提督「娘さんは大丈夫だったんですか!?」


ハチ「季節が夏だったからな、事なきを得たが全く子供ってのはなにをするかわからないから困るよ。」


提督「脅かさないでくださいよ、娘さんは今はどうしてるんですか?」


俺は二日もたたないうちにハチさんとかなり親しい仲になっていた。


ハチさんはどこかつかめないとこがあるように最初は思えたが、話してみると普通の気さくなおじさんで良い人だった。


お陰で今ではこんな風に笑顔で昔話を聞かせてくれたりしている。


そこまで考えて、ハチさんの表情が歪んでいることに気づく。


提督「あ、あの…どうしたんですか?」


ハチ「………娘は死んだんだ。」


あ、ヤッベ―!仲良くなったとか語ってた時に地雷踏み抜いてた!オーマイガー!


えらいこっちゃえらいこっちゃ…いや、これ本当にどうしよう。


提督「あ、あの俺…」


ハチ「悪い、変な空気になっちまったな。気にしないでくれ。」


コミュ障のようになっていた俺をそんな風にハチさんがフォローしてくれる。本当にいい人だ。


でも、いい人だからこそ不思議に思ってしまう。なぜこの人がこんな場所にいるのだろうか…と。


とはいえ、最初のやり取りで聞かれたくないのだろうと判断しその一線だけは超えないようにしている。


ハチ「そうそう、クロ。ここの飯にはもう慣れたか?」


提督「んー、おいしくは無いですけど健康面に配慮してそうですし文句は無いといった程度ですかね。」


ハチ「俺も最初は不味くて食えたもんじゃねぇなんて思ってたんだが慣れるとうまく感じるもんだぜ。」


提督「でも、俺はなれるほどここに長くはいないと思います。数日後に裁判があるので。」


ハチ「裁判か、なにやらかしたのかは知らねぇが精々処刑にはされないように気をつけろよ。」


処刑は嫌ですね。はい。死にたくないでござる!だって、死んだら鹿島と翔鶴に会えないしね☆


提督「ははは…そうですね…」


俺は引き笑いをしながらそんな風に答えるのであった。











そんなこんなで警察に連れられて、尋問室なう。後ろでメモ取ってる人と俺を問いただす人、さらにマジックミラー越しに数人が見てるのだろうか。


警察「いい加減吐いたらどうだ?この写真がある以上言い逃れは出来ないぞ?」


なんですかねぇ、ここでおえおえすればいいの?お前さん俺のレインボービーム喰らいたいの?


警察「だんまりか、いずれこの周りに映ってる人間もすぐに俺たちが正体を暴いてやる。その時がお前の年貢の納め時だな。」


残念ながらそれ人間じゃないんですよねぇ、足しか見えないからわからないだろうけどそれ艦娘なんだよねぇ。


俺は適当に脳内で突っ込みを入れながら黙秘を続ける。さっきから警察さんが机叩いたりして怖がらせようとしてるけどツインテのが百倍怖いぞ、出直してこい。


その時、扉がノックされた。


警察「はい、どうされましたか?」


どうやら警察のお偉いさんが来たらしい、なにされちゃうの俺!改造されて仮面ラ〇ダーにされるとか?


警察「え、それって、いいんですか?上の指示?はい…わかりました。」


警察がそんなことを言って部屋を出ていく、えぇ…新手の放置プレイ?困ります、俺マゾじゃ無いです。


しかし、数分後部屋に入ってきたのは意外な人物だった。


隊長「お久しぶりです、提督さん。」


部屋に入ってきた隊長は敬語でそんなことを言う。俺はとりあえず黙っておく。


次の瞬間、俺は思い切りぶん殴られた。えええええええ!?隊長さん!?なんで!?にんじゃなんで!?


そのまま俺の胸ぐらを掴み持ち上げて、背負い投げを…あれ?今なんか小声で言った…?モールス信号?


警察「ちょっと、なにしてるんですか!」


隊長「裏切り者に制裁を加えているんですよ。」


警察「ここは警察です。憲兵とは違うんですよ、罪人とはいえ人権はあるんです手を出さないでください。」


隊長「そういうものでしたか、申し訳ありません。」


警察「あーもー、憲兵ってのはこんな野蛮なのしかいないのかねぇ…」


突然の出来事にメモを取っていた警察さんが止めに入る。


そして、俺と隊長さんは席に着いた。モールス信号とはいったい…


隊長「貴様が裏切ったという情報を我々はまだ手に入れていない…」


そして、隊長は語りだすがそれと同時に床を蹴りながら貧乏ゆすりを始めた。なるほどね、大胆なもんだ。


先程の俺への突然の暴力は俺に出来るだけ近づいて一言だけ教えるための演技。


更にあの最初の行動で警察側に凶暴なイメージをつけて貧乏ゆすりを注意されないようにしたと。天才かぁ?


隊長はさっきから罵詈雑言や空想の中の俺の鎮守府や艦娘たちの話をしている。それはどうでもいい、俺が聞くべきは床の音。


軍学校時代にモールス信号はすべて暗記している。


えっと、すべてしくまれてる おまえこのままじゃしけい さいばんでたすける へたにうごくな


つまり、俺は何者かによってこのままじゃ死刑になると。だから裁判の時に助けるつもりだからそれまで大人しくしてろってことか。


って、死刑!?俺殺されんの!?童貞だよ!?


関係ないですね、はい。全国の童貞死去なされた皆様。俺も仲間入りです。


でも本当に大胆なものだ、警察の目のまえで堂々と救出宣言をするなんて。考えたのは大淀さんあたりだろう。


そんなこんなで隊長は去って行った。


警察「これだから脳まで筋肉のやつらは嫌だねぇ。今日は終わりだ、牢に戻るぞ。」


お前らその脳まで筋肉にしてやられてんだから脳すら無いんじゃねぇの?なんて頭の中で突っ込む。


そして、牢屋に戻るのだった。次回、提督死す!(死にません)










後書き

当分二日に一回の更新ペースになるかもです…少しリアルが忙しくてですねぇ(;'∀')
本編関連だと、調べてたら興味沸いたんでモールス信号覚えてみようかと思って三分で諦めました(笑)


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2018-09-22 20:38:29

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28件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2018-09-09 11:05:49 ID: BEDqPRWc

サバゲーマンです
パート5の更新ご苦労様です。長かったですね。この先提督がどうなっていくのか、楽しみです。・・・提督の兄貴何かありそうな感じがするのは、気のせい?次回化の更新楽しみしています。

2: SS好きの名無しさん 2018-09-09 18:23:49 ID: kfYYAfQB

前作25です。この作品本当に面白ので頑張って下さい!ズイズイ...。ゴハァ!(突然の吐血)。応援しています、更新頑張って下さい!

3: ばんせー 2018-09-09 19:28:35 ID: 7Ad88Sjh

最近気づいたけど俺の好きな娘ってクールだったり貧乳だったりなんだよね、あとは幼馴染っぽい娘かな…あ、響とズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイじゃん

4: SS好きの名無しさん 2018-09-09 22:48:25 ID: DhoYv6mE

まさかパート5まで続くとは…
嬉しいです。
応援してます、頑張ってください。
あとぼうろ→ばくろ(暴露)だと思うのですが違ったらごめんなさい。

5: koro 2018-09-09 23:17:03 ID: MJP4Qr6m

おお!
パート5お疲れ様です!

楽しみ待ってます!
世に翔鶴のあらんことを

6: 狸蟹 2018-09-10 11:46:47 ID: 5g1H6_2I

≫サバゲーマン様、コメントありがとうございます。兄さんがどのようにストーリーに関与していくのか是非お楽しみください!

7: 狸蟹 2018-09-10 11:48:30 ID: 5g1H6_2I

≫2コメ様、前作に続いてコメントありがとうございます。鉄分取ってくださいね!応援に添えるよう頑張っていきます!

8: 狸蟹 2018-09-10 11:49:58 ID: 5g1H6_2I

≫ばんせーさん、コメありです!クール…貧乳…時雨とか、どうです?(推し)

9: 狸蟹 2018-09-10 11:50:53 ID: 5g1H6_2I

≫4コメ様、自分でも驚いています…こんな続けることになるなんて思っても見なかったので。
誤字指摘ありがとうございます!直しときました、いやぁ、お恥ずかしい限りです( ;∀;)

10: 狸蟹 2018-09-10 12:29:36 ID: 5g1H6_2I

>>koro様、コメントありがとうございます。頑張って更新しますね!翔鶴姉可愛い…可愛い(脳死)

11: 風見けい 2018-09-11 17:03:16 ID: cZk0v4xU

おお、もぅパート5ですかぁ!?

早いものですね♪楽しみが増えて私も更新頑張らないとっと思いつつ自信なくしてるのも事実なんですけどね…;

ネコミミ瑞鶴期待してますねっ(`・ω・´)ゞ(原因作った犯人です)

12: 狸蟹 2018-09-12 18:58:56 ID: 46Y_YsVl

>>風見けい様、コメントありがとうございます…自信は大事ですよ!なにをするにも必須ですからね!

猫耳瑞鶴書くまでに見が滅びないか心配です…

13: SS好きの名無しさん 2018-09-13 20:58:22 ID: FCGvb6st

提督の兄は深海提督とか…
違いますよね

14: SS好きの名無しさん 2018-09-13 22:14:59 ID: YqdMZoq7

提督の兄が深海提督じゃなくても
何かを拗らせて面倒な事になっているのは判る

15: ばんせー 2018-09-15 22:13:22 ID: 4qWhaFaB

兄は生き別れしたときに何かされたのかな?
それはそうと長く書くって言ったね?言質取ったよ?w

16: 狸蟹 2018-09-16 03:02:09 ID: oG0TukVZ

13コメ様、コメントありがとうございます。兄が今どのような立場なのか、そしてなにを考えているのか…考察しながら続きもお楽しみください!

17: 狸蟹 2018-09-16 03:03:17 ID: oG0TukVZ

14コメ様、兄がなにをこじらせたのか…提督は兄を自分の知る兄に戻すことが出来るのか…といったところですね。

18: 狸蟹 2018-09-16 03:04:28 ID: oG0TukVZ

>>ばんせーさん、コメントありがとうございます。
兄が何を考えているのか、何をするつもりなのかは当分引き伸ばさせてもらいます!様々な人物の介入もありますので『長く』お楽しみくだされ!

19: SS好きの名無しさん 2018-09-17 16:20:04 ID: mj0Raq4X

作者が書いてて訳わからなくなるSSとは一体

20: ばんせー 2018-09-17 23:05:52 ID: 2J4_KFFf

俺の神が金色になってスーパー〇イヤ人になるのもいいな。
  ↑
  髪
私の仲の記憶が愛なんて所詮嘘だと物語っている。
  ↑
  中
だねw

吹雪改め駆逐棲姫は断片的な記憶しか持ってないんだよね…大事なとこがねぇよそこ覚えとけw

21: 狸蟹 2018-09-18 10:14:59 ID: DmRM9GPp

≫19コメ様、コメントありがとうございます。
キャラの考えを私自身がわからなくなりつつあります(笑)長く続きすぎてキャラに名前つけないとそろそろ足りなくなりそうなのも悩みどころです…

22: 狸蟹 2018-09-18 10:17:56 ID: DmRM9GPp

≫ばんせーさん誤字報告助かります!
駆逐棲姫の記憶の残り方も、どうしてそのように残ったのか…深海棲艦とはなんなのか続きが気になりますねぇ(考え中)

23: SS好きの名無しさん 2018-09-18 14:10:57 ID: I9Jc-Ak8

NHKニュース(9月17日(月))

海上自衛隊

南シナ海で『対潜戦』訓練実施・公開

護衛艦『かが』『いなづま』『すずつき』潜水艦『くろしお』訓練参加

かが『流石に気分が高揚します。』

いなづま『いなづまの本気を見るのDETH!!』

24: ばんせー 2018-09-22 21:25:56 ID: pWhEX9QA

さすがに毎日更新してたらそうなるわちゃんと休むんじゃぞ

25: SS好きの名無しさん 2018-09-22 23:33:28 ID: jZgKeCIk

ゆっくり休むことも大事デスよ!
しっかりと休んでまた戻って来るネー!

近頃出番のない金剛がコメントにて現れた模様です。

26: 狸蟹 2018-09-24 10:22:28 ID: 03DLK5KI

≫ばんせーさん、コメントありがとです!休めてはいるんですけど続き書く時間と余裕が無いです( ;∀;)
死ぬ気で頑張りますねぇええええ!!!

27: 狸蟹 2018-09-24 10:23:24 ID: 03DLK5KI

≫25コメ様、ありがとうデース!
金剛ちゃんはシリアスが終わり次第メインヒロイン回考えてたりしてます( *´艸`)

28: タウイ泊地の大将提督 2018-09-24 21:25:37 ID: Y7evherE

2です。これからはタウイ泊地の大将提督を名乗らせて頂きます。番号だと見返すの面倒ですしね。この糞野郎(作中の警察官)にスタープラチナでオラオラしてやりたいな。いつも楽しみにしてます。更新頑張って下さい!


このSSへのオススメ

2件オススメされています

1: ばんせー 2018-09-17 01:15:51 ID: 2J4_KFFf

お勧めし忘れてたぜズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイ

2: SS好きの名無しさん 2018-09-18 14:12:09 ID: I9Jc-Ak8

NHKニュース(9月17日(月))

海上自衛隊

南シ.ナ海で『対潜戦』訓練実施・公開

護衛艦『かが』『いなづま』『すずつき』潜水艦『くろしお』訓練参加

かが『流石に気分が高揚します。』

いなづま『いなづまの本気を見るのDETH!!』


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