2014-08-09 12:20:13 更新

章タイトル

哀しみは広がり仲間達はそれぞれの決意を固める 














孫悟空の隠された本性を聞かされたブルマと

ベジ—タは言葉を発する事なく暫し物思いに

ふけっていた



特にブルマにとっては長い間一緒に旅をした

仲間が正かあのフリーザをも遥かに超える

残虐性を秘めていた等悪夢以外の何物でも

無かった



その一方で本来なら戦う筈の相手であった

人造人間やドクタ—ゲロがヤムチャの

家族であったと言う真実とドクタ—ゲロの兄が

総帥たるレッドリボン軍が世界中の都市等を

武装して徘徊していたのが市民を傷つける為

で無く その逆の市民を守る為であったと言う

真実もブルマを打ちのめしていた



そしてその市民を傷付ける相手が孫悟空で

あったとはなんと言う皮肉であった事だろうか



そしてヤムチャもカプセルコーポレーション

から旅立って行く




ヤムチャ「それじゃ俺もそろそろ行くよ

行こうプーアル出発だ」



プーアル「はい ヤムチャ様」



そう言って今までずっと側で待っていた

プーアルと共に飛空挺に乗り込もうとする

ヤムチャにブルマが優しく声を掛ける



ブルマ「ヤムチャ・・家族と分かり合えたら

いいね あんたがしっかりするのよお兄ちゃん

なんだからね」



ヤムチャ「ブルマ・・気がついてたのか

・・サンキュー・・じゃあなベジ—タ

・・ブルマを頼む守ってやってくれ」



ベジ—タ「あぁ・・・任せておけ」



最後にベジ—タと視線を合わせ頷き合うと

ヤムチャは二人から離れ飛空挺で飛び

立っていく



恐らくは二人にはヤムチャがこれから何処へ

行こうとしているのか分かったのだろう

暫くそれを見送っていたブルマが突然話し出す



ブルマの脳裏には過去のある出来事が

去来していた



ブルマ「あのね・・ずっと昔の事なんだけど

・・孫君ね占い婆様の舘でアックマンと言う

怪人と戦った事があるの」



ベジ—タ「アックマン・・聞いた事の無い

名前だがそいつがどうかしたのか?」



ベジ—タの言葉にブルマは一瞬躊躇った後に

話し出した



ブルマ「うん・・その時にね孫君アクナマイト

光線て言う人間の悪の心を極限まで増幅させる

攻撃を受けたの でもね・・・何も起こらな

かった」



ベジ—タ「そんな事があったのか・・ブルマよそれは

とんでもない人格破綻者だぞ・・哀れな奴だ・・

悪い心を持たん奴等この世の何処にもいない俺様の

中にだって未だに悪心は燻る事無く存在する そして

そいつは永遠に消える事はない・・それこそが人間の

証なんだからな」



ベジ—タの言葉にブルマは深く項垂れる

その目には何時の間にか涙が滲んでいた

考えてみればそれは当たり前の事だったのだ



悪い心を持た無い人間等この世に居る訳が無い

例え世間から隔離されて生きて来た人間でも

世間に出れば自ずと悪い心が生まれる



その例がピッコロだ それなのに人と関わり

世間を知りながらも悪心を持たなかった

孫悟空は異常者でしか無かったのだ



ブルマの中に余りにも遅すぎる後悔の念が

沸き上がる 何故あの時安心してしまったの

だろう 悪心を増幅させるアクナマイト光線を

受けても何も起こらなかった それ即ち

裏を返せば善の心等ひと欠片も持たない怪物が

まさしく悪鬼羅刹が眠っている事に他ならな

かったのだ



ブルマ「本当にそうよね・・・そんなの

人間じゃないよね・・どうしてこうなっ

ちゃったのかな・・孫君・・ねぇベジ—タ

教えてよ・・こんなの・・こんなのって」



ベジ—タ「ブルマ・・・・今は泣け俺様が

傍に居てやる」



ブルマ「うぅっう・・うぅああああああ

ああああああ!!」



べジータ「ブルマ・・(子供の心のまま

成長してしまった哀れな迷い子・・か

・・それが貴様の強さの正体だったのか

カカロットよ)・・だがそれでも貴様の罪は

消えない」



何時の間にかブルマはベジ―タの胸の中で

大粒の涙を流しながら泣いていた それを

ベジ—タは黙って抱き締めてやる事しか

出来なかった




・・・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・



時間は暫し流れる 場所は変わって此処は

孫悟空の実家の近くに在る山々に囲まれた

絶好の修行場



此処では孫悟空と孫悟飯そしてピッコロが

元気に修行をしていた



其処に何処からか足にカプセルコーポ

レーションのマークを付けたハトがピッコロの

元に飛んできた



ピッコロ「ぬ? あのハトは」



孫悟飯「あのマークはブルマさんの」



孫悟空「なんだ? 口になんかくわえてっぞ」



そのハトは修行をしていたピッコロの周りを

暫く回るとピッコロに口にくわえていた

手紙を渡し再び飛び立っていった



ピッコロは訝しみながらもその手紙を開いた



  ・・其処に書かれていたのは己が

以前から密かに恐れていた事だった・・



ピッコロ「な!?・・んだ・・と・・・・

やはりそうか・・嫌な予感が当たりやがったか

・・くそっ何て事だ!!」



孫悟飯「どうしたんですかピッコロさん

そんなに取り乱す何て珍しいですね」



孫悟空「どうかしたのかピッコロ」



突如叫んだピッコロに二人が尋ねるが

ピッコロは怪しまれないように自然に

手紙を折りたたむと当たり障りの無い

言葉で誤魔化す



ピッコロ「あっあぁ・・済まない 何でも

ないさ」



孫悟飯「そうですか・・それならいいん

ですけど」



孫悟空「なんだ人騒がせだなピッコロは」



その言葉に二人は興味をなくしたのか

修行を再開する しかしピッコロは手紙を

握りしめたまま修行をする孫悟空を今迄

見せた事が無い程の厳しい表情で睨んでいた



ピッコロ「何て事だ・・・これが真実か

・・・なぁ孫悟空よ貴様はその手をどれだけの

罪の無い人の血で染めたのだ」



孫悟空を睨むピッコロの表情は余りにも

行き場の無い憐れみと哀しみに溢れていた



そしてピッコロは過去に思いを馳せる




それはあの恐るべき存在の驚異を身をもって

体験したあの時から消そうとしても消える

事の無い予感としてこの身に染み付いていた



正直に言えば最初からこんな時が来る

そんな予感はしていた



そもそもの切欠は俺の父ピッコロ大魔王が

殺された時のその最後の光景 記憶の中に

焼きついたあの最後 孫悟空の後ろに写った

巨大な大猿の怪物 即ちサイヤ人の本性



あんな恐ろしい怪物を自身の内に秘めながら

悪の心を持たない等絶対にあり得る訳がない

俺はその事をずっと自問自答しながらも

解決出来ない答えに疑問に思っていた



それが解決したのは孫の兄ラディッツが

来た時の事だった ラディッツに頭に強い

衝撃を受けた事は無いかとの問いに孫が

答えた後に武天老師は言った



お前のお祖父さんの孫悟飯に拾われた当時の

お前はとても暴れん坊だった それがある時

崖から落ちて頭を強く打ってから大人しく

なったらしいと



あの時武天老師は本人に気付かれないように

孫悟空をじっと見つめていた その意味が

今なら分かる



武天老師も又孫悟空の内に秘めた恐るべき

サイヤ人の本性を無意識の内に見抜いて

いたのだ



何故なら表面上は大人しくなっても月に一回は

必ずその恐るべき本性を現すのだから



それこそが月が真円を描く満月の夜也

それを知った俺は密かに武天老師と連絡を

取ったら案の定武天老師も俺と同じ考えに

達していた事が分かった



それからは俺は常に孫悟空を見ていた

何かあった時に手遅れにならない様に

しかし孫悟空は等の昔に既に取り返しの

つか無い事をしていた



先程の鳩がくわえてきたブルマの手紙に

全てが書かれていた ヤムチャが北の都の

外れの村で幼い頃に孫悟空に襲われていた事



その時に両親を亡くし瀕死の弟と妹を

祖父が人造人間にする事で助けようとした事

恐らくは一番最初に自分の身体で実験を

しているだろう事 それこそがこれから俺達が

戦う筈だったドクターゲロと人造人間である事



レッドリボン軍総帥はドクターゲロの

実の兄である事 家族を殺された事によって

後に人々に悪魔の軍隊と言われ恐れられる

軍事国家レッドリボン軍が生まれた事



そして人々に誤解され時には迫害されながらも

真に世界の平和を願っていた事 それら全てが

書かれていた



手紙を読み終わったピッコロは小さな声で

哀しげに呟く その表情は何とも居た堪れない

表情だった



ピッコロ「・・・ヤムチャ・・お前にとっては

余りにも辛い真実だったんだな・・本当に

辛く悲しい真実だろうな・・孫よ・・・

もしお前の本性が目覚め最早戻れん所まで

行ったなら・・せめてもの情けだ俺がお前を

・・殺す・・そうならない事を信じているぞ」



その瞳は修行をしている孫悟空を見つめていた

そしてその瞳が息子の孫悟飯に移ると

哀しげに揺れる



ピッコロ「悟飯・・すまん俺はもしかしたら

お前の父親を・・・すまん悟飯」



真実を知ったピッコロは嘗ては自分が

心から認めた男 孫悟空との決着の日が

来る事を感じていた



そしてもう一方で息子の孫悟飯の事を思うと

例えようも無く虚しくなった



何故ならピッコロにとっても悟飯は既に

自分の息子同然だったのだから



一方此処は亀ハウスでも哀しみにくれる

武天老師が居た



その手にはピッコロに渡されたのと同様の

手紙が握られていた



そして武天老師も又ピッコロと同様に

密かに恐れていた最悪の予感が当たって

しまった事を知った



武天老師「これは・・・何と言う事じゃ

・・まさかヤムチャとドクタ—ゲロが

血の繋がった家族じゃったとは・・それに

レッドリボン軍の総帥までもがか・・

何て事じゃ・・ピッコロと密かに話していた

最悪の予感が現実になってしもうたわい

・・・悟空よお主はなんと言う事を・・・

孫悟飯よ何故お主は悟空の本性を知った時

直ぐに儂に知らせんかったのじゃ お主の罪は

とてつもなく重いぞ・・苦楽を共にした

仲間同士で戦わせる等・・馬鹿弟子めが」



思い出すのは初めて孫悟空が大猿に変わるのを

見たときの事 何故あの時悟空の事を

もっと注意深く調べようとしなかったのか



何故孫悟飯に子供が出来たと知った時

自分から尋ねて調べようとしなかったのか



そして何よりも 何よりも武天老師が

怒り許せないのは 今は亡き弟子の事であった 

何故何故あの男は孫悟飯は



武天老師「孫悟飯よ・・・お主は何故

悟空の残虐性を見て見ぬふりをしたのじゃ

・・お主はとっくに知っておったのじゃろう

悟空が数え切れぬ人数を殺していた事を

・・馬鹿者が」



武天老師は止めどなく溢れ出る涙を拭おうとも

せずに悲しみにうちひしがれたがやがて

涙も落ち着き暫くすると決意した様に

顔をあげる



武天老師「弟子の不始末は儂がつけねばならん

・・悟空よ命は一度きりじゃ じゃから

人の命は尊いのじゃ じゃがのう悟空よ

もし反省もせずにドラゴンボールで喪った命を

生き返らす等というならば・・」



  ・・・武天老師は愛弟子を打つ覚悟を

決めた・・・


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