2018-10-17 07:05:32 更新

概要

ポケットモンスターの主人公であるレッドに作者の願望と欲望をしこたまぶち込んだ作品


前書き

思いつきで書きました。後悔はしていない。


マサラタウン「旅の始まり1」




レッドSIDE




私の名前はレッド。

マサラタウンに住んでいる10歳の女の子。


でも私は、自分がそこまで女の子らしい性格をしているとは思っていない。

かわいいお洋服になんて全然興味ないし、おままごとなんて退屈で仕方がない。

そんなことをするくらいなら外で思い切り駆け回っている方が余程私らしい。


でもポケモンは好き。

いつも私の側にいてくれる大事なお友達だから好き。


バトルとかにもちょっとだけ興味がある……かも。

ママから「危ないことはしてはいけません」って言われているから実際にしてみたことはないけど。


そんな私に、オーキド博士という偉い博士がポケモンを一匹くれることになった。

なんでも、マサラタウンに住む子供は皆10歳を迎えた時に大人からポケモンを貰って、カント―中を旅するんだって。

そうして私も先月10歳の誕生日を迎えたので、この習わしに従って旅をすることになったというわけ。


マサラタウンの外には殆ど出たことがなかったから少しだけドキドキしているけど、それ以上のワクワクが今の私の心を満たしていた。




??「お?誰かと思ったらレッドじゃん」




そんな私の背中に声を掛けてくる一人の男の子。

なんだろうと思って振り返ってみると、そこには私もよく知る幼馴染の姿があった。




レッド「……グリーン」


グリーン「相変わらず無表情な奴だなぁ、お前は。服もそこらの男と全然変わらない感じだしよぉ」




そう爽やかに笑いながらポンポンと私の肩を叩いてくるこの男の子の名前はグリーン。

私の家の隣に住んでいる幼馴染の子で、さっき話したオーキド博士はこの子のおじいちゃんなのだ。




レッド「……別に。私にとってはこれが普通」


グリーン「そうは言うがよ、お前も女なんだから少しはそれらしくしたらどうなんだ?」


レッド「……興味ない。服は機能性が一番」


グリーン「ふーん、そうかい。まぁ、お前がいいって言うんならこれ以上は言わないけどさ」


レッド「……ん」




こんな感じで何かと私に絡んでくるグリーンだけど、こう見えて運動も勉強もできるすごい子なのだ。

おまけに顔までいいもんだから、スクールでは女の子にモテモテだった。


まぁ、かくいう私も何故か一部の女の子に人気があったわけなのだけど……あれは一体なんだったのだろうか。




グリーン「まぁ、それは兎も角だ。研究所の方に向かってるってことは、お前もじいちゃんからポケモンを貰いに行くところなんだろ?」


レッド「……グリーンも?」


グリーン「当ったり前だろ。ほら、もたもたしてる暇なんてねぇんだからさっさといくぞ」




そう言ってグイグイと私の手を引いていくグリーン。

こういうさり気ない男らしさが彼がのモテる秘訣だったりするのだろうか。




レッド(……よく分からないけど、たまにはこういうのもいいか)




そんなことを考えながら、私はグリーンと一緒にオーキド博士のいる研究所の方へと歩いていくのだった。




グリーンSIDE




グリーン(特に反応なし、か。……ったく。本当に面白くねぇ奴だな、こいつは)




男に手を引かれているというのに少しも表情を変えないレッドを横目で見ながら、俺は小さくため息を吐く。


思えばこいつは昔から変な奴だった。

必要な時以外は全くと言っていいほど喋らねぇし、表情だって接着剤で固められてるのかってぐらいに変わりやしねぇ。


そんなだから周りの奴から『顔面はがねタイプ』なんて妙なあだ名を付けられることになるんだ。

まぁ、そんなあだ名も当の本人が全く意に反していないから全然意味ねぇんだけどな。




グリーン(少しはそれらしくすりゃあ、こいつも中々なもんだと思うんだが……)




そんなことを思いながら、俺は改めてレッドの容姿に目を向ける。


若干目つきは悪いが大きくて綺麗な目をしているし、顔の造りも整ってて、パッと見た感じだとかわいいと綺麗のあいなかの容姿だ。

目深に被った帽子の下の黒髪は女にしては少しだけ短めに揃えているが、それも今のレッドにはよく似合っているし、背も俺よりかは低いが出るところはちゃんと出てるし……。




グリーン(……あれ?こいつって中々どころか滅茶苦茶レベル高くね?)




そういやこの前、姉ちゃんが「あと数年もしたら、レッドちゃんは物凄い美人になるわよ~」なんて言ってたけど、あれって冗談じゃなかったんだな……。


……ん?つーことは、こいつも何時かはどっかの男と付き合って結婚したりすんのか?

ふとそんな考えが頭を過った俺は、少しだけその様子を思い浮かべてみることにした。




今よりも大人っぽくなったレッドが、俺の知らない誰かと手を組んで幸せにそうに歩いている……。

そんな光景が頭に浮かんだ瞬間




グリーン(何か……上手く言い表せないけど……滅茶苦茶嫌な気分になったな……)




俺は今まで感じたことが無いほど強烈な不快感に襲われた。

それが何故なのかは分からないが……




レッド「……グリーン」


グリーン「……っ!な、何だよ?」


レッド「……大丈夫?顔色、悪い」


グリーン「……別に、何でもねぇよ」


レッド「……そう?」


グリーン「おう」




今は、微妙に心配そうな様子でこちらを見つめてくるレッドの顔を、この俺『だけ』が見れるということで満足しておくことにしよう。


そんな誰に向けたものかも分からない優越感に浸りながら、俺はレッドと一緒にじいちゃんの待つ研究所へと向かったのだった。




マサラタウン「旅の始まり2」




レッドSIDE




グリーン「うーっす。じいちゃん、来たぜー」


レッド「……失礼します」




勝手知ったるとばかりにやや乱暴な動作で研究所の扉を開けたグリーンに続いて建物の中に入った私は、その先に広がっていた思いもよらぬ光景に少しだけ眉を潜めてしまった。


幾重にも積み重なった研究資料と思われる書物の塔に、未開封のまま埃をかぶった段ボールの山、そして辺りに散らばった小難しい文字の書かれた書類の海……。

それを見た私はシンプルにこう思った。




レッド「……汚い」


グリーン「じいちゃんは片付けが苦手だからなぁ。それにしてもこれはひどいとは思うけど」




私の呟きにそう言葉を返しながら苦笑いを浮かべるグリーン。

彼は意外と綺麗好きな子だから、目の前の惨状に何か思うところがあるのかもしれない。


とはいっても、私もそこまで片付けが得意というわけではないので、そこまで偉そうなことは言えないんだけどね。

まぁ、流石にここまでひどくはない……と思いたいところではあるけれど。




??「おうおう。よく来たなレッドちゃん。それにグリーンよ」




そう思いながら辺りを見回していると、研究所の奥の部屋から白衣姿の男性がこちらの方にやってくるのが見えた。




レッド「……こんにちは、オーキド博士」


グリーン「おいおい、じいちゃん。『それに』ってなんだよ『それに』って。俺はレッドのおまけじゃないんだぜ?」


オーキド「はっはっは!そう怒るなグリーンよ。これも一種のじいちゃんジョークという奴じゃ。のう、レッドちゃん?」


レッド「……博士のジョークはよく分からない」


グリーン「だとよ、じいちゃん」


オーキド「これは中々手厳しいのう……。じゃがまぁ、子供はこれくらいやんちゃなのが一番じゃな」




そう言うと博士は、何処となく隣のグリーンに似た顔に優しげな笑みを浮かべながら私達の頭を撫でてきた。




レッド「……ん」




私にはママしか家族がいないから、こうやって男の人の大きな手で頭を撫でられると少しだけ安心してしまう。




グリーン「……いつまでも子ども扱いするなっつーの」




グリーンは恥ずかしいのかそっぽを向いてしまっているけど、少なくとも嫌ではないみたい。

素直じゃない人だ。




オーキド「まぁ色々と話したいことはあるが、今日はお前達に見せたいものがある。付いてきなさい」




そうしてひととおり私達の頭を撫でて満足したのか、博士は先ほど出てきた奥の部屋の方へと歩いて行った。

どうやらあそこに『見せたいもの』とやらがあるらしい。




グリーン「行くぞ、レッド」


レッド「……ん」




そう言ってまた手を引いてくれるグリーンに頷き返しながら、私達も博士の後に続いて部屋の中に入っていったのだった。




グリーンSIDE




先ほどと同じようにレッドの手を引いて部屋の中に入る俺達。

するとそこには、にこやかな笑みを浮かべたじいちゃんと、大きな机の上に並べられた3つのモンスターボールの姿があった。




グリーン「なぁ、じいちゃん。これって……」


オーキド「うむ……ここにある3つのモンスターボールの中には、今日からお前達のパートナーとなるポケモン達が入っておる。3匹とも、それぞれが全く異なる個性を持っておるので、どの子を連れて行くのかよく考えて選びなさい」




そう真剣な表情で語るじいちゃんの言葉に頷きながら、俺は改めて目の前のモンスターボールに目を向ける。




グリーン(いよいよだ……。これでようやく、俺にもポケモンが手に入るぜ……!)




そう考えるだけでも自分の顔にニヤニヤとした笑みが浮かんでしまう。

我ながら気色悪いとは思うが、前々からずっと楽しみにしていたんだからこのくらいは許されるだろう……多分。




レッド「……」




隣を見ると、レッドの奴も心なしかそわそわしてるみたいだ。

堅物なこいつも今回ばかりは喜んでいるみたいだな。




オーキド「では早速ポケモンを選んでもらおう……と言いたいところじゃが、折角だしここはレディファーストといこうかの。レッドちゃん、先にポケモンを選んでくれてよいぞ」


レッド「……私?」


グリーン「えーっ!?そりゃあないぜ、じいちゃん!」


オーキド「別に先に選んだからどうにかなるというわけでもないのだから問題なかろう。ほれ、遠慮せずに選びなさい、レッドちゃん」


レッド「……はい」




じいちゃんによる明らかなレッド贔屓に俺は抗議の声を上げたが、当の本人はそんなのどこ吹く風という様にまともに取り合ってくれなかった。

これじゃあ俺とレッド、どっちがこの人の孫なのか全然分からねぇよな。




グリーン(でもまぁ確かに、ボールの中にどんなポケモンが入っているのか分からないのなら、先に選ぼうが後に選ぼうがそんなに変わりはないか。どうせレッドのことだから俺の好みは正反対のを選ぶだろうし)




そう考えて頭を切り替えた俺は、ゆっくりとボールの方に近づいていくレッドの背中を腕を組みながら見つめた。




レッド「……博士」


オーキド「うん?どうかしたかの?」


レッド「……この子達、ボールから出してもいい?」


オーキド「勿論いいとも。直接触れ合ってみて、一番気の合う子を選ぶといい」




じいちゃんの答えを聞いた後に右端のボールを手に取ったレッドは、そのまま真ん中のボタンを押して中に入っているポケモンをボールの外に出した。




??「カゲ―ッ!」


レッド「……トカゲさん?」


オーキド「ほのおタイプのポケモン、ヒトカゲじゃ。育て方を間違えると気難しい性格になってしまうが、進化すれば強力なパートナーなるぞ」


レッド「……この子の体、ポカポカしてる。温かい」


ヒトカゲ「カゲー♪」




隣で解説しているじいちゃんの言葉を聞いているのか定かではないが、レッドは嬉しそうにヒトカゲの体を抱きしめていた。

当のヒトカゲもまんざらでもない様子だ。

……ありゃあ間違いなくオスだな、うん。




レッド「……次の子は」


??「ダネッ!」




次にレッドが持ったボールの中から出てきたのは、先ほどのヒトカゲの赤い肌とは対照的に緑っぽい体をしたポケモンだった。




オーキド「くさタイプのフシギダネじゃ。好奇心旺盛な性格じゃから、一緒に旅をするにはうってつけのポケモンかもしれんのう」


レッド「……この子は不思議な感じ。でも、いい匂いがする」


フシギダネ「ダネダ~ネ♪」




じいちゃんの説明を聞き流しながら、レッドはフシギダネの顔や顎の辺りを軽く撫でまわしていた。

フシギダネも気持ちよさそうな顔をしているから、あいつの撫で方も特段下手というわけじゃないんだろう。

メス……かな?




レッド「……最後の子」


??「ゼニーッ!」




最後に残ったボールの中から出てきたのは、青い肌に大きな甲羅が特徴的なポケモンだった。




オーキド「この子はゼニガメ、水タイプのポケモンじゃ。攻撃力こそ控えめじゃが、固い防御力は非常に頼りになるぞ」


レッド「……ひんやりスベスベ。気持ちいい……」


ゼニガメ「ゼ、ゼニ……」




じいちゃんからの最後の説明もそこそこに、レッドはゼニガメの顔に軽く頬ずりをしていた。

されるがままのゼニガメは一見すると困惑しているに見えるが、その顔は微妙に嬉しそうな表情を浮かべている。

オスっぽいがメスだな、あれは。




オーキド「さて、これで3匹のポケモン達を見てもらったわけじゃが……連れて行きたいパートナーは決まったかの、レッドちゃん?」


レッド「……うん」




そうしてあるポケモンを胸元に抱きかかえたレッドは、改めてじいちゃんの方に向き直りながらこう言った。




レッド「……私は、この子にする」


ゼニガメ「ゼニ~♪」


オーキド「ふむふむ……レッドちゃんはゼニガメを選んだか。その子は特別優しい性格をしておるからの。今の君にはピッタリじゃな」


レッド「……女の子?」


オーキド「おお、よく分かったの。因みにヒトカゲはオスで、フシギダネはメスじゃ」




やっぱりそうだったか。

俺の見立てに間違いはなかったぜ。




レッド「……そう。じゃあ、今日からよろしく。ゼニガメ」


ゼニガメ「ゼニッ!」




そう言ってゼニガメの顔を見つめるレッドの顔には、無表情なあいつにしては珍しく、優しげな笑みが浮かんでいた。




グリーン「……なら、俺はこいつを選ぶぜ!」




その様子を後ろから見ていた俺は、旅のパートナーに敢えてほのおタイプのヒトカゲを選ぶことにした。

何となくレッドのゼニガメとは相性が悪そうだが、別に気にするほどのことでもないだろう。

それにほのおって何かかっこいいしな!




ヒトカゲ「カゲ……」


グリーン「あからさまにがっかりしたような顔をするんじゃねぇよ……」




そんな俺の気持ちも知らずに露骨な態度を取るヒトカゲを見下ろした俺は、こいつのニックネームは絶対に『ムッツリ』にしてやろうと心に誓うのだった。




マサラタウン 「旅の始まり3」




ーレッドSIDEー




オーキド博士の研究所で、旅を共にするパートナーとなるポケモンをもらった私とグリーン。

好戦的な彼のことだから、このままポケモンバトルの申し込みでもされるのかなと思っていたんだけど、当のグリーンは特に何も言わずに研究所を出て行ってしまった。

珍しいこともあるものだ。


博士は「あの子にも色々あるのじゃろう」と言っていたけど、その色々ってなんなのだろうか。

まぁ別にいいんだけどね。


因みに、私とグリーンに選ばれなかったフシギダネはオーキド博士のポケモンになるそうだ。

旅から帰ってきたらゼニガメと一緒に色んなことを話してやろう。


その時には……グリーンも一緒に連れて行ってあげようかな。


そんなことを考えながら私も家に戻り、時刻は既に夕方から夜に移り変わろうとしている頃……




??「どう、レッド?ママのご飯は美味しい?」


レッド「……うん。美味しいよ、ママ」




私は旅に出る前の準備を済ませて、ママと一緒に夕食を食べていた。

そこだけ見れば至って普通な我が家の日常風景なんだけど……




ママ「でも、こうしてあなたとご飯を食べられるのも今日で最後なのね……」




今日のママのテンションは、私が今まで見たものの中でも断トツで最悪なようだった。


まぁ、研究所から帰ってきた際に旅に出ることを話した時も似たような感じだったけどさ。

一人娘ってことで心配なのは分かるんだけど、そろそろ本格的に子離れしてほしいもんだよ。




レッド「……そんなに落ち込まないで。ちゃんと電話もメールもするから」

 

ママ「でも女の子の一人旅なんて!あなたに何かあったらと考えただけで、ママは……!」


レッド「……私をどうこうしようとするような物好きなんていないと思う」

 

ママ「あなたはもう少し危機感を持ちなさい。お願いだから」




危機感、ね。

でも、パッと見じゃ男の子と見分けがつかない私に興味を持つような人なんているのだろうか。

スクールだと、グリーン以外の男子は最近全然私に近づいてこなくなったけど……私って変な匂いでもしてるのかな。



 

レッド「……大丈夫。私にはゼニガメもいるし」


ゼニガメ「ゼニゼニッ!」




そう言って私の足元でポケモンフードを食べていたゼニガメの頭を撫でてやると、彼女は「任せといてっ!」と言わんばかりの表情を浮かべながら数度頷いてみせた。

何だかすごく頼りになるね。

どう頼りになるのかはまだ分からないけど。




ママ「確かにポケモンは一緒だけど、でも……」

 

レッド「……ママは私のことが信用できない?」


ママ「そんなこと……ただママはあなたのことが心配で……」


レッド「……大丈夫、私はママの子供だから。……だから、ママも私のことを信じて?」


ママ「……」


レッド「……ね?」




無言でママと見つめあうこと数秒。

私から目を離した後に一度だけ深いため息を吐いたママは、そのまま苦笑しながらこう言った。




ママ「本当……レッドは小さなころから頑固よね。一度決めたことはどんなことがあっても曲げなくって……」


レッド「……それが私、だから」


ママ「ええ、そうね。……それでこそ、私の自慢の娘よね」




すると、ママは目に涙を浮かべながら私の体を優しく抱きしめてきた。

そうして数回私の髪を撫でると、嗚咽交じりの声でこう言った。




ママ「無茶や、危ないことだけは絶対にしないで。元気でね……」


レッド「……うん。ママも、元気で」




そう答えてママの背中に手をまわした私の目にも、ほんの少しだけ涙が浮かんでいたのだった。




ーグリーンSIDEー




じいちゃんの研究所でポケモンをもらった俺は、そのままレッドを置いて自分の家に帰った。

本当はあいつにポケモンバトルを申し込んでもよかったんだが、あんなに嬉しそうにゼニガメと触れ合っているレッドの顔を見たらそんな気もどこかに失せちまった。


ま、あいつにも俺以外の友達が出来て満足してるみたいだから別にいいんだけどな。

……それが人間じゃなくてポケモンだっていうのが悲しいというか、なんというかだが。


まぁ今はレッドのことはいいか。

それよりも……




グリーン「バッグの中には……着替え一式と野宿する時に必要なキャンプセット、それにもしもの時の非常食に、ポケモン用のフードとキズぐすり各種、っと……。こんなもんか?」


ヒトカゲ「カゲ?」




バッグの中身を声に出しながら確認する俺を見て、ヒトカゲの奴は不思議そうに首をかしげていた。

俺が一体何をしてるのか全然分からんって顔をしてるな。

しゃあねぇ、ここは軽く説明してやるか。




グリーン「ほら、俺とお前は明日からカントー中を旅にすることになるだろ?これはそのために必要な道具で、俺はそれが足りているのかの最終チェックをしているのさ。分かったか?」


ヒトカゲ「?」


グリーン「ああ、うん……。まぁ、要はこいつらをバッグに詰めてるんだよ。それなら分かるだろ?」


ヒトカゲ「カゲ!」




そう言うと、ヒトカゲは漸く合点がいったように何度も頷いた。

随分と内容を端折った気もするが、この説明でも間違いではないから別に問題ないか。




グリーン「明日は早めにマサラタウンから出るから、お前も早く寝ろよ」


ヒトカゲ「カゲ?カゲカーゲ?」


グリーン「レッドのことか?あいつは……まぁ後から来るんじゃねぇの?知らねぇけどさ」


ヒトカゲ「カゲ……」


グリーン「お前、本当にレッドのことを気に入ってるんだな……。やっぱりお前のニックネームはムッツリだわ」


ヒトカゲ「カゲッ!?」




これじゃ、あいつと俺のどっちがこいつのトレーナーなのか分かったもんじゃねぇな。

そう思って苦笑を浮かべると、俺は目の前でガーンといった表現が似合う顔をしたヒトカゲの頭を軽く小突いてやるのだった。




トキワシティ 「初めてのこと1」




ーレッドSIDEー




次の日のお昼前。

私はママに見送られながらマサラタウンを出発し、今はパートナーであるゼニガメと一緒にトキワの森へ向かっていた……一人で。


最初はグリーンと行けるところまで一緒に行こうかと思っていたんだけど、当の本人は早朝のうちにマサラタウンから出ていたんだって。

せめて声くらい掛けてくれればよかったのに……何とも薄情な幼馴染だよ、全く。

まぁその代わりにグリーンのお姉さんであるナナミさんからカント―地方のタウンマップを貰えたから許してあげるけどさ。


レッド(……でも、今度グリーンに会った時には絶対に文句の一つも言ってやろう)


そんな微妙にムカムカとした想いを抱えながらも、私は自慢の健脚を生かしてずんずんと前に進んでいるのだ。

勿論、無理だけはしないとママと約束していたから、森に向かうのは明日にして、今夜はトキワシティで宿を取るつもりだけどね。


そうして太陽が半分ほど西に傾きかけた頃に、私はトキワシティにたどり着くことが出来た。

やっぱりというか、マサラタウンよりも大分大きい街だね。

トレーナーなら誰でも利用できるポケモンセンターや色んな道具を購入できるフレンドリィショップもあるし……そこはちょっと羨ましいかも。


スクールもマサラにあるものより二回りは大きいみたい。

他にも見たことがない建物が多いけど……そこはいいか、別に興味もないし。


それでも宿を探すにはまだ早いかな。

最悪、ポケモンセンターの簡易ベッドを使わせてもらってもいいしね。


そうと決まれば……




レッド「……ちょっと辺りを見て回ろうか?」


ゼニガメ「ゼニゼニッ」




私の横をテコテコと歩くゼニガメにそう声を掛けると、ゼニガメは嬉しそうに笑って頷いてくれた。

この子のことは極力外に出してあげることにしているので、見たり聞いたりしていること全てが新鮮なんだろうな。

私もパートナーとしてこの子が楽しんでくれるように頑張らないとね。


そんなことを思いながら、私はゼニガメと一緒にトキワシティの中を見て回ることにした。


その時には、何故かフレンドリィショップの店員さんからキズぐすりやらモンスターボールやらの道具を無料で貰ったり、ポケモン名人とかいうおじいさんからポケモンを捕まえるためのコツを教えて貰らったりした。

他にも黒い服に『R』のバッジを付けた少しだけ怖そうなおじさんや、変なマントを着た『通りすがりのドラゴン使い』を名乗る男の人、それ以外にも町中のいろんな人から声を掛けられたりもしたっけ。


それにしても今日は妙に男の人から声を掛けられることが多かったんだけど、どうしてなんだろう?

別に変な格好はしてないよね?




レッド「……あなたはどう思う?」


ゼニガメ「ゼニッ♪」




気になってゼニガメに尋ねてみたら、彼女は笑顔でピースサインを見せてくれた。

多分大丈夫ってことなんだろうね、ならいいかな。


まぁ、そろそろ日も暮れ始めてきたことだし、今日はこのままこの街のポケモンセンターに泊めてもらうことにしよう。

宿の方は黒っぽい服を着た人達がたくさんいて何か嫌だし。




レッド「……行こっか」


ゼニガメ「ゼニッ!」




そう言ってゼニガメを抱きかかえた私は、夕焼けの光を背にしながらポケモンセンターの方へ歩いていくのだった。




ー???SIDEー




久しぶりに戻ったトキワシティで面白い少女に出会った。

ゼニガメを連れた新米トレーナーで、名前はレッドというらしい。


背格好はそこら中にいる子供のそれと遜色ない程度のものだったが、何よりも私が注目したのは彼女の『目』だ。

一片の濁りもない澄み切った光を湛えながら、それでいて強い意志を宿すいい目だ。


……そして、私が何よりも嫌いな目だ。


軽く話をしてみると、レッドは今日から旅を始めたという。

ポケモンも今連れているゼニガメのみで、バトルについては遠目から数度見たことがある程度だという。


今どきの子供にしては珍しいくらいの箱入りだが、それでも私は彼女の中にとてつもない才能を感じていた。

それと同時に、このままいけば彼女は間違いなく私にとっての大きな障害になるだろうということも。


だが未来とは常に流動して移り変わるもの。

つまり、彼女を『こちら側』に迎えることも十分に可能だということだ。


今のところは軽い接触に留めておくが、今後は部下も使って積極的にアプローチを掛けることにしよう。

それに抗う中で、あの美しい目の光を最後まで守れるかどうか……楽しみだ。




ー番外編 トキワシティの人から見たレッド①ー




ん、何だい?ああ、さっきウチの店に来た帽子をかぶったお嬢ちゃんのことか。いや~何とも可愛いらしい子だったよな。

表情はちとばかし硬かったが、礼儀もちゃんとしてるし、喋りも丁寧だったな。ありゃ将来、間違いなく美人になるな。


そんで、そんなあの子の気を引きたかったのか、ウチのバカ息子は店の商品のいくつかを金も貰わずにあの子に渡しちまったんだぜ?その時のあの子、明らかに困惑していたな。

すぐに返しますって言ってくれたんだけどよ、バカ息子のやったこととはいえ、こっちも渡しちまったものを素直に受け取るわけにはいかねぇからよ、それは迷惑料とおもって取っといてくれって言ったわけさ。


そしたら、あの子も少しだけ笑って受け取ってくれたよ。あの時の笑顔はまるで天使みたいに綺麗だったな。


ま、ことが終わった後にはあの子の背中を惚けたように見つめていたバカ息子にとびきりのメガトンパンチを食らわせてやったがね。


by フレンドリィショップ店長の談話


後書き

レッドちゃんかわいい。


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エリーさんから
2018-10-14 18:51:09

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2018-10-09 22:02:14

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SS好きの名無しさんから
2018-10-13 00:38:04

Zigoroさんから
2018-10-09 22:02:17

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: Zigoro 2018-10-09 22:02:29 ID: nkvV-UuS

なにこれ尊い…

2: のわっち 2018-10-10 08:01:38 ID: wS3WUm9t

Zigoroさん

レッドちゃんとグリーンくんの絡みは尊い……


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